JP2014058464A - 天蚕セリシンの抽出・精製方法および天蚕セリシンを含む医薬組成物、食品、化粧料 - Google Patents

天蚕セリシンの抽出・精製方法および天蚕セリシンを含む医薬組成物、食品、化粧料 Download PDF

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Abstract

【課題】セリシン由来成分の損失やフィブロイン由来成分の混入を抑制し、天蚕由来の絹繊維から安定かつ効率的に天蚕セリシンを抽出・精製する方法を提供すること。
【解決手段】(1)90℃〜98℃であり、かつ、0.010〜0.050%のNaOHと0.490〜0.450%のNaCOを含み、NaOHとNaCOの合計が全液量の0.5%であるNaOH/NaCO混合液に、天蚕由来の絹繊維を浸漬して、セリシンを含む精練液を得る精練工程;(2)精練液を含む容器を、外部から15℃〜25℃の水で冷却する第1冷却工程;(3)精練液を含む容器を、外部から0℃〜10℃の水または氷水で冷却する第2冷却工程;(4)第1、2冷却工程を経た精練液を遠心分離する遠心工程;および(5)遠心分離後の精練液を透析してセリシン溶液を得る透析工程を含む抽出・精製方法とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、天蚕セリシンの抽出・精製方法および天蚕セリシンを含む抗加齢用医薬組成物および抗加齢用食品、抗ガン用医薬組成物および抗ガン用食品、免疫賦活用医薬組成物および免疫賦活用食品、さらに、天蚕セリシンを含む化粧料に関する。
従来より、絹糸昆虫が産生する絹糸から絹タンパク質を抽出して、例えば、健康増進のための飲食品やサプリメント、化粧料、医薬品材料などへ応用する試みがなされている。ただ、従来、研究対象となっているのは、家蚕(B.mori)の絹タンパク質(フィブロイン、セリシン)がほとんどであり、他の野蚕(カイコガ科(Bombycidae)のクワコ(Bombyx mandarina)や、ヤママユガ科(Saturniidae)の天蚕(Antheraea yamamai)、柞蚕(Anteraea pernyi)楓蚕(Eriogyna pyretorum)、蓖蚕(Pilosamia Cynthia ricini)、樗蚕(Samia cynthia)、栗虫(Caligura japonica)、チュッサー蚕(Antheraea mylitta)、ムガ蚕(Antheraea assama)など)の絹タンパク質についての研究はあまり進んでいない。その理由としては、野蚕の絹タンパク質の場合、絹繊維(繭層)に含まれる夾雑物などの成分が多く、さらに、強固な繭構造を有することから、精製処理が難しいことなどが挙げられる。
本発明者は、野蚕のなかでも天蚕(Antheraea yamamai)の絹タンパク質の生理機能に関する研究を進め、効率的に天蚕セリシンを抽出する方法を提案するとともに(特許文献1)、天蚕セリシンの免疫賦活機能(免疫細胞増殖活性)について報告している(非特許文献1)。
具体的には、非特許文献1には、1)天蚕の繭層を100倍量の温水(65℃)で3分間洗浄し、得られた繭層を50倍量の0.4%(W/V)NaCO、0.1%(W/V)NaOH溶液により98℃、7分の精練処理を行うこと、2)得られた抽出液を急冷(15min,25℃)し、遠心または1時間静置することにより、Ca(COO)等の不純物を沈殿させ、その上澄み液を透析し凍結乾燥させて天蚕セリシンパウダーを得たこと、3)天蚕セリシンパウダーには、免疫賦活機能(免疫細胞増殖活性)が確認されたこと、などが記載されている。非特許文献1の抽出方法によれば、Ca(COO)等の不純物を沈殿除去するための時間を大幅に短縮することができる。
特開2008−208123
蚕糸・昆虫機能利用学術講演会講演要旨集P57, (2011)「天蚕セリシンの新しい抽出法と機能解析」
しかしながら、非特許文献1の方法の場合、天蚕セリシンの収率については必ずしも十分でなく、効率性やコストの点においてさらに改善すべき点があると考えられた。また、天蚕セリシンの機能についてもさらなる検討が望まれていた。
本発明の天蚕セリシンの抽出・精製方法は、以下のことを特徴としている。
<1>以下の工程:
(1)90℃〜98℃であり、かつ、0.010〜0.050%のNaOHと0.490〜0.450%のNaCOを含み、NaOHとNaCOの合計が全液量の0.5%であるNaOH/NaCO混合液に、天蚕由来の絹繊維を浸漬して、天蚕セリシンを含む精練液を得る精練工程;
(2)精練液を含む容器を、外部から15℃〜25℃の水で冷却する第1冷却工程;
(3)精練液を含む容器を、外部から0℃〜10℃の水または氷水で冷却する第2冷却工程;
(4)第1、2冷却工程を経た精練液を遠心分離する遠心工程;および
(5)遠心分離後の精練液を透析して天蚕セリシン溶液を得る透析工程
を含む。
<2>第1冷却工程における冷却時間は5〜10分であり、第2冷却工程における冷却時間は、30分〜1時間である。
<3>精練工程におけるNaOH/NaCO混合液は、NaOHの濃度が0.025%であり、かつ、NaCOの濃度が0.475%である。
<4>透析工程後、(6)天蚕セリシン溶液を凍結乾燥して天蚕セリシン粉末を得る工程を含む。
本発明の天蚕セリシン溶液は、<5>前記<1>〜<3>の天蚕セリシンの抽出・精製方法によって得られた天蚕セリシン溶液であって、天蚕セリシンを含む天蚕セリシン溶液であって、天蚕セリシンは、アミノ酸として、スレオニン13.0 Mol%以上、セリン20.0 Mol%以上、ヒスチジン2.0 Mol%以上、アルギニン3.5 Mol%以上を含み、かつ、分子量が15kDa〜120kDaであることを特徴としている。
本発明の天蚕セリシン粉末は、<6>前記<4>の天蚕セリシンの抽出・精製方法によって得られた天蚕セリシン粉末であって、アミノ酸組成として、スレオニン13.0 Mol%以上、セリン20.0 Mol%以上、ヒスチジン2.0 Mol%以上、アルギニン3.5 Mol%以上を含み、かつ、分子量が15kDa〜120kDaであることを特徴としている。
本発明の抗加齢用医薬組成物は、<7>前記天蚕セリシン溶液または前記天蚕セリシン粉末を含むことを特徴としている。
本発明の抗加齢用食品は、<8>前記天蚕セリシン溶液または前記天蚕セリシン粉末を含むことを特徴としている。
本発明の抗ガン用医薬組成物は、<9>前記天蚕セリシン溶液または前記天蚕セリシン粉末を含むことを特徴としている。
本発明の抗ガン用食品は、<10>前記天蚕セリシン溶液または前記天蚕セリシン粉末を含むことを特徴としている。
本発明の免疫賦活用医薬組成物は、<11>前記天蚕セリシン溶液または前記天蚕セリシン粉末を含むことを特徴としている。
本発明の免疫賦活用食品は、<12>前記天蚕セリシン溶液または前記天蚕セリシン粉末を含むことを特徴としている。
本発明の化粧料は、<13>前記天蚕セリシン溶液または前記天蚕セリシン粉末を含むことを特徴としている。
本発明の天蚕セリシン抽出・精製方法によれば、天蚕セリシンの収率を高め、抽出・精製に伴うコストも抑制することができる。本発明の天蚕セリシン抽出・精製方法によって得られた天蚕セリシンは、従来知られていなかった抗加齢作用や顕著な抗ガン作用、免疫賦活作用、UV吸収作用を発揮する。
本発明の天蚕セリシン抽出・精製方法の一実施形態を例示したフローチャートである。 マウス脾臓リンパ細胞(A:全リンパ球細胞、B:リンパ球B細胞)に対する天蚕セリシンの免疫賦活作用を示す図である。 ヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF)に対する天蚕セリシンの作用を示した図である。 ショウジョウバエ由来細胞(schneider S2 cell)に対する天蚕セリシンの作用を示した図である。 ラット肝がん細胞(dRLh 84)に対する天蚕セリシンの作用を示した図である。 線虫(C.elegans)に対する天蚕セリシンの抗加齢作用(寿命延長作用)を示した図である。 天蚕セリシンのUV吸光度を紫外可視近赤外分光光度計で測定した結果を示すグラフであり、曲線(A)は、特許文献1の実施例1で抽出された天蚕セリシン溶液の結果、曲線(B)は、本願の実施例1で抽出された天蚕セリシン溶液の結果を示している。 実施例1で得た天蚕セリシン粉末についてのTricine-SDSポリアクリルアミド電気泳動の結果を示した図である(右レーン)。
本発明の天蚕セリシンの抽出・精製方法の原料として使用される絹繊維は、天蚕(Antheraea yamamai)が吐糸したものであって、例えば、天蚕が蛹化の前に形成した楕円球状の繭層を切開し、適宜な長さの繊維に切断したものを使用することができる。
以下、本発明の天蚕セリシン抽出・精製方法の一実施形態について説明する。
本発明の天蚕セリシン抽出・精製方法は、以下の工程:
(1)90℃〜98℃であり、かつ、0.010〜0.050%のNaOHと0.490〜0.450%のNaCOを含み、NaOHとNaCOの合計が全液量の0.5%であるNaOH/NaCO混合液に、天蚕由来の絹繊維を浸漬して、天蚕セリシンを含む精練液を得る精練工程;
(2)精練液を含む容器を、外部から15℃〜25℃の水で冷却する第1冷却工程;
(3)精練液を含む容器を、外部から0℃〜10℃の水または氷水で冷却する第2冷却工程;
(4)第1、2冷却工程を経た精練液を遠心分離する遠心工程;および
(5)遠心分離後の精練液を透析して天蚕セリシン溶液を得る透析工程
を含む。
本発明の天蚕セリシン抽出・精製方法では、好ましくは、精練工程の前に天蚕由来の絹繊維を洗浄する工程を含むことができる。
絹繊維の洗浄は、例えば、取得した天蚕由来の絹繊維(繭層)を、40℃〜80℃程度の温水(純水)に2〜10分間程度浸漬して行うことができる。この際、絹繊維と温水との浴比は、1:50〜1:200程度の範囲を好ましく例示することができる。なお、本発明において、「浴比」とは、絹繊維の重量と、液体(水、アルカリ溶液)の重量(液量)との比をいう。
洗浄工程によって、絹繊維に付着していた夾雑物や細菌類などを除去することができる。洗浄工程によって予め夾雑物などを除去することで、セリシン抽出物に不純物が混入することが抑制される。
次に、精練工程では、90℃〜98℃であり、かつ、0.010〜0.050%(w/v)のNaOHと0.490〜0.450%(w/v)のNaCOを含み、NaOHとNaCOの合計が全溶液量の0.5%(w/v)であるNaOH/NaCO混合液(混合水溶液)に、天蚕由来の絹繊維を浸漬して天蚕セリシンを抽出する。高価な溶剤を使用する必要がないことから、コストを低く抑えることができる。
NaOH/NaCO混合液において、NaOHが0.010〜0.050%(w/v)、NaCOが0.490〜0.450%(w/v)の割合で、合わせて、混合液の全体量の0.5%(w/v)となるように配合されていることで、セリシン由来成分の損失やフィブロイン由来成分の混入を抑制することができ、安定かつ高収率でセリシンを抽出することができる。
NaOHとNaCOの濃度が上記範囲外であると、天蚕セリシンの抽出が不十分であったり、天蚕セリシンが溶液中で溶解しない状態になったりすることで、天蚕セリシンの収率が低下する。また、例えば、NaOH/NaCO混合液が0.5%(w/v)より大きい場合には、過度にセリシンが分解されて特異的機能の解析が難しくなるとともに、精練液にフィブロイン由来の成分が混入する恐れがある。
さらに、NaOH/NaCO混合液は、NaOHが0.025%(w/v)であり、NaCOが0.475%(w/v)であることが特に好ましい。NaOHとNaCOがこの割合であることによって、天蚕セリシンが過度に分解されることなく、天蚕セリシンの収率は最大になる。
また、NaOH/NaCO混合液の温度が90℃以下の場合には効率的にセリシンを抽出することが難しく、一方、NaOH/NaCO混合液の温度が98℃以上の場合には、過度にセリシンが分解されて特異的機能の解析が難しくなるとともに、精練液にフィブロイン由来の成分が混入する恐れがある。
絹繊維とNaOH/NaCO混合液の好ましい浴比は、1:25〜1:100程度の範囲であり、より好ましくは、浴比1:50程度である。浴比がこの範囲であると、効率的にセリシンを抽出することができる。
そして、精練工程において、絹繊維をNaOH/NaCO混合液に浸漬する時間は、およそ1〜10分程度とすることができる。精練の時間が1分未満であるとセリシンの抽出が不十分になる恐れがあり、10分を超えて精練を行うと過度にセリシンが分解されて、セリシンの特異的機能を解析することが難しくなるとともに、精練液にフィブロイン由来の成分が混入する恐れがある。
次に、抽出残渣が残存する精練液を、例えばガラスフィルターなどを用いて濾過し、抽出残渣と精練液とに分別することができる。この精練液には高分子量のセリシンが含まれ、一方、抽出残渣にはフィブロインが含まれている。
そして、この精練液を含む容器を、外部から15℃〜25℃の水で冷却する(第1冷却工程)。第1冷却工程での冷却時間は5〜10分程度であることが好ましい。さらに、第1冷却工程である程度の温度まで低下した精練液を、再び外部から0℃〜10℃の水または氷水で冷却する(第2冷却工程)。第2冷却工程での冷却時間は30分〜1時間程度であることが好ましい。
このような2段階の冷却工程を経ることで、次の工程までの時間を大幅に短縮することができる。
次に、2段階の冷却工程を経た精練液を、遠心分離機で遠心する(遠心工程)。遠心工程での回転数や時間などは、適宜設定することができるが、例えば、2000rpmで5分間程度遠心分離することができる。精練液を遠心することで、精練液中のCa(COO)等の不純物を沈殿させることができる。
そして、遠心分離後の精練液の上澄み液を透析して天蚕セリシン溶液を得る(透析工程)。なお、この透析工程の前に、精練液を濾紙によって濾過するなどの処理を行ってもよい。
精練液の透析の方法は特に限定されないが、簡便かつ確実な方法として、例えば水による透析を例示することができる。具体的には、例えば、精練液を市販の透析用セルロースチューブに充填し、5〜25℃程度の流水あるいは純水による透析を所定の時間行うことができる。また、透析は、各種の有機酸でpHを調整して行うこともできる。さらに、市販の装置を用いた電気透析を採用することもできる。なお、透析後には、適宜、濾過処理を行うことも考慮される。透析によって天蚕セリシン由来の成分が流出することはなく、例えば、分子量1万以下の低分子のペプチドなどが取り除かれた天蚕セリシン溶液を得ることができる。この天蚕セリシン溶液中に含まれるセリシンは、<1>100〜120kDa付近のグループ、<2>35〜50kDa付近のグループ、及び<3>15〜25kDa付近のグループがラダー状になった蛋白質が検出された。特に、グループ<1>では100kDa付近に、グループ<2>では40kDa付近に、グループ<3>では20kDa付近に濃度の濃いバンドが見出された。
本発明の方法では、特に精練工程において、従来全く検討されてこなかった低濃度のNaOH(0.010〜0.050%(w/v))と、NaCOの混合液が使用されるため、高温での処理時間は短くてよく、このため、精練液を透析した天蚕セリシン溶液には、フィブロイン由来の成分が含まれず、セリシンが分解され過ぎることなく、そのアミノ酸組成や分子量が安定している。このため、抽出されたセリシンは、その特異的機能を解析するための試料として優れている。
そして、この天蚕セリシン溶液を凍結乾燥することで、可溶性の天蚕セリシン粉末を得ることができる。
本発明の方法で得た天蚕セリシン溶液および天蚕セリシン粉末は、飲食品、サプリメント、化粧料、医薬品材料などに利用することができ、また、天蚕セリシンの各種の機能解析などに好適に利用することができる。
また、本発明の方法で得られた天蚕セリシン溶液(粉末)は、例えば、従来の方法(例えば、Isolation and characterization of a 41 kDa sericin from the wild silkmoth Antheraea yamamai, Journal of Insect Biotechnology and Sericology 2009 Vol. 78 No. 1 pp.11-16)で得られた天蚕セリシン粉末とは、異なるアミノ酸組成を有している。具体的には、本発明の方法で得られた天蚕セリシン溶液(粉末)は、従来の方法で得られた天蚕セリシン粉末と比較して、スレオニン、セリン、ヒスチジン、アルギニンなどが多く含まれている。より具体的には、本発明の方法で得られた天蚕セリシン粉末中のアミノ酸は、スレオニン13.0 Mol%以上、セリン20.0 Mol%以上、ヒスチジン2.0 Mol%以上、アルギニン3.5 Mol%以上含まれている。また、アスパラギン酸も15.0 Mol%以上、グリシンも19.0Mol%以上含まれている。
さらに、本発明者らによって、本発明の方法で得られた天蚕セリシン溶液および天蚕セリシン粉末の抗加齢作用が確認されている。したがって、本発明の方法で得られた天蚕セリシン(溶液または粉末)を有効成分として配合することで、抗加齢用の医薬組成物、食品(サプリメントなどを含む)などとすることができる。
また、本発明の方法で得られた天蚕セリシン溶液および天蚕セリシン粉末には、免疫賦活作用と抗ガン作用も確認されている。したがって、本発明の方法で得られたセリシン(溶液または粉末)を有効成分として配合することで、免疫賦活用、抗ガン用の医薬組成物、食品(サプリメントなどを含む)などとすることもできる。
天蚕セリシン粉末を医薬組成物の有効成分とする場合には、通常経口摂取に用いられる剤形に加工することができる。具体的には、錠剤、丸剤、粉剤、トローチ剤、分包包装、オブラート剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ、エアロゾル剤、および無菌包装粉剤などの形をとることができる。
また、天蚕セリシン(溶液または粉末)を含む医薬組成物および食品には、許容される各種の添加剤として、例えば、慣用の賦形剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、保存剤、甘味剤、芳香剤なども適宜加えることができる。さらに具体的には、例えば、乳糖、デキストロース、ショ糖、ソルビトール、マンニトール澱粉、アラビアゴム、リン酸カルシウム、アルギン酸塩、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、およびメチルセルロースなどが例示される。
さらに、天蚕セリシン(溶液または粉末)を含む医薬組成物では、その投与対象は限定されないが、例えば、投与対象としては、ヒトを含む哺乳動物を例示することができる。また、天蚕セリシン粉末を含む医薬組成物では、投与量、投与期間などは、動物種や個体の体重等に応じて適宜決定することができる。
また、本発明の方法で得られた天蚕セリシン(天蚕セリシン溶液、粉末)には、優れたUV吸収作用があることが確認されてもいる。したがって、本発明の方法で得られた天蚕セリシンを有効成分として配合することで、UV吸収性を有する化粧料として有効に利用することができる。
本発明の天蚕セリシン含む化粧料は、例えば、本発明の方法で得られた天蚕セリシン(天蚕セリシン溶液、粉末)と、好適な化粧料基材成分とを混合することで得ることができる。
化粧料基材成分は、例えば、水(精製水、温泉水、深層水等)、油剤、界面活性剤、金属セッケン、保湿剤、ゲル化剤、アルコール類、水溶性高分子、粉体、pH調整剤、皮膜形成剤、樹脂、紫外線防御剤、包接化合物、抗菌剤、香料、消臭剤、塩類、清涼剤、動物・微生物由来抽出物、植物抽出物、血行促進剤、収歛剤、抗脂漏剤、活性酸素消去剤、細胞賦活剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類、ビタミン類などを例示することができる。
本発明の化粧料は、その組成において、例えば、天蚕セリシンを化粧料基材に対して100〜2000ppmの範囲で含有し、pHが6.5〜11.0の範囲内であることが好ましい。天蚕セリシンの含有量が100ppm未満では上記の効果が得にくく、また2000ppmを超える場合にはべたつき感が増す傾向にある。
本発明の化粧料は、UV吸収波長領域が広く、ワイドバンドでの吸収効果と吸収率の顕著な高さとを有していることから、そのUV吸収効果を発現させる各種の形態での使用が考慮される。
本発明のセリシン抽出・精製方法は、以上の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の抗加齢用医薬組成物、抗加齢用食品、抗ガン用医薬組成物、抗ガン用食品、免疫賦活用医薬組成物、免疫賦活用食品および化粧料についても、以上の実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例により本発明のセリシン抽出・精製方法をさらに詳しく説明するが、本発明のセリシン抽出・精製方法は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>天蚕由来セリシンの抽出、精製
天蚕由来セリシンの抽出、精製の工程を図1に沿って説明する。図1は、本発明の天蚕セリシン抽出・精製方法の一実施形態を例示したフローチャートである。
材料の絹繊維は、天蚕の繭を切開して得た繭層を使用した。この繭層を、65℃の純水(浴比1:100)で3分間洗浄して、夾雑物や細菌類を除去した。
次に、精練工程として、0.025%(w/v)NaOHと、0.475%(w/v)NaCOを含む98℃のNaOH/NaCO混合液に、洗浄した繭層を浴比1:50で7分間浸漬してセリシンを抽出し、精練液を得た。
さらに、この精練液を17Gガラスフィルターで沈殿物が混入しないように濾過し、抽出残渣(フィブロイン)と精練液とに分別した。
そして、第1冷却工程としてこの精練液を水道水で10分水冷(25℃)後、第2冷却工程として1時間氷冷(10℃)した。
その後、遠心工程として、この精練液を遠心機で遠心(2,000rpm、5分間)して、精練液中のCa(COO)等の不純物を沈殿させ、上澄み液を濾紙によって濾過した。
そして、濾過後の精練液を透析用セルロースチューブ(エーディア株式会社、MWCO:10000)に充填し、20℃で流水透析2〜3日、純水透析1日行った後、再度、濾紙による濾過を行って天蚕セリシン溶液を得た。
この天蚕セリシン溶液を凍結乾燥して、天蚕セリシン粉末(可溶性パウダー)を得た。
<実施例2>天蚕由来セリシンのアミノ酸組成分析
実施例1で得た天蚕セリシン粉末(可溶性パウダー)を6Nの塩酸1mlに溶解し、減圧封管した。封管したものを加水分解(110℃/24時間)を経て真空乾燥処理した後、Lithium citrate サンプルバッファー(pH2.2)で溶解し、孔径0.45μmのフィルター(直径4mm, Millipore社)で濾過し、分析試料とした。分析試料は、アミノ酸アナライザー(JLC-500/v, 日本電子社)に注入してアミノ酸組成を測定した。
この結果を表1に示す。また、比較のため、従来の方法(Isolation and characterization of a 41 kDa sericin from the wild silkmoth Antheraea yamamai, Journal of Insect Biotechnology and Sericology 2009 Vol.78 No.1 pp.11-16)で得た天蚕セリシン粉末のアミノ酸組成も示す。
表1に示したように、実施例1で得た天蚕セリシン粉末のアミノ酸組成(右欄)は、従来の方法で得られた天蚕セリシン粉末のアミノ酸組成(左欄)とは異なり、スレオニン、セリン、ヒスチジン、アルギニンなどが多く含まれていることが確認された。具体的には、アミノ酸組成として、スレオニン13.0 Mol%以上、セリン20.0 Mol%以上、ヒスチジン2.0 Mol%以上、アルギニン3.5 Mol%以上を含まれていることが特徴の一つであると考えられる。また、アスパラギン酸も15.0 Mol%以上、グリシンも19.0Mol%以上含まれている。
このようなアミノ酸組成の違いによって、実施例1で得た天蚕セリシン粉末は、従来の天蚕セリシン粉末とは異なる薬理作用を有している可能性が示唆された。
<実施例3>精練工程における精練濃度の検討
実施例1の精練工程におけるNaOH/NaCO混合液について、NaOHとNaCOの濃度を変更し、天蚕セリシンを得るために好適な比率を検討した。
具体的には、精練工程において、NaOHとNaCOの比率が異なる以下の5種類のNaOH/NaCO混合液;
(1)NaOH:0.010%、NaCO:0.490%、
(2)NaOH:0.025%、NaCO:0.475%(実施例1と同じ)、
(3)NaOH:0.050%、NaCO:0.450%、
(4)NaOH:0.100%、NaCO:0.400%、
(5)NaOH:0.200%、NaCO:0.300%、
を使用し、実施例1と同様の精練工程、第1冷却工程、第2冷却工程、遠心工程、透析工程を経て、天蚕セリシン粉末を得た。
また、以下の通り、精練工程の後には、繭層重量に基づいて練減率を算出し、さらに、練減量(当初の繭層重量−精練後の繭層重量)と、天蚕セリシン粉末の回収量に基づいて天蚕セリシンの収率を算出した。
練減率=(当初の繭層重量−精練後の繭層重量)/当初の繭層重量×100
収率=天蚕セリシン粉末の回収量/練減量×100
結果を表2に示す。
表2に示したように、(1)NaOH:0.010%、NaCO:0.490%、(2)NaOH:0.025%、NaCO:0.475%(実施例1と同じ)、(3)NaOH:0.050%、NaCO:0.450%の場合には、練減率が低く、天蚕セリシンの収率が好ましく高いことが確認された。
特に、(2)NaOH:0.025%、NaCO:0.475%(実施例1と同じ)の場合には、その他の場合と比較して、練減率が26.9%となり、天蚕セリシンの収率が54.0%と最も大きくなることが確認された。
<実施例4>天蚕セリシン粉末の作用効果の検討1
マウス脾臓リンパ細胞(A:全リンパ球細胞、B:リンパ球B細胞)について、天蚕セリシンによる免疫賦活作用の検討を行った。
免疫賦活活性試験は、マウス脾臓由来のリンパ球細胞の細胞数を指標とした。活性および細胞数は還元型発色試薬であるWST-1[2-(4-lodophenyl)-3-(4-nitrophenyl)-5-(2,4-disulfophenyl)-2H-tetrazolium,monosodium salt](和光純薬)を用い、細胞内のミトコンドリアが持つ還元作用によって生成されるホルマザン塩の量を測定することで算出した。
実験動物は4-6週齢のICR系統マウス(雄、日本SLC)を用いた。培地の組成は、10%ウシ胎児血清 (FBS)、2 mMグルタミン、50 mM 2-メルカプトエタノール、 100 U/ml ペニシリン、100 μg/mlストレプトマイシン、10% NaCO3を含むRPMI 1640培地(日水製薬)を使用した。培養は5%CO2存在下、37℃湿潤条件のCO2インキュベーター内でおこなった。
リンパ球浮遊液の調製は、藤原・淀井(1996)の方法を用いた。ジエチルエーテルで麻酔したマウスの頚椎を脱臼させ、屠殺したマウスから脾臓を取り出し、PBS(-)中で脾臓を磨砕し、セルストレーナー(孔径100 mm、FALCON)でろ過した。ろ液を遠心分離(1,100 rpm,10 min)し、上清を取り除いた。赤血球を除去するため、溶血バッファーであるトリス塩化アンモニウム溶液(0.14 M NH4Cl,17 mM Tris-HCl,pH 7.65)5 mlを沈殿に加え、ピペッティング後5分間常温でインキュベートした。その後、遠心分離(1,100 rpm,10 min)して上清を除去し、再度同量のトリス塩化アンモニウム溶液を加え、同様の操作をおこなった。上清を取り除いた後、洗浄のために30 mlのPBS(-)を加え、遠心分離(1,100 rpm,10 min)後、上清を除去した。同様の操作を2回おこない、溶血バッファーを取り除いた。得られた沈殿物に20 mlの培地を加えて懸濁し、懸濁液を50 mlの組織培養用フラスコ(FALCON)に移し、CO2インキュベーター内で2時間インキュベートした。その後、リンパ球以外の吸着細胞を取り除くため静かに上清を回収した。
回収したリンパ球浮遊液は0.4%トリパンブルー溶液を用いて生細胞のみ染色し、ビュルケルチュルク血球計算盤を用いて計数した。細胞数は5×106 cells/mlとなるように培地で調製し、リンパ球細胞懸濁液とした。懸濁液を96 wellマイクロプレートの各wellに90 μlずつ分注し、実験区にはDMSOおよび超純水を用いて検定濃度に調製したサンプル溶液を、対照区にはサンプルを調製する際に用いた溶媒を10 μlずつ添加した。CO2インキュベーター内で48時間培養後、WST-1溶液(13 mg WST-1、 1.4 mg 1-Methoxy PMS、20 ml PBS(-))を10 μl添加しさらに4時間培養し、マイクロプレートリーダーを用いて波長450 nmにおける各wellの吸光度を測定し、細胞数の変化を算出した。
実験区の吸光度を(A)、対照区の吸光度を(B)、サンプルカラーコントロールの吸光度を(C)とすると、各吸光度から免疫賦活活性を算出する計算式は以下のようになる。
細胞増殖率(%)= [( A−C ) / B] ×100
図2−Aに、天蚕セリシンの濃度に対する全リンパ球細胞の増殖率を示す。
B細胞を単離するために、B cell Isolation Kit mouse(Miltenyi Biotec社)を用いた。最初に、前述の全リンパ球を得るための工程と同様の手順でマウス脾臓リンパ細胞を 2 時間インキュベートした後、マウスリンパ細胞数を確認し、全リンパ球が 5×107 cells/ml になるように15 mlのチューブに分注した。細胞を遠心(1000 g,10分,4℃)し、上清を取り途き、沈殿物を得た。再懸濁のために MACS バッファー{PBS(-), pH 7.2, 0.5% bovine serum albumin(BSA), 2 mM EDTA}を 200 μl 加えて混和し、Biotin-Antibody Cocktail を50 μl加えて混和した後、4℃で 15 分間インキュベートした。さらに、MACSバッファーを 150 μl、Anti-Biotin MicroBeads を 100 μl加えて混和し、再び 4℃ で 15 分間インキュベートした。次に、細胞洗浄のために15 mlのチューブにMACSバッファーを 5〜10 ml 加えて遠心(1000 g,10分,4℃)し、上清を取り除いた。沈殿物に MACSバッファーを500 μl加えて細胞を懸濁させ、分離カラム(MACS 社)にアプライした後、MACS バッファーを 3 ml 加えて洗浄し、さらに同様の洗浄を 2 回おこなった。その後フラクションを回収し、2.5×106cells/ml の B 細胞を得た。このB細胞を用いて前述の全リンパ球に対する同様の手順で吸光度による免疫賦活活性を算出した。
図2−Bに、天蚕セリシンの濃度に対するマウス脾臓リンパ球B細胞の増殖率を示している。図2に示したように、マウス脾臓の全リンパ球(A)の細胞増殖率は、天蚕セリシンを添加しない場合(0%)と比較して、天蚕セリシン0.05%の場合は1.9倍、天蚕セリシン0.1%の場合には2.3倍に、天蚕セリシン0.2%の場合には、3.7倍になることが確認された。
また、マウス脾臓のリンパ球B細胞(B)の細胞増殖率は、天蚕セリシンを添加しない場合(0%)と比較して、天蚕セリシン0.05%の場合は2.5倍、天蚕セリシン0.1%の場合には4.6倍に、天蚕セリシン0.2%の場合には、5.3倍になることが確認された。
以上の結果から、本発明の方法で得た天蚕セリシンには、顕著な免疫賦活作用があることが確認された。
<実施例5>天蚕セリシン粉末の作用効果の検討2
ヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF)およびショウジョウバエ由来細胞(schneider S2 cell)について、天蚕セリシンによる影響を検討した。
具体的には、天蚕セリシンを添加しない培地(0 mg/ml)、実施例1で得た天蚕セリシンを各濃度(0.25 mg/ml 0.5 mg/ml、1.0 mg/ml)に調製した培地で、ヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF)の細胞を培養し、細胞数の変化を検討した。
また、天蚕セリシンを添加しない培地(0 mg/ml)および実施例1で得た天蚕セリシンを各濃度(0.1 mg/ml、0.2 mg/ml、0.5 mg/ml)に調製した培地でショウジョウバエ由来細胞(schneider S2 cell)を培養し、細胞数の変化を検討した。
結果を図3、図4に示す。
図3に示したように、実施例1で得られた天蚕セリシンは、ヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF)に対して細胞増殖活性はないものの、細胞数の減少などは確認されず、正常細胞への悪影響はないことが確認された。
一方、図4に示したように、実施例1で得られた天蚕セリシンは、ショウジョウバエ由来細胞(schneider S2 cell)を増殖することができることが確認された。特に、天蚕セリシンの濃度が0.1mg/mlの場合に115.9%の増殖活性が確認され、天蚕セリシンの濃度が0.2mg/mlの場合に113.6%の増殖活性が確認され、また天蚕セリシンの濃度が0.5mg/mlの場合に108.6%の増殖活性が確認された。
以上の結果から、本発明の方法で得た天蚕セリシンには、正常細胞への悪影響がなく、正常細胞増殖作用があることから、天蚕セリシンを有効成分として配合することで医薬組成物や食品(サプリメントを含む)などに利用可能であることが確認された。
<実施例6>天蚕セリシン粉末の作用効果の検討3
ラット肝ガン細胞(dRLh84)について、天蚕セリシンによる影響を検討した。
具体的には、天蚕セリシンを添加しない培地(0 mg/ml)、実施例1で得た天蚕セリシンを各濃度(0.125 mg/ml、0.25 mg/ml、0.5 mg/ml、1.0 mg/ml、2.0 mg/ml)に調製した培地で、ラット肝ガン細胞(dRLh84)を培養し、細胞数の変化を検討した。
結果を図5に示す。
図5に示したように、実施例1で得られた天蚕セリシンを添加することで、ラット肝ガン細胞の増殖を抑制することができることが確認された。特に、天蚕セリシンの濃度が2.0mg/mlの場合に37.1%の増殖抑制活性が確認され、天蚕セリシンの濃度が0.5mg/mlの場合に33.0%の増殖抑制活性が確認され、天蚕セリシンの濃度が0.25mg/mlの場合に27.5%の増殖抑制活性が確認された。
したがって、この天蚕セリシンにはガン細胞の増殖抑制作用があり、この天蚕セリシンを有効成分として配合することで抗ガン用医薬組成物や食品(サプリメントを含む)などに利用可能であることが確認された。
<実施例7>天蚕セリシン粉末の作用効果の検討4
線虫(C.elegans)に対して、実施例1で得られた天蚕セリシンが与える影響について検討した。
具体的には、実施例1の方法で得た天蚕セリシンを濃度1.0 mg/mlに調製した培地を用い、実験動物には、線虫(C. elegans)の野生型であるN2系統を用い、線虫の生存率と生存日数(寿命)を検討した。
また、比較として、カイコ由来のセリシンを添加した培地と、いずれのセリシンも添加していない培地(control)とを用意し、これらの培地においても線虫を培養し、線虫の生存率と生存日数(寿命)を比較検討した。
線虫は飼育プレート上で、インキュベーター(MIR-153、SANYO)を用い、20oCで飼育した。培地は、0.3%NaCl、0.25%ポリペプトン、1.7%寒天、0.5μg/ml コレステロール、1mM CaCl2、1mM MgSO4、25mM KH2PO4-KOH(pH 6.0)を含む Nematode Growth Medium(NGM)寒天培地を用い、これをコントロールとした。供試試料についても、同様の方法で調製した。プレートは、滅菌シャーレに各 NGM 寒天培地を約2.5 ml ずつ分注して作製した。線虫の飼育には、餌として大腸菌 Escherichia coli(OP50)を用いた。餌とする大腸菌は、 5mlのLB培地に一白銀耳懸濁させ、バイオシェーカー(BR-40LF、TAITEC)により、37oC、120rpm、15時間培養したものを用いた。この懸濁液を1プレートあたり約30μl滴下し、壁面に当らない程度にスプレッダーで広げた。大腸菌を塗った NGM 寒天培地(以下飼育プレート)は室温で 12 時間培養した後、使用するまで4℃で保存した。平均寿命の測定に用いる線虫は、4齢幼虫(L4)であるが、孵化直後から供試試料を与えた線虫を使用するためにあらかじめ各飼料を添加した飼育プレートで飼育しておいた。飼育プレート中の線虫の多くが L4 に成長するまで飼育し、1 試料に対して 2 枚の新しい飼育プレートを用意して、30 頭ずつ植え継いだ。この日を観察 0 日目とし、線虫が卵を産まなくなるまで毎日〜1日おきに新しい飼育プレートに植え継いだ。観察は毎日定時±2時間の範囲でおこない、死亡個体はその都度除外した。また、平均寿命の測定試験中に体内で卵が孵化してしまったものや、植え継ぎの際に外傷を負ってしまった個体も同様に除外した。
なお、各試料における平均寿命は以下の式により算出した。
平均寿命(days)=
(線虫が死亡し始めた観察日 + 線虫が生きていた最後の観察日)/ 2
結果を表3および図6に示す。図6は、controlと天蚕セリシンの生存率、生存日数の比較を示したグラフである。
表3に示したように、線虫の平均寿命±標準偏差(日数)は、対照区(control)の培地では17.0±0.7であり、天蚕セリシンを培地としたものでは18.5±1.3であった。また、線虫の最長寿命は、対照区(control)の培地では25日、天蚕セリシンを培地としたものでは29日であった。
表3、図6に示したように、天蚕セリシンを培地としたものでは、対照区(control)の培地に対して平均寿命が9%延長された。
このことから、天蚕セリシンには寿命延長作用があり、天蚕セリシンを有効成分として配合することで抗加齢用医薬組成物や抗加齢用食品などとすることができることが確認された。
<実施例8>天蚕セリシンの作用効果の検討5
実施例1で抽出された天蚕セリシン溶液について、UV吸光度を紫外可視近赤外分光光度計(日本分光株式会社製、V-570)で測定した。
結果を図7に示す。なお、図7では、比較例1として、特許文献1の実施例1で抽出された天蚕セリシン溶液AについてのUV吸光度(abs)を分光光度計(日立製作所株式会社製、U-1100)で測定したものであり、同文献1の表4並びに同文献1の図6に示されているものを曲線(A)として示している。なお、図7の曲線(A)の数値は、UV吸光度のスケールを同一にするために、特許文献1の図6のUV吸光度の1000分の1に換算して表示している。
図7の曲線(B)に示したように、実施例1で抽出された天蚕セリシン溶液(図7中では本願実施例8のセリシンと記載)は、セリシンの構成アミノ酸であるチロシンとフェニルアラニンの存在から波長280nmに吸収のピークを与え、310nm付近まで急峻に低下するが、それ以降の500nm付近まではなだらかに低下している。すなわち、このセリシンは紫外部の短波長(UV CおよびUV B)領域での吸収は高く、UV Aの領域でも吸収を示し、その吸収は500nm付近まで達し、その吸収波長領域がかなり広いことが分かった。したがって、UV吸収性に優れた化粧料として利用することが有効であると考えることができる。
また、実施例1の抽出技術で得られた天蚕セリシンは、図7の曲線(B)に示すように、全てのUV波長帯域において、図7の曲線(A)に示す従来の天蚕セリシン抽出技術で得られたセリシンよりもUV波長帯域吸収効果が高く、UV吸収性に優れた化粧料(例えばUVカット化粧料(乳液や化粧水など))として利用することが有効であると考えることができる。
<実施例9>Tricine-SDSポリアクリルアミド電気泳動による天蚕セリシンの分子量の検討
実施例1で得た天蚕セリシン粉末を、10%(T)、3%(C)の分離ゲル上に濃縮ゲルを重層した垂直型スラブゲルを用いて分離した(Schagger and Jagow, 1987)。電気泳動装置の陰極槽は0.1M Tris、0.1M Tricine、0.1%(W/V)SDSとし、陽極槽は0.2M Tris-HCl buffer (pH 8.9)とし、泳動用試料(10μl)は等量のTricine SDS-PAGE用sample buffer [50mM Tris-HCl(pH 6.8)、4%(W/V) SDS、12%(W/V) glycerol、2%(V/V)β-mercaptethanol、0.01%(W/V) Serva blue ]を加え、3分間熱処理したものを用いた。分子量マーカーには、Protein Marker Kit (M.W. Range 97,000〜14,400, GEヘルスケアサイエンス社)を使用した。泳動は、分離ゲルに入るまでは印加電圧を30Vととし、その後、分離ゲルの下端に達するまでは印加電圧を100Vの定電圧で通電した。泳動後のゲルは、0.25% Coomassie brilliant blure (CBB) R-250、45% ethanol、7% acetic acid 中で染色し、20% ethanol、7% acetic acid中で脱色した。
電気泳動の結果を図8に示す。図8の左側のレーンはマーカーであり、右側レーンは実施例1で得た天蚕セリシン粉末のタンパク質のバンドを示している。この実施例1で得た天蚕セリシン粉末に含まれるセリシンは、<1>100〜120kDa付近のグループ、<2>35〜50kDa付近のグループ、及び<3>15〜25kDa付近のグループがラダー状になったタンパク質が検出された。特に、グループ<1>では100kDa付近に、グループ<2>では40kDa付近に、グループ<3>では20kDa付近に濃度の濃いバンドが見出された。
これに対し、特許文献1の方法で抽出された天蚕セリシン(比較例1)の分子量については、特許文献1の図4(B)にも示されるように41kDaのバンドのみである。したがって、本願発明(実施例1)の抽出方法によって抽出された天蚕セリシンはUV波長帯域で吸収能の高いタンパク質を多く含んでいることから、UV吸収性に優れた化粧料(UVカット化粧料など)として利用することが有効であると考えることができる。





Claims (13)

  1. 以下の工程:
    (1)90℃〜98℃であり、かつ、0.010〜0.050%のNaOHと0.490〜0.450%のNaCOを含み、NaOHとNaCOの合計が全液量の0.5%であるNaOH/NaCO混合液に、天蚕由来の絹繊維を浸漬して、天蚕セリシンを含む精練液を得る精練工程;
    (2)精練液を含む容器を、外部から15℃〜25℃の水で冷却する第1冷却工程;
    (3)精練液を含む容器を、外部から0℃〜10℃の水または氷水で冷却する第2冷却工程;
    (4)第1、2冷却工程を経た精練液を遠心分離する遠心工程;および
    (5)遠心分離後の精練液を透析して天蚕セリシン溶液を得る透析工程
    を含むことを特徴とする天蚕セリシンの抽出・精製方法。
  2. 第1冷却工程における冷却時間は5〜10分であり、第2冷却工程における冷却時間は、30分〜1時間であることを特徴とする請求項1の天蚕セリシンの抽出・精製方法。
  3. 精練工程におけるNaOH/NaCO混合液は、NaOHの濃度が0.025%であり、かつ、NaCOの濃度が0.475%であることを特徴とする請求項1または2の天蚕セリシンの抽出・精製方法。
  4. 透析工程後、(6)天蚕セリシン溶液を凍結乾燥して天蚕セリシン粉末を得る工程を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかの天蚕セリシンの抽出・精製方法。
  5. 請求項1または2の天蚕セリシンの抽出・精製方法によって得られた、天蚕セリシンを含む天蚕セリシン溶液であって、天蚕セリシンは、アミノ酸として、スレオニン13.0 Mol%以上、セリン20.0 Mol%以上、ヒスチジン2.0 Mol%以上、アルギニン3.5 Mol%以上を含み、かつ、分子量が15kDa〜120kDaであることを特徴とする天蚕セリシン溶液。
  6. 請求項4の天蚕セリシンの抽出・精製方法によって得られた天蚕セリシン粉末であって、アミノ酸組成として、スレオニン13.0 Mol%以上、セリン20.0 Mol%以上、ヒスチジン2.0 Mol%以上、アルギニン3.5 Mol%以上を含み、かつ、分子量が15kDa〜120kDaであることを特徴とする天蚕セリシン粉末。
  7. 請求項5の天蚕セリシン溶液または請求項6の天蚕セリシン粉末を含むことを特徴とする抗加齢用医薬組成物。
  8. 請求項5の天蚕セリシン溶液または請求項6の天蚕セリシン粉末を含むことを特徴とする抗加齢用食品。
  9. 請求項5の天蚕セリシン溶液または請求項6の天蚕セリシン粉末を含むことを特徴とする抗ガン用医薬組成物。
  10. 請求項5の天蚕セリシン溶液または請求項6の天蚕セリシン粉末を含むことを特徴とする抗ガン用食品。
  11. 請求項5の天蚕セリシン溶液または請求項6の天蚕セリシン粉末を含むことを特徴とする免疫賦活用医薬組成物。
  12. 請求項5の天蚕セリシン溶液または請求項6の天蚕セリシン粉末を含むことを特徴とする免疫賦活用食品。
  13. 請求項5の天蚕セリシン溶液または請求項6の天蚕セリシン粉末を含むことを特徴とする化粧料。
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