JP2013174548A - 測定装置および測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】測定対象物の複数の位置における特性値を順次測定する場合に適した測定装置および測定方法を提供する。
【解決手段】測定装置は、第1のパルス光に応答してテラヘルツ光を発生する照射部と、照射部から照射されて測定対象物に入射した後のテラヘルツ光を受光するとともに、第2のパルス光に応答して活性化される検出部と、第1のパルス光と第2のパルス光との間の時間差が予め定められた値になったタイミングを検出する同期部と、検出部から出力される検出信号を収集する処理部とを含む。処理部は、同期部により検出されたタイミングを基準として、検出信号から時間波形データを算出する手段と、測定対象物のうち互いに近似した時間波形データが算出された部分を特定する手段とを含む。
【選択図】図5
【解決手段】測定装置は、第1のパルス光に応答してテラヘルツ光を発生する照射部と、照射部から照射されて測定対象物に入射した後のテラヘルツ光を受光するとともに、第2のパルス光に応答して活性化される検出部と、第1のパルス光と第2のパルス光との間の時間差が予め定められた値になったタイミングを検出する同期部と、検出部から出力される検出信号を収集する処理部とを含む。処理部は、同期部により検出されたタイミングを基準として、検出信号から時間波形データを算出する手段と、測定対象物のうち互いに近似した時間波形データが算出された部分を特定する手段とを含む。
【選択図】図5
Description
本発明は、テラヘルツ領域における測定装置および測定方法に関する。
近年、量子エレクトロニクスや半導体工業の進歩によって、テラヘルツ光を応用した様々な技術が提案されている。テラヘルツ光は、主として、周波数が約0.1〜10THz(波長が30μm〜3mm)の電磁波である。このようなテラヘルツ光の応用の一例として、さまざまな材料の物性を評価する技術が提案されている。
テラヘルツ光が存在する遠赤外領域(テラヘルツ領域)の吸収スペクトルは、原子間の振動状態や分子間相互作用(代表的に、ファンデルワールス力)などの低エネルギーの相互作用を反映している。このようなテラヘルツ領域での測定を、医薬品、高分子材料、ナノ材料、有機発光材料といった分野に適用することが期待されている。
このようなテラヘルツ領域での測定方法としては、典型的には、テラヘルツ時間領域分光法(THz−TDS:Terahertz Time Domain Spectroscopy)が採用される。テラヘルツ時間領域分光法では、測定対象物を透過または反射したテラヘルツ光の時間波形データを取得し、この時間波形データからテラヘルツ領域でのスペクトルが算出される。そのため、テラヘルツ時間領域分光法では、測定精度を高めるためには、時間波形データの測定開始タイミングを適切に設定する必要がある。
例えば、特開2009−300109号公報(特許文献1)には、測定精度を向上させ得る光学遅延装置が開示されている。この光学遅延装置は、入射されるパルス光の光路長が短縮される方向又は延長される方向へ移動可能な可動ステージの移動方向に沿って配される等間隔の目盛りを検出したことを示すパルス信号に同期させて、テラヘルツ波検出部からパルス光のパルス間隔ごとに出力される信号を取り込むようにしている。
また、特開2006−266908号公報(特許文献2)には、1回の時間遅延動作でノイズ成分を低減するための複数の時系列波形を得るテラヘルツパルス光測定装置が開示されている。
また、特表2008−510980号公報(特許文献3)には、テラヘルツ時間領域分光法における複数のサンプル点にわたるインパルス波形平均化による散乱関連特性を抑制する方法が開示されている。
テラヘルツ光を用いて測定される測定対象物は、含有されている成分が未知であったり、複数の成分が含まれていたりする場合がある。このような場合には、測定対象物の複数の位置にテラヘルツ光を照射してその特性値を順次測定する必要がある。
本発明の目的は、測定対象物の複数の位置における特性値を順次測定する場合に適した測定装置および測定方法を提供することである。
本発明のある局面に従う測定装置は、第1のパルス光に応答してテラヘルツ光を発生する照射部と、照射部から照射されて測定対象物に入射した後のテラヘルツ光を受光するとともに、第2のパルス光に応答して活性化される検出部と、第1のパルス光と第2のパルス光との間の時間差が予め定められた値になったタイミングを検出する同期部と、検出部から出力される検出信号を収集する処理部とを含む。処理部は、同期部により検出されたタイミングを基準として、検出信号から時間波形データを算出する手段と、測定対象物のうち互いに近似した時間波形データが算出された部分を特定する手段とを含む。
好ましくは、処理部は、互いに近似した複数の時間波形データから対応する特性値を算出する手段をさらに含む。
好ましくは、処理部は、時間波形データについての相関係数に基づいて、互いに近似した時間波形データを決定する。
好ましくは、処理部は、同期部により検出されたタイミングからピーク値が生じるまでの時間に基づいて、互いに近似した時間波形データを決定する。
好ましくは、処理部は、測定対象物についての測定結果に対して、互いに近似した時間波形データが算出された部分をオーバラップ表示する手段をさらに含む。
好ましくは、測定装置は、第1のパルス光を発生する光源と、光源が発生するパルス光の一部から第2のパルス光を発生する変換部と、光源から変換部までの光路上において往復運動することで、光路長を時間的に伸張する遅延部とをさらに含み、同期部は、遅延部が往復運動する経路上に配置された位置検出センサーを含む。
さらに好ましくは、測定装置は、テラヘルツ光が測定対象物に入射する位置を変化させる移動部をさらに含む。
さらに好ましくは、処理部は、遅延部による往復運動を継続した状態で、テラヘルツ光が測定対象物に入射する位置を連続的に変化させることで、測定対象物をトレースする。
本発明のある局面に従う測定方法は、第1のパルス光を発生してテラヘルツ光を測定対象物に入射させるステップと、第2のパルス光を発生して測定対象物に入射した後のテラヘルツ光を受光させるステップと、第1のパルス光と第2のパルス光との間の時間差が予め定められた値になったタイミングをトリガーとして検出信号の収集を開始するステップと、収集された検出信号から時間波形データを算出するステップと、測定対象物のうち互いに近似した時間波形データが算出された部分を特定するステップとを含む。
本発明によれば、測定対象物の複数の位置における特性値を順次測定する場合に適した測定装置および測定方法を実現できる。
本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中の同一または相当部分については、同一符号を付してその説明は繰り返さない。
<A.概要>
本実施の形態に従うテラヘルツ領域測定装置1(以下「測定装置1」とも記す)は、テラヘルツ光を用いて測定対象物(以下「サンプルSMP」とも記す)の特性値(典型的には、吸収スペクトル、複素屈折率のスペクトル、複素誘電率のスペクトルといった光学特性)を測定する。サンプルSMPは、テラヘルツ光が入射する範囲に比較してより広い測定面を有しているものとする。測定装置1は、サンプルSMPの複数の位置にテラヘルツ光を照射して、その特性値を示す時間波形データをそれぞれ算出する。
本実施の形態に従うテラヘルツ領域測定装置1(以下「測定装置1」とも記す)は、テラヘルツ光を用いて測定対象物(以下「サンプルSMP」とも記す)の特性値(典型的には、吸収スペクトル、複素屈折率のスペクトル、複素誘電率のスペクトルといった光学特性)を測定する。サンプルSMPは、テラヘルツ光が入射する範囲に比較してより広い測定面を有しているものとする。測定装置1は、サンプルSMPの複数の位置にテラヘルツ光を照射して、その特性値を示す時間波形データをそれぞれ算出する。
より具体的には、測定装置1は、第1のパルス光に応答してテラヘルツ光を発生する照射部と、照射部から照射されてサンプルSMPに入射した後のテラヘルツ光を受光するとともに、第2のパルス光に応答して活性化される検出部とを含む。そして、測定装置1は、第1のパルス光と第2のパルス光との間の時間差が予め定められた値になったタイミングを検出する同期部を有しており、当該同期部により検出されたタイミングを基準として、検出信号から時間波形データをそれぞれ算出する。これにより、サンプルSMPの複数の位置についてそれぞれ算出される時間波形データの間で、その基準タイミングを互いに同一にできる。
測定装置1は、基準タイミングが互いに同一である複数の時間波形データについて、互いに近似しているか否かを評価する。そして、測定装置1は、サンプルSMPのうち互いに近似した時間波形データが算出された部分、すなわち同一の特性値を有していると考えられる部分を特定する。
このように同一の特性値を有していると考えられる部分を特定することで、例えば、サンプルSMPに含まれている成分の数を判断することができ、あるいは、対応する時間波形データの間で統計的な処理を用いて測定精度を高めることができる。
<B.装置構成>
本実施の形態に従う測定装置1は、テラヘルツ時間領域分光法(THz−TDS:Terahertz Time Domain Spectroscopy)を用いて、サンプルSMPの特性値を測定する。以下では、典型例として、テラヘルツ光をサンプルSMPに入射させ、その透過光から特性値を示す時間波形データを取得する構成について説明する。なお、サンプルSMP表面で反射した反射光から特性値を示す時間波形データを取得する構成を採用してもよい。
本実施の形態に従う測定装置1は、テラヘルツ時間領域分光法(THz−TDS:Terahertz Time Domain Spectroscopy)を用いて、サンプルSMPの特性値を測定する。以下では、典型例として、テラヘルツ光をサンプルSMPに入射させ、その透過光から特性値を示す時間波形データを取得する構成について説明する。なお、サンプルSMP表面で反射した反射光から特性値を示す時間波形データを取得する構成を採用してもよい。
図1は、本発明の実施の形態に従うテラヘルツ領域測定装置1の概略構成図である。図1を参照して、測定装置1は、演算装置2と、信号処理部4と、パルス光源10と、ビームスプリッタ14と、ライトチョッパー32と、エミッタユニット20と、検出ユニット40と、ミラー45,46,47,48,49と、軸外し放物面ミラー50,52,54,56と、サンプル台58と、BBO(Beta Barium Borate)結晶42と、光センサー60と、発振器62と、遅延ステージ70と、位置検出センサー80とを含む。
パルス光源10は、エミッタユニット20および検出ユニット40を駆動するためのパルス光L1を発生する。より具体的には、パルス光源10は、フェムト秒(10−15秒)オーダのパルス幅をもつパルス光L1(波長:1.55μm)を発生し照射するレーザ光源である。なお、パルス光源10におけるパルス光L1の発振周期は、数10MHz(数10n秒周期)オーダとすることが好ましい。
パルス光源10から照射されたパルス光L1は、ビームスプリッタ14に入射すると、ライトチョッパー32へ向かうパルス光L2と、遅延ステージ70へ向かうパルス光L3とに分離される。パルス光L2は、エミッタユニット20へ導かれて、エミッタユニット20を励起するためのポンプ光として利用される。パルス光L3は、検出ユニット40へ導かれて、検出ユニット40を励起するためのプローブ光として利用される。
パルス光L2は、ライトチョッパー32によって予め定められた周波数でオン/オフ変調される。すなわち、ライトチョッパー32の回転周波数に応じて、パルス光L2は、時間的に遮断と透過とが繰り返される。この変調されたパルス光L2は、エミッタユニット20へ入射する。
このライトチョッパー32によるパルス光L2の変調は、測定ノイズを低減することを目的としており、後述するように、ライトチョッパー32の回転周波数に対応する周波数を有するリファレンス信号と検出ユニット40から出力される検出信号との間で積和計算することで、本来の測定値を取得する。すなわち、時間的に変調したテラヘルツ光を用いて測定を行なうことで、テラヘルツ光の測定過程や伝搬過程において侵入する雑音成分の影響を抑制する。
エミッタユニット20は、パルス光L2に応答してテラヘルツ光を発生する照射部である。このエミッタユニット20から発生したテラヘルツ光は、サンプル台58に配置されたサンプルSMPへ入射する。より具体的には、エミッタユニット20から放射されるテラヘルツ光は、軸外し放物面ミラー50および52によって、サンプル台58上に配置されたサンプルSMPの所定位置へ導かれる。軸外し放物面ミラー52は、テラヘルツ光をサンプル台58上の所定位置に集光させる。
サンプルSMPを透過したテラヘルツ光は、軸外し放物面ミラー54および56によって、検出ユニット40へ導かれる。軸外し放物面ミラー56は、テラヘルツ光を検出ユニット40の受光位置に集光させる。
エミッタユニット20は、パルス光とテラヘルツ光との変換作用を生じるデバイスであれば任意の構成を採用できる。例えば、4-dimethylamino-N-methyl-4-stilbazolium tosylate(DAST)などの非線形光学結晶を用いることができる。あるいは、基板上に形成された平行伝送線路と、当該平行伝送線路の一部に形成された微小ダイポールアンテナとからなる光伝導スイッチを採用してもよい。光伝導スイッチとしては、GaAs基板でGaAsエピキタシャル膜を低温成長させて得られるLTGaAs光伝導スイッチを用いることができる。あるいは、InAsやInSbからなる半導体を用いることができる。
サンプル台58は、XYステージとなっており、テラヘルツ光がサンプルSMPに入射する位置を変化させる移動部に相当する。後述するように、サンプル台58は、演算装置2からの指令に従って、テラヘルツ光をサンプルSMPの異なる位置に入射させて、サンプルSMPの面測定を行なう。
一方、ビームスプリッタ14で分離されたパルス光L3は、ミラー45,46,47,48,49を順次伝搬して、検出ユニット40へ導かれる。
パルス光L3の伝搬経路上のミラー46および47は、遅延ステージ70に配置されている。遅延ステージ70は、図示しない駆動機構によって、紙面上下方向に往復運動するように構成されている。遅延ステージ70の往復運動によって、ミラー46および47の位置が紙面上下方向に時間的に変化する。すなわち、遅延ステージ70は、パルス光源10からBBO結晶42までの光路上において往復運動することで、光路長を時間的に伸張する遅延部に相当する。
遅延ステージ70が往復運動する所定位置に位置検出センサー80が配置されており、遅延ステージ70が予め定められた位置に一致したタイミングで、測定開始信号を出力する。この位置検出センサー80の詳細については、後述する。
遅延ステージ70の駆動機構としては、リニアモータやボールネジ機構を採用することができる。遅延ステージ70によって所定の遅延時間(光路差)が与えられたパルス光L4は、BBO結晶42へ入射し、その波長が変換される。BBO結晶42によって波長変換が行なわれたパルス光L5は、検出ユニット40へ導かれる。パルス光L5は、検出ユニット40の構造に応じた適切な波長(本例では、波長:780nm)を有する光である。すなわち、BBO結晶42は、パルス光源10が発生するパルス光の一部からパルス光L5を発生する変換部である。
検出ユニット40は、エミッタユニット20から照射されてサンプルSMPを透過した後のテラヘルツ光を受光する。このとき、検出ユニット40は、パルス光L5に応答して活性化される。すなわち、パルス光L5が入射している期間において、検出ユニット40は、受光しているテラヘルツ光の光量(強度)を示す検出信号を出力する。この検出信号は、信号処理部4へ出力される。
検出ユニット40は、一方面にテラヘルツ光を受光し、他方面にパルス光L5を受光することで、電気信号である検出信号を出力する。この検出信号は、本来的に、テラヘルツ光の強度とパルス光L5の強度との積に応じた値となるが、パルス光L5のオン時の強度は一定とみなすことができるので、検出信号は、実質的にテラヘルツ光の強度を示すものとなる。
検出ユニット40としては、パルス光とテラヘルツ光との変換作用を生じるデバイスであれば任意の構成を採用できる。一例として、基板上に形成された平行伝送線路と、当該平行伝送線路の一部に形成された微小ダイポールアンテナとからなる光伝導スイッチを採用することができる。エミッタユニット20と同様に、ZnTeなどの電気光学結晶を採用することもできる。あるいは、熱型の光強度検出器であるボロメータを採用することもできる。
光センサー60は、ライトチョッパー32のオン/オフタイミングを光学的に検出し、その検出結果を発振器62へ出力する。発振器62は、光センサー60からの検出結果に従って、ライトチョッパー32の回転周波数(パルス光L2の変調周波数)に対応するリファレンス信号を生成する。
検出ユニット40から出力される検出信号、発振器62から出力されるリファレンス信号、および位置検出センサー80から出力される測定開始信号は、信号処理部4へ入力される。信号処理部4は、検出信号およびリファレンス信号をA/D(Analog to Digital)変換し、その変換後のデジタルデータを演算装置2へ出力する。信号処理部4は、典型的には、汎用的なA/D変換ボードで構成することもできる。測定開始信号は、デジタルデータ収集の開始トリガーとして用いられる。すなわち、測定開始信号が入力されると、信号処理部4の内部バッファへのA/D変換後のデジタルデータの蓄積が開始される。
演算装置2は、信号処理部4から出力される値を取り込んで、サンプルSMPの特性値を示す時間波形データを算出する。すなわち、信号処理部4および演算装置2は、検出ユニット40から出力される検出信号(生データ)を収集する。
より具体的には、演算装置2は、ライトチョッパー32の回転周波数に対応するリファレンス信号と検出信号とを積和計算(位相検波計算)することにより、遅延ステージ70の各位置に対応する時間波形データを算出する。さらに、演算装置2は、算出された時間波形データに対して離散フーリエ変換などを行なうことで、周波数領域の特性値(例えば、振幅スペクトルおよび位相スペクトル)を算出する。なお、算出された時間波形データは、その時間軸が伸張されているので、離散フーリエ変換などの演算処理においては、この時間軸を実時間に補正した上で、演算処理が実行される。
<C.遅延ステージ>
本実施の形態に従う測定装置1は、遅延ステージ70を用いることで、サンプルSMPを透過したテラヘルツ光の時間波形データの測定をより容易化する。すなわち、テラヘルツ光の発生に用いられるパルス光L2のパルス幅は、フェムト(10−15)秒オーダであるため、時間波形をそのまま測定することは非常に困難である。そこで、検出ユニット40を活性化するタイミング(位相)を時間的に変化させつつ複数回にわけて測定することで、時間軸を伸張した時間波形データを取得する。
本実施の形態に従う測定装置1は、遅延ステージ70を用いることで、サンプルSMPを透過したテラヘルツ光の時間波形データの測定をより容易化する。すなわち、テラヘルツ光の発生に用いられるパルス光L2のパルス幅は、フェムト(10−15)秒オーダであるため、時間波形をそのまま測定することは非常に困難である。そこで、検出ユニット40を活性化するタイミング(位相)を時間的に変化させつつ複数回にわけて測定することで、時間軸を伸張した時間波形データを取得する。
上述したように、検出ユニット40は、テラヘルツ光およびパルス光L5がともに入射したタイミングで検出信号を出力するので、テラヘルツ光に対するパルス光L5の位相をずらすことで、対応する位相におけるテラヘルツ光の光量(強度)を測定できる。
すなわち、遅延ステージ70が所定速度で紙面上下方向に往復運動することで、ミラー46および47の位置が変化し、これによってビームスプリッタ14から検出ユニット40までの伝搬経路長が時間的に変化する。この遅延ステージ70の位置変化に応じて、パルス光L2によって発生するテラヘルツ光が検出ユニット40に入射するタイミングと、パルス光L5が検出ユニット40に入射するタイミングとの間の時間差(遅延時間)が時間的に変化する。一般的にパルス光L5のパルス幅(10−15秒オーダ)に比較して、テラヘルツ光のパルス幅はより長いので、パルス光L5の位相を周期毎に順次ずらすことで、特定タイミングにおけるテラヘルツ光の強度を測定できる。
具体的な一例として、パルス光源10が50MHzの発振周波数(発振周期20n秒)でパルス光L1を発生し、遅延ステージ70が1mm/秒で移動する場合を考える。この遅延ステージ70の移動によって、パルス光L5の伝搬経路長は、2×1mm/秒で変化することになる。ここで、パルス光L5の伝搬経路は、遅延ステージ70の往復分に相当することになる。測定周期(隣接する測定点の時間間隔)を40ns(40×10−9秒)とすると、テラヘルツ光に対するパルス光L5の位相は、ある測定点とこれに続く測定点との間で、2.67×10−19秒だけずれることになる。この場合には、テラヘルツ光の時間波形データを2.67×10−19秒間隔でサンプリング測定できることを意味する。
<D.同期部>
本実施の形態に従う測定装置1は、サンプルSMPのうち互いに近似した時間波形データが算出された部分を特定する。そのため、算出される時間波形データの間で、測定条件を互いに同一とするための構成が採用される。より具体的には、テラヘルツ光を発生するためのパルス光L2と検出ユニット40を活性化するためのパルス光L5との間の時間差が予め定められた値になったタイミングを検出し、この検出されたタイミングを基準(開始トリガー)として、検出信号およびレファレンス信号の生データの取り込みが開始される。このように取り込まれた生データを用いて、積和計算(位相検波計算)が行なわれることで、各測定における時間波形データが算出される。共通のタイミングを基準(開始トリガー)とすることで、時間波形データ同士の比較や複数の時間波形データについての統計処理を行なうことができる。
本実施の形態に従う測定装置1は、サンプルSMPのうち互いに近似した時間波形データが算出された部分を特定する。そのため、算出される時間波形データの間で、測定条件を互いに同一とするための構成が採用される。より具体的には、テラヘルツ光を発生するためのパルス光L2と検出ユニット40を活性化するためのパルス光L5との間の時間差が予め定められた値になったタイミングを検出し、この検出されたタイミングを基準(開始トリガー)として、検出信号およびレファレンス信号の生データの取り込みが開始される。このように取り込まれた生データを用いて、積和計算(位相検波計算)が行なわれることで、各測定における時間波形データが算出される。共通のタイミングを基準(開始トリガー)とすることで、時間波形データ同士の比較や複数の時間波形データについての統計処理を行なうことができる。
図1に示す測定装置1においては、遅延ステージ70が、テラヘルツ光を発生するためのパルス光L2と検出ユニット40を活性化するためのパルス光L5との間の時間差が予め定められた値になったタイミングを検出する同期部を構成する。
図2は、図1に示すテラヘルツ領域測定装置1の遅延ステージ70のより詳細な構成を示す模式図である。図2(a)を参照して、コーナーリフレクターであるミラー46および47(図1)が設けられた遅延ステージ70は、リニアステージレール81上にスライド可能に配置されたリニアステージ可動子82と連結されている。リニアステージ可動子82がスライドすることにより、遅延ステージ70が往復運動することになる。遅延ステージ70が紙面左方向に移動することで、入射光から反射光へ至る光路に光路差が追加される。
リニアステージ可動子82には、センサー検出板83が配置されている。センサー検出板83を検出するための、原点センサー85、往路トリガーセンサー86、および復路トリガーセンサー87が、リニアステージ可動子82の移動方向(スライド方向)に沿って配置されている。これらのセンサーは、センサー検出板83(リニアステージ可動子82)が対応する位置に到達すると、オフからオンの状態へ遷移する。この状態遷移が測定開始信号として利用される。図1に示す位置検出センサー80としては、往路トリガーセンサー86および復路トリガーセンサー87を含む。位置検出センサー80は、センサー検出板83の通過による透過光の遮断を検出する光学センサーなどを用いることができる。あるいは、センサー検出板83を用いることなく、リニアステージ可動子82と連結されたパルス発生器からのパルス数に基づいて位置を検出するようにしてもよい。
図2(b)は、原点センサー85、往路トリガーセンサー86、および復路トリガーセンサー87の位置関係を示す図である。
まず、本実施の形態に従う測定装置1における時間波形データの算出手順についての理解を容易化するため、一般的な時間波形データの算出手順について説明する。
一般的な時間波形データの算出手順としては、ライトチョッパー32の回転周波数に対応するリファレンス信号と検出信号とを積和計算する位相検波回路が採用される。この位相検波回路は、遅延ステージ70の位置に依存することなく、時間波形データの算出処理を連続的に実行する。
演算装置2は、遅延ステージ70の移動開始タイミングを基準にして、位相検波回路から出力される位相検波データ(光強度)を周期的に収集することで、一つの時間波形データを算出する。具体的には、まず、位置再現性を確保するため、原点センサー85を用いて遅延ステージ70を初期化する。初期化後、遅延ステージ70は、初期位置P01への移動を開始する。演算装置2は、遅延ステージ70を初期位置P01から移動位置P00へ一定速度で移動させる。遅延ステージ70の初期位置P01から移動位置P00への移動中、演算装置2は、位相検波回路から出力される位相検波データを周期的に収集することで、一つの時間波形データを算出する。遅延ステージ70が移動位置P00へ到達すると、初期位置P01へ戻される。なお、遅延ステージ70が初期位置P01へ戻る過程においては、位相検波データの収集は行なわれない。
同様の手順で、初期位置P01からの動作が繰り返される。
しかしながら、上述したような一般的な時間波形データの算出手順では、以下のような不利益がある。
しかしながら、上述したような一般的な時間波形データの算出手順では、以下のような不利益がある。
遅延ステージ70を比較的低速で動作させる場合には、測定毎の時間波形データの開始点はずれることなく一致し得る。しかしながら、遅延ステージ70を比較的高速で動作させた場合には、光強度を測定できる期間が短くなり、それに伴って、その測定期間の長さに対する遅延ステージ70の動作開始タイミングのバラツキによる影響が大きくなる。その結果、測定毎に算出される時間波形データに現れるピーク位置にずれを生じることとなる。
したがって、上述したような一般的な時間波形データの算出手順では、遅延ステージ70の動作速度を高めて測定時間を短縮化しようとすると、時間波形データの時間軸再現性が悪化する。その結果、時間波形データ同士を比較したり積算したりすることができない。
そこで、本実施の形態に従う測定装置1は、検出信号およびレファレンス信号を生データとして取り込み、その後、必要な処理を行なう構成を採用する。この生データの取り込み開始を示す測定開始信号としては、遅延ステージ70に取り付けた位置検出センサー80(往路トリガーセンサー86および復路トリガーセンサー87)からの信号を用いる。すなわち、パルス光L2とパルス光L5との間の時間差が予め定められた値になったタイミングを検出する同期部は、遅延ステージ70が往復運動する経路上に配置された位置検出センサー80を含む。
より具体的には、図2(b)に示すように、往路トリガーセンサー86は、初期位置P01から移動位置P00側へ所定距離だけ離れた位置に設けられ、復路トリガーセンサー87は、移動位置P00から初期位置P01側へ所定距離だけ離れた位置に設けられる。
遅延ステージ70が初期位置P01から移動位置P00へ移動する場合には、往路トリガーセンサー86からの信号が測定開始信号として用いられる。また、遅延ステージ70が移動位置P00から初期位置P01へ移動する場合には、復路トリガーセンサー87からの信号が測定開始信号として用いられる。それぞれの信号(測定開始信号)は、信号処理部4(典型的には、A/D変換ボード)の外部トリガーとして入力される。A/D変換ボードは、この外部トリガーに応じて、検出信号およびレファレンス信号の取り込みを開始する。
このように、検出信号およびレファレンス信号の生データを取込むことで、測定開始から終了までのすべての検出信号を時間波形データの算出に使用できるので、S/N(Signal to Noise)比を向上させることができる。
また、位置検出センサー80(往路トリガーセンサー86および復路トリガーセンサー87)からの信号を測定開始信号とすることで、遅延ステージ70の移動速度を高めても、時間軸再現性が維持された時間波形データを算出できる。
すなわち、遅延ステージ70を比較的高速で動作させるとともに、往路での測定(初期位置P01から移動位置P00への移動)と、復路での測定(移動位置P00から初期位置P01への移動)との両方で、時間再現性のある時間波形データをそれぞれで算出できる。このように、遅延ステージ70の往路および復路の両方で時間波形データを算出できるので、サンプルSMPの面測定を短時間で行なうことができる。
なお、往路において算出された時間波形データと復路において算出された時間波形データとの間の時間差は一定であるので、それぞれの経路において取り込まれた生データに対して、既知のオフセット時間で補正することで、時間軸を一致させることができる。
<E.演算装置>
次に、本実施の形態に従う演算装置2について説明する。
次に、本実施の形態に従う演算装置2について説明する。
図3は、本発明の実施の形態に従う演算装置2の概略のハードウェア構成を示す模式図である。図3を参照して、演算装置2は、代表的にコンピュータによって実現され、オペレーティングシステム(OS:Operating System)を含む各種プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)200と、CPU200でのプログラムの実行に必要なデータを一時的に記憶するメモリ212と、CPU200で実行されるプログラムを不揮発的に記憶するハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)210とを含む。また、ハードディスク210には、後述するような処理を実現するためのプログラムが予め記憶されており、このようなプログラムは、CD−ROMドライブ214によって、CD−ROM(Compact Disk-Read Only Memory)214aなどから読取られる。
CPU200は、キーボードやマウスなどからなる入力部208を介してユーザなどからの指示を受け取るとともに、プログラムの実行によって測定される測定結果などをディスプレイ204などへ出力する。また、CPU200は、インターフェイス部206を介して、サンプル台58および遅延ステージ70などとの間でデータ通信を行なう。
信号処理部4を汎用的なA/D変換ボードで構成する場合には、バス202を介して、CPU200と直接的に接続されるようにしてもよい。
なお、機能の一部または全部を専用のハードウェアで実現してもよい。
<F.面測定>
本実施の形態に従う測定装置2は、サンプルSMPの面測定に好適である。より具体的には、XYステージであるサンプル台58上に配置されたサンプルSMPをX軸方向およびY軸方向に適宜移動させつつ、サンプルSMPの複数の位置(以下「測定ポイント」とも記す)についての特性値を測定する。以下、このような面測定を行なう場合の制御構造および制御手順を典型例として説明する。
<F.面測定>
本実施の形態に従う測定装置2は、サンプルSMPの面測定に好適である。より具体的には、XYステージであるサンプル台58上に配置されたサンプルSMPをX軸方向およびY軸方向に適宜移動させつつ、サンプルSMPの複数の位置(以下「測定ポイント」とも記す)についての特性値を測定する。以下、このような面測定を行なう場合の制御構造および制御手順を典型例として説明する。
図4は、本発明の実施の形態に従う測定装置1によるサンプルSMPの面測定の概要を示す模式図である。図4に示すように、サンプルSMPの測定面に対して、テラヘルツ光が入射する測定ポイントをX軸方向およびY軸方向に順次移動させて、測定を行なう。
上述したように、検出信号(時間波形データ)の測定には、遅延ステージ70を少なくとも一方向に移動させる必要があるため、原則として、サンプルSMPの測定面の各測定ポイントにおいて、テラヘルツ光が入射している状態を保持したまま、遅延ステージ70を移動させて検出信号を測定することになる。そのため、サンプルSMPの面測定に要する総測定時間は、おおよそ以下のようになる。
(総測定時間)=(各測定ポイントでの測定時間+次の測定ポイントへの移動時間)×測定ポイント数
そのため、総測定時間を短縮化するため、各サンプル点で静止することなく、サンプルSMPの測定面の走査を連続的に行ないつつ、検出信号を測定してもよい。すなわち、遅延ステージ70による往復運動を継続した状態で、テラヘルツ光がサンプルSMPへ入射する位置を連続的に変化させることで、サンプルSMPをトレースしてもよい。この場合には、測定された検出信号に関連付けられる測定ポイントを、当該測定された検出信号の開始タイミングから終了タイミングまでの軌跡の中心位置などに関連付けることで、各サンプル点で静止させた場合と同様の処理を適用できる。
そのため、総測定時間を短縮化するため、各サンプル点で静止することなく、サンプルSMPの測定面の走査を連続的に行ないつつ、検出信号を測定してもよい。すなわち、遅延ステージ70による往復運動を継続した状態で、テラヘルツ光がサンプルSMPへ入射する位置を連続的に変化させることで、サンプルSMPをトレースしてもよい。この場合には、測定された検出信号に関連付けられる測定ポイントを、当該測定された検出信号の開始タイミングから終了タイミングまでの軌跡の中心位置などに関連付けることで、各サンプル点で静止させた場合と同様の処理を適用できる。
あるいは、粗密の複数段階で測定ポイントを設定してもよい。すなわち、最初の面測定においては、比較的広い間隔で測定ポイントを設定した上で、検出信号を測定し、次の面測定においては、重点的に調査すべき範囲を特定して、その範囲内に比較的狭い間隔で測定ポイントを設定した上で、検出信号を再度測定する。このような方法を採用することで、測定時間を短縮しつつ、サンプルSMPの必要な範囲についての情報を確実に測定できる。
<G.制御構造>
次に、本実施の形態に従う測定装置1の制御構造について説明する。
次に、本実施の形態に従う測定装置1の制御構造について説明する。
図5は、本発明の実施の形態に従う測定装置1の制御構造を示すブロック図である。図5に示すブロックのうち信号処理部4を除く各ブロックは、典型的には、演算装置2のCPU200がメモリ212やハードディスク210などのハードウェアリソースを使用してプログラムを実行することで実現される。
図5を参照して、測定装置1は、その制御構造として、バッファ100と、位相検波モジュール106と、時間波形データ格納部108と、サンプル台制御モジュール112と、グループ判別モジュール114と、統計処理モジュール120と、周波数変換モジュール122と、特性値算出モジュール124とを含む。
開始トリガーとしての測定開始信号が信号処理部4へ入力されて、信号処理部4がリファレンス信号および検出信号(デジタルデータ)のそれぞれの出力を開始すると、バッファ100は、それらのデジタルデータを格納する。より具体的には、バッファ100は、リファレンス信号格納領域102と、検出信号格納領域104とを含み、それぞれの信号の時間波形データを格納する。
位相検波モジュール106は、リファレンス信号格納領域102に格納されたリファレンス信号と、検出信号格納領域104に格納された検出信号との積和計算(位相検波計算)を実行することにより、サンプルSMPの測定ポイントの特性値を示す時間波形データを算出する。上述したように、位相検波モジュール106に入力されるリファレンス信号および検出信号は、開始トリガーの入力タイミングを基準とした時系列データとなる。すなわち、位相検波モジュール106は、同期部として機能する位置検出センサー80により検出されたタイミングを基準として、検出信号から時間波形データを算出する。
サンプル台制御モジュール112は、サンプル台58へ位置指令を与えて、サンプルSMP上に測定ポイントを適宜設定する。サンプル台制御モジュール112は、測定ポイントを示す座標値(x,y)を時間波形データ格納部108へ出力する。
時間波形データ格納部108は、位相検波モジュール106によって算出された時間波形データを、設定されている測定ポイントの座標値と関連付けて格納する。すなわち、時間波形データ格納部108には、測定ポイントの座標値(x,y)と関連付けられた時間波形データ110(以下「f(t:x,y)」とも記す)が格納される。
グループ判別モジュール114は、サンプルSMPに設定される複数の測定ポイントの各々について算出された時間波形データ110に対して、その時間波形の近似性などに基づいてグループ分け処理を行なう。すなわち、グループ判別モジュール114は、サンプルSMPのうち互いに近似した時間波形データが算出された部分を特定する。そして、グループ判別モジュール114は、サンプルSMPの測定ポイントの各々がいずれのグループに属するのかを示すグループ区分情報を統計処理モジュール120へ出力する。
より具体的には、グループ判別モジュール114は、相関係数算出モジュール116と、ピーク時間算出モジュール118とを含む。
相関係数算出モジュール116は、時間波形データについての相関係数を算出する。ピーク時間算出モジュール118は、同期部として機能する位置検出センサー80により検出されたタイミングからピーク値が生じるまでの時間(ピーク時間)を算出する。グループ判別モジュール114は、時間波形データについての相関係数、および/または、ピーク時間に基づいて、互いに近似した時間波形データを決定する。これらの処理について、図6を参照して、より詳細に説明する。
図6は、本発明の実施の形態に従う測定装置1におけるグループ判別に係る処理を説明するための図である。図6を参照して、相関係数算出モジュール116は、2つの時間波形データの波形全体についての相関係数を算出する。ピーク時間算出モジュール118は、各時間波形データについて、開始トリガーが与えられたタイミングから最初のピークが現れるまでの時間を算出する。
図5に戻って、統計処理モジュール120は、グループ判別モジュール114からのグループ区別情報に基づいて、同一のグループに属する時間波形データ110について統計処理を行なう。より具体的には、統計処理モジュール120は、同一のグループに属する時間波形データ110の間で平均化処理を行なって、当該グループの特性値を示す時間波形データを算出する。すなわち、統計処理モジュール120は、グループ別に、各グループを代表する時間波形データを出力する。
周波数変換モジュール122は、統計処理モジュール120から出力される時間波形データに対して、周波数変換を行なって、周波数領域の情報を生成する。典型的には、周波数変換モジュール122は、時間波形データに対して離散フーリエ変換(DFT:Discrete Fourier Transform)を行なって、振幅スペクトルおよび位相スペクトルを算出する。
特性値算出モジュール124は、周波数変換モジュール122で算出された振幅スペクトルおよび位相スペクトルに基づいて、各グループの特性値を算出する。より具体的には、特性値算出モジュール124は、算出された振幅スペクトルに基づいて、対応するグルールの吸収スペクトルを算出する。あるいは、特性値算出モジュール124は、算出された振幅スペクトルおよび位相スペクトルに基づいて、サンプルSMPの厚みを用いて、複素屈折率および/または複素誘電率のスペクトルを算出する。特性値算出モジュール124は、算出されたそれぞれの測定結果を出力する。
すなわち、統計処理モジュール120、周波数変換モジュール122、および特性値算出モジュール124は、互いに近似した複数の時間波形データから対応するグループについての特性値を算出する。
<H.測定手順および解析手順>
次に、本実施の形態に従う測定装置1を用いた測定手順および解析手順について説明する。
次に、本実施の形態に従う測定装置1を用いた測定手順および解析手順について説明する。
図7は、本発明の実施の形態に従う測定装置1を用いた測定手順を示すフローチャートである。図8は、本発明の実施の形態に従う測定装置を用いた解析手順を示すフローチャートである。図7および図8に示す測定手順および解析手順についての理解を容易にするため、一例として、図9に示すようなサンプルSMPに対する実際の測定結果と併せてその内容を説明する。
(h1:サンプルSMPの一例)
図9は、本発明の実施の形態に従う測定装置1を用いて特性値を測定したサンプルSMPの一例を示す図である。図9に示すように、サンプルSMPの一例として、ポリエチレンをベースとして、D−マルトース、D−ラクトース、L−グルタミン酸をそれぞれ重量比25%で混合して錠剤化したものを用いた。ベースのポリエチレンのみの錠剤を含めて4種類を図9に示すように配置し、ポリエチレンの袋で覆い、かつ各錠剤間をホッチキスで止めたものを用いた。
図9は、本発明の実施の形態に従う測定装置1を用いて特性値を測定したサンプルSMPの一例を示す図である。図9に示すように、サンプルSMPの一例として、ポリエチレンをベースとして、D−マルトース、D−ラクトース、L−グルタミン酸をそれぞれ重量比25%で混合して錠剤化したものを用いた。ベースのポリエチレンのみの錠剤を含めて4種類を図9に示すように配置し、ポリエチレンの袋で覆い、かつ各錠剤間をホッチキスで止めたものを用いた。
(h2:測定処理)
図10は、本発明の実施の形態に従う測定装置1を用いたサンプルSMPの面測定の手順を示す図である。図10に示すように、測定ポイントをX軸に沿って順次更新(移動)するとともに、測定ポイントの更新が完了すると即座に遅延ステージ70の往復運動を開始し、往路および復路のそれぞれで算出された時間波形データを用いて、対応する測定ポイントの特性値を算出する。すなわち、サンプル台58(XYステージ)を目的の測定ポイントまで移動させた後に停止させ、当該測定ポイントにおける時間波形データの測定(A/D測定)を行なう。この場合、遅延ステージ70の一動作(往路または復路)で1つの測定ポイントについての時間波形データが取得される。
図10は、本発明の実施の形態に従う測定装置1を用いたサンプルSMPの面測定の手順を示す図である。図10に示すように、測定ポイントをX軸に沿って順次更新(移動)するとともに、測定ポイントの更新が完了すると即座に遅延ステージ70の往復運動を開始し、往路および復路のそれぞれで算出された時間波形データを用いて、対応する測定ポイントの特性値を算出する。すなわち、サンプル台58(XYステージ)を目的の測定ポイントまで移動させた後に停止させ、当該測定ポイントにおける時間波形データの測定(A/D測定)を行なう。この場合、遅延ステージ70の一動作(往路または復路)で1つの測定ポイントについての時間波形データが取得される。
サンプルSMPの測定面におけるテラヘルツ光の入射位置は、上述の図4に示すように変化するものとする。
これらの手順は、図7のステップS100〜S126として示される。すなわち、演算装置2は、測定開始の指令を受けると、サンプル台58へ位置指令を与えて、サンプルSMPを第1番目の測定ポイントへ移動させる(ステップS100)。これにより、サンプルSMPの第1番目の測定ポイントへテラヘルツ光が入射するようになる。このとき、演算装置2は、必要に応じて、パルス光源10を起動してパルス光L1の発生を開始させる。すなわち、演算装置2は、パルス光を発生してテラヘルツ光をサンプルSMPに入射させるとともに、パルス光を発生してサンプルSMPに入射した後のテラヘルツ光を受光させる。
続いて、演算装置2は、信号処理部4へ制御指令を与えて、信号処理部4によるA/D変換を開始させる(ステップS102)。続いて、演算装置2は、遅延ステージ70へ往路側の移動の開始指令を与える(ステップS104)。これにより、演算装置2が往路側への移動を開始する。この状態において、演算装置2および信号処理部4は、測定開始信号(開始トリガー)の入力待ちになる。
信号処理部4は、往路トリガーセンサー86(図2)からの測定開始信号(開始トリガー)が入力されたか否かを判断する(ステップS106)。往路トリガーセンサー86からの測定開始信号が入力されていない場合(ステップS106においてNOの場合)、ステップS106以下の処理が繰り返される。
これに対して、往路トリガーセンサー86からの測定開始信号が入力された場合(ステップS106においてYESの場合)、信号処理部4は、検出信号およびリファレンス信号のA/D変換後のデジタルデータ(生データ)の内部バッファへの蓄積を開始するとともに、演算装置2は、当該生データの収集を開始する(ステップS108)。遅延ステージ70の往路における生データの収集が完了すると、演算装置2は、サンプル台58へ位置指令を与えて、サンプルSMPを第2番目の測定ポイントへ移動させる(ステップS110)。これにより、サンプルSMPの第2番目の測定ポイントへテラヘルツ光が入射するようになる。
このサンプルSMPの移動と並行して、演算装置2は、ステップS108において収集した検出信号とリファレンス信号とを積和計算(位相検波計算)することにより、往路についての時間波形データを算出する(ステップS112)。
続いて、演算装置2は、信号処理部4へ制御指令を与えて、信号処理部4によるA/D変換を開始させる(ステップS114)。続いて、演算装置2は、遅延ステージ70へ復路側の移動の開始指令を与える(ステップS116)。これにより、演算装置2が復路側への移動を開始する。この状態において、演算装置2および信号処理部4は、測定開始信号(開始トリガー)の入力待ちになる。
信号処理部4は、復路トリガーセンサー87(図2)からの測定開始信号(開始トリガー)が入力されたか否かを判断する(ステップS118)。復路トリガーセンサー87からの測定開始信号が入力されていない場合(ステップS118においてNOの場合)、ステップS118以下の処理が繰り返される。
これに対して、復路トリガーセンサー87からの測定開始信号が入力された場合(ステップS118においてYESの場合)、信号処理部4は、検出信号およびリファレンス信号のA/D変換後のデジタルデータ(生データ)の内部バッファへの蓄積を開始するとともに、演算装置2は、当該生データの収集を開始する(ステップS120)。遅延ステージ70の復路における生データの収集が完了すると、演算装置2は、サンプルSMPのすべての測定ポイントについての測定が完了したか否かを判断する(ステップS122)。測定が完了していない測定ポイントがある場合(ステップS122においてNOの場合)には、演算装置2は、サンプル台58へ位置指令を与えて、サンプルSMPを次の測定ポイントへ移動させる(ステップS124)。そして、ステップS102以下の処理が繰り返される。
このサンプルSMPの移動と並行して、演算装置2は、ステップS120において収集した検出信号とリファレンス信号とを積和計算(位相検波計算)することにより、復路についての時間波形データを算出する(ステップS126)。
すべての測定ポイントについての測定が完了した場合(ステップS122においてYESの場合)には、サンプルSMPに対する測定処理は完了し、後述する解析処理が開始される。
このように、演算装置2は、テラヘルツ光を発生するためのパルス光とテラヘルツ光を受光するためのパルス光との間の時間差が予め定められた値になったタイミングをトリガーとして検出信号の収集を開始する。
図11は、図9に示すサンプルSMPから測定された時間波形データの一例を示す図である。図11(a)には、サンプルSMPの各測定ポイントにおける時間波形データをイメージ化した図を示し、図11(b)には、ある測定ポイントの時間波形データを示す。
このように、サンプルSMPのXY平面上の各測定ポイントについて、時間波形データが算出される。すなわち、演算装置2は、収集された検出信号から時間波形データを算出する。
(h3:解析処理)
演算装置2は、解析処理として、まずグループ分け処理を実行する。本実施の形態においては、一例として、時間波形データについての相関係数、または、位置検出センサー80により検出されたタイミングからピーク値が生じるまでの時間(ピーク時間)に基づいて、互いに近似した時間波形データを決定する。
演算装置2は、解析処理として、まずグループ分け処理を実行する。本実施の形態においては、一例として、時間波形データについての相関係数、または、位置検出センサー80により検出されたタイミングからピーク値が生じるまでの時間(ピーク時間)に基づいて、互いに近似した時間波形データを決定する。
図8を参照して、演算装置2は、グループ分け処理に使用されるパラメータを判断する(ステップS128)。ピーク値がグループ分け処理に使用されることが選択されると(ステップS128において「ピーク値」)、ステップS130〜S138の処理が実行される。これに対して、相関係数がグループ分け処理に使用されることが選択されると(ステップS128において「相関係数」)、ステップS140〜S148の処理が実行される。
ピーク値に基づくグループ分け処理が選択された場合には、演算装置2は、算出した各時間波形データについて、開始トリガーが与えられてからピーク値が生じるまでの時間(ピーク時間)を算出する(ステップS130)。演算装置2は、任意の測定ポイントを注目ポイントに設定し(ステップS132)、当該注目ポイントの時間波形データとほぼ同一のピーク時間を有する時間波形データが測定された測定ポイントを、注目ポイントと同一のグループに属すると判断する(ステップS134)。ステップS134の処理が完了すると、演算装置2は、いずれのグループにも属していない測定ポイントのうち、未だに注目ポイントに設定されていないものがあるか否かを判断する(ステップS136)。未だに注目ポイントに設定されていないものがある場合(ステップS136においてYESの場合)には、演算装置2は、新たな測定ポイントを注目ポイントに設定し(ステップS138)、ステップS134以下の処理を再度実行する。
これに対して、いずれのグループにも属していない測定ポイントのすべてが注目ポイントに設定済みである場合(ステップS136においてNOの場合)には、グループ分け処理は終了する。
一方、相関係数に基づくグループ分け処理が選択された場合には、演算装置2は、任意の測定ポイントを注目ポイントに設定し(ステップS140)、当該注目ポイントの時間波形データと他の測定ポイントの時間波形データとの間の相関係数をそれぞれ算出する(ステップS142)。演算装置2は、ステップS142において算出された相関係数が相対的に高い測定ポイントを、注目ポイントと同一のグループに属すると判断する(ステップS144)。ステップS144の処理が完了すると、演算装置2は、いずれのグループにも属していない測定ポイントのうち、未だに注目ポイントに設定されていないものがあるか否かを判断する(ステップS146)。未だに注目ポイントに設定されていないものがある場合(ステップS146においてYESの場合)には、演算装置2は、新たな測定ポイントを注目ポイントに設定し(ステップS148)、ステップS142以下の処理を再度実行する。
これに対して、いずれのグループにも属していない測定ポイントのすべてが注目ポイントに設定済みである場合(ステップS146においてNOの場合)には、グループ分け処理は終了する。
図12は、図9に示すサンプルSMPから測定された各グループを代表する時間波形データの一例を示す図である。図13は、図9に示すサンプルSMPのグループ分け処理の結果を示す図である。
図9に示すサンプルSMPには4種類の成分が含まれているので、図12に示すように、それぞれの成分を代表する時間波形データが選択され、それぞれの時間波形データに近似した時間波形データを有する部分が同一のグループに区分けされる。
図13には、図12に示す時間波形データの各々を基準として算出された相関係数をイメージ化した図を示す。図13に示すスケールは、相関係数の大きさを意味する。さらに、図13に示すように、同一のグループに属する領域が他の領域と区別可能な態様で表示されてもよい。すなわち、演算装置2は、サンプルSMPのうち互いに近似した時間波形データが算出された部分を特定する。
さらに、図13に示すように、演算装置2は、サンプルSMPについての測定結果に対して、互いに近似した時間波形データが算出された部分(図13の□表示)をディスプレイ上などでオーバラップ表示してもよい。
以上のようにグループ分け処理が完了すると、各グループに属する時間波形データに対して統計処理が行なわれた後、ステップS150〜S160に示すように、特性値の算出処理が実行される。
図8を参照して、演算装置2は、サンプルSMPの第1番目のグループに属する時間波形データの間で平均化処理を行ない(ステップS150)、続いて、平均化後の時間波形データに対して周波数変換処理(典型的には、離散フーリエ変換処理)を行ない、振幅スペクトルおよび位相スペクトルを算出する(ステップS152)。
続いて、演算装置2は、ステップS152において算出された振幅スペクトルから吸収スペクトルを算出する(ステップS154)。さらに、演算装置2は、サンプルSMPの厚みを用いて、ステップS152において算出された振幅スペクトルおよび位相スペクトルから、サンプルSMPの複素屈折率および/または複素誘電率のスペクトルを算出する(ステップS156)。
続いて、演算装置2は、サンプルSMPのすべてのグループについて特性値の算出が完了したか否かを判断する(ステップS158)。特性値の算出が完了していないグループがある場合(ステップS158においてNOの場合)には、演算装置2は、次のグループを選択し、ステップS150以下の処理を再度実行する。
これに対して、すべてのグループについての特性値の算出が完了した場合(ステップS158においてYESの場合)には、算出したそれぞれのグループについての特性値を出力(ステップS160)し、処理は終了する。
図14は、図9に示すサンプルSMPから測定されたグループ別の測定データの一例を示す図である。図14(a)は、グループ内で平均化した時間波形データを示し、図14(b)は、図14(a)に示す平均化した時間波形データから算出された振幅スペクトルを示し、図14(c)に示す平均化した時間波形データから算出された位相スペクトルを示す。
図15は、図9に示すサンプルSMPから測定されたグループ別の吸収スペクトルの一例を示す図である。
図14および図15に示すように、同一のグループに属する時間波形データを統計処理することで、よりノイズの少ない測定結果を得ることができる。
<I.測定手順の変形例>
上述の図10に示すフローチャートにおいては、サンプル台58(XYステージ)を目的の測定ポイントまで移動させた後に停止させ、当該測定ポイントにおける時間波形データの測定(A/D測定)を行なう測定手順について説明した。これに対して、サンプル台58(XYステージ)をいずれかの軸(典型的には、X軸)に沿って更新(移動)させながら、時間波形データの測定(A/D測定)を行なってもよい。すなわち、測定ポイントの更新と時間波形データの測定とを並行して行う。このような測定方法を採用することで、総測定時間をより短縮化できる。この場合にも、遅延ステージ70の一動作(往路または復路)で1つの測定ポイント(厳密には、測定中も移動しているので、ある測定ポイントを中心とする所定範囲)についての時間波形データが取得される。
上述の図10に示すフローチャートにおいては、サンプル台58(XYステージ)を目的の測定ポイントまで移動させた後に停止させ、当該測定ポイントにおける時間波形データの測定(A/D測定)を行なう測定手順について説明した。これに対して、サンプル台58(XYステージ)をいずれかの軸(典型的には、X軸)に沿って更新(移動)させながら、時間波形データの測定(A/D測定)を行なってもよい。すなわち、測定ポイントの更新と時間波形データの測定とを並行して行う。このような測定方法を採用することで、総測定時間をより短縮化できる。この場合にも、遅延ステージ70の一動作(往路または復路)で1つの測定ポイント(厳密には、測定中も移動しているので、ある測定ポイントを中心とする所定範囲)についての時間波形データが取得される。
図16は、本発明の実施の形態に従う測定装置1を用いたサンプルSMPの面測定の手順の変形例を示す図である。図16を参照して、演算装置2は、測定開始の指令を受けると、サンプル台58へ位置指令を与えて、サンプルSMPの第1番目の測定ポイントへ移動を指示する(ステップS200)。これにより、サンプル台58は、X軸についての測定範囲内での移動を開始する。このとき演算装置2は、必要に応じて、パルス光源10を起動してパルス光L1の発生を開始させる。
続いて、演算装置2は、信号処理部4へ制御指令を与えて、信号処理部4によるA/D変換を開始させる(ステップS202)。この状態において、演算装置2および信号処理部4は、測定開始信号(開始トリガー)の入力待ちになる。
続いて、演算装置2は、サンプルSMPが第1番目の測定ポイントへ到着したか否かを判断する(ステップS204)。サンプルSMPが第1番目の測定ポイントへ到着していない場合(ステップS204においてNOの場合)、ステップS204の処理が繰り返される。
これに対して、サンプルSMPが第1番目の測定ポイントへ到着した場合(ステップS204においてYESの場合)、演算装置2は、遅延ステージ70へ往路側の移動の開始指令を与える(ステップS206)。これにより、演算装置2が往路側への移動を開始する。なお、サンプルSMP(サンプル台58)は、第1番目の測定ポイントへ到着した後も、第1番目の測定ポイントへ留まることなく移動を継続している。
信号処理部4は、往路トリガーセンサー86(図2)からの測定開始信号(開始トリガー)が入力されたか否かを判断する(ステップS208)。往路トリガーセンサー86からの測定開始信号が入力されていない場合(ステップS208においてNOの場合)、ステップS208以下の処理が繰り返される。
これに対して、往路トリガーセンサー86からの測定開始信号が入力された場合(ステップS208においてYESの場合)、信号処理部4は、検出信号およびリファレンス信号のA/D変換後のデジタルデータ(生データ)の内部バッファへの蓄積を開始するとともに、演算装置2は、当該生データの収集を開始する(ステップS210)。遅延ステージ70の往路における生データの収集が完了すると、演算装置2は、サンプルSMPが第2番目の測定ポイントへ到着したか否かを判断する(ステップS212)。
このサンプルSMPが第2番目の測定ポイントへ到着したか否かの判断と並行して、演算装置2は、ステップS210において収集した検出信号とリファレンス信号とを積和計算(位相検波計算)することにより、往路についての時間波形データを算出する(ステップS214)。
サンプルSMPが第2番目の測定ポイントへ到着していない場合(ステップS212においてNOの場合)、ステップS212の処理が繰り返される。
これに対して、サンプルSMPが第2番目の測定ポイントへ到着した場合(ステップS212においてYESの場合)、演算装置2は、遅延ステージ70へ復路側の移動の開始指令を与える(ステップS216)。これにより、演算装置2が復路側への移動を開始する。なお、サンプルSMP(サンプル台58)は、第2番目の測定ポイントへ到着した後も、第2番目の測定ポイントへ留まることなく移動を継続している。
信号処理部4は、復路トリガーセンサー87(図2)からの測定開始信号(開始トリガー)が入力されたか否かを判断する(ステップS218)。復路トリガーセンサー87からの測定開始信号が入力されていない場合(ステップS218においてNOの場合)、ステップS218以下の処理が繰り返される。
これに対して、復路トリガーセンサー87からの測定開始信号が入力された場合(ステップS218においてYESの場合)、信号処理部4は、検出信号およびリファレンス信号のA/D変換後のデジタルデータ(生データ)の内部バッファへの蓄積を開始するとともに、演算装置2は、当該生データの収集を開始する(ステップS220)。遅延ステージ70の往路における生データの収集が完了すると、演算装置2は、サンプルSMPのすべての測定ポイントについての測定が完了したか否かを判断する(ステップS222)。
このすべての測定ポイントについての測定が完了したか否かの判断と並行して、演算装置2は、ステップS220において収集した検出信号とリファレンス信号とを積和計算(位相検波計算)することにより、復路についての時間波形データを算出する(ステップS224)。
測定が完了していない測定ポイントがある場合(ステップS222においてNOの場合)には、ステップS204以下の処理が繰り返される。なお、ステップS204においては、次の測定ポイントへ到着したか否かが判断される。
すべての測定ポイントについての測定が完了した場合(ステップS222においてYESの場合)には、サンプルSMPに対する測定処理は完了し、上述した解析処理が開始される。
このように、演算装置2は、テラヘルツ光を発生するためのパルス光とテラヘルツ光を受光するためのパルス光との間の時間差が予め定められた値になったタイミングをトリガーとして検出信号の収集を開始する。
<J.光学系の変形例>
上述の説明においては、遅延ステージ70を往復運動させて光路差を設けることで、時間軸を伸張する方法について例示したが、これ以外の構成を採用してもよい。
上述の説明においては、遅延ステージ70を往復運動させて光路差を設けることで、時間軸を伸張する方法について例示したが、これ以外の構成を採用してもよい。
例えば、特開2011−242180号公報に記載されているような、モード同期周波数がわずかに異なる2台のレーザ光源を用いる構成を採用することもできる。この場合、時間原点信号(開始トリガー)を出力するSFG相互相関測定部が上述の同期部として機能する。
また、偏心した反射体をパルス光の経路上に設け、当該反射体を回転することで経路長を時間的に変化させるような構成を採用することもできる。この場合には、反射体の回転角度から遅延時間(光路差)が一意に算出できるので、反射体の回転角度を検出するエンコーダなどが上述の同期部として機能する。
<K.利点>
本実施の形態に従う測定装置1は、信号処理部4(典型的には、A/D変換ボード)を用いて、検出信号およびリファレンス信号の生信号を収集し、収集後に両者の積和計算(位相検波計算)することにより、各測定ポイントに対応する時間波形データを算出する。この際、信号処理部4は、遅延ステージ70に設けられた位置検出センサー80からの測定開始信号をハード的な開始トリガーとしてデータ収集処理を開始する。
本実施の形態に従う測定装置1は、信号処理部4(典型的には、A/D変換ボード)を用いて、検出信号およびリファレンス信号の生信号を収集し、収集後に両者の積和計算(位相検波計算)することにより、各測定ポイントに対応する時間波形データを算出する。この際、信号処理部4は、遅延ステージ70に設けられた位置検出センサー80からの測定開始信号をハード的な開始トリガーとしてデータ収集処理を開始する。
このような構成を採用することで、測定開始信号を受け取ってから検出信号およびリファレンス信号の収集を開始するまでの時間のばらつきを低減できる。そのため、複数の測定ポイントについてそれぞれ算出された時間波形データの間で統計的な処理を適用することができる。また、任意の間隔およびデータ数の時間波形データを取得することができる。さらに、測定開始から終了までのすべてのデータを積和計算に用いることができるので、算出される時間波形データのS/N比を向上させることができる。
本実施の形態に従う測定装置1では、遅延ステージ70の往路および復路に、それぞれ往路トリガーセンサー86および復路トリガーセンサー87を設け、それぞれのセンサーから測定開始信号を発生させるため、構造を簡単化できる。特開2009−300109号公報(特許文献1)に開示される光学遅延装置のように、遅延ステージの一定間隔ごとに目盛りを設けるとともに、当該目盛りを検出するような複雑な機構を必要としない。
本実施の形態に従う測定装置1は、サンプルSMPのある測定ポイントについての時間波形データと近似している時間波形データを有する測定ポイントを、相関係数やピーク時間などに基づいてグループ化する。そして、測定装置1は、同一グループに属する測定ポイントについての時間波形データ同士を統計化処理(平均化処理)した上で、各グループについての特性値を算出する。
このように、グループ内で時間波形データを統計化処理するので、より測定精度の高い結果を得ることができる。また、グループ分けされた測定ポイントの情報から以下のような点を評価することもできる。
例えば、複数種類の成分を混合した錠剤などのサンプルなどについてみれば、その成分の分布状況や混ざり具合などを評価できる。また、測定ポイントの分布状況から、対応する成分の粒子径などを評価できる。さらに、未知のサンプルに含まれる成分の数などを評価できる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 テラヘルツ領域測定装置(測定装置)、2 演算装置、4 信号処理部、10 パルス光源、14 ビームスプリッタ、20 エミッタユニット、32 ライトチョッパー、40 検出ユニット、42 BBO結晶、45,46,47,48,49 ミラー、50,52,54,56 放物面ミラー、58 サンプル台、60 光センサー、62 発振器、70 遅延ステージ、80 位置検出センサー、81 リニアステージレール、82 リニアステージ可動子、83 センサー検出板、85 原点センサー、86 往路トリガーセンサー、87 復路トリガーセンサー、100 バッファ、102 リファレンス信号格納領域、104 検出信号格納領域、106 位相検波モジュール、108 時間波形データ格納部、110 時間波形データ、112 サンプル台制御モジュール、114 グループ判別モジュール、116 相関係数算出モジュール、118 ピーク時間算出モジュール、120 統計処理モジュール、122 周波数変換モジュール、124 特性値算出モジュール、200 CPU、202 バス、204 ディスプレイ、206 インターフェイス部、208 入力部、210 ハードディスク、212 メモリ、214 CD−ROMドライブ、SMP サンプル
Claims (9)
- 第1のパルス光に応答してテラヘルツ光を発生する照射部と、
前記照射部から照射されて測定対象物に入射した後のテラヘルツ光を受光するとともに、第2のパルス光に応答して活性化される検出部と、
前記第1のパルス光と前記第2のパルス光との間の時間差が予め定められた値になったタイミングを検出する同期部と、
前記検出部から出力される検出信号を収集する処理部とを備え、
前記処理部は、
前記同期部により検出されたタイミングを基準として、前記検出信号から時間波形データを算出する手段と、
前記測定対象物のうち互いに近似した時間波形データが算出された部分を特定する手段とを含む、測定装置。 - 前記処理部は、互いに近似した複数の時間波形データから対応する特性値を算出する手段をさらに含む、請求項1に記載の測定装置。
- 前記処理部は、時間波形データについての相関係数に基づいて、互いに近似した時間波形データを決定する、請求項1または2に記載の測定装置。
- 前記処理部は、前記同期部により検出されたタイミングからピーク値が生じるまでの時間に基づいて、互いに近似した時間波形データを決定する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の測定装置。
- 前記処理部は、前記測定対象物についての測定結果に対して、互いに近似した時間波形データが算出された部分をオーバラップ表示する手段をさらに含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の測定装置。
- 前記第1のパルス光を発生する光源と、
前記光源が発生するパルス光の一部から第2のパルス光を発生する変換部と、
前記光源から前記変換部までの光路上において往復運動することで、光路長を時間的に伸張する遅延部とをさらに備え、
前記同期部は、前記遅延部が往復運動する経路上に配置された位置検出センサーを含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の測定装置。 - 前記テラヘルツ光が前記測定対象物に入射する位置を変化させる移動部をさらに備える、請求項6に記載の測定装置。
- 前記処理部は、前記遅延部による往復運動を継続した状態で、前記テラヘルツ光が前記測定対象物を入射する位置を連続的に変化させることで、前記測定対象物をトレースする、請求項7に記載の測定装置。
- 第1のパルス光を発生してテラヘルツ光を測定対象物に入射させるステップと、
第2のパルス光を発生して前記測定対象物に入射した後のテラヘルツ光を受光させるステップと、
前記第1のパルス光と前記第2のパルス光との間の時間差が予め定められた値になったタイミングをトリガーとして検出信号の収集を開始するステップと、
収集された検出信号から時間波形データを算出するステップと、
前記測定対象物のうち互いに近似した時間波形データが算出された部分を特定するステップとを含む、測定方法。
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