JP2013142419A - 保護カバー及びこの保護カバーを装着する車両用転がり軸受装置 - Google Patents

Abstract

【課題】車両用転がり軸受装置の磁気エンコーダー部を覆って保護する保護カバーの抜け止めを図る。
【解決手段】保護カバー２０には、磁気エンコーダー部１６を覆う第１円環部２１と、第１円環部２１の内径端部２１ａから延出して内輪部材１１の内周面１１ｄに嵌り込む第１円筒部２２と、第１円筒部２２のうち第１円環部２１の配設側と反対の軸方向端部２２ａには、内輪部材１１の内周面１１ｄから内輪部材１１の車両インナー側端面１１ａと反対の車両アウター側端面１１ｃにわたって形成されることで保護カバー２０を抜け止めする抜止部２３を有しており、抜止部２３は、第１円筒部２２より径方向外方側に折り曲げられるとともに、径方向に弾性変形可能である。
【選択図】図３

Description

この発明は保護カバー及びこの保護カバーを有する車両用転がり軸受装置に関する。

従来、車両の車体側部材に固定される外輪部材と、前記外輪部材と同芯であり、且つ前記外輪部材の径方向内方側に配置され、内周面にシャフトが挿通される内輪部材と、前記外輪部材と前記内輪部材との間に介装される転動体と、前記内輪部材のうち前記車体側部材に対向する第１の軸方向端面側（車両インナー側）の前記内輪部材の外周面に配置される円環状の磁気エンコーダー部と、を備える車両用転がり軸受装置が知られている。

車両用転がり軸受装置が備える磁気エンコーダー部は、車輪の回転速度を検出する回転検出装置として用いられるものである。外輪部材の車両インナー側には、環状カバー体に保持されるセンサーが設けられる。そして、車輪の回転に伴い回転する磁気エンコーダー部の回転変化をセンサーによって検出することで車輪の回転速度を検出する。
ここで、車両用転がり軸受装置が備える磁気エンコーダー部は、磁力を有しているため車両に取付けるまでの間に露出した状態が持続されると、その着磁面に鉄粉等の異物の付着が誘発されて着磁特性悪化の原因となる。そこで、特許文献１に開示されるような車両用転がり軸受装置の保護カバーが知られている。

特許文献１の図３に示すように保護カバーは、合成樹脂で形成されており磁気エンコーダー部を軸方向から覆う円環状の円板部と、この円板部から軸方向に延出して軸受の内周壁に嵌り込む円筒部を有している。この円筒部の外周面には、車両用転がり軸受装置に嵌り込んだ状態を保持するため径方向外方に向かって突出する突条が形成される。この突条が軸受の内周壁を押圧することで摩擦力を生じさせ、保護カバーを車両用転がり軸受装置に嵌り込んだ状態で保持する。

特開２００９−７３４７３号公報

しかしながら、合成樹脂は、その特性として荷重がかかった状態が継続されると時間の経過とともに形状の変形が進行していくといったクリープ現象が知られている。すなわち、合成樹脂は、長期間の荷重負荷があるとその応力にみあった歪み（変形量）が永久歪みとして残った一種の「へたり」を生ずる。そのため、保護カバーは、嵌め込んだ状態が長く続いて突条が変形して保護カバーを取り付けた当初の保持力を失って車両用転がり軸受装置から抜け落ちてしまうおそれがある。そうすると、磁気エンコーダー部の着磁面の保護ができないおそれがある。

而して、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、本発明が解決しようとする課題は、車両用転がり軸受装置の磁気エンコーダー部を覆って保護する保護カバーの抜け止めを図ることにある。

上記課題を解決するために、本発明の保護カバーは次の手段をとる。
先ず、第１の発明に係る保護カバーは、車両の車体側部材に固定される外輪部材と、前記外輪部材と同芯であり、且つ前記外輪部材の径方向内方側に配置されて内周面にシャフトが挿通される内輪部材と、前記外輪部材と前記内輪部材との間に介装される転動体と、前記内輪部材のうち前記車体側部材に対向する第１の軸方向端面側の前記内輪部材の外周面に配置される円環状の磁気エンコーダー部と、を備える車両用転がり軸受装置において前記磁気エンコーダー部を覆って保護する保護カバーであって、前記保護カバーには、前記磁気エンコーダー部を覆う円環部と、前記円環部の内径端部から延出して前記内輪部材の内周面に嵌り込む円筒部と、前記円筒部のうち前記円環部の配設側と反対の軸方向端部には、前記内輪部材の内周面から前記内輪部材の第１の軸方向端面と反対の第２の軸方向端面にわたって形成されることで保護カバーを抜け止めする抜止部を有しており、前記抜止部は、前記円筒部より径方向外方側に折り曲げられるとともに、径方向に弾性変形可能であることを特徴とする。

この第１の発明によれば、保護カバーは、磁気エンコーダー部を覆う円環部によって磁気エンコーダー部の着磁面を保護する。円筒部は、円環部の内径端部から延出して内輪部材の内周面に嵌り込む。これにより、内輪部材の内周面を保護すると共に、保護カバーを嵌め込む際の位置決めが容易となる。
更に、円筒部に設けられる抜止部は、円環部の配設側と反対の軸方向端部に設けられ、内輪部材の内周面から前記内輪部材の第１の軸方向端面と反対の第２の軸方向端面にわたって形成される。保護カバーは、内輪部材の第２の軸方向端面に引っかかることで嵌め込み状態を保持する構成であることから、クリープ現象に伴う保護カバーの抜け止めを防ぐことができる。また、抜止部は、径方向に弾性変形可能であるため、脱着が容易である。

次に、第２の発明に係る保護カバーは、前記円筒部のうち前記円環部の配設側と反対の軸方向端部には、更に前記円筒部より径方向内方側に折り曲げられる折曲部を有していることを特徴とする。

この第２の発明によれば、折曲部の構成を有することで、車両用転がり軸受装置を車両に取付ける際に、保護カバーを外し忘れたとしても内輪部材にシャフトを挿通すると、折曲部がシャフトに押されて外れる構成となる。そのため、保護カバーの外し忘れを防ぐことができる。また、保護カバーは、車両に取付けるまでの間に使用するものであることから、材料コストを鑑みれば、保形性を満たす範囲内で極力肉薄に形成したい。ここで、折曲部は、第２の軸方向端面において径方向内方側に折り曲げられるため、円筒部の補強としての役割も果たし保護カバー全体の剛性向上を図ることができる。これにより、材料コストを抑制しつつ保形性を維持する保護カバーとし得る。

次に、第３の発明に係る保護カバーを装着する車両用転がり軸受装置は、車両の車体側部材に固定される外輪部材と、前記外輪部材と同芯であり、且つ前記外輪部材の径方向内方側に配置され、内周面にシャフトが挿通される内輪部材と、前記外輪部材と前記内輪部材との間に介装される転動体と、前記内輪部材のうち前記車体側部材に対向する第１の軸方向端面側の前記内輪部材の外周面に圧入される円環状の磁気エンコーダー部と、を備える車両用転がり軸受装置であって、前記第１の発明または第２の発明に記載の保護カバーを装着することを特徴とする。

この第３の発明によれば、保護カバーによって磁気エンコーダー部を好適に保護される車両用転がり軸受装置とすることができる。

本発明は上記各発明の手段をとることにより、車両用転がり軸受装置の磁気エンコーダー部を覆って保護する保護カバーの抜け止めを図ることができる。

車両における車軸懸架式における後輪懸架装置を示す概要図である。 後輪懸架装置における車両用転がり軸受装置をリヤアクスルシャフトに組み付けた状態を示す断面図である。 本発明の実施形態に係る保護カバーを車両用転がり軸受装置に装着した状態を断面図である。 本発明の実施形態に係る保護カバーを車両用転がり軸受装置に装着した状態を示す斜視図である。 本発明の実施形態に係る保護カバーを下方側から示す斜視図である。

以下に、本発明を実施するための実施形態について、図１〜図５を用いて説明する。
なお、以下の説明において、車両インナー側とは図２、３における左側を示し、車両アウター側とは図２、３における右側を示すものとする。

車両用転がり軸受装置１０は、図１に示すように車軸懸架式における後輪懸架装置Ｃに使用される。車両用転がり軸受装置１０は、図２に示すように、例えば複列外向きアンギュラ玉軸受で構成されている。シャフトとしてのリヤアクスルシャフトＡに対しその軸方向に挿通され、圧入外嵌される内輪部材１１と、この内輪部材１１と同芯に配置された外輪部材１２と、この内輪部材１１と外輪部材１２との間に介装される転動体１３とを有している。外輪部材１２の車両インナー側の端部１２ａにおける外周側には、図１、４に示すように、アクスルハウジングとしてのリヤアクスルハウジングＥ（車両の車体側部材）に固定するためのフランジ１２ｂが一体形成される。このフランジ１２ｂには、ボルトを挿通させるボルト挿通孔１４が形成され、ボルトを介してリヤアクスルハウジングＥ（図１参照）に固定される。

リヤアクスルシャフトＡの車両アウター側には、図２に示すように車両用転がり軸受装置１０の内輪部材１１を当接させて位置決めするための段部Ａ１が形成される。この段部Ａ１に連続する車両インナー側には、車両用転がり軸受装置１０の内輪部材１１が圧入外嵌される圧入軸部Ａ２が形成されている。この圧入軸部Ａ２は車両用転がり軸受装置１０の内輪部材１１と、後述する車両用転がり軸受装置１０を固定するためのスペーサＦ１やリテーナリングＦ２等の周辺部品が圧入外嵌される程度の軸長を有している。

車両用転がり軸受装置１０の車両インナー側の端部側には、図２、３に示すように凹部１５が形成される。この凹部１５は、外輪部材１２の車両インナー側の端部１２ａを、内輪部材１１の車両インナー側端面１１ａ（第１の軸方向端面）よりも車両インナー側に突出させることによって形成されている。

図２、３に示すように車両用転がり軸受装置１０の内輪部材１１のうち、リヤアクスルハウジングＥ（車体側部材）に対向する内輪部材１１の外周面１１ｂ（換言すれば、凹部１５の底部１５ａ側に位置する内輪部材１１における外周面１１ｂ）には、円環状の磁気エンコーダー部１６が装着固定される。この磁気エンコーダー部１６は異なる極性の磁極（Ｎ極，Ｓ極）が周方向に交互並んで形成される。磁気エンコーダー部１６は内輪部材１１に固定された状態で、内輪部材１１の車両インナー側端面１１ａから若干車両インナー側へ突出する程度の厚みで形成されている。

磁気エンコーダー部１６の回転による磁気変化を検出するためのセンサー１７は、図２に示すように外輪部材１２のフランジ１２ｂに装着される。このフランジ１２ｂに形成されるセンサ挿入孔１２ｃ内に外部からセンサー１７が挿入されている。挿入されるセンサー１７は、その先端が磁気エンコーダー部１６に近接されて配設されることによって、磁気変化を検出するすることで車輪の回転速度を検出する。

次に、保護カバー２０について説明する。
保護カバー２０は、図３に示されるように車両用転がり軸受装置１０に使用され、この車両用転がり軸受装置１０の凹部１５の底部１５ａ側に装着される円環状の磁気エンコーダー部１６を保護するためのものである。保護カバー２０は、合成樹脂で形成される。この保護カバー２０は、図３に示すように車両用転がり軸受装置１０の凹部１５における底部１５ａ側に位置する磁気エンコーダー部１６を覆う円環状の第１円環部２１（円環部）が形成される。この第１円環部２１の内径端部２１ａの径寸法は、内輪部材１１の内周面１１ｄにおける内径寸法と略同一であるような寸法に設定されている。そして、内径端部２１ａから延出して内輪部材１１の内周面１１ｄに嵌り込む第１円筒部２２（円筒部）が形成される。
第１円筒部２２のうち第１円環部２１の配設側と反対の軸方向端部２２ａには、保護カバー２０を抜け止めする抜止部２３が形成される。
この抜止部２３は、内輪部材１１の内周面１１ｄから内輪部材１１の車両インナー側端面１１ａ（第１の軸方向端面）と反対の車両アウター側端面１１ｃ（第２の軸方向端面）にわたって形成されており、第１円筒部２２より径方向外方側に折り曲げられる爪状の部材である。また、抜止部２３は、径方向に弾性変形可能に構成される。抜止部２３は、少なくとも周方向に２つ構成されている。
また、第１円筒部２２のうち第１円環部２１の配設側と反対の軸方向端部２２ａには、抜止部２３のほかに、第１円筒部２２より径方向内方側に折り曲げられる折曲部２４が形成される。

さらに保護カバー２０は、図３〜５に示すように第１円環部２１から第２円筒部２５が連続形成される。第２円筒部２５は、第１円環部２１の外径端部２１ｂからリヤアクスルシャフトＡの軸方向に延び、車両用転がり軸受装置１０の凹部１５の内周壁１５ｂ（フランジ１２ｂ内）に嵌り込むように連続形成される。この第２円筒部２５は、その軸方向端部２５ａから径方向外方側に延出し、外輪部材１２の車両インナー側の端部１２ａの一部を覆う第２円環部２６が形成される。
また保護カバー２０は、第２円環部２６から延出した把持部２８が形成される。把持部２８は、第２円環部２６から径方向外方に延出し、フランジ１２ｂの外周に回り込んで形成される。また保護カバー２０は、第２円環部２６から延出してセンサ挿入孔１２ｃを覆う孔部被覆片２９が形成される。孔部被覆片２９は、フランジ１２ｂのセンサ挿入孔１２ｃの配設位置に対応する部位における第２円環部２６からさらに径方向外方に延出し、フランジ１２ｂの外周のセンサ挿入孔１２ｃを覆うよう形成される。

このように、実施形態の保護カバー２０は、磁気エンコーダー部１６を覆う第１円環部２１によって磁気エンコーダー部１６の着磁面を保護する。第１円筒部２２は、第１円環部２１の内径端部２１ａから延出して内輪部材１１の内周面１１ｄに嵌り込む。これにより、内輪部材１１の内周面１１ｄを保護すると共に、保護カバー２０を嵌め込む際の位置決めが容易となる。更に、第１円筒部２２に設けられる抜止部２３は、第１円環部２１の配設側と反対の軸方向端部２２ａに設けられ、内輪部材１１の内周面１１ｄから内輪部材１１の車両インナー側端面１１ａと反対の車両アウター側端面１１ｃにわたって形成される。保護カバー２０は、内輪部材１１の車両アウター側端面１１ｃに引っかかることで嵌め込み状態を保持する構成であることから、クリープ現象に伴う保護カバー２０の抜け止めを防ぐことができる。また、抜止部２３は、径方向に弾性変形可能であるため、脱着が容易である。

また、折曲部２４の構成を有することで、車両用転がり軸受装置１０を車両に取付ける際に、保護カバー２０を外し忘れたとしても内輪部材１１にリヤアクスルシャフトＡ（シャフト）を挿通すると、折曲部２４がリヤアクスルシャフトＡに押されて外れる構成となる。そのため、保護カバー２０の外し忘れを防ぐことができる。また、保護カバー２０は、車両に取付けるまでの間に使用するものであることから、材料コストを鑑みれば、保形性を満たす範囲内で極力肉薄に形成したい。ここで、折曲部２４は、車両アウター側端面１１ｃにおいて径方向内方側に折り曲げられるため、第１円筒部２２の補強としての役割も果たし保護カバー２０全体の剛性向上を図ることができる。これにより、材料コストを抑制しつつ保形性を維持する保護カバー２０とし得る。

また、上記構成の保護カバー２０を装着する車両用転がり軸受装置１０は、かかる保護カバー２０によって磁気エンコーダー部１６を好適に保護される。

以上、本発明の実施形態１について説明したが、本発明の車輪用転がり軸受装置は、本実施の形態に限定されず、その他各種の形態で実施することができるものである。
例えば、図４，５に示すように抜止部２３は、少なくとも周方向に２つ構成されているものについて示したが、周方向に２つ以上あってもよい。

１０ 車両用転がり軸受装置
１１ 内輪部材
１１ａ 車両インナー側端面（第１の軸方向端面）
１１ｂ 外周面
１１ｃ 車両アウター側端面（第２の軸方向端面）
１１ｄ 内周面
１２ｃ センサ挿入孔
１２ｂ フランジ
１２ 外輪部材
１２ａ 車両インナー側の端部
１３ 転動体
１４ ボルト挿通孔
１５ 凹部
１５ａ 底部
１５ｂ 内周壁
１６ 磁気エンコーダー部
１７ センサー
２０ 保護カバー
２１ 第１円環部（円環部）
２１ａ 内径端部
２１ｂ 外径端部
２２ 第１円筒部（円筒部）
２２ａ 軸方向端部
２３ 抜止部
２４ 折曲部
２５ 第２円筒部
２５ａ 軸方向端部
２６ 第２円環部
２８ 把持部
２９ 孔部被覆片，
Ａ リヤアクスルシャフト（シャフト）
Ａ１ 段部
Ａ２ 圧入軸部
Ｃ 後輪懸架装置
Ｅ リヤアクスルハウジング（車体側部材）
Ｆ１ スペーサ
Ｆ２ リテーナリング

Claims (3)

1. 車両の車体側部材に固定される外輪部材と、前記外輪部材と同芯であり、且つ前記外輪部材の径方向内方側に配置されて内周面にシャフトが挿通される内輪部材と、前記外輪部材と前記内輪部材との間に介装される転動体と、前記内輪部材のうち前記車体側部材に対向する第１の軸方向端面側の前記内輪部材の外周面に配置される円環状の磁気エンコーダー部と、を備える車両用転がり軸受装置において前記磁気エンコーダー部を覆って保護する保護カバーであって、
   前記保護カバーには、
   前記磁気エンコーダー部を覆う円環部と、
   前記円環部の内径端部から延出して前記内輪部材の内周面に嵌り込む円筒部と、
   前記円筒部のうち前記円環部の配設側と反対の軸方向端部には、前記内輪部材の内周面から前記内輪部材の第１の軸方向端面と反対の第２の軸方向端面にわたって形成されることで保護カバーを抜け止めする抜止部を有しており、
   前記抜止部は、前記円筒部より径方向外方側に折り曲げられるとともに、径方向に弾性変形可能であることを特徴とする保護カバー。
2. 請求項１に記載の保護カバーであって、
   前記円筒部のうち前記円環部の配設側と反対の軸方向端部には、更に前記円筒部より径方向内方側に折り曲げられる折曲部を有していることを特徴とする保護カバー。
3. 車両の車体側部材に固定される外輪部材と、前記外輪部材と同芯であり、且つ前記外輪部材の径方向内方側に配置され、内周面にシャフトが挿通される内輪部材と、
   前記外輪部材と前記内輪部材との間に介装される転動体と、前記内輪部材のうち前記車体側部材に対向する第１の軸方向端面側の前記内輪部材の外周面に圧入される円環状の磁気エンコーダー部と、を備える車両用転がり軸受装置であって、
   前記請求項１または２に記載の保護カバーを装着する車両用転がり軸受装置。
   

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