JP2013173824A - 防水工事用改質アスファルト組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ストレートアスファルトに、メタロセン触媒による高流動な軟質系ポリプロピレン、ワックス及びSEBS(水添スチレン系熱可塑性エラストマー)等を添加してなる組成物であり、加熱溶融時の発煙・発臭がきわめて少なく、施工時のべたつきの少ない防水工事用改質アスファルト組成物(JISK2207防水工事用アスファルト3種に適合)。
【選択図】 なし
Description
また一般に石油の減圧蒸留残査油に減圧留出油等をカットバック材として使用し、適度な針入度又は粘度に調製したものを原料油とし、無触媒あるいは触媒下において、所定の反応条件でブローイングすることにより製造されているアスファルトが、防水工事用アスファルトとしてJISK2207防水工事用アスファルトに適合しており、主として防水工事に使われている。
該防水工事用アスファルトは、JISK2207で用途によって1〜4種に分類され、一般地域の露出屋根又は気温の比較的高い地域の屋根に用いるもので、感温性が小さいものである3種防水工事用アスファルトが多く用いられている。
また、最近の原油の高騰及び生産設備の老朽化のため、前記防水工事用アスファルトの生産量が激減しており、簡単には手に入らなくなってきている。
(1)特開平6−9878(特許文献1)では、JISK2207で規定する防水工事用アスファルトと減圧蒸留残査油を用いて防水工事用アスファルトのJIS規格を満足する範囲でしかも低煙性で低臭性を有する防水工事用アスファルト組成物の提供について、また、(2)特開平7−179768(特許文献2)では、JISK2207で規定する防水工事用アスファルトとJISK2207で規定するストレートアスファルトからなるJISK2207防水工事用アスファルトに合格する物性を有する低煙性、低臭性防水工事用アスファルト組成物の提供について、さらに(3)特開平10−81828(特許文献3)では、JISK2207で規定する防水工事用アスファルトと減圧蒸留残査油からなる、また前記防水工事用アスファルトとストレートアスファルトからなるJISK2207防水工事用アスファルトに合格する物性を有する低煙性、低臭性防水工事用アスファルト組成物の提供について記載されている。
また、(5)特開2005−213981(特許文献5)では、アスファルトとアスファルトに反応性を付与する材料(ポリオールと多価イソシアネートとの混合物及び/又はポリウレタンプレポリマー及びエポキシ樹脂から選ばれた少なくとも1種)からなり、溶融温度80〜150℃の粘度が30〜2000cPs、反応硬化前の軟化点が60℃以上の防水工事用アスファルト組成物について記載されている。
そしてまた、(7)特開2008−38121(特許文献7)では、低温脆性改善と常温での表面の粘着(べたつき)のない組成物として、アスファルトにFTワックスとメタロセン系ポリオレフィン・プラストマーを添加した防水工事用アスファルト組成物について記載されている。
さらにまた、(8)特開2004−315826(特許文献8)では、ストレートアスファルトに高軟化点ワックスを添加して加熱時の発煙、発臭が少ない摂氏200度未満で施工可能な、軟化点が70度以上でかつだれ長さが8mm未満とJIS2207規格を満足する低温度施工可能な改質アスファルトについて記載されている。
この理由は、JISK2207防水工事用アスファルト3種を使用する場合、実際のところ前記JIS規定9項目以外に作業性、施工性、環境の問題等に絡む溶融粘度、発煙性、発臭性、施工時のべたつきも含めた総合的な特性が必要となるが、これらの特性を満たすために、ストレートアスファルトに種種な改質材を添加しても、前記改質材の配合割合の組み合わせが非常に多く、前記の全ての特性を満たす適正な割合を見出すことができない、もしくは見出すことができても価格が非常に高いものとなってしまうことにある。
JIS規定にある特定の特性、例えば、フラースぜい化点は低温改善改質材を用いると前記JIS規定を満たすことができるが、この配合割合が多くなると加熱安定性を満たすことができない場合があり、また粘度が高くなり過ぎるため、施工時溶融温度を高くする必要が生じ、発煙、発臭が起こるなどの問題が生じる。だれ防止、べたつき防止のためワックス類を用いるが、多く配分すればするほどべたつきは改善されるが、ワックス類を5%を超えて配合するとワックスはトルエンに溶けにくいため、トルエン可溶分を満たすことができなくなる。
[1] ストレートアスファルトに、SEBS(水添スチレン系熱可塑性エラストマー)、ワックス及び軟質ポリプロピレンを添加してなり、加熱溶融時の発煙・発臭が少なく、施工時のべたつきの少ない防水工事用改質アスファルト組成物。
[2] 軟質ポリプロピレンが、メタロセン触媒を使用して得られたものであって、
MFR(g/10min):15〜25、ビカット軟化温度(500g荷重)(℃):100〜125の特性を備えたものであることを特徴とする前記[1]に記載の防水工事用改質アスファルト組成物。
[3] 下記組成の前記[1]又は[2]に記載の防水工事用改質アスファルト組成物。
ストレートアスファルト:85〜91重量%、
SEBS(水添スチレン系熱可塑性エラストマー):6〜10重量%、
ワックス:2.5〜4.5重量%、
軟質ポリプロピレン:0.5〜2重量%、
ただし、ワックス+軟質ポリプロピレン:5重量%以下。
[4] ワックスが、フィッシャー・トロプシュワックスと低分子量ポリオレフィンの混合品、又は低分子量ポリオレフィン単体であることを特徴とする前記[1]〜前記[3]のいずれか1項に記載の防水工事用改質アスファルト組成物。
[5] 改質アスファルト組成物が、JISK2207防水工事用アスファルト3種に記載のある以下の規定値、即ち、軟化点(℃):100以上、針入度(25℃):20以上40以下、だれ長さ(mm):8mm以下、トルエン可溶分:95以上、引火点(℃):280以上、蒸発質量変化率(質量%):1以下、針入度指数:5.0以上、フラースぜい化点(℃):−15以下、加熱安定性(℃):5以下、を満たすものであることを特徴とする前記[1]〜前記[4]のいずれか1項に記載の防水工事用改質アスファルト組成物。
4.5重量%より多いと、軟質ポリプロピレンも材料として0.5重量%以上添加しており、ワックスと軟質ポリプロピレン2つの総重量が5重量%を超えるので、ワックスも軟質ポリプロピレンもトルエンに溶けにくいことから、トルエン可溶分が95以上を満たさなくなる。
さらにメタロセン触媒を用いて作られたMFR(g/10min):15〜25、ビカット軟化温度(500g荷重)(℃):100〜125の特性を有する軟質ポリプロピレンを使用するため、施工時のべたつきを低減した防水工事用改質アスファルト組成物となる。
本実施例においては、180〜185℃に加熱したストレートアスファルトにワックスを温度185〜195℃で添加して、「T.K.HOMOMIXER MARKII」(商
品名:特殊機化社製の混合機)を用いて、回転数1500回転/分で45分間混合し、次に温度190〜200℃でSEBS(水添スチレン系熱可塑性エラストマー)を添加して、回転数3000回転/分で45分間混合した。最後に温度195〜200℃で軟質ポリプロピレンを添加し、回転数3300回転/分で2時間混合して各改質アスファルト組成物を作製した。
本比較例においては、前述のワックスを添加して次に温度190〜200℃でSEBSを添加して回転数3000回転/分で混合するところまでは実施例と同じで、攪拌時間を2時間として改質アスファルト組成物を作製した。
また、本実施例、比較例でのストレートアスファルトは昭和シェル石油社製の80−100を主として使用した。一つの実施例(実施例8)のみ150−200を使用した。またSEBS(水添スチレン系熱可塑性エラストマー)(A)として、ダイナソル社製のカルプレンH6110を、さらにまたSEBS(B)としてポリメリヨーロッパ社製のユーロプレンTH2312を使用した。またワックス(フイッシャー・トロプシュワックス)aとしてCHUMANN SASOL社製のSASOBIT、ワックス(低分子量ポリオレフィン)bとして三井化学社製のHIWAXNP055を使用した。また、軟質ポリプロピレンとしては、メタロセン触媒により作られたMFR(g/10min):15〜25、ビカット軟化温度(500g荷重)(℃):100〜125の特性を有するポリプロピレンを使用した。
次に上述の方法で作製した改質アスファルト組成物をJISK2207に規定されている方法で、該JISに規定された項目(軟化点、針入度、針入度指数、だれ長さ、蒸発質量変化率、引火点、トルエン可溶分、フラースぜい化点、及び加熱安定性)を測定した。
また、200℃における粘度は、東京計器社製のBH型粘度計を使用して、No.1ローターを用いて回転数は20rpm/分の条件で測定した。
また、べたつき(靴で踏んだ時のべたつき感触)は、「シェーンボード:商品名(910mm×605mm×厚み35mm)」(日新工業(株)製の硬質ウレタンフォーム保温板)
を図1に示すように、4等分したそれぞれの区画に、溶かした前述のアスファルト組成物をまいて供試体を作製した。
60℃に設定した恒温室で該供試体を2hr保持し、該供試体の表面温度が60℃になったことを確認後、恒温室の中で靴で踏んだ時のべたつき感を5人で確認し、べたつき感の少ない順に表示した。
なお、該供試体の表面温度の測定機器として、testo社製の赤外線放射温度計「830-T1」を使用した。
さらに、発臭性は、亜硫酸ガス及び硫化水素ガスの発生ガス濃度で代用し、改質アスファルト組成物を1リットル缶に入れて蓋をして加熱溶融し、温度が200℃〜240℃の範囲で10℃毎にガス検知管(株式会社ガステック社製)の先端を缶と蓋の隙間から、缶の半径
方向中心部当たりに検知管の先端がくるように4cm程度差し込み、ガスを採取して亜硫酸ガス濃度、硫化水素ガス濃度を測定した。
改質材の配合割合を増していくと低温性能は上がり、フラースぜい化点温度を低くすることができる。以下に前記SEBS2種類(A、B)及び他の材料の配合重量%とフラースぜい化点の関係をつかむため、事前に試験1から11を行った。その結果を表1に示す。
SEBSの重量%を減らしていくとフラースぜい化点の値は大きくなる。
不溶分を増やすとトルエン可溶分は下がる。
施工時のこのべたつきの強弱は、軟質ポリプロピレンの配合割合と密接な関係があることが分かった。下記(1)〜(6)のとおり、軟質ポリプロピレンを増やすと施工時のべたつき感が弱くなる。
SEBS(A)使用時
(1)ワックスa(0.5%)+ワックスb(3%)+軟質ポリプロピレン(1%)
:べたつきはシグマートSより弱い
(2)ワックスa(0.5%)+ワックスb(3%)+軟質ポリプロピレン(0.7%)
:べたつきはシグマートSと同等
(3)ワックスa(1.1%)+ワックスb(3%)+軟質ポリプロピレン(0%)
: べたつきはシグマートSより強い
(4)ワックスa(1.1%)+ワックスb(3%)+ポ軟質リプロピレン(2%)
: べたつきはシグマートSよりかなり弱い
SEBS(B)使用時
(5)ワックスa(2%)+ワックスb(3%)+軟質ポリプロピレン(1%)
: べたつきはシグマートSより弱い
(6)ワックスa(2%)+ワックスb(2%)+軟質ポリプロピレン(0.5%)
: べたつきはシグマートSと同等か少し強い
(注:「シグマートS」(日新工業(株)製の防水工事用アスファルト):JISK2207 3種に適合するアスファルト、適正施工温度は250〜280℃)
(1)シグマートEと同等以上の弱いべたつき感を目標としている。
(2)実施例、比較例とも軟質ポリプロピレンを添加した改質アスファルト組成物は、シグマートEよりもべたつきが弱い。軟質ポリプロピレンを0.5重量%より多く添加した添加した実施例1,同3,同4,同5、同7,比較例5はシグマートSよりもさらにべたつきが弱い。
すなわち、下記の関係であった。
{ほとんど無い(弱い)} → → {僅かにあり}→ {あり(強い)}
実施例(1,4,5)、比較例5>実施例7≧実施例3>シグマートS *1 ≒実施例2≧比較例4,実施例6>実施例8≧シグマートE *2 >比較例2,比較例3≧比較例1
シグマートS*1:アスファルト施工時、靴で踏んだ時のべたつき感が非常に弱いブローンアスファルト系のJISK2207防水工事用アスファルト3種に適合するアスファルト。
シグマートE*2:JISK2207防水工事用アスファルト3種に適合していないアスファルト。靴で踏んだ時のべたつき感はシグマートSより僅かに劣る。
表5に示すように亜硫酸ガス発生濃度は、実施例も比較例もシグマートSとほぼ同じレベルであるが、硫化水素ガス発生濃度は、実施例も比較例も同レベルでシグマートSよりもかなり低いレベルである。
実施例1:220、実施例3:180、シグマートS:280(粘度単位:mPa・s)
シグマートSなどのブローンアスファルト系のJISK2207適合防水工事用アスファルト3種品は、実際のところ、施工に適した温度(250℃から280℃位)まで加熱溶融して使用するため、発煙・発臭の問題があるが、実施例のように、本願発明品はシグマートSより低粘度であるので、施工に適したアスファルト溶融温度を200℃から230℃と低くできるため、250℃から280℃の高温にすることに拠る施工時の安全確保、反省エネ及び施工現場近辺への臭いの問題の解決につなげることができる。
比較例5では、べたつきはほとんど無いが、トルエン可溶分が規定を満たさない。これに対して、本願発明の範囲内の実施例1〜8の改質アスファルト組成物は、JIS K2207防水工事用アスファルト3種の規定項目全てに適合している。
また加熱溶融時の発臭性、発煙性についてもブローンアスファルト系のJIS K2207防水工事用アスファルト3種品よりも少なく、アスファルト施工時のべたつきもシグマートE以上に弱い。またアスファルト施工時の溶融温度も低くすることができ、省エネ及び施工現場近辺への発煙・発臭も低減できる。
Claims (5)
- ストレートアスファルトに、SEBS(水添スチレン系熱可塑性エラストマー)、ワックス及び軟質ポリプロピレンを添加してなり、加熱溶融時の発煙・発臭が少なく、施工時のべたつきの少ない防水工事用改質アスファルト組成物。
- 軟質ポリプロピレンが、メタロセン触媒を使用して得られたものであって、
MFR(g/10min):15〜25、ビカット軟化温度(500g荷重)(℃):100〜125の特性を備えたものであることを特徴とする請求項1に記載の防水工事用改質アスファルト組成物。 - 下記組成の請求項1又は2に記載の防水工事用改質アスファルト組成物。
ストレートアスファルト:85〜91重量%、
SEBS(水添スチレン系熱可塑性エラストマー):6〜10重量%、
ワックス:2.5〜4.5重量%、
軟質ポリプロピレン:0.5〜2重量%
ただし、ワックス+軟質ポリプロピレン:5重量%以下。 - ワックスが、フィッシャー・トロプシュワックスと低分子量ポリオレフィンの混合品、又は低分子量ポリオレフィン単体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の防水工事用改質アスファルト組成物。
- 改質アスファルト組成物が、JISK2207防水工事用アスファルト3種に記載のある以下の規定値、即ち、軟化点(℃):100以上、針入度(25℃):20以上40以下、だれ長さ(mm):8mm以下、トルエン可溶分:95以上、引火点(℃):280以上、蒸発質量変化率(質量%):1以下、針入度指数:5.0以上、フラースぜい化点(℃):−15以下、加熱安定性(℃):5以下、を満たすものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の防水工事用改質アスファルト組成物。
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