JP2014085628A - 位相差フィルムの製造方法、位相差フィルム、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

位相差フィルムの製造方法、位相差フィルム、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】位相差フィルムを含み、特に視野角による色相の変化が少なく、正面コントラストが改善された液晶表示装置を提供する。
【解決手段】ハロゲン系有機溶剤を90質量%以上含有する有機溶剤に平均アセチル基置換度2.2〜2.5のセルロースアセテートと、芳香族環に少なくとも置換基としてカルボキシ基またはヒドロキシ基を有する水素結合性化合物とを溶解してドープ液を得る第1の工程と、ドープ液を金属ベルト上に流延する第2の工程と、流延されたドープ液を乾燥させて得られる膜状物を金属ベルトから引き剥がす第3の工程と、引き剥がされた膜状物を延伸する第4の工程と、延伸された膜状物を加熱および乾燥させて膜状物中の有機溶剤を揮発させる第5の工程とを有し、膜状物が延伸される直前における膜状物の有機溶剤の平均揮発速度を1.5×10−3〜3.0×10−3g/(sec・cm)の範囲に調整する、位相差フィルムの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、位相差フィルムの製造方法、位相差フィルム、偏光板および液晶表示装置に関する。
現在、テレビやパソコンモニターなどの液晶表示装置には、色相の視野角依存性および正面コントラストの改良のために、特定のリターデーション値を有する位相差フィルムが用いられている。
即ち、液晶表示装置は、液晶セルと、それを挟持する一対の偏光板とを有する。偏光板は、偏光子と、それを挟持する一対の保護フィルムとを有し;一対の保護フィルムのうち、液晶セルと偏光子との間に配置される保護フィルムが、位相差フィルムとして機能する。このように、位相差フィルムは、偏光子と液晶セルとの間に配置され、液晶表示装置の色相の視野角依存性や正面コントラストに大きな影響を及ぼす。
位相差フィルムは、合成高分子やセルロースエステルなどから製造されることが知られている。このうち、セルロースエステルを主成分とするフィルムは、表面をアルカリ水溶液に浸漬処理して鹸化して親水化することにより、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光子に直接貼り合わせできるとの利点を有している。このため、セルロースエステルを主成分とするフィルムは、位相差フィルムとして広く利用されている。
このようなセルロースエステルを主成分とする位相差フィルムの主原料として、セルロースアセテートを用いた場合、フィルムの光学特性がセルロースアセテートのアセチル置換度に依存することが知られている。特に、低置換度のセルロースアセテートはその固有複屈折が高いことから、アセチル置換度を低減することにより、VA用位相差フィルムに適した高い位相差発現性を実現しうると考えられる。
近年では、液晶表示装置の広視野角化や高画質化に伴い、位相差フィルムの更なる位相差の補償性の改善が求められている。また、位相差フィルムは、使用環境が変化しても、安定な光学特性を示すことが求められている。
使用環境の湿度変化に対して、セルロースアセテートフィルムのRth(厚さ方向のリターデーション値)の変動を小さくして、湿度変化による液晶表示装置の視野角特性および色相の変化を防止することが検討されている。例えば、特許文献1には、セルロースアシレートと、一分子中に少なくとも複数の水酸基、アミノ基、チオール基、カルボン酸基から選ばれる官能基を有する化合物とを含み、湿度10%と湿度80%におけるRthの差が一定以下である透明保護フィルムが開示されている。
また、特許文献2には、セルロースエステルと、負の複屈折性を示すモノマー由来のポリマーとを含み、温度60℃、相対湿度90%の耐久条件後のRth変化量が低減されたセルロースエステルフィルムが開示されている。
特開2008−89860号公報 特開2010−24424号公報
しかしながら、特許文献1は、位相差フィルムの使用環境の湿度変化に対するRthの変動を小さくするものであるが、製造直後のRthの経時的な変動を小さくするもことは示されていない。また、特許文献1に用いられるセルロースアセテートは、平均アセチル基置換度が高く、VA用位相差フィルムなどに必要とされる大きな位相差を得ることができなかった。
特許文献2は、耐久条件前後でのRthの変動を小さくするものであるが、製造直後のRthの経時的な変動を小さくすることは示されていない。また、上記ポリマーの添加により、位相差発現性が低下することから、VA用位相差フィルムなどに必要とされる大きな位相差を得ることはできなかった。
また近年では、位相差フィルムのコスト低減の要求が高まっている。コスト低減の有力な手段として、生産速度を増大させる方法がある。しかしながら、製膜速度、延伸速度、乾燥速度等を増大させると、得られるフィルムのリターデーション値(特にRth)の経時的な変動が大きくなる傾向があった。そのような位相差フィルムを含む液晶表示装置は、視野角依存性;特に視野角による色相の変化が大きく、正面コントラストが低くなりやすかった。そのため、生産速度を高くしても、得られる位相差フィルムのリターデーション値の経時的な変動を小さくできること、それにより視野角依存性;特に視野角による色相の変化が少なく、正面コントラストが改善された液晶表示装置を提供することが望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、位相差フィルムを含み、視野角依存性;特に視野角による色相の変化が少なく、正面コントラストが改善された液晶表示装置を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、ハロゲン系有機溶剤を90質量%以上含有する有機溶剤に、平均アセチル基置換度2.2〜2.5のセルロースアセテートと、芳香族環に少なくとも置換基としてカルボキシ基またはヒドロキシ基を有する水素結合性化合物とを溶解してドープ液を得る第1の工程と、前記ドープ液を金属ベルト上に流延する第2の工程と、流延された前記ドープ液を乾燥させて得られる膜状物を、前記金属ベルトから引き剥がす第3の工程と、引き剥がされた前記膜状物を延伸する第4の工程と、延伸された前記膜状物を加熱および乾燥させて、前記膜状物中の有機溶剤を揮発させる第5の工程と、を有する位相差フィルムの製造方法において、前記膜状物が延伸される直前における前記膜状物の有機溶剤の平均揮発速度を、1.5×10−3〜3.0×10−3g/(sec・cm)の範囲に調整して得られた位相差フィルムが、製造直後から23℃55%RH下で24時間静置したときのRthの変化の絶対値が一定以下と少ないことを発見した。そして、該位相差フィルムを用いることで、液晶表示装置の視野角による色相の変化を少なくし、正面コントラストを高められることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
[1] ハロゲン系有機溶剤を90質量%以上含有する有機溶剤に、平均アセチル基置換度2.2〜2.5のセルロースアセテートと、芳香族環に少なくとも置換基としてカルボキシ基またはヒドロキシ基を有する水素結合性化合物とを溶解してドープ液を得る第1の工程と、前記ドープ液を金属ベルト上に流延する第2の工程と、流延された前記ドープ液を乾燥させて得られる膜状物を、前記金属ベルトから引き剥がす第3の工程と、引き剥がされた前記膜状物を延伸する第4の工程と、延伸された前記膜状物を加熱および乾燥させて、前記膜状物中の有機溶剤を揮発させる第5の工程と、を有する位相差フィルムの製造方法において、前記膜状物が延伸される直前における前記膜状物の有機溶剤の平均揮発速度を、1.5×10−3〜3.0×10−3g/(sec・cm)の範囲に調整する、位相差フィルムの製造方法。
[2] 前記第5の工程の終了時から23℃55%RH下で0.5時間経過後に、23℃55%RH下、波長590nmにおいて測定される位相差フィルムの厚さ方向のリターデーションをRth(0.5)とし、前記第5の工程の終了時から23℃55%RH下で24時間経過後に、23℃55%RH下、波長590nmにおいて測定される位相差フィルムの厚さ方向のリターデーションをRth(24)としたとき、下記式を満たす、[1]に記載の位相差フィルムの製造方法。
|Rth(0.5)−Rth(24)|≦2.0nm
[3] [1]または[2]に記載の製造方法で製造された位相差フィルムであって、芳香族環に置換基として少なくともカルボキシ基またはヒドロキシ基を有する水素結合性化合物を、平均アセチル基置換度2.2〜2.5のセルロースアセテートに対して1〜15質量%含有する、位相差フィルム。
[4] 前記水素結合性化合物が、下記一般式(I)または(II)で表される化合物である、[3]に記載の位相差フィルム。
一般式(I)
Figure 2014085628
(前記一般式(I)において、lは、1以上の整数を表し、2以上の場合、2つのカルボキシル基が互いに脱水縮合して環を形成してもよく;mは、0〜4の整数を表し;Rは、アルキル基を表し;nは、0〜4の整数を表し、Rが複数ある場合は、複数のRは互いに同じであっても異なっていてもよく;l+m≧2である)
一般式(II)
Figure 2014085628
(前記一般式(II)において、Rは、それぞれ独立にハロゲン原子または水酸基を表し;nは、0〜4の整数を表す)
[5] 23℃55%RH下における引張弾性率が、3500〜6000MPaの範囲内である、[3]または[4]に記載の位相差フィルム。
[6] 下記式で定義され、23℃55%RH下、波長590nmで測定される厚さ方向のリターデーション値Rthが、70〜400nmの範囲内である、[3]〜[5]のいずれか一項に記載の位相差フィルム。
Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
(式中、nxは、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率を示し;nyは、フィルム面内の前記遅相軸と直交する方向の屈折率を示し;nzは、フィルムの厚さ方向の屈折率を示し;dは、フィルムの厚さを示す)
[7] 前記位相差フィルムの遅相軸方向のフィルム幅は、700〜3000mmである、[3]〜[6]のいずれか一項に記載の位相差フィルム。
[8] [3]〜[6]のいずれか一項に記載の位相差フィルムを有する、偏光板。
[9] [3]〜[6]のいずれか一項に記載の位相差フィルムを有する、液晶表示装置。
本発明によれば、高い生産速度でも、経時的なリターデーション値の変動が小さい位相差フィルムを製造することができる。また、当該位相差フィルムを用いることで、視野角依存性;特に視野角による色相の変化が少なく、正面コントラストが改善された液晶表示装置を提供することができる。
本発明の液晶表示装置の基本的な構成の一例を示す模式図である。
以下、本発明を詳細に説明する。本願明細書において「〜」とは、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
1.位相差フィルム
本発明の位相差フィルムは、平均アセチル基置換度2.2〜2.5のセルロースアセテートと、芳香族環に少なくとも置換基としてカルボキシ基またはヒドロキシ基を有する水素結合性化合物(以下、単に「水素結合性化合物」ともいう)とを含有し、製造直後におけるリターデーション値の変動が少ないことを特徴とする。具体的には、位相差フィルムの製造工程のうち最後の乾燥工程(第5の工程)を終了してから0.5時間後に、23℃55%RH下、波長590nmで測定される厚さ方向のリターデーション値Rth(0.5)と、該乾燥工程を終了してから23℃55%RH下24時間経過後に、23℃55%RH下、波長590nmで測定される厚さ方向のリターデーション値のRth(24)との差の絶対値|Rth(0.5)−Rth(24)|が、一定以下であること(好ましくは2nm以下であること)を特徴とする。
このように、本発明の位相差フィルムは、Rthの経時的な変動が少ない。そのため、本発明の位相差フィルムを含む偏光板の光漏れ量の増大を抑制できる。そのため、本発明の偏光板を含む液晶表示装置は、視野角による色相の変化が少なく、正面コントラストも向上しうる。
このような効果が得られる理由は、必ずしも明確ではないものの、以下のように推察される。即ち、本発明者は、製造直後に得られる位相差フィルムは、セルロースアセテート分子の配向が安定していないため、常温常湿で保存されても、厚さ方向のリターデーション値Rthが変動しやすいことを発見した。本発明では、セルロースアセテート分子の配向を早くから安定化させることで、製造直後の位相差フィルムのリターデーション値Rthの変動を小さくしている。それにより、位相差フィルムの光学特性の経時的な変動を少なくすることができ、それを含む液晶表示装置の視野角による色相の変化を少なくし、かつ正面コントラストを高めうると考えられる。
セルロースアセテート分子の配向状態が安定な位相差フィルムを得る;即ち、位相差フィルムの|Rth(0.5)−Rth(24)|を一定以下にするためには、後述するように、位相差フィルムの製造工程において、平均アセチル基置換度2.2〜2.5のセルロースアセテートと前述の水素結合性化合物とを含有する膜状物の、延伸直前での乾燥速度(溶剤の平均揮発速度)を乾燥条件の乾燥温度または風量により所定の範囲に調整することが好ましく;必要に応じて、最後の乾燥工程(第5の工程)を終了してから24hr経過後の位相差フィルムの23℃55%RH下での引張弾性率が3500〜6000MPaの範囲内となるようなフィルム組成にする(可塑剤の含有量などを調整する)ことが好ましい。
セルロースアセテート
本発明に用いられるセルロースアセテートの原料セルロースとしては、何れの原料セルロースであってもよく、例えば綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などが挙げられる。原料セルロースは、必要に応じて混合して使用されてもよい。
特に、偏光子との貼り合わせ性が良好である点から、原料セルロースは、木材パルプから得られたものであることが好ましい。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離のヒドロキシ基(水酸基)を有している。セルロースアセテートは、これらのヒドロキシ基(水酸基)の一部または全部をアセチル化した重合体(ポリマー)である。アセチル基置換度は、2位、3位および6位に位置するセルロースのヒドロキシ基(水酸基)がアセチル化している割合(100%のアセチル化は置換度3)を意味する。
セルロースアセテートの平均アセチル基置換度は、2.2〜2.5の範囲内にあることが好ましい。セルロースアセテートが、アセチル基置換度の異なる複数のセルロースアセテートを含む場合、各セルロースアセテートのアセチル基置換度とその質量分率との積の和を平均アセチル基置換度という。
平均アセチル基置換度は、セルロースアセテートを、常法により高速液体クロマトグラフィ測定して、置換度分布を示すチャート(置換度ごとのセルロースアセテートに由来するピークが示されたチャート)を得た後;各置換度のセルロースアセテートのピークの全ピークに対する面積比から算出することができる。
セルロースアセテートの重量平均分子量は、一定以上の機械的強度を有するフィルムを得るためには、1.2×10以上2.5×10未満であることが好ましく、1.5×10以上2.0×10未満であることがより好ましい。
セルロースアセテートの分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1.0〜4.5であることが好ましい。
セルロースエステルの重量平均分子量Mwおよび分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定できる。測定条件は、以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製)を3本接続して使用する。
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standardポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1.0×10〜5.0×10までの13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に選択することが好ましい。
セルロースのアセチル化におけるアセチル化剤としては、酸無水物や酸クロライドが用いられる。そのようなアセチル化剤を用いた場合、反応溶媒である有機溶媒としては、有機酸、例えば酢酸、メチレンクロライド等が使用される。
触媒としては、アセチル化剤が酸無水物である場合には、硫酸のようなプロトン性触媒が好ましく用いられ;アセチル化剤が酸クロライド(例えば、CHCOCl)である場合には、塩基性化合物が好ましく用いられる。
最も一般的なセルロ−スの脂肪酸エステルの工業的合成方法は、セルロ−スをアセチル基に対応する脂肪酸(酢酸)またはその酸無水物でアシル化する方法である。本発明に用いるセルロースアセテートは、例えば、特開平10−45804号公報に記載されている方法により合成できる。
(水素結合性化合物)
本発明者らの検討の結果、位相差フィルムにおいて、製造直後から24時間経過後までのリターデーション値の変化を小さくすることが、液晶表示装置の視野角による色相の変化を防止し、正面コントラストを向上する上で重要であることが分かった。
リターデーション値の変動を抑制するためには、セルロースアセテート分子の配向の変動を抑制することが必要であり;そのためには、セルロースアセテートの分子間の水素結合を高くすることが必要であると考えられる。セルロースアセテートの分子間の水素結合を高くするためには、セルロースアセテートのアセチル基置換度を低くし、かつ前述の水素結合性化合物を添加することが有効であることが見出した。それにより、得られる位相差フィルムのリターデーション値の変動を抑制できることを見出した。
水素結合とは、J.N.イスラエルアチビリ著、「分子間力と表面力」(近藤保、大島広行訳、マグロウヒル出版、1991年)に記載されるように、電気的に陰性な原子と共有結合した水素原子とが、電気的に陰性な原子(酸素、窒素、フッ素、塩素)やπ電子系等の孤立電子対と作る非共有結合性の引力的相互作用である。水素結合性化合物とは、前記電気的に陰性な原子と共有結合した水素原子を有する沸点180℃以上の有機化合物である。例えば、O−H(酸素水素結合)、N−H(窒素水素結合)等を含むことで近接した孤立電子対と水素結合を生じて配列できる沸点180℃以上の有機化合物をいう。
本発明に適用される水素結合性化合物は、芳香族環に少なくとも置換基としてカルボキシ基またはヒドロキシ基をどちらか1つ有する水素結合性化合物である。芳香族環の例には、ベンゼン環、ナフタレン環などが含まれる。
そのような水素結合性化合物の例には、フェノール、クレゾール(o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール)、ヒドロキシナフタレンカルボン酸(例えば2−ヒドロキシナフタレン−1−カルボン酸)、一般式(I)で表される化合物、一般式(II)で表される化合物などが含まれる。
一般式(I)
Figure 2014085628
一般式(I)において、Rは、アルキル基を表す。nは、0〜4の整数を表す。Rで表されるアルキル基は、好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、例えばメチル基、エチル基、iso−プロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
一般式(I)のベンゼン環は、前記以外に置換基をさらに有してもよく、好ましくは、
アルケニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばビニル、アリル、2−ブテニル、3−ペンテニルなどが挙げられる);
アルキニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8であり、例えばプロパルギル、3−ペンチニルなどが挙げられる);
アリール基(好ましくは炭素数6〜30、より好ましくは炭素数6〜20、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニル、p−メチルフェニル、ナフチルなどが挙げられる);
置換または未置換のアミノ基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜10、特に好ましくは炭素数0〜6であり、例えばアミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジベンジルアミノなどが挙げられる);
アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜12、特に好ましくは炭素数1〜8であり、例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシなどが挙げられる);
アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルオキシ、2−ナフチルオキシなどが挙げられる);
アシル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばアセチル、ベンゾイル、ホルミル、ピバロイルなどが挙げられる);
アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニルなどが挙げられる);
アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルなどが挙げられる);
アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセトキシ、ベンゾイルオキシなどが挙げられる);
アシルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜10であり、例えばアセチルアミノ、ベンゾイルアミノなどが挙げられる);
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜16、特に好ましくは炭素数2〜12であり、例えばメトキシカルボニルアミノなどが挙げられる);
アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜20、より好ましくは炭素数7〜16、特に好ましくは炭素数7〜12であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノなどが挙げられる);
スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノなどが挙げられる);
スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜20、より好ましくは炭素数0〜16、特に好ましくは炭素数0〜12であり、例えばスルファモイル、メチルスルファモイル、ジメチルスルファモイル、フェニルスルファモイルなどが挙げられる);
カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばカルバモイル、メチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、フェニルカルバモイルなどが挙げられる);
アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメチルチオ、エチルチオなどが挙げられる);
アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜20、より好ましくは炭素数6〜16、特に好ましくは炭素数6〜12であり、例えばフェニルチオなどが挙げられる);
スルホニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメシル、トシルなどが挙げられる);
スルフィニル基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばメタンスルフィニル、ベンゼンスルフィニルなどが挙げられる);
ウレイド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばウレイド、メチルウレイド、フェニルウレイドなどが挙げられる);
リン酸アミド基(好ましくは炭素数1〜20、より好ましくは炭素数1〜16、特に好ましくは炭素数1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる);
メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、
ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜30、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル、ピリジル、キノリル、フリル、ピペリジル、モルホリノ、ベンゾオキサゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリルなどが挙げられる);
シリル基(好ましくは、炭素数3〜40、より好ましくは炭素数3〜30、特に好ましくは、炭素数3〜24であり、例えば、トリメチルシリル、トリフェニルシリルなどが挙げられる)などが挙げられる。なかでも、アリール基、置換または無置換のアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基がより好ましく、アリール基、アルコキシ基が更に好ましい。
一般式(I)において、lは、1以上の整数を表し、好ましくは1〜3の整数を表す。一般式(I)で表される化合物がカルボキシル基を2以上含む場合、2つのカルボキシル基が互いに脱水縮合して環を形成してもよい。mは、0〜4の整数を表し、好ましくは0〜3の整数を表す。ただし、l+m≧2である。
一般式(I)で表される化合物は、好ましくはo−サリチル酸誘導体、あるいはm−サリチル酸誘導体である。
一般式(I)で表される化合物のうち、特に好ましい例を以下に示すが、これらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2014085628
一般式(II)
Figure 2014085628
一般式(II)中、Rは、それぞれ独立にハロゲン原子または水酸基を表す。
ハロゲン原子としては、特に制限はないが、フッ素原子であることが好ましい。すなわち、一般式(II)中、Rは、それぞれ独立にフッ素原子または水酸基を表すことが好ましい。
nは、0〜4の整数を表し、3〜4であることが好ましい。nが4未満の場合、一般式(II)で表される化合物におけるベンゼン環を構成する炭素原子のうち、R、−NH基および−COOH基が結合していない炭素原子には水素原子が結合している。すなわち、nが4未満の場合、一般式(II)で表される化合物におけるベンゼン環はR、−NH基および−COOH基以外の置換基を有さない。
一般式(II)で表される化合物では、−NH基と−COOH基が、いずれもベンゼン環を構成する炭素原子に直接結合している。ここで、−NH基と−COOH基の、ベンゼン環における結合位置については、特に制限はなく、オルト、メタ、パラのいずれの位置関係でもよい。その中でも、オルトまたはパラの位置関係であることが好ましく、パラの位置関係にあることがより好ましい。
また、一般式(II)で表される化合物における−NH基と−COOH基は、さらに置換基を有さない。すなわち、一般式(II)で表される化合物における−NH基と−COOH基は、いずれもアミド結合やエステル結合を形成していない。
一方、一般式(II)で表される化合物における−NH基と−COOH基は、可逆的である限り水溶液などの溶媒中などで電離していてもよく、可逆的である限り金属塩を形成していてもよい。
一般式(II)で表される化合物の具体例としては、以下のものを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2014085628
これらの水素結合性化合物の中でも、一般式(I)または一般式(II)で表される化合物が、セルロースアセテート分子間の水素結合を高める効果が得られやすい点などから、好ましい。
水素結合性化合物の分子量は、130〜2000であることが好ましく、130〜250であることがより好ましく、130〜210であることがさらに好ましい。分子量が上記範囲にある水素結合性化合物を使用することにより、後述するように、位相差フィルムの製造工程における添加剤の揮散を抑制でき、かつセルロースエステルとの相溶性を確保しやすくなり、好ましい。
本発明に用いられる水素結合性化合物の含有量は、位相差フィルム中に0.5〜15質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましく、1〜5質量%であることがさらに好ましく、1〜2質量%であることが特に好ましい。
また、水素結合性化合物の含有量は、セルロースアセテートに対して1〜15質量%であることが好ましく、2〜10質量%であることがより好ましく、2〜5質量%であることがさらに好ましい。水素結合性化合物の含有量が1質量%未満であると、セルロースアセテート分子間の水素結合が十分に高められないことがある。水素結合性化合物の含有量が15質量%超であると、フィルムからブリードアウトしやすいだけでなく、フィルムのTgが低下することがある。
水素結合性化合物の合成方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。また、水素結合性化合物は、商業的に入手したものであってもよく、例えば東京化成工業(株)や和光純薬工業(株)社などから購入することができる。
その他添加剤
本発明の位相差フィルムは、必要に応じて、糖エステル化合物、可塑剤、劣化防止剤、紫外線吸収剤、剥離促進剤、マット剤、滑剤等を適宜含むことができる。
(糖エステル化合物)
糖エステル化合物は、下記式(1)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2014085628
式(1)のR〜Rは、置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、または置換もしくは無置換のアリールカルボニル基を表わす。R〜Rは、互いに同じであっても、異なってもよい。
置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基は、炭素原子数2以上の置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基であることが好ましい。置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基の例には、メチルカルボニル基(アセチル基)が含まれる。アルキル基が有する置換基の例には、フェニル基などのアリール基が含まれる。
式(1)で示される化合物の具体例には、以下のものが含まれる。表1中のRは、式(1)におけるR〜Rを表す。
Figure 2014085628
糖エステル化合物の含有量は、セルロースアセテートに対して1〜40質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
(可塑剤)
可塑剤の好ましい例には、下記式(2)で表されるポリエステル化合物などが含まれる。
一般式(2)
Figure 2014085628
式(2)中、Aは、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸から誘導される2価の基または炭素原子数6〜12のアリールジカルボン酸から誘導される2価の基を表す。Bは、水素原子またはカルボン酸から誘導される1価の基を表す。Gは、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基、炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基、または炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基を表す。nは、1以上の整数を表す。
Aの、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、1,2-エタンジカルボン酸、1,3-プロパンジカルボン酸、1,4-ブタンジカルボン酸などから誘導される2価の基が含まれる。Aにおける炭素原子数6〜12のアリールジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、1,2-ベンゼンジカルボン酸(フタル酸)、1,3-ベンゼンジカルボン酸、1,4-ベンゼンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸などから誘導される2価の基が含まれる。
Bの、カルボン酸から誘導される1価の基の例には、安息香酸やトルイル酸などの芳香族カルボン酸、酢酸などの脂肪族カルボン酸などから誘導される1価の基が含まれる。
Gの、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールペンタン)、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、および1,12-オクタデカンジオール等から誘導される2価の基が含まれる。
Gの、炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基の例には、1,2-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3-ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)などから誘導される2価の基が含まれる。Gにおける炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、ジエチレングルコール、ジプロピレングリコールなどから誘導される2価の基が含まれる。
一般式(2)で表されるポリエステル化合物の例には、以下のものが含まれる。
Figure 2014085628
Figure 2014085628
Figure 2014085628
Figure 2014085628
(23):コハク酸/テレフタル酸/エチレングリコール(1/1/2モル比)からなる縮合物(重量平均分子量:606)の両末端が安息香酸で封止された化合物
(24):コハク酸/テレフタル酸/エチレングリコール(1/1/2モル比)からなる縮合物(重量平均分子量:762)の両末端が封止されていない(両末端がエチレングリコールのOH基である)化合物
可塑剤の含有量は、セルロースアセテートに対して1〜40質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
(劣化防止剤)
本発明の位相差フィルムは、公知の劣化(酸化)防止剤をさらに含有してもよい。劣化防止剤は、例えば、2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4、4'−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1、1'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2、2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、2、5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]などのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を用いることができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3、5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2、4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2、6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイト、ビス(2、4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤を用いることができる。劣化防止剤の含有量は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.05〜5.0質量部とすることが好ましい。
(紫外線吸収剤)
本発明の位相差フィルムは、偏光板または液晶表示装置等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤をさらに含有していてもよい。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。
本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例には、ヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。
ヒンダードフェノール系化合物の例としては、2、6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N、N'−ヘキサメチレンビス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1、3、5−トリメチル−2、4、6−トリス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。
ベンゾトリアゾール系化合物の例としては、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2、2−メチレンビス(4−(1、1、3、3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、(2、4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3、5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1、3、5−トリアジン、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N、N'−ヘキサメチレンビス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1、3、5−トリメチル−2、4、6−トリス(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2(2'−ヒドロキシ−3'、5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、(2(2'−ヒドロキシ−3'、5'−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2、6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3、5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などが挙げられる。
これらの紫外線防止剤の含有量は、位相差フィルム中に質量割合で1ppm〜1.0%であることが好ましく、10〜1000ppmであることがさらに好ましい。
(マット剤)
本発明の位相差フィルムは、フィルム面の摩擦係数低減による耐擦傷性の向上、幅広幅フィルムを長尺で巻いたときに発生するキシミの防止、フィルム折れの防止の観点から、微粒子を含有することが好ましい。微粒子は、マット剤、ブロッキング防止剤あるいはキシミ防止剤と称されて、従来から利用されている。微粒子は、前述の機能を呈する素材であれば特に限定されず、無機化合物のマット剤であっても、有機化合物のマット剤であってもよい。
無機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、ケイ素を含む無機化合物(例えば、二酸化ケイ素、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムなど)、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロングチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン及びリン酸カルシウム等が好ましく、更に好ましくはケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであるが、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。
二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R974、R812、200、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)等の商品名で市販されているものが使用できる。
有機化合物のマット剤の好ましい具体例としては、例えば、シリコーン樹脂、弗素樹脂及びアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、中でも、シリコーン樹脂が好ましく用いられる。シリコーン樹脂の中でも、特に三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えば、トスパール103、トスパール105、トスパール108、トスパール120、トスパール145、トスパール3120及びトスパール240(以上東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品が使用できる。
本発明の位相差フィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常、10〜500μmの範囲であることが好ましく、20〜200μmの範囲であることがより好ましく、30〜80μmの範囲であることが最も好ましい。位相差フィルムの厚さの調整は、所望の厚さになるように、後述する位相差フィルムの製造工程において、ドープ液中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体の搬送速度等を調節すればよい。
(厚さ方向のリターデーション値Rth)
本発明の位相差フィルムの、23℃55%RH下、波長590nmで測定される厚さ方向のリターデーション値Rthは、適用される液晶セルの種類に応じて設定されうるが、例えば70〜400nmであり、好ましくは100〜300nmとしうる。Rthが上記範囲にある位相差フィルムは、例えばVA方式の液晶セルの位相差フィルムとして用いることができる。
位相差フィルムのRth(λ)は、フィルム面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して片側50度までの範囲で、10度毎に、その傾斜した方向から波長λ(nm)の光を入射させたときのリターデーション値を、全部で6点測定する。位相差フィルムが遅相軸を有しない場合には、フィルム面内の任意の方向を回転軸とする。そして、測定されたリターデーション値、平均屈折率の仮定値、および入力された位相差フィルムの膜厚値を基に、KOBRA 21ADHが、位相差フィルムのRth(λ)を算出する。本願明細書において、Rthは、特に記載がないときは、波長λは590nmとし、23℃55%RH下で測定した値である。
位相差フィルムの厚さ方向のリターデーション値は、下記式により求められる。
Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
(式中、Rthは、波長590nmにおいて測定される位相差フィルムの厚さ方向のリターデーション値であり;
nxは、該フィルム面内の遅相軸方向の屈折率であり;
nyは、該フィルム面内の進相軸方向の屈折率であり;
nzは、該フィルムの厚さ方向の屈折率であり;
dは、該フィルムの厚さである)
(引張弾性率)
本発明の位相差フィルムの引張弾性率は、3000MPa以上であることが好ましく、3000〜7000MPaであることがより好ましく、3500〜6000MPaであることが特に好ましい。引張弾性率が3000MPa未満であると、位相差フィルムの柔軟性が高すぎて、セルロースアセテート分子の配向が乱れやすいことがある。それにより、位相差フィルムの経時的なリターデーション値の変動が大きくなりやすい。位相差フィルムの引張弾性率は、前述した糖エステル化合物やポリエステル化合物などの可塑剤の含有量によって調整されうる。
位相差フィルムの引張弾性率は、25℃60%RH下で24時間調湿した後、JIS K7127に記載の方法に従って測定されうる。引張り試験機は、(株)オリエンテック製テンシロンを用いることができる。
2.位相差フィルムの製造方法
本発明の位相差フィルムは、溶液流延法で製造されうる。溶液流延法による位相差フィルムの製造は、1)セルロースアセテートと、水素結合性化合物と、必要に応じて他の添加剤とを溶剤に溶解させてドープ液を調製する第1の工程、2)該ドープ液を無端状の金属支持体上に流延する第2の工程、3)流延されたドープを乾燥させて得られる膜状物を、金属支持体から剥離する第3の工程、4)膜状物を延伸または幅保持する第4の工程、5)延伸された膜状物を加熱および乾燥して膜状物中の有機溶剤を揮発させる第5の工程、を経て行われることが好ましい。
(第1の工程)
ドープ液を調製する工程について述べる。ドープ液中のセルロースアセテートの濃度は、濃い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷が低減できて好ましい。一方で、セルロースアセテートの濃度が濃過ぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜35質量%が好ましく、更に好ましくは、15〜25質量%である。
ドープ液に用いられる溶剤は、良溶剤であるハロゲン系有機溶剤を90質量%以上含有する。溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、ハロゲン系有機溶剤とセルロースアセテートの貧溶剤を混合して使用することが、生産効率の点で好ましい。
良溶剤とは、使用するセルロースアセテートを単独で溶解するものと定義され;貧溶剤とは、単独で膨潤するかまたは溶解しないものと定義されうる。そのため、セルロースアセテートの平均酢化度(アセチル基置換度)によって、良溶剤や貧溶剤が異なる。
本発明に用いられる良溶剤は、特に限定されないが、メチレンクロライド等の有機ハロゲン系溶剤であることが好ましい。ハロゲン系有機溶剤としては、炭素原子数1〜6のハロゲン化炭化水素から選ばれる溶媒が、セルロースアセテートを良く溶解することから好ましい。特に好ましいハロゲン系有機溶剤としては、ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエタンなどが挙げられる。
本発明に用いられる貧溶剤は、特に限定されないが、炭素数1〜10のアルコールまたは炭化水素から選ばれることが好ましく、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールである。アルコールは、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールのヒドロキシ基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。
アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、tert−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。
炭化水素は、芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。
また、ドープ液中には、水が0.01〜2質量%含有されていることが好ましい。
また、セルロースアセテートの溶解に用いられる溶媒は、フィルム製膜工程で乾燥によりフィルムから除去された溶媒を回収し、これを再利用して用いられる。回収溶剤中に、セルロースアセテートに添加されている添加剤、例えば可塑剤、紫外線吸収剤、ポリマー、モノマー成分などが微量含有されていることもあるが、これらが含まれていても好ましく再利用することができるし、必要であれば精製して再利用することもできる。
セルロースアセテートを溶解させたドープ液には、用途に応じて、前述した種々の添加剤(例えば可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、微粒子、光学特性調整剤など)を加えることができる。また、その添加する時期は、ドープ液を調製する第1の工程の何れであっても良く、例えばドープ液を調製する第1の工程の最後に行ってもよい。
ドープ液を調製する時の、セルロースアセテートの溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。加熱と加圧を組み合わせると、常圧における沸点以上に加熱できる。溶剤の常圧での沸点以上でかつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を防止するため好ましい。
また、セルロースアセテートを貧溶剤と混合して湿潤あるいは膨潤させた後、更に良溶剤を添加して溶解する方法も好ましく用いられる。
加圧は窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱によって溶剤の蒸気圧を上昇させる方法によって行ってもよい。加熱は外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易で好ましい。
溶剤を添加しての加熱温度は、高い方がセルロースアセテートの溶解性の観点から好ましいが、加熱温度が高過ぎると必要とされる圧力が大きくなり生産性が悪くなる。好ましい加熱温度は、45〜120℃であり、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃が更に好ましい。また、圧力は設定温度で溶剤が沸騰しないように調整される。
もしくは冷却溶解法も好ましく用いられ、これによって酢酸メチルなどの溶媒にセルロースアセテートを溶解させることができる。
次に、このセルロースアセテート溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過することが好ましい。濾過により、原料のセルロースアセテートに含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に位相差フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点数が200個/cm以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm以下であり、更に好ましくは50個/cm以下であり、更に好ましくは0〜10個/cm以下である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さ過ぎると濾過材の目詰まりが発生し易いという問題がある。このため、絶対濾過精度0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの濾材が更に好ましい。
濾材の材質は、特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。
ドープ液の濾過は、通常の方法で行うことができるが、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という)の上昇が小さく、好ましい。
好ましい温度は45〜120℃であり、45〜70℃がより好ましく、45〜55℃であることが更に好ましい。濾圧は小さい方が好ましい。濾圧は1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
(第2の工程)
ここで、ドープの流延について説明する。流延(キャスト)工程における金属支持体は、表面を鏡面仕上げしたものが好ましい。金属支持体としては、ステンレススティールベルトもしくは鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムが好ましく用いられる。
キャストの幅は、1〜4mとすることができる。流延工程の金属支持体の表面温度は、−50℃〜溶剤の沸点未満の温度で、温度が高い方が流延されたドープの乾燥速度が速くできるので好ましいが、余り高過ぎると流延されたドープが発泡したり、平面性が劣化したりする場合がある。好ましい支持体温度は、0〜55℃であり、25〜50℃が更に好ましい。あるいは、冷却することによって流延されたドープをゲル化させて残留溶媒を多く含んだ状態でドラムから剥離することも好ましい方法である。
金属支持体の温度を制御する方法は、特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法がある。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。温風を用いる場合は、目的の温度よりも高い温度の風を使う場合がある。
(第3の工程)
金属支持体上でドープを乾燥させた後、得られる膜状物を剥離する工程について説明する。
上記のように金属支持体の温度をコントロールし、温度調節した乾燥風を、流延されたドープに当てることにより、該ドープを乾燥させて、膜状物を得る。
金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり金属支持体上のドープ表面に熱風を当てる方法、ドラム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側の裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。ドープが流延される前の金属支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度であってもよい。しかしながら、乾燥を促進するため、また金属支持体上でのドープの流動性を失わせるためには、金属支持体の裏面に接触させる液体の温度は、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。
前述のようにして得られた膜状物を、金属支持体から引き剥がす。
位相差フィルムが良好な平面性を示すためには、金属支持体から剥離する際の膜状物中の残留溶媒量は10〜150質量%であることが好ましく、更に好ましくは20〜40質量%または60〜130質量%であり、特に好ましくは、20〜30質量%または70〜120質量%である。
本発明においては、残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
上記式において、Mは、膜状物またはフィルムを製造中または製造後の任意の時点で採取した試料の質量であり、Nは、Mを115℃で1時間の加熱後の質量である。
膜状物の両端をクリップ等で把持するテンター方式で、幅方向(横方向)に延伸を行いながら、剥離張力300N/m以下で剥離することが好ましい。
そして、第3の工程または後述する第4の工程の少なくとも一方において、金属支持体から剥離して得られた膜状物中の溶剤を、延伸に好適な状態にまでさらに乾燥させる。この乾燥では、膜状物は、溶媒の蒸発によって幅方向に収縮しようとする。高い温度で乾燥するほど収縮が大きくなる。この収縮は、可能な限り抑制しながら乾燥することが、得られる位相差フィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているような乾燥全工程或いは一部の工程を幅方向にクリップで膜状物の幅方向両端を保持しつつ乾燥させる方法(テンター方式)が好ましい。
(第4の工程)
目標とするリターデーション値Rthを得るには、膜状物の屈折率を、搬送張力の調整や、延伸操作によって調整することが好ましい。以下、延伸工程について説明する。
例えば、膜状物の長手方向(流延方向)またはそれとフィルム面内で直交する方向(幅手方向)の張力を、低くまたは高くすることで、得られる位相差フィルムのリターデーション値を調整することが可能となる。
また、膜状物の長手方向(流延方向)と幅手方向に対して、逐次または同時に2軸延伸もしくは1軸延伸することができる。
互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的には流延方向に0〜1.5倍、幅手方向に1.1〜2.5倍の範囲とすることが好ましく、流延方向に0〜1.0倍、幅手方向に1.2〜2.0倍に範囲で行うことが好ましい。
延伸される直前での乾燥温度は、140〜170℃が好ましい。延伸温度は、120℃〜200℃が好ましく、さらに好ましくは150℃〜200℃であり、さらに好ましくは150℃を超えて190℃以下である。
延伸開始時の膜状物中の残留溶媒量は20〜0%が好ましく、さらに好ましくは15〜0%で延伸することが好ましい。
具体的には、155℃で残留溶媒量が11%で延伸する、あるいは155℃で残留溶媒が2%で延伸するのが好ましい。もしくは160℃で残留溶媒が11%で延伸するのが好ましく、あるいは160℃で残留溶媒が1%未満で延伸するのが好ましい。
膜状物を延伸する方法は、特に限定はない。例えば、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して縦方向に延伸する方法、膜状物の両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、あるいは縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法などが挙げられる。もちろん、これらの方法は、組み合わせてもよい。
また、所謂テンター法の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸を行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
製膜工程のこれらの幅保持あるいは横方向の延伸は、テンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
本発明において、得られる位相差フィルムの経時的なリターデーションの変動を小さくするためには、前述のように、セルロースアセテート分子間の水素結合を高めておくことだけでなく、延伸される直前での膜状物中の残留溶媒量をできるだけ少なくしておくことが有効である。残留溶媒量をできるだけ少なくするためには、延伸される直前での膜状物の乾燥速度を高くすることが好ましい。
即ち、延伸される直前での膜状物の有機溶剤の平均揮発速度を、1.5×10−3〜3.0×10−3g/(sec・cm)の範囲に調整することが好ましく、1.9×10−3〜3.0×10−3g/(sec・cm)の範囲に調整することがより好ましい。
「延伸される直前」とは、第3の工程(乾燥・剥離工程)において膜状物を金属支持体上から引き剥がした後から、第4の工程(延伸工程)において膜状物の延伸開始時までの間をいう。例えば、第4の工程を開始すると同時に延伸を開始する場合、「延伸される直前」は、第3の工程において膜状物を金属支持体から引き剥がした後から第4の工程の開始時までの間でありうる。また、第4の工程を開始して一定時間経過後に延伸を開始する場合は、「延伸される直前」は、第4の工程開始後から延伸開始時までの間でありうる。
平均揮発速度は、例えば乾燥温度、乾燥風速および膜状物の厚さのうち一以上(好ましくは乾燥温度、より好ましくは乾燥温度と乾燥風速の両方)によって調整されうる。例えば、乾燥温度は、好ましくは140〜170℃の範囲内、より好ましくは150〜170℃の範囲としうる。乾燥風速は、好ましくは5m/秒以上、より好ましくは10m/秒以上としうる。膜状物の厚さは、例えば25〜45μmとしうる。
平均揮発速度は、以下の方法で測定することができる。
(平均揮発速度)
延伸される直前の膜状物から、幅手方向の左、中央、右から30cm四方のサイズのサンプルフィルムを合計3枚切り出す。次いで、直ぐに各サンプルフィルムを、送風機能を有する密閉容器内に設置したホットプレート上に置き、乾燥風を当てながら、20秒後の質量減少量(Ag)と40秒後の質量減少量(Bg)とを測定する。ホットプレートの温度は、延伸される直前での膜状物の実際の乾燥温度と同じ値に設定し;乾燥風の風速は、延伸される直前で膜状物に実際に当てる風速と同じ値に設定し;密閉容器の容量は0.1mとする。
得られた測定値を、下記式に当てはめて、揮発速度(g/sec・cm)を算出する。
(Ag−Bg)/(20sec・900cm
そして、上記3枚のサンプルフィルムの揮発速度の平均値を、平均揮発速度(g/(sec・cm))(単位面積あたりの質量の減少速度)として求める。
延伸される直前の乾燥は、延伸開始時の膜状物中の残留溶媒量が、前述した範囲(好ましくは20〜0%、より好ましくは15〜0%)となるまで行うことが好ましい。延伸される直前の乾燥時間は、例えば4〜10分程度としうる。
特に、ハロゲン系有機溶剤を90質量%以上含有する有機溶剤に、平均アセチル基置換度2.2〜2.5の範囲内であるセルロースアセテートと、水素結合性化合物とを溶解して調製したドープを用いて得られる膜状物を、延伸する直前での平均揮発速度が1.5×10−3〜3.0×10−3g/(sec・cm)の範囲内となるように乾燥させて得られる位相差フィルムは、経時的なリターデーション値の変動が低減されうる。そして、それを用いた液晶表示装置の視野角による色相の変化が小さく、正面コントラストが高められうる。
本発明の位相差フィルムの経時的なリターデーション値の変動が小さい理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。即ち、平均アセチル基置換度2.2〜2.5の範囲内であるセルロースアセテートと、水素結合性化合物とを含む膜状物は、セルロースアセテート分子間で高い水素結合を有する。そのため、延伸される直前での乾燥速度を大きくしても、セルロースアセテート分子同士の水素結合を維持できると考えられる。さらに、乾燥速度を大きくすることで、膜状物中の溶剤を多く揮発させることができ、延伸前の膜状物中の残留溶媒量を少なくすることができる。残留溶媒量が少ない膜状物を延伸することで、セルロースアセテート分子の配向性を高めることができ、得られる位相差フィルムにおいて、そのセルロースアセテート分子の配向状態が良好に維持されると考えられる。それにより、経時的または使用環境の変化によるリターデーション値の変動の少ない位相差フィルムを得ることができると考えられる。
(第5の工程)
延伸後の膜状物を巻き取るまでに、乾燥工程をさらに実施する。それにより、得られる位相差フィルムの残留溶媒量を、偏光板の製造工程や液晶表示装置の製造工程に適した範囲に調整することができる。
延伸後の膜状物の乾燥工程における乾燥温度は、40〜250℃であることが好ましく、70〜180℃であることが特に好ましい。さらに、残留溶剤を除去するために、50〜160℃で乾燥され、その場合、逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましい。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量および乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。
最終的に得られる位相差フィルムの残留溶剤量は、2質量%以下であることが好ましく、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性が良好な位相差フィルムを得る上で好ましい。
第5の工程を終了した直後(製造直後)に得られる本発明の位相差フィルムは、セルロースアセテート分子の配向状態が安定であるため、経時的なリターデーション値の変動が低減されうる。
具体的には、第5の工程を終了後、23℃55%RH下で0.5時間経過後の位相差フィルムのRth(0.5)と、第5の工程を終了後、23℃55%RH下で24時間経過後の位相差フィルムのRth(24)の差の絶対値|Rth(0.5)−Rth(24)|は、2nm以下であることが好ましく、1nm以下であることがより好ましい。Rthは、23℃55%RH下、波長590nmの条件下での測定値である。
また、|Rth(0.5)−Rth(24)|は、第5の工程を終了後、24時間経過後の23℃55%RH下、波長590nmにおけるRth(24)の1.7%以下であることが好ましく、1.0%以下であることがより好ましい。
|Rth(0.5)−Rth(24)|を上記範囲にするためには、平均アセチル基置換度2.2〜2.5のセルロースアセテートと、前述の水素結合性化合物とを含む膜状物の、延伸される直前での平均揮発速度を所定の範囲に調整することが好ましく;必要に応じて第5の工程を終了後、24時間経過後の位相差フィルムの引張弾性率が所定の範囲になるように、フィルム組成をさらに調整しておくことが好ましい。
本発明において、位相差フィルムの製造の最後の乾燥工程を終了するとは、巻き取り直前の状態をいう。位相差フィルムを巻き取ることにより、位相差フィルムが乾燥の影響を受けなくなるからである。
巻き取り機は、一般的に使用されているものでよく、定テンション法、定トルク法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法などの巻き取り方法で巻き取ることができる。
本発明の位相差フィルムは、長尺状のフィルムでありうる。位相差フィルムの、遅相軸方向のフィルム幅は、広いほど生産効率を向上することができるが、キシミや折れの発生を防止する観点から、3000mm以下であることが好ましく、生産効率の観点から、700mm以上であることが好ましい。
3.偏光板
本発明の位相差フィルムは、光学発現性が高いため、位相差フィルムとして偏光板に好ましく用いられる。偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に位相差フィルムを貼り合わせて得ることができる。即ち、本発明の偏光板は、偏光子と、その少なくとも一方の面に配置された本発明の位相差フィルムとを有する。
偏光子は、従来から公知のものを用いることができ、例えば、ポリビニルアルコールフィルムの如き親水性ポリマーフィルムを、沃素のような二色性染料で処理して延伸したものである。偏光子の厚さは、通常、0.5〜30μmの範囲とすることができ、好ましくは5〜20μmの範囲としうる。
位相差フィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、完全鹸化型のポリビニルアルコ−ル水溶液などの水溶性ポリマー接着剤や、光硬化性接着剤などを用いて行うことができる。
光硬化性接着剤は、硬化性化合物と、光重合開始剤と、必要に応じて光増感剤や光増感助剤などをさらに含んでもよい。
硬化性化合物は、(メタ)アクリル化合物などのラジカル重合性化合物であってもよいし、エポキシ化合物などのカチオン重合性化合物であってもよい。エポキシ化合物は、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、または脂肪族エポキシ化合物などであってよく、好ましくは脂環式エポキシ化合物である。脂環式エポキシ化合物の例には、芳香族エポキシ化合物の水添物、シクロヘキサン系、シクロヘキシルメチルエステル系、シシクロヘキシルメチルエーテル系のエポキシ化合物などが含まれる。
光重合開始剤は、硬化性化合物の種類に応じて選択され、光ラジカル重合開始剤または光カチオン重合開始剤でありうる。光ラジカル重合開始剤の例には、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトンなどのアセトフェノン系化合物;ベンゾインエチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物などが含まれる。光カチオン重合開始剤の例には、アリールジアゾニウム塩、アリールスルホニウム塩(例えばトリアリールスルホニウム塩など)、アリールヨードニウム塩、アレン−イオン錯体などが含まれる。光重合開始剤の含有量は、硬化性化合物100質量部に対して通常0.1〜10質量部程度であり、好ましくは0.5〜5質量部としうる。
光増感剤は、9,10−ジメトキシアントラセン、9,10−ジエトキシアントラセン、9,10−ジブトキシアントラセンなどのアントラセン系化合物が含まれる。光増感剤は、光硬化性接着剤100質量部に対して0.1質量部以上2質量部以下としうる。
光増感助剤は、1,4−ジメトキシナフタレン、1,4−ジエトキシナフタレンなどのナフタレン系光増感助剤が含まれる。光増感助剤は、光硬化性接着剤100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下としうる。
以下、光硬化性接着剤を用いた偏光板の製造方法の一例を説明する。偏光板は、1)偏光板保護フィルムの偏光子を接着する面を易接着処理する前処理工程、2)偏光子と偏光板保護フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、下記の光硬化性接着剤を塗布する接着剤塗布工程、3)得られた接着剤層を介して偏光子と偏光板保護フィルムとを貼り合せる貼合工程、および4)接着剤層を介して偏光子と偏光板保護フィルムとが貼り合わされた状態で接着剤層を硬化させる硬化工程、を含む製造方法によって製造することができる。
(前処理工程)
前処理工程では、偏光子と接着する偏光板保護フィルムの表面を易接着処理する。偏光子の両面にそれぞれ偏光板保護フィルムが接着される場合は、それぞれの偏光板保護フィルムに対し易接着処理を行う。次の接着剤塗布工程では、易接着処理された表面が偏光子との接着面となる。
(接着剤塗布工程)
接着剤塗布工程では、偏光子と偏光板保護フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、上記光硬化性接着剤を塗布する。偏光子または偏光板保護フィルムの表面に直接光硬化性接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特別な限定はない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の塗工方式が利用できる。また、偏光子と偏光板保護フィルムの間に、光硬化性接着剤を流延させた後、ロール等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
(貼合工程)
こうして光硬化性接着剤を塗布した後、貼合工程に供される。この貼合工程では、例えば、先の塗布工程で偏光子の表面に光硬化性接着剤を塗布した場合、そこに偏光板保護フィルムが重ね合わされる。先の塗布工程で偏光板保護フィルムの表面に光硬化性接着剤を塗布した場合は、そこに偏光子が重ね合わされる。また、偏光子と偏光板保護フィルムの間に光硬化性接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子と偏光板保護フィルムとが重ね合わされる。偏光子の両面に偏光板保護フィルムを接着する場合であって、両面とも光硬化性接着剤を用いる場合は、偏光子の両面にそれぞれ、光硬化性接着剤を介して偏光板保護フィルムが重ね合わされる。そして通常は、この状態で両面(偏光子の片面に偏光板保護フィルムを重ね合わせた場合は、偏光子側と偏光板保護フィルム側、また偏光子の両面に偏光板保護フィルムを重ね合わせた場合は、その両面の偏光板保護フィルム側)からロール等で挟んで加圧することになる。ロールの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置されるロールは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
(硬化工程)
硬化工程では、未硬化の光硬化性接着剤に活性エネルギー線を照射して、エポキシ化合物やオキセタン化合物を含む接着剤層を硬化させる。それにより、光硬化性接着剤を介して重ね合わせた偏光子と偏光板保護フィルムとを接着させる。偏光子の片面に偏光板保護フィルムを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側または偏光板保護フィルム側のいずれから照射してもよい。また、偏光子の両面に偏光板保護フィルムを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ光硬化性接着剤を介して偏光板保護フィルムを重ね合わせた状態で、いずれか一方の偏光板保護フィルム側から活性エネルギー線を照射し、両面の光硬化性接着剤を同時に硬化させるのが有利である。ただし、いずれか一方の偏光板保護フィルムに紫外線吸収剤が配合されている場合であって、活性エネルギー線が紫外線である場合、通常、紫外線吸収剤が配合されていない他方の偏光板保護フィルム側から紫外線が照射される。
活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線等を用いることができるが、取扱いが容易で硬化速度も十分であることから、一般には紫外線が好ましく用いられる。活性エネルギー線の光源は、特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有する、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、LEDランプ等を用いることができる。
光硬化性接着剤への光照射強度は、目的とする組成物毎に決定されるものであって、やはり特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が、UV−B(280〜320nmの中波長域紫外線)として1〜3,000mW/cmの範囲となるように調整することが好ましい。照射強度が1mW/cmを下回ると、反応時間が長くなりすぎ、照射強度が3,000mW/cmを超えると、ランプから輻射される熱及び光硬化性接着剤の重合時の発熱によって、光硬化性接着剤の黄変や偏光子の劣化を生じる可能性がある。
光硬化性接着剤への光照射時間は、硬化する組成物毎に制御されるものであって、特に限定されないが、照射強度と照射時間の積で表される積算光量が10〜5000mJ/cmの範囲となるように設定されることが好ましい。積算光量が10mJ/cmを下回ると、重合開始剤に由来する活性種の発生が十分でなく、接着剤層の硬化が不十分となる可能性がある。一方、積算光量が5000mJ/cmを超えると、照射時間が非常に長くなり、生産性向上には不利なものとなる。
活性エネルギー線を照射して光硬化性接着剤を硬化させるにあたっては、偏光子の偏光度、透過率、色相、偏光板保護フィルムの透明性といった、偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化させることが好ましい。
以上のようにして得られた偏光板において、接着剤層の厚さは、特に限定されないが、通常50μm以下であり、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下である。
本発明の位相差フィルムは、前述の通り、セルロースアセテート分子の配向状態が安定化されている。そのため、本発明の位相差フィルムを含む偏光板は、経時的な光漏れ量の増大が少ないと考えられる。さらに、高温高湿条件下においても、偏光板の光漏れ量の変動が少ないため、長期間安定した性能を維持できると考えられる。
4.液晶表示装置
本発明の位相差フィルムおよび該位相差フィルムを用いた偏光板は、様々な表示モードの液晶セルを有する液晶表示装置に用いることができる。即ち、本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、それを挟持する一対の偏光板とを含む。そして、一対の偏光板の少なくとも一方を、本発明の位相差フィルムを含む偏光板とすることができる。
図1は、液晶表示装置の基本的な構成の一例を示す模式図である。図1に示されるように、本発明の液晶表示装置10は、液晶セル30と、それを挟持する第一の偏光板50および第二の偏光板70と、バックライト90とを含む。
液晶セル30は、例えばTN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々の表示モードのものが提案されている。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を、液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。OCBモードの液晶セルは、例えば米国特許第4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。OCBモードの液晶セルは、前述の通り、棒状液晶分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、自己光学補償機能を有する。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(シャープ技報第80号11頁)、および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(月刊ディスプレイ5月号14頁(1999年))などが含まれる。
第一の偏光板50は、第一の偏光子51と、第一の偏光子51の視認側の面に配置された保護フィルム53(F1)と、第一の偏光子51の液晶セル側の面に配置された保護フィルム55(F2)とを含む。第二の偏光板70は、第二の偏光子71と、第二の偏光子71の液晶セル側の面に配置された保護フィルム73(F3)と、第二の偏光子71のバックライト側の面に配置された保護フィルム75(F4)とを含む。保護フィルム55(F2)と保護フィルム73(F3)の一方は、必要に応じて省略されることもある。
そして、保護フィルム55(F2)と保護フィルム73(F3)の少なくとも一方が、本発明の位相差フィルムでありうる。
即ち、本発明の位相差フィルムは、保護フィルム(F1)/偏光子/保護フィルム(F2)/液晶セル/本発明の位相差フィルム(F3)/偏光子/保護フィルム(F4)の構成、もしくは保護フィルム(F1)/偏光子/本発明の位相差フィルム(F2)/液晶セル/本発明の位相差フィルム(F3)/偏光子/保護フィルム(F4)の構成で好ましく用いることができる。
本発明の位相差フィルムを、液晶セル(特にTN型、VA型、OCB型などの液晶セル)に貼り合わせて用いることによって、視野角による色相の変化が少なく、正面コントラストが高い表示装置を提供することができる。特に、本発明の位相差フィルムは、高いリターデーション値を有することから、VAモードの液晶表示装置に好ましく用いることができる。
VAモードの液晶表示装置は、液晶セルと、その両側に配置された二枚の偏光板とを含む。
液晶セルは、二枚の電極基板の間に液晶を担持している。本発明における透過型液晶表示装置の一つの態様では、本発明の位相差フィルムは、液晶セルと一方の偏光板の偏光子との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板の偏光子との間に二枚配置する。
一方の偏光板のみに前記位相差フィルムを使用する場合は、液晶セルのバックライト側偏光板の液晶セル側保護フィルム(F3)として使用するのが特に好ましい。液晶セルへの張り合わせは、本発明のフィルムはVAセル側にすることが好ましい。
保護フィルムは、通常のセルロースアセテートフィルムでも良く、本発明のフィルムより薄いことが好ましい。保護フィルムの厚さは、例えば40〜80μmであることが好ましい。保護フィルムは、市販のKC4UA(コニカミノルタオプト株式会社製40μm)、KC6UA(コニカミノルタオプト株式会社製60μm)、TD80(富士フイルム製80μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
前述の通り、本発明の位相差フィルムは、その製造工程においてセルロースアセテート分子の配向を早くから安定化させることで、製造直後のリターデーション値の変動を小さくしている。それにより、位相差フィルムの光漏れ量の変動を少なくすることができ、それを含む液晶表示装置の正面コントラストを高めることができると考えられる。また、位相差フィルムにおけるセルロースアセテート分子の配向が安定であることから、セルロールアセテート分子の配向の揺らぎも低減されている。それにより、本発明の位相差フィルムを含む液晶表示装置の視野角による色相の変化が低減されると考えられる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
1.位相差フィルムの材料
1)セルロースアセテート
以下の実施例/比較例で用いたセルロースアセテートのアセチル基置換度と重量平均分子量を、表1に示す。
Figure 2014085628
2)水素結合性化合物
一般式(I)で表される化合物
前述の例示化合物I−1
前述の例示化合物I−3
前述の例示化合物I−7
前述の例示化合物I−8
前述の例示化合物I−11
一般式(II)で表される化合物
前述の例示化合物II−1
前述の例示化合物II−2
前述の例示化合物II−3
前述の例示化合物II−5
3)可塑剤
化合物A:糖エステル化合物
Figure 2014085628
〜R:ベンゾイル基(置換度:4〜7、平均置換度:5.5)
残りは水素原子
化合物B:下記式で表されるポリエステル化合物(21)
Figure 2014085628
化合物C:下記式で表されるポリエステル化合物(22)
Figure 2014085628
化合物D:下記式で表されるベンゾオキサジノン化合物
Figure 2014085628
2.位相差フィルムの作製
(実施例1)
微粒子添加液1の調製
下記成分を、ディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散させて、微粒子分散液1を得た。
(微粒子分散液1の組成)
微粒子(アエロジル R812V 日本アエロジル(株)製):11質量部
エタノール:89質量部
得られた微粒子分散液1を、メチレンクロライドを投入した溶解タンクに十分攪拌しながらゆっくりと添加した。得られた溶液を、微粒子の二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散させた後、日本精線(株)製のファインメットNFで濾過して、微粒子添加液1を得た。
(微粒子添加液1の組成)
メチレンクロライド:99質量部
微粒子分散液1:5質量部
次いで、加圧溶解タンクに、メチレンクロライドとエタノールを投入した。これに、セルロースアセテートA(アセチル基置換度:2.4、重量平均分子量:18.5万)、水素結合性化合物I−1、化合物A、化合物D、および微粒子添加液1を攪拌しながらさらに投入し、加熱下で攪拌しながら完全に溶解させた。得られた溶液を、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープ液1を得た(第1の工程)。
(ドープ液1の組成)
メチレンクロライド:420質量部
エタノール:36質量部
セルロースアセテートA(アセチル基置換度2.4、重量平均分子量18.5万):100質量部
水素結合性化合物I−1:2質量部
化合物A:10質量部
化合物D:2質量部
微粒子添加液1:1質量部
得られたドープ液1を33℃に調整し、ベルト流延装置を用いて、1500mm幅でステンレスベルト支持体に均一に流延した(第2の工程)。ステンレスベルト支持体の温度は33℃に設定した。次いで、ステンレスベルト支持体上で、残留溶媒量が75%になるまでドープ中の溶剤を蒸発させた。得られた膜状物を、ステンレスベルト支持体から剥離張力150N/mで剥離した(第3の工程)。
得られた膜状物に、温度150℃、風速10m/秒の熱風を4〜10分間当てて、膜状物中の溶剤をさらに蒸発させた。このときの、溶剤の平均揮発速度は、1.5×10−3g/秒であった。
平均揮発速度は、以下の方法で算出した。
(平均揮発速度)
延伸される直前の膜状物から、幅手方向の左、中央、右から30cm四方のサイズのサンプルフィルムを合計3枚切り出した。次いで、直ぐに各サンプルフィルムを、送風機能を有する密閉容器内に設置したホットプレート上に置き、乾燥風を当てながら、20秒後の質量減少量(Ag)と40秒後の質量減少量(Bg)とを測定した。ホットプレートの温度は、延伸される直前での膜状物の乾燥温度と同じ値に設定し;乾燥風の風速は、延伸される直前で膜状物に当てる風速と同じ値に設定し;密閉容器の容量は0.1mとした。
得られた測定値を、下記式に当てはめて、揮発速度(g/sec・cm)を算出した。
(Ag−Bg)/(20sec・900cm
そして、上記3枚のサンプルフィルムの揮発速度の平均値を、平均揮発速度(g/(sec・cm))として求めた。
得られた膜状物を、テンター延伸機にて155℃でウェブの幅方向(TD方向)に37%延伸した(第4の工程)。延伸開始時のウェブの残留溶媒量は10%であった。得られたフィルムを、搬送張力100N/mで、多数のロールで搬送させながら150℃で乾燥させて、膜厚35μmの位相差フィルム101を得た(第5の工程)。
(実施例2〜18、比較例1〜7)
セルロースアセテート、水素結合性化合物、および可塑剤の種類とそれらの添加量を、表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にして位相差フィルム102〜125を作製した。延伸直前での膜状物の乾燥時間は、実施例1と同一とした。
得られた位相差フィルムのRthを、以下の方法で測定した。
[Rth]
位相差フィルムの製造工程のうち、第5の工程(乾燥工程)を終了後、23℃55%RHの環境下で0.5時間経過後の位相差フィルムのRth(0.5)と、24時間経過後の位相差フィルムのRth(24)とを、KOBRA−21ADH(王子計測機器(株))を用いて測定した。Rthの測定は、23℃55%RH下、、波長590nmの条件で行った。
そして、得られた位相差フィルムのRth(0.5)とRth(24)の値を下記式に当てはめて、これらの差の絶対値を求めた。
製造後のRth変化量=|Rth(0.5)−Rth(24)|
[引張弾性率]
第5の工程を終了後から24時間経過後の位相差フィルムを70×10mmのサイズに切り取り、サンプルフィルムを得た。次いで、このサンプルフィルムを、25℃60%RHの環境下で24時間調湿した。調湿後のサンプルフィルムの引張弾性率を、JIS K7127に記載の方法に従い、引張り試験機(株)オリエンテック製テンシロンを用いて測定した。測定は、チャック間距離50mm、23℃55%RH下で行った。
得られた位相差フィルムの組成および乾燥条件を表2に示し;位相差フィルムの評価結果を表3に示す。
Figure 2014085628
Figure 2014085628
表2および3に示されるように、延伸直前での溶剤の平均揮発速度が所定の範囲に調整された実施例1〜18の位相差フィルムは、いずれも比較例1および3〜7の位相差フィルムよりもRthの経時変化が少ないことがわかる。
比較例1の位相差フィルムは、延伸直前での溶剤の平均揮発速度が低すぎるため、セルロースアセテート分子間の溶剤が抜けきれず、Rthの変動が大きくなったと考えられる。比較例2の位相差フィルムは、Rthの変動は小さくできるものの;フィルム中のミクロな隙間(揮発成分が抜けた部分)が多く、屈折率が異なる部分の面積の割合が多くなるため、後述の表4の比較例9や表5の比較例16に示されるように偏光板としての性能が低いことがわかる。比較例3の位相差フィルムは、アセチル基置換度が高いため、セルロースアセテート分子間の相互作用が小さく、Rthの変動が大きいことがわかる。比較例4および5の位相差フィルムは、アセチル基置換度が低すぎるため、位相差発現性が高く、相対的にRthの値が高くなり;それにりRthの変動も大きいことがわかる。比較例6の位相差フィルムは、水素結合性化合物を含まないため、セルロースアセテート分子間の相互作用を十分に維持できず、Rthの変動が大きいことがわかる。比較例7の位相差フィルムは、延伸直前での溶剤の平均揮発速度が低く、かつ水素結合性化合物も含まないため、Rthの変動が大きいことがわかる。
3.偏光板の作製
(実施例19)
セルロースアセテートフィルムFの作製
位相差フィルム101の作製において、ドープの組成を下記のように変更した以外は実施例1と同様にして、セルロースアセテートフィルムFを作製した。
(ドープ液の組成)
メチレンクロライド:420質量部
エタノール:36質量部
セルロースアセテートF:100質量部
化合物A(可塑剤):5.0質量部
化合物D(可塑剤):5.0質量部
微粒子添加液1:1質量部
ハードコートフィルムの作製
下記成分を攪拌および混合して、ハードコート層塗布用組成物を得た。
(ハードコート層塗布用組成物)
バイロンUR1350(ポリエステルウレタン樹脂、東洋紡績(株)製、固形分濃度33%(トルエン/メチルエチルケトン:65/35)):6.0質量部
ペンタエリスリトールトリアクリレート:30質量部
ペンタエリスリトールテトラアクリレート:30質量部
イルガキュア184(BASFジャパン社製、光重合開始剤):3.0質量部
イルガキュア907(BASF社製、光重合開始剤):1.0質量部
ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン(BYK−UV3510、ビックケミージャパン社製):2.0質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル:150質量部
メチルエチルケトン:150質量部
上記ハードコート層塗布用組成物を、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用塗布液とした。そして、得られたハードコート層用塗布液を、マイクログラビアコーターを用いて、上記作製したセルロースアセテートフィルムFに塗布した。得られた塗布層を80℃で乾燥後、紫外線ランプを用いて紫外線を照射し、塗布層を硬化させた。紫外線の照射条件は、照度80mW/cm、照射量80mJ/cmとした。それにより、ドライ膜厚9μmのハードコート層を有するハードコートフィルムを得た。
偏光子の作製
厚さ70μmのポリビニルアルコールフィルムを、35℃の水で膨潤させた。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5gおよび水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、さらにヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5gおよび水100gからなる45℃の水溶液に浸漬した。得られたフィルムを、延伸温度55℃、延伸倍率5倍の条件で一軸延伸した。この一軸延伸フィルムを、水洗した後、乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
光硬化性接着剤の調製
下記の各成分を混合した後、脱泡して、光硬化性接着剤液を調製した。なお、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートは、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、下記にはトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートの固形分量を表示した。
(光硬化性接着剤液の組成)
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:45質量部
エポリードGT−301(ダイセル化学社製の脂環式エポキシ樹脂):40質量部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル:15質量部
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート:2.3質量部
9,10−ジブトキシアントラセン:0.1質量部
1,4−ジエトキシナフタレン:2.0質量部
偏光板の作製
作製された位相差フィルム101の表面にコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分とした。次いで、位相差フィルムのコロナ放電処理面に、上記調製した接着剤液を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗布して接着剤層を形成した。得られた接着剤層に、前述で作製した偏光子を貼り合わせた。
同様にして、前述で作製したハードコートフィルムの表面にコロナ放電処理を施した。コロナ放電処理の条件は、コロナ出力強度2.0kW、ライン速度18m/分とした。次いで、ハードコートフィルムのコロナ放電処理面に、上記調製した接着剤液を、硬化後の膜厚が約3μmとなるようにバーコーターで塗布して接着剤層を形成した。この接着剤層に、前述の位相差フィルム101が貼り合わされた偏光子を貼り合わせて、ハードコートフィルム/偏光子/位相差フィルム101の積層物を得た。
得られた積層物の位相差フィルム101に、ベルトコンベア付き紫外線照射装置(ランプは、フュージョンUVシステムズ社製のDバルブを使用)を用いて、積算光量が750mJ/cmとなるように紫外線を照射し、接着剤層を硬化させた。それにより、ハードコートフィルム/偏光子/位相差フィルム101の積層構造を有する偏光板201を作製した。
(実施例20〜36、比較例8〜14)
位相差フィルム101を、表4に示されるように位相差フィルム102〜125に変更した以外は実施例19と同様にして偏光板202〜225を作製した。これらの偏光板202〜225は、偏光板201と同様に、視認側の偏光板(第一の偏光板)として用いることができる。
(実施例37)
ハードコートフィルムを、セルロースアセテートフィルムFに変更した以外は実施例19と同様にして偏光板226を作製した。偏光板226は、バックライト側の偏光板(第二の偏光板)として用いることができる。
(実施例38〜54、比較例15〜21)
位相差フィルム101を、表5に示されるように位相差フィルム102〜125に変更した以外は実施例37と同様にして偏光板227〜250を作製した。これらの偏光板227〜250は、偏光板226と同様にバックライト側の偏光板(第二の偏光板)として用いることができる。
実施例19〜54および比較例8〜21で得られた偏光板の光漏れ量を、以下の方法で測定した。
[光漏れ量]
作製した2枚の偏光板をクロスニコルに配置して、(株)日立製作所製の分光光度計U3100を用いて波長590nmの光の透過率(T1)を測定した。
次いで、2枚の偏光板を、80℃90%の条件下で100時間熱処理した後、上記と同様にしてクロスニコルに配置して透過率(T2)を測定した。
得られた透過率(T1)と透過率T2を下記式に当てはめて光漏れ量を算出した。
光漏れ量(%)=T2(%)−T1(%)
光漏れ量は、以下の基準に基づいて評価した。
◎:光漏れ量が1%未満
○:光漏れ量が1%以上4%未満
△:光漏れ量が4%以上5%未満
×:光漏れ量が5%以上
実施例19〜36および比較例8〜14の評価結果を表4に示し;実施例37〜54および比較例15〜21の評価結果を表5に示す。
Figure 2014085628
Figure 2014085628
実施例19〜54の偏光板は、いずれも比較例8〜21の偏光板よりも光漏れ量が少ないことがわかる。これは、実施例19〜54の偏光板に含まれる位相差フィルムのRthの経時変動が少ないためであると考えられる。
4.液晶表示装置の作製
(実施例55)
SONY製40型ディスプレイKDL−40V5の液晶パネル(液晶セルと、それを挟持する一対の偏光板との積層物)から、一対の偏光板を剥がした。そして、液晶セルの視認側の面に、上記作製した偏光板201を、その粘着剤層が液晶セルと接するように貼り合わせた。また、液晶セルのバックライト側の面に、偏光板226を、粘着剤層が液晶セルと接するように貼り合わせた。それにより、液晶表示装置301を得た。
(実施例56〜72、比較例22〜28)
表6に示されるように、視認側の偏光板201を偏光板202〜225に変更し、かつバックライト側の偏光板226を、偏光板227〜250にそれぞれ変更した以外は実施例55と同様にして液晶表示装置302〜325を得た。
得られた実施例55〜72および比較例22〜28の液晶表示装置の、視野角による色相の変化と、正面コントラストとを以下の方法で測定した。
[視野角による色相の変化]
液晶表示装置の視野角による色相の変化を、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて測定した。CIE1976、UCS座標において、表示画面の法線に対して上方向80°の角度〜下方向80°の角度までの範囲で、2°間隔で色相を測定した。そして、各角度での測定値を、下記式に当てはめて色相変動幅を算出した。このうち、測定した角度間で最大となる色相変動幅を「最大色相変動幅」として求めた。
色相変動幅=[(Δu*)2+(Δv*)2]*1/2
(上記式中、Δu*は、測定した2つの角度間のu*の差を示し;Δv*は、測定した2角度間のv*の差を示す)
[正面コントラスト]
液晶表示装置の白表示時の表示画面の法線方向からの輝度と、黒表示時の表示画面の法線方向からの輝度とを、それぞれELDIM社製EZ−Contrast160Dを用いて測定した。得られた値を、下記式に当てはめて正面コントラストとして算出した。輝度の測定は、23℃55%RHの環境下で行った。
正面コントラスト=(表示装置の法線方向から測定した白表示の輝度)/(表示装置の法線方向から測定した黒表示の輝度)
実施例55〜72および比較例22〜28の評価結果を表6に示す。
Figure 2014085628
実施例55〜72の液晶表示装置は、比較例22〜28の液晶表示装置よりも視野角による色相の変化が少なく、かつ正面コントラストも高いことがわかる。これは、実施例55〜72の液晶表示装置に含まれる位相差フィルムのRthの経時変動が、比較例22〜28の液晶表示装置に含まれる位相差フィルムのRthの経時変動よりも少ないためであると考えられる。
本発明の位相差フィルムを含む液晶表示装置は、視野角依存性、特に視野角による色相の変化が少なく、正面コントラストが改善されうる。
10 液晶表示装置
30 液晶セル
50 第一の偏光板
51 第一の偏光子
53 保護フィルム(F1)
55 保護フィルム(F2)
70 第二の偏光板
71 第二の偏光子
73 保護フィルム(F3)
75 保護フィルム(F4)
90 バックライト

Claims (9)

  1. ハロゲン系有機溶剤を90質量%以上含有する有機溶剤に、平均アセチル基置換度2.2〜2.5のセルロースアセテートと、芳香族環に少なくとも置換基としてカルボキシ基またはヒドロキシ基を有する水素結合性化合物とを溶解してドープ液を得る第1の工程と、
    前記ドープ液を金属ベルト上に流延する第2の工程と、
    流延された前記ドープ液を乾燥させて得られる膜状物を、前記金属ベルトから引き剥がす第3の工程と、
    引き剥がされた前記膜状物を延伸する第4の工程と、
    延伸された前記膜状物を加熱および乾燥させて、前記膜状物中の有機溶剤を揮発させる第5の工程と、
    を有する位相差フィルムの製造方法において、
    前記膜状物が延伸される直前における前記膜状物の有機溶剤の平均揮発速度を、1.5×10−3〜3.0×10−3g/(sec・cm)の範囲に調整する、位相差フィルムの製造方法。
  2. 前記第5の工程の終了時から23℃55%RH下で0.5時間経過後に、23℃55%RH下、波長590nmにおいて測定される位相差フィルムの厚さ方向のリターデーションをRth(0.5)とし、前記第5の工程の終了時から23℃55%RH下で24時間経過後に、23℃55%RH下、波長590nmにおいて測定される位相差フィルムの厚さ方向のリターデーションをRth(24)としたとき、下記式を満たす、請求項1に記載の位相差フィルムの製造方法。
    |Rth(0.5)−Rth(24)|≦2.0nm
  3. 請求項1または2に記載の製造方法で製造された位相差フィルムであって、
    芳香族環に置換基として少なくともカルボキシ基またはヒドロキシ基を有する水素結合性化合物を、平均アセチル基置換度2.2〜2.5のセルロースアセテートに対して1〜15質量%含有する、位相差フィルム。
  4. 前記水素結合性化合物が、下記一般式(I)または(II)で表される化合物である、請求項3に記載の位相差フィルム。
    一般式(I)
    Figure 2014085628
    (前記一般式(I)において、
    lは、1以上の整数を表し、2以上の場合、2つのカルボキシル基が互いに脱水縮合して環を形成してもよく;
    mは、0〜4の整数を表し;
    Rは、アルキル基を表し;
    nは、0〜4の整数を表し、Rが複数ある場合は、複数のRは互いに同じであっても異なっていてもよく;
    l+m≧2である)
    一般式(II)
    Figure 2014085628
    (前記一般式(II)において、
    は、それぞれ独立にハロゲン原子または水酸基を表し;
    nは、0〜4の整数を表す)
  5. 23℃55%RH下における引張弾性率が、3500〜6000MPaの範囲内である、請求項3または4に記載の位相差フィルム。
  6. 下記式で定義され、23℃55%RH下、波長590nmで測定される厚さ方向のリターデーション値Rthが、70〜400nmの範囲内である、請求項3〜5のいずれか一項に記載の位相差フィルム。
    Rth=[(nx+ny)/2−nz]×d
    (式中、nxは、フィルム面内の遅相軸方向の屈折率を示し;
    nyは、フィルム面内の前記遅相軸と直交する方向の屈折率を示し;
    nzは、フィルムの厚さ方向の屈折率を示し;
    dは、フィルムの厚さを示す)
  7. 前記位相差フィルムの遅相軸方向のフィルム幅は、700〜3000mmである、請求項3〜6のいずれか一項に記載の位相差フィルム。
  8. 請求項3〜6のいずれか一項に記載の位相差フィルムを有する、偏光板。
  9. 請求項3〜6のいずれか一項に記載の位相差フィルムを有する、液晶表示装置。


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