JP2014004502A - スラリー処理プラントの設計方法およびスラリー処理プラント - Google Patents
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Abstract
【課題】フィルタケーキ、乾燥条件と乾燥方法との相性を考慮してスラリー処理工程を容易に最適化する。
【解決手段】スラリー処理プラントの設計方法は、スラリーをフィルタプレス内で機械的に脱水してフィルタケーキを形成し、フィルタプレス内の圧力を上限圧力200ミリバール以下に減圧し、フィルタプレスに設けられたフィルタプレートの温度を下限温度40℃以上に保ってフィルタケーキを乾燥させる脱水乾燥装置を用いて、脱水時間Fと乾燥時間Dとを測定し、脱水時間Fおよび乾燥時間DがD>mF(m=10〜14)の関係を満たす場合には、脱水乾燥装置とは異なる種類の乾燥方法を用いる乾燥装置をスラリー処理プラントに設置することを決定し、脱水時間Fおよび乾燥時間DがD<nF(n=5〜7)の関係を満たす場合には、脱水乾燥装置をスラリー処理プラントに設置して乾燥装置を設置しないことを決定する。
【選択図】図2
【解決手段】スラリー処理プラントの設計方法は、スラリーをフィルタプレス内で機械的に脱水してフィルタケーキを形成し、フィルタプレス内の圧力を上限圧力200ミリバール以下に減圧し、フィルタプレスに設けられたフィルタプレートの温度を下限温度40℃以上に保ってフィルタケーキを乾燥させる脱水乾燥装置を用いて、脱水時間Fと乾燥時間Dとを測定し、脱水時間Fおよび乾燥時間DがD>mF(m=10〜14)の関係を満たす場合には、脱水乾燥装置とは異なる種類の乾燥方法を用いる乾燥装置をスラリー処理プラントに設置することを決定し、脱水時間Fおよび乾燥時間DがD<nF(n=5〜7)の関係を満たす場合には、脱水乾燥装置をスラリー処理プラントに設置して乾燥装置を設置しないことを決定する。
【選択図】図2
Description
本発明は、スラリー処理プラントの設計方法およびスラリー処理プラントに関する。
スラリー処理プラントは、スラリーに含まれる固体部分を液体部分から分離するため、あるいは、スラリーから液体部分を除去し、重量軽減を図るために使用される。スラリー処理プラントは、例えば、金属酸化物、金属水酸化物(チタン、亜鉛、ビスマス、フェライト、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、コバルト、ニッケル、銅、鉄など)、染料、顔料、カーボン、炭酸カルシウム、電池材料、半導体廃水、トナー、ファインケミカル製品、食品飲料醸造業界、樹脂粒子、各種工場廃水、水処理、上下水、し尿のスラッジ、有機排水、メッキ業界、ガラス業界の廃水、ゼオライト、陶土などの脱水乾燥処理に用いられる。
かかるスラリー処理プラントに関する従来技術として、例えば特許文献1には、スラリーをフィルタプレスによって機械的に脱水してフィルタケーキを形成し、さらにフィルタケーキをフィルタプレスの中に残したまま、フィルタプレス内の圧力を上限圧力200ミリバール以下に減圧し、フィルタプレートの温度を下限温度40℃以上に保って乾燥させる装置が記載されている。以下の説明では、上記の特許文献1に係る装置を「R装置」と称する。R装置は、主要機器であるフィルタプレスと真空機器、加熱機器等からなる。
乾燥方法は数多く存在し、それぞれの乾燥方法において、被乾燥物、乾燥条件との間に相性がある。すなわち、乾燥方法と被乾燥物、乾燥条件との相性がよい場合、乾燥効率が高く、比較的短い時間で乾燥を完了させることが可能である。逆に、乾燥方法、乾燥条件と被乾燥物との相性が悪い場合、乾燥を完了させるのに極めて長い時間が必要になる。上記のR装置におけるフィルタケーキの乾燥方法は、静置型真空加熱乾燥法と呼ばれるものであるが、この乾燥方法と相性が悪いフィルタケーキがスラリーの脱水によって生成される場合、あるいは、相性が悪い乾燥条件が設定されている場合もある。
フィルタケーキと静置型真空加熱乾燥法との相性が悪い場合、R装置での乾燥効率は著しく低い。このような場合には、R装置とは異なる、よりフィルタケーキとの相性がよい乾燥方法を用いる乾燥装置を設置し、フィルタケーキの乾燥工程を最初からこの乾燥装置で実施した方がよい。なお、以下の説明で単に「乾燥装置」という用語を用いた場合、R装置で用いている静置型真空加熱乾燥法とは異なる種類の乾燥方法を用いる乾燥装置を意味するものとする。しかしながら、乾燥時間がどの程度長い場合に「相性が悪い」と判定して乾燥装置を設置すればよいかは明確でなく、この点でスラリー処理プラントの最適な設計は容易ではなかった。
そこで、本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、フィルタケーキと乾燥方法との相性を考慮してスラリー処理工程を容易に最適化することが可能な、新規かつ改良されたスラリー処理プラントの設計方法およびスラリー処理プラントを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、スラリー処理プラントの設計方法において、スラリーをフィルタプレス内で機械的に脱水してフィルタケーキを形成し、フィルタプレス内の圧力を上限圧力200ミリバール以下に減圧し、フィルタプレスに設けられたフィルタプレートの温度を下限温度40℃以上に保ってフィルタケーキを乾燥させる脱水乾燥装置を用いて、スラリーを脱水してフィルタケーキを形成するまでの脱水時間Fと、フィルタケーキを目標含水率まで乾燥させる乾燥時間Dとを測定し、脱水時間Fおよび乾燥時間DがD>mF(m=10〜14)の関係を満たす場合には、脱水乾燥装置とは異なる種類の乾燥方法を用いる乾燥装置をスラリー処理プラントに設置することを決定し、脱水時間Fおよび乾燥時間DがD<nF(n=5〜7)の関係を満たす場合には、脱水乾燥装置をスラリー処理プラントに設置して乾燥装置を設置しないことを決定することを特徴とする、スラリー処理プラントの設計方法が提供される。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、上記の設計方法を用いて設計されたスラリー処理プラントが提供される。
上記の構成によれば、R装置における脱水時間Fと乾燥時間Dとの関係に基づいて、スラリー処理プラントにおける装置構成が概略判定される。従って、装置構成についての詳細な検討を行うのは、nF≦D≦mFの場合だけでよい。
以上説明したように本発明によれば、フィルタケーキ、乾燥条件と乾燥方法との相性を考慮してスラリー処理工程を容易に最適化することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
(スラリー処理プラントの構成)
図1は、本発明の実施形態に係るスラリー処理プラントの構成を示す図である。
図1は、本発明の実施形態に係るスラリー処理プラントの構成を示す図である。
スラリー処理プラント1には、チャンバー型フィルタプレート(ろ板)を有するフィルタプレス2が設けられる。フィルタプレス2にはスラリー供給システム3が接続されており、これによってスラリーがフィルタプレス2に供給される。スラリーがフィルタプレス2に充填されることによって生じるろ過液は、フィルタプレスからろ過液ライン4を経由して排出される。
フィルタプレス2がスラリーをろ過、洗浄、圧搾によって機械的に脱水することで、フィルタプレス2内にフィルタケーキが形成される。ここで、ろ過液ライン4に接続された真空ポンプ5を用いて、脱水後にそのままチャンバー内に静置されたフィルタケーキからの蒸発蒸気のうち凝縮器で凝縮されなかった蒸気と、チャンバー内の残留空気、および真空運転中にフィルタプレスのプレート間から少量漏れ込む空気をあわせて吸引し、フィルタプレス2内の圧力を200ミリバール以下に減圧し、かつ減圧することでチャンバー内での水の沸点を下げた状態で、加熱システム6を用いてフィルタプレートを40℃以上に加熱し、フィルタケーキ中の水分を蒸発させてフィルタケーキが乾燥し、乾燥ケーキ8が得られる。
スラリー処理プラント1には、乾燥装置7が設置されうる。乾燥装置7は、例えば、対流伝熱乾燥機、伝導伝熱乾燥機、輻射伝熱乾燥機、マイクロ波乾燥機、加熱水蒸気乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機、ヒートポンプ利用の乾燥機、超音波乾燥機、油熱媒体乾燥機、超臨界乾燥機、加熱機能部分に電熱加熱材の面溶射またはパイプ内面もしくは外面にある電熱加熱材の溶射を用いた乾燥機など、フィルタプレス2で用いられる静置型真空加熱乾燥法とは異なる乾燥方法を用いるものである。
乾燥装置7の設置の有無は、以下で説明する設計方法に従って決定される。乾燥装置7を設置する場合、フィルタプレス2で形成されたフィルタケーキを、乾燥装置7に移して乾燥させ、乾燥ケーキ8を得る。フィルタケーキをフィルタプレス2である程度乾燥させた後に乾燥装置7に移すか、フィルタプレス2では乾燥させずに乾燥装置7に移すかも、上記の設計方法に従って決定されうる。
(設計方法の処理フロー)
図2は、本発明の実施形態に係るスラリー処理プラントの設計方法を示すフローチャートである。このフローチャートは、設計方法のうち、R装置および乾燥装置に関する装置構成の決定の手順を示すものである。これ以外の部分については、例えば従来の設計方法と同様の手順を採用することが可能であるため、詳細な説明を省略する。
図2は、本発明の実施形態に係るスラリー処理プラントの設計方法を示すフローチャートである。このフローチャートは、設計方法のうち、R装置および乾燥装置に関する装置構成の決定の手順を示すものである。これ以外の部分については、例えば従来の設計方法と同様の手順を採用することが可能であるため、詳細な説明を省略する。
本実施形態に係る設計方法では、R装置のフィルタプレスに供給されたスラリーが機械的に脱水されてフィルタケーキが形成されるまでの時間である脱水時間Fと、R装置のフィルタプレス内でフィルタケーキを目標含水率まで乾燥させるまでの時間である乾燥時間Dとを用いて判定が実行される。従って、本実施形態に係る設計方法の実施にあたっては、プラントで処理されるスラリーについて、R装置を用いて、脱水時間Fおよび乾燥時間Dを予め測定しておく(ステップS101)。
設計にあたっては、まず、脱水時間Fと乾燥時間DとがD>mFの関係にあるか否かを判定する(ステップS103)。mは、サイクルタイムの短縮によりR装置を大型化しなくて済むことによるコストの低下と、新たに乾燥装置を設置することによるコストの上昇とを考慮して設定される係数である。ケースによってコストの決定要因が異なるため、係数mの値はケースによって変動するが、本発明者らがスラリー処理プラントの設置に係る試験の蓄積から得た知見によれば、適切な係数mの値は10〜14の範囲にある。
ステップS103でD>mFであると判定された場合、乾燥装置を設置することを決定する(ステップS105)。この場合、スラリーの脱水によって形成されたフィルタケーキは、最終的には乾燥装置を用いて目標含水率まで乾燥される。フィルタケーキをR装置である程度乾燥させてから乾燥装置に移動させるか、R装置では乾燥させずに乾燥装置に移動させるかは、例えばフィルタケーキの性質に応じて決定される。
例えば、フィルタケーキが、脱水後の状態において、せん断力が加わった場合にゲルからゾルに変化するような性質を有する場合には、そのような変化が生じない含水率までR装置でフィルタケーキを乾燥させることが好ましい。一方、フィルタケーキを最初から乾燥装置で乾燥させることが可能である場合には、R装置を、フィルタケーキの乾燥のための加熱システムなどを有さない脱水装置に置き換えることができる。
上記のステップS103でD≦mFであると判定された場合、さらに、脱水時間Fと乾燥時間Dとが、D<nFの関係にあるか否かを判定する(ステップS107)。nも、サイクルタイムの短縮によりR装置を大型化しなくて済むことによるコストの低下と、新たに乾燥装置を設置することによるコストの上昇とを考慮して設定される係数である。係数mの値と同様に、係数nの値もケースごとに変動するが、本発明者らがスラリー処理プラントの設置に係る試験の蓄積から得た知見によれば、適切な係数nの値は5〜7の範囲にある。
ステップS107でD<nFであると判定された場合、R装置のみを設置し、乾燥装置を設置しないことを決定する(ステップS109)。この場合、R装置でスラリーの脱水によって形成されたフィルタケーキは、そのままR装置で目標含水率まで乾燥される。
一方、ステップS107において、D≧nFであると判定された場合(つまりnF≦D≦mFの場合)、他の諸条件を検討してスラリー処理プラントの装置構成が決定される(ステップS111)。ここで検討される条件は、例えば、各装置での乾燥時間の設定によって可能な遊休時間の最小化、乾燥装置のテストを通じた乾燥方法の最適化、フィルタケーキの性質、コンタミネーションへの考慮、および運転条件(24時間運転か、昼間のみの運転か)などである。
以上のような設計方法によれば、脱水時間F、乾燥時間D、および係数m,nを用いることによって、スラリー処理プラントの装置構成を容易に概略判定できる。つまり、nF≦D≦mFの場合には、様々な条件を考慮した詳細な検討が必要であるものの、D<nFであればR装置のみを設置すればよいことが決定され、D>mFであれば乾燥装置の設置が必要であることが決定される。
なお、上記のフローチャートに示される各処理は、必ずしも図示された通りの順序で実行されなくてもよい。例えば、上記のステップS103の判定と同時に、またはステップS103の判定よりも前に、ステップS107の判定が実行されてもよい。
(タイムチャートの例)
図3は、本発明の実施形態に係る設計方法において、R装置のみを設置することが決定された場合のスラリー処理プラントにおけるタイムチャートである。図では、R装置での脱水時間Fと、R装置での乾燥時間Dと、サイクルタイムC1とが示されている。
図3は、本発明の実施形態に係る設計方法において、R装置のみを設置することが決定された場合のスラリー処理プラントにおけるタイムチャートである。図では、R装置での脱水時間Fと、R装置での乾燥時間Dと、サイクルタイムC1とが示されている。
既に説明したように、脱水時間Fは、R装置のフィルタプレスに供給されたスラリーが機械的に脱水されてフィルタケーキが形成されるまでの時間である。乾燥時間Dは、フィルタプレス内でフィルタケーキを目標含水率まで乾燥させるまでの時間である。この場合、サイクルタイムC1は、脱水時間Fと乾燥時間Dとの合計に等しい。なお、脱水時間Fおよび乾燥時間Dには、それぞれの工程の前準備及び後処理の時間が含まれる。
図4は、本発明の実施形態に係る設計方法において、R装置に加えて乾燥装置を設置し、他の諸条件を検討した結果、R装置と乾燥装置との両方で乾燥を行うことが適切と判定された場合の一つのタイムチャートである。図では、R装置での脱水時間Fと、R装置での乾燥時間Aと、乾燥装置での乾燥時間Eと、サイクルタイムC2とが示されている。
ここで、脱水時間Fは、上記の図3の例と同様に、R装置のフィルタプレスに供給されたスラリーが機械的に脱水されてフィルタケーキが形成されるまでの時間である。乾燥時間Aは、形成されたフィルタケーキをフィルタプレス内で乾燥させる時間である。乾燥時間Eは、フィルタプレス内で乾燥されたフィルタケーキを乾燥装置に移動させた後、目標含水率まで乾燥させるまでの時間である。なお、脱水時間F、乾燥時間A、および乾燥時間Eには、それぞれの工程の前準備及び後処理の時間が含まれる。
図示されているように、R装置と乾燥装置との両方で乾燥を行う場合、サイクルタイムC2を最小化するためには、脱水時間Fおよび乾燥時間Aの合計と、乾燥時間Eとをほぼ同じ長さに設定することによって、R装置および乾燥装置の遊休時間を最小化すればよい。この場合、F+A=E、すなわちA=E−Fである。このような遊休時間の最小化は、上記の設計方法においてnF≦D≦mFである場合の検討で条件として考慮されうる。
図5は、本発明の実施形態に係る設計方法において、R装置に加えて乾燥装置を設置し、乾燥装置のみで乾燥を行う場合のタイムチャートである。図では、R装置中のフィルタプレスにおける脱水時間Fと、乾燥装置における乾燥時間Eと、サイクルタイムC3とが示されている。なお、上述のように、この場合、R装置は、フィルタケーキの乾燥のための加熱システムなどを設置しないフィルタプレスに置き換えられてもよい。
ここで、脱水時間Fは、上記の図3,4の例と同様に、フィルタプレスに供給されたスラリーが機械的に脱水されてフィルタケーキが形成されるまでの時間である。乾燥時間Eは、フィルタプレス内で形成されたフィルタケーキを乾燥装置に移動させた後、目標含水率まで乾燥させるまでの時間である。この場合、サイクルタイムC3は、脱水時間Fまたは乾燥時間Eのうちの長い方に等しい。図5のケース(D>mF)は、一般的には乾燥時間がきわめて長い場合であって、乾燥装置を用いてもF<Eとなる場合が多い。図示された例がそうであって、サイクルタイムC3は、この場合乾燥装置での乾燥時間Eとなる。なお、脱水時間Fおよび乾燥時間Eには、それぞれの工程の前準備及び後処理の時間が含まれる。
(乾燥装置の配置)
多くの場合、スラリー処理プラントにおいて、フィルタプレスは、液体の流入および流出の都合上、他の装置よりも高い位置に設置される。この場合、フィルタプレスの下方には空間が存在する。この空間に乾燥装置を設置すれば、スラリー処理プラント全体の設置スペースを小さくすることができる。
多くの場合、スラリー処理プラントにおいて、フィルタプレスは、液体の流入および流出の都合上、他の装置よりも高い位置に設置される。この場合、フィルタプレスの下方には空間が存在する。この空間に乾燥装置を設置すれば、スラリー処理プラント全体の設置スペースを小さくすることができる。
また、乾燥装置をフィルタプレスの下方に設置することによって、装置全体がコンパクトになるとともに、フィルタプレスから乾燥装置への移送に、重力による自然落下を期待することができ、さらに乾燥装置を覆うチャンバーを設けることもできる。このチャンバーの上面には、フィルタケーキを投入するための開口部が設けられる。かかるチャンバーを設ける効果として、例えば、チャンバー内部を負圧状態にしてフィルタプレス周辺の大気を吸引すれば、フィルタケーキなどに起因する粉末の飛散を防止することができる。また、チャンバー内を正圧状態にすれば、周辺の埃や異物が乾燥装置に吸い込まれ、乾燥ケーキが汚染されるのを防止することができる。さらに、チャンバーの内壁面に、光量が少なくても効果を発揮する光触媒を塗布したり、チャンバーに透明な明り取り窓を設けて光が入るようにする、またはチャンバー内に照明を設置して明るさを保った上で酸化チタンなどの光触媒を塗布したりすれば、チャンバー内雰囲気に殺菌作用を及ぼして、乾燥ケーキが食品関係等の場合などに有効な清潔さを保つことができる。また、チャンバーの内壁面でニクロム材などを面溶射してヒータとすれば、チャンバー内雰囲気の加熱によって投入されるフィルタケーキを補助的に追加乾燥させることができる。
上記で説明した本発明の実施形態に係る設計方法の第1の実施例として、R装置での脱水時間Fが6.9時間、乾燥時間Dが4.5時間である場合のスラリー処理プラントの設計例を紹介する。
この例において、D=0.65Fである。従って、上記の図2に示した設計方法のフローチャートによれば、D<nFのケースに該当する(∵n=5〜7)。この場合は、R装置のみを設置することが適切である。そうすると、サイクルタイムC1は、F+D=6.9+4.5=11.4時間になる。従って、1日に実行可能なサイクル数は、24/11.4=2.1サイクルである。
一方、この例において、上記の設計方法に従わず、R装置のフィルタプレスに加えて乾燥装置を設ける場合、適切な乾燥装置を選定し、乾燥時間Eは1.6時間になる。R装置のフィルタプレスでの脱水時間Fの後に乾燥装置で乾燥時間Eだけ乾燥させる場合、サイクルタイムC3は脱水時間F(6.9時間)と乾燥時間E(1.6時間)とのうちの長い方に等しく、C3=6.9時間になる。従って、1日に実行可能なサイクル数は、24/6.9=3.5サイクル/dayである。
この場合、R装置の脱水機能部分の容量(フィルタプレスのろ過面積は、1日に実行可能なサイクル数が本設計法に従った2.1サイクル/dayと比べて3.5サイクル/dayと多くなるため、2.1/3.5=0.6倍でよくなる。
以上を考慮して、(1)R装置で脱水、乾燥までを行う場合と、(2)R装置中のフィルタプレス相当部分で脱水を行い、乾燥装置で乾燥を行う場合とのコストを比較する。(1)の場合のR装置の価格を100%とすると、(2)の場合のR装置のフィルタプレス部分の価格は87.7%となり、乾燥装置の価格((1)のR装置の価格を100%とすると32.9%)を加えると120.6%になる。つまり、本実施例では、結果的に(2)の場合のコストが20.6%高くなる。この結果は、D<mFの場合はR装置で脱水および乾燥を行う方がよいという、本発明の実施形態に係るスラリー処理プラントの設計方法が妥当であることを証明しているといえる。
上記で説明した本発明の実施形態に係る設計方法の第2の実施例として、R装置での脱水時間Fが2時間、乾燥時間Dが22時間である場合のスラリー処理プラントの設計例を紹介する。
この例において、D=11Fである。従って、上記の図2に示した設計方法のフローチャートによれば、D>mFのケースに該当する(∵m=10〜14)。さらに、係数に幅があることからnF≦D≦mFのケースにも関係している。そこで下記の検討を行った。ただし、このケースでは、フィルタケーキの性質上の要因、および他の要因を考慮しても、乾燥装置のみで乾燥を行うことが可能であった。
適切な乾燥装置を選定し、R装置中のフィルタプレスでの脱水時間Fの後に、乾燥装置を用いてフィルタケーキを目標含水率まで乾燥させる乾燥時間Eは8時間である。それゆえ、サイクルタイムC3は、脱水時間F(2時間)と乾燥時間E(8時間)とのうちの長い方に等しく、C3=8時間になる。従って、1日に実行可能なサイクル数は、24/8=3サイクル/dayである。
一方、この例において、R装置のみで脱水、乾燥した場合、サイクルタイムC1は、2+22=24時間になる。従って、1日に実行可能なサイクル数は、24/24=1サイクル/dayである。
ここで、(1)R装置中のフィルタプレスに加えて乾燥装置を設置する場合と、(2)R装置のみを設置する場合とのコストを比較する。(1)の場合、1日のサイクル数が増える分、(2)の場合よりもR装置中のフィルタプレスの脱水機能部分の容量は小さくてよく、具体的には1/3に減少する。これによって、R装置中のフィルタプレスの価格は、(2)のR装置中のフィルタプレスの価格よりも安くなる。
その結果、(2)の場合のR装置の価格を100%とすると、(1)の場合のR装置中のフィルタプレスの価格は53.1%になる。また、(1)で設置される乾燥装置の価格は、24.6%である。従って、(1)の場合の合計のコストは、53.1%+24.6%=77.7%になる。つまり、本実施例では、結果的に(1)の場合のコストが(2)の場合のコストに比べて22.3%安くなる。この結果は、D>mFの場合は乾燥装置で乾燥を行う方がよいという、本発明の実施形態に係るスラリー処理プラントの設計方法が妥当であることを証明しているといえる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記の実施形態では、係数m,nの値として最適な値を例示したが、本発明の実施形態はかかる例には限定されない。諸条件によって、適切な係数m,nの値が変動することは当然にあり、そのような場合には、係数m,nの範囲が特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することも当然にありうる。しかしながら、本発明では、脱水時間Fと乾燥時間Dとの関係に基づいて、スラリー処理プラントにおける装置構成が概略判定され、装置構成についての詳細な検討を行うのはnF≦D≦mFの場合だけでよい点に特徴があり、従って、例えば係数m,nとして用いる値の範囲を多少変えて実施したとしても、かかる実施も当然に本発明の技術的範囲に属する。
1 スラリー処理プラント
2 フィルタプレス
3 スラリー供給システム
4 ろ過液ライン
5 真空ポンプ
6 加熱システム
7 乾燥装置
8 乾燥ケーキ
2 フィルタプレス
3 スラリー供給システム
4 ろ過液ライン
5 真空ポンプ
6 加熱システム
7 乾燥装置
8 乾燥ケーキ
Claims (2)
- スラリー処理プラントの設計方法において、
スラリーをフィルタプレス内で機械的に脱水してフィルタケーキを形成し、前記フィルタプレス内の圧力を上限圧力200ミリバール以下に減圧し、前記フィルタプレスに設けられたフィルタプレートの温度を下限温度40℃以上に保って前記フィルタケーキを乾燥させる脱水乾燥装置を用いて、前記スラリーを脱水して前記フィルタケーキを形成するまでの脱水時間Fと、前記フィルタケーキを目標含水率まで乾燥させる乾燥時間Dとを測定し、
前記脱水時間Fおよび前記乾燥時間DがD>mF(m=10〜14)の関係を満たす場合には、前記脱水乾燥装置とは異なる種類の乾燥方法を用いる乾燥装置を前記スラリー処理プラントに設置することを決定し、
前記脱水時間Fおよび前記乾燥時間DがD<nF(n=5〜7)の関係を満たす場合には、前記脱水乾燥装置を前記スラリー処理プラントに設置して前記乾燥装置を設置しないことを決定する
ことを特徴とする、スラリー処理プラントの設計方法。 - 請求項1に記載の設計方法を用いて設計されたスラリー処理プラント。
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