JP2013127378A - 温度測定方法および温度測定装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】放射率の組み合わせ解を計算せずに、放射率の変動の影響を受けることなく測定対象物の温度を高精度に測定すること。
【解決手段】回帰式作成部3が、検量線作成用の分光スペクトル情報を基底分解し、複数の基底スペクトルのスコア(第1の係数)を算出し、第1の係数と検量線作成用の分光スペクトル情報に対応した温度データとから重回帰係数(c(k)、k=1,2)を算出し、放射率変動の分光スペクトル情報から複数の基底スペクトルのスコア(第2の係数)を算出し、第2の係数間の関係式を算出する。温度推定部4が、複数の基底スペクトルを用いて測定対象物の分光スペクトル情報を基底分解し、複数の基底スペクトルのスコアを第3の係数として算出し、第3の係数を通る第1の係数間および第2の係数間の関係式の連立方程式を解くことによって放射率変動のない場合のスコアを第4の係数として算出し、第4の係数と重回帰係数とを用いて測定対象物の表面温度を算出する。
【選択図】図12

Description

本発明は、測定対象物から発せられる放射エネルギーを分光測定し、得られた分光スペクトル情報を信号処理して測定対象物の表面温度を測定する温度測定方法および温度測定装置に関する。
測定対象物の温度を測定するための技術には様々なものがある。そのうち放射温度測定技術は、測定対象物からの放射光を利用して測定対象物の表面温度を非接触で測定する技術であり、放射温度計として実用化されている。放射温度計は、光電変換素子と光学フィルタとを備え、所定の波長帯域における測定対象物の放射エネルギーを測定し、測定された放射エネルギー値を温度に変換することによって、測定対象物の表面温度を測定する。このような放射温度計には、単一の波長で放射エネルギーを測定する単色放射温度計、2波長で放射エネルギーを測定する2波長式放射温度計(2色放射温度計)、さらに多くの波長で放射エネルギーを測定する多波長式放射温度計(多色放射温度計)がある。
測定対象物の放射エネルギーは、理想的な黒体からの放射エネルギーに測定対象物の放射率を乗じた値になるため、放射温度計を利用して測定対象物の表面温度を測定する際には、測定対象物の放射率の値が必要になる。このため、単色放射温度計では、測定対象物の放射率を予め測定しておき、予め測定された放射率を用いて測定対象物の表面温度を測定している。また、特許文献1には、放射源が測定対象物に放射する放射エネルギーの寄与率を変更しながら測定対象物の放射エネルギーを測定することにより、放射率と測定対象物の表面温度とを共に測定する技術が開示されている。
一方、上述のような放射源を有さない放射温度計として、以下のような2波長式放射温度計がある。すなわち、この2波長式放射温度計は、2波長での放射率の比を予め測定して設定しておく、又は、近接した2波長では放射率が等しいと仮定して、測定対象物の表面温度を測定する。しかしながら、放射率は測定対象物の状態に応じて変化し、測定対象物の放射率が時間的に変化する場合、温度測定誤差は大きくなる。このため、2波長式放射温度計および多波長式放射温度計では、温度測定誤差を小さくするために様々な提案がなされている。
具体的には、特許文献2〜4や非特許文献1には、測定対象物の放射率を動的に補正し、動的に補正された放射率を用いて測定対象物の表面温度を測定する技術が記載されている。詳しくは、これらの文献には、実験による測定データから得られた実験式又は分光放射率の理論式を用いて、一種の検量線を作る、又は、関係式(実験式、理論式)を満たすような放射率の組み合わせ解を決定するという方法で放射率を動的に補正する技術が記載されている。
特開平2−245624号公報 特公平3−4855号公報 特開平2−85730号公報 特開平2−238333号公報
J.L.gardner, T.P.Jones and R.Davis, "A six-wavelength radiation pyrometer", High Temp-High pressure, vol.13, No.5, p.459-466(1981)
従来技術では、放射率の実際値に対して小さな誤差を有する放射率の初期値を関係式(実験式、理論式)に与えて繰り返し計算を行うことによって、放射率の組み合わせ解を決定することから、演算精度が放射温度計の測定精度を決定する。このため、測定精度が高い放射温度計を構成するためには、高精度の関係式を用いる必要がある。しかしながら、特に関係式として実験式を用いる場合には、高精度の実験式を求めるために、多くの実験を行う必要があり、多くの時間と手間とを要する。また、放射率の組み合わせ解を求めるためには、ソフトウェアおよびハードウェアが必要であり、特に繰り返し計算は時間が掛かる演算であるために、高速処理が可能なソフトウェアおよびハードウェアが要求される。また、放射率が時間的に変化する場合には、繰り返し計算が必ず放射率の実際値に収束するという保証がない。
このように、従来技術には、放射率の組み合わせ解を計算によって決定することに起因する問題がある。このため、放射率の組み合わせ解を計算せずに、放射率の変動の影響を受けることなく測定対象物の表面温度を高精度に測定可能な技術の提供が期待されていた。
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、放射率の組み合わせ解を計算せずに、放射率の変動の影響を受けることなく測定対象物の温度を高精度に測定可能な温度測定方法および温度測定装置を提供することにある。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る温度測定方法は、測定対象物から発せられる放射エネルギーを分光測定し、得られた分光スペクトル情報を信号処理して測定対象物の表面温度を測定する温度測定方法であって、黒体炉から発せられる放射エネルギーの分光スペクトル情報を検量線作成用の分光スペクトル情報として検出するステップと、前記検量線作成用の分光スペクトル情報を基底分解し、基底分解によって得られた複数の基底スペクトルのスコアを第1の係数として算出し、該第1の係数間の関係式を第1の関係式として算出するステップと、前記第1の係数と前記検量線作成用の分光スペクトル情報を検出した際の前記黒体炉の温度とを用いて測定対象物の表面温度を推定するための重回帰式の重回帰係数を算出するステップと、放射率変動の分光スペクトル情報から前記複数の基底スペクトルのスコアを第2の係数として算出し、該第2の係数間の関係式を第2の関係式として算出するステップと、測定対象物から発せられる放射エネルギーの分光スペクトル情報を測定対象物の分光スペクトル情報として検出するステップと、前記複数の基底スペクトルを用いて前記測定対象物の分光スペクトル情報を基底分解し、該複数の基底スペクトルのスコアを第3の係数として算出し、該第3の係数を通る第1の関係式および第2の関係式の連立方程式を解くことによって放射率変動のない場合のスコアを第4の係数として算出し、該第4の係数と前記重回帰係数とを用いて前記重回帰式により前記測定対象物の表面温度を算出するステップと、を含む。
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る温度測定装置は、測定対象物から発せられる放射エネルギーを分光測定し、得られた分光スペクトル情報を信号処理して測定対象物の表面温度を測定する温度測定装置であって、黒体炉および測定対象物から発せられる放射エネルギーの分光スペクトル情報をそれぞれ検量線作成用の分光スペクトル情報および測定対象物の分光スペクトル情報として検出する検出手段と、前記検量線作成用の分光スペクトル情報を基底分解し、基底分解によって得られた複数の基底スペクトルのスコアを第1の係数として算出し、該第1の係数間の関係式を第1の関係式として算出する関係式算出手段と、前記第1の係数と前記検量線作成用の分光スペクトル情報を検出した際の前記黒体炉の温度とを用いて測定対象物の表面温度を推定するための重回帰式の重回帰係数を算出する回帰式作成手段と、放射率変動の分光スペクトル情報から前記複数の基底スペクトルのスコアを第2の係数として算出し、該第2の係数間の関係式を第2の関係式として算出する第2の関係式算出手段と、前記複数の基底スペクトルを用いて前記測定対象物の分光スペクトル情報を基底分解し、該複数の基底スペクトルのスコアを第3の係数として算出し、該第3の係数を通る第1の関係式および第2の関係式の連立方程式を解くことによって放射率変動のない場合のスコアを第4の係数として算出し、該第4の係数と前記重回帰係数とを用いて前記重回帰式により前記測定対象物の表面温度を算出する温度推定手段と、を備える。
本発明に係る温度測定方法および温度測定装置によれば、放射率の組み合わせ解を計算せずに、放射率の変動の影響を受けることなく測定対象物の温度を高精度に測定することができる。
図1は、ある集団の構成員の身長と体重との関係を示す散布図である。 図2は、多点の波長情報と第1主成分との関係を示す図である。 図3Aは、7段階の温度に対する黒体放射エネルギースペクトルを示す図である。 図3Bは、図3Aに示す黒体放射エネルギースペクトルに対して対数演算を施した結果を示す図である。 図4は、図3Bに示す放射エネルギーの対数演算値に対して主成分分析を実行することによって得られた第1主成分および第2主成分を示す図である。 図5Aは、第1主成分を用いた黒体放射エネルギースペクトルの再構成例を示す図である。 図5Bは、第1主成分と第2主成分とを用いた黒体放射エネルギースペクトルの再構成例を示す図である。 図6は、放射率変動の主成分ベクトルと放射エネルギーの主成分ベクトルとの関係を示す図である。 図7は、放射率変動の一例を示す図である。 図8は、測定対象物から取得された分光エネルギースペクトルを示す図である。 図9は、第1および第2主成分のスコアの変化曲線と対数演算後の放射率変動を表す主成分に対する放射エネルギーの第1および第2主成分のスコアの変化曲線との一例を示す図である。 図10は、理想的な黒体放射エネルギースペクトルに対して主成分分析を実行することによって得られた第1主成分に対するスコアと測定対象物の温度との関係を示す図である。 図11Aは、図10に示す関係に基づいて測定対象物の表面温度を測定した結果を示す図である。 図11Bは、従来技術を用いて測定対象物の表面温度を測定した結果を示す図である。 図12は、本発明の一実施形態である温度測定装置の構成を示すブロック図である。 図13は、図12に示すFTIRの内部構成を示す模式図である。 図14は、本発明の一実施形態である回帰式作成処理の流れを示すフローチャートである。 図15は、本発明の一実施形態である温度推定処理の流れを示すフローチャートである。 図16は、各種条件で複数の鋼板の放射率を測定した結果を示す図である。 図17は、放射率の平均値に対する放射率の実測値の比の対数値と第1主成分を用いて対数値を表現したものとの関係を示す図である。 図18Aは、本発明と従来技術とによって測定された測定対象物の表面温度の測定誤差を示す図である。 図18Bは、本発明と従来技術とによって測定された測定対象物の表面温度の測定誤差を示す図である。
〔本発明の概念〕
測定対象物の放射エネルギーを利用した測定対象物の表面温度測定においては、以下の数式(1)に示すように、黒体放射エネルギースペクトルL(λ,T)に予め仮定した放射率のスペクトルε(λ)を乗じた測定値L(λ,T)が測定される。なお、数式(1)中のパラメータλは放射エネルギーの測定波長を示し、パラメータTは測定対象物の表面温度を示している。
Figure 2013127378
ここで、数式(1)の両辺のlog(自然対数)を取り変形すると、以下に示す数式(2)が得られる。従って、数式(2)の右辺に測定値L(λ,T)と放射率のスペクトルε(λ)とを代入することによって、黒体放射エネルギースペクトルの自然対数logL(λ,T)の推定値を算出することができる。なお、ここで“推定値”と表現する理由は、予め仮定した放射率のスペクトルε(λ)が正確かどうかわからないためである。すなわち、放射率のスペクトルε(λ)が仮定した値からずれている場合には、算出された黒体放射エネルギースペクトルの自然対数logL(λ,T)の値は正しい値ではない。
Figure 2013127378
但し、黒体放射エネルギースペクトルL(λ,T)は、本来、以下の数式(3)に示すプランクの放射則で表現される。なお、数式(3)中のパラメータc,cは物理定数を示している。従って、黒体放射エネルギースペクトルの自然対数logL(λ,T)に放射率のスペクトルε(λ)に起因する誤差が含まれていたとしても、本来取りうる黒体放射エネルギースペクトルの自然対数logL(λ,T)の形は決まっているので、放射率のスペクトルε(λ)に関係なく黒体放射エネルギースペクトルの自然対数logL(λ,T)の真の形を推定できる可能性がある。そこで、黒体放射エネルギースペクトルの自然対数logL(λ,T)の形に着目するための一手法として、主成分分析(基底分解)を行うことを考える。
Figure 2013127378
始めに、図1を参照して、一般的な主成分分析手法について説明をする。図1は、ある集団の構成員の身長Xと体重Xとの関係を示す散布図である。一般に、身長Xが大きい人は体重Xが重いと言えるので、図1に示す散布図は右上がりの分布を有している。図1中に挿入した右上がりの線分Lはこの分布の中心を通る線であり、いわば「体の大きさ」という尺度を表している。主成分分析手法とは、この身長Xと体重Xとの組合せデータ(2次元情報)の本質的解釈が、「体の大きさt」という1次元の尺度で代表されるということを統計的に導く手法である。数学的には、この「体の大きさ」は第1主成分であり、この第1主成分と直交する、第1主成分の次に本質的な情報が第2主成分となる。図1に示す例では、第2主成分は物理的には「肥満度t」なる尺度と言える。
図1に示す例では、元々の2次元情報(身長、体重)が主成分分析によって「体の大きさ」という1次元情報に縮約される。従って、この本質を抜き出すという情報処理を表面温度推定における放射エネルギースペクトル波形に適用すれば、多点の波長情報から本質を抽出することができる。この場合、多点の波長情報は、図2に示すように測定波長の数と同じ次元数の空間上の1点として表現される。例えば7つの温度に対するn波長の分光スペクトルデータが与えられたとすると、n次元空間上の7つの点が与えられることになる。従って、この7つの点のn次元空間における分布の広がりを考えて、最も広がりの大きな方向が第1主成分の方向となり、これが前述の7つの点を区別する、つまり7つの温度を区別する最も有力な手がかりとなる。
ここで、図3Aに示す7つの温度に対する黒体放射エネルギースペクトルL(λ,T)(これは黒体炉を測定することにより得られる)に対数演算を施した結果であるlogL(λ,T)(図3B)に対して主成分分析を行ったときに得られた第1主成分および第2主成分を図4に示す。図4に示す第1主成分は、7つの温度に対する黒体放射エネルギースペクトルの自然対数logL(λ,T)を最も代表するスペクトル波形である。なお、黒体放射エネルギースペクトルL(λ,T)に対数演算を施した理由は、測定対象物の表面温度を実際に測定した場合に黒体放射エネルギースペクトルL(λ,T)に乗じた形で影響する放射率ε(λ)をlogε(λ)の加算という形で分離するためである。
次に、この第1主成分に直交するベクトル空間で7点のばらつきが2番目に大きな方向を取り出したものが第2主成分であり、これを同図に示す。直観的には、第1主成分が、温度とともに増大する平均的なエネルギーを表現する基底で、第2主成分が、細かな形を表現するための基底のように見える。以降、同様にして第3主成分以降の主成分も求めることができる。これら低次の主成分情報は、元の7つの黒体放射エネルギースペクトルlogL(λ,T)の本質的なスペクトル情報(基底スペクトル)である。
これら低次の主成分情報が、確かに元の7つの黒体放射エネルギースペクトルL(λ,T)の本質的なスペクトル情報(基底スペクトル)であるということを検証するため、基底スペクトルから元の7つの黒体放射エネルギースペクトルL(λ,T)を再構成した際の当てはまり具合を図5A,図5Bに示す。再構成とは基底ベクトルを係数倍して足し合わせるという積和演算、つまり線形操作を行うことによって元のスペクトルを構成するものである。元の7つの黒体放射エネルギースペクトルL(λ,T)に、低次の基底ベクトル情報がどの位含まれているかにより再構成した際の当てはまり具合が変化する。図5Aは第1主成分のみで再構成した結果、図5Bは第2主成分までで再構成した結果を示している。
図5Bから明らかなように、第2主成分までを使用することによって、7つの黒体放射エネルギースペクトルL(λ,T)のどれもが非常に良く再構成されていることがわかる。これは、1つ1つの黒体放射エネルギースペクトルL(λ,T)はN点の波長情報、つまりN次元の各座標で表現する必要はなく、2つの基底ベクトルの線形和という2つの係数分の2点の情報だけで表現できるということを意味している。換言すれば、N次元データが2次元データに圧縮されたとも言える。この際、次元数は大幅に圧縮されてはいるが、「基底ベクトル」という本質的なスペクトル形で再構成されているということが重要で、先に述べた放射率変動といった外乱には影響されにくいことが想定される。
図3Bに示す対数演算結果を改めて数式の形で補足する。図3Bに示す対数演算結果は、例えば波長2〜10μmの波長範囲内で0.32μm毎に測定された波長方向(横軸)N=250点における放射エネルギーに対数演算を施したものである。ここで、放射エネルギーのlog値をx(i,j)として表すことにする。なお、パラメータi(=1〜250)は、測定波長番号を表し、パラメータj(=1〜7)は温度番号を示す。パラメータjに対する温度はy(j)であるとする。さらに、放射エネルギーのlog値x(i,j)に対して主成分分析を実施した結果得られた主成分ベクトルをw(i,k)とする。主成分ベクトルw(i,k)の決め方の説明は主成分解析の一般的文献に譲るが、簡単に説明すると、以下に示す数式(4)中のパラメータjについてのばらつきが最大になるように第1主成分w(i,1)が決定され、第1主成分w(i,1)と直交するベクトルの中で以下に示す数式(5)中のパラメータjについてのばらつきが最大になるように第2主成分w(i,2)が決定されるといった具合である。
Figure 2013127378
Figure 2013127378
各主成分の大きさ(i=1〜Nの各成分の二乗和の平方根)は1とする。主成分ベクトルw(i,k)において、パラメータiは1〜250の範囲、パラメータkは数学的には1〜Nの範囲で考えることができるが、本例ではk=1,2の範囲で考える。一般に、パラメータkがより小さい(低次の主成分)場合がより放射エネルギーのlog値x(i,j)の本質を表すことになるが、パラメータkの範囲の選び方に関しては本発明では特に限定しない。なお、第1主成分w(i,1)のみで元の放射エネルギーデータを再構築した値は以下に示す数式(6)によって表される。
Figure 2013127378
数式(6)中のパラメータa(k,j)は数学的には主成分得点若しくはスコアと呼ばれる定数(スカラー)である。そして、数式(6)を対数演算を施す前の状態、すなわち、以下に示す数式(7)で表される値として表示したものが図5Aに示した再構築例である。なお、数式(7)中のeは自然対数の底を表している。
Figure 2013127378
同様に、第1主成分w(i,1)に第2主成分w(i,2)を加えて元の放射エネルギーデータを再構築した値は以下に示す数式(8)によって表される。そして、同様に、数式(8)を対数演算を施す前の状態で表示したものが図5Bに示した再構築例である。この第2主成分w(i,2)までを使って再構築した放射エネルギーデータでほぼ元の放射エネルギーのlog値x(i,j)を再現することができる。このことは、実温度を推定する場合、250点のデータから構成される放射エネルギーのlog値x(i,j)を使用する代わりに、たかだか2点のデータであるスコアa(k,j)を使用しても情報の質が落ちないということを意味している。
Figure 2013127378
なお、スコアa(k,j)は、主成分ベクトルw(i,k)と元の放射エネルギーのlog値x(i,j)との内積を算出することによって導出され、個々の成分は、以下に示す数式(9)によって導出される。
Figure 2013127378
以上が、分光スペクトルデータに対して主成分分析を行う際の基本的な考え方である。ここでは、さらに、測定対象物の放射率変動の影響を受けないようにするための、主成分分析の適用方法について考える。放射率の変動があった場合、放射率を予め既知の放射率値ε(λ)と操業条件などによって変化し得る放射率変動分δε(λ)とに分けて、数式(1)に対応する形で測定値L(λ,T)は以下に示す数式(10)のように記述することができる。ここで、数式(10)中のパラメータε0(λ)は設定値などの基準となる放射率、パラメータδε(λ)は種々の条件下での放射率の変動を表している。
Figure 2013127378
上記数式(10)両辺のlog(自然対数)を取り変形すると、以下に示す数式(11)が得られる。従来の放射温度測定では、測定波長における放射率ε0(λ)は既知として、単色温度計では以下に示す数式(12)により表される仮定、2色温度計では以下に示す数式(13)により表される仮定をおき、方程式を解くことによって表面温度を求めている。しかしながら、これらの仮定が厳密には成立せずに温度誤差が生じることが多い。
Figure 2013127378
Figure 2013127378
Figure 2013127378
また、波長数を多数とることができれば、統計的に何らかの関係式で表面温度を記述することによって、個々の波長における放射率の仮定値の温度誤差に対する影響を軽減することも期待できる。しかしながら、波長数が3以上である場合には、関係式が複雑になり、特殊な数値計算が必要になる。そこで、ここでは数式(11)の両辺について、主要な情報を十分含んでいる放射エネルギーの第1主成分w(i,1)および第2主成分w(i,2)に対するスコアa(1,j),a(2,j)を求めることを考える。なお、数式(11)の左辺のスコアは既述の数式(9)で表されるスコアに他ならない。
また、スコアa(1,j),a(2,j)は温度番号jが変化することによって、すなわち温度が変化することによって、ある関係をもって変化することが期待される。これを以下の数式(14)のように表す。また、数式(11)の右辺第1項のスコアは、以下の数式(15),(16)に示すように測定値そのものと主成分との内積を取ることによって計算することができる。また、数式(11)の右辺第2項のスコアも以下の数式(17),(18)に示すように放射率スペクトルの設定値ε0(i)を用いて直接計算することができる。
Figure 2013127378
Figure 2013127378
Figure 2013127378
Figure 2013127378
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右辺第3項のスコアについては、統計的な変動を含んでいるので、ここでは測定対象物の放射率変動の挙動が予めわかっているとして、その放射率変動データに対して主成分分析を行い、放射率変動の第1主成分v(i,1)を算出する。放射率変動の第1主成分v(i,1)は、測定対象物の放射率変動の統計的挙動を表現するものになる。すなわち、統計的には−δε(i)は、ある定数tを用いて以下の数式(19)のように表現できることを意味する。これについて、放射エネルギーの第1主成分w(i,1)および第2主成分w(i,2)で表現するためにそれらのスコアを求めると、以下に示す数式(20),(21)のようになる。
Figure 2013127378
Figure 2013127378
Figure 2013127378
以上のことから、測定温度Tにおける第1主成分w(i,1)および第2主成分w(i,2)のスコアa(1,j),a(2,j)は以下に示す数式(22),(23)のようになる。従って、数式(14)の制約のもとに定数tを算出することによってスコアa(1,T),a(2,T)を求めることができ、スコアa(1,T),a(2,T)を用いて測定温度Tを求めることができる。
Figure 2013127378
Figure 2013127378
図6に以上の説明の概念図を示す。図6は、n波長の放射エネルギー値を表現するn次元空間を示している。図中の曲線Lは、数式(11)の右辺の「logL(λ,T)−logε0(λ)」の項を表している。本図では、7つの温度に対応する形で放射エネルギーをプロットしているが、実際には放射エネルギーは温度に対応して曲線Lのように連続的な変化を示す。一方、各プロットに付与されている矢印Aは数式(11)の右辺の「−logδε(λ)」を表している。放射率変動のデータに対し主成分分析を行い、その結果を放射エネルギーの第1主成分ベクトルVおよび第2主成分ベクトルVで表現する。
すなわち、第1主成分ベクトルVおよび第2主成分ベクトルVで張られる平面内への放射率変動の射影を求める。なお、図中、ベクトルVは第1主成分ベクトルVおよび第2主成分ベクトルVで張られる平面内の成分を示し、ベクトルVは放射率変動の主成分ベクトル(統計的挙動)を示している。これにより、放射エネルギーの測定値Pをこの平面内に射影した点を含む放射率変動の直線Lと温度変化による放射エネルギーの変化の曲線Lとを描くことができるので、その交点として放射率変動が存在しない場合の放射エネルギーを求めることができる。
なお、ここでは放射率変動のデータから放射率変動の主成分を求めた後に、その主成分を放射エネルギーの第1および第2主成分にて表現するようにしたが、放射率変動のデータから直接放射エネルギーの第1および第2主成分のスコアを求めてもよい。但し、その場合、放射率変動の主成分という統計的な量を介さずにスコアが求められるので、第1および第2主成分のスコアにばらつきが乗っていること、およびそもそも放射率変動が主成分として統計的に表現できるかどうかを直接確認できないことに留意する必要がある。また、放射エネルギーを表現するために第1および第2主成分、放射率の変動を表現するために第1主成分を用いたが、幾つまでの主成分を用いるかについては各種特性や温度範囲、要求精度などに応じて自由に選択して本願発明を適用することができる。
上述の概念に基づいて、放射率の大きさが図7に示すように変化する測定対象物の温度測定シミュレーションを行った例について説明する。なお、本例は、放射率変動が定数倍、すなわち、パラメータKを定数としたとき、以下に示す数式(24)が成立する例である。従って、対数演算を施した後の放射率変動の主成分は、全ての波長成分が同一の値を持つ、いわゆる直流成分となる。このように放射率が変化する場合、測定される放射エネルギーは、図5Aに示すような黒体放射エネルギーに放射率が乗じられた値として測定される。800℃の場合の各放射率に対応して測定される分光エネルギースペクトルを図8に示す。図から明らかなように、800℃で放射率が低い場合には、700℃で放射率が想定値通りであった場合と波形が類似しており、従来方式のうち、単色温度計ではこのように放射率が変化している測定対象物を精度よく測定することは難しい。
Figure 2013127378
そこで、前述の通り、対数演算後の放射エネルギー変動の主成分分析結果に基づいて第1および第2主成分のスコアの変化曲線と対数演算後の放射率変動を表す主成分に対する放射エネルギーの第1および第2主成分のスコアの変化曲線とを求めたものを図9に示す。図から明らかなように、測定点を通る放射率の変化を示す直線と放射エネルギーの変化を表す曲線との交点が、放射率変動がない求めたい放射エネルギーであり、それより温度を測定することができる。このため、図10に示す関係から、第2主成分に対する係数と測定対象の温度との関係を表す検量線を計算しておき、放射率が増減した場合の測定放射エネルギースペクトルから計算した第1主成分に対する係数を用いて温度を推定した。その結果、図7に示したような放射率の増減があった場合でも、図11Aに示すような誤差に収まることが確認された。なお、2色温度計(この場合は波長2μmと波長4μm)で測定を行った場合の誤差は、図11Bに示すように、完全に放射率の比が等しい条件が成立している場合は誤差が小さいが、放射率の比が必ずしも等しくなく、変動しているような場合には大きい。
従って、本発明の目的である温度推定のための元情報としては、多数の波長からなる分光情報に対して主成分分析を行い、低次の主成分で元分光情報を再構成した場合の、基底ベクトルの係数倍という情報(主成分得点)が有効であることが確認された。先の例に照らし合わせて換言すると、元のN点波長データから温度を推定する代わりに、N点波長データを第2主成分までのスコアである2点データに次元圧縮し、その2点情報から温度データを通常の重回帰手法で推定する。図5A,5Bで示したように、この2点情報から十分にN点波長データを再現できることを考えると、この2点情報には温度を推定するための十分な情報が入っているからである。
数式の形で補足すると、オリジナルのN点波長データから温度を推定する以下に示す数式(25)の代わりに、第2主成分までのスコアである2点データから温度を推定する以下に示す数式(26)を用いて温度を推定する。
Figure 2013127378
Figure 2013127378
以下、図面を参照して、上記の本発明の概念に基づき想到された本発明の一実施形態である温度測定装置およびその温度測定方法について詳しく説明する。
〔温度測定装置の構成〕
始めに、図12、図13を参照して、本発明の一実施形態である温度測定装置の構成について説明する。
図12は、本発明の一実施形態である温度測定装置の構成を示すブロック図である。図13は、図12に示すFTIRの内部構成を示す模式図である。図12に示すように、本発明の一実施形態である温度測定装置1は、FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)2、回帰式作成部3、および温度推定部4を備えている。
FTIR2は、測定対象物である鋼板5からの放射エネルギーの分光スペクトルを測定するものである。図2に示すように、FTIR2は、ミラー11、ハーフミラー12、可動ミラー13、ミラー14、ミラー15,16、および検出器17を備え、ミラー11、ハーフミラー12、可動ミラー13、およびミラー14〜16は干渉計18を構成している。鋼板5から発せられた放射光は干渉計18に導かれ、検出器17が干渉計18から出た光の光量を測定する。
このとき、干渉計18の可動ミラー13を移動しながら時系列的に測定した検出器17の信号をフーリエ変換することにより、鋼板5からの放射エネルギーの分光スペクトル情報が得られる。この場合、1つの分光スペクトル情報を得るために、可動ミラー13を移動させるだけの時間を要するが、その間の温度変動が十分小さければ問題ない。分光スペクトルを測定する方法は、これ以外にも、回折格子を利用する方法、波長選択フィルタを利用する方法など種々考えられるが、いずれの方法を利用しても構わない。
回帰式作成部3および温度推定部4は、マイクロコンピュータなどの情報処理装置によって構成されている。回帰式作成部3は、後述する回帰式作成処理を実行することによって、温度推定部4が鋼板5の表面温度を推定する際に使用する基礎データ(基底スペクトルおよび重回帰係数)を算出する。温度推定部4は、後述する温度推定処理を実行することによって、回帰式作成部3によって算出された基礎データを用いて鋼板5の表面温度を測定する。
このような構成を有する温度測定装置1は、以下に示す回帰式作成処理および温度推定処理を実行することによって、鋼板5の表面温度を推定する。以下、図14および図15に示すフローチャートを参照して、回帰式作成処理および温度推定処理を実行する際の温度測定装置1の動作について説明する。
〔回帰式作成処理〕
始めに、図14に示すフローチャートを参照して、回帰式作成処理を実行する際の温度測定装置1の動作について説明する。
図14は、本発明の一実施形態である回帰式作成処理の流れを示すフローチャートである。図14に示すフローチャートは、鋼板5の表面温度を測定する前の所定のタイミングで開始となり、回帰式作成処理はステップS1の処理に進む。なお、この回帰式作成処理を実行する際、図12に示す鋼板5は黒体炉に置き換えられるものとする。
ステップS1の処理では、回帰式作成部3が、FTIR2を介して黒体炉から発せられる放射エネルギーの分光スペクトル情報を検量線作成用の分光スペクトル情報として取得する。これにより、ステップS1の処理は完了し、回帰式作成処理はステップS2の処理に進む。
ステップS2の処理では、回帰式作成部3が、ステップS1の処理によって取得した検量線作成用の分光スペクトル情報に対して対数演算処理を実行し、既述の数式(2)を利用して対数演算値から想定している放射率のスペクトルの対数値を減算する。これにより、ステップS2の処理は完了し、回帰式作成処理はステップS3の処理に進む。
ステップS3の処理では、回帰式作成部3が、ステップS2の減算処理結果に対して主成分分析を実行する。これにより、ステップS3の処理は完了し、回帰式作成処理はステップS4の処理に進む。
ステップS4の処理では、回帰式作成部3が、ステップS3の処理によって得られた主成分分析の結果から、既述の数式(4),(5)を利用して第1および第2主成分w(i,1),w(i,2)を基底として抽出する。また、回帰式作成部3は、既述の数式(9)を利用して、本発明に係る第1の係数に対応する各基底のスコアa(k,j)を算出する。これにより、ステップS4の処理は完了し、回帰式作成処理はステップS5の処理に進む。
ステップS5の処理では、回帰式作成部3が、ステップS4の処理によって算出されたスコアa(k,j)間の関係式を算出する。算出された関係式は本発明に係る第1の関係式に対応する。これにより、ステップS5の処理は完了し、回帰式作成処理はステップS6の処理に進む。
ステップS6の処理では、回帰式作成部3が、鋼板の放射率変動データを取得する。放射率変動データは、例えば、種々条件の加熱サンプルの放射エネルギーの分光スペクトルと加熱サンプルに取り付けられた熱電対から把握した真温度に設定された黒体炉の放射エネルギーの分光スペクトルとの比演算を行うことにより蓄積した放射率データから得られる。これにより、ステップS6の処理は完了し、回帰式作成処理はステップS7の処理に進む。
ステップS7の処理では、回帰式作成部3が、ステップS6の処理によって取得した放射率変動データに対して対数演算処理を実行し、既述の数式(2)を利用して対数演算値から想定している放射率のスペクトルε(λ)の対数値を減算する。これにより、ステップS7の処理は完了し、回帰式作成処理はステップS8の処理に進む。
ステップS8の処理では、回帰式作成部3が、ステップS7の減算処理結果に対するステップS4の処理において抽出された各基底のスコアa(k,j)を算出する。算出されたスコアは本発明に係る第2の係数に対応する。これにより、ステップS8の処理は完了し、回帰式作成処理はステップS9の処理に進む。
ステップS9の処理では、回帰式作成部3が、ステップS8の処理によって算出されたスコアa(k,j)間の関係式を算出する。算出された関係式は本発明に係る第2の関係式に対応する。これにより、ステップS9の処理は完了し、回帰式作成処理はステップS10の処理に進む。
ステップS10の処理では、回帰式作成部3が、ステップS4の処理によって算出されたスコアa(k,j)と検量線作成用の分光スペクトル情報に対応した黒体炉の温度とを既述の数式(26)に適用することによって既述の数式(26)の重回帰式における重回帰係数c(k)を算出する。そして、回帰式作成部3は、基底スペクトル(主成分w(i,k)、k=1、2)および重回帰係数(c(k)、k=1、2)のデータを基礎データとして温度推定部4に出力する。これにより、ステップS10の処理は完了し、一連の回帰式作成処理は終了する。
〔温度推定処理〕
次に、図15に示すフローチャートを参照して、温度推定作成処理を実行する際の温度測定装置1の動作について説明する。
図15は、本発明の一実施形態である温度推定処理の流れを示すフローチャートである。図15に示すフローチャートは、回帰式作成処理が終了した後の所定のタイミングで開始となり、温度推定処理はステップS11の処理に進む。
ステップS11の処理では、温度推定部4が、FTIR2を介して鋼板5からの放射エネルギーの分光スペクトル情報を取得する。これにより、ステップS11の処理は完了し、温度推定処理はステップS12の処理に進む。
ステップS12の処理では、温度推定部4が、ステップS11の処理によって取得した分光スペクトル情報に対して対数演算処理を実行し、既述の数式(2)を利用して対数演算値から想定している放射率のスペクトルε(λ)の対数値を減算する。これにより、ステップS12の処理は完了し、温度推定処理はステップS13の処理に進む。
ステップS13の処理では、温度推定部4が、ステップS12の減算処理結果x(i,j)と回帰式作成部3から入力された基底スペクトル(主成分w(i,k)、k=1、2)とを既述の数式(9)に代入することによって、本発明に係る第3の係数に対応する測定対象物のスコアa(k,j)を算出する。これにより、ステップS13の処理は完了し、温度推定処理はステップS14の処理に進む。
ステップS14の処理では、温度推定部4が、ステップS13の処理によって算出されたスコアを通るステップS5の処理によって算出されたスコア間の関係式とステップS9の処理によって算出されたスコア間の関係式との連立方程式を解くことによって、放射率=1、換言すれば放射率変動がない場合のスコアa(k,j)を算出する。算出されたスコアは本発明に係る第4の係数に対応する。これにより、ステップS14の処理は完了し、温度推定処理はステップS15の処理に進む。
ステップS15の処理では、温度推定部4が、ステップS14の処理によって算出されたスコアa(k,j)と回帰式作成部3から入力された重回帰係数(c(k)、k=1、2)とを既述の数式(17)に適用することによって回帰演算を行い、鋼板5の表面温度を推定する。これにより、ステップS15の処理は完了し、一連の温度推定処理は終了する。
以上の説明から明らかなように、本発明の一実施形態である温度測定装置1では、回帰式作成部3が、検量線作成用の分光スペクトル情報を基底分解し、複数の基底スペクトルのスコアを第1の係数として算出し、第1の係数間の関係式を算出し、算出された第1の係数と検量線作成用の分光スペクトル情報に対応した温度データとから重回帰係数(c(k)、k=1,2)を算出する。また、回帰式作成部3は、放射率変動の分光スペクトル情報から複数の基底スペクトルのスコアを第2の係数として算出し、第2の係数間の関係式を算出する。そして、温度推定部4が、複数の基底スペクトルを用いて測定対象物の分光スペクトル情報を基底分解し、複数の基底スペクトルのスコアを第3の係数として算出し、第3の係数を通る第1の係数間および第2の係数間の関係式の連立方程式を解くことによって放射率変動のない場合のスコアを第4の係数として算出し、第4の係数と重回帰係数とを用いて重回帰式により測定対象物の表面温度を算出する。これにより、放射率の組み合わせ解を計算せずに、放射率の変動の影響を受けることなく測定対象物の温度を高精度に測定することができる。
〔実施例〕
図16は、各種条件で複数の鋼板の放射率を測定した結果を示す図である。図16に示すデータから放射率の平均値を算出し、放射率の平均値に対する放射率の実測値の比(放射率変動分)の対数を計算したもの(細線)と、それを第1主成分にて表現したもの(太線)を図17に示す。図17からわかるように、細かい部分で一致していない箇所はあるが、ほぼ統計的には放射率変動分を主成分にて表現することができている。そして、この放射率変動の主成分に直交する制約の下、放射エネルギーの主成分分析を行い、その第1主成分を計算することにより温度を測定した結果を図18A、図18Bに示す。図18A、図18Bから明らかなように、本発明の一実施形態である温度測定装置によれば、2色温度計と比較して、放射率の変動の影響を受けることなく測定対象物の温度を高精度に測定できることが確認された。
以上、本発明者らによってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、本実施形態による本発明の開示の一部をなす記述および図面により本発明は限定されることはない。すなわち、本実施形態に基づいて当業者などによりなされる他の実施の形態、実施例、および運用技術などは全て本発明の範疇に含まれる。
1 温度測定装置
2 FTIR(フーリエ変換赤外分光光度計)
3 回帰式作成部
4 温度推定部
5 鋼板
11、14,15,16 ミラー
12 ハーフミラー
13 可動ミラー
17 検出器
18 干渉計

Claims (2)

  1. 測定対象物から発せられる放射エネルギーを分光測定し、得られた分光スペクトル情報を信号処理して測定対象物の表面温度を測定する温度測定方法であって、
    黒体炉から発せられる放射エネルギーの分光スペクトル情報を検量線作成用の分光スペクトル情報として検出するステップと、
    前記検量線作成用の分光スペクトル情報を基底分解し、基底分解によって得られた複数の基底スペクトルのスコアを第1の係数として算出し、該第1の係数間の関係式を第1の関係式として算出するステップと、
    前記第1の係数と前記検量線作成用の分光スペクトル情報を検出した際の前記黒体炉の温度とを用いて測定対象物の表面温度を推定するための重回帰式の重回帰係数を算出するステップと、
    放射率変動の分光スペクトル情報から前記複数の基底スペクトルのスコアを第2の係数として算出し、該第2の係数間の関係式を第2の関係式として算出するステップと、
    測定対象物から発せられる放射エネルギーの分光スペクトル情報を測定対象物の分光スペクトル情報として検出するステップと、
    前記複数の基底スペクトルを用いて前記測定対象物の分光スペクトル情報を基底分解し、該複数の基底スペクトルのスコアを第3の係数として算出し、該第3の係数を通る第1の関係式および第2の関係式の連立方程式を解くことによって放射率変動のない場合のスコアを第4の係数として算出し、該第4の係数と前記重回帰係数とを用いて前記重回帰式により前記測定対象物の表面温度を算出するステップと、
    を含むことを特徴とする温度測定方法。
  2. 測定対象物から発せられる放射エネルギーを分光測定し、得られた分光スペクトル情報を信号処理して測定対象物の表面温度を測定する温度測定装置であって、
    黒体炉および測定対象物から発せられる放射エネルギーの分光スペクトル情報をそれぞれ検量線作成用の分光スペクトル情報および測定対象物の分光スペクトル情報として検出する検出手段と、
    前記検量線作成用の分光スペクトル情報を基底分解し、基底分解によって得られた複数の基底スペクトルのスコアを第1の係数として算出し、該第1の係数間の関係式を第1の関係式として算出する関係式算出手段と、
    前記第1の係数と前記検量線作成用の分光スペクトル情報を検出した際の前記黒体炉の温度とを用いて測定対象物の表面温度を推定するための重回帰式の重回帰係数を算出する回帰式作成手段と、
    放射率変動の分光スペクトル情報から前記複数の基底スペクトルのスコアを第2の係数として算出し、該第2の係数間の関係式を第2の関係式として算出する第2の関係式算出手段と、
    前記複数の基底スペクトルを用いて前記測定対象物の分光スペクトル情報を基底分解し、該複数の基底スペクトルのスコアを第3の係数として算出し、該第3の係数を通る第1の関係式および第2の関係式の連立方程式を解くことによって放射率変動のない場合のスコアを第4の係数として算出し、該第4の係数と前記重回帰係数とを用いて前記重回帰式により前記測定対象物の表面温度を算出する温度推定手段と、
    を備えることを特徴とする温度測定装置。
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