以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず、図1には、本発明に従う構造を有するプラズマCVD装置を用いて得られた樹脂製品として、自動車のリヤウインドウ用の樹脂ガラス10が、その部分縦断面形態において示されている。かかる図1から明らかなように、樹脂ガラス10は、基材としての基板12を有し、この基板12の表面(図1での上面)には、アンダーコート層14が積層形成されている。また、かかるアンダーコート層14の基板12側とは反対側の面上には、トップコート層16が、積層形成されている。なお、以下からは、便宜上、図1での上面を表面と言い、図1での下面を裏面と言うこととする。
基板12は、透明な平板形態を呈し、ポリカーボネートを用いて射出成形された樹脂成形品にて構成されている。なお、基板12は、射出成形以外の手法で成形されたものであっても良い。
アンダーコート層14は、樹脂ガラス10に対して、紫外線耐性等に基づいた耐候性を付与すること等を目的として、基板12の表面に対して、その全面を被覆するように、直接に積層形成されるもので、薄膜形態を呈している。このようなアンダーコート層14は、一般に、液状のアクリル樹脂やポリウレタン樹脂を基板12表面上に塗布して、塗膜を成膜した後、加熱操作や紫外線照射を行って、かかる塗膜を硬化させることにより形成される。なお、かかるアンダーコート層14は、形成工程の簡略化や迅速化、更には形成に要する設備コストの低減等を図る上において、紫外線硬化膜にて構成されていることが、望ましい。また、アンダーコート層14は、耐候性を有するものであれば、上記例示以外の樹脂材料や硬化手法を採用して、形成することもできる。更に、かかるアンダーコート層14は、単層構造であっても、複数層が積層された複層構造であっても良い。
トップコート層16は、樹脂ガラス10に対して、耐摩傷性(耐摩耗性と耐擦傷性)を付与するために、アンダーコート層14の基板12側とは反対側の面に、その全面を覆うように積層形成されるもので、薄膜形態を呈している。そして、ここでは、かかるトップコート層16が、優れた耐摩傷性を発揮するSiO2のプラズマCVD層にて構成されている。なお、トップコート層16の形成材料は、樹脂ガラス10に対して十分な耐摩傷性を付与し得るものであれば、特に限定されるものではないものの、一般に、SiO2の他、SiON やSi3N4 等の珪素化合物が用いられる。また、トップコート層16は、単層構造であっても、複数層が積層された複層構造であっても良い。
そして、かくの如き優れた特徴を有する樹脂ガラス10は、例えば、ポリカーボネート製の基板12上にアンダーコート層14を形成して、中間製品18を作製し、その後、この中間製品18のアンダーコート層14の表面上にトップコート層16を形成することで作製されるが、このトップコート層16の形成に際して、本発明に従う構造を有するプラズマCVD装置が有利に用いられるのである。
図2には、本発明に従う構造を有するプラズマCVD装置の一実施形態が、その縦断面形態において示されている。かかる図2から明らかなように、本実施形態のプラズマCVD装置20は、反応室としての真空チャンバ22と、この真空チャンバ22に固設された、プラズマ発生部としてのプラズマ発生装置24とを有している。そして、かかるプラズマCVD装置20にあっては、プラズマ発生装置24にて発生させられて、真空チャンバ22内に供給されるプラズマを利用して、真空チャンバ22に収容された中間製品18のアンダーコート層14上に、プラズマCVD層を積層形成するようになっている。
より具体的には、真空チャンバ22は、チャンバ本体26と蓋体28とを更に有している。チャンバ本体26は、筒状の側壁部30と、かかる側壁部30の下側開口部を閉塞する下側底壁部32とを備えた有底筒状乃至は筐体状を呈している。
チャンバ本体26の下側底壁部32の内面には、基板ホルダ34が配設されている。この基板ホルダ34は、全体として、平板形状を呈し、下側底壁部32の内面に対して、一方の板面を重ね合わせて配置された状態で固設されている。また、かかる基板ホルダ34の他方の板面からなる上面が、支持面36とされている。
そして、本実施形態では、基板ホルダ34の支持面36に対して、中間製品18が、基板12のアンダーコート層14の形成側とは反対側の裏面を重ね合わせた状態で支持されるようになっている。即ち、基板12が、アンダーコート層14の基板12側とは反対側の面を上側に向けて、チャンバ本体26内に露呈させた状態で、基板ホルダ34にて保持されるようになっているのである。
チャンバ本体26の側壁部30の下端部における周上の一箇所には、排気パイプ38が、チャンバ本体26の内外を連通するように側壁部30を貫通して、設置されている。また、かかる排気パイプ38上には、真空ポンプ40が設置されている。
蓋体28は、チャンバ本体26の上側開口部42の全体を覆蓋可能な大きさを有する平板にて構成されている。この蓋体28の上面には、取付筒部44が固設されている。取付筒部44は、上側底壁部46を有して下方に開口する、全体として、片側有底の円筒形状を呈している。
そして、チャンバ本体26では、蓋体28が、その下面の外周部において、チャンバ本体26の側壁部30の上端面に重ね合わされることにより、上側開口部42が蓋体28にて覆蓋されるようになっている。また、かかる覆蓋下で、蓋体28が、図示しないロック機構にて側壁部30にロックされることによって、チャンバ本体26内が気密に密閉されるようになっている。更に、そのようなチャンバ本体26の密閉状態下での真空ポンプ40の作動によって、チャンバ本体26内の気体が排気パイプ38を通じて外部に排出されて、チャンバ本体26内が減圧されるようになっている。、
そして、かくの如き構造とされた真空チャンバ22の蓋体28に対して、プラズマ発生装置24が固定されている。このプラズマ発生装置24は、例えば、特開2001−220680号公報に開示されるプラズマCVD装置に設けられるプラズマ生成室と同様な公知の構造を有している。
すなわち、図2に明示されてはいないものの、プラズマ発生装置24内には、平板状を呈する一対のプラズマ発生電極が、互いに所定距離を隔てて対向配置されている。そして、図2に示されるように、プラズマ発生装置24には、高周波電源48が接続されており、この高周波電源48が、プラズマ発生装置に内蔵された一対のプラズマ発生電極(図示せず)のうちの一方に対して電気的に接続されている。また、プラズマ発生装置24には、一対のプラズマ発生電極間に、例えば、アルゴンガス等の不活性ガスを導入する不活性ガス導入パイプ50が取り付けられている。更に、プラズマ発生装置24の下端部には、プラズマ発生装置24にて発生させられたプラズマを下方に向かって吹き出す吹出口52が設けられている。
そのようなプラズマ発生装置24は、蓋体28の上面に固設される取付筒部44の円形の中心孔56を挿通して、取付筒部44内を上下方向に延びるように配置されている。また、かかるプラズマ発生装置24の下端部が、真空チャンバ22の蓋体28の中央部に穿設された、大径の円形挿通孔54を挿通して、チャンバ本体26内に突入配置されている。そして、そのような配置状態下で、取付筒部44の上面の中心孔56を囲繞して突設された円筒状のボス部58にねじ止めされること等によって、取付筒部44に取り付けられている。また、そのようにして取付筒部44に取り付けられたプラズマ発生装置24では、吹出口52が、チャンバ本体26の下側底壁部32に固設された基板ホルダ34の支持面36の略中央部の上方に、それと所定距離を隔てた位置において、下方に向かって開口するように配置されている。
かくして、かかるプラズマ発生装置24にあっては、不活性ガス導入パイプ50を通じて、一対のプラズマ発生電極間にアルゴンガスが導入されると共に、それら一対のプラズマ発生電極間に、高周波電源48からの電力が印加されることにより、アルゴンのプラズマガスを発生させ得るようになっている。また、そのようにして発生させたアルゴンのプラズマガスを、吹出口52から、チャンバ本体26内における基板ホルダ34の支持面36の略中央部に向かって吹き出させるようになっている。
そして、本実施形態のプラズマCVD装置20においては、特に、第一、第二、及び第三のカバー筒部60,62,64が、円形挿通孔54を通じてチャンバ本体26に突入配置されたプラズマ発生装置24の下端部を取り囲むようにして、チャンバ本体26内に同軸的に配置されている。
より詳細には、第一のカバー筒部60は、全体として、円筒形状を呈し、円筒状の外周面を有するプラズマ発生装置24の外径よりも大きな内径と、かかるプラズマ発生装置24のチャンバ本体26への突入部位の長さよりも長い軸方向長さとを有している。また、この第一のカバー筒部60では、その上端側部分が、それ以外の部位よりも厚い厚さと小さな内径とを有するリング状取付部66とされている。
そして、そのような第一のカバー筒部60が、チャンバ本体26内に突入配置されたプラズマ発生装置24の下端部に外挿配置されている。また、そのような配置状態下で、第一のカバー筒部60の上端部に設けられたリング状取付部66が、プラズマ発生装置24に圧嵌め等されて、固定されていると共に、第一のカバー筒部60の下端部が、プラズマ発生装置24の下端面よりも下方に延び出すように位置している。
かくして、第一のカバー筒部60が、チャンバ本体26内に、プラズマ発生装置24の下端部と同軸上において移動不能に配置されている。そして、かかる第一のカバー筒部60が、プラズマ発生装置24の下端面に設けられた吹出口52の周りを外側から取り囲むように覆いつつ、吹出口52から吹き出されるプラズマの吹出方向となる下方に延び出している。
これにより、図2に矢印で示されるように、プラズマが、吹出口52から第一のカバー筒部60の内側に吹き出されるようになっている。そして、吹出口52から吹き出されたプラズマのうち、側方に吹き出された一部のプラズマが、第一のカバー筒部60の内周面に衝突することで、吹出口52から吹き出されたプラズマのチャンバ本体26内への拡散が可及的に防止されるようになっている。
一方、第二のカバー筒部62は、第一のカバー筒部60の薄肉部分と略同一の厚さと、第一のカバー筒部60の全長よりも長い軸方向長さと、第一のカバー筒部60の外径よりも大きな内径とを有する円筒形状を呈している。そして、そのような第二のカバー筒部62が、チャンバ本体26内において、第一のカバー筒部60の周りに、それと同軸上で、軸直角方向外方に離間し、蓋体28の下面から下方に延びる状態で、上下方向に移動可能に配置されている。また、かかる配置状態下で、第二のカバー筒部62の上端側部分が、蓋体28の円形挿通孔54を挿通して、蓋体28よりも上方に突出しており、それによって、第二のカバー筒部62の上端部が、蓋体28上に固設された取付筒部44内に突入配置されている。
第三のカバー筒部64は、第二のカバー筒部62と略同一の厚さと、第二のカバー筒部62の全長よりも更に長い軸方向長さと、第二のカバー筒部62の外径よりも更に大きな内径とを有する円筒形状を呈している。このような第三のカバー筒部64は、チャンバ本体26内に、第二のカバー筒部62の周りに、それと同軸上で、軸直角方向外方に離間し、蓋体28の下面から下方に延びる状態で、上下方向に移動可能に配置されている。また、かかる配置状態下で、第三のカバー筒部64の上端側部分が、蓋体28の円形挿通孔54を挿通して、蓋体28よりも上方に突出しており、それによって、第三のカバー筒部64の上端部が、蓋体28上に固設された取付筒部44内に突入配置されている。
そして、それら第二のカバー筒部62と第三のカバー筒部64の取付筒部44内に突入配置された各上端部が、取付筒部44内に設けられた、第二のカバー筒部62を上下方向に移動させるための第一の移動ユニット68と、第三のカバー筒部64を上下方向に移動させるための第二の移動ユニット70とに対して、それぞれ連結されている。
第一の移動ユニット68と第二の移動ユニット70は、取付筒部44内での配置位置が互いに異なるものの、ケーシング72と駆動モータ74と長手のねじ軸76と雌ねじ部材78とを備えた互いに同一の構造を有している。それ故、以下には、第一の移動ユニット68の構造のみを具体的に説明し、第二の移動ユニット70の構造の具体的な説明を省略する。
第一の移動ユニット68が有するケーシング72は、長手矩形の筐体からなっている。そして、このケーシング72は、取付筒部44内に突入配置された第三のカバー筒部64の上端部の外側において、蓋体28の上面上に上下方向に延びるように立設されている。。また、このケーシング72には、取付筒部44内の中心部に上下方向に延びるように配置されたプラズマ発生装置24側に向かって開口して、上下方向に延びる開口部80が形成されている。駆動モータ74は、正逆方向に所望の回転角度だけ回転可能な、例えばサーボモータからなっており、ケーシング72の上端部に、図示しない駆動軸を下方に突出させた状態で固設されている。ねじ軸76は、ケーシング72内に上下方向に延びるように配置されている。そして、このねじ軸76が、その上端部において、駆動モータ74の駆動軸(図示せず)に固定されている一方、下端部において、ケーシング72の下端部に対して、中心軸回りに回転可能に且つ中心軸方向に移動不能に支持されている。雌ねじ部材78は、ねじ軸76に螺合して、配置されている。また、雌ねじ部材78は、ねじ軸76への螺合状態下で、ケーシング72の開口部80の内周面のうち、水平方向に対向して、上下方向に延びる二つの内周面部分に摺動可能に接触し、且つ一部が、かかる開口部80を通じて、ケーシング72の側方に突出している。これにより、雌ねじ部材78が、ねじ軸76の軸方向に移動可能であるものの、回転不能とされている。
そして、かかる第一の移動ユニット68にあっては、駆動モータ74の正逆方向への回転駆動に伴って、ねじ軸76が、正逆方向に回転するようになっている。また、そのようなねじ軸76の正逆方向への回転により、雌ねじ部材78が、ねじ軸76の軸方向両側に向かって移動するようになっている。即ち、第一の移動ユニット68が、駆動モータ74とねじ軸76と雌ねじ部材78とからなるねじ送り機構を有して構成されている。そして、かくの如き構造を有する第一の移動ユニット68の雌ねじ部材78のケーシング72から側方への突出部分に対して、取付筒部44内に突入配置された第二のカバー筒部62の上端部が固定されて、取り付けられている。
なお、ここでは、第三のカバー筒部64の周上の一箇所に、上端面において開口して、軸方向に延びる長手の切欠部82が設けられている。そして、第一の移動ユニット68の雌ねじ部材78のケーシング72から側方への突出部分が、かかる切欠部82を通じて、第二のカバー筒部62の上端部にまで達するようになっている。また、この切欠部82は、その軸方向長さが、第三のカバー筒部64の第二の移動ユニット70による上下方向への移動ストロークよりも大きくされている。
一方、第二の移動ユニット70は、上記したように、第一の移動ユニット68と同様な構造を有し、取付筒部44内で、プラズマ発生装置24と、それに対して軸直角方向外方に相互に離間配置された第二のカバー筒部62と第三のカバー筒部64の各上端部とを間に挟んで、第一の移動ユニット68とは反対側に配置されている。そして、かかる第二の移動ユニット70の雌ねじ部材78のケーシング72から側方への突出部分に対して、取付筒部44内に突入配置された第三のカバー筒部64の上端部が固定されている。
そして、ここでは、第一及び第二移動ユニット68,70のそれぞれの駆動モータ74と、真空チャンバ22の外部に設置された指令部84と制御部86とによってサーボ機構が構成されている。指令部84は、各駆動モータ74の回転方向と回転角度を指示する指示信号を制御部86に出力するようになっている。制御部86は、指令部84からの指示信号に応じて、各駆動モータ74の作動を制御する制御信号を各駆動モータ74に出力するようになっている。各駆動モータ74には、その回転角度を検出する公知の角度検出センサ(図示せず)が内蔵されている。
そして、そのような指令部84と制御部86と各駆動モータ74とによって構成されるサーボ機構により、各駆動モータ74が、指令部84から制御部86に入力される任意の方向に、任意の回転角度だけ回転させられると共に、そのような各駆動モータ74の回転駆動に応じて、第一及び第二移動ユニット68,70の各雌ねじ部材78が、上下何れかの任意の方向に、任意の距離だけ移動させられるようになっているのである。
かくして、本実施形態のプラズマCVD装置20では、サーボ機構による第一の移動ユニット68と第二の移動ユニット70の各駆動モータ74の回転駆動制御に基づく各雌ねじ部材78の軸方向への移動に伴って、第二のカバー筒部62と第三のカバー筒部64とが、それぞれ、上下方向に移動するようになっている。そして、そのような第一及び第二のカバー筒部62,64の上下方向への移動によって、蓋体28の円形挿通孔54の下側開口部からの第二及び第三のカバー筒部62,64の延出量や、プラズマ発生装置24の吹出口52からの第二及び第三のカバー筒部62,64の延出長さが変化させられるようになっている。このことから明らかなように、本実施形態では、第一の移動ユニット68と第二の移動ユニット70とによって、変更手段が構成されている。また、ここでは、第一の移動ユニット68と第二の移動ユニット70の各駆動モータ74の回転駆動が、サーボ機構によって、それぞれ別個に制御されるようになっている。
具体的には、図2に実線で示されるように、第一及び第二の移動ユニット68,70の各雌ねじ部材78が、各ねじ軸76の下端にまで移動させられたときに、第二及び第三のカバー筒部62,64の吹出口52からの延出長さが最大とされて、第二及び第三のカバー筒部62,64の上下方向での移動位置が、下側限度位置とされるようになっている。一方、図2に二点鎖線で示されるよう、に第一及び第二の移動ユニット68,70の各雌ねじ部材78が、各ねじ軸76の上端にまで移動させられたときには、第二及び第三のカバー筒部62,64の吹出口52からの延出長さが最小とされて、第二及び第三のカバー筒部62,64の上下方向での移動位置が、上側限度位置とされるようになっている。
そして、第二のカバー筒部62の移動位置が下側限度位置とされたときに、第二のカバー筒部62の下端部が、第二のカバー筒部62の軸直角方向内方に隣り合って位置する第一のカバー筒部60の下端縁よりも下方に延び出して、第一のカバー筒部60の下側開口部の周りを取り囲んで配置されるようになっている。また、第二のカバー筒部62の移動位置が下側限度位置とされている状態下で、第三のカバー筒部64の移動位置が下側限度位置とされたときには、第三のカバー筒部64の下端部が、第三のカバー筒部64の軸直角方向内方に隣り合って位置する第二のカバー筒部62の下端縁よりも下方に延び出して、第二のカバー筒部62の下側開口部の周りを取り囲んで配置されるようになっている。
一方、第二のカバー筒部62と第三のカバー筒部64の移動位置が、それぞれ上側限度位置とされたときには、それら第二のカバー筒部62と第三のカバー筒部64の各下側開口部が、第一のカバー筒部60の下側開口部と略同じ高さ位置とされる。それにより、第二のカバー筒部62の下端部による第一のカバー筒部60の下側開口部の囲繞と、第三のカバー筒部64の下端部による第二のカバー筒部62の下側開口部の囲繞とが、それぞれ解消されるようになっている。
また、チャンバ本体26内には、2本の第一ガス導入パイプ90,90と2本の第二ガス導入パイプ92,92が、それぞれの一端側部分において突入配置されている。そして、各第一ガス導入パイプ90のチャンバ本体26内への突入側端部の開口部が、第一導入口94とされている一方、各第二ガス導入パイプ92のチャンバ本体26内への突入側端部の開口部が、第二導入口96とされている。
また、2本の第一ガス導入パイプ90,90と2本の第二ガス導入パイプ92,92は、何れも、他端部側において、第一ガスボンベ98,98と第二ガスボンベ100,100とに対して、開閉バルブ102を介して、それぞれ接続されている。ここでは、各第一ガス導入パイプ90に接続される各第一ガスボンベ98に、前記中間製品18のアンダーコート層14上に形成されるべきトップコート層16を構成するSiO2のプラズマCVD層を形成するための成膜用ガスに原料ガスとして含まれる珪素化合物ガスが、大気圧を超える圧力で収容されている。また、各第二ガス導入パイプ92に接続される各第二ガスボンベ100には、かかる成膜用ガスに反応ガスとして含まれる酸素ガスが、大気圧を超える圧力で収容されている。これによって、珪素化合物ガスと酸素ガスとを含む成膜用ガスが、2本の第一ガス導入パイプ90,90と2本の第二ガス導入パイプ92,92に導かれて、各第一導入口94と各第二導入口96とを通じて、チャンバ本体26内に導入されるようになっている。
なお、本実施形態では、第一ガスボンベ98内に収容される珪素化合物ガスとして、モノシラン(SiH4)ガスが、用いられている。この珪素化合物ガスとしては、モノシランガス以外に、例えば、ジシラン(Si2H6 )ガス等の無機珪素化合物ガスや、テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン等のシロキサン類や、メトキシトリメチルシラン、エトキシトリメチルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、トリメトキシシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリメトキシプロピルシラン、トリエトキシメチルシラン、トリエトキシジメチルシラン、トリエトキシエチルシラン、トリエトキシフェニルシラン、テトラメチルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のシラン類、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザン等のシラザン類等の有機珪素化合物のガス等が、それぞれ単独で、或いはそれらが適宜に組み合わされて使用される。2種類以上の珪素化合物ガスを用いる場合には、それら複数種類の珪素化合物ガスを混合した状態で、一つの第一ガスボンベ98内に収容しても良く、或いは2種類以上の珪素化合物ガスを、複数の第一ガスボンベ98内に、それぞれ別個に収容して、そのような第一ガスボンベ98と同数の第一ガス導入パイプ90を用いて、それらを1本ずつ、各第一ガスボンベ98に接続しても良い。
また、第一及び第二ガスボンベ98,100内に収容されるガスの種類は、トップコート層16を構成する化合物に応じて、適宜に変更可能である。従って、トップコート層16を、例えば、SiON やSi3N4 等の珪素化合物にて構成する場合には、第二ガスボンベ100内には、成膜用ガスの反応ガスとして、酸素ガスに加えて、或いはそれに代えて、窒素ガスやアンモニアガス等が収容される。また、トップコート層16を珪素化合物以外の化合物にて構成する場合には、第一ガスボンベ98内に収容される、成膜用ガスの原料ガスとして、トップコート層16を構成する化合物に応じたガスが、珪素化合物ガスに代えて、用いられる。
そして、図2に示されるように、2本の第一ガス導入パイプ90,90は、それぞれの第一ガスボンベ98との接続側とは反対の端部側部分が、チャンバ本体26の蓋体28上に固設された取付筒部44の上側底壁部46を貫通し、更に、蓋体28の円形挿通孔54を挿通して、チャンバ本体26における第一のカバー筒部60と第二のカバー筒部62との間の空間内に突入配置されている。これにより、各第一ガス導入パイプ90の第一導入口94が、第二のカバー筒部62の内側に配置されている。また、かかる第一導入口94は、第二のカバー筒部62の内側において、第一のカバー筒部60の下側開口部と略同一の高さに位置している。更に、そのような第一導入口94をそれぞれ有する2本の第一ガス導入パイプ90,90は、第一のカバー筒部60を間に挟んで、第一のカバー筒部60の径方向の両側に配置されている。
一方、2本の第二ガス導入パイプ92,92は、それぞれの第二ガスボンベ100との接続側とは反対の端部側部分が、チャンバ本体26の蓋体28上に固設された取付筒部44の上側底壁部46を貫通し、更に、蓋体28の円形挿通孔54を挿通して、チャンバ本体26における第二のカバー筒部62と第三のカバー筒部64との間の空間内に突入配置されている。これにより、各第二ガス導入パイプ92の第二導入口96が、第三のカバー筒部64の内側に配置されている。また、かかる第二導入口96は、第三のカバー筒部64の内側において、第一のカバー筒部60と第二のカバー筒部62の各下側開口部と略同一の高さに位置している。更に、そのような第二導入口96をそれぞれ有する2本の第二ガス導入パイプ92,92は、第二のカバー筒部62を間に挟んで、第二のカバー筒部62の径方向の両側に配置されている。
かくして、ここでは、第二のカバー筒部62と第三のカバー筒部64とが、それぞれの下側限度位置に配置されているときに、2本の第一ガスボンベ98,98から2本の第一ガス導入パイプ90,90にて導かれたモノシランガスが、各第一導入口94を通じて、第二のカバー筒部62の内側に導入されるようになっている。また、2本の第二ガスボンベ100,100から2本の第二ガス導入パイプ92,92にて導かれた酸素ガスが、第三のカバー筒部64の内側に導入されるようになっている。
そして、それにより、プラズマ発生装置24の吹出口52から吹き出されて、第一のカバー筒部60の下側開口部から第二のカバー筒部62の内側に導かれるアルゴンのプラズマガスに対して、モノシランガスが、第二のカバー筒部62の内側で、また、酸素ガスが、第三のカバー筒部64の内側で、それぞれ接触して、プラズマ化されるようになっている。これらのことから明らかなように、本実施形態では、第一及び第二ガス導入パイプ90,92と第一及び第二導入口94,96と第一及び第二ガスボンベ98,100とにて、ガス導入手段が構成されている。
また、本実施形態では、図2に矢印で示されるように、モノシランガスが、各第一ガス導入パイプ90の第一導入口94から第二のカバー筒部62の内側に導入されたときに、第一導入口94から第二のカバー筒部62の径方向外方に向かって吹き出された一部のモノシランガスや、アルゴンプラズマガスとの接触によりプラズマ化したモノシランプラズマガスが、第二のカバー筒部62の内周面に衝突する。これによって、それらモノシランガスとモノシランプラズマガスのチャンバ本体26内への拡散が可及的に防止されるようになっている。
さらに、酸素ガスが、各第二ガス導入パイプ92の第二導入口96から第三のカバー筒部64の内側に導入されたときには、第二導入口96から第三のカバー筒部64の径方向外方に向かって吹き出された一部の酸素ガスや、アルゴンプラズマガスとの接触によりプラズマ化した酸素プラズマガスが、第三のカバー筒部64の内周面に衝突する。これによって、それら酸素ガスと酸素プラズマガスのチャンバ本体26内への拡散が可及的に防止されるようになっている。
そして、ここでは、第二のカバー筒部62と第三のカバー筒部64とを、それぞれ、下側限度位置から上方に所定寸法だけ上昇させて、第一のカバー筒部60の下側開口部から第二のカバー筒部62の下側開口部までの距離や、第二のカバー筒部62の下側開口部から第三のカバー筒部64の下側開口部までの距離を短くすることによって、アルゴンプラズマガスとの接触によりプラズマ化された高温のモノシランプラズマガスの一部と高温の酸素プラズマガスの一部とを、チャンバ本体26内に、意図的に拡散できるようになっている。そして、それにより、基板ホルダ34上に支持される中間製品18のアンダーコート層14上に到達した際のモノシランガスのプラズマと酸素ガスのプラズマの温度を効果的に低下させることが可能となっている。
ところで、かくの如き構造を有するプラズマCVD装置20を用いて、図1に示されるような構造の樹脂ガラス10を製造する際には、以下の手順に従って、その操作が進められる。
すなわち、先ず、ポリカーボネート製の基板12を射出成形等により成形して、準備する。この基板12の成形方法は、射出成形に限定されるものではなく、公知の方法が適宜に採用可能である。
その後、準備された基板12の表面に、アクリル樹脂やポリウレタン樹脂等の塗膜層を、公知のスプレー塗装やディッピング等により形成した後、かかる塗膜層を加熱したり、或いは紫外線に当てたりして硬化させる。これによって、基板12の表面にアンダーコート層14を積層形成して、中間製品18(図2参照)を得る。
次いで、図2に示される如き構造を有するプラズマCVD装置20を用いて、中間製品18におけるアンダーコート層14の表面上に、トップコート層16を積層形成する。
具体的には、先ず、図2に示されるように、中間製品18を、基板ホルダ34の支持面36上に支持させた状態で、基板ホルダ34にて保持する。このとき、中間製品18は、アンダーコート層14の表面を上側に向けた状態で配置される。
次いで、上側開口部42を蓋体28にて覆蓋した後、図示しないロック機構にて、蓋体28をチャンバ本体26にロックする。これにより、真空チャンバ22内を気密に密閉する。そして、その後、真空ポンプ40を作動させて、真空チャンバ22内を減圧する。この減圧操作によって、真空チャンバ22内の圧力は、例えば10-5〜50Pa程度とされる。
また、そのような真空チャンバ22内の減圧操作とは別に、前記したサーボ機構による作動制御の下で、第一及び第二移動ユニット68,70を作動させることにより、第二及び第三のカバー筒部62,64の上下方向での移動位置を、それぞれ予め設定された位置とする。ここでは、第二及び第三のカバー筒部62,64が、下側限度位置にそれぞれ位置させられている。
なお、第二及び第三のカバー筒部62,64の位置は、後述するようにして第二及び第三のカバー筒部62,64内でプラズマ化された高温のモノシランプラズマガスや高温の酸素プラズマガスが、中間製品18表面上に到達したときの各プラズマガスの温度等を考慮した上で、適宜に決定される。即ち、例えば、中間製品18の基板12が耐熱性の低いものである場合には、モノシランプラズマガスや酸素プラズマガスの中間製品18表面上に到達したときの温度が比較的に低くなるように、第二及び第三のカバー筒部62,64の上下方向の移動位置を、それぞれ下側限度位置よりも所定寸法だけ高い位置とするのである。
しかしながら、第二及び第三のカバー筒部62,64の上下方向の移動位置が上側限度位置に近い程、第二及び第三のカバー筒部62,64の内側に導入されるモノシランガスや酸素ガスの真空チャンバ22内への拡散量が増加する。このため、第二及び第三のカバー筒部62,64の上下方向の移動位置の決定に際しては、モノシランプラズマガスや酸素プラズマガスの中間製品18表面上への到達温度だけでなく、モノシランガスや酸素ガスの真空チャンバ22内への拡散量をも考慮する必要がある。
そして、真空チャンバ22内の圧力が所定の値となったら、真空ポンプ40を作動させたままで、プラズマ発生装置24内に、アルゴンガス等の不活性ガスを、不活性ガス導入パイプを通じて導入する。なお、プラズマ発生装置24内に導入されるガスは、アルゴンガスに限定されるものではなく、真空チャンバ22内で、トップコート層16を形成するための成膜用ガスのプラズマと反応しないものであれば良い。従って、アルゴンの他に、例えば、ヘリウムやネオン、キセノン、クリプトン等の不活性ガスが、或いは不活性ガス以外のものであっても、プラズマ状態で、成膜用ガスのプラズマと反応しないガスが、適宜に用いられる。また、プラズマCVD層からなるトップコート層16を構成する成膜用ガスに含まれるガス成分のうちの一種を、プラズマ発生装置24内に導入されるガスとして使用することも可能である。
次に、プラズマ発生装置24内に不活性ガスを導入する一方で、プラズマ発生装置24に接続された高周波電源48をON作動させる。これにより、プラズマ発生装置24内で、アルゴンガスをプラズマ化して、アルゴンプラズマガスを発生させる。そして、図2に矢印で示されるように、かかるアルゴンプラズマガスを、プラズマ発生装置24の吹出口52から、真空チャンバ22内における第一のカバー筒部60の内側に吹き出させる。また、そのようなアルゴンプラズマガスを、第二のカバー筒部62と第三のカバー筒部64のそれぞれの内側に流通させて、第三のカバー筒部64の下側開口部から、基板ホルダ34に支持される中間製品18のアンダーコート層14の表面上に吹き出させる。このとき、第一、第二、及び第三のカバー筒部60,62,64によって、アルゴンプラズマガスの真空チャンバ22内への拡散が防止される。
そして、そのように、吹出口52から吹き出されたアルゴンプラズマガスを第一、第二、及び第三のカバー筒部60,62,64の内側に流通させる一方で、第一ガスボンベ98と第二ガスボンベ100の開閉バルブ102,102をそれぞれ開作動させる。これにより、第一ガスボンベ98内のモノシランガスを、第一ガス導入パイプ90の第一導入口94から、真空チャンバ22内における第二のカバー筒部62の内側空間に導入する。また、それと共に、第二ガスボンベ100内の酸素ガスを、第二ガス導入パイプ92の第二導入口96から、真空チャンバ22内における第三のカバー筒部64の内側空間に導入する。
このとき、モノシランガスと酸素ガスは、第二のカバー筒部62と第三のカバー筒部64とにて、真空チャンバ22内における第二及び第三の筒部62,64の外側空間への拡散が可及的に防止される。それによって、第二及び第三の筒部62,64の内側に導入されたモノシランガスと酸素ガスの全部、或いはその殆どが、第二及び第三の筒部62,64の内側において、アルゴンプラズマガスと接触する。そうして、モノシランプラズマガスと酸素プラズマガスとを生成し、それらを、第三のカバー筒部62の下側開口部から、中間製品18のアンダーコート層14の表面に向かって吹き出させる。
そして、モノシランプラズマガスと酸素プラズマガスのプラズマCVD法による反応を惹起させて、SiO2を生成し、かかるSiO2を、中間製品18のアンダーコート層14上に積層させる。
なお、ここでは、第三のカバー筒部64の下端部が、第二のカバー筒部62の下側開口部を取り囲むように配置されているため、第三のカバー筒部64の内側に導入された酸素ガスが、第二のカバー筒部62の下側開口部よりも下側で、アルゴンプラズマガスと接触して、プラズマ化されるようになる。それ故、モノシランプラズマガスと酸素プラズマガスとが、中間製品18のアンダーコート層14の表面に、より近い第三のカバー筒部64の内側空間内と、真空チャンバ22内における中間製品18のアンダーコート層14の表面上に位置する空間内とにおいて、モノシランガスのプラズマと酸素ガスのプラズマとのプラズマCVD用による反応が局所的に進行する。それにより、かかる反応で生成されるSiO2の真空チャンバ22内への拡散が有利に防止されて、生成されるSiO2の大部分が、アンダーコート層14の表面上に堆積するようになる。
かくして、中間製品18のアンダーコート層14の表面上に、SiO2のプラズマCVD層からなるトップコート層16を積層形成する。これによって、図1に示される如き構造を備えた、目的とする樹脂ガラス10を得るのである。
以上の説明から明らかなように、本実施形態のプラズマCVD装置20を用いれば、真空チャンバ22内でのモノシランプラズマガスと酸素プラズマガスとの反応によって生成されるSiO2の大部分を、中間製品18のアンダーコート層14の表面上に堆積させることができる。このため、真空チャンバ22の内面や基板ホルダ34等のアンダーコート層14の表面以外へのSiO2の付着を、効果的に抑制することができる。それ故、真空チャンバ22内の不要な部位に付着したSiO2を除去するための余分な作業から有利に開放されるか、或いはそのような作業の実施回数を飛躍的に減少させることができる。その結果、トップコート層16の形成工程、ひいては樹脂ガラス10の製造工程の簡略化及び効率化を、極めて効果的に達成することが可能となる。
そして、本実施形態のプラズマCVD装置20によれば、特に、SiO2のプラズマCVD層からなるトップコート層16を形成するための成膜用ガスに含まれるモノシランガスや酸素ガスが、第二及び第三のカバー筒部62,64の内側に導入されることで、真空チャンバ22内への拡散が防止されて、それらモノシランガスと酸素ガスの全部、或いはその殆どが、プラズマ化される。それ故、真空チャンバ22内に導入されるモノシランガスと酸素ガスとが、プラズマ化される前に、そのまま、真空ポンプ40の吸引によって真空チャンバ22外に排出されることが、可及的に阻止され、以て、真空チャンバ22内に導入されるモノシランガスと酸素ガスとが、トップコート層16を形成するための成膜用ガスとして、無駄なく有効利用され得る。
従って、かくの如き本実施形態のプラズマCVD装置20を用いれば、トップコート層16を構成するSiO2の、基板12のアンダーコート層14上以外への付着を可及的に抑制しつつ、基板12のアンダーコート層14上に、SiO2のプラズマCVD層からなるトップコート層16を効率的に且つ経済的に有利に積層形成することができるのである。
また、本実施形態では、第一のカバー筒部60が、吹出口52の周りを囲んで配置されている一方、第二及び第三のカバー筒部62,64が、かかる第一のカバー筒部60の下側開口部の周りを囲んで配置されており、更に、第二のカバー筒部62の内側と第三のカバー筒部64の内側のみに、第一導入口94と第二導入口96とが、それぞれ配置されている。このため、第一のカバー筒部60が設けられない場合に比して、第二及び第三のカバー筒部62,64の内側に、第一及び第二導入口94,96を通じて導入されるモノシランガスや酸素ガスを、吹出口52から吹き出されるアルゴンプラズマガスに対して、吹出口52から下方に離間した、中間製品18のアンダーコート層14の表面上に近い位置で接触させることができる。これによって、モノシランプラズマガスと酸素プラズマガスのプラズマCVD法による反応によって生成されるSiO2が、吹出口52の周囲に付着することを有利に防止できる。
さらに、本実施形態では、トップコート層16を形成するための成膜用ガスに含まれるモノシランガスと酸素ガスとが、第一導入口94と第二導入口96とを通じて、第二のカバー筒部62の内側と第三のカバー筒部64の内側とに、それぞれ別個に導入されるようになっている。これによって、モノシランガスと酸素ガスとが、アルゴンプラズマガスに対してそれぞれ別個に接触するようになり、以て、モノシランガスと酸素ガスが、それぞれ効率的にプラズマ化され得る。
以上、本発明の具体的な構成について詳述してきたが、これはあくまでも例示に過ぎないのであって、本発明は、上記の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。
例えば、第一ガス導入パイプ90と第二ガス導入パイプ92は、第一導入口94と第二導入口96とが、第二のカバー筒部62の内側と第三のカバー筒部64の内側にそれぞれ配置されておれば、それらの本数が、何等限定されるものではない。即ち、第二のカバー筒部62の内側への第一ガス導入パイプ90の配置本数と、第三のカバー筒部64の内側への第二ガス導入パイプ92の配置本数が、それぞれ、1本だけ、或いは3本以上とされていても、何等差し支えないのである。
また、第一及び第二ガス導入パイプ90,92の第一及び第二導入口94,96を通じて、第二及び第三のカバー筒部62,64の内側に導入されるガスの種類も、適宜に変更可能である。即ち、第一導入口94を通じて、第二のカバー筒部62の内側に、プラズマCVD層からなるトップコート層16を形成するための成膜用ガスに含まれるガス成分のうちの少なくとも何れか一種類のガス成分を導入する一方、第二導入口96を通じて、第三のカバー筒部64の内側に、かかる成膜用ガスに含まれるガス成分のうちの少なくとも何れか一種類のガス成分を導入するように為せば良いのである。そして、第一導入口94から導入されるガス成分と第二導入口96から導入されるガス成分とが、互いに全てが同じ種類、或いは一部が同じ種類であっても、又は全てが異なる種類であっても、何等差し支えない。
さらに、前記実施形態では、吹出口52から吹き出されるプラズマガスを案内するための第一のカバー筒部60と、プラズマCVD層からなるトップコート層16を形成するための成膜用ガスに含まれる一種のガス成分が内側に導入される第二のカバー筒部62と、かかる成膜用ガスに含まれる別の種類のガス成分が内側に導入される第三のカバー筒部64とが、設けられていた。しかしながら、カバー筒部は、吹出口52の周りを囲んで、吹出口52から吹き出されるプラズマの吹出方向に延出するように、反応室としての真空チャンバ22内に配置されておれば、その配置数が、何等限定されるものではない。
例えば、図3に示されるように、第二及び第三のカバー筒部62,64を省略して、一つの第一のカバー筒部60だけを、吹出口52の周りを囲んで、吹出口52から真空チャンバ22内へのプラズマの吹出方向に延びるように設置しても良い。この場合には、プラズマCVD層からなるトップコート層16を形成するための成膜用ガスに含まれる一種のガス成分を導入する第一のガス導入パイプ90の第一導入口94と、成膜用ガスの別の種類のガス成分を導入する第二のガス導入パイプ92の第二導入口96とが、第一のカバー筒部60の内側に、それぞれ配置される。第一のカバー筒部60の内側に配置されるべき導入口やガス導入パイプの数は、第一のカバー筒部60の内側に導入されるべきガス成分の種類に応じて、適宜に決定される。
また、ここでは、変更手段たる第一移動ユニット68が省略されて、第一のカバー筒部60が、蓋体28に対して移動不能に固定されている。なお、図3に示されるプラズマCVD装置20、更には後述する図4に示されるプラズマCVD装置20に関しては、前記実施形態に係るプラズマCVD装置20と同様な構造とされた部材及び部位について、図1と同一の符号を付すことにより、それらの詳細な説明を省略する。
このような構造を有する本実施形態のプラズマCVD装置20にあっても、第一のカバー筒部60によって、吹出口52から吹き出されるアルゴンプラズマガスと、第一のカバー筒部60の内側に導入される成膜用ガスの真空チャンバ22内への拡散が有利に防止される。それによって、前記第一の実施形態において奏される作用・効果と同様な作用・効果が、有効に享受され得る。
また、図4に示されるように、第一のカバー筒部60を、吹出口52の周りを囲んで、吹出口52から真空チャンバ22内へのプラズマの吹出方向に延びるように設置すると共に、第二のカバー筒部62を、第一のカバー筒部60の下側開口部の周りを囲んで、下方に延びるように設置しても良い。なお、ここでは、第二のカバー筒部62が、第一の移動ユニット68によって上下方向に移動可能とされている。また、第一のガス導入パイプ90の第一導入口94と第二のガス導入パイプ92の第二導入口96とが、第二のカバー筒部62の内側に、それぞれ配置されている。
このような構造を有する本実施形態のプラズマCVD装置20にあっても、前記第一の実施形態において奏される作用・効果と同様な作用・効果が、有効に享受され得る。
さらに、図示されてはいないものの、プラズマCVD層からなるトップコート層を形成するための成膜用ガスの種類数と同数のカバー筒部を、軸直角方向に互いに離間して、真空チャンバ内に配置すると共に、それら各カバー筒部の内側に、互いに異なる種類のガス成分を導入する導入口をそれぞれ設けるようにしても良い。その際には、好ましくは、軸直角方向において内側と外側に隣り合って位置する二つのカバー筒部のうちの外側に位置するカバー筒部が、内側に位置するカバー筒部の少なくとも下側開口部の周りを囲んで位置するように配置される。
また、成膜用ガスに含まれるガス成分をカバー筒部の内側に導入するガス導入手段は、カバー筒部の内側に位置する導入口を有しておれば、具体的な構造が、何等限定されるものではない。従って、例えば、先端開口部が導入口とされたガス導入パイプの先端部を、カバー筒部の下側開口部を通じて挿入したり、或いはカバー筒部を側方から貫通させたりして、導入口をカバー筒部の内側に配置するように為すことも可能である。
さらに、反応室としての真空チャンバ22内に一つのカバー筒部が配置される場合、かかる一つのカバー筒部は、少なくとも吹出口52の周りを取り囲む部分が筒形状を有しておれば良く、プラズマ発生装置24の周りを囲む部分は、必ずしも筒形状を呈している必要はない。また、反応室としての真空チャンバ22内に複数個のカバー筒部が配置される場合にあっては、最も内側に位置するカバー筒部において、少なくとも吹出口52の周りを取り囲む部分が、筒形状を呈するように構成される一方、軸直角方向に隣り合う二つのカバー筒部のうちの外側に位置するカバー筒部において、少なくとも、内側に位置するカバー筒部の下側開口部の周りを囲む部分が、筒形状を呈するように構成されておれば良い。
更にまた、カバー筒部を軸方向に移動させて、吹出口からのカバー筒部の延出長さを変更する変更手段の構造も、公知の種々の構造が採用され得る。例えば、例示したねじ送り機構に代えて、ラックとピニオンからなるギヤ機構やシリンダ機構等を利用して、変更手段を構成することも可能である。
また、例えば、長尺な基板が巻き付けられたロールから巻き出された基板部分を巻き掛ける成膜用ローラが、真空チャンバ22内に設けられて、かかる成膜用ローラに巻き掛けられた基板部分の表面に対して、プラズマCVD層を連続的に形成するようにした構造をもって、プラズマCVD装置を構成することも可能である。
加えて、前記実施形態では、本発明を、樹脂ガラスの表面に、プラズマCVD層からなるトップコート層を形成するのに用いられるプラズマCVD装置に適用したものの具体例を示したが、本発明は、基板の表面上にプラズマCVD層を形成するのに用いられるプラズマCVD装置の何れに対しても、有利に適用され得るものであることは、勿論である。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。