JP2014076048A - オルファクトリースフィア細胞の生成・単離方法及び製造方法並びに該オルファクトリースフィア細胞を用いた脱随疾患治療剤及び末梢神経軸索再生増強剤の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(1)ヒト又はヒト以外の哺乳動物の鼻腔から採取された嗅粘膜細胞又は組織を酵素処理する工程、及び(2)前記工程(1)で得られた酵素処理物を無血清下に培養し、オルファクトリースフィア細胞を得る工程を含み、前記工程(1)における酵素が、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、デオキシリボヌクレアーゼI及びヒアルロニダーゼを含む酵素混合物であることを特徴とする、オルファクトリースフィア細胞の生成・単離方法。
【選択図】なし
Description
[1](1)ヒト又はヒト以外の哺乳動物の鼻腔から採取された嗅粘膜細胞又は組織を酵素処理する工程、及び(2)前記工程(1)で得られた酵素処理物を無血清下に培養し、オルファクトリースフィア細胞を得る工程を含み、前記工程(1)における酵素が、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、デオキシリボヌクレアーゼI及びヒアルロニダーゼを含む酵素混合物であることを特徴とする、オルファクトリースフィア細胞の生成・単離方法。
[2](1)ヒト又はヒト以外の哺乳動物の鼻腔から採取された嗅粘膜細胞又は組織を酵素処理する工程、及び(2)前記工程(1)で得られた酵素処理物を無血清下に培養し、オルファクトリースフィア細胞を得る工程を含み、前記工程(1)における酵素が、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、デオキシリボヌクレアーゼI及びヒアルロニダーゼであることを特徴とする、生成・単離されたオルファクトリースフィア細胞の製造方法。
[3]酵素処理の対象が、ヒト又はヒト以外の哺乳動物の鼻腔から採取された嗅上皮細胞であることを特徴とする、前記[1]又は[2]に記載の方法。
[4]前記[1]又は[2]に記載の方法で得られるオルファクトリースフィア細胞を用いて、オルファクトリースフィア細胞及び/又はオリゴデンドロサイト前駆細胞を含む脱随疾患治療剤を製造する工程を有することを特徴とする、脱随疾患治療剤の製造方法。
[5]前記[1]又は[2]に記載の方法で得られるオルファクトリースフィア細胞を用いて、オルファクトリースフィア細胞及び/又はシュワン細胞を含む末梢神経軸索再生増強剤を製造する工程を有することを特徴とする、末梢神経軸索再生増強剤の製造方法。
[6]前記[1]又は[2]に記載の方法で得られるオルファクトリースフィア細胞を、トリプシン処理し、人工髄液に添加する工程を有することを特徴とする前記[4]記載の製造方法。
[7]前記[1]又は[2]に記載の方法で得られるオルファクトリースフィア細胞を、トリプシン処理し、人工髄液に添加する工程を有することを特徴とする前記[5]記載の製造方法。
[8]前記[1]又は[2]に記載の方法で得られるオルファクトリースフィア細胞及び/又はオリゴデンドロサイト前駆細胞を含む脱随疾患治療剤。
[9]前記[1]又は[2]に記載の方法で得られるオルファクトリースフィア細胞及び/又はシュワン細胞を含む末梢神経軸索再生増強剤。
1)実験動物
SD(Sprague-Dawley)ラット及び高感度緑色蛍光タンパク発現トランスジェニック(SD−Tg(CAG−EGFP))ラット(8週齢雄性;日本エスエルシー株式会社)を実験に用いた。前記トランスジェニックラットは、CAGプロモーターの発現によってEGFPを発現する(Ito T, Suzuki A, Imai E, Okabe M, Hori M (2001) Bone marrow is a reservoir of repopulating mesangial cells during glomerular remodeling. J Am Soc Nephrol 12:2625-35.)。
2)酵素処理工程
前記ラットを用いて、嗅粘膜は、Aoki, et al., (2010). J Neurosurg Spine 12, 122-130.に記載された方法で切断された。簡単に説明すれば、前記嗅粘膜は、黄色がかっており、隔膜の尾側に位置する。鋭利な切断により、組織は、嗅球及び篩板等の他の組織によるコンタミを避けるために、丁寧に隔膜の各側から取り除かれる。前記嗅粘膜は、機械的に分離され、その後、DMEM/F12混合培地中(以下「DF」と称する;インビトロジェン社)でコラゲナーゼ(商品名:コラゲナーゼタイプI、酵素活性:250U/mg(活性単位:pH7.5、37℃で、5時間にコラーゲンよりL−ロイシン1μmolを生じる酵素量を1unit (U)とする。)、コード番号:035-17604、和光純薬工業株式会社)、ディスパーゼ(商品名:ディスパーゼII、粉末酵素:300,000PU/g(活性単位:0.6%カゼイン水溶液5ml(pH7.5、0.05mol/Lトリス塩酸緩衝液)に酵素液1mL(50PU/mL、0.05mol/Lトリス塩酸緩衝液)を添加し、30℃で10分間反応後、トリクロロ酢酸試液5mLを加えて反応を停止させる。さらに30℃で30分間静置し、濾過後、275nmの吸光度を測定する。この条件下で1分間に1μgのチロシンに相当するアミノ酸を遊離する酵素量を1PUとする。前記トリクロロ酢酸試液は、無水酢酸ナトリウム18g、トリクロロ酢酸18g及び酢酸18gを600mLの水に溶解し、1mol/L水酸化ナトリウム溶液でpH4.0に調整後、水で1000mLとしたものを使用する。)、製品番号:GD81070、エーディア株式会社)、DNaseI(商品名:ウシ膵臓由来デオキシリボヌクレアーゼI、酵素活性:≧2000 Kunitz units/mg タンパク質(活性単位:1 Kunitz unitは、基質としてDNA(I型又はIII型)を用いたときに、pH5.0、25℃で、1ml、1分間当たり、260nmの吸光度が0.001となる酵素量を意味する。本酵素活性測定は、4.2mM Mg2+を含む83mM酢酸緩衝液中において、3mlの反応としてpH5.0、25℃行われた。)、製品番号:D5025-150KU、シグマ−アルドリッチ社)、ヒアルロニダーゼ(商品名:ウシ睾丸由来ヒアルロニダーゼ、酵素活性:400〜1,000 units/mg 固体(活性単位:1ユニットは、2.0mL反応混液(pH5.7、37°C)で600nmの吸光度を0.330/分の速度での変化を生じさせる単位を意味する(45分間のアッセイ)。)、製品番号:H3506-500MG、シグマ−アルドリッチ社)及びアルブミン(商品名:ウシ血清由来アルブミン(Albumin, from Bovine Serum, Cohn Fraction V, pH7.0)、コード番号:017-17841、和光純薬工業株式会社)を、下記表2の配合割合で含む酵素混合物で、37℃60分間処理された。
酵素処理された細胞(1×106細胞/ml)は、ポリ−ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)−コートディッシュに固定された。前記コートディシュは、DF培地に、B27サプリメント(インビトロジェン社)、20ng/ml塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF;シグマ−アルドリッチ社)、20ng/ml上皮成長因子(EGF;シグマ−アルドリッチ社)、5μg/mlヘパリン(シグマ−アルドリッチ社)、及び抗生物質−抗真菌剤(インビトロジェン社)を加えた。培養は、pH7.4、37℃及び5%CO2で、無血清下で行った。培地交換は、2〜3日ごとに行い、8日間培養した。細胞の凝集は培養開始から3,4日後に見られ、8日間後にサイズが増大し、凝集を形成した細胞塊が得られた。前記培養によって、オルファクトリースフィア細胞を得ることができた。細胞塊は、光学顕微鏡観察によって、球状形態及び少なくとも50μmの直径(平面形状が円形でない場合は最大径)を有するものを、スフィアと判断した。
1)脊髄損傷モデル動物の調製
基本的な外科的手術及び術後処置は、Aoki, et al., (2010). J Neurosurg Spine 12, 122-130.; Ohnishi et al., 2012, Neuroreport. 2012 Feb 15;23(3):157-61.に記載の方法に従って、実施例1の8週齢雄SDラットを用いて、脊髄損傷モデルラットを作製した。具体的には、実施例1と同様のラットについて、セボフルランとO2を用いた麻酔吸入下において、椎弓切除が胸中脊椎骨の7/8で行われた。硬膜の背部表面をさらし、脊髄損傷(SCI)ラットは、SCI(spinal cord injury)機器 (100kdyn;脊椎損傷作製装置、商品名:Infinite Horizon Impactor; 室町機械株式会社製)を用いて、作製された。全てのラットは、毎日、ゲンタマイシン(8mg/kg)を皮下投与された。本実施例に用いた脊髄損傷モデルラットは、中程度の胸部脊髄挫傷を有する成体雄性ラットである。
実施例1で得られたEGFP発現オルファクトリースフィア細胞にトリプシン処理して得られたオルファクトリースフィア細胞をDF培地で希釈して細胞懸濁液を得た。損傷から9日後、定位的注入器(ナリシゲ株式会社)とともに、マイクロガラスピペットに接続されたハミルトン(Hamilton)社製のシリンジを用いて、前記脊髄損傷モデルラットに、マイクロピペットの先端を損傷脊髄の損傷の中心点に挿入して、該細胞懸濁液(0.5×105細胞/μl)を1μl/分で2μl注入した。全てのラットは、細胞注入後7日間、シクロスポリン免疫抑制剤(10mg/kg)及びゲンタマイシン(8mg/kg)を皮下投与された。細胞の注入後、7日間、ラットには損傷の作製から毎日、VPA(150mg/kg)(n=5)又は生理食塩水(n=5)の腹腔内注射を行った(以下、それぞれを「VPA投与群ラット」、「VPA非投与群ラット」という。)。各グループのラットは、細胞の注入から2週間後または4週間後に組織学的検査に供するために、安楽死させた。細胞の注入後、ラットの組織は、100mlPBSと、固定剤(4%パラホルムアルデヒド)を用いて、経心臓的灌流固定された。
前記ラットの脊髄を、凍結組織切片作製用包埋剤であるティシュー・テックO.C.T(Optimal Cutting Temperature)コンパウンド(サクラファインテックジャパン株式会社)に埋め込み、試料を作製した。低温保持装置(商品名:CM1510S;ライカ マイクロシステムズ株式会社)を用いて、前記試料(脊髄を包埋したO.C.Tコンパウンドのブロック)から10μm切片を矢状に切除し、免疫染色用の切片を作製し、免疫染色を行った。
一次抗体は、抗MAP2(microtubule-associated protein 2、1:200 ウサギポリクローナル; アブカム社(Abcam);抗Olig2(1:300 ヒツジポリクローナル; アブカム社); 抗ICAM−1 (1:200 マウスモノクローナル抗体; アブカム社);抗コンドロイチン硫酸プロテオグリカン 4 (NG2, 1:200 ウサギポリクローナル; ミリポア社(Millipore); 抗APC (CC-1, 1:20 マウスモノクローナル; アブカム社);及び抗EAAT1 (GLAST; glutamate-aspartate transporter; 1:300 ウサギポリクローナル抗体;アブカム社) ; 抗GFP (1:500 ヤギポリクローナル抗体;アブカム社) ; 抗ニューロフィラメント−L(neurofilament-L(NF)、1:100 ウサギモノクローナル抗体; セルシグナリングテクノロジー社(cell signaling Technology)) ; 抗p75 NGFR (1:50 ウサギ モノクローナル抗体; アブカム社) ;抗ミエリン塩基性タンパク(Myelin Basic Protein(MBP)、(1:100 ウサギ ポリクローナル抗体; アブカム社) ;抗ミエリンタンパクゼロ(Myelin Protein Zero(P0)、1:100 ウサギ ポリクローナル抗体; アブカム社) ; 抗GFAP(glial fibrillary acidic protein、1:300 マウスモノクローナル, セルシグナリングテクノロジー社; 及び1:2 ウサギポリクローナル、ダコ社(Dako)); 及び抗受容体相互作用タンパク(RIP(receptor-interacting protein)、1:100 ウサギモノクローナル抗体、セルシグナリングテクノロジー社)であった。
次の日、切片をさらに、DyLight 488−標識ヤギ抗マウス抗体(ヤギ由来の二次抗体)(1:500; KPL社(Kirkegaard and Perry Laboratories, Inc.))、Alexa Fluor(登録商標) 650 ロバ(donkey)抗マウス抗体(1:200; アブカム社)、DyLight 549−標識ヤギ抗ウサギ 抗体(1:200; KPL)、DyLight594−標識ロバ(donkey)抗ウサギ抗体(1:200; アブカム社)、DyLight488−標識ロバ(donkey)抗ヤギ抗体(1:200; アブカム社)、DyLight 594-標識ヤギ 抗ニワトリ抗体(1:200; アブカム社) 及び Cy5−標識ロバ(donkey)抗ヒツジ抗体(1:200; ジャクソンイムノリサーチ社(Jackson ImmunoResearch))で、4℃で一晩培養した。
次いで、これらは、DAPI(4',6-diamidino-2-phenylindole dihydrochloride、ベクターラボラトリーズ社(Vector Laboratories))で対比染色された。蛍光像は、共焦点レーザー顕微鏡(FV-1000D; オリンパス社)を用いて撮影され、細胞の表現型の決定と細胞数のカウントに使用された。
1)分化培養
実施例1の8日間の培養後、OS細胞をポリオルニチンコートされた4ウェルチャンバースライド(Becton Dickinson)又はディッシュ(Asahi Glass Co., Ltd.)に置いた。細胞はN2 (Life Technologies), B27, 20 ng/ml BFGF, 20ng/ml EGF及び抗生物質−抗真菌溶剤のサプリメント含有DF培地で5日間培養された。分離培養のため、スフィアはトリプシン・EDTA (EDTA, Life Technologies)で処理され、ポリオルニチンコートされた4ウェルチャンバースライドに約5×103細胞/ウェルで置かれ、上述のサプリメント含有DF培地で5日間培養された。
上記培養細胞を用いて蛍光セルソーター分析を、FACS Canto II(商品名、BD Biosciences)にて行った。抗体は下記のとおりである:フィコエリトリン(phycoerythrin;PE)-標識マウス抗ラットCD54 (intercellular adhesion molecule 1;ICAM-1) (BD Biosciences)、アロフィコシアニン(Allophycocyanin;APC)-標識マウス抗ラットGLAST抗体(Miltenyi Biotec)、PE−標識アイソタイプコントロールマウスIgG1(BD Biosciences)、APC−標識アイソタイプコントロールマウス IgG2a (Miltenyi Biotec)、抗NG2−フルオレセイン(Fluorescein) (マウスモノクローナル抗体; R&D Systems, Inc.)、抗マウスIgG1 アイソタイプコントロールフルオレセイン (マウス モノクローナル抗体; R&D Systems, Inc.)、抗A2B5−Biotin (Miltenyi Biotec)、抗-マウス IgM−Biotin (Miltenyi Biotec)及び抗Biotin−FITC (Miltenyi Biotec)。OS細胞は37℃において、トリプシン−EDTA及び無酵素細胞解離バッファ(enzyme-free Cell Dissociation Buffer、Life Technologies社)でそれぞれ5分、10分処理し解離させた。OS細胞(1×105)はICAM−1、NG2、GLAST及びA2B5に対する抗体で4℃60分反応させ、洗浄した。さらに、細胞は抗Biotin FITC抗体で4℃30分間培養された。細胞は洗浄され、再懸濁された後、2×104細胞のソーティングの直前に40μmフィルターを通した。データはFLOWJO ソフトウェアv6.2.1 (Tree Star, Ashland OR)を用いて分析した。結果を図5に示す。
上記1)で培養したOS細胞は4%パラホルムアルデヒド(PFA)で固定され、1時間室温でブロッキング溶液を用いて培養され、4℃にて一次抗体で一晩培養され、次いで洗浄され、さらに4℃にて二次抗体で一晩培養された。前記一次抗体は下記のとおりである:抗MAP2(microtubule-associated protein 2, 1:200 ウサギポリクローナル抗体、アブカム社)、抗β3−tubulin (Tuj1, 1:200 マウスモノクローナル抗体、細胞signaling Technology)、抗グリア細胞繊維性酸性タンパク質(glial fibrillary acidic protein (GFAP), 1:300 マウスモノクローナル抗体、セルシグナリングテクノロジー社又は 1:2 ウサギポリクローナル抗体、ダコ社)、抗O4 (1:200 マウス モノクローナル抗体; Neuromics,)、抗ネスチン((nestin)、1:200 マウスモノクローナル抗体、アブカム社)、抗オリゴデンドロサイト転写因子2(Oligodendrocyte transcription factor 2;Olig2, 1:300 ヒツジポリクローナル抗体; アブカム社)、抗p75 NGF 受容体(1:50 ウサギモノクローナル抗体、アブカム社)、抗PDGFRα (1:200 ウサギ ポリクローナル抗体、アブカム社)、抗受容体相互作用タンパク(receptor-interacting protein (RIP)、1:100 ウサギモノクローナル抗体、セルシグナリングテクノロジー社)。BrdU に対するモノクローナル抗体 BMG6H8(1:10 マウス 5−ブロモ−2−デオキシ−ウリジン標識及び検出キットII, Cat. No. 1 299 964; ロッシュ社(Roche))はベーリンガーマンハイム(Boehringer-Mannheim)から入手した。
二次抗体はDyLight 488−標識ヤギ抗マウス (1:200; KPL), DyLight 549−標識ヤギ 抗ウサギ (1:200; KPL)及び Cy5−標識ロバ(donkey)抗ヒツジ(1:200; ジャクソンイムノリサーチ社)を用いた。
次いで、前記スライドはDAPIで対比染色された。蛍光像は、共焦点レーザー顕微鏡(FV-1000D; オリンパス社)を用いて撮影され、細胞の表現型の決定と細胞数のカウントに使用された。BrdU−, Olig2−, MAP2−及び GFAP−陽性細胞の割合(割合=(陽性細胞/全体の細胞数)×100)は、3つの独立した実験の3つの画像の平均±標準偏差(SD)として示す(図6)。
市販品のキット(QIAGEN社)を用いて分化培養から得られたスフィアからRNAを抽出した。Total RNA (1μg)はワンステップ逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)キット (QIAGEN)を用いて逆転写された。プライマー及び期待される単位複製配列(amplicon)塩基対(bp)のサイズは以下のとおりである:
Glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase (Gapdh),
forward:CCTCTGGAAAGCTGTGGCGT(配列番号1)
reverse:TTGGAGGCCATGTAGGCCAT(配列番号2), 430 bp;
Nestin (Nes),
forward:CAGGCTTCTCTTGGCTTTCTGG(配列番号3)
reverse:TGGTGAGGGTTGAGGTTTGT(配列番号4), 431 bp;
tubulin, beta 3 class III (Tubb3),
forward:TGCGTGTGTACAGGTGAATGC(配列番号5)
reverse:AGGCTGCATAGTCATTTCCAAG(配列番号6), 240 bp;
glial fibrillary acidic protein (Gfap),
forward:ACCTCGGCACCCTGAGGCAG(配列番号7)
reverse:CCAGCGACTCAACCTTCCTC(配列番号8), 141 bp;
S100 protein, beta polypeptide, neural (S100β)),
forward:GGATGTCTGAGCTGGAGAAG(配列番号9)
reverse:ACTCCTGGAAGTCACACTCC(配列番号10), 222 bp;
2',3'-cyclic nucleotide 3' phosphodiesterase (Cnp),
forward:CCGGAGACATAGTGCCCGCA(配列番号11)
reverse:AAAGCTGGTCCAGCCGTTCC(配列番号12), 450 bp.
図5Gに示されるように、RT−PCRでは、分化培養において、OS細胞はGfap、グリア(glial)由来S100β、オリゴデンドロサイトマーカー遺伝子2’,3’−サイクリック−ヌクレオチド 3’−ホスホジエステラーゼ(2',3'-cyclic-nucleotide 3'-phosphodiesterase;Cnp) (Kim SU et al., (1984) Brain Res 300:195-199.; Watanabe M et al., (2006) J Neurosci Res 84:525-533.)及びNg2を発現したが、Tuj1及びNesの発現はわずかであった。S100βはアストロサイト、シュワン細胞、オリゴデンドロサイト前駆細胞及びオリゴデンドロサイト(Cahoy JD et al., (2008) J Neurosci 28:264-278)によって発現される。
自律的分化培養由来のOS細胞は、免疫組織染色とRT−PCRよりRIP (分化したオリゴデンドロサイトのマーカー) (Friedman B et al., (1989) Glia 2:380-390.) とCNPase (分化したオリゴデンドロサイトのマーカー)に陽性であったが、GFAP及びTuj1には弱陽性であった(図5F)。
OS細胞は核Olig2、O4(オリゴデンドロサイトマーカー)及びRIPに陽性であったが、GFAP、MAP2、Tuj1及びp75には微陽性であった(図6)。p75陽性細胞はほとんど認めなかった(図6)。核Olig2−陽性細胞の多くはO4を共発現し、RIPに陽性であった(図6)。RIP−陽性細胞は、成熟オリゴデンドロサイトに特徴的な分岐した形態を示した(図6)。これらは、OS細胞がin vitroでオリゴデンドロサイトに分化したことを表す。
細胞増殖は、DNA合成時に組み込まれるチミジンのアナログであるBrdUを用いて評価した。OS細胞は、スフィアの内側及び外側において、BrdUを用いて染色された(図5A)。BrdUはOS細胞の6.7 ± 2.9% (平均±SD)に取り込まれていた(図6)。前記割合は3つの独立した実験の平均±SDを表す。スケールバーは20μmを表す。
実施例2の1)と同様にして調製した脊髄損傷モデルラットに1週間毎日シクロスポリン免疫抑制剤(10mg/kg)及びゲンタマイシン(8mg/kg)を皮下投与した。
また、実施例1で得られたEGFP発現オルファクトリースフィア細胞にトリプシン処理して得られたオルファクトリースフィア細胞をDF培地で希釈して細胞懸濁液を得た。
損傷から9日後、定位的注入器(ナリシゲ株式会社)とともに、マイクロガラスピペットに接続されたハミルトン(Hamilton)社製のシリンジを用いて、前記脊髄損傷モデルラットに、マイクロピペットの先端を損傷の中心点に挿入して、該細胞懸濁液(2.5×104細胞/μl)を1μl/分で2μl注入した。
全てのラットは、細胞注入後7日間、シクロスポリン免疫抑制剤(10mg/kg)及びゲンタマイシン(8mg/kg)を皮下投与された。
上記のようにして得られたOS細胞投与群ラット、実施例2の脊髄損傷モデルラット(非投与群)及び実施例2の脊髄損傷モデルラットにDF培地のみを注入したラット(ビヒクル投与群)について、BBBスコア(試験例1参照)で運動機能を評価した。BBBスコア(Basso-Beattie-Bresnahan Locomotor法;実験動物の後肢の運動機能を評価するシステム;Journal of Neurotrauma、12、1-21頁、1995年;オープンフィールドでの動物の動きを複数の観察者が目視で観察し、その機能を0[完全麻痺]〜21[正常]の21段階で測定、記録し評価する)で運動機能を評価した。本試験では、2名の観察者が、細胞注入前、細胞注入から1週間後及び細胞注入から2週間後の各段階で、運動機能を評価した。データは、1要因分散分析(ANOVA)に供した。F値が有意である場合、Tukey's post-hoc検定を行った。すべての場合において、有意な値は、P<0.05又はP<0.01に設定された。データは、特に示されない限り、平均±標準偏差で示す。
ビヒクル投与群のBBBスコアは、細胞注入前の0.3±0.5から、3.3±1.5、5.3±1.5、7.3±0.5及び8.3±0.5(それぞれ細胞注入から1、2、3、4週間後)であった(n=4)。
OS細胞投与群のBBBスコアは、細胞注入前の0から、2.6±0.5、7.6±0.5、10.0±1.0及び11.0±1.0(それぞれ細胞注入から1、2、3、4週間後)に改善された(n=5)。結果を図7に示す。
非投与群及びビヒクル投与群では、有意差がなかったが、OS細胞投与群ラットは運動機能において有意に差が見られた。
実施例1の8週齢雄SDラットと同じラットを用いて、セボフルランとO2を用いた麻酔吸入下に、両側伏在神経を暴露し、両足の伏在神経を切断した。神経切片は、近位及び遠位断端間に、10mmギャップを形成するように、切除された。
右伏在神経では、OS細胞を含まず、かつコラーゲンゲル(商品名:セルマトリックス(Cellmatrix)Type I−A;ブタ腱由来、酸可溶性;濃度3.0mg/ml, pH3.0;新田ゼラチン株式会社)を含むシリコンチューブ(内径:2mm、外径:3mm、長さ:10mm)を用いて、近位及び遠位神経断端を含むように包んだ。
左伏在神経では、OS細胞(実施例1で得られたEGFP発現OS細胞をトリプシン処理したもの;3×104 cells/μl)と前記コラーゲンゲルを含有するシリコンチューブ(内径:2mm、外径:3mm、長さ:10mm)を用いて、近位及び遠位神経断端を含むように包んだ。前記コラーゲンゲル(商品名:セルマトリックス(Cellmatrix)Type I−A)で培養された細胞はin vivoに近い三次元形態で増殖する。
二次抗体は、DyLight 488−標識ロバ抗ヤギ IgG H&L (1:100; アブカム社), DyLight 594−標識ヤギ抗ニワトリ IgY H&L (1:100; アブカム社)及び DyLight 594−標識ロバ抗ウサギ IgG H&L (1:100; アブカム社)であった。蛍光像は、共焦点レーザー顕微鏡(FV-1000D; オリンパス社)を用いて撮影された。
上記の本実験では、OS細胞はNG2、PDGFRα、A2B5及びGLASTを発現した。GLASTはアストロサイトのマーカーである。ほとんどすべてのOS細胞はin vitroでは核Olig2、O4及びRIPに陽性であった。投与されたGFP−陽性OS細胞のいくつかは細胞質Olig2、GFAP及びTuj1を発現した。再ミエリン化の開始時に、OPC及びオリゴデンドロサイトの両方のマーカーは同定され得るが、NG2及びGFAPではない(Fancy SP et al., (2004) Mol Cell Neurosci 27:247-54)。実験では、投与された EGFP− 及び核 Olig2−二重陽性細胞は分化したオリゴデンドロサイトの形態的な特徴を示した。投与されたOS細胞はRIP及びMBPに陽性であったが、NG2及びGFAPには陽性ではなかった。これらの知見が示すのは、OS細胞は、in vitro及びin vivoにおいて、オリゴデンドロサイトに分化したが、アストロサイトには分化しなかったということである。
Claims (9)
- (1)ヒト又はヒト以外の哺乳動物の鼻腔から採取された嗅粘膜細胞又は組織を酵素処理する工程、及び(2)前記工程(1)で得られた酵素処理物を無血清下に培養し、オルファクトリースフィア細胞を得る工程を含み、前記工程(1)における酵素が、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、デオキシリボヌクレアーゼI及びヒアルロニダーゼを含む酵素混合物であることを特徴とする、オルファクトリースフィア細胞の生成・単離方法。
- (1)ヒト又はヒト以外の哺乳動物の鼻腔から採取された嗅粘膜細胞又は組織を酵素処理する工程、及び(2)前記工程(1)で得られた酵素処理物を無血清下に培養し、オルファクトリースフィア細胞を得る工程を含み、前記工程(1)における酵素が、コラゲナーゼ、ディスパーゼ、デオキシリボヌクレアーゼI及びヒアルロニダーゼであることを特徴とする、生成・単離されたオルファクトリースフィア細胞の製造方法。
- 酵素処理の対象が、ヒト又はヒト以外の哺乳動物の鼻腔から採取された嗅上皮細胞であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
- 請求項1又は2に記載の方法で得られるオルファクトリースフィア細胞を用いて、オルファクトリースフィア細胞及び/又はオリゴデンドロサイト前駆細胞を含む脱随疾患治療剤を製造する工程を有することを特徴とする、脱随疾患治療剤の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の方法で得られるオルファクトリースフィア細胞を用いて、オルファクトリースフィア細胞及び/又はシュワン細胞を含む末梢神経軸索再生増強剤を製造する工程を有することを特徴とする、末梢神経軸索再生増強剤の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の方法で得られるオルファクトリースフィア細胞を、トリプシン処理し、人工髄液に添加する工程を有することを特徴とする請求項4記載の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の方法で得られるオルファクトリースフィア細胞を、トリプシン処理し、人工髄液に添加する工程を有することを特徴とする請求項5記載の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の方法で得られるオルファクトリースフィア細胞及び/又はオリゴデンドロサイト前駆細胞を含む脱随疾患治療剤。
- 請求項1又は2に記載の方法で得られるオルファクトリースフィア細胞及び/又はシュワン細胞を含む末梢神経軸索再生増強剤。
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