JP2013535507A - Ggf2および使用方法 - Google Patents

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Abstract

本明細書に提供されるのは、GGF2およびGGF2を含む組成物を用いた中枢神経系の損傷(例えば、脊髄損傷)の治療方法である。例えば、提供されるのは、対象の脊髄損傷の治療方法であって、対象に1mg/kg未満のGGF2を少なくとも1用量投与することを含む方法である。このほか提供されるのは、神経幹細胞の増殖を促進させる方法および血管再生を促進させる方法であって、GGF2およびGGF2を含む組成物を用いる方法である。
【選択図】図5

Description

関連出願への相互参照
本願は、2010年8月13日に出願された米国仮出願第61/373,541号、2010年8月18日に出願された米国仮出願第61/374,777号、および2010年11月15日に出願された米国仮出願第61/413,768号の利益を主張するものであり、この一連の仮出願は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
連邦政府の資金による研究についての告知
本発明は、アメリカ合衆国国立衛生研究所が与えた助成金ROI−NS35647およびT32NS041218に基づく政府支援により達成された。合衆国政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
本明細書に提供されるのは、GGF2およびGGF2を含む組成物を用いて脊髄損傷を治療する方法である。例えば、提供されるのは、対象の脊髄損傷を治療する方法であって、対象に1mg/kg未満のGGF2を少なくとも1用量投与することを含む方法である。また、グリア前駆細胞の増殖を促進させる方法であって、グリア前駆細胞をGGF2と接触させることを含む方法、および、対象の中枢神経系の損傷後に神経細胞の血管再生を促進させる方法であって、対象にGGF2を投与することを含む方法も提供される。
背景
米国では、毎年約11,000人が新たに脊髄損傷を発症する。このような症例の大部分は、椎骨からの圧力が脊髄を押しつぶし、神経細胞および繊維路に直接障害を引き起こす挫傷性損傷である。他の種類の中枢神経系損傷または障害としては、外傷性脳損傷、脳卒中、および他の種類の後天性脳損傷(例えば、疾患または外科手術によって引き起こされたもの)が挙げられる。米国では、毎年約170万人が外傷性脳損傷を受ける。この「一次的損傷」が引き金となって低酸素血症および炎症が発症し、これが、「二次的損傷」すなわちニューロンおよびグリアならびに損傷部位を通る繊維路の進行性破壊を引き起こす。
図1は、実験計画の概要を示す図である。動物は、T8〜T9に中等度の挫傷による脊髄損傷を受けている。損傷後1日目から7日間にわたり、1日1回薬物治療を実施した。BrdU(17mg/kg)を、ラット試験では2日目、3日目、および4日目に、マウス試験では2日目、4日目、および7日目に投与した。週に1回、ラットに関しては複合行動スコア(combined behavioral score)(CBS)(Gale et al., Exp. Neurol. 88:123−34(1985))およびBasso,Beattie,and Bresnahan(BBB)(Basso et al., J. Neurotrauma 12:1−21(1995))スコアに従って、またマウスの移動運動に関してはBasso Mouse Scale (BMS)に従って、機能回復を判定した(Basso et al., Exp. J. Neurol. 139:244−56(2006))。 図2A〜2Cは、ラットの脊髄損傷後にBrdUで標識された細胞の表現型の分布を示す図である。脊髄損傷(SCI)後7日目の損傷中心部に対して吻側および尾側2、3、および4mmの位置にある腹内側白質(VMWM)を数えた。図2Aは、脊髄損傷後にGGF2で1週間治療すると内因性細胞増殖が増大したことを示すヒストグラムである。この効果は、中心部から2mmの切片に最も顕著に認められた。図2Bは、GGF2および生理食塩水のいずれで治療されたラットでも、BrdU細胞全体の約半数をNG2前駆体が占めたことを示すヒストグラムである。図2Cは、GGF2による治療が腹内側白質のBrdU/OX42細胞の数に影響を及ぼさないことを示すヒストグラムである。*治療群間の有意差;GGF2;n=8;生理食塩水:n=8、2方向反復測定ANOVA、チューキーのHSD、p<0.05。 図3A〜3Bは、脊髄損傷後にGGF2治療ラット対生理食塩水治療ラットの機能回復を示す図である。BBB行動試験(図3A)もCBS行動試験(図3B)も共に、GGF2治療ラットの方が機能回復の幅が大きいことを示している。オープンフィールド移動を評価するBBB(0=麻痺、21=正常)は、脊髄損傷後2週目までに回復の差が認められたことを示している。後肢の知覚運動の全般的欠損を評価するCBS(100=麻痺、0=正常)は、損傷後4週目までにGGF2治療群の機能的欠損が大幅に縮小したことを示している。*指示時点での群間有意差;群ごとにn=11、2方向反復測定ANOVA、チューキーのHSD、p<0.05。 図4A〜4Cは、GGF2治療ラット対生理食塩水治療ラットの脊髄の損傷後7日目(n=4/群)および42日目(n=8/群)における組織学的な比較を示す図である。図4Aは、両治療群とも7日目には試験されたすべての部位に類似の白質部が認められたことを示すヒストグラムである。図4Bは、42日目には生理食塩水治療群よりGGF2治療群の方に多くの白質が、中心部ならびに中心部の1mm吻側および尾側に認められたことを示すヒストグラムである。*p<0.05対生理食塩水、2方向反復測定ANOVA、チューキーのHSD。図4Cは、生理食塩水治療ラット(上パネル)対GGF2治療ラット(下パネル)の脊髄の損傷中心部のエリオクロム染色の跡を示す画像であり、GGF2治療ラットの白質の方が多く保存されていることが分かる。 図5は、GGF2またはFGF2+GGF2の全身投与が、CNP−EGFPマウスの不完全な脊髄損傷からの機能回復を改善することを示すグラフである。バーは、平均±SEMを表す。2方向反復測定ANOVA、チューキーのHSD、*p<0.05;**p<0.001対生理食塩水対照。 図6A〜6Eは、GGF2で治療されたCNP−EGFPトランスジェニックマウスの損傷後7日目に損傷中心部に残留する白質の共焦点画像である。図6A〜6Cは、NG2およびCC1に対して蛍光標識した部位の免疫組織化学的染色を示す図である。画像は、60Xで撮影した。左向き矢印:EGFP/NG2細胞(図6Aおよび6C)、右向き矢印:EGFP/NG2細胞(図6C)、上向き矢印:EGFP/CC1細胞(図6Bおよび6C)。スケールバー=20μm。図6Dは、代表的な損傷中心部のエリオクロム−シアニン染色画像であり、細胞計数部位を示す。生理食塩水治療群およびGGF2治療群を対象に、損傷中心部に保存された白質の左右腹外側部0.02mmのROI(関心領域)(灰色の囲み部)および中心部から200μm吻側および尾側の切片の範囲内で計数された。スケールバー=500μm。図6Eは、GGF2によって、損傷後7日目にはNG2細胞だけでなく非オリゴデンドロサイト系細胞(EGFP/NG2)も総数が増加し、さらにオリゴデンドロサイト系細胞(EGFP)の総数増加が認められたことを示すヒストグラムである。*p<0.05、1方向ANOVA、Bonferonni事後試験。 図7A〜7Cは、CNP−EGFPトランスジェニックマウスに対して1週間にわたりGGF2を全身投与することにより、損傷中心部のSox2/EGFP細胞数が増加することを示す図である。図7Aは、GGF2で治療したマウスの損傷後7日目における保存された白質の代表的な画像である。矢印:Sox2/EGFP細胞。スケールバー=20μm。 図7Bおよび7Cは、生理食塩水治療群およびGGF2治療群の損傷中心部および中心部から200μm吻側および尾側の切片の保存された白質および非白質の両方において計数した細胞のヒストグラムである。GGF2療法は、Sox2を発現する細胞の総数には有意な影響を及ぼさなかったが(図7B)、損傷後7日目にSox2を発現したオリゴデンドロサイト系細胞の数を増加させている(図7C)。バーは、平均±SEMを表す。カッコ内の数値は対象数を示す。*p<0.05対生理食塩水対照。スチューデントの検定。 同上。 図8A〜8Cは、CNP−EGFPマウスに対するGGF2またはFGF2+GGF2を用いた1週間にわたる全身療法が、損傷後28日目の損傷中心部に保存された白質の成熟オリゴデンドロサイトの数を増加させたことを示す図である。損傷中心部ならびに中心部から200μm吻側および尾側で、不偏立体解析学を用いてCC1細胞を計数した。図8Aは、GGF2治療対象の損傷中心部に保存された白質の代表的な画像である。矢印はCC1細胞を示す。 図8Bは、GGF2単独またはFGF2+GGF2を用いた治療が、残留白質の中心部の成熟オリゴデンドロサイトを増加させることを示すヒストグラムである。 図8Cは、中心部の非白質の成熟オリゴデンドロサイト数には、いずれの薬物療法の効果も認められないことを示すヒストグラムである。バーは、平均±SEMを表す。*p<0.05;**p<0.001対生理食塩水対照、1方向ANOVA、チューキーのHSD。 図8D〜8Fは、1週間のGGF2療法によって、GGF2療法の実施中に***していた細胞に由来する成熟オリゴデンドロサイトの数が増加することを示す図である。対象は、損傷後2、4、および7日目にBrdUの注射を受けている。損傷後28日目に、損傷中心部および中心部から200μm吻側および尾側でCC1/BrdU細胞を計数した。図8Dは、GGF2治療対象の損傷中心部に保存された白質の代表的な画像であり、CC1およびBrdUの免疫染色を示す。矢印がCC1/BrdU細胞を示す。 図8Eは、GGF2療法がCC1/BrdU細胞の総数を増加させることを示すヒストグラムである。 図8Fは、GGF2療法が、脊髄損傷後1週間目に増殖中であった細胞に由来する損傷後28日目の成熟オリゴデンドロサイトの総数を増加させることを示すヒストグラムである。バーは、平均±SEMを表す。カッコ内の数値は対象数を示す。**p<0.01対生理食塩水対照。スチューデントの検定。 図9A〜9Iは、GGF2療法が、CNP−EGFPマウスの損傷後28日目における損傷中心部の保存された白質面積、PLPパーセンテージ領域、またはNF200の軸索数に対しては影響を及ぼさないことを示す図である。図9Aは、残留白質を定量するため損傷後28日目に脊髄切片に実施されたエリオクロム染色の代表的な画像である。スケールバー:100□m。画像は、2.5Xの倍率で撮影し、NIH ImageJソフトウェアを用いて分析した。閾値は、デジタル画像の濃淡値に基づきエリオクロム−シアニン陽性ピクセルを表示するように設定された。 図9Bおよび9Cは、損傷後7日目(図9B)または28日目(図9C)に検査した(1方向ANOVA)いずれの部位においても、白質に対する薬物療法の有意な影響は認められなかったことを示すヒストグラムである。横線は、損傷のない対象(n=5)の白質面積平均値の範囲を示す。 同上。 図9Dは、図9Aのエリオクロム染色切片に隣接する切片に対するPLP染色(中枢神経系ミエリンのマーカー)を示す図である。PLP免疫蛍光染色を、損傷中心部および中心部から200μm吻側および尾側の位置で測定した。 図9Eおよび9Fは、生理食塩水で治療された対照と比較して、GGF2療法が白質(図9E)または非白質(図9F)に対するPLP染色の面積割合に影響を及ぼさなかったことを示すヒストグラムである。(1方向ANOVA、チューキーHSD)。 同上。 図9Gは、図9Aのエリオクロム染色切片に隣接する切片に対するNF200染色を示す図である。染色中心部ならびに中心部から200μm吻側および尾側の位置でNF200免疫蛍光染色を測定した。 図9Hおよび9Iは、生理食塩水治療対照群と比較してGGF2療法が、白質(図9H)または非白質(図9I)に存在するNF200軸索の数に影響を及ぼさなかったことを示すヒストグラムである。(1方向ANOVA、チューキーHSD)。カッコ内の数値は対象数を示す。 同上。 図10A〜10Fは、CNP−EGFPマウスの損傷後28日目の損傷部位におけるシュワン細胞の髄鞘形成が、GGF2療法によって増大したことを示す図である。生理食塩水治療群およびGGF2治療群を対象に、損傷中心部ならびに中心部から200μm吻側および尾側の切片の保存された白質および非白質の両方で、細胞を計数した。図10Aは、あるGGF2治療例の損傷後28日目の損傷中心部の20xタイルスキャンであり、P0(抹消神経系ミエリンのマーカー、左端)染色、CNP−EGFP(中間左側)染色、およびNF200(中間右側)染色を、別々のパネルに示す図である。右端のパネルは、P0、CNP−EGFP、およびNF200のパネルを融合したものである。 図10Bは、図10Aの融合画像の病変に位置する四角い囲みを、さらに高倍率で拡大したものであり、病変内のP0髄鞘形成軸索を示す図である。 図10Cは、図10Aの融合画像内の背側に位置する四角い囲みをさらに高倍率で拡大したものであり、背側白質のP0髄鞘形成軸索を示す図である。 図10Dは、GGF2療法が損傷後28日目のP0染色を、生理食塩水対照の場合より増大させることを示すヒストグラムである。またGGF2療法は、病変内(図10E)および残留白質中(図10F)のP0染色も増大させる。バーは、平均±SEMを表す。カッコ内の数値は対象数を示す。*p<0.05;**p<0.001対生理食塩水対照。スチューデントの検定。スケールバー:50μm。 同上。 同上。 図11は、GGF2療法が損傷後7日目の病変部位内の周細胞数を増加させることを示す図である。損傷後7日目のNG2−dsRed x CNP−EGFPダブルトランスジェニックマウスの脊髄切片を、血管マーカー(ラット抗CD31)および周細胞マーカー(Rb抗PDGFRβ)に対する抗体で標識した。オリンパスのFV300レーザー走査共焦点顕微鏡を用いて、40Xで画像を撮影した。各対象に対し、0.03mの病変内関心領域2か所の周細胞を計数した。周細胞は、NG2/PDGFRβでありかつCD31血管に直接向き合う細胞と特徴付けた。また、病変境界および腹側外側の保存された白質でも、周細胞を計数した。GGF2は、これらの領域の周細胞には効果を示さなかった。 図12は、GGF2療法が損傷後7日目の病変部位内で、血管再生の一つの尺度であるCD31染色量を増加させることを示す図である。損傷後7日目のNG2−dsRed x CNP−EGFPダブルトランスジェニックマウスの脊髄切片を、血管マーカーCD31(ラット抗CD31)に対する抗体で標識した。それぞれの対象に対し、病変内で2か所に分かれたそれぞれ0.03mmの関心領域の総CD31画素数を、NIH ImageJソフトウェアを用いて定量した。またCD31染色も、病変境界および腹側外側の保存された白質で定量した。GGF2は、これらの領域のCD31染色には効果を示さなかった。 図13は、GGF2療法が、損傷後7日目の損傷中心部に近い非白質内のp75シュワン細胞前駆体数には影響を及ぼさないことを示す図である。またGGF2はp75染色に対し、全体(白質+非白質)に対しても白質単独に対しても効果を示さなかった。損傷を受けたCNP−EGFPマウスの損傷中心部から+/−0.8mmの脊髄切片を、Rb抗p75抗体で染色した。Zeissの510LSMレーザー走査共焦点顕微鏡を用いて、全脊髄切片の20Xタイルスキャン画像を撮影した。p75画素数を、NIH ImageJソフトウェアを用いて定量した。GGF2が、損傷後28日の病変内中心部の末梢性ミエリンを増加させる(図10)。理論によって制約されるつもりはないが、p75染色に対してGGF2が効果を示さないということは、GGF2が、新たなシュワン細胞の増殖を誘発することより、むしろ既存のシュワン細胞が産生するミエリンの量を増やすことによって作用するという可能性を示唆している。
軸索の脱髄および異常な髄鞘再形成が、慢性の脊髄損傷(SCI)および脳損傷のおもな病理学的帰結である。適切な髄鞘形成を欠く軸索は、活動電位を効率的に伝導することができない。例えば、成人の脊髄は、固有のグリア前駆細胞のプールを含有しており、これが増殖を加速させて脊髄損傷に自発的に反応する。全体を通じて、脊髄損傷を例として用いる。
脊髄損傷の実験モデルでは、衝撃を引き起こす初期損傷から24時間以内に灰白質の大部分が破壊され、中心部の出血性病変を生じさせる。脊髄損傷後6週目までには、以前に灰白質があった場所に、残留白質の細い縁どりのある大きな空洞が生じる。組織の保存は損傷の重症度と直接関連しており、衝撃が軽度であれば損傷が不完全となり、保存された白質の縁取りが厚くなり、かつ対象は損傷部位の下に感覚および運動機能を保持する。重度の衝撃であれば完全な損傷が生じ、上行路および下行路がすべて破壊されて、病変の尾側には機能が残存しない。
脊髄損傷後24時間目までには、中心部に保存された残留白質のオリゴデンドロサイトおよびアストロサイトの50%が失われ、白質の初期病変の一因となる。損傷後は慢性的に、損傷部位の残留軸索が十分に固められていない薄いミエリンで有鞘化され、これが軸索周辺に大きな空間を残す。シグナル伝搬のために跳躍伝導に最も多く依存する径の大きい軸索の場合は病状が特に重症である。結果として生じる軸索の機能障害は、活動依存性栄養支持(activity dependent trophic support)の低下によって、軸索および神経の変性をもたらすことがある。
AMP−A/カイニン酸グルタミン酸受容体拮抗薬NBQXを用いた治療を通じてオリゴデンドロサイトを保存することにより、白質の急性病理ならびに慢性的な白質減少および機能障害が有意に低下する。オリゴデンドロサイトの減少は、神経細胞の死と軸索虚脱とをもたらす可能性がある。さらに、オリゴデンドロサイトの移植が組織保存を向上させ、脊髄挫傷後の機能回復を有意に改善することが示されている。
アストロサイトとアストロサイトが提供する重要な機能の喪失はさらに、脊髄損傷後の病理の一因ともなる。アストロサイトには、イオンのホメオスタシスを維持し、細胞外グルタミン酸レベルを低下させることによって、病変の進行期間を短くすることが可能である。またアストロサイトは、神経防護作用によって損傷を改善し、グリア防護作用を誘発し、かつ髄鞘形成を促進する増殖因子も分泌する。
脱髄した脊髄にアストロサイトを移植すると、宿主オリゴデンドロサイトの白質路髄鞘再形成能力が向上した。移植研究のデータでは、脊髄損傷後にアストロサイトおよびデンドロサイトの数を増加させると、機能回復が改善することが示されている。移植術は、損傷したげっ歯類の中枢神経系に新たな細胞をうまく導入するために用いられてきた戦略であるが、この手法の臨床的応用には広く認められた問題点がある。損傷後の脆弱な脊髄に外科的処置を施すと、さらに合併症を引き起こす可能性がある(例えば、索状組織の機械的損傷、感染、および/または出血)。移植片−宿主の不適合が、特に血液と脳との境界に障害が起きているような索状組織の損傷では、問題となり得る。さらに、移植用の適切な組織の供給源に関しては、倫理上および法律上の懸念がある。移植に対する魅力的な代替手段は、内生前駆体の増殖を刺激して、脊髄損傷後に増殖する機能性成熟グリアを生じさせることである。
実験的脱髄では、生体ラット脊髄のレトロウイルス標識した前駆細胞が軸索を髄鞘再形成することが示されている。正常な生体の中枢神経系は、インビトロで増殖していくつもの神経表現型に分化し、インビボでオリゴデンドロサイトを成熟させることのできる固有のグリア前駆細胞のプールを含有している。これらの細胞は、NG2コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの抗体で標識化し、その細長い形状と大部分が核で占められている小さな細胞体によって容易に区別される。BrdU標識化を用いて、損傷のないラットの脊髄ではこれらの細胞が***してコロニーを生ずることが示されている。
これらがBrdU標識化の24時間以内にNG2を発現し、4週目までに成熟オリゴデンドロサイトへと分化する。脊髄損傷モデルでは、24時間目までには局所のオリゴデンドロサイトおよびアストロサイトが50%減少するにもかかわらず、成熟オリゴデンドロサイトおよびアストロサイトの密度は、損傷後6週目までに正常またはほぼ正常に戻る。
細胞密度の回復は、一部グリア前駆細胞の増殖によるものである。虚血性発作による損傷の後、グリア前駆細胞の密度は2日目までに増加し始め、そしてこの増加に伴い、早くも2週目にオリゴデンドロサイトおよびミエリンの密度が回復する。NG2細胞の増殖は、脊髄損傷後1日目から8週間にわたって起きる。BrdU/NG2細胞の数に認められる増加に伴って1週間後にはCC1オリゴデンドロサイトの数が3倍に増加し、これらの前駆体が損傷した中枢神経系、例えば脊髄の細胞再生のおもな源となっていることを示している。内生前駆体およびその子孫が、損傷した脊髄の長期にわたる再増殖を助ける内生的な回復機序の一部であり得る。
GGF2は、脊髄損傷に続くグリア前駆細胞の増殖をインビボで誘発するために用いられる。GGF2は、グリア前駆細胞の増殖をインビトロで促進し、そのレベルは中枢神経系に対する損傷の1週間後、グリアの増殖が始まる際に著しく上昇する。
GGFは、NRG−1遺伝子から選択的にスプライスされるタンパク質のニューレグリン科の一員である。最初はグリア細胞の増殖および分化を促進する能力のゆえに研究され、このためグリア増殖因子と命名されたNRG−1は、その後NDF、ARIA、およびへレグリンなどの他の名称の下に分類されてきた。GGFは、グリア前駆細胞の増殖のひきがねとなり、培養オリゴデンドロサイトの表現型の転換を生じさせ、その有糸***状態への回帰をもたらす。培養グリア前駆細胞では、GGFが生存を推進し、増殖を促しつつ、細胞を未成熟の表現型に維持する。
多発性硬化症(MS)患者および皮質切断による損傷を受けた患者では、GGF/NRGのレベルが上昇することが示されている。またErbB受容体(GGF受容体のファミリ)のレベルも、閉鎖性頭部外傷、皮質切断による損傷、軸索切断術が引き起こしたワーラー変性、および多発性硬化症(MS)の後に上昇する。多発性硬化症の慢性再発性モデルでは、体外から投与されたGGF/NRGタンパク質が再発を遅らせ、自己免疫性の脱髄を少なくし、髄鞘再形成を促進させることができる。GGF2は、脱髄した軸索を覆う助けとなるグリア前駆細胞の強力なマイトジェンである。
外傷性の脊髄損傷(SCI)は、損傷部位の尾側の感覚運動機能の永久的な喪失を招く。最初の衝撃は多くの局所ニューロンおよびグリアを破壊するのに対して、細胞消失は機械的一次障害に限定されず、二次機構によって悪化する。中心部の保存された残留白質にあるオリゴデンドロサイトおよびアストロサイトの約50%は、24時間目までに消失する。アストロサイトの消失は、異常なイオンホメオスタシスの一因となり得るが、オリゴデンドロサイトが消失すると多発性硬化症にみられるように髄鞘形成が不十分となり、そのため軸索伝達の遅れが生じる。
この初期の細胞消失にもかかわらず、残留白質のオリゴデンドロサイトおよびアストロサイトは脊髄損傷後6週間までに対照のレベルまで戻る。細胞密度の回復は、生存グリア細胞の増殖に一部起因する。ブロモデオキシウリジン(BrdU)標識化試験は、中心部から4mm以内の細胞の増殖が、脊髄損傷後の週には有意に上方制御されたことを示している。このようなBrdU標識化細胞は、脊髄損傷後6週間で認めることができ、CCI成熟オリゴデンドロサイトのほぼ6分の1を含む。
グリア前駆細胞に対するインビトロのマイトジェンであるGGF2は、損傷の直後に上方調節される。GGF2は、オリゴデンドロサイトおよびシュワン細胞の膨張ならびにそれに続く髄鞘形成の軸索調節に発生学的に関与している。GGF2は、グリア前駆体とオリゴデンドロサイトの強力なマイトジェンであり、損傷直後には損傷部位でリガンドと受容体(erbB受容体)のレベルが上方調節される。脊髄損傷後3日目には、GGF2のmRNAが吻側で著しく上昇する。挫傷を負わせた生体ラットから脊髄損傷後3日目に単離し、培養したNG2始原細胞に対し、組換え型ヒトGGF2(rhGGF2)を添加すると、NG2+細胞数が増加した。
脊髄損傷のような中枢神経系の損傷後の機能回復を向上させる治療的アプローチとしては、このような細胞の増殖を促進させて機能的成熟グリアを増やし、生存し再生する軸索の髄鞘形成を向上させることが挙げられる。本明細書に提供されるのは、GGF2を用いて脊髄損傷を治療する方法およびGGF2を含む組成物である。例えば、提供されるのは、対象の脊髄損傷を治療する方法であって、1mg/kg未満のGGF2を少なくとも一用量分該対象に投与することを含む方法である。GGF2およびGGF2を含む組成物は、本明細書において治療薬または薬剤と称される。
また本明細書にさらに提供されるのは、神経幹細胞(例えば、Sox2陽性幹細胞および)の増殖を促進させる方法であって、グリア前駆細胞をGGF2に接触させることを含む方法である。例えば、接触させるステップは複数回実施される。接触させるステップは、2、3、4、5、6、もしくは7日間にわたって毎日、または2、3、もしくは4週間にわたって少なくとも毎週 実施することができる。任意で、接触ステップはインビトロまたはインビボで実施する。通常、接触ステップは中枢神経系の損傷から1日以内にインビボで実施する。任意で、該方法はさらに、神経幹細胞を、例えばFGF2のような第2の薬剤に接触させることを含む。任意で、第2の薬剤は、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)またはプロラクチンではない。このインビトロ法は、移植用の細胞を作るために用いることができる。したがって、本明細書に提供されるのは、神経幹細胞、グリア前駆細胞またはその後代を対象に投与することによって対象の中枢神経系の損傷を治療する方法であり、細胞は本方法によって作られる。
また提供されるのはこのほか、対象の中枢神経系の損傷後の神経組織の血管再生を促進する方法であって、GGF2を対象に投与することを含む方法である。GGF2が媒介する周細胞の増加は、脊髄損傷後の血管再生を向上させて機能回復に寄与する。任意で、投与は損傷から1日以内に実施され、かつ任意で、複数の用量が投与される。例えば、GGF2は、2、3、4、5、6、または7日間にわたり毎日投与され、かつ任意で、GGF2は2、3、または4週間にわたって毎週投与される。この方法はさらに、例えばFGF2のような第2の薬剤を投与することを含むことができる。任意で、第2の薬剤は、下垂体アデニル酸シクラーゼ活性化ペプチド(PACAP)またはプロラクチンではない。
GGF2は、本明細書に用いられる場合、神経グリア増殖因子2を指す。増殖作用を有するその類似体、変異体、およびイソ型を、本方法に用いることができる。GGF2ポリペプチド配列、変異体、およびその断片をコードする核酸が開示される。これらの配列は、特定のタンパク質配列に関連するすべての縮重配列、すなわちある特定のタンパク質配列をコードする配列を有する全ての核酸のほかに、縮重核酸をはじめ、そのタンパク質配列の開示された変異体および誘導体をコードするすべての核酸をも含む。したがって、特定の核酸配列がひとつひとつ本明細書に完全に記載されることはないかもしれないが、実際には開示されたタンパク質配列を通じて、ありとあらゆる配列が本明細書に開示され、記載されていることが了解されている。
本明細書に用いられる場合、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質という用語は、ペプチド結合で結合された2つまたはそれ以上のアミノ酸で構成される分子を指すのに用いられる。ほかにもタンパク質、ペプチド、およびポリペプチドが、本明細書ではアミノ酸配列を指すために互換的に用いられる。本明細書では、ポリペプチドまたはタンパク質という用語が、その分子を構成するアミノ酸の特定の大きさまたは数を示唆するために用いられることはなく、かつ開示のポリペプチドが、アミノ酸残基を数個またはそれ以上含有し得ることを認識しなければならない。
断片を含めたすべてのペプチド、ポリペプチド、およびタンパク質の場合と同じく、種々のGGF2ポリペプチドのアミノ酸配列に対して、当該ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の性質または機能を変えない改良が加えられる可能性があることを了解しなければならない。このような改良には同類アミノ酸の置換が含まれ、以下に詳細に論じられる。
本明細書に記載されたポリペプチドは、所望の機能が維持される限り、さらに改良し、変化させることが可能である。例えば、所望の機能は、脊髄の髄鞘形成を増大させること、および/または脊髄損傷の1つ以上の症状に機能的改善を提供することである。
本明細書に開示された遺伝子およびタンパク質の任意の公知の改良体および誘導体、または生まれる可能性のある改良体および誘導体を定義するひとつの方法は、特定の公知の配列に対する同一性の観点から定義することである。具体的に開示されるのは、GGF2および本明細書に提供される変異体に対して少なくとも70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99パーセントの同一性を有するポリペプチドである。当業者には、2つのポリペプチドの同一性を決定する方法がすぐに分かることであろう。例えば、同一性が最も高いレベルになるように2つの配列を整列させてから、同一性を算出することもできる。
同一性を算出する別の方法は、公表されたアルゴリズムによって実行することができる。配列の比較のための最適な整列は、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math 2:482(1981)の局所同一性アルゴリズム(local identity algorithm)によって、Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443(1970)の同一性整列アルゴリズム(identity alignment algorithm)によって、Person and Lipman, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(1988)の類似法の単球によって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIの中のGAP,BESTFIT,FASTA,およびTFASTA)のコンピューターによる実行によって、または精査によって実施することができる。
核酸の場合、同じ種類の同一性は、例えばZuker, Science 244:48−52(1989)、Jaeger et al, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7706−10(1989)、Jaeger et al, Methods Enzymol. 183:281−306(1989)に開示されたアルゴリズムによって得ることができ、これらは少なくとも核酸の整列に関する資料については参照によって本明細書に組み込まれる。通常、これらの方法はいずれも用いることが可能であり、ある場合にはこの一連の多様な方法の結果が異なることもあることが理解されるが、当業者は、これらの方法の少なくとも1つを用いて同一性が認められれば、その配列は規定の同一性を有し、本明細書に開示するべきものと言えるであろうことを理解する。
タンパク質修飾には、アミノ酸配列の修飾が含まれる。アミノ酸配列の修飾は、対立遺伝子変異と同じく自然に生じることもあり(例えば、遺伝子多型によって)、環境の影響によって生じることもあり(例えば、紫外線への暴露によって)、または点突然変異体、欠失変異体、挿入変異体、および置換変異体の誘導などの人間の介入によって生じることもある(例えば、クローン化DNA配列の突然変異生成によって)。このような修飾は、アミノ酸配列の変化を生じさせ、サイレント変異をもたらし、制限酵素認識部位を変更し、または他の特異的突然変異をもたらす可能性がある。アミノ酸配列の修飾は通常、置換修飾、挿入修飾、または欠失修飾の3つの種類のうちの1つ以上に分類される。挿入には、アミノおよび/または末端融合、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列内挿入などがある。挿入は通常、アミノまたはカルボキシル末端の融合の挿入より小さい挿入となり、例えば、1〜4残基程度である。欠失は、1つ以上のアミノ酸残基のタンパク質配列からの除去によって特徴づけられる。一般に、タンパク質分子内の任意の1部位で約2〜6残基以下が除去される。アミノ酸置換は、通常は単一残基の置換であるが、いくつもの異なる位置で同時に起こり得、挿入は、通常は約1〜10アミノ酸残基ほどであり、欠失は、約1〜30残基に及ぶ。欠失または挿入は、隣接する1対に行われ、つまり2残基の欠失または2残基の挿入となることが好ましい。置換、欠失、挿入、またはその任意の組み合わせを結合させて、最終構成体にすることができる。突然変異は、配列をリーディングフレームの外に配置してはならず、また好ましくは、二次的なmRNA構造を生じさせる可能性のある相補的領域を生み出してはならない。置換修飾は、少なくとも1つの残基が除去され、その代わりに異なる残基が挿入されるもののことである。このような置換は、以下の表1に従って実施されることが多く、保存的置換と称される。
特異的アミノ酸置換をはじめとする修飾は、公知の方法によって行う。一例を挙げれば、タンパク質をコードするDNA内のヌクレオチドの部位特異的な突然変異誘発によって修飾が行われ、それによって修飾をコードするDNAが作り出され、その後に組換え細胞培養においてそのDNAが発現する。公知の配列を有するDNAの所定の部位に置換変異を引き起こすための技術は周知であり、例えばM13プライマー突然変異誘発およびPCR突然変異誘発などがある。
本明細書で提供されるのは、本ポリペプチドを含有する組成物、ならびに核酸分子および本明細書に記載の医薬的に許容し得る担体である。本明細書に提供される組成物は、インビトロまたはインビボの投与に好適である。医薬的に許容し得る担体とは、生物学的または他の面で有害ではない材料のことである。言い換えれば、その材料は、望ましくない生物学的作用を引き起こすことなく、またはそれを含有する医薬組成物の他の成分と有害な相互作用を生じることなく、対象に投与される。担体は、活性成分の劣化を最小限に抑え、対象に対する有害な副作用が最小となるように選択される。
好適な担体およびその配合物が、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 2nd Edition, David B. Troy, ed., Lippicott Williams & Wilkins (2005)に記載されている。一般に、配合物が等張となるように、適切な量の医薬的に許容し得る塩が配合物に用いられる。医薬的に許容し得る担体の例としては、滅菌水、生理食塩水、リンゲル液のような緩衝液、およびデキストロース溶液が挙げられるが、これに限定はされない。この溶液のpHは、通常約5〜約8、または約7〜約7.5である。他の担体としては、本免疫原性ポリペプチドを含有する疎水性固体ポリマーの半透性マトリックスのような徐放性調剤が挙げられる。マトリックスは、例えばフィルムなどの造形品、リポソーム、または微小粒子の形態である。例えば投与する組成物の投与経路や濃度などに応じて、いくつかの担体がいっそう好ましい場合もある。担体は、例えば小分子、ポリペプチド、および/または核酸分子など、その薬剤のヒトまたは他の対象への投与に好適なものである。
組成物は、局所治療が所望であるか、または全身治療が所望であるかに応じて、かつ治療する部位に応じて、いろいろな方法で投与される。組成物は、局所、経口、非経口、静脈内、関節内、腹腔内、筋肉内、皮下、腔内、経皮、肝内、頭蓋内、噴霧/吸入、髄腔内、硬膜下、または気管支鏡検査法を用いる装置によるなど、いくつかある投与経路のうちのいずれかで投与される。任意で、組成物は、経口吸入、鼻腔吸入、または鼻腔内粘膜投与によって投与される。吸入による組成物の投与は、噴霧または液滴による送達を用いて鼻または口を経由するものであってよく、例えば、エアロゾルの形態であり得る。任意で、いずれかの硬膜層および脊髄などの中枢神経系に投与を行う。
非経口投与のための製剤としては、滅菌した水性または非水性の溶液、懸濁液、および乳濁液が挙げられる。非水性溶剤の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射用の有機エステルが挙げられる。水性担体としては、水、アルコール性/水性溶液、乳濁液、または懸濁液が挙げられ、これには生理食塩水および緩衝媒質(buffered media)が含まれる。非経口ビヒクルとしては、塩化ナトリウム溶液、リンゲルブドウ糖、ブドウ糖および塩化ナトリウム、乳酸加リンゲル、または固定油が挙げられる。静脈内ビヒクルとしては、栄養補充液、電解質補液(例えば、リンゲルブドウ糖を主成分とするものなど)などが挙げられる。保存料および他の添加物は、例えば抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤、および不活性ガスなどが存在する。
局所投与のための配合物としては、軟膏、ローション、クリーム、ジェル、点滴剤、坐剤、スプレー、液体、および粉末が挙げられる。従来の医薬用担体、水性、粉末、または油性の基剤、増粘剤などが、状況に応じて必要または望ましい。
経口投与のための組成物としては、粉末または顆粒、水または非水性媒体中の懸濁液または溶液、カプセル、小袋、または錠剤が挙げられる。増粘剤、香味料、希釈剤、乳化剤、分散助剤、または結合剤が、任意で望ましい。
状況に応じて、核酸分子またはポリペプチドを、核酸分子またはポリペプチドをコードする核酸配列を含むベクターによって投与する。例えば発現ベクターなどを用いて、インビトロまたはインビボのいずれかで細胞に核酸分子および/またはポリペプチドを送達するために用いることのできる組成物および方法がいくつもある。このような方法および組成物は、主としてウイルス系送達系統と非ウイルス系送達系統との2種類に分類することができる。このような方法は当技術分野で周知であり、本明細書に記載の組成物および方法と共に用いるために容易に調整することができる。
本明細書で用いる場合、プラスミドまたはウイルスベクターは、開示された核酸を劣化させることなく細胞に輸送する薬剤であり、核酸分子および/またはポリぺプチドをそれが送達される細胞内で発現させるプロモーターを含む。ウイルスベクターは、例えばアデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、シンドビス、および他のRNAウイルスであり、これらのウイルスのHIBバックボーンを含む。このほか好ましいものとしては、これらのウイルスをベクターとしての使用に好適なものにしている性質を同じく持っている任意のウイルスファミリーも挙げられる。レトロウイルスベクターは、Coffin et al., Retroviruses, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1997)に概要が記載されており、ベクターとそれを作る方法に関して参照により本明細書に組み込まれる。複製欠損アデノウイルスの創出については、すでに記載がある(Berkner et al, J. Virol. 61:1213−20(1987); Massie et al. Mol. Cell. Biol. 6:2872−83 (1986); Haj−Ahmad et al, J. Virol. 57:267−74 (1986); Davidson et al, J. Virol. 61:1226−39 (1987); Zhang et al. BioTechniques 15:868−72 (1993))。これらのウイルスは感染した最初の細胞内で複製することができるが、新たな感染ウイルス粒子を形成することができないことから、そのベクターとしての利益および用途は、他の細胞型に広がることができる範囲に限定されていることである。組換えアデノウイルスは、気道上皮、肝細胞、脈管内皮、中枢神経系柔組織、および他のいろいろな組織部位に直接インビボ送達された後に高い効率を発揮することが示されている。他の有用な系統には、例えば複製型ワクシニアウイルスベクターおよび宿主が制限された非複製型ワクシニアウイルスベクターがある。
提供されるポリペプチドおよび/または核酸分子は、ウイルス様粒子を用いて送達することができる。ウイルス様粒子(VLP)は、ウイルスの構造タンパク質に由来するウイルスタンパク質から成る。ウイルス様粒子を作製する方法は、例えば、Garcea and Gissmann, Current Opinion in Biotechnology 15:513−7 (2004)に記載されている。
提供されるポリペプチドは、ウイルス成分の高密度体(DB)によって送達することができる。高密度体は、膜融合によってタンパク質を標的細胞内に輸送する。高密度体を作成および使用する方法は、例えば、Pepperl−Kindworth et al, Gene Therapy 10:278−84(2003)。
提供されるポリペプチドは、外皮集合体によって送達することができる。外皮集合体を作成および使用する方法が、国際公開第WO2006/110728に記載されている。
ウイルスに基づかない送達方法としては、核酸分子とポリペプチドをコードする核酸配列とを含む発現ベクターを挙げることができ、この核酸は、発現調節配列と操作可能に結合されている。好適なベクターバックボーンとしては、例えば、プラスミド、人工染色体、BAC、YAC、またはPACなどの当技術分野で日常的に用いられるものが挙げられる。多くのベクターおよび発現系が、Novagen(Madison, WI)、Clonetech(Palo Alto, CA)、Stratagene(La Jolla, CA)、およびInvitrogen/Life Technologies (Carlsbad, CA)などの企業から市販されている。ベクターは、一般に1つ以上の調節領域を含有している。調節領域としては、制限されることなく、プロモーター配列、エンハンサー配列、応答配列、タンパク質認識部位、誘導配列、タンパク質結合配列、5‘および3’非翻訳領域(UTR)、転写開始部位、収支配列、ポリアデニル化配列、およびイントロンが挙げられる。
哺乳類宿主細胞のベクターからの転写を調節する好ましいプロモーターは、さまざまな供給源、例えばポリオーマ、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、そして最も好ましくはサイトメガロウイルス(CMV)などのウイルスのゲノムから、または、異種哺乳類プロモーター、例えばβアクチンプロモーターまたはEF1αプロモーターから、またはハイブリッドもしくはキメラプロモーター(例えば、βアクチンプロモーターに融合したサイトメガロウイルスプロモーター)から得てもよい。当然、宿主細胞または関連種に由来するプロモーターも本明細書では有用である。
エンハンサーは通常、転写開始部位から一定ではない距離で機能するDNAの配列のことであり、転写単位に対して5′または3′のいずれかであり得る。また、エンハンサーは、イントロン内でもコード配列自体の中でもあり得る。通常は10〜300塩基対(bp)の長さであり、シスに機能する。エンハンサーは通常、近くのプロモーターからの転写を増大させるために機能する。またエンハンサーは、転写調節を仲介する応答配列も含有し得る。哺乳類の遺伝子に由来する多くのエンハンサー配列が公知であるが(グロビン、エラスターゼ、アルブミン、フェトプロテイン、およびインスリン)、真核細胞ウイルス由来のエンハンサーを一般的な発現に用いることが多い。好ましい例としては、複製起点の後発側のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後発側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。
プロモーターおよび/またはエンハンサーは誘導することができる(例えば、化学的または物理的に調節されて)。化学的に調節されるプロモーターおよび/またはエンハンサーは、例えばアルコール、テトラサイクリン、ステロイド、または金属の存在によって調節することができる。物理的に調節されるプロモーターおよび/またはエンハンサーは、例えば温度や光のような環境因子によって調節することができる。状況に応じて、プロモーターおよび/またはエンハンサー領域は、構成的プロモーターおよび/またはエンハンサーとして作用して、転写される転写単位の領域の発現を最大化し得る。あるベクターでは、プロモーターおよび/またはエンハンサー領域が細胞型特異的に活性であり得る。任意で、あるベクターでは、細胞型とは無関係に、プロモーターおよび/またはエンハンサー領域がすべての真核細胞内で活性であり得る。この種の好ましいプロモーターは、CMVプロモーター、SV40プロモーター、βアクチンプロモーター、EF1αプロモーター、およびレトロウイルスの末端反復配列(LTR)である。
ベクターはまた、例えば複製起点および/またはマーカーを含み得る。マーカー遺伝子は細胞に、例えば抗生物質耐性などの選択可能な表現型を与えることができる。マーカー生成物は、ベクターが細胞に送達されたかどうか、また送達されたならすぐに発現されているかどうかを判定するために用いられる。哺乳類細胞のための選択可能なマーカーの例としては、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、チミジンキナーゼ、ネオマイシン、ネオマイシン類似体G418,ハイグロマイシン、ピューロマイシン、およびブラストサイジンが挙げられる。このような選択可能なマーカーを首尾よく哺乳類宿主細胞に移したとき、形質転換した哺乳類宿主細胞は、選択圧下に置かれても生き残ることができる。他のマーカーの例としては、例えば大腸菌lacZ遺伝子、緑色蛍光タンパク質(GFP)、および発光酵素が挙げられる。さらに、発現ベクターには、発現されたポリペプチドの操作または検出(例えば、精製または位置確認)を促進するためのタグ配列が含まれてよい。緑色蛍光タンパク質、グルタチオンS−トランフェラーゼ(GST)、ポリヒスチジン、c−myc、ヘマグルチニン、またはFLAG(商標)タグ(コダック、ニューヘイブン、CT)配列などのタグ配列は、コードされたポリペプチドとの融合として発現されることが多い。このようなタグは、カルボキシル末端またはアミノ末端のいずれかを含むポリペプチド内のどこにでも挿入することができる。
全体を通して用いられる対象は、脊椎動物、さらに具体的には哺乳類(例えば、ヒト、ウマ、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、マウス、ウサギ、ラット、およびモルモット)、鳥、は虫類、両生類、魚、および他の任意の動物であり得る。この用語は、特定の年齢または性別を表わさない。したがって、オスとメスとに拘らず、成体および新生の対象が含まれる。本明細書で用いられる場合、患者または対象は互換的に用いることができ、疾患または障害(例えば、脊髄損傷)を抱えた対象を指し得る。患者または対象という用語は、ヒトおよび動物の対象を含む。
疾患または障害を発症する危険性のある対象は、その疾患または障害に対して、例えば家族歴がある、またはその疾患または障害を引き起こす遺伝子に突然変異があるなどの遺伝的な傾向を持っている場合がある。現在疾患または障害を持つ対象は、その疾患または障害の1つまたは1つ以上の症状を持っていて、かつその疾患または障害の診断を受けている可能性がある。脊髄損傷を持つ対象は、外傷または手術をはじめとするいくつもの因子によって引き起こされた障害を含む可能性がある。脱髄疾患には多発性硬化症が含まれる。
本明細書に記載される方法及び薬剤は、予防的および治療的投与のいずれにも有用である。予防的投与には、本明細書に記載の薬剤の治療的有効量を発病前(例えば、脊髄損傷の明らかな兆候の前)、または初期の発症期間(例えば、脊髄損傷の最初の兆候および症状の直後)に対象に投与する。予防的投与は、例えば脊髄損傷に対する遺伝的素因があると診断された対象(例えば、形態異常または軟骨形成不全の場合)または脊髄損傷後の対象の予防処置に用いることができる。治療的投与は、脊髄損傷の診断または発症の後に、治療的有効量の薬剤を対象に投与することを含む。
本明細書に教示された方法によれば、対象は本薬剤の治療的有効量を投与される。有効量および有効投与量という用語は、互換的に用いられる。有効量という用語は、所望の生理学的応答を生じさせるために必要な任意の量として定義される。本薬剤を投与するための有効量およびスケジュールは実験によって決定することができるが、そのような決定をすることは当技術分野の技能の範囲内である。投与のための用量域は、疾患または障害の1つ以上の症状に影響を及ぼす(例えば、軽減または遅延)という所望の効果をもたらすのに十分な用量域である。用量は、好ましからざる交差反応、アナフィラキシー反応などの有害な副作用を実質的にもたらすほど高用量であってはならない。用量は一般に、年齢、状態、性別、疾患の種類、疾患もしくは障害の程度、投与経路、または投薬計画に他の薬物が含まれているかどうかによって異なり、当業者が決定することができる。なんらかの禁忌がある場合は、個々の医師が用量を調節することができる。用量は変えることができ、1日または数日間にわたって毎日、用量の投与を1回以上行うことができる。一定の種類の医薬品については、適切な用量を文献に見出すことができる。
任意で、1mg/kg未満の用量のGGF2、または1mg/kgのGGF2を含む組成物を、患者に投与する。1mg/kg未満の用量としては、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、または1〜0mg/kgの間の任意の量が挙げられる。この用量を1回投与してもよく、または数日間、数週間、または数年間にわたり1回以上繰り返してもよい。したがって、総投与量は1mg/kgであり得る。任意で、1回以上投与される用量は0.8mg/kgである。任意で、脊髄損傷の少なくとも24時間後に用量を投与する。時間をかけて何回も用量を投与する場合は、任意で最初の用量を脊髄損傷から少なくとも24時間後に投与する。最初の用量投与に続いて、さらなる用量を毎回ある程度の時間をおいて投与することができる。例えば、1mg/kg未満の用量を2日以上にわたって毎日対象に投与してもよく、その場合、日にちは任意で集中しているか、または任意で集中していない。日にちが集中していない場合、最初の投薬から任意の日数をあけた後に2回目の投薬を実施してもよい。1mg/kg未満の用量の後が、1mg/kg以上の用量であってもよい。
任意で、GGF2またはその組成物は、例えばステロイド性および非ステロイド性抗炎症薬などの抗炎症薬をはじめとする他の薬剤と組み合わせて投与する。任意で、ステロイドはプレドニゾンである。
任意で、例えば脊髄損傷の場合であれば脊椎骨折を安定させるために、GGF2を外科手術との併用で投与する。また脊髄の損傷または炎症が考えられる場合に、例えば椎弓切除述、脊椎固定術などをはじめとする脊髄手術と共に、GGF2を予防的に用いることもできる。
1mg/kgの用量より1mg/kg未満の用量の方が、例えば少ない副作用や少ない経費、および/または用量の最適化、および/またはV字形の用量反応曲線に基づく投与計画などの利点がある。
当業者は、疾患もしくは障害の重症度、または疾患もしくは障害のリスク、対象の年齢および体重などに基づいて、用量および投与様式を選択する。
本明細書に用いられる場合、治療、治療する、または治療することという用語は、疾患もしくは状態(例えば、脊髄損傷)の影響、または疾患もしくは障害の症状を少なくする方法を指す。したがって、開示された方法では、治療とは確定された疾患もしくは状態の重症度、または疾患もしくは状態の症状の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%の軽減のことであり得る。例えば、対象の疾患の1つ以上の症状に対照と比べて10%の軽減がみられれば、疾患の治療方法が治療と認められる。したがって、この軽減は、生来のレベルまたは対照のレベルと比較して10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、または10%〜100%の間の任意の割合の軽減であり得る。治療が必ずしも疾患、状態、または疾患若しくは状態の症状の治癒または完全切除を意味しないことが了解されている。対象への投与の効果は、状態の症状の軽減、状態の重症度の軽減、または状態の完全切除という影響をもたらし得るが、これに限定はされない。
本明細書に用いる場合、疾患もしくは障害を予防する、予防すること、および予防という用語は、対象が疾患もしくは障害(例えば、脊髄損傷)の1つ以上の症状を示し始める前、またはそれと同時に発生し、疾患もしくは障害の1つ以上の症状の発現もしくは悪化を阻害もしくは遅延させる行動、例えば治療剤の投与を指す。本明細書に用いる場合、低下させる、軽減させる、または阻害するとの言及は、対照レベルと比較した場合の10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上の変化を含む。このような用語は完全な除去を含み得るが、必ず含むとは限らない。
開示されるのは、開示された方法および組成物に用いることができるか、それと共に用いることができるか、その準備に用いることができるか、またはその産物である、材料、組成物、および成分である。これらの材料および他の材料が本明細書に開示されており、そしてこのような材料の組み合わせ、サブセット、相互作用、グループなどが開示されるときに、これらの化合物の多様な組み合わせや置換の個々のものと集合体について触れた具体的な文献は明確に開示されていないかもしれないが、本明細書にはそれぞれが具体的に企図され、記載されていることが了解されている。例えば、ある方法が開示されて論じられ、その方法を含むいくつもの分子に対して実施し得るいくつもの変更が論じられる場合に、その方法のありとあらゆる組み合わせと置換、そして考え得る変更が、逆の記載のない限り具体的に企図される。同様に、これらのあらゆるサブセットまたは組み合わせも具体的に企図され、開示される。この考えは、本開示組成物を用いた方法の各ステップを含む本開示のすべての側面に当てはまるが、限定はされない。したがって、実施し得るさらなるステップがある場合は、このさらなるステップのひとつひとつが、本開示の方法のうちいずれの方法ステップまたはいずれの方法ステップの組み合わせとも、共に実施し得るものであり、またこのような組み合わせまたは組み合わせのサブセットの各々が具体的に企図されており、開示されたと考えるべきものであることが了解される。
本明細書に引用した刊行物、および引用の目的たる資料は、参照することによりその全体が本明細書に具体的に組み込まれる。
実施例1
軸索の脱髄および異常な髄鞘再形成が、慢性の脊髄損傷(SCI)のおもな病理的帰結である。適切な髄鞘形成を欠く軸索は、活動電位を効率的に伝導することができない。適切な伝導の再建が、損傷部位の下部の機能改善をもたらす。成体の脊髄は、増殖の増大によって自発的に脊髄損傷に応答する内生のグリア前駆細胞のプールを含有する。脊髄損傷後の機能回復を向上させるための治療的手法としては、これらの細胞の増殖を促進させてより機能的な成熟グリアを生じさせ、生存し、再生する軸索の髄鞘形成をもたらすことが挙げられる。塩基性繊維芽細胞増殖因子(FGF2)およびグリア増殖因子2(GGF2)は、脊髄損傷後に上方調節され、オリゴデンドロサイトの生成を促進することがインビトロおよびインビボの両モデル系で確認された2つのマイトジェンである。これらの因子は、マウスの脊髄損傷モデルの長期的な機能回復をインビボで促進するのに用いることができる。
図1に概要を示す通り、成体マウスに対し、Infinite Horizons 損傷装置(60 kdyn force)を用いて、第9胸椎(T9)に標準化された不完全な挫傷性脊髄損傷を施した。この損傷マウス(群ごとに n=11)に対し、損傷後1日目から7日間にわたり、FGF2(0.02mg/kg、皮下)、GGF1(0.8mg/kg、皮下)、FGF2+GGF2の組み合わせ、または生理食塩水単独を、1日1回注射した。
損傷後1、7、14、21、および28日目に、Basso Mouse Scale(BMS)のオープンフィールド歩行スケールを用いて、後肢の機能回復を評価した。図5に示す通り、FGF2+GGF2またはGGF2単独による治療は、生理食塩水で治療した対照群に対してBMSスコアの有意な改善をもたらした。損傷後28日目に、組織学的評価のために脊髄を取り出した。エリオクロム−シアニン染色(図9C)による測定では、保存された白質部に増殖因子治療の有意な影響は認められなかった。
さらなる分析用に、生理食塩水治療マウス(n=5)およびGGF2治療マウス(n=5)から、脊髄の代表的なサブセットを選択した。NF200染色を用いた軸索数の推定では、治療群の間に有意差は認められなかった(図9I)。しかしながら、CC1免疫染色の立体解析学的評価により測定したところ、GGF2またはFGF2+GGF2で治療を受けたマウスの損傷中心部には、成熟オリゴデンドロサイト数に有意な増加が認められた(図8B)。したがって、不完全な挫傷性脊髄損傷のFGF2+GGF2による治療の遅延(損傷後1日目)が、消失したオリゴデンドロサイトの置換を促進して脊髄損傷からの長期的な機能回復を促進し、脊髄損傷の治療戦略としての内在的回復機構の向上を支持している。さらに具体的には、GGF2での治療が、後肢の運動機能のための下行路を含む関心領域(ROI)である外腹側白質のオリゴデンドロサイトの総数を、脊髄損傷後に慢性的に増加させる。脊髄損傷後7日目までにオリゴデンドロサイトの増殖が増大することに加えて、GGF2による治療が、血管に関連するPDGF受容体β発現周細胞などの他のNG2発現細胞を有意に増加させる。また、GGF2による治療は、Sox2陽性神経幹細胞の数を増加させる。
実施例2
0.8mg/kgの用量のGGF2単独での治療は、脊髄損傷後の回復を著しく強化するのに有効であった。図5に示す通り、損傷後1週間目から4週間目にかけて、オープンフィールド歩行が著しく改善された。GGF2は、FGF2+GGF2の組み合わせと同程度に有効であった。図9Cに示す通り、GGF2による治療は、損傷後4週間目の保存された白質部には著しい影響を及ぼさなかった。しかしながら、白質の成熟オリゴデンドロサイトの総数が、ビヒクル(生理食塩水)治療対照群の総数の2倍以上に増加した(図8B)。保存された白質の最初の成熟オリゴデンドロサイトの約半数が、脊髄損傷後24時間のうちに消失したことを以前の研究が示しているように、0.8mg/kgのGGF2単独での治療を脊髄損傷後24時間目に開始すると、置換オリゴデンドロサイトの産生を促すのにきわめて有効であることを結果が示している。このような細胞は、図8Bに示す通り、軸索の髄鞘形成に重要であり、そのため軸索機能を強化し、脊髄損傷からの機能回復を促進させる。
材料および方法
脊髄損傷(SCI)。 重量225〜300gの雌のSDラット(Zivic Miller Laboratories, Inc.; Pittsburgh, PA)に対し、手術を実施した。抱水クロラールでラットに麻酔をかけ(360mg/kg腹腔内)、第8胸椎(T8)のレベルで椎弓切除を実施して硬膜輪を露出した。露出した硬膜上に配置した囲い込みの上に、2.5cmの高さから10gの重りを落下させることによって、挫傷を作り出した(Wrathall et al., Exp.Neurol.88:108−22(1985))。オリゴデンドロサイト系統の全ての細胞が改良されている緑色蛍光タンパク質を発現する成体CNP−EGFP(Yuan et al., J. Neurosci. Res. 70:529−45(2002))雌マウス(15〜20g)をアベルチン(2,2,2−トリブロモエタノール、0.4〜0.6mg/kg)で麻酔し、第9胸椎に椎弓切除術を実施して、椎骨の脊髄上に重なる部分を除去し、硬膜輪を露出した。脊柱は、第7胸椎および第10胸椎に横断クランプを用いて、外側突起を経由して安定させた。60kdynの力を有するInfinite Horizon(Precision Systems & Instrumentation; Fairfax Station, VA)脊髄インパクターを用いて、中等度の挫傷性損傷を作り出した(Nishi et al., J.Neurotrama 24:674−89(2007))。脊髄損傷後、ラットおよびマウスを吸収性の高い床敷きの上にとどめ、反射膀胱が得られるまでその膀胱を1日2回手で絞り出した(脊髄損傷後7〜14日)。ラットおよびマウスの行動を検査して、挫傷後24時間で損傷を確認した。次に、無作為化ブロック実験デザインに従って、動物を治療群に割り付けた。
薬物治療。 組換え型ヒトグリア増殖因子2(GGF2)はAcorda Therapeutics(Hawthorne, NY)によって提供され、繊維芽細胞増殖因子は(FGF2)はPeprotech(Rocky Hill, NJ)から得た。薬物を、図1に示す通り、脊髄損傷後1日目〜7日目にわたり1日1回、滅菌生理食塩水に溶解させて皮下投与した。ラットには1mg/kgのGGF2を、マウスはFGF2(0.02mg/kg)、GGF2(0.8mg/kg)、またはFGF2(0.02mg/kg)+GGF2(0.8mg/kg)を投与した。ビヒクル対照、生理食塩水を投与した。
行動実験。 損傷後1日目およびその後6週間目まで毎週、Basso, Beatie and Bresnahan(BBB)オープンフィールド拡大運動スコアを用いて後肢の運動の回復を評価した(Basso et al., J. Neurotrauma 12:1−21(1995))。テストは0〜21の評定尺度法であり、後肢が完全に麻痺した動物を0、歩行運動が正常な動物を21と評価する。またラットに対しても、オープンフィールド歩行運動(運動スコア);後肢伸展、痛み、および圧迫に対する屈筋反射;着地(foot placing)、足指拡大(toe spread)、および立ち直り反射;斜面上の位置の維持、ならびに水泳をはじめ、後肢運動感覚機能の回復を判定する一連のテストによる評価を実施した。これらのテストの結果は、複合行動スコア(Combined Behavioral Score){CBS(Gale et al., Exp. Neuro. 88:123 34 (1985))}として報告されている。すべてのテストで異常が認められた完全麻痺のラットは100と評点され、機能の正常なラットは0の評価を受けた。いずれのラットも、治療群が知らされることなくテストされた。
マウスに対しては、損傷後1日目およびその後4週目まで毎週、移動運動のためのBassoマウススケール(BMS)を用いて、オープンフィールド移動運動での後肢機能をテストを実施した(Basso et al., Exp. Neurology 139:244−56(1996))。この評定尺度は0〜9の範囲にわたり、0の評点は後肢の動きがない状態を表し、9の評点は組織的な体重のかかる移動運動で正常に用いられている状態を表す。行動実験は、すべての一次データが回収され、分析されるまでは治療群を知らされない治験責任医師によって実施された。
病理組織学的検査のための組織の潅流および調製。 損傷後の指定された時期に、対象に麻酔を実施し、リン酸緩衝生理食塩水およびそれに続く4%緩衝パラホルムアルデヒド(PFA)で心臓全体の(transcardially)潅流を実施した。脊髄を除去し、PFA中に一晩後固定し(postfixed)、ショ糖密度勾配中(10%ショ糖中に1時間、15%ショ糖中に1時間、20%ショ糖中に1時間、および30%ショ糖中に一晩)低温保存した。損傷中心部の中央の脊髄切片を除去し、OCT化合物(Tissue−Tek(登録商標);Sakura Finetek USA, Inc.;Torrance, CA)中に埋め込み、−20℃で保存した。一続きの20μmの冠状切片を切り取り、スライドを−20℃で保存した。組織形態を評価し、脊髄ひとつひとつに対して損傷中心部の位置を判定するために、代表的なスライドをエリオクロム−シアニンで染色してミエリンを標識した(Grossman et al., Exp. Neurology 168:273−82(2001))。
白質の保存。 損傷中心部でも中心部から吻側および尾側の箇所でも、エリオクロム−シアニンで染色された総面積を定量することによって残留白質部を算出した。2.5Xの倍率で画像を撮影し、NIH ImageJソフトウェアを用いて分析した。8ビット画像ひとつひとつの閾値レベルを設定してエリオクロム陽性の画素だけを表示し、各切片の合計エリオクロム陽性面積を算出した。
免疫組織化学。 損傷中心部から吻側および尾側へ指定された距離にある脊髄切片に対し、免疫組織化学を実施した。スライドを室温まで1時間にわたって平衡化させた後、10%緩衝ホルマリンとともに10分間インキュベートした。切片をPBSで洗浄し、0.3%Hとともに30分間インキュベートして、内因性ペルオキシダーゼ活性を抑えた。ミエリンタンパク質P0およびプロテオリピドタンパク質(PLP)を染色するため、スライドをアルコール勾配に供して断片から脂質を除去した。次に、スライドをPBSですすぎ、PBS中10%血清+0.3%トリトンX−100で1時間ブロックした。次に、断片を一時抗体とともに4℃で一晩インキュベートした(表2)。APC{CC1}(Abcam;Cambridge, MA)、OX42(Serotec)、およびBrdU(BD Biosciences; Franklin Lakes, NJ)に対する一次抗体は、マウス中に育てたモノクローナルである。NG2(Millipore; Billerica, MA)、Sox2(Millipore)、およびNF200(Sigma;St. Louis, MO)に対する一次抗体は、ウサギ中に育てたポリクローナルである。P0およびPLPに対する一次抗体は、ニワトリ中に育てたポリクローナルである(Aves Labs, Inc.;Tigard, OR)。スライドをPBSで洗浄し、二次抗体とともに室温で1時間インキュベートした。PBS+1%血清および0.3%トリトンX−100中で希釈したマウス、ウサギ、またはニワトリ免疫グロブリン(Jackson Immunoresearch; West Grove, PA)を標的とするCy3−抱合型および/またはCy5抱合型ヤギ二次抗体を用いて、蛍光免疫組織化学を実施した。最後に、スライドを洗浄し、DAPI(Vector Laboratories; Burlingame, CA)を入れたVectashieldを搭載した。ビオチン化ヤギ抗マウス二次抗体(Vector Laboratories)、続いてアビジン−ビオチンペルオキシダーゼ複合体(ABC Elite, Vector Laboratories)を用いてスライドをインキュベートすることにより、免疫ペルオキシダーゼ染色を実施した。スライドを洗浄し、次にニッケルを強化した3,3‘ジアミノベンジジン(DAB)(Vector Laboratories)を適用し、黒色の反応生成物を得た。続いてスライドを乾燥させ、Permountを搭載した。すべての免疫組織学的染色実験を、適切な陽性対照組織および二次のみの陰性対照とともに実施した。
細胞増殖試験。 ラットおよびマウスに対し、複数の時点(結果に明記)でブロモデオキシウリジン(BrdU, 17mg/kg)の腹腔内注射を実施して、損傷後1週目に有糸***のS期にある細胞を標識した。脊髄中のBrdUを検出するため、10%ホルマリンで切片を処理し、PBSで洗浄し、続いて37℃で25分間にわたり2MのHClで処理した。次に、0.1Mのホウ酸塩緩衝剤(pH8.5)を用いて組織を10分間中和した。切片をPBSで洗浄し、0.3%Hで内因性ペルオキシダーゼを失活させ、続いて20%血清中で1時間ブロックした。次に、室温で1時間にわたり、マウス抗BrdU抗体(BD Biosciences)で組織をインキュベートした。BrdU陽性細胞は、上述した通り、ビオチン化ヤギ抗マウス二次(抗体)、続いてアビジンビオチンペルオキシダーゼ複合体、次にDAB染色を用いて検出した。
損傷後1週目に(BrdU暴露の期間)組織中に慢性的に生じた成熟オリゴデンドロサイトを同定するために、染色した切片を洗浄し、20%血清中で30分間ブロックした。次に、マウス抗APC{CC1}(Abcam)とともに室温で1時間インキュベートした。ビオチン化ヤギ抗マウス二次抗体(Vector Laboratories)、続いてVector ABC EliteおよびVector NovaRed色原体を適用して、赤/茶色の反応生成物を得た。
不偏立体解析学。 CC1 細胞:28日マウス試験からの代表的な対象(BMSスコアに基づくもの)5体を各治療群から選択し、不偏立体解析学を用いて成熟オリゴデンドロサイト(CC1細胞)を定量した。動物1体ごとに、200gmの間隔で損傷部位の中心に位置する3つの切片を組み入れて、Stereo Investigatorソフトウェア(MBF Bioscience; Williston, VT)を使用した光学分留装置方式を用いて計数した。一次抗体としてMs x APC(CC1)を、色原体としてDABを使用した免疫ペルオキシダーゼ法を用いて切片を染色した。切片にクレシルバイオレットで対比染色を実施して、核が目に見えるようにした。保存された白質および非白質の外形を示す輪郭を、隣接する切片のエリオクロム染色に基づいて、ひとつひとつの切片に描き出した。180gm x 180gmの正方形で構成される試料用グリッドを、各切片の上にかぶせた。計算グリッドの各正方形内にある45gm x 45gmの計算盤の中で、100倍で細胞を計数した。これらのパラメーターは、CC1細胞数のCE値が<0.10となるように定めた。各切片の保存された白質および非白質の全体にわたり、CC1成熟オリゴデンドロサイトを計数した。
CC1 /BrdU 細胞: CC1/BrdU細胞の計数試験には、 CC1細胞計数試験に用いられた切片に隣接する切片を用いた。Stereo Investigatorソフトウェアに支援された光学分留装置を用いて計数するために、動物1体ごとに、200gmの間隔を置いて損傷部位の中心に位置する3つの切片を組み入れた。上述した方法で、切片を染色した。140gm x 140gmの正方形で構成される試料用グリッドを、各切片の上に置いた。係数グリッドの各正方形内にある60gmx 60gmの計数盤の中で、100Xで細胞を計数した。二重標識されたCC1/BrdU細胞は、黒いBrdU核の少なくとも4分の3が、CC1を表す赤/茶色の染色で囲まれている場合にだけ計数した。
関心領域の計数(ラット)。 以前の研究が示す通り(Grossman et al., Exp. Neurology 168:273−82(2001); Rosenberg and Wrathall, J. Neurosci. Res. 66:191−202(2001); Zai and Wrathall, Glia 50:247−57(2005))、損傷中心部の吻側および尾側の規定位置にある残留白質の腹側正中領域に位置する特定領域(0.0625mm)のレチクル内で、細胞を計数した。各ラットの細胞数は、3つの脊髄切片それぞれの両側の各距離にある数の平均値(6サンプル)である。
関心領域の計数(マウス)。 Olympus FV300レーザー走査共焦点顕微鏡(Olympus; Center Valley, PA)を用いて、60xで画像を撮影した。病変境界と脊髄組織外周との間の左右腹外側白質の0.02mmの関心領域(ROI)内で、細胞を計数した。後肢機能には脊髄の腹部および腹外側部が関与しており、機能の回復にはこれらの部位の保存が大きく寄与する。この部位は、あらゆる対象で顕性病変がないことが認められている。損傷中心部、および中心部から200μm吻側および尾側の切片で、細胞を計数した。したがって、各対象の平均細胞/mmの値は、6つの関心領域の細胞数から決定される。
PLPの定量。 Zeiss LSM 510レーザー走査共焦点顕微鏡を用いて、PLP標識切片の20Xタイル走査(tilescan)(4x4)を得た。動物1体ごとに、200μm間隔で損傷部位を中心に配置された3つの切片を組み入れて定量した。NIH ImageJ 1.44mの中に画像を開き、元の画像の画素/μm比を反映するように目盛りを設定した。各切片の総面積は、polygon selection toolを用いて切片の輪郭を描くことによって決定した。画像を8ビット形式に変換し、PLP染色を反映するように閾値を設定した。PLP染色は、脊髄総面積に対する割合として表現された。次に、各切片に観察されたPLP染色に基づき、polygon selection toolを用いて病変部位の輪郭を描いた。病変の境界は、ミエリン染色があまりみられなかった非白質部から残留白質(広範囲に及ぶPLP染色)を区別する線として規定された。次に、描かれた非白質部の外の領域を除去し、病変内のPLP領域の割合を決定した。保存された白質のPLP染色は、PLP染色全体から非白質のPLP染色を差し引くことによって決定された。
NF200の定量。 Zeiss LSM 510レーザー走査共焦点顕微鏡(Carl Zeiss, Inc.; Thornwood, NY)を用いて、NF200およびPLPの二重標識切片の20Xタイル走査(4x4)画像を得た。動物1体ごとに、200μm間隔で損傷部位の中心に位置する3つの切片を組み入れて定量した。NIHImageJ 1.44の中に画像を別々に開き、積み重ねた。病変部位は、各切片に観察されたPLP染色に基づいて輪郭を描いた。病変の境界は、ミエリン染色があまり見られない非白質部位から保存された白質(広範囲のPLP染色)を区別する線として定義した。粒度および円形度のパラメーターを、NF200軸索だけが含まれるように設定した。損傷中心部ならびに吻側および尾側に200μmの位置で、保存された白質および非白質のNF200+粒子を定量した。
P0の定量。 Zeiss LSM 510レーザー走査共焦点顕微鏡を用いて、P0標識切片の20xタイル走査画像を得た。動物1体ごとに、200μm間隔で損傷部位の中心に位置する3つの切片を、定量するために組み入れた。隣接する切片に観察されたPLP染色に基づき、polygon selection toolを用いて病変部位の輪郭を描いた。病変および残留白質内のP0面積の割合を、PLP染色に関する記述に従って決定した。
Sox2細胞の計数。 Zeiss LSM 510レーザー走査共焦点顕微鏡を用いて、CNPEGFPマウス由来のSox2標識切片の20Xタイル走査(4x4)画像を得た。動物1体ごとに、200μm間隔で損傷部位の中心に位置する切片を3つ、定量のために組み入れた。Sox2の合計細胞数を得るために、NIH ImageJ 1.44の中で各画像のCy3チャネルを8ビット画像に変換した。各切片の合計面積は、polygon selection toolを用いて切片の輪郭を描くことによって決定した。閾値は、元の画像の染色を反映するように設定した。Sox2染色細胞だけを組み入れるように、サイズおよび円形度の限界を設定した。Sox2/CNP−EGFT細胞数に関しては、各画像のCy3およびEGFPチャネルをAdobe Photoshop 7.0(Adobe; San Jose, CA)に別々に開き、ひとつにまとめた。ズームを286%に設定し、各画像の上に360x360ピクセルのグリッドをかぶせた。グリッドの各四角形の中で、二重標識された細胞を手作業で計数した。二重標識されているように思われた細胞を、各画像の層を順次オフにすることによって確認した。
試料採取および統計分析。 あらゆる場合に、対象数はサンプルサイズの役目を果たした。データは、平均±SEMとして報告されている。有意性は概して、損傷後の時間(行動)、または中心部に対する切片の位置(細胞計数)を治療効果の反復測定として、反復測定ANOVAを用いて決定した。総合的に有意な治療効果が認められた場合は、チューキーの事後試験を用いて、いつ/どこで差が有意であったかを評価した。必要に応じて、学生のtテストも用いた。有意性をp<0.05に設定した。
結果
脊髄損傷(SCI)後1週目の間にGGF2の全身投与が内因性前駆細胞の増殖を高めるかどうかを判定するため、脊髄損傷ラットにGGF2(1mg/kg皮下、n=8)または生理食塩水(皮下、n=8)を損傷後24時間目から1日1回、1週間にわたって与えた。損傷後2、3、および4日目に、動物にブロモデオキシウリジン(BrdU、17mg/kg、腹腔内)を注射し、有糸***S期の細胞を標識した。図2Aに示す通り、GGF2療法は脊髄損傷後7日目までに、中心部から2mm吻側および2mm尾側の位置に残留する腹内側白質(VMWM)のBrdU標識細胞の数を増加させた。またGGF2療法は、この同じ位置のBrdU標識NG2細胞の数も有意に増加させた(図2B)。試験したすべての部位で、増殖細胞の総数の約50%がNG2であった。 ラットの挫傷性脊髄損傷モデルでは、損傷後1週間目にマクロファージおよびモノサイトが損傷部位に浸潤する。これらの細胞にGGF2療法の効果があったかどうかを試験するため、抗BrdU抗体および小グリア/マクロファージマーカーOX42に対するモノクローナル抗体で脊髄切片を免疫標識した。検査部位のいずれにおいても、生理食塩水治療群とGGF2治療群との間で、OX42/BrdU細胞の数の有意差は認められなかった(図2C)。
1週間のGGF2療法が損傷部位近傍のNG2細胞の増殖を促進させたため、この同じ治療戦略を検討して、脊髄損傷後の長期的な機能回復に影響があったかどうかを判定した。損傷後6週間にわたって、GGF2(n=11)および生理食塩水(n=11)で治療したラットの行動を評価した。損傷後1日目およびその後毎週、後肢運動機能のBBBテストおよび後肢の総合的感覚運動障害の評価である複合行動スコア(CBS)試験を実施した。両テストとも、機能回復に対するGGF2の有益な効果を示した(図3Aおよび3B)。治療の効果は、BBBスコアの測定では2週目から(図3A)、そしてCBSスコアの測定では4週目から(図3B)、統計的に有意となった。いずれの測定も脊髄損傷後4〜6週間目に、有意に向上した長期回復を示した。
観察された行動の改善を保存された軸索の髄鞘再形成の向上に帰することができるものかどうかを判定するために、損傷後7日目および42日目に潅流した脊髄損傷ラットの脊髄切片をエリオクロム−シアニンで染色し、損傷中心部およびそこから1〜4mm吻側および尾側の白質を、1mm間隔で定量した(図4)。損傷後7日目の白質部に群間差は認められなかった(図4A)。しかしながら、GGF2療法は損傷後42日目に、損傷中心部および中心部から吻側および尾側に1mmの部位に白質の有意な増加をもたらした(図4B)。各対象の損傷中心部のエリオクロム染色プロフィール透写図は、生理食塩水治療群とGGF2治療群との間では、白質部の髄鞘形成に差があったことを示している(図4C)。
GGF2と同じく、FGF2は内因性グリアのマイトジェンであり、その発現は、脊髄損傷後1週目にラット脊髄の損傷部位近傍で上方調節される。損傷ラットの脊髄(損傷後3日)から単離されたNG2細胞の培養物に対し、FGF2+GGF2の組み合わせを塗布すると、いずれかの因子単独よりも大量の増殖を誘発した。また、マウスの脊髄損傷直後にFGF2+GGF2を1週間全身投与すると、損傷後8日目には中心部の残留白質でNG2細胞総数および成熟オリゴデンドロサイト総数が増加していた。FGF2とGGF2との組み合わせが、脊髄損傷後の機能回復に相加的な薬効、または相乗的な薬効さえもたらし得るという仮説の判定を試みた。回復の促進に対してオリゴデンドロサイトが果たす役割をいっそう詳細に検討することができるように、CNP−EGFPマウスを用いた。オリゴデンドロサイト系統の全ての細胞がEGFPを発現するCNP−EGFPマウスに、標準の挫傷性脊髄損傷を与えた。
短期マウス試験では、CNP−EGFPマウス4群(n=5/群)に不完全脊髄損傷を与え、生理食塩水、FGF2(0.02mg/kg)、GGF2(0.8mg/kg)、またはFGF2(0.02mg/kg)+GGF2(0.8mg/kg)の治療を受けるように割り付けをした。ラット試験の場合と同じく、損傷後24時間目から7日間にわたって1日1回薬物治療を実施した。またマウスには、損傷後2、4、および7日目にブロモデオキシウリジン(BrdU、17mg/kg、腹腔内)の注射も実施して、有糸***S期の細胞を標識した。移動運動のためのBassoマウススケール(BMS)を用いて、損傷後1日目および7日目に後肢運動の回復を評価した。長期マウス試験のための治療パラダイムを同じ方法で体系化したが、対象数を11/群とし、行動試験を損傷後28日まで延長した。
いずれの薬物治療も、損傷後7日目の脊髄損傷マウスの機能回復に影響を及ぼさなかった。しかしながら、GGF2治療もFGF2+GGF2治療も、生理食塩水治療群と比較して、長期的な機能回復を有意に改善した(図5)。損傷後28日目には、治療された対象は、対照より協調のとれた運動、後足によるより着実なステッピングを示した。FGF2は機能回復に有意な効果を示さず、脊髄損傷後の機能改善を引き起こすためには、GGF2だけで十分であることが示唆された。
損傷後7日目に潅流された対象の組織を用いて、GGF2療法が、残留白質中のNG2細胞、オリゴデンドロサイト系細胞(図6Bおよび6E)、および成熟オリゴデンドロサイト(図6Cおよび6E)をはじめとするいくつかの異なる細胞型に及ぼす作用を調べた(図6Aおよび6E)。損傷後1週間までに、生理食塩水治療の対照と比べてGGF2治療は、損傷中央部の腹外側白質(VLWM)のNG2細胞および非オリゴデンドロサイト系(EGFP/NG2)NG2細胞集団の総数を有意に増加させた。GGF2治療対象では、この領域のオリゴデンドロサイト系細胞(EGFP、図6D)の総数も増加した。GGF2療法は、成熟オリゴデンドロサイトの数を増加させる傾向を示した(図6D、p=0.06対生理食塩水)が、治療のエフェクトサイズは統計的有意性に達しなかった。
Sox2は、中枢神経系の発達過程で神経幹細胞に発現される転写因子であり(Collignon et al., Development 122:509−20(1996))、幹細胞の自己再生および多能性を調節する働きがある(Fong etal., Stem Cells 26:1931−8(2008); Kim et al., Nature 454:646−50(2008))。Sox2の脊髄発現は、主として損傷のないマウスの中心管の内側を覆う上衣細胞に限られる。しかしながら、Sox2の発現は、脊髄損傷後の残留白質中で有意に増加し、損傷後7日で最大となる。Sox2抗体で免疫標識されたCNP−EGFP細胞の定量により、GGF2療法が損傷後7日で、損傷中心部のSox2を発現するオリゴデンドロサイト系細胞の数を有意に増加させたことが示されている(図7C)。
脊髄損傷後1週目に***する細胞は、インビトロでもインビボでも、生き残って成熟オリゴデンドロサイトに分化する。増殖因子療法が、脊髄損傷後に成熟オリゴデンドロサイトへと不断に分化する細胞の数を増やし得るかどうかを検討した(図8)。11体のマウスのうち5体のサブセットから得た切片を、不偏立体解析学の光学分留装置法を用いた細胞の計数に用いた(Stereoinvestigator, MBF Biosciences; Williston, VT)。選択された対象は、BMSスコアに基づくそれぞれの治療群全体を代表した。損傷部位の中心に位置する長さ400μmの脊髄の白質および非白質で、成熟オリゴデンドロサイト(CC1細胞)の総数を計数した。FGF2+GGF2およびGGF2単独の両治療法とも、生理食塩水で治療した対照より白質中の成熟オリゴデンドロサイト数を有意に増加させた(図8B)が、病変/非白質部ではいかなる薬物治療の効果もみられなかった(図8C)。生理食塩水対照に対して、GGF2療法は、白質中の成熟オリゴデンドロサイトの数をほぼ2倍に増加させた。BrdUおよびCC1に対する二重免疫標識実験(図8D)を用いて、薬物療法中に***している細胞に由来するオリゴデンドロサイトを検出した。GGF2療法は、白質中のCC1/BrdU細胞を約2.5倍に増加させた(図8E)。脊髄損傷後1週目に増殖中であった細胞に由来する損傷後28日目の成熟オリゴデンドロサイト総数の割合もまた、GGF2療法によって有意に増加した(図8F)。
GGF2療法後の増加したオリゴデンドロサイト数が損傷脊髄の軸索に髄鞘形成の増大をもたらしたかどうかを評価するために、損傷後28日の脊髄切片の総白質面積を、エリオクロム−シアニン染色を用いて損傷中心部の中心に位置する1.6mmの脊髄切片全体にわたって定量した(図9A)。テスト部位のいずれにおいても、白質面積に群間差は認められなかった(図9B)。またGGF2は、PLP染色面積の評価によって定量されたとおり、損傷中心部の中枢神経系特異的髄鞘形成に対しても検出可能な全般的効果を示さなかった(図9C〜9E)。対照群も治療群も類似のNF200染色を示したため、GGF2療法を用いた軸索保存に対する効果は検出されなかった(図9F〜9H)。
シュワン細胞が脊髄損傷後に損傷部位に浸潤し、自発的機能改善の根底にある機序に貢献していると思われる。GGF2が損傷部位の末梢神経系特異的髄鞘形成に長期にわたる影響を及ぼしたかどうかを評価するため、損傷後28日目に損傷中心部±200μmから得た切片を染色して末梢性髄鞘の構造タンパク質P0を明らかにした(図10)。GGF2で治療された対象は、生理食塩水治療の対照に観察されたP0染色量の約2倍のを有した(図10D)。GGF2療法は、病変部位にも(図10E)残留白質にも(図10F)にもP0染色の増加をもたらした。GGF2療法がp75+シュワン細胞前駆細胞に影響を及ぼしたかどうかを評価するため、損傷後28日に損傷中心部から得た切片をp75の抗体で染色した。GGF2療法が、損傷後28日の損傷中心部付近の非白質にあるp75+シュワン前駆細胞に対し、有意な影響を及ぼさないことが示された(図13)。
GGF2療法が周細胞の産生またはCD31の産生に影響を及ぼしたかどうかを評価するため、NG2−dsRed x CNP−EFFP二重トランスジェニックマウスの病変内の切片を、周細胞のマーカーに対する抗体(PDGFRβに対する抗体)および血管のマーカーに対する抗体(CD31に対する抗体)で標識した。GGF2療法が損傷後7日目に、周細胞数およびCD31+染色を増大させたことが認められた(図11および12)。CD31+染色が増大したことは、GGF2療法による血管再生を示唆する。周細胞およびCD31+染色を病変境界にも保存された腹外側白質(VLWM)にも実施し、GGF2療法がこれらの領域の周細胞数またはCD31+染色には効果を及ぼさなかったことが分かった。
GGF2の全身投与は損傷した脊髄のNG2細胞の増殖を促し、残留組織でのオリゴデンドロサイトの発生および髄鞘形成を促進し、機能回復を著しく向上させる。内因性の回復機序を促すこの治療戦略は、損傷後24時間も経過した後に開始されるとはいえ有益な効果をもたらすものである。
GGF2は、シュワン細胞−DRG共培養においてナノモルより低い濃度でインビトロの髄鞘形成を促進させる化合物である可溶性NRG1タイプIIを代表する。またGGF2はさらに、マウス多発性硬化症モデルのインビボの髄鞘再形成を促進させ、ラットの末梢神経挫滅からの機能回復を向上させ、活性化された小グリア細胞からの遊離基の放出をインビトロで弱める。GGF2は、インビトロの損傷された脊髄に由来するシュワン細胞、オリゴデンドロサイト、およびオリゴデンドロサイト前駆細胞の公知のマイトジェンである。しかしながら、GGF2療法が、脊髄損傷後の生体ラットおよびマウスのインビボでのオリゴデンドロサイト発生および髄鞘形成を向上させることを示すのは、本結果が最初である。
挫傷性脊髄損傷のラットおよびマウスモデルの組織喪失が大部分、損傷後24時間までにニューロン、軸索およびグリアを含めた損傷中心部に発生するため、脊髄損傷後24時間目に始まるGGF2療法は、脊髄損傷後に活性化される回復プロセスに作用すると考えられる。脊髄損傷後4〜6週目には、いくつもの有益な効果が不断に認められたが、損傷後1週間目では、組織保存または後肢機能に対する薬物治療の効果は認められなかった。しかしながら、GGF2療法は、脊髄損傷後に喪失グリアを補充するための供給源となり得るNG2発現細胞の緊急増殖を著しく促進した。
NG2細胞の内因性増殖のレベルは、損傷後1週目には飽和せず、損傷後1日目から始まる外因性GGF2を用いた毎日の治療によってさらに上昇し得る。しかしながら、損傷ラットの脊髄の保存された白質におけるOX42ミクログリア/マクロファージの増殖に対しては、GGF2療法の効果が認められなかった。
脊髄損傷後にGGF2が誘発するNG2細胞の緊急増殖の促進は、最終的に、オリゴデンドロサイトの発生の増大および保存された軸索の髄鞘再形成の長期にわたる向上をもたらし得る。ラットの挫傷性脊髄損傷モデルの有髄白質は、損傷後長期にわたって増大したが、これは後肢機能の著しい改善を伴う効果であった。したがって、内在性OPCの活性化が薬効をもたらす。
不偏立体解析学が、損傷後28日の損傷部位のおよびそれに隣接する脊髄組織のオリゴデンドロサイトの総数を決定した。GGF2で治療された対象は、生理食塩水で治療された対照より、損傷部位の成熟オリゴデンドロサイトの数が長期にわたって有意に高く、またこの効果は、後肢の移動運動の著しい改善を伴った。しかしながら、マウスの脊髄損傷後の髄鞘形成した残留白質には、長期にわたる変化がみられなかった。損傷部位における軸索の相対数(NF200染色)および中枢神経系の髄鞘形成の程度(PLP染色)のさらなる尺度を提供するために用いられた免疫組織化学的方法では、GGF2治療群と生理食塩水対照群との間に差がみられなかった。興味深いことに、GGF2で治療された対象の損傷部位には、末梢神経系ミエリンの主要な構造タンパク質であるP0の染色に増加がみられた。上記の研究結果は、マウスに観察された機能回復の向上が、シュワン細胞による髄鞘形成の向上を伴ったことを示唆している。
多量のP0シュワン細胞ミエリン染色が損傷中心部、特に後根侵入部に検出された。また、P0染色は前根侵入部および病変内にもみられた(図10)。軸索マーカーNF200を用いた共標識実験では、生存軸索のP0髄鞘形成の痕跡が示された。重大なことには、GGF2療法が損傷中心部のP0の発現を増大させたが、これは移動運動機能の向上を伴った。
中枢神経系ミエリン(PLP)のエリオクロム染色および免疫組織化学的標識化によって、GGF2で治療された脊髄損傷マウスの中枢神経系の髄鞘形成には増加が検出されなかったが、これらの方法は、無傷のミエリンとミエリンの残骸とを区別しない可能性があり、これが新たに形成されたミエリンに対するGGF2の効果を不明瞭にし得る。代替として、または追加で、治療されたマウスで有意に増大したオリゴデンドロサイトの発生が、髄鞘再形成以外の機序を通して機能回復の向上に寄与する可能性がある。中枢神経系のニューロンは、最適な生存および成熟のために多くのシグナルを必要とし、ニューロンの完全性を維持するためにはオリゴデンドロサイトに由来する継続的な信号が必要である。オリゴデンドロサイトは、軸索の髄鞘形成に対して果たす役割に加えて、ニューロンの生存を促進し、軸索構造を維持し、存続する軸索のシナプス可塑性を支持することが可能なインスリン様増殖因子(IGF−1)、グリア由来神経栄養因子(GDNF)、および脳由来神経栄養因子(BDNF)をはじめとする可溶性因子を放出する。また、NRGシグナリングが、BDNFおよびNT−3をはじめとする因子のグリア細胞からの放出に影響を及ぼし、ニューロンの生存およびシナプスの形成を促進する。栄養因子の発現および放出は、オリゴデンドロサイトがニューロンと相互作用して損傷した脊髄に機能的な神経回路を形成し、維持する機構を示す。GGF2療法は、このような機能を実行し、機能回復を促進するオリゴデンドロサイトの能力を向上させる可能性がある。
このマウス脊髄損傷試験の興味ある新たな成果は、オリゴデンドロサイト系細胞におけるSox2の発現を、GGF2療法が上方調節したことである。Sox2(Y染色体の性決定領域(SRy)に関連する高移動性グループBox2)は、中枢神経系に発現された最も初期の転写因子のひとつである。神経幹細胞の増殖および未分化状態の維持に重要な役割を果たし、その発現は、ニューロンおよびOPSへの分化に際して下方調節される。興味深いことに、骨形態形成タンパク質2(BMP2)で処理した精製ラットのOPCは、Sox2遺伝子の再活性化に依存するプロセスを通じて多能性幹様細胞に変換される。また、アストロサイトは、マウス皮質の損傷後、インビボで細胞周期に再入した直後にSox2を再発現する。Sox2は、シュワン細胞系統の初期に発現され、分化すると下方調節され、損傷直後に急速に再発現される。その発現は、末端神経損傷後のシュワン細胞の脱分化に関係している。Sox2を発現する細胞の数は、挫傷性損傷後の脊髄の保存された白質中で飛躍的に増加する。CNP−EGFPマウスを対象とする現在の試験は、GGF2療法が脊髄損傷後7日目にSox2を発現するオリゴデンドロサイト系細胞の数を、生理食塩水で治療された対照と比べて著しく上昇させる(図7Bおよび7C)。OPCが通常はSox2を発現しないことを考えると、このようなEGFP/Sox2細胞は、発達のさまざまな段階でオリゴデンドロサイト系細胞を反映する可能性があり、これが損傷後に、より幹様の状態に転換する。
GGF2療法はほかにも、損傷後7日目に、損傷中心部の腹外側白質(VLWM)の非オリゴデンドロサイト系NG2細胞(EGFP/NG2)の数を著しく増加させた(図6E)。周細胞はNG2を発現する細胞系であり、毛細血管、細動脈、および小静脈の内皮細胞の反管腔側の表面に位置する。周細胞は、血管新生ならびに血液脳関門の密着結合の発達および維持に大きな役割を果たす。脊髄損傷後にこの細胞の応答を高める治療的介入は、損傷部位の血管再生に際して大きな利益となり得る。また、多数の研究が周細胞の多分化能幹細胞特性を立証しており、周細胞が成体幹細胞の供給源となっていることを示唆している。上記の通り、GGF2療法は、脊髄損傷後7日の病変部位の周細胞数を増加させることが明らかになった(図11)。
結論として、脊髄損傷後1週目にGGF2を毎日全身投与すると、臨床的に意義のある挫傷性脊髄損傷のラットおよびマウスモデルの両方で、機能回復が強化される。回復の促進は、NG2+細胞の1週間分の増加を伴い、損傷後にオリゴデンドロサイトの発生および髄鞘形成を長期にわたり増大させた。本試験は、損傷後24時間目に始まる治療により、有益な機能転帰を達成した。

Claims (18)

  1. 対象の脊髄損傷を治療する方法であって、該対象に1mg/kg未満のGGF2を少なくとも1用量投与することを含む方法。
  2. 各用量が1mg/kg未満のGGF2を含む複数の用量を対象に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 最初の用量が脊髄損傷から少なくとも1日後に対象に投与される、請求項1に記載の方法。
  4. 各用量が異なる日に投与される、請求項2に記載の方法。
  5. 神経幹細胞をGGF2に接触させることを含む、神経幹細胞の増殖を促進する方法。
  6. 前記接触させるステップが複数回実施される、請求項5に記載の方法。
  7. 前記接触させるステップが7日間にわたり毎日実施される、請求項6に記載の方法。
  8. 前記接触させるステップを、2、3、または4週間にわたって毎週実施することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
  9. 前記接触させるステップがインビトロで実施される、請求項5に記載の方法。
  10. 前記接触させるステップがインビボで実施される、請求項5に記載の方法。
  11. 前記インビボで接触させるステップが中枢神経系の損傷から1日以内に実施される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記神経幹細胞をFGF2に接触させることをさらに含む、請求項5に記載の方法。
  13. 対象の中枢神経系の損傷の後に神経組織の血管再生を促進する方法であって、該対象にGGF2を投与することを含む方法。
  14. 前記投与が損傷から1日以内に実施される、請求項13に記載の方法。
  15. 前記投与が複数の用量で実施される、請求項13に記載の方法。
  16. 前記GGF2が7日間にわたり毎日投与される、請求項15に記載の方法。
  17. 前記GGF2が2、3、または4週間にわたり毎週投与される、請求項16に記載の方法。
  18. 前記対象にFGF2を投与することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
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