JP2013181043A - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物および成形体 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物および成形体 Download PDF

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Abstract

【課題】 塩素原子含有量が少なく、溶融流動性に優れた、かつ繰り返し成形時の寸法安定性および耐湿熱性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびその射出成形体を提供する。
【解決手段】 (A)ポリアリーレンスルフィド樹脂、(B)非繊維状充填材および(C)繊維状充填材を配合してなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、(B)非繊維状充填材と(C)繊維状充填材の合計量が、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対し、100質量部以上200質量部未満の範囲であり、さらに(B)非繊維状充填材の含有量が(C)繊維状充填材の含有量より多く、かつポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の塩素原子含有量が900ppm以下の範囲であることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびその成形体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、塩素原子含有量が低減されたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびその成形体に関する。
ポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略す)樹脂に代表されるポリアリーレンスルフィド(以下PASと略す)樹脂は、高い耐熱性、機械的物性、耐薬品性、寸法安定性、難燃性を有していることから、金属材料の代替材料として、自動車部品、電気電子部品、住宅設備部品を中心に幅広く用いられており、その使用量も拡大している。その中で、電気電子部品用途において環境保護の面から、ハロゲン規制の動きが急速に拡大し、PAS樹脂を含有する組成物(以下、PAS樹脂組成物と略す)中のハロゲン含有量が900ppm以下に規制される状況になっている。
PAS樹脂は、p−ジクロロベンゼンとアルカリ金属硫化物あるいはアルカリ金属水硫化物を原料とした重合により得られるため、ポリマー末端にハロゲン原子の一つである塩素原子が必然的に残存する。上記のとおり、環境問題の観点から、塩素原子含有量がより少ないPAS樹脂が市場から求められているが、PAS樹脂の優れた特性を損なうことなく塩素原子含有量を低減し、かつ成形加工性に優れたPAS樹脂を提供することが求められていた。
そこで、低塩素原子含有量のPAS樹脂と、特定割合の非繊維状フィラーおよび繊維状フィラーとを組合せ、PAS樹脂に対するフィラー合計量を質量比で2〜3倍の範囲とすることで、塩素原子含有量が少なく、溶融流動性に優れ、かつ繰り返し成形時の寸法安定性に優れたPAS樹脂組成物およびその射出成形体が提案されている(特許文献1)。
しかしながら、該樹脂組成物は樹脂含有量に対してフィラー含有量が多く、ガラス繊維等の非繊維状フィラーとの密着性に劣ることから、耐湿熱性に問題があった。
特開2010−053356号公報
そこで本発明が解決しようとする課題は、塩素原子含有量が少なく、溶融流動性に優れた、かつ繰り返し成形時の寸法安定性および耐湿熱性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびその成形体を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂、(B)非繊維状充填材および(C)繊維状充填材を配合してなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、(B)非繊維状充填材と(C)繊維状充填材の合計量が、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対し、100質量部以上200質量部未満であり、さらに(B)非繊維状充填材の含有量が(C)繊維状充填材の含有量より多く、かつポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の塩素原子含有量が900ppm以下であることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、塩素原子含有量が少なく、溶融流動性に優れた、かつ繰り返し成形時の寸法安定性および耐湿熱性に優れたポリアリーレンスルフィド樹脂組成物およびその射出成形体を提供することができる。
本発明に使用するPAS樹脂(A)としては、特に限定されず、公知のPAS樹脂が使用できる。例えば置換基を有してもよい芳香族環と硫黄原子が結合した構造の繰り返し単位を含むランダム共重合体、ブロック共重合体、およびそれらの混合物あるいは単独重合体との混合物等が挙げられる。これらのPAS樹脂の代表的なものとしては、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPS樹脂という)が挙げられる。該PPS樹脂の中でも、上記繰り返し単位の芳香環への結合がパラ位である構造を有するものが耐熱性や結晶性の面で好ましい。また、PAS樹脂には、メタ結合、エーテル結合、スルホン結合、スルフィドケトン結合、ビフェニル結合、フェニルスルフィド結合、ナフチル結合を10モル%未満を上限とし(但し3官能以上の結合を含む成分を共重合させる場合は5モル%を上限として)含有させても良い。本発明ではスルフィド(−S−)が機能発現に寄与していると考えられるため、これらの密度が共重合により大幅に低下したPAS樹脂を用いることは適さない。
本発明で用いられる(A)PAS樹脂は優れた強度および低塩素化を得る観点から、クロロホルム抽出量が1.8wt%以下であることが好ましく、さらには1.0wt%以下であることが好ましい。
かかるクロロホルム抽出量が1.8wt%以下のPAS樹脂を得るには、後述する後処理工程で、有機溶剤洗浄する方法等が好ましく用いられる。
なお本発明におけるクロロホルム抽出量は、ソックスレー抽出器を用い、PASサンプル量約10g、クロロホルム200mlを用い5時間抽出し、その抽出液を50℃で乾燥し、得られた残さを仕込みPASサンプル量で割り返し、100をかけてパーセンテージ表記としたものである。
本発明で用いられる(A)PAS樹脂の溶融粘度に特に制限はないが、より優れたウェルド強度と良流動性を両立させる観点および後述する低塩素化を図る観点からその溶融粘度は、40〜2000Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)の範囲が好ましく、40〜1300Pa・s以下の範囲がより好ましい。また溶融粘度の異なる2種以上のポリアリーレンスルフィド樹脂を併用して用いてもよい。
なお、本発明における溶融粘度は、320℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。 本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、その樹脂組成物中の塩素原子含有量が900ppm以下である必要があり、800ppm以下の範囲がより好ましく、700ppm以下の範囲がさらに好ましく、600ppm以下の範囲であることがより一層好ましい。ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中の塩素原子含有量は、オリゴマー等の低分子量物量をしばしば反映し、従ってポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中の塩素原子含有量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の付着性ガス発生量の目安となり得る。塩素原子含有量が900ppmを超える範囲であると、射出成形時の金型付着物量が増える傾向にあり、そのため繰り返し成形時、金型に設けられたガスベントが詰まり易くなる。それにより溶融流動性が乱され、寸法安定性が悪化する。
また、昨今、優れた耐腐食性や環境等への配慮からも、塩素、臭素などのハロゲン化合物、特に塩素原子含有量を少なくすることが求められている。塩素原子の含有量を900ppm以下とするのは、電子部品用途において、耐腐食性や環境負荷低減の観点から、塩素原子含有量を900ppm以下とすることがしばしば要求されるためでもある。
なお、ここで言う塩素、臭素の含有量は、SGSファーイーストリミテッドグリーンテスティングセンターに依頼し、BS EN14582法に従い、SGS台湾(高雄)で測定した値である。
以下に、本発明に用いる(A)PAS樹脂の製造方法について説明するが、上記構造のPASが得られれば下記方法に限定されるものではもちろんない。
まず、製造方法において使用するポリハロゲン芳香族化合物、スルフィド化剤、重合溶媒、分子量調節剤、重合助剤および重合安定剤の内容について説明する。
本発明で用いられるポリハロゲン化芳香族化合物とは、1分子中にハロゲン原子を2個以上有する化合物をいう。具体例としては、p−ジクロロベンゼン、m−ジクロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、1,3.5−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、1,2,4,5−テトラクロロベンゼン、ヘキサクロロベンゼン、2,5−ジクロロトルエン、2,5−ジクロロ−p−キシレン、1,4−ジブロモベンゼン、1,4−ジヨードベンゼン、1−メトキシ−2,5−ジクロロベンゼンなどのポリハロゲン化芳香族化合物が挙げられ、好ましくはp−ジクロロベンゼンが用いられる。また、異なる2種以上のポリハロゲン化芳香族化合物を組み合わせて共重合体とすることも可能であるが、p−ジハロゲン化芳香族化合物を主要成分とすることが好ましい。
ポリハロゲン化芳香族化合物の使用量は、加工に適した粘度のPAS樹脂を得る点から、スルフィド化剤1モル当たり0.9から2.0モル、好ましくは0.95から1.5モル、更に好ましくは1.005から1.2モルの範囲が例示できる。
本発明で用いられるスルフィド化剤としては、アルカリ金属硫化物、アルカリ金属水硫化物、および硫化水素が挙げられる。
アルカリ金属硫化物の具体例としては、例えば硫化リチウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
アルカリ金属水硫化物の具体例としては、例えば水硫化ナトリウム、水硫化カリウム、水硫化リチウム、水硫化ルビジウム、水硫化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を挙げることができ、なかでも水硫化ナトリウムが好ましく用いられる。これらのアルカリ金属水硫化物は、水和物または水性混合物として、あるいは無水物の形で用いることができる。
また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
あるいは、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素から反応系においてin situで調製されるアルカリ金属硫化物も用いることができる。また、水酸化リチウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物と硫化水素からアルカリ金属硫化物を調整し、これを重合槽に移して用いることができる。
本発明において、仕込みスルフィド化剤の量は、脱水操作などにより重合反応開始前にスルフィド化剤の一部損失が生じる場合には、実際の仕込み量から当該損失分を差し引いた残存量を意味するものとする。
なお、スルフィド化剤と共に、アルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を併用することも可能である。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムおよびこれら2種以上の混合物を好ましいものとして挙げることができ、アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどが挙げられ、なかでも水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいが、この使用量はアルカリ金属水硫化物1モルに対し0.95から1.20モル、好ましくは1.00から1.15モル、更に好ましくは1.005から1.100モルの範囲が例示できる。
本発明では重合溶媒として有機極性溶媒を用いる。具体例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドンなどのN−アルキルピロリドン類、N−メチル−ε−カプロラクタムなどのカプロラクタム類、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、ジメチルスルホン、テトラメチレンスルホキシドなどに代表されるアプロチック有機溶媒、およびこれらの混合物などが挙げられ、これらはいずれも反応の安定性が高いために好ましく使用される。これらのなかでも、特にN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略記することもある)が好ましく用いられる。
有機極性溶媒の使用量は、スルフィド化剤1モル当たり2.0モルから10モル、好ましくは2.25から6.0モル、より好ましくは2.5から5.5モルの範囲が選択される。
本発明においては、生成するPAS樹脂の末端を形成させるか、あるいは塩素原子含有量の低減、重合反応や分子量を調節するなどのために、モノクロロベンゼン等のモノハロゲン化合物(必ずしも芳香族化合物でなくともよい)を、上記ポリハロゲン化芳香族化合物と併用することができる。
本発明においては、重合度調節のために重合助剤を用いることも好ましい態様の一つである。ここで重合助剤とは得られるPAS樹脂の粘度を増大させる作用を有する物質を意味する。このような重合助剤の具体例としては、例えば有機カルボン酸塩、水、アルカリ金属塩化物、有機スルホン酸塩、硫酸アルカリ金属塩、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属リン酸塩およびアルカリ土類金属リン酸塩などが挙げられる。これらは単独であっても、また2種以上を同時に用いることもできる。なかでも、有機カルボン酸塩、水、およびアルカリ金属塩化物が好ましく、さらに有機カルボン酸塩としてはアルカリ金属カルボン酸塩が、アルカリ金属塩化物としては塩化リチウムが好ましい。および/または水、塩化リチウムが好ましく用いられる。
上記アルカリ金属カルボン酸塩とは、一般式R(COOM)n(式中、Rは、炭素数1〜20を有するアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基またはアリールアルキル基である。Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムから選ばれるアルカリ金属である。nは1〜3の整数である。)で表される化合物である。アルカリ金属カルボン酸塩は、水和物、無水物または水溶液としても用いることができる。アルカリ金属カルボン酸塩の具体例としては、例えば、酢酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、プロピオン酸ナトリウム、吉草酸リチウム、安息香酸ナトリウム、フェニル酢酸ナトリウム、p−トルイル酸カリウム、およびそれらの混合物などを挙げることができる。
アルカリ金属カルボン酸塩は、有機酸と、水酸化アルカリ金属、炭酸アルカリ金属塩および重炭酸アルカリ金属塩よりなる群から選ばれる一種以上の化合物とを、ほぼ等化学当量ずつ添加して反応させることにより形成させてもよい。上記アルカリ金属カルボン酸塩の中で、リチウム塩は反応系への溶解性が高く助剤効果が大きいが高価であり、カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は反応系への溶解性が不十分であると思われるため、安価で、重合系への適度な溶解性を有する酢酸ナトリウムが最も好ましく用いられる。
これらアルカリ金属カルボン酸塩を重合助剤として用いる場合の使用量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.01モル〜2モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.1〜0.6モルの範囲が好ましく、0.2〜0.5モルの範囲がより好ましい。
また水を重合助剤として用いる場合の添加量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対し、通常0.3モル〜15モルの範囲であり、より高い重合度を得る意味においては0.6〜10モルの範囲が好ましく、1〜5モルの範囲がより好ましい。
これら重合助剤は2種以上を併用することももちろん可能であり、例えばアルカリ金属カルボン酸塩と水を併用すると、それぞれより少量で高分子量化が可能となる。
これら重合助剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、重合助剤としてアルカリ金属カルボン酸塩を用いる場合は前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。また水を重合助剤として用いる場合は、ポリハロゲン化芳香族化合物を仕込んだ後、重合反応途中で添加することが効果的である。
本発明においては、重合反応系を安定化し、副反応を防止するために、重合安定剤を用いることもできる。重合安定剤は、重合反応系の安定化に寄与し、望ましくない副反応を抑制する。副反応の一つの目安としては、チオフェノールの生成が挙げられ、重合安定剤の添加によりチオフェノールの生成を抑えることができる。重合安定剤の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩などの化合物が挙げられる。そのなかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物が好ましい。上述のアルカリ金属カルボン酸塩も重合安定剤として作用するので、本発明で使用する重合安定剤の一つに入る。また、スルフィド化剤としてアルカリ金属水硫化物を用いる場合には、アルカリ金属水酸化物を同時に使用することが特に好ましいことを前述したが、ここでスルフィド化剤に対して過剰となるアルカリ金属水酸化物も重合安定剤となり得る。
これら重合安定剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合安定剤は、仕込みアルカリ金属硫化物1モルに対して、通常0.02〜0.2モル、好ましくは0.03〜0.1モル、より好ましくは0.04〜0.09モルの割合で使用することが好ましい。この割合が少ないと安定化効果が不十分であり、逆に多すぎても経済的に不利益であったり、ポリマー収率が低下する傾向となる。
重合安定剤の添加時期には特に指定はなく、後述する前工程時、重合開始時、重合途中のいずれの時点で添加してもよく、また複数回に分けて添加してもよいが、前工程開始時或いは重合開始時に同時に添加することが、添加が容易である点からより好ましい。
次に、本発明に用いる(a)PAS樹脂の製造方法について、前工程、重合反応工程、回収工程、および後処理工程と、順を追って具体的に説明する。
本発明に用いる(a)PAS樹脂の製造方法において、スルフィド化剤は通常水和物の形で使用されるが、ポリハロゲン化芳香族化合物を添加する前に、有機極性溶媒とスルフィド化剤を含む混合物を昇温し、過剰量の水を系外に除去することが好ましい。
また、上述したように、スルフィド化剤として、アルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物から、反応系においてin situで、あるいは重合槽とは別の槽で調製されるスルフィド化剤も用いることができる。この方法には特に制限はないが、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜150℃、好ましくは常温から100℃の温度範囲で、有機極性溶媒にアルカリ金属水硫化物とアルカリ金属水酸化物を加え、常圧または減圧下、少なくとも150℃以上、好ましくは180〜260℃まで昇温し、水分を留去させる方法が挙げられる。この段階で重合助剤を加えてもよい。また、水分の留去を促進するために、トルエンなどを加えて反応を行ってもよい。
重合反応における、重合系内の水分量は、仕込みスルフィド化剤1モル当たり0.3〜10.0モルであることが好ましい。ここで重合系内の水分量とは重合系に仕込まれた水分量から重合系外に除去された水分量を差し引いた量である。また、仕込まれる水は、水、水溶液、結晶水などのいずれの形態であってもよい。
本発明においては、有機極性溶媒中でスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物とを200℃以上290℃未満の温度範囲内で反応させることによりPAS樹脂を製造する。
重合反応工程を開始するに際しては、望ましくは不活性ガス雰囲気下、常温〜240℃、好ましくは100〜230℃の温度範囲で、有機極性溶媒とスルフィド化剤とポリハロゲン化芳香族化合物を混合する。この段階で重合助剤を加えてもよい。これらの原料の仕込み順序は、順不同であってもよく、同時であってもさしつかえない。
かかる混合物を通常200℃〜290℃の範囲に昇温する。昇温速度に特に制限はないが、通常0.01〜5℃/分の速度が選択され、0.1〜3℃/分の範囲がより好ましい。
一般に、最終的には250〜290℃の温度まで昇温し、その温度で通常0.25〜50時間、好ましくは0.5〜20時間反応させる。
最終温度に到達させる前の段階で、例えば200℃〜260℃で一定時間反応させた後、270〜290℃に昇温する方法は、より高い重合度を得る上で有効である。この際、200℃〜260℃での反応時間としては、通常0.25時間から20時間の範囲が選択され、好ましくは0.25〜10時間の範囲が選択される。
なお、より高重合度のポリマーを得るためには、複数段階で重合を行うことが有効である場合がある。複数段階で重合を行う際は、245℃における系内のポリハロゲン化芳香族化合物の転化率が、40モル%以上、好ましくは60モル%に達した時点であることが有効である。
なお、ポリハロゲン化芳香族化合物(ここではPHAと略記)の転化率は、以下の式で算出した値である。PHA残存量は、通常、ガスクロマトグラフ法によって求めることができる。
(a)ポリハロゲン化芳香族化合物をアルカリ金属硫化物に対しモル比で過剰に添加した場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)−PHA過剰量(モル)〕
(b)上記(a)以外の場合
転化率=〔PHA仕込み量(モル)−PHA残存量(モル)〕/〔PHA仕込み量(モル)〕
本発明で用いる(A)PAS樹脂の製造方法においては、重合終了後に、重合体、溶媒などを含む重合反応物から固形物を回収する。本発明で用いるPAS樹脂は、公知の如何なる回収方法を採用しても良い。
例えば、重合反応終了後、徐冷して粒子状のポリマーを回収する方法を用いても良い。この際の徐冷速度には特に制限は無いが、通常0.1℃/分〜3℃/分程度である。徐冷工程の全行程において同一速度で徐冷する必要もなく、ポリマー粒子が結晶化析出するまでは0.1〜1℃/分、その後1℃/分以上の速度で徐冷する方法などを採用しても良い。
また上記の回収を急冷条件下に行うことも好ましい方法の一つであり、この回収方法の好ましい一つの方法としてはフラッシュ法が挙げられる。フラッシュ法とは、重合反応物を高温高圧(通常250℃以上、8kg/cm 以上)の状態から常圧もしくは減圧の雰囲気中へフラッシュさせ、溶媒回収と同時に重合体を粉末状にして回収する方法であり、ここでいうフラッシュとは、重合反応物をノズルから噴出させることを意味する。フラッシュさせる雰囲気は、具体的には例えば常圧中の窒素または水蒸気が挙げられ、その温度は通常150〜250℃の範囲が選択される。
本発明で用いられる(A)PAS樹脂は、上記重合、回収工程を経て生成した後、酸処理、熱水処理または有機溶媒による洗浄を施されたものであってもよい。
酸処理を行う場合は次のとおりである。本発明でPAS樹脂の酸処理に用いる酸は、PAS樹脂を分解する作用を有しないものであれば特に制限はなく、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、珪酸、炭酸およびプロピル酸などが挙げられ、なかでも酢酸および塩酸がより好ましく用いられるが、硝酸のようなPAS樹脂を分解、劣化させるものは好ましくない。
酸処理の方法は、酸または酸の水溶液にPAS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。例えば、酢酸を用いる場合、pH4の水溶液を80〜200℃に加熱した中にPAS樹脂粉末を浸漬し、30分間撹拌することにより十分な効果が得られる。処理後のpHは4以上例えばpH4〜8程度となっても良い。酸処理を施されたPAS樹脂は残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、酸処理によるPAS樹脂の好ましい化学的変性の効果を損なわない意味で、蒸留水、脱イオン水であることが好ましい。
熱水処理を行う場合は次のとおりである。本発明において使用するPAS樹脂を熱水処理するにあたり、熱水の温度を100℃以上、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは150℃以上、特に好ましくは170℃以上とすることが好ましい。100℃未満ではPAS樹脂の好ましい化学的変性の効果が小さいため好ましくない。
本発明の熱水洗浄によるPAS樹脂の好ましい化学的変性の効果を発現するため、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作に特に制限は無く、所定量の水に所定量のPAS樹脂を投入し、圧力容器内で加熱、撹拌する方法、連続的に熱水処理を施す方法などにより行われる。PAS樹脂と水との割合は、水の多い方が好ましいが、通常、水1リットルに対し、PAS樹脂200g以下の浴比が選択される。
また、処理の雰囲気は、末端基の分解は好ましくないので、これを回避するため不活性雰囲気下とすることが望ましい。さらに、この熱水処理操作を終えたPAS樹脂は、残留している成分を除去するため温水で数回洗浄するのが好ましい。
有機溶媒で洗浄する場合は次のとおりである。本発明でPAS樹脂の洗浄に用いる有機溶媒は、PAS樹脂を分解する作用などを有しないものであれば特に制限はなく、例えばN−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホラスアミド、ピペラジノン類などの含窒素極性溶媒、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホランなどのスルホキシド・スルホン系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、アセトフェノンなどのケトン系溶媒、ジメチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、トリクロロエチレン、2塩化エチレン、パークロルエチレン、モノクロルエタン、ジクロルエタン、テトラクロルエタン、パークロルエタン、クロルベンゼンなどのハロゲン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、フェノール、クレゾール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのアルコール・フェノール系溶媒およびベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒のうちでも、N−メチル−2−ピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどの使用が特に好ましい。また、これらの有機溶媒は、1種類または2種類以上の混合で使用される。
有機溶媒による洗浄の方法としては、有機溶媒中にPAS樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。有機溶媒でPAS樹脂を洗浄する際の洗浄温度については特に制限はなく、常温〜300℃程度の任意の温度が選択できる。洗浄温度が高くなる程洗浄効率が高くなる傾向があるが、通常は常温〜150℃の洗浄温度で十分効果が得られる。圧力容器中で、有機溶媒の沸点以上の温度で加圧下に洗浄することも可能である。また、洗浄時間についても特に制限はない。洗浄条件にもよるが、バッチ式洗浄の場合、通常5分間以上洗浄することにより十分な効果が得られる。また連続式で洗浄することも可能である。 本発明においては、上記のようにして得られたポリフェニレンスルフィド樹脂を、アルカリ土類金属塩を含む水による洗浄による処理を施しても良い。
ポリフェニレンスルフィド樹脂をアルカリ土類金属塩を含む水で洗浄する場合の具体的方法としては、以下の方法を例示することができる。アルカリ土類金属塩の種類としては特に制限は無いが、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属水酸化物が好ましい例として挙げられ、特に酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムなどの水溶性有機カルボン酸のアルカリ土類金属塩が好ましい。水の温度は、室温〜200℃であることが好ましく、50〜90℃であることがより好ましい。上記水中におけるアルカリ土類金属塩の使用量は乾燥ポリフェニレンスルフィド樹脂1kgに対し0.1g〜50gであることが好ましく、0.5g〜30gであることがより好ましい。洗浄時間としては0.5時間以上が好ましく、1.0時間以上がより好ましい。また好ましい洗浄浴比(乾燥ポリフェニレンスルフィド樹脂単位質量当たりのアルカリ土類金属塩を含む温水使用質量)は洗浄時間、温度にもよるが、乾燥ポリフェニレンスルフィド1kg当たり、上記アルカリ土類金属を含む温水を5kg以上用いて洗浄することが好ましく、10kg以上用いて洗浄することがより好ましい。上限としては特に制限はなく、高くてもよいが、使用量と得られる効果の点から100kg以下であることが好ましい。かかる温水洗浄は複数回行っても良い。
本発明において用いる(A)PAS樹脂は、重合終了後に酸素雰囲気下においての加熱および過酸化物などの架橋剤を添加しての加熱による熱酸化架橋処理により高分子量化して用いることも可能である。
熱酸化架橋による高分子量化を目的として乾式熱処理する場合には、その温度は160〜260℃が好ましく、170〜250℃の範囲がより好ましい。また、酸素濃度は5体積%以上、更には8体積%以上とすることが望ましい。酸素濃度の上限には特に制限はないが、50体積%程度が限界である。処理時間は、0.5〜100時間が好ましく、1〜50時間がより好ましく、2〜25時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
また、熱酸化架橋を抑制し、揮発分除去を目的として乾式熱処理を行うことが可能である。その温度は130〜250℃が好ましく、160〜250℃の範囲がより好ましい。また、この場合の酸素濃度は5体積%未満、更には2体積%未満とすることが望ましい。処理時間は、0.5〜50時間が好ましく、1〜20時間がより好ましく、1〜10時間がさらに好ましい。加熱処理の装置は通常の熱風乾燥機でもまた回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置であってもよいが、効率よく、しかもより均一に処理する場合は、回転式あるいは撹拌翼付の加熱装置を用いるのがより好ましい。
本発明においては、ポリアリーレンスルフィド樹脂以外に配合可能な非晶性樹脂、非繊維状充填材や繊維状充填材の種類及び配合量等にもよるが、流動性、靱性、バリ、塩素原子量のバランスを取るためには2種類以上のポリアリーレンスルフィド樹脂を併用することが好ましい。特に非晶性樹脂、非繊維状充填材や繊維状充填材を配合した場合は、流動性が悪化するため使用するポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度が重要となる。流動性を保持する上で好適なポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度は、5〜20Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)の範囲が好ましく、また、靱性やバリの付与には25〜300Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)の範囲が好ましい。したがって流動性と靭性やバリのバランスを図る上で、両ポリアリーレンスルフィド樹脂を混合して用いることも好ましい態様のひとつである。
溶融粘度5〜20Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)のポリアリーレンスルフィド樹脂と、溶融粘度25〜300Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)のポリアリーレンスルフィド樹脂を混合して用いる場合、その比率は、ポリアリーレンスルフィド樹脂を100質量%として、溶融粘度5〜20Pa・sのポリアリーレンスルフィド樹脂を20〜80質量%、溶融粘度25〜300Pa・sのポリアリーレンスルフィド樹脂を20〜80質量%が好ましく、さらに好ましくはそれぞれ30〜70質量%、特に好ましくは、それぞれ40〜60質量%である。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂とともに(B)非繊維状充填材と(C)繊維状充填材を必須成分として含有する。
かかる(B)非繊維状充填材の具体例としては、タルク、ワラステナイト、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイト、アスベスト、アルミナシリケートなどの珪酸塩、酸化珪素、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスビーズ、ガラスフレーク、ガラス粉、セラミックビーズ、窒化ホウ素、炭化珪素、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などが挙げられ、これらは中空であってもよく、さらにはこれら充填剤を2種類以上併用することも可能である。また、これらの充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用してもよい。中でも炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、カオリン、クレー、タルクなどの珪酸塩、アルミナ、黒鉛が特に好ましい。
また、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の塩素原子含有量測定では、塩素原子含有量の測定値を安定化させる上で非繊維状充填材を配合することが好ましい。本発明においては、コスト、寸法安定性、塩素原子含有量の測定値安定化の観点から、炭酸カルシウムが特に好ましい。本発明における(B)非繊維状充填材の配合量は、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対し、50質量部を超えて100質量部以下が好ましい。
また(C)繊維状充填材の具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウィスカ、酸化亜鉛ウィスカ、炭酸カルシウムウィスカー、ワラステナイトウィスカー、硼酸アルミウィスカ、アラミド繊維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、石コウ繊維、金属繊維などが挙げられ、これらは2種類以上併用することも可能である。また、これら充填材をイソシアネート系化合物、有機シラン系化合物、有機チタネート系化合物、有機ボラン系化合物およびエポキシ化合物などのカップリング剤で予備処理して使用することは、より優れた機械的強度を得る意味において好ましい。中でもガラス繊維、炭素繊維がより好適に用いられる。本発明では、組成物中における塩素原子含有量の低いPAS樹脂の含有率が高いため、(C)繊維状充填材との相溶性が向上する。このため、マトリックスとの密着性が向上し、耐湿熱性に優れたものとなる。この傾向は(C)繊維状充填材にカップリング剤で予備処理するとより顕著なものとなる。
本発明においては、(B)非繊維状充填材と(C)繊維状充填材の合計量が、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対し、100質量部以上200質量部未満含有する事が必要であり、120質量部以上195質量部以下の範囲が好ましく、130質量部以上190質量部以下の範囲がより好ましく選択される。
(B)非繊維状充填材と(C)繊維状充填材の合計量が、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対し、100質量部未満の場合、機械的強度が不十分となり、また200質量部以上の場合、溶融流動性や耐湿熱性が損なわれるため好ましくない。
また本発明では(B)非繊維状充填材の含有量が(C)繊維状充填材の含有量より多い必要がある。(B)非繊維状充填材の含有量が(C)繊維状充填材の含有量より少ない場合、寸法安定性、特に低ソリ性が不十分となるため好ましくない。
さらに本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中では、(D)ガラス転移温度が110℃以上の非晶性樹脂を(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対し、3〜50質量部含有することが好ましく、5〜40質量部の範囲がより好ましく、8〜30質量部の範囲が更に好ましい。ここで、ガラス転移温度は、示差走査熱量計(DSC)を用い、20℃/分の速度で昇温して求められた値である。
かかる(D)ガラス転移温度が110℃以上の非晶性樹脂の具体例としては、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂が例示できるが、なかでもポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂が特に適しており、ポリフェニレンエーテル系樹脂が特に好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、さらに他の樹脂をブレンドして用いてもよい。かかるブレンド可能な樹脂には特に制限はないが、その具体例としては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、芳香族系ナイロンなどのポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシルジメチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、カルボキシル基やカルボン酸エステル基や酸無水物基やエポキシ基などの官能基を有するオレフィン系コポリマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエーテルエステルエラストマー、ポリエーテルアミドエラストマー、ポリアセタール、ポリイミド、ポリケトン樹脂、液晶ポリマー、ポリエーテルケトン樹脂、ポリチオエーテルケトン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、四フッ化ポリエチレン樹脂、エポキシ基含有ポリオレフィン共重合体、ポリスチレン、シンジオタックチックポリスチレンなどが挙げられる。
但し、本発明の効果を十分に発現させるためには、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を構成する樹脂成分の内、70質量%以上が(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂であることが好ましい。さらに、本発明のPAS樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、機械的強度、靱性などの向上を目的に、エポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基、メルカプト基およびウレイド基の中から選ばれた少なくとも1種の官能基を有するシラン化合物を添加してもよい。かかる化合物の具体例としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ基含有アルコキシシラン化合物、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシランなどのメルカプト基含有アルコキシシラン化合物、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシシラン、γ−(2−ウレイドエチル)アミノプロピルトリメトキシシランなどのウレイド基含有アルコキシシラン化合物、γ−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジメトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルエチルジエトキシシラン、γ−イソシアナトプロピルトリクロロシランなどのイソシアナト基含有アルコキシシラン化合物、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有アルコキシシラン化合物、およびγ−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−ヒドロキシプロピルトリエトキシシランなどの水酸基含有アルコキシシラン化合物などが挙げられる。なかでもエポキシ基、アミノ基、イソシアネート基、水酸基を有するアルコキシシランが優れたウェルド強度を得る上で特に好適である。
かかるシラン化合物の好適な添加量は、ポリフェニレンスルフィド樹脂100質量部に対し、0.05〜3質量部の範囲が選択される。
なお、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分、例えば酸化防止剤や耐熱安定剤(ヒンダードフェノール系、ヒドロキノン系、ホスファイト系およびこれらの置換体等)、耐候剤(レゾルシノール系、サリシレート系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ヒンダードアミン系等)、離型剤及び滑剤(モンタン酸及びその金属塩、そのエステル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ステアラミド、各種ビスアミド、ビス尿素及びポリエチレンワックス等)、顔料(硫化カドミウム、フタロシアニン、着色用カーボンブラック等)、染料(ニグロシン等)、結晶核剤(タルク、シリカ、カオリン、クレー等)、可塑剤(p−オキシ安息香酸オクチル、N−ブチルベンゼンスルホンアミド等)、帯電防止剤(アルキルサルフェート型アニオン系帯電防止剤、4級アンモニウム塩型カチオン系帯電防止剤、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレートのような非イオン系帯電防止剤、ベタイン系両性帯電防止剤等)、難燃剤(例えば、赤燐、燐酸エステル、メラミンシアヌレート、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の水酸化物、ポリリン酸アンモニウム、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ポリカーボネート、臭素化エポキシ樹脂あるいはこれらの臭素系難燃剤と三酸化アンチモンとの組み合わせ等)、熱安定剤、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸リチウムなどの滑剤、紫外線防止剤、着色剤、難燃剤および発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の調製方法には特に制限はないが、各原料を単軸あるいは2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダーおよびミキシングロールなど通常公知の溶融混合機に供給して、280〜380℃の温度で混練する方法などを代表例として挙げることができる。原料の混合順序にも特に制限はなく、全ての原材料を配合後上記の方法により溶融混練する方法、一部の原材料を配合後上記の方法により溶融混練し、さらに残りの原材料を配合し溶融混練する方法、あるいは一部の原材料を配合後単軸あるいは2軸の押出機により溶融混練中にサイドフィーダーを用いて残りの原材料を混合する方法などのいずれの方法を用いてもよい。また、少量添加剤成分については、他の成分を上記の方法などで混練しペレット化した後、成形前に添加して成形に供することももちろん可能である。
中でも、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の調製方法としては、2軸の押出機により溶融混練する方法を好適な方法として挙げられる。かかる2軸の押出機により溶融混練する際、そのスクリュー回転数を200〜400rpmに制御することが低ガス化の点で好ましく、230〜350rpmに制御することがより好ましい。
通常、単位時間当たりの吐出量を上げ、生産性を上げる観点からは、押出機のトルク容量が許す限り、スクリュー回転数を高めにする方法が採用される。しかしながら、本発明の樹脂組成物は多量の充填材を含むため、スクリュー回転数を上げすぎると、剪断発熱により樹脂の分解が助長される。本発明では、再生及び記録両用の光ピックアップ部品を安定的に成形可能な樹脂組成物を得ることを目的としており、そのためには剪断発熱により樹脂の分解を極力抑え、得られる樹脂組成物中の分解ガス発生量をできる限り少なくすることが望ましい。その観点から、本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を、2軸の押出機により溶融混練する方法にて調整する際、そのスクリュー回転数を400rpm以下、好ましくは350rpm未満に制御することがより好ましい。但し、スクリュー回転数を200rpm未満にしても、剪断発熱により樹脂の分解抑制効果は小さく、生産性との兼ね合いから200rpm以上にすることが好ましい。
樹脂組成物からのガス発生量の目安としては、330℃、3時間加熱時の付着性ガス成分量を測定する方法も用いることが可能である。具体的には、直径18mm、深さ75mm、肉厚1mmのガラス製サンプル管に樹脂組成物約1.5gを精秤し、かかるガラス製サンプル管を、330℃±0.1℃に調整されたアルミブロックヒーター(装置:サイニクス社製の型番AL−331。直径18.3mm、深さ70mmの円柱状の溝を12箇所有する。)に挿入後、ガラス製サンプル管の開口部に、精秤したガラス板を置く。3時間経過後、ガラス板を取り除き、デシケーター中で室温まで冷却する。このガラス板を再度精秤し、元のガラス板の質量との差からガラス板へのガス分付着量をもとめ、付着量を樹脂組成物量で割り返し、100を掛けて樹脂組成物量当たりのガス付着物量(%)を求めた。
本発明の樹脂組成物は、そのスパイラルフロー長(1mm厚みのスパイラルフロー金型を用い、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形した際の流動長)が50mm以上120mm以下の範囲であることが好ましく、60mm以上90mm以下の範囲であることがより好ましい。ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物のオリゴマーなどの低分子量成分量、塩素原子含有量を低減するには、分子量の高いPAS樹脂を用いることが望ましい。しかし、分子量の高いPAS樹脂を用いると樹脂組成物の溶融流動性が悪化する。光ピックアップ部品は複雑な構造をしており、溶融流動性が低すぎると成形加工時に樹脂に対し強い圧力を掛ける必要が生じ、それにより樹脂組成物成形体に応力歪みが残留し、長期使用時にその残留した応力が開放され、成形体の寸法を悪化させる懸念が生じる。特に高い寸法安定性が要求される、再生及び記録両用の光ピックアップ部品の場合、この残留応力を極力小さくする必要がある。本発明者等は、種々の成形評価の結果、これら、低分子量成分量、塩素原子含有量を低減効果と溶融流動性のバランス点の指標として、スパイラルフロー長(1mm厚みのスパイラルフロー金型を用い、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形した際の流動長)が50mm以上90mm以下の範囲が好ましいことを見出した。
このようにして得られる本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、射出成形、押出成形、ブロー成形、トランスファー成形など各種成形に供することが可能であるが、特に射出成形用途に適している。
以上のようにして得られた本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を溶融成形して得られる成形体(以下、本発明の成形体と略す)は、塩素原子含有量が少なく、溶融流動性に優れた、かつ繰り返し成形時の寸法安定性に優れ、さらに耐湿熱性に優れる。
このため本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、例えばセンサー、LEDランプ、コネクター、コネクター構成部品、コンデンサー構成部品ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント基板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドフォン、小型モーター、磁気ヘッドベース、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、パラボラアンテナ、コンピューター関連部品などに代表される電気・電子部品;VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、オーディオ・レーザディスク・コンパクトディスクなどの音声機器部品、光ピックアップ部品、再生及び記録両用の光ピックアップ部品、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などに代表される家庭、事務電気製品部品;オフィスコンピューター関連部品、電話器関連部品、ファクシミリ関連部品、複写機関連部品、洗浄用治具、モーター部品、ライター、タイプライターなどに代表される機械関連部品:顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などに代表される光学機器、精密機械関連部品;水道蛇口コマ、混合水栓、ポンプ部品、パイプジョイント、水量調節弁、逃がし弁、湯温センサー、水量センサー、水道メーターハウジングなどの水廻り部品;バルブオルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター,ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンシオメーターベース、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係・排気系・吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、燃料ポンプ、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド摩耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンベイン、ワイパーモーター関係部品、デュストリビューター、スタータースイッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウォッシャーノズル、エアコンパネルスイッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、ホーンターミナル、電装部品絶縁板、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、車速センサー、ケーブルライナーなどの自動車・車両関連部品など各種用途に用いることができる。
以下、実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。
[測定方法]
(1)PPS樹脂のクロロホルム抽出量
ソックスレー抽出器を用い、PPSサンプル量約10g、クロロホルム200mlを用い5時間抽出し、その抽出液を50℃で乾燥し、得られた残さを仕込みPPSサンプル量で割り返し、100をかけてパーセンテージ表記としたものである。
(2)PPS樹脂の溶融粘度
320℃、剪断速度1000/sの条件下、東洋精機社製キャピログラフを用いて測定した値である。
(3)曲げ強度
ASTM D790に準じて測定を行った。具体的には次のように測定を行った。本発明の樹脂組成物ペレットを、シリンダー温度320℃に設定した住友−ネスタール社製射出成形機(SG75−HIPRO・MIII)に供給し、射出圧力=成形下限圧力+5Kgf/cmのゲージ圧にて射出成形を行い、幅12.7mm×高さ6.4mm×長さ127mmの試験片を得た。この試験片を用い、23℃、相対湿度50%の雰囲気下、スパン100mm、歪み速度3mm/minの条件で測定を行った。
(4)スパイラルフロー長
1mm厚みのスパイラルフロー金型を用い、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形し、流動長を測定した(使用成形機:住友重機製「SE−30D」)。この流動長の値が大きい程、溶融流動性に優れていると言える。
(5)塩素原子含有量
ポリマー中の塩素原子含有量は、ダイアンインスツルメンツ燃焼ガス吸収装置でポリマーを燃焼させ発生したガスを純粋に吸収させて吸収液を作成し、該吸収液中の塩素イオンをダイオネクスインククロマトグラフで定量して換算した。
(6)耐湿熱性試験
(3)の曲げ試験で用いた試験片を用い、121℃、湿度100%、2気圧条件下でプレッシャークッカーテストを48時間行い、その試験片についてASTM D790に準拠して曲げ強さの測定を行い、初期値に対する保持率(%)を求めた。
[使用原材料]
[参考例1]PPSの重合(PPS−1)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム1722.00g(21.00モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を31900gのNMPで洗浄、濾別した。これを、56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05質量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPSは直鎖状であり、溶融粘度が100Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)、クロロホルム抽出量0.43%、塩素原子含有量1200ppmであった。
[参考例2]PPSの重合(PPS−2)
撹拌機付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8267.37g(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2957.21g(70.97モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11434.50g(115.50モル)、酢酸ナトリウム1722.00g(21.00モル)、及びイオン交換水10500gを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14780.1gおよびNMP280gを留出した後、反応容器を160℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次に、p−ジクロロベンゼン10235.46g(69.63モル)、NMP9009.00g(91.00モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら、0.6℃/分の速度で238℃まで昇温した。238℃で95分反応を行った後、0.8℃/分の速度で270℃まで昇温した。270℃で100分反応を行った後、1260g(70モル)の水を15分かけて圧入しながら250℃まで1.3℃/分の速度で冷却した。その後200℃まで1.0℃/分の速度で冷却してから、室温近傍まで急冷した。
内容物を取り出し、26300gのNMPで希釈後、溶剤と固形物をふるい(80mesh)で濾別し、得られた粒子を56000gのイオン交換水で数回洗浄、濾別した後、0.05質量%酢酸水溶液70000gで洗浄、濾別した。70000gのイオン交換水で洗浄、濾別した後、得られた含水PPS粒子を80℃で熱風乾燥し、120℃で減圧乾燥した。得られたPPSは直鎖状であり、溶融粘度が120Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)、クロロホルム抽出量1.70%、塩素原子含有量2800ppmであった。
[参考例3]PPSの重合(PPS−3)
東レ株式会社製PPS(M3910)を入手し、熱風オーブン中210℃×1時間処理した。得られたPPSは架橋型であり、溶融粘度が15Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)、クロロホルム抽出量2.50%、塩素原子含有量2800ppmであった。
[参考例4]PPSの重合(PPS−4)
東レ株式会社製PPS(L2840)を入手し、熱風オーブン中210℃×9時間処理した。得られたPPSは架橋型であり、溶融粘度が100Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)、クロロホルム抽出量2.20%、塩素原子含有量2500ppmであった。
[参考例5]PPSの重合(PPS−5)
東レ株式会社製PPS(L4230)を入手し、熱風オーブン中210℃×2時間処理した。得られたPPSは架橋型であり、溶融粘度が15Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)、クロロホルム抽出量2.50%、塩素原子含有量4500ppmであった。
[参考例6]PPSの重合(PPS−6)
撹拌機および底栓弁付きの70リットルオートクレーブに、47.5%水硫化ナトリウム8.27kg(70.00モル)、96%水酸化ナトリウム2.91kg(69.80モル)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)11.45kg(115.50モル)、及びイオン交換水10.5kgを仕込み、常圧で窒素を通じながら245℃まで約3時間かけて徐々に加熱し、水14.78kgおよびNMP0.28kgを留出した後、反応容器を200℃に冷却した。仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たりの系内残存水分量は、NMPの加水分解に消費された水分を含めて1.06モルであった。また、硫化水素の飛散量は、仕込みアルカリ金属硫化物1モル当たり0.02モルであった。
次いでp−ジクロロベンゼン10.37kg(70.52モル)、NMP9.37kg(94.50モル)を加え、反応容器を窒素ガス下に密封し、240rpmで撹拌しながら0.6℃/分の速度で200℃から270℃まで昇温した。270℃で60分反応した後、オートクレーブの底栓弁を開放し、窒素で加圧しながら内容物を攪拌機付き容器に15分かけてフラッシュし、250℃でしばらく撹拌して大半のNMPを除去した。
得られた固形物およびイオン交換水76リットルを撹拌機付きオートクレーブに入れ、70℃で30分洗浄した後、ガラスフィルターで吸引濾過した。次いで70℃に加熱した76リットルのイオン交換水をガラスフィルターに注ぎ込み、吸引濾過してケークを得た。
得られたケークおよびイオン交換水90リットルを撹拌機付きオートクレーブに仕込み、2000ppmの酢酸カルシウム一水和物を添加した。オートクレーブ内部を窒素で置換した後、192℃まで昇温し、30分保持した。その後オートクレーブを冷却して内容物を取り出した。
内容物をガラスフィルターで吸引濾過した後、これに70℃のイオン交換水76リットルを注ぎ込み吸引濾過してケークを得た。得られたケークを窒素気流下、120℃で乾燥することにより、乾燥PPSを得た。得られたPPSは直鎖状であり、溶融粘度が15Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)、クロロホルム抽出量2.50%、塩素原子含有量2700ppmであった。
[参考例7]PPSの重合(PPS−7)
東レ株式会社製PPS(M3910)を熱風オーブン中210℃×10時間処理した。得られたPPSは架橋型であり、溶融粘度が60Pa・s(320℃、剪断速度1000/s)、クロロホルム抽出量2.20%、塩素原子含有量2900ppmであった。
(B)非繊維状充填材
B−1:炭酸カルシウム 金平鉱業社製 KSS−1000(D50=4.2μ) 比重 2.7。
(C)繊維状充填材
C−1:ガラス繊維 旭ファイバーグラス社製 T747GH(平均繊維直径10μ) 比重 2.5。
(D)ガラス転移温度が110℃以上の非晶性樹脂
D−1:ポリフェニレンエーテル YPX−100F(三菱エンジニアリングプラスチックス社製、ガラス転移温度205℃)。
[実施例1〜3、比較例1〜2]
表1に示す各成分を表1に示す割合でドライブレンドした後、日本製鋼所社製TEX30型2軸押出機を用い、スクリュー回転数250rpm、シリンダー設定温度が320℃で溶融混練し、ストランドカッターによりペレット化した。120℃で一晩乾燥したペレットを用い、成形、評価に供した。
Figure 2013181043
Figure 2013181043
Figure 2013181043

Claims (5)

  1. (A)ポリアリーレンスルフィド樹脂、(B)非繊維状充填材および(C)繊維状充填材を配合してなるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物であって、(B)非繊維状充填材と(C)繊維状充填材の合計量が、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物中の樹脂成分100質量部に対し、100質量部以上200質量部未満の範囲であり、さらに(B)非繊維状充填材の含有量が(C)繊維状充填材の含有量より多く、かつポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の塩素原子含有量が900ppm以下の範囲であることを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  2. ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を構成する樹脂成分の内、70質量%以上が(A)ポリアリーレンスルフィド樹脂であることを特徴とする請求項1記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  3. (A)ポリアリーレンスルフィド樹脂100質量部に対し、(D)ガラス転移温度が110℃以上の非晶性樹脂を、3〜50質量部の範囲で配合してなることを特徴とする請求項1〜2いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  4. スパイラルフロー長(1mm厚みのスパイラルフロー金型を用い、シリンダー温度320℃、金型温度140℃、射出速度230mm/sec、射出圧力98MPa、射出時間5sec、冷却時間15secの条件で成形した際の流動長)が50mm以上120mm以下の範囲であることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4いずれか一項記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物を溶融成形してなる成形体。
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JP2019504921A (ja) * 2016-02-15 2019-02-21 イニッツ・カンパニー・リミテッドInitz Co.,Ltd. 金属に対して優れた接着性を有するポリアリーレンスルフィド組成物

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