JP2013209960A - 潤滑被膜形成用樹脂組成物 - Google Patents

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清富 光森
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伸介 森
Ryosuke Date
亮介 伊達
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Abstract

【課題】ピストンスカート部の摺動部材表面に潤滑被膜の塗布工程中での樹脂組成物の固形化を抑制する。
【解決手段】結合剤、固体潤滑剤及び有機溶剤を含有し、結合剤として重量平均分子量10000〜50000のポリアミドイミド樹脂を用い、有機溶剤にN−エチル−2−ピロリドンを用いる。
【選択図】なし

Description

本発明は、摺動部材表面に潤滑被膜を形成するための樹脂組成物に関し、更に詳しくは内燃機関用摺動部材、例えばピストンスカート部に、被膜形成環境に影響されにくい潤滑被膜形成用樹脂組成物に関する。
近年、世界的な問題となっている地球温暖化に伴う自動車等の排ガス規制に対応するため、内燃機関の燃費向上が求められている。燃費向上の対策として、材質および設計変更による軽量化、小型化などと並んで、摺動部位の摩擦係数を低減するための検討が進められている。
例えば、ピストンの吸排気行程におけるシリンダブロックとの摩擦抵抗を低減し、またエンジン始動直後や運転中のピストン上下死点などのオイルによる潤滑が得難い領域での耐焼付き性を確保するため、ピストンスカート部に潤滑性を有する樹脂組成物の被膜を形成する事が知られている。この樹脂組成物の成分としては、ポリアミドイミド樹脂を結合剤とし、潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレンや二硫化モリブデンなどに代表される固体潤滑剤が添加されたものがある(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。樹脂組成物は、結合剤や固体潤滑剤を溶剤中に溶解・分散させたものである。溶剤としては、N−メチル−2−ピロリドンが主に使用されている。
この樹脂組成物より形成した被膜の摩擦低減効果を高め、またこれを持続させる技術、即ち低摩擦係数と耐磨耗性とを実現する方法としては、高分子量で且つ高硬度のポリアミドイミド樹脂を結合剤として用いる方法がある。例えば、特許文献3に記載されているような、重量平均分子量で10000〜50000の高分子量のポリアミドイミド樹脂を採用する方法である。
しかしながら、高分子量のポリアミドイミド樹脂を結合剤として含有する樹脂組成物は、摺動部材表面に塗布する工程において、塗装直後の被膜形成が十分でない状態であると空気中の水分を徐々に吸収し経時的に白濁または固化(以降、固形化と称す)する現象が起こってしまう。また、このような樹脂組成物では、製造工程中においても水分を吸収し固形化する現象が起こることがある。製造工程中に樹脂組成物が固形化し始めてしまうと、ピストン等の摺動部材に正常に塗布できなくなってしまう。
また、部分的に固形化した樹脂組成物をピストン等の摺動部材に塗布して形成した潤滑被膜は、ピストン等の摺動部材に対する密着性が悪く、実働環境下で剥がれ落ちる懸念がある。
このため、固形化を起こさずに樹脂組成物を製造し、且つ摺動部材に塗布するためには、製造工程及び塗布工程における雰囲気の湿度や作業時間に厳しい制約が課されるようになる。例えば、樹脂組成物の吸湿を抑えるために、湿度が低い環境下で樹脂組成物を製造しようとした場合には、静電気の発生による引火、火災の危険性があり実用的ではない。このため、樹脂組成物を製造するにあたり、製造環境の湿度を下げることは困難である。また、アルミ合金等からなるピストン材の場合は、樹脂組成物の被膜を形成するため加熱焼成が必要となるが、熱による材料強度の低下を防止するため、高温で加熱焼成することができない。このため、樹脂組成物においては、200℃程度の温度で乾燥する溶剤を使用する必要がある。このような制約を満たしながらも、高分子量の結合剤が溶解し、吸湿による固形化現象を抑制することができる樹脂組成物が求められている。
特開2009−068390号公報 特開2004−149622号公報 特開2011−213761号公報
そこで、本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、高分子量のポリアミドイミド樹脂が溶解し、製造及び塗布工程において固形化現象が抑制され、且つ高温ではなくても樹脂組成物の被膜形成が可能な潤滑被膜形成用樹脂組成物を提供することを目的とする。
上述した目的を達成する本発明に係る潤滑被膜形成用樹脂組成物は、内燃機関のピストンスカート部の摺動部材表面に潤滑被膜を形成するための樹脂組成物であって、結合剤、固体潤滑剤及び有機溶剤を含有し、結合剤が重量平均分子量10000〜50000のポリアミドイミド樹脂であり、有機溶剤がN−エチル−2−ピロリドンであることを特徴とする。
本発明では、重量平均分子量10000〜50000のポリアミドイミド樹脂を結合剤として用い、この高分子量の結合剤と固体潤滑剤とをN−エチル−2−ピロリドンに溶解、分散させることによって得られる樹脂組成物は、吸湿による固形化現象を抑制でき、高温ではなくても樹脂組成物の被膜形成が可能となる。これにより、本発明では、摩擦低減効果が高く、耐摩耗性を有した潤滑被膜形成用樹脂組成物が制約を受けずに製造でき、且つ潤滑被膜形成用樹脂組成物を内燃機関のピストンスカート部の摺動部材に塗布することができる。
以下に、本発明を適用した潤滑被膜形成用樹脂組成物について詳細に説明する。なお、本発明は、特に限定がない限り、以下の詳細な説明に限定されるものではない。
潤滑被膜形成用樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物という。)は、結合剤、固体潤滑剤及び有機溶剤を含有し、結合剤として重量平均分子量10000〜50000のポリアミドイミド樹脂を用い、有機溶剤としてN−エチル−2−ピロリドンを用いる。この樹脂組成物は、ピストンスカート部の摺動部材に塗布され、加熱焼成されることによって、得られる不揮発性成分、即ち、ポリアミドイミド樹脂と固体潤滑剤とにより潤滑被膜を形成する。
結合剤として使用するポリアミドイミド樹脂は、重量平均分子量が10000〜50000のものであり、高硬度の固体のものである。このようなポリアミドイミド樹脂は、潤滑被膜の摩擦抵抗を低減させ、耐磨耗性を良好にする。重量平均分子量が10000未満の場合は、潤滑被膜の硬度が低下するため、摩擦係数の低減効果が得られず、耐摩耗性が不十分となる。逆に重量平均分子量が50000を超えると、十分な被膜硬度は得られるが、ワニス化した場合の粘度が上昇するため取扱が困難となり、塗布工程等の被膜形成作業性が低下するため好ましくない。したがって、重量平均分子量が10000〜50000のポリアミドイミド樹脂を用いることによって、塗布工程等の被膜形成の作業性が低下することなく、摩擦係数の低減効果が得られ、十分な耐摩耗性も得られる。
ポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量は次の方法により測定する。即ち、ワニス状のポリアミドイミド樹脂にアセトンを添加し、生じた沈殿をろ過して得たろ過物を乾燥させる。得られた乾燥ろ過物を0.01g量り取り、臭化リチウム濃度0.03MのN,N−ジメチルホルムアミド10gに溶解する。このようにして得られた溶液を、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)で測定し、示差屈折率計で検出する。尚、主なGPC測定条件は、分離カラムとしてShodex製のD−G+KD−804K+KD−803+KD−802を使用し、流速は1ml/分、試料注入量は100μl、カラム温度は50℃とする。
有機溶剤としては、N−エチル−2−ピロリドンを用いる。このN−エチル−2−ピロリドンは、上述した重量平均分子量10000〜50000の高分子で且つ高硬度のポリアミドイミド樹脂を溶解させる溶解力を持つ。また、後述する固体潤滑剤を分散させることができる溶剤である。このN−エチル−2−ピロリドンは、沸点が約212℃であるため、潤滑被膜を形成する際の一般的な加熱焼成温度ができる。
ここで、N−エチル−2−ピロリドンは、水への溶解性を有するため、従来、有機溶媒として使用されていたN−メチル−2−ピロリドンと同様に水溶性を示す溶剤である。しかしながら、上述した高分子量のポリアミドイミド樹脂を溶解させた場合には、N−メチル−2−ピロリドンよりも吸湿性が低く、N−メチル−2−ピロリドンでは実現できなかった水分の吸収抑制を実現することができる。
したがって、N−エチル−2−ピロリドンは、重量平均分子量が10000〜50000で高硬度のポリアミドイミド樹脂を溶解させることができ、製造及び塗布工程において空気中の水分吸収が抑えられるため固形化するまでの時間を長くすることができ、更に加熱焼成温度は従来の加熱焼成温度で被膜形成することができる。即ち、このN−エチル−2−ピロリドンは、高分子量で高硬度のポリアミドイミド樹脂を結合剤として含有する樹脂組成物の有機溶剤としてN−メチル−2−ピロリドン等の他の有機溶媒よりも適している。
固体潤滑剤としては、フッ素樹脂系固体潤滑剤、含硫黄化合物系固体潤滑剤、炭素系固体潤滑剤等を使用することができる。これらの固体潤滑剤は、公知の材料であれば使用することができる。
例えば、フッ素樹脂系固体潤滑剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、トリクロロトリフルオロエチレンなどが挙げられ、これらを単独または2種類以上を組み合わせて配合することができる。これらの中でも、ポリテトラフルオロエチレンが好ましい。ポリテトラフルオロエチレンは、樹脂組成物より形成した被膜において、摩擦係数低減効果を発現させることができる。
例えば、含硫黄化合物系固体潤滑剤としては、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、三硫化アンチモンなどが挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて配合することができる。これらの中でも、二硫化モリブデンが好ましい。二硫化モリブデンは、樹脂組成物より形成した被膜において、耐焼付き性効果を発現させることができる。高面圧下では、より有効に作用する固体潤滑剤である。
例えば、炭素系固体潤滑剤としては、黒鉛、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどが挙げられ、これらを単独又は2種以上を組み合わせて配合することができる。これらの中でも、黒鉛、カーボンナノチューブが好ましい。特にカーボンナノチューブは、樹脂組成物より形成した被膜において、耐摩耗性効果を発現させることができる。
以上のような構成からなる樹脂組成物は、有機溶剤にN−エチル−2−ピロリドンを用いることによって、製造及び塗布工程において空気中の水分吸収が抑制され、固形化するまでの時間が長く、固形化現象を抑制することが可能となる。これにより、樹脂組成物には、吸湿による樹脂固化物が混入していないため、内燃機関のピストンスカート部の摺動部材に正常に塗布することができる。また、この樹脂組成物は、高い加熱焼成温度ではなく、従来の加熱焼成温度で被膜形成することができるため、アルミ合金等からなる内燃機関のピストンスカート部の摺動部材に対しても適用することができる。
この樹脂組成物の製造方法は、先ず、例えばポリアミドイミド樹脂の一部又は全部と有機溶剤の一部又は全部、及び固体潤滑剤を撹拌機にて撹拌混合し、得られた混合物をビーズミル、三本ロールミル等の分散機を用いて分散してミルベースとする。次に、このミルベースに残り必要量のポリアミドイミド樹脂と有機溶剤を加えて樹脂組成物とすることができる。なお、上述した必須成分と有機溶剤の他に、必要に応じて、分散剤や消泡剤などの通常用いられている各種添加剤を配合することができる。樹脂組成物の製造工程において、有機溶媒にN−エチル−2−ピロリドンを用いていることによって、空気中の水分吸収が抑制され、経時的に固形化することを抑制できるため、吸湿による樹脂固化物が混入していない樹脂組成物を製造することができる。
樹脂組成物をピストンスカート部の摺動部材表面に塗布する場合には、必要に応じて、樹脂組成物を含窒素系溶剤、または含窒素系溶剤に炭化水素系溶剤やケトン系溶剤、エステル系溶剤等を混合した希釈溶剤を用いて希釈して、摺動部材表面に塗布又はコーティングし、乾燥後に加熱焼成することにより、潤滑被膜を形成することができる。このとき含窒素系溶剤には、N−エチル−2−ピロリドンが望ましい。溶剤による希釈比率は、部品への塗布又はコーティングの方法により、それぞれ適した粘度に調整する。
塗布又はコーティング方法としては、スプレー塗布、ロール塗布、パッド法による塗布、浸漬塗布、スクリーン印刷、オフセット印刷等の公知の方法を用いることができるが、工業的にはスクリーン印刷による塗布が好ましい。
樹脂組成物をピストンスカート部の摺動部材表面に塗布する際には、樹脂組成物の有機溶剤にN−エチル−2−ピロリドンを用いていることによって、空気中からの水分吸収が抑制され、経時的に固形化することを抑制できるため、摺動部材表面に適切に塗布することができ、摺動部材に対する被膜の密着性も良く、実環境下で剥がれ落ちることも防止できる。また、この樹脂組成物は、加熱焼成温度を高くする必要がないため、アルミ合金等の摺動部材に塗布して被膜を形成することができる。したがって、樹脂組成物を摺動部材表面に塗布する際には、塗装不良や密着性不良が発生することがなくなり、塗布工程における雰囲気湿度や塗布時間に関する制約を緩和することができる。
以下、本発明を適用した具体的な実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
[高分子ポリアミドイミド樹脂の溶解確認試験]
結合剤として用いる重量平均分子量が10000〜50000の高分子ポリアミドイミド樹脂を溶解させるためには、極性が高く強い溶解力を持つ溶媒の選定が必要となる。そこで、吸湿による樹脂固化物の発生評価に先立ち、高分子ポリアミドイミド樹脂の溶解確認試験を行う。この溶解確認試験では、ポリアミドイミド樹脂(商品名:トーロン、重量平均分子量24000、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)を有機溶媒と混合し、溶解の状態を目視で確認した。
使用したポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量測定値は、以下の方法で測定した。ワニス状のポリアミドイミド樹脂にアセトンを添加し、生じた沈殿をろ過して得たろ過物を乾燥させる。得られた乾燥ろ過物を、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)で測定し、示差屈折率計で検出した。主なGPC測定条件は、分離カラムとしてShodex製のD−G+KD−804K+KD−803+KD−802を使用し、流速は1ml/分、試料注入量は100μl、カラム温度は50℃とした。
ここで、試験溶媒として使用した成分は、極性が高く強い溶解力を持つ含窒素五員環化合物として、N―エチル―2―ピロリドン、N―メチル―2―ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを試験に用いた。その他に、含窒素化合物としてβ−アルコキシプロピオンアミド類の溶媒(商品名:エクアミド、出光興産株式会社製)、五員環化合物としてγ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネートを用いて試験を行った。
試験組成は、表1に示すようにポリアミドイミド樹脂(20質量%)と試験溶媒(80質量%)として、N―エチル―2―ピロリドン、N―メチル―2―ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、β−アルコキシプロピオンアミド類の溶媒、γ−ブチロラクトン、プロピレンカーボネートのそれぞれを混合攪拌して得られるものとした。この組成で溶解しなかった溶媒は、N―メチル―2―ピロリドン/溶媒=40/60の比率で得た混合溶剤で溶解性を確認した。ポリアミドイミド樹脂の溶解確認試験の判定は、透明液状を示し完全溶解した状態を○で示し、濁りやゲル化などで溶解していない状態を×で示し、判定し結果を表1に表記した。下記表1に、評価組成と結果を記す。
Figure 2013209960
上記表1に示す結果のとおり、高分子ポリアミドイミド樹脂は含窒素化合物を溶媒とした場合、優れた溶解性を示した。また、単独ではポリアミドイミド樹脂を溶解しなかったγ−ブチロラクトンとプロピレンカーボネートは、N―メチル―2―ピロリドンの混合溶剤とする事で溶解性を示した。この試験の試料を、吸湿による樹脂固化物の発生評価に供した。
[吸湿による樹脂固形化物の発生評価]
樹脂固化物の発生評価では、ポリアミドイミド樹脂を上記溶解確認試験を行った試験溶媒に溶解させ、固形化現象が生じるまでの時間を測定し、樹脂固形物の発生を評価した。この評価により、樹脂固形物が発生しなければ、水分の吸湿が抑制されており、樹脂組成物の構成とした場合であっても固形化現象を抑制できると判断できる。
この樹脂固形化物の発生評価では、高分子ポリアミドイミド樹脂の溶解確認試験で作製した試料を用いて行った。評価方法として、上述の試料をガラス板(100×100mm)の上に、約0.4g秤量し、スパチラにてガラス面の全面に繰り返し塗り伸ばす。この塗り伸ばす操作を、ガラス面上の試料が完全に白濁または固化するまで繰り返す。評価試料を秤量した直後から、試料が完全に白濁または固化するまでの時間を測定し実験データとした。この実験では、最大10分間までデータ測定を行うものとする。
この実験結果の判定は、試験開始後10分後も試料が完全に白濁または固化していない状態の時、実用上被膜形成の作業性が向上すると判断した場合には、表2及び表3に○で記載した。一方、10分以下で試料が完全に白濁または固化した場合、被膜形成の作業性に難あると判断した場合には、表2及び表3に×で記載した。
試験条件は、実験する雰囲気の湿度を2水準実施する。
試験条件1:湿度40%
試験条件2:湿度60%
湿度40%は、乾燥した条件を想定したものである。また湿度60%は、樹脂組成物を被膜形成させる塗装工場において、湿度の高い季節でも調整可能な雰囲気を想定した。つまり、実作業において、制約を受けることなく被膜形成が可能な状態である。
<実施例1>
実施例1では、下記の試験条件及び試料を用いて行った。
試験条件1:湿度40%
結合剤として用いる重量平均分子量が10000〜50000の高分子ポリアミドイミド樹脂(商品名:トーロン、重量平均分子量24000、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)を、N―エチル―2―ピロリドンに溶解した試料で樹脂固形化物の発生評価を行った。
<比較例1>
比較例1では、下記の試験条件及び試料を用いて行った。
試験条件1:湿度40%
結合剤として用いる重量平均分子量が10000〜50000の高分子ポリアミドイミド樹脂(商品名:トーロン、重量平均分子量24000、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)を、N―メチル―2―ピロリドンに溶解した試料で樹脂固形化物の発生評価を行った。
<比較例2>
比較例2では、下記の試験条件及び試料を用いて行った。
試験条件1:湿度40%
結合剤として用いる重量平均分子量が10000〜50000の高分子ポリアミドイミド樹脂(商品名:トーロン、重量平均分子量24000、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)を、β−アルコキシプロピオンアミド類の溶媒(商品名:エクアミド、出光興産株式会社製)に溶解した試料で樹脂固形化物の発生評価を行った。
<比較例3>
比較例3では、下記の試験条件及び試料を用いて行った。
試験条件1:湿度40%
結合剤として用いる重量平均分子量が10000〜50000の高分子ポリアミドイミド樹脂(商品名:トーロン、重量平均分子量24000、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)を、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンに溶解した試料で樹脂固形化物の発生評価を行った。
<比較例4>
比較例4では、下記の試験条件及び試料を用いて行った。
試験条件1:湿度40%
結合剤として用いる重量平均分子量が10000〜50000の高分子ポリアミドイミド樹脂(商品名:トーロン、重量平均分子量24000、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)を、N―メチル―2―ピロリドン(32質量%)とγ−ブチロラクトン(48質量%)の混合溶剤に溶解した試料で樹脂固形化物の発生評価を行った。
<比較例5>
比較例5では、下記の試験条件及び試料を用いて行った。
試験条件1:湿度40%
結合剤として用いる重量平均分子量が10000〜50000の高分子ポリアミドイミド樹脂(商品名:トーロン、重量平均分子量24000、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)を、N―メチル―2―ピロリドン(32質量%)とプロピレンカーボネート(48質量%)の混合溶剤に溶解した試料で樹脂固形化物の発生評価を行った。
<実施例2>
実施例2では、下記の試験条件及び試料を用いて行った。
試験条件2:湿度60%
結合剤として用いる重量平均分子量が10000〜50000の高分子ポリアミドイミド樹脂(商品名:トーロン、重量平均分子量24000、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)を、N―エチル―2―ピロリドンに溶解した試料で樹脂固形化物の発生評価を行った。
<比較例6>
比較例6では、下記の試験条件及び試料を用いて行った。
試験条件2:湿度60%
結合剤として用いる重量平均分子量が10000〜50000の高分子ポリアミドイミド樹脂(商品名:トーロン、重量平均分子量24000、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)を、N―メチル―2―ピロリドンに溶解した試料で樹脂固形化物の発生評価を行った。
<比較例7>
比較例7では、下記の試験条件及び試料を用いて行った。
試験条件2:湿度60%
結合剤として用いる重量平均分子量が10000〜50000の高分子ポリアミドイミド樹脂(商品名:トーロン、重量平均分子量24000、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)を、β−アルコキシプロピオンアミド類の溶媒(商品名:エクアミド、出光興産株式会社製)に溶解した試料で樹脂固形化物の発生評価を行った。
<比較例8>
比較例8では、下記の試験条件及び試料を用いて行った。
試験条件2:湿度60%
結合剤として用いる重量平均分子量が10000〜50000の高分子ポリアミドイミド樹脂(商品名:トーロン、重量平均分子量24000、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)を、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンに溶解した試料で樹脂固形化物の発生評価を行った。
<比較例9>
比較例9では、下記の試験条件及び試料を用いて行った。
試験条件2:湿度60%
結合剤として用いる重量平均分子量が10000〜50000の高分子ポリアミドイミド樹脂(商品名:トーロン、重量平均分子量24000、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)を、N―メチル―2―ピロリドン(32質量%)とγ−ブチロラクトン(48質量%)の混合溶剤に溶解した試料で樹脂固形化物の発生評価を行った。
<比較例10>
比較例10では、下記の試験条件及び試料を用いて行った。
試験条件2:湿度60%
結合剤として用いる重量平均分子量が10000〜50000の高分子ポリアミドイミド樹脂(商品名:トーロン、重量平均分子量24000、ソルベイアドバンストポリマーズ株式会社製)を、N―メチル―2―ピロリドン(32質量%)とプロピレンカーボネート(48質量%)の混合溶剤に溶解した試料で樹脂固形化物の発生評価を行った。
なお、使用したポリアミドイミド樹脂の重量平均分子量測定値は、以下の方法で測定したものである。ワニス状のポリアミドイミド樹脂にアセトンを添加し、生じた沈殿をろ過して得たろ過物を乾燥させる。得られた乾燥ろ過物を、ゲル浸透クロマトグラフ法(GPC法)で測定し、示差屈折率計で検出する。主なGPC測定条件は、分離カラムとしてShodex製のD−G+KD−804K+KD−803+KD−802を使用し、流速は1ml/分、試料注入量は100μl、カラム温度は50℃とした。
下記表2及び表3に、評価組成と試験結果を記す。
Figure 2013209960
Figure 2013209960
表2に示す結果から、湿度40%の条件において、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒に用いた比較例1では、表1に示すように高分子量で且つ高硬度のポリイミドアミド樹脂は溶解しているものの、湿度が40%と低い場合であっても、水分を吸収し、すぐに固形化を始めて、全体が固形化するまでの時間も短かった。同様に、比較例5でも、全体が固形化するまでの時間は短かった。
一方、比較例2、3、4では、10分経過しても固形化せず、湿度40%の雰囲気ではN−メチル−2−ピロリドンに代わり、作業性向上を期待できる溶媒といえる。
しかしながら、表3に示す湿度60%での結果からは、比較例に挙げた全ての溶媒は、どれも吸湿による固形化が早く、N−メチル−2−ピロリドンと比較しても性能向上は確認できなかった。湿度が60%とは、樹脂組成物を製造する際の一般的な湿度条件である。したがって、湿度60%の環境で固形化が生じるため、樹脂組成物に適用できないことがわかる。
これらの比較例に対して、表2及び表3に示す実施例1及び2では、高分子量で高硬度のポリアミドイミド樹脂を溶解させることができ、有機溶媒にN−エチル−2−ピロリドンを用いているため、湿度が40%及び60%であっても、10分経過しても固形化が生じなかった。これにより、有機溶媒にN−エチル−2−ピロリドンを樹脂組成物の溶媒に用いた場合には、吸湿性が抑制され、実用環境下であっても吸湿により樹脂が固形化することなく使用できることがわかる。

Claims (3)

  1. 内燃機関のピストンスカート部の摺動部材表面に潤滑被膜を形成するための樹脂組成物であって、結合剤、固体潤滑剤及び有機溶剤を含有し、
    上記結合剤が重量平均分子量10000〜50000のポリアミドイミド樹脂であり、
    上記有機溶剤がN−エチル−2−ピロリドンであることを特徴とする潤滑被膜形成用樹脂組成物。
  2. 上記固体潤滑剤は、フッ素樹脂系固体潤滑剤、含硫黄化合物系固体潤滑剤、炭素系固体潤滑剤から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載の潤滑被膜形成用樹脂組成物。
  3. 上記フッ素系固体潤滑剤は、ポリテトラフルオロエチレンであり、上記含硫黄化合物系固体潤滑剤は、二硫化モリブデンであり、上記炭素系固体潤滑剤は、黒鉛、カーボンナノチューブから選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項2に記載の潤滑被膜形成用樹脂組成物。
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