以下、図面を適宜参照しながら、本発明を実施するための形態(本実施形態)を説明する。なお、以下に記載する内容は本実施形態の一例であり、本発明の内容は以下の内容に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施可能である。
[1.本実施形態の塗布膜]
本実施形態の塗布膜は、本実施形態の塗布膜の製造方法により製造されるものである。また、本実施形態の塗布方法を適用して塗布液を塗布することにより得ることもできる。図1に、本実施形態の塗布膜が適用された透明電極40の構成を示す。透明電極40は、電極(第1導電層)10と、本実施形態の塗布膜(塗布膜(第2導電層)20)と、ガラス基材30と、を備えてなる。
<電極10>
電極10は、通常、導電性を有する金属材料により構成される。金属材料の種類としては特に制限されるものではないが、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等が挙げられる。これらの中でも、良好な導電性の観点から、金属材料は銀であることが好ましい。これらは1種が単独で用いられてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。また、金属材料は金属の単体であってもよいし、金属化合物(例えば合金等)であってもよい。
電極10の形成に用いる金属材料の形状も特に制限されるものではないが、パターン形成(後記する)のし易さの観点から、金属材料の形状は、金属微粒子又は金属ナノワイヤであることが好ましい。即ち、金属微粒子又は金属ナノワイヤを用いて、電極10を形成することが好ましい。
電極10は、ガラス基材30上にパターンとして形成されている。そのため、ガラス基材30を透過した光は、電極10により過度に遮られることなく、ガラス基材30の逆側に到達する。これにより、透明電極40は、透明性及び導電性を有することができる。なお、電極10の形状は、例えば、矩形状、円形状等の平板形状とすることができる。ただし、電極10の形状を平板形状とする場合、ガラス基材30を透過した光が過度に遮られない形状とすることが好ましい。
さらに、パターンは他の形状であってもよい。パターン形状としては、例えば、ストライプ状、格子状、ハニカム状、ランダムな網目状(細線形状)等とすることができる。これらの中でも、ストライプ状、格子状、ハニカム状が好ましい。また、パターン形状としては、これらを任意に組み合わせた形状であってもよい。
パターンの線幅は、特に制限されるものではないが、好ましくは10μm以上、また、その上限は、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。線幅をこのような範囲に設定することにより、電極10についての所望の導電性をより得易くなる。また、透明電極40の透明性をより向上させることができる。
パターンの間隔(隣接する細線同士の間隔)は、パターンの形状によって異なるものにすることができる。例えば、パターンの形状がストライプ状、格子状である場合、間隔は、0.5mm以上が好ましく、4mm以下が好ましい。さらに、パターン形状がハニカム状である場合、一辺の長さは、0.5mm以上が好ましく、4mm以下が好ましい。
また、パターンの高さ(線幅に垂直な方向の長さ)は、特に制限されるものではないが、0.1μm以上が好ましく、10μm以下が好ましい。パターンの高さをこの範囲に設定することにより、電極10についての所望の導電性をより得易くなる。また、塗布膜を有機電子デバイスに適用した場合に、電流リークをより確実に防止することができる。これにより、有機電子デバイスの耐久性をより向上させることができる。さらには、塗布膜の膜厚をより均一にし易くなる。
電極10は、任意の方法により、ガラス基材30表面に形成することができる。例えば電極10のパターンは、通常の印刷パターン形成方法により、形成することができる。具体的には、電極10のパターンは、金属粒子の分散液を用い、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の印刷方法により形成することができる。
これらの方法のより具体的な方法として、グラビア印刷法については、例えば、特開2009−295980号公報、特開2009−259826号公報、特開2009−96189号公報、特開2009−90662号公報等に記載の方法が挙げられる。また、フレキソ印刷法については、例えば、特開2004−268319号公報、特開2003−168560号公報等に記載の方法が挙げられる。スクリーン印刷法については、例えば、特開2010−34161号公報、特開2010−10245号公報、特開2009−302345号公報等に記載の方法が挙げられる。インクジェット法については、例えば、特開2009−231264号公報等に記載の方法が挙げられる。
電極10を形成する方法として、前記の方法以外には、例えば、ガラス基材30全面に金属層を形成し、フォトリソグラフィ法によって形成することができる。具体的には、はじめに、ガラス基材30上の全面に、例えば印刷、蒸着、スパッタ、めっき等の1種以上の物理的又は化学的形成手法を用いて、金属層を形成する。そして、別の金属箔を接着剤等を用いて当該金属層に積層した後、フォトリソグラフィ法を適用してエッチングすることにより、所望のパターン(例えばストライプ状、メッシュ状等)を形成することができる。
電極10を形成するさらに別な方法としては、例えば、金属微粒子を含有するインクをスクリーン印刷により所望の形状に印刷する方法、メッキ可能な触媒インクをグラビア印刷、インクジェット方式で所望の形状に塗布した後、メッキ処理する方法、銀塩写真技術を応用した方法等が利用可能である。中でも、銀塩写真技術を応用した方法を用いた例としては、例えば、特開2009−140750号公報の[0076]−[0112]及び実施例に基づいて電極10を形成することができる。触媒インクをグラビア印刷してメッキ処理する方法を用いた例としては、例えば、特開2007−281290号公報に基づいて電極10を形成することができる。
ランダムな網目構造の電極10を形成する例としては、例えば、特表2005−530005号公報に記載の技術を利用することができる。具体的には、金属微粒子を含有する液を塗布乾燥することにより、自発的に導電性微粒子の無秩序な網目構造を形成させる。これにより、電極10を形成することができる。
電極10の表面比抵抗は、100Ω/□(スクエア(sq)。以下同じ)以下であることが好ましく、10Ω/□以下であることがより好ましい。表面比抵抗は、例えばJIS K6911、ASTM D257等に準拠して測定することができる。また、表面抵抗率計を用いて測定することもできる。
パターン形状の電極10は、金属粒子を含むペーストを印刷することにより設けられることが好ましい。このような金属粒子の具体的な形状は特に制限されないが、高い導電性が得られるという観点から、金属ナノ粒子が好ましい。
金属ナノ粒子は、粒子径が原子スケールからナノメートルサイズの微粒子状の金属である。金属ナノ粒子の平均粒径は特に制限されないが、3nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、また、その上限は、300nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、30nm以下が特に好ましい。
また、金属粒子を含むペーストの印刷後には、導電性を高めるために、電極10を加熱して焼成することが好ましい。加熱焼成により、金属粒子同士を融着させることができ、導電性がより良好なものになる。加熱焼成時の温度は特に制限されないが、100℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上、また、その上限は、900℃以下が好ましく、600℃以下がより好ましい。
ただし、本実施形態においては、基材としてガラス基材30を用いているが、例えばポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate;PET)等の樹脂材料を用いる場合、加熱焼成温度は110℃以下が好ましい。加熱焼成の時間は特に制限されないが、例えば、加熱焼成の温度によって異なるため一概には言えないものの、通常は1分以上60分以下である。
<塗布膜20>
図1に示す塗布膜20(本実施形態の塗布膜)は、電極10及びガラス基材30を覆って形成されるものである。このように、電極10と塗布膜20とを積層して形成することにより、電極単独、又は、塗布膜単独によっては通常得ることが困難である導電性を、電極面内において均一に得ることができる。
塗布膜20は、通常は、導電性ポリマー及び水溶性バインダを含むものである。
〔導電性ポリマー〕
塗布膜20に含まれる導電性ポリマーは、導電性を有する高分子体である。導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子化合物とポリ陰イオン(ポリアニオン)とを反応させることにより製造される。具体的には、このような導電性ポリマーは、π共役系導電性高分子化合物を構成する前駆体モノマーを、ポリ陰イオンと酸化剤(或いは酸化触媒)との存在下で化学酸化重合することによって、容易に製造できる。
・π共役系導電性高分子化合物
導電性ポリマーの原料となるπ共役系導電性高分子化合物の種類は特に限定されない。例えば、π共役系導電性高分子化合物は、ポリチオフェン(基本のポリチオフェンを含む、以下同様)類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類等鎖状導電性ポリマーが挙げられる。これらの中でも、導電性、透明性、安定性等の観点から、ポリチオフェン類及びポリアニリン類が好ましく、ポリチオフェン類の一種であるポリエチレンジオキシチオフェンが特に好ましい。なお、π共役系導電性高分子化合物は、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。
π共役系導電性高分子化合物の原料となる前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有するものである。そして、前駆体モノマーは、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際に、その主鎖にπ共役系が形成される。前駆体モノマーとしては、例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。用いる前駆体モノマーは、π共役系導電性高分子化合物に対応する前駆体モノマーに基づいて適宜決定すればよい。前駆体モノマーは1種が単独で用いられてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
・ポリ陰イオン
導電性ポリマーは、前記のように、前記前駆体モノマーを、少なくともポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合することによって得られる。ポリ陰イオンの具体的な種類は特に制限されない。ただし、通常、ポリ陰イオンは、例えば、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル並びにこれらの共重合体であって、アニオン基を有する構成単位とアニオン基を有さない構成単位とからなる。なお、ポリ陰イオンは、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。
ポリ陰イオンは、前記のπ共役系導電性高分子化合物を溶媒に可溶化させる可溶化高分子でもある。また、ポリ陰イオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子化合物に対するドーパントとして機能する。これにより、得られるπ共役系導電性高分子化合物の導電性及び耐熱性を向上させることができる。
従って、ポリ陰イオンのアニオン基は、π共役系導電性高分子化合物への化学酸化ドープを生じさせうるものであることが好ましい。中でも、ポリ陰イオンのアニオン基は、製造の容易さ及び安定性の観点から、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシ基及びスルホ基が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子化合物へのドープ効果がより良好であるという観点から、一置換硫酸エステル基、カルボキシ基及びスルホ基がより好ましい。
ポリ陰イオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。ポリ陰イオンは、これらが単独で用いられてもよいし、2種以上の共重合体であってもよい。
また、ポリ陰イオンは、化合物内にF(フッ素原子)を有するポリ陰イオンであってもよい。具体的には、ポリ陰イオンとしては、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(登録商標;Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(登録商標;旭硝子社製)等が挙げられる。
ポリ陰イオンとしてスルホン酸基を有するものを用いる場合、塗布膜20を形成後、さらに100℃以上120℃以下で5分以上の加熱乾燥処理を施すことが好ましい。これにより、架橋反応を促進することができるため、塗布膜20の洗浄耐性や溶媒耐性をいっそう向上させることができる。
従って、前記のポリ陰イオンの中でも、スルホン酸基を有するものが好ましく、中でも、ポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸及びポリアクリル酸ブチルスルホン酸がより好ましい。これらのポリ陰イオンは、後記する水溶性バインダとの相溶性が高いという利点がある。また、得られる導電性ポリマーの導電性をより高くできるという利点もある。
ポリ陰イオンの重合度は、前駆体モノマーの個数(即ち重合度)として、10〜100000であることが好ましく、ポリ陰イオンの溶媒溶解性及び導電性の観点からは、50〜10000であることがより好ましい。
ポリ陰イオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン基を有さないポリマーにアニオン基を直接導入する方法、アニオン基を有しないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法が挙げられる。
これらの中でも、例えばアニオン基含有重合性モノマーの重合により製造する方法として、具体的には例えば、溶媒中、アニオン基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。より具体的には、所定量のアニオン基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させる。そして、これを所定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。この反応により得られたポリマー(ポリ陰イオン)は、溶媒に溶解されて所定の濃度に調整され使用することができる。
なお、この製造方法において、アニオン基含有重合性モノマーとアニオン基を有さない重合性モノマーとを共重合させることもできる。
アニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤及び酸化触媒、溶媒は、特に制限されない。このような酸化剤としては、例えば、J.Am.Soc.,85、454(1963)に記載されるピロールの酸化重合に好適な酸化剤を用いることができる。中でも、安価で取扱い易い酸化剤が好適である。具体的には、酸化剤としては、例えば、鉄(III)塩(例えばFeCl3、Fe(ClO4)3)、有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩、又は過酸化水素、重クロム酸カリウム、過硫酸アルカリ(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム)又はアンモニウム、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム及び銅塩(例えば四フッ化ホウ酸銅)等が好適である。さらに、酸化剤としては、触媒量の金属イオン(鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、バナジウムイオン等)の存在下に、例えば空気、酸素等も用いることができる。なお、酸化剤は1種が単独で用いられてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。
これらの中でも、腐蝕性を有さず、製造装置の耐久性を向上させることができるという観点から、過硫酸塩並びに有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩が好ましい。このような鉄(III)塩の具体例としては、炭素数1〜20のアルカノールの硫酸半エステルの鉄(III)塩(例えばラウリル硫酸等);炭素数1〜20のアルキルスルホン酸(例えばメタンスルホン酸、ドデカンスルホン酸等);脂肪族炭素数1〜20のカルボン酸(例えば2−エチルヘキシルカルボン酸等);脂肪族パーフルオロカルボン酸(例えばトリフルオロ酢酸、パーフルオロオクタノン酸);脂肪族ジカルボン酸(例えばシュウ酸並びに殊に芳香族の、適宜炭素数1〜20のアルキル置換されたスルホン酸(例えばベンゼセンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸))の鉄(III)塩等が挙げられる。
得られたポリマーがポリ陰イオン塩である場合には、ポリ陰イオン酸に変質させることが好ましい。ポリ陰イオン酸(アニオン酸)に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外ろ過法等が挙げられる。これらの中でも、作業の容易さの観点から、限外ろ過法が好ましい。
導電性ポリマーを構成するπ共役系導電性高分子化合物とポリ陰イオンとの比率は、特に制限されるものではない。ただし、ポリ陰イオンの含有量は、π共役系導電性高分子化合物100質量部に対して、好ましくは100質量部以上2000質量部以下、また、良好な導電性及び分散性の観点からは、より好ましくは200質量部以上1000質量部以下である。
なお、π共役系導電性高分子化合物を得る際に用いられる酸化剤としては、前記のアニオン基含有重合性モノマーの重合に際して使用する酸化剤と同様のものを用いることができる。
導電性ポリマーとしては、市販の材料も好ましく利用することができる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸とからなる導電性ポリマー(PEDOT−PSSと略す)としては、Clevios(登録商標)シリーズ(H.C.Starck社製)、PEDOT−PSSの483095、560596(Aldrich社製)、Denatron(登録商標)シリーズ(Nagase Chemtex社製)が販売されている。また、ポリアニリンが、ORMECON(登録商標)シリーズ(日産化学社製)として販売されている。
導電性ポリマーの調製時、第2ドーパントとして、任意の有機化合物を併用してもよい。含まれうる有機化合物は特に制限されるものではなく、例えば、酸素原子を含む有機化合物(酸素含有有機化合物)が好ましく挙げられる。このような酸素含有有機化合物としては、例えば、ヒドロキシ基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物等が挙げられる。これらは1種が単独で用いられてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。
ヒドロキシ基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシ基含有化合物としては、エチレングリコール及びジエチレングリコールが好ましい。
カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。
エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
これらの中でも、酸素含有有機化合物は、ヒドロキシ基含有化合物及びスルホキシド基含有化合物が好ましく、中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びジメチルスルホキシドがより好ましい。
〔水溶性バインダ〕
塗布膜20は、前記のように、通常は、導電性ポリマー及び水溶性バインダを含む。なお、本明細書において、「水溶性バインダ」とは、25℃の水100gに0.001g程度以上溶解するバインダ樹脂のことを表す。水への溶解性は、例えばヘイズメーター、濁度計等により測定することができる。
塗布膜20に含まれる水溶性バインダは、1種が単独で含まれていてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで含まれていてもよい。ただし、塗布膜20に含まれる水溶性バインダとしては、以下の式(1)で示される構造を有する化合物が好適である。
※ 式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。Qは−C(=O)O−又はC(=O)NR
a−を表し、R
aは水素原子又はアルキル基を表す。Aは置換若しくは無置換アルキレン基又は(CH
2CHR
bO)
x−(CH
2CHR
b)−を表し、R
bは水素原子又はアルキル基を表し、xは平均繰り返しユニット数(即ち重合度)を表す。
・式(1)で示される構造
式(1)で示される構造において、Raとして適用されうるアルキル基は、例えば炭素原子数1〜5の直鎖、或いは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。
Aは置換若しくは無置換アルキレン基又は(CH2CHRbO)x−(CH2CHRb)−を表す。
Aとしてのアルキレン基は、炭素原子数1〜5が好ましく、より好ましくはエチレン基、プロピレン基である。アルキレン基は後記する置換基で置換されていてもよい。
また、Rbは水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基は、炭素原子数1〜5の直鎖、或いは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。アルキル基は後記する置換基で置換されていてもよい。
更に、xは平均繰り返しユニット数を表す。xは1以上が好ましく、100以下が好ましく、10以下がより好ましい。繰り返しユニット数は分布を有しているため、xは平均値を用い、小数点以下1桁で表記してもよい。
また、前記の各官能基は、置換基で置換されていてもよい。これら置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基等で置換されてもよい。これらのうち好ましくは、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基である。なお、置換基は1種が単独で用いられてもよく、1種以上が任意に比率及び組み合わせで用いられてもよい。また複数の置換基が用いられる場合、複数の置換基は全て同一でもあってもよいし、一部又は全部が異なっていてもよい。さらに、これらの置換基は、さらに別の置換基で置換されていてもよい。
置換基としてのアルキル基が有する炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜8であることが更に好ましい。アルキル基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等が含まれる。また、置換基としてのアルキル基は、分岐を有していてもよい。
置換基としてのシクロアルキル基の炭素原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜12であることがより好ましく、3〜8であることが更に好ましい。シクロアルキル基の例には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基が含まれる。
前記アルコキシ基は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが最も好ましい。アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−メトキシ−2−エトキシエトキシ基、ブチルオキシ基、ヘキシルオキシ基及びオクチルオキシ基が含まれ、好ましくはエトキシ基である。
前記アルキルチオ基の炭素数は、分岐を有していてもよく、炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることが更に好ましく、1〜4であることが最も好ましい。
アルキルチオ基の例としては、メチルチオ基、エチルチオ基等が含まれる。前記アリールチオ基の炭素数は、6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールチオ基の例にはフェニルチオ基及びナフチルチオ基等が含まれる。
前記シクロアルコキシ基の炭素原子数は、3〜12であることが好ましく、より好ましくは3〜8である。シクロアルコキシ基の例には、シクロプロポキシ基、シクロブチロキシ基、シクロペンチロキシ基及びシクロヘキシロキシ基が含まれる。
前記アリール基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリール基の例にはフェニル基及びナフチル基が含まれる。前記アリールオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールオキシ基の例にはフェノキシ基及びナフトキシ基が含まれる。
前記へテロシクロアルキル基の炭素原子数は、2〜10であることが好ましく、3〜5であることが更に好ましい。へテロシクロアルキル基の例にはピペリジノ基、ジオキサニル基及び2−モルホリニル基が含まれる。
前記へテロアリール基の炭素原子数は、3〜20であることが好ましく、3〜10であることが更に好ましい。へテロアリール基の例にはチエニル基、ピリジル基が含まれる。
前記アシル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アシル基の例にはホルミル基、アセチル基及びベンゾイル基が含まれる。
前記アルキルカルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アルキルカルボンアミド基の例にはアセトアミド基等が含まれる。前記アリールカルボンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。
アリールカルボンアミド基の例にはベンズアミド基等が含まれる。前記アルキルスルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。
スルホンアミド基の例にはメタンスルホンアミド基等が含まれる前記アリールスルホンアミド基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。
アリールスルホンアミド基の例には、ベンゼンスルホンアミド基及びp−トルエンスルホンアミド基が含まれる。前記アラルキル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることが更に好ましい。
アラルキル基の例にはベンジル基、フェネチル基及びナフチルメチル基が含まれる。前記アルコキシカルボニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。
アルコキシカルボニル基の例にはメトキシカルボニル基が含まれる。前記アリールオキシカルボニル基の炭素原子数は7〜20であることが好ましく、7〜12であることが更に好ましい。アリールオキシカルボニル基の例にはフェノキシカルボニル基が含まれる。
前記アラルキルオキシカルボニル基の炭素原子数は8〜20であることが好ましく、8〜12であることが更に好ましい。アラルキルオキシカルボニル基の例にはベンジルオキシカルボニル基が含まれる。
前記アシルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アシルオキシ基の例にはアセトキシ基及びベンゾイルオキシ基が含まれる。
前記アルケニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルケニル基の例に、ビニル基、アリル基及びイソプロペニル基が含まれる。
前記アルキニル基の炭素原子数は2〜20であることが好ましく、2〜12であることが更に好ましい。アルキニル基の例にはエチニル基が含まれる。前記アルキルスルホニル基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。
アルキルスルホニル基の例に、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基が含まれる。前記アリールスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールスルホニル基の例に、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基が含まれる。
前記アルキルオキシスルホニル基の炭素原子数は1〜20あることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アルキルオキシスルホニル基の例に、メトキシスルホニル基、エトキシスルホニル基が含まれる。
前記アリールオキシスルホニル基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールオキシスルホニル基の例に、フェノキシスルホニル基、ナフトキシスルホニル基が含まれる。
前記アルキルスルホニルオキシ基の炭素原子数は1〜20であることが好ましく、1〜12であることが更に好ましい。アルキルスルホニルオキシ基の例に、メチルスルホニルオキシ基、エチルスルホニルオキシ基が含まれる。
前記アリールスルホニルオキシ基の炭素原子数は6〜20であることが好ましく、6〜12であることが更に好ましい。アリールスルホニルオキシ基の例に、フェニルスルホニルオキシ基、ナフチルスルホニルオキシ基が含まれる。
・その他の構造
また、前記の式(1)で示される構造に加えて、以下の式(2)で示される構造を併せもっている化合物も好適である。
※ 式(2)中、R、Q及びAは、前記式(1)におけるものと同様のものを表す。また、Zはアルキル基、−C(=O)−R
c、−SO
2−R
d、−SiR
e 3の何れか1種を表す。yは0又は1を表す。
式(2)で示される構造において、R、Q、Ra、A、Rb及びxは式(1)で定義した内容と同様である。また、Zはアルキル基、−C(=O)−Rc、−SO2−Rd、−SiRe 3の何れか1種を表し、Rc、Rd及びReは、それぞれ独立して、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基を表す。また、yは0又は1を表す。
Zとしてのアルキル基は、例えば炭素原子数1〜12が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基で、更に好ましくはメチル基である。アルキル基は前記した置換基で置換されてもよい。
Rc、Rd及びReは、それぞれ独立して、アルキル基、パーフルオロアルキル基、アリール基を表す。
アルキル基は、炭素原子数1〜12が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基であり、更に好ましくはメチル基である。
パーフルオロアルキル基は、例えば炭素原子数1〜8が好ましく、より好ましくはトリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基であり、更に好ましくはトリフルオロメチル基である。
アリール基は、例えばフェニル基、トルイル基が好ましく、より好ましくはトルイル基である。
なお、Rc、Rd及びReは、それぞれ独立して、前記した置換基により置換されていてもよい。
・その他の物性
塗布膜20に含まれる好適な水溶性バインダには、前記式(1)及び(2)の構造の他にも、任意の構造が含まれていてもよい。ただし、水溶性バインダの構成単位全体に対し、含まれる式(1)の構造の割合は、そのモル比として、10%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、また、その上限は、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましい。
また、水溶性バインダの数平均分子量は、好ましくは3000以上、より好ましくは4000以上、さらに好ましくは5000以上、また、その上限は、好ましくは2000000以下、より好ましくは500000以下、さらに好ましくは100000以下である。
水溶性バインダの数平均分子量及び分子量分布の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により行なうことができる。使用する溶媒は、水溶性バインダが溶解すれば特に制限は無く、THF(テトラヒドロフラン)、DMF(ジメチルホルムアミド)、CH2Cl2が好ましく、より好ましくはTHF、DMFであり、更に好ましくはDMFである。また、測定温度も特に制限はないが、40℃とすることが好ましい。
・水溶性バインダの製造方法
水溶性バインダは、例えば重合触媒を用いたラジカル重合により得ることができる。重合様式としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等が挙げられ、好ましくは溶液重合である。重合温度は、使用する重合開始剤によって異なるが、通常は−10℃以上、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、また、その上限は、通常250℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは100℃以下である。
〔塗布膜20の物性〕
塗布膜20の物性は、特に制限されるものではない。ただし、前記したように、塗布膜20は、通常、前記の導電性ポリマー及び前記の水溶性バインダを含むものである。このように、塗布膜20中に導電性ポリマーに対して水溶性バインダを併存させることにより、導電性ポリマーの導電性増強効果をいっそう奏させることができる。この効果により、高い導電性及び高い透明性を同時に満たすことができる。
また、塗布膜20に含まれる導電性ポリマーと水溶性バインダとの比率は、特に制限されないが、導電性ポリマー100質量部に対し、水溶性バインダが30質量部以上900質量部以下であることが好ましい。ただし、電流リーク防止、水溶性バインダの導電性増強効果、高い透明性の観点から、導電性ポリマーを100質量部に対し、水溶性バインダが100質量部以上900質量部以下であることが好ましい。
さらに、塗布膜20の乾燥膜厚は、特に制限されないが、30nm以上2000nm以下であることが好ましい。ただし、導電性の観点から、100nm以上であることがより好ましく、電極の表面平滑性の観点から、200nm以上であることがさらに好ましい。また、透明性の観点から、1000nm以下であることがより好ましい。
塗布膜20は、前記の材料以外にも、任意の材料を含んでいてもよい。このような材料としては、例えば、可塑剤、酸化防止剤や硫化防止剤等の安定剤、界面活性剤、溶解促進剤、重合禁止剤、染料や顔料等の着色剤等が挙げられる。さらに、塗布性等の作業性を高める観点から、溶媒(例えば、水や、アルコール類、グリコール類、セロソルブ類、ケトン類、エステル類、エーテル類、アミド類、炭化水素類等の有機溶媒)を含んでいてもよい。これらは1種が単独で含まれていてもよい、2種以上が任の比率及び組み合わせで含まれていてもよい。
<ガラス基材30>
ガラス基材30は、電極10及び塗布膜20が配設されるものである。ガラス基材30の具体的な構成及び種類は特に制限されない。ただし、ガラス基材30としては、無アルカリガラスが好ましい。また、ロールトゥロールでの生産適性、有機EL素子用の透明電極に供した際の素子のフレキシビリティ等の観点からは、厚さが10μm以上200μm以下の薄膜ガラスを用いることが好ましい。さらに、ガラス基材30は、破損のしにくさ、ロール搬送の容易さの観点から、50μm以上120μm以下であることが好ましい。このようなガラス基材としては、例えば特開2010−132532号公報に記載の薄膜ガラス(ガラスフィルム)を用いることができる。
なお、本実施形態においては、電極10及び塗布膜20を配設可能な材料であれば、基材はガラスに何ら制限されるものではない。従って、基材としては、例えば樹脂等の材料も好適に利用可能である。
[2.本実施形態の塗布膜の製造方法]
次に、本実施形態における、塗布膜の製造方法を説明する。前記のように、電極10は、ガラス基材30表面に対して、例えばフォトリソグラフィ等によって形成すればよい。そこで、以下の説明においては、電極10がガラス基材30表面に形成された後に、塗布膜20を設ける方法(塗布膜の製造方法、塗布液の塗布方法)を中心に説明する。
なお、塗布膜20の製造方法は、電極10及びガラス基材30(被塗布物)の表面に形成される塗布膜20の製造方法である。そして、固形分を含む第1塗布液を電極10及びガラス基材30(被塗布物)の表面に塗布する第1塗布工程と、固形分を含む第2塗布液を、前記第1塗布液が塗布された領域の周囲を囲んで塗布する第2塗布工程と、を含むものである。そして、前記第2塗布液の固形分濃度は、前記第1塗布液の固形分濃度よりも低いものである。なお、本実施形態の塗布膜の製造方法及び塗布方法は以下の内容に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施可能である。
・第1塗布工程
本工程においては、電極10及びガラス基材30の表面に、第1塗布液が塗布される。即ち、第1塗布液は、パターン形成された電極10を覆うように塗布される。ここで、第1塗布液は、固形分を含むものである。具体的には、第1塗布液は、通常、前記導電性ポリマー及び前記水溶性バインダを少なくとも含み、粘度が水等によって調整されたものとなる。
塗布を行う際の方式は特に制限されない。塗布の方式としては、例えばグラビア印刷法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法等の印刷法のほか、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、インクジェット法等の塗布法を用いることができる。中でも、第1塗布液及び第2塗布液を略同時に容易に精度良く塗布することができるという観点から、塗布法により塗布することが好ましく、インクジェットヘッドを用いたインクジェット法により塗布することがより好ましい。
・第2塗布工程
第1塗布液を塗布した後、次いで第2塗布液が塗布される。具体的には、固形分を含む第2塗布液が、前記第1塗布液が塗布された領域の周囲を囲んで塗布される。この際、第2塗布液は、塗布された第1塗布液に接触して塗布されることが好ましい。第1塗布液と第2塗布液との接触の具体的な形態は特に制限されず、例えば塗布された第1塗布液の端部に対して第2塗布液を重畳させることができる。また、このような形態は、塗布された第1塗布液との間に隙間が生じないよう(接触するように)に第2塗布液を塗布する形態であってもよい。さらに、第1塗布液と第2塗布液とが、少なくとも一部で接触するようにしてもよい。
また、第1塗布液及び第2塗布液は、それらの粘度によって、ガラス基材30上で濡れ広がることがある。そこで、このような濡れ広がりを考慮し、予め所定の間隔を空けて、第2塗布液が第1塗布液の塗布された領域(領域20a;図2参照)近傍に塗布されるようにしてもよい。このようにして第2塗布液を塗布した場合、第1塗布液若しくは第2塗布液又は第1塗布液及び第2塗布液が濡れ広がり、それらの塗布領域同士が接触する。このようにしても、本発明の効果を達成することができる。従って、このような方法も、本発明の方法の範疇に含まれるものとする。
第2塗布液は、通常は、前記の第1塗布液に含まれる材料と同様の材料及び質量にて調製される。即ち、第1塗布液に含まれる固形分と、第2塗布液に含まれる固形分とは、同じものであることが好ましい。また、第1塗布液及び第2塗布液は、いずれも固形分を含むものである。ただし、第2塗布液に含まれる水分量は、通常、第1塗布液に含まれる水分量とは異なる。具体的には、第2塗布液に含まれる水分量は、通常、第1塗布液に含まれる水分量よりも多い。このようにすることにより、第2塗布液の固形分濃度は、第1塗布液の固形分濃度よりも低くなる。
例えば、第1塗布液として導電性ポリマー、水溶性バインダ及び水からなる場合、第2塗布液には、当該導電性ポリマー及び当該水溶性バインダに加え、前記第1塗布液よりも多量の水を含むことが好ましい。第1塗布液及び第2塗布液をこのような組成にすることにより、2種類の塗布液の調製が容易になる。
また、第2塗布液の調製にあたり、第1塗布液を水で希釈すればよいため、水以外の新たな材料を用いる必要が無い。そのため、例えば、第1塗布液のみを予め調製しておき、適宜水で希釈して第2塗布液を調製するようにしておけば、第2塗布液の保存領域を削減することができる。
なお、第1塗布液及び第2塗布液には、前記の水に代えて或いは水とともに、異なる溶媒を用いてもよい。異なる溶媒を用いる場合、第1塗布液に含まれる溶媒と、第2塗布液に含まれる溶媒とは、同じものであってもよい、異なるものであってもよい。ただし、第1塗布液に含まれる溶媒と、第2塗布液に含まれる溶媒とは、同じものであることが好ましい。中でも、第1塗布液に含まれる溶媒と、第2塗布液に含まれる溶媒とは、いずれも水であることが好ましい。溶媒として水を用いることにより、有機溶媒を用いることによる環境負荷を低減することができる。
図2に、第1塗布液が塗布された領域20aと、領域20aの周囲を囲んで塗布された第2塗布液の領域20bの様子を示す。このとき、領域20a及び領域20bは、電極10を覆って塗布される。ただし、電極10は、領域20aのみによって覆われていてもよく、領域20aと領域20bの一部又は全部とにより覆われていてもよい。
前記のように、この領域20a(塗布領域内部)の周囲を囲んで、第2塗布液が塗布される。この際、第2塗布液は、領域20aの端部に接触して塗布されることが好ましい。そして、第2塗布液が塗布された部分が、図2に示す領域20b(塗布領域端部)となる。従って、固形分濃度の高い領域20aの周囲を囲んで、固形分濃度の低い領域20bが形成されていることになる。
第2塗布液を塗布する大きさ(幅)は特に制限されない。ただし、第2塗布液を塗布する際の幅は、第1塗布液及び第2塗布液の種類や湿潤状態(含水量)によって異なるため一概には言えないものの、例えば、図2に示す領域20bの幅Wは、10μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、また、その上限は、1000μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
また、前記のように、第2塗布液は、領域20aの端部に重畳して塗布されてもよい。この場合、第2塗布液が重畳される領域20aの割合は特に制限されない。ただし、重畳される割合は、領域20aの面積の好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上、また、その上限は、好ましくは20%以下、より好ましくは15%以下である。このようにすることで、領域20aと領域20bとの間に隙間を確実に生じさせることなく、均一で薄い塗布膜20を形成することができる。
また、前記のように、第2塗布液の固形分濃度は、第1塗布液の固形分濃度よりも低い。具体的には、第1塗布液及び第2塗布液の種類や湿潤状態(含水量)によって異なるため一概には言えないものの、例えば、第2塗布液の固形分濃度を、第1塗布液の固形分濃度で除した値(固形分比)としては、0.3以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、また、その上限は、0.9以下が好ましく、0.7以下がより好ましい。固形分比がこの範囲に含まれるように第1塗布液及び第2塗布液の固形分濃度を設定することにより、乾燥後の塗布膜20端部における突起21の発生を特に良好に抑制することができる。
ただし、本実施形態においては、第1塗布液及び第2塗布液のいずれも、固形分を含むものとする。即ち、第1塗布液の固形分濃度及び第2塗布液の固形分濃度は、いずれも、0質量%よりも大きいものとなる。特に、第2塗布液の固形分濃度は、0.5質量%以上であることが好ましい。そして、第1塗布液及び第2塗布液の固形分濃度の割合をこの関係にすることにより、詳細は後記するコーヒーリング現象を抑制することができる。また、領域20bにおける第2塗布液の過度の濡れ広がりを防止することができる。
なお、固形分濃度は、以下のようにして測定することができる。即ち、例えば第1塗布液を所定量(X;例えば100g)計量する。そして、真空オーブン等を用い、計量された第1塗布液中の溶媒を完全に蒸発させる。溶媒蒸発後の第1塗布液の残渣量Yを計量する。この残渣が第1塗布液の固形分となるので、第1塗布液の固形分濃度は、YをXで除した値(Y/X)となる。第2塗布液の固形分濃度も同様にして算出することができる。
第1塗布工程後、塗布された第1塗布液は、主に周辺部から乾燥し始める。そのため、第2塗布液は、当該周辺部(即ち、領域20aの周囲)に対して、できるだけ速やかに塗布することが好ましい。即ち、第1塗布工程と第2塗布工程とは、略同時に行われることが好ましい。これにより、塗布面積の広い第1塗布液の端部を狙って第2塗布液を射出すればよいため、より確実に、領域20aの周りを囲んで領域20bを形成することができる。即ち、従来生じていたコーヒーリング現象をより確実に抑制し、塗布膜20の端部に突起21が発生することを抑制することができる。
なお、本明細書における「略同時に塗布」とは、第1塗布液の塗布及び第2塗布液の塗布の時間差が略0になるようにして、第1塗布液及び第2塗布液を塗布することを表す。また、「略0」とは、第1塗布液の塗布と第2塗布液の塗布との時間差が無視できるほど小さく、時間差が0(即ち時間差が無い)を含むとともに、極めて0に近い場合も含むも概念である。また、射出のタイミングが同じであれば、第1塗布液の塗布と第2塗布液の塗布(着弾)とが略同時(同時を含む)に行われたものと考えることができる。これは、塗布液の射出口(例えばノズル)と被塗布物(例えば基材)との距離が通常は近いため、このように考えることができる。
第1塗布工程と第2塗布工程とは、必ずしもこの順番で行われる必要はない。即ち、塗布膜20を製造するにあたって、前記のように第1塗布工程と第2塗布工程とをこの順で経てもよく、第2塗布工程と第1塗布工程とをこの順で経てもよい。前記のように、第2塗布液の固形分濃度は、第1塗布液の固形分濃度よりも低い。従って、第2塗布液に含まれる溶媒(本実施形態においては水)の量が、第1塗布液に含まれる溶媒(本実施形態においては水)の量よりも多い。そのため、第2塗布液が完全に乾燥するまでには、第1塗布液と比較して時間がかかる。この現象を利用すれば、例えば第2塗布液を塗布した後、第1塗布液を塗布するまである程度時間間隔が空いても、塗布膜20の端部には突起21の発生が抑制される。
ここで、コーヒーリング現象について、図3を参照しながら説明する。従来、固形分濃度の異なる第2塗布液を塗布しなかった場合、第1塗布液の端部と内部とにおける乾燥速度の違いから、その端部において図3(a)に示すような突起21が生じていた。このような突起21を生じる現象が、前記のように、所謂コーヒーリング現象と呼称されるものである。そして、従来、このような現象が生じていたため、塗布膜20の膜厚が不均一になるという課題があった。
そこで、このような膜厚の不均一さを解消するために、端部を切除する方法も考えられる。しかしながら、突起21を含む端部を切除すると廃棄物が増加する。また、当該廃棄物には余剰の第1塗布液が残存したまま廃棄されるため、材料コストに削減の余地があった。
このような事情に鑑み、第1塗布液の周辺に、固形分濃度が第1塗布液よりも低い第2塗布液を塗布している。これにより、コーヒーリング現象によって領域20a内部から領域20a端部に移動した第1塗布液の固形分が、領域20bに存在する第2塗布液により希釈される。このようにすることで、第2塗布液を塗布しない場合と比較して領域20a端部の固形分量が少なくなる。そのため、第1塗布液及び第2塗布液を塗布後に乾燥させた後、図3(b)に示すように、塗布膜20の端部での突起21の発生が抑制された塗布膜20とすることができる。
なお、塗布膜20の端部は、図3(b)に示すように、完全に突起21が生じていないことが好ましい。ただし、乾燥後に突起21が生じていても、その大きさ(高さ)が小さい場合、無視できることがある。無視できる程度の突起21の高さとしては、詳細は実施例において後記するが、図9におけるh2/h1の値(h2をh1で除した値)が1.5よりも小さければ、良好な塗布膜20と考えることができる。また、h2/h1の値は、1.2より小さいことがより好ましい。
また、領域20bにおいては、第2塗布液の過度の濡れ広がりが生じていないことが好ましい。具体的には、詳細は実施例において後記するが、図9におけるa/h1の値(aをh1で除した値)が500よりも小さければ、良好な塗布膜20と考えることができる。また、a/h1の値は、250より小さいことがより好ましい。
・乾燥工程
前記の第1塗布工程及び第2塗布工程を経た後、その全体が乾燥される。乾燥工程の温度は特に制限されないが、電極10、塗布膜20及びガラス基材30が損傷しない程度の温度で乾燥処理することが好ましい。具体的には、第1塗布液及び第2塗布液の組成等によって異なるため一概には言えないが、例えば、80℃以上の温度とすることができ、上限は導電層が損傷を与えない温度として300℃程度までは可能な領域と考えられる。時間は10秒以上10分以下程度とすることが好ましい。このような条件とすることにより、乾燥を迅速に行うことができる。
・その他の工程
乾燥工程後、さらに熱処理工程を行う事で、塗布膜20に含まれる水溶性バインダの架橋反応を促進、完了させることができる。この熱処理工程は、前記の乾燥工程と同時に行ってもよく、別個に行ってもよい。また、熱処理工程を別個に行う場合、乾燥工程と熱処理工程とが連続して行われてもよく、両工程間に別の工程が設けられたり、待機時間が設けられたりしてもよい。
熱処理工程に供することにより、得られる透明電極40の洗浄耐性及び溶媒耐性を向上させることができる。また、透明電極40を有機EL素子に適用する場合、有機EL素子の駆動電圧の低減及び寿命の向上を図ることができる。
熱処理工程の温度及び時間は特に制限されない。ただし、熱処理は、150℃以上300℃以下の温度で行うことが好ましい。熱処理をこのような温度範囲で行うことにより、各材料(電極10、塗布膜20、ガラス基材30等)への熱ダメージを抑えつつ、熱処理により得られる効果を最大限発揮することができる。
熱処理の時間は、1分以上とすることが好ましい。また、生産性の観点から、その上限は、24時間以下とすることが好ましい。ただし、熱処理の温度が200℃以上である場合、30分以下とすることが好ましい。
熱処理工程は、第1塗布液及び第2塗布液を塗布及び乾燥した後、オンラインで行ってもよく、オフラインで行ってもよい。オフラインで行う場合、さらに減圧下で行うことが、水分の乾燥促進にもつながり、好ましい。
また、前記の第1塗布液及び第2塗布液に対し、例えば塩酸、硫酸、硫酸アンモニウム等の酸触媒を添加することができる。これにより、乾燥及び熱処理工程中、第1塗布液及び第2塗布液中の水溶性バインダの架橋反応を促進させることができる。また、導電性ポリマーに用いるポリ陰イオンとしてスルホン酸基を有するポリ陰イオンを用いることにより、ポリ陰イオンとしての機能と酸触媒としての機能とを併せ持たせることができる。そのため、処理時間を短縮することができる。
なお、前記においては、塗布膜20の製造方法を説明したが、同様にすることにより、突起21(図3(a)参照)の発生が抑制される塗布方法を提供することができる。
次に、前記した塗布膜20の製造方法に適用可能な製造装置について、図4及び図5を参照しながら説明する。図4に示す塗布装置500は、インクジェットヘッド2を用い、基材30表面に矩形状の塗布膜20を連続的に形成する(製造)方法の一例を示す概略模式図である。なお、図4及び図5においては、主にインクジェットヘッド2の構成を一部省略して記載している。
図4に示す製造装置500において、枚葉ガラスであるガラス基材100は、図示しないコンベア式の装置により連続的に走行されている。そして、インクジェットヘッドユニット2により第1塗布液及び第2塗布液がガラス基材100に液滴として射出される。その後、第1塗布液及び第2塗布液は乾燥され、塗布膜20が形成される。
インクジェットヘッドユニット2の具体的な構成は特に制限されない。例えば、図4に示すように、インクジェットヘッドユニット2は、4つのインクジェットヘッドを含んで構成される。また、図4に示すインクジェットヘッドユニット2は、図示しない別の4つのインクジェットヘッドも含んで構成される。
これらのインクジェットヘッド(図4における実施形態では8つ(図示しないものも含む))は、発熱素子を有し、この発熱素子からの熱エネルギーによって塗布液の膜沸騰を生じさせ、これによる急激な体積変化により、ノズルから射出液体を射出させるサーマルタイプのヘッドとすることができる。また、これらのインクジェットヘッドは、インク圧力室に圧電素子を備えた振動板を有しており、この振動板によるインク圧力室の圧力変化で射出液体を射出させる剪断モード型(ピエゾ型)のヘッドとすることもできる。
各インクジェットヘッドには射出液体を供給する機構等が接続されている。液滴射出時の射出液体供給はタンク8Aにより行われる。各インクジェットヘッド内の射出液体圧力を常に一定に保つようにこの例ではタンク液面を一定にしている。そのためにタンク8Aからオーバーフローさせてタンク8Bに射出液体を自然流下で戻している。タンク8Bからタンク8Aへの射出液体供給はポンプ11により行われており、射出条件に合わせて安定的にタンク8Aの液面が一定となるように運転条件が設定されている。なお、ポンプ11からタンク8Aへ射出液体を戻す際にはフィルタ12を通してから行われている。このように、射出液体は各インクジェットヘッドへ供給される前に絶対濾過精度又は準絶対濾過精度が0.05μm〜50μmの濾材を少なくとも1回は通過させることが好ましい。
また、各インクジェットヘッドの洗浄作業や液体充填作業等を実施するためにタンク6より射出液体が、タンク7より洗浄溶媒がポンプ9により各インクジェットヘッドへ強制的に供給可能となっている。各インクジェットヘッドに対してこうしたタンクポンプ類は複数に分けても良いし、配管の分岐を使用しても良い、またそれらの組み合わせでもかまわない。図4では配管分岐13を使用している。さらに各インクジェットヘッド内のエアを十分に除去するためにタンク6よりポンプ9にて各インクジェットへ射出液体を強制的に送液しながら下記に記すエア抜き配管から射出液体を抜き出して廃液タンク4に送ることもある。
さらに、各インクジェットヘッド内の射出液体温度を一定に保持するためにタンク8A,8Bと各インクジェットヘッドの間に熱交換器を設けてもよいし、各インクジェットヘッド内に熱交換器のような射出液体温度一定機構を設けても構わない。
インクジェットヘッドとして、剪断モード型のヘッドの具体的な構成を図5に示す。インクジェットヘッドには圧電性基盤を駆動させるための制御部5がコネクタ(不図示)を介して接続されている。この制御部5により、塗布液射出時の圧電性基盤の動作強度や周波数の選択等が行われる。
インクジェットヘッドは、上層圧電性基盤201b1と下層圧電性基盤201b2とを接合して形成された圧電性基盤201bと、天板201cと、ノズル板201dとを有している。
圧電性基盤201bには、研削加工を施すことによりノズル板201d側が開口し、反対側が閉塞している互いに平行な所定の長さを有する複数のノズル201b3と、ノズル201b3の閉塞した側につながる平坦な面201b4と、ノズル(インク圧力室)201b3の両側に側壁201b5とを有している。複数のノズルは交互に塗布液圧力室用のノズルと空気圧力室用のノズルとして使用する場合もある。本図は塗布液圧力室用として使用した場合を示している。201c2は圧電性基盤201bの上面を覆う第1天板を示し、201c1は第1天板の上面を覆う第2天板を示す。
符号201eは塗布液の塗布液供給管を示す。塗布液供給管201eより供給された塗布液はノズル射出口201d1より射出するようになっている。201c3は塗布液供給管201eから供給された塗布液の貯留部を示し、各ノズル201b3に連通した各塗布液供給口201c4より各塗布液圧力室用のノズル201b3に供給される様になっている。各ノズル201b3は第1天板201c2とノズル板201dとにより覆われることで複数の密閉されたチャネル(塗布液圧力室)が形成されるようになっている。
符号201d1は各側壁の剪断変形に伴い、塗布液圧力室の圧力変化で塗布液を液滴の状態で射出させるノズル射出口を示す。ノズル射出口の間隔は、0.02mm〜0.3mmが好ましい。201fは塗布液のエア抜き等に使用される配管を示す。201fは塗布液射出時にはバルブ等により密閉される構造となっている。
第1天板201c2及び第2天板201c1の材料は特に限定されない。例えば、第1天板201c2及び第2天板201c1の材料としては、例えば有機材料を用いてもよいが、アルミナ、窒化アルミニウム、ジルコニア、シリコン、窒化シリコン、シリコンカーバイド、石英、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等が挙げられる。
ノズル板201dを構成する基材としては、金属や樹脂が使用される。例えばステンレス、ポリイミド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等が好ましく採用出来る。特に好ましくはポリイミド樹脂で、カプトン(登録商標;Dupont社製)やユーピレックス(登録商標;宇部興産社製)等が寸法安定性、耐インク性、耐熱性等に優れているので好ましい。
次に、図4に示す塗布装置500を用いた、具体的な塗布手順を説明する。
まず、各インクジェットヘッドに第1塗布液及び第2塗布液(以下、まとめて適宜「塗布液」と言う)を充填する際の手順であるが、各インクジェットヘッドの待機位置にてポンプ9によりタンク6から強制的に塗布液を各インクジェットヘッドへ通液する。この際に排出された塗布液は図示しないキャッチパン等により受けられる。この操作により、各インクジェットヘッドに塗布液を充填し、ヘッド内部の空気抜きを実施した後にノズル表面(射出面)の清掃を実施する。
そして、あらかじめ決められた流量にてタンク8Aへタンク8Bから塗布液を送り込みオーバーフローにより循環を開始する。ポンプ9とインクジェットヘッドユニット2(全ては図示しないが、8つのインクジェットにより構成される)との間のバルブは閉めておき、ポンプ8Aとインクジェットヘッドユニット2間のバルブを開けることで、インクジェットヘッドユニット2から射出させることが可能になる。そして、ガラス基材100を所定の速度で搬送させている時、射出準備の完了したインクジェットヘッドユニット2をガラス基材100の所定の距離まで近づけ、所定の射出条件で塗布液の射出を開始する。オーバーフローさせてタンク8の液面を一定に保持しているため射出量は安定となる。この時、前記のように、第1塗布液の端部に対し第2塗布液が重畳するように、第2塗布液が射出されてもよい。
本実施形態の塗布膜20を製造するためのインクジェットヘッドユニット2の構成を、図6を参照しながらより詳細に説明する。図6に、インクジェットヘッドユニット2の詳細図を示す。なお、図6に示すインクジェットヘッドユニット2A,2Bは、塗布膜20を製造するために適用可能なインクジェットヘッドユニット2の構成を示すものであり、塗布膜20を製造(形成)可能なインクジェットヘッドユニット2は図6の形状に何ら限定されるものではない。
図6(a)には、塗布膜20をパターン形状に区切って形成することが可能なインクジェットヘッドユニット2Aを示す。インクジェットヘッドユニット2Aは、インクジェットヘッド21,22,23,24,25,26,27,28を備えて構成される。即ち、インクジェットヘッドユニット2Aは、複数のインクジェットヘッドを含んで構成されている。また、各インクジェットヘッドは、相互に独立して備えられている。インクジェットヘッド21〜24には、第1塗布液(固形分濃度の高い塗布液)が充填される。また、インクジェットヘッド25〜28には、第2塗布液(固形分濃度の低い塗布液)が充填される。
そして、図6においては図示していないが、塗布膜20を形成するために、塗布方向(ガラス基材100進行方向)の着弾位置調整は、射出制御装置5にて予め着弾位置を揃えるように制御しておく。そして、このガラス基材100が搬送されているとき、インクジェットヘッド21〜24から第1塗布液が、インクジェットヘッド25〜28から第2塗布液が射出される。インクジェットヘッド21〜24から射出された第1塗布液により、領域20a(塗布領域内部)が形成される。また、インクジェットヘッド25〜28から射出された第2塗布液により、領域20b(塗布領域端部)が形成される。
インクジェットヘッド21〜28は、図6(a)に示すように、ガラス基材100の進行方向に対してわずかにずれて設けられている。また、ガラス基材100自体も搬送(移動)されている。従って、前記進行方向において、第1塗布液及び第2塗布液が同じ位置に着弾するタイミングは少しずれることになる。しかしながら、ずれるタイミングは通常極めてわずかであるため、第1塗布液及び第2塗布液の塗布(射出)は略同時に行われることになる。これにより、前記進行方向において、同位置に射出された第1塗布液及び第2塗布液は略同時に乾燥が進行することになる。
インクジェットヘッド21〜28の駆動に際して、ガラス基材100の搬送速度に合わせて、狙いのウェット膜厚になるように駆動周波数が決められる。また、ガラス基材100の搬送方向と直交する方向での領域分割は、インクジェットヘッド21〜28におけるノズルの射出ON/OFFにより行われる。前記搬送方向の領域分割は、インクジェットヘッド21〜28からの射出タイミングを調整することにより行われる。このようにしてインクジェットヘッド21〜28が駆動することにより、領域20a,20bを設けることができる。
そして、このようなインクジェットヘッド2Aを用いて塗布膜20を形成することにより、図2に示したような突起21の発生を抑制することができ、均一な薄膜を形成可能な塗布膜の製造方法及び塗布液の塗布方法を提供することができる。
なお、このような突起21は、特にパターン形状に区切って塗布膜20を形成する場合に生じ易い。そのため、本実施形態の製造方法及び塗布方法は、塗布膜20をパターンに区切る場合に、特に顕著な効果を奏する。
また、図6(b)には、塗布膜20を連続して区切ることなく形成することが可能なインクジェットヘッドユニット2Bを示す。インクジェットヘッドユニット2Bは、インクジェットヘッド21,22,23,24,25,26を備えて構成される。即ち、インクジェットヘッドユニット2Bは、複数のインクジェットヘッドを含んで構成されている。また、各インクジェットヘッドは、相互に独立して備えられている。インクジェットヘッド21〜24には、第1塗布液(固形分濃度の高い塗布液)が充填される。また、インクジェットヘッド25,26には、第2塗布液(固形分濃度の低い塗布液)が充填される。
そして、図6においては図示していないが、塗布膜20を形成するために、塗布方向(図6において白抜き矢印で示す、ガラス基材100の進行方向)の着弾位置調整は、射出制御装置にて予め着弾位置を揃えるように制御しておく。そして、このガラス基材100が搬送されているとき、インクジェットヘッド21〜24から第1塗布液が、インクジェットヘッド25,26から第2塗布液が射出される。これにより、インクジェットヘッド21〜24から射出された第1塗布液により、領域20a(塗布領域内部)が形成される。また、インクジェットヘッド25,26から射出された第2塗布液により、領域20b(塗布領域端部)が形成される。
インクジェットヘッド21〜26は、図6(b)に示すように、ガラス基材100の進行方向に対してわずかにずれて設けられている。また、ガラス基材100自体も搬送(移動)されている。従って、前記進行方向において、第1塗布液及び第2塗布液が同じ位置に着弾するタイミングは少しずれることになる。しかしながら、ずれるタイミングは通常極めてわずかであるため、第1塗布液及び第2塗布液の塗布(射出)は略同時に行われることになる。これにより、前記進行方向において、同位置に射出された第1塗布液及び第2塗布液は略同時に乾燥が進行することになる。
なお、インクジェットヘッド21〜26の駆動に際しては、前記のインクジェットヘッド2Aの場合と同様にして、領域20a,20bを設けることができる。
そして、このようなインクジェットヘッド2Bを用いて塗布膜20を形成することにより、図2に示したような突起21の発生を抑制することができ、均一な薄膜を形成可能な塗布膜の製造方法及び塗布液の塗布方法を提供することができる。
以上のように、本実施形態においては、領域20aを形成するための第1塗布液を射出するインクジェットヘッドと、領域20bを形成するための第2塗布液を射出するインクジェットヘッドと、が、独立してインクジェットヘッドユニットに備えられている。このようにインクジェットヘッドユニットを構成することにより、領域20aの形成時と領域20bの形成時とでノズルやヘッドの配置を変更する必要が無い。従って、簡易な操作によってコーヒーリング現象の発生が抑制された塗布膜20を形成することができる。コーヒーリング現象の発生が抑制されることにより、塗布膜20の膜厚が均一に薄いものとすることができる。
なお、前記の説明においては、ガラス基材として枚葉ガラスを用いた例を説明している。しかしながら、インクジェットヘッド2A,2Bが適用な基材としては枚葉ガラスに何ら限定されず、例えばフィルム状基材等の任意に基材を用いることができる。また、基材として例えばフィルム状基材を用いる場合、適宜切断されながら塗布が行われてもよく、切断されることなく連続的に塗布が行われてもよい。ただし、製造コストや生産性の観点から、基材として枚葉ガラスを用いる場合にはインクジェットヘッドユニット2Aを適用することが好ましく、基材としてフィルム状基材を用いる場合にはインクジェットヘッドユニット2Bを適用することが好ましい。
[3.突起発生抑制のメカニズム]
次に、本発明者の検討によって得られた、塗布膜20の端部における突起発生が抑制されるメカニズムを説明する。
第1塗布液が塗布された後、外気に対してより広範に接触している第1塗布液の塗布面端部から乾燥が進行する。塗布面端部から乾燥が進行することにより、塗布面端部の水分量が減少する。これにより、塗布面内部と塗布面端部との水分量に差が生じる。その結果、塗布面内において、固形分を含む第1塗布液が塗布面内部から塗布面端部に向かって流れ始める。そして、この状態でさらに乾燥が進行すると、塗布面全体から水が蒸発し固形分が残存する。この時、前記のように、塗布面端部には第1塗布液が内部から流入していたので、塗布面端部に存在する固形分量も多いものとなる。従って、乾燥後には、塗布面端部に内部よりも多量の固形分が固化し、突起21が生じることになる。
そこで、本実施形態においては、図2及び図6に示すように、固形分濃度の異なる第1塗布液及び第2塗布液が塗布される。このようにすることで、第1塗布液塗布領域において、その内部から端部へ塗布液移動が発生しても、固形分増加による突起21の発生が抑制される。これにより、塗布膜20の膜厚を均一なものにすることができる。即ち、塗布膜20の膜均一性を良好なものにすることができる。
以下、実施例を挙げて、本実施形態をより具体的に説明する。
<水溶性バインダの調製>
200ml三ツ口フラスコにTHF100mlを加え10分間加熱還流させた後、窒素下で室温に冷却した。以下の式(3)で示される構造を有する2−ヒドロキシエチルアクリレート(5.06g、分子量:116.05)を加え、5時間加熱還流した。室温に冷却した後、3000mlのMEK(メチルエチルケトン)中に反応溶液を滴下し、1時間攪拌した。この操作により、沈殿物が生成した。
溶液中のMEKをデカンテーションにて除去後、100mlのMEKを用いて沈殿物を洗浄した。洗浄は3回行った。そして、洗浄後の沈殿物をTHFに溶解し、100mlフラスコへ移した。THFをロータリーエバポレータにより減圧留去後、沈殿物を50℃で3時間減圧乾燥した。これらの操作により、数平均分子量37000、分子量分布2.7の水溶性バインダを4.50g(収率89%)を得た。なお、数平均分子量及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC;Waters社製Waters2695)で測定した。GPCを用いた測定条件は、以下の通りである。
・GPC測定条件
装置:Wagers2695(Separations Module)
検出器:Waters 2414(Refractive Index Detector)
カラム:Shodex Asahipak GF−7M HQ
溶離液:ジメチルホルムアミド(20mM LiBr)
流速:1.0ml/min
温度:40℃
<実施例1>
調製した水溶性バインダを用い、図8に示す透明電極50を作製した。
・電極10の形成
ガラス基材上に、銀ナノ粒子インキ(InkTec社製TEC−PR−020)を用いて、パターン印刷を行った。パターン印刷されるエリアの領域、即ち、電極10の形状は、一辺が9.8cmの正方形状内に幅50μmピッチ1mmのストライプパターンとした。従って、当該領域の面積は96.04cm2である。印刷機はRK Print Coat Instruments Ltd.社製グラビア印刷試験機K303MULTICOATERを用いた。
印刷後のガラス基材について、電気炉を用いて250℃で2分間の焼成を行い、ガラス基板上に電極10を形成した。得られた電極10について、電極10の高さと表面の平均粗さRaを測定した。これらの測定には、高輝度非接触3次元表面形状粗さ計(Veeco社製WYKO NT9100)を用いた。測定された電極10の高さ(ガラス基材に対して垂直な方向)は0.7μm、パターン細線上の中心線に沿って測定した平均粗さRaは0.01μmであった。
・塗布膜20の形成
はじめに、固形分濃度の異なる第1塗布液及び第2塗布液を、以下の組成となるように調製した。なお、第1塗布液及び第2塗布液の固形分濃度は、前記の方法によって算出した。また、第2塗布液の固形分濃度を、第1塗布液の固形分濃度で除した値(固形分比)は、0.7であった。
第1塗布液(固形分濃度 4.52質量%)
導電性ポリマー分散液(H.C.Starck社製Clevios PH510、固形分濃度が1.7質量%になるように水を用いて調製) 17.6g
水溶性バインダ水溶液(調製した前記水溶性バインダと水とを用い、固形分濃度が20質量%になるように調製) 3.5g
ジメチルスルホキシド(第2ドーパント) 1.0g
第2塗布液(固形分濃度 3.164質量%)
第1塗布液 22.1g
水 9.48g
電極10を覆うように、前記の第1塗布液を図7に示す領域20aに塗布した。第1塗布液の塗布量としては、領域20aのウェット膜厚が15μmになる量を用いた。領域20aは、一辺が9.9cmの正方形状とした。さらに、領域20aの周囲を囲うように、隙間無く前記第2塗布液を領域20bに塗布した。
第2塗布液の塗布量としては、領域20bのウェット膜厚が15μmになる量を用いた。領域20bの幅Wは0.05cmとした。第1塗布液及び第2塗布液の塗布は、インクジェットヘッド(コニカミノルタIJ社製KM1024LHB)と図4に示す塗布装置500とを用いて行った。また、第1塗布液及び第2塗布液の塗布が略同時に行われるように、前記のインクジェットヘッドを制御した。
そして、第1塗布液及び第2塗布液が塗布されたガラス基材を循環式恒温槽を用いて90℃、1分間で乾燥させた。その後、電気炉を用いて230℃で2分間の焼成を行うことにより、図8に示す塗布膜20を形成した。これにより、透明電極50を完成させた。なお、図8においては、ガラス基材を図示していない。
<実施例2〜9、比較例1>
実施例1において用いた第2塗布液の固形分濃度を、水を用いて表1に示す濃度に変化させたこと以外は実施例1と同様にして、透明電極50を得た。比較例1における「固形分比1」は、第1塗布液の固形分濃度と第2塗布液の固形分濃度とが等量であることを表す。
<実施例10〜13>
実施例1において用いた第1塗布液及び第2塗布液を用い(前記の固形分比が0.7)、第1塗布液の塗布及び第2塗布液の塗布の時間差を表2に示す時間(単位は「秒」)で変化させたこと以外は実施例1と同様にして、透明電極50を得た。
<塗布膜20の膜均一性の評価>
得られた各透明電極50における塗布膜20について、膜均一性を評価した。まず、得られた各透明電極50の塗布膜20において、その端部の高さ及び幅を測定した。また、得られた透明電極50における塗布膜20の厚さも測定した。具体的な測定箇所として、図9に示すように、塗布膜20の厚さをh1、端部に存在しうる突起21の高さをh2、端部に存在しうる突起21の幅をaとして、測定した。測定は、前記の高輝度非接触3次元表面形状粗さ計と同じものを用いて行った。
塗布膜20は正方形状であるため、塗布膜20の各4辺における任意の位置で1回ずつ測定した。そして、測定された4辺における値について、それぞれh1、h2及びaの平均値を求め、H1、H2及びAとした。そして、これらのパラメータを用いて以下の各式の値を算出し、以下の各条件を満たした膜均一性を以下に示す符号で評価した。その結果を、表3に示す。なお、表3に示す「時間差0」は、時間差が略0であるものも含むものとする。
・評価
×:1.5≦H2/H1
△:1.35≦H2/H1<1.5、かつ、500≦A/H1
○:1.2≦H2/H1<1.35、かつ、250≦A/H1<500
◎:H2/H1<1.2、かつ、A/H1<250
なお、前記の評価条件として、1.5≦H2/H1を満たす場合には、A/H1がどのような値であっても、膜均一性の観点から「×」を付した。また、「◎」は膜均一性が非常に良いことを示し、「×」は膜均一性が非常に悪いことを示す。
また、例えば、H2/H1=1であるがA/H1=300である場合等、H2/H1についての評価と、A/H1についての評価とが異なることがある。そのような場合には、評価の低い方を採用した。即ち、例えば、H2/H1=1であるがA/H1=300である場合には、評価として「○」を採用した。
表3に示すように、実施例1〜13の透明電極50は、いずれも良好な端部を示した。即ち、実施例1〜13の透明電極50の端部において、突起21が無視できるほど小さいため、塗布膜21全体で均一な厚さになっていた。このように、固形分濃度の異なる第1塗布液及び第2塗布液を用いることにより、より均一な厚さの薄膜を形成可能であることがわかった。
また、表3に示すように、第1塗布液の塗布と第2塗布液の塗布との時間差は、略0(略同時)であることにより、より良好な結果が得られることがわかった(実施例1及び10)。さらに、第1塗布液と第2塗布液との固形分比は、0.3以上0.9以下であると、より良好な結果が得られることがわかった(実施例1〜7)。また、第1塗布液と第2塗布液との固形分比は、0.6あるいは0.7である場合に、特に良好な結果が得られることがわかった(実施例1及び4)。
表3に示すように、本実施形態によれば、より均一な厚さの薄膜を形成可能な塗布膜の製造方法及び塗布液の塗布方法を提供することができる。