JP2014009227A - 消毒液の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】水に、少なくとも塩基性を有する高濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を加え、有効塩素濃度を1mg/L〜10,000mg/Lとする塩素水からなる消毒液の製造方法であって、前記塩素水に、中和及びpH緩衝剤として酢酸を、更に消毒補助剤として酢酸に対し0.1重量%〜1重量%相当の総含量になるピルビン酸、シュウ酸、オキサル酢酸、アジピン酸のうち少なくとも1種の有機酸を事前調合した混合液を加えて、pHが略5〜6になるようにした工程を有することを特徴とする。
【選択図】図1
Description
従って、時間経過とともに顕著になる有効塩素濃度の低下は、次亜塩素酸が酸素を発生して分解したり、塩素酸(水中では同イオン)に転化するためと考えられている。また、強塩基性消毒剤の使用に伴うpHの上昇によって殺菌力の低下も招く。
それゆえ、従来から、特許文献1に記載されているように、次亜塩素酸ナトリウム水溶液に臭化物を添加してその安定性を図ること等が試みられている。
発明者の永年の研究で、次亜塩素酸イオンの3分子が持つ外殻電子がゆっくり移動して塩素酸イオンの1分子と塩化物イオン(Cl−)の2分子に転化する不均化反応を起こし、失効することも判明している。
一方、次亜塩素酸ナトリウム液のpHを酸性領域にすれば、塩素酸イオンの生成は抑えられるが、消毒液のpH緩衝力が弱ければ強酸と誤って混合したときpHが一気に低下し塩素ガス(Cl2 )を発生するpH境界である4.0を下回るリスクが増大する。従って、塩素剤をただ弱酸性になるよう中和して済むことではない。
また、消毒液処方では、残留アルカリを有していれば、意図的な塩添加は不要である。
前記特許文献2乃至特許文献5に載る酢酸以外の無機酸及び有機酸を敢えて選択しなくても、酢酸と原液中のアルカリから生成する非解離の酢酸塩と電離した酢酸イオンとで形成される解離平衡、すなわちpH緩衝効果によりpHも比較的安定するからである。
pHが6以下にpKaを有する有機酸で中和しただけでは、この目的を果たすことはできない。また、調製中に極微量の錆等異物が極微量混入したり、保存容器に開封・開栓等により保存容器内に光入射する可能性を完全に排除することも困難であるから、有機若しくは無機の酸が原液中の塩素を消費する可能性も皆無にはできない。
次に、該ジカルボン酸類やケトカルボン酸類は、シュウ酸を除き光照射下でも塩素消費が極少ないことが発明者の研究で判明している。例外的にシュウ酸は、紫外線照射下で次亜塩素酸によって二酸化炭素と水に完全分解する物質と分かっているから、処方の際は注意しなければならない。
複数の有機酸から成るpH緩衝液は、各酸イオンと各酸塩との解離平衡により緩衝効果を発揮するから単独の酸より複雑に作用し有効塩素の不均化反応も併せて抑制する。
(1)水に、少なくとも塩基性を有する高濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を加え、有効塩素濃度を1mg/L〜10000mg/Lとする塩素水からなる消毒液の製造方法であって、
前記塩素水に、中和およびpH緩衝剤として酢酸、更に消毒補助剤として酢酸に対し0.1重量%〜1重量%相当の総含量になるピルビン酸、シュウ酸、オキサル酢酸、アジピン酸のうち少なくとも1種の有機酸を事前調合した混合液(以下、有機酸混液と略す)を加えて、pHが略5〜6になるようにした工程を有することを特徴とする消毒液の製造方法。
前記塩素剤原液としては、社団法人日本水道協会の規格等に適合した、遊離アルカリ2%以下の次亜塩素酸ナトリウム液を用いる。これにより、遊離アルカリ濃度を制限し、塩素酸イオンの生成をできる限り抑える。また、流通及び保管に要する日数をできる限り短くして希釈し、続いて中和作業を行うことで消毒液の取り扱いを容易にする。
更に、原液の希釈水として、残留塩素濃度規定が法制化されている水道水を中空糸膜でろ過して微細な異物を取り除くか、逆浸透膜でろ過した水を塩素消毒して水道水と同等の遊離残留塩素濃度を検出できるようにした水を用いる。また、水道水等希釈水の移送配管及び貯留容器に次亜塩素酸による酸化処理を実施して、被酸化物の付着及び残留も未然に防止する。
但し、事前調合した有機酸混液の全有機酸濃度を厳密に定めなくても大きな支障はないが、前記工程作業の際に扱い易い5%前後の濃度とする。
(2)前記有機酸混液を事前調合する際、ピルビン酸に代えて乳酸を調合し、塩素水中における次亜塩素酸との化学反応で乳酸をピルビン酸に転化させて消毒補助剤とする(1)に記載の消毒液の製造方法。
(3)前記消毒液のpHが最終的に5.0〜6.0になるように、前記消毒液に有機酸混液又は、アルカリ剤を再度加え、有機酸塩を意図的に加えることをしないことを特徴とする(1)に記載の消毒液の製造方法。
但し、有効塩素濃度の微調整に(1)に記載の高塩基性の塩素剤原液を用いるから、pHの微調整に該塩素剤原液をアルカリ剤として代用して差し支えない。
更に、遊離有効塩素である次亜塩素酸が何らかの原因で分解しpH低下する現象が起きても、緩衝剤となる有機酸混液の成分のうち特に酢酸が確実に働いて、pH変動を緩衝・抑制することで分解を抑制する。
加えて、消毒補助剤として該有機酸混液に添加された有機酸は、同時に、分解促進の原因となりうる金属酸化物を完全除去できていなくても、これを溶解して金属イオンとし、触媒効果を失わせることが併せて可能となる。
従って、有効塩素の分解を触媒する金属や添加剤入りのプラスチックを接液材料として用いていない遮光容器に、該消毒液を充填すれば、有効塩素濃度の安定化及び長期間維持を図ることが可能となり、商品化・流通も容易になる。
但し、生成物はピルビン酸(CH3COCOOH)への転化に止まり、二酸化炭素と水にまで分解しないことが発明者の研究で分かっているため、乳酸はピルビン酸の代用物質となる。
また、前記消毒補助剤の総添加量は、中和及びpH緩衝剤の酢酸に比較して極少ないから、有機酸混液を添加した直後の有効塩素濃度も僅かに減少するに止まる。
一方、該消毒液中に完全遮光下で全く塩素消費しない、ケトカルボン酸に属するピルビン酸、オキサル酢酸(HOOCCOCH2COOH)、又はジカルボン酸に属するシュウ酸、オキサル酢酸、アジピン酸(HOOC(CH2)4COOH)を微量添加することで、特定できない消毒相手の各種病原体が増殖する際に不可欠な、グリコーゲン解糖系及びクエン酸回路の物質代謝バランスを崩すことで不活性化が可能となる。
また、微生物の保有酵素が次亜塩素酸との化学反応で不活性化されるため、代謝回路は働かず、消毒補助剤の成分である有機酸種はことごとく残留したまま、老廃物としての毒性すなわち消毒能を補助的に発揮する。
因みに、ピルビン酸は、上記クエン酸回路の前段或いは肝臓における乳酸からの糖新生の初期段階に位置する物質である。また、オキサル酢酸(生化学ではオキザロ酢酸とも言う)はクエン酸回路の循環終段或いは糖新生では上記ピルビン酸の次に位置する物質である。従って、消毒補助剤としたピルビン酸以下の有機酸は、酵素なしでは代謝されないため微生物等増殖阻止の効果を発揮することになる。
当然、該有機酸混液は単なる中和剤と異なっており、酢酸に対し0.1重量%〜1重量%相当の消毒補助剤総含量であっても、金属酸化物の溶解及び微生物の不活性化に十分な対応量になる。また、複数有機酸の相互作用で有効塩素の不均化反応抑制にもなる。
まず、図1に示されるように、水道給水栓1からの水道水を中空糸膜ろ過装置2に導入してろ過し、ろ過後の水を希釈水貯蔵容器3に貯蔵する。無論のこと、希釈水貯蔵容器3は塩素水による事前洗浄をしてある。希釈水製造工程で膜ろ過を行うのは、次亜塩素酸が高い吸着能を持つ多孔質微粒子や藻の芽胞等の酵素保有微生物(生体)等によって分解促進されるからで、1μm以下の固形物も徹底して除去する必要がある。
尚、オキサル酢酸以下の有機酸も、完全遮光下では次亜塩素酸を消費しない、ことを発明者は確認済みである。いずれにせよ、該有機酸混液に、ピルビン酸以下の消毒補助剤は添加量の多少を問わず不可欠となる。
請求項1の条件を満たす表1処方等の有機酸混液を消毒液調製容器6の希釈液に添加し、pH計11を見ながらpHが略5〜6になったら開閉弁9を閉じる。
また、次亜塩素酸ナトリウム原液の有効塩素濃度及び残留アルカリ度には、ロット毎に許容された幅がある。加えて、入手するまでの流通段階で有効塩素濃度ばかりか塩素酸イオン濃度までも変化し、弱酸性にするための酸添加量は調製作業を終えるまで確定できない。従って、有機酸混液の添加量を示しても無意味である理由から、以下の説明ではこれに代えpH値を記載した。消毒効能は、一義に、消毒時点の有効塩素濃度とpH値によって決まり、両条件値を示すことで概略の効能を予測することもできる。
但し、調製保管時の消毒液pHは、類似の市販品実施に鑑み、消毒液(1)及び消毒液(2)は略中性の7前後、実施例1で調製した消毒液(3)は5.4とした。また、実験に供するまで、いずれの消毒液も完全遮光して常温で保存し、条件の一致を図った。
該3種の消毒液比較の為、略中性の消毒液には同じ0.01モル/Lの硫酸をpHが5.4になるまで添加し、滴定開始時のpH値を一致させた。また、滴定の終了はpHが4.0を超えて低下し、3.5に達した時点とした。
次亜塩素酸(HOCl)は、pHが略4以下になると分子状塩素(Cl2)の形態に変化を始めるので、塩素ガス発生のリスク回避を前提にpHが4.0になるまでに要した該硫酸滴定量で比較するものとし、表4の結果になった。
表4の結果は、本願実施例1の有機酸混液を用いて調製した消毒液(3)には、無機酸中和品と比較して7〜10倍のpH緩衝力が備わっていることを証明している。
そこで、先ず上記***試験後の有効塩素濃度減少率を計算してみた、次に、該減少の一因である消毒液中の塩素酸イオンと遊離有効塩素とを、前者は上記測定終了後濃度、後者は初期濃度で計算式に代入し転化率をみた。該減少率及び転化率は、***条件下の消毒液の効能を予知させるに十分な結果となった。
表5は、実験終了時の有効塩素濃度〔mg/L〕減少量を初期濃度で除した減少率である。塩素剤の殺菌力は、pHを一定にすれば、有効塩素濃度と接触時間との乗数(CT値)で概略決まってしまうから、減少率をみることは失効速度をみることになる。
一方、塩酸で中和した消毒液は、調製時のpHが略中性の7前後であったことで、有効塩素の15〜20%もが保管中に塩素酸イオンに転化済みであったことを示唆する。
保存条件:ダンボール内ポリエチレン製容器保存、容器20L、液温28〜32℃
尚、表7上段記載数値で56日経過時のpH5.2は測定誤差範囲内にある。
比較として、中和及びpH緩衝として5%の酢酸のみを使用した場合を示す。
中和及びpH緩衝に酢酸を単独で用いても3〜4ヶ月の保存期間であれば有効塩素濃度減少は約2%で、商品流通に支障はないとみることもできる。しかし、使用前に失効が確認された返品率を無視できない事態になれば、長期安定性を保証するため別種の有機酸を添加・混合することが不可欠となる。
表8の結果は、実施例1乃至実施例3の有機酸混液を用いて調製した消毒液が1年を経過しても、有効塩素濃度及びpH値に変化は殆どなく安定であることを証明する。
また、調製に用いた原液の同様実験では、pH値は12前後で安定しているものの、8ヶ月後の有効塩素濃度は初期濃度の約30%まで低下した事例が殆どであった。
5%の酢酸のみを使用した比較例と対照すれば、酢酸がpH緩衝の主役であることに相違はないが、酢酸に塩素を消費しないケトカルボン酸又はジカルボン酸を混合した方が有効塩素並びにpHの安定化が増す。実施例1でピルビン酸等の酢酸に対する総混合率は0.5%強、実施例2で同0.9%強、実施例3で同0.1%強にすぎないが、稀に混入し早期分解の原因となる藻の増殖を抑え、また、錆を溶解して吸着による触媒作用を阻止するには十分な含量である。そこで、混合し調製する該有機酸の酢酸に対する該有機酸総含量0.1重量%を有意の下限とし、実施例2を根拠に同1%を上限とした。
但し、酢酸に対する該有機酸総含量が1重量%を超えて処方された場合でも、調整後の消毒液効能や化学的特性に大きな差異が生じるとは考えられない。しかし、原液の残留アルカリを中和しpH緩衝力の事前算定が容易な酢酸の特性に大きく影響する高い総含量では、調整後の消毒液につき成分表示等品質保証の再検討を余儀なくされる。
表5及び表6の結果も併せ考察すると、pHを5.0〜6.0に厳格な調製を行い、pHの変動を抑え、且つ有効塩素消失の原因を徹底的に除かないと、有効塩素濃度が短時間のうちに初期濃度の10%を超えて低下した不良品がでることが明白になった。
専門検査機関に試験依頼し、適正な方法により報告された結果のみを以下に示す。
尚、H1N1ウイルスの不活性化試験では、該消毒液添加15秒後から「不検出」の結果が出た。従って、不活性化力は極めて高く、前記CT値を約20と算定できた。
専門検査機関に試験依頼し、適正な方法により報告された結果のみを以下に示す。
検査機関が選択した試験方法により、試料1mL当たりの生菌数〔cfu/mL〕を測定した。菌種毎に該消毒液との接触時間が異なるので、後尾に時間を記載してある。
但し、この効果試験は、各菌種を培養後、遠心分離、検体接種後に放置、培地に回収し4段階希釈して生菌数測定の各工程を経ており、消毒液の実用実態と同じではない。
表9及び表10の結果は、本発明の消毒液がウイルス、細菌及びカビ等の病原体種を問わず不活性化の著効を示し、所望の効果が得られることを証明している。
また、実施例2及び実施例3の処方による有機酸混液を用いて調製した本発明消毒液の効果試験でも同じ結果を得ており、有効塩素濃度を維持すれば効果にも差異はない。
また、本発明の消毒液が著効を示す一事例として、パセリについては浸漬だけでなく全体に噴霧した場合の結果も表12に載せた。因みに、パセリやホウレン草等の青物野菜は特に根の部分に、本発明の消毒補助剤処方の一つに挙げるシュウ酸を多く含んでいる。消毒補助剤処方に挙げる一連の有機酸は、動植物の代謝で産生される老廃物であるから、微量の含有を殊更警戒する必要はない。
ヒト皮膚一次刺激性試験のパッチテストでも被験者全員「反応なし」、衣服への影響試験でも特別視される悪影響は「なし」となったから、安全面での問題もない。
ここまでに効果試験の結果を総括すれば、本発明の消毒液は、細菌からウイルスに至るまで、その大小を問わずほぼ完ぺきに不活性化できることを証明している。
水に、日本水道協会規格に適合の12%次亜塩素酸ナトリウム液10Lを加えて希釈し、液量を100L弱とした。次に、原液中の残留アルカリを相殺中和する為に塩酸を加え、pHを略7とした。更に実施例1に記載の酸度4.3%・有機酸混液4Lを加えpHを5.8にし、消毒液の全量が100Lになるよう調製した。
該消毒液を薬液タンクに貯蔵し、浴槽水の遊離残留塩素濃度が0.4〜1.0mg/Lに維持されるよう定量ポンプを駆動して従来通りの水質管理を行ったところ、以前の塩素剤注入で生じていた「浴槽水pHの8.0超過」と「大腸菌群の1種であるエンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)の散発的検出」の問題は起きなくなり、懸案事項は解決した。すなわち、浴槽水pHを常時7〜8に維持できるようになり、遊離塩素の殺菌力低下を抑えることで、大腸菌検査でも毎回「陰性」の結果と好転した。
また、実施例4のような用途では、有機酸混液の添加操作を使用の都度行うから、一週間以上の長期保存はしない。従って、有効塩素濃度が1%(10,000mg/L)の消毒液でも実施は優に可能である。
従って、本発明による消毒液は、病原微生物・ウイルスによる感染症予防の為に、野菜・果物等の食材や食器・調理器具の消毒の為に、手を触れる扉・窓・床・台所等の建築備品、家具、家庭電化製品や衣服の表面はもとより、小規模浴槽等の消毒にまで広く利用できる。また、用途に応じて本発明による消毒液を適宜希釈して用いることも可能である。
2 中空糸膜ろ過装置
3 希釈水貯蔵容器
4 次亜塩素酸ナトリウム原液貯蔵容器
5 有機酸混液貯蔵容器
6 消毒液調製容器
7〜9 各容器に接続した開閉弁
10 かくはん機
11 pH計
Claims (3)
- 水に、少なくとも塩基性を有する高濃度の次亜塩素酸ナトリウム水溶液を加え、有効塩素濃度を1mg/L〜10,000mg/Lとする塩素水からなる消毒液の製造方法であって、
前記塩素水に、中和及びpH緩衝剤として酢酸を、更に消毒補助剤として酢酸に対し0.1重量%〜1重量%相当の総含量になるピルビン酸、シュウ酸、オキサル酢酸、アジピン酸のうち少なくとも1種の有機酸を事前調合した混合液を加えて、pHが略5〜6になるようにした工程を有することを特徴とする消毒液の製造方法。 - 前記有機酸の混合液をつくる際に、前記塩素水中における次亜塩素酸との化学反応により前記消毒補助剤のピルビン酸を生成させる目的で、ピルビン酸に代えて乳酸を配合する請求項1記載の消毒液の製造方法。
- 前記消毒液のpHが最終的に5.0〜6.0になるように、前記消毒液に有機酸の混合液又はアルカリ剤を再度加え、有機酸塩を意図的に加えることをしないことを特徴とする請求項1記載の消毒液の製造方法。
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