JP2013227624A - 加工性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】加工性、特にプレス加工時の形状凍結性および全伸びに優れる高強度冷延鋼板を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:2.0〜4.0%、Ti:0.005〜0.06%、Nb:0.005〜0.08%およびAl:0.1%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを素材とし、一連の製造工程中、とくに連続焼鈍において、その昇温過程における700℃から下記式(1)にて定める鋼板温度T1(℃)までの温度域での平均昇温速度V1を0.3〜8℃/sとする。
記
T1=0.98TM ・・・(1)
ただし、TMは連続焼鈍での鋼板の最高到達温度(℃)であり、Ac1点以上Ac3点
未満の範囲である。
【選択図】図1
【解決手段】質量%で、C:0.05〜0.12%、Si:0.5%以下、Mn:2.0〜4.0%、Ti:0.005〜0.06%、Nb:0.005〜0.08%およびAl:0.1%以下を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを素材とし、一連の製造工程中、とくに連続焼鈍において、その昇温過程における700℃から下記式(1)にて定める鋼板温度T1(℃)までの温度域での平均昇温速度V1を0.3〜8℃/sとする。
記
T1=0.98TM ・・・(1)
ただし、TMは連続焼鈍での鋼板の最高到達温度(℃)であり、Ac1点以上Ac3点
未満の範囲である。
【選択図】図1
Description
本発明は、主としてシートフレーム等のシート部品やバンパー、インパクトビーム等の自動車部品に用いて好適な、加工性、特にプレス加工時の形状凍結性および全伸びに優れる高強度冷延鋼板の製造方法に関するものである。
軽量化による自動車の燃費向上および衝突安全性確保のため、従来にも増して高い強度を有する薄鋼板の必要性が高まりつつあり、引張強さが780MPa以上、あるいはさらに980MPa以上の鋼板の使用頻度が高まっている。このような高強度鋼板は自動車の骨格部品や補強部品として用いられ、これらの部品はプレス加工により製造されることが一般的である。
プレス加工時における割れを防止する観点から、高強度鋼板には高い全伸びが必要とされている。具体的には、780MPa級の強度の鋼板では22%以上、より望ましくは24%以上、980MPa級の強度の鋼板では15%以上、より望ましくは17%以上の全伸びElが望まれている。
同時に、加工後のスプリングバックによる形状不良を防止する観点、すなわち形状凍結性の要求から、降伏強さが低い低降伏比高強度冷延鋼板が望まれる場合も多い。すなわち、引張強さに対する降伏強さの比である降伏比が低い鋼板である。ただし、降伏強さあるいは降伏比は低ければ低いほどよいわけではなく、部品の塑性変形を防止するために一定値以上の降伏強さを確保する必要がある。
したがって、低降伏比高強度冷延鋼板には、一定値以上の引張強さと一定範囲の降伏強さが必要とされ、日本鉄鋼連盟規格では、980MPa級(板厚1.0〜3.2mm)の冷延鋼板について、降伏強さYS:590〜930MPa(降伏比YR:0.60〜0.95)と規定されている。近年では、より良好な形状凍結性を確保する観点から、降伏比が0.90以下、あるいはさらに0.85以下の鋼板も必要とされている。
このような低降伏比高強度冷延鋼板として、フェライトとマルテンサイトの2相からなるDP鋼板が適している。DP鋼板は、軟質のフェライト相(以下、α相ともいう)の中に硬質のマルテンサイト相が分散することで、高い強度と低い降伏比を実現している。しかしながら、高い強度と低い降伏比に加え、高い全伸びを同時に達成しようとすると、CやMnといった元素の添加量が高くなり溶接性の低下を招くという問題があった。
また、鋼中のSiの比率を高めることによっても、全伸びEl などの加工性が向上することが知られており、Si添加によって加工性を向上させている高強度鋼板も多い。ところが、鋼中のSiが増加すると鋼板表面に安定なSiO2が形成しやすくなり、化成処理性やめっき性が劣化する。これらを防止するために連続焼鈍で特別な処理を行う技術も提案されているが、設備コストの増加を招くなどの実用上の問題があった。
その他、たとえば特許文献1には、所定のPを添加するとともに、Ac1変態点(以下、単にAc1点という)から950℃の温度域の滞留時間とその後の冷却速度を規定することによる、延性および耐2次加工脆性の良好な低降伏比高張力薄鋼板の製造技術が開示されている。しかしながら、この技術では、780MPa以上の高い引張強さを得ようとすると鋼中へのP添加量を増やさざるをえず、十分な化成処理性が得られないという問題があった。
特許文献2には、Tiを含む所定成分を含有する鋼スラブを用い、TiとSの比率を制御するとともに、フェライト−オーステナイトの二相域に保持する連続焼鈍を行う際に、所定の冷却速度で冷却することによる製造技術が開示されている。しかしながら、この技術では、高強度鋼板を製造するには高いSi添加量が必要なため、やはり化成処理性に劣るという問題があった。
特許文献3には、加工性と形状凍結性の両立のため複合組織鋼板において集合組織を適正範囲とした鋼板が開示されている。しかしながら、実施例では全伸びElについては示されておらず、必ずしも所望の伸び特性が得られるとは考え難い。
特許文献4には、集合組織とr値を制御する低降伏比高強度冷延鋼板およびその製造技術が開示されている。しかしながら、この技術では、高強度と高い全伸びを達成するには高いSi含有量が必要となるため、やはり化成処理性が劣るという問題があった。
本発明は、上記問題を有利に解決するものであって、加工性、特にプレス加工時の形状凍結性および全伸びに優れ、さらには化成処理性や溶接性にも優れる高強度冷延鋼板の有利な製造方法を提供することを目的とする。
さて、発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
(a)溶接性および化成処理性の観点から、CやSiの添加量を低減させたフェライト−マルテンサイト2相鋼においても、Mnの添加量を高め、同時にTiおよびNbを添加することで、十分な強度を得ることができる。
これは、Siの添加量を低減し、Mnの添加量を高めることでAc1点が低下するとともに、TiおよびNbを添加することで再結晶温度が高温化するため、再結晶開始前にα/γ変態が起こるためと考えられる。また、TiとNbを添加することで、析出強化による強度向上も達成されるためと考えられる。
(b)上記した成分組成の鋼について、連続焼鈍時の特定温度域における昇温速度、冷却速度およびこれらの関係を最適に制御し、さらに連続焼鈍時の鋼板の最高到達温度をAc1点以上、Ac3点未満の範囲とすることで、高い全伸びおよび低降伏比を同時に実現することができる。
本発明は上記の知見に立脚するものである。
(a)溶接性および化成処理性の観点から、CやSiの添加量を低減させたフェライト−マルテンサイト2相鋼においても、Mnの添加量を高め、同時にTiおよびNbを添加することで、十分な強度を得ることができる。
これは、Siの添加量を低減し、Mnの添加量を高めることでAc1点が低下するとともに、TiおよびNbを添加することで再結晶温度が高温化するため、再結晶開始前にα/γ変態が起こるためと考えられる。また、TiとNbを添加することで、析出強化による強度向上も達成されるためと考えられる。
(b)上記した成分組成の鋼について、連続焼鈍時の特定温度域における昇温速度、冷却速度およびこれらの関係を最適に制御し、さらに連続焼鈍時の鋼板の最高到達温度をAc1点以上、Ac3点未満の範囲とすることで、高い全伸びおよび低降伏比を同時に実現することができる。
本発明は上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.質量%で、
C:0.05〜0.12%、
Si:0.5%以下、
Mn:2.0〜4.0%、
Ti:0.005〜0.06%、
Nb:0.005〜0.08%および
Al:0.1%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、熱間圧延し、酸洗後、冷間圧延し、ついで連続焼鈍を施してから調質圧延を施すことからなる冷延鋼板の製造方法において、
該連続焼鈍の昇温過程における700℃から下記式(1)にて定める鋼板温度T1(℃)までの温度域での平均昇温速度V1を0.3〜8℃/sとし、
該連続焼鈍における最高到達温度TMをAc1点以上Ac3点未満の範囲とすることを特徴とする加工性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法。
記
T1=0.98TM ・・・(1)
ただし、TMは連続焼鈍での鋼板の最高到達温度(℃)である。
1.質量%で、
C:0.05〜0.12%、
Si:0.5%以下、
Mn:2.0〜4.0%、
Ti:0.005〜0.06%、
Nb:0.005〜0.08%および
Al:0.1%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、熱間圧延し、酸洗後、冷間圧延し、ついで連続焼鈍を施してから調質圧延を施すことからなる冷延鋼板の製造方法において、
該連続焼鈍の昇温過程における700℃から下記式(1)にて定める鋼板温度T1(℃)までの温度域での平均昇温速度V1を0.3〜8℃/sとし、
該連続焼鈍における最高到達温度TMをAc1点以上Ac3点未満の範囲とすることを特徴とする加工性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法。
記
T1=0.98TM ・・・(1)
ただし、TMは連続焼鈍での鋼板の最高到達温度(℃)である。
2.前記連続焼鈍の昇温過程において、300℃から少なくとも650℃までの温度域での平均昇温速度V0を下記式(2)で定める範囲とすることを特徴とする前記1に記載の加工性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法。
記
2.0・V1 ≦ V0 ≦ 20・V1・・・(2)
記
2.0・V1 ≦ V0 ≦ 20・V1・・・(2)
3.前記連続焼鈍の冷却過程において、前記最高到達温度TMから前記鋼板温度T1までの温度域での平均冷却速度V2を下記式(3)で示される範囲とし、
700℃から少なくとも400℃までの温度域における平均冷却速度V3を10〜80℃/sとすることを特徴とする前記1または2に記載の加工性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法。
記
{0.5/(V1+0.3)}+0.3 ≦ V2 ≦ {3/(V1+1)}+0.7・・・(3)
700℃から少なくとも400℃までの温度域における平均冷却速度V3を10〜80℃/sとすることを特徴とする前記1または2に記載の加工性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法。
記
{0.5/(V1+0.3)}+0.3 ≦ V2 ≦ {3/(V1+1)}+0.7・・・(3)
4.前記鋼スラブが、さらに質量%で、
B:0.0005〜0.0030%、
Mo:0.05〜2%、
V:0.05〜0.5%および
Cr:0.01〜1%
のうちから選んだ一種または二種以上を含有することを特徴とする前記1乃至3のいずれかに記載の加工性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法。
B:0.0005〜0.0030%、
Mo:0.05〜2%、
V:0.05〜0.5%および
Cr:0.01〜1%
のうちから選んだ一種または二種以上を含有することを特徴とする前記1乃至3のいずれかに記載の加工性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法。
本発明よれば、加工性、特にプレス加工時の形状凍結性および全伸びに優れ、さらに化成処理性や溶接性にも優れる高強度冷延鋼板を製造することができる。
そして、本発明により製造される高強度冷延鋼板は、主としてシートフレーム等のシート部品やバンパー、インパクトビーム等の自動車部品の材料として好適である。
そして、本発明により製造される高強度冷延鋼板は、主としてシートフレーム等のシート部品やバンパー、インパクトビーム等の自動車部品の材料として好適である。
本発明で目標とする機械的特性は次の通りである。
引張強さTS:780MPa以上
降伏強さYS:TS 780MPa級 470〜740MPa
TS 980MPa級 590〜930MPa
ここで、降伏強さYSは0.2%耐力とする。
降伏比YR:0.60〜0.90、好ましくは0.60〜0.85
全伸びEl:TS 780MPa級 22%以上、好ましくは24%以上
TS 980MPa級 15%以上、好ましくは17%以上
引張強さTS:780MPa以上
降伏強さYS:TS 780MPa級 470〜740MPa
TS 980MPa級 590〜930MPa
ここで、降伏強さYSは0.2%耐力とする。
降伏比YR:0.60〜0.90、好ましくは0.60〜0.85
全伸びEl:TS 780MPa級 22%以上、好ましくは24%以上
TS 980MPa級 15%以上、好ましくは17%以上
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、各元素の含有量の単位は、特に断りがない限り質量%とする。
C:0.05〜0.12%
Cは、鋼中にマルテンサイトや残留オーステナイトを形成させて組織強化を図るために必須の添加元素である。Cの添加量を増加させることで強度と伸びの両方を向上させることが可能であるが、添加量が0.05%に満たないとこのような効果が発現しない。一方、添加量が多いと溶接部が脆くなり溶接強度が低下する。したがって、C量は0.05〜0.12%の範囲とする。
まず、成分組成を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、各元素の含有量の単位は、特に断りがない限り質量%とする。
C:0.05〜0.12%
Cは、鋼中にマルテンサイトや残留オーステナイトを形成させて組織強化を図るために必須の添加元素である。Cの添加量を増加させることで強度と伸びの両方を向上させることが可能であるが、添加量が0.05%に満たないとこのような効果が発現しない。一方、添加量が多いと溶接部が脆くなり溶接強度が低下する。したがって、C量は0.05〜0.12%の範囲とする。
Si:0.5%以下
Siの添加により強度と伸びを向上させることができる。フェライト−マルテンサイト2相鋼において、好ましくは0.1%以上のSi添加することで、固溶強化によりフェライト相が強化されるとともに、オーステナイト相(以下、γ相ともいう)中のC濃度が高まることで、マルテンサイト相が強化され高強度になるため、低降伏比が得られやすくなる。しかしながら、Si量が増加すると鋼板表面のSiO2形成量が増加し化成処理性が劣化する。Si量が0.5%以下であればこのような悪影響が小さく、設備コストの高い特別な設備を用いなくても化成処理性が良好な製品が得られる。また、Si量が高くなるとAc1点が高くなり、連続焼鈍中の再結晶がα単相域で完了するため、得られる強度が低下する。上記のような観点から、Si量は0.5%以下とする。なお、Si量が0.1%を下回ると強度が低下しやすいので、Si量は0.1%以上とすることが好ましい。
Siの添加により強度と伸びを向上させることができる。フェライト−マルテンサイト2相鋼において、好ましくは0.1%以上のSi添加することで、固溶強化によりフェライト相が強化されるとともに、オーステナイト相(以下、γ相ともいう)中のC濃度が高まることで、マルテンサイト相が強化され高強度になるため、低降伏比が得られやすくなる。しかしながら、Si量が増加すると鋼板表面のSiO2形成量が増加し化成処理性が劣化する。Si量が0.5%以下であればこのような悪影響が小さく、設備コストの高い特別な設備を用いなくても化成処理性が良好な製品が得られる。また、Si量が高くなるとAc1点が高くなり、連続焼鈍中の再結晶がα単相域で完了するため、得られる強度が低下する。上記のような観点から、Si量は0.5%以下とする。なお、Si量が0.1%を下回ると強度が低下しやすいので、Si量は0.1%以上とすることが好ましい。
Mn:2.0〜4.0%
Mnは鋼の焼入れ性を増す元素であり、添加量に応じてマルテンサイトの生成量を上げて強度を増加させる作用を有する。また、Mn量の増加に応じてAc1点が低下し、再結晶の完了以前にγ相への変態が開始するため、Si量の低減と同時に用いることで強度向上に寄与する。ここに、所望の強度を確保するために、Mn量は2.0%以上とする。一方、4.0%を超えて添加するとフェライト相の量が過少となり全伸びElが低下するだけでなく、溶接部の脆化を招くので、Mn量は4.0%以下とする。
Mnは鋼の焼入れ性を増す元素であり、添加量に応じてマルテンサイトの生成量を上げて強度を増加させる作用を有する。また、Mn量の増加に応じてAc1点が低下し、再結晶の完了以前にγ相への変態が開始するため、Si量の低減と同時に用いることで強度向上に寄与する。ここに、所望の強度を確保するために、Mn量は2.0%以上とする。一方、4.0%を超えて添加するとフェライト相の量が過少となり全伸びElが低下するだけでなく、溶接部の脆化を招くので、Mn量は4.0%以下とする。
Ti:0.005〜0.06%、Nb:0.005〜0.08%
Tiは、およそ1000℃以下で鋼中にTiC、TiNまたはTi(C,N)等の析出物を形成し、またNbは、およそ1000℃以下で鋼中にNbC、NbNまたはNb(C,N)等の析出物を形成し、析出強化に寄与する。さらに、TiおよびNbの添加は、再結晶の開始温度を高温化させる作用を有するので、これによる強度の向上にも寄与する。ただし、このような析出強化はフェライト−マルテンサイト2相組織のうち、フェライト相の強化への寄与が大きいため、TiおよびNb析出物量が過剰となると降伏比を増加させる原因となり、さらには伸びや穴広げ性の劣化を招く。したがって、TiとNbの添加量を適正に制御することが重要である。
Tiは、およそ1000℃以下で鋼中にTiC、TiNまたはTi(C,N)等の析出物を形成し、またNbは、およそ1000℃以下で鋼中にNbC、NbNまたはNb(C,N)等の析出物を形成し、析出強化に寄与する。さらに、TiおよびNbの添加は、再結晶の開始温度を高温化させる作用を有するので、これによる強度の向上にも寄与する。ただし、このような析出強化はフェライト−マルテンサイト2相組織のうち、フェライト相の強化への寄与が大きいため、TiおよびNb析出物量が過剰となると降伏比を増加させる原因となり、さらには伸びや穴広げ性の劣化を招く。したがって、TiとNbの添加量を適正に制御することが重要である。
本発明においては、このような析出温度と析出形態が異なるTiとNbを複合的に添加することで、加工性の確保と高強度化を同時に実現でき、このような作用を得るためには、Ti:0.005〜0.06%、Nb:0.005〜0.08%の範囲とする必要がある。なお、含有量がこれらを下回ると必要な強度が得られず、一方これらを上回ると降伏比および全伸びに悪影響を及ぼす。
Al:0.1%以下
Alは鋼の脱酸のために添加するとともに、フェライトを強化する作用を有する。しかしながら、0.1%を超えて添加すると粗大な介在物が増加して加工性の劣化を招くので、0.1%以下とする。
Alは鋼の脱酸のために添加するとともに、フェライトを強化する作用を有する。しかしながら、0.1%を超えて添加すると粗大な介在物が増加して加工性の劣化を招くので、0.1%以下とする。
本発明では、上記した成分のほか、B、Mo、VおよびCrを適宜添加することができる。B、Mo、VおよびCrはいずれも、引張強さの向上に有効な成分であり、この観点から、B、Mo、VおよびCrは、それぞれB:0.0005〜0.0030%、Mo:0.05〜2%、V:0.05〜0.5%、Cr:0.01〜1%の範囲とすることが好ましい。
また、不純物として、Sは鋼中で非金属介在物として存在し、伸びフランジ成形時の応力集中源となるため、その含有量は極力低減することが望ましい。しかしながら、S量が0.005%以下であれば穴拡げ性にさほどの悪影響を及ぼさない。したがって、0.005%を上限として許容できる。より好ましくは0.002%以下である。
Pは、組織の不均一を招くだけでなく、鋳造時の凝固偏析が顕著になり、内部割れや加工性の劣化を招くことになる。このような観点から、P量は0.05%以下とすることが好ましい。
NはTiと結合しやすく、TiNとして鋼中に固定されて無害化するが、過剰に含まれると高温で析出物が形成され、鋼中で粗大な析出物となって加工性を劣化させるので、0.0050%以下とすることが好ましい。
次に、本発明の製造条件について説明する。
本発明では、上記のような成分組成に調整した鋼スラブを、所定温度に加熱し、熱間圧延したのち、コイルに巻き取り、必要に応じて巻き取り温度で保持する処理を行ったのち、酸洗して表面の酸化物を除去してから、冷間圧延して製品厚さとする。なお、熱間圧延や酸洗、冷間圧延については、常法に従って行えば良い。
本発明では、上記のような成分組成に調整した鋼スラブを、所定温度に加熱し、熱間圧延したのち、コイルに巻き取り、必要に応じて巻き取り温度で保持する処理を行ったのち、酸洗して表面の酸化物を除去してから、冷間圧延して製品厚さとする。なお、熱間圧延や酸洗、冷間圧延については、常法に従って行えば良い。
このようにして得られた冷延コイルを連続焼鈍する。この連続焼鈍の役割は、冷延組織を再結晶させて過剰な転位を解放しつつ組織の均一化を図るとともに、冷却過程では急冷処理による焼き入れでマルテンサイト相を鋼中に出現させて高い強度を達成するところにある。本発明では、前述したような成分組成と以下に示す連続焼鈍の条件を組み合わせることで、高強度、低降伏比に加え、高い全伸びを同時に達成することができる。
連続焼鈍における最高到達温度TM:Ac1点以上Ac3点未満
連続焼鈍では、焼鈍中の鋼板の最高到達温度TMを素材のAc1点以上Ac3点未満の範囲とする。これは、冷却過程に入る前に所定量のγ相を出現させ、この状態から焼入れることにより、焼鈍後にフェライト−マルテンサイト2相組織を得るためである。フェライト−マルテンサイト2相組織(DP組織)の場合、マルテンサイト相で高い強度が確保されるとともに、フェライト相が変形を担うことで高い全伸びが同時に達成される。最高到達温度TMがAc1点を下回るとγ相が不足して十分な強度が得られず、一方Ac3点を上回るとα相が不足して全伸びElが低下する。
連続焼鈍では、焼鈍中の鋼板の最高到達温度TMを素材のAc1点以上Ac3点未満の範囲とする。これは、冷却過程に入る前に所定量のγ相を出現させ、この状態から焼入れることにより、焼鈍後にフェライト−マルテンサイト2相組織を得るためである。フェライト−マルテンサイト2相組織(DP組織)の場合、マルテンサイト相で高い強度が確保されるとともに、フェライト相が変形を担うことで高い全伸びが同時に達成される。最高到達温度TMがAc1点を下回るとγ相が不足して十分な強度が得られず、一方Ac3点を上回るとα相が不足して全伸びElが低下する。
700℃から鋼板温度T1(℃)までの温度域での平均昇温速度V1:0.3〜8℃/s
ここに、鋼板温度T1は次式(1)
T1=0.98TM ・・・(1)
で表される温度である。
ここで、鋼板温度T1を上記のように定義したのは次の理由による。
すなわち、700℃以上の昇温過程では、α相の再結晶を促進して軟質なα相の分散を適正化する必要がある。一方、TMに近づくにつれて、α相からγ相への変態が進行する傾向が強まる。このことから、α相の再結晶を促進するため、700℃からTMよりも若干低い温度の間では低い昇温速度に保つ必要がある。そこで、制御加熱温度範囲の上限として、T1を上記のように定義した。
ここに、鋼板温度T1は次式(1)
T1=0.98TM ・・・(1)
で表される温度である。
ここで、鋼板温度T1を上記のように定義したのは次の理由による。
すなわち、700℃以上の昇温過程では、α相の再結晶を促進して軟質なα相の分散を適正化する必要がある。一方、TMに近づくにつれて、α相からγ相への変態が進行する傾向が強まる。このことから、α相の再結晶を促進するため、700℃からTMよりも若干低い温度の間では低い昇温速度に保つ必要がある。そこで、制御加熱温度範囲の上限として、T1を上記のように定義した。
本発明では、Si添加量を抑えMn添加量を増加させることでAc1点を低下させるとともに、TiやNbの添加によって回復・再結晶の開始温度を低下させることで、鋼中の転位が十分に高い状態でα/γ変態を起こさせ、高温保持中のγ相率を高くし、急速冷却の後に高いマルテンサイト相率を実現している。
高生産性が要求される連続焼鈍では短時間で焼鈍を終えるのが望ましく、このためには昇温速度は高く採るのが有効である。しかしながら、本発明のようにCやSiの添加量を制限した鋼をTiやNbで強化した場合には、昇温速度を一般的な値よりも低く設定することで全伸びElが改善されるとともに、強度も上昇することが判明した。
高生産性が要求される連続焼鈍では短時間で焼鈍を終えるのが望ましく、このためには昇温速度は高く採るのが有効である。しかしながら、本発明のようにCやSiの添加量を制限した鋼をTiやNbで強化した場合には、昇温速度を一般的な値よりも低く設定することで全伸びElが改善されるとともに、強度も上昇することが判明した。
図1に、C:0.08%、Si:0.3%、Mn:2.5%、P:0.01%、S:0.003%、Al:0.03%、N:0.0030%、Ti:0.02%、Nb:0.03%、残部Feの成分組成になる鋼(TS:780MPa級)について、TM:780℃、従ってT1:764.4℃の条件で、V1を0.1〜10℃/sの範囲で種々変化させ、製造した冷延鋼板の全伸びElについて調べた結果を示す。なお、300℃から少なくとも650℃までの温度域での平均昇温速度V0:3℃/s、最高到達温度TMから鋼板温度T1までの温度域での平均冷却速度V2:1.5℃/s、700℃から少なくとも400℃までの温度域における平均冷却速度V3:15℃/sとした。
同図より、V1が0.3〜8℃/sである場合、全伸びElが25%以上となり、安定的に高い全伸びが得られることがわかる。これに対し、V1が0.3〜8℃/sを逸脱する場合には、全伸びElが大幅に低下していることがわかる。
以上の結果に基づき、比較的高温域である700℃から上掲式(1)にて定める鋼板温度T1(℃)までの温度域での平均昇温速度V1を従来よりも遅く、具体的には0.3〜8℃/sとすることで、高強度、低降伏比と同時に、高い全伸びが得られることが究明されたのである。
同図より、V1が0.3〜8℃/sである場合、全伸びElが25%以上となり、安定的に高い全伸びが得られることがわかる。これに対し、V1が0.3〜8℃/sを逸脱する場合には、全伸びElが大幅に低下していることがわかる。
以上の結果に基づき、比較的高温域である700℃から上掲式(1)にて定める鋼板温度T1(℃)までの温度域での平均昇温速度V1を従来よりも遅く、具体的には0.3〜8℃/sとすることで、高強度、低降伏比と同時に、高い全伸びが得られることが究明されたのである。
この理由は必ずしも明らかではないが、発明者らは次のように考えている。
すなわち、本発明の成分組成を有する鋼では、変態の開始温度が低いため、連続焼鈍中はγの生成サイトである転位などの格子欠陥が十分にある状態で変態が進行する。このようなγ相が一定量を確保された後は軟質なα相を適正に分散させる必要があるが、さらに高温域での昇温速度が速すぎると未変態α相の再結晶が起きにくくなる結果、α相の残存量が不足して、冷却後に軟質相が欠乏し伸びが低下する。このため、比較的高温域である700℃から鋼板温度T1(℃)までの温度域での平均昇温速度V1を従来よりも遅く、具体的には0.3〜8℃/sに制御することで、高い全伸びが得られると考えている。
すなわち、本発明の成分組成を有する鋼では、変態の開始温度が低いため、連続焼鈍中はγの生成サイトである転位などの格子欠陥が十分にある状態で変態が進行する。このようなγ相が一定量を確保された後は軟質なα相を適正に分散させる必要があるが、さらに高温域での昇温速度が速すぎると未変態α相の再結晶が起きにくくなる結果、α相の残存量が不足して、冷却後に軟質相が欠乏し伸びが低下する。このため、比較的高温域である700℃から鋼板温度T1(℃)までの温度域での平均昇温速度V1を従来よりも遅く、具体的には0.3〜8℃/sに制御することで、高い全伸びが得られると考えている。
300℃から少なくとも650℃までの温度域での平均昇温速度V0:
2.0・V1 ≦ V0 ≦ 20・V1
また、700℃までの昇温速度が全伸びElに及ぼす影響についても検討した。その結果、300℃から少なくとも650℃までの温度域を適正な昇温速度で昇温させることによって、全伸びElの一層の改善が見られた。
2.0・V1 ≦ V0 ≦ 20・V1
また、700℃までの昇温速度が全伸びElに及ぼす影響についても検討した。その結果、300℃から少なくとも650℃までの温度域を適正な昇温速度で昇温させることによって、全伸びElの一層の改善が見られた。
図2に、C:0.09%、Si:0.5%、Mn:3.2%、P:0.02%、S:0.002%、Al:0.05%、N:0.0030%、Ti:0.03%、Nb:0.08%、残部Feの成分組成になる鋼(TS:980MPa級)について、TM:800℃、従ってT1:784℃の条件で、V0およびV1を種々変化させ、製造した冷延鋼板の全伸びElについて調べた結果を示す。なお、最高到達温度TMから鋼板温度T1までの温度域での平均冷却速度V2:1℃/s、700℃から少なくとも400℃までの温度域における平均冷却速度V3:25℃/sとした。
同図より、V1が0.3〜8℃/sである場合には、いずれも15%以上の全伸びが得られることがわかる。また、V1に加え、V0が次式(2)
2.0・V1 ≦ V0 ≦ 20・V1・・・(2)
の範囲を満足する場合には、いずれも17%以上全伸びが得られることがわかる。
以上より、上記したV1の制御に加え、V0を上掲式(2)に定める範囲に制御することで、全伸びElを一層改善できることが判明した。
同図より、V1が0.3〜8℃/sである場合には、いずれも15%以上の全伸びが得られることがわかる。また、V1に加え、V0が次式(2)
2.0・V1 ≦ V0 ≦ 20・V1・・・(2)
の範囲を満足する場合には、いずれも17%以上全伸びが得られることがわかる。
以上より、上記したV1の制御に加え、V0を上掲式(2)に定める範囲に制御することで、全伸びElを一層改善できることが判明した。
この理由は必ずしも明らかではないが、発明者らは、次のように考えている。
すなわち、300〜650℃は回復温度域にあたるため、その後の高温域での変態および再結晶の後に、均一な組織を得るためには、この回復温度域で適正な回復量とする必要があり、その適正な回復量はV0とV1とのバランスによって決定される。
このため、V0が2.0・V1を下回ると低温域での回復が過度に進み、再結晶が部分的に進行して組織が不均一化する一方、V0が20・V1を上回ると理想的な量よりも多く転位を含んだ状態で高温域での変態・再結晶が進行するので、この場合も組織が不均一となり、結果として全伸びElが低下すると考えている。
すなわち、300〜650℃は回復温度域にあたるため、その後の高温域での変態および再結晶の後に、均一な組織を得るためには、この回復温度域で適正な回復量とする必要があり、その適正な回復量はV0とV1とのバランスによって決定される。
このため、V0が2.0・V1を下回ると低温域での回復が過度に進み、再結晶が部分的に進行して組織が不均一化する一方、V0が20・V1を上回ると理想的な量よりも多く転位を含んだ状態で高温域での変態・再結晶が進行するので、この場合も組織が不均一となり、結果として全伸びElが低下すると考えている。
なお、650℃から700℃までの温度域については特に制限はなく、そのままの昇温速度で加熱しても、また変化させてもよい。
最高到達温度TMから鋼板温度T1までの温度域での平均冷却速度V2:
{0.5/(V1+0.3)}+0.3 ≦ V2 ≦ {3/(V1+1)}+0.7
次に、最高到達温度TMからの冷却速度が全伸びElに及ぼす影響についても検討した。その結果、最高到達温度TMから鋼板温度T1までの温度域を適正な冷却速度で冷却させることによって、全伸びElの改善に加え、降伏比をさらに低減できることを見出した。
{0.5/(V1+0.3)}+0.3 ≦ V2 ≦ {3/(V1+1)}+0.7
次に、最高到達温度TMからの冷却速度が全伸びElに及ぼす影響についても検討した。その結果、最高到達温度TMから鋼板温度T1までの温度域を適正な冷却速度で冷却させることによって、全伸びElの改善に加え、降伏比をさらに低減できることを見出した。
図3にC:0.08%、Si:0.3%、Mn:2.9%、P:0.01%、S:0.003%、Al:0.03%、N:0.0030%、Ti:0.02%、Nb:0.03%、Cr:0.2%、残部Feの成分組成になる鋼(TS:980MPa級)について、TM:780℃、従ってT1:764℃の条件で、V1およびV2を種々変化させ、製造した冷延鋼板の全伸びElおよび降伏比YRについて調べた結果を示す。なお、300℃から少なくとも650℃までの温度域での平均昇温速度V0:10℃/s、700℃から少なくとも400℃までの温度域における平均冷却速度V3:20℃/sとした。
同図より、V1が0.3〜8℃/sである場合には、いずれも15%以上の全伸びかつ0.60〜0.90の降伏比が得られることがわかる。また、V1に加え、V2が次式(3)
{0.5/(V1+0.3)}+0.3 ≦ V2 ≦ {3/(V1+1)}+0.7・・・(3)
の範囲を満足する場合には、17%以上の全伸びかつ0.60〜0.85の降伏比が得られており、V1に加え、V2を所定の範囲に制御することにより、さらに高い全伸びと低降伏比を同時に達成できることがわかる。
以上より、上記したV0およびV1の制御に加え、V2を上掲式(3)に定める範囲に制御することで、全伸びElの改善と降伏比のさらなる低減を同時に達成できることが判明した。
同図より、V1が0.3〜8℃/sである場合には、いずれも15%以上の全伸びかつ0.60〜0.90の降伏比が得られることがわかる。また、V1に加え、V2が次式(3)
{0.5/(V1+0.3)}+0.3 ≦ V2 ≦ {3/(V1+1)}+0.7・・・(3)
の範囲を満足する場合には、17%以上の全伸びかつ0.60〜0.85の降伏比が得られており、V1に加え、V2を所定の範囲に制御することにより、さらに高い全伸びと低降伏比を同時に達成できることがわかる。
以上より、上記したV0およびV1の制御に加え、V2を上掲式(3)に定める範囲に制御することで、全伸びElの改善と降伏比のさらなる低減を同時に達成できることが判明した。
この理由は必ずしも明らかではないが、発明者らは次のように考えている。
すなわち、TMからT1までの温度域での冷却過程では、γ相からのα相の出現や未変態のα相の成長が起こる。また、上記したV1を遅くすることによってもα相の成長が促される。このため、V2が{0.5/(V1+0.3)}+0.3を下回るとα相の量が過剰となって強度が不足し、一方V2が{3/(V1+1)}+0.7を上回るとα相の量が不十分となり全伸びElが低下する。したがって、両者の効果が過剰とならない適正範囲とすることで、全伸びElが改善されるとともに、降伏比をさらに低減することができる。
すなわち、TMからT1までの温度域での冷却過程では、γ相からのα相の出現や未変態のα相の成長が起こる。また、上記したV1を遅くすることによってもα相の成長が促される。このため、V2が{0.5/(V1+0.3)}+0.3を下回るとα相の量が過剰となって強度が不足し、一方V2が{3/(V1+1)}+0.7を上回るとα相の量が不十分となり全伸びElが低下する。したがって、両者の効果が過剰とならない適正範囲とすることで、全伸びElが改善されるとともに、降伏比をさらに低減することができる。
700℃から少なくとも400℃までの温度域における平均冷却速度V3:10〜80℃/s
また、T1まで冷却したあと、MS点以下まで急冷することでγ相を生じた部分からのCの拡散が抑制され、硬質なマルテンサイトが生じて高い強度が確保される。そこで、かような制御冷却を行うべき温度域および冷却速度について検討した結果、700℃から少なくとも400℃までの温度域における平均冷却速度V3を10℃/s以上とすることが好ましいことが判明した。しかしながら、この冷却速度が80℃/sを超えると製品の形状が劣化する。このため、700℃から少なくとも400℃までの温度域における平均冷却速度V3は10〜80℃/sとすることが好ましい。
また、T1まで冷却したあと、MS点以下まで急冷することでγ相を生じた部分からのCの拡散が抑制され、硬質なマルテンサイトが生じて高い強度が確保される。そこで、かような制御冷却を行うべき温度域および冷却速度について検討した結果、700℃から少なくとも400℃までの温度域における平均冷却速度V3を10℃/s以上とすることが好ましいことが判明した。しかしながら、この冷却速度が80℃/sを超えると製品の形状が劣化する。このため、700℃から少なくとも400℃までの温度域における平均冷却速度V3は10〜80℃/sとすることが好ましい。
ここに、制御冷却温度範囲を700℃から少なくとも400℃までの温度域に限定したのは、次の理由による。
すなわち、γ相からα相への変態が始まる温度が概ね700℃付近であり、またマルテンサイトが生成し始める温度が概ね400℃付近であるので、700℃から少なくとも400℃までの温度域の冷却速度を適正に制御することにより、適正量のマルテンサイトが確保されるからである。
すなわち、γ相からα相への変態が始まる温度が概ね700℃付近であり、またマルテンサイトが生成し始める温度が概ね400℃付近であるので、700℃から少なくとも400℃までの温度域の冷却速度を適正に制御することにより、適正量のマルテンサイトが確保されるからである。
なお、400℃から室温までの温度域については特に制限はなく、そのままの冷却速度で冷却しても、また変化させてもよい。
さらに、連続焼鈍の急冷後、200〜400℃で30〜2000秒保持する焼戻し処理を加えることが好ましい。これにより、硬質なマルテンサイト相が焼戻されて全伸びElや穴広げ率λが向上する。
また、焼鈍の後、酸洗処理により表面の酸化層や異物の除去を行うことで化成処理性が向上する。また、圧下率:0.1〜2%程度のスキンパス圧延を施すことで降伏点伸びを抑制することができる。
また、焼鈍の後、酸洗処理により表面の酸化層や異物の除去を行うことで化成処理性が向上する。また、圧下率:0.1〜2%程度のスキンパス圧延を施すことで降伏点伸びを抑制することができる。
表1に示す成分組成の鋼を溶製し、1250℃に加熱後、熱間圧延して3.5mmの熱延鋼板とした後、酸洗し、ついで冷間圧延により1.4mmの冷延鋼板とした。この冷延鋼板を表2−1及び表2−2中に示す条件で、加熱後、冷却し、250℃に到達後、250℃で240秒間保持する連続焼鈍を施してから、酸洗とスキンパス圧延を施して製品板とした。なお、表1中のAc1点及びAc3点はそれぞれ次式により求めた。
Ac1=723-10.7[%Mn]-16.9[%Ni]+29.1[%Si]+16.9[%Cr]
Ac3=910-203[%C]0.5+44.7[%Si]-30[%Mn]+700[%P]+400[%Al]+400[%Ti]
+104[%V]+32.5[%Mo]
ただし、[%M]は、M元素の含有量(質量%)を表す。
かくして得られた製品板から圧延方向と直角方向にJIS5号試験片を採取し、機械的特性を調査した。得られた結果を表2−1および表2−2に示す。
Ac1=723-10.7[%Mn]-16.9[%Ni]+29.1[%Si]+16.9[%Cr]
Ac3=910-203[%C]0.5+44.7[%Si]-30[%Mn]+700[%P]+400[%Al]+400[%Ti]
+104[%V]+32.5[%Mo]
ただし、[%M]は、M元素の含有量(質量%)を表す。
かくして得られた製品板から圧延方向と直角方向にJIS5号試験片を採取し、機械的特性を調査した。得られた結果を表2−1および表2−2に示す。
表2−1および表2−2から明らかなように、本発明に従い得られた製品板はいずれも、引張強さが780MPa以上、降伏比が0.60〜0.90の範囲を満足するだけでなく、全伸びElは、引張強さ780MPa級では22%以上、980MPa級では15%以上であり、高強度、低降伏比かつ高い全伸びを同時に達成していることがわかる。また、得られた製品板はいずれも、化成処理性および溶接性にも優れていることが確認されている。
さらに、V0を前記(2)式の範囲、V2を前記(3)式の範囲およびV3を10〜80℃/sの範囲に制御した場合には、引張強さが780MPa級で24%以上、980MPa級で17%以上の全伸びを達成でき、かつ降伏比を0.60〜0.85まで低減できた。
一方、比較例はいずれも、引張強さ、降伏比および全伸びのいずれかが所望の特性を満足することができなかった。
さらに、V0を前記(2)式の範囲、V2を前記(3)式の範囲およびV3を10〜80℃/sの範囲に制御した場合には、引張強さが780MPa級で24%以上、980MPa級で17%以上の全伸びを達成でき、かつ降伏比を0.60〜0.85まで低減できた。
一方、比較例はいずれも、引張強さ、降伏比および全伸びのいずれかが所望の特性を満足することができなかった。
Claims (4)
- 質量%で、
C:0.05〜0.12%、
Si:0.5%以下、
Mn:2.0〜4.0%、
Ti:0.005〜0.06%、
Nb:0.005〜0.08%および
Al:0.1%以下
を含有し、残部はFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼スラブを、熱間圧延し、酸洗後、冷間圧延し、ついで連続焼鈍を施してから調質圧延を施すことからなる冷延鋼板の製造方法において、
該連続焼鈍の昇温過程における700℃から下記式(1)にて定める鋼板温度T1(℃)までの温度域での平均昇温速度V1を0.3〜8℃/sとし、
該連続焼鈍における最高到達温度TMをAc1点以上Ac3点未満の範囲とすることを特徴とする加工性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法。
記
T1=0.98TM ・・・(1)
ただし、TMは連続焼鈍での鋼板の最高到達温度(℃)である。 - 前記連続焼鈍の昇温過程において、300℃から少なくとも650℃までの温度域での平均昇温速度V0を下記式(2)で定める範囲とすることを特徴とする請求項1に記載の加工性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法。
記
2.0・V1 ≦ V0 ≦ 20・V1・・・(2) - 前記連続焼鈍の冷却過程において、前記最高到達温度TMから前記鋼板温度T1までの温度域での平均冷却速度V2を下記式(3)で示される範囲とし、
700℃から少なくとも400℃までの温度域における平均冷却速度V3を10〜80℃/sとすることを特徴とする請求項1または2に記載の加工性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法。
記
{0.5/(V1+0.3)}+0.3 ≦ V2 ≦ {3/(V1+1)}+0.7・・・(3) - 前記鋼スラブが、さらに質量%で、
B:0.0005〜0.0030%、
Mo:0.05〜2%、
V:0.05〜0.5%および
Cr:0.01〜1%
のうちから選んだ一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の加工性に優れる高強度冷延鋼板の製造方法。
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