JP2013225503A - 半導体光電陰極及びその製造方法、電子管並びにイメージ増強管 - Google Patents

半導体光電陰極及びその製造方法、電子管並びにイメージ増強管 Download PDF

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Abstract

【課題】従来のGaN光電陰極と比較して、量子効率を改善可能な半導体光電陰極及びその製造方法を提供する。
【解決手段】中間領域1Mにおける組成比Xの最小値をXMIN(M)、第2領域12における組成比Xの最小値をXMIN(2)として、第1領域11では、0≦g(x)≦XMIN(M)を満たし、中間領域1Mでは、g(x)は単調減少関数であって、且つ、g(x)≦XMIN(2)を満たし、第2領域12では、g(x)は単調減少関数又は一定値であり、第2領域12におけるg(x)が単調減少関数である場合には、第1領域11の厚みD1は18(nm)以上であり、第2領域12におけるg(x)が一定値である場合には、第1領域11の厚みD1は31(nm)以上である。
【選択図】図4

Description

本発明の態様は、入射光に応答して電子を放出する半導体光電陰極及びその製造方法、電子管並びにイメージ増強管に関する。
従来から知られるCsTe層又はCsI層の光電陰極は、遠紫外線の検出に用いることができるが、量子効率は比較的低く、大きな波長依存性を有している。これに対して、化合物半導体を用いた光電陰極は、これらの欠点を改善する可能性を有している。
近年の半導体光電陰極は、特許文献1及び特許文献2に記載されている。特許文献1では、高品質のGaN層を得るためには、サファイア基板上にGaN層を成長させている。GaN層は、サファイア基板のc面上に成長させることができる。いずれの半導体光電陰極も、透明基板とGaN層を用いており、入射光に応答して電子を放出できるが、その感度(量子効率)は十分ではない。産業界では、高精度の紫外線の検出、特に、近紫外線の検出の要望が高まっており、これに適用可能な半導体光電陰極が期待されている。
近紫外線は、コロナ放電観察、炎検査、生物学的薬剤検査、UV−LIDAR(Laser Imaging Detection And Ranging)、UVラマン検査装置、半導体品質検査などに用いられており、高感度の化合物半導体光電陰極が実現できれば、新たな物理現象の解明や各種製品の改良が行われることが期待される。
特許3623068号 特開2007−165478号公報
しかしながら、本願発明者らの知見によれば、ガラス基板にGaN層を貼り付けることで得られる光電陰極の量子効率は、23%程度であり、更なる量子効率の改善が期待される。一方、本発明の態様に係る半導体光電陰極によれば、従来のGaN光電陰極と比較して、量子効率を改善することができる。
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、従来のGaN光電陰極と比較して、量子効率を改善可能な半導体光電陰極及びその製造方法、電子管並びにイメージ増強管を提供することを目的とする。
上述の課題を解決するため、本態様に係る半導体光電陰極は、ガラス基板にSiO層を介して貼り付けられたAlGa1−XN層(0≦X<1)と、前記AlGa1−XN層上に形成されたアルカリ金属含有層と、を備え、前記AlGa1−XN層は、前記アルカリ金属含有層に隣接する第1領域と、前記SiO層に隣接する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する中間領域と、を備え、前記第2領域から前記アルカリ金属含有層に向かう前記AlGa1−XN層の厚み方向の位置をxとし、前記第2領域と前記SiO層との界面位置を位置xの原点として設定し、組成比X=g(x)とする場合、前記中間領域における組成比Xの最小値をXMIN(M)、前記第2領域における組成比Xの最小値をXMIN(2)として、(1):前記第1領域では、0≦f(x)≦XMIN(M)を満たし、(2):前記中間領域では、g(x)は単調減少関数であって、且つ、g(x)≦XMIN(2)を満たし、(3):前記第2領域では、g(x)は単調減少関数又は一定値であり、(4):前記第2領域におけるg(x)が単調減少関数である場合には、前記第1領域の厚みD1は18(nm)以上であり、(5):前記第2領域におけるg(x)が一定値である場合には、前記第1領域の厚みD1は31(nm)以上であることを特徴とする。
Al組成比Xと第1領域の厚みD1が上述の条件を満たす場合、従来のGaN光電陰極と比較して、際立って優れて量子効率を改善することが可能である。
前記AlGa1−XN層の全体の厚みD、前記中間領域の厚みDM、前記第2領域の厚みD2、及び、許容誤差Eは、以下の関係式:(D2+DM)×(100±E)%=D/2、E≦60を満たすことを特徴とする。すなわち、AlGa1−XN層は、組成が一様である場合には、その厚みDの2分の1の位置の近傍に伝導帯下端のエネルギーレベルのピークが位置するので、この位置よりもガラス基板側のエネルギーレベルを、中間領域及び第2領域によって調整することで、真空中へ放出できない電子を高いエネルギー準位に移動させることができるため、原理的に電子の放出確率を高めることができる。許容誤差Eは、60(%)以下の範囲程度であれば、電子放出効率の増加が得られると考えられるが、もちろん、E≦20(%)とすれば、更に効果が得られると考えられる。
なお、AlGaNは、Al(原子番号13)、Ga(原子番号31)、N(原子番号7)の化合物であり、その格子定数は、原子サイズがGaよりも小さいAlの組成比Xが増加すれば、小さくなる。化合物半導体においては、格子定数が小さいほどエネルギーバンドギャップEgが大きくなる傾向があるので、組成比Xが増加すると、エネルギーバンドギャップEgは大きくなり、これに対応する波長λは小さくなる。
また、前記第2領域における組成比Xの最小値XMIN(2)は、以下の関係式:0.3≦XMIN(2)≦0.65を満たすことを特徴とする。第2領域におけるAlの組成比Xが0.3以上となれば、第2領域のエネルギーバンドギャップEgは大きくなり、短波長(280nm以下)の光が、第2領域を容易に透過するようになるので、量子効率は著しく向上する。また、Alの組成比Xは製造上の限界を超えて増加させることはできないので、組成比Xは0.65以下であることが好ましい。
また、前記第1領域の厚みD1は100nm以下であることが好ましい。この場合には、量子効率を増加させることが可能である。
また、上述の半導体光電陰極を製造する方法は、支持基板上にGaNバッファ層、GaNテンプレート層、化合物半導体層、前記SiO層を順次堆積する工程と、前記SiO層を介して前記化合物半導体層に前記ガラス基板を貼り付ける工程と、前記支持基板、前記バッファ層、前記テンプレート層、及び前記化合物半導体層の一部を順次除去し、前記化合物半導体層の残留領域を、前記AlGa1−XN層とする工程と、を備えることを特徴とする。この場合には、上記半導体光電陰極を容易に製造することができる。
本発明の一態様に係る半導体光電陰極は、ガラス基板にSiO層を介して貼り付けられたAlGa1−XN層(0≦X<1)と、前記AlGa1−XN層上に形成されたアルカリ金属含有層と、を備え、前記AlGa1−XN層は、前記アルカリ金属含有層に隣接する第1領域と、前記SiO層に隣接する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する中間領域と、を備え、前記第2領域は障壁層と井戸層を交互に積層してなる半導体超格子構造を有し、前記中間領域は障壁層と井戸層を交互に積層してなる半導体超格子構造を有し、隣接する障壁層と井戸層の対の領域を単位区間と規定した場合、少なくとも前記中間領域においては、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、前記第2領域と前記SiO層との界面位置から離れるにしたがって単調に減少しており、前記第2領域においては、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、前記中間領域におけるAlの組成比Xの単位区間内の平均値の最大値以上であり、且つ、前記第1領域においては、Alの組成比Xの平均値は、前記中間領域におけるAlの組成比Xの単位区間内の平均値の最小値以下であることを特徴とする。この光電陰極によれば、従来のGaN光電陰極と比較して、際立って優れて量子効率を改善することが可能である。
一態様では、前記第2領域においても、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、前記第2領域と前記SiO層との界面位置から離れるにしたがって単調に減少していることを特徴とする。
また、別の一態様では、前記第2領域においては、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、厚み方向に沿って一定であることを特徴とする。
前記AlGa1−XN層の全体の厚みD、前記中間領域の厚みDM、前記第2領域の厚みD2、及び、許容誤差Eは、以下の関係式:(D2+DM)×(100±E)%=D/2、E≦60、を満たすことが好ましい。
前記第1領域の厚みD1は100nm以下であることが好ましい。
なお、AlGaNは、Al(原子番号13)、Ga(原子番号31)、N(原子番号7)の化合物であり、その格子定数は、原子サイズがGaよりも小さいAlの組成比Xが増加すれば、小さくなる。化合物半導体においては、格子定数が小さいほどエネルギーバンドギャップEgが大きくなる傾向があるので、組成比Xが増加すると、エネルギーバンドギャップEgは大きくなり、これに対応する波長λは小さくなる。
第2領域におけるAlの組成比Xの単位区間内の平均値は、中間領域の単位区間内の平均値以上であるので、第2領域のエネルギーバンドギャップEgは大きくなり、特に超格子構造を構成する障壁層のエネルギーバンドギャップが大きくなるため、短波長(280nm以下)の光が、第2領域を容易に透過して、感度の高い中間領域や第1領域へ伝達するようになる。したがって、量子効率は著しく向上する。
また、Al組成比Xが高い場合には、キャリア密度が低下する可能性がある。これを抑制するため、第2領域及び中間領域では、半導体超格子構造を採用し、共鳴トンネル効果を用いることで、輸送されるキャリア密度の減少を抑制し、第1領域まで、発生したキャリアを高効率で輸送することができる。なお、半導体超格子構造における井戸層においては、エネルギーバンドギャップが障壁層よりも小さいため、短波長の光に対しても感度を有することになり、多くのキャリアを発生させることができる。
半導体光電陰極を製造する方法は、支持基板上にGaNバッファ層、GaNテンプレート層、化合物半導体層、SiO層を順次堆積する工程と、SiO層を介して化合物半導体層にガラス基板を貼り付ける工程と、支持基板、バッファ層、テンプレート層、及び化合物半導体層の一部を順次除去し、化合物半導体層の残留領域を、AlGa1−XN層とする工程とを備えている。この製造方法によれば、上述の半導体光電陰極を容易に製造することができる。
また、本発明の一態様に係る半導体光電陰極は、ガラス基板にSiO層を介して貼り付けられたAlGa1−XN層(0≦X<1)と、前記AlGa1−XN層上に形成されたアルカリ金属含有層と、を備え、前記AlGa1−XN層は、前記アルカリ金属含有層に隣接する第1領域と、前記SiO層に隣接する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する中間領域と、を備え、前記第2領域は障壁層と井戸層を交互に積層してなる半導体超格子構造を有し、前記中間領域は障壁層と井戸層を交互に積層してなる半導体超格子構造を有し、隣接する障壁層と井戸層の対の領域を単位区間と規定した場合、少なくとも前記中間領域においては、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、前記第2領域と前記SiO層との界面位置から離れるにしたがって減少していることを特徴とする。
また、電子管は、上記半導体光電陰極と、光の入射に応じて半導体光電陰極から出射された電子を収集する陽極と、前記半導体光電陰極の電子出射面及び前記陽極を減圧環境内で収容する包囲体と、を備えることを特徴とする。
また、イメージ増強管は、上記半導体光電陰極と、前記半導体光電陰極の電子出射面に対向するマイクロチャンネルプレートと、 前記マイクロチャンネルプレートに対向する蛍光面と、前記半導体光電陰極の電子出射面、前記マイクロチャンネルプレート及び前記蛍光面を減圧環境内で収容する包囲体とを備えることを特徴とする。
また、半導体光電陰極において、ガラス基板にSiO層を介して貼り付けられたAlGa1−XN層(0≦X<1)と、前記AlGa1−XN層上に形成されたアルカリ金属含有層と、を備え、前記AlGa1−XN層は、前記アルカリ金属含有層に隣接する第1領域と、前記SiO層に隣接する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する中間領域と、を備え、前記第1領域における有効Al組成比X(11)は、0(%)≦X(11)≦30(%)を満たし、前記第2領域における一定の有効Al組成比Xは、15(%)≦X≦X(11)+50(%)を満たすことを特徴とする。
また、半導体光電陰極において、ガラス基板にSiO層を介して貼り付けられたAlGa1−XN層(0≦X<1)と、前記AlGa1−XN層上に形成されたアルカリ金属含有層と、を備え、前記AlGa1−XN層は、前記アルカリ金属含有層に隣接する第1領域と、前記SiO層に隣接する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する中間領域と、を備え、前記第1領域における有効Al組成比X(11)は、30(%)≦X(11)≦40(%)を満たし、前記第2領域における一定の有効Al組成比Xは、60(%)≦X≦X(11)+50(%)を満たすことを特徴とする。
また、本態様の半導体個電陰極は、ガラス基板にSiO層を介して貼り付けられたAlGa1−XN層(0≦X≦1)と、前記AlGa1−XN層上に形成されたアルカリ金属含有層と、を備え、前記AlGa1−XN層は、前記アルカリ金属含有層に隣接する第1領域と、前記SiO層に隣接する第2領域と、前記第1領域と前記第2領域との間に位置する中間領域と、を備え、前記第2領域は障壁層と井戸層を交互に積層してなる半導体超格子構造を有し、前記中間領域は障壁層と井戸層を交互に積層してなる半導体超格子構造を有し、隣接する障壁層と井戸層の対の領域を単位区間と規定した場合、少なくとも前記中間領域においては、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、前記第2領域と前記SiO層との界面位置から離れるにしたがって単調に減少しており、前記第2領域においては、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、前記中間領域におけるAlの組成比Xの単位区間内の平均値の最大値以上であり、且つ、前記第1領域においては、Alの組成比Xの平均値は、前記中間領域におけるAlの組成比Xの単位区間内の平均値の最小値以下である、ことを特徴とする。
本発明の半導体光電陰極によれば、従来のGaN光電陰極と比較して、量子効率を改善することができ、本発明の製造方法によれば、このような半導体光電陰極を容易に製造することができる。
比較例(Type1)に係る半導体光電陰極の縦断面図である。 図2(A)は、比較例に係る化合物半導体層(GaN)の断面図、図2(B)はエネルギーバンド図である。 波長(nm)と量子効率(%)の関係を示すグラフである。 反射モード時の量子効率/透過モード時の量子効率の波長依存性を示すグラフであり、エネルギーバンド下端のピーク位置xpを変化させたものである。 実施例(Type2,Type3)に係る半導体光電陰極の縦断面図である。 図6(A)は、実施例に係る化合物半導体層(AlGaN系積層構造)の断面図、図6(B)はエネルギーバンド図である。 図7(A)は化合物半導体層を示す図であり、図7(B)、図7(C)、図7(D)は、化合物半導体層の厚み方向の位置xとAl組成比Xの関係をグラフである。 図8(A)は化合物半導体層を示す図であり、図8(B)、図8(C)、図8(D)は、化合物半導体層の厚み方向の位置xと不純物(Mg)濃度の関係をグラフである。 図9(A)、図9(B)、図9(C)は、半導体光電陰極の製造方法について説明する図である。 位置x(nm)とAl組成比Xとの関係を示すグラフである。 位置x(nm)とEg(eV)との関係を示すグラフである。 図12は、位置x(nm)と不純物ガス流量(a.u.)との関係を示すグラフである。 位置x(nm)とAl組成比Xとの関係を示すグラフである。 位置x(nm)とEg(eV)との関係を示すグラフである。 位置x(nm)と不純物ガス流量(a.u.)との関係を示すグラフである。 波長(nm)と量子効率(%)との関係を示すグラフである。 その一部破断して示すイメージ増強管の正面図である。 半導体超格子構造を示す図である。 半導体光電陰極の位置x(nm)とエネルギーE(eV)との関係を示すグラフである。 半導体光電陰極の位置x(nm)とAl組成比X(%)との関係を示すグラフである。 半導体光電陰極の位置x(nm)とAl組成比X(%)との関係を示すグラフである。 光電陰極の半導体層の物理量を示す表である。 半導体光電陰極の位置x(nm)とAl組成比X(%)との関係を示すグラフである。 図24は、半導体光電陰極の位置x(nm)と相対エネルギー(eV)の関係を示すグラフである。 △X(nm)と半導体光電陰極の量子効率(%)間の関係を示すグラフである。 R(%/nm)と半導体光電陰極の量子効率(%)との関係を示すグラフである。 比較例(Type1)に係る半導体光電陰極の縦断面図である。 比較例に係る化合物半導体層(GaN)の断面図(図28(A))と、エネルギーバンド図(図28(B))である。 波長(nm)と量子効率(%)の関係を示すグラフである。 反射モード時の量子効率/透過モード時の量子効率の波長依存性を示すグラフであり、エネルギーバンド下端のピーク位置xpを変化させたものである。 実施例(Type2,Type3)に係る半導体光電陰極の縦断面図である。 実施例に係る化合物半導体層(AlGaN系積層構造)の断面図(図6(A))と、エネルギーバンド図(図6(B))である。 化合物半導体層の厚み方向の位置xとAl組成比Xの関係を、化合物半導体層と共に、タイプ毎に示すグラフである。 化合物半導体層の厚み方向の位置xと不純物(Mg)濃度の関係を、化合物半導体層と共に、タイプ毎に示すグラフである。 半導体光電陰極の製造方法について説明する図である。 各タイプ毎のサンプルの条件の一覧を示す図表である。 Type1のサンプルにおける波長(nm)と量子効率(%)の関係を示すグラフである。 Type1のサンプルの位置x(nm)と伝導帯下端のエネルギーレベルEc(a.u.)の関係を示すグラフ(図38(A))、波長(nm)と光吸収量I(a.u.)及び量子効率(%)の関係を示すグラフ(図38(B))である。 Type2のサンプルにおける波長(nm)と量子効率(%)の関係を示すグラフである。 Type2のサンプルの位置x(nm)と伝導帯下端のエネルギーレベルEc(a.u.)の関係を示すグラフ(図40(A))、波長(nm)と光吸収量I(a.u.)及び量子効率(%)の関係を示すグラフ(図40(B))である。 Type3のサンプルにおける波長(nm)と量子効率(%)の関係を示すグラフである。 Type3のサンプルの位置x(nm)と伝導帯下端のエネルギーレベル(a.u.)Ecの関係を示すグラフ(図42(A))、波長(nm)と光吸収量I(a.u.)及び量子効率(%)の関係を示すグラフ(図42(B))である。 化合物半導体層の位置xと伝導帯下端のエネルギーレベルEc(a.u.)の関係を示すグラフ(図43(A):Type2、図43(B):Type3)である。 化合物半導体層におけるAlの組成勾配(%/nm)と量子効率(%)の関係を示すグラフ(図44(A))、化合物半導体層におけるAlの傾斜層厚さ(nm)と量子効率(%)の関係を示すグラフ(図44(B))である。 化合物半導体層の位置x(nm)と光吸収量I(%)の関係を示すグラフである。 Type1〜Type3のサンプルにおける波長(nm)と量子効率(%)の関係を広範囲(200nm〜800nm)に示すグラフである。 数式を示す図表である。
以下、実施の形態に係る半導体光電陰極について説明する。なお、同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
まず、比較例(Type1)に係る光電陰極について説明する。
図1は、比較例(Type1)に係る半導体光電陰極の縦断面図である。この光電陰極は、GaNからなる化合物半導体層1、SiOからなる接着層2、ガラス基板3、アルカリ光電陰極材料からなるアルカリ金属含有層4を備えている。化合物半導体層1は、接着層2を介してガラス基板3に貼り付けられており、製造時においては化合物半導体層1の貼り付け後に、化合物半導体層1の露出表面上にアルカリ光電陰極材料を堆積する。以下、このようなガラス基板への貼り付けを行う光電陰極を、グラスボンディング構造と呼ぶこととする。
ガラス基板3を構成するシリカは、紫外線を透過する「UVガラス」であり、硼硅酸ガラスからなる。硼硅酸ガラスとしては、例えばコバール(KOVAR)ガラスが知られている。このようなガラスは、概ね波長185nm以上の波長域における透過率を高めたガラスであり、コーニング社製の「9741」やショット社製の「8337B」等を用いることができる。このようなUVガラスは、少なくとも240nm以上の紫外線透過率がサファイアより高く、2μm以上の波長を有する赤外線に対する吸収率がサファイアより高い。
アルカリ金属含有層4に用いられるアルカリ光電陰極材料としては、Cs−I、Cs−Te、Sb−Cs、Sb−Rb−Cs、Sb−K−Cs、Sb−Na−K、Sb−Na−K−Cs、Ag−O−Cs、Cs−Oなどが知られている。本例では、アルカリ光電陰極材料として、アルカリ酸化物であるCs−Oを用いることとする。アルカリ金属は、仕事関数を低下させ、負の電子親和力を与えて、真空準位へ電子を容易に放出させる機能がある。
ここでは、化合物半導体層(AlGa1−XN(但し、X=0))1と接着層(SiO層)2との界面位置をx軸の原点0とし、この界面からアルカリ金属含有層4に向かう化合物半導体層1の厚み方向の位置をxとする。この半導体光電陰極には、ガラス基板3側から光が入射し、接着層2を透過して、化合物半導体層1に至る。化合物半導体層1内では光電変換が行われ、入射光に対応して発生した電子は、アルカリ金属含有層4を介して、真空中に放出される。
図2Aは、比較例に係る光電陰極の化合物半導体層(GaN)1の断面図、図2Bはエネルギーバンド図である。
化合物半導体層1の全体厚みDに、僅かなアルカリ金属含有層4の厚みを加えた厚みをtとする。グラスボンディング構造のGaAs透過型光電陰極やSi系デバイスなどにおけるエネルギーバンドギャップの挙動と同様に、ガラスとGaN結晶の異種接合界面には欠陥準位が形成され、この準位からのキャリアが作る電界によりエネルギーバンドが結晶から界面に向かって下がるような湾曲が生じていると考えられる。一方、p型半導体の真空側表面では、真空側に向かって下るバンド湾曲が生じる。透過型GaN光電陰極では100 nmという薄い厚さの中で、この両者の効果が合わさり、山のような形状のエネルギーバンドを形成していると推測される。
透過モード動作では、バンド構造の山の頂上の光入射側(0<x<xの放出不能領域R(I))で励起された電子は頂上を越えて真空側斜面へ行くことは出来ず、真空中にとり出されることはない。この光電陰極を反射モード動作とした場合は、真空側から光が入射し、右側に電子が出る。したがって、バンドの山の頂上の位置が重要となる。光電陰極として有効に機能しているのは、どちらの動作モードでも頂上より真空側の領域(x<x<tの放出寄与領域R(II))であるが、透過モードではバンドの頂上より光入射側の領域で光が多く吸収されるため、実質的に光電陰極として動作している右側の領域へ入射する光量はかなり減少してしまう。逆に反射モードでは、より多く光吸収が生じた領域が光電子放射に寄与するため、高感度となる。
この仮説を検証するべく、比較例(Type1)に係る光電陰極の量子効率を測定した。
図3は、比較例に係る光電陰極の波長(nm)と量子効率(%)の関係を示すグラフである。
同図では、光電管に封入した透過型構造光電陰極の、透過モードと反射モードの分光感度が示されている。なお、この光電陰極の厚さは、127nmである。 本願発明者らは、これまで、グラスボンディング構の透過型光電陰極や、サファイア基板上に成長したGaNを用いた透過型光電陰極を作製してきたが、得られた最高の量子効率は25%以下であった。一方、Type1のグラスボンディング構造の反射型GaN光電陰極を光電管に封入し、感度を測定すると、波長280nmにおいて、量子効率は35%という高い値を得る一方で、透過モードの量子効率は反射モードの場合よりも低いという結果が得られた。これは、上述の如くエネルギーバンドギャップが湾曲していることを実証するものである。
以上の考えのもとで、エネルギーバンドギャップの山の頂上の位置xpを求める。図3の結果と、GaNの複素屈折率を用いて、反射モード動作と透過モード動作の量子効率を見積ることができる。物質に入射した光は、通過した場所ごとに少しずつ吸収されていき、入射面から距離xの位置での強度は、ランベルトの法則(Lambert’s law)に従う。
反射モードと透過モードの理論的な量子効率は、電子の拡散長と脱出確率を用いて求めることができるが、電子の拡散長と脱出確率は福家らの報告(S. Fuke, M. Sumiya, T. Nihashi, M. Hagino, M. Matsumoto, Y. Kamo,M. Sato, K. Ohtsuka, “Development of UV-photocathode using GaN film on Sisubstrate”, Proc. SPIE 6894, 68941F-1-68941F-7 (2008))で、それぞれ235nm、0.5という値が求まっている。反射モードと透過モードの量子効率の比の計算値と、実測値の量子効率の比を比べることができる。
なお、反射時の量子効率は、真空側界面へ到達する全電子数(NSR(反射型)、NST(透過型))は、以下のように計算できる。
なお、Iは入射強度、αは吸収係数、Lは電子の拡散長であり、光電陰極からガラス基板を除いた部分(化合物半導体層1とアルカリ金属含有層4の部分)の厚みをtとするが、アルカリ金属層4の物性は、化合物半導体層1と同一であると近似する。
GaN結晶を貼りつけたガラス面板の吸収の影響を避けるため、290nm以上の範囲で比較を行う。拡散長を235nmとし、バンドの山の位置xを表面から40nm,52nm,60nmとした場合の結果を実測値と比較した。その結果を図4に示す。
図4は、(反射モード時の量子効率/透過モード時の量子効率)の波長依存性を示すグラフであり、エネルギーバンド下端のピーク位置xpを変化させたものである。このエネルギーバンドの山の位置xは、xp=52nmの時に実測値と計算値が最もよく一致した。
これにより、化合物半導体層1の厚さ(全体厚みD)のほぼ中央(D/2の位置)(若干ガラス接合界面より)が、伝導帯(下端)のエネルギーの山の頂上であることが明らかとなった。約100nmの厚さのGaN光電陰極では、反射モードでも透過モードでも光電陰極の厚さの半分が光電子放出に寄与していないが、光が入射する側ではより多くの光が吸収されるため、反射モードに比べて透過モード動作時に量子効率が低い原因となっている。
すなわち、量子効率を改善するには、化合物半導体層1のほぼ中央に位置するピーク位置xpを、ガラス基板側に移動させることが重要となる。実施例に係る半導体光電陰極では、ピーク位置xpをガラス基板側にずらし、更に、ガラス基板側のエネルギーバンドギャップEgを広くすることで、際立って優れた量子効率を得ることができる。
図5は、実施例(Type2,Type3)に係る半導体光電陰極の縦断面図である。比較例(Type1)の半導体光電陰極との相違点は、化合物半導体層1を、3つの領域11,1M,12からなることとし、2つの領域1M、12において、半導体超格子構造を構成するように、AlをGaNに添加したことにあり、その他の構造は、比較例のものと同一である。
実施例に係る半導体光電陰極は、ガラス基板3にSiO層からなる接着層2を介して貼り付けられた化合物半導体層1(AlGa1−XN層(0≦X<1))と、このAlGa1−XN層上に形成されたアルカリ金属含有層4とを備えている。化合物半導体層1を構成するAlGa1−XN層は、アルカリ金属含有層4に隣接する第1領域11と、SiO層からなる接着層2に隣接する第2領域12と、第1領域11と第2領域12との間に位置する中間領域1Mとを備えている。
図18は、井戸層(GaN)Aと、障壁層(AlGaN)Bとからなる半導体超格子構造を示している。中間領域1M及び第2領域12は、それぞれ図18に示す半導体超格子構造からなる。すなわち、第2領域12は、井戸層Aと障壁層Bを交互に積層してなる半導体超格子構造を有し、中間領域1Mは井戸層Aと障壁層Bを交互に積層してなる半導体超格子構造を有している。半導体超格子構造は、厚み50nmであって、10対のAlN/GaNからなる超格子構造を有しており、井戸層Aの厚み2.5nm、障壁層Bの厚み2.5nmとすることができる。超格子の層数は、これに限定されるものではない。
ここで、隣接する井戸層Aと障壁層Bの対の領域を単位区間と規定する。井戸層Aの厚みt(A)と障壁層Bの厚みt(B)が同一の場合、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、井戸層A内の組成比X(A)と、障壁層B内の組成比X(B)を加算して、2で割った値となる。単位区間内の平均値は、(t(A)×X(A)+t(B)×X(B))/(t(A)+t(B))である。井戸層及び障壁層内の組成比Xは一定あるとするが、各層内において揺らぎがる場合には、層内の平均値を、各層の組成比とする。
図5を参照すると、少なくとも中間領域1Mにおいては、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、第2領域12とSiO層2との界面位置から離れるにしたがって単調に減少している。また、実施例1においては、第2領域12においては、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、中間領域1MにおけるAlの組成比Xの単位区間内の平均値の最大値以上である。また、第1領域11においては、Alの組成比Xの平均値は、中間領域1MにおけるAlの組成比Xの単位区間内の平均値の最小値以下である。
ここで、第2領域12からアルカリ金属含有層4に向かう化合物半導体層1(AlGa1−XN層)の厚み方向の位置をxとし、第2領域12とSiO層からなる接着層2との界面位置を、位置xの原点0として設定する。ここで、Alの組成比Xの平均値XAV(第1領域11においては平均値、中間領域1M、第2領域12においては単位区間内平均値)=g(x)とする場合(単位区間内平均値を用いる離散関数においては、その値を通る連続関数に近似したもの)、中間領域1Mにおける組成比Xの単位区間内の平均値の最小値をXMIN(M)、第2領域12における組成比Xの単位区間内の平均値の最小値をXMIN(2)として、以下の条件(1)〜(3)が満たされている。
(1):第1領域11では、0≦g(x)≦XMIN(M)を満たしている。
(2):中間領域1Mでは、g(x)は単調減少関数であって、且つ、g(x)≦XMIN(2)を満たしている。
(3):第2領域12では、g(x)は単調減少関数(実施例1)又は一定値(実施例2)である。
なお、(4)第2領域12におけるg(x)が単調減少関数である場合には、第1領域の厚みD1は18(nm)以上であり、(5)第2領域12におけるg(x)が一定値である場合には、第1領域11の厚みD1は31(nm)以上であることが好ましい。
Al組成比Xと第1領域の厚みD1が上述の条件を満たす場合、従来のGaN光電陰極と比較して、際立って優れて量子効率を改善することが可能である。
なお、第1領域11のAlの組成比X及び半導体超格子構造における井戸層の組成比Xは、好ましくは0であり、この領域はGaNからなることが好ましいが、低濃度のAlが含まれてもよい。
実施例では、2つのタイプの光電陰極が用意される。Type2の半導体光電陰極は、条件(4)が満たされるものであり、Type3の光電陰極は、上記条件(5)が満たされるものである。なお、Alの組成比Xが単調減少する場合には、当該半導体層の2つの界面位置において、最大値と最小値がそれぞれ規定されるものであり、原則的にはこれらの位置間を組成比が一定の勾配で変化するが、製造上の誤差を含むため、現実の製品では、厚み方向の位置変化に対して組成比Xが常に一定割合で変化をするわけではない。
図6(A)は、実施例に係る化合物半導体層(AlGaN系積層構造)の断面図、図6(B)はエネルギーバンド図である。比較例の半導体光電陰極と比較して、伝導帯下端のエネルギーレベルのピーク位置xpが、化合物半導体層1の厚み方向中央位置よりもガラス基板側に移動している。これは、Alの組成比Xを中央位置よりもガラス基板側で増加させたためであり、電子の放出不能領域R(I)が減少し、放出寄与領域R(II)が増加している。ガラス基板の近傍では、Alの組成比Xの単位区間内の平均値が0.3以上となることで、かかる不能領域での短波長(波長280nm)の光の透過率を増加させ、放出寄与領域において光電変換される光量を増加させている。
なお、化合物半導体層1(AlGa1−XN層)の全体の厚みD、第1領域の厚みをD1、中間領域1Mの厚みをDM、第2領域12の厚みをD2、許容誤差をEとする。上述のように、量子効率を劇的に向上させるためには、中央位置(D/2)よりもガラス基板側の領域のエネルギーバンドギャップを調整することが重要である。
すなわち、実施例の半導体光電陰極は、以下の関係式を満たしている。
(D2+DM)×(100±E)%=D/2、
E≦60
化合物半導体層1は、組成が一様である場合には、その厚みDの2分の1の位置の近傍に伝導帯下端のエネルギーレベルのピークが位置するので、この位置xpよりもガラス基板側のエネルギーレベルを、中間領域1M及び第2領域12によって調整することで、真空中へ放出できない電子を高いエネルギー準位に移動させることができ、原理的に電子の放出確率を高めることができる。許容誤差Eは、60(%)以下の範囲程度であれば、電子放出効率の増加が得られると考えられるが、もちろん、E≦20(%)とすれば、更に効果が得られると考えられ、E≦10(%)とすれば、更に効果が得られると考えられる。
なお、AlGaNは、Al(原子番号13)、Ga(原子番号31)、N(原子番号7)の化合物であり、その格子定数は、原子サイズがGaよりも小さいAlの組成比Xが増加すれば、小さくなる。化合物半導体においては、格子定数が小さいほどエネルギーバンドギャップEgが大きくなる傾向があるので、組成比Xが増加すると、エネルギーバンドギャップEgは大きくなり、これに対応する波長λは小さくなる。
第2領域12における組成比Xの単位区間内の平均値の最小値XMIN(2)は、以下の関係式を満たしている。
0.15≦XMIN(2)≦0.4
第2領域12におけるAlの組成比Xの単位区間内平均値が0.15以上となれば、第2領域12のエネルギーバンドギャップEgは大きくなり、短波長(280nm以下)の光が、特にガラス基板側では第2領域12を容易に透過するようになるので、量子効率は著しく向上する。また、Alの組成比Xは製造上の限界(X=0.8)を超えて増加させることはできないので、組成比Xの単位区間内平均値は0.4以下であることが好ましい。Alの組成比Xが上限を超えると、結晶性が著しく劣化するからである。
また、第1領域11の厚みD1は100nm以下であることが好ましい。この場合には、量子効率を増加させることが可能である。一般のGaN光電陰極の厚みは約100nmであるため、少なくともD1が100nm以下であれば、光電変換が十分に行われ、電子放出が行われると考えられる。また、電子の拡散長235nmを超えると、真空中への電子放出が著しく減少するため、厚みD1は235nm以下が好ましい。上述のように、全体の厚みDの2分の1をD1(117.5nm)とし、許容誤差を60%とすれば、全体厚Dは概ね235nm以下であり、許容限界DM+D2=47(=117.5×0.4)nmの場合に、D1=188(=235−47)nm以下が必要となる。同様に、許容誤差を20%とすれば、D1=141(=235−117.5×0.8)nm以下が必要となる。上述のように、厚みD1は235nm以下が好ましく、188nm以下が更に好ましく、141nm以下が更に好ましく、100nm以下が好適である。
図7(A)〜(D)は、化合物半導体層1の厚み方向の位置xとAl組成比Xの関係を、化合物半導体層と共に、タイプ毎に示すグラフであり、図7(A)は化合物半導体層を示す図であり、図7(B)、図7(C)、図7(D)は、化合物半導体層の厚み方向の位置xとAl組成比Xの関係をグラフである。
Type1(比較例)の半導体光電陰極では、Alの組成比Xは全ての領域11,1M,12において零である。
Type2(実施例1)の半導体光電陰極では、第1領域11(位置xb〜xc)におけるAlの組成比Xは零である。中間領域1M(位置xa〜xb)におけるAlの組成比X(単位区間内平均値)を結ぶ関数は、位置xに対して単調減少(xに対するXの変化の傾き(−a))である。aは一定値である。第2領域12(位置0〜xa)におけるAlの組成比X(単位区間内平均値)を結ぶ関数は位置xに対して単調減少(xに対するXの変化の傾き(−a))である。aは一定値である。
第2領域12における組成比X(単位区間内平均値)の最大値Xi、最小値Xjであり、中間領域1Mにおける組成比X(単位区間内平均値)の最大値はXj、最小値は0である。これらの最大値及び最小値は、各層の両界面の位置において得られる。本例のType2では、Xi=0.3、Xj=0.15に設定する。
Type3(実施例2)の半導体光電陰極では、第1領域11(位置xb〜xc)におけるAlの組成比Xは零である。中間領域1M(位置xa〜xb)におけるAlの組成比X(単位区間内平均値)は位置xに対して単調減少(xに対するXの変化の傾き(−2×a))である。aは一定値である。第2領域12(位置0〜xa)におけるAlの組成比X(単位区間内平均値)は位置xに依存せず一定値(X2)である。第2領域12における組成比X(単位区間内平均値)の最大値或いは最小値X2は、中間領域1Mにおける組成比X(単位区間内平均値)の最大値X2である。本例のType3では、X2=0.3に設定する。
図8(A)〜図8(D)は、化合物半導体層の厚み方向の位置xと不純物(Mg)濃度の関係を、化合物半導体層と共に、タイプ毎に示すグラフである。図8(A)は化合物半導体層を示す図であり、図8(B)、図8(C)、図8(D)は、化合物半導体層の厚み方向の位置xと不純物(Mg)濃度の関係をグラフである。
Type1(比較例)の半導体光電陰極では、Mg濃度は、全ての領域11,1M,12において一定(=Cj)である。
Type2(実施例1)の半導8体光電陰極では、Mg濃度は、第1領域11において一定(=Cj)である(実施例1−1)。但し、Al組成比Xをガラス基板側に増加させるのに伴って、Mg濃度をガラス基板側に向けて濃度Ciまで増加させてもよい(実施例1−2)。換言すれば、p型の不純物濃度Cは、位置xに対する単調減少関数である関数g(x)に比例する。組成比の変化と同様に不純物濃度を変化させることで、Al組成の増加によるキャリア濃度低下の補償という効果が期待される。
Type3(実施例2)の半導体光電陰極では、Mg濃度は、第1領域11において一定(=Cj)である。Al組成比Xをガラス基板側に増加させるのに伴って、Mg濃度をガラス基板側に向けて濃度Ckまで増加させる。換言すれば、p型の不純物濃度Cは、第2領域12においては一定値であり、中間領域1Mにおいては、位置xに対する単調減少関数である関数g(x)に比例する。組成比の変化と同様に不純物濃度を変化させることで、Al組成の増加によるキャリア濃度低下の補償という効果が期待される。
上記不純物濃度Cj、Ci,Ckの値は、それぞれ以下の通りである。
Cj=7×1018cm−3
Ci=2×1018cm−3
Ck=2×1018cm−3
また、負の電子親和力(NEA)の実現と過剰ドープによる結晶性低下の観点から、上記不純物濃度Cj、Ci,Ckの好適な範囲は、それぞれ以下の通りである。
Cj=1×1018cm−3以上3×1019cm−3以下
Ci=3×1018cm−3以上5×1019cm−3以下
Ck=3×1018cm−3以上5×1019cm−3以下
図9は、半導体光電陰極の製造方法について説明する図である。
まず、貼り付け前のAlGaN結晶をSi基板上に製造し(図9(A))、続いて、Si基板及び不要な半導体層を研磨により除去して化合物半導体層1を作製し、最後に、ガラス基板3に化合物半導体層1を貼り付け(図9(B))、一部分が除去される(図9(C))。以下、詳説する。
最初に、図9(A)に示すように、5インチのn型(111)Si基板を用意する。次に、Mgを添加した化合物半導体層1をMOVPE(有機金属気相エピタキシー)法により、Si基板上に成長させるが、化合物半導体層1の成長前に、応力緩和のためのバッファ層22と、アンドープのGaN層(テンプレート層)23を、Si基板21上に予め順次成長させておく。バッファ層22は、厚み1200nmであって、40対のAlN/GaNからなる超格子構造を有しており、アンドープのテンプレート層23は、650nmの厚みを有している。これにより、クラックと応力が無い化合物半導体層1(AlGa1−XN)をSi基板21上に形成することができる。
MOVPE法におけるGaの原料として、トリメチルガリウム(TMGa)、Alの原料としてトリメチルアルミニウム(TMA)、Nの原料としてアンモニア(NH)を用いることができ、これらの原料比率を制御することで、AlGa1−XNにおける組成比Xを調整することができる。なお、水素ガスがキャリアガスとして用いられる。AlN/GaN超格子構造のバッファ層22と、GaNのテンプレート層23の成長温度は1050℃である。バッファ層22の成長時のチャンバ内の圧力は1.3×10Pa、テンプレート層23の成長時のチャンバ内圧力は1.3×10〜1.0×10Paである。エッチング除去前の化合物半導体層1の表面から200nmの領域にはMgを(CpMg:ビスシクロペンタジエニルマグネシウム)を用いて成長時に添加する。
また、バッファ層22の製造に関して、AlN層の形成においては、基板温度を1120℃とした後に、TMAガスの流量即ちAlの供給量を約63μmol/分、NHガスの流量即ちNHの供給量を約0.14mol/分とし、基板温度を1120℃とし、TMAガスの供給を止めてから反応室内にTMGガスとNHガスを供給して、基板21の一方の主面に形成された上記AlNから成る第1の層の上面にGaNから成る第2の層を形成する。
テンプレート層23の形成時には、反応室内にTMGガス、NH ガスを供給してバッファ層22の上面にGaNを形成する。基板温度を1050℃とした後、TMGガスの流量即ちGaの供給量を約4.3μmol/分、NH ガスの流量即ちNHの供給量を約53.6mmol/分とする。
基板温度を1050℃とし、反応室内にTMGガス、アンモニアガス及びCp2Mgガスを供給して、あるいはAl原料として、TMAガスを供給して、テンプレート層23上にp型のGaN層、又はp型のAlGaN層を形成する。TMGガスの流量を約4.3μmol/分、TMAガスの流量をAl組成の変化に応じて調整する。例えば、組成Xを0.30とする場合には、TMAガスの流量は約0.41μmol/分である。CpMgガスの流量をAl組成が0.3のとき約0.24μmol/分、Al組成が0のとき約0.12μmol/分とする。化合物半導体層1内におけるp型の不純物濃度は約0.1〜3×1018cm−3である。なお、上述の製造方法によれば、バッファ層22の結晶方位に対して、各層23、1の結晶方位を揃えることができる。第2領域12と中間領域1Mにおける超格子構造の形成方法は、バッファ層22の場合と同じであり、AlNの代わりに、AlGaNを形成するよう、不純物ガスと共に、原料ガスとして、TMA,NHの他に、TMGaも供給すればよい。
比較例(Type1)の構造においては、化合物半導体層1の初期の厚みが200nmであり、実施例1(Type2)の構造においては、表面から50nmの領域においてAl組成の単位区間内平均値が徐々に変化する半導体超格子構造のグレーデッドAlGaNであり、実施例2(Type3)の構造においては、表面から25nmの領域がAl組成の単位区間内平均値が一定のAlGaNであって、表面から25nm〜50nmまでがAl組成の単位区間内平均値が徐々に変化する半導体超格子構造のグレーデッドAlGaN層である。なお、化合物半導体層1の初期厚みは200nmであるが、全体の厚みの概ね半分の領域はエッチングにより除去される。
化合物半導体層1の成長後、その露出表面上に厚みが数百nmのSiOからなる接着層2を、CVD(化学的気相成長)法で形成する。
次に、図9(B)に示すように、接着層2を介して化合物半導体層1にガラス基板3を熱圧着して貼り付ける。圧着時の温度は650℃である。
次に、図9(C)に示すように、Si基板21を除去し、続いて、バッファ層22、テンプレート層23、化合物半導体層1の一部を除去する。Si基板21は、フッ酸、硝酸、酢酸の混合液を用いて、除去する。この際、バッファ層22は、エッチングストップ層としても機能する。バッファ層22、テンプレート層23、及び化合物半導体層1の半分の厚み(100nm)の領域は、リン酸と水の混合液により除去する。これにより、化合物半導体層1の厚みは、概ね100nmとなる。なお、本例では、化合物半導体層において除去する量を変更することで、全体の厚みDを変更することができる。
以上のように、上述の半導体光電陰極を製造する方法は、支持基板21上にGaNバッファ層22、GaNテンプレート層23、化合物半導体層1、SiO層2を順次堆積する工程と、SiO層2を介して化合物半導体層1にガラス基板3を貼り付ける工程と、支持基板21、バッファ層22、テンプレート層23、及び化合物半導体層1の一部を順次除去し、化合物半導体層1の残留領域を、AlGa1−XN層(11,1M,12)とする工程とを備えている。この製造方法によれば、上述の半導体光電陰極を容易に製造することができる。
実施例1の具体的なAl組成は以下の通りである。
図10は、実施例1において、位置x(nm)とAl組成比Xとの関係を示すグラフである。化合物半導体層1の全体の厚みを100nmとする。Al組成比Xは、位置xが大きくなるにしたがってパルス状に変化し、単位区間内の平均値(井戸層/障壁層対内の平均値(境界位置の組成と規定する)は減少している。第2領域12の厚みは25nm、中間領域1Mの厚みは25nm、第1領域11の厚みは50nmである。製造初期における第1領域11の厚みは150nmであるが、上述のエッチング工程において、50nmまでエッチングされたものである。第2領域12における組成比Xの最大値は0.6、最小値は0であるが、単位区間内平均値の最大値は概ね0.3、最小値は概ね0.15である。また、中間領域1Mにおける組成比Xの最大値は概ね0.3、最小値は0である。
図11は、位置x(nm)とエネルギーバンドギャップEg(eV)との関係を示すグラフである。ここで、エネルギーバンドギャップEg(eV)は、第2領域及び中間領域においては、単位区間平均値を示しており、エネルギーバンドギャップEgはAlの組成比Xに対応する。ガラス基板側において、Eg=4.3(eV)、第1領域11と中間領域1Mの界面(x=50nm)において、3.4(eV)のエネルギーバンドギャップとなっている。
図12は、位置x(nm)と不純物ガス流量(a.u.)との関係を示すグラフである。位置xが大きくなるにしたがって、x=50nmまでは、不純物ガスの量は徐々に減少している。x=50nm以上は第1領域11であり、不純物ガスの量は一定値となる。第1領域11におけるMgの添加量(ガス流量)を1とすると、第2領域のMgの添加量(ガス流量)の最大値は、その4倍となっている。
実施例2の具体的なAl組成は以下の通りである。
図13は、実施例2において、位置x(nm)とAl組成比Xとの関係を示すグラフである。化合物半導体層1の全体の厚みを100nmとする。Al組成比Xは、位置xが大きくなるにしたがってパルス状に変化し、単位区間内の平均値(井戸層/障壁層対内の平均値(境界位置の組成と規定する)は、第2領域12においては一定値、中間領域1Mにおいては位置xと共に減少している。第2領域12の厚みは25nm、中間領域1Mの厚みは25nm、第1領域11の厚みは50nmである。製造初期における第1領域11の厚みは150nmであるが、上述のエッチング工程において、50nmまでエッチングされたものである。第2領域12における組成比Xの最大値は0.8、最小値は0であるが、単位区間内平均値は一定値の0.4である。また、中間領域1Mにおける組成比Xの最大値は概ね0.4、最小値は0である。
図14は、位置x(nm)とエネルギーバンドギャップEg(eV)との関係を示すグラフである。ここで、エネルギーバンドギャップEg(eV)は、第2領域及び中間領域においては、単位区間平均値を示しており、エネルギーバンドギャップEgはAlの組成比Xに対応する。ガラス基板側において、Eg=4.6(eV)、第1領域11と中間領域1Mの界面(x=50nm)において、3.4(eV)のエネルギーバンドギャップとなっている。
図15は、位置x(nm)と不純物ガス流量(a.u.)との関係を示すグラフである。位置xが大きくなるにしたがって、第2領域内(x=25μm以下)では一定値、x=25以上50nm以下までは、不純物ガスの量は徐々に減少している。x=50nm以上は第1領域11であり、不純物ガスの量は一定値となる。第1領域11におけるMgの添加量(ガス流量)を1とすると、第2領域のMgの添加量(ガス流量)の最大値は、その4倍となっている。
なお、実施例1の場合の数値データは、以下の通りである。
図16は、波長(nm)と量子効率(%)との関係を示すグラフである。比較例では、実施例1における第1領域11によって、化合物半導体層1の全てが構成されているが、その厚みは108nmとした。また、実際の第1領域11の厚みは、実施例1では57nmとなり、化合物半導体層1の全体厚みは107nmとした。
実施例1の量子効率は、比較例の量子効率も著しく高くなることが分かる。比較例では、炎検出用途で使用する波長280 nmの量子効率は25%を超えることはなかったが、実施例1においては、上述の超格子構造を調整することで、界面欠陥によるバンドの湾曲を打ち消すようにバンドギャップを形成でき、結果として光電子放出に寄与する領域を比較例の1.5倍以上に拡大でき、量子効率を著しく向上することができた。
また、第2領域、中間領域においては、Al組成比が高くなるため、光電子放出に寄与しない領域の波長280nmに対する透過率を向上でき、量子効率が向上している。比較例では、波長280nmの光に対して、量子効率が21.4%であるが、実施例1では、量子効率が25.2%となった。また、比較例の量子効率の最大値は21.4%(280 nm)であるが、実施例1では量子効率が28.4%(320nm)へと向上した。
また、この原理は、実施例2にも適用できるため、実施例2の構造においても、同様に量子効率が高くなるものと考えられる。
また、上述の実施例においては、第1領域11においてGaNを用いたが、これがAlを含有することで、AlGaNとなっても、エネルギーバンドギャップの解析から、伝導帯下端のエネルギーピーク位置を調整することは可能なため、一定の量子効率改善効果は得られる。また、p型の不純物としてMgを添加したが、各種の半導体層の添加量は、エネルギーバンド構造に大きな影響を与えない範囲で、自由に調整することができる。例えば、製造時に利用するノンドープのGaN層にMgを添加してもよい。
製造時に利用する基板21(図9)としては、高品質なGaN結晶が得られる観点からSiが好ましいが、これはサファイア、酸化化合物、化合物半導体、SiCなど、各種の基板を用いることができる。また、製造時に利用するSi基板の不純物濃度は、5×1018cm-3 〜5×1019cm-3 程度であり、この基板の抵抗率は0.0001Ω・cm〜0.01Ω・cm程度である。n型の不純物としてはAs(砒素)を用いることができる。
製造時に用いたバッファ層22(図9)を構成する半導体超格子構造は、AlN層とGaN層を交互に積層したものを利用したが、これはAlN層に代えてAlGaN層を用いることもできる。超格子構造への不純物添加量は、任意であり、p型、n型、ノンドープのいずれも可能であるが、不要な結晶性劣化要因を作らない観点から、ノンドープとすることが好ましい。バッファ層12を構成する第1の層(AlN)aの厚みは、好ましくは5×10−4μm〜500×10−4μm即ち0.5〜50nm、第2の層(GaN)の厚みは、好ましくは5×10−4μm〜5000×10−4μm、即ち0.5〜500nmである。なお、バッファ層22を構成する複数の第1の層と複数の第2の層とが交互に積層された複合層において、各層の厚みを全て同一とする必要はない。この構造のバッファ層22を用いることで、Si基板上に平坦性が良く、結晶性の良い半導体機能層を得ることができる。上述の例では、第1の層(AlN)の厚みは5nm、第2の層(GaN)の厚みを25nmとする。バッファ層21の厚みは、1200nmであるが、層数を増やして例えば1800nmとすることもできる。
なお、各位置における組成比Xは、±10%の誤差を含むことができる。上述のような関数の場合には、伝導帯下端のエネルギーの山の位置より、ガラス基板側の領域のエネルギーを持ち上げることができるため、量子効率を向上させることができる。厚みD2は、厚みDMとは、ほぼ同等(誤差±50%とする)の関係(D2=DM±DM×50%)を満たすものとする。なお、上述の実施形態では、中間領域1Mと第1領域11及び第2領域12とはそれぞれ接触していたが、これらの間に特性に影響を与えない程度のAlGaN層を介在させることもできる。
図17は、その一部破断して示すイメージ増強管の正面図である。上記、半導体光電陰極を用いたイメージ増強管を作製した。
イメージ増強管の製造においては、まず、化合物半導体層1を貼り付けたガラス基板(面板)、MCP(マイクロチャンネルプレート)を内蔵する包囲管、蛍光出力板、Cs金属供給体を、真空チャンバ内に配置する。次に、真空チャンバ内の空気を排気し、真空チャンバ内の真空度を増加させるために、真空チャンバのベーク(加熱)を行う。これにより真空度は、真空チャンバの冷却後10−7Paに到達した。更に、MCPと蛍光出力板に電子ビームを照射し、これらの内部にトラップされたガスを除去する。しかる後、ガラス基板の光電子放出面を加熱して清浄化し、これに連続して、Cs金属供給体を加熱して、Csと酸素を光電子放出面(化合物半導体層1の露出表面)に吸着させることで、当該光電子放出面を活性化し、その電子親和力を低下させる。最後に、ガラス基板及び蛍光出力板を、インジウム封止材を用いて、包囲管の両開口端にそれぞれ取り付けて、包囲管を密閉した後、これを真空チャンバ―内から取り出す。
このイメージ増強管101は、セラミック製の側管を含む真空容器の内部で光電面、MCP(マイクロチャンネルプレート:電子増倍部)、及び蛍光面を近接して配置した近接型映像増強管である。
図17に示すように、イメージ増強管101の内部は、両端が解放された略中空円筒状の側管(包囲管)102の両開口端部を略円板状の入射窓(面板)103及び略円板状の出射窓104によって気密に封止することにより、高真空に保持されている。すなわち、側管102、入射窓103、及び出射窓104によって真空容器が構成されている。
この入射窓103の真空側表面の中央領域には光電面(化合物半導体層1)105が形成されている。入射窓103と光電面105とで光電陰極106が構成される。また、出射窓104の真空側表面の中央領域には、蛍光面107が形成されている。さらに、光電面105と蛍光面107との間には、円板状のMCP108が、光電面105及び蛍光面107に対向して所定の間隙をそれぞれ保持した状態で配置されている。
このMCP108は、側管102の一部を構成する2つの略リング状のコバール金属製の電極109B,109Cによって挟まれることによって側管102内に保持されている。詳細には、MCP108は、その光電面105側表面が導電性のスペーサ110及び導電性のスプリング111を介して電極109Bによって押さえつけられ、その蛍光面107側表面が導電性のスペーサ112を介して電極109Cによって押さえつけられることによって、側管102内に保持される。
入射窓103の真空側表面の周辺領域には、金属製の導電膜(図示せず)が光電面105と電気的に接触した状態で形成されている。この導電膜は、側管102と入射窓103とを接合するための略リング状のコバール金属製部材であって側管102の一部を構成する電極109Aと、接合部材であるインジウム113を介して電気的に接触している。
出射窓104の真空側表面の周辺領域には、金属製の導電膜(図示せず)が蛍光面107と電気的に接触して形成されている。この導電膜は、側管102と出射窓104とを接合するための略リング状のコバール金属製部材である電極109Dと電気的に接触している。電極109Dは、略円筒状のコバール金属製部材である電極109Eの内側に嵌め込まれており、電極109Dと電極109Eとは互いに電気的に接触している。さらに、この電極109Dと出射窓104とはフリットガラス114によって封止されている。これらの電極109D,109Eも側管2の一部を構成する。
側管102を構成する電極109A,109B,109C,109D,109Eには、図示しないリード線を介して外部電源が接続される。そして、外部電源によって、光電面105と、MCP108の光電面側表面及び蛍光面側表面(電子入射側表面及び電子出射側表面)と、蛍光面107とに対して必要な電圧が印加される。例えば、光電面105とMCP108の光電面側表面との間には、電位差として約200Vが設定され、MCP108の光電面側表面と蛍光面側表面との間には、電位差として約500V〜約900Vが可変に設定され、MCP108の蛍光面側表面と蛍光面7との間には、電位差として約6kV〜約7kVが設定されている。
さらに、側管102には、略リング状のコバール金属製部材である電極109Fが設けられており、その内側の先端部が出射窓104の側面から所定の距離を空けるように保持されている。この電極109Fは図示しないゲッターの通電用電極である。
入射窓103は、大気側及び真空側の各表面の中央領域を共に平面状に合成石英を加工して形成されたガラス面板である。出射窓104は、多数個の光ファイバをプレート状に集束して構成されたファイバプレートである。この出射窓104に形成される蛍光面107は、蛍光体を出射窓104の真空側表面に塗布することにより形成されている。
側管102は、電極109Aと電極109Bとの間、電極109Bと電極109Cとの間、電極109Cと電極109Fとの間、及び電極109Fと電極109Eとの間が、それぞれ、リング状のセラミック部材であるセラミックリング(側壁)115A,115B,115C,115Dを挟んで接合されたような多段構造を有している。すなわち、側管102は、セラミック部材と金属電極とを組み合わせて構成されている。
なお、上記のイメージ増強管は電子管の1種であるが、必要に応じて、MCPを省略することができる。上述の電子管は、半導体光電陰極と、この半導体光電陰極の電子出射面(化合物半導体層1のMCPに対向する面)を減圧環境(真空)内で収容する包囲体とを備え、光の入射に応じて半導体光電陰極1から出射された電子は、陽極としての蛍光面107によって収集される。蛍光面107は、電子の入射によって蛍光を発生し、当該蛍光イメージは、出射窓104を介して外部に出力される。
このイメージ増強管は、半導体光電陰極と、半導体光電陰極の電子出射面に対向するMCP108と、MCP108に対向する蛍光面107(蛍光体)と、この半導体光電陰極の電子出射面(化合物半導体層1のMCP108に対向する面)、MCP108、及び陽極としての蛍光面107を減圧環境(真空)内で収容する包囲体とを備え、光の入射に応じて半導体光電陰極1から出射された電子は、陽極としての蛍光面107によって収集され、ここで発生した蛍光イメージは、出射窓104を介して外部に出力される。出射窓104及び蛍光面107は、これらが一体化した機能を有するYAG結晶などの蛍光ブロックから構成することもできる。
以上、説明したように、上述の半導体光電陰極によれば、従来のGaN光電陰極と比較して、量子効率を改善することができるため、これを用いたイメージ増強管は、高感度の撮像を行うことができる。
図19は、従来のGaN光電陰極における位置x(nm)とエネルギーE(eV)の関係を示すグラフである。このエネルギーレベルは、半導体層の伝導帯下端レベルを示している。なお、x軸の原点0は、化合物半導体層(AlXGa1-XN (X = 0))と接着層(SiO層)2との間の界面で規定され、xは、この界面からアルカリ金属含有層4(真空側)に至る化合物半導体層の厚み方向の位置で規定され、この厚みは95nmに設定されている。
発明者による幾つかの透過モード及び反射モードの実験により、GaNにおける最も高いエネルギーE(eV)は、界面欠陥で発生したキャリアによる電界や、GaNの自発分極によって、およそx=40nmに位置することが判明した。図19においては、最も高いエネルギーEは0(eV)と規定されている。このエネルギー障壁は、x=40nmより小さな領域において、湾曲したエネルギーEによって形成されたエネルギー障壁は、x=40nmより小さな領域において発生した電子が真空に向けて通過するのを阻害する。このエネルギー障壁を小さくするためには、半導体層におけるAlの組成比Xを増加させるべきである。
図20は、半導体光電陰極における位置x(nm)とAl組成比X(%)との関係を示すグラフである。上述のように、第2領域12と中間領域1Mは、共にAlを半導体結晶の構成材料として含有している。図20におけるDataLは、図19における40nmよりも小さな半導体領域のエネルギーEをフラット化することが可能なAl組成比Xを占めている。半導体層とガラスとの間の界面位置における有効Al組成比Xは61%であり、この値はDataLの最大値である。
第2領域12及び中間領域1Mは、各々超格子構造を有しているので、図20は、有効Al組成比Xを示しており、この組成比Xは、超構造構造(MQW(多重量子井戸)構造)における単位区間内の平均値である。すなわち、Al組成比Xは、単位区間内の平均Al組成比でよって表されている。単位区間は、超格子構造において隣接する障壁層と井戸層とからなる。なお、超格子構造が半導体領域において用いられてない場合には、有効Al組成比Xは、単にAl組成比Xを示すことになる。
図20におけるDataUは、図19における40nmより小さな半導体領域においてエネルギーEのスロープ或いは傾斜を形成することが可能なAl組成比Xを示している。このエネルギースロープは真空側に傾斜している。この場合、発生した電子は伝導帯において、エネルギースロープに従って、容易に真空側に流れることができる。半導体層とガラスとの間の界面位置における有効Al組成比Xは68%であり、この値はDataUの最大値である。
300nmよりも短波長に対して、選択的な感度を有する光電陰極が期待されてきた。真空側の半導体領域(中間領域1M或いは第1領域11)において、有効Al組成比が30%以上に設定される場合、この領域は、波長300nm以下の波長の光に応答して電子を発生することができる。
選択的に短波長の光を検出するためには、エネルギーバンドギャップは増加させるべきである。なぜならば、最大検出可能波長λ(nm)及びエネルギーバンドギャップEg(eV)は、λ=1240/Egの関係を有しているからである。波長λ=300(nm)の場合、Eg=4.13(eV)である。GaNのエネルギーバンドギャップは3.4(eV)、AlNのエネルギーバンドギャップは6.2(eV)である。エネルギーバンドギャップ4.13(eV)を与えるAl組成比Xは、エネルギーバンドギャップとAl組成比Xが比例していると仮定することによって単純に計算され、計算されたAl組成比Xは26.4%である。実際には、現実のエネルギーバンドギャップは、この計算値X=26.4(%)を用いた場合、4.13(eV)よりも若干小さい。したがって、有効Al組成比Xは30(%)に設定され、この値は26.4(%)よりも若干大きい。
以下、有効Al組成比Xについてより詳細に説明する。上述のように、有効Al組成比Xは、超格子構造における単位区間内の平均Al組成比Xで与えられる。第2領域12と中間領域1Mが超格子構造からなる場合、有効Al組成比は以下のように設定される。値は、整数となるよう四捨五入されている。なお、実施例3は、DataLを示し、実施例(Example)4は、DataUを示している。第1領域11はGaN(X=0)からなる。
図21は、半導体光電陰極における位置x(nm)とAl組成比X(%)の関係を示すグラフである。このAl組成比Xは、半導体層が超格子構造を有する場合には、有効Al組成比を示している。
実施例Bによれば、位置xが5nmよりも小さな領域におけるAl組成比Xは100%であって一定であり、この領域はAlNからなる。位置xが5nmよりも大きい領域では、Al組成比Xは位置xの増加に伴って徐々に減少する。第2領域12の厚みは5nmであり、中間領域1Mの厚みは45nmである。実施例Bにおいては、第1領域11はAlGaN(X=30%)からなり、中間領域1M上に形成されている。
実施例A及びCによれば、Al組成比Xは位置xの増加に伴って、組成比Xが30%になるまで徐々に減少する。実施例A及びCにおいては、第2領域12の厚みは20nmであり、中間領域1Mの厚みは20nmである。第1領域11はAlGaN(X=30%)からなり、中間領域1M上に形成されている。
実施例Dによれば、位置xが10nmよりも小さな領域においては、Al組成比Xは70%であって、一定であり、組成比Xは位置xの増加に伴って、組成比Xが30%になるまで徐々に減少する。実施例Dでは、第2領域12の厚みは10nmであり、中間領域1Mの厚みは30nmである。第1領域11はAlGaN(X=30%)からなり、中間領域1M上に形成されている。有効Al組成比Xは以下の通りである。値は、整数となるよう四捨五入されている。
なお、実施例Aは、図19において位置xが40nmよりも小さな領域のエネルギーEをフラット化することができる。実施例Cは位置xが40nmよりも小さな領域においてエネルギースロープを真空側に傾けることができる。
実施例1〜4において、第1領域11における有効Al組成比X(11)は0(X(11)=0%)に設定されている。第1領域11におけるXが0の場合、第1領域11における良質な結晶性により、感度が高くなる。しかしながら、有効Al組成比X(11)は変更することができる。例えば、有効Al組成比X(11)は0(%)から30(%)の範囲に設定することができる。すなわち、0(%)≦X(11)≦30(%)である。
第2領域における有効Al組成比Xが15(%)の場合(一定値又は最大値)、位置xが40nmにおけるエネルギーEの変化によって、感度は向上した。AlGaNの結晶成長は、組成比X(11)+50(%)又は組成比X(11)+30(%)によって制限される。したがって、第2領域12における最大有効Al組成比X(12(Max))は、15%からX(11)+50(%)又はX(11)+30(%)までの範囲内に設定することができる。すなわち、以下の式が満たされる。なお、X(11)=0(%)の実験から考えると、最大値X(12(Max))がX(11)+30(%)に設定された場合、高感度が期待される。さらに、X(12(Max))の最大値は、2つの条件を考慮すると、X(11)+50(%)に設定される。1つの条件は、推定される伝導帯の湾曲モデル(図19)から得られる適切なAl組成比Xである。もう1つの条件は、十分な結晶性を有することが可能なAl組成比Xの変化率である。
(1) 15(%)≦X(12(Max))≦X(11)+50(%)、又は、
(2) 15(%)≦X(12(Max))≦X(11)+30(%).
更に、上記のAl組成比は超格子構造を有していない通常の半導体構造(バルク)にも用いることが可能である。この場合、Al組成は位置xの増加に伴って連続的に変化する。
超格子構造からなる第2領域及び中間領域12,1Mにおける有効Al組成比Xは領域内を通じて一定であり、第1領域11における有効Al組成比Xが当該一定値(=X(12:const))よりも低い場合、位置xが40nmよりも小さな領域におけるエネルギーEがフラット化可能であるため、感度は増加させることが可能である。この場合、X(11)及びX(12:const)は、以下の式を満たす。
(1) 30(%)≦X(11)≦40(%)。
(2) 60(%)≦X(12:const)≦X(11)+50(%)、又は、
(3) 60(%)≦X(12:const)≦X(11)+30(%)
X(11)は、30%から40%の範囲内に設定することができる。なぜならば、図22に示した値を用いた場合には、量子効率が増加したからである。30(%)≦X(11)≦40(%)の場合、良好な感度を得ることができる。60(%)≦X(12:const)≦X(11)+50(%)の場合、又は、60(%)≦X(12:const)≦X(11)+30(%)の場合、感度は明確に増加する。
X(11)=0(%)の場合の実験結果から考えると、X(12:const)の最大値がX(11)+30(%)に設定された場合、高感度が期待される。さらに、X(12(Max))の最大値は、2つの条件を考慮すると、X(11)+50(%)に設定される。1つの条件は、推定される伝導帯の湾曲モデル(図19)から得られる適切なAl組成比Xである。もう1つの条件は、十分な結晶性を有することが可能なAl組成比Xの変化率である。
図22は、半導体光電陰極における半導体層(第2領域(超格子構造)、中間領域1m(超格子構造)、第1領域11(通常のバルク構造:Al組成比の変化なし)の物理量を示す図表である。No.1〜No.6の6つのサンプル(ロット)が示されている。No.1は3つのサンプルを含み、No.2は2つのサンプルを含み、No.3は2つのサンプルを含み、No.4は1つのサンプルを含み、No.5は1つのサンプルを含み、No.6は3つのサンプルを含み、それぞれのサンプルロットの値は、該当するサンプルロット内における平均値を示している。領域12における有効Al組成比Xは一定であり、領域1Mにおける有効Al組成比Xは変化(傾斜:グレーデッド)している。有効Al組成比Xは、領域12内において、0%から40%まで変化し、Xは領域1Mないにおいても変化している。領域12と領域1Mは共に超格子構造からなるので、図22におけるAl組成比Xは、有効Al組成比Xを示している。領域(層)12の厚みは、0nm〜25nmまで変化し、領域(層)1Mの厚みは25nmから50nmまで変化する。第1領域11(GaN(X=0%))は約50nmの厚みを有しており、中間領域1M上に形成されている。すなわち、第1領域の厚みは、効果が確認されるよう20nmから60nmまで変化させられ、これらの場合の量子効率も高くなった。第1領域の厚みが100nm以下である場合には、感度は高くなる。第1領域の厚みは10nmから100nmの範囲に設定することができる。
超格子構造を形成するため、Al組成比Xは、超格子構造内における井戸層と障壁層は交互に変化している。有効Al組成比がXの場合、単位区間における障壁層の実際の最大Al組成比は2Xであり、単位区間における井戸層の実際の最小Al組成比は0(GaN)に設定される。この場合、単位区間内における平均Al組成比は、(2X+0)/2=Xとなる。
図23は、半導体光電陰極における位置x(nm)とAl組成比X(X)との関係を示すグラフである。有効Al組成比Xは、第2領域12(0≦x≦xaの領域)内において一定(=Xa)であり、中間領域内1M(xa≦x≦xbの領域)において位置xの増加に伴って、XがXbになるまで減少している。第1領域11(xb≦xの領域)内において、有効Al組成比Xは一定である。最小有効Al組成比XbはX(11)の範囲内に設定することができる。
図24は、半導体光電陰極における位置x(nm)と相対エネルギー(eV)の関係を示すグラフである。xが40nm又は50nmよりも小さな領域内におけるAl組成比を増加させる場合、半導体内のエネルギーは変化する。Data3はGaBの伝導帯におけるオリジナルの最低エネルギーを示している。界面欠陥からのキャリアやGaNの自発分極により、エネルギーレベルは湾曲している。Al組成比Xが、Data1に示されるエネルギーを示すように増加した場合には、Data3と1のエネルギーは重畳してData2に示すエネルギー曲線が形成される。この構造は、半導体層における40nm近辺のエネルギー障壁を低下させ、真空に到着可能な電子数を増加させる。この構造によれば、Data2のトップ位置(最大値)から第1領域11の露出表面までの距離は、光電陰極における光電変換のための有効厚(=Δx)とすることができる。
図25は、半導体光電陰極における有効厚Δx(nm)と量子効率(%)との関係を示すグラフである。
有効厚Δx(nm)は55nmから91nmの範囲内に設定された場合、光電陰極の量子効率(波長280nm)は16%〜30%にすることができた。有効厚Δx(nm)が67nmから76nmの範囲に設定された場合、光電陰極の量子効率は25%を超えることができた。図25において、有効厚△x(nm)が55nm,58nm,67nm,71nm,73nm,76nm,82nm,83nm,92nmのデータは、サンプルロットNo.NE5733,No.3,No.5,No.1,No.1,No.6,No.3,No.2,No.2のサンプルからそれぞれ得られた。
なお、No.NE5733は、従来の構造の代表サンプルであり、第2領域(AlGaN)、中間領域(AlGaN)を備えておらず、第1領域(GaN)のみを備えており、第1領域の厚みは95(nm)である。
図26は、半導体光電陰極における組成勾配R(%/nm)と量子効率(%)との関係を示すグラフである。Rは、単位厚みにおける有効Al組成比Xの変化を示している。図26において、Rによって示される値、0、0.3、0.6(high QE)、0.6(low QE)、0.75、1、1.2、1.25、1.6(high QE)、1.6(low QE)は、サンプルロットNo.NE5733、No.NE6420、No.1、No.1、No.4、No.5、No.4、No.6、No.2、No.2のサンプルからそれぞれ得られた。No.NE6420は、実施例1の構造を有するサンプルであり、第2領域12の厚みD2は25nmであり、中間領域1Mの厚みDMは25nmであり、GaNの第1領域の厚みD1は51nmであり、第2領域12における超格子構造内の最大有効Al組成比Xは15%であり、中間領域1Mにおける超格子構造内の最大有効Al組成比Xは7.5%であり、Rは0.3(%/nm)である。有効Al組成比が大きく変化した場合、量子効率は低下する。組成勾配(組成変化率)R(%/nm)が1.2(%/nm)以下の場合、特に、0.3(%/nm)から1.2(%/nm)の場合に、量子効率は増加し、25%を超える値が得られる。
上述のように、図16は半導体光電陰極の波長(nm)と量子効率(%)の関係を示している。このグラフはサンプルロットNo.1から得られる。図16によれば、30%を超える非常に高い量子効率が得られている。この値は、通常のバルクGaN光電陰極(比較例)で得られる量子効率よりも大きな値である。
次に、別の態様に係る半導体光電陰極及びその製造方法について説明する。この態様は、入射光に応答して電子を放出する半導体光電陰極及びその製造方法に関する。
以下、実施の形態に係る半導体光電陰極について説明する。なお、同一要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。なお、以下の半導体光電陰極は、上述のイメージ増強管にも適用することができ、その製造方法は上述の通りである。
まず、比較例(Type1)に係る光電陰極について説明する。
図27は、比較例(Type1)に係る半導体光電陰極の縦断面図である。この光電陰極は、GaNからなる化合物半導体層1、SiOからなる接着層2、ガラス基板3、アルカリ光電陰極材料からなるアルカリ金属含有層4を備えている。化合物半導体層1は、接着層2を介してガラス基板3に貼り付けられており、製造時においては化合物半導体層1の貼り付け後に、化合物半導体層1の露出表面上にアルカリ光電陰極材料を堆積する。以下、このようなガラス基板への貼り付けを行う光電陰極を、グラスボンディング構造と呼ぶこととする。
ガラス基板3を構成するシリカは、紫外線を透過する「UVガラス」であり、硼硅酸ガラスからなる。硼硅酸ガラスとしては、例えばコバール(KOVAR)ガラスが知られている。このようなガラスは、概ね波長185nm以上の波長域における透過率を高めたガラスであり、コーニング社製の「9741」やショット社製の「8337B」等を用いることができる。このようなUVガラスは、少なくとも240nm以上の紫外線透過率がサファイアより高く、2μm以上の波長を有する赤外線に対する吸収率がサファイアより高い。
アルカリ金属含有層4に用いられるアルカリ光電陰極材料としては、Cs−I、Cs−Te、Sb−Cs、Sb−Rb−Cs、Sb−K−Cs、Sb−Na−K、Sb−Na−K−Cs、Ag−O−Cs、Cs−Oなどが知られている。本例では、アルカリ光電陰極材料として、アルカリ酸化物であるCs−Oを用いることとする。アルカリ金属は、仕事関数を低下させ、負の電子親和力を与えて、真空準位へ電子を容易に放出させる機能がある。
ここでは、化合物半導体層(AlGa1−XN(但し、X=0))1と接着層(SiO層)2との界面位置をx軸の原点0とし、この界面からアルカリ金属含有層4に向かう化合物半導体層1の厚み方向の位置をxとする。この半導体光電陰極には、ガラス基板3側から光が入射し、接着層2を透過して、化合物半導体層1に至る。化合物半導体層1内では光電変換が行われ、入射光に対応して発生した電子は、アルカリ金属含有層4を介して、真空中に放出される。
図28(A)は、比較例に係る光電陰極の化合物半導体層(GaN)1の断面図、図28(B)は、エネルギーバンド図である。
化合物半導体層1の全体厚みDに、僅かなアルカリ金属含有層4の厚みを加えた厚みをtとする。グラスボンディング構造のGaAs透過型光電陰極やSi系デバイスなどにおけるエネルギーバンドギャップの挙動と同様に、ガラスとGaN結晶の異種接合界面には欠陥準位が形成され、この準位からのキャリアが作る電界によりエネルギーバンドが結晶から界面に向かって下がるような湾曲が生じていると考えられる。一方、p型半導体の真空側表面では、真空側に向かって下るバンド湾曲が生じる。透過型GaN光電陰極では100nmという薄い厚さの中で、この両者の効果が合わさり、山のような形状のエネルギーバンドを形成していると推測される。
透過モード動作では、バンド構造の山の頂上の光入射側(0<x<xの放出不能領域R(I))で励起された電子は頂上を越えて真空側斜面へ行くことは出来ず、真空中にとり出されることはない。この光電陰極を反射モード動作とした場合は、真空側から光が入射し、右側に電子が出る。したがって、バンドの山の頂上の位置が重要となる。光電陰極として有効に機能しているのは、どちらの動作モードでも頂上より真空側の領域(x<x<tの放出寄与領域R(II))であるが、透過モードではバンドの頂上より光入射側の領域で光が多く吸収されるため、実質的に光電陰極として動作している右側の領域へ入射する光量はかなり減少してしまう。逆に反射モードでは、より多く光吸収が生じた領域が光電子放射に寄与するため、高感度となる。
この仮説を検証するべく、比較例(Type1)に係る光電陰極の量子効率を測定した。
図29は、比較例に係る光電陰極の波長(nm)と量子効率(%)の関係を示すグラフである。
同図では、光電管に封入した透過型構造光電陰極の、透過モードと反射モードの分光感度が示されている。なお、この光電陰極の厚さは、127nmである。本願発明者らは、これまで、グラスボンディング構の透過型光電陰極や、サファイア基板上に成長したGaNを用いた透過型光電陰極を作製してきたが、得られた最高の量子効率は25 %以下であった。一方、Type1のグラスボンディング構造の反射型GaN光電陰極を光電管に封入し、感度を測定すると、波長280nmにおいて、量子効率は35%という高い値を得る一方で、透過モードの量子効率は反射モードの場合よりも低いという結果が得られた。これは、上述の如くエネルギーバンドギャップが湾曲していることを実証するものである。
以上の考えのもとで、エネルギーバンドギャップの山の頂上の位置xpを求める。なお、説明に用いる数式は、図47の数式を示す図表を参照する。なお、式(1)〜式(12)において示される位置xは、透過モード関しては、上述の図28(B)の場合と同一であるが、反射モードに関しては、図28(B)の場合とは異なり、光入射面の位置をxの原点とし、化合物半導体層1の深部に向かう方向を正方向とする。この場合、いずれのモードの場合においても、光入射面から離れるに従って、光吸収量(%)は、小さくなる。かかる場合の位置xと光吸収量I(%)の関係を図45に示す。反射モード動作時の光吸収量の方が、透過モード時の吸収よりも大きくなっている。
図29の結果と、GaNの複素屈折率を用いて、反射モード動作と透過モード動作の量子効率を見積ることができる。物質に入射した光は、通過した場所ごとに少しずつ吸収されていき、入射面から距離xの位置での強度は、ランベルトの法則(Lambert's law)に従い、式(1)で表される。Iは入射強度、αは吸収係数である。吸収係数αは、複素屈折率の消衰係数 kより、式(2)と表される。λは光の波長である。光電陰極内のある場所xにおける微小区間Δxで励起される電子の数nは、そこで吸収された光子数に比例する。
吸収された光子数はΔxおける光強度の変化に比例するから、式(1)の微係数を用いて、式(3)と書ける。このGaN光電陰極について、光電子放出に関わる電子のみを議論すれば、励起された電子は伝導帯の勾配により全て真空側へ運動すると見て良い。したがって真空側界面へ到達する電子数nは、式(4)となる。
ここで、fは電子が真空側界面へ到達したときに生き残っている確率を表し、励起位置xから真空側界面までの距離と拡散長Lをパラメータとする。計算を単純にするため電子の輸送を1次元に限定して考え、関数fとして反射型動作時について、式(5)を仮定し、透過型動作時に、式(6)を仮定すると、式(3)は、反射型について式(7)、透過型について式(8)となる。なお、光電陰極からガラス基板を除いた部分(化合物半導体層1とアルカリ金属含有層4の部分)の厚みをtとするが、アルカリ金属含有層4の物性は、化合物半導体層1と同一であると近似する。
したがって、式(6)および式(7)をそれぞれの励起電子が真空へ到達できる領域で足しあわせることで真空側界面へ到達する全電子数を計算できる。すなわち、反射型では式(9)、透過型では、式(10)となる。
積分範囲は反射型、透過型動作時に光電子放出に有効な領域に限定される。上記の定積分を求めると反射型、透過型について、それぞれ、式(11)、式(12)を得る。
さらに、表面から真空への脱出確率Eをそれぞれに係数として掛け、入射光強度Iで割れば量子効率となる。拡散長と脱出確率は福家らの報告(S. Fuke, M. Sumiya, T. Nihashi, M. Hagino, M. Matsumoto, Y. Kamo,M.Sato, K. Ohtsuka, “Development of UV-photocathode using GaN film onSisubstrate”, Proc. SPIE 6894, 68941F-1-68941F-7 (2008))で、それぞれ235nm、0.5という値が求まっている。ここでは、式(11)を式(12)で割り、反射モードと透過モードの量子効率の比を実測値と比べることとする。こうすることで、脱出確率Eの影響を取り除くことができる。
GaN結晶を貼りつけたガラス面板の吸収の影響を避けるため、290nm以上の範囲で比較を行う。拡散長を235nmとし、バンドの山の位置xを表面から40nm,52nm,60nmとした場合の結果を実測値と比較した。その結果を図4に示す。
図30は、(反射モード時の量子効率/透過モード時の量子効率)の波長依存性を示すグラフであり、エネルギーバンド下端のピーク位置xpを変化させたものである。このエネルギーバンドの山の位置xは、xp=52nmの時に実測値と計算値が最もよく一致した。
これにより、化合物半導体層1の厚さ(全体厚みD)のほぼ中央(D/2の位置)(若干ガラス接合界面より)が、伝導帯(下端)のエネルギーの山の頂上であることが明らかとなった。約100nmの厚さのGaN光電陰極では、反射モードでも透過モードでも光電陰極の厚さの半分が光電子放出に寄与していないが、光が入射する側ではより多くの光が吸収されるため、反射モードに比べて透過モード動作時に量子効率が低い原因となっている。
すなわち、量子効率を改善するには、化合物半導体層1のほぼ中央に位置するピーク位置xpを、ガラス基板側に移動させることが重要となる。実施例に係る半導体光電陰極では、ピーク位置xpをガラス基板側にずらし、更に、ガラス基板側のエネルギーバンドギャップEgを広くすることで、際立って優れた量子効率を得ることができる。
図31は、実施例(Type2,Type3)に係る半導体光電陰極の縦断面図である。比較例(Type1)の半導体光電陰極との相違点は、化合物半導体層1を、3つの領域11,1M,12からなることとし、AlをGaNに添加したことにあり、その他の構造は、比較例のものと同一である。
実施例に係る半導体光電陰極は、ガラス基板3にSiO層からなる接着層2を介して貼り付けられた化合物半導体層1(AlGa1−XN層(0≦X<1))と、このAlGa1−XN層上に形成されたアルカリ金属含有層4とを備えている。化合物半導体層1を構成するAlGa1−XN層は、アルカリ金属含有層4に隣接する第1領域11と、SiO層からなる接着層2に隣接する第2領域12と、第1領域11と第2領域12との間に位置する中間領域1Mとを備えている。
ここで、第2領域12からアルカリ金属含有層4に向かう化合物半導体層1(AlGa1−XN層)の厚み方向の位置をxとし、第2領域12とSiO層からなる接着層2との界面位置を、位置xの原点0として設定する。ここで、Alの組成比X=g(x)とする場合、中間領域1Mにおける組成比Xの最小値をXMIN(M)、第2領域12における組成比Xの最小値をXMIN(2)として、以下の条件(1)〜(5)が満たされている。
(1):第1領域11では、0≦g(x)≦XMIN(M)を満たしている。
(2):中間領域1Mでは、g(x)は単調減少関数であって、且つ、g(x)≦XMIN(2)を満たしている。
(3):第2領域12では、g(x)は単調減少関数又は一定値である。
(4):第2領域12におけるg(x)が単調減少関数である場合には、第1領域の厚みD1は18(nm)以上である。
(5):第2領域12におけるg(x)が一定値である場合には、第1領域11の厚みD1は31(nm)以上である。
Al組成比Xと第1領域の厚みD1が上述の条件を満たす場合、従来のGaN光電陰極と比較して、際立って優れて量子効率を改善することが可能である。
なお、第1領域11のAlの組成比Xは好ましくは0であり、この領域はGaNからなることが好ましいが、低濃度のAlが含まれてもよい。
実施例では、2つのタイプの光電陰極が用意される。Type2の半導体光電陰極は、上記条件(4)が満たされるものであり、Type3の光電陰極は、上記条件(5)が満たされるものである。なお、Alの組成比Xが単調減少する場合には、当該半導体層の2つの界面位置において、最大値と最小値がそれぞれ規定されるものであり、原則的にはこれらの位置間を組成比が一定の勾配で変化するが、製造上の誤差を含むため、現実の製品では、厚み方向の位置変化に対して組成比Xが常に一定割合で変化をするわけではない。
図32(A)は、実施例に係る化合物半導体層(AlGaN系積層構造)の断面図、図32(B)はエネルギーバンド図である。比較例の半導体光電陰極と比較して、伝導帯下端のエネルギーレベルのピーク位置xpが、化合物半導体層1の厚み方向中央位置よりもガラス基板側に移動している。これは、Alの組成比Xを中央位置よりもガラス基板側で増加させたためであり、電子の放出不能領域R(I)が減少し、放出寄与領域R(II)が増加している。ガラス基板の近傍では、Alの組成比Xが0.3以上となることで、かかる不能領域での短波長(波長280nm)の光の透過率を増加させ、放出寄与領域において光電変換される光量を増加させている。
なお、化合物半導体層1(AlGa1−XN層)の全体の厚みD、第1領域の厚みをD1、中間領域1Mの厚みをDM、第2領域12の厚みをD2、許容誤差をEとする。上述のように、量子効率を劇的に向上させるためには、中央位置(D/2)よりもガラス基板側の領域のエネルギーバンドギャップを調整することが重要である。
すなわち、実施例の半導体光電陰極は、以下の関係式を満たしている。
(D2+DM)×(100±E)%=D/2、E≦60
化合物半導体層1は、組成が一様である場合には、その厚みDの2分の1の位置の近傍に伝導帯下端のエネルギーレベルのピークが位置するので、この位置xpよりもガラス基板側のエネルギーレベルを、中間領域1M及び第2領域12によって調整することで、真空中へ放出できない電子を高いエネルギー準位に移動させることができ、原理的に電子の放出確率を高めることができる。許容誤差Eは、60(%)以下の範囲程度であれば、電子放出効率の増加が得られると考えられるが、もちろん、E≦20(%)とすれば、更に効果が得られると考えられ、E≦10(%)とすれば、更に効果が得られると考えられる。
なお、AlGaNは、Al(原子番号13)、Ga(原子番号31)、N(原子番号7)の化合物であり、その格子定数は、原子サイズがGaよりも小さいAlの組成比Xが増加すれば、小さくなる。化合物半導体においては、格子定数が小さいほどエネルギーバンドギャップEgが大きくなる傾向があるので、組成比Xが増加すると、エネルギーバンドギャップEgは大きくなり、これに対応する波長λは小さくなる。
第2領域12における組成比Xの最小値XMIN(2)は、以下の関係式を満たしている。
0.3≦XMIN(2)≦0.65
第2領域12におけるAlの組成比Xが0.3以上となれば、第2領域12のエネルギーバンドギャップEgは大きくなり、短波長(280nm以下)の光が、第2領域12を容易に透過するようになるので、量子効率は著しく向上する。また、Alの組成比Xは製造上の限界を超えて増加させることはできないので、組成比Xは0.65以下であることが好ましい。Alの組成比Xが上限を超えると、結晶性が著しく劣化するからである。
また、第1領域11の厚みD1は100nm以下であることが好ましい。この場合には、量子効率を増加させることが可能である。一般のGaN光電陰極の厚みは約100nmであるため、少なくともD1が100nm以下であれば、光電変換が十分に行われ、電子放出が行われると考えられる。また、電子の拡散長235nmを超えると、真空中への電子放出が著しく減少するため、厚みD1は235nm以下が好ましい。上述のように、全体の厚みDの2分の1をD1(117.5nm)とし、許容誤差を60%とすれば、全体厚Dは概ね235nm以下であり、許容限界DM+D2=47(=117.5×0.4)nmの場合に、D1=188(=235−47)nm以下が必要となる。同様に、許容誤差を20%とすれば、D1=141(=235−117.5×0.8)nm以下が必要となる。上述のように、厚みD1は235nm以下が好ましく、188nm以下が更に好ましく、141nm以下が更に好ましく、100nm以下が好適である。
図33(A)〜(D)は、化合物半導体層1の厚み方向の位置xとAl組成比Xの関係を、化合物半導体層と共に、タイプ毎に示すグラフであり、図33(A)は化合物半導体層を示す図であり、図33(B)、図33(C)、図33(D)は、化合物半導体層の厚み方向の位置xとAl組成比Xの関係をグラフである。
Type1(比較例)の半導体光電陰極では、Alの組成比Xは全ての領域11,1M,12において零である。
Type2(実施例1)の半導体光電陰極では、第1領域11(位置xb〜xc)におけるAlの組成比Xは零である。中間領域1M(位置xa〜xb)におけるAlの組成比Xは位置xに対して単調減少(xに対するXの変化の傾き(−a))である。aは一定値である。第2領域12(位置0〜xa)におけるAlの組成比Xは位置xに対して単調減少(xに対するXの変化の傾き(−a))である。aは一定値である。
第2領域12における組成比Xの最大値Xi、最小値Xjであり、中間領域1Mにおける組成比Xの最大値はXj、最小値は0である。これらの最大値及び最小値は、各層の両界面の位置において得られる。本例のType2では、Xi=0.3、Xj=0.15に設定する。
Type3(実施例2)の半導体光電陰極では、第1領域11(位置xb〜xc)におけるAlの組成比Xは零である。中間領域1M(位置xa〜xb)におけるAlの組成比Xは位置xに対して単調減少(xに対するXの変化の傾き(−2×a))である。aは一定値である。第2領域12(位置0〜xa)におけるAlの組成比Xは位置xに依存せず一定値(X2)である。第2領域12における組成比Xの最大値或いは最小値X2は、中間領域1Mにおける組成比Xの最大値はX2である。本例のType3では、X2=0.3に設定する。
図34(A)〜(D)は、化合物半導体層の厚み方向の位置xと不純物(Mg)濃度の関係を、化合物半導体層と共に、タイプ毎に示すグラフである。図34(A)は化合物半導体層を示す図であり、図34(B)、図34(C)、図34(D)は、化合物半導体層の厚み方向の位置xと不純物(Mg)濃度の関係をグラフである。
Type1(比較例)の半導体光電陰極では、Mg濃度は、全ての領域11,1M,12において一定(=Cj)である。
Type2(実施例1)の半導体光電陰極では、Mg濃度は、第1領域11において一定(=Cj)である(実施例1−1)。但し、Al組成比Xをガラス基板側に増加させるのに伴って、Mg濃度をガラス基板側に向けて濃度Ciまで増加させてもよい(実施例1−2)。換言すれば、p型の不純物濃度Cは、位置xに対する単調減少関数である関数g(x)に比例する。組成比の変化と同様に不純物濃度を変化させることで、Al組成の増加によるキャリア濃度低下の補償という効果が期待される。
Type3(実施例2)の半導体光電陰極では、Mg濃度は、第1領域11において一定(=Cj)である。Al組成比Xをガラス基板側に増加させるのに伴って、Mg濃度をガラス基板側に向けて濃度Ckまで増加させる。換言すれば、p型の不純物濃度Cは、第2領域12においては一定値であり、中間領域1Mにおいては、位置xに対する単調減少関数である関数g(x)に比例する。組成比の変化と同様に不純物濃度を変化させることで、Al組成の増加によるキャリア濃度低下の補償という効果が期待される。
上記不純物濃度Cj、Ci,Ckの値は、それぞれ以下の通りである。Cj=7×1018cm−3Ci=2×1018cm−3Ck=2×1018cm−3
また、負の電子親和力(NEA)の実現と過剰ドープによる結晶性低下の観点から、上記不純物濃度Cj、Ci,Ckの好適な範囲は、それぞれ以下の通りである。Cj=1×1018cm−3以上3×1019cm−3以下Ci=3×1018cm−3以上5×1019cm−3以下Ck=3×1018cm−3以上5×1019cm−3以下
図35(A)、図35(B)、図35(C)は、半導体光電陰極の製造方法について説明する図である。
まず、貼り付け前のAlGaN結晶をSi基板上に製造し(図35(A))、続いて、Si基板及び不要な半導体層を研磨により除去して化合物半導体層1を作製し(図35(B))、最後に、ガラス基板3に化合物半導体層1を貼り付け、一部分が除去される(図35(C))。以下、詳説する。
最初に、図35(A)に示すように、5インチのn型(111)Si基板を用意する。次に、Mgを添加した化合物半導体層1をMOVPE(有機金属気相エピタキシー)法により、Si基板上に成長させるが、化合物半導体層1の成長前に、応力緩和のためのバッファ層22と、アンドープのGaN層(テンプレート層)23を、Si基板21上に予め順次成長させておく。バッファ層22は、厚み1200nmであって、40対のAlN/GaNからなる超格子構造を有しており、アンドープのテンプレート層23は、650nmの厚みを有している。これにより、クラックと応力が無い化合物半導体層1(AlGa1−XN)をSi基板21上に形成することができる。
MOVPE法におけるGaの原料として、トリメチルガリウム(TMGa)、Alの原料としてトリメチルアルミニウム(TMA)、Nの原料としてアンモニア(NH)を用いることができ、これらの原料比率を制御することで、AlGa1−XNにおける組成比Xを調整することができる。なお、水素ガスがキャリアガスとして用いられる。AlN/GaN超格子構造のバッファ層22と、GaNのテンプレート層23の成長温度は1050℃である。バッファ層22の成長時のチャンバ内の圧力は1.3×10Pa、テンプレート層23の成長時のチャンバ内圧力は1.3×10〜1.0×10Paである。エッチング除去前の化合物半導体層1の表面から200nmの領域にはMgを(CpMg:ビスシクロペンタジエニルマグネシウム)を用いて成長時に添加する。
また、バッファ層22の製造に関して、AlN層の形成においては、基板温度を1120℃とした後に、TMAガスの流量即ちAlの供給量を約63μmol/分、NH ガスの流量即ちNHの供給量を約0.14mol/分とし、基板温度を1120℃とし、TMAガスの供給を止めてから反応室内にTMGガスとNHガスを供給して、基板21の一方の主面に形成された上記AlNから成る第1の層の上面にGaNから成る第2の層を形成する。
テンプレート層23の形成時には、反応室内にTMGガス、NHガスを供給してバッファ層22の上面にGaNを形成する。基板温度を1050℃とした後、TMGガスの流量即ちGaの供給量を約4.3μmol/分、NHガスの流量即ちNHの供給量を約53.6mmol/分とする。
基板温度を1050℃とし、反応室内にTMGガス、アンモニアガス及びCp2Mgガスを供給して、あるいはAl原料として、TMAガスを供給して、テンプレート層23上にp型のGaN層、又はp型のAlGaN層を形成する。TMGガスの流量を約4.3μmol/分、TMAガスの流量をAl組成の変化に応じて調整する。例えば、組成Xを0.30とする場合には、TMAガスの流量は約0.41μmol/分である。CpMgガスの流量をAl組成が0.3のとき約0.24μmol/分、Al組成が0のとき約0.12μmol/分とする。化合物半導体層1内におけるp型の不純物濃度は約0.1〜3×1018cm−3である。なお、上述の製造方法によれば、バッファ層22の結晶方位に対して、各層23、1の結晶方位を揃えることができる。
比較例(Type1)の構造においては、化合物半導体層1の初期の厚みが200nmであり、実施例1(Type2)の構造においては、表面から50nmの領域においてAl組成が徐々に変化するグレーデッドAlGaNであり、実施例2(Type3)の構造においては、表面から25nmの領域がAl組成が一定のAlGaNであって、表面から25nm〜50nmまでがAl組成が徐々に変化するグレーデッドAlGaN層である。なお、化合物半導体層1の初期厚みは200nmであるが、全体の厚みの概ね半分の領域はエッチングにより除去される。
化合物半導体層1の成長後、その露出表面上に厚みが数百nmのSiOからなる接着層2を、CVD(化学的気相成長)法で形成する。
次に、図35(B)に示すように、接着層2を介して化合物半導体層1にガラス基板3を熱圧着して貼り付ける。圧着時の温度は650℃である。
次に、図35(C)に示すように、Si基板21を除去し、続いて、バッファ層22、テンプレート層23、化合物半導体層1の一部を除去する。Si基板21は、フッ酸、硝酸、酢酸の混合液を用いて、除去する。この際、バッファ層22は、エッチングストップ層としても機能する。バッファ層22、テンプレート層23、及び化合物半導体層1の半分の厚み(100nm)の領域は、リン酸と水の混合液により除去する。これにより、化合物半導体層1の厚みは、概ね100nmとなる。なお、本例では、化合物半導体層において除去する量を変更することで、全体の厚みDは、68nm〜96nmまで変更した。
以上のように、上述の半導体光電陰極を製造する方法は、支持基板21上にGaNバッファ層22、GaNテンプレート層23、化合物半導体層1、SiO層2を順次堆積する工程と、SiO層2を介して化合物半導体層1にガラス基板3を貼り付ける工程と、支持基板21、バッファ層22、テンプレート層23、及び化合物半導体層1の一部を順次除去し、化合物半導体層1の残留領域を、AlGa1−XN層(11,1M,12)とする工程とを備えている。この製造方法によれば、上述の半導体光電陰極を容易に製造することができる。
また、半導体光電陰極を用いたイメージ増強管を作製した。
イメージ増強管の製造においては、まず、化合物半導体層1を貼り付けたガラス基板(面板)、MCP(マイクロチャンネルプレート)を内蔵する包囲管、蛍光出力板、Cs金属供給体を、真空チャンバ内に配置する。次に、真空チャンバ内の空気を排気し、真空チャンバ内の真空度を増加させるために、真空チャンバのベーク(加熱)を行う。これにより真空度は、真空チャンバの冷却後10-7 Paに到達した。更に、MCPと蛍光出力板に電子ビームを照射し、これらの内部にトラップされたガスを除去する。しかる後、ガラス基板の光電子放出面を加熱して清浄化し、これに連続して、Cs金属供給体を加熱して、Csと酸素を光電子放出面(化合物半導体層1の露出表面)に吸着させることで、当該光電子放出面を活性化し、その電子親和力を低下させる。最後に、ガラス基板及び蛍光出力板を、インジウム封止材を用いて、包囲管の両開口端にそれぞれ取り付けて、包囲管を密閉した後、これを真空チャンバ―内から取り出す。
化合物半導体層1の全体厚みDを68nm〜78nmとした場合、厚みDを81nmとした場合、厚みDを96nmとした場合の各場合において、上述のType1〜Type3の半導体光電陰極を作製した。
図36は、各タイプ毎のサンプルの条件の一覧を示す図表である。
サンプルNo.(1−1)は、Type1(化合物半導体層1がGaN層のみからなる)において、D=D1=78nmとした半導体光電陰極である。サンプルNo.(1−2)は、Type1において、D=D1=81nmとした半導体光電陰極である。サンプルNo.(1−3)は、Type1において、D=D1=96nmとした半導体光電陰極である。Alの組成比X=0であり、したがって、Xの組成勾配も0%/nmである。
サンプルNo.(2−1)は、Type2(化合物半導体層1の第2領域及び中間領域がグレーデッドAlGaN層からなる)において、D=68nm、D1=18nm、DM=25nm、D2=25nmとした半導体光電陰極である。サンプルNo.(2−2)は、Type2において、D=81nm、D1=31nm、DM=25nm、D2=25nmとした半導体光電陰極である。サンプルNo.(2−3)は、Type2において、D=96nm、D1=46nm、DM=25nm、D2=25nmとした半導体光電陰極である。領域DM,D2に渡って、Alの組成比Xは厚み方向に沿って0〜0.3まで直線的に変化させたものであり、したがって、Xの組成勾配は0.6%/nmである。
サンプルNo.(3−1)は、Type3(化合物半導体層1の第2領域はAl組成が一定、中間領域がグレーデッドAlGaN層からなる)において、D=77nm、D1=27nm、DM=25nm、D2=25nmとした半導体光電陰極である。サンプルNo.(3−2)は、Type3において、D=81nm、D1=31nm、DM=25nm、D2=25nmとした半導体光電陰極である。サンプルNo.(3−3)は、Type3において、D=96nm、D1=46nm、DM=25nm、D2=25nmとした半導体光電陰極である。第2領域D2の組成比Xは一定値0.3であり、中間領域DMでは、Alの組成比Xは厚み方向に沿って0〜0.3まで直線的に変化させたものであり、したがって、Xの組成勾配は1.2%/nmである。
図37は、透過モードにおけるType1のサンプルにおける波長(nm)と量子効率(%)の関係を示すグラフである。化合物半導体層1の厚みDが、78nm(サンプルNo.(1−1))、81nm(サンプルNo.(1−2))、96nm(サンプルNo.(1−3))の場合のデータが示されている。これにより、厚みDが大きくなるほど量子効率が高くなるわけではないことがわかる。すなわち、厚さD=78nmの場合よりも、厚さD=81nmの方が量子効率は高いが、厚さD=96nmの場合は量子効率が低下している。
すなわち、厚さDが大きくなると(D=81nm)、光電変換に寄与する領域が、大きくなるため、量子効率は厚さD=78nmの場合よりも増加するが、更に厚さDが大きくなると(D=96nm)、ガラス基板側の電子放出不能領域も大きくなるため、量子効率が低下したものと考えられる。
図38(A)は、Type1のサンプルの位置x(nm)と伝導帯下端のエネルギーレベルEc(a.u.)の関係を示すグラフ、図38(B)は、透過モードにおける波長(nm)と光吸収量I(a.u.)及び量子効率(%)の関係を示すグラフである。
図38(A)では、厚みD=140nmの場合の例が示されている。同図に示されるように、厚みDのほぼ2分の1の位置xにおいて、伝導帯下端のエネルギーレベルのピークが位置する。ピーク位置xpは概ね60nmである。
また、図38(A)、図38(B)では、D=100nm、ピーク位置xpが50nmの場合の例が示されており、短波長(波長350nm以下)側の領域において、無効な光吸収が増加している様子が示されている。この無効な吸収は、ガラス基板側の電子の放出不能領域における吸収である。
図39は、透過モードにおけるType2のサンプルにおける波長(nm)と量子効率(%)の関係を示すグラフである。化合物半導体層1の厚みDが、68nm(サンプルNo.(2−1))、81nm(サンプルNo.(2−2))、96nm(サンプルNo.(2−3))の場合のデータが示されている。比較のために、化合物半導体層1がGaNのみからなるType1のデータ(No.(1−1))が示されている。いずれの場合(D1=18nm,31nm,46nm)も、Type1の場合よりは、量子効率が高くなる。すなわち、Type2の場合には、厚みD1が18nm以上の場合には、量子効率は比較例のものよりも高くなる。なお、高い量子効率を得るためには、全体の厚みDは、68nm以上96nm以下であることが好ましい。
図40(A)は、Type2のサンプルの位置x(nm)と伝導帯下端のエネルギーレベルEc(a.u.)の関係を示すグラフ、図40(B)は透過モードにおける波長(nm)と光吸収量(a.u.)及び量子効率(%)の関係を示すグラフである。
図40(A)では、厚みD=81nm(No.(2−2))の場合の例が示されている。同図に示されるように、厚みDのほぼ2分の1の位置xよりもガラス基板側の位置において、伝導帯下端のエネルギーレベルのピークが位置する。ピーク位置xpは概ね20nmである。
また、図40(B)では、D=100nm、ピーク位置xpが25nmの場合の例が示されており(D1=50nm、D2=25nm、DM=25nm)、短波長帯域(波長300nm〜波長370nm)における無効な光吸収が、Type1の場合よりも著しく減少し、有効な光吸収が増加している様子が示されている。これはエネルギーレベルのピーク位置が移動したことと、ガラス基板側の透過率が増加したことに起因する。
図41は、透過モードにおけるType3のサンプルにおける波長(nm)と量子効率(%)の関係を示すグラフである。化合物半導体層1の厚みDが、77nm(サンプルNo.(3−1))、81nm(サンプルNo.(3−2))、96nm(サンプルNo.(3−3))の場合のデータが示されている。比較のために、化合物半導体層1がGaNのみからなるType1のデータ(No.(1−1))が示されている。D1=27nmを除き、D1=31nm,46nmでは、Type1の場合よりは、量子効率が高くなる。すなわち、Type3の場合には、厚みD1が31nm以上の場合には、量子効率は比較例のものよりも高くなる。なお、高い量子効率を得るためには、全体の厚みDは、77nm以上96nm以下であることが好ましい。上述のエネルギーバンドギャップの原理から、これらの範囲であれば、価電子帯下端のピークの影になるガラス基板側の領域が、小さくなるため、量子効率を高めることができると考えられるからである。
なお、No.(3−1)において、比較例よりも量子効率が低くなった理由について考える。厚みD1を有するNo.(2−1)においては、比較例よりも量子効率が高い。これはAl組成が一定の領域を有する場合、換言すれば、Al含有量の厚み方向積分値が高い場合には、そうでないよりも、厚い第1領域D1を要求していることを意味していると考えらえる。
図42(A)は、Type3のサンプルの位置x(nm)と伝導帯下端のエネルギーレベルEEc(a.u.)の関係を示すグラフ、図42(B)は、透過モードにおける波長(nm)と光吸収量I(a.u.)及び量子効率(%)の関係を示すグラフである。
図42(A)では、厚みD=96nm(No.(3−3))の場合の例が示されている。同図に示されるように、厚みDのほぼ2分の1の位置xよりもガラス基板側の位置において、伝導帯下端のエネルギーレベルのピークが位置する。ピーク位置xpは概ね25nmである。
また、図42(B)では、D=100nm、ピーク位置xpが25nmの場合の例が示されており(D1=50nm、D2=25nm、DM=25nm)、短波長帯域(波長280nm〜波長380nm)における無効な光吸収が、Type1の場合よりも著しく減少し、有効な光吸収が増加している様子が示されている。これはエネルギーレベルのピーク位置が移動したことと、ガラス基板側の透過率が増加したことに起因する。
Type1の場合とは異なり、Type2、Type3では、エネルギーバンドのピーク位置xpが上述のように移動している。連続的にAl組成比が変化するAlGaN層により、光入射側の伝導帯の準位を持ち上げている。その結果、光電子放出に寄与しない厚さは、全体の厚みDの約1/4以下となり、Type1における光電子放出に寄与しない厚さの半分となる。これは光電子放出に寄与しない光吸収が大幅に減ることを意味する。
光電子放出に寄与しない領域は、Al組成比が一定のAl0.3GaN層、または、Al組成が0.3から徐々に少なくなっているAlGaN層であることから、エネルギーバンドギャップEgが大きく、エネルギーバンドギャップEgに応じて光の分光透過率がGaNよりも高いことも量子効率の増加に寄与していると考えられる。
図43(A)、図43(B)は、それぞれ、化合物半導体層の位置xと伝導帯下端のエネルギーレベルEc(a.u.)の関係を示すグラフ(Type2(図43(A))、Type3(図43(B))である。
図43(A)では、Type2において、D=90nmとし、グレーデッドAlGaN層の厚み(DM+D2)を50nmとし、この領域でAlの組成比Xを0%〜50%まで直線的に変化させた場合のグラフである。Alの組成比Xが0%、10%、20%、30%、40%、50%と増加するに伴って、ピーク位置xpが、42.5nm、35nm、29.5nm、24.3nm、20.1nm、16.9nmというように光入射面側に移動するのがわかる。
図43(B)では、Type3において、D=90nmとし、一定組成のAlGaN層の厚みD2=25nm、グレーデッドAlGaN層の厚みDM=25nmとし、この領域でAlの組成比Xを0%〜30%まで直線的に変化させた場合のグラフである。Alの組成比Xが0%、5%、10%、15%、20%、30%と増加するに伴って、ピーク位置xpが、42.5nm、35.7nm、29.5nm、25nm、25nm、25nmというように光入射面側に移動し、X=15%以上では、xpの移動が25nmで停止するのがわかる。
Xを15%以上とすることで、ピーク位置xpの製造誤差を低減させることができるという効果がある。ピーク位置xpは入射面側に近い方が好ましく、したがって、0nmよりも大きく25nm以下であることが好ましい。この場合には、バンドの湾曲効果と透過率向上の効果から、紫外線に対する感度を著しく向上させることができる。なお、組成比Xが製造限界の65%を超えると結晶性が著しく劣化し、また、厚み方向の組成比の変化率が大きくなり過ぎると結晶性が劣化するため好ましくない。このような観点から、Xは52%以下であることが好ましく、Xは46%以下であることが更に好ましく、単位長あたりの変化率はXは2.0%/nm以下であることが好ましく、Xは1.5%/nm以下であることが更に好ましい。
図44(A)は、化合物半導体層におけるAlの組成勾配R(%/nm)と透過モードにおける量子効率(%)の関係を示すグラフ、図44(B)は、化合物半導体層におけるAlの傾斜層厚さ(nm)と透過モードにおける量子効率(%)の関係を示すグラフである。
なお、ここでの量子効率は波長280nmの場合の値である。ここでは、上述のサンブルNo.(1−1)〜(3−3)までのデータが示されている。図44(A)では、組成勾配Rが0はType1の場合、組成勾配Rが0.6%/nmはType2の場合、組成勾配Rが1.2%/nmはType3の場合を示している。図44(B)において、Type1では傾斜層は0nm、Type2では厚みDM+D2=50nm、Type3では厚みDM=25nmである。
Type2(組成勾配R:0.6%/nm)では、D=81nmのときの量子効率が高く、Type3(組成勾配R:1.2%/nm)ではD=96nmのときの量子効率が高くなっている。Type3では、Dの増加と共に量子効率が高くなっている。傾斜層厚を50nm以下とした場合に、傾斜層厚が25nmでは、量子効率は36.1%となる。
詳説すれば、上述のType1のサンプルNo.(1−1)では量子効率は22.9%、サンプルNo.(1−2)では量子効率は22.9%、サンプルNo.(1−3)では量子効率は18.9%である。
Type2のサンプルNo.(2−1)では量子効率は27.9%、サンプルNo.(2−2)では量子効率は31.1%、サンプルNo.(2−3)では量子効率は28.1%である。
Type3のサンプルNo.(3−1)では量子効率は18.9%、サンプルNo.(3−2)では量子効率は24.6%、サンプルNo.(3−3)では量子効率は36.1%である。
また、上述のグラフ(図39(Type2)、図41(Type3))を観察すると、感度向上の程度は、Type2がType3よりも少ないことから、Type2のピーク位置xpは入射側界面より25nmよりは遠い位置にあると考えられる。また、図40(B)、図42(B)に示されるように、Type2とType3の光電子放出に寄与しない光吸収が、300nmより長い波長でほとんど無いが、これは図39,図41において、Type2、Type3の量子効率が290nmから長波長側に向かって大きく向上していることと対応している。以上のように、Al組成を連続的に変化させた傾斜組成層による伝導帯形状の制御が分光感度特性に反映されていることが明らかである。また、Type1では、最大でも25%程度の量子効率しか得られないが、Type3では最大で40.9%の量子効率を得ることができた。これは光電子放出に寄与しない光吸収領域を半減させたことと、光電子放出に寄与しない領域のバンドギャップを大きくし、光透過率を増大させたことによるものと考えられる。
図46は、Type1〜Type3のサンプル(No.(1−2)、(No.(2−3)、(No.(3−3)における波長(nm)と、透過モードにおける量子効率(%)の関係を広範囲(200nm〜800nm)に示すグラフである。
いずれのサンプルの場合も、概ね波長400nm以下の量子効率が向上しているが、概ね波長400nm以上の量子効率は低くなっている。また、概ね波長400nm以上では、Type1の光電陰極の量子効率の方が、他のType2、Type3の光電陰極の量子効率よりも高くなっている。
なお、光電陰極の短い波長側の感度は、面板の透過率によって制限される。カットオフ波長はGaNのエネルギーバンドギャップによって与えられ、365nmである。図46のグラフによれば、量子効率は、波長365nm以上になると急峻に低下している。カットオフ波長よりも長波長側の感度はアルカリ金属含有層4(Cs−O)の特性に依存する。Type1における最大の量子効率は、波長280nmの光(紫外線)に対しては22.9%であり、Type2では波長320nmの光(紫外線)に対して30.7%、Type3では波長310nmの光(紫外線)に対して40.9%である。上述のように、Type2及びType3では著しく量子効率が改善している。
また、上述の実施例においては、第1領域11においてGaNを用いたが、これがAlを含有することで、AlGaNとなっても、エネルギーバンドギャップの解析から、伝導帯下端のエネルギーピーク位置を調整することは可能なため、一定の量子効率改善効果は得られる。また、p型の不純物としてMgを添加したが、各種の半導体層の添加量は、エネルギーバンド構造に大きな影響を与えない範囲で、自由に調整することができる。例えば、製造時に利用するノンドープのGaN層にMgを添加してもよい。
製造時に利用する基板21(図35(A))としては、高品質なGaN結晶が得られる観点からSiが好ましいが、これはサファイア、酸化化合物、化合物半導体、SiCなど、各種の基板を用いることができる。また、製造時に利用するSi基板の不純物濃度は、5×1018 cm-3 〜5×1019cm-3 程度であり、この基板の抵抗率は0.0001Ω・cm〜0.01Ω・cm程度である。n型の不純物としてはAs(砒素)を用いることができる。
製造時に用いたバッファ層22(図35(A))を構成する半導体超格子構造は、AlN層とGaN層を交互に積層したものを利用したが、これはAlN層に代えてAlGaN層を用いることもできる。超格子構造への不純物添加量は、任意であり、p型、n型、ノンドープのいずれも可能であるが、不要な結晶性劣化要因を作らない観点から、ノンドープとすることが好ましい。バッファ層12を構成する第1の層(AlN)aの厚みは、好ましくは5×10−4μm〜500×10−4μm即ち0.5〜50nm、第2の層(GaN)の厚みは、好ましくは5×10−4μm〜5000×10−4μm、即ち0.5〜500nmである。なお、バッファ層22を構成する複数の第1の層と複数の第2の層とが交互に積層された複合層において、各層の厚みを全て同一とする必要はない。この構造のバッファ層22を用いることで、Si基板上に平坦性が良く、結晶性の良い半導体機能層を得ることができる。上述の例では、第1の層(AlN)の厚みは5nm、第2の層(GaN)の厚みを25nmとする。バッファ層21の厚みは、1200nmであるが、層数を増やして例えば1800nmとすることもできる。
なお、上記組成比Xは位置xの関数として与えられるが(X=g(x))、g(x)としては、以下の関数が好ましい。なお、X1は、第1領域11における組成比Xの最大値(または平均値)、X2は、第2領域12における組成比Xの最小値(または平均値)とする。また、上述のように、化合物半導体層1の全体の厚みD、中間領域1Mの厚みDM、第2領域12の厚みD2、及び、許容誤差E(≦60)は、(D2+DM)×(100±E)%=D/2である。
(場合1:Type2参照)
領域0≦x<D2+DMにおいて:
X=g(x)=(X2−X1)×(1−x/(D2+DM))+X1、
領域D2+DM≦x<D2+DM+D1において:
X=g(x)=X1、又は
X=g(x)≦X1、
を満たす。
(場合2:Type3参照)
領域0≦x<D2において:
X=g(x)=X2、又は、
X=g(x)≧X2、
領域D2≦x<D2+DMにおいて:
X=g(x)=−(X2−X1)×(x−D2)/DM+X2、
領域D2+DM≦x<D2+DM+D1において:
X=g(x)=X1、又は
X=g(x)≦X1、
を満たす。
(場合3:Type3参照)
領域0≦x<D2において:
X=g(x)=X2、又は、
X=g(x)≧X2、
領域D2≦x<D2+DMにおいて:
X=g(x)=(X2−X1)×(e−x/(D2+DM)−e−1)/(1−e−1)+X1
領域D2+DM≦x<D2+DM+D1において:
X=g(x)=X1、又は
X=g(x)≦X1、
を満たす。
なお、各位置における組成比Xは、±10%の誤差を含むことができる。上述のような関数の場合には、伝導帯下端のエネルギーの山の位置より、ガラス基板側の領域のエネルギーを持ち上げることができるため、量子効率を向上させることができる。厚みD2は、厚みDMとは、ほぼ同等(誤差±50%とする)の関係(D2=DM±DM×50%)を満たすものとする。なお、上述の実施形態では、中間領域1Mと第1領域11及び第2領域12とはそれぞれ接触していたが、これらの間に特性に影響を与えない程度のAlGaN層を介在させることもできる。
1…化合物半導体層、11…第1領域、12…第2領域、1M…中間領域、2…SiO層、3…ガラス基板、4…アルカリ金属含有層。

Claims (17)

  1. ガラス基板にSiO層を介して貼り付けられたAlGa1−XN層(0≦X<1)と、
    前記AlGa1−XN層上に形成されたアルカリ金属含有層と、
    を備え、
    前記AlGa1−XN層は、
    前記アルカリ金属含有層に隣接する第1領域と、
    前記SiO層に隣接する第2領域と、
    前記第1領域と前記第2領域との間に位置する中間領域と、
    を備え、
    前記第2領域から前記アルカリ金属含有層に向かう前記AlGa1−XN層の厚み方向の位置をxとし、前記第2領域と前記SiO層との界面位置を位置xの原点として設定し、組成比X=g(x)とする場合、前記中間領域における組成比Xの最小値をXMIN(M)、前記第2領域における組成比Xの最小値をXMIN(2)として、
    前記第1領域では、0≦g(x)≦XMIN(M)を満たし、
    前記中間領域では、g(x)は単調減少関数であって、且つ、g(x)≦XMIN(2)を満たし、
    前記第2領域では、g(x)は単調減少関数又は一定値であり、
    前記第2領域におけるg(x)が単調減少関数である場合には、前記第1領域の厚みD1は18(nm)以上であり、
    前記第2領域におけるg(x)が一定値である場合には、前記第1領域の厚みD1は31(nm)以上である、
    ことを特徴とする半導体光電陰極。
  2. 前記AlGa1−XN層の全体の厚みD、前記中間領域の厚みDM、前記第2領域の厚みD2、及び、許容誤差Eは、以下の関係式:
    (D2+DM)×(100±E)%=D/2、
    E≦60
    を満たすことを特徴とする請求項1に記載の半導体光電陰極。
  3. 前記第2領域における組成比Xの最小値XMIN(2)は、以下の関係式:
    0.3≦XMIN(2)≦0.65
    を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載の半導体光電陰極。
  4. 前記第1領域の厚みD1は100nm以下である、
    ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体光電陰極。
  5. 請求項1に記載の半導体光電陰極を製造する方法において、
    支持基板上にGaNバッファ層、GaNテンプレート層、化合物半導体層、前記SiO層を順次堆積する工程と、
    前記SiO層を介して前記化合物半導体層に前記ガラス基板を貼り付ける工程と、
    前記支持基板、前記バッファ層、前記テンプレート層、及び前記化合物半導体層の一部を順次除去し、前記化合物半導体層の残留領域を、前記AlGa1−XN層とする工程と、
    を備えることを特徴とする半導体光電陰極の製造方法。
  6. ガラス基板にSiO層を介して貼り付けられたAlGa1−XN層(0≦X<1)と、
    前記AlGa1−XN層上に形成されたアルカリ金属含有層と、
    を備え、
    前記AlGa1−XN層は、
    前記アルカリ金属含有層に隣接する第1領域と、
    前記SiO層に隣接する第2領域と、
    前記第1領域と前記第2領域との間に位置する中間領域と、
    を備え、
    前記第2領域は障壁層と井戸層を交互に積層してなる半導体超格子構造を有し、
    前記中間領域は障壁層と井戸層を交互に積層してなる半導体超格子構造を有し、
    隣接する障壁層と井戸層の対の領域を単位区間と規定した場合、
    少なくとも前記中間領域においては、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、前記第2領域と前記SiO層との界面位置から離れるにしたがって単調に減少しており、
    前記第2領域においては、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、前記中間領域におけるAlの組成比Xの単位区間内の平均値の最大値以上であり、且つ、
    前記第1領域においては、Alの組成比Xの平均値は、前記中間領域におけるAlの組成比Xの単位区間内の平均値の最小値以下である、
    ことを特徴とする半導体光電陰極。
  7. 前記第2領域においても、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、前記第2領域と前記SiO層との界面位置から離れるにしたがって単調に減少している、
    ことを特徴とする請求項6に記載の半導体光電陰極。
  8. 前記第2領域においては、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、厚み方向に沿って一定である、
    ことを特徴とする請求項6に記載の半導体光電陰極。
  9. 前記AlGa1−XN層の全体の厚みD、前記中間領域の厚みDM、前記第2領域の厚みD2、及び、許容誤差Eは、以下の関係式:
    (D2+DM)×(100±E)%=D/2、
    E≦60
    を満たすことを特徴とする請求項6に記載の半導体光電陰極。
  10. 前記第1領域の厚みD1は100nm以下である、
    ことを特徴とする請求項6に記載の半導体光電陰極。
  11. 請求項6に記載の半導体光電陰極を製造する方法において、
    支持基板上にGaNバッファ層、GaNテンプレート層、化合物半導体層、前記SiO層を順次堆積する工程と、
    前記SiO層を介して前記化合物半導体層に前記ガラス基板を貼り付ける工程と、
    前記支持基板、前記バッファ層、前記テンプレート層、及び前記化合物半導体層の一部を順次除去し、前記化合物半導体層の残留領域を、前記AlGa1−XN層とする工程と、
    を備えることを特徴とする半導体光電陰極の製造方法。
  12. ガラス基板にSiO層を介して貼り付けられたAlGa1−XN層(0≦X<1)と、
    前記AlGa1−XN層上に形成されたアルカリ金属含有層と、
    を備え、
    前記AlGa1−XN層は、
    前記アルカリ金属含有層に隣接する第1領域と、
    前記SiO層に隣接する第2領域と、
    前記第1領域と前記第2領域との間に位置する中間領域と、
    を備え、
    前記第2領域は障壁層と井戸層を交互に積層してなる半導体超格子構造を有し、
    前記中間領域は障壁層と井戸層を交互に積層してなる半導体超格子構造を有し、
    隣接する障壁層と井戸層の対の領域を単位区間と規定した場合、
    少なくとも前記中間領域においては、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、前記第2領域と前記SiO層との界面位置から離れるにしたがって減少していることを特徴とする半導体光電陰極。
  13. 半導体光電陰極において、
    ガラス基板にSiO層を介して貼り付けられたAlGa1−XN層(0≦X<1)と、
    前記AlGa1−XN層上に形成されたアルカリ金属含有層と、
    を備え、
    前記AlGa1−XN層は、
    前記アルカリ金属含有層に隣接する第1領域と、
    前記SiO層に隣接する第2領域と、
    前記第1領域と前記第2領域との間に位置する中間領域と、
    を備え、
    前記第1領域における有効Al組成比X(11)は、
    0(%)≦X(11)≦30(%)を満たし、
    前記第2領域における一定の有効Al組成比Xは、
    15(%)≦X≦X(11)+50(%)を満たすことを特徴とする半導体光電陰極。
  14. 半導体光電陰極において、
    ガラス基板にSiO層を介して貼り付けられたAlGa1−XN層(0≦X<1)と、
    前記AlGa1−XN層上に形成されたアルカリ金属含有層と、
    を備え、
    前記AlGa1−XN層は、
    前記アルカリ金属含有層に隣接する第1領域と、
    前記SiO層に隣接する第2領域と、
    前記第1領域と前記第2領域との間に位置する中間領域と、
    を備え、
    前記第1領域における有効Al組成比X(11)は、
    30(%)≦X(11)≦40(%)を満たし、
    前記第2領域における一定の有効Al組成比Xは、
    60(%)≦X≦X(11)+50(%)を満たすことを特徴とする半導体光電陰極。
  15. ガラス基板にSiO層を介して貼り付けられたAlGa1−XN層(0≦X≦1)と、
    前記AlGa1−XN層上に形成されたアルカリ金属含有層と、
    を備え、
    前記AlGa1−XN層は、
    前記アルカリ金属含有層に隣接する第1領域と、
    前記SiO層に隣接する第2領域と、
    前記第1領域と前記第2領域との間に位置する中間領域と、
    を備え、
    前記第2領域は障壁層と井戸層を交互に積層してなる半導体超格子構造を有し、
    前記中間領域は障壁層と井戸層を交互に積層してなる半導体超格子構造を有し、
    隣接する障壁層と井戸層の対の領域を単位区間と規定した場合、
    少なくとも前記中間領域においては、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、前記第2領域と前記SiO層との界面位置から離れるにしたがって単調に減少しており、
    前記第2領域においては、Alの組成比Xの単位区間内の平均値は、前記中間領域におけるAlの組成比Xの単位区間内の平均値の最大値以上であり、且つ、
    前記第1領域においては、Alの組成比Xの平均値は、前記中間領域におけるAlの組成比Xの単位区間内の平均値の最小値以下である、
    ことを特徴とする半導体光電陰極。
  16. 請求項1〜4、6〜10及び12〜15のいずれか1項に記載の半導体光電陰極と、
    光の入射に応じて半導体光電陰極から出射された電子を収集する陽極と、
    前記半導体光電陰極の電子出射面及び前記陽極を減圧環境内で収容する包囲体と、
    を備えることを特徴とする電子管。
  17. 請求項1〜4、6〜10及び12〜15のいずれか1項に記載の半導体光電陰極と、
    前記半導体光電陰極の電子出射面に対向するマイクロチャンネルプレートと、
    前記マイクロチャンネルプレートに対向する蛍光面と、
    前記半導体光電陰極の電子出射面、前記マイクロチャンネルプレート及び前記蛍光面を減圧環境内で収容する包囲体と、
    を備えることを特徴とするイメージ増強管。
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