JP2013140126A - 濃度定量装置、濃度定量方法及びプログラム - Google Patents

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Abstract

【課題】観測対象の任意の層における目的成分の濃度を高精度に算出することが可能な濃度定量装置、濃度定量方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】複数の層により構成される観測対象のうち、任意の層における目的成分の濃度を定量する濃度定量装置100であって、光路長分布記憶部102と、時間分解波形記憶部103と、表面の散乱状態が光路長分布のモデル及び時間分解波形のモデルを算出する際に想定された散乱状態になるように調整された観測対象に短時間パルス光を照射する照射部104と、短時間パルス光が観測対象によって後方散乱され、散乱状態が調整された観測対象の表面から射出された光を受光する受光部105と、吸収係数算出部110と、濃度算出部113と、を含む。
【選択図】図1

Description

本発明のいくつかの様態は、複数の層により構成される観測対象のうち、任意の層における目的成分の濃度を、非侵襲的にかつ高精度に定量する濃度定量装置、濃度定量方法及びプログラムに関する。
近年、我が国は飽食の時代にあって、糖尿病の患者が毎年増加し続けている。そのために、糖尿病性腎炎の患者も毎年増加し続けることとなっている。その結果、慢性腎不全の患者も毎年1万人もの増加を続け、患者数は28万人を超えるようになってきている。
一方、高齢化社会の到来により、予防医学に対する要求の高まりを受けて、個人における代謝量管理の重要性が急速に増大している。中でも、血糖値測定は、食前や食後の血糖値を測定することで糖代謝の反応が分かることが知られている。糖尿病のごく初期段階での糖代謝の反応を評価することで、糖尿病の早期診断に基づく早期治療が可能になる。
従来、血糖値の測定は、腕あるいは指先等の静脈から採血を行い、この血液中のグルコースに対する酵素活性を測定することで行っている。しかし、このような血糖値の測定方法では、採血が煩雑であり、しかも採血に痛みを伴い、さらには感染症の危険性を伴う等の様々な問題がある。
また、血糖値を連続的に測定する方法としては、静脈に注射針を刺した状態で連続的に血糖値相応のグルコースの定量を行う機器が米国にて開発されており、現在臨床試験中である。しかし、静脈に注射針を刺したままにしているために、血糖値の測定中に針が抜ける危険性や感染症の危険性がある。
そこで、採血無しに頻繁に血糖値を測定することができ、しかも感染症の危険性が無い血糖値の測定装置の開発が求められている。さらには、簡単にかつ常時装着可能であり、小型化可能な血糖値の測定装置の開発が求められている。
近赤外の連続光を用いて非侵襲的に血糖値を測定する装置としては、分子吸光の原理を用いた一般的な分光分析測定の原理を適用した装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
この装置は、皮膚の赤外スペクトルを用いて生体成分濃度の定量をおこなう場合に、皮下脂肪の影響を受けて生体成分濃度の定量に誤差が生じることに対応したものである。より具体的には、皮膚に近赤外の連続光を照射し、その光吸収量からグルコースの濃度を算出する装置である。
この装置では、予めグルコース濃度と照射する近赤外光の波長と光の吸収量との関係を示す検量線を作成しておく。そして、皮膚に近赤外の連続光を照射し、この皮膚からの戻り光をモノクロメーター等を用いてある波長域を走査し、その波長域の各波長に対する光の吸収量を求め、この各波長における光の吸収量と検量線とを比較する。これにより、血液中のグルコース濃度、すなわち血糖値を算出している。
また、1700nm〜1800nmの波長範囲から選択した皮下脂肪の特異吸収波長での吸光度から、皮膚の性状の分類を行い、「皮膚厚さ」の代用特性として検量式を選択している。
さらには、予備的に近赤外の受光部と発光部との間隔を650μmとして推定した「皮膚厚さ」を1.2mm以上、1.2mm未満のいずれかに判断し、受光部と発光部との間隔を650μm、300μmのいずれかに選択した後に検量式を選択している。
一方、近赤外光を用いた生体診断としては、例えば、時間分解計測法を用いた生体組織イメージングにより皮膚主成分における近赤外光の吸収量を測定し、この吸収量を基に皮膚主成分の各割合、例えば、血糖相応のグルコース濃度を求める方法が知られている。
この皮膚主成分の吸収量には波長依存性があるので、通常、予め皮膚主成分の定量に影響を及ぼす変動要因を多変量解析で複数の割合で変化させた複数のスペクトラムを作製しておく。そして、皮膚主成分における近赤外光の吸収量の測定結果のスペクトルを上記の複数のスペクトラムと比較し、これらのスペクトラムから一致するスペクトラムを選ぶ。これにより、皮膚主成分の各割合を推定している。
特許第3931638号公報 特許第3994588号公報
しかしながら、従来の近赤外の連続光を用いた非侵襲的に血糖値を測定する装置では、特定深さを通過する経路の光の吸収量のみを測定することができない。したがって、特定深さの皮膚主成分における血糖相応のグルコース濃度を精度よく定量することができないという問題点があった。
また、特許文献1の装置では、皮膚表面から皮下脂肪までの深さを「皮膚厚さ」として、皮下脂肪の特異吸収波長での吸光度から皮膚の性状を分類すること、例えば、皮膚表面から皮下脂肪までの深さを「皮膚厚さ」として代用することには、(1)皮膚の真皮層と皮下組織層の境界は、皮膚の表面からの深さとして均一では無いこと、(2)真皮層には脂肪を分泌する汗腺があって脂肪分泌物を蓄えていること、(3)皮下脂肪の特異吸収波長での吸光度から皮膚の性状の分類を行う場合、真皮層の細胞及び間質液には脂肪が含まれているので、真皮層と皮下脂肪との区別が難しいこと、等の理由により問題点があった。
一般に、皮膚の赤外スペクトルを用いて生体成分濃度の定量を行う場合、受光部と発光部との間隔によって定まるバナナシェイプ特性により、皮膚内での光路の皮膚表面からの深さが概ね推定される。例えば、受光部と発光部との間隔を650μmとすれば、光路の皮膚表面からの深さは325μmと推定され、また、受光部と発光部との間隔を300μmとすれば、光路の皮膚表面からの深さは150μmと推定される。
しかしながら、特許文献1の装置では、上記の理由等により、皮膚の赤外スペクトルを用いて生体成分濃度の定量を行う部位を特定することができない。したがって、真皮層中で間質成分の一つとしてグルコースが存在している網状層(Stratum reticulare)を特定部位として、この特定部位を透過する光路での吸光度を選択的に測定することはできない。
特許文献2では、近赤外線の照射部及び受光部を備えたセンシング部と、このセンシング部を100〜750gf/cmの接触圧力にて皮膚に接触させる保持手段と、このセンシング部と皮膚表面との接触圧力を測定する測定手段と、この接触圧力が適正接触圧力となったときにその旨を知らせる告知手段とを備えた血糖値測定装置が開示されている。
しかしながら、この血糖値測定装置においても、照射部から皮膚内へ光が入射する状態、及び皮膚から後方散乱する光が受光部へ入射する状態を測定することができない。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、観測対象の任意の層における目的成分の濃度を高精度に算出することが可能な濃度定量装置、濃度定量方法及びプログラムを提供することにある。
本発明のいくつかの態様は上記の課題を解決するためになされたものであり、複数の層により構成される観測対象のうち、任意の層における目的成分の濃度を定量する濃度定量装置であって、前記観測対象に対して照射する短時間パルス光の、前記複数の層の各々の層における光路長分布のモデルを記憶する光路長分布記憶部と、前記観測対象に対して照射する前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルを記憶する時間分解波形記憶部と、表面の散乱状態が前記光路長分布のモデル及び前記時間分解波形のモデルを算出する際に想定された散乱状態になるように調整された前記観測対象に短時間パルス光を照射する照射部と、前記短時間パルス光が前記観測対象によって後方散乱され、前記散乱状態が調整された前記観測対象の表面から射出された光を受光する受光部と、前記照射部が短時間パルス光を照射した時刻以降の所定の時刻において前記受光部が受光した光の強度を取得する光強度取得部と、前記光路長分布記憶部から、前記光路長分布のモデルの前記所定の時刻における、前記複数の層の各々の層の光路長を取得する光路長取得部と、前記時間分解波形記憶部から、前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルの前記所定の時刻における光強度モデルを取得する光強度モデル取得部と、前記光強度取得部が取得した前記光の強度と、前記光路長取得部が取得した前記複数の層の各々の層の光路長と、前記光強度モデル取得部が取得した前記光強度モデルとに基づいて、前記任意の層の吸収係数を算出する吸収係数算出部と、前記吸収係数算出部が算出した吸収係数に基づいて、前記任意の層における前記目的成分の濃度を算出する濃度算出部と、を含むことを特徴とする。
この構成によれば、受光した光の時間分解波形から、任意の層の吸収係数を選択的に算出することができる。そのため、算出した吸収係数に基づいて目的成分の濃度を算出することにより、他の層によるノイズの影響を軽減し、精度の高い濃度の定量を行うことができる。
ここで、実際の皮膚の表面状態は、外部環境(例えば乾燥、湿潤など)、個体差(例えば年齢、性別など)によってばらつく。そのため、シミュレーションで想定している皮膚の表面状態と実際に観測対象の任意の層における目的成分の濃度を測定する際の皮膚の表面状態とが異なる。仮に、照射部から射出された光が直接皮膚の表面に入射する構成であると、外部環境や個体差による皮膚表面の性状の変化によって観測対象の任意の層における目的成分の濃度を精度よく測定することができない。これに対し、本発明の構成によれば、観測対象の表面の散乱状態が光路長分布のモデル及び時間分解波形のモデルを算出する際に想定された散乱状態に調整された状態で、観測対象の任意の層における目的成分の濃度を測定する。このため、シミュレーション時と実測時とで、外部環境や個体差による皮膚表面の性状の変化が生じることを回避することができる。よって、観測対象の任意の層における目的成分の濃度を高精度に算出することができる。
また、本発明のいくつかの態様は、前記観測対象の表面の散乱状態は、前記観測対象の表面に前記散乱状態を調整する調整剤を接触させることにより調整されることが好ましい。
観測対象の表面の散乱状態を調整する方法としては、外部環境を所定の雰囲気に調整する方法も考えられるが、そのためには大規模な設備が必要となる。これに対し、この構成によれば、調整剤を観測対象の表面に接触させるという簡単な方法で、観測対象の表面の散乱状態を調整することができる。よって、観測対象の任意の層における目的成分の濃度を高精度に算出することが容易となる。
また、本発明のいくつかの態様は、前記調整剤は、液状またはゲル状の部材であることが好ましい。
この構成によれば、簡単な方法(例えば、観測対象の表面に調整剤を塗布する方法)で、観測対象の表面の散乱状態を調整することができる。よって、観測対象の任意の層における目的成分の濃度を高精度に算出することが容易となる。
また、本発明のいくつかの態様は、前記照射部は、前記短時間パルス光を照射する面が前記調整剤に接した状態で、前記調整剤を介して前記観測対象に前記短時間パルス光を照射し、前記受光部は、前記観測対象によって後方散乱した光を受光する面が前記調整剤に接した状態で、前記調整剤を介して前記観測対象によって前記後方散乱した光を受光することが好ましい。
この構成によれば、照射部の光照射面及び受光部の受光面と観測対象との間に調整剤が充填されるため、界面反射などの影響がなく、より外乱の影響を抑えることが可能となる。
また、本発明のいくつかの態様は、前記光強度取得部は、前記観測対象の層の数n以上となる複数の時刻t〜tにおける光強度を取得し(但し、nは1以上の自然数、mはn以上の自然数)、前記吸収係数算出部は、前記受光部が時刻tにおいて受光した光強度を示すI(t)、前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルの時刻tにおける光強度を示すN(t)、前記光路長分布のモデルの時刻tにおける第i層の光路長を示すLi(t)、第i層の吸収係数を示すμを用いて、下記の式(1)から任意の層の吸収係数を算出することを特徴とする。
Figure 2013140126
この構成によれば、光強度取得部が、任意の層の複数の時刻t〜tにおける光強度を取得し、吸収係数算出部が、任意の層の吸収係数を、上記の式(1)から算出する。
このように、後方散乱光を時間分解計測することで、任意の層以外の層からの後方散乱光をノイズとして低減することができ、目的成分の濃度における任意の層以外の層からの影響を低減することができる。したがって、目的成分の濃度をさらに高精度に測定することができる。
また、本発明のいくつかの態様は、前記光強度取得部は、所定の時刻から少なくとも所定の時間τの間の光強度を取得し、前記吸収係数算出部は、前記受光部が時刻tにおいて受光した光強度を示すI(t)、前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルの時刻tにおける光強度を示すN(t)、前記光路長分布のモデルの時刻tにおける第i層の光路長を示すLi(t)、前記観測対象の層の数を示すn、第i層の吸収係数を示すμiを用いて、下記の式(2)から任意の層の吸収係数を算出することを特徴とする。
Figure 2013140126
この構成によれば、光強度取得部が、所定の時刻から少なくとも所定の時刻τの間の光強度の時間変化を取得し、吸収係数算出部が、任意の層の吸収係数を、上記の式(2)から算出する。
このように、後方散乱光を時間分解計測することで、任意の層以外の層からの後方散乱光をノイズとして低減することができ、目的成分の濃度における任意の層以外の層からの影響を低減することができる。したがって、目的成分の濃度をさらに高精度に測定することができる。
また、本発明のいくつかの態様は、前記照射部は、複数の波長1〜qの光を照射し、 前記吸収係数算出部は、前記任意の層における吸収係数を前記照射部が照射した複数の波長毎に算出し、前記濃度算出部は、前記任意の層である第a層における波長iの吸収係数を示すμa(i)、前記観測対象を形成する第j成分のモル濃度を示すgj、第j成分の波長iに対する吸収係数を示すεj(i)、前記観測対象を形成する主成分の個数を示すp、照射部が照射する波長の種類数を示すqを用いて、下記の式(3)から前記任意の層における前記目的成分の濃度を算出することを特徴とする。
Figure 2013140126
この構成によれば、照射部が、複数の波長1〜qの光を照射し、吸収係数算出部が、任意の層における吸収係数を照射部が照射した複数の波長毎に算出し、濃度算出部が、任意の層における目的成分の濃度を上記の式(3)から算出する。
このように、後方散乱光を時間分解計測することで、任意の層以外の層からの後方散乱光をノイズとして低減することができ、目的成分の濃度における任意の層以外の層からの影響を低減することができる。したがって、目的成分の濃度をさらに高精度に測定することができる。
また、本発明のいくつかの態様は、前記観測対象が皮膚であり、前記調整剤が前記皮膚の表面を保湿する保湿剤であることが好ましい。
この構成によれば、皮膚の表面をみずみずしく保たれた状態に維持することができる。このため、外部環境や個体差による皮膚表面の性状の変化によって皮膚の表面が乾燥していても、シミュレーションで想定している皮膚の表面状態(例えば湿潤状態)と実際に観測対象の任意の層における目的成分の濃度を測定する際の皮膚の表面状態とを一致させることができる。よって、観測対象の任意の層における目的成分の濃度を高精度に算出することができる。
また、本発明のいくつかの態様は、前記観測対象が皮膚であり、前記任意の層が真皮層であり、前記目的成分がグルコースである。
この構成によれば、算出した吸収係数に基づいて真皮層に含まれるグルコースの濃度を算出することにより、他の層によるノイズの影響を低減し、グルコースの濃度の定量を高精度で行うことができる。
また、本発明のいくつかの態様は、複数の層により構成される観測対象に対して照射する短時間パルス光の、前記複数の層の各々の層における光路長分布のモデルを記憶する光路長分布記憶部と、前記観測対象に対して照射する前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルを記憶する時間分解波形記憶部とを備え、前記観測対象のうち任意の層における目的成分の濃度を定量する濃度定量装置を用いた濃度定量方法であって、照射部は、表面の散乱状態が前記光路長分布のモデル及び前記時間分解波形のモデルを算出する際に想定された散乱状態になるように調整された前記観測対象に短時間パルス光を照射し、受光部は、前記短時間パルス光が前記観測対象によって後方散乱され、前記散乱状態が調整された前記観測対象の表面から射出された光を受光し、光強度取得部は、前記照射部が前記短時間パルス光を照射した時刻以降の所定の時刻において前記受光部が受光した光の強度を取得し、光路長取得部は、前記光路長分布記憶部から、前記光路長分布のモデルの前記所定の時刻における、前記複数の層の各々の層の光路長を取得し、光強度モデル取得部は、前記時間分解波形記憶部から、前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルの前記所定の時刻における光強度モデルを取得し、吸収係数算出部は、前記光強度取得部が取得した前記光の強度と、前記光路長取得部が取得した前記複数の層の各々の層の光路長と、前記光強度モデル取得部が取得した前記光強度モデルとに基づいて、前記任意の層の吸収係数を算出し、濃度算出部は、前記吸収係数算出部が算出した吸収係数に基づいて、前記任意の層における前記目的成分の濃度を算出することを特徴とする。
この方法によれば、受光した光の時間分解波形から、任意の層の吸収係数を選択的に算出することができる。そのため、算出した吸収係数に基づいて目的成分の濃度を算出することにより、他の層によるノイズの影響を軽減し、精度の高い濃度の定量を行うことができる。
ここで、実際の皮膚の表面状態は、外部環境(例えば乾燥、湿潤など)、個体差(例えば年齢、性別など)によってばらつく。そのため、シミュレーションで想定している皮膚の表面状態と実際に観測対象の任意の層における目的成分の濃度を測定する際の皮膚の表面状態とが異なる。仮に、照射部から射出された光を直接皮膚の表面に入射させる方法であると、外部環境や個体差による皮膚表面の性状の変化によって観測対象の任意の層における目的成分の濃度を精度よく測定することができない。これに対し、本発明の方法によれば、観測対象の表面の散乱状態が光路長分布のモデル及び時間分解波形のモデルを算出する際に想定された散乱状態に調整された状態で、観測対象の任意の層における目的成分の濃度を測定する。このため、シミュレーション時と実測時とで、外部環境や個体差による皮膚表面の性状の変化が生じることを回避することができる。よって、観測対象の任意の層における目的成分の濃度を高精度に算出することができる。
また、本発明のいくつかの態様は、複数の層により構成される観測対象に対して照射する短時間パルス光の、前記複数の層の各々の層における光路長分布のモデルを記憶する光路長分布記憶部と、前記観測対象に対して照射する前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルを記憶する時間分解波形記憶部とを備え、前記観測対象のうち任意の層における目的成分の濃度を定量する濃度定量装置のコンピューターに、表面の散乱状態が前記光路長分布のモデル及び前記時間分解波形のモデルを算出する際に想定された散乱状態になるように調整された前記観測対象に短時間パルス光を照射する照射手順、前記短時間パルス光が前記観測対象によって後方散乱され、前記散乱状態が調整された前記観測対象の表面から射出された光を受光する受光手順、前記照射手順で前記短時間パルス光を照射した時刻以降の所定の時刻において前記受光手順で受光した光の強度を取得する光強度取得手順、前記光路長分布記憶部から、前記光路長分布のモデルの前記所定の時刻における、前記複数の層の各々の層の光路長を取得する光路長取得手順、前記時間分解波形記憶部から、前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルの前記所定の時刻における光強度モデルを取得する光強度モデル取得手順、前記光強度取得手順で取得した前記光の強度と、前記光路長取得手順で取得した前記複数の層の各々の層の光路長と、前記光強度モデル取得手順で取得した前記光強度モデルとに基づいて、前記任意の層の吸収係数を算出する吸収係数算出手順、前記吸収係数算出手順で算出した吸収係数に基づいて、前記任意の層における前記目的成分の濃度を算出する濃度算出手順、を実行させることを特徴とする。
このプログラムによれば、受光した光の時間分解波形から、任意の層の吸収係数を選択的に算出することができる。そのため、算出した吸収係数に基づいて目的成分の濃度を算出することにより、他の層によるノイズの影響を軽減し、精度の高い濃度の定量を行うことができる。
ここで、実際の皮膚の表面状態は、外部環境(例えば乾燥、湿潤など)、個体差(例えば年齢、性別など)によってばらつく。そのため、シミュレーションで想定している皮膚の表面状態と実際に観測対象の任意の層における目的成分の濃度を測定する際の皮膚の表面状態とが異なる。仮に、照射部から射出された光が直接皮膚の表面に入射する構成であると、外部環境や個体差による皮膚表面の性状の変化によって観測対象の任意の層における目的成分の濃度を精度よく測定することができない。これに対し、本発明の構成によれば、観測対象の表面の散乱状態が光路長分布のモデル及び時間分解波形のモデルを算出する際に想定された散乱状態に調整された状態で、観測対象の任意の層における目的成分の濃度を測定する。このため、シミュレーション時と実測時とで、外部環境や個体差による皮膚表面の性状の変化が生じることを回避することができる。よって、観測対象の任意の層における目的成分の濃度を高精度に算出することができる。
本発明の第1実施形態に係る血糖値測定装置の構成を示す概略ブロック図である。 人の皮膚組織の断面を示す模式図である。 皮膚組織における分光散乱係数を示すグラフである。 調整剤の配置状態を示す模式図である。 調整剤の配置状態の変形例を示す模式図である。 光の波長と皮膚への浸透深さとの関係を示す図である。 シミュレーション部が算出した各層の光路長分布を示すグラフである。 シミュレーション部が算出した時間分解波形を示すグラフである。 皮膚の主成分の吸収スペクトルを示すグラフである。 本発明の第1実施形態に係る血糖値測定装置が血糖値を測定する動作を示すフローチャートである。 同、血糖値測定装置が血糖値を測定する動作を示すフローチャートである。 真皮層における吸収係数と積分区間との関係を示す図である。 真皮層における吸収係数の推定誤差率と積分区間との関係を示す図である。 本発明の第2実施形態に係る血糖値測定装置が血糖値を測定する動作を示すフローチャートである。 同、血糖値測定装置が血糖値を測定する動作を示すフローチャートである。
以下、図面を参照して、本発明の濃度定量装置、濃度定量方法及びプログラムを実施するための形態について説明する。
本発明では、濃度定量装置として血糖値測定装置を、観測対象として人の手のひらの皮膚を、目的成分としてグルコースを、それぞれ例に挙げて説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る血糖値測定装置の構成を示す概略ブロック図である。
血糖値測定装置100(濃度定量装置)は、シミュレーション部101、光路長分布記憶部102、時間分解波形記憶部103、照射部104、受光部105、計測光強度取得部106、光路長取得部107、無吸収時光強度取得部108(光強度モデル取得部)、積分区間算出部109、吸収係数算出部110、吸収係数分布記憶部111、吸収係数取得部112、濃度算出部113、を備える。
血糖値測定装置100は、手のひら等の皮膚(観測対象)を構成する複数層のうちの真皮層(任意の層)に含まれるグルコース(目的成分)の濃度を非侵襲にて定量する装置である。
シミュレーション部101は、吸収係数がゼロの皮膚モデルに対して光を照射するシミュレーションを行う。シミュレーション部101は、皮膚に対して照射する短時間パルス光の、この皮膚を構成する各々の層における光路長分布のモデルを算出する。また、シミュレーション部101は、皮膚に対して照射する短時間パルス光の時間分解波形のモデルを算出する。
光路長分布記憶部102は、シミュレーション部101にて算出した皮膚に対して照射する短時間パルス光の、この皮膚を構成する各々の層における光路長分布のモデルを記憶する。ここでは、吸収係数がゼロの皮膚モデルの光路長分布を記憶する。
ここで、短時間パルス光とは、パルス幅の時間が照射部104から受光部105へ光が空気中を直接伝搬する時間よりも短いパルス光のことであり、例えば、パルス光の半値幅が0.1ps〜10ps、2つのパルス光の間の時間間隔が1ps〜100psのパルス光のことである。
また、光路長分布とは、光(光子)の移動経路の長さ(光路長)を当該光(光子)が受光部105に到達するまでの時間を基に分布関数として表したものである。
時間分解波形記憶部103は、シミュレーション部101にて算出した皮膚に対して照射する短時間パルス光の時間分解波形のモデルを記憶する。ここでは、吸収係数がゼロの皮膚モデルの時間分解波形を記憶する。
ここで、短時間パルス光の時間分解波形とは、受光部105にて受光した光(光子)の強度を、この短時間パルス光の照射時からの経過時間を基に分布関数として表したものである。
なお、シミュレーション部101におけるシミュレーションの結果を、光路長分布記憶部102及び時間分解波形記憶部103に記憶させた構成とすれば、シミュレーション部101を別途設ける必要がなくなる。
照射部104は、皮膚に対して短時間パルス光を照射する。この照射部104が照射する複数の短時間パルス光は、皮膚を構成する主成分の各々の成分の吸収スペクトル分布の直交性が高くなる波長の光、すなわち、皮膚を構成する主成分の各々の成分のうち、ある主成分における特定成分の吸収スペクトルの極大値が他の成分の吸収スペクトルの極大値と大きく異なる波長の光を含んでいる。
受光部105は、短時間パルス光が皮膚によって後方散乱した光を受光する。この受光部105は、受光強度を記録する内部メモリー(図示せず)を備えている。なお、この内部メモリーは、受光部105に電気的に接続する外部メモリーに代えた構成としてもよい。
ここで、観測対象である人の皮膚組織の構造について説明する。
図2は、人の皮膚組織の断面を示す模式図であり、皮膚31は、表皮層32と、真皮層(任意の層)33と、皮下組織層34の3層により構成されている。
表皮層32は、最も外側にある厚み0.2mm〜0.3mmの薄い層で、概ね水を60%程度、蛋白質、脂質及びグルコースを含有する層であり、角質層、顆粒層、有棘層、底層等を含む。
真皮層33は、表皮層32下に形成される厚み0.5mm〜2mmの層で、概ね水を60%程度、蛋白質、脂質及びグルコースを含有する層である。この真皮層33内には、神経、毛根、皮脂腺、汗腺、毛包、血管、リンパ管等が存在する。
皮下組織層34は、真皮層33下に形成される厚み1〜3mmの層で、大部分が概ね脂質を90%以上含み、残部が水からなる皮下脂肪でできている。
真皮層33内には毛細血管等が発達しており、血中グルコースに応じた物質移動が速やかに起こり、血中グルコース濃度(血糖値)に対して真皮層33中のグルコース濃度も追随して変化すると考えられている。
ところで、実際の皮膚の表面状態は、外部環境(例えば乾燥、湿潤など)、個体差(例えば年齢、性別など)によってばらつく。そのため、シミュレーションで想定している皮膚の表面状態と、実際に皮膚の任意の層における目的成分の濃度を測定する際の皮膚の表面状態とが異なることとなる。仮に、照射部から射出された光が直接皮膚の表面に入射する構成であると、外部環境や個体差による皮膚表面の性状の変化によって皮膚の任意の層における目的成分の濃度を精度よく測定することができない。
そこで、本実施形態においては、表面の散乱状態が光路長分布のモデル及び時間分解波形のモデルを算出する際に想定された散乱状態になるように調整された皮膚に短時間パルス光を照射する照射部104と、短時間パルス光が皮膚によって後方散乱され、散乱状態が調整された皮膚の表面から射出された光を受光する受光部105と、を備える構成を採用している。
照射部104は、短時間パルス光を照射する面104aが調整剤120に接した状態で、調整剤120を介して皮膚31に短時間パルス光を照射する。受光部105は、皮膚31によって後方散乱した光を受光する面105aが調整剤120に接した状態で、調整剤120を介して皮膚31によって後方散乱した光を受光する。
皮膚31の表面の散乱状態は、皮膚31の表面に散乱状態を調整する調整剤120を接触させることにより調整される。調整剤120は、液状またはゲル状の部材である。なお、皮膚31の表面の散乱状態を調整する方法としては、外部環境を所定の雰囲気(例えば、所定の湿度を有する雰囲気)に調整する方法を採用してもよい。
本実施形態に係る調整剤120は、皮膚31の表面を保湿する保湿剤である。例えば、調整剤120としてはコラーゲンを用いる。なお、調整剤120としては、これに限らず、高分子材料、脂肪液、大豆油を白濁したもの、寒天、黒インク等を用いることもできる。
また、照射部104が照射する短時間パルス光の波長の変化に応じて表皮層の散乱係数が変化する場合がある。この場合、調整剤120としては、照射部104が照射する短時間パルス光の波長の変化に応じて変化する表皮層の散乱係数の値が実際の表皮層の散乱係数の変化に近い光学特性を有する材料を用いることが好ましい。
図3は、皮膚組織における分光散乱係数を示すグラフである。図3において、横軸は光の波長、縦軸は散乱係数を示している。
図3に示すように、各層(表皮層、真皮層、皮下組織層)の散乱係数は、光の波長が大きくなるに従って徐々に小さくなる傾向が認められるが、概ね横ばいとなっている。波長1000nm時の各層の散乱係数に着目すると、表皮層(最大値)の散乱係数は約41mm−1、表皮層(最小値)の散乱係数は約15.5mm−1、真皮層の散乱係数は約15mm−1、皮下組織層の散乱係数は約10mm−1となっている。表皮層(最大値)の散乱係数は、真皮層の散乱係数の3倍程度の値となっている。このように、表皮層(最大値)の散乱係数が真皮層の散乱係数よりも大きいのは、表皮層の水分量が真皮層の水分量よりも少ないことに起因すると考えられる。
図4は、調整剤120の配置状態を示す模式図である。
本実施形態においては、図4に示すように、皮膚31の表面に調整剤120を塗布して皮膚31の表面の散乱状態を調整する。そして、血糖値測定装置100の表面(図2に示す照射部104の光照射面104a及び受光部105の受光面105a)を散乱状態が調整された皮膚31の表面に密着させる。
なお、皮膚31の表面の散乱状態を調整する方法にこれに限らない。例えば、図5に示すように、血糖値測定装置100の表面に調整剤120を配置してもよい。この場合、表面に調整剤120が配置された血糖値測定装置100を皮膚31の表面に密着させる。
図2に戻り、本実施形態に係る血糖値測定装置100では、照射部104及び受光部105を調整剤120を介して皮膚31の表面に密着させ、この密着状態で照射部104から皮膚31の表面に光Rを照射する。照射した光Rは皮膚31内の組織によって散乱され、皮膚31内に拡散する。拡散した光Rの一部は、受光部105に到達する(後方散乱光)。この受光部105に到達した後方散乱光が皮膚31内を伝搬してきた経路は、バナナ型の3次元形状、いわゆるバナナシェイプの経路となる。
この照射部104と受光部105との入出射間距離Wと皮膚31内に侵入する光Rの侵入深さとの間には、一定の関係がある。そこで、照射部104と受光部105との入出射間距離Wを規定することにより、皮膚31に侵入する光Rの侵入深さも一義的に決定されることとなる。例えば、入出射間距離Wを10mmとすると、光Rの侵入深さは10mmとなり、入出射間距離Wを8mmとすると、光Rの侵入深さは8mmとなる。
図6は、光の波長と皮膚への浸透深さとの関係を示す図である。図中、「Nd−YAG」はNd−YAGレーザーが出力するレーザー光の波長を、「Xe」はXeレーザーが出力するレーザー光の波長を、「Cs」はCsレーザーが出力するレーザー光の波長を、「CO」は一酸化炭素レーザーが出力するレーザー光の波長を、「CO」は炭酸ガスレーザーが出力するレーザー光の波長を、それぞれ示している。
図6によれば、真皮層33へ浸透させるのに十分な光としては、Nd−YAGレーザーが出力するレーザー光が好適であることが分かる。
図1に戻り、計測光強度取得部106は、受光部105が受光した光のある時刻における光強度を取得する。
光路長取得部107は、光路長分布記憶部102から、光路長分布のモデルの所定の時刻における、皮膚の各々の層の光路長を取得する。ここでは、光路長分布記憶部102からある時刻における光路長を取得する。なお、光路長分布記憶部102には、表面の散乱状態が光路長分布のモデルを算出する際に想定された散乱状態になるように調整された皮膚に対して照射する短時間パルス光の、この皮膚を構成する各々の層における光路長分布のモデルが記憶されている。
ここでいう光路長とは、照射部104から照射された短時間パルス光が皮膚内に侵入し、この皮膚内にて散乱されて受光部105により検出されるまでの光路の長さのことであり、後述するように、照射部104と受光部105との距離を設定することにより、皮膚の各々の層の光路長が推定される。
無吸収時光強度取得部108は、時間分解波形記憶部103から、短時間パルス光の時間分解波形のモデルの所定の時刻における光の吸収係数をゼロ(零)とした時(無吸収時)の光強度モデルを取得する。ここでは、時間分解波形記憶部103からある時刻における無吸収時光強度を取得する。なお、時間分解波形記憶部103には、表面の散乱状態が時間分解波形のモデルを算出する際に想定された散乱状態になるように調整された皮膚に対して照射する短時間パルス光の時間分解波形のモデルが記憶されている。
積分区間算出部109は、計測光強度取得部106が取得した光の強度分布と、光路長取得部107が取得した光路長分布と、無吸収時光強度取得部108が取得した無吸収時光強度とに基づいて、前記光の強度分布から皮膚の各々の層の光強度に対応する領域の時間の範囲(時間幅)である積分区間を算出する。
ここで、積分区間とは、光強度分布における任意の層の光強度に対応する領域の時間幅のことであり、開始時刻と、終了時刻と、増分時間とにより決定することができる。
例えば、(1)後方散乱した光を受光する受光部105の出力する光強度が計測光強度取得部106の最小検出感度を超えて検出された時刻から最小検出感度と等しい光強度で検出された時刻までの時間、(2)シミュレーション部101で得られる無吸収時光強度を記憶している時間分解波形記憶部103から取得した無吸収時光強度の時間特性、(3)皮膚表面に接する受光部105と照射部104との間隔、(4)シミュレーション部101に与える皮膚モデルのサイズ及び光学特性(散乱係数、吸収係数、非等方性パラメーター、または屈折率)を用いて、積分区間の開始時刻、終了時刻、増分時間を決定する。
吸収係数算出部110は、積分区間算出部109が算出した真皮層(任意の層)の光強度に対応する領域の時間の範囲、例えば積分区間の開始時刻、終了時刻、増分時間に基づいて、真皮層(任意の層)におけるグルコース(目的成分)の吸収係数を算出する。
ここでは、積分区間算出部109によって定めた積分区間での皮膚31の各層の吸収係数及び推定誤差率を求め、積分区間に対する皮膚31の各層の吸収係数及び推定誤差率の分布を算出する。
この吸収係数算出部110では、皮膚31における各層の吸収係数を、下記の式(4)から算出する。
Figure 2013140126
但し、I(t)は受光部105が時刻tにて受光した光強度、N(t)は特定波長λの短時間パルス光の時間分解波形のモデルの時刻tにおける光強度、Li(t)は皮膚の各々の層における光路長分布のモデルの時刻tにおける第i層の光路長、μiは第i層の吸収係数である。
ここで、第1層は表皮層、第2層は真皮層、第3層は皮下組織層を示し、μは表皮層の吸収係数、μは真皮層の吸収係数、μは皮下組織層の吸収係数を示す。
吸収係数分布記憶部111は、吸収係数算出部110が算出した積分区間に対する任意の層の吸収係数及び推定誤差率の分布を記憶する。
吸収係数取得部112は、吸収係数分布記憶部111から取得した任意の層の吸収係数及び推定誤差率の分布と、積分区間の変化に対する吸収係数の変動率の範囲等の基準とを用いて、皮膚の表面から特定深さにおける層の皮膚主成分における血糖相応のグルコース濃度に基づく吸収係数を取得する。
濃度算出部113は、吸収係数取得部112が取得した皮膚の表面からの特定深さにおける層の皮膚主成分における血糖相応のグルコース濃度に基づく吸収係数から、特定深さの層に含まれるグルコースの濃度を算出する。
この濃度算出部113では、皮膚の任意の層におけるグルコースの濃度を、下記の式(5)から算出する。
Figure 2013140126
但し、μaは皮膚の任意の層である第a層における吸収係数、gjは皮膚を構成する第j成分のモル濃度、εjは第j成分の吸収係数、pは皮膚を構成する主成分の個数、qは特定波長λkの種類数である。
ここで、第1層は表皮層、第2層は真皮層、第3層は皮下組織層を示し、μは表皮層の吸収係数、μは真皮層の吸収係数、μは皮下組織層の吸収係数を示す。
この血糖値測定装置100では、照射部104は、短時間パルス光を照射する面104aが調整剤120に接した状態で、調整剤120を介して皮膚31に短時間パルス光を照射する。受光部105は、皮膚31によって後方散乱した光を受光する面105aが調整剤120に接した状態で、調整剤120を介して皮膚31によって後方散乱した光を受光する。
受光部105が後方散乱した光を受光すると、計測光強度取得部106は、時刻tにおいて受光部105が受光した光強度を取得する。
次いで、光路長取得部107は、光路長分布記憶部102から、皮膚モデルにおける光路長分布の時刻tにおける皮膚の各層の光路長を取得し、無吸収時光強度取得部108は、時間分解波形記憶部103から、皮膚モデルにおける短時間パルス光の時間分解波形の時刻tにおける光の強度を取得する。
次いで、積分区間算出部109は、計測光強度取得部106が取得した光の強度分布と、光路長取得部107が取得した光路長分布と、無吸収時光強度取得部108が取得した無吸収時光強度とに基づいて、前記光の強度分布から皮膚の各々の層の光強度に対応する領域の時間の範囲(時間幅)である積分区間を算出する。
例えば、(1)後方散乱した光を受光する受光部105の出力する光強度が計測光強度取得部106の最小検出感度を超えて検出された時刻から最小検出感度と等しい光強度で検出された時刻までの時間、(2)シミュレーション部101で得られる無吸収時光強度を記憶している時間分解波形記憶部103から取得した無吸収時光強度の時間特性、(3)皮膚表面に接する受光部105と照射部104との間隔、(4)シミュレーション部101に与える皮膚モデルのサイズ及び光学特性(散乱係数、吸収係数、非等方性パラメーター、または屈折率)を用いて、積分区間の開始時刻、終了時刻、増分時間を決定する。
次いで、吸収係数算出部110は、積分区間算出部109によって定めた積分区間での任意の層の吸収係数及び推定誤差率を求め、積分区間に対する任意の層の吸収係数及び推定誤差率の分布を算出する。
次いで、吸収係数分布記憶部111は、吸収係数算出部110が算出した積分区間に対する任意の層の吸収係数及び推定誤差率の分布を記憶する。
次いで、吸収係数取得部112は、吸収係数分布記憶部111から取得した積分区間に対する任意の層の吸収係数及び推定誤差率の分布と、積分区間の変化に対する吸収係数変動率の範囲等の基準とを用いて、皮膚の表面からの特定深さにおける層の皮膚主成分における血糖相応のグルコース濃度に基づく吸収係数を取得する。
次いで、濃度算出部113は、吸収係数取得部112が取得した皮膚の表面からの特定深さにおける層の皮膚主成分における血糖相応のグルコース濃度に基づく吸収係数に基づいて、皮膚の表面からの特定深さにおける層に含まれるグルコースの濃度を、上記の式(5)に基づき算出する。
これにより、特定深さの層以外の層によるノイズの影響を軽減して、特定深さの層に含まれるグルコースの濃度を算出することができる。
次に、血糖値測定装置100の動作を説明する。
血糖値測定装置100により、図2に示す真皮層33中のグルコース濃度を測定する場合、血糖値を測定する前に、予め皮膚モデルの各層における光路長分布と時間分解波形とを算出しておく必要がある。
ここで、皮膚モデルの光路長分布及び時間分解波形の算出方法を説明する。
初めに、シミュレーション部101は、皮膚モデルを生成する。皮膚モデルの生成は、皮膚の各層の光散乱係数、吸収係数及び厚みを決定することで行う。ここで、皮膚の部分を特定すれば、この特定された皮膚の部分における各層の散乱係数及び厚みは、予めサンプルを取ることなどによって決定するとよい。なお、表皮層32の厚みは略0.3mm、真皮層33の厚みは略1.2mm、皮下組織層34の厚みは略3.0mmである。
また、ここで用いる皮膚モデルの吸収係数はゼロとする。その理由は、この皮膚モデルを用いて光吸収量を算出するからである。
シミュレーション部101は、皮膚モデルを生成すると、この皮膚モデルに光を照射するシミュレーションを行う。このとき、照射部104の位置と受光部105の位置との間の距離を決定しておく必要がある。シミュレーションは、例えば、モンテカルロ法を用いて行う。
このモンテカルロ法によるシミュレーションは、例えば以下のように行われる。
まず、シミュレーション部101は、照射する光のモデルを光子(光束)とし、この光子を皮膚モデルに照射する計算を行う。皮膚モデルに照射された光子は、皮膚モデル内を移動する。このとき、光子は、次に進む点までの距離L及び方向θを乱数Rによって決定する。シミュレーション部101は、光子が次に進む点までの距離Lの計算を、式(6)により行う。
Figure 2013140126
但し、μsは、皮膚モデルの第s層(表皮層、真皮層、皮下組織層の何れか)の散乱係数を示す。
また、シミュレーション部101は、光子が次に進む点までの方向θの計算を、式(7)により行う。
Figure 2013140126
但し、gは、散乱角度の余弦(cos)の平均である非等方性パラメーターを示し、皮膚の非等方性パラメーターは、略0.9である。
シミュレーション部101は、上記式(6)及び式(7)の計算を単位時間毎に繰り返すことにより、照射部104から受光部105までの光子の移動経路を算出することができる。シミュレーション部101は、複数の光子について移動距離の算出を行う。例えば、シミュレーション部101は、10個の光子について移動距離を算出する。
図7は、シミュレーション部が算出した各層の光路長分布を示す図である。
図7では、横軸を光子の照射からの経過時間とし、縦軸を光路長の対数表示としている。
シミュレーション部101は、受光部105に到達した光子の各々の移動経路を、移動経路が通過する層毎に分類する。そして、シミュレーション部101は、単位時間毎に到達した光子の移動経路の平均長を分類された層毎に算出することで、図7に示すような皮膚の各層の光路長分布を算出する。
また、シミュレーション部101は、単位時間毎に受光部105に到達した光子の個数を算出することで、図8に示すような皮膚モデルの時間分解波形を算出する。
図8は、シミュレーション部101で得た無吸収時光強度(受光光子数と等しい)N(t)の時間分解波形を示す図である。図8では、横軸を光子の照射からの経過時間とし、縦軸を受光部105が検出した光子数としている。
上述したような処理により、シミュレーション部101は、複数の波長に対して、皮膚モデルの光路長分布及び時間分解波形を算出する。このとき、シミュレーション部101は、皮膚の主成分(水、たんぱく質、脂質、グルコース等)の吸収スペクトルの差が大きい波長について光路長分布及び時間分解波形を算出すると良い。
図9は、皮膚の主成分の吸収スペクトルを示すグラフである。図9では、横軸を照射する光の波長とし、縦軸を吸収係数としている。
図9によれば、グルコースの吸収係数は波長が1600nmのときに極大となり、水の吸収係数は波長が1450nmのときに極大となることがわかる。
したがって、シミュレーション部101は、例えば1400nm、1450nm、1500nm、1600nm、1680nm、1720nm、1740nmというように皮膚の主成分の吸収スペクトルの差が大きい波長について光路長分布及び時間分解波形を算出すると良い。
シミュレーション部101が複数の波長に対応する皮膚モデルの光路長分布及び時間分解波形を算出すると、光路長分布記憶部102は、算出された光路長分布の情報を記憶し、時間分解波形記憶部103は、算出された時間分解波形の情報を記憶する。
次に、この血糖値測定装置100を用いて血糖値を測定する手順について、図10及び図11に基づき説明する。
まず、被測定者が血糖値測定装置100を、図2に示すような手首等の皮膚31に当てる。本実施形態においては、図4に示すように、予め皮膚31の表面に調整剤120が塗布され皮膚31の表面の散乱状態が調整されている。これにより、血糖値測定装置100の表面(照射部104の光照射面104a及び受光部105の受光面105a)は、散乱状態が調整された皮膚31の表面に密着される。
そして、測定開始スイッチ(図示せず)の押下等により血糖値測定装置100を動作させる。すると、照射部104は、光照射面104aが調整剤120に接した状態で、調整剤120を介して皮膚31に対して波長λの短時間パルス光を照射する(ステップS1)。
この波長λとしては、例えば、シミュレーション部101が光路長分布及び時間分解波形を算出した複数の波長の中の1つが好ましい。
例えば、皮膚31を構成する主成分のうち、ある主成分における特定成分の吸収係数が他の成分の吸収係数より大きくなる波長の光、すなわち、特定成分の吸収係数の極小値が他の成分の吸収係数の極小値と大きく異なる波長の光について光路長分布及び時間分解波形を算出すると良い。
照射部104が波長λの短時間パルス光を照射すると、受光部105は、受光面105aが調整剤120に接した状態で、調整剤120を介して照射部104から照射され皮膚31によって後方散乱された光を受光する(ステップS2)。
このとき、受光部105は、照射開始からの単位時間毎(例えば、1ピコ秒毎の時刻t〜t)の受光強度を、内部メモリー(図示せず)に記録しておく。
次いで、各層からの光子到達時間に基づき、積分区間を変化させて真皮層33の吸収係数を算出する(処理A;ステップS3)。
このステップS3は、図11に示す動作により行う。
積分区間算出部109は、計測光強度取得部106が取得した光の強度分布と、光路長取得部107が取得した光路長分布と、無吸収時光強度取得部108が取得した無吸収時光強度とに基づいて、前記光の強度分布から皮膚の各々の層の光強度に対応する領域の時間の範囲(時間幅)である積分区間を算出する。
ここでは、積分区間算出部109により、(1)後方散乱した光を受光する受光部105の出力する光強度が計測光強度取得部106の最小検出感度を超えて検出された時刻から最小検出感度と等しい光強度で検出された時刻までの時間、(2)シミュレーション部101で得られる無吸収時光強度を記憶している時間分解波形記憶部103から取得した無吸収時光強度の時間特性、(3)皮膚表面に接する受光部105と照射部104との間隔、(4)シミュレーション部101に与える皮膚モデルのサイズ及び光学特性(散乱係数、吸収係数、非等方性パラメーター、または屈折率)を用いて、積分区間を算出する。
より具体的には、積分区間の開始時刻、終了時刻、増分時間を算出する(ステップS11)。
受光部105が受光を完了すると、計測光強度取得部106は、内部メモリーに記録されている受光強度から、ある時刻tにおける受光強度を、異なる複数の皮膚モデルの数と同じ数だけ取得する(ステップS12)。
例えば、異なる複数の皮膚モデルとして、皮膚の3つの層について4種類の波長を用いて濃度測定を行う場合には、3つの異なる時刻t〜tにおける受光強度I(t)〜I(t)を取得する。ここで、皮膚の層の数と同じ数だけ受光強度を取得する理由は、後述する処理において、皮膚の各層の吸収係数を連立方程式によって算出するためである。
また、計測光強度取得部106が光強度を取得する時刻t〜tは、皮膚の各層の光路長分布のピークとなる時刻であると良い。すなわち、照射部104が短時間パルス光を照射した時刻に、図7において皮膚の各層の光路長が極大となる時間を加算した時刻の光強度をそれぞれ取得すると良い。
計測光強度取得部106が、受光強度I(t)〜I(t)を取得すると、光路長取得部107は、光路長分布記憶部102が記憶する波長λの光路長分布から、時刻t〜tにおける皮膚の各層の光路長L(t)〜L(t)、L(t)〜L(t)、L(t)〜L(t)を取得する(ステップS13)。
また、計測光強度取得部106が、受光強度I(t)〜I(t)を取得すると、無吸収時光強度取得部108は、時間分解波形記憶部103が記憶する波長λの時間分解波形から、短時間パルス光の時間分解波形の異なる複数の皮膚モデルの所定の時刻における光強度、例えば、時刻t〜tにおける検出光子数(無吸収時光強度)N(t)〜N(t)を取得する(ステップS14)。
光路長取得部107が皮膚の各層の光路長を取得し、無吸収時光強度取得部108が検出光子数(無吸収時光強度)N(t)〜N(t)を取得すると、吸収係数算出部110は、式(8)に基づいて、積分区間算出部109が算出した、ある積分区間での皮膚の各層の吸収係数μ〜μを算出する(ステップS15)。
ここで、吸収係数μは、表皮層の吸収係数を示し、吸収係数μは、真皮層の吸収係数を示し、吸収係数μは、皮下組織層の吸収係数を示す。
Figure 2013140126
但し、N(t)は特定波長λkの短時間パルス光の時間分解波形のモデルの時刻tにおける光強度を示す。また、Iinは、照射部104が照射した短時間パルス光の光強度を示す。また、Ninは、シミュレーション部101が照射のシミュレーションを行った光子の個数を示す。
吸収係数算出部110がある積分区間での皮膚の各層の吸収係数μ〜μを算出すると、吸収係数分布記憶部111は、吸収係数算出部110が算出した、ある積分区間での皮膚の各層の吸収係数μ〜μを記憶する(ステップS16)。
吸収係数算出部110がある積分区間での皮膚の各層の吸収係数μ〜μを算出すると、吸収係数算出部110は、設定した積分区間での真皮層の吸収係数を算出したか否かを判断する(ステップS17)。
本実施形態では、皮膚の主成分を水、たんぱく質、脂質、グルコースの4種類として血糖値の測定を行うので、吸収係数算出部110は、4種類の波長λ〜λに対して吸収係数μ〜μを算出したか否かを判定する。ここで、波長λ〜λは、シミュレーション部101が光路長分布及び時間分解波形を算出した複数の波長の中から選出する
ここで、吸収係数算出部110が設定した積分区間での真皮層の吸収係数μ〜μに算出しなかった吸収係数があると判断した場合(ステップS17:NO)、再度、ある時刻における受光強度の取得(ステップS12)に戻り、まだ算出していない真皮層の吸収係数を算出し、再度、設定した積分区間での真皮層の吸収係数の算出の可否の判断(ステップS17)を行う。
一方、吸収係数算出部110が設定した積分区間での真皮層の吸収係数μ〜μを算出したと判断した場合(ステップS17:YES)、真皮層の吸収係数分布から吸収係数を取得する(ステップS18)。
図10に戻り、吸収係数取得部112は、皮膚の主成分の種類数に対応した波長数の吸収係数を算出したか否かを判断する(ステップS4)。
ここで、吸収係数取得部112が皮膚の主成分の種類数に対応した波長数の吸収係数を算出していないと判断した場合(ステップS4:NO)、短時間パルス光の照射(ステップS1)に戻り、まだ算出していない皮膚の主成分の種類数に対応した波長数の吸収係数を算出し、再度、吸収係数の算出の可否の判断(ステップS4)を行う。
一方、吸収係数取得部112が皮膚の主成分の種類数に対応した波長数の吸収係数を算出したと判断した場合(ステップS4:YES)、濃度算出部113は真皮層に含まれるグルコースの濃度を算出する(ステップS5)。
濃度算出部113は、真皮層におけるグルコースの濃度を、下記の式(9)に基づいて算出する。
Figure 2013140126
但し、μ2(1)〜μ2(4)は、真皮層における波長λ〜λの吸収係数を示す。また、g〜gは、真皮層におけるそれぞれ皮膚の主成分である水、たんぱく質、脂質、グルコースのモル濃度を示す。また、ε1(1)〜ε1(4)は、波長λ〜λに対する水のモル吸光係数を示し、ε2(1)〜ε2(4)は、波長λ〜λに対するたんぱく質のモル吸光係数を示し、ε3(1)〜ε3(4)は、波長λ〜λに対する脂質のモル吸光係数を示し、ε4(1)〜ε4(4)は、波長λ〜λに対するグルコースのモル吸光係数を示す。
つまり、式(9)のgを算出することで、真皮層に含まれるグルコースのモル濃度を求めることができる。
式(9)によりグルコースのモル濃度を求めることができる理由を説明する。
皮膚の散乱係数の波長依存性は小さいので、検出光子数N(t)及び光路長Ln(t)の波長に対する変化は無視することができる。また、ベア・ランベルト(Beer-Lambert)の法則により、吸収係数=モル吸光係数×モル濃度で表すことができる。これにより、2波長で得られた時間分解計測より、検出光子数N(t)を消去することで、真皮層において得られる吸収係数差と皮膚を形成する各成分のモル吸光係数との関係式を示す式(9)を導くことができる。
上述の血糖値測定装置100は、内部にコンピューターシステムを内蔵しており、上述した各ステップの処理動作は、プログラムの形式でコンピューターが読み取り可能な記録媒体に記憶されている。そこで、このプログラムをコンピューターが読み出して実行することにより、上記の処理動作を行うことができる。
ここで、コンピューターが読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリー等が挙げられる。
また、このコンピュータープログラムを通信回線によりコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピューターが当該プログラムを実行するようにしてもよい。
また、上記プログラムは、上記の機能の一部を実現するためのものであってもよい。
さらに、上述した機能をコンピューターシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
本実施形態の構成によれば、受光した光の時間分解波形から、任意の層の吸収係数を選択的に算出することができる。そのため、算出した吸収係数に基づいて目的成分の濃度を算出することにより、他の層によるノイズの影響を軽減し、精度の高い濃度の定量を行うことができる。
ここで、実際の皮膚の表面状態は、外部環境(例えば乾燥、湿潤など)、個体差(例えば年齢、性別など)によってばらつく。そのため、シミュレーションで想定している皮膚の表面状態と実際に観測対象の任意の層における目的成分の濃度を測定する際の皮膚の表面状態とが異なる。仮に、照射部から射出された光が直接皮膚の表面に入射する構成であると、外部環境や個体差による皮膚表面の性状の変化によって観測対象の任意の層における目的成分の濃度を精度よく測定することができない。
図12は、真皮層における吸収係数と積分区間との関係を示す図である。図12では、表皮層、真皮層、皮下組織層の三層の皮膚モデルを用いており、真皮層の吸収係数に対して表皮層の散乱係数を文献値に対して−50%〜+150%変化させたときの積分区間と真皮層の吸収係数との関係を示したものである。図12中、Aは−50%を、Bは±0%を、Cは+50%を、Dは+100%を、Eは+150%を、それぞれ示している。
図13は、真皮層における吸収係数の推定誤差率と積分区間との関係を示す図である。図13では、表皮層、真皮層、皮下組織層の三層の皮膚モデルを用いており、真皮層の吸収係数に対して表皮層の散乱係数を文献値に対して−50%〜+150%変化させたときの積分区間と真皮層の吸収係数の推定誤差率との関係を示したものである。図13中、Aは−50%を、Bは±0%を、Cは+50%を、Dは+100%を、Eは+150%を、それぞれ示している。
図12及び図13に示すように、表皮層の散乱係数を変化させると、シミュレーションにより算出された光路長分布のモデル及び時間分解波形のモデルと、実測時の光路長分布のモデル及び時間分解波形のモデルとの間に大きい差が生じる。つまり、表皮層の散乱係数を変化させると、無吸収時光強度N(t)及び皮膚モデルの各層の光路長分布が変化する。これにより、積分区間を変化させることで、異なる無吸収時光強度N(t)及び皮膚モデルの各層の光路長分布に対応して異なる真皮層の吸収係数の特性が算出される。そのため、異なる吸収係数に基づいて算出される皮膚の任意の層における目的成分の濃度も異なってしまう。
これに対し、本実施形態では皮膚の表面の散乱状態が光路長分布のモデル及び時間分解波形のモデルを算出する際に想定された散乱状態に調整された状態で、皮膚の真皮層におけるグルコースの濃度を測定する。つまり、シミュレーションにより算出された光路長分布のモデル及び時間分解波形のモデルと、実測時の光路長分布のモデル及び時間分解波形のモデルとの間にほとんど差が生じなくなる。このため、シミュレーション時と実測時とで、外部環境や個体差による皮膚表面の性状の変化が生じることを回避することができる。よって、観測対象の任意の層における目的成分の濃度を高精度に算出することができる。
観測対象の表面の散乱状態を調整する方法としては、外部環境を所定の雰囲気に調整する方法も考えられるが、そのためには大規模な設備が必要となる。これに対し、この構成によれば、調整剤120を観測対象の表面に接触させるという簡単な方法で、観測対象の表面の散乱状態を調整することができる。よって、観測対象の任意の層における目的成分の濃度を高精度に算出することが容易となる。
また、この構成によれば、調整剤120が液状またはゲル状の部材であるため、簡単な方法(例えば、観測対象の表面に調整剤を塗布する方法)で、観測対象の表面の散乱状態を調整することができる。よって、観測対象の任意の層における目的成分の濃度を高精度に算出することが容易となる。
また、この構成によれば、照射部104の光照射面104a及び受光部105の受光面105aと観測対象との間に調整剤120が充填されるため、界面反射などの影響がなく、より外乱の影響を抑えることが可能となる。
また、この構成によれば、計測光強度取得部106が、任意の層の複数の時刻t〜tにおける光強度を取得し、吸収係数算出部110が、任意の層の吸収係数を、上記の式(4)から算出する。
このように、後方散乱光を時間分解計測することで、任意の層以外の層からの後方散乱光をノイズとして低減することができ、目的成分の濃度における任意の層以外の層からの影響を低減することができる。したがって、目的成分の濃度をさらに高精度に測定することができる。
また、この構成によれば、照射部104が、複数の波長1〜qの光を照射し、吸収係数算出部110が、任意の層における吸収係数を照射部104が照射した複数の波長毎に算出し、濃度算出部113が、任意の層における目的成分の濃度を上記の式(5)から算出する。
このように、後方散乱光を時間分解計測することで、任意の層以外の層からの後方散乱光をノイズとして低減することができ、目的成分の濃度における任意の層以外の層からの影響を低減することができる。したがって、目的成分の濃度をさらに高精度に測定することができる。
また、この構成によれば、調整剤120が皮膚の表面を覆うため、最表面にある角質の積層状態が保たれた状態に維持することができる。このため、外部環境や個体差による皮膚表面の性状の変化によって皮膚の最表面にある角質の積層状態が変質することによって皺が多くなっても、演算過程で想定している表皮の散乱係数の皮膚の表面状態と実際に観測対象の任意の層における目的成分の濃度を測定する際の表皮の散乱係数の皮膚の表面状態とを一致させることができる。よって、観測対象の任意の層における目的成分の濃度を高精度に算出することができる。
また、調整剤120が皮膚の表面に配置されることにより、真皮層中にある間質液((interstitial fluid)水分)が表皮層に供給されて蒸発することを抑制することができる。また、図9に示すように、この水分の吸収係数は1450nm付近に吸収ピークがあり、グルコース濃度を求める際の精度に影響する。したがって、表皮層の含水率が一定に保持されることにより、グルコース濃度を求める際の精度を確保することができる。
また、この構成によれば、算出した吸収係数に基づいて真皮層に含まれるグルコースの濃度を算出することにより、他の層によるノイズの影響を低減し、グルコースの濃度の定量を高精度で行うことができる。
なお、本実施形態においては、表面の散乱状態が光路長分布のモデル及び時間分解波形のモデルを算出する際に想定された散乱状態になるように調整された皮膚に短時間パルス光を照射する照射部104と、短時間パルス光が皮膚によって後方散乱され、散乱状態が調整された皮膚の表面から射出された光を受光する受光部105と、を備える構成を挙げて説明したが、これに限らない。
例えば、表面の吸収状態が所定の吸収状態になるように調整された皮膚に短時間パルス光を照射する照射部と、短時間パルス光が皮膚によって後方散乱され、吸収状態が調整された皮膚の表面から射出された光を受光する受光部と、を備える構成であってもよい。すなわち、皮膚の表面の散乱状態が皮膚の表面に散乱状態を調整する調整剤(いわゆる散乱層)を接触させることにより調整される構成に加えて、皮膚の表面の吸収状態が皮膚の表面に吸収状態を調整する調整剤(いわゆる吸収層)を接触させることにより調整される構成を備えていてもよい。
例えば、皮膚の表面の吸収状態を調整する調整剤としては、皮膚の表面の散乱状態を調整する調整剤と同様に、皮膚の表面を保湿する保湿剤(例えば、コラーゲン)を用いることができる。この場合、調整剤としては、照射部が照射する短時間パルス光の波長の変化に応じて変化する表皮層の散乱係数、吸収係数の値が実際の表皮層の散乱係数、吸収係数の変化に近い光学特性を有する材料を用いることが好ましい。
これにより、皮膚の表面の吸収状態が所定の吸収状態に調整された状態で、皮膚の任意の層における目的成分の濃度を測定することができる。これにより、実測時における外部環境や個体差による皮膚表面の性状の変化が生じることで、皮膚の任意の層における吸収係数の算出値がばらつくことを回避することができる。よって、皮膚の任意の層における目的成分の濃度を高精度に算出することができる。
また、本実施形態においては、皮膚の表面に調整剤を塗布して皮膚の表面の散乱状態を調整する例を挙げて説明したが、これに限らない。例えば、皮膚の表面に調整剤としてシート状の部材(層状の部材)を配置して皮膚の表面の散乱状態を調整してもよい。
また、グルコース濃度測定に所望の光波長での散乱係数を得る材料としては、油脂懸濁液の他にも、微粒子セラミック、モノマーをベースにした微粒子ポリマー等の生体適合性のある材料を用いることもできる。
(第2実施形態)
図14及び図15は、本発明の第2実施形態に係る血糖値測定装置(濃度定量装置)が血糖値を測定する動作を示すフローチャートである。
本実施形態の血糖値測定装置は、第1実施形態の血糖値測定装置100と同一の構成であり、光路長取得部107、無吸収時光強度取得部108、計測光強度取得部106、吸収係数算出部110の動作が異なる。
次に、この血糖値測定装置100を用いて血糖値を測定する手順について説明する。
本実施形態では、「照射部104は、光照射面104aが調整剤120に接した状態で、調整剤120を介して皮膚31に対して波長λの短時間パルス光を照射」(ステップS21)から「受光部105は、受光面105aが調整剤120に接した状態で、調整剤120を介して照射部104から照射され皮膚31によって後方散乱された光を受光」(ステップS22)までは、第1実施形態の手順と同一であるため、説明を省略する。
各層からの光子到達時間に基づき、積分区間を変化させて真皮層33の吸収係数を算出する(処理B;ステップS23)。
このステップS23は、図15に示す動作により行う。
まず、積分区間算出部109により、(1)後方散乱した光を受光する受光部105の出力する光強度が計測光強度取得部106の最小検出感度を超えて検出された時刻から最小検出感度と等しい光強度で検出された時刻までの時間、(2)シミュレーション部101で得られる無吸収時光強度を記憶している時間分解波形記憶部103から取得した無吸収時光強度の時間特性、(3)皮膚表面に接する受光部105と照射部104との間隔、(4)シミュレーション部101に与える皮膚モデルのサイズ及び光学特性(散乱係数、吸収係数、非等方性パラメーター、または屈折率)を用いて、積分区間を算出する。より具体的には、積分区間の開始時刻、終了時刻、増分時間を算出する(ステップS31)。
次いで、受光部105が受光を完了すると、計測光強度取得部106は、内部メモリーに記録されている受光強度から、ある時刻から時間τの間の受光強度の時間分布を取得する(ステップS32)。
例えば、皮膚の3つの層について4種類の波長を用いて濃度測定を行う場合には、3つの異なる時間τ〜τにおける受光強度の時間分布を取得する。
計測光強度取得部106が、時間τの間の受光強度の時間分布を取得すると、光路長取得部107は、光路長分布記憶部102が記憶する波長λの光路長分布から、ある時刻から時間τの間の皮膚の各層の光路長、例えば、光路長L(t)〜L(t)、L(t)〜L(t)、L(t)〜L(t)を取得する(ステップS33)。
また、計測光強度取得部106が、時間τの間の受光強度の時間分布を取得すると、無吸収時光強度取得部108は、時間分解波形記憶部103が記憶する波長λの時間分解波形から、ある時刻から時間τの間の無吸収時光強度、例えば、ある時刻から時間τの間における検出光子数(無吸収時光強度)N(t)〜N(t)を取得する(ステップS34)。
光路長取得部107が皮膚の各層の光路長を取得し、無吸収時光強度取得部108が検出光子数(無吸収時光強度)N(t)〜N(t)を取得すると、吸収係数算出部110は、式(10)に基づいて、積分区間算出部109が算出した、ある積分区間での皮膚の各層の吸収係数μ〜μを算出する(ステップS35)。
ここで、吸収係数μは、表皮層の吸収係数を示し、吸収係数μは、真皮層の吸収係数を示し、吸収係数μは、皮下組織層の吸収係数を示す。
Figure 2013140126
但し、I(t)は、時刻tにおける受光部105の受光強度を示す。Iinは、照射部104が照射した短時間パルス光の光強度を示す。また、Ninは、シミュレーション部101が照射のシミュレーションを行った光子の個数を示す。また、L(t)〜L(t)は、時刻tにおける皮膚の各層の光路長を示す。
吸収係数算出部110がある積分区間での皮膚の各層の吸収係数μ〜μを算出すると、吸収係数分布記憶部111は、吸収係数算出部110が算出した、ある積分区間での皮膚の各層の吸収係数μ〜μを記憶する(ステップS36)。
吸収係数算出部110がある積分区間での皮膚の各層の吸収係数μ〜μを算出すると、吸収係数算出部110は、設定した積分区間での真皮層の吸収係数を算出したか否かを判断する(ステップS37)。
本実施形態では、皮膚の主成分を水、たんぱく質、脂質、グルコースの4種類として血糖値の測定を行うので、吸収係数算出部110は、4種類の波長λ〜λに対して吸収係数μ〜μを算出したか否かを判定する。ここで、波長λ〜λは、シミュレーション部101が光路長分布及び時間分解波形を算出した複数の波長の中から選出する
ここで、吸収係数算出部110が設定した積分区間での真皮層の吸収係数μ〜μに算出しなかった吸収係数があると判断した場合(ステップS37:NO)、再度、ある時刻における受光強度の取得(ステップS32)に戻り、まだ算出していない真皮層の吸収係数を算出し、再度、設定した積分区間での真皮層の吸収係数の算出の可否の判断(ステップS37)を行う。
一方、吸収係数算出部110が設定した積分区間での真皮層の吸収係数μ〜μを算出したと判断した場合(ステップS37:YES)、真皮層の吸収係数分布から吸収係数を取得する(ステップS38)。
図14に戻り、吸収係数取得部112は、皮膚の主成分の種類数に対応した波長数の吸収係数を算出したか否かを判断する(ステップS24)。
ここで、吸収係数取得部112が皮膚の主成分の種類数に対応した波長数の吸収係数を算出していないと判断した場合(ステップS24:NO)、短時間パルス光の照射(ステップS21)に戻り、まだ算出していない皮膚の主成分の種類数に対応した波長数の吸収係数を算出し、再度、吸収係数の算出の可否の判断(ステップS24)を行う。
一方、吸収係数取得部112が皮膚の主成分の種類数に対応した波長数の吸収係数を算出したと判断した場合(ステップS24:YES)、濃度算出部113は真皮層に含まれるグルコースの濃度を算出する(ステップS25)。
このように、本実施形態によれば、計測光強度取得部106が、所定の時刻から少なくとも所定の時刻τの間の光強度の時間変化を取得し、吸収係数算出部110が、任意の層の吸収係数を、上記の式(10)から算出する。
このように、後方散乱光を時間分解計測することで、任意の層以外の層からの後方散乱光をノイズとして低減することができ、目的成分の濃度における任意の層以外の層からの影響を低減することができる。したがって、目的成分の濃度をさらに高精度に測定することができる。
以上、本発明の各実施形態について、図面を参照して詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
例えば、第1実施形態及び第2実施形態では、濃度定量装置として血糖値測定装置を、観測対象として手のひらの皮膚を、目的成分としてグルコースを、パルス光として短時間パルス光を、それぞれ取ることで、皮膚の真皮層に含まれるグルコースの濃度を測定する場合を説明したが、これに限らない。例えば、濃度定量方法を、複数の光散乱媒質の層から形成される観測対象の任意の層における目的成分の濃度を定量する他の装置に用いてもよく、特定波長の短時間パルス光を、特定波長の連続光に替えてもよい。
例えば、携帯型の皮膚主成分の濃度測定装置に適用した場合、皮膚疾患の検査、診断、治療などに有効利用することが可能である。
31…皮膚(観測対象)、33…真皮層(任意の層)、100…血糖値測定装置(濃度定量装置)、102…光路長分布記憶部、103…時間分解波形記憶部、104…照射部、104a…光照射面(短時間パルス光を照射する面)、105…受光部、105a…受光面(後方散乱した光を受光する面)、106…計測光強度取得部(光強度取得部)、107…光路長取得部、108…無吸収時光強度取得部(光強度モデル取得部)、110…吸収係数算出部、113…濃度算出部、120…調整剤

Claims (11)

  1. 複数の層により構成される観測対象のうち、任意の層における目的成分の濃度を定量する濃度定量装置であって、
    前記観測対象に対して照射する短時間パルス光の、前記複数の層の各々の層における光路長分布のモデルを記憶する光路長分布記憶部と、
    前記観測対象に対して照射する前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルを記憶する時間分解波形記憶部と、
    表面の散乱状態が前記光路長分布のモデル及び前記時間分解波形のモデルを算出する際に想定された散乱状態になるように調整された前記観測対象に短時間パルス光を照射する照射部と、
    前記短時間パルス光が前記観測対象によって後方散乱され、前記散乱状態が調整された前記観測対象の表面から射出された光を受光する受光部と、
    前記照射部が短時間パルス光を照射した時刻以降の所定の時刻において前記受光部が受光した光の強度を取得する光強度取得部と、
    前記光路長分布記憶部から、前記光路長分布のモデルの前記所定の時刻における、前記複数の層の各々の層の光路長を取得する光路長取得部と、
    前記時間分解波形記憶部から、前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルの前記所定の時刻における光強度モデルを取得する光強度モデル取得部と、
    前記光強度取得部が取得した前記光の強度と、前記光路長取得部が取得した前記複数の層の各々の層の光路長と、前記光強度モデル取得部が取得した前記光強度モデルとに基づいて、前記任意の層の吸収係数を算出する吸収係数算出部と、
    前記吸収係数算出部が算出した吸収係数に基づいて、前記任意の層における前記目的成分の濃度を算出する濃度算出部と、
    を含む濃度定量装置。
  2. 前記観測対象の表面の散乱状態は、前記観測対象の表面に前記散乱状態を調整する調整剤を接触させることにより調整される請求項1に記載の濃度定量装置。
  3. 前記調整剤は、液状またはゲル状の部材である請求項1または2に記載の濃度定量装置。
  4. 前記照射部は、前記短時間パルス光を照射する面が前記調整剤に接した状態で、前記調整剤を介して前記観測対象に前記短時間パルス光を照射し、
    前記受光部は、前記観測対象によって後方散乱した光を受光する面が前記調整剤に接した状態で、前記調整剤を介して前記観測対象によって前記後方散乱した光を受光する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の濃度定量装置。
  5. 前記光強度取得部は、前記観測対象の層の数n以上となる複数の時刻t〜tにおける光強度を取得し(但し、nは1以上の自然数、mはn以上の自然数)、
    前記吸収係数算出部は、前記受光部が時刻tにおいて受光した光強度を示すI(t)、前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルの時刻tにおける光強度を示すN(t)、前記光路長分布のモデルの時刻tにおける第i層の光路長を示すLi(t)、第i層の吸収係数を示すμを用いて、下記の式(1)から任意の層の吸収係数を算出する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の濃度定量装置。
    Figure 2013140126
  6. 前記光強度取得部は、所定の時刻から少なくとも所定の時間τの間の光強度を取得し、
    前記吸収係数算出部は、前記受光部が時刻tにおいて受光した光強度を示すI(t)、前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルの時刻tにおける光強度を示すN(t)、前記光路長分布のモデルの時刻tにおける第i層の光路長を示すLi(t)、前記観測対象の層の数を示すn、第i層の吸収係数を示すμiを用いて、下記の式(2)から任意の層の吸収係数を算出する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の濃度定量装置。
    Figure 2013140126
  7. 前記照射部は、複数の波長1〜qの光を照射し、
    前記吸収係数算出部は、前記任意の層における吸収係数を前記照射部が照射した複数の波長毎に算出し、
    前記濃度算出部は、
    前記任意の層である第a層における波長iの吸収係数を示すμa(i)、前記観測対象を形成する第j成分のモル濃度を示すgj、第j成分の波長iに対する吸収係数を示すεj(i)、前記観測対象を形成する主成分の個数を示すp、照射部が照射する波長の種類数を示すqを用いて、下記の式(3)から前記任意の層における前記目的成分の濃度を算出する請求項1ないし6のいずれか1項に記載の濃度定量装置。
    Figure 2013140126
  8. 前記観測対象が皮膚であり、前記調整剤が前記皮膚の表面を保湿する保湿剤である請求項1ないし7のいずれか一項に記載の濃度定量装置。
  9. 前記観測対象が皮膚であり、前記任意の層が真皮層であり、前記目的成分がグルコースである請求項1ないし8のいずれか一項に記載の濃度定量装置。
  10. 複数の層により構成される観測対象に対して照射する短時間パルス光の、前記複数の層の各々の層における光路長分布のモデルを記憶する光路長分布記憶部と、前記観測対象に対して照射する前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルを記憶する時間分解波形記憶部とを備え、前記観測対象のうち任意の層における目的成分の濃度を定量する濃度定量装置を用いた濃度定量方法であって、
    照射部は、表面の散乱状態が前記光路長分布のモデル及び前記時間分解波形のモデルを算出する際に想定された散乱状態になるように調整された前記観測対象に短時間パルス光を照射し、
    受光部は、前記短時間パルス光が前記観測対象によって後方散乱され、前記散乱状態が調整された前記観測対象の表面から射出された光を受光し、
    光強度取得部は、前記照射部が前記短時間パルス光を照射した時刻以降の所定の時刻において前記受光部が受光した光の強度を取得し、
    光路長取得部は、前記光路長分布記憶部から、前記光路長分布のモデルの前記所定の時刻における、前記複数の層の各々の層の光路長を取得し、
    光強度モデル取得部は、前記時間分解波形記憶部から、前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルの前記所定の時刻における光強度モデルを取得し、
    吸収係数算出部は、前記光強度取得部が取得した前記光の強度と、前記光路長取得部が取得した前記複数の層の各々の層の光路長と、前記光強度モデル取得部が取得した前記光強度モデルとに基づいて、前記任意の層の吸収係数を算出し、
    濃度算出部は、前記吸収係数算出部が算出した吸収係数に基づいて、前記任意の層における前記目的成分の濃度を算出する、
    濃度定量方法。
  11. 複数の層により構成される観測対象に対して照射する短時間パルス光の、前記複数の層の各々の層における光路長分布のモデルを記憶する光路長分布記憶部と、前記観測対象に対して照射する前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルを記憶する時間分解波形記憶部とを備え、前記観測対象のうち任意の層における目的成分の濃度を定量する濃度定量装置のコンピューターに、
    表面の散乱状態が前記光路長分布のモデル及び前記時間分解波形のモデルを算出する際に想定された散乱状態になるように調整された前記観測対象に短時間パルス光を照射する照射手順、
    前記短時間パルス光が前記観測対象によって後方散乱され、前記散乱状態が調整された前記観測対象の表面から射出された光を受光する受光手順、
    前記照射手順で前記短時間パルス光を照射した時刻以降の所定の時刻において前記受光手順で受光した光の強度を取得する光強度取得手順、
    前記光路長分布記憶部から、前記光路長分布のモデルの前記所定の時刻における、前記複数の層の各々の層の光路長を取得する光路長取得手順、
    前記時間分解波形記憶部から、前記短時間パルス光の時間分解波形のモデルの前記所定の時刻における光強度モデルを取得する光強度モデル取得手順、
    前記光強度取得手順で取得した前記光の強度と、前記光路長取得手順で取得した前記複数の層の各々の層の光路長と、前記光強度モデル取得手順で取得した前記光強度モデルとに基づいて、前記任意の層の吸収係数を算出する吸収係数算出手順、
    前記吸収係数算出手順で算出した吸収係数に基づいて、前記任意の層における前記目的成分の濃度を算出する濃度算出手順、
    を実行させるプログラム。
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