JP2013173862A - 積層多孔質膜、電池用セパレーター及び電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】電池用セパレーターに要求されるシャットダウン特性、高温領域での低熱収縮率、耐メルトダウン特性に優れた積層多孔質膜を提供する。さらにはこの積層多孔質膜をセパレーターとして用いた安全性が高い電池を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン多孔質膜(A)の少なくとも片面に、ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)を設けた積層多孔質膜であり、積層多孔質膜のTD方向の熱収縮率が下式(1)の関係を満足することを特徴とする積層多孔質膜。
(HS170−60)/(HS130−60)≦1.1 …(1)
(ここでHS170−60は積層多孔質膜を170℃で60分間熱処理した場合の熱収縮率を示し、HS130−60は積層多孔質膜を130℃で60分間熱処理した場合の熱収縮率を示す。)
【選択図】なし
【解決手段】ポリオレフィン多孔質膜(A)の少なくとも片面に、ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)を設けた積層多孔質膜であり、積層多孔質膜のTD方向の熱収縮率が下式(1)の関係を満足することを特徴とする積層多孔質膜。
(HS170−60)/(HS130−60)≦1.1 …(1)
(ここでHS170−60は積層多孔質膜を170℃で60分間熱処理した場合の熱収縮率を示し、HS130−60は積層多孔質膜を130℃で60分間熱処理した場合の熱収縮率を示す。)
【選択図】なし
Description
本発明は、電池用セパレーターに要求されるシャットダウン特性、高温領域での低熱収縮率、耐メルトダウン特性に優れた積層多孔質膜に関するものである。さらにはこの積層多孔質膜をセパレーターとして用いた安全性が高い電池あるいはコンデンサーに関するものである。
熱可塑性樹脂微多孔膜は、物質の分離膜や選択透過膜及び隔壁材等として広く用いられている。例えば、逆浸透濾過膜、限外濾過膜、精密濾過膜等の各種フィルター、透湿防水衣料等、リチウムイオン電池やニッケル水素電池等に用いる電池用セパレーターや電解コンデンサー用の隔膜等の各種用途に用いられている。なかでもポリオレフィン微多孔膜はリチウムイオン電池用セパレーターとして好適に使用されており、ポリオレフィン微多孔膜の性能は電池特性、電池生産性及び電池安全性に深く関わっている。
リチウムイオン電池は高容量、高エネルギー密度が達成できるといった特性から、今後も民生用途(携帯端末、電動工具など)、輸送用途(自動車、バスなど)、蓄電用途(スマートグリッドなど)での使用拡大が予測される。これらの電池は、正・負極の電極間に電気絶縁性の多孔質のフィルムからなるセパレーターを介在させ、フィルムの空隙内にリチウム塩を溶解した電解液を含浸し、それらの正・負極とセパレーターを積層したり、または渦巻式に巻付けたりした構造が主である。リチウムイオン電池は、非水電解質を使用し、高容量、高エネルギー密度であるなどの特徴を持つため、これらの特徴に起因する課題、例えば電池内外での短絡により電池温度の上昇が大きいこと、温度上昇により電解質が発火することなどに対して、種々の安全策を講じる必要があり、セパレーターに種々の工夫を加える試みがなされている。
電池安全性に関してセパレーターが寄与できる特性としては、シャットダウン特性、高温領域での低熱収縮率及び耐メルトダウン特性があげられる。過充電や外部または内部短絡などのトラブルにより電池が異常発熱した場合には、まずセパレーターの一部が溶融してリチウムイオンが通過する細孔を閉塞し電流を遮断する。これをシャットダウン(ヒューズともいう)といい、低温でシャットダウンすることが電池の安全性により寄与できると考えられる。
ここで一般的にセパレーターとして使用されるポリオレフィン微多孔膜の製造は延伸工程を経ることが一般的であり、ポリオレフィン微多孔膜が加熱された場合には熱収縮を生じる性質を持つ。そのためシャットダウンによる電流遮断で異常発熱がストップせず電池内部温度がさらに上昇した場合には、セパレーターの熱収縮により電極間の絶縁が確保できなくなる懸念がある。このためセパレーターを形成する樹脂の融点近傍の高温領域で熱収縮率が小さいことが電池の安全性により寄与できると考えられる。
さらに電池内部温度が上昇した場合にはセパレーターを形成する樹脂が溶融・流動することによりセパレーターに大きく穴があき(これをメルトダウンという)、電極間での短絡が発生し発火などより危険な状態に陥る。このためより高温までメルトダウンしない特性(耐メルトダウン特性)が電池の安全性に寄与できると考えられる。
上記のようなセパレーターに対するシャットダウン特性、高温領域での低熱収縮率及び耐メルトダウン特性に関する要求に対して、セパレーターの製造条件の改良やセパレーター表面に無機粒子層や耐熱性樹脂層を設ける提案がなされている。
例えばポリオレフィン微多孔膜の製造工程に収縮工程を導入することにより、熱収縮率の低減とその他物性が両立されたポリオレフィン微多孔膜の製造方法(特許文献1)、ポリオレフィン樹脂多孔膜に無機フィラーと樹脂バインダーとを含む多孔層を備えた多層多孔膜(特許文献2)、融点が150℃以下の樹脂からなる多孔質膜A1とガラス転移温度が150℃よりも高い樹脂からなる多孔質膜B1とが一体化された複合多孔質膜(特許文献3)などが提案されている。
しかしながら、特許文献1で報告されたポリオレフィン膜の製造方法の改良では熱収縮の低減は達成されるものの、原料である熱可塑性樹脂が軟化点を持つため十分な耐メルトダウン特性を達成することが出来ない。また特許文献2では耐メルトダウン特性の向上は達成されるもののシャットダウン特性が十分であるとは言えない。また特許文献3ではシャットダウン特性と耐メルトダウン特性は達成できるものの、高温領域での低熱収縮率という観点では十分であるとは言えない。
セパレーターに要求されるシャットダウン特性、高温領域での低熱収縮率、および耐メルトダウン特性に優れた積層多孔質膜に関するものである。さらにはこの積層多孔質膜をセパレーターとして用いた安全性が高い電池に関するものである。
上記目的に鑑み鋭意研究した結果、本発明者らは、ポリオレフィン多孔質膜(A)の少なくとも片面に、ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)を設けた積層多孔質膜であり、積層多孔質膜のTD方向の熱収縮率が下式(1)の関係を満足することを特徴とする積層多孔質膜
(HS170−60)/(HS130−60)≦1.1 …(1)
(ここでHS170−60は積層多孔質膜を170℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示し、HS130−60は積層多孔質膜を130℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示す。)
が、シャットダウン特性、高温領域での低熱収縮率、および耐メルトダウン特性に優れることを見出し、本発明に到達した。
(HS170−60)/(HS130−60)≦1.1 …(1)
(ここでHS170−60は積層多孔質膜を170℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示し、HS130−60は積層多孔質膜を130℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示す。)
が、シャットダウン特性、高温領域での低熱収縮率、および耐メルトダウン特性に優れることを見出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、ポリオレフィン多孔質膜(A)の少なくとも片面に、ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)を設けた積層多孔質膜であり、積層多孔質膜のTD方向の熱収縮率が下式(1)の関係を満足することを特徴とする積層多孔質膜
(HS170−60)/(HS130−60)≦1.1 …(1)
(ここでHS170−60は積層多孔質膜を170℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示し、HS130−60は積層多孔質膜を130℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示す。)
である。
(HS170−60)/(HS130−60)≦1.1 …(1)
(ここでHS170−60は積層多孔質膜を170℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示し、HS130−60は積層多孔質膜を130℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示す。)
である。
本発明によれば、シャットダウン特性、高温領域での低熱収縮率、および耐メルトダウン特性に優れた積層多孔質膜およびそれを用いた電池用セパレーターを提供することができ、電池の安全性の向上に寄与出来る。
ポリオレフィン多孔質膜(A)の少なくとも片面に、ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)を設けた積層多孔質膜であり、積層多孔質膜のTD方向の熱収縮率が下式(1)の関係を満足することを特徴とする積層多孔質膜
(HS170−60)/(HS130−60)≦1.1 …(1)
(ここでHS170−60は積層多孔質膜を170℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示し、HS130−60は積層多孔質膜を130℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示す。)
であることが必要である。
(HS170−60)/(HS130−60)≦1.1 …(1)
(ここでHS170−60は積層多孔質膜を170℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示し、HS130−60は積層多孔質膜を130℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示す。)
であることが必要である。
以下、ポリオレフィン多孔質膜(A)の組成について説明する。
本発明におけるポリオレフィン多孔質膜(A)は、電気絶縁性、イオン透過性、膜厚の均一性、機械強度などのバランスから多孔質のフィルムであることが好ましい。
本発明におけるポリオレフィン多孔質膜(A)は、電気絶縁性、イオン透過性、膜厚の均一性、機械強度などのバランスから多孔質のフィルムであることが好ましい。
本発明におけるポリオレフィン多孔質膜(A)の材質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂がシャットダウン特性の観点から好ましく例示される。ポリオレフィン多孔質膜(A)は、単一物又は2種以上の異なるポリオレフィン系樹脂の混合物、例えばポリエチレンとポリプロピレンの混合物であってもよいし、異なるオレフィン、例えばエチレンとプロピレンの共重合体でもよい。ポリオレフィン系樹脂のなかでは、特にポリエチレンおよびポリプロピレンが好ましく例示される。電気絶縁性、イオン透過性などの基本特性に加え、電池異常昇温時において電流を遮断し過度の昇温を抑制するシャットダウン特性を具備しているからである。
ポリオレフィン系樹脂の質量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、通常1×104〜1×107の範囲内であり、好ましくは1×104〜15×106の範囲内であり、より好ましくは1×105〜5×106の範囲内である。
ポリオレフィン系樹脂はポリエチレンを含むことが好ましいが、ポリエチレンとしては超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンなどが挙げられる。また重合触媒にも特に制限はなく、チーグラー・ナッタ系触媒、フィリップス系触媒、メタロセン系触媒などの重合触媒によって製造されたポリエチレンが挙げられる。これらのポリエチレンはエチレンの単独重合体のみならず、他のα−オレフィンを少量含有する共重合体であってもよい。エチレン以外のα−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸のエステル、スチレン等が好適に使用できる。
ポリエチレンは単一物でもよいが、2種以上のポリエチレンからなる混合物であることが好ましい。ポリエチレン混合物としてはMwの異なる2種類以上の超高分子量ポリエチレンの混合物、同様な高密度ポリエチレンの混合物、同様な中密度ポリエチレンの混合物及び低密度ポリエチレンの混合物を用いてもよいし、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンからなる群から選ばれた2種以上ポリエチレンの混合物を用いてもよい。
なかでもポリエチレンの混合物としては、シャットダウン現象の温度上昇に対する応答性(シャットダウン速度)や、シャットダウン温度以上の高温領域でポリオレフィン多孔質膜の形状を維持し電極間の絶縁性を維持する観点からMwが5×105以上の超高分子量ポリエチレンとMwが1×104以上、5×105未満のポリエチレンからなる混合物が好ましい。超高分子量ポリエチレンのMwは5×105〜1×107の範囲内であることが好ましく、1×106〜15×106の範囲内であることがより好ましく、1×106〜5×106の範囲内であることが特に好ましい。Mwが1×104以上、5×105未満のポリエチレンとしては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンのいずれも使用することが出来るが、特に高密度ポリエチレンを使用することが好ましい。Mwが1×104以上、5×105未満のポリエチレンとしてはMwが異なるものを2種以上使用してもよいし、密度の異なるものを2種以上使用してもよい。ポリエチレン混合物のMwの上限を15×106にすることにより、溶融押出を容易にすることが出来る。ポリエチレン混合物中の超高分子量ポリエチレンの含有量は、ポリエチレンの混合物全体に対し1重量%以上であることが好ましく、10〜80重量%の範囲であることがより好ましい。
ポリオレフィン系樹脂のMwと数平均分子量(Mn)の比、分子量分布(Mw/Mn)は特に制限されないが、5〜300の範囲内であることが好ましく、10〜100の範囲内であることがより好ましい。Mw/Mnが5未満では高分子量成分が多すぎるためにポリオレフィンの溶液の押出が困難であり、Mw/Mnが300を超えると低分子量成分が多すぎるために得られる微多孔膜の強度が低い。Mw/Mnは分子量分布の尺度として用いられるものであり、すなわち単一物からなるポリオレフィンの場合この値が大きい程分子量分布の幅が大きい。単一物からなるポリオレフィンのMw/Mnはポリオレフィンの多段重合により適宜調整することができる。多段重合法としては、1段目で高分子量成分を重合し、2段目で低分子量成分を重合する2段重合が好ましい。ポリオレフィンが混合物である場合、Mw/Mnが大きいほど混合する各成分のMwの差が大きく、Mw/Mnが小さいほどMwの差が小さい。ポリオレフィン混合物のMw/Mnは各成分の分子量や混合割合を調整することにより適宜調整することができる。
ポリオレフィン系樹脂には、耐メルトダウン特性と電池の高温保存特性の向上を目的として、ポリエチレンとともにポリプロピレンを含んでいてもよい。ポリプロピレンのMwは1×104〜4×106の範囲内であることが好ましい。ポリプロピレンとしては単独重合体または他のα−オレフィンを含むブロック共重合体およびまたはランダム共重合体も使用することが出来る。他のα−オレフィンとしてはエチレンが好ましい。ポリプロピレンの含有量はポリオレフィン混合物(ポリエチレン+ポリプロピレン)全体を100重量%として80重量%以下にすることが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂には、電池用セパレーターとしての特性向上のためシャットダウン特性を付与するポリオレフィンを含んでいてもよい。シャットダウン特性を付与するポリオレフィンとしては、例えば低密度ポリエチレンを用いることが出来る。低密度ポリエチレンとしては、分岐状、線状、シングルサイト触媒により製造されたエチレン/α−オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種が好ましい低密度ポリエチレンの添加量はポリオレフィン全体を100重量%として20重量%以下であることが好ましい。低密度ポリエチレンの添加量が20重量%を超えると延伸時に破膜が起こり易くなり好ましくない。
上記超高分子量ポリエチレンを含むポリエチレン組成物には、任意成分としてMwが1×104〜4×106の範囲内のポリ1-ブテン、Mwが1×103〜4×104の範囲内のポリエチレンワックス、およびMwが1×104〜4×106の範囲内のエチレン/α―オレフィン共重合体からなる群から選ばれた少なくとも1種のポリオレフィンを添加しても良い。これらの任意成分の添加量は、ポリオレフィン組成物を100重量%として20重量%以下であることが好ましい。
次に、ポリオレフィン多孔質膜(A)の構成、その製造方法、特性について説明する。
本発明におけるポリオレフィン多孔質膜(A)の製造方法は特に限定されず、製法により目的に応じた相構造を自由に持たせることができる。多孔質膜(A)の製造方法としては、発泡法、相分離法、溶解再結晶法、延伸開孔法、粉末焼結法などがあり、これらの中では微細孔の均一性の点で相分離法が好ましいが、これに限定されるものではない。
本発明におけるポリオレフィン多孔質膜(A)の製造方法は特に限定されず、製法により目的に応じた相構造を自由に持たせることができる。多孔質膜(A)の製造方法としては、発泡法、相分離法、溶解再結晶法、延伸開孔法、粉末焼結法などがあり、これらの中では微細孔の均一性の点で相分離法が好ましいが、これに限定されるものではない。
相分離法による製造方法としては、例えばポリオレフィン系樹脂と成膜用溶剤とを溶融混練し、得られた溶融混合物をダイより押出し、冷却することによりゲル状成形物を形成し、得られたゲル状成形物に対して少なくとも一軸方向に延伸を実施し、前記成膜用溶剤を洗浄除去、乾燥することによって多孔質膜を得る方法などが挙げられる。
ポリオレフィン多孔質膜(A)の熱収縮率を低減する目的で、必要に応じて乾燥後の多孔質膜に対して熱セットを行うこともできる。熱セット工程としては、MD、TDの両方向を固定して縮幅を行う熱セット工程、MD、TDの少なくとも一方向を固定して縮幅を行う熱セット工程があげられる。縮幅の範囲は0.01〜50%、好ましくは3〜20%の範囲で少なくとも一軸方向に行う。収縮率が0.01%未満では、得られたポリオレフィン微多孔膜の105℃、8hrにおける熱収縮率が改善されず、50%を超えると透気抵抗度が悪化し好ましくない。
熱セット温度は、用いられるポリオレフィン系樹脂により異なるが、90〜150℃で行うことが好ましい。90℃未満では、熱収縮率の低減効果が十分でなく、150℃を超えると透気度が悪化する。熱セット工程の時間は、特に限定されないが、通常は1秒以上10分以下、好ましくは3秒から2分以下で行われる。
ポリオレフィン多孔質膜(A)は単層膜であってもよいし、二層以上からなる多層膜(例えばポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの三層構成やポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの三層構成)であってもよい。
2層以上からなる多層膜の製造方法としては、例えば第一層及び第二層を構成するポリオレフィンのそれぞれを成膜用溶剤と溶融混練し、得られた溶融混合物をそれぞれの押出機から1つのダイに供給し各成分を構成するゲルシートを一体化させて共押出する方法、各層を構成するゲルシートを重ね合わせて熱融着する方法のいずれでも作製できる。共押出法の方が、高い層間接着強度を得やすく、層間に連通孔を形成しやすいために高透過性を維持しやすく、生産性にも優れているためにより好ましい。
ポリオレフィン多孔質膜(A)は、充放電反応の異常時に孔が閉塞するシャットダウン特性を有することが電池使用時の安全性の観点から好ましい。従って、構成するポリオレフィン系樹脂の融点(軟化点)は、好ましくは70〜150℃、さらに好ましくは100〜140℃である。70℃未満では、正常使用時にシャットダウン機能が発現して電池が使用不可になる可能性があり、150℃を超えると、異常反応が十分に進行してからシャットダウン機能が発現してしまうことになり、安全性を確保できない恐れがある。
ポリオレフィン多孔質膜(A)の膜厚は5μm以上、30μm未満が好ましい。膜厚の上限はより好ましくは25μm、さらに好ましくは20μmである。また、膜厚の下限はより好ましくは5μmであり、最も好ましくは7μmである。5μmよりも薄い場合は、実用的な加工性を維持する膜強度とシャットダウン機能を付与することが出来ないことがあり、30μm以上の場合、電池ケース内の単位容積当たりの電極面積が大きく制約され、今後の電池の高容量化に対応出来ない恐れがある。
ポリオレフィン多孔質膜(A)の透気抵抗度は、JIS−P8117に準拠した方法により測定した値の上限は好ましくは500sec/100ccAir、さらに好ましくは400sec/100ccAir、最も好ましくは300sec/100ccAirである。透気抵抗度の下限は好ましくは50sec/100ccAir、さらに好ましくは80sec/100ccAirである。
ポリオレフィン多孔質膜(A)の空孔率の上限は好ましくは70%、さらに好ましくは60%、最も好ましくは55%である。空孔率の下限は好ましくは25%、さらに好ましくは30%、最も好ましくは35%である。
ポリオレフィン多孔質膜(A)の透気抵抗度および空孔率は、イオン透過性(充放電作動電圧)、電池の充放電特性、電池の寿命(電解液の保持量と密接に関係する)への影響が大きく、透気抵抗度が500sec/100ccAirより高くても、空孔率が25%よりも低くても、電池としての機能を十分に発揮することができなくなる可能性がある。一方で、50sec/100ccAirよりも透気抵抗度が低くても、空孔率が70%よりも高くても、十分な機械的強度と電極間の電気絶縁性を維持することが出来ず充放電時に短絡が起こる可能性が高くなるため好ましくない。さらに熱収縮を抑制する観点からも透気抵抗度および空孔率は上記の範囲にあることが好ましい。
ポリオレフィン多孔質膜(A)の熱収縮率が小さいことが、本発明の積層多孔質膜の熱収縮率を低減する観点から必要である。ポリオレフィン多孔質膜(A)の熱収縮率は105℃、8hrにおいてMD、TD方向とも好ましくは7%以下、さらに好ましくは5%以下である。
ポリオレフィン多孔質膜(A)の平均孔径は、シャットダウン速度、熱収縮率に大きく影響を与えるため、好ましくは0.03〜1.0μm、さらに好ましくは0.05〜0.5μm、最も好ましくは0.1〜0.3μmである。平均孔径が0.03μmよりも小さい場合、ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)との積層の際に透気抵抗度が大幅に悪化する可能性が高くなるほか、熱収縮率が大きくなる可能性があり好ましくない。また平均孔径が1.0μmよりも大きい場合、シャットダウン現象の温度に対する応答が緩慢になる、昇温速度によりシャットダウン温度がより高温側にシフトするなどの現象が生じる可能性がある。
なお、ポリオレフィン多孔質膜(A)の平均孔径の調節方法は特に限定されないが、例えば製膜工程の延伸倍率や、相分離法においてはポリオレフィン系樹脂と成膜用溶剤とを溶融混練した際のポリオレフィン系樹脂の濃度などで調節することが出来る。
次に、本発明におけるポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)について説明する。
本発明の積層多孔質膜は、ポリオレフィン多孔質膜(A)の少なくとも片面に、ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)を設けた積層多孔質膜であることが高温領域での熱収縮率低減、耐メルトダウン特性の向上のために必要であり、電解液への親和性、電気化学的安定性の観点からも好ましい。
本発明における多孔質層(B)中のポリアミドイミド樹脂の製造方法としては、酸成分とイソシアネート(アミン)成分から製造するイソシアネート法、或は酸クロリド(酸成分)とアミンから製造する酸クロリド法、酸成分とアミン成分から製造する直接法などの公知の方法で製造されが、製造コストの観点からジイソシアネート法が好ましい。
本発明におけるポリアミドイミド樹脂の合成に用いられる酸成分としてはトリメリット酸無水物(クロリド)が挙げられるが、その一部を他の多塩基酸またはその無水物に置き換えることができる。例えば、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、プロピレングリコールビストリメリテート等のテトラカルボン酸及びこれらの無水物、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらの中で耐電解液性の点からは1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
本発明におけるポリアミドイミド樹脂の合成に用いられる酸成分としてはトリメリット酸無水物(クロリド)が挙げられるが、その一部を他の多塩基酸またはその無水物に置き換えることができる。例えば、ピロメリット酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ビフェニルスルホンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルエーテルテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、プロピレングリコールビストリメリテート等のテトラカルボン酸及びこれらの無水物、シュウ酸、アジピン酸、マロン酸、セバチン酸、アゼライン酸、ドデカンジカルボン酸、ジカルボキシポリブタジエン、ジカルボキシポリ(アクリロニトリル−ブタジエン)、ジカルボキシポリ(スチレン−ブタジエン)等の脂肪族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。これらの中で耐電解液性の点からは1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
また、トリメリット酸化合物の一部をグリコールに置き換えてウレタン基を分子内に導入することによりポリアミドイミド樹脂に柔軟性を付与することもできる。グリコールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等のアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコールや上記ジカルボン酸の1種又は2種以上と上記グリコールの1種又は2種以上とから合成される末端水酸基のポリエステル等が挙げられ、これらの中ではポリエチレングリコール、末端水酸基のポリエステルが好ましい。また、これらの数平均分子量は500以上が好ましく、1000以上がより好ましい。上限は特に限定されないが8000未満が好ましい。
酸成分の一部をダイマー酸、ポリアルキレンエーテル、ポリエステル並びに末端にカルボキシル基、水酸基及びアミノ基のいずれかを含有するブタジエン系ゴムからなる群のうち少なくとも1種で置き換える場合は、酸成分のうち、1〜60モル%を置き換えることが好ましい。
ポリアミドイミド樹脂の合成に用いられるジアミン(ジイソシアネート)成分としては、o−トリジンとトリレンジアミンを成分とするものが好ましく、その一部を置き換える成分としてエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、ジシクロヘキシルメタンジアミン等の脂環族ジアミン及びこれらのジイソシアネート、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、ベンジジン、キシリレンジアミン、ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミン及びこれらのジイソシアネート等が挙げられ、これらの中では反応性、コスト、耐電解液性の点からジシクロヘキシルメタンジアミン及びこれのジイソシアネートがより好ましく、さらに好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ナフタレンジアミン及びこれらのジイソシアネートである。特には、o−トリジンジイソシアネート(TODI)、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)及びこれらをブレンドしたものが最も好ましい。特に多孔質層(B)の密着性を向上させるためには、剛直性の高いo−トリジンジイソシアネート(TODI)が全イソシアネートに対し50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上である。
本発明におけるポリアミドイミド樹脂はN,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチロラクトン等の極性溶剤中、60〜200℃に加熱しながら攪拌することで容易に製造することができる。この場合、必要に応じてトリエチルアミン、ジエチレントリアミン等のアミン類、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属塩等を触媒として用いることもできる。
本発明におけるポリアミドイミド樹脂は、対数粘度は0.5dl/g以上が好ましい。対数粘度が0.5dl/g未満では溶融温度の低下により十分な耐メルトダウン特性が得られない場合があること、さらに分子量が低いため多孔質層(B)が脆くなり、アンカー効果が低下するため、ポリオレフィン多孔質膜(A)との密着性が低下するためである。一方、加工性や溶剤への溶解性を考慮すると2.0dl/g未満が好ましい。
本発明における多孔質層(B)はポリアミドイミド樹脂を可溶で且つ水と混和する溶剤で溶解した溶液(以下、ワニスと言う場合がある)を用いて所定の基材フィルムに塗布し、加湿条件下でポリアミドイミド樹脂と、水と混和する溶剤を相分離させ、さらに水浴に投入して耐熱性樹脂を凝固させることによって得られる(以下、この水浴を凝固浴と言う場合がある)。必要に応じてワニスに相分離助剤を添加してもよい。
本発明におけるポリアミドイミド樹脂を溶解するために使用できる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP),リン酸ヘキサメチルトリアミド(HMPA)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ−ブチロラクトン、クロロホルム、テトラクロロエタン、ジクロロエタン、3−クロロナフタレン、パラクロロフェノール、テトラリン、アセトン、アセトニトリルなどが挙げられ、ポリアミドアミドイミド樹脂の溶解性に併せて自由に選択できるが、なかでも、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトンがポリアミドアミドイミド樹脂の溶解性、水と混和性に優れるため好ましく使用できる。
本発明で用いる相分離助剤としては水、エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール等のアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリアルキレングリコール、水溶性ポリエステル、水溶性ポリウレタン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどから選ばれる少なくとも一種類以上であり、添加量はワニスの溶液重量に対して好ましくは1〜50wt%、より好ましくは2〜40wt%、さらに好ましくは3〜30%の範囲で添加するのがよい。
これらの相分離助剤をワニスに混合することによって、主に透気抵抗度、表面開孔率、層構造の形成速度をコントロールすることが出来る。上記範囲よりも添加量が少ない場合、相分離速度の顕著な上昇は見られないことがあり、また、上記範囲よりも多い場合は、塗布液が混合の段階で白濁して樹脂成分が析出してしまう場合がある。
本発明の積層多孔質膜のカールを低減させるためにワニスに無機粒子あるいは架橋高分子粒子を添加することも出来る。さらにワニスに無機粒子あるいは架橋高分子粒子を添加することによって、電極の樹枝状結晶の成長に起因する内部短絡の防止効果(デンドライト防止効果)、高温領域での熱収縮率の低減、滑り性の付与などの効果も得ることができる。これら粒子添加量の上限としては90体積%が好ましく、より好ましくは80体積%である。下限は10体積%が好ましく、より好ましくは20体積%である。10体積%未満ではカール低減効果が不十分であり、また添加量が90体積%を超えると、多孔質層(B)の総体積に対してポリアミドイミド樹脂の割合が小さくなり、ポリオレフィン多孔質膜(A)の細孔内深部にまでポリアミドイミド樹脂が入り込まず、ポリオレフィン多孔質膜(A)との密着性が不十分となる場合があるだけでなく、多孔質層(B)内部で十分な凝集性が得られず強度が低下する場合があり好ましくない。
無機粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、シリカーアルミナ複合酸化物粒子、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどが挙げられる。
また、耐熱性架橋高分子粒子としては、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系粒子などが挙げられる。
これら粒子の平均粒径はポリエチレン系多孔質膜(A)の平均細孔径の1.5倍以上、50倍以下であることが好ましい。より好ましくは2.0倍以上、20倍以下である。
粒子の平均粒径がポリエチレン系多孔質膜(A)の平均細孔径の1.5倍未満では粒度分布の大きさによってはポリアミドイミド樹脂と粒子が混在した状態でポリエチレン系多孔質膜(A)の細孔を塞いでしまい、結果として積層多孔質膜の透気抵抗度の大幅な上昇をまねく場合がある。粒子の平均粒径がポリエチレン系多孔質膜(A)の平均細孔径の50倍を超えると電池組み立て工程において該粒子が脱落し電池の重大な欠陥を招く場合がある。
多孔質層(B)の膜厚については好ましくは0.5〜5.0μm、より好ましくは1.0〜4.0μm、さらに好ましくは1.0〜3.0μmである。膜厚が0.5μmよりも薄い場合、ポリオレフィン多孔質膜(A)が融点以上で溶融・収縮した際の破膜強度と絶縁性を確保できないおそれがあり、5.0μmよりも厚い場合、ポリオレフィン多孔質膜(A)の占める割合が少なく十分な孔閉塞機能が得られず異常反応を抑制できないことがある。また、巻き嵩が大きくなり、今後、進むであろう電池の高容量化には適さない。また、カールが大きくなりやすく、電池組み立て工程での生産性低下に繋がる。
多孔質膜(B)の空孔率は30〜90%が好ましく、より好ましくは40〜70%である。空孔率が30%未満では、多孔質層(B)の電気抵抗が高くなり、大電流を流しにくくなる。一方、空孔率が90%を超えると、膜強度が弱くなる傾向にある。また、多孔質膜(B)の透気抵抗度は、JIS−P8117に準拠した方法により測定した値が5〜500sec/100ccAirであることが好ましい。より好ましくは10〜300sec/100ccAir、さらに好ましくは10〜200sec/100ccAirである。透気抵抗度が5sec/100ccAir未満では、膜強度が弱くなり、500sec/100ccAirを越えるとサイクル特性が悪くなることがある。
ポリオレフィン多孔質膜(A)と多孔質層(B)から本発明の積層多孔質膜を得る方法としては、必要に応じて相分離助剤および粒子を添加したポリアミドイミド樹脂を溶解したワニスをポリオレフィン多孔質膜(A)と接触させた状態で水と混和する溶剤を相分離させ、ポリアミドイミド樹脂を凝固・多孔質化させることによって得ることができる。ポリアミドイミド樹脂を溶解したワニスとポリオレフィン多孔質膜(A)を接触させる方法としては、ポリオレフィン多孔質膜(A)上にワニスを直接塗工する方法、
金属ロールやベルト、あるいはフィルム上に一旦ワニスを塗工し、ポリオレフィン多孔質膜(A)に転写する方法など、任意の方法をとることが可能である。
金属ロールやベルト、あるいはフィルム上に一旦ワニスを塗工し、ポリオレフィン多孔質膜(A)に転写する方法など、任意の方法をとることが可能である。
以下、本発明の積層多孔質膜の特性について詳述する。なお、MD方向とはポリオレフィン多孔質膜(A)や本発明の積層多孔質膜を製造する際の流れ(製造ライン)方向を表し、TD方向とはMD方向との直角方向を言う。
本発明の積層多孔質膜のTD方向の熱収縮率は、下式(1)の関係を満足することが、ポリオレフィン多孔質膜(A)のシャットダウン温度を超える高温領域における熱収縮率を低く抑え、電極間の絶縁性を確保する上で必要である。
(HS170−60)/(HS130−60)≦1.1 …(1)
(ここでHS170−60は積層多孔質膜を170℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示し、HS130−60は積層多孔質膜を130℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示す。)
(HS170−60)/(HS130−60)の値が1.1以下であれば、ポリオレフィン多孔質膜(A)のシャットダウン温度以下の領域からシャットダウン温度を超える領域までの高温領域において熱収縮率がほぼ一定であり、高温領域においても電極間の絶縁性を確保できる。
(HS170−60)/(HS130−60)≦1.1 …(1)
(ここでHS170−60は積層多孔質膜を170℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示し、HS130−60は積層多孔質膜を130℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示す。)
(HS170−60)/(HS130−60)の値が1.1以下であれば、ポリオレフィン多孔質膜(A)のシャットダウン温度以下の領域からシャットダウン温度を超える領域までの高温領域において熱収縮率がほぼ一定であり、高温領域においても電極間の絶縁性を確保できる。
また、(HS170−60)/(HS130−60)の値が0.9以上であることが高温領域における電極間の絶縁性を確保する観点から好ましい。0.9以上であれば高温によりセパレーターが軟化し薄膜化することにより絶縁性が低下することがないからである。
同様に本発明の積層多孔質膜のMD方向の熱収縮率も、前記式(1)の関係を満足することが、ポリオレフィン多孔質膜(A)のシャットダウン温度を超える高温領域における熱収縮率を低く抑え、電極間の絶縁性を確保する上で好ましい。
さらに本発明の積層多孔質膜のTD方向の熱収縮率は、下式(2)の関係を満足することが、ポリオレフィン多孔質膜(A)のメルトダウン温度近傍の温度領域において十分長時間に亘って熱収縮率を低く抑えることができ、電極間の絶縁性を確保する上で好ましい。
(HS150−60)/(HS150−10)≦1.1 …(2)
(ここでHS150−60は積層多孔質膜を150℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示し、HS150−10は積層多孔質膜を150℃で10分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示す。)
(HS150−60)/(HS150−10)の値が1.1以下であれば、ポリオレフィン多孔質膜(A)のメルトダウン温度近傍の温度領域において長時間に亘って熱収縮率がほぼ一定であり、メルトダウン温度近傍の温度領域においても電極間の絶縁性を確保することができる。
(HS150−60)/(HS150−10)≦1.1 …(2)
(ここでHS150−60は積層多孔質膜を150℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示し、HS150−10は積層多孔質膜を150℃で10分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示す。)
(HS150−60)/(HS150−10)の値が1.1以下であれば、ポリオレフィン多孔質膜(A)のメルトダウン温度近傍の温度領域において長時間に亘って熱収縮率がほぼ一定であり、メルトダウン温度近傍の温度領域においても電極間の絶縁性を確保することができる。
また、(HS150−60)/(HS150−10)の値が0.9以上であることが高温領域における電極間の絶縁性を確保する観点から好ましい。0.9以上であれば高温に長時間さらされ、セパレーターが軟化し薄膜化することにより絶縁性が低下することがないからである。
同様に本発明の積層多孔質膜のMD方向の熱収縮率も、前記式(2)の関係を満足することが、ポリオレフィン多孔質膜(A)のメルトダウン温度近傍の温度領域においても電極間の絶縁性を確保する上で好ましい。
なお、積層多孔質膜の熱収縮率は実施例の欄に後述する方法によって所定の温度、時間で測定した値を言う。
本発明の積層多孔質膜はシャットダウン特性を有することが必要であり、70〜150℃の範囲にシャットダウン温度を有することが安全性の観点から好ましい。一般に、ポリオレフィン多孔質膜に耐熱性樹脂層を積層すると、その積層多孔質膜のシャットダウン温度はポリオレフィン多孔質膜のシャットダウン温度より高くなる。本発明の積層多孔質膜のシャットダウン温度はポリオレフィン多孔質膜(A)の選択により調節可能であるが、ポリオレフィン多孔質膜(A)にポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)を積層する際の積層方法、ポリアミドイミド樹脂を溶解したワニスの組成、多孔質層(B)の膜厚などの選択によって、積層多孔質膜のシャットダウン温度(T’s)がポリオレフィン多孔質膜(A)のシャットダウン温度(Ts)より高くなるのを抑制すること、すなわちシャットダウン温度の上昇幅を小さく抑えることができる。安全性の観点からシャットダウン温度の上昇幅(T’s−Ts)が小さいことが好ましく、好ましくは(T’s−Ts)≦3℃、さらに好ましくは(T’s−Ts)≒0℃である。
本発明の積層多孔質膜のメルトダウン温度(T’m)は、ポリオレフィン多孔質膜(A)のメルトダウン温度(Tm)より高いことが好ましい。安全性の観点から積層多孔質膜のメルトダウン温度は200℃以上、さらに好ましくは300℃である。ポリオレフィン多孔質膜(A)にポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)を積層する際の積層方法、ポリアミドイミド樹脂を溶解したワニスの組成、多孔質層(B)の膜厚などの選択によって効果的にメルトダウン温度の向上を達成することができる。
多孔質層(B)を積層して得られた積層多孔質膜全体の膜厚の上限は35μmであり、より好ましくは30μmである。下限は5.0μmが好ましく、より好ましくは7.0μmである。5.0μmよりも薄い場合には、十分な機械強度と絶縁性を確保することが困難になることがあり、35μmよりも厚い場合には電池容器内に収容できる電極面積が減少することにより電池容量の低下を回避することが困難になるおそれがある。
さらに積層多孔質膜の透気抵抗度は、もっとも重要な特性のひとつであり、好ましくは50〜600sec/100ccAir、より好ましくは100〜500sec/100ccAir、さらに好ましくは100〜400sec/100ccAirである。50sec/100ccAirよりも透気抵抗度の値が低い場合、十分な絶縁性が得られず短絡や破膜を招く可能性があり、600sec/100ccAirよりも値が高い場合にはイオン透過の抵抗が高く実使用可能な範囲の充放電特性、寿命特性が得られない場合がある。
さらに本発明の積層多孔質膜は、ポリオレフィン多孔質膜(A)の透気抵抗度をX(sec/100ccAir)、積層多孔質膜全体の透気抵抗度をY(sec/100ccAir)としたとき、その割合(Y/X)がY/X≦1.5の関係を有することが好ましい。Y/Xが1.5を超える場合は十分なイオン透過性が確保できなくなる恐れがあり、高性能電池には適さないセパレーターとなるため好ましくない。
本発明の積層多孔質膜の突刺強度は、ポリオレフィン多孔質膜(A)の設計・選択により調節可能であるが、ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)の積層の方法により、積層多孔質膜の突刺強度(P’)がポリオレフィン多孔質膜(A)の突刺強度(P)よりわずかに低くなることがある。加工性の観点から突刺強度の低下率(1−P’/P)は小さいことが好ましく、好ましくは(1−P’/P)≦0.2、より好ましくは(1−P’/P)≦0.1であることが好ましい。
本発明において、ポリオレフィン多孔質膜(A)と多孔質層(B)の界面での剥離強度F(A/B)は、F(A/B)≧1.0N/25mmであることが好ましい。さらに好ましくは1.5N/25mm以上、より好ましくは2.0N/25mm以上である。1.0N/25mm未満では十分な高温領域での低熱収縮性や耐メルトダウン特性が達成できない恐れがあるほか、電池組み立て加工工程において多孔質層(B)が剥離してしまう恐れがある。上記F(A/B)は多孔質膜Bの多孔質膜Aに対する密着性を意味する。
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
[ポリオレフィン多孔質膜(A)]
ここではポリオレフィン多孔質膜(A)としてポリエチレン多孔質膜を使用し、積層多孔質膜を作成した。ポリエチレン多孔質膜の物性については後述する。
ここではポリオレフィン多孔質膜(A)としてポリエチレン多孔質膜を使用し、積層多孔質膜を作成した。ポリエチレン多孔質膜の物性については後述する。
[ポリアミドイミド樹脂の合成]
温度計、冷却管、窒素ガス導入管のついた4ツ口フラスコにトリメリット酸無水物(TMA)1モル、o−トリジンジイソシアネート(TODI)0.8モル、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)0.2モル、フッ化カリウム0.01モルを固形分濃度が20%となるようにN−メチル−2−ピロリドンと共に仕込み、100℃で5時間攪拌した後、固形分濃度が14%となるようにN−メチル−2−ピロリドンで希釈してポリアミドイミド樹脂溶液(a)を合成した。得られたポリアミドイミド樹脂の対数粘度は1.35dl/g、ガラス転移温度は320℃であった。
温度計、冷却管、窒素ガス導入管のついた4ツ口フラスコにトリメリット酸無水物(TMA)1モル、o−トリジンジイソシアネート(TODI)0.8モル、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)0.2モル、フッ化カリウム0.01モルを固形分濃度が20%となるようにN−メチル−2−ピロリドンと共に仕込み、100℃で5時間攪拌した後、固形分濃度が14%となるようにN−メチル−2−ピロリドンで希釈してポリアミドイミド樹脂溶液(a)を合成した。得られたポリアミドイミド樹脂の対数粘度は1.35dl/g、ガラス転移温度は320℃であった。
[ポリイミドアミド樹脂を溶解したワニスの調製]
・ワニス(a)
上記で得られたポリアミドイミド樹脂溶液(a)及びN−メチル−2−ピロリドンを30:70の重量比率で配合し、フラスコ中で3時間攪拌混合し、ワニス(a)を調合した。
・ワニス(b)
上記で得られたポリアミドイミド樹脂溶液(a)及び平均粒径0.5μmのアルミナ粒子、N−メチル−2−ピロリドンをそれぞれ26:34:40の重量比率で配合し、酸化ジルコニウムビーズ(東レ(株)製、商品名“トレセラム”(登録商標)ビーズ、直径0.5mm)と共に、ポリプロピレン製の容器に入れ、ペイントシェーカー((株)東洋精機製作所製)で6時間分散させた。次いで、濾過限界5μmのフィルターで濾過し、ワニス(b)を調合した。
・ワニス(a)
上記で得られたポリアミドイミド樹脂溶液(a)及びN−メチル−2−ピロリドンを30:70の重量比率で配合し、フラスコ中で3時間攪拌混合し、ワニス(a)を調合した。
・ワニス(b)
上記で得られたポリアミドイミド樹脂溶液(a)及び平均粒径0.5μmのアルミナ粒子、N−メチル−2−ピロリドンをそれぞれ26:34:40の重量比率で配合し、酸化ジルコニウムビーズ(東レ(株)製、商品名“トレセラム”(登録商標)ビーズ、直径0.5mm)と共に、ポリプロピレン製の容器に入れ、ペイントシェーカー((株)東洋精機製作所製)で6時間分散させた。次いで、濾過限界5μmのフィルターで濾過し、ワニス(b)を調合した。
[ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)の積層]
上記で得られたワニス(a)またはワニス(b)を用いて、ブレードコート法にてポリオレフィン多孔質膜(A)に塗布し、温度25℃、絶対湿度1.8g/m3の低湿度ゾーンを8秒間、引き続き温度25℃、絶対湿度12g/m3の高湿度ゾーンを5秒間で通過させた後、N−メチル−2−ピロリドンを5重量%含有する水溶液中に10秒間浸漬し、純水で洗浄した後、70℃の熱風乾燥炉を通過させることで乾燥して積層多孔質膜を得た。この際、ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)の乾燥膜厚が2.5μmとなるようにブレードのクリアランスを調整した。
上記で得られたワニス(a)またはワニス(b)を用いて、ブレードコート法にてポリオレフィン多孔質膜(A)に塗布し、温度25℃、絶対湿度1.8g/m3の低湿度ゾーンを8秒間、引き続き温度25℃、絶対湿度12g/m3の高湿度ゾーンを5秒間で通過させた後、N−メチル−2−ピロリドンを5重量%含有する水溶液中に10秒間浸漬し、純水で洗浄した後、70℃の熱風乾燥炉を通過させることで乾燥して積層多孔質膜を得た。この際、ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)の乾燥膜厚が2.5μmとなるようにブレードのクリアランスを調整した。
実施例1
ポリオレフィン多孔質膜(A)としてポリエチレン多孔質膜(A−1)(膜厚16.0μm、透気抵抗度110sec/100ccAir、空孔率48%、平均細孔直径130nm)を使用し、ワニス(a)を使用してポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)を積層し、積層多孔質膜を得た。
ポリオレフィン多孔質膜(A)としてポリエチレン多孔質膜(A−1)(膜厚16.0μm、透気抵抗度110sec/100ccAir、空孔率48%、平均細孔直径130nm)を使用し、ワニス(a)を使用してポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)を積層し、積層多孔質膜を得た。
実施例2
ワニスとしてワニス(b)を使用したほかは実施例1と同様にして積層多孔質膜を得た。
ワニスとしてワニス(b)を使用したほかは実施例1と同様にして積層多孔質膜を得た。
比較例1
ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)を積層しないポリエチレン多孔質膜(A−1)のみの単層膜である。
ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)を積層しないポリエチレン多孔質膜(A−1)のみの単層膜である。
比較例2
ポリオレフィン多孔質膜(A)としてポリエチレン多孔質膜(A−2)(膜厚16.0μm、透気抵抗度280sec/100ccAir、空孔率38%、平均細孔直径90nm)を使用したほかは実施例2と同様にして積層多孔質膜を得た。
ポリオレフィン多孔質膜(A)としてポリエチレン多孔質膜(A−2)(膜厚16.0μm、透気抵抗度280sec/100ccAir、空孔率38%、平均細孔直径90nm)を使用したほかは実施例2と同様にして積層多孔質膜を得た。
比較例3
ポリオレフィン多孔質膜(A)としてポリエチレン多孔質膜(A−3)(膜厚20.0μm、透気抵抗度230sec/100ccAir、空孔率45%、平均細孔直径80nm)を使用したほかは実施例1と同様にして積層多孔質膜を得た。
ポリオレフィン多孔質膜(A)としてポリエチレン多孔質膜(A−3)(膜厚20.0μm、透気抵抗度230sec/100ccAir、空孔率45%、平均細孔直径80nm)を使用したほかは実施例1と同様にして積層多孔質膜を得た。
比較例4
ポリオレフィン多孔質膜(A)としてポリエチレン多孔質膜(A−3)を使用したほかは実施例2と同様にして積層多孔質膜を得た。
ポリオレフィン多孔質膜(A)としてポリエチレン多孔質膜(A−3)を使用したほかは実施例2と同様にして積層多孔質膜を得た。
[結果]
実施例1、2及び比較例1〜4で得られた多孔質膜の物性を以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
実施例1、2及び比較例1〜4で得られた多孔質膜の物性を以下の方法により測定した。結果を表1に示す。
膜厚:接触厚さ計(株式会社ミツトヨ製)により測定した。50mm角の多孔質膜を用意し、中央部と四隅の計5点の測定を行い、その算術平均を膜厚とした。
透気抵抗度:JIS−P8117に準拠し、ガーレー値を測定した。
突刺強度:多孔質膜を直径1mm(0.5mmR)の針を用いて速度2mm/秒で突刺したときの最大荷重を測定した。
空孔率:50mm角の多孔質膜を用意し、その試料体積(cm3)と質量(g)を測定し、得られた結果から次式を用いて空孔率(%)を計算した。
空孔率=(1−質量/(樹脂密度×試料体積))×100
空孔率=(1−質量/(樹脂密度×試料体積))×100
平均細孔直径:水銀圧入法により多孔質膜の平均細孔直径を求めた。
熱収縮率(HS170−60、HS130−60、HS150−60、HS150−10):TD方向の熱収縮率を測定する場合には、MD、TD方向に50×50mmとした多孔質膜を、50×35mmの開口部を有するフレームにTD方向と平行になるようにMD方向両端をテープ等により固定する。これによりMD方向は35mmの間隔で固定され、TD方向はフレーム開口部に膜端部が沿う状態で位置する。多孔質膜を固定したフレームごとオーブン中で所定の温度、時間条件で加熱後、冷却する。TD方向の熱収縮によってMDと平行である多孔質膜の端が、内側に(フレームの開口の中心に向かって)わずかに弓なりに曲がる。TD方向の収縮率(%)は、加熱後のTD方向の最短寸法を、加熱前のTD寸法(50mm)で割り算出する。
MD方向の熱収縮率を測定する場合には、上記方法においてTD及びMD方向を入れ替えて行う。
MD方向の熱収縮率を測定する場合には、上記方法においてTD及びMD方向を入れ替えて行う。
シャットダウン温度:φ45mmの多孔質膜をヒーターブロックにセットし、5℃/分で昇温しながら王研式透気抵抗度計(旭精工(株)製、EGO−1T)により透気抵抗度を測定し、透気抵抗度が10万秒/100ccに到達する温度を測定しシャットダウン温度とした。
メルトダウン温度:50mm角の多孔質膜を直径12mmの穴を有する金属製のブロック枠を用いて挟み、タングステンカーバイド製の直径10mmの球を多孔質膜の上に設置する。多孔質膜は水平方向に平面を有するように設置される。30℃からスタートし、5℃/分で昇温する。多孔質膜がボールによって破膜されたときの温度を測定し、メルトダウン温度とした。
絶縁破壊温度:コバルト酸リチウム粉末85重量部とカーボンブラック5重量部とポリフッ化ビニリデン重量部を混合し、N―メチルピロリドンを加えてペースト状に調整した後、これを厚さ20μmのアルミ箔上に塗布乾燥後プレスし正極板を作成した。これを直径16.0mmの円形に打ち抜き正極とした。次にメソフェーズカーボンマイクロビーズ粉末を90重量部とポリフッ化ビニリデン10重量部を混合し、N−メチルピロリドンを加えてペースト状に調整した後、これを厚さ18μmの銅箔上に塗布乾燥後プレスし負極板を作成した。これを直径16.2mmの円形に打ち抜き負極とした。これらの電極と多孔質膜を使用して作製した簡易ボタン電池を充電し、温度調整機能付きのシリコンオイル槽に漬けた状態で放電した際の電気抵抗を測定することにより絶縁破膜温度を決定した。
表1に示されるとおり、ポリオレフィン多孔質膜(A)の少なくとも片面に、ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)を設けた本発明の積層多孔質膜は優れた特性を有することがわかる。すなわち、本発明の積層多孔質膜は180℃を上回る絶縁破壊温度を示し、電池用セパレーターとして優れることがわかる。
Claims (9)
- ポリオレフィン多孔質膜(A)の少なくとも片面に、ポリアミドイミド樹脂を必須成分とする多孔質層(B)を設けた積層多孔質膜であり、積層多孔質膜のTD方向の熱収縮率が下式(1)の関係を満足することを特徴とする積層多孔質膜。
(HS170−60)/(HS130−60)≦1.1 …(1)
(ここでHS170−60は積層多孔質膜を170℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示し、HS130−60は積層多孔質膜を130℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示す。) - 積層多孔質膜のMD方向の熱収縮率が前記式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載の積層多孔質膜。
- 積層多孔質膜のTD方向の熱収縮率が下式(2)の関係を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の積層多孔質膜。
(HS150−60)/(HS150−10)≦1.1 …(2)
(ここでHS150−60は積層多孔質膜を150℃で60分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示し、HS150−10は積層多孔質膜を150℃で10分間積層多孔質膜を熱処理した場合の熱収縮率を示す。) - 積層多孔質膜のMD方向の熱収縮率が前記式(2)を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の積層多孔質膜。
- ポリオレフィン多孔質膜(A)のシャットダウン温度(T’s)と積層多孔質膜のシャットダウン温度(Ts)が以下の関係を満足することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層多孔質膜
(T’s−Ts)≦3℃ - メルトダウン温度が200℃以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層多孔質膜。
- メルトダウン温度が300℃以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層多孔質膜。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の積層多孔質膜からなることを特徴とする電池用セパレーター。
- 正極、負極、電解質及び請求項8に記載の電池用セパレーターを少なくとも1枚有することを特徴とする電池。
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JP2012039932A JP2013173862A (ja) | 2012-02-27 | 2012-02-27 | 積層多孔質膜、電池用セパレーター及び電池 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2016002567A1 (ja) * | 2014-06-30 | 2016-01-07 | 帝人株式会社 | 非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池 |
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US10665843B2 (en) | 2016-10-03 | 2020-05-26 | Toyota Jidosha Kabushiki Kaisha | Separator-integrated electrode plate and capacitor element |
WO2022210489A1 (ja) * | 2021-03-31 | 2022-10-06 | 東レ株式会社 | 二次電池 |
-
2012
- 2012-02-27 JP JP2012039932A patent/JP2013173862A/ja active Pending
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