JP2014022347A - イオン注入方法およびイオン注入装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】イオン注入量の異なる領域を精度良く形成できる技術を提供する。
【解決手段】イオン注入工程は、ウエハの第1の素子領域をイオンビームで走査してイオンを注入する工程と、第1の素子領域を走査したイオンビームをウエハ上から退避させる工程と、第1の素子領域に隣接し、該第1の素子領域の次にイオンが注入される第2の素子領域をイオンビームで走査する前に、退避させていたイオンビームをウエハ上に復帰させる工程と、を含む。第1の素子領域と第2の素子領域との間の許容される過渡領域の幅がX1[mm]、一スキャンで第1の素子領域および第2の素子領域を含む領域を走査するイオンビームの走査振幅をL1[mm]、退避電圧を印加してから解除するまでの時間をt[s]、とすると、イオンビームの走査周波数f1[Hz]は、f1≦X1/(2L1×t)を満たすように設定されている。
【選択図】図7
【解決手段】イオン注入工程は、ウエハの第1の素子領域をイオンビームで走査してイオンを注入する工程と、第1の素子領域を走査したイオンビームをウエハ上から退避させる工程と、第1の素子領域に隣接し、該第1の素子領域の次にイオンが注入される第2の素子領域をイオンビームで走査する前に、退避させていたイオンビームをウエハ上に復帰させる工程と、を含む。第1の素子領域と第2の素子領域との間の許容される過渡領域の幅がX1[mm]、一スキャンで第1の素子領域および第2の素子領域を含む領域を走査するイオンビームの走査振幅をL1[mm]、退避電圧を印加してから解除するまでの時間をt[s]、とすると、イオンビームの走査周波数f1[Hz]は、f1≦X1/(2L1×t)を満たすように設定されている。
【選択図】図7
Description
本発明は、イオン注入に関し、より詳しくは、イオン注入方法およびイオン注入装置に関する。
半導体製造工程では、導電性を変化させる目的、半導体ウエハの結晶構造を変化させる目的などのため、半導体ウエハにイオンを注入する工程が標準的に実施されている。この工程で使用される装置は、一般にイオン注入装置と呼ばれる。
イオン注入装置は、例えば、イオン源、引き出し電極、質量分析磁石装置、質量分析スリット、加速/減速装置、ウエハ処理室等が、ビームラインに沿って配置されており、半導体用基板であるウエハにイオンを注入するように構成されている。
通常、ウエハに照射されるイオンビームは、その断面積がウエハサイズよりも小さいため、ウエハの全面をイオンビームで照射するために様々な照射方法が考案されている。例えば、イオン源で発生したイオンをウエハまで輸送し、そのイオンビームを一方向に往復スキャンし、イオンビームの走査方向に直交する方向にウエハをメカニカルにスキャンし、イオンをウエハに注入するイオン注入方法を採用したイオン注入装置(以下、「ハイブリッドスキャンイオン注入装置」と呼ぶことがある。)が考案されている。
また、イオン注入量を領域ごとに変更できるイオン注入装置も開発されている。例えば、特許文献1には、イオン注入が不均一なウエハに対して、オクタポール・スキャナーによるX方向およびY方向へのイオンビームの微小角度のスキャンと、X方向への駆動機構およびY方向への駆動機構によるプラテンの機械的スキャンと、の組合せにより、ウエハにおける各注入領域に応じて注入するイオンの量を変化させるイオン注入装置が開示されている。
ところで、イオン注入量の異なる複数の領域をウエハに形成する場合、所望の領域に精度良く所望の量のイオンを注入することが重要である。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、イオン注入量の異なる領域を精度良く形成できる技術を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様のイオン注入方法は、ハイブリッドスキャンによるイオン注入方法であって、イオンビームを走査しながらウエハの領域に応じてイオン注入量を変化させるイオン注入工程を備える。イオン注入工程は、ウエハの第1の素子領域をイオンビームで走査してイオンを注入する工程と、第1の素子領域を走査したイオンビームをウエハ上から退避させる工程と、第1の素子領域に隣接し、該第1の素子領域の次にイオンが注入される第2の素子領域をイオンビームで走査する前に、退避させていたイオンビームをウエハ上に復帰させる工程と、を含む。第1の素子領域と第2の素子領域との間の許容される過渡領域の幅がX1[mm]、一スキャンで第1の素子領域および第2の素子領域を含む領域を走査するイオンビームの走査振幅をL1[mm]、イオンビームをウエハ上から退避させてからウエハ上に復帰させるまでの時間をt[s]、とすると、イオンビームの走査周波数f1[Hz]は、f1≦X1/(2L1×t) を満たすように設定されている。
本発明の別の態様は、イオン注入装置である。この装置は、ウエハを保持する保持部と、ウエハの表面でイオンビームを走査するように構成された走査部と、保持部をイオンビームの走査方向と交差する方向へ移動させる移動部と、イオンビームを走査しながらウエハの領域に応じてイオン注入量を変化できるように、走査部および移動部を制御する制御部と、を備える。制御部は、ウエハの第1の素子領域をイオンビームで走査してイオンを注入し、第1の素子領域を走査したイオンビームをウエハ上から退避させ、第1の素子領域に隣接し、該第1の素子領域の次にイオンが注入される第2の素子領域をイオンビームで走査する前に、退避させていたイオンビームをウエハ上に復帰させる、ように走査部を制御し、走査部は、第1の素子領域と第2の素子領域との間の許容される過渡領域の幅がX1[mm]、一スキャンで第1の素子領域および第2の素子領域を含む領域を走査するイオンビームの走査振幅をL1[mm]、イオンビームをウエハ上から退避させてからウエハ上に復帰させるまでの時間をt[s]、とすると、イオンビームの走査周波数f1[Hz]が、f1≦X1/(2L1×t)を満たすように該イオンビームでウエハを走査する。
なお、以上の構成要素の任意の組合せや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
本発明によれば、イオン注入量の異なる領域を精度良く形成できる。
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、以下に述べる構成は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。また、以下では、イオン注入が行われる物体として半導体ウエハを例として説明するが、他の物質や部材であっても良い。
はじめに、本願発明に至った経緯について説明する。現在、良く用いられている半導体素子は、その大きさが数mmから数cmの大きさである。例えば、半導体製造工程で良く用いられる半導体ウエハは直径15cmから30cmである。すなわち、半導体素子の製造においては、半導体ウエハ上に多数個の半導体素子を作成し、その後半導体ウエハを部分的に切断することによって、結果的に多数個の半導体素子を生産している。
また、一般に一つの半導体素子の中には、その目的によって、形や大きさの異なったトランジスタが必要となる。例えば、メモリ用半導体素子を製作する場合、そのメモリ用トランジスタと、メモリに記憶された情報を読み出すためのトランジスタとでは、その形や大きさが異なる。すなわち、一つの半導体素子の中には、非常に多くのトランジスタが使用されるが、その種類は1種類ではなく、複数種類であることが一般的である。
このように形や大きさの異なった複数種類のトランジスタを作成するためには、当然ながら、その製造工程も異なっている。以下、製造工程としてイオン注入工程のみの説明を行う。すなわち、イオン注入工程の工程条件を変えて、複数種類のトランジスタを作成する場合を考える。
通常のイオン注入工程では、レジストマスクと呼ばれる薄膜を半導体ウエハの表面に設置し、その上からイオン注入を行うことが多い。半導体ウエハ一面に照射されるイオンは、レジストマスクに覆われていない領域では半導体ウエハ内に注入されるが、レジストマスクで覆われている領域では、イオンはレジストマスク上に留まり、半導体ウエハに注入されることはない。したがって、形や大きさの異なったトランジスタを作成するためには、ある一種類のトランジスタを生成する領域の上部のみ半導体ウエハ上にレジストマスクを設置せず、それ以外の領域の上部にはレジストマスクを設置することによって、当該種類のトランジスタに対する選択的イオン注入が実施できることになる。
ここで、複数種類のトランジスタを半導体ウエハ上に計画的にどう設置するかについて、説明する。上記のように、半導体素子の製造においては、半導体ウエハ上に多数個の半導体素子を作成し、その後半導体ウエハを部分的に切断することによって、結果的に多数個の半導体素子を生産するので、それぞれの半導体素子の中にそれぞれ複数種類のトランジスタが必要になる。また、上記のように、通常の手法ではレジストマスクを設置することによって、それぞれの種類のトランジスタに対する選択的イオン注入を実施するが、半導体素子の中に複数種類のトランジスタをランダムに配置するのでは、レジストマスクの構造が不必要に細かくなり、その製造コストが上昇する。したがって、それぞれの半導体素子の中で領域を分け、ある領域では一種類のトランジスタを集約し、別の領域では別の種類のトランジスタを集約することが、一般に行われている。
詳細は後述するが、半導体ウエハ上への複数種類のトランジスタの一つの設置方法として、半導体ウエハ上に、トランジスタの種類に応じた、略長方形形状で形状が同じ領域を多数個設定したものがある。そして、その領域ごとにトランジスタの種類が作り分けられる。この場合、その領域ごとに、レジストマスクを対応させ、当該種類のトランジスタに対して、イオン注入工程の工程条件を変え、選択的にイオン注入を行うことが行われる。
ここで、半導体ウエハ上に上記のように設定された領域に対して、イオン注入の工程条件を変える場合について、さらに詳しく説明する。イオン注入の代表的な工程条件は、イオン種、イオンエネルギー、イオン注入量、イオン注入角度である。ここで、イオン種、イオンエネルギー、イオン注入角度を変えて選択的にイオン注入を行う場合には、当該種類のトランジスタの領域ごとに、注入するイオンビームそのものを変更する必要がある。
したがって、レジストマスク設置によって、本来その領域に照射されてはならないイオンビームを除去する必要性が高い。すなわち、レジストマスク設置によって、イオン注入工程の工程条件を変え、選択的にイオン注入を行う必要性が高い。しかし、イオン注入量のみを変えて選択的にイオン注入を行う場合、注入するイオンビームそのものを変更する必要はなく、当該領域に注入する量のみを変更すれば良い。言い換えると、イオンビームそのものとして、その領域に照射されてはならない訳ではなく、当該領域へのイオン注入量が多すぎたり少なすぎたりしていなければ良い。そのため、前述のイオンビーム除去の必要性はなく、トランジスタ作成のため満たさなければいけない諸般の条件が満たされるのであれば、必ずしもレジストマスクの対応が必要という訳ではない。
そこで、本実施の形態では、イオン注入装置として、いわゆるハイブリッドスキャンイオン注入装置を用い、半導体ウエハ上に設定された複数の領域に、各領域ごとに対応した複数種類の半導体素子(例えばトランジスタ)を形成する技術について説明する。詳述すると、レジストマスクを積極的には用いずに、イオン注入量を変化させることで、種類の異なる半導体素子を各種類の半導体素子に対応した、ウエハ上の所定の各領域に形成することが可能なイオン注入の技術について説明する。これにより、レジストマスクを簡素化、あるいは省略できるため、半導体素子の生産コストの低減が可能となる。
図1(a)は、本実施の形態に係るハイブリッドスキャンイオン注入装置の概略構成を示す平面図、図1(b)は、本実施の形態に係るハイブリッドスキャンイオン注入装置の概略構成を示す側面図である。
本実施の形態に係るハイブリッドスキャンイオン注入装置(以下、適宜「イオン注入装置」と呼ぶ場合がある。)100は、イオン源1から引出電極2により引き出したイオンビームが、半導体ウエハ10に至るビームライン上を通るよう構成されている。そして、該ビームラインに沿って、質量分析磁石装置3、質量分析スリット4、ビームスキャナー5、ウエハ処理室(イオン注入室)が配設されている。ウエハ処理室内には、半導体ウエハ10を保持する機構を備えたメカニカルスキャン装置11が配設されている。イオン源1から引き出されたイオンビームは、ビームラインに沿ってウエハ処理室のイオン注入位置に配置されたホルダ上の半導体ウエハ10に導かれる。
イオンビームは、ビームスキャナー5を用いて、一方向に往復走査され、パラレルレンズ6の機能により、平行化された後、半導体ウエハ10まで導かれる。また、本実施の形態に係るイオン注入装置は、イオンビームの走査方向に直交する方向に半導体ウエハ10をメカニカルに走査して、イオンを半導体ウエハ10に打ち込む。図1にイオン注入装置100では、角度エネルギーフィルタ7を用いてイオンビームを曲げ、イオンエネルギーの均一性を高めているが、これは例であって、角度エネルギーフィルタ7を用いなくても良い。
なお、図1で示したビームスキャナー5は、ビームを往復走査するための機器であり、半導体ウエハ10に対するイオン注入角度を制御するのは、パラレルレンズ6である。
そして、図1に示したイオン注入装置100を用いてイオンを半導体ウエハ10に注入するのであるが、実際には、そのイオンビームの品質の確認や、当初想定しているイオンビームの電流量が得られているかの確認、さらにはイオンビームの時間的安定性確認を行うために、半導体ウエハ10にイオンを注入する前に、準備、確認する必要がある。この準備、確認のシーケンスを、以降「ビームセットアップ」と呼ぶ。図1に示したイオン注入装置100では、ビームセットアップ時にウエハ領域ビーム測定装置9を用いてイオンビーム測定を行い、しかる後に半導体ウエハ10をセットする。図1ではウエハ領域ビーム測定装置9は可動するように書かれているが、これは例であって、非可動タイプのウエハ領域ビーム測定装置9を用いても良い。
ウエハ処理室には、ドーズカップ8が設置されており、ドーズカップ8は、注入中も含めイオンビーム電流測定する。図1では、半導体ウエハ10の手前に、半導体ウエハ10の水平方向の両側に対応する箇所にドーズカップ8が設置されているが、これは例であって、注入中も含めイオンビーム電流量を測定できる位置であれば、半導体ウエハ10の後方に設置しても良いし、半導体ウエハ10を含む平面上に設置しても良い。また、図1では、ドーズカップ8はイオンビームの走査方向両側に2個設置されているが、これは例であって、1個であっても良いし、3個以上の複数個であっても良い。
半導体ウエハ10は、半導体ウエハ10を保持する機構を備えたメカニカルスキャン装置11にセットされる。ここで、図1(a)において、半導体ウエハ10は、メカニカルスキャン装置11とともに、図面の面に交差する上下方向に往復移動されることを示し、図1(b)において、半導体ウエハ10は、メカニカルスキャン装置11とともに図面と平行な面上で往復移動されることを示している。
イオン注入装置の概略構成は以上であるが、そのほかにも必要に応じて種々の機器が設置されることがある。本実施の形態に係るイオン注入装置100は、静電レンズ12を備えている。静電レンズ12は、例えば、イオンビームに収束力、発散力を与え、イオンビームの縦方向、横方向の形状を制御し、半導体ウエハ10上のイオンビームの形状を制御する。また、静電レンズ12は、イオン源1から半導体ウエハ10までの透過効率を高める目的で配設されていても良い。静電レンズ12は、静電力を持ってイオンビームに収束力、発散力を与えればその役目を果たすのであって、その形状は様々な場合がある。図1ではその一例を示しているが、これは例示であって、静電レンズ12の形状はこの形状に限らない。通常、静電レンズ12には、直流電圧が印加されるが、用途に応じてその一部の電極やすべての電極に、電圧を印加せずに使用することもある。また、図1では質量分析磁石装置3と質量分析スリット4の間に静電レンズ12を配設しているが、これは例であって、静電レンズ12は、その目的によってイオン源1から半導体ウエハ10までの間の種々の位置に置かれる場合がある。さらに図1では静電レンズ12を1個配設しているが、これも例であって、静電レンズ12は複数個配設されていても良いし、上述の通り、必要がない場合には配設しなくても良い。
また、本実施の形態に係るイオン注入装置100は、ビームダンプ電極13が配設されている。ビームダンプ電極13は、放電発生時やビーム電流低下時に高電圧を印加し、ビームをビームラインから一時的に外し、半導体ウエハ10へのビーム入射を防ぐことによって、半導体ウエハ10に意図しないビームが入射されることを防ぐために用いられる。ビームダンプ電極13は、高電圧印加によってビームをビームラインから一時的に外せばその役目を果たすのであって、その形状は様々な場合がある。図1ではその一例を示しているが、これは例示であって、ビームダンプ電極13の形状はこの形状に限らない。また、図1では質量分析スリット4とビームスキャナー5の間にビームダンプ電極13を配設しているが、これは例であって、ビームダンプ電極13は、イオン源1から半導体ウエハ10までの間の種々の位置に置かれる場合がある。
次に、図2を参照して、半導体ウエハ10への複数種類のトランジスタの設置方法を説明する。図2は、半導体ウエハ10上に複数の半導体素子を形成した状態を模式的に示した図である。現在の半導体素子製作では、半導体ウエハ10の上に多数個の半導体素子15を形成し、その後、切断ライン14に沿って半導体ウエハ10を切断することにより、結果的に独立な半導体素子15を多数個生産している。この半導体ウエハ10の切断は、半導体製造工程の後半で行われるものである。切断された半導体素子15はその後配線等の作業が行われるが、逆に言えば配線等の一部の作業を除けば、半導体ウエハ10の切断前に半導体素子作成工程の大部分が終了している。一般に、一つの半導体素子15の中には複数種類のトランジスタが用いられているが、これら複数種類のトランジスタの作製は、半導体ウエハ切断前に行われなければならない。言い換えると、その後に見込まれる、切断ライン14に沿って行われる半導体ウエハ10の切断を見越して、切断されていない半導体ウエハ10の上に複数種類のトランジスタを製作する必要がある。
図2では、2種類のトランジスタ(トランジスタAとトランジスタB)が用いられる場合を例示している。この場合、半導体素子15内にそれぞれ2種類のトランジスタを作成しなければならない。トランジスタの作成には、通常の手法ではレジストマスクを設置することによって、それぞれの種類のトランジスタに対する選択的イオン注入を実施する。したがって、半導体素子15の中でトランジスタAを製作する領域(以下、「トランジスタA製作領域16」と呼ぶ)とトランジスタB(以下、「トランジスタB製作領域17」と呼ぶ)を製作する領域は、他に特別な必要性がない限り、それぞれできるだけ固まっている方が良い。トランジスタA製作領域16とトランジスタB製作領域17が固まっていれば、レジストマスクの構造を不必要に細かくしなくても良いので、レジストマスクの製造コストを低減できる。図2では2種類のトランジスタで説明したが、種類が増えても同じ議論が成り立つ。一般的に、他に特別な必要性がない限り、ある領域では一種類のトランジスタを集約し、別の領域では別の種類のトランジスタを集約することが、製造コストの面から好ましいと言える。
図2では、さらに、異なった半導体素子15の間でのトランジスタA製作領域16とトランジスタB製作領域17の関係も模擬的に示している。以下、トランジスタA製作領域16を用いて説明する。レジストマスクの構造のみを考えれば、トランジスタA製作領域16が集約されていれば良く、異なった半導体素子15の中のどこにトランジスタA製作領域16があっても良いことにはなる。しかし、半導体素子15は、一般に同じ性能を持たせたい訳であって、同じ半導体回路設計を行う必要性があり、したがって、異なった半導体素子15中でも同じ位置にトランジスタA製作領域16を配置したいことは、簡単に理解できよう。したがって、図2のように、トランジスタA製作領域16は、半導体素子15の中で、同じ位置に配置される。図2では2種類のトランジスタで説明したが、種類が増えても同じ議論が成り立つ。
ここで、図3を参照して、半導体ウエハ10にイオン注入が行われる場合の状況を説明する。図3は、半導体ウエハ10上のトランジスタ作製領域の一例を模式的に示した図である。既に説明したように、これら複数種類のトランジスタ作製は、半導体ウエハ切断前に行われる。すなわち、図2では、その後行われる切断ライン14を表記しているが、実際に複数種類のトランジスタ作製が行われている段階では、図3に示したように半導体ウエハ10は切断されていない。図2では半導体素子15ごとにトランジスタB製作領域17があるように説明したが、半導体ウエハ10はまだ切断されていないのであるから、イオン注入時点で求められるトランジスタB製作領域(以下、「イオン注入時点トランジスタB製作領域18」と呼ぶ)は、図3に示したように最終的な半導体素子15の切れ目と関係なく、繋がっている場合がある。図3に模式的に示した例では、イオン注入時点トランジスタB製作領域18はウエハ全面に渡って繋がっている。いずれにせよ、図3に示したように、半導体ウエハ10上にトランジスタA製作領域16とイオン注入時点トランジスタB製作領域18が規則正しく並ぶことになる。
図3に示す状況は、半導体ウエハ10の上に、略長方形形状で形状が同じ領域が多数個設定され、その略長方形形状の中ではトランジスタAを製作し、それ以外の部分ではトランジスタBを製作していることに相当する。図3では2種類のトランジスタで説明したが、種類が増えても同じ議論が成り立つ。すなわち、半導体ウエハ上への複数種類のトランジスタの一つの設置方法として、半導体ウエハ上に、略長方形形状で形状が同じ領域を多数個設定し、その領域ごとにトランジスタの種類を作り分ける方法がある。
イオン注入工程で、図3の状況を作り上げるためには、通常、これら略長方形形状の領域ごとにレジストマスクを対応させ、当該種類のトランジスタに対して、イオン注入工程の工程条件を変え、選択的にイオン注入を行うことが行われる。
前述のように、イオン注入の代表的な工程条件は、イオン種、イオンエネルギー、イオン注入量、イオン注入角度であるが、以下では、イオン注入量のみを変えて、領域ごとにトランジスタの種類を作り分ける方法について説明する。
まず、前述の略長方形形状領域は、その後の切断時に半導体素子15に一つずつ入るのであるから、形状の繋がり方により多少の変動はあるが、半導体素子15の数と概略的にはほぼ同数なければならない。ただし、既に図3で示したように、例えば、イオン注入時点トランジスタB製作領域18は、半導体ウエハ10全面に渡って繋がっており、かつこの状態で求める条件を満たしている。したがって、まとめると、少なくとも40個程度の略長方形形状領域が一種類以上、半導体ウエハ10上に形成されることになる。
次に、前述の略長方形形状領域は、その後の切断時に半導体素子15に一つずつ入るのであるから、その略長方形形状の典型的な一辺の長さは、15mm程度である。但し、この大きさに関しても、既に図3で示したように、例えば、イオン注入時点トランジスタB製作領域18は、半導体ウエハ10全面に渡って繋がっており、かつこの状態で求める条件を満たしている。したがって、まとめると、少なくともその短辺の長さが少なくとも15mmを超えない、略長方形形状領域が一種類以上、半導体ウエハ10上に形成されることになる。
さらに、前述のそれぞれの略長方形形状領域は、互いにできるだけそのイオン注入量がはっきりと区別された領域であることが好ましい。すなわち、トランジスタ製作領域の切替えは、完全に過渡領域を経ることなく行われることが理想である。しかしながら、実際には若干の過渡領域が生じてしまうことはやむを得ず、また半導体製造工程の工夫により、その過渡領域の影響を軽減することも可能である。つまり、トランジスタ製作領域の切替えにおいて、あるていどの過渡領域は許される。しかしながら、上記略長方形形状領域は、その後の切断時に半導体素子15に一つずつ入るので、トランジスタ製作領域の切替えの過渡領域が、略長方形形状領域の典型的な一辺の長さに比して、余りにも大きいことは好ましくない。したがって、イオン注入量が異なる領域を作成するに当たり、そのトランジスタ製作領域の切替えの過渡領域の大きさは1mmを超えないことが好ましい。
さらに加えて、半導体ウエハ10内での、それぞれの略長方形形状領域の位置は、その後の切断時に半導体素子15に一つずつ入るように、その精度が求められる。具体的には、必然的に発生してしまう上記過渡領域の典型的な長さを考えると、上記それぞれの略長方形形状領域の位置精度は、数mmを超えないことが好ましい。
また、半導体製造工程では、その生産性も当然重要な要素である。例えば、イオン注入の準備に必要な時間が通常のイオン注入に比べて余りにも長いと、その手法は使用できない。すなわち、イオン注入工程で、イオン注入量のみを変えて、その領域ごとにトランジスタの種類を作り分けるために、イオン注入の準備に必要な時間が通常のイオン注入に比べて、同程度となり、半導体ウエハ生産性を保つことができれば、より好ましい。
これまでに、イオン注入工程で、イオン注入量のみを変えて、その領域ごとにトランジスタの種類を作り分けるために好ましい具体的な要件を指摘した。それら要件の中でも特に技術的困難性が高い事項は、第一にトランジスタ製作領域の切替えの過渡領域を極力小さくすること、具体的には、例えば過渡領域の幅を1mm以下にすることであり、第二に略長方形形状領域の位置精度を高めること、具体的には、設計の目標位置に対する誤差を数mm以下にすることである。したがって、以下では、これら二つの要件について、本実施の形態に係るイオン注入方法の優位性を詳述する。
ここで、図4は、イオン注入量の制御を概念的に説明するための図である。本実施の形態に係るイオン注入装置100の場合、半導体ウエハ10より幅が小さいイオンビームを半導体ウエハ10上に輸送し、ビームスキャナー5を用いて、そのイオンビームを半導体ウエハ10上で一方向に往復走査させることにより、半導体ウエハ10の全幅に渡ってイオン注入を実現化している。以下、仮想的にビームスキャナー5を用いずに半導体ウエハ10まで輸送されたイオンビームを「スポットビーム」と呼ぶことにする。
次に、半導体ウエハ10上でイオン注入量を制御することを考える。既に図3で示したように、半導体ウエハ10内で制御しなければいけないイオン注入量制御は、2次元的な分布をしている。そして、イオン注入量制御手法を議論するためには、イオンビームの走査方向のイオン注入量制御手法とウエハの走査方向のイオン注入量制御手法を別々に説明すれば良い。
以下では、イオンビームの走査方向のイオン注入量制御について説明した後、ウエハの走査方向のイオン注入量制御について説明し、本実施の形態に係るイオン注入方法やイオン注入装置が、図3に示したような2次元的なイオン注入量分布を実現できることを説明していく。
前述のように、本実施の形態に係るイオン注入装置100は、半導体ウエハ10上に輸送されたスポットビームを半導体ウエハ10上で一方向に往復走査させることにより、半導体ウエハ10の全幅に渡ってのイオン注入を実現化している。したがって、イオンビームの走査方向のイオン注入量は、スポットビームのイオン電流量(以下、「イオン電流量20」と表記する)とイオンビームの走査速度19の関数である。すなわち、イオンビームの走査速度19が大きくなれば、それに逆比例してイオン注入量が減少する。また、イオン電流量20が大きくなれば、それに比例してイオン注入量が増加する。
ここで、例として、図4に示すように、半導体ウエハ10上の或る位置p0からp1の間のイオン注入量を減少させる場合について説明する。以下、この領域を「アンダードーズ領域」、それ以外の領域を「通常ドーズ領域」と呼ぶ。このような分布を実現化する具体的なイオン注入量制御として、図4に示したように、イオン電流量20を一定にしたまま、半導体ウエハ10上の或る位置p0からp1の間のイオンビームの走査速度19を増加させる方法が考えられる。この方法は、イオン注入工程以外の半導体製造プロセスで発生する半導体ウエハ10上の面内不均一性を補正する目的としては、十分に使用できる。しかしながら、図4に示した手法では、イオンビームの走査速度19の速度変更のための加速度が有限であるため、通常ドーズ領域のイオンビームの走査速度19からアンダードーズ領域のイオンビームの走査速度19への速度変更に時間が必要となり、実際にアンダードーズ領域のイオン走査速度に変わる位置は、p2となる。また、同様に、アンダードーズ領域のイオンビームの走査速度19から通常ドーズ領域のイオンビームの走査速度19への速度変更にも時間が必要となり、実際に通常ドーズ領域のイオン走査速度に変わる位置は、p3となる。
ここで、前述のように、本実施の形態のイオン注入方法に求められる要件としては、トランジスタ製作領域の切替えの過渡領域の幅を1mm以下にすることが好ましい。具体的には、p0とp2の差、およびp1とp3の差を1mm以内にできれば良い。しかしながら、イオン電流量20を一定にしたままイオンビームの走査速度19を増加させる方法では、イオンビームの走査速度19の速度変更加速度の限界により、この仕様を満たすことができない。
図5は、本実施の形態に係るイオン注入量制御を説明するための図である。本実施の形態では、イオン電流量20を急激に変えることによってイオン注入量を制御する。図5の例では、通常ドーズ領域ではある一定のイオン電流量20であるが、アンダードーズ領域ではイオン電流量20を急激に減少させ、ゼロにすることによって、イオン注入量を制御する。本実施の形態では、イオンビームの走査速度19を変更する必要がないので、イオンビームの走査速度19の速度変更加速度の限界がない。したがって、適切なイオン電流量20の減少手法を用いれば、要件の一例である1mm以内のトランジスタ製作領域の切替えを実現化することができる。
図6は、本実施の形態に係るイオン注入量制御を説明するための図である。図6に示したように、図5に表した手法を繰り返し用いると、「アンダードーズ領域」を繰り返し作成し、過渡領域が1mm以内のトランジスタ製作領域の切替えを、繰り返し実現化することができる。本実施の形態では、「アンダードーズ領域」、「通常ドーズ領域」の長さに制限がないので、「アンダードーズ領域」の長さを「通常ドーズ領域」の長さより長くすることもできれば、短くすることも、同一にすることもできる。
なお、図5、図6に表した手法では、「アンダードーズ領域」のイオン注入量は実質的にゼロになるが、半導体ウエハ10に対する、面内均一性を保った通常の注入を組み合わせると、「通常ドーズ量領域」のイオン注入量に比べ、「アンダードーズ領域」のイオン注入量をゼロでないイオン注入量に設定することができる。例えば、「アンダードーズ領域」のイオン注入量を4E14(/cm2)、「通常ドーズ量領域」のイオン注入量を5E14(/cm2)に設定したい場合には、まず、通常のイオン注入手法を用いて半導体ウエハ10全面にイオン注入量4E14(/cm2)の注入を実施する。その後、本実施の形態に係る方法による、図5、図6で例示的に示した手法を用いて、「アンダードーズ領域」と「通常ドーズ領域」を設定し、イオン注入量1E14(/cm2)の注入を実施する。これら一連の注入の結果、「アンダードーズ領域」のイオン注入量を4E14(/cm2)、「通常ドーズ量領域」のイオン注入量は5E14(/cm2)とできる。
また、図5、図6に表した手法により、半導体ウエハ10上の或る位置のイオン注入量を増加させ、それを繰り返すこともできる。以下、この領域を「オーバードーズ領域」と呼ぶ。例えば、「オーバードーズ領域」のイオン注入量を6E14(/cm2)、「通常ドーズ量領域」のイオン注入量を5E14(/cm2)に設定したい場合には、まず、通常のイオン注入手法を用いて半導体ウエハ10全面にイオン注入量5E14(/cm2)の注入を実施する。その後、図5、図6で例示的に示した手法を用いて、「アンダードーズ領域」と「通常ドーズ領域」を設定し、イオン注入量1E14(/cm2)の注入を実施する。ここで、先ほどのイオン注入量5E14(/cm2)の注入と組み合わせると、結果的に、半導体ウエハ10上にイオン注入量6E14(/cm2)の領域と、イオン注入量5E14(/cm2)の領域が生成される。これら領域の中で、イオン注入量6E14(/cm2)の領域を「オーバードーズ領域」、イオン注入量5E14(/cm2)の領域を「通常ドーズ領域」と見なせば良い。
また、図5、図6に表した手法を繰り返し使用すると、半導体ウエハ10上に、数種類のイオン注入量領域を作成することができることは言うまでもない。
以上、イオン電流量20を急激に変えることによってイオン注入量を制御する手法によって、イオン注入工程で、イオン注入量のみを変えて、その領域ごとにトランジスタの種類を作り分けるための具体的な要件事項を満たしうることを説明してきた。なお、前述のように、イオン電流量20を一定にしたままイオンビームの走査速度19を増加させる方法では、イオンビームの走査速度19の速度変更加速度の限界により、要件事項を満たすことが困難であり、さらに、イオン電流量20を急激に変え、イオン注入量を制御することによって、具体的要件事項が満たしうることは明らかであるが、イオン電流量20を急激に変える具体的な手法が重要であることは言うまでもない。
図7は、イオン注入量の制御を概念的に説明するための図である。図7に例示したように、イオン電流量20を制御する場合でも、その具体的な手法によっては、イオン電流量20を急激に変えることが困難な場合も有り得る。この場合、イオンビームの走査速度19を変更する場合と同様に、イオン電流量20の変更に時間が必要となり、実際にアンダードーズ領域のイオン電流量20に変わる位置は、p2となる。また、同様に、アンダードーズ領域のイオン電流量20から通常ドーズ領域のイオン電流量20への変更にも時間が必要となり、実際に通常ドーズ領域のイオン電流量20に変わる位置は、p3となる。既に説明したように、具体的には、p0とp2の差、およびp1とp3の差を1mm以内にすることが好ましい。しかしながら、図7のような状況になれば、この要件を満たせない場合が有り得る。
ここで、イオン電流量20を急激に変えることができる構成について説明する。例えば、イオン源1から引出電極2により引き出されたイオンビームが半導体ウエハ10に至るビームライン上に、ビームシャッターに代表される可変の物理的な障害物を挿入することにより、イオン電流量20を急激に変える構成について考える。このような物理的障害物を動かす場合、その重さにもよるが、障害物挿入開始から挿入終了まで、少なくとも100msecは必要である。そのため、このようなシャッターの挿入開始から挿入終了までの間、イオンビームの位置は、図7に示すp0からp2に変化することに相当する。しかしながら、例えば、イオンビームを走査する走査周波数が、通常良く使われる300Hz程度であった場合、100msecの間にイオンビームは半導体ウエハ10上を何回も走査することとなり、図5に示した理想的な状況はもとより、図7に示すような急激なイオン電流量の変化も実現できない。仮にイオンビームの走査周波数が、1Hz程度であった場合でも、100msecの間に直径300mmの半導体ウエハ10上を少なくとも60mm以上移動することとなり、p0とp2の距離も60mm以上となることから、図5の状況を現出することはできない。要するに、シャッターなどの物理的な障害物を挿入することにより、要求される短時間でイオン電流量20を急激に変えることは困難である。
そこで、本実施の形態では、イオン源1から半導体ウエハ10までのイオン輸送領域に設置された外部電極に高電圧を意図的に印加し、半導体ウエハ10へのイオンビーム照射を中断し、あらかじめ定めた別の位置座標とイオンビームを走査する周波数から求める時間が経過した後に、イオン源1から半導体ウエハ10までのイオン輸送領域に設置された外部電極への高電圧印加を除去し、半導体ウエハ10へのイオンビーム照射を再開する手法を用いる。この手法では、外部から与える電場によりイオンビームを制御しているが、この制御は物理的障害物を動かす場合に比べて十分に速い。具体的には、外部電極への高電圧印加開始から終了までの時間は、長くとも100μsecを超えない。つまり、上記障害物挿入開始から挿入終了までに必要な時間100msecに比べ、3桁以上も速い。そのため、図5に近い状況を現出しうる。
本実施の形態の一つの態様では、高電圧を意図的に印加し、その後高電圧を除去する外部電極として、イオンビームに対する静電レンズ12を用いる。
本実施の形態の別の一つの態様では、高電圧を意図的に印加し、その後高電圧を除去する外部電極として、放電発生時に高電圧が印加される電極、すなわち、ビームダンプ電極13を用いる。
高電圧を意図的に印加し、その後高電圧を除去する外部電極としては、その電極に高電圧を意図的に印加し、あるいはその電極への高電圧印加を除去する場合にイオンビームが十分に影響を受ける位置にある電極であれば、他の態様であっても良い。
次に、更に具体的な態様を説明する。例えば、イオンビームの走査周波数f1[Hz]が通常良く使われる300Hz程度、半導体ウエハ10の走査振幅L1[mm]が300mm、外部電極への高電圧印加開始から終了までの時間、つまり、イオンビームをウエハ上から退避させてからウエハ上に復帰させるまでの退避時間t[s]が長くとも1×10−4sとすると、その間のイオンビームの移動距離Xは、
X=f1×2L1×t=300×2×300×1×10−4=12mm
となり、少なくとも10mm以上移動してしまう。つまり、前述のp0とp2の距離も10mm以上となり、図5の状況を現出することはできない。
X=f1×2L1×t=300×2×300×1×10−4=12mm
となり、少なくとも10mm以上移動してしまう。つまり、前述のp0とp2の距離も10mm以上となり、図5の状況を現出することはできない。
したがって、静電レンズ12やビームダンプ電極13を用いてイオンビームを一時的にウエハ上から退避させることで、イオン電流の急激な変化を実現できる場合であっても、好適なイオンビームの走査周波数には閾値がある。また、好適なイオンビームの走査周波数の閾値は、ウエハの大きさやイオンビームを退避させておく時間などによって変化しうる。
前述のように、イオン注入工程において、イオン注入量のみを変えて、その領域ごとにトランジスタの種類を作り分けるために、特に技術的困難性が高い要件事項の一つは、トランジスタ製作領域の切替えの過渡領域を極力小さくすることである。以下では、このトランジスタ製作領域の切替えにおいて許容される過渡領域の幅が1mm以下の場合について具体的に説明する。なお、この許容される過渡領域の大きさは、ウエハや半導体素子の大きさ、作製する半導体素子の数によって変わりうる。
図5の状況を現出するために、トランジスタ製作領域の切替えにおいて許容される過渡領域の幅X1[mm]が1mm以下の場合、以下の条件が必要である。はじめに、前述の外部電極への高電圧印加開始から終了までの時間、すなわちイオンビームをウエハ上から退避させてからウエハ上に復帰させるまでの退避時間t[s]が長くとも100μsec(=1×10−4s)以内にイオンビームの移動距離が1mmを超えない程度の、イオンビームの走査周波数f1[Hz]を設定する必要がある。
イオンビームの走査振幅をL1[mm]とすると、イオンビームがt[s]で移動する距離X、すなわち、実際の過渡領域の幅X1’[mm]は、
X1’(=X)=2×L1×f1×t
となり、これが許容される過渡領域の幅X1[mm]以下となれば良いことになる。
つまり、
2×L1×f1×t=X1’≦X1・・・式(1)
を満たせばよい。
X1’(=X)=2×L1×f1×t
となり、これが許容される過渡領域の幅X1[mm]以下となれば良いことになる。
つまり、
2×L1×f1×t=X1’≦X1・・・式(1)
を満たせばよい。
したがって、直径300mmのウエハを想定して、イオンビームの走査振幅L1[mm]を300mm、退避時間t[s]を1×10−4s、許容される過渡領域の幅X1[mm]が1mmの場合に、イオンビームがt[s]で移動する距離X[mm]、換言すると、実際の過渡領域の幅X1’が1mm以下となるためには、前述の式(1)より、イオンビームの走査周波数f1は、
f1=X1’/(2L1×t)≦X1/(2L1×t)=1/(2×300×10−4)≒16.6
となる。
つまり、許容される過渡領域の幅X1[mm]が1mmの場合、
f1≦X1/(2L1×t)≒16.6
を満たすように設定されていれば良い。
f1=X1’/(2L1×t)≦X1/(2L1×t)=1/(2×300×10−4)≒16.6
となる。
つまり、許容される過渡領域の幅X1[mm]が1mmの場合、
f1≦X1/(2L1×t)≒16.6
を満たすように設定されていれば良い。
つまり、現在多く使用されている直径300mmのシリコン半導体ウエハや、今後移行が予想される直径450mmのシリコン半導体ウエハの場合、イオンビームの走査周波数として10Hzを下回れば、イオンビームの移動距離が100μsec以内に1mmを超えることはない。言い換えると、イオンをウエハに注入する際のイオンビームの走査周波数として、最大イオンビームの走査周波数閾値10Hzが設定されていると良い。
なお、本実施の形態に係るイオン注入装置は、通常の半導体製造工程で求められるイオン注入の性能も確保していることが好ましい。すなわち、イオンビームを走査する周波数として、通常良く使われる300Hz程度の走査周波数を実現することが求められる。また、イオンビームの走査周波数は、トランジスタ製作領域の切替えの過渡領域の幅が、許容される過渡領域の幅X1=0.1mmを超えないようにするためには、上述の関係式から、イオンビームの走査周波数閾値を1Hz程度とすると良い。このトランジスタ製作領域の切替えにおいて許容される過渡領域は、半導体デバイス設計によって変わるから、最大イオンビームの走査周波数閾値も変化できる方がより望ましい。これらの観点から、本実施の形態では、イオンビームを走査する周波数が、0.3Hzから1350Hzの間で変更可能であるように構成されており、このイオンビームの走査周波数の可変性もまた、本実施の形態に係るイオン注入装置100の特徴の一つである。
本実施の形態に係るイオン注入方法では、イオンをウエハに注入する際のイオンビームを走査する周波数について、最大イオンビームの走査周波数閾値10Hzを持つことによって、1mmを超えないトランジスタ製作領域の切替えの過渡領域を実現化することが可能となっている。この最大イオンビームの走査周波数閾値10Hzを持つことは、イオンビームの走査方向において、形状領域の位置の誤差が数mmを超えない精度で実現することにもなっている。すなわち、図6において、1mmを超えないトランジスタ製作領域の切替えの過渡領域を実現化することが可能となるということは、p0、p1、p4、p5、p6等の位置の誤差が1mmを超えない精度で制御することができることを意味する。したがって、本実施の形態に係るイオン注入装置100は、イオンビームの走査方向において、形状領域の位置の誤差が数mmを超えない精度で実現できる。
次に、図8を参照して、本実施の形態に係るウエハの走査方向のイオン注入量制御手法について説明する。図8は、本実施の形態に係るイオン注入量制御を説明するための図である。前述のように、本実施の形態に係るイオン注入装置100は、イオン源1で発生したイオンを半導体ウエハ10まで輸送し、そのイオンビームを一方向に往復走査し、イオンビームの走査方向に直交する方向に半導体ウエハ10をメカニカルに走査して、イオンを半導体ウエハ10に注入するイオン注入方法を採用した、ハイブリッドスキャンイオン注入装置である。ハイブリッドスキャンイオン注入装置では、半導体ウエハ10がメカニカルに走査されるが、図8では便宜的に、半導体ウエハ10を固定して、半導体ウエハ10上における走査されたスポットビームの軌道(以下、スポットビーム軌道21と呼ぶ)を考えることにする。
前述のように、本実施の形態に係るイオン注入方法では、トランジスタ製作領域の切替えの実際の過渡領域の幅が1mmを超えないように、また、イオンビームの走査方向において形状領域の位置精度が数mmを超えないようにするために、イオンをウエハに注入する際のイオンビームの走査周波数は、例えば最大イオンビームの走査周波数閾値10Hzに設定される。この場合、スポットビームが半導体ウエハ10の直径を通過するには、速くとも50msecが必要となる。これは、イオンビームを走査する周波数として、ハイブリッドスキャンイオン注入装置で通常良く使われる300Hz程度の走査周波数を用いる場合に、スポットビームが半導体ウエハ10の直径を通過するために必要な時間、すなわち2msec以内に比べて、非常に大きい。イオンビームの走査周波数をさらに小さくする場合には、この通過時間はさらに長くなる。
ハイブリッドスキャンイオン注入装置では、半導体ウエハ10を走査する走査周波数として、通常0.1Hzから0.5Hz程度の走査周波数が使用される。例えば、0.1Hzのウエハの走査周波数の場合、最大イオンビームの走査周波数閾値が10Hzの場合、前述のようにスポットビームが半導体ウエハ10の直径を通過する最低時間は50msecとなり、直径300mmの半導体ウエハ10の両端でのスポットビームの位置は、ウエハの走査方向においておよそ3mm変化することになる。したがって、スポットビーム軌道21は、図8の破線で模式的に示したように、半導体ウエハ10上を斜めに進むこととなる。本実施の形態の目的の一つは、前述のように、図3で示したような2次元的に整然と並んだ略長方形形状で形状が同じ領域を多数個設定し、その領域ごとにイオン注入量を変えてトランジスタの種類を作り分けることであるから、スポットビーム軌道21は図8の実線で模式的に示したように、半導体ウエハ10上を横方向に進むことが好ましい。
イオンビームの走査周波数をさらに小さくする場合を考えると、スポットビームが半導体ウエハ10の直径を通過する最低時間はさらに長くなり、図8の破線で模式的に示した斜めのスポットビーム軌道21は、その傾きがさらに大きくなる。
本実施の形態では、既に図3で示したように、それぞれの略長方形形状領域の位置精度は、数mmを超えないことが求められる。したがって、ウエハの走査方向の位置精度も数mmを超えないことが求められ、また、イオン注入量制御としては1mm以下の精度が求められる。
次に、具体的な態様を説明する。イオンビームの走査周波数がf1[Hz]とすると、スポットビームが半導体ウエハ10の直径を通過するのに必要な最低時間Tは、
T=1/(2×f1)
と表せる。したがって、走査周波数f1が10Hzの場合、最低時間Tは50msecとなる。
T=1/(2×f1)
と表せる。したがって、走査周波数f1が10Hzの場合、最低時間Tは50msecとなる。
ここで、ウエハの走査振幅をL2[mm]、ウエハの走査周波数f2[Hz]とすると、最低時間Tの間に移動するウエハの移動距離Yは、
Y=f2×2L2×T=(f2×2L2)/(2×f1)=(f2×L2)/f1
となり、移動距離Yが、ウエハの走査方向に隣接する素子領域同士の間の許容される過渡領域の幅Y1[mm]以下となれば良いことになる。
Y=f2×2L2×T=(f2×2L2)/(2×f1)=(f2×L2)/f1
となり、移動距離Yが、ウエハの走査方向に隣接する素子領域同士の間の許容される過渡領域の幅Y1[mm]以下となれば良いことになる。
したがって、直径300mmのウエハを想定して、ウエハの走査振幅L2[mm]を300mm、イオンビームの走査周波数f1[Hz]を10Hz、許容される過渡領域の幅Y1[mm]が1mmの場合に、ウエハの移動距離Y[mm]が1mm以下となるためには、ウエハの走査周波数f2は、
f2=(Y/L2)×f1≦(Y1/L2)×f1=(1/300)×10≒0.033
となる。
つまり、許容される過渡領域の幅Y1[mm]が1mmの場合、
f2≦(Y1/L2)×f1≒0.033
を満たすように設定されていれば良い。
f2=(Y/L2)×f1≦(Y1/L2)×f1=(1/300)×10≒0.033
となる。
つまり、許容される過渡領域の幅Y1[mm]が1mmの場合、
f2≦(Y1/L2)×f1≒0.033
を満たすように設定されていれば良い。
つまり、現在多く使用されている直径300mmのシリコン半導体ウエハや、今後移行が予想される直径450mmのシリコン半導体ウエハの場合、イオンビームの走査周波数が10Hzと仮定すると、ウエハの走査周波数として0.01Hzを下回れば、スポットビームが半導体ウエハ10の直径を通過する間のウエハの走査方向の移動量を0.3mm以下にすることができる。この移動量は、イオン注入量制御に求められる精度(1mm)を十分に下回っており、本実施の形態の一つの目的に合致する。この場合、スポットビーム軌道21は、図8の実線で模式的に示したように、半導体ウエハ10上をほぼ横方向に進むこととなる。したがって、既に図3で示したような2次元的に整然と並んだ略長方形形状で形状が同じ領域を多数個設定し、その領域ごとにイオン注入量を変えてトランジスタの種類を作り分けることが可能となる。
本実施の形態に係るイオン注入方法によると、半導体ウエハ10上に、素子領域としてその短辺が少なくとも15mmを超えない、略長方形形状の領域を、少なくとも40個以上形成することができる。また、本実施の形態に係るイオン注入方法によるイオン注入量制御によって、2次元的な半導体ウエハ10上においても、上記略長方形形状の領域のイオン注入量は、ウエハ面内の他の地点に比べて、10%以上イオン注入量が多い領域にすることもできるし、10%以上イオン注入量が少ない領域にすることもできるし、ウエハ面内の他の地点に比べて10%以上イオン注入量が多い領域と、ウエハ面内の他の地点に比べて10%以上イオン注入量が少ない領域を同時に形成することもできる。
また、以上の説明で明らかなように、本実施の形態では、通常ドーズ領域ではある一定のイオン電流量20とし、アンダードーズ領域ではイオン電流量20を急激に減少させ、ゼロにすることによって、イオン注入量を制御するので、イオン電流量急変時にイオン電流量20を直接測定する必要はない。すなわち、非接触ビーム電流計を用いることなく、イオン注入工程で、イオン注入量のみを変えて、その領域ごとにトランジスタの種類を作り分けることが可能となる。
さらに、本実施の形態では、半導体ウエハ生産性に関しても工夫をしており、本実施の形態によるイオン注入を準備するために必要な時間は、通常のイオン注入に比べて同程度となっているので、以下、説明する。
既に説明したように、図1に示したイオン注入装置100を用いてイオンを半導体ウエハ10に注入する場合には、半導体ウエハ10にイオンを注入する前に、ビームセットアップを行う。例えば、図1に示したイオン注入装置では、ビームセットアップ時にウエハ領域ビーム測定装置9を用いてイオンビーム測定を行い、しかる後に半導体ウエハ10をセットする。
ハイブリッドスキャンイオン注入装置では、ビームセットアップ時のイオンビームの走査周波数は、通常、ウエハへのイオン注入時のイオンビームの走査周波数と同一である。その理由は、通常のイオン注入では、ビームセットアップ時のイオンビームの走査周波数とウエハへのイオン注入時のイオンビームの走査周波数を変更する必要性がないからである。
しかし、本実施の形態に係るイオン注入方法を実行する際には、イオン注入工程で、イオン注入量のみを変えて、その領域ごとにトランジスタの種類を作り分けるために、ウエハへのイオン注入時のイオンビームの走査周波数に上限が設定される。既にこれまでの説明で明らかなように、このウエハへのイオン注入時のイオンビームの走査周波数の上限値は、諸条件により自由に設定、変更することはできない。
ここで、ビームセットアップ時のイオンビームの走査周波数として、ウエハへのイオン注入時のイオンビームの走査周波数と同一のイオンビームの走査周波数を用いると、ビームセットアップ時に必要とされる時間が長くなってしまう。例えば、イオンビームの走査周波数が10Hzの場合、スポットビームが半導体ウエハ10の直径を通過するには、速くとも50msecが必要となる。これは、イオンビームを走査する周波数として、ハイブリッドスキャンイオン注入装置で通常良く使われる300Hz程度の走査周波数を用いる場合に、スポットビームが半導体ウエハ10の直径を通過するために必要な時間、すなわち2msec以内に比べて、非常に大きい。イオンビームの走査周波数をさらに小さくした場合、例えば0.3Hzを用いる場合には、スポットビームが半導体ウエハ10の直径を通過するためには、1sec以上必要となる。ビームセットアップ時には、イオンビームの品質の確認や、狙いのイオンビーム電流量が得られているかの確認、さらにはイオンビームの時間的安定性確認を行うが、特に、イオンビームの品質の確認には、ビームスキャナー5を用いて、実際にイオンビームを走査し、例えば、図1に示したウエハ領域ビーム測定装置9を用いてイオンビーム測定を行う必要がある。すなわち、ビームセットアップ時のイオンビームの走査周波数として、ウエハへのイオン注入時のイオンビームの走査周波数と同一のイオンビームの走査周波数を用いると、イオンビームの走査に必要な時間が長くなってしまう。
ビームセットアップ時のイオンビームの走査周波数は、イオンビームの品質の確認や、狙いのイオンビーム電流量が得られているかの確認、さらにはイオンビームの時間的安定性確認を行うことが目的である。したがって、ウエハへのイオン注入時とビームセットアップ時で、イオンビームの品質の確認や、狙いのイオンビーム電流量が得られているかの確認、さらにはイオンビームの時間的安定性確認が行えるのであれば、ビームセットアップ時のイオンビームの走査周波数と、ウエハへのイオン注入時のイオンビームの走査周波数は同一でなくても良い。
このように、本実施の形態に係るイオン注入方法においては、イオンビームの品質の確認には、ビームスキャナー5を用いて、実際にビームを走査し、例えば、図1に示したウエハ領域ビーム測定装置9を用いてイオンビームの状態を測定する工程を備えている。しかしながら、イオンビームの走査周波数を変更しても、イオンビームの品質が変わらないようにビームスキャナー5を設計し、また設定すれば、ビームセットアップ時のイオンビームの走査周波数と、ウエハへのイオン注入時のイオンビームの走査周波数は同一でなくても良い。具体的には、本実施の形態では、ビームセットアップ時のイオンビームの走査周波数f1’を、ウエハへのイオン注入時のイオンビームの走査周波数f1より10倍以上大きくすることによって、イオン注入を準備するために必要な時間を、通常のイオン注入の場合に比べて同程度としている。
なお、本実施の形態では、イオンビームを走査する周波数が、0.3Hzから1350Hzの間で変更可能であるように構成されている。このうち、高周波数側の1350Hzはいままで説明してきた条件に対しては、オーバースペックである。すなわち、本実施の形態では、ウエハへのイオン注入時のイオンビームの走査周波数最大値閾値が10Hzであるので、その10倍以上のビームセットアップ時のイオンビームの走査周波数は高々100Hzであり、本実施の形態の構成では、それを十分過ぎるほど満たしている訳だが、これはさらにウエハ生産性を上げるための工夫である。
以上、説明してきたように、本実施の形態に係るイオン注入方法によって、半導体ウエハ10上に、略長方形形状でその各辺が15mm以下の、ウエハ面内の他の地点に比べてイオン注入量が多い領域およびイオン注入量が少ない領域を40個以上形成することができる。また、本実施の形態に係るイオン注入方法によって、半導体製造工程中のイオン注入工程において、レジストマスクを必要とすることなく、イオン注入量のみを変えて、その領域ごとにトランジスタの種類を作り分けることができる。
以下、本発明の幾つかの態様を挙げる。
ある態様のイオン注入方法は、ハイブリッドスキャンによるイオン注入方法であって、イオンビームを走査しながらウエハの領域に応じてイオン注入量を変化させるイオン注入工程を備える。イオン注入工程は、ウエハの第1の素子領域をイオンビームで走査してイオンを注入する工程と、第1の素子領域を走査したイオンビームをウエハ上から退避させる工程と、第1の素子領域に隣接し、該第1の素子領域の次にイオンが注入される第2の素子領域をイオンビームで走査する前に、退避させていたイオンビームをウエハ上に復帰させる工程と、を含む。第1の素子領域と第2の素子領域との間の許容される過渡領域の幅がX1[mm]、一スキャンで第1の素子領域および第2の素子領域を含む領域を走査するイオンビームの走査振幅をL1[mm]、イオンビームをウエハ上から退避させてからウエハ上に復帰させるまでの時間をt[s]、とすると、イオンビームの走査周波数f1[Hz]は、f1≦X1/(2L1×t)を満たすように設定されている。
この態様によると、イオンビームの走査方向における実際の過渡領域の幅を抑えつつイオン注入量の異なる領域を精度良く形成できる。ここで、「イオン注入量を変化させる」とは、意図的に各素子領域で異なるイオン注入量を実現する場合だけでなく、素子領域の間の過渡領域で結果的にイオン注入量が変化している場合も含まれる。
イオンビームの走査周波数f1は、10Hz以下であっても良い。これにより、イオンビームの走査方向における実際の過渡領域の幅を更に抑えられるため、素子形成領域として使用できるウエハの有効面積が増え、一枚のウエハから作製される素子の数が増える。その結果、コストの低減が図られる。
ウエハの走査方向に隣接する素子領域同士の間の許容される過渡領域の幅がY1[mm]、ウエハの走査振幅をL2[mm]とすると、ウエハの走査周波数f2[Hz]は、f2≦(Y1/L2)×f1を満たすように設定されていても良い。これにより、ウエハの走査方向における実際の過渡領域の幅を抑えつつイオン注入量の異なる領域を精度良く形成できる。
ウエハの走査周波数f2は、0.01Hz以下であっても良い。これにより、ウエハの走査方向における実際の過渡領域の幅を更に抑えられるため、素子形成領域として使用できるウエハの有効面積が増え、一枚のウエハから作製される素子の数が増える。その結果、コストの低減が図られる。
イオン注入工程より前に、イオンビームを走査しながら走査領域におけるイオンビームの状態を測定する測定工程を更に備えても良い。測定工程におけるイオンビームの走査周波数f1’は、イオン注入工程におけるイオンビームの走査周波数f1の10倍以上に設定されている。これにより、イオン注入に直接寄与しない工程における時間が節減でき、生産性が向上する。
本発明の別の態様は、イオン注入装置である。この装置は、図1に示すように、ウエハを保持する保持部としてのメカニカルスキャン装置11と、ウエハの表面でイオンビームを走査するように構成された走査部としてのビームスキャナー5と、保持部をイオンビームの走査方向と交差する方向へ移動させる移動部としてのメカニカルスキャン装置11と、イオンビームを走査しながらウエハの領域に応じてイオン注入量を変化できるように、ビームスキャナー5およびメカニカルスキャン装置11を制御する制御部110と、を備える。制御部110は、ウエハの第1の素子領域をイオンビームで走査してイオンを注入し、第1の素子領域を走査したイオンビームをウエハ上から退避させ、第1の素子領域に隣接し、該第1の素子領域の次にイオンが注入される第2の素子領域をイオンビームで走査する前に、退避させていたイオンビームをウエハ上に復帰させる、ように走査部を制御し、走査部は、第1の素子領域と第2の素子領域との間の許容される過渡領域の幅がX1[mm]、一スキャンで第1の素子領域および第2の素子領域を含む領域を走査するイオンビームの走査振幅をL1[mm]、イオンビームをウエハ上から退避させてからウエハ上に復帰させるまでの時間をt[s]、とすると、イオンビームの走査周波数f1[Hz]が、f1≦X1/(2L1×t)を満たすように該イオンビームでウエハを走査する。
この態様によると、イオンビームの走査方向における実際の過渡領域の幅を抑えつつイオン注入量の異なる領域を精度良く形成できる。
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、各実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
1 イオン源、 2 引出電極、 3 質量分析磁石装置、 4 質量分析スリット、 5 ビームスキャナー、 6 パラレルレンズ、 7 角度エネルギーフィルタ、 8 ドーズカップ、 9 ウエハ領域ビーム測定装置、 10 半導体ウエハ、 11 メカニカルスキャン装置、 12 静電レンズ、 13 ビームダンプ電極、 15 半導体素子、 16 トランジスタA製作領域、 17 トランジスタB製作領域、 20 イオン電流量、 100 イオン注入装置、 110 制御部。
Claims (6)
- ハイブリッドスキャンによるイオン注入方法であって、
イオンビームを走査しながらウエハの領域に応じてイオン注入量を変化させるイオン注入工程を備え、
前記イオン注入工程は、
ウエハの第1の素子領域をイオンビームで走査してイオンを注入する工程と、
前記第1の素子領域を走査したイオンビームをウエハ上から退避させる工程と、
前記第1の素子領域に隣接し、該第1の素子領域の次にイオンが注入される第2の素子領域をイオンビームで走査する前に、退避させていたイオンビームをウエハ上に復帰させる工程と、を含み、
前記第1の素子領域と前記第2の素子領域との間の許容される過渡領域の幅がX1[mm]、
一スキャンで前記第1の素子領域および前記第2の素子領域を含む領域を走査するイオンビームの走査振幅をL1[mm]、
前記イオンビームをウエハ上から退避させてからウエハ上に復帰させるまでの時間をt[s]、とすると、
前記イオンビームの走査周波数f1[Hz]は、
f1≦X1/(2L1×t)
を満たすように設定されている、
ことを特徴とするイオン注入方法。 - 前記イオンビームの走査周波数f1は、10Hz以下であることを特徴とする請求項1に記載のイオン注入方法。
- ウエハの走査方向に隣接する素子領域同士の間の許容される過渡領域の幅がY1[mm]、
前記ウエハの走査振幅をL2[mm]とすると、
前記ウエハの走査周波数f2[Hz]は、
f2≦(Y1/L2)×f1
を満たすように設定されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のイオン注入方法。 - 前記ウエハの走査周波数f2は、0.01Hz以下であることを特徴とする請求項3に記載のイオン注入方法。
- 前記イオン注入工程より前に、イオンビームを走査しながら走査領域におけるイオンビームの状態を測定する測定工程を更に備え、
前記測定工程におけるイオンビームの走査周波数f1’は、前記イオン注入工程におけるイオンビームの走査周波数f1の10倍以上に設定されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のイオン注入方法。 - ウエハを保持する保持部と、
前記ウエハの表面でイオンビームを走査するように構成された走査部と、
前記保持部をイオンビームの走査方向と交差する方向へ移動させる移動部と、
イオンビームを走査しながらウエハの領域に応じてイオン注入量を変化できるように、前記走査部および前記移動部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
ウエハの第1の素子領域をイオンビームで走査してイオンを注入し、
前記第1の素子領域を走査したイオンビームをウエハ上から退避させ、
前記第1の素子領域に隣接し、該第1の素子領域の次にイオンが注入される第2の素子領域をイオンビームで走査する前に、退避させていたイオンビームをウエハ上に復帰させる、
ように前記走査部を制御し、
前記走査部は、
前記第1の素子領域と前記第2の素子領域との間の許容される過渡領域の幅がX1[mm]、
一スキャンで前記第1の素子領域および前記第2の素子領域を含む領域を走査するイオンビームの走査振幅をL1[mm]、
前記イオンビームをウエハ上から退避させてからウエハ上に復帰させるまでの時間をt[s]、とすると、
前記イオンビームの走査周波数f1[Hz]が、
f1≦X1/(2L1×t)
を満たすように該イオンビームでウエハを走査する、
ことを特徴とするイオン注入装置。
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2012
- 2012-07-24 JP JP2012163318A patent/JP2014022347A/ja active Pending
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