以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔塗布装置の全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係る塗布装置10の概略構成図である。同図に示す塗布装置10は、塗布液12が塗布される一定の長さに裁断された被塗布媒体14(枚葉紙、媒体)を外周面に保持して搬送する搬送ドラム16(媒体搬送手段)と、搬送ドラム16の位相角を検出するロータリーエンコーダ17と、搬送ドラム16に保持された被塗布媒体14に塗布液12を塗布する塗布ローラ18と、塗布ローラ18に供給される塗布液が保持される塗布皿20(塗布液供給手段)と、塗布皿20に保持された塗布液12をくみ上げて、塗布ローラ18へ供給するアニロックスローラ22(塗布液供給手段、計量ローラ)と、を備えている。
また、不図示の被塗布媒体供給部から搬送ドラム16へ被塗布媒体14を受け渡す渡し胴24(媒体供給手段)と、塗布液12’(破線により図示)が塗布された被塗布媒体14を排出させるために、搬送ドラム16から被塗布媒体14を受け渡される渡し胴26を備えている。
図1には、供給側の渡し胴24から搬送ドラム16へ被塗布媒体14が受け渡される位置を「供給位置」とし、符号27を付して図示し、搬送ドラム16から排出側の渡し胴26へ被塗布媒体14が受け渡される位置を「排出位置」とし、符号29を付して図示する。
「供給位置27」は、搬送ドラム16の位相角の原点とされる。ここで、「位相角」とは、予め決められた回転基点(原点)からの回転角度(ラジアン)であり、供給位置27を原点として、搬送ドラム16の外周面上の任意の位置を搬送ドラム16の位相角で表すことができる。
排出側の渡し胴26(排出位置29)の後段(被塗布媒体搬送方向の下流側)には、搬送ドラム16の被塗布媒体14が保持される被塗布媒体保持面16A(媒体保持面)に付着した塗布液を検出する塗布液検出部28(塗布液検出手段)が配置されている。
すなわち、搬送ドラム16の回転方向における排出位置29から供給位置27の間には、塗布液検出部28が配置されており、被塗布媒体14が排出され、次の被塗布媒体14が供給される間の搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aが検出される。なお、塗布液検出部28の構成等の詳細については後述する。
本例に示す塗布装置10は、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに塗布液が付着していることが検出されると、塗布ローラ18への塗布液の供給開始タイミング、又は塗布ローラ18への塗布液の供給終了タイミングが補正(調整)される。
すなわち、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに塗布液が付着していると、塗布ローラ18に塗り残しの塗布液が存在していると考えられる。塗布ローラ18に付着した塗り残しの塗布液は、次の塗布液の塗布において塗りむらとなる。
塗布ローラ18に塗り残しの塗布液があったとしても、塗布ローラ18への塗布液の供給開始タイミング、又は塗布ローラ18への塗布液の供給終了タイミングが補正されることで、塗り残しの塗布液への新たな塗布液の上塗りが抑制され、次の塗布液の塗布における塗りむらの発生が抑制される。
なお、塗布ローラ18への塗布液の供給開始タイミング補正、供給終了タイミング補正の詳細は後述する。
図1に示す塗布装置10は、搬送ドラム16に保持されて搬送される被塗布媒体14に塗布ローラ18を接触させて、塗布ローラ18の外周面18Aに供給された塗布液が被塗布媒体14へ塗布されるローラ塗布方式が適用される。
塗布液12は、ローラ塗布方式が適用可能な様々な液体が適用される。例えば、インクジェット記録装置における凝集処理液、枚葉紙の表面にコーティング層を形成するコーティング液などが挙げられる。図1では、アニロックスローラ22から塗布ローラ18へ供給された塗布液、及び被塗布媒体14へ塗布された塗布液は、符号12’を付して破線で図示されている。
本例に示す塗布装置10は、一定の長さに裁断された被塗布媒体14が使用される。ここで、「被塗布媒体」には、シート状の金属、シート状の樹脂、繊維(布)などの紙媒体以外の媒体が含まれる。
また、「一定の長さに裁断された被塗布媒体」には、「A1」、「菊半」といった紙媒体の規格によって定められた定型のサイズを有する媒体を含み、さらに、規格外のサイズにカットされた媒体が含まれる。
搬送ドラム16は、円筒形状を有し、不図示の回転機構により回転駆動可能に構成されている。搬送ドラム16を同図における反時計周りに回転させることで、外周面に保持された被塗布媒体14は搬送ドラム16の外周面に沿って反時計回り方向へ搬送される。
搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに被塗布媒体14を保持する例として、エア吸引、静電吸着などが挙げられる。また、被塗布媒体14の先端部を挟持するグリッパーを備える形態も可能である。
搬送ドラム16の回転軸には、ロータリーエンコーダ17(塗布液検出手段)が取り付けられている。ロータリーエンコーダ17から出力されるパルス信号に基づいて、搬送ドラム16の位相角が把握され、被塗布媒体14の搬送路上の位置(搬送ドラム16の外周面16A上の位置)が把握される。
なお、ロータリーエンコーダ17は、搬送ドラム16の駆動源であるモータの回転軸に取り付けられていてもよいし、モータと搬送ドラム16との間の回転機構の回転軸に取り付けられていてもよい。
塗布ローラ18は、被塗布媒体14の全幅(被塗布媒体14の搬送方向と直交する方向の全長)に対応する長さを有し、その表面が所定量の塗布液を保持することができる材質(例えば、ゴム)で構成され、不図示の回転機構によって搬送ドラム16と反対方向(時計回り方向)に回転駆動可能に構成されている。
ここで、本明細書における「被塗布媒体14の搬送方向と直交する方向」とは、「搬送ドラム16の回転軸の方向」と同じ方向であり、これらは許容範囲内の誤差分だけずれた方向とすることができる。
塗布ローラ18を予め決められた回転速度で回転させながら、搬送ドラム16に保持される被塗布媒体14に所定の圧力で押し当てることで、被塗布媒体14の外周面18Aに塗布液が塗布される。
塗布皿20は、不図示の塗布液供給系から供給された塗布液が一時貯留される部材である。塗布皿20に貯留される塗布液の濃度調整、粘度調整をするための循環系、塗布皿20内の塗布液を廃棄するための排出系が具備される。
供給系の構成例として、塗布液が貯留される供給タンクと、供給タンクから塗布皿20への塗布液の流路となる供給流路と、供給流路に設けられる供給ポンプと、を含む態様が挙げられる。
また、循環系の構成として、塗布皿20内の塗布液を循環させる循環流路と、循環流路に設けられる循環ポンプと、を含む態様が挙げられる。さらに、廃棄系の構成として、塗布皿20内の塗布液を廃液タンクへ排出させる排出流路と、排出流路に設けられる排出ポンプと、を含む態様が挙げられる。なお、供給流路、循環流路、排出流路には、適宜、バルブ、フィルタ、圧力計等が設けられる。
アニロックスローラ22は、塗布ローラ18の全長に対応する全長を有し、ステンレス材の表面に、不図示の細かい溝(セル)が形成され、その表面の一部が塗布皿20に保持される塗布液に浸漬された状態で回転可能に支持される。
アニロックスローラ22を塗布ローラ18と反対方向(反時計回り方向)に回転させることで、塗布皿20からセルの中に保持された一定量(1枚分の被塗布媒体の塗布量)の塗布液がくみ上げられ、計量された塗布液が塗布ローラ18へ供給される。
計量ブレード30(塗布液供給手段)は、アニロックスローラ22の軸方向の長さに対応する長手方向の長さを有する薄板であり、アニロックスローラ22を回転可能に支持するローラカバー(不図示)に固定され、先端部がアニロックスローラ22の外周面に当接している。
計量ブレード30は、アニロックスローラ22の表面に付着した余分な塗布液をかき取る部材である。計量ブレード30によってアニロックスローラ22に保持される塗布液量が調整される。
計量ブレード30には、樹脂材料、ゴム材料などの耐液性及び耐磨耗性を有する材料や、ステンレス等の耐液性を有する金属材料又は金属合金などの材料が適用される。
また、アニロックスローラ22は、不図示の移動機構によって塗布ローラ18との接触及び塗布ローラ18からの離間が切り換え可能に構成されている。塗布ローラ18により被塗布媒体14へ塗布液が塗布される塗布状態では、アニロックスローラ22を塗布ローラ18へ接触させることで、塗布ローラ18へ塗布液が供給される。
一方、アニロックスローラ22を塗布ローラ18から離間させることで、塗布ローラ18への塗布液の供給が停止される。図1に図示した白抜き矢印線は、アニロックスローラ22の移動方向を示している。
本例に示す塗布装置10は、塗布ローラ18とアニロックスローラ22との当接、離間によって被塗布媒体14への塗布液の塗布量が制御されている。係る構成により、塗布ローラ18を移動させる必要がなく、塗布ローラ18の外周面18Aをクリーニングする構成を備える必要がない。
本例では、アニロックスローラ22及びアニロックスローラ22を支持する塗布皿20を一体的に移動させる態様を例示したが、塗布皿20を固定して、アニロックスローラ22のみを移動させてもよい。
図1に図示した塗布ローラ18及びアニロックスローラ22を含む塗布部32の構成は、図1に図示された構成に限定されない。例えば、アニロックスローラ22に代わり塗布皿20から塗布液を計量しつつ、計量された塗布液を塗布ローラ18へ供給する構成を適用してもよいし、塗布ローラ18と塗布皿20との間に複数のローラを含むローラ群を具備する構成としてもよい。すなわち、塗布部32は、少なくとも塗布ローラ18を含む1つ以上のローラから構成される。
〔制御系の説明〕
図2は、塗布装置10の制御系の構成を示すブロック図である。同図に示すように、塗布装置10は、制御部50(調整手段、計量ローラ制御手段)によって装置各部が統括的に制御される。制御部50の構成として、プロセッサー及びメモリ等の周辺回路を含む形態が挙げられる。
搬送制御部52は、制御部50の指令信号に基づいて搬送ドラム16を駆動させる搬送部54を制御する。搬送部54の構成として、搬送ドラム16を回転させるモータと、該モータの回転軸に連結されるギヤ等の伝達機構を含む形態が挙げられる。
塗布制御部56(調整手段、計量ローラ制御手段)は、制御部50の指令信号に基づいて塗布部32による塗布液の塗布動作を制御する。すなわち、塗布制御部56は、塗布ローラ18を駆動させる塗布ローラ駆動部58(調整手段)の動作を制御する。
塗布ローラ駆動部58の構成として、塗布ローラ18を回転させるモータ、該モータの回転軸に連結されるギヤ等の伝達機構を含む形態が挙げられる。
また、塗布制御部56は、アニロックスローラ22を駆動させるアニロックスローラ駆動部60(調整手段、計量ローラ移動手段)の動作を制御する。
アニロックスローラ駆動部60の構成として、アニロックスローラ22を回転させるモータ、該モータの回転軸に連結されるギヤ等の伝達機構、アニロックスローラ22と塗布ローラ18との当接、離間の際に、アニロックスローラ22と塗布皿20とを一体に移動させる移動機構を含む形態が挙げられる。
演算部62は、装置内で処理される各種データの演算処理を実行する。この演算処理には、アニロックスローラ22を塗布ローラ18へ当接させるタイミング、及びアニロックスローラ22を塗布ローラ18から離間させるタイミングを算出する演算処理が含まれる。
演算部62による演算処理結果は、制御部50を介して記憶部64へ記憶される。また、制御部50を介して、装置各部の制御系に提供される。なお、演算処理結果が記憶される記憶部を演算部62に付随して備える形態や、該記憶部が演算部62に内蔵される形態も可能である。
記憶部64は、制御部50によってデータの書き込み及び読み出しが制御され、入力データ、演算処理結果のデータ等の各種データが記憶される。記憶部64は、半導体メモリを適用してもよいし、磁気記憶媒体などの記憶媒体を適用してもよい。
なお、図2では、塗布装置10における各種データのそれぞれに対応する複数のメモリ(記憶素子、記憶媒体)を総称して「記憶部64」として図示されている。すなわち、記憶部64は、塗布装置10における各種データのそれぞれに対応する複数のメモリが含まれる。
カウンター66は、ロータリーエンコーダ17から出力されるパルス信号をカウントする処理部である。カウンター66によってカウントされたロータリーエンコーダ17の出力パルス数のデータは、搬送ドラム16の位相角のデータとして記憶部64に記憶される。
例えば、ロータリーエンコーダ17のz相出力がオンとなる位置と、搬送ドラム16の回転基点(原点)の位置とを一致させておくことで、ロータリーエンコーダ17の出力パルスのカウント数から、原点を基準とする搬送ドラム16の位相角が把握される。
例えば、搬送ドラム16の被塗布媒体14の先端部14Aの固定位置(グリッパーの位置)が、図1に図示した供給位置27に位置すると、ロータリーエンコーダ17のz相信号がオンになるように、搬送ドラム16、ロータリーエンコーダ17の調整をする。
ロータリーエンコーダ17のz相信号がオンになるタイミングで、カウンター66によるロータリーエンコーダ17の出力パルスのカウントを開始する。カウンター66のカウント値を搬送ドラム16の位相角に換算して、搬送ドラム16の位相角が把握される。
一時的に記憶されたカウンター66のカウント値は、制御部50を介して演算部62へ送られ、搬送ドラム16の位相角の情報に変換される。また、塗布液検出部28から出力される検出信号は、制御部50を介して残留塗布液(図4に符号12”を付して図示)の情報として演算部62へ送出される。
制御部50は、搬送ドラム16の位相角の情報を参照して、検出された残留塗布液が被塗布媒体14の先端部14Aよりも前側に付着したものであるか、被塗布媒体14の後端部14Bよりも後側に付着したものであるかを判断する。
もちろん、制御部50に付随して、搬送ドラム16の位相角の情報から残留塗布液の付着位置を判断する判断部(残留塗布液付着位置判断手段)を備えてもよい。
例えば、被塗布媒体14の搬送方向の長さ、供給位置27から塗布液検出部28の検出位置までの距離は既知であり、これらの情報から、被塗布媒体14の先端部14A及び後端部14Bが塗布液検出部28の検出位置へ到達したときの搬送ドラム16の位相角を把握することができる。
そうすると、塗布液検出部28によって残留塗布液が検出されたタイミングにおける搬送ドラム16の位相角の値(カウンター66のカウント値)が、被塗布媒体14の後端部14Bが塗布液検出部28の検出位置へ到達したとき搬送ドラム16の位相角の値を超える値であれば、検出された残留塗布液12”は、被塗布媒体14の後端部14Bよりも後側に付着したものであると判断することができる。
また、塗布液検出部28によって残留塗布液が検出されたタイミングにおける搬送ドラム16の位相角の値が、被塗布媒体14の先端部14Aが塗布液検出部28の検出位置へ到達したときの搬送ドラム16の位相角の値未満の値であれば、検出された残留塗布液は、被塗布媒体14の先端部14Aよりも前側に付着したものであると判断することができる。
また、図示は省略するが、塗布装置10は、キーボード、マウス、操作ボタン等のユーザーインターフェース、ディスプレイ装置等の表示部を備えることも可能である。タッチパネル式のディスプレイ装置を備え、ユーザーインターフェースと表示部とを兼用する形態も可能である。
〔アニロックスローラの当接タイミングの説明〕
図3は、図1に図示したアニロックスローラ22の塗布ローラ18への当接(塗布ローラ18からの離間)タイミングの説明図である。以下の説明において、図1と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
本例に示す塗布装置10は、被塗布媒体14の先端部14Aが塗布処理位置42(塗布ローラ18とアニロックスローラ22が接触する位置)に到達するタイミングと、塗布ローラ18上の塗布液の塗り始め位置(図示しない塗布ローラ18に塗布された塗布液の先端)が塗布処理位置42に到達するタイミングと、を一致させるように、塗布ローラ18へ塗布液が供給されるタイミング(アニロックスローラ22を塗布ローラ18へ当接させるタイミング)が決められている。
図3に図示した白抜き矢印線は、塗布ローラ18から離間しているアニロックスローラを塗布ローラ18へ当接させるときの移動方向である。塗布ローラ18からアニロックスローラ22を離間させるときは、図3の白抜き矢印線の示す方向と反対方向へアニロックスローラ22を移動させる。
供給位置27から塗布処理位置42までの位相角をθ1(ラジアン)、搬送ドラム16の半径をR1(メートル)、搬送ドラム16の周速をv1(メートル毎秒)とし、供給処理位置40から塗布処理位置42までの回転角度をθ2(ラジアン)、塗布ローラ18の半径をR2(メートル)、塗布ローラ18の周速をv2(メートル毎秒)とする。
アニロックスローラ22を塗布ローラ18へ当接させるタイミングにおける搬送ドラムの位相角θは、次式(1)によって求められる。
θ=θ1−(R2/R1)×(v1/v2)×θ2 …(1)
すなわち、位相角がθからθ1まで搬送ドラム16が回転するのに要する時間Δt1は、Δt1={(θ1−θ)×R1}/v1となる。
また、塗布ローラ18に供給された塗布液(不図示)が供給処理位置40から塗布処理位置42まで移動するのに要する時間(塗布ローラが回転角度θ2分回転するのに要する時間)Δt2は、Δt2=(θ2×R2)/v2となる。
そして、Δt1=Δt2を満たすように、アニロックスローラ22を塗布ローラ18へ当接させるタイミングが決められている。
すなわち、搬送ドラム16の位相角が上記式(1)で算出されるθになると、アニロックスローラ22を塗布ローラ18へ当接させる。
ここで、本例に示す塗布装置10は、塗布液検出部28によって搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに残留した塗布液が検出されると、アニロックスローラ22を塗布ローラ18へ当接させるタイミングが補正される(詳細後述)。
このようにして、アニロックスローラ22から塗布ローラ18へ塗布液の供給が開始され、被塗布媒体14の先端部14Aが塗布処理位置42に到達するタイミングに合わせて、塗布ローラ18を被塗布媒体14へ当接させて、被塗布媒体14への塗布液の塗布処理が実行される。
なお、被塗布媒体14の先端部を挟持するグリッパーを備える形態では、被塗布媒体14の先端部14Aからグリッパーによるくわえしろの分だけ後側から塗布液が塗布されるように、塗布ローラ18とアニロックスローラ22とを当接させるタイミングの補正も可能である。
上記の例では、搬送ドラム16の位相角の基準を供給位置27としたが、被塗布媒体14を検出する検出手段を備える態様では、この検出手段の位置を搬送ドラム16の位相角の基準としてもよい。
係る態様では、図3のθ1を検出手段の位置から塗布処理位置42までの搬送ドラム16の回転角度に置き換えて、上記式(1)からアニロックスローラ22を塗布ローラ18へ当接させるタイミングに対応する搬送ドラム16の位相角θを求めればよい。
〔アニロックスローラの離間制御の説明〕
次に、アニロックスローラ22の塗布ローラ18からの離間制御(離間タイミング)について説明する。先に説明したアニロックスローラ22の塗布ローラ18への当接タイミングと同様に決められる。
被塗布媒体14の搬送方向の長さをL3とすると、アニロックスローラ22を塗布ローラ18から当接させるタイミングにおける搬送ドラム16の位相角θ’は、次式(2)によって求められる。
θ’=θ1+(L3/R1)−(R2/R1)×(v1/v2)×θ2 …(2)
被塗布媒体14の搬送方向の長さL3は、ユーザーインターフェース等を介して外部から取得してもよいし、被塗布媒体14が搬送ドラム16へ供給されるまでの搬送路で測定されてもよい。
なお、搬送ドラム16の位相角は、上記した被塗布媒体14を検出する検出手段の位置を基準として把握してもよい。係る態様では、被塗布媒体14の搬送方向の長さL3が不明であっても、アニロックスローラ22を塗布ローラ18から当接させるタイミングにおける搬送ドラム16の位相角θ’を決めることができる。
すなわち、被塗布媒体14を検出する検出手段によって、被塗布媒体14の後端部14Bが検出されたタイミングからロータリーエンコーダ17の出力パルスをカウントして、搬送ドラム16の位相角を求めればよい。
被塗布媒体14の後端部14Bからの位相角の値と、被塗布媒体14先端部14Aからの位相角の値とを個別に求めて、記憶してもよい。
被塗布媒体14の後端部14Bからの位相角に基づいて、アニロックスローラ22を塗布ローラ18から離間させるタイミングを決める場合の搬送ドラム16の位相角は、上記式(1)で求められるθとなる。
さらに、塗布液検出部28によって搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに残留した塗布液が検出されると、アニロックスローラ22を塗布ローラ18から離間させるタイミングが補正される(詳細後述)。
なお、搬送ドラム16の位相角の基準位置、搬送ドラム16の周速v1、塗布ローラ18の周速v2を調整して、アニロックスローラ22を塗布ローラ18へ当接させるタイミングの補正データを算出する工程と、アニロックスローラ22を塗布ローラ18から離間させるタイミングの補正データを算出する工程とを共通化することが可能である。
〔残留塗布液の検出の説明〕
図4(a)から(c)は、塗布装置10における残留塗布液検出の説明図である。図4(a)は、被塗布媒体14へ塗布液が塗布されている状態であり、アニロックスローラ22が塗布ローラ18から離間された後の状態が図示されている。
図4(b)は、被塗布媒体14の後端部14Bが塗布処理位置42を通過した後の状態が図示されている。図4(b)に示すように、アニロックスローラ22の塗布ローラ18からの離間タイミングが遅れると、余剰な塗布液が搬送ドラム16及び塗布ローラ18に残留する。
アニロックスローラ22の塗布ローラ18からの離間タイミングが遅れる原因として、アニロックスローラ22の移動機構のバックラッシュなどが挙げられる。
図4(b)では、搬送ドラム16及び塗布ローラ18に付着した残留塗布液は、符号12”を付して図示されている。また、被塗布媒体14の後端部14Bの検出後に、被塗布媒体14に搬送方向の下流側への位置ずれが発生した場合、被塗布媒体14の後端部14Bの検出後に、被塗布媒体14の搬送速度が変動した場合にも、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16A及び塗布ローラ18の少なくともいずれかに残留塗布液12”が付着してしまう。
図4(c)に、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに付着した残留塗布液12”が塗布液検出部28の検出領域に到達した状態が図示されている。塗布液検出部28によって搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに付着した残留塗布液12”が検出されると、アニロックスローラ22の塗布ローラ18からの離間タイミングが調整される。
図4(a)、(b)では、被塗布媒体14の後端部14Bよりも後側にはみ出した塗布液を検出する場合について説明したが、被塗布媒体14の先端部14Aよりも前側にはみ出した塗布液を検出することも可能である。
すなわち、搬送ドラム16の回転軸に取り付けられたエンコーダの位相角(出力パルスのカウント数)から、残留塗布液12”が被塗布媒体14の先端部14Aよりも前側に付着しているのか、後端部14Bよりも後側に付着しているのかを判別することができる。
このようにして、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aへの残留塗布液12”の付着が検出されると、アニロックスローラ22の当接タイミングの補正データ、又は離間タイミングの補正データが生成され、図2の記憶部64に記憶される。
図2の記憶部64に記憶された補正データは、次の塗布液の塗布処理におけるアニロックスローラ22の当接タイミングの補正、又はアニロックスローラ22の離間タイミングの補正に使用される。
〔塗布液検出部の説明〕
次に、塗布液検出部28について詳細に説明する。塗布液検出部28に分光光度計の構成を適用して、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aの反射率を測定すると、残留塗布液12”が存在している部分と、残留塗布液12”が存在していない部分との反射率の違いによって、残留塗布液12”が存在しているか否かを判別することができる。
すなわち、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aの反射率を測定して、反射率が変化した場合に、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに残留塗布液12”が付着していると判断することが可能である。
なお、ここでいう「分光光度計」には、「分光反射率計」、「分光装置」、「分光器」等と呼ばれる、物質の表面の反射率を測定する構成が含まれる。
一方、塗布液検出部28として、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに照射された光の反射光を測定する構成を適用することも可能である。図5は、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに照射された光の反射光を測定する構成例が図示されている。
図5に示す塗布液検出部28は、被塗布媒体14に光を照射させる光源装置80と、光源装置80から出射されて光を搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aへ導くミラー82,84と、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16A、又は搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに付着した残留塗布液12”によって反射された反射光を集光する集光レンズ86と、集光レンズ86を通過した反射光を受光する受光素子88と、を含んで構成される。
受光素子88から出力された検出信号は、不図示のフィルタによってノイズが除去され、アンプ(AMP)90によって増幅され、ADコンバータ(ADC)92によってアナログ形式の信号がデジタル形式の信号へ変換され、図2に図示した制御部50へ送られる。
搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aは、光源装置80から照射される照射光に対する反射率が、残留塗布液12”の照射光に対する反射率と異なる材料が適用されているので、これらの反射率の違いによって、受光素子88が受ける反射光の強度が異なる。
そうすると、アンプ90及びADコンバータ92を介して出力される検出信号が変化(出力電圧が変化)するので、検出信号の変化によって残留塗布液12”の有無を把握することが可能である。
搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに表面処理を施して、残留塗布液12”との反射率の違いを大きくすることも可能である。表面処理の例として、着色、表面粗さの変更、残留塗布液12”との反射率の違いが大きい材料のコーティング等が挙げられる。
図5に示す塗布液検出部28によれば、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aと、残留塗布液12”との反射率(反射光)の違いによって、塗布液検出部28から出力される検出信号が変化するので、検出信号の変化によって残留塗布液12”の有無を検出することができる。
また、塗布液検出部として、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aの水分量を測定し、水分量の変化によって残留塗布液12”の有無を検出することも可能である。図6は、図1に図示した塗布液検出部28に水分量の測定を適用した構成例を示す構成図である。
同図に示す塗布液検出部28’は、赤外線吸収法によって搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aの水分量を測定するものであり、赤外線を出射する赤外線出射部80’と、赤外線出射部80’から出射された赤外線を搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aへ導く光学部材(ミラー)82’と、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aによって反射した赤外線を受光素子88’へ導く導光部86’と、を備えて構成される。
受光素子88’から出力された検出信号は、不図示のフィルタによってノイズが除去され、アンプ(AMP)90によって増幅され、ADコンバータ(ADC)92によってアナログ形式の信号がデジタル形式の信号へ変換され、図2に図示した制御部50へ送られる。
図6に示す塗布液検出部28’によれば、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16A上の水分量の変化によって、塗布液検出部28’から出力される検出信号が変化するので、検出信号の変化によって残留塗布液12”の有無を検出することができる。
なお、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aの水分量の検出には、カールフィッシャ法、乾燥法、誘電率法など、上述した赤外線吸収法以外の手法を適用してもよい。
また、図5に図示した塗布液検出部28、及び図6に図示した塗布液検出部28’の構成は、あくまでも一例であり、適宜構成の変更、追加、削除が可能である。例えば、図5のミラー82,84や、図6の光学部材82’は、光源装置80(赤外線出射部80’)の配置によって省略、配置の変更をすることが可能である。
ここで、図5に図示した塗布液検出部28、及び図6に図示した塗布液検出部28’は、残留塗布液12”の付着によって検出信号が変化したタイミングに基づいて、残留塗布液12”の付着量を求めることが可能である。また、残留塗布液12”の付着量として、残留塗布液12”の被塗布媒体14の搬送方向における長さを求めることも可能である。
図7は、塗布液検出部28(28’)から出力される検出信号98を模式的に図示した説明図である。同図に示す検出信号98は、残留塗布液12”を検出していない状態を示す、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに対応する第1要素98A、及び残留塗布液12”を検出している状態を示す、残留塗布液12”に対応する第2波形要素98Bが含まれる。
なお、実際の検出信号には、ノイズの重畳、エッジ部分の波形なまり等が存在おり、図7に図示された検出信号98は、ノイズの重畳等の影響がない理想的なものである。
図7に示す検出信号98から立ち下がりエッジ98C1、及び立ち上がりエッジ98C2が抽出されると、第2波形要素98Bの時間ΔtBが求められる。第2波形要素98Bの時間ΔtBに被塗布媒体14の搬送速度v1を乗じた値が、残留塗布液12”の被塗布媒体14の搬送方向の長さとして算出され、図2の記憶部64に記憶される。
このようにして算出された残留塗布液12”の被塗布媒体14の搬送方向の長さのデータは、残留塗布液12”が検出されるごとに算出され、更新される。残留塗布液12”の被塗布媒体14の搬送方向の長さの算出は、図2の演算部62によって求められる。
一方、残留塗布液12”の被塗布媒体14の搬送方向の長さを実験的に求めることも可能である。アニロックスローラ22の移動機構の機械的要素によってアニロックスローラ22の当接タイミング、離間タイミングにずれが生じているとすると、このずれ量は塗布処理ごとに同程度のずれが生じると考えられる。
そうすると、複数回の塗布によるずれ量をサンプリングして、このサンプリングデータに統計処理を施して、残留塗布液12”の被塗布媒体14の搬送方向の長さを求めることが可能である。
また、アニロックスローラ22の移動機構の機械的要素の経時変化が生じた場合には、再度、複数回の塗布によるずれ量のサンプリング、サンプリングデータの統計処理によって残留塗布液12”の被塗布媒体14の搬送方向の長さを求めて、更新すればよい。
この場合には、アニロックスローラ22の当接タイミングの補正データ、離間タイミングの補正データは固定値となり、塗布液検出部28(28’)は残留塗布液12”の有無のみを検出する。
図8(a)から(c)は、搬送ドラム16の軸方向における塗布液検出部28(28’)の配置例を示す説明図である。
図8(a)は、搬送ドラム16の軸方向の全長を一括して検出可能なセンサを備える形態が図示されている。同図に示す塗布液検出部28(28’)の構成によれば、搬送ドラム16の軸方向の全長について、残留塗布液12”の付着の有無を検出することが可能となる。
図8(b)は、搬送ドラム16の軸方向における中央部に塗布液検出部28(28’)が配置される形態が図示されている。図8(b)に破線で図示したように、搬送ドラム16の軸方向における両端部に塗布液検出部28(28’)を追加してもよいし、実線で図示される中央部の塗布液検出部28(28’)に代わり、搬送ドラム16の軸方向における両端部に塗布液検出部28(28’)を配置してもよい。
搬送ドラム16の軸方向における両端部に塗布液検出部28(28’)を配置する形態において、一方の塗布液検出部28(28’)を省略してもよい。
なお、搬送ドラム16の軸方向における「中央部」とは、搬送ドラム16の軸方向の全長を二等分する位置である「中央位置」を含む「中央位置の近傍領域」を表している。また、「両端部」とは、搬送ドラム16の軸方向の両端位置でもよいし、搬送ドラム16の軸方向の両端位置から中央部寄りの「両端の近傍領域」でもよい。
図8(b)に示す塗布液検出部28(28’)の構成によれば、検出時間や検出信号の読み出し時間をより短くすることができ、より簡単な構成によって残留塗布液12”の付着の有無を検出することができる。
図8(c)は、塗布液検出部28(28’)を搬送ドラム16の軸方向について移動させる移動機構94を備え、搬送ドラム16の軸方向に沿って塗布液検出部28(28’)を移動させて、搬送ドラム16の軸方向の全長について残留塗布液12”の付着の有無を検出する形態である。
より簡単な構成の塗布液検出部28(28’)と移動機構94との組み合わせによって、搬送ドラム16の軸方向の全長について、残留塗布液12”の付着の有無を検出することが可能となる。
〔塗布処理の流れの説明〕
次に、上述した塗布装置10における塗布処理(塗布方法)の流れを詳説する。図9は、塗布処理の流れを示すフローチャートである。
塗布処理が開始されると(ステップS10)、搬送ドラム16を動作させて、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに保持された被塗布媒体14が搬送され、搬送ドラム16の位相角に基づいて、被塗布媒体14の先端部14Aが供給位置27を通過したか否かが監視される(ステップS12)。
ステップS12において、被塗布媒体14の先端部14Aが供給位置27を通過した場合には(Yes判定)、ステップS14に進み、アニロックスローラ22の塗布ローラ18への当接タイミングの補正データが記憶されているか否かが判断される。
一方、ステップS12において、被塗布媒体14の先端部14Aが供給位置27を通過していない場合は(No判定)、被塗布媒体14の先端部14Aが供給位置27を通過したか否かの監視が継続される(ステップS12)。
ステップS14において、アニロックスローラ22の塗布ローラ18への当接タイミングの補正データが記憶されている場合には(Yes判定)、アニロックスローラ22の塗布ローラ18への当接タイミングが補正(調整)される(ステップS16)。
すなわち、アニロックスローラ22の塗布ローラ18への当接タイミングを遅らせて、アニロックスローラ22を塗布ローラ18へ当接させる(ステップS18)。
一方、当接タイミングの補正データが記憶されていない場合には(No判定)、アニロックスローラ22の塗布ローラ18への当接タイミングを補正せずにアニロックスローラ22を塗布ローラ18へ当接させる(ステップS18)。
その後、搬送ドラム16の位相角に基づいて、被塗布媒体14の後端部14Bが供給位置27を通過したか否かが監視される(ステップS20)。ステップS20において、被塗布媒体14の後端部14Bが供給位置27を通過した場合は(Yes判定)、ステップS22に進み、アニロックスローラ22の離間タイミングの補正データが記憶されているか否かが判断される。
一方、被塗布媒体14の後端部14Bが供給位置27を通過していない場合は(No判定)、被塗布媒体14の後端部14Bが供給位置27を通過したか否かの監視が継続される(ステップS20)。
ステップS22において、アニロックスローラ22の離間タイミングの補正データが記憶されている場合は(Yes判定)、アニロックスローラ22の塗布ローラ18からの離間タイミングが補正される(ステップS24)。
すなわち、アニロックスローラ22の塗布ローラ18からの離間タイミングを早めて、アニロックスローラ22を塗布ローラ18から離間させる(ステップS26)。
一方、ステップS22において、アニロックスローラ22の離間タイミングの補正データが記憶されていない場合は(No判定)、アニロックスローラ22の塗布ローラ18からの離間タイミングが補正されずに、アニロックスローラ22を塗布ローラ18から離間させる(ステップS26)。
被塗布媒体14への塗布液の塗布が終了し、塗布液が塗布された被塗布媒体14が搬送ドラム16から排出されると、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに残留塗布液12”の検出が実行される(ステップS28)。ステップS28に示す残留塗布液検出の詳細は後述する。
残留塗布液検出(ステップS28)が終了すると、待機状態に移行し(ステップS30)、次の被塗布媒体14が搬送ドラム16へ供給されると(No判定)、ステップS12からステップS28の各工程が繰り返される。ステップS30において、次の被塗布媒体14が搬送ドラム16へ供給されない場合には(Yes判定)、ジョブの終了指令を待って(ステップS32)、当該塗布処理は終了される(ステップS34)。
図10は、塗布液検出部28(28’)による残留塗布液検出(図9のステップS28)の流れを示すフローチャートである。同図に示す塗布液検出のフローは、塗布液の塗布実行中に実行される。
残留塗布液検出が開始されると(ステップS100)、塗布液検出部28(28’)から出力される検出信号の変化(図7における検出信号98の立ち下がりエッジ98C1)の有無が監視され(ステップS102)、検出信号が変化しない場合には(No判定)、検出信号の変化の監視が継続される。
一方、検出信号が変化した場合には(Yes判定)、残留塗布液12”を検出したと判断され、残留塗布液12”の長さ(図7の検出信号98における立ち下がりエッジ98C1から立ち上がりエッジ98C2までの時間)が測定され(ステップS104)、タイミング補正データが算出される(ステップS106)。
その後、残留塗布液12”の位置が被塗布媒体14の先端側であるか否かが判断される(ステップS108)。残留塗布液12”の位置が被塗布媒体14の先端側であるか否かの判断については、先に詳説したように、ロータリーエンコーダ17の出力パルスのカウントデータから求められる搬送ドラムの位相角に基づいて判断される。
残留塗布液12”の位置が被塗布媒体14の先端側である場合は(Yes判定)、ステップS104において求められた補正データは、当接タイミング補正データとして記憶される(ステップS110)。一方、ステップS108において、残留塗布液12”の位置が被塗布媒体14の後端側である場合は(No判定)、ステップS104において求められた補正データは、離間タイミング補正データとして記憶される(ステップS112)。
ステップS110及びステップS112において、先に補正データが記憶されている場合には、新たに算出された補正データに更新される。
ステップS110及びステップS112において、補正データが記憶(更新)されると、検出終了指令の有無が判断され(ステップS114)、検出終了指令がされない場合は(No判定)、ステップS102からステップS112の各工程が繰り返し実行される。
一方、ステップS114において、検出終了指令がされた場合は(Yes判定)、残留塗布液検出が終了される(ステップS116)。
〔効果の説明〕
上記の如く構成された塗布装置及び塗布方法によれば、塗布液が塗布された被塗布媒体が排出された後に、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに付着した塗布液(残留塗布液12”)の有無が検出される。
搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに残留塗布液12”が付着している場合には、塗布ローラ18に塗り残しの塗布液が存在するので、この塗り残しの上に新たな塗布液が重畳されないように、アニロックスローラ22の塗布ローラ18からの離間タイミング、又はアニロックスローラ22の塗布ローラ18への当接タイミングが補正される。
したがって、塗布液の供給開始タイミング又は塗布液の供給終了タイミングにずれが生じて、塗布ローラ18に塗り残しの塗布液が生じたとしても、次の塗布液の塗布における塗布むらの発生が抑制される。
また、塗布液検出部28は、被塗布媒体14の排出位置29よりも、被塗布媒体14の搬送方向下流側に配置されることで、被塗布媒体14の種類や被塗布媒体14の表面状態に影響されることなく、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aに残留した残留塗布液12”をより正確に検出することができる。
さらに、塗布液検出部28によって搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aの反射率を測定(反射光を検出)することで、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aと残留塗布液12”との反射率(反射光の強度)の違いによって、残留塗布液12”の付着の有無を確実に検出することができる。
さらにまた、塗布液検出部28によって搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aの水分量を測定することで、残留塗布液12”が付着している部分と残留塗布液12”が付着していない部分との水分量の違いによって、残留塗布液12”の付着の有無を確実に検出することができる。
搬送ドラム16の回転軸にロータリーエンコーダを取り付け、搬送ドラム16の位相角を検出し、残留塗布液12”が付着している部分が被塗布媒体14の先端側であるか、後端側であるかを判別することで、アニロックスローラ22の塗布ローラ18への当接タイミングのずれであるか、塗布ローラ18からの離間タイミングのずれであるかを的確に判断することができる。
本例では、搬送ドラム16によって被塗布媒体14を搬送させる形態を例示したが、搬送ベルト等の直線的に被塗布媒体14を搬送させる形態にも、本発明を適用することが可能である。
〔変形例〕
次に、先に説明した塗布装置10の変形例について説明する。図11は、本発明の実施形態の変形例に係る塗布装置11の概略構成図面である。なお、以下に説明する塗布装置11において、先に説明した塗布装置10と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
図11に示す塗布装置11は、図1に図示した塗布装置10の塗布液検出部28に代わり、塗布ローラ18に付着した塗り残しの塗布液を検出する塗布液検出部31を備えている。
図11に示す塗布液検出部31は、塗布ローラ18の塗布処理位置42よりも塗布液の移動方向下流側に配置されており、アニロックスローラ22から供給された塗布液が被塗布媒体14へ塗布された後であり、次の塗布液がアニロックスローラ22から供給される前の塗布ローラ18の外周面18Aに付着した塗り残しの塗布液を検出している。
図11に示す塗布液検出部31は、先に説明した塗布液検出部28と同一の構成を適用することができるので、ここでは詳細な説明は省略する。
塗布ローラ18の外周面における塗布処理位置42から塗布液検出部31の検出までの距離をL4とすると、被塗布媒体14の先端部14Aが塗布処理位置42に達したタイミングから、t4=L4/v2で求められる期間t4が経過した後に残留塗布液が検出されると、この残留塗布液は、被塗布媒体14の後端部14Bよりも後側に付着したものであると判断される。
また、被塗布媒体14の先端部14Aが塗布処理位置42に達したタイミングから、期間t4が経過する前に残留塗布液が検出されると、この残留塗布液は、被塗布媒体14の先端部14Aよりも前側に付着したものであると判断される。
上記の例では、被塗布媒体14の先端部14Aが塗布処理位置42に達したタイミングを基準として、残留塗布液が被塗布媒体14の先端部14Aの前側に付着したものであるか、被塗布媒体14の後端部14Bの後側に付着したものであるかを判断したが、この規準を被塗布媒体14の搬送方向における中心位置(全長を1/2に分ける位置)としてもよいし、被塗布媒体14の後端部14Bを基準としてもよい。
但し、塗布ローラ18に残留した残留塗布液は、被塗布媒体14に接触しない限り塗布ローラ18に残留し続ける。塗布ローラ18の全周長と被塗布媒体14の搬送方向における長さが同一(誤差の範囲で両者の長さが異なる実質的に同一の場合も含む)であると、被塗布媒体14の先端部14Aの前側の残留塗布液を検出すると、被塗布媒体14の後端部14Bの後側のずれがなくても、先の残留塗布液が被塗布媒体14の後端部14Bの後側の残留塗布液として検出されてしまうことがありうる。
したがって、塗布ローラ18の全周長は、被塗布媒体14の搬送方向の全長未満であることが好ましい。
上記の如く構成された塗布装置11によれば、先に説明した塗布装置10と同様の効果を得ることができる。
被塗布媒体14に塗布されない塗布液は、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16A、塗布ローラ18の外周面18Aのいずれにも付着する可能性があり、塗布ローラ18の外周面18Aのみに残留塗布液が付着し、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aしない場合(ごくわずかに付着して検出することができない場合)でも、残留塗布液12”を確実に検出することができる。
さらに、塗布液が塗布された被塗布媒体14を排出させる前に、塗布ローラ18の塗り残しの塗布液を検出することができ、次の塗布液の塗布における塗布液の供給開始タイミング、又は供給終了タイミングの補正が可能となる。
なお、搬送ドラム16の被塗布媒体保持面16Aを検出する塗布液検出部28と、塗布ローラ18の外周面18Aを検出する塗布液検出部31と、を併用することも可能である。
〔インクジェット記録装置への適用例〕
次に、上述した塗布装置のインクジェット記録装置への適用例について説明する。図12は、本例に示す塗布装置が使用されるインクジェット記録装置の全体構成図である。
同図に示すインクジェット記録装置100は、描画胴(描画ドラム)144に保持された記録媒体(用紙)124にインクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yから複数色のインクを打滴して所望のカラー画像を形成する圧胴直描方式のインクジェット記録装置である。
また、インクジェット記録装置100は、インクの打滴前に記録媒体114上に凝集処理液を付与し、処理液とインク液を反応させて記録媒体114上に画像形成を行う二液反応(凝集)方式が適用されたオンデマンドタイプの画像形成装置である。
同図に示すように、インクジェット記録装置100は、主として、給紙部120、処理液付与部130、描画部140、乾燥部150、定着部160、及び排出部170を備えて構成される。
(給紙部)
給紙部120は、記録媒体114を処理液付与部130に供給する機構であり、当該給紙部120には、所定のサイズに裁断された枚葉紙である記録媒体114が積層されている。給紙部120には、給紙トレイ122が設けられ、この給紙トレイ122から記録媒体114が1枚ずつ処理液付与部130に給紙される。
(処理液付与部)
処理液付与部130は、記録媒体114の記録面に処理液を付与する機構である。処理液は、描画部140で付与されるインク中の色材(本例では顔料)を凝集させる色材凝集剤を含んでおり、この処理液とインクとが接触することによって、インクは色材と溶媒との分離が促進される。
処理液付与部130は、上述した塗布装置10(11)の構成が適用される。また、塗布装置136には、図1の塗布部32の構成が適用される。中間搬送部(渡し胴)132から処理液胴(処理液ドラム)134に受け渡された記録媒体114は、処理液ドラム134の外周面に設けられた爪形状の保持手段(グリッパー)180A,180Bによって先端部が挟持される。
このようにして、処理液ドラム134に保持された記録媒体114は、塗布装置136から処理液が塗布される。
処理液付与部130(塗布装置136)から処理液が付与された記録媒体114は、処理液ドラム134から中間搬送部(渡し胴)142を介して描画部140の描画ドラム144へ受け渡される。
(描画部)
描画部140は、描画ドラム144、用紙押さえローラ146、及びインクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yを備えている。描画ドラム144は、処理液ドラム134と同様に、その外周面に爪形状の保持手段(グリッパー)180A,180Bを備える。
描画ドラム144に固定された記録媒体114は、記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面にインクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yからインクが付与される。
インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yはそれぞれ、記録媒体114における画像形成領域の最大幅に対応する長さを有するフルライン型のインクジェット方式の記録ヘッドとすることが好ましい。
インク吐出面には、画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズル(不図示)が複数配列されたノズル列が形成されている。各インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yは、記録媒体114の搬送方向(描画ドラム144の回転方向)と直交する方向に延在するように設置される。
描画ドラム144上に密着保持された記録媒体114の記録面に向かって各インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yから、対応する色インクの液滴が吐出されることにより、処理液付与部130で予め記録面に付与された処理液にインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料)が凝集され、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体114上での色材流れなどが防止され、記録媒体114の記録面に画像が形成される。
図示は省略するが、インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yの構造例として、インクを吐出させるノズル、ノズルから吐出させるインクが貯留される液室(圧力室)、液室内のインクを加圧する加圧素子、液室へインクを供給するインク流路等を備える態様が挙げられる。
また、インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yの吐出方式は、圧電素子の撓み変形を利用した圧電方式や、液室に設けられた加熱素子(ヒータ)による液室内のインクを加熱して、膜沸騰現象を利用してインクを吐出させるサーマル方式、静電方式などを適用することができる。
描画部140で画像が形成された記録媒体114は、描画ドラム144から中間搬送部(渡し胴)152を介して乾燥部150の乾燥胴(乾燥ドラム)154へ受け渡される。
(乾燥部)
乾燥部150は、色材凝集作用により分離された溶媒に含まれる水分を乾燥させる機構であり、図12に示すように、乾燥ドラム154、及び溶媒乾燥装置156を備えている。
溶媒乾燥装置156の構成例として、乾燥ドラム154の外周面に対向する位置に配置され、複数のヒータと、各ヒータの間にそれぞれ配置された温風噴出しノズルと、を含む構成が挙げられる。
乾燥部150で乾燥処理が行われた記録媒体114は、乾燥ドラム154から中間搬送部(渡し胴)162を介して定着部160の定着胴(定着ドラム)164へ受け渡される。
(定着部)
定着部160は、ヒータ166、定着ローラ168、及びインラインセンサ182で構成される。定着ドラム164の回転により、記録媒体114は記録面が外側を向くようにして搬送され、この記録面に対して、ヒータ166による予備加熱と、定着ローラ168による定着処理と、インラインセンサ182による検査が行われる。
インラインセンサ182は、記録媒体114に定着された画像について、チェックパターンや水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段であり、CCDラインセンサなどが適用される。
(排出部)
図12に示すように、定着部160に続いて排出部170が設けられている。排出部170は、排出トレイ176を備えており、この排出トレイ176と定着部160の定着ドラム164との間に、これらに対接するように渡し胴172A、搬送チェーン174、張架ローラ172Bが設けられている。記録媒体114は、渡し胴172により搬送チェーン174に送られ、排出トレイ176に排出される。
また、図には示されていないが、本例のインクジェット記録装置100には、上記構成の他、各インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yにインクを供給するインク貯蔵/装填部、処理液付与部130に対して処理液を供給する手段を備えるとともに、各インクジェットヘッド148M,148K,148C,148Yのクリーニング(ノズル面のワイピング、パージ、ノズル吸引等)を行うヘッドメンテナンス部や、用紙搬送路上における記録媒体114の位置を検出する位置検出センサ、装置各部の温度を検出する温度センサなどを備えている。
(制御系)
図13は、図12に示すインクジェット記録装置100の制御系の概略構成を示すブロック図である。
同図に示すように、インクジェット記録装置100は、制御部272によって各部が統括制御される。また、制御部272は、画像メモリ280、ROM282等の記憶装置(記憶素子、記憶媒体)へのデータの書き込み、及びデータの読み出しを制御するメモリコントローラとしても機能している。
制御部272の構成例として、プロセッサー、メモリ、及び周辺回路を含む構成が挙げられる。
通信インターフェース(通信I/F)270は、ホストコンピュータ(ホストPC)284から送られる画像データ(ラスターデータ)の入力インターフェースである。通信I/F270を介して入力された画像データは、画像メモリ280に一時記憶される。
搬送制御部274は、記録媒体114の搬送を制御する。すなわち、搬送制御部274は、制御部272から送られる指令信号に基づいて、各部の搬送ドラム(圧胴)134,144,154,164、中間搬送部(渡し胴)132,142,152,162,172、及び張架ローラ172Bの搬送駆動部286の動作を制御する。
画像処理部276は、ラスターデータに対して、分版処理、色変換処理、濃度補正処理(ガンマ補正、濃度むら補正)、ハーフトーン処理等の画像処理を施して、ドットデータを生成する。
ヘッド駆動部278は、画像処理部276によって生成されたドットデータに基づいて、インクジェットヘッド148(148M,148K,148C,148Y)を駆動する駆動電圧を生成する。
処理液付与制御部294は、制御部272から送出される指令信号に基づいて、処理液付与部130における処理液の付与(塗布)を制御する。
図13に図示した処理液付与制御部294には、図2に図示した構成が適用可能である。なお、図13に図示した制御部272は、図2に図示した制御部50と兼用されてもよいし、制御部272とは別に、処理液付与制御部294に別途制御部を備えてもよい。
画像メモリ280は、ホストPC284から入力された画像データ(ラスターデータ)が一次記憶されるメモリとして機能するとともに、制御部272、画像処理部276の作業領域としても機能する。
パラメータ記憶部290は、システムパラメータ等の装置各部の設定情報等が記憶される。パラメータ記憶部290に記憶された情報は、制御部272を介して、装置各部の制御手段によって参照される。
プログラム格納部292は、装置各部で使用される制御プログラムが格納される。装置各部の制御手段は、制御部272を介して適宜プログラムを読み出し、実行させる。
インラインセンサ(ILS)182によって取得された読取データは、制御部272を介して所定のメモリに記憶される。この読取データに基づいて異常ノズルが発生しているか否かが判断される。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置によれば、処理液付与後において、処理液ドラム134の記録媒体保持面、及び塗布装置136に具備される塗布ローラの外周面の少なくともいずれか一方に付着した処理液の有無が検出され、処理液が付着している場合には、次回以降の処理液の供給タイミングが補正されるので、記録媒体114における処理液の塗布むらの発生が回避され、処理液の塗布むらに起因する記録媒体114に形成される画像の濃度むらの発生が回避される。
また、処理液の塗布むら(画像の濃度むら)を補正するためのチャートを記録媒体114に出力させる必要がなく、記録媒体114における画像の形成範囲をより広く設定することができる。
本例では、処理液(凝集処理液)の付与(塗布)について、本発明を適用した例を示したが、インクや処理液の記録媒体への浸透を抑制する浸透抑制剤の塗布、記録媒体の変形を防止する変形防止剤の塗布、記録媒体に形成される画像の光沢性を変化させる光沢剤の塗布、紫外線の照射によって発光する発光素子の塗布などにも、本発明を適用することが可能である。
以上説明したインクジェット記録装置100の構成は、適宜変更、追加、削除をすることが可能である。また、塗布装置が適用される装置としてインクジェット記録装置を例示したが、上述した塗布装置は、様々な装置における液体塗布部として適用可能である。
以上説明した塗布装置及び塗布方法は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更、追加、削除をすることが可能である。
〔本明細書が開示する発明〕
上記に詳述した発明の実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書は少なくとも以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(第1態様):一定の長さに裁断された媒体を供給する媒体供給手段と、供給された媒体を保持する媒体保持面を有し、媒体保持面に保持された媒体を搬送する媒体搬送手段と、媒体搬送手段によって搬送される媒体へ塗布液を塗布する塗布ローラと、媒体へ塗布される一定量の塗布液を計量し、塗布ローラの塗布タイミングに対応して、計量された塗布液を塗布ローラへ供給する塗布液供給手段と、塗布液が塗布された媒体が媒体搬送手段から排出された後の媒体保持面、及び供給された塗布液を媒体へ塗布した後の塗布ローラの外周面の少なくともいずれか一方における塗布液の付着の有無を検出する塗布液検出手段と、塗布液検出手段によって媒体保持面及び塗布ローラの外周面の少なくともいずれか一方に塗布液が付着していると検出されると、次回以降の塗布液の供給開始タイミング及び塗布液の供給終了タイミングの少なくともいずれか一方を調整する調整手段と、を備えた塗布装置。
第1態様によれば、一定の長さに裁断された媒体に塗布液を塗布する際に、塗布液が塗布された媒体が排出された後の媒体保持面及び塗布ローラ外周面の少なくともいずれか一方への塗布液の付着の有無が検出されるので、媒体の浮き、変形、種類などに影響されることなく正確に、媒体からの塗布液のはみ出し検出が可能となる。
また、媒体保持面及び塗布ローラの外周面の少なくともいずれか一方に塗布液が付着している場合には、次回以降の塗布液の供給開始タイミング及び塗布液の供給終了タイミングの少なくともいずれか一方が調整されるので、媒体から塗布液がはみ出して塗り残しの塗布液が生じたとしても、塗り残しの塗布液に新たに塗布液が重畳されることがなく、次回以降の塗布における塗布液の塗布むらの発生が抑制される。
(第2態様):第1態様に記載の塗布装置において、塗布液検出手段は、塗布液が塗布された媒体が排出された後の媒体保持面、及び供給された塗布液を媒体へ塗布した後の塗布ローラの外周面の少なくともいずれか一方に付着した塗布液の位置を検出する。
第2態様によれば、媒体保持面及び塗布ローラの外周面の少なくともいずれか一方に付着した塗布液が媒体の先端側であるか、後端側であるかを判別することができる。
(第3態様):第2態様に記載の塗布装置において、調整手段は、塗布液検出手段によって検出された塗布液の位置が、媒体の後端側に対応する場合には、塗布液の供給終了タイミングを決められたタイミングに対して早める。
第3態様によれば、塗布液の供給終了タイミングが遅れたことにより、残留塗布液が発生した場合に(媒体の搬送方向における後側に塗布液がはみ出した場合に)、塗布液の重畳的な供給が回避され、媒体上における塗布液の塗りむらが防止される。
(第4態様):第2態様又は第3態様に記載の塗布装置において、調整手段は、塗布液検出手段によって検出された塗布液の位置が、媒体の先端側に対応する場合には、塗布液の供給開始タイミングを決められたタイミングに対して遅らせる。
係る態様によれば、塗布液の供給開始タイミングが早められたことにより、残留塗布液が発生した場合に(媒体の搬送方向における前側に塗布液がはみ出した場合に)、塗布液の重畳的な供給が回避され、媒体上における塗布液の塗りむらが防止される。
(第5態様):第1態様から第4態様のいずれかに記載の塗布装置において、塗布液が塗布された媒体が排出された後の媒体保持面、及び供給された塗布液を媒体へ塗布した後の塗布ローラの外周面の少なくともいずれか一方に付着した塗布液の量を検出する。
第5態様において、塗布液の媒体搬送方向における長さを検出することで、塗布液の供給開始タイミングの補正量、供給終了タイミングの補正量を算出することができる。
(第6態様):第1態様から第5態様のいずれかに記載の塗布装置において、塗布液検出手段は、媒体保持面及び塗布ローラの外周面の少なくともいずれか一方に照射された光の反射光を検出する。
第6態様によれば、媒体保持面又は塗布ローラによる反射光の変化によって、残留塗布液を容易に検出することができる。
第6態様において、媒体保持面又は塗布ローラの反射率を測定し、反射率の変化によって残留塗布液を検出してもよい。
(第7態様):第1態様から第5態様のいずれかに記載の塗布装置において、塗布液検出手段は、媒体保持面及び塗布ローラの外周面の少なくともいずれか一方の水分量を検出する。
第7態様によれば、媒体保持面又は塗布ローラの水分量を測定し、水分量の変化によって残留塗布液を容易に検出することができる。
(第8態様):第1態様から第7態様のいずれかに記載の塗布装置において、塗布液供給手段は、表面に一定量の塗布液を計量する構造を有する計量ローラと、計量ローラを移動させて、計量ローラと塗布ローラとの距離を可変させる計量ローラ移動手段と、計量ローラ移動手段の動作を制御して、塗布ローラにおける塗布液の供給開始位置に合わせて計量ローラを塗布ローラへ当接させ、塗布ローラにおける塗布液の供給終了位置に合わせて計量ローラを塗布ローラから離間させる計量ローラ移動制御手段と、を備えている。
第8態様によれば、塗布ローラへ一定量の塗布液を計量して供給する計量ローラを備え、塗布ローラと計量ローラとの当接、離間によって塗布液を供給する構成において、残留塗布液に起因する媒体における塗布液の塗布むらが回避される。
第8態様において、塗布液が貯留される塗布液貯留部を備え、計量ローラの一部を塗布液貯留部に貯留される塗布液に浸漬させた状態で計量ローラを支持する態様がありうる。
第8態様に記載の塗布装置において、計量ローラ移動制御手段は、媒体搬送手段に保持される媒体に塗布ローラから塗布液が塗布される塗布処理位置に、媒体搬送手段によって搬送される媒体における塗布液の塗り始め位置が到達するタイミングに対して、塗布ローラにおける塗布液の供給開始位置が計量ローラを塗布ローラへ当接させる供給処理位置から塗布処理位置へ移動する時間だけ早めたタイミングで、計量ローラを塗布ローラへ当接させる態様も好ましい。
係る態様によれば、塗布ローラと計量ローラとの当接タイミング、離間タイミングを調整して、塗布ローラに供給された塗布液と媒体との位置を合わせる構成において、残留塗布液に起因する媒体における塗布液の塗布むらが回避される。
(第9態様):第1態様から第8態様のいずれかに記載の塗布装置において、塗布液検出手段は、塗布液が塗布された媒体が媒体搬送手段から排出された後の、媒体保持面における塗布液の付着の有無を検出し、媒体搬送手段から塗布液が塗布された媒体が排出される排出位置よりも媒体搬送手段の搬送方向下流側に配置される。
第9態様によれば、媒体の種類や表面状態に影響されることなく、より正確な残留塗布液の検出が可能となる。
(第10態様):第1態様から第8態様に記載の塗布装置において、塗布液検出手段は、供給された塗布液を媒体へ塗布した後の塗布ローラの外周面における塗布液の付着の有無を検出し、塗布ローラの回転方向について、媒体搬送手段に保持される媒体に塗布ローラから塗布液が塗布される塗布処理位置と、供給手段から塗布ローラへ塗布液が供給される位置との間に配置される。
第10態様によれば、媒体の種類や表面状態に影響されることなく、より正確な残留塗布液の検出が可能となる。特に、塗布ローラの外周面の周方向における全長と、媒体の搬送方向の長さが等しい場合に有効である。
また、検出における処理時間の短縮化が見込まれる。
(第11態様):記録媒体へ処理液を塗布する処理液塗布部と、記録媒体へインクを打滴するインクジェットヘッドと、を備え、処理液塗布部は、第1態様から第10態様のいずれかに記載の塗布装置であるインクジェット記録装置。
(第12態様):一定の長さに裁断された媒体を供給する媒体供給工程と、供給された媒体を媒体保持面に保持して搬送する媒体搬送工程と、搬送される媒体へ塗布される一定量の塗布液を計量し、搬送される媒体へ塗布液を塗布する塗布ローラの塗布タイミングに対応して、計量された塗布液を塗布ローラへ供給する塗布液供給工程と、搬送される媒体へ塗布ローラによって塗布液を塗布する塗布工程と、塗布液が塗布された媒体が排出された後の媒体保持面、及び供給された塗布液を媒体へ塗布した後の塗布ローラの外周面の少なくともいずれか一方における塗布液の付着の有無を検出する塗布液検出工程と、塗布液検出工程によって媒体保持面及び塗布ローラの外周面の少なくともいずれか一方に塗布液が付着していると検出されると、次回以降の塗布液の供給開始タイミング及び塗布液の供給終了タイミングの少なくともいずれか一方を調整する調整工程と、を含む塗布方法。