以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
(第1実施形態)
図1〜図7により、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態では、本発明の冷媒放熱器1を備えるヒートポンプサイクル100(蒸気圧縮式の冷凍サイクル)を、車両用空調装置に適用している。なお、車両用空調装置は、エンジン(内燃機関)から走行用駆動力を得る通常のエンジン車両のみならず、ハイブリッド車両や電気自動車等種々の車両に適用可能である。
ヒートポンプサイクル100は、車両用空調装置において、空調対象空間である車室内へ送風される車室内送風空気を加熱あるいは冷却する機能を果たす。従って、このヒートポンプサイクル100は、冷媒流路を切り替えて、熱交換対象流体である車室内送風空気を加熱して車室内を暖房する暖房運転(加熱運転)、車室内送風空気を冷却して車室内を冷房する冷房運転(冷却運転)を実行できる。
なお、図1および図2のヒートポンプサイクル100に示す全体構成図では、それぞれ暖房運転時における冷媒の流れ、および、冷房運転時における冷媒の流れを実線矢印で示している。
まず、圧縮機110は、エンジンルーム内に配置されて、ヒートポンプサイクル100において冷媒を吸入し、圧縮して吐出するもので、吐出容量が固定された固定容量型圧縮機110aを電動モータ110bにて駆動する電動圧縮機である。固定容量型圧縮機110aとしては、具体的に、スクロール型圧縮機構、ベーン型圧縮機構等の各種圧縮機構を採用できる。
電動モータ110bは、後述する空調制御装置から出力される制御信号によって、その作動(回転数)が制御されるもので、交流モータ、直流モータのいずれの形式を採用してもよい。そして、この回転数制御によって、圧縮機110の冷媒吐出能力が変更される。従って、本実施形態では、電動モータ110bが圧縮機110の吐出能力変更手段を構成する。
圧縮機110の冷媒吐出口には、冷媒放熱器1の冷媒入口側が接続されている。冷媒放熱器1は、後述する車両用空調装置1の室内空調ユニット30のケーシング31内に配置されて、圧縮機110から吐出された高温高圧冷媒と後述する冷媒蒸発器40通過後の車室内送風空気とを熱交換させる加熱用熱交換器である。なお、冷媒放熱器1および室内空調ユニット30の詳細構成については後述する。
冷媒放熱器1の冷媒出口側には、暖房運転時に冷媒放熱器1から流出した冷媒を減圧膨張させる暖房運転用の減圧手段としての暖房用固定絞り130が接続されている。この暖房用固定絞り130としては、オリフィス、キャピラリチューブ等を採用できる。暖房用固定絞り130の出口側には、室外熱交換器160の冷媒入口側が接続されている。
さらに、冷媒放熱器1の冷媒出口側には、冷媒放熱器1から流出した冷媒を、暖房用固定絞り130を迂回させて室外熱交換器160側へ導く固定絞り迂回用通路140が接続されている。この固定絞り迂回用通路140には、固定絞り迂回用通路140を開閉する開閉弁15aが配置されている。開閉弁15aは、空調制御装置から出力される制御電圧によって、その開閉作動が制御される電磁弁である。
また、冷媒が開閉弁15aを通過する際に生じる圧力損失は、暖房用固定絞り130を通過する際に生じる圧力損失に対して極めて小さい。従って、冷媒放熱器1から流出した冷媒は、開閉弁15aが開いている場合には固定絞り迂回用通路140側を介して室外熱交換器160へ流入し、開閉弁15aが閉じている場合には暖房用固定絞り130を介して室外熱交換器160へ流入する。
これにより、開閉弁15aは、ヒートポンプサイクル100の冷媒流路を切り替えることができる。従って、本実施形態の開閉弁15aは、冷媒流路切替手段としての機能を果たす。なお、このような冷媒流路切替手段としては、冷媒放熱器1出口側と暖房用固定絞り130入口側とを接続する冷媒回路および冷媒放熱器1出口側と固定絞り迂回用通路140入口側とを接続する冷媒回路を切り替える電気式の三方弁等を採用してもよい。
室外熱交換器160は、内部を流通する低圧冷媒と送風ファン170から送風された外気とを熱交換させるものである。この室外熱交換器160は、エンジンルーム内に配置されて、暖房運転時には、低圧冷媒を蒸発させて吸熱作用を発揮させる蒸発器として機能し、冷房運転時には、高圧冷媒を放熱させる放熱器として機能する熱交換器である。
また、送風ファン170は、空調制御装置から出力される制御電圧によって稼働率、すなわち回転数(送風空気量)が制御される電動式送風機である。室外熱交換器160の出口側には、電気式の三方弁15bが接続されている。この三方弁15bは、空調制御装置から出力される制御電圧によって、その作動が制御されるもので、上述した開閉弁15aとともに、冷媒流路切替手段を構成している。
より具体的には、三方弁15bは、暖房運転時には、室外熱交換器160の出口側と後述するアキュムレータ180の入口側とを接続する冷媒流路に切り替え、冷房運転時には、室外熱交換器160の出口側と冷房用固定絞り190の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。
冷房用固定絞り190は、冷房運転時に室外熱交換器160から流出した冷媒を減圧膨張させる冷房運転用の減圧手段であり、その基本的構成は、暖房用固定絞り130と同様である。冷房用固定絞り190の出口側には、室内蒸発器としての冷媒蒸発器40の冷媒入口側が接続されている。
冷媒蒸発器40は、室内空調ユニット30のケーシング31内のうち、冷媒放熱器1よりも空気流れの上流側に配置されて、その内部を流通する冷媒と車室内送風空気とを熱交換させ、車室内送風空気を冷却する冷却用熱交換器である。冷媒蒸発器40の冷媒出口側には、アキュムレータ180の入口側が接続されている。
アキュムレータ180は、その内部に流入した冷媒の気液を分離して、サイクル内の余剰冷媒を蓄える低圧側冷媒用の気液分離器である。アキュムレータ180の気相冷媒出口には、圧縮機110の吸入側が接続されている。従って、このアキュムレータ180は、圧縮機110に液相冷媒が吸入されてしまうことを抑制して、圧縮機110の液圧縮を防止する機能を果たす。
次に、室内空調ユニット30について説明する。室内空調ユニット30は、車室内最前部の計器盤(インストルメントパネル)の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング31内に送風機32、前述の冷媒放熱器1、冷媒蒸発器40等を収容したものである。
ケーシング31は、車室内に送風される車室内送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂(例えば、ポリプロピレン)にて成形されている。ケーシング31内の車室内送風空気流れ最上流側には、車室内空気(内気)と外気とを切替導入する内外気切替装置33が配置されている。
内外気切替装置33には、ケーシング31内に内気を導入させる内気導入口および外気を導入させる外気導入口が形成されている。さらに、内外気切替装置33の内部には、内気導入口および外気導入口の開口面積を連続的に調整して、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドアが配置されている。
内外気切替装置33の空気流れ下流側には、内外気切替装置33を介して吸入された空気を車室内へ向けて送風する送風機32が配置されている。この送風機32は、遠心多翼ファン(シロッコファン)を電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される。
送風機32の空気流れ下流側には、冷媒蒸発器40および冷媒放熱器1が、車室内送風空気の流れに対して、この順に配置されている。換言すると、冷媒蒸発器40は、冷媒放熱器1に対して、車室内送風空気の流れ方向上流側に配置されている。
さらに、冷媒蒸発器40の空気流れ下流側であって、かつ、冷媒放熱器1の空気流れ上流側には、冷媒蒸発器40通過後の送風空気のうち、冷媒放熱器1を通過させる風量割合を調整するエアミックスドア34が配置されている。また、冷媒放熱器1の空気流れ下流側には、冷媒放熱器1にて冷媒と熱交換して加熱された送風空気と冷媒放熱器1を迂回して加熱されていない送風空気とを混合させる混合空間35が設けられている。
ケーシング31の空気流れ最下流部には、混合空間35にて混合された空調風を、冷却対象空間である車室内へ吹き出す開口穴が配置されている。具体的には、この開口穴としては、車室内の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すフェイス開口穴、乗員の足元に向けて空調風を吹き出すフット開口穴、および、車両前面窓ガラス内側面に向けて空調風を吹き出すデフロスタ開口穴(いずれも図示せず)が設けられている。
従って、エアミックスドア34が冷媒放熱器1を通過させる風量の割合を調整することによって、混合空間35にて混合された空調風の温度が調整され、各開口穴から吹き出される空調風の温度が調整される。つまり、エアミックスドア34は、車室内へ送風される空調風の温度を調整する温度調整手段を構成している。
換言すると、エアミックスドア34は、冷媒放熱器1において、圧縮機110吐出冷媒と車室内送風空気との熱交換量を調整する熱交換量調整手段としての機能を果たす。なお、エアミックスドア34は、空調制御装置から出力される制御信号によって作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
さらに、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の空気流れ上流側には、それぞれ、フェイス開口穴の開口面積を調整するフェイスドア、フット開口穴の開口面積を調整するフットドア、デフロスタ開口穴の開口面積を調整するデフロスタドア(いずれも図示せず)が配置されている。
これらのフェイスドア、フットドア、デフロスタドアは、開口穴モードを切り替える開口穴モード切替手段を構成するものであって、リンク機構等を介して、空調制御装置から出力される制御信号によってその作動が制御される図示しないサーボモータによって駆動される。
一方、フェイス開口穴、フット開口穴、およびデフロスタ開口穴の空気流れ下流側は、それぞれ空気通路を形成するダクトを介して、車室内に設けられたフェイス吹出口、フット吹出口およびデフロスタ吹出口に接続されている。例えば、フェイス開口穴については、インストルメントパネルの左右方向中央部に設けられたフロントフェイス吹出口、左右方向端部側に設けられたサイドフェイス吹出口(いずれも図示せず)に接続されている。
また、これらのフロントフェイス吹出口、サイドフェイス吹出口は、それぞれ運転席用および助手席用に複数箇所に設けられており、例えば、暖房運転時に冷媒放熱器1のうち運転席側の熱交換領域で加熱された送風空気は主に運転席側に吹き出され、助手席側の熱交換領域で加熱された送風空気は主に助手席側に吹
き出される。
次に、本実施形態の電気制御部について説明する。空調制御装置は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算、処理を行い、出力側に接続された各種空調制御機器110、15a、15b、170、32等の作動を制御する。
また、空調制御装置の入力側には、車室内温度を検出する内気センサ、外気温を検出する外気センサ、車室内の日射量を検出する日射センサ、冷媒蒸発器40の吹出空気温度(蒸発器温度)を検出する蒸発器温度センサ、圧縮機110吐出冷媒温度を検出する吐出冷媒温度センサ、室外熱交換器160出口側冷媒温度を検出する出口冷媒温度センサ等の種々の空調制御用のセンサ群が接続されている。
さらに、空調制御装置の入力側には、車室内前部の計器盤付近に配置された図示しない操作パネルが接続され、この操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。操作パネルに設けられた各種空調操作スイッチとしては、車両用空調装置の作動スイッチ、車室内温度を設定する車室内温度設定スイッチ、運転モードの選択スイッチ等が設けられている。
なお、空調制御装置は、圧縮機110の電動モータ110b、開閉弁15a、三方弁15b等を制御する制御手段が一体に構成され、これらの作動を制御するものであるが、本実施形態では、空調制御装置のうち、圧縮機110の作動を制御する構成(ハードウェアおよびソフトウェア)が冷媒吐出能力制御手段を構成し、冷媒流路切替手段を構成する各種機器15a、15bの作動を制御する構成が冷媒流路制御手段を構成している。
次に、図3および図4を用いて、冷媒放熱器1の詳細構成を説明する。なお、図3および図4における上下の各矢印は、冷媒放熱器1を室内空調ユニット30のケーシング31内に搭載した状態における上下の各方向を示している。このことは、以下の図面においても同様である。
冷媒放熱器1は、送風空気の流れ方向(被冷却流体の流れ方向)に対して直列に配置された2つの放熱部10、20を備えて構成されている。ここで、本実施形態では、2つの放熱部10、20のうち、送風空気の空気流れ方向の風下側(下流側)に配置される放熱部を風下側放熱部10と称し、送風空気の流れ方向の風上側(上流側)に配置される放熱部を風上側放熱部20と称する。なお、本実施形態における風下側放熱部10が、特許請求の範囲の「第1放熱部」を構成し、風上側放熱部20が、特許請求の範囲の「第2放熱部」を構成している。
風下側放熱部10および風上側放熱部20の基本的構成は同一であり、それぞれコア部11、21と、コア部11、21の上下両側に配置された一対のタンク部12、13、22、23を有して構成されている。
なお、本実施形態では、風下側放熱部10におけるコア部を風下側コア部11と称し、風上側放熱部20におけるコア部を風上側コア部21と称する。また、風下側放熱部10における一対のタンク部12、13のうち、上方側に配置されるタンク部を第1風下側タンク部12と称し、下方側に配置されるタンク部を第2風下側タンク部13と称する。同様に、風上側放熱部20における一対のタンク部22、23のうち、上方側に配置されるタンク部を第1風上側タンク部22と称し、下方側に配置されるタンク部を第2風上側タンク部23と称する。
本実施形態の風下側コア部11および風上側コア部21それぞれは、上下方向(鉛直方向)に延びる複数のチューブ111、211と、隣り合うチューブ111、211の間に接合されるフィン112、212とが交互に積層配置された積層体で構成されている。なお、以下、複数のチューブ111、211および複数のフィン112、212の積層体における積層方向をチューブ積層方向と称する。
風下側コア部11のチューブ111は、長手方向の一端側(上端側)が第1風下側タンク部12に接続されると共に、長手方向の他端側(下端側)が第2風下側タンク部13に接続されている。また、風上側コア部21のチューブ211は、長手方向の一端側(上端側)が第1風上側タンク部22に接続されると共に、長手方向の他端側(下端側)が第2風上側タンク部23に接続されている。
ここで、風下側放熱部10においては、風下側コア部11を構成する複数のチューブ111の全てが、冷媒が上方側から下方側へ向かって流れるように構成されている。また、風上側放熱部20においては、風上側コア部21を構成する複数のチューブ211には、冷媒が下方側から上方側へ向かって流れる第1チューブ群21a、および冷媒が上方側から下方側へ向かって流れる第2チューブ群21bが設けられている。
本実施形態では、風上側コア部21を送風空気流れ上流側から見たときに、チューブ積層方向の右側に第1チューブ群21aが配置されており、チューブ積層方向の左側に第2チューブ群21bが配置されている。各チューブ111、211は、内部に冷媒が流れる冷媒通路が形成されると共に、その断面形状が送風空気の流れ方向に沿って延びる扁平形状となる扁平チューブで構成されている。
各フィン112、212は、薄板材を波状に曲げて成形したコルゲートフィンであり、チューブ111、211における平坦な外面側に接合され、送風空気と冷媒との伝熱面積を拡大させるための熱交換促進手段を構成する。
チューブ111、211およびフィン112、212の積層体には、チューブ積層方向の両端部に、各コア部11、12を補強するサイドプレート113、213が配置されている。なお、サイドプレート113、213は、チューブ積層方向の最も外側に配置されたフィン112、212に接合されている。
第1風下側タンク部12は、一端側(送風空気流れ上流側から見たときの左側端部)が閉塞されると共に、他端側(送風空気流れ上流側から見たときの右側端部)に圧縮機110から吐出された冷媒を導入するための冷媒導入部12aが接続された筒状の部材で構成されている。この第1風下側タンク部12は、底部に各チューブ111の一端側(上端側)が挿入接合される貫通穴(図示せず)が形成されている。つまり、第1風下側タンク部12は、その内部空間が風下側コア部11の各チューブ111に連通するように構成されており、風下側コア部11の各チューブ111へ冷媒を分配する冷媒分配部として機能する。
第2風下側タンク部13は、両端側が閉塞された筒状の部材で構成されている。この第2風下側タンク部13は、天井部に各チューブ111の他端側(下端側)が挿入接合される貫通穴(図示せず)が形成されている。つまり、第2風下側タンク部13は、その内部空間が各チューブ111に連通するように構成されており、風下側コア部11の各チューブ111からの冷媒を集合させる冷媒集合部として機能する。
第2風上側タンク部23は、一端側が閉塞されると共に、他端側にタンク内部にタンク内部から開閉弁15aまたは暖房用固定絞り130側に冷媒を導出するための冷媒導出部23aが接続された筒状の部材で構成されている。この第2風上側タンク部23は、天井部に各チューブ211の他端側(下端側)が挿入接合される貫通穴(図示せず)が形成されている。つまり、第2風上側タンク部23は、その内部空間が風上側コア部21の各チューブ211に連通するように構成されている。
第2風上側タンク部23の内部には、長手方向の中央位置に仕切部231が配置されており、この仕切部231によって、タンク内部空間が第1チューブ群21aに属する各チューブ211が連通する空間と、第2チューブ群21bに属する各チューブ211が連通する空間とに仕切られている。
第1チューブ群21aに属する各チューブ211が連通する空間には、後述する連通部50が接続されている。また、第2チューブ群21bに属する各チューブ211が連通する空間には、冷媒導出部23aが接続されている。
ここで、第2風上側タンク部23の内部のうち、第1チューブ群21aに属する各チューブ211が連通する空間が、第1チューブ群21aに属する各チューブ211に冷媒を分配する冷媒分配部232として機能し、第2チューブ群21bに属する各チューブ211が連通する空間が、第2チューブ群21bに属する各チューブ211から冷媒を集合させる冷媒集合部233として機能する。
第1風上側タンク部22は、両端側が閉塞された筒状の部材で構成されている。この第1風上側タンク部22は、底部に各チューブ211の一端側(上端側)が挿入接合される貫通穴(図示せず)が形成されている。つまり、第1風上側タンク部22は、その内部空間が風上側コア部21の各チューブ211に連通するように構成されている。第1風上側タンク部22は、風上側コア部21の第1チューブ群21aに属する各チューブ211から冷媒を集合させるとともに、第2チューブ群21bに属する各チューブ211へ冷媒を分配する冷媒集合分配部として機能する。
第2風下側タンク部13のタンク内空間と第2風上側タンク部23の冷媒分配部232とは、連通部50を介して接続されている。連通部50は、第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23とは別体として構成されている。
本実施形態では、図5に示すように、連通部50は複数の冷媒通路を有する多穴チューブにて構成されている。連通部50は、その冷媒流れ方向(送風空気の流れ方向)両端部が、第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23それぞれに形成された貫通孔14、24(図4参照)に挿入された状態で、第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23に固定されている。
連通部50の冷媒流れ方向両端部には、切り欠き51が形成されている。また、第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23それぞれの貫通孔14、24の幅方向の長さは、連通部50の冷媒流れ方向両端部(切り欠き51が形成されている部位)の幅方向の長さより若干大きく、連通部50の冷媒流れ方向中央部(切り欠き51が形成されていない部位)の幅方向の長さより短い。なお、貫通孔14、24および連通部50における「幅方向」とは、第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23の長手方向(チューブ積層方向)と平行な方向のことを意味する。
したがって、連通部50を第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23それぞれの貫通孔14、24に挿入した際に、連通部50の冷媒流れ方向両端部のみが貫通孔14、24内部に入り込み、連通部50の冷媒流れ方向中央部が貫通孔14、24内部に入り込まない。これにより、第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23に対する連通部50の位置決めを容易に行うことができる。
ここで、本第1実施形態の冷媒放熱器における冷媒流れについて説明する。図4および図6の実線矢印に示すように、冷媒導入部12aから風下側放熱部10の第1風下側タンク部12に流入した冷媒は、風下側コア部11を構成するチューブ111内を上方側から下方側に向かって流れて、第2風下側タンク部13に集合する。その後、第2風下側タンク部13に集合した冷媒は、連通部50を介して、風上側放熱部20の第2風上側タンク部23の冷媒分配部232に流入する。
第2風上側タンク部23の冷媒分配部232に流入した冷媒は、風上側コア部21の第1チューブ群21aに属する各チューブ211を流れて、第1風上側タンク部22に流入する。そして、第1風上側タンク部22に流入した冷媒は、風上側コア部21の第2チューブ群21bに属する各チューブ211を流れて、第2風上側タンク部23の冷媒集合部233に集合し、冷媒導出部23aから外部に流出する。
上述したように、圧縮機110吐出冷媒は、冷媒導入部12aを介して風下側放熱部10の第1風下側タンク部12に流入する。また、連通部50から流出した冷媒は、貫通孔24を介して風上側放熱部20の第2風上側タンク部23に流入する。したがって、第1風下側タンク部12における冷媒導入部12aが接続されている部位12b、および第2風上側タンク部23の貫通孔24が、特許請求の範囲の「冷媒流入口」を構成している。
また、冷媒放熱器1内を流通した冷媒は、第2風上側タンク部23に接続された冷媒導出部23aから外部に流出する。したがって、第2風上側タンク部23における冷媒導出部23aが接続されている部位23bが、特許請求の範囲の「冷媒流出口」を構成している。
次に、上記構成における本実施形態の車両用空調装置の作動を説明する。本実施形態の車両用空調装置では、前述の如く、車室内を暖房する暖房運転および車室内を冷房する冷房運転を実行することができる。以下に各運転における作動を説明する。
(a)暖房運転
暖房運転は、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって暖房運転モードが選択されると開始される。暖房運転時には、空調制御装置が、開閉弁15aを閉じるとともに、三方弁15bを室外熱交換器160の出口側とアキュムレータ180の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。これにより、ヒートポンプサイクル100は、図1の実線矢印に示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。
この冷媒流路の構成で、空調制御装置が上述の空調制御用のセンサ群の検出信号および操作パネルの操作信号を読み込む。そして、検出信号および操作信号の値に基づいて車室内へ吹き出す空気の目標温度である目標吹出温度TAOを算出する。さらに、算出された目標吹出温度TAOおよびセンサ群の検出信号に基づいて、空調制御装置の出力側に接続された各種空調制御機器の作動状態を決定する。
例えば、圧縮機110の冷媒吐出能力、すなわち圧縮機110の電動モータに出力される制御信号については、以下のように決定される。まず、目標吹出温度TAOに基づいて、予め空調制御装置に記憶された制御マップを参照して、冷媒蒸発器40の目標蒸発器吹出温度TEOを決定する。
そして、この目標蒸発器吹出温度TEOと蒸発器温度センサによって検出された冷媒蒸発器40からの吹出空気温度との偏差に基づいて、フィードバック制御手法を用いて冷媒蒸発器40からの吹出空気温度が目標蒸発器吹出温度TEOに近づくように、圧縮機110の電動モータに出力される制御信号が決定される。
また、エアミックスドア34のサーボモータへ出力される制御信号については、目標吹出温度TAO、冷媒蒸発器40からの吹出空気温度および吐出冷媒温度センサによって検出された圧縮機110吐出冷媒温度等を用いて、車室内へ吹き出される空気の温度が車室内温度設定スイッチによって設定された乗員の所望の温度となるように決定される。
なお、暖房運転時には、図1に図示するように、送風機32から送風された車室内送風空気の全風量が、冷媒放熱器1を通過するようにエアミックスドア34の開度を制御してもよい。
そして、上記の如く決定された制御信号等を各種空調制御機器へ出力する。その後、操作パネルによって車両用空調装置の作動停止が要求されるまで、所定の制御周期毎に、上述の検出信号および操作信号の読み込み→目標吹出温度TAOの算出→各種空調制御機器の作動状態決定→制御電圧および制御信号の出力といった制御ルーチンが繰り返される。なお、このような制御ルーチンの繰り返しは、冷房運転時にも基本的に同様に行われる。
また、暖房運転時のヒートポンプサイクル100では、圧縮機110から吐出された高圧冷媒が冷媒放熱器1へ流入する。冷媒放熱器1へ流入した冷媒は、送風機32から送風されて冷媒蒸発器40を通過した車室内送風空気と熱交換して放熱する。これにより、車室内送風空気が加熱される。
冷媒放熱器1から流出した高圧冷媒は、開閉弁15aが閉じているので、暖房用固定絞り130へ流入して減圧膨張される。そして、暖房用固定絞り130にて減圧膨張された低圧冷媒は、室外熱交換器160へ流入する。室外熱交換器160へ流入した低圧冷媒は、送風ファン170によって送風された外気から吸熱して蒸発する。
室外熱交換器160から流出した冷媒は、三方弁15bが、室外熱交換器160の出口側とアキュムレータ180の入口側とを接続する冷媒流路に切り替えられているので、アキュムレータ180へ流入して気液分離される。そして、アキュムレータ180にて分離された気相冷媒が、圧縮機110に吸入されて再び圧縮される。
以上の如く、暖房運転時には、冷媒放熱器1にて圧縮機110から吐出された冷媒の有する熱量によって車室内送風空気が加熱されて、空調対象空間である車室内の暖房を行うことができる。
(b)冷房運転
冷房運転は、操作パネルの作動スイッチが投入(ON)された状態で、選択スイッチによって冷房運転モードが選択されると開始される。この冷房運転時には、空調制御装置が、開閉弁15aを開くとともに、三方弁15bを室外熱交換器160の出口側と冷房用固定絞り190の入口側とを接続する冷媒流路に切り替える。これにより、ヒートポンプサイクル100は、図2の実線矢印に示すように冷媒が流れる冷媒流路に切り替えられる。
冷房運転時のヒートポンプサイクル100では、圧縮機110から吐出された高圧冷媒が冷媒放熱器1へ流入して、送風機32から送風されて冷媒蒸発器40を通過した車室内送風空気と熱交換して放熱する、あるいは冷媒放熱器1に空気が通らない場合はほとんど放熱することなく通過する。冷媒放熱器1から流出した高圧冷媒は、開閉弁15aが開いているので、固定絞り迂回用通路140を介して室外熱交換器160へ流入する。
室外熱交換器160へ流入した高圧冷媒は、送風ファン170によって送風された外気にさらに放熱する。室外熱交換器160から流出した冷媒は、三方弁15bが、室外熱交換器160の出口側と冷房用固定絞り190の入口側とを接続する冷媒流路に切り替えられているので、冷房用固定絞り190にて減圧膨張される。
冷房用固定絞り190から流出した冷媒は、冷媒蒸発器40へ流入して、送風機32によって送風された車室内送風空気から吸熱して蒸発する。これにより、車室内送風空気が冷却される。冷媒蒸発器40から流出した冷媒は、アキュムレータ180へ流入して気液分離される。
そして、アキュムレータ180にて分離された気相冷媒が、圧縮機110に吸入されて再び圧縮される。上記の如く、冷房運転時には、冷媒蒸発器40にて低圧冷媒が車室内送風空気から吸熱して蒸発することによって、車室内送風空気が冷却されて車室内の冷房を行うことができる。
なお、冷房運転時に、乗員が車室内温度設定スイッチによって車室内温度よりも高い温度を設定すると、車室内送風空気の温度が車室内温度よりも高い温度となるようにエアミックスドア34の開度が調整される。このような場合であっても、冷媒蒸発器40では、車室内送風空気が冷却され、その絶対湿度を低下させるので、車室内の除湿暖房を実現することができる。
以上、説明したように、本実施形態の車両用空調装置では、ヒートポンプサイクル100の冷媒流路を切り替えることによって、暖房運転、冷房運転、除湿暖房運転を実行することができる。
次に、図7を用いて冷媒放熱器の温度分布の検討結果について説明する。図7において、(a)、(c)が比較例の冷媒放熱器の結果を示しており、(b)、(d)が本実施形態の冷媒放熱器の結果を示している。また、図7において、(a)、(b)は冷媒流量が高流量(80kg/h)の場合を示しており、(c)、(d)は冷媒流量が低流量(30kg/h)の場合を示している。
なお、比較例の冷媒放熱器は、冷媒が鉛直方向に流れるダウンフロー型の放熱部を送風空気の流れ方向に対して直列に2つ配置したものである。比較例の冷媒放熱器では、2つの放熱部のうち一方の放熱部の下方側タンク部から冷媒が流入し、その冷媒はコア部を下方側から上方側に向かって流れて上方側タンク部に集合する。そして、一方の放熱部の上方側タンク部に集合した冷媒は、他方の放熱部の上方側のタンク部に流入し、コア部を上方側から下方側に向かって流れて下方側タンク部に集合し、外部へ流出する。
図7(a)、(c)に示すように、比較例の冷媒放熱器では、特に冷媒流量が低流量の場合(図7(c)参照)において、冷媒流入口側近傍に冷媒流れが集中し、冷媒流入口から遠い側のチューブまで冷媒が行き渡らず、冷媒放熱器から吹き出される空気の左右温度分布が大きくなってしまう。
この理由は次の通りである。冷媒放熱器は、内部で冷媒が凝縮する凝縮器として機能するため、気相冷媒は凝縮しながら液化して、外部へ放熱する。つまり、冷媒入口側から徐々に冷媒の乾き度が低下し、液相冷媒の割合が増加していく。ここで、液相冷媒は気相冷媒よりも密度が大きいため、重力に大きな影響を受ける。
ダウンフロー型の熱交換器の場合、冷媒が上方側から下方側に向かって流れる下降流においては、重力方向と冷媒の流れ方向とは一致するため、冷媒はスムーズに流れる。一方、冷媒が下方側から上方側に向かって流れる上昇流においては、重力方向と冷媒の流れ方向とが逆になり、冷媒は重力に逆らって流れることになる。このため、凝縮した液相冷媒は、流れ方向と逆向きの力を受ける。
したがって、冷媒流量が低流量の場合、冷媒流れが上昇流となる領域においては、液相冷媒を押し上げる流速とバランスする断面積分にのみ、冷媒流れが集中してしまう。この結果、冷媒放熱器から吹き出される左右の温度分布が大きくなる。
これに対し、本実施形態の冷媒放熱器は、図7(b)、(d)から明らかなように、冷媒流量が低流量の場合(図7(d)参照)であっても、冷媒放熱器から吹き出される左右の温度分布が小さくなる。
この理由は次の通りである。一対のタンク部12、13のうち上方側に配置されたタンク部12に冷媒流入口12bが設けられている風下側放熱部10においては、複数のチューブ111の全てを、冷媒が上方側から下方側へ向かって流れるように構成している。このため、風下側放熱部10では、チューブ111を流れる液冷媒にかかる重力の方向と、液冷媒の流れ方向とが一致するため、全チューブ111へ冷媒が良好に分配される。
一方、一対のタンク部22、23のうち下方側に配置されたタンク部23に冷媒流入口24が設けられている風上側放熱部20における複数のチューブ211に、冷媒が下方側から上方側へ向かって流れる第1チューブ群21a、および冷媒が上方側から下方側へ向かって流れる第2チューブ群21bを設けている。このため、第1チューブ群21aでは、チューブ211を流れる液相冷媒にかかる重力の方向と、液相冷媒の流れ方向とが反対になるので、第1チューブ群21aに属するチューブ211の冷媒分配性が悪化する。
しかし、風上側放熱部20には、第1チューブ群21aおよび第2チューブ群21bの双方が設けられており、冷媒流れがターンする構成になっているので、風上側放熱部20全体としての流路断面積が減少して、冷媒の流速が上昇する。このため、冷媒が下方側から上方側へ向かって流れる第1チューブ群21aを設けることによる冷媒分配性の悪化の影響を最小限に留めることができる。また、冷媒が下方側から上方側へ向かって流れる第1チューブ群21aに多少の冷媒分布が生じ、空気温度分布が悪化したとしても、送風空気が風下側放熱部10を通過する際に温度分布は緩和されるため、冷媒放熱器1全体としての吹出空気の温度分布に与える影響を小さくできる。
ところで、送風空気の流れ方向に対して直列に配置された2つの放熱部10、20では、送風空気流れ最下流側に配置された風下側放熱部10のコア部11における送風空気と冷媒との熱交換量が、風上側放熱部20のコア部21における送風空気と冷媒との熱交換量よりも大きくなる。つまり、送風空気流れ最下流側に配置された風下側放熱部10のコア部11は、冷媒放熱器1全体としての吹出空気の温度分布に与える影響が最も大きい。
したがって、上述した2つの放熱部10、20を送風空気の流れ方向に対して直列に配置するとともに、複数のチューブ111の全てにおいて冷媒が上方側から下方側へ向かって流れるように構成された風下側放熱部10を送風空気流れ最下流側に配置することで、冷媒分配性の良い風下側放熱部10において、温度分布が緩和される。このため、冷媒放熱器1全体として、冷媒と熱交換して吹き出される空気の温度分布を抑制できる。
ところで、第2風下側タンク部13と第2風上側タンク部23とが熱的に接触している場合、第2風下側タンク部13から第2風上側タンク部23の冷媒流出口23b近傍に熱が伝わる。これにより、第2風上側タンク部23の冷媒集合部233内の冷媒に再沸騰が起こり、第2チューブ群21bを構成するチューブ211において、冷媒が流れ方向と逆向き(下方側から上方側)に押し返されてしまう。その結果、風上側放熱部20において、左右温度分布の悪化や、放熱性能低下を招いてしまう。
これに対し、本実施形態では、第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23を別体として構成するとともに、第1冷媒集合部13の冷媒を冷媒分配部232に導く連通部50を介して連結している。これによれば、コア部11、21の下方側に配置されたタンク部22、23同士を、連通部50以外の部位において熱的に遮断することができる。したがって、第2風下側タンク部13から第2風上側タンク部23の冷媒流出口23b近傍に熱が伝わることを抑制できる。
さらに、本実施形態では、第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23を別体として構成している。これにより、2つの放熱部10、20における、コア部11、21の上方側に配置されたタンク部12、22同士を熱的に遮断することができるので、第1風下側タンク部12から第1風上側タンク部22に熱が伝わることを抑制できる。
さらに、本実施形態では、風上側放熱部20における第2風上側タンク部23の、チューブ積層方向における冷媒流入口12bに近い側の端部に、冷媒流出口23bを設けている。このため、風下側コア部11においては、冷媒導入部12aに近い側(図6における左側)は、冷媒導入部12aから遠い側(図6における右側)より温度が高くなる。一方、風上側コア部21においては、冷媒導入部12aに近い側はサブクール状態となるため、冷媒導入部12aから遠い側よりも温度が低くなる。
そして、2つの放熱部10、20を送風空気流れに対して直列に配置した際に、2つのコア部11、21において吹出空気の温度が相殺されるので、左右の温度分布が生じ難くなる。さらに、冷媒導入部12aや冷媒導出部23aに接続される冷媒配管(図示せず)を、冷媒放熱器1の同一の側面にまとめることができるので、冷媒配管の取り回し性を向上させることができる。これにより、冷媒放熱器1の室内空調ユニット30への搭載性を向上させることができる。
ところで、本実施形態のように、本発明の冷媒放熱器1をヒートポンプサイクル100に適用した場合、冷房運転時には、冷媒放熱器1はサイクルを構成する冷媒配管として機能し、冷媒を放熱させない。このため、冷媒放熱器1における冷媒の圧力損失を低減させる必要がある。具体的には、冷媒流れがターンする前後の冷媒流路断面積を同等にする、つまり第1チューブ群21aに属するチューブ211の本数と第2チューブ群21bに属するチューブ211の本数とを等しくすることで、冷媒の圧力損失を最も低減できる。
ここで、風上側放熱部20の第1チューブ群21aに属するチューブ211では、冷媒流れが上昇流になるので、第2チューブ群21bに属するチューブ211と比較して、冷媒の圧力損失が大きくなる。したがって、風上側放熱部20を構成するチューブ211のうち、第1チューブ群21aに属するチューブ211の合計本数が多すぎると、暖房運転時において第1チューブ群21aに属するチューブ211の冷媒流速が低下し、冷媒分配性が悪化することにより、左右温度分布が大きくなってしまう。
これに対し、本実施形態では、風上側放熱部20において、風上側コア部21を構成する複数のチューブ211の総本数をn、風上側コア部21が有する第1チューブ群21aの個数および第2チューブ群21bの個数の合計である合計チューブ群数をx(本例ではx=2)としたとき、第1チューブ群21aを構成するチューブ211の合計本数mが、m≦n/x(但し、mは自然数)の関係を満たすように、風上側コア部21を構成している。これによれば、風上側コア部21の冷媒分配性を向上、および冷房運転時の圧力損失の低減の両立を図ることができる。
さらに、本実施形態では、連通部50を、複数の冷媒通路を有する多穴チューブとしている。これによれば、連通部50の冷媒出口部から、風上側コア部21のチューブ211入口部までの距離の差を小さくすることができる。このため、風上側放熱部20の冷媒分配部232における冷媒再分配性を向上できる。
また、連通部50を多穴チューブとすることで、連通部50の内部に複数の内柱部を容易に設けることができる。これにより、連通部50の耐圧性を向上できる。
さらに、本実施形態では、連通部50に位置決め用の切り欠き51を形成している。これによれば、切り欠き51により良好に位置決めを行うことができるので、連通部50をタンク部13、23の貫通孔14、24に挿入する際に、タンク部13、23内部に入り込む部分の長さ(突き出し量)を短くすることができる。このため、連通部50における冷媒の圧力損失を低減するとともに、冷媒の分配性を向上させることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図8に基づいて説明する。本第2実施形態では、上記第1実施形態と比較して、連通部50の構成が異なるものである。なお、図8の上下方向は製造時の上下方向と一致しており、図8は図3に対して上下逆さに図示している。
図8に示すように、本実施形態では、第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23それぞれの底部(コア部11、21から最も離れている部位)に、貫通孔(図示せず)が形成されている。そして、これら2つの貫通孔の双方を覆うように、カップ状に形成された連通部50を配置することで、第2風下側タンク部13の冷媒集合部と第2風上側タンク部23の冷媒分配部232とが連通するように構成されている。
本実施形態によれば、製造時に連通部50を第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23の上方側から組み付けることができるので、組付性を向上させることができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図9に基づいて説明する。本第3実施形態では、上記第1実施形態と比較して、連通部50の構成が異なるものである。
図9に示すように、本実施形態では、第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23それぞれの、チューブ積層方向における冷媒流入口12bから遠い側の端部に、貫通孔(図示せず)が形成されている。そして、これら2つの貫通孔の双方を覆うように、カップ状に形成された連通部50を配置することで、第2風下側タンク部13の冷媒集合部と第2風上側タンク部23の冷媒分配部232とが連通するように構成されている。
本実施形態によれば、製造時に連通部50を第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23の側方から組み付けることができるので、組付性を向上させることができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図10に基づいて説明する。本第4実施形態では、上記第1実施形態と比較して、風上側放熱部20の流路構成として、冷媒流れが2回UターンするNターン式の流路構成を採用している点が異なるものである。
図10に示すように、本実施形態の風上側放熱部20は、2つの第1チューブ群21aと1つの第2チューブ群21bを有している。また、第2チューブ群21bは、2つの第1チューブ群21aの間に配置されている。ここで、2つの第1チューブ群21aのうち、冷媒流れ上流側に配置されるものを上流側第1チューブ群211aといい、冷媒流れ下流側に配置されるものを下流側第1チューブ群212aという。
第2風上側タンク部23の内部には、チューブ積層方向における冷媒導入部12aから遠い側の端部寄りに、仕切部231が配置されている。そして、この仕切部231によって、第2風上側タンク部23のタンク内部空間が、上流側第1チューブ群211aに属する各チューブ211が連通する空間と、第2チューブ群21bに属する各チューブ211および下流側第1チューブ群212aの双方が連通する空間とに仕切られている。上流側第1チューブ群211aに属する各チューブ211が連通する空間には、連通部50が接続されている。
ここで、第2風上側タンク部23の内部のうち、上流側第1チューブ群211aに属する各チューブ211が連通する空間が、上流側第1チューブ群211aに属する各チューブ211に冷媒を分配する冷媒分配部232として機能し、第2チューブ群21bに属する各チューブ211および下流側第1チューブ群212aの双方が連通する空間が、第2チューブ群21bに属する各チューブ211からの冷媒を集合させるとともに、下流側第1チューブ群212aに属する各チューブ211に冷媒を分配する冷媒集合分配部234として機能する。
第1風上側タンク部22の内部には、チューブ積層方向における冷媒導入部12aに近い側の端部寄りに、仕切部221が配置されている。そして、この仕切部221によって、第1風上側タンク部22のタンク内部空間が、上流側第1チューブ群211aに属する各チューブ211および第2チューブ群21bに属する各チューブ211の双方が連通する空間と、下流側第1チューブ群212aが連通する空間とに仕切られている。下流側第1チューブ群212aが連通する空間には、冷媒導出部23aが接続されている。
ここで、第1風上側タンク部22の内部のうち、上流側第1チューブ群211aに属する各チューブ211および第2チューブ群21bに属する各チューブ211の双方が連通する空間が、上流側第1チューブ群211aに属する各チューブ211からの冷媒を集合させるとともに、第2チューブ群21bに属する各チューブ211に冷媒を分配する冷媒集合分配部222として機能し、下流側第1チューブ群21aが連通する空間が、下流側第1チューブ群212aに属する各チューブ211からの冷媒を集合させる冷媒集合部223として機能する。
本実施形態によれば、第1風下側タンク部22に冷媒導出部23aを接続しているので、冷媒導入部12aと冷媒導出部23aとを冷媒放熱器の上方側に集約することができる。したがって、冷媒導入部12aや冷媒導出部23aに接続される冷媒配管(図示せず)の取り回し性を向上させることができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図11に基づいて説明する。本第5実施形態では、上記第1実施形態と比較して、風下側放熱部10および風上側放熱部20の流路構成として、ともに、冷媒流れがUターンしない全パス式の流路構成を採用している点が異なるものである。
図11に示すように、本実施形態の風上側放熱部20においては、風上側コア部21を構成する複数のチューブ211の全てが、冷媒が上方側から下方側へ向かって流れるように構成されている。
風下側放熱部10の第2風下側タンク部13の、チューブ積層方向における冷媒導入部12aに近い側の端部には、第2風下側タンク部13に集合した冷媒を流出させる冷媒流出口15が形成されている。風上側放熱部20の第1風上側タンク部22の、チューブ積層方向における冷媒導入部12aに近い側の端部には、第1風上側タンク部22に冷媒を流入させる冷媒流入口25が形成されている。
冷媒流出口15および冷媒流入口25は、管状の連通部50によって連結されている。つまり、連通部50は、第2風下側タンク部13に集合した冷媒が、連通部50を介して第1風上側タンク部22に流入するように構成されている。
本実施形態によれば、風下側放熱部10および風上側放熱部20の双方においうて、複数のチューブ111、211の全てが、冷媒が上方側から下方側へ向かって流れるように構成することで、チューブ111、211を流れる液冷媒にかかる重力の方向と、液冷媒の流れ方向とが一致するため、風下側放熱部10および風上側放熱部20の双方において全チューブ111、211へ冷媒が良好に分配される。したがって、冷媒放熱器全体として、冷媒と熱交換して吹き出される空気の温度分布をより確実に抑制できる。
なお、本実施形態において、冷媒流出口15および冷媒流入口25を、冷媒放熱器1における冷媒導入部12aおよび冷媒導出部23aと反対側の側面に配置してもよい。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について図12に基づいて説明する。本第6実施形態では、上記第1実施形態と比較して、3つの放熱部10、20、60を送風空気の流れ方向に対して直列に配置した点が異なるものである。
図12に示すように、風下側放熱部10と風上側放熱部20との間には、中間放熱部60が設けられている。中間放熱部60の基本的な構成は、第1実施形態で説明した風上側放熱部20と同様であるため、詳細な説明は省略する。
中間放熱部60の複数のチューブ(図示せず)には、冷媒が下方側から上方側へ向かって流れる第1チューブ群61a、および冷媒が上方側から下方側へ向かって流れる第2チューブ群61bが設けられている。中間放熱部60を送風空気流れ下流側から見たときに、チューブ積層方向の左側に第1チューブ群61aが配置されており、チューブ積層方向の右側に第2チューブ群61bが配置されている。
中間放熱部60のタンク部62、63のうち下方側に配置された第2中間タンク部63の内部には、長手方向の中央位置に仕切部631が配置されている。第2中間タンク部63は、この仕切部631によって、タンク内部空間が第1チューブ群61aに属する各チューブが連通する空間と、第2チューブ群61bに属する各チューブが連通する空間とに仕切られている。
第1チューブ群61aに属する各チューブが連通する空間には、後述する第1連通部50aが接続されている。また、第2チューブ群61bに属する各チューブが連通する空間には、後述する第2連通部50bが接続されている。
ここで、第2中間タンク部63の内部のうち、第1チューブ群61aに属する各チューブが連通する空間が、第1チューブ群61aに属する各チューブに冷媒を分配する冷媒分配部632として機能し、第2チューブ群61bに属する各チューブが連通する空間が、第2チューブ群61bに属する各チューブから冷媒を集合させる冷媒集合部633として機能する。
中間放熱部60のタンク部62、63のうち上方側に配置された第1中間タンク部62は、第1チューブ群61aに属する各チューブから冷媒を集合させるとともに、第2チューブ群61bに属する各チューブへ冷媒を分配する冷媒集合分配部として機能する。
ところで、本実施形態では、風上側放熱部20を送風空気流れ下流側から見たときに、チューブ積層方向の右側に第1チューブ群21aが配置されており、チューブ積層方向の左側に第2チューブ群21bが配置されている。
第2風下側タンク部13のタンク内空間と第2中間タンク部63の冷媒分配部632とは、第1連通部50aを介して接続されている。第2中間タンク部63の冷媒集合部633と第2風上側タンク部23の冷媒分配部232とは、第2連通部50bを介して接続されている。第1連通部50aおよび第2連通部50bの構成は、第1実施形態で説明した連通部50と同様である。第1連通部50aは、チューブ積層方向における冷媒導入部12aに近い側に配置されており、第2連通部50bは、チューブ積層方向における冷媒導入部12aから遠い側に配置されている。
本実施形態によれば、3つの放熱部10、20、60を送風空気流れに対して直列に配置し、さらに送風空気流れ最下流側に配置した風下側放熱部10の冷媒流れを上方側から下方側に流す全パス式とするとともに、それ以外の放熱部10、20の冷媒流れをUターン式とすることで、上記第1実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について図13に基づいて説明する。本第7実施形態では、上記第5実施形態と比較して、風下側放熱部10と風上側放熱部20との冷媒流れが独立している点が異なるものである。
図13に示すように、本実施形態では、風下側放熱部10および風上側放熱部20は、それぞれ独立した熱交換器として構成されている。具体的には、風下側放熱部10の第1風下側タンク部12および風上側放熱部20の第1風上側タンク部22には、それぞれ、冷媒導入部12a、22aが接続されている。風下側放熱部10の第2風下側タンク部13および風上側放熱部20の第2風上側タンク部23には、それぞれ、冷媒導出部13a、23aが接続されている。
冷媒導入部12a、22aおよび冷媒導出部13a、23aは、冷媒放熱器1の同一の側面に配置されている。これによれば、冷媒導入部12a、22aや冷媒導出部13a、23aに接続される冷媒配管(図示せず)の取り回し性を向上させることができる。
本実施形態によれば、2つの放熱部10、20を送風空気流れに対して直列に配置するとともに、これら2つの放熱部10、20の冷媒流れを上方側から下方側に流す全パス式とすることで、上記第5実施形態と同様の効果を得ることが可能となる。
(第8実施形態)
次に、本発明の第8実施形態について図14および図15に基づいて説明する。本第8実施形態では、上記第1実施形態と比較して、タンク部12、13、22、23の構造が異なるものである。
図14に示すように、本実施形態では、第1風下側タンク部12および第1風上側タンク部22が一体として形成されている。ここで、第1風下側タンク部12および第1風上側タンク部22が一体として構成されたタンク部を上方側タンク部120という。
上方側タンク部120における第1風下側タンク部12と第1風上側タンク部22との間の部位には、チューブ積層方向と平行に延びるスリット120aが形成されている。このスリット120aは、上方側タンク部120を、チューブ積層方向における冷媒導入部12aに近い側の端部から、冷媒導入部12bから遠い側の端部に向かって切り欠くことにより形成されている。
同様に、図15に示すように、第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23が一体として形成されている。ここで、第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23が一体として構成されたタンク部を下方側タンク部130という。
下方側タンク部130における第2風下側タンク部13と第2風上側タンク部23との間の、連通部50以外の部位には、チューブ積層方向と平行に延びるスリット130aが形成されている。このスリット130aは、下方側タンク部130を、チューブ積層方向両端部から連通部50に向かってそれぞれ切り欠くことにより形成されている。
本実施形態によれば、上方側タンク部120における第1風下側タンク部12と第1風上側タンク部22との間の部位にスリット120aを設けることで、第1風下側タンク部12および第1風上側タンク部22間の熱移動を遮断できる。同様に、下方側タンク部130における第2風下側タンク部13と第2風上側タンク部23との間の部位にスリット130aを設けることで、第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23間の熱移動を遮断できる。
さらに、本実施形態では、第1風下側タンク部12および第1風上側タンク部22を一体として形成するとともに、第2風下側タンク部13および第2風上側タンク部23を一体として形成しているので、2つのコア部11、21、上方側タンク部120および下方側タンク部130を一度に組み付けることができる。したがって、冷媒放熱器1の製造時間を短縮できる。
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
(1)上述の実施形態(第4実施形態を除く)では、風上側放熱部20において、第1チューブ群21aと第2チューブ群21bとを1つずつ設けた例について説明したが、これに限らず、第1チューブ群21aおよび第2チューブ群21bの少なくとも一方のチューブ群を複数設け、第1チューブ群21aと第2チューブ群21bを交互に配置してもよい。
(2)上述の実施形態の冷媒放熱器1では、冷媒と車室内送風空気とを熱交換させる構成のものを採用した例を説明したが、本発明の冷媒放熱器1の構成は、これに限定されない。例えば、冷媒、車室内送風空気、他の熱媒体等の複数種の流体の熱交換を可能に構成されたものであってもよい。
このような複数種の流体の熱交換を実現可能に構成された熱交換器としては、冷媒を流通させる冷媒用チューブと熱媒体を流通させる熱媒体用チューブとを順次積層配置し、隣り合う冷媒用チューブと熱媒体用チューブとの間に送風空気を流通させる空気通路を形成し、さらに、この空気通路に冷媒用チューブおよび熱媒体用チューブの双方に接合されて、冷媒と送風空気および熱媒体と送風空気との熱交換を促進するとともに、冷媒と熱媒体との熱移動を可能とするフィンを配置した構成を採用できる。
(3)上述の実施形態では、本発明の冷媒放熱器1を備えるヒートポンプサイクル100を車両用空調装置に適用した例を説明したが、本発明の冷媒放熱器1を備えるヒートポンプサイクル100の適用はこれに限定されない。例えば、据置型空調装置、冷温保存庫、自動販売機用冷却加熱装置等に適用してもよい。