JP2014107141A - 溶融塩電池およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】内部短絡が抑制され、かつ優れたサイクル特性を達成することができる溶融塩電池を提供する。
【解決手段】正極と、負極と、正極と負極との間に介在するセパレータと、電解質とを含み、電解質が、溶融塩からなり、溶融塩が、少なくともナトリウムイオンを含み、溶融塩に含まれる水分量We1が、質量比で300ppm以下である、溶融塩電池。
【選択図】図5
【解決手段】正極と、負極と、正極と負極との間に介在するセパレータと、電解質とを含み、電解質が、溶融塩からなり、溶融塩が、少なくともナトリウムイオンを含み、溶融塩に含まれる水分量We1が、質量比で300ppm以下である、溶融塩電池。
【選択図】図5
Description
本発明は、ナトリウムのデンドライトの析出が抑制された溶融塩電池に関する。
近年、太陽光、風力などの自然エネルギーを電気エネルギーに変換する技術が注目を集めている。また、多くの電気エネルギーを蓄えることができる高エネルギー密度の電池として、非水電解質二次電池の需要が拡大している。非水電解質二次電池の中では、リチウムイオン二次電池が、軽量かつ高い起電力を有する点で有望である。しかし、リチウムイオン二次電池は、可燃性の有機電解液を含むことから、安全性の確保に要するコストが高く、かつ、高温域での継続的使用は困難である。また、リチウム資源の価格も上昇しつつある。
そこで、難燃性の溶融塩を電解質として用いる溶融塩電池の開発が進められている。溶融塩は、熱安定性に優れており、安全性の確保が比較的容易であり、かつ、高温域での継続的使用にも適している。また、溶融塩電池は、リチウム以外の安価なアルカリ金属(特にナトリウム)をカチオンとする溶融塩を電解質として使用することができるため、製造コストも安価である。
融点が低く、熱安定性に優れた溶融塩として、例えば、ナトリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド(NaFSA)とカリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド(KFSA)との混合物が開発されている(特許文献1)。
また、溶融塩電池の正極には、亜クロム酸ナトリウムのようなナトリウム含有遷移金属酸化物を正極活物質として用いることが提案されている。一方、負極には、ナトリウム、ナトリウム合金、ナトリウムと合金化する金属、炭素材料、セラミックス材料などを負極活物質として用いることが提案されている。特に、亜鉛、錫、ケイ素などの金属は、比較的安価であり、高容量が得られる負極材料として期待されている(特許文献2、3)。
しかし、従来の溶融塩電池では、負極活物質の種類に関わらず、負極にナトリウムのデンドライトが析出しやすいという問題がある。例えば、溶融塩電池の充放電を長期に亘って繰り返すと、負極から正極に向かって、ナトリウムのデンドライトが成長し、やがてセパレータを貫通して正極に至り、内部短絡が生じることがある。また、成長したデンドライトが負極から脱落すると、脱落したナトリウムは充放電反応に寄与できなくなるため、溶融塩電池の容量が低下する。
溶融塩電池においては、従来から、充放電反応以外の溶融塩の副反応を抑制する観点から、電池内の水分量をある程度まで低減することが行われてきた。副反応として溶融塩の加水分解反応が起ると、反応生成物がセパレータを化学的に損傷させたり、反応生成物が抵抗成分となって円滑な電極反応を阻害したりすることがある。そこで、一般的には、溶融塩電池を組み立てる前に、正極、負極、セパレータおよび溶融塩の乾燥が行われる。乾燥後の正極、負極、セパレータおよび溶融塩が含む水分量は、それぞれ質量比で400〜1000ppm程度に低減される。
しかし、溶融塩電池の場合、溶融塩の副反応だけでなく、ナトリウムのデンドライトの析出の程度も、電池内の水分量により、大きく影響されることが判明しつつある。そして、デンドライトに起因する内部短絡の発生頻度は、電池内の水分量に対して、極めて敏感であり、従来と同程度に水分量を低減するだけでは不十分であることも判明しつつある。その理由は明確ではないが、溶融塩電池は比較的高温でも使用可能であるため、ナトリウムと水分との反応性が高いことが一因であるとも考えられる。具体的には、ナトリウムが水分と反応すると、ナトリウム酸化物が生成する。そして、ナトリウム酸化物が生成した箇所が起点となって、ナトリウムのデンドライトが成長する。
従って、正極と負極との短絡を抑制するためには、溶融塩電池内に含まれる水分量を従来よりも低減することが重要である。また、正極と負極との間の、ナトリウムイオンの移動経路、すなわちセパレータに存在する水分量を制御することが特に重要となる。
正極、負極およびセパレータに含まれる水分のうち、移動可能な水分は、電池内では、溶融塩に移動していると考えられる。そして、正極と負極との間にはセパレータが介在しており、セパレータの空隙内には溶融塩が含浸されている。従って、内部短絡を抑制するためにアルカリ金属イオンの移動経路における水分量を低減するためには、溶融塩に含まれる水分量を厳密に制御する必要がある。
以上に鑑み、本発明の一局面は、正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、電解質とを含み、前記電解質が、溶融塩からなり、前記溶融塩が、少なくともナトリウムイオンを含み、前記溶融塩に含まれる水分量We1が、質量比で300ppm以下である、溶融塩電池に関する。このような溶融塩電池によれば、ナトリウムのデンドライトの析出を大きく抑制することができ、内部短絡の発生頻度も大きく低減する。
また、本発明の他の局面は、上記溶融塩電池を製造するための方法の一例に関する。その方法は、水分量Wpが質量比で300ppm以下である正極を準備する工程と、水分量Wnが質量比で400ppm以下である負極を準備する工程と、水分量We2が質量比で50ppm以下であり、少なくともナトリウムイオンを含む溶融塩を電解質として準備する工程と、水分量Wsが質量比で350ppm以下であるセパレータを準備する工程と、前記正極と前記負極との間に前記セパレータを介在させて、前記正極と前記負極とを積層して電極群を構成し、前記電極群に前記溶融塩を含浸させる工程と、を具備する。すなわち、上記方法においては、溶融塩だけでなく、正極、負極およびセパレータに含まれる水分量も厳密に制御される。
溶融塩電池内の溶融塩に含まれる水分量We1は、質量比で300ppm以下であることが好ましい。また、水分量We1を200ppm以下まで低減することで、内部短絡の発生を抑制する効果が顕著となり、より優れたサイクル特性を達成することができる。
溶融塩は、N(SO2X1)(SO2X2)・M(ただし、X1およびX2は、それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜8のフルオロアルキル基であり、Mはアルカリ金属または窒素含有へテロ環を有する有機カチオンであ)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、溶融塩は、少なくとも、Mがナトリウムイオンである前記化合物を含む。これにより、例えば70℃以上の高温でも溶融塩電池の使用が可能になる。そして、溶融塩電池内の溶融塩の水分量We1が300ppm以下、更には200ppm以下にまで低減されていることから、溶融塩電池を高温で長期間使用しても、ナトリウムイオンと水分との反応はほとんど起らない。そのため、ナトリウムと水分との反応により生成するナトリウム酸化物を起点とするデンドライトの成長も、ほとんど起らなくなる。
好ましい一形態において、溶融塩は、ナトリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド(NaFSA)と、カリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド(KFSA)との、モル比:NaFSA/KFSA=40/60〜70/30の混合物からなる。また、好ましい別の形態において、溶融塩は、メチルプロピルピロリジニウムビス(フルオロスルフォニル)アミド(Py13FSA)と、ナトリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド(NaFSA)との、モル比:Py13FSA/NaFSA=97/3〜80/20の混合物からなる。これらの溶融塩を用いることで、比較的低温でも使用できる溶融塩電池を得ることができ、結果として、デンドライトの生成を抑制する効果も大きくなる。
好ましい一形態において、負極は、第1金属により形成された負極集電体と、負極集電体の表面の少なくとも一部を被覆する第2金属とを含む。ただし、第1金属は、ナトリウムと合金化しない金属であり、第2金属は、ナトリウムと合金化する金属である。より具体的には、第1金属が、アルミニウムまたはアルミニウム合金であり、第2金属が、錫、錫合金、亜鉛または亜鉛合金である溶融塩電池が挙げられる。このような構造の負極は、充放電に伴い、ナトリウムの析出と溶解を繰り返すため、デンドライトの生成を抑制することの必要性が高い。溶融塩電池内の溶融塩の水分量We1を300ppm以下にまで低減することにより、ナトリウムの溶解と析出を繰り返す負極を用いる場合でも、サイクル特性を顕著に向上させることが可能となる。
好ましい別の形態において、負極は、第1金属により形成された負極集電体と、負極集電体の表面に形成された負極活物質層とを含む。ただし、第1金属は、ナトリウムと合金化しない金属であり、負極活物質層は、負極活物質として、ナトリウム含有チタン化合物および難黒鉛化性炭素よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。このような構造の負極は、元来、充放電に伴うデンドライトの生成が起りにくい。ただし、溶融塩電池が過充電状態になったり、電池内に異物が混入したりする場合には、デンドライトが発生する可能性がある。一方、溶融塩電池内の溶融塩の水分量Weを300ppm以下にまで低減することにより、上記のような不測の事態が起こった場合であっても、デンドライトが発生する可能性は顕著に低減する。よって、溶融塩電池の信頼性を大きく向上させることができる。
好ましい一形態において、正極は、正極集電体と、正極集電体の表面に形成された正極活物質層と、を含み、正極活物質層は、正極活物質として、Na1-xM1 xCr1-yM2 yO2(0≦x≦2/3、0≦y≦2/3、M1およびM2は、それぞれ独立に、Ni、Co、Mn、FeおよびAlよりなる群から選択される少なくとも1種)を含む。このような正極は、低コストであるとともに、充放電に伴う構造変化の可逆性に優れているため、サイクル特性に特に優れた溶融塩電池を得ることができる。
好ましい一形態において、セパレータは、ガラス繊維により形成されている。ガラス繊維は、水分を吸収しやすいため、一般的には溶融塩電池内に水分を導入する原因となりやすい。一方、セパレータに含まれる水分量Wsを質量比で350ppm以下にしてから電池内に組み込む場合には、そのような懸念は解消される。そして、セパレータをガラス繊維により形成することで、セパレータの耐熱性が非常に高くなるため、高温で長期間使用するのにより適した溶融塩電池が得られる。
ガラス繊維により形成されたセパレータの厚さは、20μm〜500μmが好適である。これにより、内部短絡をより効果的に抑制することが可能になるとともに、電池内に占めるセパレータの容積は高容量電池を得るのに有利な範囲となる。よって、信頼性が高く、かつ高容量な電池が得られる。また、溶融塩電池内において、ガラス繊維により形成されたセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重は、0.1〜1MPaであることが好ましい。これにより、内部短絡をより効果的に抑制することが可能になる。
好ましい別の形態において、セパレータは、シリカ含有ポリオレフィンにより形成されている。シリカは、水分を吸収しやすいため、一般的には溶融塩電池内に水分を導入する原因となりやすい。一方、セパレータに含まれる水分量Wsを質量比で350ppm以下にしてから電池内に組み込む場合には、そのような懸念は解消される。そして、セパレータをシリカ含有ポリオレフィンにより形成することで、セパレータの耐熱性が非常に高くなる。
シリカ含有ポリオレフィンにより形成されたセパレータの厚さは、10μm〜500μmが好適である。これにより、内部短絡をより効果的に抑制することが可能になるとともに、電池内に占めるセパレータの容積は高容量電池を得るのに有利な範囲となる。また、溶融塩電池内において、シリカ含有ポリオレフィンにより形成されたセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重は、0.1〜14MPaであることが好ましい。これにより、内部短絡をより効果的に抑制することが可能になるとともに、内部抵抗が小さくなる。
好ましい別の形態において、セパレータは、フッ素樹脂またはポリフェニレンサルファイト(PPS)により形成されている。フッ素樹脂およびPPSは、耐熱性が高く、かつ水分を吸収しにくいため、高温で短時間乾燥することにより、セパレータ内に含まれる水分量Wsを350ppm以下にまで低減することができる。よって、溶融塩電池内に含まれる水分量を低減するのに有利である。
フッ素樹脂またはPPSにより形成されたセパレータの厚さは、10μm〜500μmであることが好ましい。これにより、内部短絡をより効果的に抑制することが可能になるとともに、電池内に占めるセパレータの容積は高容量電池を得るのに有利な範囲となる。また、溶融塩電池内において、フッ素樹脂またはPPSにより形成されたセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重は、0.1〜14MPaであることが好ましい。これにより、内部短絡をより効果的に抑制することが可能になるとともに、内部抵抗が小さくなる。
セパレータは、水分を保持し得る空隙が多く、かつ正極と負極との間に介在することから、水分量を低減する重要性は大きいといえる。そこで、上記製造方法において、セパレータを準備する工程では、セパレータを、90℃以上の乾燥温度で、10Pa以下の減圧環境中で、乾燥させることが好ましい。これにより、比較的短時間で、セパレータに含まれる水分量Wsを質量比で350ppm以下にまで低減することができる。乾燥温度の上限は、セパレータの材質により相違するが、高温であるほど、乾燥に要する時間を短縮することができる。なお、正極および負極についても、同様に、90℃以上の乾燥温度で、10Pa以下の減圧環境中で、乾燥させることが好ましい。
一方、溶融塩を準備する工程では、露点温度−50℃以下の雰囲気中で、溶融状態の溶融塩に固体状のアルカリ金属を浸漬し、アルカリ金属の融点未満の温度で、溶融状態の溶融塩を攪拌することが好ましい。これにより、比較的短時間で、かつ簡易に溶融塩に含まれる水分量We2を質量比で50ppm以下、更には20ppm以下にまで低減することができる。
本発明によれば、電池内構成要素の水分量が適正に制御されていることから、水分とナトリウムとの反応に起因するナトリウム酸化物の生成や、ナトリウム酸化物を起点とするデンドライトの析出が抑制される。また、正極と負極との間に介在する溶融塩の水分量We1が300ppm以下に制御されるため、セパレータ内の細孔(すなわちナトリウムイオンの移動経路)に沿ったデンドライトの成長を効果的に抑制することができる。よって、正極と負極との短絡が抑制され、かつ優れたサイクル特性を達成することができる。
本発明は、正極と、負極と、正極と負極との間に介在するセパレータと、電解質とを含み、電解質が、溶融塩からなり、溶融塩は、少なくともナトリウムイオンを含む溶融塩電池に関する。ただし、溶融塩に含まれる水分量Weは、質量比で300ppm以下に制御されている。なお、電解質には、溶融塩以外に、様々な添加剤を含ませることができるが、イオン伝導性や熱安定性を確保する観点からは、電解質が溶融塩のみからなることが好ましい。電解質が添加剤を含む場合でも、電解質の90質量%以上、更には95質量%以上が溶融塩で構成されていることが好ましい。
上記のように電池内の水分量を制御することで、溶融塩電池のイオン伝導を担うキャリアであるナトリウムイオンと水分との反応が抑制される。その結果、ナトリウム酸化物の生成や、これを起点とするナトリウム金属のデンドライトの析出が抑制され、内部短絡の発生やサイクル特性の低下も低減する。また、デンドライトの析出の程度は、特に正極と負極との間のナトリウムイオンの移動経路に存在する水分量に大きく依存する。正極と負極との間にはセパレータが介在しており、セパレータの空隙内には溶融塩が含浸されている。そして、正極、負極およびセパレータに含まれる水分(カールフィッシャー法により検出可能な水分)のうち、移動可能な水分の多くは、電池内では、溶融塩に移動していると考えられる。従って、溶融塩電池内の溶融塩に含まれる水分量We1を厳密に制御することが重要であり、具体的には、質量比で300ppm以下にまで水分量We1を低減することが必要である。溶融塩電池内の溶融塩に含まれる水分量We1が300ppmを超えると、内部短絡の発生やサイクル特性の低下を抑制することは困難である。
電池内における溶融塩の水分量We1は、質量比で200ppm以下にまで低減することが望ましい。これにより、負極材料の種類に関わらず、デンドライトの析出を抑制する効果が大きくなり、内部短絡も更に発生しにくくなる。また、サイクル特性の向上効果も大きくなる。
溶融塩としては、N(SO2X1)(SO2X2)・M(ただし、X1およびX2は、それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜8のフルオロアルキル基であり、Mはアルカリ金属または窒素含有へテロ環を有する有機カチオンである)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。この場合、溶融塩は、少なくともN(SO2X1)(SO2X2)・Naを含む。このような溶融塩は、比較的融点が低く、かつ熱安定性に優れており、後述する方法によれば、水分量の制御も容易に行うことができる点で有利である。
より高容量な溶融塩電池を得る観点からは、金属材料を活物質層として具備する負極を用いることが望ましい。例えば、ナトリウムのようなアルカリ金属自体を活物質層として用いてもよく、アルカリ金属と合金化する金属を活物質層として用いてもよい。
負極の好ましい一形態は、例えば、第1金属により形成された負極集電体と、負極集電体の表面の少なくとも一部(好ましくは負極集電体の表面の80%以上)を被覆する第2金属とを含む。ここで、第1金属は、ナトリウムと合金化しない金属である。第2金属は、ナトリウムと合金化する金属であり、負極活物質層として機能する。負極集電体をナトリウムと合金化しない第1金属で形成することにより、負極集電体の強度を長期間に亘って維持させることができる。また、ナトリウムと合金化する第2金属を負極活物質層として用いることにより、負極にナトリウムを析出させる電池反応が進行する場合でも、デンドライトの析出を抑制することが容易となる。
セパレータの材料は、特に限定されないが、ガラス繊維、シリカ含有ポリオレフィン、フッ素樹脂、ポリフェニレンサルファイト(PPS)、セラミックス材料(例えばアルミナ粒子)などを用いることができる。これらの材料は、いずれも加熱などの比較的簡易な方法により水分量を制御することが可能である。
ガラス繊維により形成されたセパレータの厚さは、20μm〜500μmであることが好ましい。このような厚さであれば、溶融塩電池の容量を比較的高く維持できるとともに、内部短絡も発生しにくいからである。また、溶融塩電池内において、ガラス繊維により形成されたセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重は、0.1〜1MPaであることが好ましい。このような圧縮荷重を印加することで、正極と負極との間の抵抗が適正に制御され、かつ内部短絡を生じることもないと考えられるからである。
同様の観点から、シリカ含有ポリオレフィンにより形成されたセパレータの厚さは、10μm〜500μmであることが好ましく、溶融塩電池内において、シリカ含有ポリオレフィンにより形成されたセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重は、0.1〜14MPaであることが好ましい。更に、フッ素樹脂またはPPSにより形成されたセパレータの厚さは、10μm〜500μmであることが好ましく、溶融塩電池内において、フッ素樹脂またはPPSにより形成されたセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重は、0.1〜14MPaであることが好ましい。
本発明の溶融塩電池は、例えば、水分量Wpが質量比で300ppm以下である正極を準備する工程と、水分量Wnが質量比で400ppm以下である負極を準備する工程と、水分量We2が質量比で50ppm以下であり、少なくともナトリウムイオンを含む溶融塩を電解質として準備する工程と、水分量Wsが質量比で350ppm以下であるセパレータを準備する工程と、正極と負極との間にセパレータを介在させて、正極と負極とを積層して、電極群を構成する工程と、を具備する製造方法により製造することができる。電極群は、溶融塩とともに電池ケースに収容され、これにより溶融塩電池が完成する。
上記のように、正極、負極、溶融塩およびセパレータの水分量を、個別に制御することで、溶融塩電池の内部に含まれる全体的な水分量を制限するための管理が容易となる。ただし、例えば、予め正極、負極およびセパレータを含む電極群を構成し、その後、電極群の水分量を低減させる処理を行うことにより、各要素の水分量を上記範囲内に制御してもよい。
上記範囲の水分量を有するセパレータを準備する工程は、例えば、セパレータを90℃以上(より好ましくは90〜300℃)の乾燥温度で、10Pa以下、好ましくは1Pa以下、より好ましくは0.4Pa以下の減圧環境中で、乾燥することを含む。このような方法は、簡易であり、製造コストを増大させない点で有利である。処理雰囲気を減圧環境とする前に、処理雰囲気の空気を予め不活性ガス(例えば窒素、ヘリウム、アルゴン)や露点温度−50℃以下のドライエアーに置換しておくことで、より効果的にセパレータから水分を除去することができる。
より具体的には、セパレータがガラス繊維により形成されている場合には、当該セパレータを100〜300℃で、2〜24時間かけて減圧乾燥させることが好ましい。乾燥雰囲気の圧力は10Pa以下、好ましくは1Pa以下に制御することが好ましい。
また、セパレータがシリカ含有セパレータにより形成されている場合には、当該セパレータを90〜120℃で、2〜24時間かけて減圧乾燥させることが好ましい。ここでも、乾燥雰囲気の圧力は10Pa以下、好ましくは1Pa以下に制御することが好ましい。
また、セパレータがポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素樹脂またはPPSにより形成されている場合には、当該セパレータを100〜260℃で、2〜24時間かけて減圧乾燥させることが好ましい。ここでも、乾燥雰囲気の圧力は10Pa以下、好ましくは1Pa以下に制御することが好ましい。
正極および負極の水分量を低減させる乾燥工程についても、上記と同様の条件で行うことができる。より具体的には、正極および負極は、90〜200℃で、2〜24時間かけて減圧乾燥させればよい。乾燥雰囲気の圧力は10Pa以下、好ましくは1Pa以下に制御することが好ましい。
上記範囲の水分量We2を有する溶融塩を準備する工程は、例えば、露点温度−50℃以下の雰囲気中(例えば窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気中または空気中)で、溶融状態の溶融塩に固体状のアルカリ金属を浸漬し、アルカリ金属の融点未満の温度で、溶融状態の溶融塩を攪拌することを含む。この方法は、固体状のアルカリ金属と、溶融塩中の水分とを化学的に反応させることにより、水分を除去するものである。この方法によれば、アルカリ金属と溶融塩中の水分との反応が、速やかに進行するため、水分量が極めて低い状態にまで低減される。例えば水分量We2を質量比で20ppm以下にまで低減することも容易である。また、攪拌された混合物から、固体状のアルカリ金属を回収することも容易であり、製造コストを増大させない点で有利である。
固体状のアルカリ金属と溶融状態の溶融塩を攪拌する温度は、アルカリ金属の種類にもよるが、例えば、60〜90℃が好適である。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、セシウムなどを用いることができるが、ナトリウムが安価であり、溶融塩中の水分を除去するのにも適している。
ここで、正極は、ナトリウムイオンと電気化学的に反応する材料を正極活物質として含み、負極は、ナトリウムイオンと電気化学的に反応する材料を負極活物質として含む。電気化学的な反応は、ナトリウムを溶解または析出させる反応でもよく、ナトリウムイオンを所定の材料から放出または所定の材料に吸蔵させる反応でもよく、ナトリウムイオンを所定の材料から脱離または所定の材料に吸着させる反応でもよく、その他のタイプの反応でもよい。
セパレータは、正極と負極とを物理的に離間させる機能と、正極と負極との間を移動するナトリウムイオンの移動経路を確保する機能とを有する。セパレータには、既に述べたものの他にも、様々な多孔質シートを用いることができる。
溶融塩は、カチオンとして少なくともナトリウムイオンを含み、アニオンとして有機または無機アニオンを含む塩である。溶融塩は、正極、負極およびこれらの間に介在するセパレータで構成された電極群の空隙に含浸され、溶融状態において電解質として機能する。すなわち、溶融塩電池の電解質は、そのほとんどがイオン性物質(融点以上ではイオン性液体とも称される)で構成されている。なお、溶融塩の融点は、溶融塩電池の用途に応じて選択すればよい。
正極に含まれる水分量Wp、負極に含まれる水分量Wn、溶融塩に含まれる水分量Weおよびセパレータに含まれる水分量Wsは、いずれもカールフィッシャー法により測定される水分量である。また、正極および負極の水分量は、集電体と活物質層との合計における水分量である。具体的には、正極、負極、溶融塩およびセパレータから選ばれる少なくとも1つの試料を、陰極液とともに、水分量測定装置のセルに投入し、水分を測定する。陰極液には、アルコール、塩基、二酸化硫黄、ヨウ化物イオンなどが含まれている。カールフィッシャー法は、容量滴定法と電量滴定法とに分類されるが、ここでは、分析精度の高い電量滴定法を採用する。また、水分量測定機器には、市販のカールフィッシャー水分計(例えば京都電子工業(株)製のMKC−610)を用いることができる。
各要素の水分量は、窒素雰囲気中で、新鮮な陰極液で満たされた水分量測定装置のセルに試料を投入して測定する。正極、負極またはセパレータの試料の場合、試料の重量は0.05〜5gの範囲内とすればよい。また、溶融塩の試料の場合、試料の重量は0.05〜3gの範囲内とすればよい。溶融塩の水分量は、溶融塩の融点以上でも、融点未満でも測定することができる。
電池内の溶融塩の水分量We1は、電池を分解し、溶融塩を取り出して、その水分量を測定してもよく、溶融塩を含浸したセパレータを取り出し、その水分量を測定してもよい。溶融塩を含浸したセパレータの水分量を測定する場合には、得られた水分量を、試料に含まれるセパレータの重量と溶融塩の重量を用いて、溶融塩に含まれる水分量に換算すればよい。
次に、溶融塩電池の一例に基づいて、各構成要素について具体的に説明する。
[正極]
図1は、本発明の一実施形態に係る正極の正面図であり、図2は図1のII−II線断面図である。
正極2は、正極集電体2aおよび正極集電体2aに固定化された正極活物質層2bを含む。正極活物質層2bは、正極活物質を必須成分として含み、任意成分として結着剤、導電剤等を含んでもよい。
[正極]
図1は、本発明の一実施形態に係る正極の正面図であり、図2は図1のII−II線断面図である。
正極2は、正極集電体2aおよび正極集電体2aに固定化された正極活物質層2bを含む。正極活物質層2bは、正極活物質を必須成分として含み、任意成分として結着剤、導電剤等を含んでもよい。
正極集電体2aとしては、金属箔、金属繊維製の不織布、金属多孔体シートなどが用いられる。正極集電体を構成する金属としては、正極電位で安定であることから、アルミニウムやアルミニウム合金が好ましいが、特に限定されない。正極集電体となる金属箔の厚さは、例えば10〜50μmであり、金属繊維の不織布や金属多孔体シートの厚さは、例えば100〜600μmである。正極集電体2aには、集電用のリード片2cを形成してもよい。リード片2cは、図1に示すように、正極集電体と一体に形成してもよく、別途形成したリード片を溶接などで正極集電体に接続してもよい。
正極活物質としては、熱的安定性や電気化学的安定性の観点から、ナトリウム含有遷移金属化合物を用いることが好ましい。ナトリウム含有遷移金属化合物としては、ナトリウムが層間に出入り可能な層状構造を有する化合物が好ましいが、特に限定されない。
ナトリウム含有遷移金属化合物は、例えば、亜クロム酸ナトリウム(NaCrO2など)および鉄マンガン酸ナトリウム(Na2/3Fe1/3Mn2/3O2など)よりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、亜クロム酸ナトリウムのCrまたはNaの一部を他元素で置換してもよく、鉄マンガン酸ナトリウムのFe、MnまたはNaの一部を他元素で置換してもよい。例えば、Na1-xM1 xCr1-yM2 yO2(0≦x≦2/3、0≦y≦2/3、M1およびM2は、それぞれ独立にCrおよびNa以外の金属元素であって、例えばNi、Co、Mn、FeおよびAlよりなる群から選択される少なくとも1種)や、Na2/3-xM3 xFe1/3-yMn2/3-zM4 y+zO2(0≦x≦1/3、0≦y≦1/3、0≦z≦1/3、M3およびM4は、それぞれ独立にFe、MnおよびNa以外の金属元素であって、例えばNi、Co、AlおよびCrよりなる群から選択される少なくとも1種である)などを用いることもできる。また、NaMnF3、Na2FePO4F、NaVPO4F、NaCoPO4、NaNiPO4、NaMnPO4、NaMn1.5Ni0.5O4、NaMn0.5Ni0.5O2、TiS2、FeF3などを用いることもできる。正極活物質は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。なお、M1およびM3はNaサイト、M2はCrサイト、M4はFeまたはMnサイトを占める元素である。
結着剤は、正極活物質同士を結合させるとともに、正極活物質を正極集電体に固定する役割を果たす。結着剤としては、フッ素樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等を用いることができる。フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体等を用いることができる。結着剤の量は、正極活物質100質量部あたり、1〜10質量部が好ましく、3〜5質量部がより好ましい。
正極に含ませる導電剤としては、黒鉛、カーボンブラック、炭素繊維などが挙げられる。これらのうちでは、少量使用で十分な導電経路を形成しやすいことから、カーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックの例としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック等を挙げることができる。導電剤の量は、正極活物質100質量部あたり、5〜15質量部が好ましく、5〜10質量部がより好ましい。
[負極]
図3は、本発明の一実施形態に係る負極の正面図であり、図4は図3のIV−IV線断面図である。
負極3は、負極集電体3aおよび負極集電体3aに固定化された負極活物質層3bを含む。負極活物質層3bには、例えば、ナトリウム、ナリチウム合金またはナトリウムと合金化可能な金属を用いることができる。このような負極は、例えば、第1金属により形成された負極集電体と、負極集電体の表面の少なくとも一部を被覆する第2金属とを含む。ここで、第1金属は、ナトリウムと合金化しない金属であり、第2金属は、ナトリウムと合金化する金属である。
図3は、本発明の一実施形態に係る負極の正面図であり、図4は図3のIV−IV線断面図である。
負極3は、負極集電体3aおよび負極集電体3aに固定化された負極活物質層3bを含む。負極活物質層3bには、例えば、ナトリウム、ナリチウム合金またはナトリウムと合金化可能な金属を用いることができる。このような負極は、例えば、第1金属により形成された負極集電体と、負極集電体の表面の少なくとも一部を被覆する第2金属とを含む。ここで、第1金属は、ナトリウムと合金化しない金属であり、第2金属は、ナトリウムと合金化する金属である。
第1金属により形成された負極集電体としては、金属箔、金属繊維製の不織布、金属多孔体シートなどが用いられる。第1金属としては、ナトリウムと合金化せず、負極電位で安定であることから、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ニッケル、ニッケル合金などが好ましい。これらのうち、軽量性に優れる点では、アルミニウムやアルミニウム合金が好ましい。また、アルミニウム合金中のアルミニウム以外の金属成分(例えばFe、Si、Ni、Mnなど)は0.5質量%以下とすることが好ましい。負極集電体となる金属箔の厚さは、例えば10〜50μmであり、金属繊維の不織布や金属多孔体シートの厚さは、例えば100〜600μmである。負極集電体3aには、集電用のリード片3cを形成してもよい。リード片3cは、図3に示すように、負極集電体と一体に形成してもよく、別途形成したリード片を溶接などで負極集電体に接続してもよい。
第2金属としては、亜鉛、亜鉛合金、錫、錫合金、ケイ素、ケイ素合金などを挙げることができる。これらのうち、溶融塩に対する濡れ性が良好である点において、亜鉛や亜鉛合金が好ましい。第2金属により形成された負極活物質層の厚さは、例えば0.05〜1μmが好適である。なお、亜鉛合金または錫合金における亜鉛または錫以外の金属成分(例えばFe、Ni、Si、Mnなど)は0.5質量%以下とすることが好ましい。
好ましい負極の一形態としては、アルミニウムまたはアルミニウム合金(第1金属)により形成された負極集電体と、負極集電体の表面の少なくとも一部を被覆する亜鉛、亜鉛合金、錫または錫合金(第2金属)とを具備する負極を例示することができる。このような負極は、高容量であり、長期間に亘って劣化しにくく、かつ、電池内の水分量を制御することによるデンドライトの析出を抑制する効果も大きくなる。
第2金属による負極活物質層は、例えば、第2金属のシートを負極集電体に貼り付けたり、圧着したりすることにより得ることができる。また、真空蒸着法、スパッタリング法などの気相法により、第2金属をガス化させて負極集電体に付着させてもよく、あるいは、めっき法などの電気化学的方法により、第2金属の微粒子を負極集電体に付着させてもよい。気相法やめっき法によれば、薄く均一な負極活物質層を形成することができる。
また、負極活物質層3bは、負極活物質を必須成分として含み、任意成分として結着剤、導電剤等を含む合剤層であってもよい。負極に用いる結着剤および導電剤としても、正極の構成要素として例示した材料を用いることができる。結着剤の量は、負極活物質100質量部あたり、1〜10質量部が好ましく、3〜5質量部がより好ましい。導電剤の量は、負極活物質100質量部あたり、5〜15質量部が好ましく、5〜10質量部がより好ましい。
負極合剤層を構成する負極活物質としては、熱的安定性や電気化学的安定性の観点から、ナトリウム含有チタン化合物、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)等が好ましく用いられる。ナトリウム含有チタン化合物としては、チタン酸ナトリウムが好ましく、より具体的には、Na2Ti3O7およびNa4Ti5O12よりなる群から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、チタン酸ナトリウムのTiまたはNaの一部を他元素で置換してもよい。例えば、Na2-xM5 xTi3-yM6 yO7(0≦x≦3/2、0≦y≦8/3、M5およびM6は、それぞれ独立にTiおよびNa以外の金属元素であって、例えばNi、Co、Mn、Fe、AlおよびCrよりなる群から選択される少なくとも1種である)や、Na4-xM7 xTi5-yM8 yO12(0≦x≦11/3、0≦y≦14/3、M7およびM8は、それぞれ独立にTiおよびNa以外の金属元素であって、例えばNi、Co、Mn、Fe、AlおよびCrよりなる群から選択される少なくとも1種である)などを用いることもできる。ナトリウム含有チタン化合物は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。ナトリウム含有チタン化合物は、難黒鉛化性炭素と組み合わせて用いてもよい。なお、M5およびM7はNaサイト、M6およびM8はTiサイトを占める元素である。
難黒鉛化性炭素とは、不活性雰囲気中で加熱しても黒鉛構造が発達しない炭素材料であり、微小な黒鉛の結晶がランダムな方向に配置され、結晶層と結晶層との間にナノオーダーの空隙を有する材料をいう。代表的なアルカリ金属であるナトリウムイオンの直径は、0.95オングストロームであることから、空隙の大きさは、これより十分に大きいことが好ましい。難黒鉛化性炭素の平均粒子径(体積粒度分布における累積体積50%における粒子径)は、例えば3〜20μmであればよく、5〜15μmであることが、負極における負極活物質の充填性を高め、かつ電解質との副反応を抑制する観点から望ましい。また、難黒鉛化性炭素の比表面積は、ナトリウムイオンの受け入れ性を確保するとともに、電解質との副反応を抑制する観点から、例えば1〜10m2/gであればよく、3〜8m2/gであることが好ましい。難黒鉛化性炭素は、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
[電解質(溶融塩)]
電解質(溶融塩)としては、融点以上の温度でイオン性液体となる塩が使用される。電解質は、少なくとも、カチオンとして溶融塩電池内において電荷のキャリアとなるナトリウムイオンを含む塩を含む。このような塩としては、例えば、N(SO2X1)(SO2X2)・M(ただし、X1およびX2は、それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜8のフルオロアルキル基であり、Mはアルカリ金属または窒素含有へテロ環を有する有機カチオンである)で表される化合物を用いることができる。この場合、N(SO2X1)(SO2X2)・Mは、少なくともN(SO2X1)(SO2X2)・Naを含む。
電解質(溶融塩)としては、融点以上の温度でイオン性液体となる塩が使用される。電解質は、少なくとも、カチオンとして溶融塩電池内において電荷のキャリアとなるナトリウムイオンを含む塩を含む。このような塩としては、例えば、N(SO2X1)(SO2X2)・M(ただし、X1およびX2は、それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜8のフルオロアルキル基であり、Mはアルカリ金属または窒素含有へテロ環を有する有機カチオンである)で表される化合物を用いることができる。この場合、N(SO2X1)(SO2X2)・Mは、少なくともN(SO2X1)(SO2X2)・Naを含む。
X1およびX2で表されるフルオロアルキル基においては、アルキル基の一部の水素原子がフッ素原子で置き換わっていてもよく、全ての水素原子がフッ素原子で置き換わったパーフルオロアルキル基であってもよい。イオン性液体の粘度を低減する観点から、X1およびX2のうち少なくとも一方は、パーフルオロアルキル基であるのが好ましく、X1およびX2の双方が、パーフルオロアルキル基であるのがさらに好ましい。炭素数を1〜8とすることで、電解質の融点の上昇を抑制することができ、低粘度のイオン性液体を得るのに有利となる。特に低粘度のイオン性液体を得る観点からは、パーフルオロアルキル基の炭素数は、1〜3が好ましく、1または2であるのが更に好ましい。具体的には、X1およびX2は、それぞれ独立に、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロプロピル基などであればよい。
また、N(SO2X1)(SO2X2)で表されるビススルフォニルアミドアニオンの具体例としては、ビス(フルオロスルフォニル)アミドアニオン(FSA-);ビス(トリフルオロメチルスルフォニル)アミドアニオン(TFSA-)、ビス(ペンタフルオロエチルスルフォニル)アミドアニオン、フルオロスルフォニルトリフルオロメチルスルフォニルアミドアニオン(N(FSO2)(CF3SO2))などが挙げられる。
Mで示されるナトリウム以外のアルカリ金属としては、カリウム、リチウム、ルビジウムおよびセシウムが挙げられる。これらのうちでは、カリウムが好ましい。
Mで示される窒素含有へテロ環を有する有機カチオンとしては、ピロリジニウム骨格、イミダゾリウム骨格、ピリジニウム骨格、ピペリジニウム骨格等を有するカチオンを用いることができる。これらの中でも、ピロリジニウム骨格を有するカチオンは、融点の低い溶融塩を形成することができ、かつ高温でも安定である点で好ましい。
ピロリジニウム骨格を有する有機カチオンは、例えば、一般式(1):
で表される。ただし、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素数1〜8のアルキル基である。炭素数を1〜8とすることで、電解質の融点の上昇を抑制することができ、低粘度のイオン性液体を得るのに有利となる。特に低粘度のイオン性液体を得る観点からは、アルキル基の炭素数は、1〜3が好ましく、1または2であるのが更に好ましい。具体的には、R1およびR2は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などであればよい。
ピロリジニウム骨格を有する有機カチオンの具体例としては、メチルプロピルピロリジニウムカチオン、エチルプロピルピロリジニウムカチオン、メチルエチルピロリジニウムカチオン、ジメチルピロリジニウムカチオン、ジエチルピロリジニウムカチオンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは、特に熱的安定性および電気化学的安定性が高いことから、メチルプロピルピロリジニウムカチオン(Py13+)が好ましい。
溶融塩の具体例としては、ナトリウムイオンとFSA-との塩(NaFSA)、ナトリウムイオンとTFSA-との塩(NaTFSA)、Py13+とFSA-との塩(Py13FSA)、Py13+とTFSA-との塩(Py13TFSA)などが挙げられる。
溶融塩の融点は、低い方が好ましい。溶融塩の融点を低下させる観点からは、2種以上の塩の混合物を用いるのが好ましい。例えば、ナトリウムと、ビススルフォニルアミドアニオンとの第1塩を用いる場合、ナトリウム以外のカチオンと、ビススルフォニルアミドアニオンとの第2塩と併用することが好ましい。第1塩および第2塩を形成するビススルフォニルイミドアニオンは、同じであっても異なってもよい。
ナトリウム以外のカチオンとしては、カリウムイオン、セシウムイオン、リチウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、上記の有機カチオンなどを用いることができる。他のカチオンは、一種を単独で使用してもよく、二種以上を用いてもよい。
第1塩として、NaFSA、NaTFSAなどを用いる場合、第2塩としては、カリウムイオンとFSA-との塩(KFSA)、カリウムとTFSA-との塩(KTFSA)などが好ましい。より具体的には、NaFSAとKFSAとの混合物や、NaTFSAとKTFSAとの混合物を用いることが好ましい。この場合、第1塩と第2塩とのモル比(第1塩/第2塩)は、電解質の融点、粘度およびイオン伝導性のバランスを考慮すると、例えば、40/60〜70/30であり、45/55〜65/35であることが好ましく、50/50〜60/40であることが更に好ましい。
第1塩としてPy13の塩を用いる場合、そのような塩は融点が低く、常温でも低粘度である。ただし、ナトリウム塩、カリウム塩などを第2塩として併用することにより、更に低融点となる。第1塩として、Py13FSA、Py13TFSAなどを用いる場合、第2塩としては、NaFSA、NaTFSAなどが好ましい。より具体的には、Py13FSAとNaFSAとの混合物や、Py13TFSAとNaTFSAとの混合物を用いることが好ましい。この場合、電解質の融点、粘度およびイオン伝導性のバランスを考慮すると、第1塩と第2塩とのモル比(第1塩/第2塩)は、例えば97/3〜80/20であればよく、95/5〜85/15であることが好ましい。
電解質には、上記の塩以外に、様々な添加剤を含ませることができる。ただし、イオン伝導性や熱安定性を確保する観点から、電池内に充填される電解質の90〜100質量%、更には95〜100質量%が上記の溶融塩により占められていることが好ましい。
[セパレータ]
セパレータの材質は、電池の使用温度を考慮して選択すればよいが、電解質との副反応を抑制する観点からは、ガラス繊維、シリカ含有ポリオレフィン、フッ素樹脂、アルミナ、ポリフェニレンサルファイト(PPS)などを用いることが好ましい。なかでもガラス繊維の不織布は、安価であり、耐熱性も高い点で好ましい。また、シリカ含有ポリオレフィンやアルミナは、耐熱性に優れる点で好ましい。また、フッ素樹脂やPPSは、耐熱性と耐腐食性の点で好ましい。特にPPSは、溶融塩に含まれるフッ素に対する耐性に優れている。
セパレータの材質は、電池の使用温度を考慮して選択すればよいが、電解質との副反応を抑制する観点からは、ガラス繊維、シリカ含有ポリオレフィン、フッ素樹脂、アルミナ、ポリフェニレンサルファイト(PPS)などを用いることが好ましい。なかでもガラス繊維の不織布は、安価であり、耐熱性も高い点で好ましい。また、シリカ含有ポリオレフィンやアルミナは、耐熱性に優れる点で好ましい。また、フッ素樹脂やPPSは、耐熱性と耐腐食性の点で好ましい。特にPPSは、溶融塩に含まれるフッ素に対する耐性に優れている。
ここで、シリカ含有ポリオレフィンとは、熱安定性を向上させるために、シリカ粉末を練り込んだポリオレフィンであり、これをシートに成形して一軸または二軸延伸を行うことにより、多孔質構造を有するセパレータが得られる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレンおよびポリプロピレンより選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が特に耐熱性に優れる点で好ましい。フッ素樹脂やPPSにより形成されたセパレータは、フッ素樹脂繊維やPPS繊維で形成された不織布でもよく、延伸工程を経て製造される多孔質構造を有するフィルムでもよい。なかでも不織布は、空隙率が高く、イオン伝導性を阻害しない点で好ましい。
以下、好ましいセパレータの幾つかの具体的構成について説明する。
ガラス繊維により形成されたセパレータの厚さは、20μm〜500μm、更には20〜50μmであることが好ましい。この範囲の厚さであれば、内部短絡を有効に防止でき、かつ電極群に占めるセパレータの容積占有率を低く抑えることができるため、高い容量密度を得ることができるからである。一方、ガラス繊維により形成されたセパレータは、細孔径が比較的大きく、空隙率も大きい。従って、内部短絡を有効に防止する観点から、セパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重は、比較的小さいことが好ましく、0.1〜1MPaであることが好ましい。
ガラス繊維により形成されたセパレータの厚さは、20μm〜500μm、更には20〜50μmであることが好ましい。この範囲の厚さであれば、内部短絡を有効に防止でき、かつ電極群に占めるセパレータの容積占有率を低く抑えることができるため、高い容量密度を得ることができるからである。一方、ガラス繊維により形成されたセパレータは、細孔径が比較的大きく、空隙率も大きい。従って、内部短絡を有効に防止する観点から、セパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重は、比較的小さいことが好ましく、0.1〜1MPaであることが好ましい。
シリカ含有ポリオレフィンにより形成されたセパレータの厚さは、10μm〜500μm、更には20〜50μmであることが好ましい。このようなセパレータは、ガラス繊維により形成されたセパレータに比べ、細孔径が小さく、空隙率も小さいため、比較的薄いことが望ましいからである。また、シリカ含有ポリオレフィンにより形成されたセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重は、0.1〜14MPa、更には0.1〜3MPaであることが好ましい。このような圧縮荷重を印加することで、内部抵抗を小さくすることができるとともに、内部短絡の発生をより有効に防止することができるからである。
PTFEにより形成されたセパレータの厚さは、10μm〜500μm、更には20〜50μmであることが好ましい。PTFEにより形成されたセパレータは、細孔径が小さく、空隙率も小さいため、比較的薄いことが望ましいからである。PTFEにより形成されたセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重は、0.1〜14MPa、更には0.1〜5MPaであることが好ましい。PTFEは、耐熱性が高く、機械的強度にも優れるため、比較的高い圧縮荷重を印加しても、内部短絡の発生を有効に防止することができるからである。
セパレータの空隙率は、水銀ポロシメータを用いて測定される細孔径分布から導くことができる。空隙率は、空隙を含む試料の体積と全細孔容積とから算出することができる。空隙率は、例えば50〜90%の範囲内であればよい。
[電極群]
溶融塩電池は、上記の正極と負極を含む電極群および電解質を、電池ケースに収容した状態で用いられる。電極群は、正極と負極とを、これらの間にセパレータを介在させて積層または捲回することにより形成される。このとき、金属製の電池ケースを用いるとともに、正極および負極の一方を電池ケースと導通させることにより、電池ケースの一部を第1外部端子として利用することができる。一方、正極および負極の他方は、電池ケースと絶縁された状態で電池ケース外に導出された第2外部端子と、リード片などを用いて接続される。
溶融塩電池は、上記の正極と負極を含む電極群および電解質を、電池ケースに収容した状態で用いられる。電極群は、正極と負極とを、これらの間にセパレータを介在させて積層または捲回することにより形成される。このとき、金属製の電池ケースを用いるとともに、正極および負極の一方を電池ケースと導通させることにより、電池ケースの一部を第1外部端子として利用することができる。一方、正極および負極の他方は、電池ケースと絶縁された状態で電池ケース外に導出された第2外部端子と、リード片などを用いて接続される。
次に、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る溶融塩電池の構造について説明する。ただし、本発明の溶融塩電池の構造は、下記構造に限定されるものではない。
図5は、電池ケースの一部を切り欠いた溶融塩電池の斜視図であり、図6は、図5におけるVI−VI線断面を概略的に示す縦断面図である。
溶融塩電池100は、積層型の電極群11、電解質(図示せず)およびこれらを収容する角型のアルミニウム製の電池ケース10を具備する。電池ケース10は、上部が開口した有底の容器本体12と、上部開口を塞ぐ蓋部13とで構成されている。溶融塩電池100を組み立てる際には、まず、電極群11が構成され、電池ケース10の容器本体12に挿入される。その後、容器本体12に溶融状態の電解質を注液し、電極群11を構成するセパレータ1、正極2および負極3の空隙に電解質を含浸させる工程が行われる。あるいは、加熱された溶融状態の電解質(イオン性液体)に電極群を含浸し、その後、電解質を含んだ状態の電極群を容器本体12に収容してもよい。
溶融塩電池100は、積層型の電極群11、電解質(図示せず)およびこれらを収容する角型のアルミニウム製の電池ケース10を具備する。電池ケース10は、上部が開口した有底の容器本体12と、上部開口を塞ぐ蓋部13とで構成されている。溶融塩電池100を組み立てる際には、まず、電極群11が構成され、電池ケース10の容器本体12に挿入される。その後、容器本体12に溶融状態の電解質を注液し、電極群11を構成するセパレータ1、正極2および負極3の空隙に電解質を含浸させる工程が行われる。あるいは、加熱された溶融状態の電解質(イオン性液体)に電極群を含浸し、その後、電解質を含んだ状態の電極群を容器本体12に収容してもよい。
蓋部13の一方側寄りには、電池ケース10と導通した状態で蓋部13を貫通する外部正極端子14が設けられ、蓋部13の他方側寄りの位置には、電池ケース10と絶縁された状態で蓋部13を貫通する外部負極端子15が設けられている。蓋部13の中央には、電子ケース10の内圧が上昇したときに内部で発生したガスを放出するための安全弁16が設けられている。
積層型の電極群11は、いずれも矩形のシート状である、複数の正極2と複数の負極3およびこれらの間に介在する複数のセパレータ1により構成されている。図6では、セパレータ1は、正極2を包囲するように袋状に形成されているが、セパレータの形態は特に限定されない。複数の正極2と複数の負極3は、電極群11内で積層方向に交互に配置される。
各正極2の一端部には、正極リード片2aを形成してもよい。複数の正極2の正極リード片2aを束ねるとともに、電池ケース10の蓋部13に設けられた外部正極端子14に接続することにより、複数の正極2が並列に接続される。同様に、各負極3の一端部には、負極リード片3aを形成してもよい。複数の負極3の負極リード片3aを束ねるとともに、電池ケース10の蓋部13に設けられた外部負極端子15に接続することにより、複数の負極3が並列に接続される。正極リード片2aの束と負極リード片3aの束は、互いの接触を避けるように、電極群11の一端面の左右に、間隔を空けて配置することが望ましい。
外部正極端子14および外部負極端子15は、いずれも柱状であり、少なくとも外部に露出する部分が螺子溝を有する。各端子の螺子溝にはナット7が嵌められ、ナット7を回転することにより蓋部13に対してナット7が固定される。各端子の電池ケース内部に収容される部分には、鍔部8が設けられており、ナット7の回転により、鍔部8が、蓋部13の内面に、ワッシャ9を介して固定される。
次に、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。
《実施例1》
(正極の作製)
平均粒子径10μmのNaCrO2(正極活物質)85質量部、アセチレンブラック(導電剤)10質量部およびポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量部を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて、正極ペーストを調製した。得られた正極ペーストを、厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、十分に乾燥させ、圧延して、両面に厚さ80μmの正極合剤層を有する総厚180μmの正極を作製した。
(正極の作製)
平均粒子径10μmのNaCrO2(正極活物質)85質量部、アセチレンブラック(導電剤)10質量部およびポリフッ化ビニリデン(結着剤)5質量部を、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて、正極ペーストを調製した。得られた正極ペーストを、厚さ20μmのアルミニウム箔の両面に塗布し、十分に乾燥させ、圧延して、両面に厚さ80μmの正極合剤層を有する総厚180μmの正極を作製した。
正極をサイズ100×100mmの矩形に裁断し、10枚の正極を準備した。ただし、正極の一辺の一方側端部には、集電用のリード片を形成した。10枚中の1枚の正極は、片面のみに正極合剤層を有する電極とした。
(負極の作製)
厚さ10μmのアルミニウム箔(第1金属)の両面に、亜鉛めっきを施し、厚さ100nmの亜鉛層(第2金属)を形成し、総厚10.2μmの負極を作製した。
厚さ10μmのアルミニウム箔(第1金属)の両面に、亜鉛めっきを施し、厚さ100nmの亜鉛層(第2金属)を形成し、総厚10.2μmの負極を作製した。
負極をサイズ105×105mmの矩形に裁断し、10枚の負極を準備した。ただし、負極の一辺の一方側端部には、集電用のリード片を形成した。10枚中の1枚の負極は、片面のみに負極活物質層を有する電極とした。
(セパレータ)
厚さ50μmのシリカ含有ポリオレフィン製のセパレータを準備した。平均細孔径は0.1μmであり、空隙率は70%である。セパレータは、サイズ110×110mmに裁断し、21枚のセパレータを準備した。
厚さ50μmのシリカ含有ポリオレフィン製のセパレータを準備した。平均細孔径は0.1μmであり、空隙率は70%である。セパレータは、サイズ110×110mmに裁断し、21枚のセパレータを準備した。
(電解質)
ナトリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド(NaFSA)とメチルプロピルピロリジニウムビス(フルオロスルフォニル)アミド(Py13FSA)とのモル比1:9の混合物からなる溶融塩を調製した。溶融塩の融点は−25℃である。
ナトリウムビス(フルオロスルフォニル)アミド(NaFSA)とメチルプロピルピロリジニウムビス(フルオロスルフォニル)アミド(Py13FSA)とのモル比1:9の混合物からなる溶融塩を調製した。溶融塩の融点は−25℃である。
(溶融塩電池の組み立て)
まず、正極、負極およびセパレータを、0.3Paの減圧下で、90℃以上で加熱して、乾燥させた。乾燥は、正極および負極の水分量が、それぞれ90ppmおよび45ppmになり、セパレータの水分量が45ppmになるまで行った。
まず、正極、負極およびセパレータを、0.3Paの減圧下で、90℃以上で加熱して、乾燥させた。乾燥は、正極および負極の水分量が、それぞれ90ppmおよび45ppmになり、セパレータの水分量が45ppmになるまで行った。
一方、溶融塩には、露点温度−50℃以下の雰囲気中で、固体状のナトリウムを、溶融塩100質量部あたり10質量部浸漬し、90℃で攪拌した。その結果、溶融塩の水分量は20ppmに低減した。
その後、正極と負極との間に、セパレータを介在させて、正極リード片同士および負極リード片同士が重なり、かつ正極リード片の束と負極リード片の束とが左右対象な位置に配置されるように積層し、電極群を作製した。電極群の一方および他方の端部には、片面のみに活物質層(合剤層)を有する電極を、その活物質層が他方の極性の電極と対向するように配置した。その後、電極群の両端部の外側にもセパレータを配置し、溶融塩とともに、アルミニウム製の電池ケースに収容し、図5、6に示すような構造の公称容量1.8Ahの溶融塩電池を完成させた。
(水分量の測定)
上記各要素の水分量は、電池を組み立てる直前に、個別に測定した。ここでは、水分量測定装置(京都電子工業(株)製のMKC−610)を用いてカールフィッシャー法(電量滴定法)により水分量を測定した。各測定試料の重量は3gとした。
上記各要素の水分量は、電池を組み立てる直前に、個別に測定した。ここでは、水分量測定装置(京都電子工業(株)製のMKC−610)を用いてカールフィッシャー法(電量滴定法)により水分量を測定した。各測定試料の重量は3gとした。
[評価(充放電サイクル試験)]
溶融塩電池は、複数個作製しておき、充放電サイクル試験の直前に、1つの電池を分解して、溶融塩を取り出し、溶融塩の水分量We1を測定した。その結果、溶融塩に含まれる水分量We1は50ppmであった。次に、別の溶融塩電池を恒温室内で90℃に維持し、時間率0.2Cレートの電流値で2.5〜3.5Vの範囲で定電流充放電を繰り返した。図7に、1サイクル目の充放電曲線を示す。
溶融塩電池は、複数個作製しておき、充放電サイクル試験の直前に、1つの電池を分解して、溶融塩を取り出し、溶融塩の水分量We1を測定した。その結果、溶融塩に含まれる水分量We1は50ppmであった。次に、別の溶融塩電池を恒温室内で90℃に維持し、時間率0.2Cレートの電流値で2.5〜3.5Vの範囲で定電流充放電を繰り返した。図7に、1サイクル目の充放電曲線を示す。
なお、本実施例に係る溶融塩電池では、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られた。また、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は118mAh/gであった。
《実施例2》
正極、負極および溶融塩の水分量を、それぞれ200ppm、350ppm、50ppmに調整し、かつセパレータの水分量を350ppmに調整したこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られることが示された。なお、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は105mAh/gであった。また、充放電サイクル試験の直前に、1つの電池を分解して、溶融塩を取り出し、溶融塩の水分量を測定したところ、水分量は200ppmであった。
正極、負極および溶融塩の水分量を、それぞれ200ppm、350ppm、50ppmに調整し、かつセパレータの水分量を350ppmに調整したこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られることが示された。なお、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は105mAh/gであった。また、充放電サイクル試験の直前に、1つの電池を分解して、溶融塩を取り出し、溶融塩の水分量を測定したところ、水分量は200ppmであった。
(比較例1)
正極、負極および溶融塩の水分量を、いずれも100ppmに調整し、かつセパレータの水分量を1000ppmに調整したこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。図8に、1サイクル目の充放電曲線を示す。また、充放電サイクル試験の直前に、1つの電池を分解して、溶融塩を取り出し、溶融塩の水分量を測定したところ、水分量は400ppmであった。
正極、負極および溶融塩の水分量を、いずれも100ppmに調整し、かつセパレータの水分量を1000ppmに調整したこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。図8に、1サイクル目の充放電曲線を示す。また、充放電サイクル試験の直前に、1つの電池を分解して、溶融塩を取り出し、溶融塩の水分量を測定したところ、水分量は400ppmであった。
図8より、本比較例に係る溶融塩電池では、1サイクル目には内部短絡が発生しており、充放電することができなくなっていることが理解できる。この電池を分解し、正極と負極との間のセパレータの状態を確認したところ、複数個所でセパレータを貫くように、ナトリウムのデンドライトが成長していることが判明した。
(比較例2)
正極、負極および溶融塩の水分量を、いずれも500ppmに調整し、かつセパレータの水分量を350ppmに調整したこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、1サイクル目には、内部短絡による電圧降下が確認された。また、充放電サイクル試験の直前に、1つの電池を分解して、溶融塩を取り出し、溶融塩の水分量を測定したところ、水分量は420ppmであった。
正極、負極および溶融塩の水分量を、いずれも500ppmに調整し、かつセパレータの水分量を350ppmに調整したこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、1サイクル目には、内部短絡による電圧降下が確認された。また、充放電サイクル試験の直前に、1つの電池を分解して、溶融塩を取り出し、溶融塩の水分量を測定したところ、水分量は420ppmであった。
(比較例3)
正極、負極および電解質の水分量を、それぞれ200ppm、350ppm、100ppmに調整し、かつセパレータの水分量を500ppmに調整したこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、1サイクル目には、内部短絡による電圧降下が確認された。また、充放電サイクル試験の直前に、1つの電池を分解して、溶融塩を取り出し、溶融塩の水分量を測定したところ、水分量は400ppmであった。
正極、負極および電解質の水分量を、それぞれ200ppm、350ppm、100ppmに調整し、かつセパレータの水分量を500ppmに調整したこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、1サイクル目には、内部短絡による電圧降下が確認された。また、充放電サイクル試験の直前に、1つの電池を分解して、溶融塩を取り出し、溶融塩の水分量を測定したところ、水分量は400ppmであった。
(比較例4)
正極、負極および電解質の水分量を、それぞれ300ppm、400ppm、200ppmに調整し、かつセパレータの水分量を400ppmに調整したこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、1サイクル目には、内部短絡による電圧降下が確認された。また、充放電サイクル試験の直前に、1つの電池を分解して、溶融塩を取り出し、溶融塩の水分量を測定したところ、水分量は320ppmであった。
正極、負極および電解質の水分量を、それぞれ300ppm、400ppm、200ppmに調整し、かつセパレータの水分量を400ppmに調整したこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、1サイクル目には、内部短絡による電圧降下が確認された。また、充放電サイクル試験の直前に、1つの電池を分解して、溶融塩を取り出し、溶融塩の水分量を測定したところ、水分量は320ppmであった。
《実施例3》
セパレータとして、厚さ80μmのガラス繊維製のセパレータを準備した。平均細孔径は2〜3μmであり、空隙率は70%である。セパレータは、サイズ110×110mmに裁断し、21枚のセパレータを準備した。こうして得られたセパレータを用い、電池内でセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重を0.3MPaに調整したこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られることが示された。なお、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は110mAh/gであった。
セパレータとして、厚さ80μmのガラス繊維製のセパレータを準備した。平均細孔径は2〜3μmであり、空隙率は70%である。セパレータは、サイズ110×110mmに裁断し、21枚のセパレータを準備した。こうして得られたセパレータを用い、電池内でセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重を0.3MPaに調整したこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られることが示された。なお、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は110mAh/gであった。
《実施例4》
電池内でセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重を0.5MPaに調整したこと以外、実施例3と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られることが示された。なお、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は115mAh/gであった。
電池内でセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重を0.5MPaに調整したこと以外、実施例3と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られることが示された。なお、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は115mAh/gであった。
《実施例5》
電池内でセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重を1MPaに調整したこと以外、実施例3と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られることが示された。なお、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は114mAh/gであった。
電池内でセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重を1MPaに調整したこと以外、実施例3と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られることが示された。なお、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は114mAh/gであった。
《実施例6》
セパレータとして、厚さ200μmのガラス繊維製のセパレータを準備した。平均細孔径は5〜6μmであり、空隙率は95%である。セパレータは、サイズ110×110mmに裁断し、21枚のセパレータを準備した。こうして得られたセパレータを用いたこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。ただし、電池内でセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重は0.3MPaに調整した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られることが示された。なお、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は109mAh/gであった。
セパレータとして、厚さ200μmのガラス繊維製のセパレータを準備した。平均細孔径は5〜6μmであり、空隙率は95%である。セパレータは、サイズ110×110mmに裁断し、21枚のセパレータを準備した。こうして得られたセパレータを用いたこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。ただし、電池内でセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重は0.3MPaに調整した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られることが示された。なお、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は109mAh/gであった。
《実施例7》
電池内でセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重を0.5MPaに調整したこと以外、実施例6と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られることが示された。なお、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は116mAh/gであった。
電池内でセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重を0.5MPaに調整したこと以外、実施例6と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られることが示された。なお、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は116mAh/gであった。
《実施例8》
電池内でセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重を1MPaに調整したこと以外、実施例6と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られることが示された。なお、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は118mAh/gであった。
電池内でセパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重を1MPaに調整したこと以外、実施例6と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、良好な充放電特性が得られることが示された。なお、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は118mAh/gであった。
実施例3〜8おけるガラス繊維製セパレータの厚さ、圧縮荷重および放電容量密度を表1にまとめて示す。表1の結果は、ガラス繊維製セパレータの厚さ方向に印加される圧縮荷重が0.3〜1.0MPaの範囲では、良好な放電特性が得られること、そして圧縮荷重は0.5〜1.0MPaの範囲が特に望ましいことを示している。また、好ましい圧縮荷重の範囲はセパレータの厚さの影響を大きく受けないことが理解できる。
《実施例9》
正極、負極、セパレータおよび溶融塩の水分量を、いずれも18ppm未満に調整したこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、実施例1よりも更に良好な充放電特性が得られることが示された。また、充放電サイクル試験の直前に、1つの電池を分解して、溶融塩を取り出し、溶融塩の水分量を測定したところ、水分量は18ppmであった。また、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は119mAh/gであった。
正極、負極、セパレータおよび溶融塩の水分量を、いずれも18ppm未満に調整したこと以外、実施例1と同様に、溶融塩電池を組み立て、同様に評価した。その結果、50サイクルを経た後でも、内部短絡が見られず、実施例1よりも更に良好な充放電特性が得られることが示された。また、充放電サイクル試験の直前に、1つの電池を分解して、溶融塩を取り出し、溶融塩の水分量を測定したところ、水分量は18ppmであった。また、正極活物質1gあたりの50サイクル目の放電容量密度は119mAh/gであった。
本発明の溶融塩電池によれば、セパレータを貫通するようなデンドライトの成長が抑制されるため、負極材料の種類に関わらず、内部短絡が抑制され、優れたサイクル特性を達成することができる。本発明の溶融塩電池は、例えば、家庭用または工業用の大型電力貯蔵装置や、電気自動車やハイブリッド自動車の電源として有用である。
100:溶融塩電池、1:セパレータ、2:正極、2a:正極リード片、3:負極、3a:負極リード片、7:ナット、8:鍔部、9:ワッシャ、10:電池ケース、11:電極群、12:容器本体、13:蓋部、14:外部正極端子、15:外部負極端子、16:安全弁
蓋部13の一方側寄りには、電池ケース10と絶縁した状態で蓋部13を貫通する外部正極端子14が設けられ、蓋部13の他方側寄りの位置には、電池ケース10と導通した状態で蓋部13を貫通する外部負極端子15が設けられている。蓋部13の中央には、電池ケース10の内圧が上昇したときに内部で発生したガスを放出するための安全弁16が設けられている。
各正極2の一端部には、正極リード片2cを形成してもよい。複数の正極2の正極リード片2cを束ねるとともに、電池ケース10の蓋部13に設けられた外部正極端子14に接続することにより、複数の正極2が並列に接続される。同様に、各負極3の一端部には、負極リード片3cを形成してもよい。複数の負極3の負極リード片3cを束ねるとともに、電池ケース10の蓋部13に設けられた外部負極端子15に接続することにより、複数の負極3が並列に接続される。正極リード片2cの束と負極リード片3cの束は、互いの接触を避けるように、電極群11の一端面の左右に、間隔を空けて配置することが望ましい。
100:溶融塩電池、1:セパレータ、2:正極、2c:正極リード片、3:負極、3c:負極リード片、7:ナット、8:鍔部、9:ワッシャ、10:電池ケース、11:電極群、12:容器本体、13:蓋部、14:外部正極端子、15:外部負極端子、16:安全弁
Claims (4)
- 正極と、負極と、前記正極と前記負極との間に介在するセパレータと、電解質とを含み、
前記電解質が、溶融塩からなり、
前記溶融塩が、少なくともナトリウムイオンを含み、
前記溶融塩に含まれる水分量We1が、質量比で300ppm以下である、溶融塩電池。 - 前記水分量We1が、質量比で200ppm以下である、請求項1記載の溶融塩電池。
- 前記溶融塩が、N(SO2X1)(SO2X2)・M(ただし、X1およびX2は、それぞれ独立に、フッ素原子または炭素数1〜8のフルオロアルキル基であり、Mはアルカリ金属または窒素含有へテロ環を有する有機カチオンである)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種であり、少なくともMがナトリウムイオンである前記化合物を含む、請求項1または2記載の溶融塩電池。
- 水分量Wpが質量比で300ppm以下である正極を準備する工程と、
水分量Wnが質量比で400ppm以下である負極を準備する工程と、
水分量We2が質量比で50ppm以下であり、少なくともナトリウムイオンを含む溶融塩を電解質として準備する工程と、
水分量Wsが質量比で350ppm以下であるセパレータを準備する工程と、
前記正極と前記負極との間に前記セパレータを介在させて、前記正極と前記負極とを積層して電極群を構成し、前記電極群に前記溶融塩を含浸させる工程と、を具備する溶融塩電池の製造方法。
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