JP2014038156A - 感光性平版印刷版材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】実質的にアルカリ剤を含有しないケミカルレス現像に好適であり、地汚れ性、インキ脱離性、耐網絡み性、および耐刷性の全てに優れた感光性平版印刷版材料を与えること。
【解決手段】支持体上に親水性層および光硬化性感光層を少なくともこの順に有する感光性平版印刷版材料であって、該親水性層が重合性二重結合基を有する高分子化合物によって表面処理された親水性層であることを特徴とする感光性平版印刷版材料。
【選択図】なし

Description

本発明は、支持体上に少なくとも親水性層および光硬化性感光層を有する感光性平版印刷版材料に関する。詳しくは実質的にアルカリ剤を含有しないケミカルレス現像に好適であり、地汚れ性、インキ脱離性、耐網絡み性、および耐刷性に優れた感光性平版印刷版材料に関する。
光重合を利用した感光性組成物には種々の応用分野があるが、例えばフォトレジストや平版印刷版等の分野、特に平版印刷版の分野においては、コンピューター上で作製したデジタルデータをもとに、フィルム上に出力せず直接印刷版上に出力するコンピューター・トゥー・プレート(CTP)技術が開発され、出力機として種々のレーザーを搭載した各種プレートセッターと、これらに適合する感光性平版印刷版材料の開発が盛んである。
CTP方式の普及と共にクローズアップされてきた重要な問題点あるいは要望として、現像処理に関わる諸点が挙げられる。通常方式のCTP方式では、感光性平版印刷版材料をレーザー露光した後、アルカリ性現像液により非画像部を溶出し、水洗及びガム引き工程を経て印刷に供される。しかし、アルカリ性現像液は人体に有害であり、その取扱い及び保管には十分な注意と管理が必要とされる。またその購入コスト及び廃液処理に関わるコストはユーザーに多大の負担を強いるものであり、加えてアルカリ性現像液の液性としてpH、温度等の管理を細心の注意を以て管理しなければならず、極めて取扱いが煩雑であった。
このようなアルカリ性現像液を用いることを回避し、水等で現像が可能な感光性組成物の提案がされている。例えば特開平5−27437号公報(特許文献1)には、カルボキシル基含有樹脂、アミン化合物、光硬化性不飽和化合物、光重合開始剤及び水を含む水系感光性組成物が開示されている。更に、特開2003−215801号公報(特許文献2)や特開2008−265297号公報(特許文献3)等には、側鎖に重合性二重結合基を有するカチオン性あるいはアニオン性の水溶性ポリマーをバインダーポリマーとして用いる水で現像可能な感光性組成物、及びこれを利用する感光性平版印刷版材料が開示されている。
また、このような感光性平版印刷版材料に好適な親水性層としては、先の特許文献3には、支持体上に水溶性ポリマーと該水溶性ポリマーを架橋する架橋剤とコロイダルシリカを含有し、該水溶性ポリマーとコロイダルシリカの比率を特定した親水性層を有する感光性平版印刷版材料が開示され、更に特開2009−226596号公報(特許文献4)では、親水性層が少なくとも水溶性ポリマー及び無機微粒子を含有し、該親水性層の膜面pH値を7.0以上とした感光性平版印刷版材料が開示されている。このような感光性平版印刷版材料により水等での現像が可能となったが、十分な耐刷性が得られない場合があり、改善が求められていた。
水等で現像可能な感光性平版印刷版材料の耐刷性の改善方法として、例えば特開2010−237560号公報(特許文献5)には、感光性ポリマーを含有する親水性層を有する感光性平版印刷版材料が開示され、特開2010−237561号公報(特許文献6)には、光重合開始剤を含有する親水性層を有する感光性平版印刷版材料が開示され、特開2011−203401号公報(特許文献7)には、気相法シリカを含有する親水性層を有する感光性平版印刷版材料が開示されている。
また耐刷性を改善する他の技術として、特開2000−29203号公報(特許文献8)には、支持体と光硬化性感光層の間に、付加重合可能なエチレン性二重結合を有するシランカップリング剤を加水分解及び脱水縮合した化合物を含有する中間層を有するネガ型の感光性平版印刷版材料が開示され、特開2005−125749号公報(特許文献9)及び特開2005−238816号公報(特許文献10)には、支持体表面と相互作用するエチレン性不飽和結合基を有するモノマーや共重合体を含有する層を、支持体と光硬化性感光層の間に設けることが記載されている。
しかしながら、地汚れ性やインキ脱離性は勿論であるが、網点画像のシャドー部における網太り、即ち耐網絡み性等においてもその性能を悪化させることなく、耐刷性を改善することはとりわけ困難であり、改善が求められていた。
特開平5−27437号公報 特開2003−215801号公報 特開2008−265297号公報 特開2009−226596号公報 特開2010−237560号公報 特開2010−237561号公報 特開2011−203401号公報 特開2000−29203号公報 特開2005−125749号公報 特開2005−238816号公報
本発明は、実質的にアルカリ剤を含有しないケミカルレス現像に好適であり、地汚れ性、インキ脱離性、耐網絡み性、および耐刷性の全てに優れた感光性平版印刷版材料を提供することを課題とする。
本願の上記課題は以下の発明により解決された。
(1)支持体上に親水性層および光硬化性感光層を少なくともこの順に有する感光性平版印刷版材料であって、該親水性層が重合性二重結合基を有する高分子化合物によって表面処理された親水性層であることを特徴とする感光性平版印刷版材料。
本発明により、実質的にアルカリ剤を含有しないケミカルレス現像に好適であり、地汚れ性、インキ脱離性、耐網絡み性、および耐刷性の全てに優れた感光性平版印刷版材料を提供することが可能となる。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の感光性平版印刷版材料が有する親水性層は、重合性二重結合基を有する高分子化合物によって表面処理された親水性層である。
上記した表面処理に用いる重合性二重結合基を有する高分子化合物は、任意の繰り返し単位によって形成された高分子化合物であり、任意の連結基を介して重合性二重結合基が側鎖に結合した高分子化合物であることが好ましい。中でもビニル基を反応性二重結合基として有した高分子化合物が好ましく用いられ、ビニル基が置換したフェニル基が直接もしくは任意の連結基を介して主鎖と結合した高分子化合物が特に好ましく用いられる。また親水性層を表面処理する際、かかる高分子化合物は水性媒体中に溶解して表面処理することが処理の均一性を高める観点から好ましく、このことを可能にするため、重合性二重結合基を有する高分子化合物としては、任意の連結基を介して主鎖にカルボキシル基、スルホン酸基、四級アンモニウム基等が連結した高分子化合物が好ましい。中でもその溶解性の高さからスルホン酸基を有する高分子化合物、あるいは四級アンモニウム基を有する高分子化合物が好ましく用いることができる。該スルホン酸基は塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩等)を形成しても良い。これらの連結基としては特に限定されず、任意の基、原子またはそれらの複合した基が挙げられる。ビニル基が置換したフェニル基及びスルホン酸基は、それぞれ独立して主鎖に結合していても良いし、あるいはビニル基が置換したフェニル基とスルホン酸基(あるいは四級アンモニウム基)が連結基の一部または全部を共有する形で結合していても良い。
上記ビニル基が置換したフェニル基において、該フェニル基は置換されていても良く、また、該ビニル基はハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等で置換されていても良い。
本発明においてビニル基が置換したフェニル基が直接もしくは任意の連結基を介して主鎖と結合した高分子化合物は、詳細には、下記一般式1で表される基を側鎖に有するものが好ましい。
Figure 2014038156
式中、R、R及びRは同じであっても異なっていても良く、それぞれ水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基から選ばれる基を表し、これらの基を構成するアルキル基及びアリール基は、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等で置換されていても良い。これらの基の中でも、R、Rが水素原子であり、Rが水素原子もしくは炭素数4以下の低級アルキル基(例えばメチル基、エチル基等)であるものが特に好ましい。
式中、Rは水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基から選ばれる基を表す。また、これらの基を構成するアルキル基及びアリール基は、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等で置換されていても良い。
式中、Lは炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる原子または、水素原子、炭素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる原子群からなる多価の連結基を表す。具体的には下記に例示される構造単位より構成される基及び下記に示す複素環基が挙げられる。これらの基は単独でも任意の2つ以上が組み合わされていても良い。
Figure 2014038156
連結基Lとしては複素環を含むものが好ましい。Lを構成する複素環の例としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらの複素環は置換基を有していても良い。
上述した多価の連結基が置換基を有する場合、置換基としては、ハロゲン原子、カルボキシル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルスルファニル基、アリールスルファニル基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基等が挙げられる。
式中、mは0〜4の整数を表し、pは0または1の整数を表し、qは1〜4の整数を表す。
重合性二重結合基を有する高分子化合物は、例えば上述した側鎖にビニル基が置換したフェニル基を有する繰り返し単位、及びスルホン酸基を有する繰り返し単位のみからなる重合体であっても良いし、あるいは本発明の効果を妨げない限り、更に他の繰り返し単位を導入した重合体であっても良い。また更に、他のモノマーとの共重合体であっても良く、このようなモノマーは1種で用いても良いし、任意のものを2種以上を用いても良い。
また、重合性二重結合基を有する高分子化合物は連鎖移動剤を用いることで、任意の置換基を高分子主鎖の末端に導入することができる。具体的には直鎖アルカンチオール、特にアルコキシ基やハロゲン原子が結合した珪素原子が置換した直鎖アルカンチオールを連鎖移動剤として重合時に用いることで、高い画像強度を得ることができるため好ましく用いることができる。このような連鎖移動剤の例として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリクロロシラン、3−メルカプトプロピルジクロロメチルシラン、4−メルカプトブチルトリメトキシシラン、4−メルカプトブチルジメトキシメチルシラン、4−メルカプトブチルトリエトキシシラン、4−メルカプトブチルトリクロロシラン、4−メルカプトブチルジクロロメチルシラン等が挙げられ、これらの分子末端の珪素原子同士は加水分解縮合することで酸素原子を介して結合してシロキサン結合を形成しても良い。
本発明における重合性二重結合基を有する高分子化合物の好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例示された構造式の中の数字は共重合体トータル組成100質量%中における各繰り返し単位の質量%を表す。
Figure 2014038156
Figure 2014038156
重合性二重結合基を有する高分子化合物の重量平均分子量は、1000から100万の範囲であることが好ましく、更に5万から60万の範囲にあることが特に好ましい。本発明における重合性二重結合基を有する高分子化合物は1種のみの単独で用いても良いし、任意の2種以上を混合して用いても良い。
本発明における表面処理とは、ディップ方式やファウンテン方式等の公知の塗工方式や、これら塗工方法にエアナイフに代表される公知の掻き落とし手段を組み合わせた方法、あるいは噴霧処理、吹き付け方式などの方法にて、親水性層の表面(親水性層内に空隙が存在する場合にはこの表面も含む)に、重合性二重結合基を有する高分子化合物を存在せしめることであり、重合性二重結合基を有する高分子化合物を親水性層上に層として形成せしめるものではない。重合性二重結合基を有する高分子化合物を層として形成しないためには、親水性層が保持する該高分子化合物量を10〜200mg/mとすることが好ましい。
本発明において、重合性二重結合基を有する高分子化合物によって表面処理を行うにあたり、重合性二重結合基を有する高分子化合物を水性媒体中に溶解、あるいは分散して表面処理剤とし、かかる表面処理剤によって親水性層を処理することが処理の均一性の観点から好ましい。表面処理剤中における重合性二重結合基を有する高分子化合物の含有量は10質量%以下が好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。下限は0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。
表面処理剤が含有する水性媒体とは、表面処理剤が含有する溶媒成分として水が少なくとも50質量%以上、好ましくは80質量%以上を占めることを意味し、水以外に含まれる溶媒としては、アルコール類、グリコール類、グリセリン等の水と混和性の高い有機溶媒を例示することができる。
また表面処理剤は、界面活性剤やpH調整剤、消泡剤等を適宜含有することができる。更に、表面処理剤は粘度調整等を目的に、重合性二重結合基を有さない他の高分子化合物、例えばゼラチンやポリビニルアルコール等も含有することができるが、これら他の高分子化合物は重合性二重結合基を有する高分子化合物に対して50質量%以下で用いることが好ましく、更に20質量%以下が好ましく、特に10質量%以下であることが好ましい。
本発明において親水性層は、親水性バインダーと無機フィラーを含有することが好ましく、親水性層が含有する親水性バインダーの含有量は、全無機フィラー100質量部に対して5〜30質量%であることが好ましく、10〜25質量%であればより好ましい。30質量%を超えるとフィラー充填密度が低下し十分な親水性が付与できず、耐地汚れ性や耐網がらみ性が低下する場合がある。一方、5質量%未満では塗工液のハンドリング性が低下したり、親水性層形成後にひび割れが生じる場合がある。
本発明において親水性層が含有する無機フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛、コロイダルシリカ、細孔シリカ、カオリン等が挙げられるが、中でも二酸化チタン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウムが好ましい。また、コロイダルシリカや細孔シリカ、及びカオリン等といった珪素含有化合物を用いないことが好ましく、これら珪素含有化合物の含有量を親水性層中の全無機フィラーに対して5質量%以下とすることが好ましく、3質量%以下とすることがより好ましく、特に1質量%以下、とりわけ0.5質量%以下とすることが好ましい。
無機フィラーとして好ましく用いられる二酸化チタンは、ルチル型、アナタース型のいずれでもよく、その製法についても硫酸法、塩素法いずれかに限定されるものではない。それらを単独または混合して使用してもよい。更に、分散安定性や他の機能性の観点から、各種表面処理を施したものを選択的に用いることも可能である。市販されている二酸化チタンとしては、例えば堺化学工業(株)からSR−1、R−650、R−5N、R−7E、R−3L、A−110、A−190等、石原産業(株)からタイペークR−580、同R−930、同A−100、同A−220、同CR−58、チタン工業(株)からクロノスKR−310、同KR−380、同KA−10、同KA−20等、テイカ(株)からチタニックスJR−301、同JR−600A、同JR−800、同JR−701等、デュポン(株)からタイピュアR−900、同R−931等が挙げられる。
硫酸バリウムは、バリウム塩素溶液に硫酸塩水溶液を加えて化学的に沈殿させて製造される沈降性硫酸バリウムを用いることが好ましい。沈降性硫酸バリウムは例えば堺化学工業(株)から“バリエース”として様々な粒子径のものや表面処理が施されたもの等が市販されているが、本発明ではいずれも用いることができる。
水酸化アルミニウムは、アルミナ含有鉱石であるボーキサイトを苛性ソーダもしくはアルミン酸ナトリウム溶液と混合し、高温高圧条件下でアルミナ成分を抽出し、その抽出液から溶解残分である赤泥を分離除去して、清澄化したアルミン酸ナトリウム溶液を得る。その後、該溶液に種子を添加して水酸化アルミニウムを晶析させ、得られた水酸化アルミニウムを粉砕することで得ることができる。水酸化アルミニウムは昭和電工(株)から“ハイジライト”として各種グレードが市販されており、本発明ではいずれも用いることができる。
親水性層が含有する無機フィラーの粒度分布は、0.2μm以上0.6μm未満の範囲と0.6μm以上1.5μm未満の範囲の少なくとも2カ所にピークが存在し、0.2μm以上0.6μm未満の範囲に存在する無機フィラーの分布頻度をfx、0.6μm以上1.5μm未満の範囲に存在する無機フィラーの分布頻度をfyとしたとき、fx/fy比が1.5以上であり、かつ分布頻度fyが25%以上であることが好ましい。またfx/fy比は2.0以上であることが好ましい。なお、上限は3.5未満であることが望ましい。これにより耐刷性や耐地汚れ性にとりわけ優れた感光性平版印刷版材料が得られる。なお上記した範囲で、例えば0.2μm以上0.6μm未満の範囲に複数のピークが存在する場合は高い方のピークにて分布頻度fxを求めれば良いが、この2つのピークが隣接し、2つのピーク間の凹部の高さが高い方のピークの60%以上であるような場合においては、本発明では1つのピークと見なすこととする。
本発明における粒度分布とは体積基準の粒度分布であり、測定対象となるサンプル粒子群がどのような粒子径のものでどのような割合で構成されているかを表す指標であり、一般に知られる公知の方法により測定することができる。測定方法としては例えば、ふるい法、コールター法(コールター原理)、動的光散乱法、画像解析法、レーザー回折散乱法等が知られているが、本発明においては、測定する粒子サイズや再現性、操作性等の観点からレーザー回折散乱法が好ましく用いられ、例えばHORIBA(株)製LA−920(レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置)により測定することができる。また分布頻度はその測定結果に基づき、測定結果を大きさ(粒子径)毎の存在比率の分布として求めることができる。
本発明における粒度分布と分布頻度は、塗工液中で分散された無機フィラーを測定することで、あるいは塗布された親水性層の乾燥塗膜をアルカリにより再溶解した溶液中の無機フィラーを測定することで求めることができる。また後述するように、本発明では2種以上の無機フィラーを併用することができるが、本発明にて好ましく用いられるレーザー回折散乱法ではFraunhofer回折理論とMie散乱理論より光強度の分布パターンを求めるため対象物固有の屈折率が必要となり、屈折率の異なる2種以上の無機フィラーを含有する塗工液の粒度分布や分布頻度を正確に測定することは困難である。しかしこのような場合、予めそれぞれの無機フィラー単体での粒度分布と分布頻度を測定し、得られた測定結果に塗工液中での添加比率を係数として乗じることによって2種以上の無機フィラーを併用する塗工液の粒度分布と分布頻度を求めることができる。
親水性層が含有する無機フィラーは、上記のような粒度分布を有する無機フィラーであればフィラーは1種類でもよいが、2種以上を併用すると上記のような粒度分布を比較的容易に得られるため好ましい。中でも平均一次粒子径が0.1μm以上0.6μm未満の無機フィラーと、平均一次粒子径が0.6μm以上2.0μm未満の無機フィラーを組み合わせて用いることが好ましく、このような組み合わせであれば無機フィラーは更に3種、4種と組み合わせて用いてもよい。無機フィラーの添加量は該親水性層の全固形分量に対して60質量%以上とすることが好ましく、70質量%以上であればより好ましい。
親水性層が含有する親水性バインダーとしては、天然物では、澱粉類、海藻マンナン、寒天及びアルギン酸ナトリウム等の藻類から得られるもの、マンナン、ペクチン、トラガントガム、カラヤガム、キサンチンガム、グアービンガム、ローカストビンガム、アラビアガム等の植物性粘質物、デキストラン、グルカン、キサンタンガム、及びレバン等のホモ多糖類、サクシノグルカン、プルラン、カードラン、及びザンタンガム等のヘテロ多糖等の微生物粘質物、にかわ、ゼラチン、カゼイン及びコラーゲン等のタンパク質、キチン及びその誘導体等が挙げられる。また、半天然物(半合成物)類としては、セルロース誘導体、カルボキシメチルグアーガム等の変性ガム、並びにデキストリン等の培焼澱粉類、酸化澱粉類、エステル化澱粉類等の加工澱粉等が挙げられる。一方、合成品には、ポリビニルアルコール、部分アセタール化ポリビニルアルコール、アリル変性ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルイソブチルエーテル等の変性ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、ポリアクリル酸エステル部分けん化物、ポリメタクリル酸塩、及びポリアクリルアマイド等のポリアクリル酸誘導体及びポリメタクリル酸誘導体、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合物、カルボキシビニル重合物、スチレン/マレイン酸共重合物、スチレン/クロトン酸共重合物等が挙げられる。これらの中でも、ゼラチンが好ましく用いられる。
本発明において親水性層は架橋剤を含有することが好ましい。用いる架橋剤としては例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、アルデヒド化合物、シラン化合物、クロム明礬、ジビニルスルホン等が好適に用いることができるが、特に好ましい架橋剤はジビニルスルホンである。架橋剤の配合量は前記親水性バインダーの固形分量に対して5〜35質量%が好ましく、更には10〜25質量%とすることが好ましい。架橋剤の添加方法については、該親水性層の塗工液を製造する際に添加したり、塗布直前にインラインで添加する方法等があるが、いずれでも良い。
親水性層を十分に架橋させるため、例えば親水性層を形成し光重合性の感光層を塗布するまでの間に30〜60℃、好ましくは40〜50℃の温度下の条件で0.5〜10日間、好ましくは1〜7日間の加温処理を施すことが好ましい。このような加温処理によって該親水性層は露光後の現像処理により露出され、印刷時に非画像部として印刷に供されても、印刷適性としては当然であるが耐傷性という観点において十分な性能が発現できる。
親水性層の乾燥固形分塗布量は、無機フィラーに換算して、乾燥質量で1平方メートルあたり0.3〜20gが好ましく、更に1〜15gの範囲であることがより好ましい。
本発明の感光性平版印刷版材料が有する光硬化性感光層は、光重合開始剤及び重合性二重結合基を有する化合物を含有することが好ましい。
光硬化性感光層が含有する光重合開始剤としては、従来から知られる公知の化合物を用いることができる。例えば、トリハロアルキル置換された化合物(例えばトリハロアルキル置換された含窒素複素環化合物としてs−トリアジン化合物及びオキサジアゾール誘導体、トリハロアルキルスルホニル化合物)、有機ホウ素塩、ヘキサアリールビイミダゾール、チタノセン化合物、チオ化合物、有機過酸化物等が挙げられる。これらの光重合開始剤の中でも、特にトリハロアルキル置換化合物、有機ホウ素塩が好ましく用いられる。更に好ましくは、トリハロアルキル置換化合物と有機ホウ素塩を組み合わせて用いることである。トリハロアルキル置換化合物と有機ホウ素塩を組み合わせることで、発生したラジカル種が安定するため、更に感度を向上することができるために好ましい。
光重合開始剤であるトリハロアルキル置換化合物は、具体的にはトリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物としてs−トリアジン誘導体及びオキサジアゾール誘導体が挙げられ、あるいは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環あるいは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物やトリハロアルキルスルホニル化合物の特に好ましい例を以下に示す。
Figure 2014038156
Figure 2014038156
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記一般式2で表される。
Figure 2014038156
式中、R、R、R及びRは各々同じであっても異なっていても良く、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらのうちで、R、R、R及びRのうちの一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
有機ホウ素塩を構成するカチオンとしては、アルカリ金属イオン及びオニウム化合物が挙げられるが、好ましくはオニウム塩であり、例えばテトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。特に好ましい有機ホウ素塩の例を下記に示す。
Figure 2014038156
Figure 2014038156
上述したような光重合開始剤の含有量は、後述する重合性二重結合基を有する化合物に対して、1〜50質量%の範囲が好ましく、更には5〜30質量%の範囲で含まれることが好ましい。
光硬化性感光層が含有する重合性二重結合基を有する化合物は、重合性二重結合基を有する高分子化合物あるいは重合性二重結合基を有する低分子化合物であり、重合性二重結合基を有する高分子化合物及び重合性二重結合基を有する低分子化合物を併用することが光重合効率の上から好ましい。
本発明において好ましく用いられる重合性二重結合基を有する高分子化合物は、前述した親水性層の表面処理に用いる重合性二重結合基を有する高分子化合物と同義である。
光硬化性感光層が含有する、重合性二重結合基を有する低分子化合物について述べる。この場合の重合性二重結合基を有する低分子化合物とは、上記の光重合性開始剤の光分解により発生するラジカルにより重合を行う化合物であればいずれも好ましく用いることができる。更には、分子内に2個以上の重合性二重結合基を有する化合物を含んで用いた場合には、ラジカルによる重合の結果、架橋物が生成するため、感光性平版印刷版材料を構成した場合に、架橋した堅い画像部皮膜を形成することから耐刷性及びインキ乗り性に優れた印刷版を与えるため極めて好ましく用いることができる。こうした目的で用いることのできる重合性二重結合基を有する化合物の例としては、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリスアクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能性アクリル系モノマー等を挙げることができ、あるいはアクリロイル基、メタクリロイル基を導入した各種オリゴマーとしてポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート等も同様に使用される。
光硬化性感光層は、前述の光重合開始剤を増感する化合物を併せて含有することが好ましい。400〜430nmの波長域の感度を増大される化合物としてシアニン系色素、特開平7−271284号公報、特開平8−29973号公報等に記載されるクマリン系化合物、特開平9−230913号公報、特開2001−42524号公報等に記載されるカルバゾール系化合物や、特開平8−262715号公報、特開平8−272096号公報、特開平9−328505号公報等に記載されるカルボメロシアニン系色素、特開平4−194857号公報、特開平6−295061号公報、特開平7−84863号公報、特開平8−220755号公報、特開平9−80750号公報、特開平9−236913号公報等に記載されるアミノベンジリデンケトン系色素、特開平4−184344号公報、特開平6−301208号公報、特開平7−225474号公報、特開平7−5685号公報、特開平7−281434号公報、特開平8−6245号公報等に記載されるピロメチン系色素、特開平9−80751号公報等に記載されるスチリル系色素、あるいは(チオ)ピリリウム系化合物等が挙げられる。これらの内、シアニン系色素またはクマリン系化合物あるいは(チオ)ピリリウム系化合物が好ましい。
本発明の感光性平版印刷版材料の光重合性感光層を構成するその他の要素として、視認性を高める目的で種々の着色剤を添加することが好ましく行われる。着色剤としては400〜700nmに吸光極大を有する有機顔料であることが好ましく、このような有機顔料としては従来公知のものを用いることができ、市販の有機顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている有機顔料が利用できる。
有機顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料が使用できる。これらの有機顔料のうち好ましいものは、フタロシアニン系顔料、ジオキサジン系顔料である。
好ましい有機顔料を、Colour Index(Published by The Society of Dyes and Colourists, Third Edition)に記載されたC.I.Numberによって以下に列挙するが、それらに制限されるものではない。Pigment Blue 15、15:3、15:4、15:6(フタロシアニン系顔料)、Pigment Violet 23、37(ジオキサジン系顔料)、Pigment Violet 19(キナクリドン系顔料)、Pigment Blue 60(スレン系顔料)、Pigment Violet 1、3(塩基性染料レーキ系顔料)、Pigment Violet 29(ペリレン系顔料)等。これらの顔料は、色調の調整を目的として同時に二種類以上用いてもよい。
着色顔料を用いる場合には、重合性二重結合を有する化合物100質量部に対して0.1〜30質量部の範囲で含まれていることが好ましい。
本発明の感光性平版印刷版の光重合性感光層はシランカップリング剤を含有することが好ましい。光重合性感光層がシランカップリング剤を含有することによって優れた耐刷性が得られる。
シランカップリング剤としては、その目的を達成するものであれば特に限定されず任意のものを用いることができる。例えば、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリス(3−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。中でも、エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシランが特に好ましい。なお、シランカップリング剤は、1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。
光重合性感光層が含有するシランカップリング剤の量としては、光重合性感光層が含有する重合性二重結合基を有する化合物に対して、0.1〜20質量%の範囲が好ましい。
本発明の光重合性感光層は、長期にわたる保存に関して、熱重合による暗所での硬化反応を防止するために重合禁止剤を添加することができる。かかる重合禁止剤により、光重合性感光層を塗設する際に用いる塗布液状態での感度維持可能時間(ポットライフ)を長寿命化することが可能となる。こうした目的で好ましく使用される重合禁止剤としては、ハイドロキノン類、カテコール類、ナフトール類、クレゾール類等の各種フェノール性水酸基を有する化合物やキノン類化合物、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル類、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン塩類等が好ましく使用される。この場合の重合禁止剤の添加量としては、光重合性感光層の総固形分質量100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲で使用することが好ましい。
更に塗布液状態での感度維持可能時間(ポットライフ)の長寿命化にあたっては、塗布液が前記した光重合開始剤と重合性二重結合基を有する低分子化合物の少なくとも一方を水中乳化物とし、これを含有する水性分散液であることが好ましく、特に塗布液が光重合開始剤の水中乳化物と重合性二重結合基を有する低分子化合物の水中乳化物を含有した、水性分散液であることがより好ましい。
光重合性感光層を設けるための塗布液が水性分散液である場合、親水性層と光重合性感光層の間で十分な密着性を得ることは難しいが、こうした場合に本発明は特に効果的に作用するものである。また光重合性感光層を設けるための塗布液が水性分散液であって、親水性層が全固形分量に対して60質量%以上の無機フィラーを含有する場合、更には70質量%以上の無機フィラーを含有する場合、十分な密着性を得ることはより困難であったが、本発明はこのような場合においてとりわけ有効に作用し、結果、地汚れ性やインキ脱離性、および耐網絡み性等を悪化させずに耐刷性を改善することが可能となる。
光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する低分子化合物の水中乳化物の作製にあたっては、これら化合物をアニオン性界面活性剤の存在下で水中に乳化分散することで、ある程度高温に晒しても安定に乳化分散状態が保てる水中乳化物が得られる。このようなアニオン性界面活性剤としては、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム等の高級脂肪酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩類、オクチルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルナトリウム、ラウリルアルコール硫酸エステルアンモニウム等の高級アルコール硫酸エステル塩類、アセチルアルコール硫酸エステルナトリウム等の脂肪族アルコール硫酸エステル塩類、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩類、ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウム、イソプロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム等のアルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、ラウリル燐酸ナトリウム、ステアリル燐酸ナトリウム等のアルキル燐酸エステル塩類、ラウリルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸アンモニウムのポリエチレンオキサイド付加物、ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ラウリルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類、ノニルフェニルエーテル燐酸ナトリウムのポリエチレンオキサイド付加物等のアルキルフェニルエーテル燐酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類等を挙げることができる。これらの内で、特にジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸塩類及びアルキルエーテル硫酸塩のポリエチレンオキサイド付加物類が最も安定な水中乳化物を形成することから極めて好ましい。
またこの系に更に、前述した重合性二重結合基とスルホン酸塩基を有する高分子化合物を加えることで、乳化分散安定性は更に向上する。該高分子化合物は、光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物の乳化分散時に添加してもよいし乳化分散後に添加してもよいが、乳化分散時に添加することで、水中乳化物の水中における分散粒子径が顕著に減少し、極めて微小な液滴、微粒子の形態で分散するため、経時による沈降あるいは浮上等の問題発生が抑えられることからより好ましい。更に、該高分子化合物は、その一部を分散時に使用して先ず水中乳化物を作製し、安定な乳化物が作製された後に更に該高分子化合物を添加することも好ましく行うことができる。
光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する低分子化合物を水中に乳化分散するには、それぞれの化合物を溶解もしくは分散可能な有機溶剤を使用して溶液を作製し水と混合した上で、前記したアニオン性界面活性剤や重合性二重結合基とスルホン酸塩基を有する高分子化合物を用いて乳化分散させる方法が好ましい。但し、重合性二重結合基を有する低分子化合物が液体であり、光重合開始剤がこれに溶解して両者の混合物が液状である場合には、敢えて有機溶剤を使用せずとも両者の混合物を水中に乳化分散させることも可能である。光重合開始剤及び重合性二重結合基を有する低分子化合物を予め混合して、両者が混合した水中乳化物を作製することも可能であるが、各々別々に水中乳化物を作製しても良い。乳化分散を行う方法については、回転式分散機、メデイアミル、超音波式分散機または混練機等の任意の分散機を利用することができ、ホモミキサーやホモジナイザー、あるいはサンドグラインダー等の市販される装置が好ましく利用できる。
乳化分散の際に使用できる有機溶剤としては、常温で液体であり、光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する低分子化合物を溶解もしくは分散可能である有機溶剤を意味する。本発明で用いることのできる有機溶剤の例として、揮発性有機溶剤と不揮発性有機溶剤が挙げられる。揮発性有機溶剤を用いた場合には、作製した水中乳化物から揮発性有機溶剤を加熱もしくは放置すること等で系中から取り除くことが好ましい。不揮発性有機溶剤を用いる場合には、不揮発性有機溶剤が50℃より高い引火点を示し、通常の取扱いにおいて危険物としての対策が軽減できる場合があり、好ましい。
上記の揮発性有機溶剤として、本発明で好ましく使用できる溶剤の例を挙げると、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の低級アルカノールの酢酸エステル類、酢酸エチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール系酢酸エステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族類等が挙げられるが、これらの内で酢酸エチルが後述する種々の理由から、最も好ましく使用することができる。
本発明で用いることのできる不揮発性有機溶剤として、リン酸エステル、フタル酸エステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルその他のカルボン酸エステル、脂肪酸アミド、アルキル化ビフェニル、アルキル化ターフェニル、アルキル化ナフタレン、ジアリールエタン、塩素化パラフィン、アルコール系溶剤、フェノール系溶剤、エーテル系溶剤、モノオレフィン系溶剤、エポキシ系溶剤等が挙げられる。具体例としては、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニル、リン酸トリシクロヘキシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジラウレート、フタル酸ジシクロヘキシル、オレフィン酸ブチル、ジエチレングリコールベンゾエート、セバシン酸ジオクチル、セバシン酸ジブチル、アジピン酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチル、クエン酸アセチルトリエチル、マレイン酸オクチル、マレイン酸ジブチル、イソアミルビフェニル、塩素化パラフィン、ジイソプロピルナフタレン、1,1′−ジトリルエタン、モノイソプロピルビフェニル、ジイソプロピルビフェニル、2,4−ジターシャリアミルフェノール、N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−ターシャリオクチルアニリン、ヒドロキシ安息香酸2−エチルヘキシルエステル、ポリエチレングリコール等の高沸点溶剤が挙げられる。
本発明において、光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する低分子化合物の乳化分散に用いる有機溶剤は、揮発性有機溶剤であることがより好ましい。この場合、水中乳化物が最も安定して製造でき、かつ室温より高い温度に晒しても乳化分散状態が安定に保たれることから好ましい。揮発性有機溶剤としては、特に酢酸エチルが好ましい。酢酸エチルは揮発性が高いため、加熱もしくは減圧下に置くだけで簡便に水中乳化物から溜去でき、酢酸エチルを溜去した後の水中乳化物は固体分散状態であり、酢酸エチル等の有機溶剤を含んだ状態よりも更に安定な塗布液を形成することから極めて好ましい。
次に、光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する化合物を分散した水中乳化物を作製する製造方法について、より具体的に説明する。
前述の酢酸エチル等の有機溶剤を使用して光重合開始剤あるいは重合性二重結合基を有する低分子化合物を溶解もしくは分散した溶液を作製する。これを、アニオン性界面活性剤や重合性二重結合基とスルホン酸塩基を有する高分子化合物等を含む水中に添加する際に、ホモミキサーやホモジナイザー等の高速剪断が可能である公知の攪拌装置を使用して乳化分散を行うことで水中乳化物を作製することができる。有機溶剤には、本発明の光重合性感光層を塗設するための塗布液に含まれる他の水不溶性の化合物を添加してもよいし、分散媒として用いる水には、塗布液に含まれる他の水可溶性の化合物を添加してもよい。また乳化分散方式はバッチ式で行う場合や、連続的方式で配管系を流れる状態で連続して乳化分散を行うことが可能であり、その際0〜70℃の温度範囲で乳化分散を行うことが好ましい。
本発明の感光性平版印刷版材料に用いられる支持体としてはアルミニウム支持体、各種プラスチックフィルム、各種プラスチックによりラミネートされた紙が挙げられる。中でも柔軟性があり、張力による変形の少ない素材である各種プラスチックフィルムが好ましく用いられる。好ましいプラスチックフィルム支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセタール、ポリカーボネート、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、硝酸セルロース等が代表的に挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましく用いられる。また、親水性層を設ける前に、フィルム支持体表面に親水化加工が施されていることが好ましく、こうした親水化加工としては、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。更なる親水化加工として支持体上に設ける親水性層との接着性を高めるため支持体上に下引き層を設けても良い。
支持体としてアルミニウム板を使用する場合には、粗面化処理され、陽極酸化皮膜を有するアルミニウム板が好ましく用いられる。更に、表面をシリケート処理したアルミニウム板も好ましく用いることができる。あるいは、更に表面に上記の親水性層を形成したアルミニウム板を用いることもできる。
光硬化性感光層は、支持体上に設けられた前記親水性層上に形成される。光硬化性感光層自体の乾燥固形分塗布量に関しては、乾燥質量で1平方メートルあたり0.3〜10gが好ましく、更に0.5〜3gの範囲であることが良好な解像度を発揮し、かつ細線画像や微小網点画像の耐刷性を確保し、同時にインキ乗り性を大幅に向上させるために極めて好ましい。光重合性感光層の塗設に用いる塗布液には、感光性平版印刷版材料としての諸特性を向上するために任意の添加剤を加えてもよい。
本発明の感光性平版印刷版材料においては、上記した光硬化性感光層の上に更に保護層を設けることも好ましく行われる。保護層は、光硬化性感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の光硬化性感光層への混入を防止し、大気中での露光感度を更に向上させる好ましい効果を有する。更には光硬化性感光層表面を傷から防止する効果も併せて期待される。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低く力学的強度に優れ、更に、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、光硬化性感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。本発明の感光性平版印刷版材料においては、水現像の過程においてこうした保護層と光硬化性感光層の未露光部の除去が同時に行うことも可能であるため、特に保護層の除去工程を設ける必要がないことが特徴である。更に、先に述べたような光硬化性感光層に含まれる該重合体が水溶性であるが故に大気中の水分を吸湿しブロッキングを発生したり、保存中に感度変化等の問題を生じる場合があるが、保護層を光硬化性感光層の上部に設けることでこうしたブロッキングや感度変化の問題を解消することが可能である。加えて、特に半導体レーザー等を使用して走査露光を行う場合、特に高感度である光硬化性感光層が要求される。こうした場合に、保護層を設けることで更に感度が上昇するため特に好ましく適用することができる。
このような、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3,458,311号明細書、特開昭55−49729号公報等に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが良く、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸等のような水溶性ポリマーが知られているが、これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的に最も良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていても良い。また、同様に一部が他の共重合成分を有していても良い。こうした保護層を適用する際の乾燥固形分塗布量に関しては好ましい範囲が存在し、感光層上に乾燥質量で1平方メートルあたり0.1〜10gの範囲の乾燥固形分塗布量で形成することが好ましく、更には0.2〜2gの範囲が好ましい。保護層は、公知の種々の塗布方式を用いて光硬化性感光層上に塗布、乾燥される。
本発明の感光性平版印刷版材料における親水性層、光硬化性感光層、保護層等を塗布する場合は、支持体上に、上述した要素から構成される組成物の塗液を塗布、乾燥して作製される。塗布方法としては、公知の種々の方法を用いることができ、例えば、バーコーター塗布、カーテン塗布、スライドホッパー塗布、ブレード塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、回転塗布、ディップ塗布等を挙げることができる。
本発明の感光性平版印刷版材料に画像パターンを形成するための露光に用いる光源としては、カーボンアーク、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、低圧水銀灯、ディープUVランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、エキシマーUVランプ、LED灯、各種蛍光ランプ等(白色蛍光灯、ブラックライト、ケミカルライト等)を用いることが可能であるが、製版効率の上からレーザーによる走査露光が非常に好ましい。レーザー光源としては、青紫色半導体レーザー(バイオレットレーザー)、アルゴンレーザー、ヘリウム・ネオンレーザー、赤色LED、近赤外レーザー、赤外レーザー等が挙げられる。中でも390〜430nmの波長域のGaN等が生産性、画像の精細性から好ましく用いられる。また、走査方法としては、内面ドラム方式あるいは外面ドラム方式、平面走査方式等のいずれであってもよいが、内面ドラム方式が好ましい。また、版面におけるレーザー強度は、1〜600μJ/cmとするのが好ましく、30〜400μJ/cmとするのが特に好ましい。
本発明の感光性平版印刷版材料の現像処理に用いる現像液としては、画質向上、現像時間の短縮等を目的として、必要に応じて、活性剤もしくはアルカリ剤を含有して良い。前述の重合性二重結合を有する化合物がカルボキシル基やスルホ基等の酸性基を有し、該酸性基が感光層中において、金属塩もしくはアミン塩の形態になっている場合には、後述するアルカリ剤を実質的に含有しない現像液、即ち、pHが9未満の中性現像液で現像することが可能である。特に重合性二重結合を有する化合物がスルホ基の中和塩を有する場合には良好な現像性を得ることが可能であり、純水で溶出可能であるが、カルボキシル基中和塩の場合やスルホ基中和塩を有していても十分な溶解性を得ることができない場合は、該中性現像液に現像性の向上を目的として活性剤を添加することができる。該活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンアルキルエステル類、モノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン性、アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキル硫酸塩類、アルキルスルホン酸塩類、スルホコハク酸エステル塩類等のアニオン性、アルキルベタイン類、アミノ酸類等の両性の界面活性剤イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等の水溶性有機溶剤等が挙げられる。
一方、前述の重合性二重結合を有する化合物がカルボキシル基やスルホ基等中和されていない酸性基を有する場合には、現像液にアルカリ剤を含有していることが好ましい。アルカリ剤としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウム、メタ珪酸ナトリウム、メタ珪酸カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、第二燐酸ナトリウム、第三燐酸ナトリウム、第二燐酸アンモニウム、第三燐酸アンモニウム、硼酸ナトリウム、硼酸カリウム、硼酸アンモニウム等の無機アルカリ塩、またはモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン等が挙げられ、これらを添加し、pH9以上に調整することでアルカリ性現像液として用いることができる。また、前述の中性現像液として用いた活性剤等を該アルカリ現像液に添加することも現像性改善の上で好ましい。
なお、現像は、浸漬現像、スプレー現像、ブラシ現像、超音波現像等の公知の現像法により、通常、好ましくは10〜60℃程度、更に好ましくは15〜45℃程度の温度で、5秒〜10分程度の時間でなされる。その際、感光層上に必要に応じて設けられる保護層は、予め水等で除去しておいてもよいし、現像時に除去することとしてもよい。
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部数や百分率は断りのない限り質量基準である。
(実施例1)
厚みが約200μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、下記組成の親水性層塗工液1をスライドホッパーコーティング法により塗布した。その際、湿分塗布量が35g/mになるように予め設定して行った。塗布後直ちに1〜5℃の冷風にて塗膜をゲル化、その後は50℃に設定された乾いた風を用いて乾燥を行い、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に親水性層を形成した。
<親水性層塗工液1>
アルカリ処理ゼラチン 1.2部
無機フィラー1:二酸化チタン 4.0部
(TISR1、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒2.04)
無機フィラー2:硫酸バリウム 1.6部
(B35、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒1.23)
無機フィラー3:水酸化アルミニウム 0.4部
(H42、昭和電工(株)製、平均一次粒子径≒1.0μm、相対屈折率≒1.24)
分散剤(アクリル酸共重合金属塩、10%溶液) 1.0部
界面活性剤(POEノニルフェニルエーテル硫酸Na、10%溶液) 0.4部
硬膜剤(ジビニルスルホン、5%溶液) 4.0部
水で全量を35部とした。
上記親水性層塗工液1が含有する無機フィラーの粒度分布と分布頻度に関しては、上記親水性層塗工液1が含有する無機フィラー2と3を添加せず、親水性層塗工液中に無機フィラー1が単独で存在する塗工液を作製し、また同様の手法で親水性層塗工液中に無機フィラー2や3が単独で存在する塗工液をそれぞれ作製し、各々の無機フィラーの粒度分布と分布頻度をレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA(株)製LA920)を用いて測定し、得られた各々単体分散液の粒度分布に添加比率を係数として乗じ、上述の親水性層塗工液1の粒度分布と分布頻度を算出した。この結果、0.2μm以上0.6μm未満の範囲に存在する無機フィラーの分布頻度fxは64.8%、0.6μm以上1.5μm未満の範囲に存在する無機フィラーの分布頻度fyは30.1%であり、fx/fy比は2.15であった。
上記して得られた親水性層に下記表面処理液1をディップ方式により塗工し、その後付着した表面処理液1をエアナイフによって掻き落とし、その後50℃に設定された乾いた風を用いて乾燥した。乾燥後は40℃40%RHに調整した恒温恒湿機内に7日間入れ、加温処理を施した。なお、この表面処理によって親水性層が保持した重合性二重結合基を有する高分子化合物の量は90mg/mであった。
<表面処理液1>
水 97部
スルホン酸型重合体SP−1(重量平均分子量30万) 3部
<感光性水性乳化物の作製>
重合性二重結合基を有する化合物としてトリメチロールプロパントリアクリレート6部、光重合開始剤としてBC−7で示される有機ホウ素塩2部、T−8で示されるトリハロアルキル置換化合物1.5部、下記構造の増感剤0.05部、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.08部を秤量し、酢酸エチル200部を加えて溶解し、溶液Aを作製した。
Figure 2014038156
一方、イオン交換水300部をとり、スルホン酸塩基を有する水溶性ポリマーとしてSP−2を20部、アニオン性界面活性剤としてペレックスOTP(ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム:花王(株)製)を5部添加し、溶液Bを作製した。
水中乳化物の作製には、密閉容器内にホモミキサーが配置され、減圧下で加熱しながら溶媒を溜去可能な、みずほ工業(株)製卓上型真空乳化装置PVQ−1Dを使用して作製を行った。ホモミキサーの回転速度は5000rpmに設定した。上記で作製した溶液Aと溶液Bを真空乳化装置内に導入し、室温下でホモミキサーの20分間高速攪拌により乳化分散を行った。その後、着色剤としてピグメントブルー15を0.2部加えて攪拌し、真空乳化装置内をアスピレーターを用いて減圧状態にし、大気圧の20%の減圧条件下で温度を50℃に上昇させて酢酸エチルを減圧溜去した。冷却器にて回収した酢酸エチルの量から、用いた全ての酢酸エチルが水中乳化物から溜去されたことを確認した。こうして感光性水性乳化物を作製し、これを光硬化性感光層を設けるための塗布液とした。
上記で得た塗布液を、先に表面処理を施した親水性層上に塗布、乾燥することで、光硬化性感光層を形成した。光硬化性感光層の塗布量は乾燥質量で1平方メートル当たり1.6gになるようにワイヤーバーを使用して塗布を行った。乾燥は80℃の乾燥器で10分間加熱して行った。
更に下記保護層を乾燥質量で1平方メートル当たり1.5gになるように光硬化性感光層上に塗布を行い、75℃の乾燥器内にて10分間乾燥し、感光性平版印刷版材料1を得た。
<保護層処方>
ポリビニルアルコール PVA−102((株)クラレ製) 1部
イオン交換水 9部
(実施例2)
実施例1の感光性平版印刷版材料の作製において、表面処理液1を下記表面処理液2に変更した以外は同様にして、感光性平版印刷版材料2を得た。なお、この表面処理によって親水性層が保持した重合性二重結合基を有する高分子化合物の量は90mg/mであった。
<表面処理液2>
水 97部
スルホン酸型重合体SP−2(重量平均分子量40万) 3部
(実施例3)
実施例1の感光性平版印刷版材料の作製において、表面処理液1を下記表面処理液3に変更した以外は同様にして、感光性平版印刷版材料3を得た。なお、この表面処理によって親水性層が保持した重合性二重結合基を有する高分子化合物の量は、25mg/mであった。
<表面処理液3>
水 99.2部
四級アンモニウム基型重合体CP−2(重量平均分子量35万) 0.8部
(比較例1)
実施例1の感光性平版印刷版材料の作製において、表面処理液1による処理を行わなかった以外は同様にして、感光性平版印刷版材料4を得た。
(比較例2)
実施例1の感光性平版印刷版材料の作製において、表面処理液1を下記表面処理液4に変更した以外は同様にして、感光性平版印刷版材料5を得た。なお、この表面処理によって親水性層が保持したアルカリ処理ゼラチンの量は90mg/mであった。
<表面処理液4>
水 97部
アルカリ処理ゼラチン 3部
(比較例3)
実施例1の感光性平版印刷版材料の作製において、表面処理液1による処理を行わず、代わりに下記親水性補助層を乾燥質量で1平方メートル当たり1.5gになるように親水性層上に塗布し、得られた親水性補助層上に、実施例1と同様にして光硬化性感光層および保護層を塗布して感光性平版印刷版材料6を得た。
<親水性補助層処方>
水 90部
スルホン酸型重合体SP−1(重量平均分子量30万) 10部
(比較例4)
厚みが約200μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、下記組成の親水性層塗工液2をスライドホッパーコーティング法により塗布した。その際、湿分塗布量が35g/mになるように予め設定して行った。塗布後直ちに1〜5℃の冷風にて塗膜をゲル化、その後は50℃に設定された乾いた風を用いて乾燥を行い、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に親水性層を形成した。なお、親水性層が含有する重合性二重結合基を有する高分子化合物の量は90mg/mである。
<親水性層塗工液2>
アルカリ処理ゼラチン 1.2部
無機フィラー1:二酸化チタン 4.0部
(TISR1、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒2.04)
無機フィラー2:硫酸バリウム 1.6部
(B35、堺化学工業(株)製、平均一次粒子径≒0.3μm、相対屈折率≒1.23)
無機フィラー3:水酸化アルミニウム 0.4部
(H42、昭和電工(株)製、平均一次粒子径≒1.0μm、相対屈折率≒1.24)
分散剤(アクリル酸共重合金属塩、10%溶液) 1.0部
界面活性剤(POEノニルフェニルエーテル硫酸Na、10%溶液) 0.4部
硬膜剤(ジビニルスルホン、5%溶液) 4.0部
スルホン酸型重合体SP−1(重量平均分子量30万) 0.09部
水で全量を35部とした。
このようにして得られた親水性層上に、感光性平版印刷版材料1の作製と同様にして、光硬化性感光層および保護層を順次塗設し、感光性平版印刷版材料7を得た。
<露光・現像処理>
上記で得られた感光性平版印刷版材料1〜7について、405nmに発光する青紫半導体レーザー(出力50mW)を露光光源に用い、版面露光エネルギーを200μJ/cmに設定してテストチャート画像を露光した。その後、25℃のイオン交換水に15秒間漬けてセルローススポンジで光重合性感光層/保護層を有する側の面を擦り現像、その後乾燥することにより印刷刷版を作製した。この印刷刷版を用いて以下の方法により、耐刷性について評価を行った。
<耐刷性>
印刷機はオフセット枚葉印刷機ハイデルベルグQM46を使用、印刷インキにはDIC(株)製のニューチャンピオンFグロス墨H、給湿液には(株)日研化学研究所製アストロマークIIIの1%希釈液を用いて印刷を行った。なお、版仕立てにおいてゲージフィルムを用いて標準200μmのところ300μm(+100μm)仕立てとした。評価としては、スタート時の印刷紙面と1.5万枚印刷時の印刷紙面とを比較して、5〜20%のハイライト網点部の減衰率及びベタ部における微細な欠陥等を25倍ルーペで入念に観察し、以下の評価基準を用いて判定した。この結果を表1に示す。
◎:ハイライト部、ベタ部共に殆ど変化が認められない。
○:ハイライト部で僅かな減衰(減衰率10%以内)が認められる。
但し、ベタ部において欠陥は認められない。
△:ハイライト部で明確な減衰(減衰率10%以上)が認められる。
但し、ベタ部において欠陥は認められない。
×:ハイライト部が5割以上減衰している、
またはベタ部において欠陥などの異常が認められる。
<耐地汚れ性>
印刷機は、耐刷性と同様オフセット枚葉印刷機ハイデルベルグQM46を使用、印刷インキにはニューチャンピオンFグロス紫S、給湿液にはHuber Group製のCombiFIX−XLの1%希釈液を用いて印刷を行った。なお、版仕立てについては標準200μmとした。耐地汚れ性評価としては、スタート時の印刷紙面と3,000枚目までの印刷紙面とを比較し、以下の評価基準を用いて判定した。この結果を表1に示す。
◎:3,000枚目まで地汚れが認められない。
○:2,000〜3,000枚未満の間で地汚れが認められる。
△:1,000〜2,000枚未満の間で地汚れが認められる。
×:1〜1,000枚未満の間で地汚れが認められる。
<インキ脱離性>
印刷機は、耐刷性と同様にオフセット枚葉印刷機ハイデルベルグQM46を使用、印刷インキには東洋インキ(株)製のハイユニティーネオソイ紅LZ、給湿液には(株)日研化学研究所製アストロマークIIIの1%希釈液を用いて印刷を行った。なお、版仕立てについては標準200μmとした。印刷方法については、まず乾いた印刷刷版に水フォームローラーをタッチさせる前にインキフォームローラーを版面に2回転タッチさせる、その後間もなく給紙と同時に水フォームローラーをタッチさせる方法により印刷を行った。印刷紙面において完全に汚れがなくなるのに要した印刷枚数からインキ脱離性の評価として以下基準により判定した。この結果を表1に示す。
◎:1〜20枚未満で非画像部の汚れが完全になくなる。
○:20〜50枚未満で非画像部の汚れが完全になくなる。
△:50〜100枚未満で非画像部の汚れが完全になくなる。
×:非画像部の汚れが完全になくなるのに、100枚以上を要する。
<耐網絡み性>
上記インキ脱離性の評価のため500枚以上印刷を行った後に印刷機を一旦停止してブランケットのみを洗浄した。その後、再び通常通り水フォームローラーを版面に5回転以上タッチさせた後に給紙を開始する方法で印刷を行った。耐網絡み性の評価については、5,000枚目の印刷紙面の観察により、以下の評価基準を用いて判定した。この結果を表1に示す。
◎:90%以上のシャドウ部でも絡みの発生が認められない、
かつ再現性に問題が認められない。
○:85%以上90%未満の網点部で僅かに絡みが認められるも、
実用上問題ないレベル。
△:70%以上85%未満の網点部で絡みが認められる。
×:70%未満の網点部で絡みが認められる、また再現性に問題が認められる。
Figure 2014038156
以上の結果より、本発明によって、実質的にアルカリ剤を含有しないケミカルレス現像に好適であり、地汚れ性、インキ脱離性、耐網絡み性、および耐刷性の全てに優れた感光性平版印刷版材料が得られることが判る。

Claims (1)

  1. 支持体上に親水性層および光硬化性感光層を少なくともこの順に有する感光性平版印刷版材料であって、該親水性層が重合性二重結合基を有する高分子化合物によって表面処理された親水性層であることを特徴とする感光性平版印刷版材料。
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