表示装置、バックライト、照明器具等で使用するのに適したほとんどの光学フィルムは、光の入射角と共に変化する光の透過及び反射特性を有する。多層光学フィルム、例えば、一部の光が複数のミクロ層の境界面から反射されて建設的又は相殺的干渉を受け、所望の反射又は透過特性をもたらすのに十分なだけ薄い複数のミクロ層を備える多層光学フィルムは、特定の媒体(典型的には空気)への特定の入射及び/又は出射角範囲用に設計される。同様に、プリズム輝度強化フィルムなどの表面構造化フィルムもまた、空気への特定の入射及び/又は出射角範囲用に設計される。空気への所定の入射角に関し、こうした光学フィルムの伝播角度及び出射角は、反射に関するスネルの法則などの周知の式、及び回折格子の式などのその他の式よって決定される。
液晶表示装置(LCD)用途で使用される多くの光学フィルムは、空気中で使用するために設計される。即ち、光は、空気中からフィルムの第1の主表面にある範囲の入射角にわたって衝突し、光は、フィルムの第2の主表面からある範囲の出射角にわたって空気中に出射し、入射角又は出射角の一方又は両方は、空気中で0°〜90°の範囲をカバーする。このようなフィルムは、空気中に「光学的に浸漬されている(optically immersed)」ということができる。これは、肉眼で任意の空気層を観察するのが難しい場合であっても当てはまる。例えば、1つの光学フィルムを別の光学フィルムの上に置く場合、肉眼には、2枚のフィルムはその全主表面にわたって実質的に接触状態にあるように見えることがある。しかしながら、多くの場合、そのようなフィルムは、有限個の点で互いに接触しているだけであり、光学的に厚い空隙(即ち、その厚さが目的の光の波長を実質的に超える空隙)が、フィルムの主表面の間に実質的に維持されている。
液晶表示装置及びその他の製品のコスト削減、並びに/又は製品の厚さを薄くするといった設計強化に対する市場動向は、不必要な構成要素を特定して排除し、個別の構成要素を組み合わせて1つ以上の一括セットにするという要求をもたらし得る。光学フィルムの場合、そのような要求は、光学フィルムを1つ以上の他のフィルム又はシステムの構成要素に固着して又は取り付けて、積層体の要素の間に空隙が実質的に存在しない積層構造体を形成するという試みをもたらし得る。
図1は、参照しやすいようにデカルトx−y−z座標系の概念内で、ディスプレイアセンブリ112とバックライト114とを備える典型的な表示システム110の概略的側面図を示す。このシステム110がLCDの場合、ディスプレイアセンブリ112は、前後の吸収偏光子の間に挟まれた液晶(LC)表示パネルを備えてもよく、このLC表示パネルは、電極構造のアレイ及び個々にアドレス可能な画素(ピクセル)を形成するためのカラーフィルターグリッドを備え、その間に液晶材料が配置されたガラスのパネル板を更に備える。制御装置116は、接続部116aを介してディスプレイアセンブリ112に連結して、観察者118が認識することができる好適な画像を生成するために、電極構造を適切に駆動する。バックライト114は「エッジ照明」の種類のものであってもよく、その場合、1つ以上のLED、冷陰極蛍光ランプ(CCFL)、又はその他の好適な光源120a、120bが、バックライトの1つ以上の縁部又は境界に沿って、その表示領域の外側に位置付けられる。あるいは、バックライトは直接照明の種類のものであってもよく、その場合、1つ以上のかかる光源120c、120d、120eが、拡散板又はその他の好適な要素の後の表示領域内に位置付けられてもよい。いずれの場合にも、バックライト114は、ディスプレイアセンブリ112の表示領域に対応する大きな出力エリア114aにわたって光を提供する。バックライトによって提供される光は、典型的には白色である。即ち、観察者に少なくとも名目上白に見えるように、赤、緑、及び青色スペクトル成分(又はスペクトル成分のその他の好適な混合)の適正なバランスを含む。
表示システム110はまた、典型的には、ディスプレイアセンブリ112とバックライト114との間、又はシステムの他の場所に1つ以上の光学フィルム又は他の構成要素を備える。表示システムの種類によっては、そのような構成要素は、例えば、1つ以上の偏光子(例えば、吸収性偏光子及び/又は反射偏光子など)、拡散体(例えば、拡散板、利得拡散体(gain diffuser)、体積拡散体、及び/又は表面拡散体)、及び/又はプリズム輝度強化フィルム(例えば、3M Company(St.Paul,Minnesota,USA)から市販されている多種多様なVikuiti(商標)BEF製品のいずれか)を備えてもよい。こういったフィルムは、「使用不可能な光」(即ち、ディスプレイアセンブリ112の中の後方吸収偏光子によって吸収されることになる偏光であるという理由、又は不適当な角度で伝播するという理由のいずれかによって、所望のシステム出力に貢献しないことになる光)をディスプレイアセンブリから離れるように反射した後、例えば、拡散、鏡面反射、又は半鏡面反射体を介して、こうした反射光の一部を「使用可能な光」(即ち、システム出力に貢献することができる光)としてディスプレイアセンブリに戻るように向け直すことによって、表示システムの効率及び/又は輝度を強化するためにしばしば使用される。こうした光の反射及び再方向付けは、表示システム内における少なくともある程度の光リサイクリングを提供し、このリサイクリングは、一般に矢印122a、122bで示される。
通常ディスプレイアセンブリ112とバックライト114との間に設置される、又は他の場所に配置されるフィルム及び構成要素は、上述の空隙を有さない積層構造体で使用するための候補である。かかる積層構造体は、図2の表示システム210に概略的に描かれている。積層構造体を除いて、システム210は、上述の種々の順列を含んで図1のシステム110と実質的に同一であり得、同様の要素については同様の参照番号を使用し、簡潔にするためにここでは更なる説明を省略する。しかしながら、図2の表示システムは、1つ以上の光学フィルムを他のフィルム又は構成要素に空隙なしで接合して、図のような1つ以上の積層体212a、212b、212cを提供している。この図では、積層体212aは、ディスプレイアセンブリ112(又はその構成要素)に空隙なしに付着し、積層体212cは、バックライト114(又はその構成要素)に空隙なしに付着している。場合によっては、1つ以上の光学フィルムを、他のフィルム(1枚又は複数)あるいは構成要素(1つ又は複数)に、それらの間に空隙なしに付着させるが、ディスプレイアセンブリ及びバックライトの両方から空隙を介して離間され得る積層体212bが提供されてもよい。
積層体に含まれる光学フィルムの種類によっては、空気境界面又は空隙は、光学フィルムの作用に支障を与える場合、又は与えない場合がある。接合される各フィルム又は構成要素が、光の入射の過程で、又は光がフィルムの1つの主表面に入射した後で他の主表面から出射する前に、光を実質的に散乱ないしは別の方法で向け直さない場合には、このフィルムは、積層前、即ち、空隙の排除の前と同様に機能し続ける可能性がある。しかしながら、光が非平面を通って、又はフィルムと平行でない表面を通ってフィルムに入射する場合、フィルムは適切に機能しない可能性がある。この1つの例は、Vikuiti(商標)DBEF多層反射偏光フィルム上にコーティングされたBEFプリズムである。BEFプリズムフィルム及びDBEFフィルムは共に、空気中で使用するように設計されているが、両方のフィルムの平面を、例えば、光学接着剤で光学的に連結することによって空隙が排除されると、機能の損失は生じない。別の例は、吸収偏光子フィルムに積層されたVikuti(商標)DBEFフィルムである。これらの例の両方において、空隙の排除は、影響を受けたフィルムを通って伝播する光の角度分布に実質的に影響を与えない。別の言い方をすれば、積層構造体の中の各光学フィルムは、その主表面が空気と接触することができないにもかかわらず、空気中に光学的に浸漬されているということができる。このことは、図3a〜図3cに関連して以下に更に説明される。
別の場合では、大きく傾斜した光を生成する少なくとも1枚のフィルム又は構成要素が積層体に提供され、空隙の排除とそのような大きく傾斜した光との組み合わせは、「超臨界」光を、システム性能を低下させるやり方で目的の光学フィルムを通して伝播させ、積層体から射出させる効果を有する。「超臨界」光とは、平坦で滑らかな空気/フィルム境界面を使用した空気中からの照射によって達成され得るよりも傾斜した角度で、フィルムを通って移動する光を意味する。このように、フィルムが空気中に光学的に浸漬されている場合、空気中からフィルムの主表面に衝突する光の最大入射角は90度である。そのような斜入射光は、フィルムの屈折率の関数である臨界角(θc)でフィルムの中に屈折される。臨界角は、典型的には、光がフィルム内を伝播することになる最も傾斜した角度である。超臨界光を光学フィルムを通して伝播させて、最終的に積層構造体から出射させ得る積層構造体では、光学フィルムは、空気より高い屈折率の媒体に光学的に浸漬されているということができる。このことは、図3cに関連して以下に更に説明される。本出願の文脈において、「光学的に浸漬されている」として記述されるフィルム又は構成要素は、他に指示がない限り、屈折率が空気よりも高い媒体に光学的に浸漬されていると考えられる。
そのような状況は、BEFプリズムフィルムを、バックライトの拡散板、又はLCDパネルに、例えば、1.5に近い屈折率を有する従来の光学接着剤を使用して積層する場合に生じ得る。どちらにおいても、BEFフィルムの入射角及び出射角は、空気の屈折率と有意に異なる積層用接着剤の屈折率の影響を著しく受ける。この状況は、従来の光学接着剤を使用して拡散体を反射偏光子の片側に積層した後、その反対側をLCDパネルに積層する場合にも生じ得る。この場合、光学接着剤は、拡散体内で生成された大きく傾斜した光を、超臨界光として反射偏光子に透過させ、この超臨界光は、LCDパネルに更に透過することができる。反射偏光子もLCDパネルも、典型的には、かかる大きく傾斜した光に適合するように設計されていないので、このことにより、偏光子及びLCDパネル内の大量の内部散乱光によって性能が低下する結果となり得、ひいては、表示コントラスト及び輝度がかなり低下する結果となり得る。たとえ(例えば、ミクロ層の数を増やし、ミクロ層を特徴付ける厚さ勾配の上限を拡大して)多層スタックの反射偏光子の既に広い反射帯域を実質的に拡大することによって、より広範囲の入射角に対処するように反射偏光フィルムを再設計したとしても、そのような再設計されたフィルムは、より広範囲の角度にわたって通過軸偏光を透過させ続け、前述の問題は解決されないままとなる。
積層構造体を伝播する超臨界光に伴う問題を最小限に抑えるために、光学設計の観点から、できるだけ空隙に似ている材料層、例えば、光学的に厚い光路に対する光の透過性が高く、その屈折率が1.0に近い材料層を使用することが望ましいことになる。別の言い方をすれば、表面対表面のやり方で透過光学構成要素を物理的に取り付け、尚且つ入射角及び出射角を空気に匹敵する角度に制限する手段の必要性が存在する。機械的完全性が良好でヘイズが低い超低屈折率フィルムが近年開発された。そのようなフィルムは、空隙を近似するためにほとんどあらゆる光学フィルムにコーティングすることができ、その後、任意の従来の光学接着剤を適用して、このコーティングされたフィルムをシステムの別の構成要素に近似させることができる。好適な超低屈折率材料は、例えば、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる次の米国特許出願に記載されている:米国特許出願第61/169466号、「Optical Film」(代理人整理番号65062US002)、2009年4月15日出願;米国特許出願第61/169521号、「Optical Construction and Display System Incorporating Same」(代理人整理番号65354US002)、2009年4月15日出願;米国特許出願第61/169532号、「Retroreflecting Optical Construction」(代理人整理番号65355US002)、2009年4月15日出願;米国特許出願第61/169549号、「Optical Film for Preventing Optical Coupling」(代理人整理番号65356US002)、2009年4月15日出願;米国特許出願第61/169555号、「Backlight and Display System Incorporating Same」(代理人整理番号65357US002)、2009年4月15日出願;米国特許出願第61/169427号、「Process and Apparatus for Coating with Reduced Defects」(代理人整理番号65185US002)、2009年4月15日出願;米国特許出願第61/169429号、「Process and Apparatus for A Nanovoided Article」(代理人整理番号65046US002)、2009年4月15日出願;及び米国特許出願第61/254,243号、「Optical Construction and Method of Making the Same」(代理人整理番号65619US002)、2009年10月22出願。超低屈折率材料は、ゲルタイプのヒュームドシリカを使用して作製することもできる。超低屈折率材料は、例えば、可視波長にわたって1.1〜1.3、又は1.15〜1.25の範囲の屈折率を有し得る。以下に更に論じられるように、超低屈折率材料はまた、屈折率勾配を呈してもよい。例えば、材料は、結合剤と複数の粒子とを含む勾配フィルム又は層の形態であってもよく、結合剤と複数の粒子の重量比は約1:2未満である。勾配光学フィルムは、局所体積分率を有する複数の相互接続したボイドを更に含んでもよく、複数の相互接続したボイドの局所体積分率は、フィルムの厚さ方向に沿って変化して、フィルム内にこの厚さ方向に変化する局所屈折率をもたらす。共に本出願と同日に出願された米国特許出願第XX/XXX,XXX号、「GRADIENT LOW INDEX ARTICLE AND METHOD」(代理人整理番号65716US002);及び米国特許出願第XX/XXX,XXX号、「PROCESS FOR GRADIENT NANOVOIDED ARTICLE」(代理人整理番号65766US002)を参照し、これらは参照により本明細書に組み込まれる。
かかる超低屈折率材料を、角度感度の高い(angle-sensitive)光学フィルムを備える積層体で使用することができ、その結果、超臨界光伝播の悪影響を最小限に抑えた状態で、かかるフィルムを他のフィルム又は構成要素と機械的又は光学的に連結することができる。しかしながら、1つ以上のそのような超低屈折率材料層を積層構造体の中で使用するときでさえ、超臨界光伝播の影響は、依然としてシステム性能において重量な役割を果たし、実際に、多層光学フィルム及び/又はその他の角度感度の高い光学フィルムの設計面が適切に取り扱われないと、システム性能を実質的に低下させる可能性がある。
超臨界光伝播を支持する積層体で使用される多層反射偏光フィルムの具体的な設計考慮を考察する前に、図3a〜図3cを参照して、空気以外の媒体に光学的に浸漬するフィルムの概念を図示する。
図3a〜図3cは、フィルムを光媒体に浸漬する概念を説明する、他の層が適用される簡略化された積層フィルムの一連の概略的側面図である。図3aにおいて、基本的なフィルム構造体310は、両側が屈折率n0の媒体(これは空気(n0=1.0)であると考えられる)に暴露された積層フィルム312から本質的になる。説明を簡単にするため、この図3a〜図3cに示されるn0及び他の屈折率は、等方性であると仮定する。更に、フィルム312は、2つの層だけを有するものとして図示されており、第1の層は、屈折率n1がほぼ1.5以上である、ポリマーなどの従来の低屈折率光学材料であり、第2の層は、屈折率n2が約1.5以上であるが、n2はn1よりも実質的に大きい、異なるポリマーなどの高い屈折率光学材料である。フィルム312は、第1の主表面312aと、第1の層と第2の層を分離する表面又は境界面312bと、第2の主表面312cと、を有する。表面312aは、空気の厚い層314に露出しており、表面312cは、空気の別の厚い層316に露出している。
図3aを更に参照すると、光は、下方、即ち、空気の層314からフィルム312に入射する。入射光は、フィルム312の厚さの寸法に対して垂直であり得る図のz軸にほぼ沿って移動するが、入射光は、z軸に対して平行に方向付けられる光線、z軸に対して適度な斜角で方向付けられる光線、及びすれすれ入射で表面312aにぶつかるようにz軸に対して事実上垂直である極度な斜角で方向付けられる光線など、最大限広い範囲の光線伝播方向を含む。この最大限広い範囲の入射角は、5頭矢印記号305で表わされている。一部の例では、記号305の付いた配光は準均等拡散(quasi-Lambertian)であってもよく、他の例では大きく異なる分布を有してもよい。いずれの場合も、記号305の配光は、考えられる半球状(又は2π立体角)の光路にわたる全方向に進行する若干の光を含む。本発明者らは、ここでは、空気層314からフィルム312を通って反対側の空気層316へと通過する場合の入射光について追求する。そうすることで、様々な境界面における屈折に焦点を合わせ、簡略化のために反射を無視する。
表面312a、312b、312cは全て、平面で滑らか、及びz軸に対して垂直であると仮定する。したがって、空気層314からの入射光が主表面312aに衝突すると、この光は、スネルの法則、即ち、n0 sinθ0=n1 sinθ1に従ってフィルム312の第1の層の中へ屈折する。入射光は、入射角範囲がθ0=0〜θ0≒90度である光線を含むので、屈折光は、その屈折角、又は伝播角がθ1=0〜θ1=θc1の範囲の屈折光線を含み、ここで、sin(90)=1及びn0=1であるので、θc1は第1の層の材料の臨界角、即ち、θc1=arcsin(1/n1)である。第1の層での全屈折光線の収集は、その半角がθc1である円錐で表わされている。
屈折光は、z軸にほぼ沿って前進し、表面又は境界面312bに遭遇し、そこで光が、その屈折率がn2である第2の層に入射すると、第2の屈折が生じる。第2の屈折は、ここでもスネルの法則に従い、ある範囲の伝播方向又は角度θ2にわたって第2の層内に屈折光を生成し、θ2は、θ2=0〜θ2=θc2の範囲である。角度θc2は、第2の層の材料の臨界角、即ち、θc2=arcsin(1/n2)である。第2の層での全屈折光線の収集は、その半角がθc2である円錐で表わされている。屈折率n2は屈折率n1よりも大きいと仮定されるので、角度θc2は、θc1よりも小さいものとして示されている。
第2の層で屈折した光は、主表面312cに遭遇するまで更に前進する。ここで、光が第2の層から空気層316へと通過するときに、別の屈折が生じる。この場合も先と同様にスネルの法則に従って、第2の層の光の伝播角度θ2の範囲は、屈折によって、空気層316の伝播角度範囲である0〜ほぼ90度の範囲(ここでも同様に記号305で示される)に変えられる。このように、フィルム312を進行する過程で、空気中から半球形に入射した光は、フィルムの異なる材料層において光の円錐分布へと変換された後、もう1つの空気層において半球形に伝播する光へと再度戻る。材料層における円錐分布の半角は、それぞれの材料の臨界角に等しい。
ここで図3bを参照すると、別のフィルム構造体320の概略的側面図が示されている。フィルム構造体320は、図3aの2つの積層フィルム312を備えるが、フィルム312の各側に、屈折率no’を有する超低屈折率材料の1つの層が加えられて、構造体320を提供する。屈折率no’は、空気より大きいが、低屈折率n1よりも実質的に小さい。屈折率no’の材料の第1の層322は、フィルム312の表面312aに適用され、屈折率no’の材料の第2の層324は、フィルム312の表面312cに適用される。元のフィルム312は層322、324と組み合わされて、空気に露出する平坦で滑らかな主表面322a、324aを有する新しいフィルムを形成し、表面322a、324aは表面312a〜312cと平行である。
更に図3bを参照すると、光は、下方、即ち、空気の層314から構造体320に入射する。図3aと同様に、入射光は、図のz軸にほぼ沿って移動するが、光線は、ここでも5頭矢印記号305で表わされる最大限広い範囲の入射角に及ぶ。本発明者らは、ここでは、空気層314から構造体320を通って反対側の空気層316へと通過する場合の入射光について追求する。
空気層314からの入射光が主表面322aに衝突すると、この光は、スネルの法則、即ち、n0 sinθ0=n0’sinθ0’に従って層322の中へ屈折する。入射光は、入射角範囲がθ0=0〜θ0≒90度である光線を含むので、屈折光は、その屈折角、又は伝播角がθ0’=0〜θ0’=θc0の範囲の屈折光線を含み、θc0は超低屈折率材の臨界角、即ち、θc0=arcsin(1/n0’)である。層322での全屈折光線の収集は、その半角がθc0である円錐で表わされている。
この屈折光は、次に構造体320の残部を通って前進する。その間に、個別層のそれぞれにおける伝播方向の範囲を表す角度の円錐が、スネルの法則によって決定される。簡単なやり方で、図3bに示されるように、光が層322から層324へと前進するにつれて、伝播方向の円錐の半角が、θc0からθc1、θc2、θc0へと変化することは、容易に推測され得る。層324から空気層316の中へ屈折する光は、この場合も、最大限広い範囲の伝播角度305に屈折される。
図3aと図3bを比較すると、フィルム312への層322、324の追加は、フィルム312内部の伝播方向の範囲を変えるのに役に立たないのが分かる。フィルム312の2つの層のそれぞれに関し、伝播錐体の半角は同じままである。層322、324に用いられる屈折率に関係なく、この結果は同じとなることに留意されたい。そのため、フィルム312と空気の間に層322、324が存在するにもかかわらず、それでもやはり、フィルム312はなおも空気中に光学的に浸漬されていると特徴付けられる。
ここで図3cを参照すると、層322、324が層332、334で置き換えられていることを除いて、構造体330と実質的に同じであるフィルム構造体330が示されている。層332、334は、層322、324と同じ超低屈折率を有する。しかしながら、図3bの平坦で滑らかな主表面322a、324aは、有意な拡散効果をもたらす粗面化された主表面332a、334aで置き換えられている。結果として、空気層314から主表面332aに衝突する半球形に分布した入射光線は、図3bの場合のように半角θc0の円錐に拘束されるのではなく、層332において全ての伝播角度(記号305参照)で屈折及び拡散される。層332のこの拡大された伝播角度範囲は、境界面312aにおけるスネルの法則により、フィルム312の第1の層に伝播方向の円錐を生成し、その半角θc1’は、図3bの対応する半角θc1よりも実質的に大きい。具体的には、θc1’=arcsin(n0’/n1)である。この光がフィルム312の第2の層に移行すると、光は表面312bで屈折して第2の層に伝播方向の円錐を生成し、この円錐もまた、図3bの対応する円錐と比べて拡大されている。半角θc2’は、θc2’=arcsin(n0’/n2)に従って計算される。この光は表面312cで屈折して、スネルの法則により全ての角度で超低屈折率層334に入り、次にこの光は、粗面化された主表面334aによって屈折して、全ての角度で空気層316の中に拡散する。
図3cを図3a及び図3bと比較すると、光は、構造体320、310と比べて、構造体330において、より斜角でフィルム312の層に伝播することができることが分かる。光は、超低屈折率層332から全ての角度でフィルム312上に衝突することができるので、また、任意のかかる角度でフィルム312に入射する光は、層334、316を介してフィルムを射出することができるので、図3cのフィルム312は、屈折率n0’の超低屈折率材料に光学的に浸漬されているということができる。
図4は、層が空気以外の媒体に光学的に浸漬されている場合の円錐の拡大を例示する、所与の層を伝播する光の角度範囲、又は円錐の斜視図である。このように、円錐410の半角は、層材料の臨界角θcである。これは、層が空気中に光学的に浸漬されている場合に起こり得る光の伝播方向の範囲である。層が空気より大きい屈折率の媒体に光学的に浸漬されている場合、光伝播方向の範囲は、半角θc’であるより広い円錐412に拡大する。これら2つの円錐、又は立体角の間の差は、図4では異なる角度θgapで表わされている。その伝播方向がこのギャップの中にある光は、層(又は層の一部のフィルム)が処理するように設計されていない可能性がある光を表す。
多層光学フィルムが超低屈折率材料に光学的に浸漬されているものと考えることができるように、1つ以上の光学的に厚い超低屈折率の層を備える開示の積層構造体で使用することができる多層光学フィルムにここで注意を向ける。まず、多層光学フィルムの一般的な性能の広範な記載から始め、その後、多層光学フィルムを、斜角反射又はコリメーティング特性を備える光学的に浸漬されている反射偏光子として使用するのを可能にする具体的な設計特性について記載する。
図5は、典型的には1つ以上の隣接パケットに配列される数十又は数百というこのような層を備える多層光学フィルム500のうちの2つの層だけを図示している。フィルム500は、個別のミクロ層502、504を備えている。これらのミクロ層の屈折率特性は異なっており、隣接し合うミクロ層の境界面で一部の光を反射するようになっている。ミクロ層は、複数の境界面で反射された光が、建設的又は破壊的干渉を受けてフィルムに所望の反射又は透過特性を提供できるような薄さである。光を紫外線、可視又は近赤外線波長で反射するように設計された光学フィルムでは、各ミクロ層は、一般に約1μm未満の光学的な厚さ(即ち、物理的厚さに屈折率を乗じたもの)を有する。しかしながら、フィルムの外側表面の表面薄層又はミクロ層のパケットを分離させるフィルム内に配置されている保護境界層などのより厚い層を含めることもできる。
多層光学フィルム500の反射及び透過の性質は、それぞれのミクロ層の屈折率、ミクロ層の総数、及びミクロ層の厚さの関数である。各ミクロ層は、少なくともフィルムの局所的位置で、面内屈折率nx、nyと、フィルムの厚さ方向軸と関連付けられる屈折率nzとによって特徴付けることができる。これらの屈折率は、それぞれ互いに直交するx軸、y軸、及びz軸に沿って偏光された光の対象材料の屈折率を表わす(図5を参照)。
実際には、屈折率は、賢明な材料選択及び加工条件によって制御される。フィルム500は、典型的には数十又は数百の2種の高分子の交互層A、Bを同時押出形成し、その後で、必要に応じて多層押出物を1つ以上の倍増ダイに通し、次に押出物を伸張又は他の方法で延伸させて最終フィルムを形成することによって製造することができる。得られたフィルムは、典型的には数十又は数百の個々のミクロ層で構成されており、その厚み及び屈折率は、可視又は近赤外などの所望のスペクトル領域において1つ以上の反射帯域をもたらすように調整されている。妥当な数の層で高反射率を達成するために、隣接ミクロ層は、x軸に沿って偏光した光に対して少なくとも0.05である屈折率の差(Δnx)を呈し得る。2つの直交する偏光に対して高反射率が所望される場合には、隣接ミクロ層は、y軸に沿って偏光した光に対して、例えば、少なくとも0.05の屈折率差(Δny)を呈し得る。
必要に応じて、z軸に沿って偏光した光の隣接ミクロ層間の屈折率差(Δnz)を調整して、斜めに入射した光のp偏光成分に望ましい反射率特性を達成することができる。説明を容易にするために、多層光学フィルム上の任意の対象点において、x軸は、面内Δnの大きさが最大となるようにフィルムの平面内で延伸されているとみなす。したがって、Δnyの大きさは、Δnxの大きさに等しいか又はそれ未満(超過ではない)であってもよい。更に、差Δnx、Δny、Δnzの計算を始める材料層の選択は、Δnxが負にならないように決定される。言い換えれば、境界面を形成する2層間の屈折率の差はΔnj=nlj−n2jであり、式中、j=x、y、又はzであり、層の表記1、2は、n1x≧n2x、即ち、Δnx≧0となるように選定される。
斜入射角のp偏光のほぼ軸上の反射率を維持するために、ミクロ層間のz屈折率の不一致Δnzを、実質的に最大面内屈折率差Δnx未満、Δnz≦0.5*Δnxとなるように制御することができる。あるいは、Δnz≦0.25*Δnxである。ゼロ又はほぼゼロの大きさのz屈折率の不一致が、p偏光に対する反射率が入射角の関数として一定又はほぼ一定である境界面をミクロ層の間にもたらす。更に、z屈折率の不一致Δnzは、面内屈折率の差Δnxと比較して反対の極性を有するように、即ち、Δnz<0であるように、制御することができる。この条件は、s偏光の場合と同様に、p偏光に対する反射率が、入射角の増加と共に増加する境界面をもたらす。
Tblock(0)がTpass(0)より実質的に小さい偏光フィルムを提供し、妥当な数の層でs偏光及びp偏光通過軸光に対する高反射率を提供するために、フィルム材料及び屈折率は、Δnxが約0.1を超え、Δnyが約0.05を超え、Δnzが約−0.05未満になるように調整され得る。
所与の多層フィルムのミクロ層の全ての厚さが同じであるように設計される場合には、フィルムは、狭波長帯域のみにわたって高反射率をもたらすことになる。帯域が可視スペクトル内のどこかにある場合、そのようなフィルムは高度に着色されて見えることになり、色は角度の関数として変化する。ディスプレイ装置用途との関連では、目立つ色を呈するフィルムは一般に避けられるが、場合によっては、システムの他の場所の色のアンバランスを補正するために、所与の光学フィルムがわずかな色を導入するのは有益であり得る。ミクロ層(もっと正確にいうと、典型的には一対の隣接するミクロ層に対応する光学的反復ユニット)がある範囲の光学的な厚さを有するように調整することにより、例えば、全可視スペクトルにわたって広帯域反射率及び透過率を備える多層フィルムを提供することができる。典型的には、ミクロ層は、フィルム又はパケットの一方の側の最も薄い光学的反復ユニットから、反対側の最も厚い光学的反復ユニットまで、フィルムのz軸又は厚さ方向に沿って配列され、最も薄い光学的反復ユニットは、反射帯域の最短波長を反射し、最も長い光学的反復ユニットは最長波長を反射する。帯域端部を鋭くするように調整された厚さ勾配を含む、多層光学フィルムの厚さ勾配の更なる考察は、米国特許第6,157,490号(Wheatleyら)に提供されている。
開示される多層フィルムは、可視スペクトルのほとんどにわたる波長の光を、超低屈折率(ULI)媒体の中でほとんどの角度で反射するのに十分な帯域幅の反射帯域を有するのが望ましい。多くのディスプレイ及び照明器具に適合する可視スペクトルは、一部のシステムでは約630nm、その他では650nm、最も高い色域システムの一部では670nmの長さに及ぶ。任意のULI/ポリマー境界面における90度に近い高いフレネル反射に起因して、光はこうした高角度であまり透過されない。このため、p偏光に対するフィルムの通過軸の右側帯域(RBE)は、ULI中でθ=75度において約650nmを上回るのが望ましい。屈折率が1.2のULIでは、フィルムの通過軸の最小RBEは、垂直入射で少なくとも950nmであるのが望ましい。液晶ディスプレイのコントラスト及びカラーバランスを改善するために、p偏光に対するこうしたフィルムの通過軸のRBEは、垂直入射で1000nmを超える、若しくは1050nm、又は1100nmのように長いのが望ましい。ULIが1.15の屈折率を有する場合、p偏光に対する通過軸のRBEは、垂直入射で少なくとも約900nmを超えるのが望ましく、より望ましくは950nmを超え、又は更に1000nmである。1.15又は1.2のいずれかより高いULIでは、フィルムの右側帯域を比例して高くするのが望ましい。
多層光学フィルムは、任意の好適な技術を用いて製造され得る。典型的には、製造は、ポリマー材料をその融解温度又はガラス転移温度より高い温度で加熱する工程と、溶融ポリマーを多層供給ブロックに供給する工程と、1つ以上の層増幅器を使用して層を任意に増やす工程と、フィルム押出しダイを通して溶融材料を送る工程と、ダイをキャスティングホイールの上に残した状態で押出品をキャスティングする工程と、キャストフィルムを1つ又は2つのフィルム方向に沿って延伸ないしは別の方法で配向する工程と、を含む。例えば、米国特許第5,882,774号(Jonzaら)及び同第6,783,349号(Neavinら)を参照されたい。いくつかの実施形態では、フィルムは層増幅器を使用せずに製造され得る。層増幅器は、多数の光学層の生成を大幅に単純化するが、各合成層パケットに、各パケット毎に同一でない歪みを与えることがある。この理由のため、供給ブロック内で生成された層の層厚さプロファイルの調整は、各パケット毎に同じではなく、即ち、スペクトル分断のない均一で滑らかなスペクトルを生成するために、全てのパケットを同時に最適化できるとは限らない。したがって、低透過色及び反射色のための最適なプロファイルを、増幅器を使用して製造されたマルチパケットフィルム(multipacket films)を使用して作製するのは困難であり得る。供給ブロック内で直接生成された単一パケット内の層の数が、十分な反射率を提供しない場合は、2つ以上のそのようなフィルムが貼り付けられ、反射率を高めることができる。ローカラーフィルムに滑らかな分光反射率及び透過率を提供するための層厚み制御の更なる考察は、PCT国際公開特許WO 2008/144656(Weberら)に提供されている。
多層光学フィルムを製造するのに使用される材料は、典型的には、少なくとも可視及び近可視波長にわたって、また、フィルム内の典型的な光路距離に関して非常に低い吸光度を有するポリマー材料である。このように、所与の光線に対する多層フィルムの%反射R及び%透過率Tは、典型的には、実質的に相補的、即ち、R+T≒100%であり、通常約1%の精度内である。このように、特に記載のない限り、本明細書に開示される高反射率を有する多層光学フィルムは、低透過率を有すると考えることができ、逆もまた同様であり、本明細書に開示される低反射率を有する多層光学フィルムは、高透過率を有すると考えることができ、逆もまた同様であり、R+T≒100%の関係により、反射率又は透過率の報告値は、それぞれ透過率又は反射率も報告すると考えることができる。
光学フィルムの透過及び反射特性を考慮する際に留意すべき別の問題は、フィルムの最も外側の前側及び裏側主表面における表面反射の寄与を考慮に入れるか否かの問題である。そのような表面反射は、垂直入射では、例えば、合計約10%反射率と比較的小さくてもよいが、大きく傾斜した角度ではかなり大きくなり得、また、s偏光成分とp偏光成分との間では大きな差があってもよい。本出願の場合には、開示の光学フィルムは、必ずしもその必要はないが、積層構造体に組み込むためのものであるのが好ましく、その場合、フィルムの外側主表面の少なくとも一方及び可能であれば両方は、空気ではなく光学材料と接触する。その結果、特に記載のない限り、本明細書に記載の反射及び透過特性は、フィルムの最も外側の前側及び裏側主表面における表面反射の寄与を含まない。そのような値は、前側及び裏側表面反射率の寄与を含む「外部反射」及び「外部透過率」と区別するために、「内部反射」及び「内部透過率」と呼ばれることがある。しかしながら、用語「内部」が本明細書で使用されていないとしても、本明細書で論じられる反射及び透過特性は、特に記載のない限り、内部反射及び内部透過率の値であると考えるべきである。
コンピュータモデル化された光学フィルムを取り扱っているか、又はその特性が実験室で測定される実際のフィルムを取り扱っているかを問わず、内部反射及び透過特性を容易に決定することができる。モデル化されたフィルムの反射率及び透過率の計算値の場合、これは、計算された値からその表面反射率の計算を削除することによって達成される。複屈折多層フィルムに関するあらゆる角度及び帯域端部における反射スペクトル及びその特徴(例えば、反射率など)の全ては、Berremen and Scheffer,Phys.Rev.Lett.25,577(1970)の4×4スタックコードを用いて計算することができる。この方法の説明は、Azzam及びBashara著の「Ellipsometry and Polarized Light」(Elsevier Science(Holland)発行)に提供されている。
反射率又は透過率の測定値の場合、内部反射及び透過特性は、空気中でフィルムの測定を行い、表面反射率のみを表す計算又は測定値を差し引くことによって達成される。例えば、多層フィルムが、ミクロ層よりもはるかに厚い、滑らかで透明な表面層を有していると仮定すると、この表面層の屈折率を測定することができる。表面層の屈折率が分かったら、当該技術分野において周知である数式を用いて、測定した総反射率から表面反射率を差し引くことができる。この方法は、空気中における垂直入射(0度)並びに60度などのより大きな角度の両方で有効である。同じフィルムの空気中又は実施例の屈折率1.2のような屈折率のより高い媒体中での90度における反射率は、既知の屈折率のガラスプリズムをフィルムの両側に光学的に連結し、スネルの法則で容易に決定される適切な角度で反射率を測定することによって直接測定することができる。屈折率が約1.5〜1.7のガラスプリズムは、こうした測定に適している。かかるガラスプリズムとこうしたポリマーフィルムとの間の境界面反射は、45度に近い角度において小さいが、多層光学フィルムの内部反射率のより正確な測定にとって必要な場合には、境界面反射を容易に計算することができる。
特に非ゼロの角度では、フィルムの反射の代わりに透過率を正確に測定する方が簡単なことが多い。目的のフィルムの吸光度は比較的小さい(一般に垂直入射光に関して1%未満)ので、単に透過率の値Tを測定して、R=1−Tと仮定することができる。吸光度が約数パーセントより大きい場合、R及びTを別々に測定することにより、垂直入射における吸光度を測定することができる。次に、より大きな角度における吸光度を容易に推定することができるが、すると反射率をR=1−A−Tとして計算することができ、式中、R,A、及びTは、典型的にはパーセントで表わされ、1=100%である。
本明細書に開示される多層光学フィルムは、垂直入射光に対して偏光特性を、また、大きく傾斜した光に対して様々な反射及び透過特性を呈する。こうした特性の考察は、「通過」偏光(及び「通過」軸、「通過」平面等)、「ブロック」偏光(及び「ブロック」軸、「ブロック」平面等)、s偏光、及びp偏光と様々に呼ばれるパラメータへの言及を必要とする。明瞭にするために、及び読者がこれらの用語を混同しないよう助けるために、ここでこれらの用語を詳細に説明する。
従来の偏光フィルムに関しても、光は直交する2つの平面内で偏光されると考えることができ、この場合、光の伝播方向と交差する光の電気ベクトルが、特定の偏光平面内にある。更に、所与の光線の偏光状態を2つの異なる偏光成分(p偏光とs偏光)に分解することができる。p偏光は、光線の入射平面と所定の表面で偏光された光であり、この場合、入射平面は、局所表面法線ベクトルと光線伝播方向又はベクトルの両方を含む平面である。
例えば、図6は、標準的な偏光子602に入射角θで入射し、それによって入射面612を形成する光線610を示している。偏光子602は、y軸に平行な通過軸604と、x軸に平行なブロック軸606と、を含む。光線610の入射面612はブロック軸606に平行である。光線610は、入射面612中にあるp偏光成分と、入射面612と直交するs偏光成分と、を有する。光線610のp偏光は、偏光子602のブロック軸606と平行なベクトル成分を有し、したがって偏光子によってほぼ反射されるが、一方で光線610のs偏光は偏光子602の通過軸604と平行であり、少なくとも部分的に透過する。
更に、図6は、偏光子602の通過軸604と平行なベクトル成分を有する入射面622内で偏光子602に入射する光線620を例示している。したがって、光線620のp偏光は、偏光子602の通過軸604と平行であり、一方で、光線620のs偏光は、偏光子602のブロック軸606と平行である。結果として、偏光子602が、ブロック軸における偏光の全ての角度の入射光において100%の、通過軸における偏光の全ての角度の入射光において0%の反射率を有する「理想的」偏光子である場合、偏光子は光線610のs偏光及び光線620のp偏光を透過し、一方で光線610のp偏光及び光線620のs偏光を反射する。換言すれば、偏光子602はp偏光とs偏光の組み合わせを透過する。本明細書で更に詳しく説明されるように、p偏光とs偏光の透過量と反射量は、偏光子の特性に依存する。
光学的に浸漬されている反射偏光子として使用するのに適しており、また有利には、「通過」偏光状態の斜めに入射した光に対する反射率の有意な増加を呈する光学フィルムを製造するために、多層光学フィルムの隣接するミクロ層間の屈折率の関係をどのように調整することができるかを、以下により完全に説明する。斜めに入射した光に対する有意な反射率の増加は、1つの入射面のみに生じるように、又は2つの直交する入射面に生じるように設計されてもよく、いずれの場合も、(少なくとも1つの入射面、及びいくつかの実施形態では2つの直交する入射面における高反射率及び低透過型反射率(low transmission off-axis)の結果として)光をより狭い視野円錐に拘束又は「コリメート」するのを助けて、表示システムに増加した輝度及び/又はコントラストをもたらすために、あるいは照明器具からの光をコリメートするために、リサイクリングシステムで用いることができる。用語「コリメート」は、開示される反射偏光フィルムに関連して用いられるとき、代表的な実施形態において、偏光フィルムによって反射された一部の光を少なくとも部分的にリサイクルする他の反射性又は拡散性フィルム若しくは要素とフィルムが組み合わされる、という了解の下で広く用いられることを読者は理解すべきである。そのため、偏光フィルムが、垂直入射光に対して高透過率を有し、大きく傾斜した光に対してはるかに低い透過率(より高い反射率)を有する場合、反射された斜光の少なくとも一部は、偏光フィルムによって透過される可能性が高くなるように、システムの別の光学要素によって傾斜の少ない方向で偏光フィルムに戻る向きに再度反射され得る。この意味で、最初は大きく傾斜している光は、偏光フィルムによって透過されるときまでに傾斜の小さい光に「変換され」、また、偏光フィルムはそこに衝突する光を「コリメートする」ということができる。
図7a〜図7cは、開示される積層体で使用される浸漬した多層反射偏光子のいくつかの望ましい透過及び反射特性を例示するために提供されている。
図7aには方向半球の斜視図が示されている。半球上の任意の点は光の伝播方向を表しており、極角θ及び方位角φによって特徴付けられる。z軸は、フィルムの平面に対して垂直である。図7a〜図7cの目的上、角度θ、φは、光学的に厚い超低屈折率(ULI)材料内で測定されると仮定され(したがって、θlow index及びφlow indexと呼ばれることもある)、このULI材料層が多層光学フィルム(その反射及び透過特性が関心の対象である)に対してどこに位置決めされるかは問わない。例えば、ULI層は、多層光学フィルムに隣接していてもよく、また多層光学フィルムと光源との間に配置されてもよい。あるいは、ULI層は、多層光学フィルムに隣接しているが、光源の反対側に配置されてもよい。あるいは、ULI層は、積層構造体の中で1つ以上の他のフィルム又は構成要素によって多層光学フィルムから分離されているが、その間に有意な空隙がなくてもよい。
開示される多層光学フィルムは、少なくとも小さな入射角(即ち、垂直又はほぼ垂直な入射角、θ≒0)の光に対して、有意な偏光特性を呈するのが好ましい。したがって、垂直入射光に対し、フィルムは、可視波長にわたって低反射率及び高透過率の通過軸(例えば、面内y軸に沿った)、及び可視波長にわたって非常に高い反射率及び非常に低い透過率のブロック軸(例えば、面内x軸に沿った)を画定するのが好ましい。好ましくは、「ブロック」偏光の光は、θとφとのほぼ全ての組み合わせにわたって、即ち、半球で表わされる全方向にわたって「ブロックされる」、即ち、非常に高い反射率及び非常に低い透過率によって特徴付けられる。したがって、606がブロック軸である図6の図形を参照すると、開示される反射偏光フィルムは、ULI材料で測定される最大約90度の角度θ及びほぼ全ての可視波長に関して、平面622に入射するs偏光及び平面612に入射するp偏光に対して高反射率を維持するのが好ましい。
開示される偏光フィルムは、図7b及び7cに理想的及び質的な様式で示されるように、「通過」偏光された光に対してより複雑で興味深い挙動を呈するのが好ましく、この偏光フィルムは、図7aの方向半球を作り出し、通過偏光に対する別の開示フィルムの透過及び反射特性をこの方向半球の上に重ね合わせる。いずれの場合も、フィルムは、垂直及びほぼ垂直な入射に対して比較的高い光透過率を提供する。この透過率は、垂直/ほぼ垂直な入射のブロック状態の光の透過率との関係で「高い」ということができ、通常少なくとも50%であり、またある場合にはそれよりもはるかに高く100%近くなることさえあるが、ある場合には、透過率は、実質的に50%未満であり得、依然としてブロック状態の透過率よりもはるかに高くあり得る。後者の特性を有するフィルムは、例えば、損失が最小である非常に高効率のリサイクリングシステムにおいて有用であり得る。
通過状態の垂直入射光に対して「高い」透過率を有する他に、フィルムは、少なくとも方位角φの或る範囲内では、大きく傾斜した角度θで入射する通過状態の光に対してはるかに低い透過率(及び高い反射率)を有するのが望ましい。角度の増加と共に増加する反射率は、フィルムを横断する光の視野錐体又は伝播錐体を効果的に圧縮する。「高い」透過率から「低い」透過率への遷移は、通常段階的であるので、高い透過率領域と低い透過率領域とを分離する中間反射率領域が見られる。斜角において「低い」透過率は、垂直入射で通過状態の光の透過率との関係で「低い」といわれる。極端な入射角(例えば、超臨界入射角)で進行する通過状態の光に対する透過率を減少させて反射率を増加させることにより、設計された角度より大きな角度でフィルムを通って伝播する光に伴う問題、例えば、図4に示されるギャップに伴う問題を回避することができる。特に、表示装置及び照明用途では、システムに顕著な色が導入されるのを回避するために、反射率の増加を実質的に可視スペクトル全体にわたって比較的均一に維持するのが好ましい。これによって今度は、入射角に伴う多層フィルム反射帯域の固有の波長シフトに起因して、フィルムの反射帯域の右側帯域の位置に対する一定の要件が生じる。
以下に更に記述されるように、通過偏光状態の光に対する高い及び低い透過率領域が、図7bに示されるように方位角φの影響を比較的受けないように、又は図7cに示されるようにφに強く依存し得るように、多層偏光フィルムを調整することができる。明白な理由から、図7bの方位角の影響を受けない特性は、「2軸コリメート(2-axis collimating)」多層反射偏光フィルムを特徴付けるということができ、図7cの強度に変化する方位角特性は、「1軸コリメート」多層反射偏光フィルムを特徴付けるということができる。こうしたカテゴリーの区別は、フィルムが目的とする用途、及び異なる方位角方向間の差が所与の用途において、どれだけ有意であると考えられるかに依存し得る。以下の議論の便宜上、単純に、2軸コリメート偏光フィルムを、x−z平面及びy−z平面などの2つの直交する入射面の極角θの関数として透過率においても同様の低下を示すと特徴付けることができる一方、1軸コリメート偏光フィルムを、1つの入射面では透過率の大きな低下を示し、直交する入射面では透過率の低下をほとんどあるいは全く示さないと特徴付けることができる。1軸コリメート偏光フィルムの場合には、透過率の大きな低下を示す入射面は、フィルムの通過軸又はブロック軸のいずれかと整列され得ることに留意されたい。透過率が低下する平面が通過軸と整列される場合、通過状態の光のp偏光成分が入射角の増加に伴ってより多く反射されるので、フィルムをp偏光コリメーティングフィルムと呼ぶことができ、平面がフィルムのブロック軸と整列される場合、通過状態の光のs偏光成分が入射角の増加に伴ってより多く反射されるので、s偏光コリメーティングフィルムと呼ぶことができる。
システムの特徴、要件、及び設計制約に応じて、あるシステムは、1軸コリメートフィルムよりも2軸コリメート偏光フィルムを使用することにより、より利益を得ることができる一方で、他のシステムに関してはその反対が当てはまる場合がある。そうした設計考慮の更なる議論は、本明細書の他の場所に提供される。本出願は、1軸に加えて2軸コリメート偏光フィルムに関する教示を提供するが、1軸コリメートフィルムに関する更なる情報及び例を、米国特許出願第XX/XXX,XXX号、「Immersed Reflective Polarizer With Angular Confinement in Selected Planes of Incidence」(代理人整理番号65900US002)(本出願と同日に出願)に見出すことができ、当該特許出願は参照により本明細書に組み込まれる。
十分な軸外反射率をもたらして、図4の「ギャップ」に対応する超臨界角で伝播する光がシステム性能を不当に低下させないことを確実にする他に、二次的な設計課題は、空気中で光線のかなりの部分を更により低角度(例えば、約45〜90度)で反射及びリサイクルする必要があることである。一部の液晶テレビでは、この角度範囲は、マイクロレンズアレイフィルムを用いて垂直に向かって向け直される。本明細書に開示される反射偏光子の少なくともいくつかは、少なくとも1つの入射面において、この中〜高角度の斜光の十分な反射率をもたらすことができ、また、1つ又は2つのマイクロレンズフィルムの性能を近似することができる。
本発明者らは、上述した透過及び反射特性が、妥当な設計の実用的多層フィルム、例えば、妥当な数のミクロ層を有し、既存のポリマー材料及び加工技術を用いて達成可能な屈折率関係を有する実用的多層フィルムで達成され得ることを見出した。いくつかの開示の実施形態は、例えば、図4に示されるギャップの中の光の最大90%を反射することができると同時に、垂直入射で高透過値をもたらすことができる、約500層を備える多層反射偏光子を構成することができることを確実とする。
多層光学フィルムの光学特性は、例えば、フィルムのミクロ層の数、フィルム内の1つ以上のコヒーレントパケット(coherent packet)の中へのそれらの分布、種々のミクロ層の厚さ及び層厚さプロファイル、並びに層の屈折率など、「主要」と考えることができる有限個のパラメータを含む。本出願では、積層構造体の浸漬したフィルムとして使用するのに適している多層反射偏光フィルムを製造するために、こういった主要なパラメータをどのように選択することができるかの例を提供するだけでなく、かかる構造体における多層フィルムの適切性を評価するのに重要であり得る、特定の二次的なフィルムのパラメータ、及びかかるパラメータを含む関係もまた特定する。こうした二次的なフィルムのパラメータとしては、次のうちの1つ以上を挙げることができる。
フィルムの内部反射率は、所与の入射角θにおける4種類の偏光の場合のいずれか、即ち:通過平面に入射するp偏光に対する反射率(「RPpass(θ)」);通過平面に入射するs偏光に対する反射率(「RSblock(θ)」);ブロック平面に入射するp偏光に対する反射率(「RPblock(θ)」);及びブロック平面に入射するs偏光に対する反射率(「RSpass(θ)」);に関して特定され、この場合、通過平面は、フィルムの通過軸と垂直軸とを含む平面であり、ブロック平面は、フィルムのブロック軸と垂直軸とを含む平面であり、角度θは、空気中(θair)又は超低屈折率材料中(θlow index)で測定された角度であり得る。
フィルムの内部透過率は、所与の入射角θにおける4種類の偏光の場合のいずれか、即ち:通過平面に入射するp偏光に対する透過率(「TPpass(θ)」);通過平面に入射するs偏光に対する透過率(「TSblock(θ)」);ブロック平面に入射するp偏光に対する透過率(「TPblock(θ)」);及びブロック平面に入射するs偏光に対する透過率(「TSpass(θ)」);に関して特定される。
本発明者らは、前述のパラメータのうちの特定のものの平均を定義する。例えば、
Rpass(θ)は、RPpass(θ)とRSpass(θ)の平均であり、
Tpass(θ)は、TPpass(θ)とTSpass(θ)の平均である。
本発明者らは、特定条件下の前述のパラメータのいずれかを定義する。例えば、
%T00は、通過偏光の光に対する垂直入射でのフィルムの内部透過率であり、Tpass(0)、TSpass(0)、及びTPpass(0)とも等しい。
%Tブロックは、ブロック偏光の光に対する垂直入射でのフィルムの内部透過率であり、Tblock(0)、TSblock(0)、及びTPblock(0)とも等しい。
%TA60Sは、ブロック平面に入射するs偏光に対する、空気中で測定された60度の入射角でのフィルムの内部透過率であり、TSpass(θair=60)とも等しい。
%TA60Pは、通過平面に入射するp偏光に対する、空気中で測定された60度の入射角でのフィルムの内部透過率であり、TPpass(θair=60)とも等しい。
%TA60は、%TA60Sと%TA60Pの平均である。
%TA90Sは、ブロック平面に入射するs偏光に対する、空気中で測定された90度の入射角でのフィルムの内部透過率であり、TSpass(θair=90)とも等しい。
%TA90Pは、通過平面に入射するp偏光に対する、空気中で測定された90度の入射角でのフィルムの内部透過率であり、TPpass(θair=90)とも等しい。
%TA90は、%TA90Sと%TA90Pの平均である。
%TU90Sは、ブロック平面に入射するs偏光に対する、超低屈折率材料で測定された90度の入射角でのフィルムの内部透過率であり、TSpass(θlow index=90)とも等しい。
%TU90Pは、通過平面に入射するp偏光に対する、超低屈折率材料で測定された90度の入射角でのフィルムの内部透過率であり、TPpass(θlow index=90)とも等しい。
%TU90は、%TU90Sと%TU90Pの平均である。
反射帯域の長波長帯域端部の位置は、特定の入射角の反射帯域の赤色帯域端部(RBE)又は右側帯域と呼ばれる場合もある。垂直入射での通過偏光の有意な反射率を有する偏光子の場合、通過偏光に対する垂直入射における反射帯域は、ブロック状態の光に対する垂直入射における反射帯域と異なる。そのような場合、特に記載のない限り、RBEは、ブロック偏光された光に関し、反射帯域の長波長境界、例えば、内部反射率が帯域内の平均値の90%に低下する波長を指す。
先に言及したように、斜角で通過軸に対して実質的に反射性でもある反射偏光子を作製することができる。高角度における通過軸反射率は、s偏光、p偏光、又はその両方に対して大きくなるように調整され得る。これら2つの成分は直交方向から入射するが、これらは共に、フィルムの通過軸を含む平面と平行な電場ベクトルを有する。p偏光通過軸光に対して高反射率が望ましいが、s偏光通過軸光に対しては望ましくない場合には、z屈折率差が大きく、y屈折率差が小さいフィルムを使用することができる。s偏光通過軸光に対して高反射率が望ましいが、p偏光通過軸光に対しては望ましくない場合には、y屈折率差が大きく、z屈折率差が小さいフィルムを使用することができる。ブロック偏光状態の光に対して高反射率をもたらすために、x屈折率差はy屈折率差を実質的に超える必要があることに留意されたい。
図5に戻って参照し、フィルムが延伸又は配向されて、第1の材料(ミクロ層502)が複屈折性となり、第2の材料(ミクロ層504)が屈折率n2を有する等方性となり、更に、Δnx>Δny>0>Δnz、即ち、Δnzが負である場合を考える。この場合、第1の材料は、スタックにおいて最も高い(n1x)及び最も低い(n1z)屈折率の両方を示すが、本発明者らは、便宜上、前述にかかわらず、第1の材料を高屈折率材料と呼ぶこともあり、第2の材料を低屈折率材料(超低屈折率材料と混同しないようにすべきである)と呼ぶものとする。通過軸s偏光に対して高い軸外反射率を呈するためには、低屈折率層は、高屈折率材料のn1yよりも実質的に低い屈折率n2を有する必要がある。p偏光に対して高反射率を提供するためには、同じ低屈折率材料は、高屈折率材料のn1zよりも実質的に高い屈折率n2を有する必要がある。n2を変えることによりこれらの値の一方を最大にすると、もう一方が最小となるので、s偏光及びp偏光の両方が最大となり、斜角でほぼ等しく反射するようにするためには、複屈折層のy−z屈折率差(n1y−n1z)を最大にする必要があることは明白である。ブロック軸が通過軸よりもはるかに多くの光を反射するためには、n1xがn1yよりも実質的に大きいという更なる拘束が存在する。
p偏光及びs偏光の両方に対して非常に反射性であるフィルムは、大きなΔy及びΔz屈折率差を必要とする。ほとんどの多層複屈折反射偏光子は、テンターによってのみ延伸される、即ち、x方向にのみ延伸される。しかしながら、これは、制限された範囲のy屈折率の値を生成する。同様にフィルムをy方向に延伸することによって、y屈折率を増加させることができる。これは、同時2軸延伸工程で、又は逐次的延伸により行うことができる。両方の例を以下に示す。
図9に関連して非対称フィルムの加工に関する考察、及びそれらがミクロ層の屈折率にどのような影響を与えるかについて更に説明する前に、2軸コリメーションを提供することができる特定の多層偏光フィルムの例を記述する。
光学フィルム1.1:2軸コリメートフィルム、550のミクロ層(モデル化)
斜角反射率は、高複屈折、多数のミクロ層、又は両方を用いることにより高めることができる。これは両方の手法を用いる例である。下の表に記載の好適に1軸延伸された90/10 coPEN(材料1)及びcoPET(材料2)の代表的な屈折率を用い、更に、coPET材料(等方性屈折率1.555)の表面薄層が550のミクロ層の単一スタックの両側にあり、平坦なスペクトル用に最適化された連続的層厚さプロファイルがミクロ層に提供され、垂直入射の帯域端部(LBE)が400nm及び垂直入射の右側帯域(RBE)が1150nmであると仮定すれば、1軸延伸フィルムの角度反射率を大幅に増加させることができる。
計算された(内部)反射率と入射角曲線の比較が図8aにプロットされており、入射角は、屈折率1.2のULI媒体の中のものであると仮定される。図中、曲線810は、RSblock(θ)及びRPblock(θ)の両方を表し、曲線812はRSpass(θ)を表し、曲線814はRPpass(θ)を表す。s偏光及びp偏光の両方に関する通過状態の反射率は、最高角度でほぼ0.9まで上昇することに留意されたい。ほとんどの角度で、これらの反射率の値は、システム構造の表面及び境界面反射を支配する。図8bは、通過偏光及びブロック偏光の両方の右側帯域(RBE)を、屈折率1.2のULI材料の中の入射角の関数としてプロットしており、曲線820はブロック状態でs偏光された光のRBEの位置を示し、曲線822はブロック状態でp偏光された光のRBEの位置を示し、曲線824は通過状態でs偏光された光のRBEの位置を示し、曲線826は通過状態でp偏光された光のRBEの位置を示す。
ポリマーの選択及び加工も、フィルム製品の価格及び製造歩留まりに影響を与える。このため、異なる低屈折率材料を使用する、又は偏光子を異なって加工することが有利であり得る。例えば、光学フィルム1.1の550層の偏光子を作製するのに必要な押出装置は、やや高価であり得、また設計が難しいことがある。好ましくは、以下に記載の代替的手法で作製される2枚の275層フィルムを積層する又は共押出することができる。
任意の所定の入射角に対する反射率に影響を与える、多層光学フィルムのミクロ層に関するいくつかの屈折率パラメータが存在し、この情報を図9にまとめる。s偏光の反射率は、横座標に沿って右に向かって増加するΔny=n1y−n2yの値と共に増加する。p偏光の反射率はΔnyに依存するが、図9の縦軸に沿って増加する−Δnz=n2z−n1zにも大きく依存する。拘束1軸延伸フィルムでは、高屈折率層の最大y−z複屈折は、交互層の間で得ることができる最大値Δny及びΔnzを決定する。coPEN高屈折率層では、拘束1軸延伸PENの最も高いy屈折率は約n=1.62であり、最も低いz屈折率は約n=1.50であるので、この限界は約Δn=0.12である。この複屈折は、ポリエステルフィルム製造分野で既知のように、PEN含有量を最大にし、比較的低温、若しくは高い延伸倍率、又はその両方でキャストウェブを延伸することにより達成される。
3M Companyから入手可能ないくつかの多層光学フィルム反射偏光子製品、つまり、Vikuiti(商標)DBEF−qフィルム及びVikuiti(商標)APFフィルムの屈折率差Δny及びΔnzの値は、図9のプロットにそれぞれ参照番号910、912で印が付けられている。1軸延伸された多層構造のものに関する、斜め入射したs偏光及びp偏光に対する反射率の最大値は、このプロットの中で対角点線920に沿った屈折率差の値を有するフィルムで生じる。s偏光及びp偏光に対して等しい反射率を有するフィルム1.1は、この線上の点(Δny=0.065、Δnz=0.05)に当てはまる。グラフの右下隅では、s偏光された光がコリメートする可能性は、Δnyが大きいという理由から最大であるが、p偏光された光がコリメートする可能性は、Δnzがゼロであるという理由からゼロであり、p偏光された光の反射率は入射角と共に変わらない。グラフの左上隅では、p偏光に対する反射率は大きく、s偏光に対してはゼロである。点(Δny,Δnz)=(0.04,0.8)の近くで、反射率はp偏光に対して最大となる。偏光子構造体の最大複屈折を有するcoPENフィルムを使用する場合、低屈折率層の屈折率の値の変化は、屈折率の値を点線920の設計空間に沿って移動させる。点線920の左側及び下側の全屈折率セットは、所与の入射角の光に対してより低い反射率を有する。点線の上側及び右側の全屈折率セットは、同じ入射角でより大きな反射率をもたらす。点916は光学フィルム3.4を表す。
屈折率差Δny及びΔnz、ひいては斜光に対する反射率の増加は、フィルムを機械方向(MD)又はy方向に追加的に延伸することによって、上述と同じ材料セットを用いて達成することができる。この処理は、x方向の屈折率を必然的に低下させるので、この手法には制限がある。しかしながら、図9の点線920の上側及び右側のスペースで動作するのを可能にする。例えば、点918は、フィルムをMD方向に延伸し、後続の熱処理により作製することができる反射偏光フィルムを表している。かかるフィルムは、本明細書では光学フィルム1.2と呼ばれ、以下に更に記述される。点914は、光学フィルム1.2の説明に従って作製されたフィルムを表しているが、フィルムはMD又はy方向に延伸されていない。
広くは、前述の処理は、非対称な2軸延伸(asymmetrical biaxial orientation)と呼ばれる。この処理により、coPENのy屈折率を高めることができる。nyが約1.75まで増加し、z屈折率が1.5である極限では、nxは約1.75まで減少し、この時点で、フィルムは対称ミラーとなる。屈折率n1yのある中間の値では、フィルムは依然として有効な偏光子であり、通過軸の光の反射率は、総数が275層と少ない場合でさえ高くなる。次に、以下の実施例で説明するように、2つ以上のかかるフィルムを、必要に応じて積層することができる。
光学フィルム1.2:2軸コリメートフィルム、275のミクロ層(モデル化)
coPEN及びPETgが90/10である交互層の多層材料のスタックを共押出し、およそy方向に3:1及びx方向に5:1で延伸し、その後高温熱処理した後に、下の表に示される交互ミクロ層の屈折率特性を得ることができる。
得られた非対称に延伸された多層光学フィルムが、275のミクロ層の単一パケットを有し、等方性PETgの表面薄層がこのパケットの両側にあり、平坦なスペクトル用に最適化された連続的層厚さプロファイルがミクロ層に提供され、垂直入射の帯域端部(LBE)が400nm及び垂直入射の右側帯域(RBE)が1150nmであると仮定すれば、その計算された反射率特性が図10に示されるものである反射偏光フィルムが製造される。この図では、曲線1010はRSblock(θ)を表し、曲線1012はRPblock(θ)を表し、曲線1014はRPpass(θ)を表し、曲線1016はRSpass(θ)を表している。線1018は、空気中入射角90度に相当するULI屈折率1.2の媒体中の入射角を表す。
光学フィルム1.3:2軸コリメートフィルム、275ミクロ層×2パケット
合計550層を有する(が、低屈折率のミクロ層で使用される光学的に厚い材料の層によって互いに分離される2つのコヒーレントパケットに配列される)光学フィルム1.3を作製するために、2つの光学フィルム1.2を共に積層すると、図11に示される計算された反射率が生成される。この図では、曲線1110はRSblock(θ)を表し、曲線1112はRPblock(θ)を表し、曲線1114はRPpass(θ)を表し、曲線1116はRSpass(θ)を表す。線1118は、空気中入射角90度に相当するULI屈折率1.2の媒体中の入射角を表す。
いくつかの2軸コリメート多層反射偏光フィルムを記述し終え、また、更なる1軸及び2軸コリメート反射偏光フィルムを記述する前に、その中でフィルムを使用することができる積層構造体のいくつかに注目する。バックライト及び液晶パネルなどの光学表示装置用途に、ある程度の重点を置いているが、開示されるフィルム及び積層体の他の用途も考えられることを読者は理解すべきである。多くの場合、積層構造体は、少なくとも4つの要素、つまり、開示の1軸又は2軸コリメート多層反射偏光フィルム、ULI材料の光学的に厚い層、超臨界光を多層フィルムに注入するための層又は他の機構、あるいはシステムから超臨界光の一部を抽出するための機構を備える。後者は、表面構造を備える任意の層、又はLCDテレビパネルなどの内部散乱及び吸収要素を備える厚い層であり得る。
図12は、液晶パネル1212を備える積層構造体1210の概略的側面図を示す。構造体1210はまた、本明細書に開示される反射性偏光多層光学フィルム1214と、ULI材料の光学的に厚いフィルム又は層1216と、拡散層1218と、を備える。構造体1210に後方から入射するバックライトからの光は、各種層を通って進行して、鑑賞者のために表示装置を照明する。
浸漬した反射偏光子1214のリサイクルされた斜めの通過軸光は、照明システムの軸上の光束利得を増加させる一方で、システムの斜角出力を減少させる。拡散層1218は、例えば、50% T、60% T、又は70% T拡散板の代替物などの大きな反射率を備える重い拡散体であり得、あるいはプリズム、ビーズ、又は小型レンズアレイなどの微細構造化表面であり得る。反射偏光子1214とLCDガラスパネル1212との間に追加の拡散層を加えることも可能である。そうした追加の拡散体は、例えば、反射偏光子が何らかの望ましくない色を有する場合に望ましくあり得る。あるいは、追加の拡散体は、反射偏光子によって透過された光の更なるコリメートに役立つ微細構造の形態であってもよい。拡散体が微細構造化表面の形態をとる場合には、ULIは、LCDパネル1212と微細構造化表面との間に設置される必要がある。あるいは、より高い効率を得るため、第1のULI層を図12に示される位置に保持したままで、第2のULI層をその境界面に挿入することができる。
図13は、エッジ照明若しくは直接照明バックライト、又はその一部を形成するために、少なくとも1つの光学的に厚い超低屈折率層1316及び本明細書に開示されるような多層反射偏光フィルム1314を組み込んだ、別の積層構造体1310の概略的側面図である。層1312は拡散層であり、この拡散層は、反射偏光子に存在する場合がある色を隠すのに役立つ半鏡面であってもよく、又は光を拡散し、反射偏光子によって透過された光のコリメートにも役立つ構造化面、例えば、線状プリズム表面であってもよく、若しくはこれを含んでもよい。層1318は、直接照明バックライト構成のLED又はその他の好適な光源(図示せず)のアレイの上方に位置付けられる拡散板であってもよく、又はこれを含んでもよい。あるいは、層1318は、中実のライトガイドであってもよく、又はこれを含んでもよく、その場合、LED 1320、若しくはその他の好適な光源は、1つ以上の側面若しくは端面を介して、超臨界角の光をシステムに注入してもよい。これは、図14の正面又は平面図により明確に示されており、図中、要素1410は、積層体1310又はその層1318を表し、領域1412a〜1412dは、光をライトガイドに注入するために光源が設置されることが可能な位置を示している。光源が領域1412b、1412dの一方又は両方に設置される場合、超臨界光伝播に伴う問題は、y軸よりもx軸(図中のx−y−z軸は参照目的のためのものであることに留意されたい)と平行な軸に沿ってより深刻となり得る。同様に、光源が領域1412a、1412cの一方又は両方に設置される場合、超臨界光伝播に伴う問題は、x軸よりもy軸と平行な軸に沿ってより深刻となり得る。
図15〜図18は、表示パネルと開示される反射偏光フィルムとを備える、様々な異なる積層構造体を示す。
図15では、積層構造体1510は、LC表示パネルなどの表示パネル1512と、光学的に厚い光学接着剤層1514と、本明細書に開示の多層反射偏光フィルム1516と、偏光フィルム1516に適用されるビーズ利得拡散体等などの拡散層1518と、を備える。この実施形態では、接着剤層1514は、ULI材料ではなく、およそ1.5の屈折率を有し得る従来の接着剤材料からなってもよい。したがって、構造体1510は、ULI層をその中に備えていなくてもよく、同様に、図示される要素の間に空隙が存在しなくてもよい。このようなULIを含まない実施形態については、下で更に論じられる。構造体1510は、構造体1510及びパネル1512を下から照明するように位置付けることができる好適なバックライトと組み合わされてもよい。
図16には、図15の構造体1510と同様の積層構造体1610が示されており、同様の要素には同じ参照番号が付されている。図16の実施形態では、光学的に厚いULI層1612が、多層反射偏光フィルム1616と従来の光学接着剤層1514との間に設けられている。ULI層1612が積層体の中に設置されているか否かに依存して(例えば、反射偏光子1616と拡散層1618との間に位置するように再配置されてもよい)、層は、層1514の従来の接着剤材料よりもはるかに大きな程度まで、反射偏光子内での大きく傾斜した光の伝播を制限する又はそのような大きく傾斜した伝播光を反射偏光子に戻るように向け直す働きをすることができる。結果として、反射偏光フィルム1616の反射帯域の帯域幅は、図15の偏光フィルム1516のそれよりも有意に小さくされ得る。
図17では、いくつかの追加の拡散又はコリメーティング要素を備える積層構造体1710が提供されている。この場合、線状プリズムBEFフィルムなどのプリズム構造化フィルムを備える層1709が設けられている。層1709の中には、フィルム基材の上にプリズムが配置されており、プリズム点は接着剤層1514とごく近接している又は接触している。プリズムと接着剤層との間の隙間は、ULI材料で充填される。したがって、層1709のULI材料はプリズムを平坦化する。層1711は、別の従来の光学接着剤層である。層1712は光学的に厚いULI層である。層1716は、本明細書に開示の多層反射偏光フィルムである。層1718は、ビーズ利得拡散体などの拡散層である。
図18では、積層構造体1810は、既に記載した他の要素に加えて、図のように配列された光学的に厚いULI層1812と、本明細書に開示の多層反射偏光フィルム1816と、体積拡散層1818と、を備えている。
図16〜図18は、表示パネルと、多層反射偏光フィルムと、光学的に厚い超低屈折率層と、を備える積層構造体の概略的側面図である。
いくつかの異なる積層表示パネル構造体を記載してきたが、例示の積層ライトガイド構造体1910に関して図19を参照する。この実施形態では、BEFプリズムフィルムで使用されるようなプリズム構造体1912が、本明細書に開示の多層反射偏光フィルム1914に適用される。この場合、プリズムは空気中に露出し、偏光フィルム1914を通過した透過光は、一般に、表示パネル又は鑑賞者に向かって上方に向かう。こうした光は、中実のライトガイド1924の端部のエッジ照明構造に図示されている光源1930a、1930bから生じる。ライトガイド1924は、従来の抽出器1926のパターンを備えている。ライトガイド1924の底部から逃散した光は、白背面の反射体1928によって反射される。感圧接着剤層1922は、ライトガイド1924を、例えば、傾斜屈折率ULI層1920、ヘイズが大きいULI層1918(体積拡散体でもあり得る)、及びヘイズの小さいULI層1916などの上方の他の構成要素に接着する。
更なる検討
先に言及したように、反射偏光子の性能のいくつかのパラメータは、高角度における強度の低減及び/又は軸上の強化された強度を必要とするLCDバックライト、又は任意の他の偏光照明システムにおける有用性に対して有意なものとなり得る。こうしたパラメータは、上述の%Tブロックと%T00とを含む。通過状態のs偏光成分及びp偏光成分の透過率値が斜角において互いに同様であり得る、2軸コリメートの浸漬した反射偏光子の場合では、パラメータは、それぞれがs及びp偏光成分の平均である%TA60、%TA90、及び%TU90も含み得る。
こうした透過率値は、それらが適用され得るシステムの要件によって、ある範囲の好ましい値を有する。更に、フィルムのこれらのパラメータのうちの1つを変更すると、他のパラメータの1つ以上が変化することになるので、トレードオフが存在する。この理由の1つは、任意の材料から得られる複屈折の限界である。PEN及びPETなどのポリマーは、ポリマー微結晶及び半結晶性ポリマーフィルムの分子鎖のいくつかの延伸に起因して、複屈折を呈する。結晶及び分子秩序を形成するこの処理は、一般に、フィルムの延伸と呼ばれている。ポリマーフィルムは、x方向若しくはy方向のいずれか、又はその両方に延伸され得る。任意の方向へのフィルムの延伸は、その方向、並びにその他の2方向への反射率に影響を与えることになる。フィルムがx及びy方向の両方に高度に延伸される場合、z屈折率は最小となる。x屈折率は、y屈折率を最小値まで減少させるという犠牲によってのみ、最大値まで増加され得る。こうした特性は既知であるが、上述された5つのパラメータの最適化に関連したトレードオフについて論じるために、ここで再び記載する。例えば、高屈折率層のy屈折率を高めるようにフィルムを処理することにより%T00が低下するが、x屈折率も同様に低下するので、%Tブロックは増加する。一次近似で、x、y、及びz屈折率の合計は一定である。x方向若しくはy方向のいずれか、又はその両方に最大延伸すると、ポリエステル系システムではz屈折率は最小になり、また、その他のいわゆる「正の複屈折システム」でも同様である。延伸の非対称、例えば、y方向への延伸の増加を伴うx方向の低下などは、z屈折率をほぼ一定の状態に保つことができる。
LCDパネルの吸収偏光子への吸収を介したブロック軸偏光を有する光の損失を低減するために、LCDバックライトの%Tブロックの値を最小にすることを望む場合がある。しかしながら、%Tブロックは、高屈折率層に対して大きな値のnxを必要とするので、y屈折率は、Tブロックが大きくなり過ぎる点までnxが減少するような大きな値まで増加させるべきではない。一般に、%Tブロックは、垂直入射で可視スペクトルにわたる平均である15%又は20%よりも小さいのが望ましい。10%未満、又は5%未満の%Tブロック値がより望ましい。
例示の実施形態では、特に、拒絶された通過軸光線をフィルムに戻すのにリサイクリングシステムが有効でない場合には、%T00は、通過軸の光の相当量が最終用途まで透過されるように、十分に高くされる。システムの要件が、s偏光通過軸光に対する高反射率を含む場合には、垂直入射で中程度の内部反射率が必要である。交互ミクロ層のy屈折率に不整合が存在する場合に限り、s偏光は反射される。この不整合、並びに層の数も、%T00の値を決定する。相当量のs偏光を反射するあらゆるフィルムは、相当量の垂直入射の光も反射する。したがって、s偏光の強い反射が意図されるフィルムは、垂直入射において少なくとも20%、より典型的には30%、又は更に50%若しくは60%の内部反射を必要とし得る。バックライトシステムがより効率的になればなるほど、%T00の許容可能な値が低くなり得る。したがって、内部透過率%T00の値は、40%から80%の高さにまで及び得る。
%TA60の値は、%T00の値に依存するところが大きい。前述の通り、%T00は、s偏光の十分な反射率を得るために、100%よりも実質的に小さくされる必要があり得る。%T00が低減される場合には、フィルムにブルースター角が存在しない場合、%TA60もまた低減される。したがって、より有用なパラメータは、%TA60/%T00の比率である。表示装置の視野円錐又は照明器具の角出力の幅を、広角度又はランバート光源の幅から低減するために、TA60/%T00の比率を低減する必要がある。多くの表示装置及び光源では、60度における輝度は、軸上輝度又は0度輝度よりもはるかに小さいのが望ましい。本明細書に記載のフィルムに関する%TA60/%T00の有用な値は、0.85から任意の低い値まで幅広い。
この値は、図4のギャップ領域においてどれだけの高角度の光がブロックされないかを表すので、%TA90及び%TU90は共に、これら構造体では最小限とされるのが望ましい。したがって、%TA90/%T00及び%TU90/%T00の比率もまた最小限にされる。1.2屈折率のULIの中を56.4〜90度で伝播する光線は、空中から注入され得る光線よりも大きな角度で伝播する。この光線は、ULI境界面でTIRによってブロックされないので、通過及びブロック偏光の両方のための反射偏光子からの反射によってブロックされるのが望ましい。%TA90又は%TU90のいずれも、空気中で測定することができないが、それでも、より低角度の測定値からの補外法によって推定することができ、又は既知の屈折率の光学的に連結されたプリズムにより直接測定することができる。
空気中の60度の伝播角度は、図8a、図10、及び図11に示されるモデル化された曲線のための媒体であった、屈折率1.20の媒体中の46.2度に相当する。上で定義された5つのパラメータは、これらの図の曲線から直接得ることができる。屈折率1.2のULI中の90度伝播角度は、屈折率1.52の材料中の52度角度に相当する。空気中の90度伝播角度は、屈折率1.52の材料中の41.1度の伝播角度に相当する。したがって、ガラスプリズム(45度タイプ及び適切な角度まで回転するのいずれか)の間にフィルムを積層することにより、又は垂直入射をプリズム面で使用することができるよう特別な切断角度を備えるプリズムを使用することにより、T90A及びT90Uを測定することができる。
複屈折層の延伸処理、又はポリマー層の材料組成の変更のいずれかによって、様々な屈折率を変更することにより、多くのフィルム構造体が可能となる。また、層の数又は光学スタック設計を変えることが可能である。上述の光学フィルム1.1、1.2、及び1.3、並びに下述のフィルム2.1、2.2、及び2.3を含む種々の実施形態の結果を、表A及び表Bに記載する。
最低の層数を有する広帯域反射体の最も高い反射率を生成するために最も効果的なスタック設計は、スタックの1つの表面から他の表面までの1/4波長の厚さの値に連続的な階調を有するものである。光学フィルム1.1は、550の連続的に勾配が付けられている層を備えて、この様式で設計されている。しかしながら、好結果の製品のための光学設計の選択は、材料などの製造原価及び機器費用に制限されることがしばしばである。その反射率が図11に示されている光学フィルム1.3は、それぞれが275層を有する2つの独立して作製された勾配が付けられているスタックを、積層又は共押し出しすることによって作製されるように設計される。2つの独立した反射体は、互いに対してコヒーレントに光を反射せず、また、2つの反射体のコヒーレントでない組み合わせに対して「パイルオブプレーツ」の式を用いて、平均的に反射率の増加をもたらす。
R={R1+R2*(1−2*R1)}/(1−R1*R2)
図10と図11を比較することにより観察され得るように、このようなフィルムの組み合わせは、%TA90若しくは%TU90又は%Tブロックよりも、%T00の反射率を増加させるという点で、より有効である。
更なる実施形態
光学フィルム2.1:2軸コリメートフィルム、550のミクロ層(II)
テンターされただけのフィルムから非対称2軸延伸フィルムに配向を変えることにより、また、材料層の軽微な変更により、光学フィルム1.1を変性することができる。これは、高屈折率層の屈折率を、(1.83、1.62、1.505)からおよそ(1.80、1.66、1.505)に変えるやり方で行うことができる。高屈折率層の組成の軽微な変更を行って、このプロセスを容易にすることができる。低屈折率層を、1.555から1.58に変更することができる。上の表A及び表Bから、これは、%T00をいくらか減少させるが、%T90の値の全て、並びにTA60/%T00及び%T90/%T00の比率を著しく低減することに留意されたい。
光学フィルム2.2:2軸コリメートフィルム、1000のミクロ層
光学フィルム1.1の高屈折率層は、coPENからPETに変更することが可能であり、このことは、材料費の大幅な優位性を有し得る。しかしながら、1000の連続的に勾配が付けられている層が必要であるので、設備及び加工費が影響を受ける可能性がある。nx=1.71、ny=1.59、及びnz=1.50の屈折率は、拘束単軸方法(標準的フィルムテンター)で延伸された、n=1.55の低屈折率材料のPETフィルムで容易に得られる。上の表A及び表Bに記載の値から分かるように、光学性能はPEN系フィルムと同様である。
光学フィルム2.3:1軸コリメートフィルム、275のミクロ層×1パケット
強いs偏光反射フィルムを、275層だけで作製することができる。屈折率がnx=1.82、ny=1.62、及びnz=1.505である高屈折率層、及び屈折率が1.505である低屈折率層、275層、並びに拘束1軸延伸を用いて、表A及び表Bに挙げられている性能値を得ることができる。T60P/T00の全ての比率は1.0にほぼ等しい、即ち、p偏光に対する反射率は角度と共に増加しないことに留意されたい。T60S/T00の比率は、表Bのあらゆる例の中で最も低い。このモデル化例は、光学フィルム3.4と同様である。
光学フィルム3.1:2軸コリメートフィルム、275のミクロ層×2パケット(III)
光学フィルム3.1を作製するプロセスにおいて、低屈折率ポリマーと高屈折率ポリマーが交互に存在する多層構造のキャストウェブを、オフラインバッチフィルム延伸装置上でのその後の2軸延伸のために、冷却されたキャスティングホイールの上に押出した。オフライン装置の上での延伸後に光学フィルムが望ましい光学特性を有するのを確実にするために、正確な層厚さの値をもたらすのに必要な押出プロセスの条件を、以下の方法によって探求した。
フィードブロック法(例えば、米国特許第6,783,349号(Neavinら)を参照されたい)を用いて、275の屈折率ポリマー材料と高屈折率ポリマー材料の交互層の2つの同様のパケットを共押し出しした後、この2つの層のパケットを接合することによって、低屈折率ポリマーと高屈折率ポリマーの交互層の反射偏光子を作製するためのキャストウェブを作製した。275層パケットのそれぞれに関し、90/10 coPEN(90%のエチレンナフタレート繰り返し単位及び10%エチレンテレフタレート繰り返し単位を含有するコポリエステル)を用いて高屈折率層を作製した。押出成形機の中で55重量%のPETg GN071(Eastman Chemicalsから入手可能)と45重量%の90/10 coPENの混合物を混ぜ合わせて、低屈折率層を作製した。共押出プロセスの間に、低屈折率材料の15%を溶融トレインから転用して、保護境界層を形成した(275層押出品の各側に7.5%)。100% PETg GN071の表面薄層を、押出ダイの直前の位置に、総溶融流れの24%の割合で(フィルムの各側に12%)溶融流れに適用した。
次に、予備的なキャストウェブを、標準的なフィルムの製造テンターで延伸した。キャストウェブをテンターの中で約157℃で18秒間予熱した。次に、フィルムを、154℃でx軸に沿って、約60%/秒の初期速度で4.5秒、続いて約15%/秒の速度で18秒延伸した。x方向の合計の全延伸率は約5.5:1であった。次に、フィルムを、幅の約1%を引っ張りながら、227℃で18秒間熱処理した。
層の各パケットの低及び高屈折率材料の相対押出速度は、完成したフィルムの隣接する材料層が、それぞれほぼ同じ光学的な厚さを有するように調整された。記載の材料、キャスティング速度、及び延伸条件は、約n1x=1.82、n1y=1.62、n1z=1.505及びn2=1.595の一連の屈折率をもたらし、各パケットの最も薄い層の約425nmの反射から、べき法則分布で単調に厚さが増加して、最も厚い層で約1150nmの光を反射するように回転されるブロック軸に関して、低及び高屈折率層の両方が1/4波長の光学的な厚さを有するように意図された。押出成形キャスティングホイル速度は、得られた反射帯域がこの波長範囲に及ぶように調整された。べき法則分布の形状は、結果として得られるスペクトルが、各パケット毎のスペクトルの大部分にわたって比較的平坦となるように選択された。スペクトル形状は、米国特許第6,783,349号(Neavinら)に概説されている軸線ロッドの技術を用いて微調整された。最終的な延伸フィルムにおいて、表面薄層の厚さは、それぞれ約11マイクロメートルであった。最終的なフィルムの合計厚さは、厚さ約90マイクロメートルであった。
2軸延伸フィルムは、前記のフィルムとほぼ同じスペクトルにわたって反射する必要がある。しかしながら、2:1又は3:1といった比率だけy方向に延伸される一方、上述のx方向への延伸を用いる場合には、同じ2:1又は3:1だけ厚くする必要がある。この例では、次にキャスティングホイールを2.5:1といった比率だけ減速させて、上述の予備的なキャストウェブと比べて、キャストウェブをこの比率だけ厚くした。
2.5倍厚いキャストウェブを、隣接する辺が127mm×254mmである矩形片に切断した。次に、この片をKaro IVフィルム延伸機(Brueckner of Siegsdorf,Germanyから購入)上で延伸した。キャストウェブを、まず135℃で90秒予熱し、その後短軸及び長軸の両方に沿って、短軸で50%/秒の速度を用いて同時に延伸した。延伸プロセスは、長軸の延伸が短軸よりも2.5/5.5倍遅い速度で行われるように両軸で同時に開始及び停止する。次に、フィルムを230℃で30秒間熱処理した。プログラムされた延伸率は、12.7及び25.4mmの方向にそれぞれ5.5×2.5であり、ほぼ正方形の形状で、寸法が620mm×600mmである最終フィルム試料を得た。この機械は、試料の各側に5個のみのクリップを有し、各片の長い縁部上の各クリップでフィルムのかなりのネックイン(neck-in)が生じ、短い側に沿っていくらかのネックインが生じた。これにより、実際の延伸率は4.8×2.7となった。この実際の延伸率は、マジックインキでキャストウェブ上に格子をマークした後、この格子の膨張を測定することによって測定された。LCDテレビパネルに対する後の測定のために、325mm×425mmの部分寸法を得た。フィルム厚さは、この試料領域にわたって約+/−10%まで均一化された。最も極端なキャリパー変化を示した領域を切り取り、キャリパー変化が約+/−5%である小部分を後の測定で使用した。
Glan−Thompson偏光プリズムが取り付けられたダイオードアレイ分光光度計を使用して、垂直入射及び60度入射角におけるブロック軸及び通過軸の両方に対する偏光透過スペクトルを、最も厚い部分の1つから得た。垂直入射におけるブロック(曲線2012)及び通過(曲線2010)軸スペクトルが図20aにプロットされている。ブロック軸及び通過軸の赤色帯域端部(red bandedge)は、およそ1160nm及び1100nmである。ブロック軸の左帯域端部は、図から約445nmであることが明らかに分かる。このフィルムは垂直入射のいくらかの青色光を透過し、後の測定用の少なくとも425nm以下の左帯域端部を有するわずかに薄いフィルムのために、こうした部分は退けられた。
フィルムのs偏光(曲線2022)及びp偏光(曲線2020)スペクトルに関する空気中での60度における透過率測定値が、図20bに示されている。後に、同じフィルムを、屈折率整合流体を有するBK−7ガラス(633nmにおけるnd=1.517及びn≒1.515)の90度プリズムの間に積層して、対角線にフィルムを備える立方体を形成した。p偏光通過軸スペクトルを浸漬屈折率(immersion index)1.517で45度で測定することができるように、フィルムを回転延伸した。このスペクトもまた、図20bに曲線2024としてプロットされている。プリズムの中のフィルムに対する45度の角度は、空気中からは90度を超え、また屈折率1.2のフィルムの中の約63度と等しい。
空気中における通過軸60度s偏光及びp偏光スペクトルの赤色帯域端部は、それぞれ、およそ970nm及び920nmであり、BK7ガラス立方体の中の45度でのp偏光スペクトルは790nmである。400nmからその赤色帯域端部(ブロック軸スペクトルに関しては450からRBE)までの各スペクトルの平均透過率は次の通りである:ブロック=12%、通過=62%、Ts偏光60=33%、Tp偏光60=37%、Tp偏光45−プリズム=12.3%。空気境界面からの反射を差し引いて、表面薄層が屈折率1.564だと知ることができる。式は、T内部=1−(1−R−(1+R)*T)/(1−R−2*R*T)であり、式中、Rは2つのフィルム表面のそれぞれにおける反射率であり、Tはフィルムの測定全透過率である。計算値は、Tブロック=12%、T00=66%、及びT60空気s偏光=39%、及びT60空気p偏光=37%である。ガラスプリズムでは、各面の表面反射は4.2%であり、17.5%に等しいフィルムの計算内部透過率、又はR内部=82.5%をもたらす。光学フィルム3.1のこうした特性を次の表にまとめる。
バッチプロセスで不均一が原因で更に薄く延伸されたこのフィルムの一部は、全ての測定についてわずかに高い反射率を示し、また当然ながら低い赤色帯域端部を示した。例えば、フィルムの大部分は、ブロック軸に関して1100nmの赤色帯域端部を示し、平均%Tはたったの10%であり、32%と低いT60p偏光の値が測定された。これらに比べて、RBEが1060nmである上記フィルムでは、12%及び38%である。フィルムを市販のフィルムラインの上で連続様式で延伸することによって、延伸状態における改善された均一性、ひいては改善されたキャリパー及び反射値を達成することができる。
光学フィルム3.2:2軸コリメートフィルム、275のミクロ層×2つのパケット(IV)
このフィルム試料は、キャスティングホイール速度を25%だけ増加させてフィルムを20%薄くしたことを除いて、光学フィルム3.1と同じ様式で作製された。その結果、赤色帯域端部の全ては約20%減少した。こうした薄いフィルムを、より厚いキャストウェブよりも均一に、Karo IVの上で更に延伸し、その結果、ブロック軸に関するRBEはフィルム領域の大部分にわたって約875nm〜925nmとなった。これらのフィルムは、低屈折率層を超高角度で伝播する赤色及び黄色光線を透過し始める。このフィルムのスペクトルは全て、光学フィルム3.1のものと同様の平均透過レベルを有する。
紫外線に向けてシフトさせるだけではなく、層厚さプロファイルを変更することによって反射帯域が圧縮された場合には、透過率値は、光学フィルム3.1の透過率値と比べて低減された可能性がある。
光学フィルム3.3:2軸コリメートフィルム、275のミクロ層×2つのパケット(V)
光学フィルム3.3を作製するプロセスにおいて、低屈折率ポリマーと高屈折率ポリマーが交互に存在する多層構造のキャストウェブを、逐次的フィルム延伸ライン上でのインライン2軸延伸のために、冷却されたキャスティングホイールの上に押出した。フィードブロック法(例えば、米国特許第6,783,349号(Neavinら)を参照されたい)を用いて、275の屈折率ポリマー材料と高屈折率ポリマー材料の交互層のキャストウェブを共押し出しした後、このキャストウェブを、まず長さ延伸機(LO)で、次にテンターで延伸することによって、低屈折率ポリマーと高屈折率ポリマーの交互層の反射偏光子を作製した。90/10 coPEN(90%のエチレンナフタレート繰り返し単位及び10%エチレンテレフタレート繰り返し単位を含有するコポリエステル)を用いて高屈折率層を作製した。押出成形機の中で55重量%のPETg GN071(Eastman Chemicalsから入手可能)と45重量%の90/10 coPENの混合物を混ぜ合わせて、低屈折率層を作製した。共押出プロセスの間に、低屈折率材料の15%を溶融トレインから転用して、保護境界層を形成した(275層押出品の各側に7.5%)。90/10 coPENの表面薄層を、押出ダイの直前の位置に、総溶融流れの20%の割合で(フィルムの各側に10%)溶融流れに適用した。フィルムの高屈折率層の目標屈折率は、nx=1.79、ny=1.675、nz=1.505であった。こうした屈折率の発現は、フィルム非対称延伸を必要とする。
長さの延伸では、LO予熱ローラーを102℃に加熱する。延伸ギャップ直前の最終加熱は、石英ランプを使用して適用される。実際の延伸温度は、このプロセスにより達成されるcoPENの屈折率に関して以外は、測定可能でない。IRランプを調整すると同時に、nx=1.793、ny=1.671、nz=1.502の屈折率が表面薄層上で測定されるまでテンター条件を調整した。LOの全延伸率は2.7:1であり、全テンター延伸率は4.5:1であった。
LOされたフィルムをテンターの中で約140℃で13秒間予熱した。次に、フィルムを、132℃で約50%/秒の初期速度で延伸した。次に、フィルムを、幅の約2%を引っ張りながら、232℃で13秒間熱処理した。
層の各パケットの低及び高屈折率材料の相対押出速度は、完成したフィルムの隣接する材料層が、それぞれほぼ同じ光学的な厚さを有するように調整された。低及び高屈折率材料の両方の押出速度は、層の両方の組がそれぞれ、フィルムの最も薄い層の約425nmの反射から、べき法則分布で単調に厚さが増加して、最も厚い層で約1200nmの光を反射するように回転されるブロック軸に関して、低及び高屈折率層が約1/4波長の光学的な厚さを有するように調整された。押出成形キャスティングホイール速度は、得られた反射帯域がこの波長範囲に及ぶように調整された。べき法則分布の形状は、結果として得られるスペクトルが、各パケット毎のスペクトルの大部分にわたって比較的平坦となるように選択された。スペクトル形状は、米国特許第6,783,349号(Neavinら)に概説されている軸線ロッドの技術を用いて微調整された。最終的な延伸フィルムにおいて、表面薄層の厚さは、それぞれ約6マイクロメートルであった。最終的なフィルムの合計厚さは、厚さ約45マイクロメートルであった。次に、この方法で作製された結果として得られた2枚のフィルムを、透明な光学接着剤を使用して積層した。積層体の中の2枚のフィルムの通過軸は平行であった。透過スペクトルを、ダイオードアレイ分光光度計を使用して垂直及び60度で測定した。こうしたスペクトルから赤色帯域端部及び%透過率値を決定し、下の表に記載する。T(θ=60air p偏光)/Tpass(0)の比率は、光学フィルム3.1よりも低い。
光学フィルム3.4:1軸コリメートフィルム(s偏光)、275のミクロ層
低屈折率ポリマーと高屈折率ポリマーが交互に存在する多層構造のキャストウェブを、フィルムライン上でのインラインテンター延伸のために、冷却されたキャスティングホイールの上に押出した。フィードブロック法(例えば、米国特許第6,783,349号(Neavinら)を参照されたい)を用いて、275の屈折率ポリマー材料と高屈折率ポリマー材料の交互層のキャストウェブを共押し出しした後、このキャストウェブを、まず長さ延伸機(LO)で、次にテンターで延伸することによって、低屈折率ポリマーと高屈折率ポリマーの交互層の反射偏光子を作製するためのキャストウェブを作製した。高屈折率層を90/10 coPEN(10%PET)を用いて作製した。EcdelポリマーFN007(Eastman Chemicalsより入手可能)を使用して低屈折率層を作製した。共押出プロセスの間に、低屈折率材料の15%を溶融トレインから転用して、保護境界層を形成した(275層押出品の各側に7.5%)。PETg 14285(Eastman Chemicalsより入手可能)の表面薄層を、押出ダイの直前の位置に、フィルムの各側に約8マイクロメートルの厚さの最終表面薄層を提供する割合で、溶融流れに適用した。フィルムの高屈折率層の目標屈折率は、nx=1.82、ny=1.62、nz=1.51であった。633nmにおけるEcdelの屈折率は約1.505であり、PETgの屈折率は約1.564である。
層の各パケットの低及び高屈折率材料の相対押出速度は、完成したフィルムの隣接する材料層が、それぞれほぼ同じ光学的な厚さを有するように調整された。低及び高屈折率材料の両方の押出速度は、層の両方の組がそれぞれ、フィルムの最も薄い層の約400nmの反射から、べき法則分布で単調に厚さが増加して、最も厚い層で約950nmの光を反射するように回転されるブロック軸に関して約1/4波長の光学的な厚さを有するように調整された。押出成形キャスティングホイール速度は、得られた反射帯域がこの波長範囲に及ぶように調整された。べき法則分布の形状は、結果として得られるスペクトルが、各パケット毎のスペクトルの大部分にわたって比較的平坦となるように選択された。スペクトル形状は、米国特許第6,783,349号(Neavinら)に概説されている軸線ロッドの技術を用いて微調整された。最終的な延伸フィルムにおいて、表面薄層の厚さは、それぞれ約6マイクロメートルであった。最終的なフィルムの合計厚さは、厚さ約45マイクロメートルであった。
キャストウェブを、標準的なフィルムの製造テンターで延伸した。キャストウェブをテンターの中で約144℃で20秒間予熱した。次に、フィルムを、144℃で約50%/秒の初期速度で延伸した。x方向の合計の全延伸率は約5.5:1であった。次に、フィルムを、幅の約1%を引っ張りながら、227℃で約20秒間熱処理した。
得られたフィルムのブロック(曲線2116)、通過(曲線2112)、s偏光60(曲線2114)、及びp偏光60(曲線2110)スペクトルが、図21にプロットされている。プロットされた反射帯域内の長波長帯域端部(赤色帯域端部又はRBE)及び平均透過率を下の表に記載する。この光学フィルム3.4に関するTs偏光(θ=60度air中)/Tpass(0)の比率は0.29である。
構造体1.1:積層されたLCDパネル/エアガイド
光学フィルム3.1〜3.4を、それぞれSamsung LCDテレビパネルに積層した。パネルは、Samsungから市販のTVセット(型番:LN32B360C5D)から入手し、32”(81.3cm)の対角寸法を有した。実験では、32”(81.3cm)パネルの一部だけを、パネル後方の200mm×400mmバックライトで照明した。
このバックライト2210の概略側面図が図22に示されている。図中、寸法(ミリメートル単位)が括弧の中に提供されている。白色LED及び放射物状の反射体を備えた光エンジン(アイテム2234参照)が、中空キャビティの左側に取り付けられている。光エンジン及びキャビティの内部は、特記されない限りESR(3M Companyから入手可能)で裏打ちされている。中空キャビティ2232は、深さ17mm、幅200mm、及び長さ400mmである。20個の冷白色white Rebel LED(Philips Lumileds Lighting Company(San Jose,California,USA)から入手可能)を、左縁部(200mmの縁部)に沿ってメタルコア印刷回路基板(MCPCB)上に9.8mmのピッチの直線配列で配置した後、温度管理のために押出アルミニウムヒートシンクに取り付けた。
視角の関数としてのバックライト中央部の輝度、軸方向の輝度(ニトの単位)、輝度半値角、及びコントラスト比を、Autronic Conoscope Conostage 3(Autronic−Melchers GmbH,Karlsruhe(Germany)より入手可能)を使用して測定した。
全ての実験例において、反射偏光子は、それらのブロック軸がバックライトの400mm縁部と平行になるように配置された。フィルムは、図22の概略図に従ってテレビパネルに積層された。図中、アイテム2212は液晶パネルであり、2214は光学接着剤であり、2216は試験される多層光学フィルムであり、2218は光学接着剤であり、2220はPETの層であり、2222はULI材料の層であり、2224は光学接着剤であり、2226はポリカーボネートフィルムであり、2228は、ビーズ状の利得拡散体フィルムと同様のビーズコーティングである。
浸漬していないフィルムシステムを使用した、テレビ性能を比較するための対照試料として、テレビの輝度及びコントラストを、まずこのSamsungテレビパネルに関してバックライトを使用して測定したが、パネルとフィルムスタックとの間に空隙は存在していなかった。剛性のために、フィルムスタックを、図22でパネル2212が描かれている場所にある透明なポリカーボネートシートに積層した。次に、テレビパネルを透明なポリカーボネートシートの上方約1mmに位置付けた。テレビの輝度及びコントラストを、Autronics社の機器によって、0〜360度の全方位角における80度に達する全極角に対して得た。偏光フィルムの2つの主軸(ブロック軸及び通過軸)に沿ってテレビを出射する光の輝度及びコントラストをプロットすることにより、このデータをまとめることができる。反射偏光子の通過軸は、いうまでもなく、テレビパネルの隣接する吸収偏光子の通過軸と整列される。
実質的に通過軸p偏光のみが、テレビの通過軸と垂直軸の入射面に入射するので、このデータは、p偏光の輝度及びコントラストとしてプロットされる。同様に、通過軸s偏光のみが、テレビのブロック軸と垂直軸の入射面に入射するので、このデータは、s偏光の輝度及びコントラストとしてプロットされる。以下に示すデータによって示されるように、テレビの輝度及びコントラストは、角度と偏光子帯域幅の値の関数としてのs偏光及びp偏光の反射偏光子の透過特性による影響を大きく受ける。帯域幅は、長波長帯域端部、又は赤色帯域端部(RBE)に関して記載された値によって表わされる。
対照試料に用いられる反射偏光フィルムは、s偏光コリメーティングフィルムとも呼ばれる光学フィルム3.4であった。2つの主軸に関するテレビの輝度及びコントラスト(s偏光(曲線2310、2316)及びp偏光(曲線2312、2318)を表わす)が、それぞれ図23a及び図23bにプロットされている。輝度単位は単に相対的なものであり、本明細書に記載の様々な試料を比較するために用いられる。輝度半値視角は、輝度が軸上(0度)で測定される輝度値の半分まで減少する極角であると定義され得る。この視角は、典型的には、ブロック軸及び通過軸によって異なる。
コントラストデータは、「オフ」又は「暗」状態のパネル輝度で除された「オン」又は「白」状態のテレビの輝度の比率である。テレビパネルに入射する高角度の光は、LCDパネル内の様々な画素素子によるこの光の散乱に起因して、テレビパネルのコントラストを低下させることは既知である。光散乱は、典型的には垂直入射で入射する光に対して最も小さい。このため、高角度でLCDパネルに入射する光の量を制限するのが望ましい。拡散体とテレビパネルとの間の空隙が排除される場合、光は、空気から入射され得る角度よりも大きな角度でパネルに注入され得るので、パネルのコントラストを著しく低下させる。本明細書に記載のフィルムは、超低屈折率フィルム層と組み合わされて、こうした極端な角度でパネルに入射する光の量を低減するように設計される。
空気中で使用するように設計された光学フィルム3.4が、このフィルムスタックを図22に示されるテレビパネルに積層することによって浸漬されると、輝度及びコントラストの両方が実質的に低下する。このことは、図23c(輝度)及び図23d(コントラスト)にプロットされている測定値から明らかである。これらの図中、曲線2320はULIがある場合のs偏光を表し、曲線2322はULIがある場合のp偏光を表し、曲線2324はULIがない場合のp偏光を表し、曲線2326はULIがない場合のs偏光を表し、曲線2330はULIがある場合のp偏光を表し、曲線2332はULIがある場合のs偏光を表し、曲線2334はULIがない場合のp偏光を表し、曲線2336はULIがない場合のs偏光を表す。低屈折率層なしにフィルムが適用されると、輝度及びコントラストが更に実質的に減少することにも留意すべきである。しかしながら、低屈折率層は、TIR機構によって高角度の光の全てをブロックできない。56.4度〜90度の角度で屈折率1.2の層を伝播する光は空気から入射することはできないが、低屈折率層によってTIRされない。この角度範囲(即ち、先に言及された「ギャップ」範囲)の光は、こうした角度の通過軸の光に対する高反射率を有するように設計される場合、反射偏光子によって実質的に反射され得る。
光学フィルム3.3は、4種類のフィルム3.1〜3.4の中で最も広い帯域幅を有し、また高角度におけるs偏光及びp偏光反射率の最も高い平均値も有する。光学フィルム3.3が上記と同じ様式でLCDパネルに積層される場合、テレビの輝度及びコントラストは、空隙を有する構造体からわずかに低下するだけである。このことは、図23e(輝度)及び23f(コントラスト)にプロットされているデータから明らかである。図中、曲線2340はULIがある場合のp偏光を表し、曲線2342はULIがある場合のs偏光を表し、曲線2344はULIがない場合のp偏光を表し、曲線2346はULIがない場合のs偏光を表し、曲線2350はULIがある場合のp偏光を表し、曲線2352はULIがある場合のs偏光を表し、曲線2354はULIがない場合のs偏光を表し、曲線2356はULIがない場合のp偏光を表す。
負の角度と正の角度の対比に関する輝度データの非対称は、これらの測定に使用したバックライトの性質によるものと考えられる。全てのLEDは1つの縁部に沿って設置され、光を高角度で注入するように方向付けられる。フィルムの底面のビーズコーティングは、光の指向性をランダム化するように意図されているが、十分ではない。しかしながら、コントラストは本質的に方向と無関係であることに留意されたい。非対称は、低屈折率層なしに積層された例に関して非常に顕著であるので、低屈折率層とこうしたフィルムの組み合わせの大きな利益を示している。
光学フィルム3.1は、光学フィルム3.3よりもわずかに低いRBEを有する。光学フィルム3.1の平均帯域端部は、光学フィルム3.3の1200nmと比べてたったの約1130nmであった。光学フィルム3.1をLCDパネルに積層する場合、コントラストは光学フィルム3.3と比べてわずかに低くなる。しかしながら、輝度は改善される。これは、フィルム3.3と比べてフィルム3.1のブロック状態の透過率が低いことに起因し得る。上記の通り、平均RBE及びTブロックは共に、フィルム領域のほとんどに関して、フィルムの単一点でとられた1組のスペクトルから単純に報告された数字よりも低い。Tブロックの値が低いことは、特にT通過も同様に低い場合に輝度にとって重要である。これらのシステムを用いた程度の大きな光リサイクリングは、1回通過(one-pass)透過測定と比べて損失を何倍も増大させ得る。コントラスト及び輝度結果は、図23g(輝度)及び図23h(コントラスト)に示されている。図中、曲線2360はULIがある場合のp偏光を表し、曲線2362はULIがある場合のs偏光を表し、曲線2364はULIがない場合のp偏光を表し、曲線2366はULIがない場合のs偏光を表し、曲線2370はULIがある場合のs偏光を表し、曲線2372はULIがある場合のp偏光を表し、曲線2374はULIがない場合のs偏光を表し、曲線2376はULIがない場合のp偏光を表す。
光学フィルム3.2は、光学フィルム3.1と同じプロセス及び材料で作製されたが、反射帯域を意図的にシフトさせた。RBEは青色に向けてシフトされ、高角度で入射する光の反射効果を低下させた。その結果、光学フィルム3.1が光学フィルム3.2で置き換えられると、とりわけ低屈折率層が省かれた場合に、テレビパネルの輝度及びコントラストの両方が低減する。これらのデータは、図23i(輝度)及び図23j(コントラスト)にプロットされている。図中、曲線2380はULIがある場合のp偏光を表し、曲線2382はULIがある場合のs偏光を表し、曲線2384はULIがない場合のp偏光を表し、曲線2386はULIがない場合のs偏光を表し、曲線2390はULIがある場合のs偏光を表し、曲線2392はULIがある場合のp偏光を表し、曲線2394はULIがない場合のs偏光を表し、曲線2396はULIがない場合のp偏光を表す。
フィルム3.1〜3.4のそれぞれに関するフィルムパラメータのいくつかを、各構造に関する対応の輝度及びコントラストと共に下の表Cに記載する。T60s/T(0)及びT60p/T(0)値は、60度及び0度における空気中での測定値を指し、内部透過率値を報告するために補正されている。これらの値は、各例に関連した表から取り出される。結果は、測定されたTVコントラストに従って順番に記載されている。
RBEがたった900nmである光学フィルム3.2が、RBEが970nmである光学フィルム3.3よりも高い輝度及びコントラストの両方をもたらすという事実は、高角度におけるRBE及び反射率の両方が重要なパラメータであることを示している。
RBE値及びT60/T(0)比率の複合効果を更に理解するために、コントラスト値(曲線2410)、RBE*T(0)/T60の積(曲線2412)、及び相対輝度*T(0)/T60(曲線2414)の全てを、フィルム試料(Aは光学フィルム3.1を表し、Bは光学フィルム3.2を表し、Cは光学フィルム3.3を表し、Dは光学フィルム3.4を表す)と対比させて、コントラストの低い順に図24にプロットされる。輝度は、単に情報をプロットする上の便宜のために係数10でスケーリングされる。これらパラメータのほぼ平行な傾向は、高角度の光に対する高いRBE及び高い反射率が、LCDパネルの高いコントラスト及び輝度を維持する上で重要であることを示している。
考察:
浸漬した反射偏光フィルムを有し、超低屈折率層を有さない積層体
伝播角の増加に伴う反射帯域のより低い波長へのシフトは、フィルムがより高い屈折率の媒体に浸漬された場合に非常に大きくなる。例えば、米国特許出願公開第2008/0037127号(Weber)、「Wide Angle Mirror System」には、ミラーの全ての層のz屈折率が、浸漬媒体の屈折率に近づくと、RBEはp偏光の高角度において約0nmにシフトすることが指摘されている。この潜在的に無限の帯域シフトは、それ故、高角度の光線をブロックするために非常に低屈折率のTIR層の使用を必要とする。s偏光反射光学フィルム3.4は、両方の層のz屈折率が屈折率1.505を有する1つの例である。このフィルムが、n≒1.49である標準的接着剤を使用して標準的な拡散体とテレビパネルとの間に浸漬される場合には、反射帯域の劇的な移動により、大量の光を高角度で透過させるのが可能になる。しかしながら、低屈折率層のみが、例えば1.58の屈折率を有するものに偏光された場合には、入射角に伴うRBEのシフトは、大幅に減少する。高屈折率層を変更する必要はなく、実際には、フィルムが広角偏光子として機能する場合には、また、p偏光が高角度で反射される場合には、低屈折率層よりもはるかに低いz屈折率が必要となる。
ほとんどのブロック軸光及びp偏光通過軸光を高角度で反射するように設計された反射偏光子は、入射角の変化に伴う非常に大きな帯域シフトを示さない。帯域シフトは、本明細書で論じられるフィルム及び浸漬屈折率に関して有限であり、実際に、超低屈折率層が光を最高角度で反射するのに必要な程度まで、偏光子の帯域幅を伸ばす妥当な数の層を加えることによって補償され得る。一方で、p偏光通過軸光を透過し、s偏光通過軸光を実質的に反射するように設計された多層複屈折反射偏光子は、一般に、高屈折率媒体に浸漬されたときに超低屈折率層が機能するのを必要とする。
実施例NU−1:超低屈折率層を有さない浸漬したフィルム
反射偏光子の屈折率セットが、「高い」屈折率の層に関して(nx=1.80、ny=1.67、nz=1.505)、「低い」屈折率の層に関してn=1.585である場合、フィルムが屈折率1.49に浸漬される場合、p偏光の右側帯域は約600nm未満に低下しない。これらフィルムの屈折率は、非常に高いPEN含有量、例えば95% PEN以上を有するPEN又はcoPENフィルムの非対称2軸延伸及び熱処理によって得ることができる。ブロック軸方向と通過軸方向の延伸比率は約2:1であり得るが、nx対nyの屈折率を最適化するために、この比率を容易に変更することが可能である。低屈折率材料は、例えば、PETgとcoPENとの配合物を使用して作製され得る。全てのs偏光可視光線は反射され、650nm未満のp偏光は、最大約77度の角度で反射される。
この実施例に関して上記に列挙された推奨屈折率及び材料を用いて、低及び高屈折率材料の550の交互層の連続的に勾配が付けられているスタックを、400nmから少なくとも1800nmの波長に対して高反射率となる偏光子をもたらすように設計することができる。あるいは、例えば、400〜900nm及び850〜1800nmを反射するように設計された2枚のフィルムを積層又は共押出して、通常の接着接合フィルムに浸漬され得る超広帯域の反射偏光子を形成することができる。典型的なLCDパネル及びバックライト構成要素の最も低い屈折率は、一般に接着剤層中に存在する。多くの接着剤は、1.48又は1.49に近い屈折率を有する。シリコーン系接着剤などの一部のものは、更に低い場合がある。このフィルムがその中に浸漬され得る拡散板、ライトガイド、及び拡散体コーティング、並びに他の媒体は、1.49以上の屈折率を有する。浸漬スタックの中で屈折率の最も低い層が、実効浸漬定数を決定する。フィルム積層体の中の少なくとも1つの層は、1.49以下の屈折率を有する必要がある。
1800nmは、垂直入射における通過軸の赤色帯域端部として選択することができ、その理由は、かかる400nm〜1800nmの帯域幅は、PEN系ポリマーフィルムで約500層及びPET系フィルムで約1000〜2000層といった、実用的数の層で達成可能だからである。ほとんどの照明及び表示装置のバックライトは、波長がほとんどの場合650nm未満の可視光線を利用する。一部の赤色光は最高角度で漏出するが、80度を超えて入射する光の割合は、一般に低い。1600〜2000nmの帯域端部は、広範囲の用途でうまく機能する。
実施例NU−2:PETg/coPEN 90−10超広帯域の偏光子
実施例NU−1で記載された超広帯域幅を有し、かかる広帯域にわたって波長対透過率の許容可能な均一性を有する光学フィルムが作製可能であることを証明するために、次の2種類のフィルムを作製した後、光学接着剤で積層した。第1のフィルムは、約400nm〜900nmを反射し、第2のフィルムは約800nm〜1800nmを反射する。帯域端部は、一方のフィルムからもう一方へのスペクトルの移行重複部分を比較的滑らかにするために、段階的になるように設計された。フィルムは共に、米国特許第6,783,349号(Neavinら)に記載のようなフィードブロック法を用いて作製され、90/10のcoPEN(90% PEN/10% PET)とPETg(Eastman Chemicals,Tennesseeから入手可能)との275の交互層を有していた。第1のフィルムは、透過率及び帯域端部の傾斜の均一性に関して最適化され、帯域端部は約400及び900nmであった。押出成形キャスティングホイールを2倍に低速させて、400nm帯域端部を800nmまで移動させ、900nm帯域端部を1800nmまで移動させた。
2枚のフィルムの重複部分の波長範囲(通過軸で約800〜900nm)は、2枚のフィルムの間の干渉効果のせいでいくらかのスペクトル共鳴を呈したが、スペクトルは容認できる程度に滑らかであった。スペクトルで顕著に見られるこの共鳴及び他のスペクトルの非均一性は、透過光をわずかに着色させる。この色は、フィルムの出口側の中間拡散体(moderate diffuser)を用いることでマスクされ得る。この拡散体は、透過光を更にコリメートするためのプリズムアレイ又は他の表面構造の一部であり得る。
積層フィルムは、2枚の個別のフィルムの反射帯域のいくらかの重複部分を必要とし、したがって、1つの連続的に勾配が付けられている550層のスタックから作られる単一フィルムほど効率的でない。しかしながら、この手法は、連続的に勾配が付けられており、厚い介在層を有する1/4波長の厚さの550の交互層を生成することが可能なフィードブロックを作製するのは難しく、費用がかかるので、プロセスの観点から見てより簡単である。最も効率の悪い光学設計は、全波長範囲にわたって部分的に反射性である2枚以上のフィルムのスタックである。個別の反射体の間の非コヒーレント干渉効果は、上述のコヒーレントスタックと比べて、通過軸反射率を増加させ、ブロック軸反射率を減少させることになる。
s偏光及びp偏光に対するこの偏光子の高角度反射は、上の実施例NU−1ほど良好でない。このフィルムの(633nm)での屈折率セットは、高屈折率層で(nx=1.82、ny=1.62、nz=1.51)、低屈折率層はPETgでn=1.564であった。しかしながら、Δny及びΔnzは共に0.05より大きいことに留意されたい。通過軸は、垂直入射において400nm〜1000nmで約75%、及び1000nm〜1800nmで約80%の外部透過率を有した。ブロック軸は、垂直入射において400nm〜1000nmの光で約5%、及び1000nm〜1800nmの光で約8%の透過率を示した。これら透過率測定は共に、全ての実施例の場合と同様に、測定される軸と平行に配列された偏光を用いて行われた。
項目1は、可視波長を含む広範な波長領域にわたり角度及び偏光の関数として光を選択的に透過及び反射するように構成され、第1の偏光の可視光線を垂直に入射するための通過軸と、第2の偏光の可視光線を垂直に入射するためのブロック軸と、を画定し、更に第1の偏光の可視光線を圧縮された視野円錐の中に透過するように、入射角が斜めのときに反射率が高くなることによっても特徴付けられるミクロ層と;ミクロ層への大きく傾斜した光の伝播を制限する、又はかかる大きく傾斜した伝播光をミクロ層に向けて向け直すという方法でミクロ層に連結される、超低屈折率を有する光学的に厚い低屈折率層と;を備えるフィルム構造体である。
項目2は項目1の構造体であり、可視波長にわたって平均化された超低屈折率は、少なくとも1.1であるが1.3以下である。
項目3は項目2の構造体であり、可視波長にわたって平均化された超低屈折率は、少なくとも1.15であるが1.25以下である。
項目4は項目1の構造体であり、複数のミクロ層が、通過軸、ブロック軸、及び垂直軸を有し:複数のミクロ層が、通過軸と垂直軸とを含む通過平面に入射するp偏光のRPpass(θ)、通過平面に入射するs偏光のRSblock(θ)、ブロック軸と垂直軸とを含むブロック平面に入射するp偏光のRPblock(θ)、及びブロック平面に入射するs偏光のRSpass(θ)の伝播角度θの関数としての可視波長にわたる平均内部反射率を有し;Rblock(θ)が、RSblock(θ)とRPblock(θ)の平均であり、Rpass(θ)が、RSpass(θ)とRPpass(θ)の平均であり;複数のミクロ層が、通過平面に入射するp偏光のTPpass(θ)、通過平面に入射するs偏光のTSblock(θ)、ブロック平面に入射するp偏光のTPblock(θ)、及びブロック平面に入射するs偏光のTSpass(θ)、の伝播角度θの関数としての可視波長にわたる平均内部透過率を有し;Tblock(θ)が、TSblock(θ)とTPblock(θ)の平均であり、Tpass(θ)がTSpass(θ)とTPpass(θ)の平均である。
項目5は項目4の構造体であり、Tblock(0)は20%であり、Tpass(0)は40%〜80%の範囲内である。
項目6は項目5の構造体であり、Tblock(0)が10%未満であり、Tpass(0)が55%〜75%の範囲内である。
項目7は項目5の構造体であり、伝播角度θは、空気中で測定した場合の角度θairであり、Tpass(θair=60°)<0.85*Tpass(0)である。
項目8は項目7の構造体であり、Tpass(θair=60°)<0.75*Tpass(0)である。
項目9は項目5の構造体であり、伝播角度θは、光学的に厚い低屈折率層の中で測定した場合の角度θlow indexであり、Tpass(θlow index=90°)<0.6*Tpass(0)である。
項目10は項目9の構造体であり、Tpass(θlow index=90°)<0.3*Tpass(0)である。
項目11は項目1の構造体であり、複数のミクロ層は1000未満のミクロ層を含む。
項目12は項目1の構造体であり、第1及び第2の光学的に厚い層を更に備え、光学的に厚い低屈折率層及び複数のミクロ層は共に、第1の光学的に厚い層と第2の光学的に厚い層との間に配置されるように配列され;第1及び第2の光学的に厚い層は、光学的に厚い低屈折率層よりも高い屈折率を有する。
項目13は項目12の構造体であり、第1の光学的に厚い層はライトガイドを含む。
項目14は項目12の構造体であり、第1の光学的に厚い層は拡散層を含む。
項目15は項目12の構造体であり、第1の光学的に厚い層は表示パネルを含む。
項目16は、垂直入射の可視光線の反射偏光子として実質的に機能し、斜角の可視光線のミラーとして実質的に機能するように構成された多層光学フィルムと;多層光学フィルムに取り付けられた超低屈折率を有する光学的に厚い低屈折率層と、を備えるフィルム構造体である。
項目17は項目16の構造体であり、可視波長にわたって平均化された超低屈折率は、少なくとも1.1であるが1.3以下である。
項目18は項目17の構造体であり、可視波長にわたって平均化された超低屈折率は、少なくとも1.15であるが1.25以下である。
項目19は項目16の構造体であり、多層光学フィルムは、通過軸、ブロック軸、及び垂直軸を有し;多層光学フィルムは、通過軸と垂直軸とを含む通過平面に入射するp偏光のRPpass(θ)、通過平面に入射するs偏光のRSpass(θ)、ブロック軸と垂直軸とを含むブロック平面に入射するp偏光のRPblock(θ)、及びブロック平面に入射するs偏光のRSpass(θ)の伝播角度θの関数としての可視波長にわたる平均内部反射率を有し;Rblock(θ)はRSblock(θ)とRPblock(θ)の平均であり、Rpass(θ)はRSpass(θ)とRPpass(θ)の平均であり;多層光学フィルムは、通過平面に入射するp偏光のTPpass(θ)、通過平面に入射するs偏光のTSpass(θ)、ブロック平面に入射するp偏光のTPblock(θ)、及びブロック平面に入射するs偏光のTSblock(θ)の伝播角度θの関数としての可視波長にわたる平均内部透過率を有し;Tblock(θ)はTSblock(θ)とTPblock(θ)の平均であり、Tpass(θ)はTSpass(θ)とTPpass(θ)の平均である。
項目20は項目19の構造体であり、Tblock(0)は20%未満であり、Tpass(0)は40%〜80%の範囲内である。
項目21は、垂直入射の可視光線の反射偏光子として実質的に機能し、斜角の可視光線のミラーとして実質的に機能するように構成された多層光学フィルムを備えるフィルム構造体であり、RBE*Tpass(0)/Tpass(60)の値は1500よりも大きい。
項目22は、垂直入射の可視光線の反射偏光子として実質的に機能し、斜角の可視光線のミラーとして実質的に機能するように構成された多層光学フィルムを備えるフィルム構造体であり、多層光学フィルムは、層間の屈折率差Δnx、Δny、及びΔnzにより特徴付けられ、Δnx≧0.10、Δny≧0.05、及びΔnz≦−.05である。
項目23は項目22の構造体であり、更に、フィルムは赤色帯域端部(RBE)を有する反射帯域を呈し、RBEは、少なくとも1000nmの波長に配置される。
特に別段の指定がない限り、本明細書及び特許請求の範囲において使用する、数量、特性の測定値等を表す全ての数値は、「約」という語で修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、そうでない旨が指定されない限り、本明細書及び特許請求の範囲において記載された数値パラメータは、本出願の教示を利用する当業者が得ようと求める望ましい特性に応じて変化し得る、概算値である。均等論を「特許請求の範囲」の範疇に適用することを制限しようとする試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、記録された有効数字の桁数を考慮して、また通常の四捨五入を適用することによって解釈されるべきである。本発明の広範な範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似であるにもかかわらず、いかなる数値も本明細書で述べられる具体的な例で示される程度に、これらは妥当に可能な限り精確に報告される。しかしながら、いかなる数値も試験及び測定の限界に関連する誤差を含み得る。
本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく本発明の様々な改変及び変形が当業者には明らかであり、本発明が本明細書に記載された例示的な実施形態に限定されるものではないことは理解されるはずである。例えば、読者は、別段の指示がない限り、1つの開示された実施形態の特徴がその他全ての開示された実施形態にも適用され得ると仮定するべきである。また、本明細書において参照された全ての米国特許、公開特許出願、並びに他の特許及び非特許文書は、それらが上述の開示に矛盾しない範囲において、参照により組み込まれると理解すべきである。