JP2013211841A - 擬似多重極アンテナ - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的開口面積に対する電気的開口面積が大きく且つサイドローブが生じないアンテナを構成する。
【解決手段】電気多重極および磁気多重極を波源とするTM波とTE波の組み合わせにより、半空間に電磁放射を行う。また、電気多重極および磁気多重極の各次数の球面波を次数l=1からl=Lまで重ね合わせることにより、(2×l)重の電気多重極および磁気多重極の各次数の組み合わせで生じるl−1個のサイドローブを打ち消す。例えばTE11 モードの共振で磁気ダイポール放射、TM11 モードの共振で電気ダイポール放射する多数の球形誘電体共振器を擬似多重極の波源としてアンテナ球面上に配置する。このアンテナ球面上の多数の球形誘電体共振器によって形成される共振電磁界でエネルギーはz方向へ流れ、遠方界ではz方向に鋭い指向性で放射される。
【選択図】図31

Description

本発明は有効開口径を非常に大きくできるアンテナに関し、従来とは全く異なる新規な原理に基づく電気・磁気多重極を利用したアンテナに関するものである。
電磁波による遠方への電力伝送(以下、「無線電力伝送」)は数々の大きな問題を解決できる可能性を持つ。例えばインフラとしての電力伝送システムの一つに、宇宙空間に巨大な太陽光による発電所を作り、そこから巨大なアンテナを用いてマイクロ波で地上のレクテナ(整流器付きアンテナ)へ電力を伝送する「宇宙太陽発電所」(スペース・ソーラー・パワー・ステーション=SPS)構想がある(非特許文献1参照)。また、大気圏において、飛行母船に太陽光発電装置を設け、そこから大型のアンテナを用いて他の作業飛行船や地上のアンテナへ電力を伝送する構想もある。前者は電力の安定供給に寄与し、後者は山岳林業の再生(無人飛行船林業)や災害時の通信用基地局への電力供給に寄与する。
また、モバイル通信システムの端末に電力受電用のアンテナを設けることによって、周囲空間を飛び交う電磁波を電力源として確保できる。
篠原 真毅、久田 安正、JAXA SSPS WG4チーム 著、「マイクロ波送電用フェーズドアレーの現状と課題」、社団法人電子情報通信学会出版、信学技報2006-06
遠方へ電磁波で電力を伝送するためには伝送効率を極力高める必要がある。後に示すとおり、そのためには波長に対して大きな開口面を持つアンテナを用いて指向性を高める(ビーム幅を狭くするする)ことが必要である。電力伝送にはマイクロ波が適しているが、開口面の大きなアンテナを前述のような人工衛星や飛行船に適用しようとすると、機械的強度、重量、設置場所などが大きな課題となる。そのため、小さなハードウェアでありながら電気的開口面積の大きなアンテナが求められる。
しかし、従来の原理によるアンテナでは、機械的開口面積とその分布が決まれば、指向性利得はほぼ決定されてしまい、機械的開口面積と電気的開口面積は一致していた。すなわちアンテナの小型化とビーム幅の縮小化とはトレードオフの関係であった。
また、無線電力伝送は大きな電気エネルギーの空間伝送であるので、他の通信システムとの干渉を回避し、安全性を確保するために、サイドローブ放射をできる限り抑える必要がある。すなわちサイドローブを殆ど持たないアンテナが求められる。
しかし、例えば従来のアレーアンテナの構造では、アレーピッチに応じてサイドローブ(グレーティングローブ)が生じる。サイドローブを抑制するための最適化設計手法にも限界があった。低サイドローブ特性を求めるにはパラボラアンテナを用いるか、パラボラ曲面上に配置したパッチアンテナが有効であるが、パラボラの周縁部のエッジ効果を回避するために、開口面分布をガウス型やテーラー型にする必要があり、その結果、開口効率が低下するという課題があった。すなわちビーム幅の縮小化とサイドローブの抑制とはトレードオフの関係であった。
ここで、開口面アンテナの開口径をDm、ゲインをG、ビーム幅をθで表すと、これらは次の関係で表される。
このようにビーム幅Θはアンテナの開口径Dmに反比例する。
従来の原理に基づくアンテナにおいては、式(1.1) の関係に拘束され、前述の機械的開口面積を超える電気的開口面積のアンテナを構成することはできなかった。本発明の目的は、従来の原理とは全く異なる原理に基づくアンテナであり、機械的開口面積に対する電気的開口面積が大きく且つサイドローブが生じないアンテナを提供することにある。
本発明の擬似多重極アンテナは次のように構成される。
(a)電気多重極を波源としたTM波と磁気多重極を波源としたTE波の一方またはその両方の作り出す指向性のある電磁ビームと等価な電磁界により電磁放射を行うようにしたことを特徴とする。
(b)球座標系におけるマクスウェル方程式の解の要素である球面調和関数の各次数(l,m=1)に対応する球面電磁波をl=1からl=Lまで前記TM波とTE波の一方またはその両方をセットにして重ね合わせることにより、各次数の電気多重極放射および磁気多重極放射が持つ(l−1)個のサイドローブを打ち消す。
電気多重極および磁気多重極を波源としたTE波とTM波のセットにより、半空間に電磁ビームが形成される際、前記球面調和関数の次数l−1枚のサイドローブが生じる。しかし、前記球面電磁波をl=1からl=Lまで前記TE波とTM波とをセットにして重ね合わせることにより、サイドローブが打ち消される。前記Lを無限大にすればサイドローブは完全に打ち消されるが、有限のLであっても、充分に打ち消される。
(c)前記波源は、電磁ビームの指向性利得で与えられる開口面アンテナの有効開口半径よりも小さな半径をもつ回転楕円体面上に構成され、この回転楕円体の中心に電気多重極および磁気多重極があるのと等価な電磁界を生じさせる複数の放射源であることが好ましい。
(d)前記単位アンテナは誘電体共振器であることが好ましい。
(e)前記誘電体共振器は、TE11 の2重モード、TM11 の2重モードの一方またはその両方で共振する球形誘電体共振器であることが好ましい。
(f)上記(e)において、前記球形誘電体共振器は、前記電気多重極と等価な電磁界を生じさせるTMモードと前記磁気多重極と等価な電磁界を生じさせるTEモードの一方またはその両方で共振する、核部および殻部を有する多層球形誘電体共振器であることが好ましい。
(g)上記(e)において、前記球形誘電体共振器は、核部と外殻部とで誘電率が異なり、TEモードとTMモードとが縮退したものであることが好ましい。
(h)前記球形誘電体共振器は、核部が金属、外殻部が誘電体であり、TEモードとTMモードとが縮退したものであることが好ましい。
(i)上記(a)または(b)において、前記波源は、前記電気多重極と等価な球面電磁波を生じさせる、それぞれTMモードの共振と、前記磁気多重極と等価な球面電磁波を生じさせる、それぞれTEモードの共振とが縮退した、複数の誘電体層を有する(多層)球形誘電体共振器であることが好ましい。
(j)上記(i)において、前記多層球形誘電体共振器は、その誘電体層に、径方向と周方向とで誘電率が異なっていることが好ましく、そのために径方向に延びるスリットが形成されていることが好ましい。
本発明によれば、大型化することなく、機械的開口面積に対する電気的開口面積を非常に大きくでき、前方にビーム幅が先鋭化され、且つサイドローブの殆ど無い指向性が得られる。
図1は電気多重極放射に伴う放射電力の遠方界を視覚的に表した図である。 図2は電気多重極放射と磁気多重極放射を組み合わせた場合の放射電力の遠方界を視覚的に表した図である。 図3は8重極放射における、kr=1での球面上の磁界ベクトルを表す図である。 図4はE波とH波を組み合わせたときの、kr=1での球面上の磁界強度を表す図である。 図5は、電気多重極放射と磁気多重極放射を組み合わせた場合の放射電力の遠方界を視覚的に表したもので、多重極の次数とビーム幅との関係を示す図である。 図6は、電気多重極放射および磁気多重極放射の組み合わせによる球面波を、次数l=1からl=Lまで重ね合わせた場合の指向性を示す図である。 図7は、電気多重極放射および磁気多重極放射の組み合わせによる球面波を、次数l=1からl=50まで重ね合わせた場合の近傍界でのビームを示す図である。 最大次数が10 であるときの球面波の指向性を示す図である。 図9(A)は球面波の最大次数と半値角の関係を示す図、図9(B)は球面波の最大次数と有効開口半径の関係を示す図である。 図10は重ね合わせる球面波の最高次数Lと指向性(ビーム幅)との関係を示す図である。 図11(A)は次数lが1から10までの各次数の電気多重極および磁気多重極の球面波を重ね合わせたときの近傍界での電界強度の分布を示す図である。図11(B)はx=0でz軸上の電界強度、図11(C)はx−z面でのr=2λの円周上の電界強度を示す図である。 図12(A)は次数lが1から10までの各次数の電気多重極および磁気多重極の球面波を重ね合わせたときの近傍界での電界強度の分布を示す図である。図12(B)はx−z面でのr=1.6λの円周上の電界強度、図12(C)はx−z面でのr=3λの円周上の電界強度を示す図である。 図13は、図11(A)および図12(A)に示した、近傍界での電界強度の分布の動きを1周期についてコマ撮りした図である。 図14(A)は多重極放射の概念を示す図、図14(B)は第1の実施形態に係る多重極放射と等価な擬似多重極の概念を示す図である。 図15は図14に示した内容をエバネセント的電磁界領域との関係で示した図である。 図16は共振電磁界内の球面で出入りするエネルギー流の様子を示す概念図である。 図17は球面上に配置された多数の単位アンテナにおける放射および吸収の様子を示す概念図である。 図18は受信用アンテナの電力ネットワークの一つのブロック図である。 図19は、単位アンテナを配置したアンテナ球面のz軸から見た平面図である。 図20は、単位アンテナを配置したアンテナ球面の−z軸から見た平面図である。 図21は単位アンテナを配置したアンテナ球面の斜視図である。 図21の北極点P001における単位アンテナの電界、磁界の偏波面の解析結果を示す図である。 図21の北極点P100における単位アンテナの電界、磁界の偏波面の解析結果を示す図である。 図21の北極点P110における単位アンテナの電界、磁界の偏波面の解析結果を示す図である。 図21の北極点P010における単位アンテナの電界、磁界の偏波面の解析結果を示す図である。 図26は単位アンテナの複数の共振モードを示す図である。 図27は、(TE11 X +jTE11 Y )によるTE11 XY0 の共振モードで磁気ダイポール放射が行われ、(TM11 Z +jTM11 Y )によるTM11 0YZ の共振モードで電気ダイポール放射が行われることを示す図である。 図28(A)、図28(B)は球形誘電体共振器に対する給電回路の構造を示すブロック図である。 図29はアンテナ球面の内部の構造を示す図である。 図30(A)、図30(B)は、球形誘電体共振器の各共振モードの電磁界および角運動量について示す図である。 図31はアンテナ球面上の多数の球形誘電体共振器によって形成される共振電磁界とエネルギーの流れを示す図である。 図32は、第2の実施形態に係る図であり、電気多重極放射による球面波を、次数l=1からl=Lまで重ね合わせた場合の指向性を示す図(放射電力の遠方界を視覚的に表したもの)である。 図33は、第3の実施形態に係る多層球形誘電体共振器101の中心を通る面での断面図である。 図34は、多層球形誘電体共振器101に対する給電部200の構成図である。 図35(A)は第4の実施形態に係る多層球形誘電体共振器102の中心を通る面での断面図、図35(B)は外観図である。 図36は、誘電体層31の径に対する核部30の径の比である半径比(a / b)を変化させたときの、TE11モードとTM11モードの共振周波数を示す図である。 図37は多層球形誘電体共振器102の各モードの電界ベクトルの様子を示す図である。 図38は多層誘電体共振器102に対する給電部の構成例を示す図である。
先ず、平面波球面波展開によって生じる多重極放射を平面波の要素として考える。それぞれの多重極放射(球面波)の電界および磁界は平面波の球面波展開によって解析解として与えられる。また、それぞれの多重極放射(球面波)は直交性を持つため、多重極放射を重ね合わせた電磁界は各電界および磁界を足し合わせることによって直接求まる。以降に示す各解析結果はMathematica(ウルフラム・リサーチ社の数式処理システム)を用いた。
図1は電気多重極放射に伴う放射電力の遠方界を視覚的に表したものである。図1(A)は、球座標系におけるマクスウェル方程式の解の要素である球面調和関数の各次数(l,m=1)の表現で、[l=1,m=1]で表される電気双極放射による放射電力の指向性を表している。同様に、図1(B)は[l=2,m=1]すなわち電気4重極放射による放射電力の指向性、図1(C)は[l=6,m=1]すなわち電気12重極放射による放射電力の指向性をそれぞれ表している。
ここで、微小立体角dΩ の範囲に放射される電力dPwatt は次の関係で表される。
dPwatt=[EE(l,m)×HE(l,m)]・erR2
このように、電気多重極のみによる放射であれば、±z方向に放射波の主ビームが生じる。また、多重極の次数を2×l(エル)で表すと、l−1個のサイドローブが生じる。
図2は電気多重極放射と磁気多重極放射を組み合わせた場合の放射電力の遠方界を視覚的に表したものである。図2(A)は[l=1,m=1]すなわち電気双極放射と磁気双極放射との組み合わせによる放射電力の指向性を表している。図2(B)は[l=2,m=1]すなわち電気4重極放射と磁気4重極放射との組み合わせによる放射電力の指向性、図2(C)は[l=3,m=1]すなわち電気6重放射と磁気6重極放射との組み合わせによる放射電力の指向性をそれぞれ表している。
図3は8重極放射における、kr=1 (半径r=λ/2π)の位置での球面上の磁界ベクトルを表す図である。図3(A)はE波の実部、図3(B)はE波の虚部、図3(C)はH波の実部、図3(D)はH波の虚部、についてそれぞれ表している。横軸はx軸回りの角度θ、縦軸はz軸回りの角度φである。横軸の右端は+z方向の極(北極)、横軸の左端は−z方向の極(南極)である。このように、8重極放射であるので、次数lは4であり、l−1=3の節が生じる。
図4はTM波とTE波を組み合わせたときの、kr=1 の位置での球面上の磁界強度を表す図である。すなわち図4(A)は(E波+H波)の実部であり、図3(A)と図3(C)の合成である。また、図4(B)は(E波+H波)の虚部であり、図3(B)と図3(D)の合成である。
このように、電気多重極および磁気多重極を波源とし、TM波とTE波を組み合わせると、+z方向にのみ放射する。すなわち半空間に電磁放射を行うことになる。この原理を利用することが本発明の特徴の一つである。図1に示した±z方向に放射する双方向指向性を単方向指向性にするためには従来技術では、後方に反射器を配置することになるが、それでは大面積の反射器(反射板)が必要になって、アンテナの小型化に叶わない。本発明では反射器を用いることなく単方向指向性が得られる。なお、後述するように、後方(−z方向)への電磁放射は損失とはならず、前方(z方向)への放射に寄与する。
図5は、電気多重極放射と磁気多重極放射を組み合わせた場合の放射電力の遠方界を視覚的に表したもので、多重極の次数とビーム幅との関係を示す図である。図5(A)は[l=6,m=1]すなわち12重極放射による放射電力の指向性を表している。図5(B)は[l=10,m=1]すなわち20重極放射による放射電力の指向性をそれぞれ表している。
このように次数が高くなるに従ってビーム幅は狭くなる。但し、次数が高くなっても、前述のとおり、多重極の次数を2×l(エル)で表すと、l−1個のサイドローブが生じる。このような大きなサイドローブが生じると電力伝送用のアンテナとしては使えない。
図6は、電気多重極放射および磁気多重極放射の組み合わせによる球面波を、次数l=1からl=Lまで重ね合わせた場合の指向性を示す図である。図6(A)は[l=1,m=1]から[l=3,m=1]までの3個の異なった次数の電気多重極放射および磁気多重極放射の組み合わせによる球面波を重ね合わせた放射電力の指向性、図6(B)は[l=1,m=1]から[l=6,m=1]までの6個の異なった次数の電気多重極放射および磁気多重極放射の組み合わせによる球面波を重ね合わせた放射電力の指向性、図6(C)は[l=1,m=1]から[l=10,m=1]までの10個の異なった次数の電気多重極放射および磁気多重極放射の組み合わせによる球面波を重ね合わせた放射電力の指向性をそれぞれ表している。
このように、多重極放射による球面波を、次数l=1からl=L(L:lmax)まで重ね合わせることにより、2×l重の多重極によって生じるl−1個のサイドローブが打ち消される。この方法によれば、次数lを大きくすることによってサイドローブは0に漸近する。この原理を利用することが本発明の特徴の一つである。
図7は、電気多重極放射および磁気多重極放射の組み合わせによる球面波を、次数l=1からl=50まで重ね合わせた場合の近傍界でのビームを示す図である。ここで、重ね合わせのウェイトは本来平面波がもつ展開係数を用いた。有限な次数で最適化されたウェイトではない。図7(A)は距離r=2〜40λの範囲について電力Pの強度(dBスケール)を濃度で表している。また、図7(B)は図7(A)中の扇状領域の詳細図である。
このように、電気多重極および磁気多重極を波源とし、TM波とTE波の組み合わせ、且つ電気多重極および磁気多重極の各次数の重ね合わせにより、−z方向へ放射される球面波が前方へ放射され、且つサイドローブが生じないことがわかる。
次に、開口面アンテナのゲインを別の視点から考察する。
球面波の指向性をアンテナ理論における指向性の指標を用いて表現する。アンテナ理論における指向性利得Gd は
として与えられる。ここで、E(θ,φ) は放射される電界をその最大強度で正規化した電界指向性である。有効開口面積Ae、有効開口半径a はそれぞれ次のように与えられる。
また、半値角θ0 は電界強度がそのピークから1/√2 下がる角度である。ここで、球面波の電界と磁界のr 方向依存性は球ハンケル関数で与えられるため、放射電力密度のr 方向依存性はr-2 となる。また、最大次数lmax の球面波の全放射電力は各次数のTM波およびTE波の展開係数を用いて、
と与えられる。
このことから、指向性利得は複素ポインティングベクトルP を用いて
のように球面積分を行うことなく計算できる。ここで、er はr 方向の単位ベクトルを表しており、rf は十分大きな半径とする。図8は式(2.22) によって求まるlmax = 10 の球面波の指向性を示す図である。但し、φ = 0の場合のグラフである。図8より、片側に(lmax - 1) 個のサイドローブが存在していることが分かる。また、-3dB の線を合わせてプロットしている。指向性関数と-3dB の直線との交点を求めることにより、球面波の半値角が求まる。
次に、球面波の最大次数を変化させて同様の計算を行い、球面波の最大次数と半値角および有効開口半径の関係について示す。図9(A)は球面波の最大次数と半値角の関係を示す図、図9(B)は球面波の最大次数と有効開口半径の関係を示す図である。このように、球面波の最大次数に反比例して半値角が小さくなることが分かる。また、球面波の最大次数に比例して有効開口半径が増加することが分かる。
球面波におけるエネルギー高密度領域は、数学的には球ノイマン関数によるものと考えられる。そこで、球面波の最大次数の球ベッセル関数と球ノイマン関数の交点のうち最も距離が短いものを境界点とし、境界点より内側をエネルギー高密度領域と定義し、境界点より外側の放射電磁界領域と区別する。図9(B)には、このエネルギー高密度領域の半径も併せて示している。図9(B)より、エネルギー高密度領域の半径は有効開口半径と同程度であることが分かる。
前述の球面波の最大次数と指向性の関係は、アンテナの開口面積の大きさと指向性との関係を表した従来の開口面アンテナの式では説明することができない。そこで、開口面アンテナの式を不確定性関係の立場から捉えなおし、球面波の指向性について不確定性関係を用いて検討する。
ド・ブロイ波の位置空間における波動関数の幅をΔx,Δy、運動量空間における波動関数の幅をΔpx,Δpy とすると位置と運動量の不確定性関係は次のように与えられる。
ここで、h` (エイチバー) はプランク定数h を2π で割った換算プランク定数である。また、式(2.23) と式(2.24)はガウス型波束のとき等号が成立する。このとき、px,y = kx,yh` であるので、ガウス型波束を仮定した場合、式(2.23) と式(2.24) をかけ合わせると
が成り立つ。幅a 長さb の方形開口面を仮定し、Δx = a/2π、Δy = b/2π とする。このとき、放射する電磁波の波数をk0とするとθx,y / 2 =Δkx,y / k0 であるので、
となる。さらに有効開口面積をS とすると、θx・θy= ΔΩ、k0= 2π/λ と表されることから、式(2.26) は、
のように変形できる。ここでGd ≡ 4π/ΔΩ の定義式を用いると、
となる。これは開口面アンテナにおける面積と指向性利得の関係式である。以上より、Δx,Δyの定義や開口面におけるビームの電磁界分布がガウス型である場合の位置と運動量の不確定性関係から開口面アンテナにおける指向性利得の式を導くことができる。
不確定性関係には、位置と運動量、角度と角運動量、時間とエネルギーの3つが存在する。そのうち、角度と角運動量の不確定性関係を用いて球面波による指向性を表現することを検討した。位置と運動量の不確定性関係と同様に、角度と角運動量の不確定性関係は次のように与えられる。
ここで、等号が成立するとき式(2.29) と式(2.30) を2乗して足し合わせると
が成り立つ。
量子力学によれば球面波を表す球面調和関数は全角運動量の2乗の固有関数でその固有値はl ( l + 1 ) h`2であることは良く知られている。質量が0の電磁界においてもエネルギー、運動量及び角運動量が粒子系と同様に定義されている。各次数の電磁球面波が同様に角運動量の固有値を持つという仮定をすると以下の関係が得られる。
Lt2= Lx2 + Ly2 + Lz2
ΔLz= 0
であり、
Δθx = Δθy = θ0 / 2π(θ0 は半値角)とすると、
と表せる。両辺を整理して正の平方根をとると、
となる。ここで、Δ√{l(l + 1)} = √{lmax(lmax + 1)} であるので、
となる。このように、角度と角運動量の不確定性関係から半値角と最大次数の関係式を導くことができる。図9(A)に示した直線はこの関係式による理論値である。この図9(A)より、不確定性関係から求めた式は球面波の指向性をよく説明することが分かる。
さらに、最大次数と有効開口半径の関係を導く。ΔΩ = θ0 2 とすると、式(2.34)は以下のように変形できる。
ここで、Gd = 4π/ΔΩ および式(2.19) と式(2.20) を用いると、
となる。図9(B)に示した直線はこの関係式による理論値である。
図10は重ね合わせる球面波の最高次数Lと指向性(ビーム幅)との関係を示す図である。
ここで指向性利得をGd、有効開口面積をAe、有効開口半径をa、ビーム幅の半値角をθ0で表すと、
最高次数L=10であれば、
Gd=21.7dBi
Ae=11.96λ2
a=1.95λ
θ0=16.1deg
最高次数L=20であれば、
Gd=27.4dBi
Ae=43.89λ2
a=3.74λ
θ0=8.44deg
最高次数L=30であれば、
Gd=30.5dBi
Ae=89.54λ2
a=5.34λ
θ0=5.72deg
となる。
このように、重ね合わせるlの最高次数Lに応じて指向性が高くなる。最高次数L=30のときの有効開口半径a=5.34λは直径10λ相当の開口径である。このように放射源が1点でありながら、直径10λ相当の鋭いビームを生成できる。
このようにして、所望の半値角を得るのに要する最高次数Lを求め、次数lが1からLまでの各次数の電気多重極および磁気多重極の球面波を重ね合わせればよい。
図11(A)は次数lが1から10までの各次数の電気多重極および磁気多重極の球面波を重ね合わせたときの近傍界での電界強度の分布を示す図である。図11(B)はx=0でz軸上の電界強度、図11(C)はx−z面でのr=2λの円周上の電界強度を示す図である。
図12(A)は次数lが1から10までの各次数の電気多重極および磁気多重極の球面波を重ね合わせたときの近傍界での電界強度の分布を示す図である。図12(B)はx−z面でのr=1.6λの円周上の電界強度、図12(C)はx−z面でのr=3λの円周上の電界強度を示す図である。このように、原点近傍には径方向に放射しない強い電磁界が存在することがわかる。また、図12(B)と図12(C)とを比較すると、原点から離れるとθ=0以外の方位で放射されるエネルギーが急激に低下することがわかる。すなわちサイドローブが生じていなくて、平面波に近づいていることがわかる。
図13は前記近傍界での電界強度の分布の動きを1周期についてコマ撮りした図である。
このように、多重極の周辺に強い電磁界が存在し、放射が起こっていることが分かる。
また、図11・図13から明らかなように、−z(後方)や側方へ放射された電磁界は図中の矢印で示すようにエネルギーの流れが生じて、遠方界ではz(前方)へ放射されることになる。
図11(A)において、2aは一般のアンテナのいう有効開口径であるが、本発明では、多重極を中心に配置しつつ有効開口径2aを確保することができる。
《第1の実施形態》
次に、上述の多重極を実現するためのハードウェアについて示す。
多重極放射を行うアンテナを構成しようとすると、同一空間に多数の極が存在することになり、アンテナ間の不要なカップリングが生じる。そこで、中心の源からある程度離れた近場(有効開口径より内部)に擬似的な多重極を配置する。
図14(A)は多重極放射の概念を示す図、図14(B)は多重極放射と等価な擬似多重極の概念を示す図である。図14(A)において、中心に多重極があり、その周囲(有効開口径)の球面上に共振電磁界が生じている。この共振電磁界の領域から放射電磁界が生じている。図14(B)において、磁界、電界は中心から一定半径離れた球面上での磁界と電界を示している。この擬似多重極は、中心に電気多重極および磁気多重極があるのと等価な電磁界を生じさせる複数の放射源である。擬似多重極を波源にして、この波源から放射しているものとして扱う。
図15は図14に示した内容をエバネセント的電磁界領域との関係で示した図である。図15(A)はエバネセント的電磁界領域について示す図である。受信用アンテナの場合に球面波が原点に向かって入射しても原点(一点)には集まらない。これは球面波が持つ角運動量が原点近傍で顕わになるからである。換言すると、エネルギーは回転しながら原点の多重極に吸収される。従ってこれは通常のエバネセント波ではない。回転進行波というべき表現が妥当である。半径R方向のエネルギー流に着目すれば、原点近傍空間にQの高い共振電磁界が存在し、原点の多重極と内向き球面波が整合しているということもできる。
図15(B)は前記擬似多重極を配置する球を示している。このように、回転エネルギーの中に多重極を中心とした任意の半径をもつ球についてみると、その球の内部と外部とをエネルギー流が複数回行き来すると考えられる。しかしエネルギー保存則が成り立つので、球面で差し引きすると内部へのエネルギー流は全体で内向き球面波のエネルギーに等しい。
図16は前記共振電磁界内の球面で出入りするエネルギー流の様子を示す概念図である。前記球面でのエネルギー流の差し引きを具体的に計算する方法は次のように表される。
球面における内向きと外向きのエネルギー流をそれぞれ持つ電磁界が合成されて一組の電界ベクトルと磁界ベクトルを構成する。これらの接線成分のベクトル積の表面積分が入力エネルギーと一致する。式で表すと次のようになる。
この入力エネルギーを球面のアンテナで回収すれば、内向きの球面波のエネルギーを100%受信することができる。
次に球面上のアンテナにおける放射と吸収について考える。図17は球面上に配置された多数の単位アンテナにおける放射および吸収の様子を示す概念図である。−z方向に伝搬してくる球面波を受けるアンテナ(受信用アンテナ)の場合、正面方向近辺の単位アンテナはむしろエネルギーを放射する必要がある。基になる多重極モデルではエネルギーと角運動量の両方を保存しながら吸収する電磁界を作り上げている。共振電磁界内の球面上のアンテナはこの電磁界を模倣する必要がある。y軸、x軸の角運動量を作り出すためには、z方向からエネルギーを放射して、受信すべき電力と位相を合わせて電力を合成する。さらにx軸またはy軸の周りにエネルギー流を作り、アンテナ後方部の単位アンテナから吸い込む必要がある。このことによって受信アンテナはモーメント(角運動量)を受け取ることができる。エネルギーの吸収・放射量は単位アンテナが存在する球面上の場所依存性をもつ。
ここで角運動量密度は次の式で表される。
ここで、x'とdv' との積が角運動量である。
次に、受信用アンテナの電力ネットワークの例を示す。図18は受信用アンテナの電力ネットワークの一つのブロック図である。図18において、単位アンテナU1〜U5の受信電力は位相器φ1〜φ5で移相されて、RF電力合成装置で電力合成される。このRF電力合成装置で合成され、そのRF出力は直流の電力に変換される。
以上は受信アンテナについて述べたが、相反定理(時間反転対称性)に基づき、送信用(放射)アンテナについても同様である。
次に、擬似多重極アンテナ全体の具体的な構成例を示す。図19は、単位アンテナを配置したアンテナ球面(図17参照)のz軸から見た平面図、図20は、同アンテナ球面の−z軸から見た平面図である。また、図21は同アンテナ球面の斜視図である。
これらの図において、クロスした矢印の対は単位アンテナに生じる電界ベクトルと磁界ベクトルを表している。すなわち単位アンテナは、これらのクロスした矢印の対の位置に配置されている。但し、図面の煩雑化を避けるため、図19〜図21では、全ての単位アンテナを表さず、疎らに描いている。ここで実線の矢印は電界ベクトル、破線の矢印は磁界ベクトルをそれぞれ表している。この例はx偏波でz方向へ放射する。
z軸が南北の極を通るものとし、北極南極間にl+1個、一周で2×l個の単位アンテナを配置する。また、赤道上に2×l個の単位アンテナを配置する。例えば、次数l=2000とすれば、球面の一周に4000個の単位アンテナを配置する。例えば直径10mの球面上であれば約8mmピッチで等角度間隔に配置する。赤道から南北へ緯度が上がるほど、同緯度での周長は短くなるので、経度方向に隣接する単位アンテナ同士が重ならない数だけ配置する。この例では、半値角は0.05度、開口径は200m、伝送距離10kmでの受信ビーム径は17.5mとなる。
図19に表れているように、z軸から見て、各単位アンテナの電界の向きはx方向を向き、磁界はy方向を向く。また、図20に表れているように、−z軸から見て、各単位アンテナの電界の向きは−x方向を向き、磁界は−y方向を向く。
北極方向を放射方向とすると、北極に近い単位アンテナほど電界ベクトルおよび磁界ベクトルは大きく、南極に近い単位アンテナほど電界ベクトルおよび磁界ベクトルは小さい。また、赤道上の単位アンテナは円偏波の電磁界を生じさせ、北極に近い単位アンテナはほぼ直線偏波の電磁界を生じさせ、中緯度の単位アンテナは楕円偏波の電磁界を生じさせる。
図22〜25は、図21の代表点における電界、磁界の偏波面の解析結果を示す図である。球面波の電界、磁界の偏波は、電界、磁界の各成分について0 < t < 2πをパラメータとしてプロットすることによって表すことができる。これらの図において、図中の矢印は、t = 0, π/12ω, π/4ω における電界、磁界のベクトルを表している。これにより、位相差と偏波の回転方向を表している。図中"t0"はt = 0、"t1"はt = π/12ω、"t3"はt = π/4ωのタイミングをそれぞれ表している。
図22は、図21の北極点P001における単位アンテナの電界、磁界の偏波面の解析結果を示す図である。電界をθ方向(x軸回りの角度)成分、磁界をφ方向(z軸回りの角度)成分のみに持つ直線偏波であることが分かる。
図23は、図21のx軸方向の点P100における単位アンテナの電界、磁界の偏波面の解析結果を示す図である。電界はr−θ面に偏波面を持つ楕円偏波であり、磁界はφ方向成分のみを持つ直線偏波であることが分かる。
図24は、図21の点P110における単位アンテナの電界、磁界の偏波面の解析結果を示す図である。電界及び磁界はともに楕円偏波であることが分かる。
図25は、図21のy軸方向の点P010における単位アンテナの電界、磁界の偏波面の解析結果を示す図である。電界はφ方向成分のみを持つ直線偏波であり、磁界はr−θ面に偏波面を持つ楕円偏波であることが分かる。
前述のとおり、単位アンテナは各点において、直線偏波、円偏波、楕円偏波を任意に再現する必要がある。ここでは、単位アンテナとして球形誘電体共振器を用いて電界、磁界の偏波面を再現する。
図26は前記単位アンテナの複数の共振モードを示す図である。この例では単位アンテナとして球形誘電体共振器を用いる。図26(A)はTE11 X モードの電磁界分布を示す図である。この図において、ドット記号およびクロス記号はTE11 X モードの電束の断面であり、これによってTE11 X モードの電界分布を表している。破線はTE11 X モードの磁束であり、これによってTE11 X モードの磁界分布を表している。図26(B)はTE11 Y モードの電磁界分布を示す図である。この図において、ドット記号およびクロス記号はTE11 Y モードの電束の断面であり、これによってTE11 Y モードの電界分布を表している。破線はTE11 Y モードの磁束であり、これによってTE11 Y モードの磁界分布を表している。図26(C)はTM11 Z モードの電磁界分布を示す図である。この図において、ドット記号およびクロス記号はTM11 Z モードの磁束の断面であり、これによってTM11 Z モードの磁界分布を表している。ループ状の実線はTM11 Z モードの電束であり、これによってTM11 Z モードの電界分布を表している。図26(D)はTM11 Y モードの電磁界分布を示す図である。この図において、ドット記号およびクロス記号はTM11 Y モードの磁束の断面であり、これによってTM11 Y モードの磁界分布を表している。ループ状の実線はTM11 Y モードの電束であり、これによってTM11 Y モードの電界分布を表している。
この誘電体共振器のTE モードの磁界を用いて球面波の磁界を再現し、TM モードの電界を用いて球面波の電界を再現する。電界・磁界それぞれにおいて、直線偏波だけでなく任意の偏波面を持つ円偏波や楕円偏波が個別に励振できるため、球面波の電磁界を再現することが可能となる。
この実施形態の単位アンテナは、球形誘電体共振器のTE11 モードと、TM11 モードとを縮退させた状態で用いる。しかし、TE11 モードとTM11 モードはエネルギーが閉じ込められるサイズが異なることに起因して共振周波数が離れているので、TE11 モードとTM11 モードとを同一の球形誘電体共振器内で縮退させることは難しい。そこで、核とその核の外周を取り巻く外殻を備えた同心の二重球構造とし、核を導体とする。
外殻の比誘電率εperi が18であれば、核の半径比Pres が0.3 から0.4 の範囲でほぼ8GHzにおいてTE モードとTM モードの縮退が起こった。また、外殻の比誘電率εperi が40であれば、核の半径比Pres が0.3 から0.4 の範囲で約5.8GHzにおいてTE モードとTM モードの縮退が起こった。
次に、εperi が40 の誘電体共振器について、縮退時の共振周波数が5.8GHz となるように外径r0 と径比Pres の最適化を行った。その結果、r0 が4.78 mm、Pres が0.4 のときz 軸に対して回転対称なTE11 Z モードの共振周波数は5.797 GHz である。また、z 軸に対して回転対称なTM11 Z モードの共振周波数は5.792 GHz である。このとき、TE11 Z モードとTM11 Z モードの共振周波数がほぼ一致し、2つのモードが縮退することが確認された。
図27(A)は、(TE11 X +jTE11 Y )によるTE11 の共振モードで磁気ダイポールモーメントが生じることを示している。また、図27(B)は、(TM11 Z +jTM11 Y )によるTM11 の共振モードで電気ダイポールモーメントが生じることを示している。このようにして、球形誘電体共振器から磁気ダイポールモーメントによって強い誘導磁界を作り、電気ダイポールモーメントによって強い誘導電界を作る。この直交する誘導磁界(Hx)と誘導電界(Ez)とによって所定の直線偏波、円偏波、または楕円偏波が放射されるように、前記磁気ダイポールモーメントおよび電気ダイポールモーメントの位相が定められる。また、前記電気(磁気)ダイポールモーメントによってエネルギーをアンテナ球面に沿って運ぶため、電界ベクトルと磁界ベクトルとの積であるポインティングベクトルがアンテナ球面に沿って南極から北極方向へ、経度線上を転がって回転するかのように、各球形誘電体共振器への給電位相が制御される。
なお、核とその核の外周を取り巻く外殻を備えた同心の二重球構造とし、核と外殻とで誘電率を異ならせてもよい。例えば、中心付近の電界強度の高いTM11 モードの共振周波数を相対的に低下させて、TE11 モードの共振周波数と一致させるように、核と外殻の誘電率を定めた誘電体セラミック球を用いる。
次に、アンテナ球面上の複数の球形誘電体共振器に対して給電を行う構成について示す。
図28は前記球形誘電体共振器に対する給電回路の構造を示すブロック図である。図28(A)の例では、球形誘電体共振器PR、この球形誘電体共振器PRに結合するTE結合プローブ13,TM結合プローブ14、ハイブリッド回路12、発振器11を原点側に設けている。また、球形誘電体共振器(単位アンテナ毎)R毎にクロスコイル21、位相/振幅制御回路22、球形誘電体共振器RのTE11 モードに対して結合するTE11 結合プローブ23、およびTM11 モードに対して結合するTM11 結合プローブ24、をそれぞれ備えている。これらの回路は球形誘電体共振器Rが配置されるアンテナ球面のすぐ下(内部)の層に配置されている。
発振器11は例えば5.8GHzで発振し、ハイブリッド回路12は、TE結合プローブ13およびTM結合プローブ14に対する給電位相に90度の位相差をもたせる。
原点に配置された球形誘電体共振器PRはTEモードとTMモードとが縮退した多重誘電体共振器である。この球形誘電体共振器PRは、TMモードによって、z軸回りに磁界ループを描く磁界Hφと、TEモードによって、x軸回りに磁界ループを描く磁界Hθとを発生する。
TE11結合プローブ23は球形誘電体共振器Rに対してTE11 X 共振モードおよびTE11 Y 共振モードを励振する。また、TM11 結合プローブ24は球形誘電体共振器Rに対してTM11 Z 共振モードおよびTM11 Y 共振モードを励振する。
クロスコイル21は磁界Hφに結合するコイルと磁界Hθに結合するコイルとがクロスしたものである。位相/振幅制御回路22は、TE11 結合プローブ23、およびTM11 結合プローブ24に対する信号(電流)の位相を制御する。この位相制御によって、球形誘電体共振器Rから、所定の電気(磁気)ダイポールモーメントを発生させる。また、この電気(磁気)ダイポールモーメントによってエネルギーをアンテナ球面に沿って運ぶように(ポインティングベクトルがアンテナ球面に沿って南極から北極方向へ経度線上を転がって回転するように)、球形誘電体共振器の位置に応じた位相制御を行う。
図28(B)の例では、球形誘電体共振器Rとして45度方向に対向するスリット状の溝を備えた球形誘電体共振器、この球形誘電体共振器Rに結合するTE11 結合プローブ23、およびTM11 結合プローブ24を設けている。原点側の構成は図28(A)と同じである。上記スリット状の溝によって縮退関係の二つの共振モードを生じさせ、その中間の周波数を電力伝送周波数に設定すると、そのどちらのモードも励振される。すなわち、球形誘電体共振器Rは1つのTE11 結合プローブ23でTE11 X 共振モードおよびTE11 Y 共振モードが励振され、1つのTM11 結合プローブ24でTM11 Z 共振モードおよびTM11 Y 共振モードが励振される。
このような溝の形成箇所には高い位置精度が必要であるが、溝によって誘電体共振器の無負荷Qが低下することは無く、回路構成も簡素化できる利点がある。なお、同様に球形誘電体共振器PRを溝付の球形誘電体共振器としてもよい。
図28(C)は、単位アンテナ側に発振器を備えた例である。単位アンテナである球形誘電体共振器R毎に、発振器25,ハイブリッド回路26、位相/振幅制御回路22、球形誘電体共振器RのTE11 モードに対して結合するTE11 結合プローブ23、およびTM11 モードに対して結合するTM11 結合プローブ24を備えている。これらの回路は球形誘電体共振器Rが配置されるアンテナ球面のすぐ下(内部)の層に配置されている。
発振器25は同期信号に同期し、且つ位相制御信号に応じた位相で、例えば5.8GHzで発振する。ハイブリッド回路26は90度位相差をもった二つの信号を出力する。位相/振幅制御回路22は、TE11 結合プローブ23、およびTM11 結合プローブ24に対する信号(電流)の位相を制御する。この位相制御によって、球形誘電体共振器Rから、所定の電気(磁気)ダイポールモーメントを発生させる。また、図28(A)、図28(B)の場合と同様に、球形誘電体共振器の位置に応じた位相制御を行う。
前記同期信号は基準信号発生回路から無線によって、または伝送線路(ネットワーク)を介して入力される。同様に、位相制御信号は位相制御信号発生回路から無線によって、または伝送線路(ネットワーク)を介して入力される。基準信号発生回路および位相制御信号発生回路は例えばアンテナ球面の原点位置に配置される。
図29はアンテナ球面の内部の構造を示す図である。図29に表れているように、アンテナ球面(電磁流定義面)は多数の球形誘電体共振器で覆われている。この多数の球形誘電体共振器による層の下層に給電回路基板が設けられていて、この給電回路基板にTE11結合プローブ、TM11結合プローブおよびこれらの結合プローブに接続される回路(図28参照)が形成されている。各クロスコイルはTMモード結合プローブとTEモード結合プローブで構成されている。各プローブは球形誘電体共振器R毎に配置されているが、図29では、幾つかのクロスコイルのみを表している。TEモード結合プローブは、原点に配置された球形誘電体共振器PRから放射されるTEモードの磁界に結合し、TMモード結合プローブは、原点に配置された球形誘電体共振器PRから放射されるTMモードの磁界に結合する。
なお、多数の球形誘電体共振器Rは、間隔が狭い場合に、互いに隣接する球形誘電体共振器R同士で結合する。経度線に沿って隣接する球形誘電体共振器R同士は位相がほぼ反転した状態で結合する。緯度線に沿って隣接する球形誘電体共振器R同士は位相がほぼ同じであるので、その結合は弱い。
図30は、単位アンテナである球形誘電体共振器の電磁界とアンテナ球面(電磁流定義面)との関係を示す図である。図30(A)は、TE11モードによる磁界Hθ、Hr,Hφについて示している。これにより、+y軸上の点(図21に示した点P010)において、赤道を軸とする磁界の円偏波でLφの角運動量が放射される。また、図30(B)は、TM11モードによる電界Eθ、Er,Eφについて示している。これにより、+x軸上の点(図21に示した点P100)において、赤道を軸とする電界の円偏波でLφの角運動量が放射される。
以上の作用により、図29に示した擬似多重極アンテナから、x軸方向に電界、y軸方向に磁界が向く直線偏波の電磁波がz方向へ放射される。
図31はアンテナ球面上の多数の球形誘電体共振器によって形成される共振電磁界とエネルギーの流れを示す図である。以上のようなアンテナの構成により、共振電磁界によって放射電力が角運動量を蓄え、遠方界ではz方向に鋭い指向性で放射される。
なお、以上に示した例では、多数の単位アンテナを球面上に配置したが、球面に限らず、回転楕円体面に沿って配置すればよい。
《第2の実施形態》
第1の実施形態では、電気多重極および磁気多重極を波源とした、TM波およびTE波の作り出す指向性のある電磁ビームと等価な電磁界により、半空間に電磁放射を行うようにした。これに対し、第2の実施形態では、TMモードとTEモードとを次数l毎に縮退させず、TM波またはTE波の一方のみを用いる例を示す。
図32は、電気多重極放射による球面波を、次数l=1からl=Lまで重ね合わせた場合の指向性を示す図(放射電力の遠方界を視覚的に表したもの)である。図32(A)は[l=1,m=1]から[l=3,m=1]までの3個の異なった次数の電気多重極放射による球面波を重ね合わせた放射電力の指向性、図32(B)は[l=1,m=1]から[l=6,m=1]までの6個の異なった次数の電気多重極放射による球面波を重ね合わせた放射電力の指向性、図32(C)は[l=1,m=1]から[l=10,m=1]までの10個の異なった次数の電気多重極放射による球面波を重ね合わせた放射電力の指向性をそれぞれ表している。
このように、電気多重極放射による球面波を高い次数まで重ね合わせることによってビーム幅は狭くなる。但し、第1の実施形態で図6に示した例と異なり、半空間への電磁放射にはならず、後方へも多少は放射される。また、サイドローブも多少は残る。さらに、扁平形状の(ファンビーム形状の)指向性となる。なお、各次数の磁気多重極放射による球面波を重ね合わせた場合は、図32に示した指向性を、放射の主軸に対して90度回転した指向性となる。
このようにして、許容される後方放射および許容されるサイドローブの強度に応じて、電気多重極を波源としたTM波の作り出す指向性のある電磁ビームと等価な電磁界により電磁放射を行うようにしてもよい。また、磁気多重極を波源としたTE波の作り出す指向性のある電磁ビームと等価な電磁界により電磁放射を行うようにしてもよい。
上記、電気多重極を波源としたTM波を生成する具体的な構成例として、第1の実施形態で示した複数の球形誘電体共振器を用いる場合、それらの球形誘電体共振器のTMモードのみを利用すればよい。同様に、次記多重極を波源としたTE波を生成する場合には、球形誘電体共振器のTEモードのみを利用すればよい
《第3の実施形態》
球形誘電体共振器の外側の電磁界は原点の多重極から放射する球面波と全く等しい。第3の実施形態では、電気多重極または磁気多重極の波源として用いる多層の球形誘電体共振器について示す。
第2の実施形態で示した例では、1つの誘電体共振器が1つの電磁界を生成するように構成したが、第3の実施形態では1つの多層球形誘電体共振器が多数の球面波を生成する。
図33は多層球形誘電体共振器の中心を通る面での断面図である。この多層球形誘電体共振器101は核部30および複数の誘電体層31,32,33を有する。誘電体層と誘電体層との間は、空気やその他の低誘電率の誘電体61,62で満たされている。各誘電体層31,32,33はそれぞれ球殻構造をなし、それぞれTMモードの球殻状誘電体共振器として作用する。以下、核部30および誘電体層31による共振器を「コア共振器」、誘電体層32,33による球殻状誘電体共振器をそれぞれ「シェル共振器」という。各共振器の共振周波数はほぼ等しく、各共振器はそれぞれ球面電磁波を生成する。したがって、共振器の数が前記次数lの数に相当して、球面波の重ね合わせが行われる。
例えば、コア共振器はそのTM11モードを利用し、誘電体層32によるシェル共振器はそのTM21モードを利用し、誘電体層33によるシェル共振器はそのTM31モードを利用する。これらの共振モードの周波数がほぼ等しくなるように、各共振器の寸法および誘電率も定める。
同様にして、上記各共振器は、それらのTEモード共振を利用してもよい。例えば、コア共振器はそのTE11モードを利用し、誘電体層32によるシェル共振器はそのTE21モードを利用し、誘電体層33によるシェル共振器はそのTE31モードを利用する。
誘電体層と誘電体層との間には低誘電率の誘電体層が介在しているので、各共振器はそれに近接する別の共振器の影響を受けず、それぞれ独立した共振器として作用する。特に外殻である程、高次の共振モードを利用することになるので、その内部に位置する他の共振器の影響を受けにくい。
なお、図33に示した例では、図面の煩雑化を避けるため、3つの誘電体層を備えたが、同様にして多数の誘電体層を設けることができる。L層の誘電体層を設ければ、次数l=1からl=Lまで重ね合わさることになる。
上記多層球形誘電体共振器101は、例えば核部30に各誘電体層を順にコーティングする方法で作製する。
次に、上記多層誘電体共振器に対する給電部の構成例を示す。図34は、多層球形誘電体共振器101に対する給電部200の構成図である。給電部200は円形導波管50および円形誘電体線路(断面円形状の誘電体導波路)40を備えている。円形誘電体線路40の根元部には円形導波管内においてテーパー形状部42が形成されている。円形導波管50の先端にはホーンアンテナ51が形成されている。円形誘電体線路と多層球形誘電体共振器101との接続部には低誘電率の固定材41が設けられている。円形導波管50内にはプローブまたはループによる励振素子が設けられていて、円形導波管50の外部に各モード用のコネクタ群52が設けられている。上記励振素子は、例えばTM11、TM21、TM31・・・の各モードで多層球形誘電体共振器101を励振させるための伝搬モードをそれぞれ励振させる。コネクタ群52はこれらの伝搬モードを励振させる励振素子に接続されている。なお、例えばTE11、TE21、TE31・・・の各モードで多層球形誘電体共振器101を励振させる場合についても同様である。このようにして誘電体線路を介して給電することができる。なお、円形誘電体線路40はテーパー形状(円錐台形状)に限らず、円柱形状であってもよい。
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、電気多重極および磁気多重極の波源として用いる多層球形誘電体共振器について示す。
図35(A)は第4の実施形態に係る多層球形誘電体共振器102の中心を通る面での断面図、図35(B)は外観図である。
この多層球形誘電体共振器102は核部30および複数の誘電体層31,32,33を有する。誘電体層と誘電体層との間は低誘電率の誘電体等で充填されている。第3の実施形態で示した共振器と同様に、各誘電体層31,32,33はそれぞれ球殻構造をなしていて、核部30および誘電体層31によりコア共振器が構成され、誘電体層32,33により、それぞれシェル共振器が構成されている。後に詳述する構造により、それぞれTMモードの共振とTEモードの共振とが縮退した共振器として作用する。各共振器のTMモードおよびTEモードの共振周波数はほぼ等しい。各共振器は、そのTMモードの共振によって電気多重極と等価な球面電磁波を生じさせ、そのTEモードの共振によって磁気多重極と等価な球面電磁波を生じさせる。したがって、共振器の数が前記次数lの数に相当して、球面波の重ね合わせが行われる。
例えば、核部30および誘電体層31によるコア共振器はTM11モードとTE11モードとが縮退している。誘電体層32によるシェル共振器はTM21モードとTE21モードとが縮退している。誘電体層33によるシェル共振器はTM31モードとTE31モードとが縮退している。これらの共振モードの周波数がほぼ等しくなるように、各共振器の寸法および誘電率が定められている。
第3の実施形態で示した例とは異なり、単に各共振器の寸法および誘電率の設定だけでは、TMモードとTEモードとを縮退させることはできない。また、球殻状誘電体共振器の内部に低次の誘電体共振器が存在するため、内部に導体球を設けることによる縮退化法は使えない。そこで、次に示す構造により、誘電体層の径方向の誘電率と周方向の誘電率を異ならせる。図35(A)、図35(B)に表れているように、誘電体層32,33には、複数のスリットSLx,SLy,SLzが形成されている。スリットSLxは、x軸を中心軸とし、球の中心点を頂点とする円錐面に沿ったスリットである。また、スリットSLyは、y軸を中心軸とし、球の中心点を頂点とする円錐面に沿ったスリットである。同様に、スリットSLzは、z軸を中心軸とし、球の中心点を頂点とする円錐面に沿ったスリットである。このように球の中心から放射状に延びるスリットを各誘電体層に形成する。但し、この例では最も核に近い誘電体層には、後に述べるようにスリットは形成していない。
上記スリットは空間であるか、または誘電体層の誘電体より低誘電率の誘電体で充填されている。そのため、誘電体層32,33は、径方向の誘電率に比べて周方向の誘電率が低い、という誘電率異方性をもつ。TEモードの電界ループは誘電体層の周方向を回るように生じ、TMモードの電界モードは誘電体層の径方向を通るように生じるので、TMモードの共振周波数を殆ど変化させずにTEモードの共振周波数を上昇させることができる。そのことでTEモードの共振周波数をTMモードの共振周波数に接近させて、縮退させることができる。
このように直交3軸についてスリットを形成することにより、電磁界の回転対称性を保ち、球面波のモード直交性を維持することができる。
上記多層球形誘電体共振器102は、例えば核部30に各誘電体層を順にコーティングする方法で多層化し、レーザー加工でスリットを形成することにより作製する。別の工法としては、多層球形誘電体共振器102を半球状態または等分割した形状で構成し、それらを最後に接合することによって作製してもよい。
なお、スリットの数や間隙の大きさによって、周方向の実効誘電率を調整できる。
図35(A)に示した誘電体層31によるTE11モードとTM11モードの共振により生じる球面波は最低次の球面波であり、特別な扱いが必要である。この例では、核部30を導体球とした共振器で、TE11モードとTM11モードとを縮退させる。
導体の半径をa、誘電体の半径をbとすると境界条件から次数Lの固有値方程式は次の式で与えられる。
式(4.1)はTEモードの固有値方程式であり、式(4.2)はTMモードの固有値方程式である。ここで関数Fと関数Gは次の式で表される。
図36は、誘電体層31の径に対する核部30の径の比である半径比(a / b)を変化させたときの、TE11モードとTM11モードの共振周波数を示す。一例としてεr=18、b=10とした。図中の曲線は式(4.1)および式(4.2)から計算されるものであり、図中の点はFEMで計算した結果である。上記半径比(a / b)が小さいときには、TM11モードの共振周波数の方が高いが、核部(導体球)30の半径比が大きくなると逆転することがわかる。これはTM11モードとTE11モードの共振周波数が一致する点の存在を示唆している。適切な半径比を与えることによりTM11モードとTE11モードとは縮退する。
なお、核部に導体を用いても、ダイポールモードは放射Q値が100以下であり小さいため、放射効率に大きな影響を与えない。
ここで、具体的な特性例を示す。
TE11、TM11、TE21、TM21の4つのモードが縮退した多層共振器を、FEMを用いて設計した。核部30の直径を7mm、誘電体層31の外径を20mm、誘電体層31の内径を30mm、誘電体層31の外径を50mm、誘電体層31の比誘電率を40、誘電体層31の比誘電率を140とした。各誘電体層に形成するスリット数は半周で9個、スリット幅は1°とした。このときのTE11, TM11, TE21, TM21モードの共振周波数はそれぞれ2.50 GHz, 2.44 GHz, 2.55 GHz, 2.54 GHz となり、100 MHzの範囲で縮退させることができた。各共振器の構造パラメータを最適化することにより、高い縮退度が得られることが期待できる。
図37は上記4つのモードの電界ベクトルの様子を示す図である。各モードの放射Q値はそれぞれ50, 19, 90, 42 となった。共振器の大きさと共振周波数から設計した多層球形誘電体共振器の各モードの実効誘電率を求めると、それぞれ22, 36, 18, 11と求まる。今回の設計例ではコア共振器の比誘電率40と比較してシェル共振器の比誘電率が140と大きくなっているが、スリットの幅をより細かく設定する、あるいは異方性材料を用いることにより、シェル共振器の誘電率は下げることができると考えられる。L=1とL=2の合成球面波の指向性利得から求まる有効開口半径は54 mm である。それに対し、今回設計を行った多層球形誘電体共振器の半径は25 mm である。すなわち、理想的に各モードが合成できた場合、有効開口面積に対して共振器の断面積は約21%の大きさとなった。
図38は上記多層誘電体共振器に対する給電部の構成例を示す図である。この例では、多層球形誘電体共振器102に対して給電する2つの給電部200TE、200TMを備えている。給電部200TE,200TMの構成は図34に示したものと同様である。給電部200TEの円形導波管50内に設けられている励振素子はTE11、TE21、TE31・・・の各モードで多層球形誘電体共振器102を励振させるための伝搬モードをそれぞれ励振させる。給電部200TEの円形導波管50の外部にはこれらのモード用のコネクタ群52が設けられている。また、給電部200TMの円形導波管50内に設けられている励振素子はTM11、TM21、TM31・・・の各モードで多層球形誘電体共振器102を励振させるための伝搬モードをそれぞれ励振させる。給電部200TMの円形導波管50の外部にはこれらのモード用のコネクタ群52が設けられている。このようにして誘電体線路を介して給電することができる。
P…球形誘電体共振器
PR…球形誘電体共振器
R…球形誘電体共振器
U1〜U5…単位アンテナ
11…発振器
12…ハイブリッド回路
13…TE結合プローブ
14…TM結合プローブ
15…プローブ
21…クロスコイル
22…位相/振幅制御回路
23…TE11 結合プローブ
24…TM11 結合プローブ
30…核部
31〜33…誘電体層
40…円形誘電体線路
41…固定材
42…テーパー形状部
50…円形導波管
51…ホーンアンテナ
52…コネクタ群
101,102…多層球形誘電体共振器
200,200TE,200TM…給電部

Claims (18)

  1. 電気多重極を波源としたTM波の作り出す指向性のある電磁ビームと等価な電磁界により電磁放射を行うようにしたことを特徴とする擬似多重極アンテナ。
  2. 球座標系におけるマクスウェル方程式の解の要素である球面調和関数の各次数(l,m=1)に対応する球面電磁波をl=1からl=Lまで前記TM波を重ね合わせることにより、各次数の電気多重極放射が持つ(l−1)個のサイドローブを打ち消した、請求項1に記載の擬似多重極アンテナ。
  3. 前記波源は、電磁ビームの指向性利得で与えられる開口面アンテナの有効開口半径よりも小さな半径をもつ回転楕円体面上に構成され、この回転楕円体の中心に電気多重極があるのと等価な電磁界を生じさせる複数の単位アンテナである、請求項1または2に記載の擬似多重極アンテナ。
  4. 前記波源は、前記電気多重極と等価な電磁界を生じさせる、それぞれTMモードで共振する、複数の誘電体層を有する多層球形誘電体共振器である、請求項1または2に記載の擬似多重極アンテナ。
  5. 磁気多重極を波源としたTE波の作り出す指向性のある電磁ビームと等価な電磁界により電磁放射を行うようにしたことを特徴とする擬似多重極アンテナ。
  6. 球座標系におけるマクスウェル方程式の解の要素である球面調和関数の各次数(l,m=1)に対応する球面電磁波をl=1からl=Lまで前記TE波を重ね合わせることにより、各次数の磁気多重極放射が持つ(l−1)個のサイドローブを打ち消した、請求項5に記載の擬似多重極アンテナ。
  7. 前記波源は、電磁ビームの指向性利得で与えられる開口面アンテナの有効開口半径よりも小さな半径をもつ回転楕円体面上に構成され、この回転楕円体の中心に磁気多重極があるのと等価な電磁界を生じさせる複数の単位アンテナである、請求項5または6に記載の擬似多重極アンテナ。
  8. 前記波源は、前記磁気多重極と等価な電磁界を生じさせる、それぞれTEモードで共振する、複数の誘電体層を有する多層球形誘電体共振器である、請求項5または6に記載の擬似多重極アンテナ。
  9. 電気多重極および磁気多重極を波源とした、TM波およびTE波の作り出す指向性のある電磁ビームと等価な電磁界により、半空間に電磁放射を行うようにしたことを特徴とする擬似多重極アンテナ。
  10. 球座標系におけるマクスウェル方程式の解の要素である球面調和関数の各次数(l,m=1)に対応する球面電磁波をl=1からl=Lまで前記TE波とTM波とをセットにして重ね合わせることにより、各次数の電気多重極放射および磁気多重極放射が持つ(l−1)個のサイドローブを打ち消した、請求項9に記載の擬似多重極アンテナ。
  11. 前記波源は、電磁ビームの指向性利得で与えられる開口面アンテナの有効開口半径よりも小さな半径をもつ回転楕円体面上に構成され、この回転楕円体の中心に電気多重極および磁気多重極があるのと等価な電磁界を生じさせる複数の単位アンテナである、請求項9または10に記載の擬似多重極アンテナ。
  12. 前記単位アンテナは多重モードの誘電体共振器である、請求項3、7または11に記載の擬似多重極アンテナ。
  13. 前記誘電体共振器は、TE11 の2重モードおよびTM11 の2重モードで共振する球形誘電体共振器である、請求項12に記載の擬似多重極アンテナ。
  14. 前記球形誘電体共振器は、核部と外殻部とで誘電率が異なり、TEモードとTMモードとが縮退したものである、請求項13に記載の擬似多重極アンテナ。
  15. 前記球形誘電体共振器は、核部が金属、外殻部が誘電体であり、TEモードとTMモードとが縮退したものである、請求項13に記載の擬似多重極アンテナ。
  16. 前記波源は、前記電気多重極と等価な球面電磁波を生じさせる、それぞれTMモードの共振と、前記磁気多重極と等価な球面電磁波を生じさせる、それぞれTEモードの共振とが縮退した、複数の誘電体層を有する多層球形誘電体共振器である、請求項9または10に記載の擬似多重極アンテナ。
  17. 前記多層球形誘電体共振器の前記誘電体層は径方向と周方向とで誘電率が異なる、請求項16に記載の擬似多重極アンテナ。
  18. 前記誘電体層に径方向に延びるスリットが形成され、このスリットによって前記誘電体層は径方向と周方向とで誘電率が異なっている、請求項17に記載の擬似多重極アンテナ。
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