JP2013224916A - 研削焼け判定装置および研削焼け判定方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】研削加工された円環状、円筒状、球状の被検体に接触、または近接させた試験コイルに交流電流を流し、交流電流により誘導された磁界により、被検体に渦電流を発生させ、発生した渦電流により誘導された磁界によって変化する試験コイルのインピーダンス変化を測定し、被検体を少なくとも1周させて測定、もしくは被検体に接触、または近接させた試験コイルを少なくとも1周させて測定することにより得られる該渦電流信号から研削焼けを判定する。
【選択図】図4
Description
例えば、特許文献1には、研削焼けによる焼戻りが発生した位置の硬度を正常部と研削焼け部とのバルクハウゼンノイズの大きさを比較することで、破壊することなく検出する技術が記載されている。
また、特許文献3には、渦電流法を用い、測定位置の透磁率変化によるコイルインピーダンス変化等を検出することで、研削焼けを検査する検査方法が記載されている。
さらに、特許文献4には、渦電流法を用い、工作物の加工変質層(研削焼け層)と加工の影響がない深層部を測定するための2つの周波数を設定し、検出される透磁率の差の大きさにより、加工変質層の判定を行う検査方法が記載されている。
そこで、本発明は上記の問題点に着目してなされたものであり、その目的は、研削時に発生した研削焼けを正確に判定することができる研削焼け判定装置および研削焼け判定方法を提供することにある。
本発明は、本発明者らによる上記知見に基づくものであり、上記課題を解決するための本発明のある実施形態の研削焼け判定装置は、交流電流を流した試験コイルを有し、研削加工された被検体を前記試験コイルに接触、または近接させて、交流電流により誘導された磁界により、前記被検体に渦電流を発生させ、その発生した渦電流により誘導された磁界によって変化する上記試験コイルにおけるインピーダンス変化を、上記被検体の渦電流信号として測定する渦電流信号測定手段と、
上記被検体の渦電流信号と、予め得た複数の基準試料の渦電流信号とに基づいて研削時の研削焼けを判定する判定手段とを有する。
また、上記被検体は、転がり軸受を構成する内輪、外輪、ころ、または転動体であってもよい。
また、上記被検体は、転がり軸受を構成する内輪、外輪、ころ、または転動体であってもよい。
(研削焼け判定装置)
本実施形態の研削焼け判定装置は、渦電流信号測定手段と、判定手段とを有する。
<渦電流信号測定手段>
上記渦電流信号測定手段は、渦電流方式の測定装置であり、試験コイルと、発振器と、ブリッジ回路と、増幅器と、移相器と、位相検波器と、表示器等とを有する。上記発振器は、上記試験コイルに交流電流を流し、該試験コイル内に磁界を発生させる手段である。また、ブリッジ回路は、上記発振器によって磁界を発生させられた上記試験コイルのインピーダンス変化を検知する手段である。
一方、上記判定手段は、予め得られた複数の基準試料の渦電流信号に基づいて一定の範囲の判定基準を規定し、この判定基準と、上記渦電流信号測定手段によって測定された被検体の渦電流信号とから、当該被検体の研削時の研削焼けを判定する手段である。この判定結果は、例えば、表示装置などに表示されるなどして利用者に報知される。
本実施形態の研削焼け判定方法は、渦電流信号測定ステップと判定ステップとを含む。
<渦電流信号測定ステップ>
渦電流信号測定ステップは、以下のようにして行われる。すなわち、上記発振器により上記試験コイルに交流電流が流されると、該交流電流に誘導されて上記試験コイル内に磁界が発生する。ここで、上記試験コイルに被検体を接触又は近接させると、上記試験コイル内に発生した磁界により上記被検体に渦電流が発生する。さらに、渦電流により、上記試験コイル内の磁界を打ち消す方向に磁界が誘導されるため、上記試験コイルのインピーダンスに変化が生じる。ここで、上記試験コイル内の磁界により上記被検体に発生する渦電流は、上記被検体の導電率や透磁率によって変化するため、材質の異なる被検体を上記試験コイルに接触又は近接させると上記試験コイルのインピーダンスは異なるものとなる。
ここで、上記基準試料とは材質が異なる被検体(例えば、研削焼けが発生している不良品)を測定すると、前述した原理により試験コイルのインピーダンスが変化するため、ブリッジ回路の平衡が崩れ、ブリッジ回路に電圧が生じる。この電圧は増幅器、位相検波器により電圧ベクトルとしてX−Y平面に表示される。2つの位相検波器を用いて、片方の制御信号の位相をX、もう片方の位相をXと90°異なるYにすることにより、ブリッジ回路に生じた電圧情報をX電圧、Y電圧として出力することができる。本実施形態の研削焼け判定方法においては、このような機能を有する渦電流測定装置を用いて、X電圧、Y電圧を渦電流信号として計測する。
なお、基準試料と試験コイルとの距離(リフトオフ)による電圧変化がX電圧として出力されるように移相器により調整しているため、品質の変化をY電圧として出力されるようにしている。
まず、研削焼けが生じていない被検体を基準試料として用意し、ある1点におけるバランスにより、Y電圧が0となるようにする。
次に、この基準試料を少なくとも1周させて測定、もしくはこの基準試料に接触、または近接させた試験コイルを少なくとも1周させて測定すると、図1のような波形が得られる。図1は、焼入れ焼戻しを施した高炭素クロム軸受鋼の転がり軸受サンプルに対して渦電流装置を用いて軌道面中央を測定した結果を示している。測定は基準試料を少なくとも1周させて測定、もしくはこの基準試料に接触、または近接させた試験コイルを少なくとも1周させて測定するため、横軸を測定開始位置からの回転角度とし、縦軸を測定電圧値とする。前述したように、基準試料と試験コイルとの距離(リフトオフ)による電圧変化をX軸上になるように調整したため、測定する電圧値はY電圧を採用する。図1のように、良品であれば、測定値はその1周においてほとんど変化なく測定される。なお、基準とした位置はX線測定にて良品であることを確認している。また、測定時の励磁周波数は、例えば200kHzである。
図2は、同条件にて製造した同形状の転がり軸受で、研削焼けの無い良品50個の測定結果を示している。良品50個は同一製造条件にもかかわらず、測定結果にはばらつきが生じている。本実施形態では、これらばらつきが生じている複数の良品を「複数の基準試料」として取り扱う。
ここで、サンプルAの測定結果をNG(研削時の研削焼けが生じている)と判別するためには、前述のような良品のばらつきを考慮した判定基準を設定する必要がある。
そこで、図2に示すように、「複数の基準試料」として、良品50個の測定電圧値の平均値a1および測定電圧値の標準偏差σ1を求め、平均値a1を基準とした±4σ1の範囲、すなわち、(a1−4σ1)〜(a1+4σ1)の範囲を「第1の判定基準」として設定する。なお、図2では平均値a1を示していない(平均値a1については、図3および図4を参照)。そして、この「第1の判定基準」で規定された範囲内に測定対象の被検体の測定電圧値が入っていなければ、当該被検体に研削時の研削焼けが生じていると判定されることとなる。すなわち、図3に示すような、強い研削焼けが発生したサンプルAの測定では、設定した「第1の判定基準」を超えた測定電圧値となることから、NGと判別される。
次に、図4に示すようなサンプルBの渦電流信号の測定結果に前述の第1の判定基準を用いた場合、サンプルBはNGと判別することはできない。しかしながら、サンプルBに生じた軽微な焼けにおいても、電圧変化は生じていることから、「第1の判定基準」とは別の判定基準を設定する必要がある。そこで、測定電圧値の変化幅に着目した第2の判定基準を規定する。ここでの変化幅とは、測定時に被検体から得られる測定電圧値の最大値と最小値の差である。例えば、図5に示すように、「複数の基準試料」として、良品50個の測定電圧値の変化幅の平均値a2および測定電圧値の変化幅の標準偏差σ2を求め、変化幅の平均値a2を基準とした+4σ2の範囲を「第2の判定基準」として設定する。この「第2の判定基準」で規定された範囲内に測定対象の被検体の測定電圧値が入っていなければ、当該被検体に研削時の研削焼けが生じていると判定されることとなる。すなわち、サンプルBは、「第2の判定基準」よりも大きな変化幅となることからNGと判別される。
また、サンプルBに生じた軽微な焼けの判別は図5に示すような「第2の判断基準」以外に、測定電圧の変化率にて判別する方法がある。ここでの変化率とは、ある特定の測定区間における測定電圧の変化(ΔV)である。また、ある特定の測定区間とは、図6に示すような測定開始から終了までの区間と比較し、十分に小さい区間(ΔL)である。例えば、図7に示すように、「複数の基準試料」として、良品50個の測定区間ΔLにおける測定電圧値の変化率ΔVの最大値と最小値との差の平均値a3および測定区間ΔLにおける測定電圧値の変化率の最大値と最小値との差の標準偏差σ3を求め、変化率ΔVの最大値と最小値との差の平均値a3を基準とした+4σ3の範囲を「第3の判断基準」として設定する。この「第3の判断基準」で規定された範囲内に測定対象の被検体の測定電圧の変化率ΔVが入ってなければ、当該被検体に研削時の研削焼けが生じていると判断されることとなる。すなわち、サンプルBは、「第3の判断基準」よりも大きな変化率となることからNGと判別される。
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更が可能である。
Claims (6)
- 交流電流を流した試験コイルを有し、研削加工された被検体を前記試験コイルに接触、または近接させて、交流電流により誘導された磁界により、前記被検体に渦電流を発生させ、その発生した渦電流により誘導された磁界によって変化する前記試験コイルにおけるインピーダンス変化を、前記被検体の渦電流信号として測定する渦電流信号測定手段と、
前記被検体の渦電流信号と、予め得た複数の基準試料の渦電流信号とに基づいて研削時の研削焼けを判定する判定手段とを有することを特徽とする研削焼け判定装置。 - 前記判定手段は、前記被検体を少なくとも1周させて測定、もしくは被検体に接触、または近接させた試験コイルを少なくとも1周させて測定することにより得られる電圧差の波形の最大値と最小値、及び最大値と最小値との差から求めた電圧変化幅、さらにある特定の測定区間における電圧の変化から求めた電圧変化率の内、1つあるいは2つ以上の判定基準で判定することを特徴とする請求項1に記載の研削焼け判定装置。
- 前記被検体は、転がり軸受を構成する内輪、外輪、ころ、または転動体であることを特徴とする請求項1又は2に記載の研削焼け判定装置。
- 研削加工された被検体を回転させ、前記被検体に接触、または近接させた試験コイルに交流電流を流し、交流電流により誘導された磁界により、被検体に渦電流を発生させる渦電流発生ステップと、発生した渦電流により誘導された磁界によって変化する前記試験コイルにおけるインピーダンス変化を前記被検体の渦電流信号として測定する渦電流信号測定ステップと、前記被検体の渦電流信号と、予め得た複数の基準試料の渦電流信号とに基づいて研削時の研削焼けを判定する判定ステップとを含むことを特徽とする研削焼け判定方法。
- 前記判定ステップは、前記被検体を少なくとも1周させて測定、もしくは被検体に接触、または近接させた試験コイルを少なくとも1周させて測定することにより得られる電圧差の波形の最大値と最小値、及び最大値と最小値との差から求めた電圧変化幅、さらにある特定の測定区間における電圧の変化から求めた電圧変化率の内、1つあるいは2つ以上の判定基準で判定されることを特徴とする請求項4に記載の研削焼け判定方法。
- 前記被検体は、転がり軸受を構成する内輪、外輪、ころ、または転動体であることを特徴とする請求項4又は5に記載の研削焼け判定方法。
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