ヒトVEGF−Cのアミノ酸配列を示す(配列番号1)。ヒトVEGF−CのVHDに下線が引かれている。
ヒトVEGF−Aのアミノ酸配列を示す(配列番号2)。
VEGF−C抗体VGX−100の重鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号3)。重鎖可変(VH)領域に下線が引かれている。
図3に示す抗体の軽鎖のアミノ酸配列を示す(配列番号4)。軽鎖可変(VL)領域に下線が引かれている。
実施例2に従ったPC−3ヒト前立腺腫瘍(異種移植)の単一の治療に対する時間(日)にわたる反応(腫瘍体積(mm3))を示す。VEGF−C抗体(VGX−100)は10(*)、20(◆)および40(△)mg/kgにて試験され、10mg/kg(灰色の■)のVEGF−A抗体(ベバシズマブ、アバスチン)と比較された。抗体は腹腔内注射によって週に2回投与された。ネガティブコントロールは、最上段の線(◆)によって示されている。10mg/kgと20mg/kgのVGX−100は、ネガティブコントロールと比べて改善されているが、互いに区別できない。しかし、40mg/kgのVGX−100や10mg/kgのベバシズマブほど有効ではない。40mg/kgのVGX−100は、10mg/kgのベバシズマブと同等に有効であることが示された。
実施例3に従った研究におけるヌードマウスにおいて、PC−3ヒト前立腺腫瘍異種移植モデルにおける時間(腫瘍移植後160日までの日数)にわたるがん腫瘍の平均サイズ(mg)を示す。マウスは単剤療法としてVEGF−C抗体(VGX−100)を用いて、または併用療法としてVEGF−A抗体(ベバシズマブ、アバスチン)および/または化学療法剤(ドセタキセル)を用いて治療された。VGX−100(40mg/kg)とベバシズマブ(10mg/kg)が腹腔内注射によって週に2回投与された。ドセタキセル(10mg/kg)が静脈注射によって腫瘍移植後7日目、14日目、および21日目に投与された。腫瘍移植後160日目において、最下段の線はVGX−100+ベバシズマブ+ドセタキセルの3剤併用療法である。そして下から順に、VGX−100+ドセタキセル、ベバシズマブ+ドセタキセル、ドセタキセルである。その他の治療は、160日目において区別できない。一方、60日目には、アイソタイプのネガティブコントロールが最上段である。そして上から順に、VGX−100、ベバシズマブおよびVGX−100+ベバシズマブである。
図6の様々な治療群における腫瘍組織量を示す。
図6のマウスの生存率を示す。移植後160日目において、最上段の線はVGX−100+ベバシズマブ+ドセタキセルの3剤併用療法である。そして上から順に、VGX−100+ドセタキセル、ベバシズマブ+ドセタキセル、ドセタキセル、アイソタイプのネガティブコントロール、ベバシズマブ、VGX−100+ベバシズマブ、およびVGX−100である。
実施例3に従った第2の研究におけるヌードマウスにおいて、PC−3ヒト前立腺腫瘍の単一治療または併用治療に対する時間(腫瘍移植後70日までの日数)にわたる反応(平均腫瘍組織量(mg))を示す。単剤療法としてまたは併用療法としてVEGF−A抗体(ベバシズマブ、アバスチン)および/または化学療法剤(ドセタキセル)を用いて、VEGF−C抗体(VGX−100)が試験された。VGX−100(40mg/kg)とベバシズマブ(10mg/kg)が腹腔内注射によって週に2回投与された。ドセタキセル(10mg/kg)が静脈注射によって腫瘍移植後7日目、14日目、および21日目に投与された。腫瘍移植後49日目において、最上段の線はアイソタイプのネガティブコントロール(○)である。そして上から順に、ベバシズマブ(灰色の●)、VGX−100+ベバシズマブ(○の中に・)、VGX−100(□)、ドセタキセル(灰色の◆)、VGX−100+ドセタキセル(■)、ベバシズマブ+ドセタキセル(△)、およびVGX−100+ベバシズマブ+ドセタキセルの3剤併用療法(*)である。3剤併用療法は、あらゆる2剤併用療法よりも優れていた。
前立腺腫瘍を有する実施例4のマウスの百分率(%)を前立腺内腫瘍接種後7週間まで示す。ドセタキセル(0.5mg/kg;□)と併用したVEGF−C抗体VGX−100は、このモデルでは腫瘍の出現を遅らせた。VGX−100(○);アイソタイプのネガティブコントロール(●);ドセタキセル(■);ドセタキセル+VGX−100(□);ドセタキセル(▲);ドセタキセル+VGX−100(△);PSAコントロール(灰色の◆)である。
実施例6に従ったU87MG膠芽細胞腫腫瘍(異種移植)の単一治療における時間(日)に対する反応(腫瘍体積(mm3))を示す。10mg/kg(×)、20mg/kg(×)および40mg/kg(▲)において、VEGF−C抗体(VGX−100)が試験され、10mg/kg(■)におけるVEGF−A抗体(ベバシズマブ、アバスチン)と比較された。抗体は、腹腔内注射によって週に2回投与された。ネガティブコントロールは、最上段の線によって示されている。10mg/kgおよび20mg/kgにおけるVGX−100は、区別できなかった。これらはネガティブコントロールに対しては改善されたが、40mg/kgにおけるVGX−100または10mg/kgにおけるベバシズマブほどは有効ではなかった。40mg/kgにおけるVGX−100では、ネガティブコントロールに対する有効性が見られた。
実施例7に従ったヌードマウスにおけるU87MGヒト膠芽細胞腫の成長に対する単剤療法またはベバシズマブとの併用としてのVEGF−C抗体VGX−100の効果(平均腫瘍組織量(mg))を示す。ベバシズマブ(10mg/kg)およびVGX−100(40mg/kg)は、腹腔内注射によって週に2回投与された。最後の時点において、アイソタイプのネガティブコントロールは最上段の線(●)である。そして上から順に、VGX−100単独(■)、ベバシズマブ単独(灰色の●)、およびVGX−100+ベバシズマブ(灰色の■)である。
実施例8に従ったヌードマウスにおけるKP4ヒト膵臓腫瘍の成長に対する単剤療法またはベバシズマブと併用としてのVEGF−C抗体VGX−100の時間(移植後の日数)に対する効果(平均腫瘍組織量(mg))を示す。VGX−100およびベバシズマブは、腹腔内注射によって週に2回投与された。VGX−100は、単剤療法では20mg/kgまたは40mg/kg、併用療法では40mg/kgにて投与された。ベバシズマブは、単剤療法および併用療法に対して10mg/kgにて投与された。移植後30日目において、アイソタイプのネガティブコントロールは最上段の線である。そして上から順に、20mg/kgのVGX−100、40mg/kgのVGX−100、ベバシズマブ、一番下の線がVGX−100+ベバシズマブである。
吸収波長450nmにてBiaCoreを用いて測定された、VEGF−CとVEGF−Dの単量体および二量体に対するELISAアッセイにおけるVGX−100の結合を示す。
Ba/F3バイオアッセイ(Stackerら(1999年)J Biol Chem 第274巻第34884〜34892頁、Achenら(2000年)Eur J Biochem 第267巻第2505〜2515頁)を用いた(a)VEGFR−2および(b)VEGFR−3に対するVEGF−Cの結合におけるVGX−100の結合の影響を示す。BA/F3−VEGFR−2/EpoR細胞またはBA/F3−VEGFR−3/EpoR細胞を用いて、VEGFR−2またはVEGFR−3の細胞外ドメインに対するVEGF−Cの結合が測定された。リガンドおよびVGX−100に対する反応が、48時間の暴露に続いて[3H]−チミジンの取り込みによって測定された。
VEGF−Cの生物活性を阻害するためにVGX−100が使用されたHUVEC増殖アッセイの結果を示す。
実施例10に従ったヌードマウスにおけるHCT−116ヒト大腸腫瘍の成長に対する単剤療法またはベバシズマブ(アバスチン)および/または5−FUの併用によるVEGF−C抗体VGX−100の時間(腫瘍移植後の日数)に対する効果(平均腫瘍組織量(mg))を示す。アイソタイプのコントロール(○);ベバシズマブ単独(灰色の●);VGX−100単独(□);5−FU単独(◇);ベバシズマブ+5−FU(△);VGX−100+5−FU(■);VGX−100+ベバシズマブ(○の中に?);VGX−100+ベバシズマブ+5−FU(*)である。
実施例11に従ったヌードマウスにおけるH292ヒト肺腫瘍の成長に対する単剤療法またはベバシズマブおよび/またはドセタキセルの併用によるVEGF−C抗体VGX−100の時間(腫瘍移植後の日数)に対する効果(平均腫瘍組織量(mg))を示す。最上段の線から順に、以下のとおりである:VGX−100単独(灰色の■);アイソタイプのコントロール(●);ドセタキセル単独(灰色の▲);ベバシズマブ単独(●);VGX−100+ベバシズマブ(灰色の■);ベバシズマブ+ドセタキセル(灰色の◆);VGX−100+ベバシズマブ+ドセタキセル(灰色の▲)。
実施例12に従ったヌードマウスにおけるOVCAR−8ヒト卵巣腫瘍の成長に対するベバシズマブとドセタキセルの併用によるVEGF−C抗体VGX−100の時間(腫瘍移植後の日数)に対する効果(平均腫瘍組織量(mg))を示す。最上段の線から順に、以下のとおりである:アイソタイプのコントロール(●);ドセタキセル単独(灰色の▲);ベバシズマブ+ドセタキセル(灰色の◆);VGX−100+ベバシズマブ+ドセタキセル(灰色の▲)。
実施例13に従った同所性MetaMouse(登録商標)モデルにおけるPC−3−GFPヒト前立腺腫瘍の成長に対するVEGF−C抗体VGX−100の単剤としての時間(腫瘍移植後の日数)に対する効果(平均腫瘍組織量(mm3))を示す。アイソタイプのコントロール(●);VGX−100単独(灰色の■)である。
[詳細な説明]
(定義)
「病気」または「疾患」は、本願発明の物質、組成物または方法を用いた治療による恩恵を受ける任意の状態または表現型である。これには、動物を問題としている疾患にかかりやすくさせる病状を含む慢性および急性の疾患または病気が含まれる。ここで治療される疾患の限定されない例には、良性腫瘍および悪性腫瘍;白血病およびリンパ性悪性疾患;ニューロン、グリア、星状細胞、視床下部、および他の腺、マクロファージ、上皮、間質、および卵割腔の疾患;炎症性、免疫性および他の血管形成関連疾患;ならびにがんが含まれる。
「細胞増殖性疾患」および「増殖性疾患」との用語は、ある程度の異常な細胞増殖に関連した疾患をいう。ある態様では、細胞増殖性疾患は悪性腫瘍である。ある態様では、細胞増殖性疾患はがんである。ある態様では、細胞増殖性疾患は血管形成である。
「腫瘍」という用語は、悪性または良性のあらゆる腫瘍細胞の成長および増殖、ならびにあらゆる前がんおよびがんの細胞および組織をいう。本願明細書で言及するように、「がん」、「がんの」、「細胞増殖性疾患」、「増殖性疾患」および「腫瘍」との用語は、互いに排他的ではない。
「がん」および「がんの」との用語は、哺乳類における生理的状態をいうか、または説明する。この生理的状態は、一般に制御されない細胞増殖によって特徴づけられる。がんの例としては、上皮性悪性腫瘍、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、黒色腫および白血病またはリンパ性悪性疾患が含まれるが、これらには限られない。そのようながんのより具体的な例には、以下のものが含まれる:副腎皮質の上皮性悪性腫瘍、肺の腺上皮性悪性腫瘍、エイズによるがんおよびリンパ腫、肛門がん、星状細胞腫、B細胞リンパ腫(低悪性度/小胞状の非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性NHL、中悪性度/小胞状のNHL、中悪性度の広範性のNHL、高悪性度の免疫芽球性NHL、高悪性度のリンパ芽球性NHL、高悪性度の小型非開裂細胞性NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、エイズによるリンパ腫およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症を含む)、膀胱がん、乳がん(オスの乳がんを含む)、気管支がん、肝内胆管のがん、カルチノイド腫瘍、子宮頸がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄芽球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性疾患、明細胞肉腫、結腸がん、結腸直腸がん、皮膚T細胞性リンパ腫、子宮内膜がん、上衣腫、食道がん、ユーイング肉腫、胆嚢膀胱がん、胃(gastric)がん(消化管がんを含む)、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫または脳腫瘍(膠芽細胞腫を含む)、有毛細胞白血病、頭部がんおよび頸部がん、肝細胞の上皮性悪性腫瘍、下咽頭がん、島細胞上皮性悪性腫瘍、眼内黒色腫、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭がん、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、有毛細胞白血病、***がんおよび口腔がん、肝臓がん、肺がん(非小細胞および小細胞肺がんを含む)、皮膚T細胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ヴァルデンストレームマクログロブリン血症、悪性線維性組織球腫、悪性中皮腫、髄芽細胞腫、メルケル細胞上皮性悪性腫瘍、悪性中皮腫、原発不明の頸部扁平上皮がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、慢性骨髄性白血病、急性骨髄性白血病、骨髄増殖性疾患、鼻腔がんおよび副鼻腔がん、鼻咽腔がん、神経芽細胞腫、口腔咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、上皮性卵巣がん、卵巣胚細胞腫瘍、膵臓がん、島細胞膵臓がん、副甲状腺がん、陰茎がん、腹膜がん、褐色細胞腫、下垂体部腫瘍、形質細胞腫、胸膜肺芽細胞腫、移植後再発リンパ増殖性疾患、中枢神経系原発リンパ腫、原発性肝臓がん、未分化神経外胚葉性腫瘍、前立腺がん、直腸がん、腎細胞(腎臓)がん、腎盂の移行上皮がん、尿管がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、軟部組織肉腫、セザリー症候群、皮膚がん、皮膚黒色腫、メルケル細胞皮膚上皮性悪性腫瘍、小腸がん、扁平上皮がん、肺の扁平上皮性悪性腫瘍、精巣がん、胸腺腫、胸腺上皮性悪性腫瘍、甲状腺がん、妊娠性絨毛腫瘍、原発部位不明の上皮性悪性腫瘍、尿道がん、子宮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、ウィルムス腫瘍、加えて母斑症、浮腫(脳腫瘍に関連する浮腫など)、およびメーグス症候群に関連する異常血管増殖。
「抗腫瘍性組成物」との用語は、がんの治療に有用な組成物をいう。好ましくは、抗腫瘍性組成物は、腫瘍の成長もしくは機能を阻害もしくは抑制すること、および/または腫瘍細胞の破壊を引き起こすことのできる1以上の活性治療薬を含む。治療薬(抗がん剤)の好適な例としては、以下のものが挙げられるが、これらには限られない:化学療法剤、放射線療法に使用される薬剤(たとえば放射性同位体)、細胞毒性薬、成長抑制薬、毒素、血管新生阻害剤、抗リンパ管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤およびがんを治療するための他の試薬であるたとえばHER2−抗体、CD−20抗体、上皮成長因子受容体(EGFR)拮抗剤(たとえばチロシンキナーゼ阻害剤)、HER1/EGFR阻害剤(たとえばエルロチニブ(タルセバ(登録商標))、血小板由来の成長因子阻害剤(たとえばグリベック(Gleevac)(登録商標)(メシル酸イマチニブ))、COX−2阻害剤(たとえばセレコキシブ)、サイトカイン、インターフェロン、たとえば以下の1つ以上に結合する拮抗薬(たとえば中和抗体):ErbB2、ErbB3、ErbB4、PDGFR−β、BlyS、APRIL、BCMA、VEGF−A、VEGF−C、VEGF−D、VEGF受容体(たとえばVEGFR−1、VEGFR−2、VEGFR−3、NP−1およびNP−2)、TRAIL/Apo2、ならびに他の生物活性剤および有機化学物質。これらを組み合わせたものもまた、本願発明に含まれる。
「細胞毒性薬」との用語は、細胞の機能を抑制または阻害する基質、および/または細胞の破壊を引き起こす基質をいう。この用語は、以下のものを含むことが意図されている:放射性同位体(たとえばAt211、I131、I125、Y90、R186、Re188、Sm153、Bi212、P32およびLuの放射性同位体);メトトレキサート、アドリアマイシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシンまたは他の挿入剤などの化学療法剤;核酸分解酵素などの酵素またはそのフラグメント;抗生物質;低分子毒素または細菌、真菌、植物または動物由来の酵素活性を有する毒素(そのフラグメントおよび/または変異体を含む)などの毒素;以下に開示される様々な抗腫瘍剤または抗がん剤。他の細胞毒性薬は、以下に説明する。殺腫瘍剤は、腫瘍細胞の破壊を引き起こす。
「化学療法剤」との用語は、がん治療に有用な化合物をいう。化学療法剤は、たとえば共通の構造モチーフ、作用機構および/または由来した生物に基づいて、各クラスに広く分類される。たとえば、化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗物質、アルカロイド、テルペノイド、トポイソメラーゼ阻害剤、抗生物質、アンドロゲンおよび抗ホルモンとして分類されてもよい。多くの化学療法剤は1以上のクラスに分類されること、および多くの化学療法剤が異なるクラスに属することについて医療従事者によって様々な見解があることは明らかであろう。
アルキル化化学療法剤:アルキル化剤がこう名付けられたのは、細胞中に存在する条件下で多くの求核官能基をアルキル化する能力のためである。アルキル化剤は、標準的なアルキル化剤、アルキル化様剤、および標準的でないアルキル化剤として様々に呼ぶことがある。アルキル化様剤および標準的でないアルキル化剤とは対照的に、標準的なアルキル化剤は真のアルキル基を含み、他のアルキル化剤よりもずっと前から知られてきた。標準的なアルキル化剤は、生物学的に重要な分子中のアミノ基、カルボキシル基、スルフヒドリル基、およびリン酸基と共有結合を形成して細胞の機能を修復することによって機能する。標準的なアルキル化剤の例には、ナイトロジェンマスタード、ニトロソ尿素およびスルホン酸アルキルが含まれる。エチレンイミン(アジリジン)およびメチルメラミンも一般には標準的とみなされる。しかし、標準的ではないとみなすこともできる。標準的なアルキル化剤の具体的な例には、以下のものが含まれる:クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド(たとえばシトキサン(登録商標))、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン(ムスチンHN2)、塩酸メクロレタミン酸化物、メルファラン、ノボエンビキン、フェネステリン、プレドニマスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタード(ウラムスチン)およびマンノマスタード(mannomustards)などのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチンおよびニムスチンなどのニトロソ尿素;ブスルファン、インプロスルファンおよびピポスルファンなどのスルホン酸アルキル;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド(TEPA)、トリエチレンチオホスホルアミド(たとえばチオテパ)およびトリメチロールメラミンなどのエチレンイミン(アジリジン)およびメチルメラミン。アルキル化様物質は、白金を用いた化学療法薬(白金類似物質と呼ばれることも多い)を含む。これらの物質はアルキル基を有さない。しかし、にもかかわらずこれらの物質は、恒久的にDNAと連動してDNA修復を干渉することによって、DNAを損傷させる。白金類似物質の例には、シスプラチン(たとえばカルボクオン)、カルボプラチン、ネダプラチン、オキシロプラチン、オキサリプラチン(エロキサチン(登録商標))およびサトラプラチンが含まれる。標準的でないアルキル化の区分に様々に含まれる物質の中には、プロカルバジン、トリエチレンチオホスホルアミド(たとえばチオテパ)、およびその類似物質が含まれる。類似物質には、アルトレタミン(標準的なアルキル化剤と見なされることもある)、ならびにジカルバジンおよびテモゾロマイドなどのある種のテトラジンなどがある。
代謝拮抗物質の化学療法剤:代謝拮抗物質は、プリンまたはピリミジンを裝って、DNAの構成単位となる。代謝拮抗物質は、(細胞周期の)「S」期の間、プリンやピリミジンの基質がDNAに取り込まれるのを阻害して、正常な成長および***を停止させる。これらはRNA合成にも影響を及ぼす。効率が高いため、これらの薬剤は最も広範に使用される細胞増殖抑制剤である。代謝拮抗物質の例には、プリン類似物質、ピリミジン類似物質および抗葉酸剤が含まれる。プリン類似物質の例には、アザチオプリン、フルダラビン、メルカプトプリン(たとえば6−メルカプトプリン)、チアミプリン、チオグアニン(たとえば6−チオグアニン)、ペントスタチンおよびクラドリビンが含まれる。ピリミジン類似物質の例には、アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン(floxuridin)、フロキシウリジン、5−フルオロウラシル(5−FU)およびゲムシタビン(GEMZAR(登録商標))が含まれる。抗葉酸剤の例には、メトトレキサート、デノプテリン、プテロプテリン、トリメトレキサート、トリメトプリン、ピリメタミン、ペメトレキセド、エダトレキサートおよびラルチトレキセドが含まれる。
アルカロイド化学療法剤およびテルペノイド化学療法剤:アルカロイドおよびテルペノイドは、植物や動物に由来し、一般に微小管機能を阻害することによって細胞***を起こらなくさせる。主要な例は、ビンカアルカロイドおよびタキサンである。ビンカアルカロイド(マダガスカルのニチニチソウに由来し、チューブリンに結合してチューブリンが微小管へと組み立てられるのを阻害する)の例としては、以下のものが含まれる:ビンブラスチン(ベルバン(登録商標))、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))、ビノレルビン(ナベルビン(登録商標))およびビンデシン(エルディシン(ELDISINE)(登録商標)、フィルデシン(登録商標))。タキサンまたはタキソイド類は、タイヘイヨウイチイの木の皮に由来するタキソール(パクリタキセル)を原料にしている。これらは微小管の安定性を高めて、後期において染色体の分離を阻害することによって機能する。タキサン/タキソイド類の例には、以下のものが含まれる:パクリタキセル(タキソール(登録商標)パクリタキセル)、アブラキサン(アブラキサン(登録商標)(Cremophor非含有)、パクリタキセルのアルブミン改変ナノ粒子製剤)およびドセタキセル(タキソテール(登録商標)ドセタキセル)。テルペノイドは、天然に存在する有機化合物の中で大きく多岐にわたる分類群であって、生物のすべての綱(classes)に見られる。テルペノイドは、多くのグループによって、抗がん特性および他の治療特性に対する研究が行われている。テルペノイドの例には、エリュテロビンが含まれる。植物由来の化学療法剤の別の群は、ポドフィロトキシンを原料とする。ポドフィロトキシンは、エトポシド、リン酸エトポシド(epopside)、テニポシドおよびアムサクリンを含む他の細胞増殖抑制剤の薬品を製造するために使用される。
トポイソメラーゼ阻害剤化学療法剤:トポイソメラーゼは、DNAの形態を維持するために必須の酵素である。I型またはII型トポイソメラーゼを阻害すると、適切なDNA超らせん形成が乱されることによって、転写と複製の両方が干渉される。トポイソメラーゼ阻害剤の例には、以下のものが含まれる:β−ラパコン、ラパコール、ベツリン酸、ドキソルビシン、カンプトテシン(CPT)、トポテカン(ハイカムチン(登録商標))、CPT−11(イリノテカン、カンプトサール(CAMPTOSAR)(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレチン(scopolectin)、9−アミノカンプトテシン、ラルトテカン(登録商標)トポイソメラーゼI阻害剤、ラメラリンD、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000、ポドフィロトキシン、エピポドフィロトキシンの誘導体(アムサクリン、エトポシド(VP−16)、リン酸エトポシドおよびテニポシドなど)、フルオロキノロン(シプロフロキサシン、ノルフロキサシン、ロメフロキサシンおよびオフロキサシンなど)。
抗生物質化学療法剤:以下のものを含む抗生物質が化学療法剤として使用される:アントラシクリン、エンジイン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ミトラマイシンおよびマイトマイシン。これらの化学療法剤の大部分が自然源および抗生物質から単離されてきた。しかし、これらの化学療法剤は従来の抗菌性抗生物質の特異性を欠くため、重篤な毒性をもたらしてしまう。これらの薬剤の一般的な特性には、インターカレーション(塩基対の間に入り込むこと)、DNA鎖の切断およびトポイソメラーゼII酵素の阻害を含む様々な異なる様式によるDNAとの相互作用が含まれる。アントラシクリン抗生物質(アントラキノンを含む)の例には、ダウノルビシン(ダウノマイシン)、ダウノルビシン(リポソーム製剤)、ダウノマイシン(ダウノマイシンセルビジン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)ドキソルビシン)、モルホリノ−ドキソルビシン、シアノモルホリノ−ドキソルビシン、2−ピロリノ−ドキソルビシン、4−デオキシドキソルビシン(エソルビシン)、ドキソルビシン(リポソーム製剤)、エピルビシン、カルミノマイシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、デトルビシン、ロドルビシン(テトラグリコシドアントラシクリン)、ピラルビシンおよびゾルビシンが含まれる。エンジイン抗生物質の例には、カリケアマイシン(カリケアマイシンγ1IおよびカリケアマイシンΩ1l(たとえばAgnewのChem.Intl.Ed.Engl.第33巻第183〜186頁(1994年)を参照)など)、ジネマイシン(ジネマイシンAなど)、ジノスタチンおよびエンジイン色素タンパク質(エスペラミシン、ネオカルジノスタチン発色団および関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団など)が含まれる。他の抗生物質には、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カラビシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、アクチノマイシンD(ダクチノマイシン)、6−ジアゾ−5オキソ−L−ノルロイシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、CC−1065(そのアドゼレシン、カルゼルシンおよびビゼレシン合成類似体を含む)、ズオカルマイシン(合成類似体KW−2189およびCB1−TM1を含む)が含まれる。
アンドロゲン化学療法剤:カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノールおよびメピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗アドレナール剤(adrenals);フロリン酸などの葉酸補充薬;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;ベストラブシル;ビスアントレン;デフォファミン;デメコルシン;ジアジクオン;エフロルニチン;エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシンやアンサマイトシンなどのメイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;プレドニゾン;フェナメット;ロソキサントロン;2−エチルヒドラジド;PSK(登録商標)多糖類複合体;ラゾキサン;リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”−トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT−2毒素、ベラクリンA、ロリディンAおよびアングイジン);ウレタン;ダカルバジン;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;ミトキサントロン;ロイコボリン;ノバントロン;アミノプテリン;イバンドロネート;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン(ゼローダ(登録商標))。
抗ホルモン化学療法剤:抗ホルモン化学療法剤が作用することによって、がんの成長を促進しうるホルモンの効果を制御し、減少させ、阻害し、抑制する。また抗ホルモン化学療法剤は、全身性、つまり全身治療の形態であることが多い。これらはホルモン自体であってもよい。例としては、たとえば以下のものを含む抗エストロゲン剤および選択的エストロゲン受容体調節物質(SERMs)が含まれる:タモキシフェン(ノルバデックス(登録商標)タモキシフェンを含む)、エビスタ(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストンおよびフェアストン(登録商標)トレミフェン;抗プロゲステロン剤;エストロゲン受容体下方制御剤(ERDs);卵巣または精巣を抑制または停止させる働きをする薬剤、たとえばリュープロン(登録商標)およびエリガード(登録商標)酢酸ロイプロリド、酢酸ゴセレリン、酢酸ブセレリンおよびトリプトレリンなどの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト;フルタミド、ニルタミドおよびビカルタミドなどの他の抗アンドロゲン剤;ならびにたとえば4(5)−イミダゾール、アミノグルテチミド、メガーゼ(MEGASE)(登録商標)酢酸メゲストロール、アロマシン(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタイン、ファドロゾール、リビゾール(RIVISOR)(登録商標)ボロゾール、フェマラ(登録商標)レトロゾール、およびアリミデックス(登録商標)アナストロゾールなどの副腎中でエストロゲンの産生を制御するアロマターゼ酵素を阻害するアロマターゼ阻害剤である。
他の化学療法剤には、以下のものが含まれる:ブリオスタチンおよびカリスタチンなどのポリケチド/大環状ラクトン;ブラタシンおよびブラタシノンなどのアセトゲニン;クロドロネート(たとえばボネフォス(登録商標)またはオスタック(登録商標))、ジドロカル(DIDROCAL)(登録商標)エチドロネート、NE−58095、ゾメタ(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロネート、フォサマックス(登録商標)アレンドロネート、アレディア(登録商標)パミドロネート、スケリド(登録商標)チルドロネートおよびアクトネル(登録商標)リセドロン酸などのビスホスホネート;トロキサシタビン(1,3−ジオキソランヌクレオシドシトシン類似物質)およびシタラビン(シトシンアラビノシドまたはAra−C)などのヌクレオシド類似物質;特に、異常な(abherant)細胞増殖に関与するシグナル経路における遺伝子、たとえばPKC−α、Raf、H−Rasおよび上皮成長因子受容体(EGF−R)の発現を阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチド;テラトープ(登録商標)ワクチンなどのワクチンや、アロベクチン(登録商標)ワクチン、ロイベクチン(登録商標)ワクチンおよびVAXID(登録商標)ワクチンなどの遺伝子治療ワクチン;ABARELIX(登録商標)rmRH;トシル酸ラパチニブ(ErbB−2とGW572016としても知られるEGFRの二重チロシンキナーゼ低分子阻害剤);コルヒチン;ポドフィリン(podophyllinic)酸;クリプトフィシン1とクリプトフィシン8を含むクリプトフィシン;ドラスタチン;エリュテロビン;パンクラチスタン;サルコジクチインおよびスポンギスタチン。
化学療法剤は、上述した任意の物質の薬剤的に許容される塩、酸または誘導体をも含む。また、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、およびプレドニゾロンの併用療法に対する略語であるCHOPや、5−FUおよびロイコボリンと組み合わせてオキサリプラチン(エロキサチン(登録商標))を用いた治療計画に対する略語であるフォルフォックスなど、上述した物質の2つ以上の組み合わせをも含む。追加的な化学療法剤は、たとえばメイタンシノイド(たとえばDMI)ならびにオーリスタチンMMAEおよびMMAFなどの抗体薬物複合体として有用な細胞毒性薬を含む。
「成長抑制薬」との用語は、細胞の成長および/または増殖を阻害する化合物または組成物をいう。成長抑制薬の例には、GI期の停止およびM期の停止を誘導する薬剤などの(S期以外の位置にて)細胞周期の進行を阻害する薬剤が含まれる。標準的なM期阻害剤には、ビンカアルカロイド(たとえばビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン、およびトポイソメラーゼII阻害剤が含まれる。トポイソメラーゼII阻害剤には、アントラシクリン抗生物質ドキソルビシン((8S−シス)−10−[(3−アミノ−2,3,6−トリデオキシ−a−LIyxo−ヘキサピラノシル)オキシ]−7,8,9,10−テトラヒドロ−6,8,II−トリヒドロキシ−8−(ヒドロキシアセチル)−I−メトキシ−5,12−ナフタセンジオン)、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシドおよびブレオマイシンなどがある。たとえばタモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メトトレキサート、5−フルオロウラシルおよびシタラビン(ara−C)などのDNAアルキル化剤などのGI期を阻害する薬剤は、S期の阻害にまで波及する。さらなる情報は、MendelsohnおよびIsrael編集の「The Molecular Basis of Cancer」(WB Saunders社:フィラデルフィア、1995年)中の村上らによる「細胞周期制御、がん遺伝子、および抗腫瘍性薬」と名付けられた第1章において見つけることができる。タキサン(パクリタキセルおよびドセタキセル)は、いずれもイチイに由来する抗がん剤である。ヨーロッパイチイから得られたドセタキセル(タキソテール(登録商標)、ローヌ・プーラン・ローラー社)は、パクリタキセル(タキソール(登録商標)、ブリストル・マイヤーズスクイブ社)の半合成類似体である。パクリタキセルとドセタキセルは、チューブリン二量体から微小管への組立てを促進し、脱重合を阻害することによって微小管を安定化させる。これにより細胞中の有糸***が抑制される。
「サイトカイン」との用語は、1つの細胞集団から放出され、細胞間伝達物質として別の細胞に作用するタンパク質をいう。そのようなサイトカインの例には、リンホカイン、モノカイン、および従来のポリペプチドホルモンがある。サイトカインには以下のものが含まれる:ヒト成長ホルモン、N−メチオニルヒト成長ホルモン、およびウシ成長ホルモンなどの成長ホルモン;副甲状腺ホルモン;チロキシン;インスリン;プロインスリン;リラキシン;プロリラキシン;卵胞刺激ホルモン(FSH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、および黄体形成ホルモン(LH)などの糖タンパク質ホルモン;上皮成長因子;肝臓成長因子;線維芽細胞成長因子;プロラクチン;胎盤性ラクトゲン;腫瘍壊死因子−αおよびβ;ミュラー管抑制物質;マウスノゴナドトロピン関連ペプチド;インヒビン;アクチビン;血管内皮成長因子;インテグリン;トロンボポイエチン(TPO);NGF−αなどの神経成長因子;血小板成長因子;TGF−αおよびTGF−βなどの形質転換成長因子(TGFs);インスリン様成長因子IおよびII;エリスロポエチン(EPO);骨誘導因子;インターフェロンα,βおよびγなどのインターフェロンならびにマクロファージ−CSF(M−CSF)などのコロニー刺激因子(CSFs);顆粒球−マクロファージ−CSF(GM−CSF);顆粒球−CSF(G−CSF);IL−1、IL−lα、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、JL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12などのインターロイキン(ILs);TNF−αまたはTNF−βなどの腫瘍壊死因子;ならびにLIFおよびkitリガンド(KL)を含む他のポリペプチド因子。本願明細書で使用されるように、サイトカインとの用語は、自然源に由来する、または天然の一連のサイトカインを有する組み換え細胞培養および生物活性のある同等物に由来するタンパク質を含む。
「プロドラッグ」との用語は、腫瘍細胞に対する細胞毒性が親薬物よりも弱く、より活性の高い親薬物型へと酵素的に活性化または変換されうる薬剤的に活性のある物質の前駆体または誘導体型をいう。本願開示に関係するプロドラッグは以下のものを含むが、これらには限られない:リン酸塩含有プロドラッグ、チオリン酸塩含有プロドラッグ、硫酸塩含有プロドラッグ、ペプチド含有プロドラッグ、D−アミノ酸修飾プロドラッグ、グリコシル化プロドラッグ、β−ラクタム含有プロドラッグ、任意的に置換されたフェノキシアセトアミド含有プロドラッグまたは任意的に置換されたフェニルアセトアミド含有プロドラッグ、より活性の高い細胞毒性を有さない薬剤へと変換可能な5−フルオロシトシンおよび他の5−フルオロウリジンプロドラッグ。プロドラッグ型へと誘導体化できる細胞毒性薬の例には、上述したこれらの化学療法剤が含まれるが、これらには限られない。
「血管新生因子または薬剤」との用語は、たとえば血管形成の促進、内皮細胞の成長、血管の安定性、および/または脈管形成などの血管の発達の刺激に関与する成長因子またはその受容体をいう。たとえば、血管新生因子は以下のものを含むが、これらには限られない:VEGF−AおよびVEGFファミリーのメンバーおよびこれらの受容体(VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGFR−1、VEGFR−2およびVEGFR−3);胎盤成長因子(PlGF);血小板由来の成長因子(PDGF)ファミリーのメンバーおよびこれらの受容体(特にPDGF−BB、PDGFR−α、またはPDGFR−β);線維芽細胞成長因子(FGF)ファミリーのメンバーおよびこれらの受容体(酸性(aFGF)、塩基性(bFGF)、FGF4、FGF9);TIEリガンドおよびこれらの受容体(アンジオポエチン、ANGPTl、ANGPT2、TIE1、TIE2);エフリン、Bv8、デルタ様リガンド4(DLL4)、Del−1、BMP9、BMP10、ホリスタチン、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、顆粒球−マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、肝細胞成長因子/分散(scatter)因子(HGF/SF)、インターロイキン8(IL−8)、CXCL12、レプチン、ミドカイン、ニューロピリン(NRP1、NRP2)、血小板由来内皮細胞成長因子(PD−ECGF)、プレイオトロフィン(PTN)、プログラニュリン、プロリフェリン、形質転換成長因子α(TGF−α)、形質転換成長因子β(TGF−β)、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、Alkl、CXCR4、Notch1、Notct4、Sema3A、Sema3C、Sema3F、Robo4など。基底膜特異的な硫酸ヘパランプロテオグリカンコアタンパク質(HSPG)または硫酸ヘパランプロテオグリカン2(HSPG2)としても知られるペルレカン(PLC)など、血管形成を促進する因子をさらに含むであろう。成長ホルモン、インスリン様成長因子I(IGF−I)、血管IBP様成長因子(VIGF)、上皮成長因子(EGF)、EGF様ドメイン集合体(multiple)7(EGFL7)および結合組織成長因子(CTGF)およびそのファミリーのメンバーなどの創傷治癒を促進する因子もまた含めることができるであろう。たとえば以下の文献を参照のこと:KlagsbrunおよびD’Amore(1991年)Annu.Rev.Physiol.第53巻第217〜239頁;StreitおよびDetmar(2003年)Oncogene 第22巻第3172〜3179頁;FerraraおよびAlitalo(1999年)Nature Medicine 第5巻第12号:第1359〜1364頁;Toniniら(2003年)Oncogene 第22巻:第6549〜6556頁(たとえば表1には既知の血管新生因子が掲載されている);佐藤(2003年)Int.J.Clin.Oncol.第8巻:第200〜206頁。
「血管新生阻害剤」または「血管形成阻害剤」との用語は、直接的または間接的に血管形成、脈管形成、または望ましくない血管透過性を抑制する、低分子量物質、ポリヌクレオチド(たとえば抑制性RNA(RNAiまたはsiRNA)を含む)、ポリペプチド、分離されたタンパク質、組換えタンパク質、抗体または複合物(conjugates)またはそれらの融合タンパク質をいう。当然ながら、血管新生阻害剤には結合して(上述したように)血管新生因子またはその受容体の血管形成活性を阻害する薬剤が含まれる。たとえば、血管新生阻害剤は、後述するように血管形成薬に対する抗体または他の拮抗剤である。たとえば、VEGF−Aに対する抗体またはVEGF−A受容体(たとえばVEGFR−1またはVEGFR−2)に対する抗体、抗PDGFR阻害剤、VEGF−A受容体のシグナル伝達を阻害する低分子剤(たとえばPTK787/ZK2284、SU6668、SUTENT(登録商標)/SUl1248(スニチニブリンゴ酸塩)、AMG706またはたとえば国際特許出願第2004/113304号に記載された物質である。血管新生阻害剤は以下の物質を含むが、これらには限られない:VEGF特異拮抗剤などのVEGF−A阻害剤、EGF阻害剤、EGFR阻害剤、エルビタックス(登録商標)(セツキシマブ(登録商標)、ImCIone Systems社、ブランチバーグ、ニュージャージー州)、ベクチビックス(登録商標)(パニツムマブ、アムジェン社、サウザンドオークス、カリフォルニア州)、TIE2阻害剤、IGF1R阻害剤、COX−II(シクロオキシゲナーゼII)阻害剤、MMP−2(マトリックスメタロプロテアーゼ2)阻害剤、およびMMP−9(マトリックスメタロプロテアーゼ9)阻害剤、CP−547632(ファイザー社、ニューヨーク州、米国)、アキシチニブ(ファイザー社;AG−013736)、ZD−6474(アストラゼネカ社)、AEE788(ノバルティス社)、AZD−2171)、VEGFトラップ(リジェネロン社、アベンティス社)、バタラニブ(PTK−787、ZK−222584としても知られる:ノバルティス社、シエーリング社)、マクジェン(ペガプタニブオクタナトリウム、NX−1838、EYE−001、ファイザー社/Gilead社/アイテック社)、IM862(Cytran社、カークランド、ワシントン州、米国);リボザイム社(ボルダー、コロラド州)およびカイロン(Chiron)社(エメリビル、カリフォルニア州)の合成リボザイムであるアンジオザイムおよびこれらの組み合わせ。他の血管形成阻害剤としては、トロンボスポンジン1、トロンボスポンジン2、コラーゲンIVおよびコラーゲンXVIIIが含まれる。VEGF阻害剤は、米国特許第6534524号および第6235764号に開示されている。いずれの明細書も、その全体がすべての目的に対して援用される。血管新生阻害剤はまた、元々存在するたとえばアンギオスタチンやエンドスタチンなどの血管形成阻害剤も含む。たとえば以下の文献を参照のこと:KlagsbrunおよびD’Amore(1991年)Annu.Rev.Physiol.第53巻:第217〜239頁;StreitおよびDetmar(2003年)Oncogene 第22巻:第3172〜3179頁(たとえば表3には、悪性黒色腫の抗脈管形成療法が掲載されている);FerraraおよびAlitalo(1999年)Nature Medicine 第5巻第12号:第1359〜1364頁;Toniniら(2003年)Oncogene 第22巻:第6549〜6556頁(たとえば表2には、既知の血管新生抑制因子が掲載されている);佐藤(2003年)Int.J Clin.Oncol.第8巻:第200〜206頁(たとえば表1には、臨床試験で使用される血管新生阻害剤が掲載されている)。
「抗脈管形成療法」との用語は、血管新生阻害剤の投与を含む、血管形成を阻害するために有用な治療をいう。
「リンパ管新生(lymphangiogenic)」および「リンパ管形成」との用語は、リンパ管を発達させる刺激に関連する。したがって、「リンパ管新生因子」は成長因子であって、「リンパ管新生治療」はリンパ管の発達を刺激する治療をいう。本願明細書に開示されたリンパ管新生因子はVEGF−CおよびVEGF−Dを含むが、これらには限られない。「抗リンパ管新生」はリンパ管形成の抑制に関係することになる。
「毒素」との用語は、細胞の成長または増殖に有害作用を及ぼしうる物質をいう。
「VEGF−C」との用語は、配列番号1で提供される完全長419アミノ酸ポリペプチド、および完全長ポリペプチドの活性のあるフラグメントを含むその天然に存在する対立遺伝子型、短縮型、および加工型をいう。活性フラグメントは、VEGF−C生物活性を有する配列番号1の完全長アミノ酸配列の任意の部分を含む。また、活性フラグメントは、成熟型VEGF−Cを含むが、これには限られない。VEGF−CはN末端およびC末端のプロペプチド、ならびにVEGFR−2およびVEGFR−3に対する結合部位を含む中央のVEGF相同ドメイン(VHD)を含む前駆体タンパク質として合成される。N末端とC末端のプロペプチドは、生合成中に前駆タンパク質転換酵素によるタンパク質分解によってVHDから切断され、十分に加工された成熟型が生成される。ヒトでは、タンパク質分解によって加工された型である成熟したVEGF−Cは、ホモ二量体として存在し、VEGFR−2およびVEGFR−3に結合する。加工型成熟VEGF−Cは、VEGFR−2およびVEGFR−3受容体に対する結合親和性を有する。実験的証拠が示すのは、VEGF−Cの完全長型、部分加工型および完全加工成熟型がVEGFR−3に結合できるということである。しかし、VEGFR−2に対する高親和性結合が起きるのは、VEGF−Cの完全加工成熟型に対してだけである。「VEGF−C」との用語は、ヒト以外の種に由来するVEGF−Cの対立遺伝子型、加工型および切断型に対しても使用される。
VEGF−Cは、血管形成調節因子である構造的に関連したVEGFファミリーの一員である。血管形成活性に加えて、VEGF−CはVEGFR−3に結合することを通じてリンパ管形成の制御に関与するようである。腫瘍においてVEGF−Cによって誘導された血管形成は、固形腫瘍の成長および転移性の拡散を促進しうる。また、VEGF−Cによって誘導されたリンパ管形成は、腫瘍細胞のリンパ管およびリンパ節への転移性の拡散を促進しうる。さらに、臨床病理学的なデータが示唆するのは、この成長因子が一般的なヒトのがんにおいて広範に役割を有することである。たとえば、肺がんにおけるVEGF−CのmRNAの発現量は、リンパ節転移に関連し、乳がんにおいてはリンパ管浸潤および無病生存率の低下に関連する。
VEGF−Cポリペプチドに関して「生物活性」および「生物活性のある」との用語は、完全長および/または成熟型VEGF−Cに関する物理/化学特性および生物学的機能をいう。実施の形態によっては、VEGF−Cの「生物活性」は、VEGFR−2および/またはVEGFR−3に結合する能力を有し、これらのリン酸化を促進することを意味する。一般に、VEGF−Cは、VEGFR−2および/またはVEGFR−3の細胞外ドメインに結合することによって、細胞内チロシンキナーゼドメインを活性化または抑制するであろう。その結果、VEGF−Cの受容体への結合によって、VEGFR−2および/またはVEGFR−3を有する細胞の増殖および/または分化および/または活性化が、生体内または試験管内において細胞表面にて促進または抑制されうる。VEGF−CのVEGFR−2および/またはVEGFR−3への結合は、RIA、ELISAおよび他の競合的結合アッセイなどの競合的結合法を含む従来技術を用いて測定されうる。リガンド/受容体複合体は、ろ過、遠心分離、フローサイトメトリーなどの分離法を用いて同定されうる。結合解析から得られた結果は、結合データに関する従来の任意のグラフ表示を用いて解析できる。VEGF−CはVEGFR−2およびVEGFR−3のリン酸化を誘導する。そのため、従来のチロシンリン酸化アッセイも、それぞれVEGFR−2/VEGF−C複合体およびVEGFR−3/VEGF−C複合体形成の指標として使用することができる。別の実施の形態では、VEGF−Cの「生物活性」は、VEGFR−2結合能を有することを意味する。
「VEGF−C拮抗剤」との用語は、VEGF−Cの発現量を抑制可能な分子、またはVEGF−Cの生物活性の1以上を中和し、阻害し、抑制し、無効化し、低下させ、干渉する分子をいう。VEGF−Cの生物活性には、1以上の受容体に対するVEGF−Cの結合、VEGF−Cを介した血管形成、リンパ内皮細胞(LEC)移動、LEC増殖、または成体のリンパ管形成を含むが、これらには限られない。本願発明において有用なVEGF−C拮抗剤は、VEGF−C、VEGF−C抗体、およびそれらの抗原−結合フラグメントに特異的に結合するポリペプチド、VEGF−CおよびVEGF−C受容体に結合してリガンド−受容体相互作用を阻害するポリペプチド(たとえばイムノアドヘシン、ペプチボディ(peptibodies))、VEGF−Cに結合してそれを隔離させることによって、VEGF−Cが生体内で細胞上に発現している受容体に結合してそれを活性化させることを阻害するVEGF−受容体分子およびその誘導体(たとえばVEGFR−2および/またはVEGFR−3から誘導された可溶性受容体トラップ(traps))、VEGF−C受容体抗体、VEGFR−2およびVEGFR−3の低分子阻害剤などのVEGF−C受容体拮抗剤を制限なく含む。VEGF−C特異的拮抗剤はまた、VEGF−Cポリペプチドの拮抗剤変異体、VEGF−Cに対するアンチセンス核酸塩基オリゴマー、VEGF−Cに対する小型RNA分子、VEGF−Cに対するRNAアプタマー、ペプチボディおよびリボザイムも含む。VEGF−C特異的拮抗剤はまた、VEGF−Cに結合する非ペプチド性低分子も含む。この非ペプチド性低分子は、1以上のVEGF−C生物活性を阻害し、抑制し、無効化し、低下させ、干渉することができる。「VEGF−C活性」との用語は、(既に定義したように)VEGF−Cを介したVEGF−Cの生物活性を特に含む。態様によっては、VEGF−C拮抗剤は少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上、VEGF−Cの発現量または生物活性を低下または抑制させる。ある好ましい態様によると、VEGF−C拮抗剤は試験管内においてVEGF−Cに結合して、VEGF−Cにより誘導された内皮細胞増殖を抑制する。ある好ましい態様によると、VEGF−C拮抗剤は、それぞれ非VEGF−Cポリペプチドまたは非VEGF−C受容体に対するよりも高い親和性にて、それぞれVEGF−CポリペプチドまたはVEGF−C受容体に結合する。他の好ましい態様によると、VEGF−C拮抗剤はVEGF−CポリペプチドまたはVEGF−C受容体に特異的に結合する。ある好ましい態様によると、VEGF−C拮抗剤は、Kd=1μM〜1pMにてVEGF−CまたはVEGF−C受容体に結合する。他の好ましい態様によると、VEGF−C拮抗剤は、Kd=500nM〜1pMにてVEGF−CまたはVEGF−C受容体に結合する。「VEGF−C拮抗剤」との用語は、VEGF−Cに結合し、VEGF−C活性を中和し、阻害し、抑制し、無効化し、低下させ、干渉することができる抗体、抗体フラグメント、他の結合ポリペプチド、ペプチド、および非ペプチド性低分子を含む分子を特に含む。
VEGF−C拮抗剤は、VEGFR−3活性を阻害するチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)であってもよい。VEGFR−3活性を阻害するTKIとは、VEGFR−3受容体のチロシンキナーゼ活性を選択的または非選択的に低下させる受容体チロシンキナーゼ活性を有する阻害剤を意味する。そのような阻害剤は一般に、VEGFR−3の発現にあまり影響を及ぼすことなく、そしてリガンド−結合能などの他のVEGFR−3活性に影響を及ぼすことなく、VEGFR−3チロシンキナーゼ活性を低下させる。VEGFR−3キナーゼ阻害剤は、VEGFR−3触媒ドメインに直接結合する分子、たとえばATP類似物質でありうる。VEGFR−3キナーゼ阻害剤は、1以上の水素結合を介してVEGFR−3触媒ドメインに結合しうる。これはATPのアデニン部分をVEGFR−3に固定することに類似する(Enghら、J.Biol.Chem.第271巻第26157〜26164頁(1996年);Tongら、Nature Struc.Biol.第4巻第311〜316頁(1997年);Wilsonら、Chem.Biol.第4巻第423〜431頁(1997年))。VEGFR−3キナーゼ阻害剤は、アデニン結合部位に隣接した疎水ポケットにも結合できる(Mohamediら、EMBO J.第17巻第5896〜5904頁(1998年);Tongら、上述、1997年;Wilsonら、上述、1997年)。
本願発明に有用なVEGFR−3キナーゼ阻害剤は、インドリノンなどの特異的VEGFR−3キナーゼ阻害剤を含む。特異的VEGFR−3キナーゼ阻害剤は、VEGFR−2に比べて、VEGF−CとVEGF−Dにより誘導されたVEGFR−3キナーゼ活性を別々に阻害する。そのような特異的VEGFR−3キナーゼ阻害剤(たとえばMAE106およびMAZ51)は、Kirkinら、Eur.J.Biochem.第268巻第5530〜5540頁(2001年)に開示されているようにして調整可能である。特異的、選択的、および非選択的な阻害剤を含む追加的なVEGFR−3キナーゼ阻害剤は、公知であるか、または受容体チロシンキナーゼ阻害を測定するための多くの周知の方法のうちの1つを用いて同定可能である。
例として、たとえばHennequinら、J.Med.Chem.第42巻第5369〜5389頁(1999年)およびWedgeら、Cancer Res.第60巻第970〜975頁(2000年)に示されるように、リン酸化チロシンの産生を解析するための周知のELISAアッセイを用いて、VEGFR−3キナーゼ阻害剤を同定することができる。そのようなアッセイは、VEGFR−1などの他の血管内皮成長因子受容体および線維芽細胞成長因子受容体1(FGFR1)などの無関係なチロシンキナーゼよりもVEGFR−3を抑制する分子をスクリーニングするために使用可能である。簡潔に説明すると、スクリーニングされる分子を室温にてポリ(グルタミン酸、アラニン、チロシン)6:3:1ランダム共重合体基質(SIGMA社、ミズーリ州セントルイス)によりコーティングされた96−穴プレート中で10mM MnCl2および2μM ATPを含むHEPES(pH7.5)緩衝液中にて細胞質受容体ドメインとともに20分間インキュベートすることができる。リン酸化チロシンは、マウスIgG抗リン酸チロシン抗体(Upstate Biotechnology社、ニューヨーク州レイク・プラシッド)、セイヨウワサビのペルオキシダーゼ結合型ヒツジ抗マウス免疫グロブリン抗体(アマシャム社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)、および2,2’アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)(Roche Molecular Biochemicals社、インディアナ州インディアナポリス)とともに連続的にインキュベートすることによって検出可能である。そのような試験管内のキナーゼアッセイでは、VEGFR−3の供給源は、たとえば細胞質受容体ドメイン、たとえばヒトVEGFR−3の第798〜1363残基を含む組み換えバキュロウイルスを感染させた昆虫細胞から調整された溶解物とすることができる。
本願明細書で使用されるように、VEGFR−3キナーゼ阻害剤との用語は、VEGFR−3の特異的、選択的、および非選択的な阻害剤を含む。特異的VEGFR−3キナーゼ阻害剤は、FGFR1などのほとんどまたはすべての無関係な受容体チロシンキナーゼの活性に比べて、そして血管内皮成長因子受容体であるVEGFR−1およびVEGFR−2の活性に比べて、VEGFR−3のチロシンキナーゼ活性を低下させる。選択的なVEGFR−3キナーゼ阻害剤は、FGFR1などのほとんどまたはすべての受容体チロシンキナーゼに比べて、VEGFR−3のチロシンキナーゼ活性を低下させる。そのような選択的なVEGFR−3阻害剤は、分離されたVEGFR−3細胞質ドメインの抑制に対する50%阻害濃度(IC50)、つまりたとえばVEGFR−1とVEGFR−2のIC50のいずれよりも少なくとも10倍少ないIC50を有しうる。特定の態様では、本願発明は、単離されたVEGFR−3細胞質ドメインの抑制に対するIC50が、VEGFR−1とVEGFR−2のIC50のいずれよりも少なくとも20倍、30倍、40倍、50倍、100倍、200倍、300倍、400倍または500倍少ない選択的なVEGFR−3キナーゼ阻害剤を提供する。対照的に、非選択的なVEGFR−3キナーゼ阻害剤は、VEGFR−1とVEGFR−2の少なくとも一方のチロシンキナーゼ活性を、VEGFR−3と同程度にまで低下させる。
「VEGF−C抗体」との用語は、VEGF−Cまたはその生物活性のあるフラグメント、たとえば成熟した完全加工型に十分な親和性および特異性にて結合する抗体をいう。ある態様では、VEGF−C抗体は十分な親和性をもってVEGF−Cに結合可能である。そのため、抗体はVEGF−Cを標的とする診断薬および/または治療薬として有用である。抗体は、その治療薬(therapeutic)としての有効性を評価するために、生物活性アッセイに用いられてもよい。そのようなアッセイは、公知であって標的抗原および抗体用に意図された使用に依存する。アッセイの例には、HUVEC抑制アッセイ;腫瘍細胞成長抑制アッセイ(たとえば国際特許出願第89/06692号に開示);抗体依存細胞傷害性(ADCC)アッセイおよび補体仲介性細胞毒性(CDC)アッセイ(たとえば米国特許第5500362号に開示);アゴニスト活性アッセイまたは造血アッセイ(たとえば国際特許出願第95/27062号に開示)が含まれる。VEGF−C抗体の結合は、VEGF−C活性を部分的または完全に阻害し、中和し、低下させ、または無効化する(antagonize)。VEGF−C抗体は、一般にはVEGF−A、VEGF−B、VEGF−D、VEGF−E、またはPlGF、PDGF、bFGFなどの他の成長因子など、他のVEGFホモローグには結合しないであろう。ある態様では、VEGF−C抗体が無関係な非VEGF−Cタンパク質に結合する程度は、たとえばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定されるように、抗体のVEGF−Cに対する結合の約10%未満である。好ましい態様では、VEGF−C抗体はVEGF−Cポリペプチドに特異的に結合する。態様によっては、VEGF−Cに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、または≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。態様によっては、選択された抗体は、Kd値が100nM〜1pMであるhVEGF−Cに対する結合親和性を有するであろう。抗体親和性は、たとえば表面プラズモン共鳴に基づくアッセイ(国際特許出願第2005/012359号に開示されたBIAcoreアッセイなど);酵素免疫測定法(ELISA);競合アッセイ(たとえばRIA)によって決定されてもよい。態様によっては、VEGF−C抗体は異なる種のVEGF−C間で保存されたVEGF−Cのエピトープに結合する。
VEGF−C抗体のある例は、ハイブリドーマATCC PTA−4095により生産された、または図3および4にそれぞれ示された重鎖および軽鎖アミノ酸配列を有するモノクローナルVEGF−C抗体69D09のVEGF−Cに対する結合を競合的に阻害するモノクローナル抗体である。VEGF−C抗体の他の例は、ハイブリドーマATCC PTA−4095により生産された、または図3および4にそれぞれ示された重鎖および軽鎖アミノ酸配列を有するモノクローナルVEGF−C抗体69D09と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。ある態様では、VEGF−C抗体は、69D09抗体またはそのフラグメントを含むがこれらには限られない完全ヒトVEGF−Cモノクローナル抗体である。好適な抗体の他の例には、抗体103、MM0006−2E65および193208が含まれる。そのような抗体のさらなる例は、米国特許第7208582号、米国特許第7850963号および米国特許第7109308号に記載されている。VEGF−C抗体は、ヒト化抗体であってもよい。好ましくは、VEGF−C抗体は寄託されたハイブリドーマATCC PTA−4095により生産された、またはそれぞれ図3および4に示す重鎖および軽鎖アミノ酸配列を有するヒト抗体である。
「VEGF−A」との用語は、配列番号:2に示された232個のアミノ酸ポリペプチド、ならびにその天然に存在する対立遺伝子型、切断型、および加工型をいう。より具体的には、本願明細書で使用されるように「VEGF−A」との用語は、Leungら(1989年)Science 第246巻第1306頁およびHouckら(1991年) Mol.Endocrin、第5巻第1806頁に開示されているように、ヒトVEGF−Aの165個のアミノ酸アイソフォームおよび関連する121個、189個、および206個のアミノ酸アイソフォーム、ならびにその天然に存在する対立遺伝子型および加工型をいう。「VEGF−A」との用語は、165個のアミノ酸を有するヒトVEGF−Aアイソフォームのアミノ酸第8〜109残基または第1〜109残基を含むポリペプチドの切断型をいう場合にも使用される。「VEGF−A」との用語は、マウス、ラットおよび霊長類などのヒト以外の種から得られた様々なアイソフォームを含むVEGF−Aの対立遺伝子型、加工型および切断型をいう場合にも使用される。VEGF−Aは、VEGFR−1(Flt−1)およびVEGFR−2(KDR)に対する結合親和性を有する。
VEGF−Aポリペプチドに関して「生物活性」および「生物活性のある」との用語は、任意のVEGF−A受容体に対する結合または任意のVEGF−Aシグナル活性をいう。たとえば正常および異常な血管形成および脈管形成の制御(FerraraおよびDavis−Smyth(1997年)Endocrine Rev.第18巻第4〜25頁;Ferrara(1999年)J.Mol.Med.第77巻第527〜543頁);胚の脈管形成および血管形成の促進(Carmelietら(1996年) Nature 第380頁第435〜439頁;Ferraraら(1996年) Nature 第380巻第439〜442頁);メスの生殖器官における周期的な血管増殖の調節、ならびに骨成長および軟骨形成に対する調節(Ferraraら(1998年)Nature Med.第4巻:第336〜340頁;Gerberら(1999年)Nature Med.第5巻:第623〜628頁)である。血管形成および脈管形成において血管新生因子となることに加えて、VEGF−Aは多面的な成長因子として、内皮細胞の生存、血管透過性および血管拡張、単球走化およびカルシウム流入などの他の生理的過程において、多数の生物学的効果を示す(FerraraおよびDavis−Smyth(1997年)(上述)、およびCebe−Suarezら、Cell.Mol.Life.Sci.第63巻第601〜615頁(2006年))。さらに、最近の研究は、網膜色素上皮細胞、膵管細胞、およびシュワン細胞などの少数の非内皮細胞型に対するVEGF−Aの細胞***促進作用を報告しているGuerrinら(1995年)J.Cell Physiol.第164巻:第385〜394頁;Oberg−Welshら(1997年)Mol.Cell.Endocrinol.第126巻:第125〜132頁;Sondellら(1999年)J.Neurosci.第19巻:第5731〜5740頁。
「VEGF−A拮抗剤」との用語は、VEGF−A発現量を低下させることができる分子、またはVEGF−Aの1以上の生物活性を中和し、阻害し、抑制し、無効化し、低下させ、干渉する分子をいう。このような生物活性には、1以上の受容体に対するVEGF−Aの結合およびVEGF−Aを介した血管形成が含まれるが、これらには限られない。VEGF−A特異的拮抗剤は、VEGF−AまたはVEGF−A受容体(たとえばVEGFR−1またはVEGFR−2)に結合することが好ましい。本願発明に有用なVEGF−A特異的拮抗剤は、以下の物質に特異的に結合するポリペプチドを制限なく含む:VEGF−A、VEGF−A抗体およびそれらの抗原結合フラグメント、VEGF−Aに結合してVEGF−Aを隔離させることによって、VEGF−Aが生体内の細胞上で発現している受容体に結合してこれらを活性化させることを阻害するVEGF−受容体分子および誘導体(たとえばRegeneron社のVEGF−TrapなどのVEGFR−1および/またはVEGFR−2に由来する可溶性の受容体トラップ)、VEGF−AおよびVEGF−Aに結合してリガンド−受容体相互作用を阻害する受容体ポリペプチド(たとえばイムノアドヘシンやペプチボディ)、VEGF−A受容体抗体、VEGFR−1および/またはVEGFR−2の低分子阻害剤などのVEGF−A受容体拮抗剤、VEGF121−ゲロニン(Peregrine社)などの融合タンパク質、VEGF−Aポリペプチドの拮抗剤変異体、VEGF−Aに結合するアプタマー、VEGF−AまたはVEGF−A受容体を標的とするアンチセンス核酸塩基オリゴマー、VEGF−AまたはVEGF−A受容体を標的とする小型RNA分子(たとえばRNAi)、およびVEGF−Aに対するリボザイム。VEGF−A特異的拮抗剤はまた、VEGF−Cに結合してVEGF−Aの生物活性のうち1つ以上を阻害し、抑制し、無効化し、低下させ、干渉することができる非ペプチド性低分子を含む。したがって、「VEGF−A活性」との用語は、VEGF−Aを介したVEGF−Aの生物活性を特に含む。態様によっては、VEGF−A拮抗剤は少なくとも10%、20%、30%、40%,50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上、VEGF−Aの発現量または1以上の生物活性を低下させるか阻害する。ある好ましい態様によると、VEGF−A拮抗剤はVEGFに結合してVEGF−Aにより誘導された内皮細胞の増殖を試験管内で阻害する。他の好ましい態様によると、VEGF−A拮抗剤はVEGF−AポリペプチドまたはVEGF−A受容体に特異的に結合する。ある好ましい態様によると、VEGF−A拮抗剤は、非VEGF−Aポリペプチドまたは非VEGF−A受容体に対するよりもそれぞれ高い親和性にてVEGF−AポリペプチドまたはVEGF−A受容体に結合する。ある好ましい態様によると、VEGF−A拮抗剤はVEGF−AまたはVEGF−A受容体にKd=1μM〜1pMにて結合する。他の好ましい態様によると、VEGF−A拮抗剤はVEGF−AまたはVEGF−A受容体にKd=500nM〜1pMにて結合する。
好ましい態様によると、VEGF−A拮抗剤は抗体、ペプチボディ、イムノアドヘシン、低分子またはアプタマーなどのポリペプチドから選択される。好ましい態様では、抗体はアバスチン(登録商標)抗体などのVEGF−A抗体、あるいはVEGFR−1またはVEGFR−2抗体などのVEGF−A受容体抗体である。VEGF拮抗剤の他の例には、以下のものが含まれる:VEGF−トラップ(Trap)、Mucagen、PTK787、SUI 1248、AG−013736、Bay 439006(sorafenib)、ZD−6474、CP632、CP−547632、AZD−2l7l、CDP−17l、SU−14813、CHIR−258、AEE−788、SB786034、BAY579352、CDP−79l、EG−3306、GW−786034、RWJ−4l7975/CT6758およびKRN−633。
「VEGF−A抗体」との用語は、十分な親和性および特異性にてVEGF−Aに結合する抗体をいう。ある態様では、VEGF−A抗体は十分な親和性にてVEGF−Aに結合可能である。そのため、VEGF−A抗体はVEGF−Aを標的とする診断薬および/または治療薬として有用である。VEGF−A抗体は、VEGF−A活性が関与する病気または状態を標的として干渉する治療薬として使用できることが好ましい。VEGF−A抗体は、治療薬としての有効性を評価するために、生物活性アッセイに用いられてもよい。そのようなアッセイは公知であって、標的抗原および抗体に対して意図された使用に依存する。アッセイの例には、HUVEC抑制アッセイ;腫瘍細胞成長抑制アッセイ(たとえば国際特許出願第89/06692号に記載);抗体依存細胞傷害性(ADCC)アッセイおよび補体仲介性細胞毒性(CDC)アッセイ(たとえば米国特許第5500362号に記載);アゴニスト活性アッセイまたは造血アッセイ(たとえば国際特許出願第95/27062号に記載)が含まれる。VEGF−A抗体の結合は、VEGF−A活性を部分的または完全に阻害し、中和し、減少させ、または無効化するであろう。VEGF−A抗体は一般に、VEGF−B、VEGF−C、VEGF−D、VEGF−Eなどの他のVEGF−Aホモローグ、またはPlGF、PDGF、bFGFなどの他の成長因子には結合しないであろう。ある態様では、VEGF−A抗体が無関係な非VEGF−Aタンパク質に結合する程度は、たとえばラジオイムノアッセイ(RIA)によって測定されるように、VEGF−A抗体のVEGF−Aへの結合の約10%未満である。好ましい態様では、VEGF−A抗体はVEGF−Aポリペプチドに特異的に結合する。態様によっては、VEGF−Aに結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nMまたは≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。態様によっては、選択された抗体は、Kd=100nM〜1pMというhVEGF−Aに対する結合親和性を有するであろう。抗体親和性は、表面プラズモン共鳴に基づくアッセイ(国際特許出願第2005/012359号に開示されたBIAcoreアッセイなど)、酵素免疫測定法(ELISA)、および競合アッセイ(たとえばRIA)によって決定されてもよい。態様によっては、VEGF−A抗体は異なる種のVEGF−A間で保存されたVEGF−Aのエピトープに結合する。好ましい態様では、VEGF−A抗体はハイブリドーマATCC HB 10709により生産されたモノクローナルVEGF−A抗体A4.6.lと同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。より好ましくは、VEGF−A抗体はPrestaら(1997年)Cancer Res.第57巻第4593〜4599頁に従って生産された組換えヒト化VEGF−Aモノクローナル抗体である。
Prestaらに従って生産された特に好ましいVEGF−A抗体は、「ベバシズマブ(BV)」または「アバスチン(登録商標)」(「rhuMAb VEGF」としても知られる)として知られた抗体である。ベバシズマブは、マウスhVEGF−Aモノクローナル抗体AA.6.1から得られた変異型ヒトIgGlフレームワーク領域および抗原結合相補性決定領域(CDRs)を含む。マウスhVEGF−Aモノクローナル抗体AA.6.1は、ヒトVEGF−Aのその受容体への結合を阻害する。ベバシズマブのアミノ酸配列の約93%(フレームワーク領域の大部分を含む)は、ヒトIgGlに由来する。この配列の約7%は、マウス抗体A4.6.1に由来する。ベバシズマブは約149000ダルトンの分子量を有し、グリコシル化されている。ベバシズマブおよび他のヒト化VEGF−A抗体は、米国特許第6884879号にさらに説明されている。米国特許第6884879号の開示の全体は、参照により本願明細書に明確に援用される。
別の態様では、VEGF−A抗体はラニビズマブ(ルセンティス(登録商標)抗体またはhuFab V2)である。ラニビズマブは、ヒト化した親和性成熟型ヒトVEGF−A Fabフラグメントであって、大腸菌発現ベクターおよび細菌発酵における標準的な組み換え技術によって生産される。ラニビズマブはグリコシル化されておらず、約48000ダルトンの分子量を有する。国際特許出願第98/45331号および米国特許出願第20030190317号も参照のこと。
本願発明に使用されてもよい他のVEGF−A抗体には、米国特許出願第20060280747号、米国特許出願第20070141065号および米国特許出願第20070020267号に開示されているように、B20またはG6抗体の配列に由来する抗体が含まれる。これらの開示の全体は、参照により本願明細書に明確に援用される。ある態様では、米国特許出願第20060280747号、米国特許出願第20070141065号および米国特許出願第20070020267号に開示されているように、抗体はB20−4.1である。別の態様では、米国特許出願第60/991302号に開示されているように、抗体はB20−4.1.1である。米国特許出願第60/991302号の開示の全体は、参照により本願明細書に明確に援用される。潜在的に有用なG6に由来する抗体には、G6−8、G6−23およびG6−31が含まれるが、これらには限定されない。
他の追加的なVEGF−A抗体は、米国特許第7060269号、米国特許第6582959号、米国特許第6703020号、米国特許第6054297号、国際特許出願第96/30046号、国際特許出願第94/10202号、欧州特許第666868号、米国出願第2006009360号、米国出願第20050186208号、米国出願第20030206899号、米国出願第20030190317号、米国出願第20030203409号、米国出願第20050112126号およびPopkovらのJournal of Immunological Methods 第288巻第149〜164頁(2004年)に開示されている。
VEGF受容体は、VEGFR−1(Flt−1としても知られている)、VEGFR−2(マウスホモログについてKDRおよびFLK−1としても知られている)およびVEGFR−3(Flt−4としても知られている)を含む。VEGFファミリーの各メンバーに対する各受容体の特異性は様々である。VEGF−AはVEGFR−1とVEGFR−2のいずれにも結合する。VEGF−CはVEGFR−2とVEGFR−3に結合する。完全長の受容体は、7つのIg様ドメインおよび1つの膜貫通ドメインを有する細胞外ドメインと、チロシンキナーゼ活性を有する1つの細胞内ドメインとを含む。細胞外ドメインは、VEGFリガンドの結合に関与する。細胞内ドメインは、シグナル伝達に関与する。
VEGFリガンドに特異的に結合するVEGF受容体分子またはそれらのフラグメントは、VEGFタンパク質に結合して隔離させることによってシグナル伝達を阻害するVEGF拮抗剤として使用可能である。好ましい態様では、VEGF受容体分子は可溶性である。可溶性のVEGF受容体分子は、VEGFタンパク質に結合することによって、VEGFタンパク質の生物活性に対して阻害作用を及ぼす。これによって、VEGFタンパク質が標的細胞表面に存在する本来の受容体に結合することを阻害する。VEGF受容体分子が細胞膜に結合しなくなることは望ましくない。好ましい態様では、可溶性のVEGF受容体分子は、それが由来したVEGF受容体型の膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインに対応するあらゆるアミノ酸配列を欠いている。
VEGF−受容体分子は、少なくとも2つの異なる受容体タンパク質に由来するアミノ酸配列を含むキメラ分子であってもよい。そのうち1以上は、VEGFに結合してVEGFの生物活性を阻害することができるVEGF受容体タンパク質(つまりVEGFR−1、VEGFR−2またはVEGFR−3)である。態様によっては、キメラVEGF受容体分子は、VEGFR−1,VEGFR−2およびVEGFR−3から選択された2つだけの異なる受容体タンパク質に由来するアミノ酸配列を含む。好ましい態様では、VEGF−受容体分子はVEGFR−1、VEGFR−2またはVEGFR−3の細胞外リガンド結合領域に由来する1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または7つすべてのIg様ドメインのみを含む。好ましくは、VEGF−受容体分子は1つ以上のIg様ドメインを含み、VEGFR−1、VEGFR−2およびVEGFR−3に由来するあらゆる膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを欠く。特に好適な態様では、VEGFR−1、VEGFR−2および/またはVEGFR−3に由来するVEGF−受容体分子のIg様ドメイン部分は、これらのIg様ドメインのうち1つ、2つ、および3つ、またはIg様ドメインの誘導体から選択される。
VEGF−受容体分子は、融合タンパク質であってもよい。この場合、受容体タンパク質に由来するアミノ酸配列(たとえばVEGFR−2、VEGFR−2および/またはVEGFR−3に由来するIg様ドメイン)は、無関係なタンパク質に由来するアミノ酸(たとえば免疫グロブリン配列)に結合している。好ましい態様では、受容体タンパク質に由来するアミノ酸配列は、免疫グロブリンのFc領域に融合している。Ig様ドメインが結合(融合)していてもよい他のアミノ酸配列は、当業者には明らかであろう。
本願発明に有用なVEGF−受容体分子の例には、可溶性のVEGFR−1/Fc(IgのFc領域に融合したVEGFR−1の細胞外ドメインに由来するIg様ドメインを含む)、VEGFR−2/Fc(IgのFc領域に融合したVEGFR−2の細胞外ドメインに由来するIg様ドメインを含む)およびVEGFR−1/VEGFR−2/Fc(IgのFc領域に融合したVEGFR−1およびVEGFR−2の細胞外ドメインに由来するIg様ドメインを含む)(Regeneron社のVEGF−Trapとしても知られる)国際特許出願第97/44453号を参照)を含む。これらのVEGF受容体分子は、VEGF−Aを隔離する。
VEGF−Cを隔離することによってVEGF−C活性またはVEGFR−2およびVEGFR−3を介したシグナル伝達を阻害する可溶性のVEGF−受容体分子の例は、国際特許出願第2000/023565号、国際特許出願第2000/021560号、国際特許出願第2002/060950号および国際特許出願第2005/087808号に開示されている。VEGF−C活性に対するそのような阻害剤には、VEGFR−2、VEGFR−3およびNRP−2に由来する可溶性のトラップ(traps)が含まれる。好ましい態様では、VEGF−C拮抗剤は可溶性のVEGF−C受容体分子である。好ましいVEGF−C受容体分子は、VEGFR−3の細胞外ドメインの一部を含むポリペプチドである。この一部は、細胞外ドメインのIg様ドメイン1〜3を少なくとも含み、Ig様ドメイン4〜7およびあらゆる膜貫通ドメインを欠くポリペプチドを欠く。これらのコンストラクトは、国際特許出願第2002/060950号により詳細に説明されている。
ある拮抗剤、特にVEGF受容体を標的とするかVEGF受容体に由来する拮抗剤は、1つ以上のVEGFリガンドを拮抗してもよい。たとえば、VEGFR−3抗体またはVEGFR−3に由来するVEGF−受容体分子は、VEGF−CおよびVEGF−Dの活性を阻害(拮抗)するために使用可能である。これらのVEGFリガンドはいずれもVEGFR−3に結合するためである。VEGF/PGDFファミリーのリガンドのうち2つに結合できる拮抗剤分子、たとえばVEGF−CポリペプチドとVEGF−Dポリペプチドの両方に結合して隔離可能な可溶性VEGFR−3受容体トラップの場合、本願明細書で特異的に結合する拮抗剤分子とは、いずれのリガンドにも結合する拮抗剤の能力をいう。例として、またXおよびYに結合して拮抗する(たとえばXおよびYの1以上の生物活性を中和し、遮断し、阻害し、無効化し、減少させ、干渉する)拮抗剤分子に関して、ある態様では、拮抗剤はXおよびYの発現量または生物活性を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはそれ以上、低下または抑制させる。他の態様によると、拮抗剤は(i)Xに結合してXの生物活性を阻害し(たとえばVEGF−Cに結合してVEGF−Cに誘導された内皮細胞の増殖を試験管内で阻害する)、(ii)Yに結合してYの生物活性を阻害する(たとえばVEGF−Dに結合してVEGF−Dに誘導されたリンパ内皮細胞の増殖を試験管内で阻害する)。他の好ましい態様によると、拮抗剤は、非Xポリペプチドおよび非Yポリペプチドに対するよりも高い親和性にて、XおよびYに別々に結合する。他の好ましい態様によると、拮抗剤はXとYのいずれにも特異的に結合する。ある好ましい態様によると、拮抗剤はKd=1μM〜1pMにてXおよびYに別々に結合する。他の好ましい態様によると、拮抗剤はKd=500nM〜1pMにてXおよびYに別々に結合する。
誤解を避けるために、VEGF−C拮抗剤および抗腫瘍性組成物の使用、投与、またはこれらを含む産物と言った場合には、2つの異なる化合物の使用、投与、またはこれらを含む産物を意味するものとする。
「拮抗剤」との用語は、結合する分子の生物活性を阻害するか低下させる化合物または薬剤をいう。拮抗剤には、抗体、合成または天然配列のペプチド、イムノアドヘシン、低分子拮抗剤をいう。これらはVEGFに結合し、任意的に他の分子と共役するかまたは融合されている。「ブロッキング」抗体または「拮抗剤」抗体は、抗体が結合する抗原の生物活性を阻害するか低下させる抗体である。
「治療する(treat)」、「治療する(treating)」または「治療(treatment)」との用語は、治療法および予防(つまり予防措置)の両方をいう。この場合、目的はがんを防止または改善するか、あるいはがんの進行を遅らせる(低下させる)ことである。治療の必要がある対象には、既にがんに罹患している対象に加えて、がんが予防されるべき対象も含む。
「防止する(preventing)」、「防止(prevention)」、「予防の(preventative)」または「予防」との用語は、異常または症状を含む状態、病気、疾患、または表現型を、発症しないようにすること、または妨げること、防御すること、または保護することをいう。防止される必要がある対象は、その状態を発症しやすくてもよい。
「改善する(ameliorate)」または「改善(amelioration)」との用語は、異常または症状を含む状態、病気、疾患、または表現型の低下、減少、または除去をいう。治療が必要な対象は、既にその状態を有していてもよいし、またはその状態になりやすくてもよいし、またはその状態を回避されるべき人であってもよい。
「標準治療」または「ベストプラクティス」との用語は、がんなどのある一連の症状または特定の疾患に関して、適切で、一般に認められており、広く使用されていると専門家が同意する治療をいう。当業者は、任意の特定のがんに対する標準治療を認識するであろう。標準治療は、異なるがんの種類に対して、または同じ種類のがんの異なるステージに対して異なりうる。
「耐性がん」または「耐性腫瘍」との用語は、少なくともVEGF−A拮抗剤を含むがん治療の間に、全く反応しないか反応性を失うか低下した反応性を示すかしたがん、がん細胞、または腫瘍をいう。態様によっては、耐性腫瘍はVEGF−A抗体治療に抵抗性を有する腫瘍である。ある態様では、VEGF−A抗体はベバシズマブである。態様によっては、耐性腫瘍は少なくともVEGF−A拮抗剤を含むがん治療に反応する可能性が低い腫瘍である。
「組み合わせ(併用)」投与と言った場合には、任意の順序の同時で(並列的で)連続的な投与をいう。併用投与には、別々の製剤または単一の製剤処方を用いた共投与、および任意の順序の連続的な投与を含む。両方(またはすべて)の活性薬剤が同時に生物活性を及ぼすための時間の間隔が存在することが好ましい。
「対象」との用語は、哺乳類をいう。哺乳類は、霊長類、特にヒトであってもよいし、家畜、動物園にいる動物、またはペットであってもよい。本願明細書に開示された方法および製造品はヒトの医療用の治療に好適であることが特に想定されている。しかし、ウマ、ウシ、ヒツジなどの家畜、イヌやネコなどのペット、またはネコ科の動物、イヌ科の動物、ウシ科の動物、有蹄動物などの動物園にいる動物の治療を含む獣医治療にも、これらは適用可能である。
「治療に有効な量」との用語は、哺乳類の病気、疾患または表現型を治療するために有効な薬剤の量をいう。がんの場合、治療に有効な量の薬剤は、がん細胞の数を減少させてもよいし;腫瘍の大きさを小さくしてもよいし;がん細胞の末梢器官への浸潤を阻害してもよいし(つまり浸潤をある程度遅らせ、好ましくは停止させる);腫瘍の転移を阻害してもよいし(つまり転移をある程度遅らせ、好ましくは停止させる);腫瘍成長をある程度抑制してもよいし;および/またはこの疾患または病気に関連する1以上の症状をある程度緩和してもよい。本薬剤が存在するがん細胞の成長を抑制しうる、および/またはがん細胞を殺しうる範囲であれば、本薬剤は細胞増殖抑制剤および/または細胞毒性を示してもよい。がん治療に対して、生体内における有効性は、たとえば生存期間、疾患が進行するまでの時間(TTP)、反応率(RR)、奏功期間、および/またはQOLを評価することによって測定可能である。組み合わせ(併用)において、「治療に有効な量」とは、VEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物(1以上の他の治療薬を含む)との投与が標的とする疾患の減少または抑制をもたらすことを意味する。
「治療的に相乗的な量」との用語は、標的とする疾患に関連する状態または症状を相乗的に減少させるか取り除くために必要なVEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物の量をいう。
「抗体」との用語は、最も広義に使用され、所望の生物活性を示す限り、モノクローナル抗体(完全長、つまり無傷なモノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多価の抗体、多特異的抗体(たとえば二重特異性抗体)、および抗体フラグメント(後述)を特に含む。
「特異的結合」または「特異的に結合する」または「〜に特異的」との用語は、ある分子が他の任意のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープにあまり結合することなく、特定のポリペプチドまたは特定のポリペプチド上のエピトープに結合する場合の結合をいう。そのような結合は、測定できる程度に非特異的な相互作用とは相違している。たとえば、特異的結合は競合アッセイを用いて決定することができる。本願明細書で使用されるように、特異的結合は、抗体とポリペプチドまたはポリペプチドエピトープとの相互作用、および受容体とポリペプチドまたは他の受容体結合分子との相互作用に関連して使用される。特異的結合はまた、VEGF−CまたはVEGF−Aの生物活性を部分的または完全に阻止し、中和し、減少させ、または拮抗する分子の相互作用にも適用される。
特に、「特異的な結合」または「特異的に結合する」または「〜に特異的」とは、特定のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに対する方が非特異的な標的に対してよりも、少なくとも2倍小さなKd値を有する分子をいう。特異的な結合はまた、特定のポリペプチドまたはポリペプチドエピトープに対する方が非特異的な標的に対してよりも、少なくとも4倍、6倍、8倍、10倍または10倍超小さなKd値を有する分子をいう。または、特異的な結合は、標的に対するKd値が少なくとも約10−4M、約10−5M、約10−6M、約10−7M、約10−8M、約10−9M、約10−10M、約10−11M、約10−12M、またはそれ未満である分子として表現できる。
「結合親和性」との用語は一般に、ある分子(たとえば抗体)の単一の結合部位とその結合相手(たとえば抗原)との間における非共有相互作用の強度の合計をいう。本願明細書で使用されるように、他に示さない限り、「結合親和性」は、結合ペア(たとえば抗体や抗原)のメンバー間で1:1相互作用を反映した固有の結合親和性をいう。分子Xのその相手Yに対する親和性は一般に、解離定数(Kd)によって表すことができる。親和性は、本願明細書に記載された方法を含む公知の一般的な方法によって測定できる。低親和性抗体は一般的に、抗原にゆっくりと結合して容易に解離する傾向がある。一方、高親和性抗体は一般的に、抗原により速く結合してより長く結合したままである傾向がある。結合親和性を測定する様々な方法が公知である。本願発明の目的にはそのうち任意の方法を使用することができる。
ある態様では、「Kd」または「Kd値」または「Kd定数」は、以下のアッセイで説明するように、関心のあるFab型の抗体およびその抗原を用いて実行される放射性抗原結合アッセイ(RIA)によって測定される。Fabの抗原に対する溶液−結合親和性は、非標識抗原の滴定系列の存在下でFabを最小濃度の125I標識抗原と平衡させ、次に結合した抗原を抗Fab抗体でコーティングしたプレートに捕らえることによって測定される(たとえばChenらのJ.Mol.Biol.第293巻第865〜881頁(1999年)を参照)。アッセイ用の条件を確立するために、微量定量プレート(DYNEX Technologies社)を50mM 炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕獲用抗Fab抗体(Cappel Labs社)とともに一晩コーティングする。続いてPBS中の2%(w/v)ウシ血清アルブミンを用いて、室温(約23℃)にて2〜5時間ブロッキングする。非吸着性プレート(Nunc社 #269620)では、100pmまたは26pM[125I]−抗原が連続希釈した関心のあるFabのとともに混合される。関心のあるFabは次に一晩インキュベートされる(インキュベートがさらに長時間(たとえば約65時間)継続されることにより、確実に平衡に到達するようにしてもよい)。その後、室温で(たとえば1時間)インキュベートするために、混合物が捕獲用のプレートに移される。次にこの溶液は除去され、PBSに入った0.1%TWEEN−20(登録商標)界面活性剤を用いてプレートが8回洗浄される。プレートが乾燥したら、150μl/穴のシンチラント(scintillant)(MICROSCINT−20(登録商標);Packard社)が添加され、プレートがTOPCOUNT(登録商標)γカウンター(Packard社)上で10分間計測される。競合的結合アッセイに使用するために、最大結合の20%以下となる各Fabの濃度が選択される。
他の態様によると、KdまたはKd値は、固定化抗原CM5チップを用いて約10反応単位(RU)にて、BIACORE(登録商標)−2000またはBIACORE(登録商標)−3000装置(BIAcore社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いた表面プラズモン共鳴アッセイによって25℃にて測定される。つまり、供給業者の取扱説明書に従って、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(EDC)およびN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を用いて、カルボキシメチル化されたデキストランバイオセンサーチップ(CM5、BIAcore社)が活性化される。抗原は5μg/ml(約0.2μM)となるように10mM 酢酸ナトリウム(pH4.8)によって希釈され、その後5μl/分の流量にて注入されることにより、約10反応単位(RU)の共役タンパク質が実現される。抗原の注入に続いて、1M エタノールアミンが注入されることにより、未反応基がブロックされる。反応速度の測定には、連続的に2倍希釈したFab(0.78nM〜500nM)が、0.05% TWEEN20(登録商標)界面活性剤(PBST)の入ったPBS中に約25μl/分の流量にて注入される。会合速度(Kon)と解離速度(Koff)は、単純な1:1ラングミュア結合モデル(BIAcore(登録商標)評価ソフトウェア バージョン3.2)を用いて、会合と解離のセンサーグラムを同時にフィッティングすることによって計算される。平衡解離定数(Kd)は、Koff/kon比として計算される。たとえばChenら、J.Mol.Biol 第293巻第865〜881頁(1999年)を参照のこと。会合速度(on−rate)が上述した表面プラズモン共鳴アッセイによって106M−1s−1を上回った場合、分光計により測定された抗原の濃度上昇のもと、PBS(pH7.2)中の20nM 抗抗原抗体(Fab型)の25℃における蛍光発光強度(励起=295nm;発光=340nm、16nm帯域)の増加または減少を測定する蛍光消失(quenching)技術を用いて、会合速度を決定することができる。分光計としては、ストップフロー付き分光光度計(Aviv Instruments社)またはかくはん式キュベットを備えた8000系列SLM−AMINCO(登録商標)分光光度計(ThermoSpectronic社)などがある。「会合速度(on−rate)」、「会合速度(rate of association)」、「会合速度」または「kon」もまた、上述したようにBIACORE(登録商標)−2000またはBIACORE(登録商標)−3000システム(BIAcore社、ニュージャージー州ピスカタウェイ)を用いて決定可能である。
他に示さない限り、「多価抗体」との表現は、3つ以上の抗原結合部位を含む抗体をいう。多価抗体は、3つ以上の抗原結合部位を有するように操作されてもよい。また多価抗体は一般に、IgM抗体またはIgA抗体の本来の配列ではない。
「抗体フラグメント」との用語は、無傷な抗体の一部のみを含み、一般に無傷な抗体の抗原結合部位を含むために抗原結合能を保持する分子をいう。この定義に含まれる抗体フラグメントの例には、(i)VL、CL、VHおよびCH1ドメインを含むFabフラグメント;(ii)CH1ドメインのC末端にて1以上のシステイン残基を有するFabフラグメントであるFab’フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインを有するFdフラグメント;(iv)VHおよびCH1ドメインを有し、CH1ドメインのC末端に1以上のシステイン残基を有するFd’フラグメント;(v)抗体の片方の腕にVLおよびVHドメインを有するFvフラグメント;(vi)VHドメインから構成されるdAbフラグメント;(vii)単離された相補性決定領域(CDRs);(viii)F(ab’)2フラグメント、つまりヒンジ領域においてジスルフィド架橋により結合された2つのFab’フラグメントを含む二価フラグメント;(ix)一本鎖抗体分子(たとえば一本鎖Fv;scFv);(x)同じポリペプチド鎖において軽鎖可変ドメイン(VL)に結合した重鎖可変ドメイン(VH)を含み、2つの抗原結合部位を有する「二重特異性抗体(diabodies)」;(xi)相補的な軽鎖ポリペプチドとともに一対の直列Fdセグメント(VH−CH1−VH−CH1)を含み、一対の抗原結合領域を形成する「線状(linear)抗体」がある。
「モノクローナル抗体」との用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られた抗体をいう。つまり、集団に含まれる個々の抗体は、生じうる自然発生突然変異を除いて同一である。自然発生突然変異は、微量存在してもよい。モノクローナル抗体は非常に特異的であって、単一の抗原を対象とする。さらに、通常は異なる決定基(エピトープ)を対象とする異なる抗体を含むポリクローナル抗体の調整とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基を対象とする。「モノクローナル」との修飾語は、任意の特定の方法による抗体の産生が必要とされると解釈されるべきではない。たとえば、本願発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法によって作製されてもよいし、組み換えDNA法によって作製されてもよい。「モノクローナル抗体」はまた、ファージ抗体ライブラリーから単離されてもよい。
本願明細書におけるモノクローナル抗体は特に、「キメラ」抗体を含む。「キメラ」抗体では、重鎖および/または軽鎖の一部は、特定の種に由来するかまたは特定の抗体のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一か相同である。一方、鎖の残りは、別の種に由来するかまたは抗体の別のクラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一か相同である。モノクローナル抗体はまた、所望の生物活性を示す限り、そのような抗体のフラグメントも含む。
非ヒト(たとえばマウス)抗体の「ヒト化」型と言った場合には、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含むキメラ抗体をいう。ほとんどの部分については、ヒト化抗体はヒト免疫グロブリン(受容側(recipient)抗体)である。ここでは受容側の超可変領域の残基は、所望の特異性、親和性、および能力を有し、マウス、ラット、ウサギ、またはヒト以外の霊長類である非ヒト種(提供側(donor)抗体)の超可変領域に由来する残基に置換されている。ヒト免疫グロブリンの免疫グロブリンの残基が、対応する非ヒト種のフレームワーク領域(FR)の残基に置換されている例もある。さらに、ヒト化抗体は受容側抗体または提供側抗体には見られない残基を含んでもよい。これらの改良は、抗体の性能をさらに改善するために行われる。一般に、ヒト化抗体は実質的に1以上、典型的には2つの可変ドメインのすべてを含むであろう。この場合、すべてまたは実質的にすべての超可変ループは非ヒト免疫グロブリンの超可変ループに対応し、すべてまたは実質的にすべてのフレームワーク領域はヒト免疫グロブリン配列のフレームワーク領域に対応する。ヒト化抗体はまた、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部も任意的に含む。
「ヒト抗体」との用語は、ヒトによって産生された抗体の配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体、および/または本願明細書に開示されるようにヒト抗体を作製するための任意の技術を用いて作製された抗体をいう。ヒト抗体のこの定義は特に、非ヒト抗原−結合残基を含むヒト化抗体を除外する。ヒト抗体は、公知の様々な技術を用いて産生可能である。ある態様では、ヒト抗体はヒト抗体を発現するファージライブラリーから選択される。ヒト抗体はまた、ヒト免疫グロブリン座位をトランスジェニック動物に導入することによって作製可能である。トランスジェニック動物は、たとえば内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活性化されたマウスである。挑戦にあたって、ヒト抗体の産生が観察される。ヒト抗体の産生は、遺伝子再構成、集合および抗体のレパートリーを含むすべての点で、ヒトで見られる抗体の産生とよく似ている。または、標的抗原に対する抗体を産生するヒトBリンパ球の不死化を通じてヒト抗体は調整されてもよい(そのようなBリンパ球は、個体から回復されてもよいし、試験管内で接種して付与されてもよい)。
「親和性成熟型」抗体とは、1以上のCDRにおいて、改変を有さない親抗体に比べて抗原に対する抗体の親和性の向上をもたらす1以上の改変を有する抗体をいう。ある態様では、親和性成熟型抗体は標的抗原に対してナノモル、さらにはピコモルの親和性を有するであろう。親和性成熟型抗体は、公知の手順、たとえばVHおよびVLのドメインシャッフリング、またはCDRおよび/またはフレームワーク残基のランダム変異導入法による親和性成熟によって生産される。
ポリペプチド、CDR、抗体または他の構成要素に関して「単離された(isolated)」との用語は、自然環境の成分から同定され、分離され、および/または回収されたポリペプチド、CDR、抗体または他の構成要素をいう。自然環境の汚染物質成分は、ポリペプチドまたは抗体に対する診断または治療上の使用に干渉する物質である。また汚染物質成分は、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質を含みうる。態様によっては、(1)ローリー法により決定されるように、ポリペプチドの95重量%超、最も好ましくは99重量%超まで、(2)ロータリ配列決定装置を用いてN末端または内部のアミノ酸配列の少なくとも15残基を得るのに十分な程度にまで、あるいは(3)クマシー・ブルーまたは好ましくは銀染色を用いた還元状態または非還元状態におけるSDS−PAGEによる均一さにまで、ポリペプチドは精製されるであろう。単離されたポリペプチドは、組み換え細胞内の本来の位置にある(in situ)ポリペプチドを含む。ポリペプチドの自然環境の1以上の構成要素が存在しないからである。しかし通常は、単離されたポリペプチドは1以上の精製ステップによって調整されるであろう。
抗体に関して「生物学的特性」との用語は、抗体の1以上の生物学的特性を有する指定された抗体をいう。この生物学的特性は、抗体を同じ抗原に結合する他の抗体から区別する。対象とする抗体が結合する抗原上のエピトープに結合する抗体をスクリーニングするために、お決まりのクロスブロッキングアッセイを行うことができる。
「標識(label)」との用語は、たとえばポリペプチドまたは抗体に直接的または間接的に共役した検出可能な化合物または組成物をいう。標識はそれ自体が検出可能であってもよいし(たとえば放射性同位元素標識または蛍光標識)、酵素標識の場合には検出可能な基質化合物または組成物の化学的変化を触媒してもよい。
本願明細書で使用されるように、言語表現または必要な意味のために文脈が他の意味を要する場合を除いて、「含む(comprise)」との語句または「含む(comprises)」、「含む(comprising)」などの変形型が、包含的な意味で、つまり規定された特徴の存在を特定するために使用される。しかし、本願発明の様々な態様において、さらなる特徴の存在または追加を除外ために使用されるわけではない。
「生存期間」との用語は、薬剤を最初に投与してから死ぬまでの時間をいう。「生存期間」はまた、治療群対対照群の成層(stratified)ハザード比(HR)を用いて測定可能である。HRは、治療中における対象の死亡リスクを表す。
「疾患の進行までの時間」との用語は、治療を行なってから疾患の進行に至るまでの時間をいう。
「奏効率」との用語は、治療に反応を示す治療された対象の百分率をいう。
「奏功期間」との用語は、初期反応から疾患の進行までの時間をいう。
(VEGF−C拮抗剤の治療上の使用)
本願発明者らは、抗腫瘍性組成物とともにVEGF−C拮抗剤、特にVEGF−C抗体を用いることにより、がん治療において著しい利益がもたらされることを発見した。
したがって、第1の態様では、本願発明は対象におけるがんの治療方法を提供する。本方法は、治療に有効な量のVEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物を組み合わせて対象に投与することを含む。
第1の態様のある形態では、本願発明は対象中のがんを治療するために組み合わせたVEGF−C拮抗剤および抗腫瘍性組成物を提供する。
第2の態様では、本願発明はVEGF−C拮抗剤を含む製造品(たとえばキット)を提供する。本製造品は、VEGF−C拮抗剤を含む容器、およびVEGF−C拮抗剤の使用者に、抗腫瘍性組成物と組み合わせたVEGF−C拮抗剤のがんに罹患した対象への投与を指示する添付文書を含んでもよい。
本願発明の第1の態様または第2の態様の好ましい態様では、対象はヒトである。
がんは通常、進行ステージによって定義される。全ステージのグループ分け(ローマ数字病期分類とも呼ばれる)には、がんの進行を説明するために数字I、II、IIIおよびIVを使用する。大まかに言うと、ステージは以下のように定義される。ステージIは通常、がんが比較的小さく、起因した臓器内にとどまっていること、つまりがんが局部的であることを意味する。ステージIIは通常、がんが周辺組織まで拡散し始めてはいないが、腫瘍がステージIよりも大きいこと、つまりがんが局部的に進行していることを意味する。ステージIIは、がん細胞が腫瘍近くのリンパ節へと拡散していることを意味することもある。ステージIIIは通常、がんがより大きいことを意味する。がんが周辺組織へと拡散し始めているかもしれない。また、周辺組織中のリンパ節中にがん細胞が存在する。がんは依然として局部的に進行しているが、通常はこの段階ではステージIIよりも大きい。ステージIVは通常、がんが他の臓器または体全体へと拡散または転移していることを意味する。これは転移性がんとも呼ばれる。このステージは通常、手術不可能ながんを表す。これらのステージは正確に定義される。しかし、定義はそれぞれのがんの種類によって異なる。
あいにく、がんは原発腫瘍が除去されてから数ヶ月〜数年後に再発することが普通である。原発腫瘍が発見された頃には、がん細胞が既に逃げ出して遠隔部位に留まってはいたが、除去時に検出できるほど大きな腫瘍を形成していなかったからである。原発腫瘍のごく一部が最初の手術では取り残された結果、これが後に肉眼で見える腫瘍へと成長する場合がある。すべての目に見える腫瘍が撲滅された後に再発するがんは、再発病と呼ばれる。原発腫瘍の領域にて再発する病気は局部的な再発であって、転移によって再発する病気は、遠隔再発と呼ばれる。遠隔再発は通常、ステージIVの疾患と同じように治療される(これらの用語は交互に使用されることもある)。局所再発の深刻さは、がんの種類に応じて遠隔再発とは全く異なりうる。
第1の態様の方法および第2の態様の製造品は、上述したあらゆるがんおよび任意のステージのがんの治療に使用されてもよい。第1の態様の方法および第2の態様の製造品は、ステージI、II、IIIまたはIVのがん、または手術(たとえば切除)後に採用された治療計画、または再発がんの治療に使用されてもよい。ある態様では、VEGF−C拮抗剤が初期ステージのがんの治療に有用であることが予想される。理論に制限されることなく、VEGF−C拮抗剤を抗腫瘍性物質と組み合わせて使用することは、VEGF−C拮抗剤がVEGF−Cにより促進された腫瘍の成長を阻害することによって抗腫瘍性物質の腫瘍への攻撃(たとえば縮小または除去)をより有効にすることができる限り、患者のためになりうると予想される。
本願発明の方法、物品および使用は、がんが原発器官から局所的なリンパ節およびその先へと拡散し始めた対象の治療において、特に有用であることが予想される。たとえば、本願発明の方法、物品および使用は、がんが体の他の組織または部分(たとえば器官)へと転移した、加えて任意的に局所的および/または離れたリンパ節へと拡散した対象を治療するために、特に有用であることが予想される。本願発明の方法、物品および使用は、ステージIIIまたはIVのがんを有する対象、および/またはがんがもはや切除不可能な対象を治療するために、特に有用であることが予想される。
第1の態様の方法または第2の態様の製造品は、血管が新生された固形腫瘍を治療するために特に好適である。第1の態様または第2の態様のある態様では、がんは、肺がんおよび気管支がん、結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がん、肝臓がん、食道がん、膀胱腺および膀胱がん、非ホジキンリンパ腫、腎臓がん、乳がん、卵巣がんおよび脳腫瘍(たとえば膠芽細胞腫)から構成される群より選択される。第1の態様または第2の態様の好ましい態様では、がんは、結腸直腸がん(たとえば転移性結腸直腸がん)、肺がん(たとえば非小細胞肺がん(NSCLC))、前立腺がん、膠芽細胞腫、腎臓がん(たとえば転移性腎細胞上皮性悪性腫瘍(RCC))、膵臓がんまたは卵巣がんである。
第1の態様の方法および第2の態様の製造品は、抗脈管形成療法、つまり腫瘍成長を支持するための栄養を供給するために必要な腫瘍の血管の発達を抑制することを目指した新たながん治療方法を包含する。血管形成は初期の腫瘍成長と転移の両方に関与する。そのため、本開示により提供される血管新生抑制治療は、原発部位における腫瘍の腫瘍性成長を阻害することができるとともに、二次部位において腫瘍の転移を防止することができる。そのため、他の治療法によって腫瘍を攻撃することが可能となる。
第1の態様の方法および第2の態様の製造品は、抗リンパ管新生治療、つまり腫瘍の転移性拡散に関与してきたリンパ管の発達を抑制することを目指した新たながん治療方法を包含しうる。
第1の態様の方法および第2の態様の製造品は、血管新生抑制と抗リンパ管新生の併用治療を包含する。これにより、各治療法の両方を組み合わせた利益が提供される。
VEGF−C拮抗剤は、本願明細書に記載された任意の好適な分子であってもよい。好ましい態様では、本願明細書に記載されたように、VEGF−C拮抗剤はVEGF−C抗体、VEGFR−3抗体およびVEGFR−3受容体分子(つまりVEGR−3受容体トラップ)から選択される。
非常に好ましい態様では、本願明細書で説明されるように、VEGF−C拮抗剤はVEGF−C抗体である。好ましいVEGF−C抗体は、VEGF−Cに対するモノクローナルVEGF−C抗体69D09の結合を競合的に阻害するモノクローナル抗体である。モノクローナルVEGF−C抗体69D09は、ハイブリドーマATCC PTA−4095により産生されるか、またはそれぞれ図3、4に示された重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を有する。別の好適なVEGF−C抗体は、ハイブリドーマATCC PTA−4095により産生されたモノクローナルVEGF−C抗体69D09、またはそれぞれ図3、4に示された重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を有するモノクローナル抗体と同じエピトープに結合するモノクローナル抗体である。ある態様では、VEGF−C抗体は完全長ヒトVEGF−Cモノクローナル抗体である。VEGF−C抗体は69D09抗体またはそのフラグメントも含むが、これらには限られない。VEGF−C抗体は、ヒト化抗体であってもよい。好ましくは、VEGF−C抗体は寄託されたハイブリドーマATCC PTA−4095により産生されるか、または図3および4に示された重鎖および軽鎖のアミノ酸配列を有するヒト抗体である。
VEGF−C拮抗剤の投与と組み合わせて投与される抗腫瘍性組成物には、1以上の治療薬を使用可能である。第1の態様または第2の態様のある態様では、抗腫瘍性組成物は治療されるがんに対する標準治療を含む。
腫瘍などの様々な疾患を治療するために使用される場合には、VEGF−C拮抗剤は同じまたは類似の疾患に好適な他の治療薬と組み合わせることができることが想定される。がんの治療に使用される場合、VEGF−C拮抗剤は、手術、放射線治療、化学療法またはこれらの組み合わせなど、従来のがん治療法と組み合わせて使用されてもよい。がんの治療に使用される場合、抗腫瘍性組成物は腫瘍成長もしくは機能の抑制もしくは阻害、および/または腫瘍細胞の破壊が可能な1以上の治療薬を含むことが好ましい。
VEGF−C拮抗剤を併用したがん治療に有用な他の治療薬には、他の血管新生阻害剤が含まれる。多くの血管新生阻害剤が同定されており、公知である。第1の態様または第2の態様の他の態様では、抗腫瘍性組成物は血管新生阻害剤を含む。好ましくは、血管新生阻害剤は血管新生抑制抗体である。第1の態様または第2の態様の好ましい態様では、抗腫瘍性組成物はVEGF−A拮抗剤を含む。好ましいVEGF−A拮抗剤は、VEGF−A抗体およびVEGF−Aに特異的な可溶性VEGF−受容体分子(たとえばRegeneron社のVEGFトラップ)から選択される。好ましいVEGF−A抗体はベバシズマブ(アバスチン)である。
ある態様では、VEGF−C拮抗剤は他のVEGF−C拮抗剤と組み合わせて使用される(つまり抗腫瘍性組成物はVEGF−C拮抗剤を含む)。他のVEGF−C拮抗剤は、たとえばVEGF−C抗体、VEGF−C変異体、VEGF−C特異的な可溶性VEGF−受容体分子、VEGF−CまたはVEGF−C受容体をブロッキングできるアプタマー、VEGFR−3中和抗体、VEGFR−3チロシンキナーゼの低分子量阻害剤、およびこれらの任意の組み合わせである。これに代えて、またはこれに加えて、同じタイプの2以上の拮抗剤が対象に共に投与されてもよい。たとえば、2つのVEGF−C抗体が対象に共に投与されてもよい。
VEGF−C拮抗剤を併用した腫瘍治療に有用な他の治療薬には、腫瘍成長に関与する他の因子、たとえばEGFR、ErbB2(HER2としても知られている)、ErbB3、ErbB4、またはTNFの拮抗剤が含まれる。対象に1以上のサイトカインを投与することも有益な場合があってもよい。ある例では、VEGF−C拮抗剤は成長抑制薬とともに投与される。たとえば、成長抑制薬が最初に投与されて、続いてVEGF−C拮抗剤が投与されてもよい。しかし、同時投与またはVEGF−C拮抗剤を最初に投与することもまた考えられる。成長抑制薬の好適な投与量は、現在使用されている投与量であって、成長抑制薬とVEGF−C拮抗剤の複合作用(相乗効果)のために減らされてもよい。
第1の態様または第2の態様の好ましい態様では、VEGF−C抗体などのVEGF−C拮抗剤および1以上の化学療法剤の有効量を組み合わせて、がんになりやすいかがんであると診断された対象に投与される(つまり、抗腫瘍性組成物は化学療法剤を含む)。本願開示に従って、上述した薬剤を含む、抗がん活性を示す任意の化学療法剤を使用することができる。化学療法剤は、ドセタキセル、5−フルオロウラシル(5−FU)、テモゾロマイド(TMZ)、ゲムシタビン、オキサリプラチン、パクリタキセル、カルボプラチンおよびイリノテカンから構成される群から選択されてもよい。
好ましい態様では、本方法は、有効量のVEGF−C拮抗剤、特にVEGF−C抗体と、治療中または治療されるがん用の標準化学療法を組み合わせて対象に処方することを含む。結腸直腸がん、肺がん、膵臓がん、前立腺がん、膠芽細胞腫、腎臓がん、乳がん、肝臓がん、非ホジキンリンパ腫、卵巣がんおよび脳腫瘍に感受性があるかまたはこれらであると診断された対象を治療するために、本方法が特に有益となりうることが想定される。この場合、有効量のVEGF−C拮抗剤、特にVEGF−C抗体と、特定のがんに対する標準化学療法とが対象に対して組み合わせて処方される。結腸直腸がん(特に転移性CRC)、肺がん(特に非小細胞肺がん(NSCLC))、膵臓がん、前立腺がん、膠芽細胞腫、腎臓がん(特に転移性腎細胞上皮性悪性腫瘍(RCC))、膵臓がん、乳がん(特にHER2陰性転移性乳がん)、卵巣がんおよび膠芽細胞腫に感受性があるかまたはこれらであると診断された対象を治療するために、本方法が特に有益となりうることが想定される。この場合、有効量のVEGF−C拮抗剤、特にVEGF−C抗体と、特定のがんに対する標準化学療法とが対象に対して組み合わせて処方される。
特定の種類のがんに対して、1つ以上の「標準化学療法」または「標準化学療法計画(regime)」が存在してもよい。たとえば、「標準」療法は治療されるがんのステージ、原発腫瘍が転移しているかどうか、患者の年齢、異なる国の治療指針における差異などによって変わってもよい。結腸直腸がんに対する標準化学療法は5−FUである。膵臓がんに対する標準化学療法はゲムシタビンである。前立腺がんに対する標準化学療法はドセタキセルである。膠芽細胞腫に対する標準化学療法はTMZである。結腸直腸がん、膵臓がん、前立腺がんまたは膠芽細胞腫は転移性でありうる。
ほんの一例として、転移性結腸直腸がんに対する標準化学療法による治療を以下に説明する。
結腸直腸がんは、米国では3番目に多いがん死亡率の原因である。米国では1999年に、約129000の新たな結腸直腸がんの症例が診断され、結腸直腸がんによって56000人が死亡したと推定された。結腸直腸がん患者の約70%は、潜在的には外科的切除によって治療可能な病状で存在する。しかし、進行性または転移性の疾患を有する30%の人、および切除後に再発する20%の人の予後は芳しくない。転移性の疾患を有する人の平均生存期間は12〜14ヶ月である。
米国における転移性結腸直腸がんの標準治療は、最近までずっと、5−FUと5−FUの生物化学調整物質であるロイコボリンを用いた化学療法であった。5−FU/ロイコボリンの組み合わせは、大腸腫瘍の低頻度で一時的な縮小をもたらす。しかし、5−FU単独と比べて、生存期間を延ばすことは実証されていない。また5−FUは、効果のない治療と最善の対症療法の組み合わせに比べて、生存期間を延ばすことが実証されていない。5−FU/ロイコボリンに対して生存利益が実証されていないのは、1つには不十分な規模の臨床試験しか行われていないことにあるであろう。対象が切除可能な結腸直腸がんに対するアジュバント化学療法を受ける大規模な無作為化試験では、5−FU/ロイコボリンはロムスチン(MeCCΝU)、ビンクリスチン、および5−FU(MOF)と比較して生存期間の延長を示した。
米国では、5−FU/ロイコボリン化学療法は一般的に1つまたは2つのスケジュール、つまりメイヨクリニック計画(regimens)およびロズウェルパーク計画に従って行われている。メイヨクリニック計画は、5−FUと低用量ロイコボリンの集中コースから構成される(425mg/m2の5−FUと20mg/m2のロイコボリンを静注によって5日間、毎日投与。これを4〜5週間の間隔で反復するコース)。ロズウェルパーク計画は、週1回の5−FUと高用量ロイコボリンの投与から構成される(静注により投与される500〜600mg/m2の5−FUと、6週間にわたり毎週2時間の点滴により投与される500mg/m2のロイコボリン。これを8週間ずっと繰り返すコース)。メイヨクリニック計画とロズウェルパーク計画を比較した臨床試験は、効果の差を実証していない。しかし、差を実証するには力不足であった。2つの計画の毒性プロフィールは異なる。メイヨクリニック計画は、白血球減少と口内炎をより高頻度に生じさせる。ロズウェルパーク計画は、下痢をより高頻度に生じさせる。転移性結腸直腸がんであると新たに診断された、いずれかの計画を処方されている対象は、疾患の進行に対する平均(median)期間を4〜5ヶ月、平均生存期間を12〜14ヶ月と予想することができる。
最近、転移性結腸直腸がんに対する新たな第一治療が現れた。それぞれ約400人を対象とした2つの無作為化臨床試験によって、5−FU/ロイコボリンと組み合わせたイリノテカンが評価された。いずれの試験でも、イリノテカン/5−FU/ロイコボリンの組み合わせは、5−FU/ロイコボリンと比較して、生存期間の統計的に有意な上昇(2.2ヶ月および3.3ヶ月)、疾患が進行する時間、および奏効率を実証した。イリノテカンによる利益は、毒性の上昇という犠牲の上にもたらされた。つまり、イリノテカンの5−FU/ロイコボリンへの添加は、5−FU/ロイコボリン単独と比較して、国立がん研究所共通毒性基準(NCI−CTC)における悪性度3/4の下痢、悪性度3/4の嘔吐、悪性度4の好中球減少症、および無力症の発生率の上昇と関係していた。第二の設定において、単剤イリノテカンが生存期間を延ばすことを示す証拠も存在する。2つの無作為化試験は、イリノテカンが5−FU治療の後に病状が進行した対象の生存期間を延ばすことを実証している。一方の試験は、イリノテカンを最善の対症療法と比較し、生存期間が2.8ヶ月延びることを示した。他方の試験は、イリノテカンと注入投与された5−FUとを比較し、生存期間が2.2ヶ月延びることを示した。イリノテカンは第一または第二の設定における生存期間に対してより効果的かどうかという問題は、十分に管理された方法によっては試験されていない。
第1の態様または第2の態様のさらなる態様では、抗腫瘍性組成物は化学療法剤および血管新生阻害剤を含む。ある態様では、化学療法剤は、ドセタキセル、5−フルオロウラシル(5−FU)、テモゾロマイド(TMZ)、ゲムシタビン、オキサリプラチン、パクリタキセル、カルボプラチンおよびイリノテカンから構成される群から選択される。また、血管新生阻害剤は、たとえばベバシズマブなどの抗体である。
第1の態様または第2の態様の好ましい態様では、VEGF−C拮抗剤(たとえばVEGF−C抗体)はVEGF−A拮抗剤と併用して投与される。好ましいVEFG−A拮抗剤はベバシズマブである。
第1の態様または第2の態様の好ましい態様では、VEGF−C拮抗剤(たとえばVEGF−C抗体)は、VEGF−A拮抗剤(たとえばベバシズマブなどのVEFG−A抗体)と併用して、任意的に1以上の追加的な抗がん治療薬と併用して投与される。
ほんの一例として、潜在的な組み合わせの以下の例を説明する。
結腸直腸がんまたは肺がんの治療において、VEGF−C抗体+VEGF−A抗体+フォルフォックス。
結腸直腸がん、肺がんまたは乳がんの治療において、VEGF−C抗体+VEGF−A抗体+パクリタキセル。
肺がんの治療において、VEGF−C抗体+VEGF−A抗体+パクリタキセル+カルボプラチン。
結腸直腸がんの治療において、VEGF−C抗体+VEGF−A抗体+イリノテカン。
腎臓がんの治療において、VEGF−C抗体+VEGF−A抗体+インターフェロン。
膠芽細胞腫の治療において、VEGF−C抗体+VEGF−A抗体。
上述のすべての例において、がんは末期ステージおよび/または転移性であってもよい。好ましい態様では、VEGF−A抗体はベバシズマブである。
ある態様では、治療されるがんは耐性がんである。たとえば、治療されるがんはVEGF−A抗体、特にベバシズマブに対して抵抗性を有する。好ましい態様では、対象はVEGF−拮抗剤、特にベバシズマブなどのVEGF−A抗体を含むがん治療の過程で、反応しなくなるかまたは反応の低下を示す。
第1の態様または第2の態様のさらなる態様では、がんは血管新生抑制であるVEGF−A拮抗剤に耐性を有するようになっている。この場合、本願明細書で説明するように、対象はVEGF−C拮抗剤、好ましくはVEGF−C抗体と抗腫瘍性組成物との併用療法を受ける。好ましくは、がんは固形腫瘍および/または血管の腫瘍を含む。ある態様では、本願明細書で説明するように、標準治療はVEGF−A拮抗剤をVEGF−C拮抗剤に代えることによって改良される。別の態様では、本願明細書で説明したVEGF−C拮抗剤が標準治療に追加される。つまり、治療計画においてVEGF−A拮抗剤が維持される。
抗がん治療の開始時において(つまりベバシズマブなどのVEGF−A拮抗剤を投与されたことがない患者において)、またはVEGF−A拮抗剤に対する抵抗性を有さないことが明らかな抗がん治療の時点において、既にベバシズマブなどのVEGF−A拮抗剤を含むがん治療計画にVEGF−C拮抗剤を含めることは、疾患の進行、腫瘍体積の減少、生存期間、奏効率および奏功期間の点で著しい利益をもたらしうることも、本願発明者らは発見した。第1の態様または第2の態様のさらなる態様では、1以上の化学療法剤および1以上のVEGF−A拮抗剤を含む抗腫瘍性組成物と組み合わせてVEGF−C拮抗剤が投与される。たとえば、VEGF−A抗体および化学療法剤と組み合わせてVEGF−C抗体が適切に投与される。
(投与量および投与)
治療に有効な量の抗がん剤(たとえばVEGF−C拮抗剤および抗腫瘍性組成物)の対象への正確な投与方法、続く抗がん剤に対する患者に起こりうる反応性の診断が参加する医師の裁量であることは、医療分野の当業者には明らかであろう。投与量、他の薬との組み合わせ、時期および投与の頻度などを含む投与方法は、そのような抗がん剤に対して患者に起こりうる反応性の診断、患者の病状および病歴の影響を受けうる。ある疾患であると診断され、抗がん剤に比較的感受性がないと予想される患者でさえ、特に他の薬と組み合わせて、この治療の恩恵を受けうる。
抗がん剤を含む治療用組成物は、適正な医療行為に合った方法で製造され、投薬され、処方される。この場合に考慮すべき要因には、治療される疾患の特定の型、治療される特定の哺乳類、個々の患者の病態、薬の到達部位、起こりうる副作用、VEGF−C拮抗剤の型、投与方法、投与のスケジュール、および医療従事者に知られている他の要因が含まれる。投与される抗がん剤の有効量は、これらを考慮した上で制御されるであろう。
VEGF−C拮抗剤(たとえば抗体)と治療薬を含む抗腫瘍性組成物は、非経口(たとえば静脈内(IV)投与)、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内(intracerobrospinal)、皮下(SC)、関節内、滑液嚢内、髄腔内、経口、局所および吸入経路(たとえば肺内)を含む任意の好適な方法を用いて、対象に投与されてもよい。非経口点滴には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、および皮下投与が含まれる。VEGF−C拮抗剤(たとえば抗体)の静脈内または皮下投与が好ましい。最も好ましくは、VEGF−C拮抗剤は静脈内点滴によって投与される。
「静脈内点滴」との用語は、約5分超、好ましくは約30〜90分の時間をかけて、薬を動物またはヒトの患者の静脈中に導入することをいう。しかし、静脈内点滴は代わりに10時間以下の時間をかけて行われてもよい。対象は時間をかけて、またはそれに代えて急速静注もしくはプッシュ法(push)によって連続的に点滴を受けてもよい。「静脈内急速静注」または「静脈内プッシュ法」との用語は、約15分以下、または約5分以下で体が薬剤を受け取るように、動物またはヒトの静脈に薬剤を投与することをいう。
「皮下投与」との用語は、薬剤の容器(receptacle)から比較的ゆっくりと持続的に供給することによって、動物またはヒトの対象の皮膚の下、好ましくは皮膚と下層組織との間の嚢内に薬剤を導入することをいう。嚢は、皮膚をつまむか引っ張って下層組織から引き離すことによって形成されてもよい。
「皮下点滴」との用語は、30分以下、または90分以下の時間をかけて(しかしこれらの時間には限られない)、薬剤の容器から比較的ゆっくりと持続的に供給することによって、動物またはヒトの対象の皮膚の下、好ましくは皮膚と下層組織との間の嚢内に薬剤を導入することをいう。任意的に、点滴は薬物供給ポンプを動物またはヒトの対象の皮膚の下に皮下移植することによって行われてもよい。この場合、ポンプは所定量の薬剤を所定の期間、たとえば30分、90分、または治療計画の長さに及ぶ期間、供給する。
「皮下急速静注」との用語は、動物またはヒトの対象の皮膚の下に薬剤を投与することをいう。この場合、急速静注薬剤供給は約15分間未満、5分間未満、または60秒間未満である。投与は、皮膚と嚢が形成された下層組織との間の嚢内に行われることが好ましい。この場合、嚢はたとえば皮膚をつまむか引っ張って下層組織から引き離すことによって形成される。
併用投与は、別々の製剤または単一の製剤を用いた共投与、および順序を問わない連続投与を含む。この場合、好ましくは両方(またはすべて)の活性薬剤が同時に生物活性を及ぼす期間が存在する。
上述した従来の経路による患者への抗がん剤の投与は別として、本願発明は遺伝子治療による投与を含む。抗がん剤をコードする核酸のそのような投与は、「有効量の抗がん剤を投与する」との表現によって包含されている。たとえば細胞内抗体を産生するための遺伝子治療の使用に関する国際特許出願第1996/07321号を参照のこと。
患者の細胞中に核酸(任意的にベクターに入っている)を導入するのには2つの主要なアプローチがある。つまり、生体内(in vivo)および生体外(ex vivo)である。生体内供給では、核酸は通常は拮抗剤が必要とされる部位にて患者の体内に直接注入される。生体外治療では、患者の細胞が除去され、核酸がそれらの単離された細胞内に導入される。改変された細胞は、患者に直接的に、またはたとえば患者に埋め込まれた多孔質膜内に封入されて投与される(たとえば米国特許第4892538号および米国特許第5283187号を参照)。生存細胞中に核酸を導入するためには、様々な技術が使用可能である。核酸が所望の宿主の培養細胞内に試験管内で移入されるか生体内で移入されるかによって、技術は異なる。試験管内で哺乳類の細胞中に核酸を移入するために好適な技術には、リポソーム、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、細胞融合、DEAE−デキストラン、リン酸カルシウム沈殿法などを使用することが含まれる。遺伝子の細胞外供給に一般的に使用されるベクターはレトロウイルスである。
現在好適な試験管内で核酸を移入する技術には、ウイルス(アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、またはアデノ随伴ウイルス)のベクターを用いたトランスフェクションおよび脂質に基づく方法(遺伝子の脂質介在移入に有用な脂質は、たとえばDOTMA、DOPEおよびDC−Cholである)が含まれる。状況によっては、たとえば標的細胞上の細胞表面膜タンパク質に特異的な抗体や、標的細胞上の受容体に対するリガンドなど、標的細胞に特異的な薬剤とともに核酸源を供給することが望ましい。リポソームが使用される場合には、たとえば特定の細胞種に影響を及ぼす外被タンパク質またはその断片、循環(cycling)において内在化を受けるタンパク質に対する抗体、および細胞内局在を標的とし、細胞内の半減期を延ばすタンパク質を標的とする、および/またはこれらの取り込みを促進するエンドサイトーシスに関与する細胞表面膜タンパク質に結合するタンパク質が使用されてもよい。受容体介在型エンドサイトーシスの技術は、たとえばWuら、J.Biol.Chem.第262巻第4429〜4432頁(1987年);Wagnerら、PNAS USA 第87巻第3410〜3414頁(1990年)に説明されている。遺伝子標識および遺伝子治療用のプロトコールは、たとえばAndersonら、Science 第256巻第808〜813頁(1992年)および国際特許出願第1993/25673号に説明されている。
VEGF−C拮抗剤(たとえばVEGF−C抗体)を含む製剤はまた、治療に有効な量の抗腫瘍性物質、たとえば化学療法剤、成長抑制薬、細胞毒性薬、サイトカイン、抗ホルモン薬、血管新生阻害剤、抗リンパ血管形成薬、およびこれらの組み合わせなどを含んでいてもよい。そのような分子は、意図された目的に対して有効な量にて適切に組み合わせられて存在する。
ある態様では、VEGF−C拮抗剤はVEGF−C抗体であって、抗腫瘍性物質はVEGF−A抗体など(たとえばベバシズマブ)のVEGF−C抗体以外の治療用抗体である。抗腫瘍性物質として使用されてもよい他の治療用抗体は、がん細胞表面のマーカーを結合させる抗体を含む。治療用抗体はたとえば、HER2抗体であるトラスツズマブ(たとえばハーセプチン(登録商標)、Genentech社、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)またはHER2抗体であるペルツズマブ(Onmitarg(登録商標)、Genentech社、カリフォルニア州サウスサンフランシスコ。米国特許第6949245号を参照)であってもよい。
本願発明に従った他の治療計画は、VEGF−C拮抗剤の投与、ならびに放射線療法および/または骨髄や末梢血の移植、および/または細胞毒性薬、化学療法剤、もしくは成長抑制薬を制限なく含んでもよい。ある態様では、化学療法剤は、たとえばCHOP(シクロホスファミド、ヒドロキシダウノルビシン(アドリアマイシン;ドキソルビシン)、ビンクリスチン(オンコビン(登録商標))およびプレドニゾロンの併用療法の略語);CVP(たとえば低悪性度の非ホジキンリンパ腫に使用されるシクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾロンの併用療法);COP(たとえば白血病の治療に使用されるシクロホスファミド、ビンクリスチンおよびプレドニゾロンの併用療法);フォルフォックス(5−FUおよびロイコボリンと組み合わせてオキサリプラチン(エロキサチン(登録商標))を用いる治療計画の略語);または抗PSCA、抗HER2(たとえばハーセプチン(登録商標)、オムニターグ(登録商標))などの免疫治療薬の薬剤または薬剤の組み合わせである。併用療法は、同時または連続的な処方計画によって行われてもよい。追加的な化学療法剤には、たとえばメイタンシノイド(たとえばDMI)やオーリスタチン(MMAEおよびMMAF)などの抗体薬物複合体として有用な細胞毒性薬が含まれる。たとえば化学療法剤の副作用を弱めるための薬剤もまた併用されてもよい。連続的に投与する場合、2つ以上の投与による組み合わせが行われてもよい。併用投与は、別々の製剤または単一の製剤を用いた共投与、および順序を問わない連続投与を含む。この場合、好ましくは両方(またはすべて)の活性薬剤が同時に生物活性を及ぼす期間が存在する。
上述した共投与される任意の薬剤の好適な投与量は、現在使用されている投与量であって、VEGF−C拮抗剤と他の化学療法剤または治療の複合作用(相乗効果)のために減らされてもよい。
併用療法は、「相乗効果」をもたらしてもよく、「相乗的」であることを示してもよい。つまり、活性成分が一緒に使用される場合に達成される効果が、化合物を別々に使用した場合に生じる効果の合計よりも大きい。活性成分が以下の場合に、相乗効果が達成されてもよい:(1)共に製剤化され、組み合わされた単位投与錠剤として同時に投与または供給される;(2)別々の製剤として交互にまたは並行して供給される;または(3)何からの他の投与計画によって供給される。交互の治療において供給される場合、たとえば別々の注射器を用いた異なる注射によって化合物が連続的に投与または供給されたときに相乗効果が達成されうる。各活性成分の有効な投与量が逐次的に、つまり連続的に投与されてもよい。または、2つ以上の有効な投与量の活性成分が同時に投与されてもよい。
当業者には理解されるように、適切な投与量の化学療法剤は、化学療法剤が単独でまたは他の化学療法剤と組み合わせて投与される臨床治療において既に使用されている量であることが多いであろう。投与量の変動は、治療される条件に応じて生じる可能性があるであろう。治療を施す医師は、個々の対象に対して適切な投与量を決定可能であろう。
病気を予防または治療するために、適切な投与量のVEGF−C拮抗剤は、上述したように治療される病気の型、病気の重症度および経過、予防または治療のいずれの目的で抗体が投与されているか、以前の治療、対象の病歴および抗体に対する反応性、および参加する医師の裁量に依存するであろう。たとえば1つの器官または組織を標的とする投与は、別の器官または組織への供給方法とは異なる供給方法を必要としうる。抗体は、1度にまたは一連の治療にわたって対象に適切に投与される。併用療法計画では、治療に有効な量または相乗効果をもたらす量にて、本願開示の組成物が投与される。
通常の投与量は、哺乳類の体重に対して1日あたり約1ng/kg〜約1g/kg超まで変化してもよい。たとえば投与量は、投与経路に応じて、約10ng/kg/日〜約100mg/kg/日、約100ng/kg/日〜約10mg/kg/日、約1μg/kg/日〜約10mg/kg/日、または約10μg/kg/日、約50μg/kg/日、約100μg/kg/日、約500μg/kg/日、約1mg/kg/日、約2.5mg/kg/日、約5mg/kg/日、約10mg/kg/日、約20mg/kg/日、約30mg/kg/日、約40mg/kg/日、約50mg/kg/日、約60mg/kg/日、約70mg/kg/日、約80mg/kg/日、約90mg/kg/日、約100mg/kg/日、約250mg/kg/日、もしくは約500mg/kg/日であってもよい。
たとえば1以上の別々の投与によろうと連続的な点滴によろうと、病気の型および深刻度に応じて、約1μg/kg〜50mg/kg(たとえば0.1〜20mg/kg)の拮抗剤(たとえばVEGF−C抗体)が、対象への投与に対して最初の候補となる投与量である。典型的な毎日の投与量は、上述した要因に応じて、約1μg/kg〜約100mg/kgまたはそれ以上であってもよい。数日またはそれ以上に及ぶ反復的な投与に対して、条件によって、病気の症状の所望の抑制が生じるまで、治療は持続される。しかし、他の投与計画が有用であってもよい。
拮抗剤(たとえば抗体)は、約5mg/kg〜約15mg/kgに及ぶ投与量にて2〜3週間ごとに投与されてもよい。より好ましくは、そのような投与計画は、転移性結腸直腸がんなどのがんを治療するための第一治療として、化学療法計画と組み合わせて使用される。化学療法計画は、従来の高用量な断続投与を含んでもよい。化学療法剤は、予定された休止を伴うことなく、より小用量より高頻度な投与量にて投与されてもよい(「規則正しい化学療法」)。本願発明の治療の進行は、従来技術およびアッセイによって容易に監視できる。
(治療の有効性)
本願開示の治療の主な利点は、目立った毒性または副作用を生じることなく、ヒトの対象に著しい抗がん効果を生み出すことによって、対象が治療全体から恩恵を受けることができるという能力である。治療の有効性は、がん治療を評価する際に一般に使用される様々な評価項目によって測定可能である。評価項目には、腫瘍退縮、腫瘍の質量または大きさの縮小、増殖抑制期間、生存期間、無進行生存、全奏効率、奏功期間、およびQOLが含まれるが、これらには限られない。血管新生阻害剤は腫瘍の血管系を標的とするが必ずしも腫瘍細胞自体を標的とするわけではない。そのため、血管新生阻害剤は抗がん剤のうち独自のクラスをなす。したがって、血管新生阻害剤は独自の測定および薬剤に対する臨床反応の定義を必要としうる。たとえば、2次元解析における50%超の腫瘍の縮小が、反応を示すための標準的な閾値である。しかし、VEGF−C拮抗剤は、原発腫瘍の縮小を伴わずに転移性拡散を抑制しうる。または、VEGF−C拮抗剤は、単に腫瘍を静止させる(tumoristatic)効果を及ぼしうる。したがって、たとえば血管形成に対する血漿または尿のマーカーの測定、および放射線イメージングを通じた反応の測定を含む抗脈管形成療法の有効性を確定するための新たな手法を使用すべきである。
ここに開示されるのは、がんにかかりやすいか、がんであると診断されたヒトの対象の生存期間を延ばすための方法である。本方法は、対象に有効量のVEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物とを組み合わせて投与することを含む。抗腫瘍性組成物は、1以上の化学療法剤を含んでもよい。この場合、VEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物を効果的に投与すると、生存期間が延びる。
たとえば、少なくとも2つ、任意的には3つの治療薬(たとえば化学療法剤)を含む抗腫瘍性組成物と組み合わせてVEGF−C拮抗剤で治療された対象群は、同じ化学療法薬のカクテル単独で治療された対象群に比べて、少なくとも約2ヶ月、好ましくは約2〜約5ヶ月長い平均生存期間を有しうる。この生存期間の伸長は、統計的に有意である。VEGF−C拮抗剤と1以上の治療薬(たとえば化学療法剤)を含む抗腫瘍性組成物との併用治療は、化学療法単独と比較した場合、死亡のリスクを約30%以上(つまり約0.70の層別HR)または約35%以上(つまり約0.65の層別HR)まで著しく低下させうる。
また、がんにかかりやすいか、またはがんであると診断されたヒトの対象の無進行生存を増加させる方法も開示される。本方法は、対象に有効量のVEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物とを組み合わせて投与することを含む。抗腫瘍性組成物は、1以上の化学療法剤を含んでもよい。この場合、VEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物の投与によって、無進行生存の継続期間が効果的に増大する。
たとえば、VEGF−C拮抗剤と1以上の化学療法剤とを用いた本願開示の併用治療は、化学療法単独と比較した場合、無進行生存を約2ヶ月以上、好ましくは約2〜約5ヶ月、著しく増大させうる。
また、がんにかかりやすいか、またはがんであると診断された対象群を治療するための方法も開示されている。本方法は、有効量のVEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物とを組み合わせて対象群に投与することを含む。抗腫瘍性組成物は、1以上の化学療法剤を含んでもよい。この場合、VEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物の投与は、対象群における奏効率を効果的に増大させうる。たとえば、併用治療は、化学療法単独で治療された群と比べて、治療された対象群における奏効率を著しく増大させうる。この増大は、カイ二乗検定のP値が0.005未満である。
また、がんにかかりやすいか、またはがんであると診断されたヒトの対象(群)における奏功期間を増大させるための方法も開示されている。本方法は、有効量のVEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物とを組み合わせて対象(群)に投与することを含む。抗腫瘍性組成物は、1以上の化学療法剤を含んでもよい。この場合、VEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物の投与は、奏功期間を効果的に増大させうる。たとえば、VEGF−C拮抗剤と1以上の化学療法剤とを用いた併用治療により、2ヶ月以上という統計的に有意な奏功期間の増大が得られうる。
また、転移性結腸直腸がん、前立腺がん、膵臓がんまたは膠芽細胞腫を有するヒトの対象(群)を治療するための方法も開示されている。本方法は、有効量のVEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物とを組み合わせて対象(群)に投与することを含む。この場合、上記の抗腫瘍性組成物は1以上の化学療法剤を含む。この場合、VEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物との投与により、生存期間、無進行生存、奏効率または奏功期間により測定された、治療された対象(群)の統計的に有意かつ臨床的に意義のある改善が得られる。
(治療の安全性)
本願明細書に開示されているのは、対象に対してそれほど副作用なくがんを効果的に治療するための方法である。少なくとも2つまたは3つの化学療法剤を含む化学療法カクテルと組み合わせてVEGF−C拮抗剤を用いる本願開示の併用療法は、化学療法単独と比較した場合、有害事象という事件の発生を有意には増加させない。したがって、本願開示の治療は、予想外にも許容できるレベルでしか副作用を有さない。同時に、本願開示の治療は、抗がん効果を著しく向上させる。
(製造品(キット))
上述した疾患またはがんの治療に有用な物質を含む製造品も開示されている。本製造品は、容器、ラベルおよび添付文書を含んでもよい。好適な容器には、たとえば瓶、バイアル、シリンジなどが含まれる。この容器は、様々な材料、たとえばガラスやプラスチックから成形されていてもよい。この容器は、疾患またはがんの治療に効果的な組成物を保持する。またこの容器は、滅菌された点検口(access port)を有してもよい(たとえば容器は、皮下注射針によって穴を開けることができるストッパーを有する静脈内溶液用バッグまたはバイアルであってもよい)。組成物中の1以上の活性薬剤は、VEGF−C拮抗剤(たとえばVEGF−C抗体)である。容器上、または容器と関連付けられたラベルは、組成物が選択された状態の治療に使用されることを示す。製造品は、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液などの薬剤的に許容される緩衝液を含む第2の容器をさらに含んでもよい。本容器は、商業的観点および使用者の観点から望ましい他の物質をさらに含んでもよい。他の物質は、他の緩衝液、希釈剤、フィルタ、針、およびシリンジを含む。加えて、本製造品は、使用するための指示を有する添付文書を含む。添付文書は、たとえば組成物がドキソルビシンやエピルビシンなどのアントラシクリン型化学療法剤とともに使用されるべきではないという警告、または組成物の使用者に対するVEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物とを対象に投与するための指示を含む。
製造品は、キットの形態であってもよい。対象のがんを治療するためのキットは、VEGF−C拮抗剤と抗腫瘍性組成物を含んでもよい。別の態様では、対象のがんを治療するためのキットは、VEGF−C拮抗剤と、抗腫瘍性組成物と組み合わせてVEGF−C拮抗剤を使用するための使用説明書と、を含んでもよい。抗腫瘍性物質は、対象のがんを治療するための1以上の化学療法剤、たとえばVEGF−A抗体を含んでもよい。
(製剤)
本願開示に従って使用される拮抗剤の製剤(Pharmaceutical formulations)は、所望の純度を有する抗体を、任意的に薬剤的に許容されるキャリア、賦形剤または安定剤と、凍結乾燥製剤または水溶液の形で混合することによって、保存用に調整される。許容されるキャリア、賦形剤または安定剤は、用いられる投与量および濃度では受容側にとって毒性を有さない。許容されるキャリア、賦形剤または安定剤には、以下のものが含まれる:リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、および他の有機酸などの緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化物質;保存料(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルアルコールまたはベンジルアルコール;メチルパラベンまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3−ペンタノール;およびm−クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリシンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の炭水化物;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属複合体(亜鉛−タンパク質複合体など);および/またはTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤。凍結乾燥されたVEGF−A抗体製剤は、国際特許出願第97/04801号に開示されている。
本願発明の製剤はまた、治療される特定の兆候に対して必要な1つ以上の活性のある化合物も含んでいてもよい。好ましくは、互いに悪影響を及ぼさない相補的な活性を有する化合物である。たとえば、EGFR、VEGF−A、VEGFR、またはErbB2に結合する抗体(たとえばハーセプチン(登録商標))を1つの製剤でさらに提供することが望ましくてもよい。これに代えて、またはこれに加えて、組成物は細胞毒性薬、サイトカイン、成長抑制薬および/または低分子VEGFR拮抗剤を含んでもよい。そのような分子は、意図された目的に対して効果的な量の組み合わせにて好適に存在する。
活性成分はまた、たとえばそれぞれコロイド薬物送達システム(たとえばリポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルションにおけるヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセルなどの液滴形成技術または界面重合により調整されたマイクロカプセル中に封入されていてもよい。
生体内投与に使用される製剤は、滅菌されていなければならない。これは滅菌ろ過膜を通すろ過によって容易に実現できる。
持続放出性製剤が調整されてもよい。持続放出性製剤の好適な例には、抗体を含む固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれる。このマトリックスは、成形された物品、たとえばフィルムまたはマイクロカプセルの形態である。持続放出マトリックスには、ポリエステル、ヒドロゲル(たとえばポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド、L−グルタミン酸とγエチル−L−グルタミン酸の共重合体、非分解性エチレン−酢酸ビニル、リュープロンデポ(DEPOT)(登録商標)(乳酸−グリコール酸共重合体およびロイプロリド酢酸塩から構成される注入可能なミクロスフェア)などの分解性乳酸−グリコール酸共重合体、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシブチル酸が含まれる。エチレン−酢酸ビニルや乳酸−グリコール酸などのポリマーは、100日以上にわたり分子の放出を可能にする。一方、あるヒドロゲルは、タンパク質をより短い期間でしか放出しない。カプセルに入れられた抗体が体内で長期間留まる場合、抗体は37℃の水分に曝される結果、変性または凝集しうる。その結果、生物活性を失ってしまい、抗原性が変わってしまう可能性がある。関与するメカニズムに応じた安定化を実現するために、合理的な戦略を考えだすことができる。たとえば、凝集のメカニズムがチオ−ジスルフィド交換を介した分子間のジスルフィド結合の形成であると明らかになった場合、スルフヒドリル基を修飾し、酸性溶液から凍結乾燥し、含水率を制御し、適切な添加剤を使用し、特異的なポリマーマトリックス組成物を作製することによって、安定化が実現されてもよい。
以下の実施例は、単に本願発明の実行を説明することが意図されており、本願発明を制限するために提供されるわけではない。ここで引用するすべての特許および科学論文は、明確にそれらの全体が参照によって援用される。しかし、当然のことながら、何らかの従来技術の文献がここで参照された場合、そのような参照は、その文献がオーストラリアまたは他のあらゆる国において当該技術分野における一般的な技術常識の一部を構成することを自白するものではない。
(実施例)
(実施例1)
直接結合ELISAによって、捕獲抗原としてVEGF−C、VEGF−DまたはVEGF(R&D Systems社)および結合型VGX−100を用いて、ウサギ抗ヒトIgG−HRP(Abcam社)によって検出することによって、VEGF−C抗体VGX−100が評価された。結果が図14に示されている。ELISAによってKD=1.8nM(BiaCore)にて、VGX−100はVEGF−Cを選択的に認識して結合した。
VEGF−CのVEGFR−2またはVEGFR−3の細胞外ドメインへの結合を測定するためのバイオアッセイが、BA/F3−VEGFR−2またはBA/F3−VEGFR−3/EpoR細胞を用いて行われた。リガンドおよびVGX−100に対する反応が、[3H]チミジンの取り込みによって48時間の暴露に続いて測定された。結果が図15に示されている。VGX−100はBa/F3バイオアッセイにおいて、(a)VEGFR−2および(b)VEGFR−3へのVEGF−Cの結合を阻害した。
HUVEC増殖アッセイが48時間実行され、細胞数がWST−1試薬を用いて測定された(Roche社)。結果が図16に示されている。VGX−100は、VEGF−Cによって刺激されたHUVECの増殖を抑制した。
(実施例2:前立腺がん(PC−3)単剤療法)
実験を開始するために、100μlの培地/マトリゲル(1:1)混合物に懸濁された5×106個のPC−3細胞が、ヌードマウスの右側の領域へと皮下的に埋め込まれた。細胞は80匹のマウスに移植された。マウスの腫瘍成長が毎日細胞の埋め込み後に監視された。腫瘍体積が80〜100mm3に達したときに、平均値に最も近い腫瘍体積を有するマウスのみを用いて、マウスはそれぞれ10個体を含む5つのグループへと無作為に分けられた。大きすぎるまたは小さすぎる腫瘍体積を有するマウスは、実験から除外された。公式V=L×W×H×π/6を用いて腫瘍体積が測定された。式中、LおよびWは腫瘍の最大直径および最小直径を表す。Hは腫瘍の高さを表す。薬剤による治療は、無作為化の翌日から開始された。コントロールの賦形剤、試験抗体およびVEGF−A抗体ベバシズマブは、腹腔内注射によって投与あたり68〜108μlに及ぶ体積にて投与された。ベバシズマブは、水溶液に入った薬剤として25mg/mlの濃度にて供給され、PBSを用いて10倍希釈された。治療は21日間にわたって週に2回実行された。全実験の間にわたって、腫瘍体積は週に2回測定され、体重は週に1回測定された。マウスは、本薬剤治療によって起こりうる中毒作用が観察された。腫瘍体積が1500mm3超に達した場合、マウスが本来の体重の25%超を失った場合、腫瘍の潰瘍形成が現れた場合、またはマウスが瀕死状態になった場合、不定期の屠殺(sacrifices)が実行された。実験の最後に、各治療群の腫瘍成長率対コントロールの腫瘍成長率に関して、統計解析が実行された。最終的にマウスは、腫瘍が除去され、OCT中に置かれ、IHC解析用に−80℃にて保存された。肝臓、肺、脾臓、腎臓、精巣および前立腺に対して肉眼的検査が実行された。これらの器官において異常な観察が見られなかった場合には、組織が廃棄された。
VEGF−C抗体VGX−100(40mg/kg)は、VEGF−A抗体ベバシズマブに対する同等の有効性とともに、皮下PC−3異種移植腫瘍モデルにおいて著しい単剤活性を示した(図5)。
(実施例3:前立腺がん(PC−3)異種移植モデルにおける併用療法)
本実験は、確立されたオスヌードマウスにおけるPC−3ヒト前立腺上皮性悪性腫瘍異種移植に対して、VEGF−C抗体VGX−100単独の場合、およびVEGF−A抗体ベバシズマブ、化学療法剤ドセタキセル、およびベバシズマブ+ドセタキセルと組み合わせた場合の抗がん効果を評価した。具体的には、以下の治療が評価された:(i)VGX−100+ベバシズマブ;(ii)VGX−100+ドセタキセル;(iii)VGX−100+ドセタキセル+ベバシズマブ;(iv)ドセタキセル;および(v)ドセタキセル+ベバシズマブ。VGX−100およびベバシズマブが実験の継続期間に対して3日ごとに10mg/kgにて2回の注射、続いて3日の休止をはさんで(3日空けて各週2回)、腹腔内に投与された。ドセタキセルは、毎週3回の注射(10mg/kg)にて静脈内投与された。
(材料と方法)
(化学物質)
HIgG1アイソタイプコントロール−ヒト化抗体(6.4〜12.36mg/ml)およびVGX−100(5.53mg/mlおよび5.75mg/ml)が、ダルベッコのリン酸緩衝生理食塩水(DPBS)に入った凍った無色の原液として準備され、−80℃にて遮光して保存された。原液は解凍され、治療開始時に4℃にて保存された。原液をDPBSで希釈することによって、投与用溶液(0.2ml/20gの体重中に40mg/kg)が調整された。得られた製剤は、pH=7.02〜7.21で透明であった。投与用バイアルは、投与中に濡れた氷上に保持され、穏やかにピペットで取られ、投与中以外は針によって吸引されなかった。投与用溶液は、毎週DPBS中で調整され、使用しないときは4℃にて遮光して保存された。
ベバシズマブ(ロット:773313、25mg/ml)はMcKesson Specialty Care Solutions社から無色の溶液として取得され、4℃にて保存された。ベバシズマブは、原液を水(pH=6.5)で希釈することによって、投与の前に速やかに調整された。
ドセタキセル(ロット番号:D9A095)は、Sanofi−Aventis社によって製造され、50% エタノール/50% Tween80に入った淡黄色の溶液としてMcKesson社から取得された。ドセタキセルは、4℃にて遮光して保存された。ドセタキセルが添付文書の指示に従って、添付の希釈剤(滅菌水)を用いて希釈されることによって、透明で無色の10mg/ml原液が得られた。各治療日には、新鮮な10mg/mlストックが調整され、水を用いてさらに希釈されることによって、適切な濃度にされた。得られた溶液は透明で無色であり、pH=7.16であった。
すべての被験物質は、調整後2時間以内に投与された。併用療法を受けるグループに対して、表1に示した順序にて、互いに30分以内に薬剤が投与された。
(動物および飼育(Husbandry))
Taconic社からオスのNCR(NCRNU−M)胸腺欠損マウスが取得された。実験1日目には、これらのマウスは6〜7週齢であった。マウスには放射線を照射したRodent Diet 5053(LabDiet(登録商標))および水が自由に与えられた。マウスは、Biobubble(登録商標)クリーンルームの内部に、Bed−O’Cobs(登録商標)床敷を備え固定されたケージ中に収容された。Biobubble(登録商標)クリーンルームは、1時間あたり100回の完全な換気にてドーム室(bubble)環境中にHEPAフィルターを通した空気を供給する。すべての治療、体重の測定、および腫瘍の測定は、ドーム室環境中で行われた。この環境は、21.1±1.1℃(70±2°F)の範囲の温度および30〜70%の範囲の湿度に制御された。
試験マウスは、第0日目に皮下的に移植された。すべてのマウスに関し、毎日少なくとも1回、臨床的兆候が観察された。2g超の腫瘍を有するマウス、または潰瘍化した腫瘍を有するマウスは、安楽死させられた。明らかな苦痛を有すると分かったマウス、または瀕死の状態にあると分かったマウスも同様である。本実験において行われたすべての手順は、すべての法律、制御、国立衛生研究所(NIH)のガイドライン、およびDiscovery and Imaging Services社のAnn Arbor’s(DIS−AA) Animal Care and Use委員会の承認に従って実行された。
(細胞調整)
ATCC社からPC−3細胞が取得され、37℃にて5%二酸化炭素雰囲気下で、10%のウシ胎児血清および1%のペニシリン−ストレプトマイシン−グルタミンを追加されたHamのF−12培地を用いて増殖された。増殖が完了したときに、トリプシン(Cell Gro(登録商標))を用いて細胞が回収され、トリプシンは中和され、細胞が移植用にプールされた。PC−3細胞(10代継代)の懸濁液は、トリパンブルー防湿(exclusion)を用いて血球計によって計算された。細胞懸濁液は、エッペンドルフ社の5810R遠心分離機を用いて1500rpm(300×g)にて5分間、4℃にてペレットになるまで濃縮された。2.5×107細胞/mlの懸濁液が50% 無血清培地および50% Matrigel(登録商標)中に準備された。注射前の生存率は97.7%であった。試験用マウスには、27口径針およびシリンジを用いて、第0日目において5×106個の細胞/マウス(0.2ml)が皮下的に移植された。細胞懸濁液が濡れた氷上に保持されることによって生存率の損失が最小化された。また、細胞懸濁液が頻繁に逆さにされることによって、接種手順中に均一な細胞懸濁液が維持された。
(治療)
試験中の全てのグループに対する平均推定腫瘍塊が129mg(グループの平均は、123〜134mgに及んだ)であった第8日目に、治療が開始された。治療開始時には、すべてのマウスの体重は19.2g以上であった。最初の治療時における平均グループ体重は、拮抗していた(グループ平均の範囲は21.5〜22.8g)。すべてのマウスは、治療日における個々の体重に従って投与された(0.2ml/20g)。
(測定および評価項目(endpoints))
体重および腫瘍の測定は、毎週3回記録された。単位密度を仮定した長楕円の体積に対する以下の公式を用いて、キャリパー測定から腫瘍組織量(mg)が推定された:腫瘍組織量(mg)=(L×W2)/2。式中、LとWはそれぞれ直行する腫瘍の長さと幅の測定値(mm)である。有効性を評価するために使用した主要評価項目は以下の通りである:腫瘍成長遅延、%T/C(治療群の腫瘍塊の平均を対照群の腫瘍塊の平均で割って100を乗じた値として定義される)、完全および部分腫瘍反応、および実験の最後において腫瘍になっていない生存個体の数。式中、TとCはそれぞれ、選択された評価サイズである750mgまで成長するために、治療群および対照群の腫瘍に必要となる日数の平均である。本実験に対して腫瘍成長の遅延は、T−C値として表された。本実験では、コントロールの平均が1gに達したときに%T/Cが評価された。
完全寛解つまり完全縮小(CR)は、検出できない大きさ(50mg未満)まで腫瘍塊が縮小することとして定義される。本願明細書で使用されるように、「完全縮小(CR)」は最初の治療後の任意の時点において、腫瘍組織量が測定できない体積にまで縮小した場合に動物に対して認められる。3mm未満の腫瘍のあらゆる測定値は、「0」として記録する。これは国立癌研究所の慣例を順守しており、それらの小さなサイズにて測定される不確定な生態現象(biology)に加えて、そのような測定値における内在する許容できないほど高い機械的誤差を反映している。
部分反応つまり部分縮小(PR)は、最初の治療時からの腫瘍塊または全身腫瘍組織量の50%以上の減少として定義される。部分縮小(PR)は、腫瘍を有さない生存個体(TFS)と同様に、完全縮小(CR)には含まれない。
「% 腫瘍を有さない生存個体(TFS)」とは、治療最終日において測定可能な病気の証拠を有さない任意の動物をいう。この値は完全縮小(CR)には含まれない。
「腫瘍倍増時間(Td)」は、体積の倍加時間(日)として表された腫瘍の成長速度をいう。「腫瘍倍増時間(Td)」は、腫瘍成長曲線の指数関数部分の対数線形最小二乗回帰から計算される。
「評価サイズに達する時間」は、腫瘍が所定の評価サイズに達するまでにかかる時間(日)をいう。「評価サイズに達する時間」は、最終的な(治療後の)腫瘍成長曲線の指数関数部分に対して、腫瘍組織量対時間の対数線形最小二乗の最良適合から計算される。この値は、実験中の各動物に対して計算される。群の中央値は、次に腫瘍成長の遅れを計算するために使用される。
「集団(fold)の成長の終点に達する時間」は、不定期な(すべての群にわたる最初の平均腫瘍組織量が十分に一致していない場合であることが多い)状況をいう。この状況では、集団(fold)の成長の観点から、有効性のパラメータを示すことが有利である。この場合、選択された評価項目は、最初の腫瘍組織量に対する選択された倍数にまで到達するまでにかかる時間である。これは、最初の腫瘍サイズが一致しないという妨害作用を除外することによって、統計的に有意な治療効果を明らかにする可能性を増大させる。「集団の成長の終点に達する時間」は、評価サイズに達する時間で説明されたように、集団の成長データから計算される。
「最後の処方薬(Rx)における腫瘍組織量」は、治療最終日における腫瘍組織量をいう。この値は、最終的な(治療後の)腫瘍成長曲線の指数関数部分に対して、腫瘍組織量対時間の対数線形最小二乗の最良適合から計算される。
「腫瘍成長の遅れ(T−C)」は、治療群と対照群(表2の1つめの群)が所定の評価サイズに達するのにかかる平均期間の差異をいう。「腫瘍成長の遅れ(T−C)」は、中央値の成長曲線の補間からではなく、群中の各動物に対する評価サイズに達する平均期間から計算される。
「明らかな正味の腫瘍細胞の死滅」とは、最初と最後の治療間における腫瘍組織量(対数で測定される)における正味の変化をいう。補間によって、各動物に対する対数線形回帰直線が使用されることによって、コントロールと治療群に対して、治療の開始時における腫瘍の質量(TW)、治療の終了時におけるTWがそれぞれ計算される。各治療群に対して、中央値TW(治療の終了時)が中央値コントロールTW(治療の開始時)から引かれることによって、明らかな正味の細胞の死滅(対数単位)が計算される。
実験を通じた様々な時点において摘出された腫瘍のLYVE−1とCD31による免疫組織化学染色が実行されるであろう。
(副作用の評価)
すべてのマウスに対して、臨床兆候が毎日観察された。マウスは毎治療日に体重測定され、その後少なくとも毎週2回体重測定された。個々の体重は毎週2回記録された。
死亡または安楽死時には、すべてのマウスは解剖されることによって、死亡の潜在的な原因および毒性を受けたと推定される標的器官の一般的な評価が提供された。転移の存在/不存在も記録された。個体および群の毒性の知見が表1および2に要約されている。
(結果)
実施例3の結果が表1、2および図6〜9に示されている。
(腫瘍成長/一般的な観察/対照群)
腫瘍成長の遅れの有効性を評価するために、750mgの腫瘍組織量が選択された。コントロール腫瘍の中央値は、20日目に評価サイズに達した。対照群の腫瘍体積倍加時間は、6.1日であった(表2)。対照群のマウスは、25日目までに体重が11%減少し、その後ゆっくりと回復した。対照群には自発的な腫瘍退縮は見られなかった。本実験の移植に使用された腫瘍細胞の3つのチオグリコレート培養物はすべて、全体の細菌汚染が観察されなかった。このモデルに対する病歴データに基づいて、対照群の生態現象が正常であると判断された。これは約7時間という以前から使われてきた腫瘍体積倍加時間に基づく。
(有効性)
有効性に関する最初の測定は、22日目(コントロールの腫瘍組織量の中央値が1gに達する日)における腫瘍成長の遅れ、部分的または完全な腫瘍退縮、および腫瘍を有さない生存個体であった。集められた有効性のデータおよびグラフは、表1,2および図6,7に示されている。マウスの生存率は、図8に示されている。
(単剤)
(3日おきに2回;3日間の休止)×22回((Q3Dx2;3 days off)×22)という10mg/kgのベバシズマブを用いた投与では、5.6日という有意でない(P>0.05)腫瘍成長の遅れしか示さず、22日目におけるT/C値は70%であった。腫瘍退縮は観察されなかった。
(3日おきに2回;3日間の休止)×9回という40mg/kgのVGX−100を用いた投与は有効ではなく、2.2日という有意でない腫瘍成長の遅れしか示さず、22日目におけるT/C値は87%であった。腫瘍退縮は観察されなかった。
7日おきに3回という10mg/kgのドセタキセルを用いた投与は非常に有効であって、56.5日という有意な(P<0.05)腫瘍成長の遅れを示し、正味の腫瘍細胞の死滅は正の1.13logsであって、22日目におけるT/C値は8%であった。完全な腫瘍退縮の発生は100%であった。反応したマウスの20%は、160日目の実験終了時において、がんを有さない状態を維持していた。この治療計画によりもたらされた腫瘍成長の遅れは、統計的に有意であった。この治療計画の抗がん活性はまた、ベバシズマブおよびVGX−100よりも統計的に優れていた。
(併用治療計画)
ベバシズマブ+ドセタキセルの併用療法(いずれも10mg/kgにて投与)は、非常に有効であって、76.7日という有意な(P<0.05)腫瘍成長の遅れを示し、22日目におけるT/C値は8%であった。完全な腫瘍退縮の発生は70%であった。腫瘍を有さない生存個体は存在しなかった。この治療計画の抗がん活性は、腫瘍成長の遅れの解析に基づくと、ドセタキセルを単剤として用いた場合よりも統計的に優れているわけではなかった。この治療計画によってもたらされた正味の腫瘍細胞の死滅(−2.20 logs)は、ドセタキセルを単剤として用いた場合よりもはるかに低かった。
40mg/kgのVGX−100と10mg/kgのドセタキセルの併用療法は、非常に非常に有効であって、110.3日という有意な(P<0.05)腫瘍成長の遅れを示し、22日目におけるT/C値は8%であった。完全な腫瘍退縮の発生は100%であった。反応したマウスの20%は、160日目の実験終了時において、がんを有さない状態を維持していた。この治療計画の抗がん活性は、曲線の下側の領域(つまり時間に対する腫瘍組織量)の解析に基づくと、ドセタキセルを単剤として用いた場合よりも統計的に有意であった。この治療計画によってもたらされた正味の腫瘍細胞の死滅(−2.06 logs)は、ドセタキセルを単剤として用いた場合よりもはるかに低かった。
40mg/kgのVGX−100と10mg/kgのベバシズマブの併用療法は、8.2日という有意ではない(P>0.05)腫瘍成長の遅れしか示さず、22日目におけるT/C値は76%であった。腫瘍退縮は見られなかった。この治療計画の抗がん活性は、腫瘍成長の遅れの解析に基づくと、ベバシズマブまたはVGX−100のいずれかを単剤として用いた場合よりも統計的に優れているわけではなかった。
40mg/kgのVGX−100と10mg/kgのベバシズマブの併用療法は、非常に非常に有効であって、140日超という有意な(P<0.05)腫瘍成長の遅れを示し、22日目におけるT/C値は7%であった。完全な腫瘍退縮の発生は100%であった。反応したマウスの40%は、160日目の実験終了時において、がんを有さない状態を維持していた。この治療計画によってもたらされた腫瘍成長の遅れは、ベバシズマブ+ドセタキセルという2薬を組み合わせた場合よりも有意に低かった。
(議論)
図6は、VGX−100(およびこの前立腺がんモデルではベバシズマブ)が化学療法の抗がん効率を著しく促進することを示す。ドセタキセルはこのモデルに対しては単剤として非常に有効であり、長期の腫瘍成長の遅れ、腫瘍退縮および腫瘍を有さない生存個体をもたらす。ベバシズマブとVGX−100はいずれも有効である。しかし、ドセタキセルにVGX−100を加えると、腫瘍成長抑制において統計的に有意な改善が見られる。さらに、ベバシズマブ+ドセタキセルの組み合わせにVGX−100を加えると、ベバシズマブ+ドセタキセルに比べて、腫瘍成長抑制において著しい改善がもたらされる。
図7は、PC−3モデルにおける腫瘍成長抑制を要約する。実験の最後(160日目)において、VGX−100+ベバシズマブ+ドセタキセルという3薬の組み合わせによって治療されたマウス中の腫瘍は、コントロールマウスの腫瘍サイズの16.5%であった(表3参照)。
3薬の組み合わせによる腫瘍成長抑制は、ベバシズマブ+ドセタキセルよりも優れていた(P値=0.0001)。これは0.0167という統計的有意性の標準を上回る。VGX−100+ドセタキセルは、ドセタキセル単独よりも優れていた(P値=0.0065)。これも統計的有意性の閾値を上回る。P値は、曲線測定下にある領域のANOVAを用いて計算された。0.0167というボンフェローニ調整αレベルが統計的有意性の閾値として決定された。
図8は、異なる治療群におけるマウスの生存率を要約する。VGX−100をドセタキセル+ベバシズマブに追加することによって、この前立腺がんモデルにおける生存率が向上する。図の左側は、本実験の各治療群における生存したマウスの百分率(%)を時間の関数として示す。VGX−100+ドセタキセル+ベバシズマブという3薬の組み合わせによって治療した群におけるマウスの生存率が最も高く(80%)、ドセタキセル+ベバシズマブのみにより治療した群の生存率を統計的に有意な差により上回った(P値=0.0161)。表4は、各治療群に対する平均生存期間を要約する。3薬の組み合わせにより治療したマウスの40%は、実験の終了時において検出できる腫瘍を有さなかった(腫瘍を有さない生存個体:TFS)。これは、ベバシズマブ+ドセタキセルで治療されたマウスやドセタキセル単独で治療されたマウスの20%とは比較にならない。2g超の腫瘍を有するマウスは、安楽死させられた。
実施例3に従った第2の研究の結果が図9に示されている。
(実施例4:前立腺がん(PC−3)同所性モデルにおける併用療法)
(実験方法)
オスのSCIDマウス(3〜4週齢)がARC社(パース)から取得された。マウスは鎮痛剤(カルプロフェン)が注射され、ケタミン/キシラジンを用いて麻酔され、続いてイソフルレンが持続された。前立腺が外科的に露出され、105個/10μlの細胞が注射された。
毎週2回の体重測定と目視検査によって、マウスの一般的な健康が監視された。
腫瘍成長と播種性転移(dissemination)が触診および長期的(longitudinal)生体内イメージング(少なくとも週1回行われるX線および蛍光イメージングの組み合わせ)により監視された。
マウスの健康の悪化または過剰な腫瘍組織量が記録されない限り、実験は8週間継続された。その後、マウスは麻酔され、心穿刺によって血液が収集され、腫瘍が重量測定おそび計測され、最終的な画像が撮影され、組織学的分析用に器官が摘出された。また転移も解析された。
(実験計画)
以下のように、群あたり12個体であった。VGX−100の投与は、週に2〜3回であった。ドセタキセルの投与と抗脈管形成療法が決定された。投与は腫瘍を接種して1日後に開始された。
A.PC−3腫瘍異種移植:単剤用量反応実験。単剤療法PC−3異種移植実験では、群A〜Hを用いた(表5)。
VGX−100、ドセタキセル、ビカルタミドおよびGNRHの単剤としての準最大投与量および最大投与量が決定された。
B.PC−3腫瘍異種移植:用量反応実験における化学療法との組み合わせ。併用療法PC−3異種移植実験には、群A〜Eを用いた(表6)。
C.PC−3腫瘍異種移植:抗(a−)血管形成Tx(ベバシズマブなど)用量反応実験との組み合わせ。併用療法PC−3異種移植実験には、群A〜Fが用いられる(表7)。
(腫瘍成長および転移の監視)
腫瘍の大きさが週に1回以上、触診と、X線法および蛍光法の組み合わせを用いた長期的生体内イメージングと、によって記録された。
腫瘍全体の横断面を代表する切片を得るために、腫瘍は一定で再現可能な方法にて中央を通って切断された。以下のように初期および転移性腫瘍のサンプルが取得され、解析された:
・凍結切片:CD31染色
・パラフィンブロック:腫瘍サンプルはホルマリン中で固定され、パラフィン中に包埋された。切片はH&E、抗(a−)LYVE−1抗体(リンパ管検出用)および抗(a−)CD34(血管検出用)を用いて染色された。
・IHC/IF解析:抗(a−)LYVE−1、抗(a−)CD34(または抗(a−)CD31)染色に加えて、IHC/IF法を用いてVEGF、VEGF−C、VEGF−D、VEGFR−1、VEGFR−2およびVEGFR−3タンパク質の発現量が決定された。FFPEおよび凍結切片の両方が(入手可能な抗体の特性に応じて)この解析に使用された。
・血清サンプル:血清は心穿刺によって実験の最後に収集された。PSAの発現量は測定されなかった。PC−3細胞はPSAを産生しないからである。残りの血清は、将来の解析用に凍結された。
実施例4の結果は図10に示されている。
(実施例5:前立腺がん(LNCaP)同所性モデルにおける併用療法)
LNCaP前立腺がん細胞がPC−3前立腺がん細胞に置き換えられた以外は、実施例4と同じプロトコールを用いた。単剤用量反応実験(A)では、表3に沿って、群A〜LがLNCaPの実験に含められる。化学療法用量反応実験との組み合わせ(B)では、表6に沿って、群A〜IがLNCaPの実験に含められる。
実施例5のLNCaPの実験では、PSAの発現量が測定された。
(実施例6:膠芽細胞腫(U87MG)異種移植モデルにおける単剤療法)
実験を開始するために、100μlの培地/マトリゲル(1:1)混合液中に懸濁された5×106個のU−87細胞がヌードマウスの右側腹部に皮下的に移植された。がん細胞は、80匹のマウスに移植された。マウスは細胞移植後に毎日、腫瘍成長が監視された。腫瘍体積が80〜100mm3に達したときに、マウスはそれぞれ10匹ずつの5つの群に無作為化された。各群には、平均値に最も近い腫瘍体積を有するマウスのみを使用した。腫瘍体積が大きすぎるまたは小さすぎるマウスは、実験から除外された。公式V=L×W×H×π/6を用いて腫瘍体積が測定された。式中、LとWは、腫瘍の最大および最小の直径を表す。Hは腫瘍の高さを表す。薬剤を用いた治療は、無作為化の翌日から開始された。賦形剤のコントロール、試験抗体およびベバシズマブは、腹腔内注射によって投与あたり64〜108μlの体積にて投与された。ベバシズマブ(Genentech社)は、濃度が25mg/mlである水溶液中の薬剤として供給され、PBSを用いて10倍に希釈された。治療は毎週2回、27日間にわたって行われた。実験の間ずっと、腫瘍体積は毎週2回、体重は毎週1回測定された。マウスは、本薬剤治療によって起こりうる中毒作用も観察された。腫瘍体積が1500mm3超に達した場合、マウスが本来の体重の25%超を失った場合、腫瘍の潰瘍形成が現れた場合、またはマウスが瀕死状態になった場合、不定期の屠殺が実行された。最終的にマウスは、腫瘍が除去され、最適切削温度(OCT)中に置かれ、IHC解析用に−80℃にて保存された。肝臓、肺、脾臓、腎臓、精巣および前立腺に対して肉眼的検査が実行された。これらの器官において異常な観察が見られなかった場合には、組織が廃棄された。
VEGF−C抗体VGX−100(40mg/kg)は、単剤U87MG異種移植実験における賦形剤コントロールと比べて腫瘍成長を有意に抑制した(図11)。
(実施例7:膠芽細胞腫(U87MG)異種移植モデルにおける併用療法)
この実験は、U87MG膠芽細胞腫細胞がPC−3前立腺がん細胞と置き換えられた点以外は概して実施例3に従って行われた。ヒト膠芽細胞腫腫瘍株(U87MG)に由来する細胞がマウスに皮下的に移植され、腫瘍が約150mgの平均サイズに達するまで育てられた。マウスは毎週2回、VGX−100(40mg/kg)、ベバシズマブ(10mg/kg)、これら2つの組み合わせ、またはネガティブコントロール抗体(アイソタイプコントロール)のいずれかを用いて治療された。腫瘍サイズは、キャリパーを用いて毎週2〜3回測定された。垂直の棒は、各治療群の各時点に対する腫瘍の質量の平均の標準誤差を示す。治療群あたり10匹のマウスが含まれた。
単独で投与された場合には、U87MG脳腫瘍腫瘍の成長を遅くするのに、ベバシズマブはわずかな効果しか有さなかった。またVGX−100は有意な効果を有さなかった。しかし組み合わせて使用されると、VGX−100+ベバシズマブは49日目における腫瘍成長において、42%の減少を実現することができた(図12参照)。
(実施例8:膵臓がん(KP4)異種移植モデルにおける併用療法)
実験を開始するために、100μlの培地/マトリゲル(1:1)混合液中に懸濁された5×106個のKP4細胞がヌードマウスの右側腹部に皮下的に移植された。がん細胞は、90匹のマウスに移植された。マウスは細胞移植後に毎日、腫瘍成長が監視された。腫瘍体積が80〜100mm3に達したときに、マウスはそれぞれ10匹ずつの5つの群に無作為化された。各群には、平均値に最も近い腫瘍体積を有するマウスのみを使用した。腫瘍体積が大きすぎるまたは小さすぎるマウスは、実験から除外された。公式V=L×W×H×π/6を用いて腫瘍体積が測定された。式中、LとWは、腫瘍の最大および最小の直径を表す。Hは腫瘍の高さを表す。薬剤を用いた治療は、無作為化の翌日から開始された。賦形剤のコントロール、試験抗体およびベバシズマブは、腹腔内注射によって投与あたり68〜122μlの体積にて投与された。ベバシズマブは、濃度が25mg/mlである水溶液中の薬剤として供給され、PBSを用いて10倍に希釈された。すべての治療薬は毎週2回、30日間にわたって腹腔内に投与された。マウスはVGX−100(20または40mg/kg)、ベバシズマブ(10mg/kg)、これら2薬の組み合わせ(40mg/kgのVGX−100+10mg/kgのベバシズマブ)、またはアイソタイプのネガティブコントロール抗体のいずれかを用いて治療された。
実験の間ずっと、腫瘍体積は毎週2回、体重は毎週1回測定された。マウスは、本薬剤治療によって起こりうる中毒作用も観察された。腫瘍体積が2000mm3超に達した場合、マウスが本来の体重の25%超を失った場合、腫瘍の潰瘍形成が現れた場合、またはマウスが瀕死状態になった場合、不定期の屠殺が実行された。実験の最後においてマウスは、腫瘍が除去され、最適切削温度(OCT)中に置かれ、IHC解析用に−80℃にて保存された。肝臓、肺、脾臓、腎臓、精巣および前立腺に対して肉眼的検査が実行された。これらの器官において異常な観察が見られなかった場合には、組織が廃棄された。
図13は、各治療群における経時的な平均腫瘍組織量を示す。40mg/kgのVGX−100で治療されたマウスの膵臓腫瘍は、平均してコントロールマウスの腫瘍の大きさの35.3%であった。これはベバシズマブで治療した腫瘍のサイズ(30.4%)と類似している。アスタリスク(*)は、治療群における腫瘍の平均サイズに、コントロールと比較して統計的に有意な差が存在することを示す(ANOVAを用いた解析)。腫瘍のサイズは、キャリパーを用いて毎週2〜3回測定された。コントロールと比較した腫瘍のサイズは、治療30日後に計算された。垂直の棒は、各治療群の各時点に対する腫瘍の質量の平均の標準誤差を示す。
LYVE−1とCD31のリンパ節組織における免疫組織化学的染色と定量が行われた。ホルマリン固定凍結KP4腫瘍を用いて、血管とリンパ管の免疫組織化学的染色および定量が行われた。
(実施例10:結腸直腸の上皮性悪性腫瘍(HCT−116)併用療法モデル)
この実験は、HCT−116結腸直腸の上皮性悪性腫瘍細胞がPC−3前立腺がん細胞と置き換えられた点、および化学療法剤としてフルオロウラシルがドセタキセルと置き換えられた点、以外は概して実施例3に従って行われた。
マウスは以下の治療群に分けられた:アイソタイプコントロール;ベバシズマブ単独;VGX−100単独;5−FU単独;ベバシズマブ+5−FU;VGX−100+5−FU;VGX−100+ベバシズマブ;VGX−100+ベバシズマブ+5−FU。使用時には、5−FUは実験の継続期間中、毎週2回、50mg/kgにて静脈内に投与された。VGX−100は実験の継続期間中、毎週2回、40mg/kgにて腹腔内に投与された。ベバシズマブは実験の継続期間中、毎週2回、10mg/kgにて腹腔内に投与された。
結果が図17に示されている。ベバシズマブと組み合わせた場合のVEGF−C抗体VGX−100の腫瘍に対する小さな相加効果が観察された。同様に、VGX−100がフルオロウラシル化学療法と組み合わせられた場合の小さな相加効果に関する証拠が見られた。
(実施例11:肺の上皮性悪性腫瘍(H292)併用療法腫瘍モデル)
実施例3で説明されたものと類似したプロトコールが使用された。H292細胞(5×105個)がヌードマウスの右腋窩の上部に皮下的に移植された。マウスは平均腫瘍組織量が75〜175mgの場合に各治療群(10個体/群)へと割り振られた。腫瘍組織量は、公式:腫瘍組織量(mg)=(L×W2)/2を用いてキャリパー測定から推定された。式中、LとWはそれぞれ直交する腫瘍の長さと幅の測定値(mm)である。抗体は、腹腔内注射によって週2回投与された(アイソタイプコントロールとVGX−100は40mg/kg;ベバシズマブは10mg/kg)。ドセタキセル(10mg/kg)は3週間にわたって毎週、静脈内に投与された。結果が図18に示されている。
(実施例12:卵巣の上皮性悪性腫瘍(OVCAR−8)併用療法モデル)
実施例3で説明されたものと類似したプロトコールが使用された。OVCAR−8細胞(1×107個)がヌードマウスの右腋窩の上部に皮下的に移植された。マウスは平均腫瘍組織量が75〜175mgの場合に各治療群(10個体/群)へと割り振られた。腫瘍組織量は、公式:腫瘍組織量(mg)=(L×W2)/2を用いてキャリパー測定から推定された。式中、LとWはそれぞれ直交する腫瘍の長さと幅の測定値(mm)である。抗体は、腹腔内注射によって週2回投与された(アイソタイプコントロールとVGX−100は40mg/kg;ベバシズマブは10mg/kg)。ドセタキセル(10mg/kg)は3週間にわたって毎週、静脈内に投与された。結果が図19に示されている。
(実施例13:前立腺がん(PC−3)同所性モデルにおける単剤療法)
PC−3−GFPヒト前立腺がん同所性MetaMouse(登録商標)モデルがAntiCancer社によって実行された。PC−3−GFP腫瘍フラグメントは、外科的に前立腺の腹葉に移植され、縫合糸を用いて縫合された。治療は手術3日後に開始された(60mg/kg、週3回、腹腔内)。GFP可視化腫瘍の確立後に、GFP発現腫瘍の全身イメージングが週1回、生きたマウス中で実行された。原発腫瘍サイズは、キャリパー測定および公式(L×W2)/2によって計算された腫瘍体積(mm3)を用いて週1回推定された。結果が図20に示されている。実験の詳細は以下の通りである。
実験動物:本実験では、オスのNCrヌードマウス(5〜6週齢)が使用された。元々のつがいはTaconic社(ニューヨーク州ジャーマンタウン)から購入された。試験用マウスは、繁殖されてHEPAフィルターを通した環境下で実験用に維持された。ケージ、えさ、床敷はオートクレーブされた。マウスのえさは、PMI Nutrition International社(ミズーリ州ブレントウッド)から取得された。
実験用の化合物と薬剤の調製:賦形剤、VGX−100およびアイソタイプは、使用するまで−20℃にて保存された。VGX−100とアイソタイプは、使用前にPBSを用いて適切な濃度(7.5mg/mlおよび7.5mg/ml)に希釈された。
PC−3−GFPヒト前立腺がん同所性メタマウス(登録商標)モデル:ヒト前立腺がん細胞株P−C−3は、ATCC社から購入された。
a.GFP発現ベクター:内部リボソーム侵入部位を有し、強化型GFPおよびネオマイシン耐性遺伝子を同一の2シストロン性のコンストラクト(message)上で発現するpLEINレトロウイルスベクター(CLONTECH社)が腫瘍細胞に形質導入するために使用された。
b.細胞培養物のパッケージング、ベクターの作製、トランスフェクション、およびサブクローニング:10Alウイルス外皮を発現し、NIH 3T3に由来するパッケージング細胞株であるPT67がCLONTECH社から購入された。PT67細胞は、加熱不活性化型の10%FBS(Gemini Biological Products社、カリフォルニア州カラバサス)を補充されたDMEM(Irvine Scientific社)中で培養された。ベクターの作製には、パッケージング細胞(PT67)が、
N−[1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムメチル硫酸試薬(Roche Molecular Biochemicals社)と飽和量のpLEINプラスミドとの沈殿混合物とともに、70%の集密度(confluence)にて18時間インキュベートされた。このときに新鮮な培地が補充された。細胞は、トランスフェクションの48時間後に蛍光顕微鏡法によって解析された。選択をするために、細胞は500〜2000μg/mlのG418(Life Technologies社、ニューヨーク州グランドアイランド)の存在下で7日間培養された。
c.レトロウイルスによる腫瘍細胞のGFP形質導入:GFP遺伝子を形質導入するために、PT67細胞のレトロウイルスの上清と10%FBS(Gemini Biological Products社)を含むRPMI 1640(GIBCO社)との1:1の沈殿混合物とともに、25%の集密度のPC−3細胞が72時間インキュベートされた。このときに新鮮な培地が補充された。細胞は、形質導入の72時間後にトリプシン−EDTAを用いて収集され、200μg/mlのG418を含む選択培地中で1:15の比にて継代培養された。G418の密度は、400μg/mlにまで段階的に増大された。GFPを安定的に発現するクローンは、クローニングシリンダー(Bel−Art Products社)およびトリプシン−EDTAを用いて単離され、次に従来の培養法を用いて増幅および導入された。
d.皮下異種移植:腫瘍のストックは、5×106細胞/100μlの濃度にてPC−3−GFP細胞をヌードマウスの脇腹へと皮下的に注射することによって作製された。ヌードマウスにおいて成長し、皮下注射(s.c.)により収集されや腫瘍細胞は、検査され、肉眼で見て壊死と分かる組織、壊死と疑われる組織、またはGFPを発現しない腫瘍組織はすべて除去された。腫瘍組織は、次に約1mm3の小さなフラグメントへと分割された。
e.外科的な同所性移植(SOI):マウスはケタセット、キシラジンおよびPromAceの混合物を用いて麻酔され、外科手術がされる部位はヨードおよびアルコールを用いて消毒された。滅菌した外科用メスおよび刃(#10)を用いて、ヌードマウスの下腹部に長さ約2cmの切開が行われた。前立腺が露出され、前立腺被膜が注意深く切開された。PC−3−GFP組織の2つのフラグメント(各1mm3)が、滅菌した8−0外科用縫合糸(ナイロン製)を用いて前立腺の2つの腹葉間で縫合された。腹部は滅菌した6−0外科用縫合糸(シルク製)を用いて1つの層にて閉じられた。すべての手順は、HEPAフィルターを通した層流フード内で5倍の解剖顕微鏡下で実行された。
実験計画:両群の治療は、外科的な同所性移植(SOI)の3日後に開始された。表9は実験計画を示す。
蛍光光学腫瘍イメージング(FOTI):FluorVivoイメージングシステム(INDEC Biosystems社、カリフォルニア州サンタクララ)が全身イメージングに使用された。GFP発現腫瘍の全身光学イメージングは、GFP可視化腫瘍が確立された後、生きたマウス中で週に1回行われた。解剖では、リンパ節への転移を調べるために、開いた状態でのイメージングが胸部および腹部にて行われた。
腫瘍のサイズおよび体重の測定:原発腫瘍のサイズおよび体重は、それぞれキャリパーおよび電子はかりを用いて週に1回測定された。原発腫瘍のサイズは、直交する小さい寸法(W)および大きい寸法(L)を測定することによって、週に1回推定された。おおよその腫瘍体積(mm3)が公式:(W2×L)×1/2を用いて計算された。
実験の終点:すべてのマウスは、治療開始後30日目に屠殺された。
最終的な腫瘍の質量:原発腫瘍は解剖時に摘出されて解剖時に質量が測定された。
組織の収集:初期の前立腺腫瘍および転移が見られたあらゆる器官は、収集された。腫瘍および器官は、各断片において腫瘍が等しく見えるようにするために、対称に切断された。各腫瘍の一方の断片および各器官は、10%のNBF中で固定された。各腫瘍の他方の断片および各器官は、液体窒素中で瞬間冷凍された。
本実験に用いた統計解析:実験群間で平均腫瘍体積と腫瘍の質量を比較するために、α=0.05のスチューデントt−検定が使用された。
(結果)
本実験に用いたマウスは、治療後30日目に屠殺された。腫瘍体積および腫瘍の質量は、賦形剤コントロールと治療群とを比較するために、スチューデントt−検定を用いて解析された。
1.腫瘍体積に及ぼす効果:治療後28日目において、治療群の平均腫瘍体積が対照群と比較された。腫瘍体積は、治療群ではアイソタイプ対照群と比較して統計的に有意な(p<0.05)減少を示した(表10参照)。
2.腫瘍の質量に及ぼす効果:治療群の腫瘍の質量の平均が、対照群の腫瘍の質量の平均と比較された。治療群ではアイソタイプ対照群と比較して、治療後30日目には統計的に有意な減少は観察されなかった(表11参照)。
3.転移に及ぼす効果:すべての実験動物は、屠殺時に切開された。GFPを発現する転移の光学イメージングが実行された。転移の罹病率(incidence)がFOTIおよびフィッシャーの正確確率検定を用いて解析された。リンパ節(LNs)に対する転移の罹病率の有意差(P=0.019)が治療群と対照群との間で見出された(表12参照)。
4.毒性の推定:賦形剤コントロールと比較して、それほど体重を減らすことのない抗体治療群の安定した体重は、これらの実験の投与量では抗体VGX−100が明白な毒性を有さなかったことを示す。
(結論)
治療後28日目の結果に基づくと、治療群[VGX−100(60mg/kg)、腹腔内投与]では対照群[アイソタイプ(60mg/kg)、腹腔内投与]と比較して、平均腫瘍体積は統計的に有意な減少(59%の減少)を示した。VGX−100はまた、治療群では対照群と比較して、転移の局所的なリンパ節への罹病率を55%低下させた。これらの実験の投与量では抗体VGX−100およびアイソタイプが明白な毒性を有さなかったことを示す。治療群では全実験を通して、大きな体重の低下は観察されなかった。