以下、更に詳しく、本発明にかかる成形材料、および炭素繊維強化複合材料、ならびに成形材料の製造方法を実施するための形態について説明をする。本発明は、次の(A)、(B)成分、炭素繊維およびマトリックス樹脂を含んでなる成形材料であって、前記炭素繊維が単繊維状で2次元配向していることを特徴とする。まず、(A)、(B)成分を含むバインダーおよび、該バインダーを付与する炭素繊維について説明する。
本発明において用いられる(A)成分とは、(A1)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物、および/または、(A2)分子内に1個以上のエポキシ基と、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、およびスルホ基から選ばれる、少なくとも1個以上の官能基を有するエポキシ化合物をさす。
また、本発明で用いられる(B)成分とは、(B1)分子量が100g/mol以上である3級アミン化合物および/または3級アミン塩、(B2)一般式(I)
(式中、R
1〜R
4は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH
2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい)、または一般式(II)
(式中、R
5は、炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH
2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。R
6とR
7は、それぞれ水素、または炭素数1〜8の炭化水素基を表し、該炭化水素基中のCH
2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。)のいずれかで示されるカチオン部位を有する4級アンモニウム塩、(B3)4級ホスホニウム塩および/またはホスフィン化合物から選択される少なくとも1種の化合物をさす。
本発明において、(A)成分と(B)成分とは、(A)成分100質量部に対し、前記(B1)、(B2)、(B3)から選択される少なくとも1種の(B)成分を0.1〜25質量部を配合してなるバインダーを使用することが好ましい。
(A)成分と(B)成分を特定量配合したバインダーを炭素繊維に付与することにより接着性が向上するメカニズムは確かではないが、まず、(B)成分が本発明で用いられる炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基に作用し、これらの官能基に含まれる水素イオンを引き抜きアニオン化した後、このアニオン化した官能基と(A)成分に含まれるエポキシ基が求核反応するものと考えられる。これにより、本発明で用いられる炭素繊維とバインダー中のエポキシ基の強固な結合が形成される。一方、マトリックス樹脂との関係においては、(A1)、(A2)それぞれについて、以下のとおりに説明される。
(A1)の場合、本発明で用いられる炭素繊維との共有結合に関与しない残りのエポキシ基がマトリックス樹脂含有官能基と反応し共有結合を形成するか、もしくは、水素結合を形成するものと考えられる。とりわけ、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂の場合に、(A1)のエポキシ基とマトリックス樹脂のエポキシ基の反応、エポキシ樹脂中に含まれるアミン硬化剤を介しての反応により強固な界面が形成できると考えられる。また、(A1)の構造中に1個以上の不飽和基を含むことが好ましく、マトリックス樹脂が、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂のようなラジカル重合系樹脂の場合、(A1)の不飽和基とマトリックス樹脂の不飽和基がラジカル反応し強固な界面を形成することが可能である。
(A2)の場合、(A2)のエポキシ基は本発明で用いられる炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基と共有結合を形成するが、残りの官能基である、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基はマトリックス樹脂に応じて、共有結合や水素結合などの相互作用を形成するものと考えられる。マトリックス樹脂がエポキシ樹脂であれば、(A2)の水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基とマトリックス樹脂のエポキシ基または、アミン硬化剤とエポキシ基が反応してできた水酸基との相互作用により強固な界面を形成できると考えられる。また、マトリックス樹脂がポリアミド、ポリエステルおよび酸変性されたポリオレフィンに代表される熱可塑性樹脂であれば、(A2)の水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基と、これらマトリックス樹脂に含まれるアミド基、エステル基、酸無水物基、末端などのカルボキシル基、水酸基、アミノ基との相互作用により、強固な界面を形成できると考えられる。
すなわち、(A1)の場合における、炭素繊維との共有結合に関与しない残りのエポキシ基が、(A2)の場合における、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基に相当する機能を有すると考えられる。
本発明において、(B)成分が炭素繊維100質量部に対して、好ましくは、0.001〜0.3質量部、より好ましくは、0.005〜0.2質量部、さらに好ましくは、0.01〜0.1質量部含むことが好ましい。(B)成分が炭素繊維100質量部に対して、0.001〜0.3質量部の場合、炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基と(A)エポキシ化合物との反応が促進され、接着向上効果が大きくなる。
本発明において、(A)エポキシ化合物のエポキシ当量は、360g/mol未満であることが好ましく、より好ましくは270g/mol未満であり、さらに好ましくは180g/mol未満である。エポキシ当量が360g/mol未満であると、高密度で共有結合が形成され、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性がさらに向上する。エポキシ当量の下限は特にないが、90g/mol未満で接着性が飽和する場合がある。
本発明において、(A)エポキシ化合物が、3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましく、4個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることがより好ましい。(A)エポキシ化合物が、分子内に3個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であると、1個のエポキシ基が炭素繊維表面の酸素含有官能基と共有結合を形成した場合でも、残りの2個以上のエポキシ基がマトリックス樹脂と共有結合または水素結合を形成することができ、接着性がさらに向上する。エポキシ基の数の上限は特にないが、10個以上では接着性が飽和する場合がある。
本発明において、(A)エポキシ化合物が、2種以上の官能基を3個以上有するエポキシ樹脂であることが好ましく、2種以上の官能基を4個以上有するエポキシ樹脂であることがより好ましい。エポキシ化合物が有する官能基は、エポキシ基以外に、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基から選択されるものが好ましい。(A)エポキシ化合物が、分子内に3個以上のエポキシ基または他の官能基を有するエポキシ樹脂であると、1個のエポキシ基が炭素繊維表面の酸素含有官能基と共有結合を形成した場合でも、残りの2個以上のエポキシ基または他の官能基がマトリックス樹脂と共有結合または水素結合を形成することができ、接着性がさらに向上する。エポキシ基の数の上限は特にないが、10個以上では接着性が飽和する場合がある。
本発明において、(A)エポキシ化合物は、分子内に芳香環を1個以上有することが好ましく、芳香環を2個以上有することがより好ましい。炭素繊維とマトリックス樹脂とからなる繊維強化複合材料において、炭素繊維近傍のいわゆる界面層は、炭素繊維あるいはバインダーの影響を受け、マトリックス樹脂とは異なる特性を有する場合がある。(A)エポキシ化合物が芳香環を1個以上有すると、剛直な界面層が形成され、炭素繊維とマトリックス樹脂との間の応力伝達能力が向上し、繊維強化複合材料の0°引張強度等の力学特性が向上する。芳香環の数の上限は特にないが、10個以上では力学特性が飽和する場合がある。
本発明において、(A1)エポキシ化合物は、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、またはテトラグリシジルジアミノジフェニルメタンのいずれかであることが好ましい。これらのエポキシ樹脂は、エポキシ基数が多く、エポキシ当量が小さく、かつ、2個以上の芳香環を有しており、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性を向上させることに加え、繊維強化複合材料の0°引張強度等の力学特性を向上させる。2官能以上のエポキシ樹脂は、より好ましくは、フェノールノボラック型エポキシ樹脂およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂である。
本発明において、(A1)2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の具体例としては、例えば、ポリオールから誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、複数活性水素を有するアミンから誘導されるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸から誘導されるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、および分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化して得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルエーテル型エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ヒドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、1,6−ジヒドロキシナフタレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、トリス(p−ヒドロキシフェニル)メタン、およびテトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンとエピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられる。また、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ポリブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、グリセロール、ジグリセロール、ポリグリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、およびアラビトールと、エピクロロヒドリンとの反応により得られるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂も例示される。また、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂として、ジシクロペンタジエン骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、およびビフェニルアラルキル骨格を有するグリシジルエーテル型エポキシ樹脂も例示される。
グリシジルアミン型エポキシ樹脂としては、例えば、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、m−キシリレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンおよび9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレンが挙げられる。
さらに、例えば、グリシジルアミン型エポキシ樹脂として、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、および4−アミノ−3−メチルフェノールのアミノフェノール類の水酸基とアミノ基の両方を、エピクロロヒドリンと反応させて得られるエポキシ樹脂が挙げられる。
グリシジルエステル型エポキシ樹脂としては、例えば、フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、およびダイマー酸を、エピクロロヒドリンと反応させて得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂が挙げられる。
分子内に複数の2重結合を有する化合物を酸化させて得られるエポキシ樹脂としては、例えば、分子内にエポキシシクロヘキサン環を有するエポキシ樹脂が挙げられる。さらに、このエポキシ樹脂としては、エポキシ化大豆油が挙げられる。
本発明に使用する(A1)エポキシ化合物として、これらのエポキシ樹脂以外にも、トリグリシジルイソシアヌレートのようなエポキシ樹脂が挙げられる。さらには、上に挙げたエポキシ樹脂を原料として合成されるエポキシ樹脂、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとトリレンジイソシアネートからオキサゾリドン環生成反応により合成されるエポキシ樹脂が挙げられる。
本発明において、(A2)1個以上のエポキシ基と、水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、およびスルホ基から選ばれる、少なくとも1個以上の官能基を有するエポキシ化合物の具体例として、例えば、エポキシ基と水酸基を有する化合物、エポキシ基とアミド基を有する化合物、エポキシ基とイミド基を有する化合物、エポキシ基とウレタン基を有する化合物、エポキシ基とウレア基を有する化合物、エポキシ基とスルホニル基を有する化合物、エポキシ基とスルホ基を有する化合物が挙げられる。
エポキシ基と水酸基を有する化合物としては、例えば、ソルビトール型ポリグリシジルエーテルおよびグリセロール型ポリグリシジルエーテル等が挙げられ、具体的には“デナコール(登録商標)”EX−611、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、EX−313、EX−314およびEX−321(ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
エポキシ基とアミド基を有する化合物としては、例えば、グリシジルベンズアミド、アミド変性エポキシ樹脂等が挙げられる。アミド変性エポキシはジカルボン酸アミドのカルボキシル基に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
エポキシ基とイミド基を有する化合物としては、例えば、グリシジルフタルイミド等が挙げられる。具体的には“デナコール(登録商標)”EX−731(ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
エポキシ基とウレタン基を有する化合物としては、例えば、ウレタン変性エポキシ樹脂が挙げられ、具体的には“アデカレジン(登録商標)”EPU−78−13S、EPU−6、EPU−11、EPU−15、EPU−16A、EPU−16N、EPU−17T−6、EPU−1348およびEPU−1395(株式会社ADEKA製)等が挙げられる。または、ポリエチレンオキサイドモノアルキルエーテルの末端水酸基に、その水酸基量に対する反応当量の多価イソシアネートを反応させ、次いで得られた反応生成物のイソシアネート残基に多価エポキシ樹脂内の水酸基と反応させることによって得ることができる。ここで、用いられる多価イソシアネートとしては、2,4−トリレンジイソシアネート、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネートおよびビフェニル−2,4,4’−トリイソシアネートなどが挙げられる。
エポキシ基とウレア基を有する化合物としては、例えば、ウレア変性エポキシ樹脂等が挙げられる。ウレア変性エポキシはジカルボン酸ウレアのカルボキシル基に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂のエポキシ基を反応させることによって得ることができる。
エポキシ基とスルホニル基を有する化合物としては、例えば、ビスフェノールS型エポキシ等が挙げられる。
エポキシ基とスルホ基を有する化合物としては、例えば、p−トルエンスルホン酸グリシジルおよび3−ニトロベンゼンスルホン酸グリシジル等が挙げられる。
以下、(B)成分の(B1)〜(B3)について順に説明する。
本発明で用いられる(B1)分子量が100g/mol以上の3級アミン化合物および/または3級アミン塩は、(A)エポキシ化合物100質量部に対して、0.1〜25質量部配合することが必要であり、0.5〜20質量部配合することが好ましく、2〜15質量部配合することがより好ましく、2〜8質量部配合することがさらに好ましい。配合量が0.1質量部未満であると、(A)エポキシ化合物と炭素繊維表面の酸素含有官能基との間の共有結合形成が促進されず、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が不十分となる。一方、配合量が25質量部を超えると、(B1)が炭素繊維表面を覆い、共有結合形成が阻害され、炭素繊維とマトリックス樹脂との接着性が不十分となる。
本発明において用いられる、(B1)分子量が100g/mol以上である3級アミン化合物および/または3級アミン塩は、その分子量が100g/mol以上であることが必要であり、分子量は100〜400g/molの範囲内であることが好ましく、より好ましくは100〜300g/molの範囲内であり、さらに好ましくは100〜200g/molの範囲内である。分子量が100g/mol以上であると、熱処理中にも揮発が抑えられ、少量でも大きな接着性向上効果が得られる。一方、分子量が400g/mol以下であると、分子中における活性部位の比率が高く、やはり少量でも大きな接着性向上効果が得られる。
本発明において用いられる3級アミン化合物とは、分子内に3級アミノ基を有する化合物を示す。また、本発明で用いられる3級アミン塩とは、3級アミノ基を有する化合物をプロトン供与体で中和した塩のことを示す。ここで、プロトン供与体とは、3級アミノ基を有する化合物にプロトンとして供与できる活性水素を有する化合物のことをさす。なお、活性水素とは、塩基性の化合物にプロトンとして供与される水素原子のことをさす。
プロトン供与体としては、無機酸、カルボン酸、スルホン酸およびフェノール類などの有機酸、アルコール類、メルカプタン類および1,3−ジカルボニル化合物などが挙げられる。
無機酸の具体例としては、硫酸、亜硫酸、過硫酸、塩酸、過塩素酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、ホスホン酸、ホスフィン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸およびアミド硫酸等が挙げられる。中でも、硫酸、塩酸、硝酸およびリン酸が好ましく用いられる。
カルボン酸類としては、脂肪族ポリカルボン酸、芳香族ポリカルボン酸、S含有ポリカルボン酸、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸および芳香族モノカルボン酸に分類され、以下の化合物が挙げられる。
脂肪族ポリカルボン酸の具体例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ウンデンカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ペンチルマロン酸、ヘキシルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、メチルプロピルマロン酸、メチルブチルマロン酸、エチルプロピルマロン酸、ジプロピルマロン酸、メチルコハク酸、エチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、3−メチルグルタル酸、3−メチル−3−エチルグルタル酸、3,3−ジエチルグルタル酸、3,3−ジメチルグルタル酸、3−メチルアジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびシトラコン酸等が挙げられる。
芳香族ポリカルボン酸の具体例としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸およびピロメリット酸等が挙げられる。
S含有ポリカルボン酸の具体例としては、チオジプロピオン酸等が挙げられる。
脂肪族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、グリコール酸、乳酸、酒石酸およびひまし油脂肪酸等が挙げられる。
芳香族ヒドロキシカルボン酸の具体例としては、サリチル酸、マンデル酸、4−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等が挙げられる。
脂肪族モノカルボン酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、オクチル酸、ペラルゴン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデカン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸およびオレイン酸等が挙げられる。
芳香族モノカルボン酸の具体例としては、安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸、トルイル酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、イソプロピル安息香酸、ブチル安息香酸、イソブチル安息香酸、第2ブチル安息香酸、第3ブチル安息香酸、メトキシ安息香酸、エトキシ安息香酸、プロポキシ安息香酸、イソプロポキシ安息香酸、ブトキシ安息香酸、イソブトキシ安息香酸、第2ブトキシ安息香酸、第3ブトキシ安息香酸、アミノ安息香酸、N−メチルアミノ安息香酸、N−エチルアミノ安息香酸、N−プロピルアミノ安息香酸、N−イソプロピルアミノ安息香酸、N−ブチルアミノ安息香酸、N−イソブチルアミノ安息香酸、N−第2ブチルアミノ安息香酸、N−第3ブチルアミノ安息香酸、N,N−ジメチルアミノ安息香酸、N,N−ジエチルアミノ安息香酸、ニトロ安息香酸およびフロロ安息香酸等が挙げられる。
以上のカルボン酸類のうち、芳香族ポリカルボン酸、脂肪族モノカルボン酸、芳香族カルボン酸が好ましく用いられ、具体的には、フタル酸、ギ酸、オクチル酸が好ましく用いられる。
スルホン酸としては、脂肪族スルホン酸と芳香族スルホン酸に分類でき、以下の化合物が挙げられる。
脂肪族スルホン酸の中でも、1価の飽和脂肪族スルホン酸の具体例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、イソプロピルスルホン酸、ブタンスルホン酸、イソブチルスルホン酸、tert−ブチルスルホン酸、ペンタンスルホン酸、イソペンチルスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、ノナンスルホン酸、デカンスルホン酸、ウンデカンスルホン酸、ドデカンスルホン酸、トリデカンスルホン酸、テトラデカンスルホン酸、n−オクチルスルホン酸、ドデシルスルホン酸およびセチルスルホン酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸は不飽和脂肪族スルホン酸であってもよく、不飽和脂肪族スルホン酸の具体例としては、エチレンスルホン酸および1−プロペン−1−スルホン酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸の中でも、2価以上の脂肪族スルホン酸の具体例としては、メチオン酸、1,1−エタンジスルホン酸、1,2−エタンジスルホン酸、1,1−プロパンジスルホン酸、1,3−プロパンジスルホン酸およびポリビニルスルホン酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸は水酸基を有するオキシ脂肪族スルホン酸であってもよく、オキシ脂肪族スルホン酸の具体例としては、イセチオン酸および3−オキシ−プロパンスルホン酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸はスルホ脂肪族カルボン酸であってもよく、スルホ脂肪族カルボン酸の具体例としては、スルホ酢酸およびスルホコハク酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸はスルホ脂肪族カルボン酸エステルであってもよく、スルホ脂肪族カルボン酸エステルの具体例としては、ジ(2−エチルヘキシル)スルホコハク酸等が挙げられる。
脂肪族スルホン酸はフルオロスルホン酸であってもよく、フルオロスルホン酸の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロプロパンスルホン酸、パーフルオロイソプロピルスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロイソブチルスルホン酸、パーフルオロ−tert−ブチルスルホン酸、パーフルオロペンタンスルホン酸、パーフルオロイソペンチルスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロノナンスルホン酸、パーフルオロデカンスルホン酸、パーフルオロウンデカンスルホン酸、パーフルオロドデカンスルホン酸、パーフルオロトリデカンスルホン酸、パーフルオロテトラデカンスルホン酸、パーフルオロ−n−オクチルスルホン酸、パーフルオロドデシルスルホン酸およびパーフルオロセチルスルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸の中でも、1価の芳香族スルホン酸の具体例としては、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、m−トルエンスルホン酸、o−キシレン−4−スルホン酸、m−キシレン−4−スルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、4−プロピルベンゼンスルホン酸、4−ブチルベンゼンスルホン酸、4−ドデシルベンゼンスルホン酸、4−オクチルベンゼンスルホン酸、2−メチル−5−イソプロピルベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、t−ブチルナフタレンスルホン酸、2,4,5−トリクロロベンゼンスルホン酸、ベンジルスルホン酸およびフェニルエタンスルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸の中でも、2価以上の芳香族スルホン酸の具体例としては、m−ベンゼンジスルホン酸、1,4−ナフタレンジスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、1,6−ナフタレンジスルホン酸、2,6−ナフタレンジスルホン酸、2,7−ナフタレンジスルホン酸、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸およびスルホン化ポリスチレン等が挙げられる。
芳香族スルホン酸はオキシ芳香族スルホン酸であってもよく、オキシ芳香族スルホン酸の具体例としては、フェノール−2−スルホン酸、フェノール−3−スルホン酸、フェノール−4−スルホン酸、アニソール−o−スルホン酸、アニソール−m−スルホン酸、フェネトール−o−スルホン酸、フェネトール−m−スルホン酸、フェノール−2,4−ジスルホン酸、フェノール−2,4,6−トリスルホン酸、アニソール−2,4−ジスルホン酸、フェネトール−2,5−ジスルホン酸、2−オキシトルエン−4−スルホン酸、ピロカテキン−4−スルホン酸、ベラトロール−4−スルホン酸、レゾルシン−4−スルホン酸、2−オキシ−1−メトキシベンゼン−4−スルホン酸、1,2−ジオキシベンゼン−3,5−ジスルホン酸、レゾルシン−4,6−ジスルホン酸、ヒドロキノンスルホン酸、ヒドロキノン−2,5−ジスルホン酸および1,2,3−トリオキシベンゼン−4−スルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸はスルホ芳香族カルボン酸であってもよく、スルホ芳香族カルボン酸の具体例としては、o−スルホ安息香酸、m−スルホ安息香酸、p−スルホ安息香酸、2,4−ジスルホ安息香酸、3−スルホフタル酸、3,5−ジスルホフタル酸、4−スルホイソフタル酸、2−スルホテレフタル酸、2−メチル−4−スルホ安息香酸、2−メチル−3、5−ジスルホ安息香酸、4−プロピル−3−スルホ安息香酸、2,4,6−トリメチル−3−スルホ安息香酸、2−メチル−5−スルホテレフタル酸、5−スルホサリチル酸および3−オキシ−4−スルホ安息香酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸はチオ芳香族スルホン酸であってもよく、チオ芳香族スルホン酸の具体例としては、チオフェノールスルホン酸、チオアニソール−4−スルホン酸およびチオフェネトール−4−スルホン酸等が挙げられる。
芳香族スルホン酸の中でも、その他官能基を有する具体例としては、ベンズアルデヒド−o−スルホン酸、ベンズアルデヒド−2,4−ジスルホン酸、アセトフェノン−o−スルホン酸、アセトフェノン−2,4−ジスルホン酸、ベンゾフェノン−o−スルホン酸、ベンゾフェノン−3,3'−ジスルホン酸、4−アミノフェノール−3−スルホン酸、アントラキノン−1−スルホン酸、アントラキノン−2−スルホン酸、アントラキノン−1,5−ジスルホン酸、アントラキノン−1,8−ジスルホン酸、アントラキノン−2,6−ジスルホン酸および2−メチルアントラキノン−1−スルホン酸等が挙げられる。
以上のスルホン酸類のうち、1価の芳香族スルホン酸が好ましく用いられ、具体的には、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸およびm−トルエンスルホン酸が好ましく用いられる。
また、フェノール類としては、1分子中に1個の活性水素を含むものの具体例としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、n−プロピルフェノール、イソプロピルフェノール、n−ブチルフェノール、sec−ブチルフェノール、tert−ブチルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ジメチルフェノール、メチル−tert−ブチルフェノール、ジ−tert−ブチルフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ニトロフェノール、メトキシフェノールおよびサリチル酸メチル等が挙げられる。
1分子中に2個の活性水素を含むフェノール類の具体例としては、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、メチルヒドロキノン、tert−ブチルヒドロキノン、ベンジルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、ジメチルヒドロキノン、メチル−tert−ブチルヒドロキノン、ジ−tert−ブチルヒドロキノン、トリメチルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、メチルレゾルシノール、tert−ブチルレゾルシノール、ベンジルレゾルシノール、フェニルレゾルシノール、ジメチルレゾルシノール、メチル−tert−ブチルレゾルシノール、ジ−tert−ブチルレゾルシノール、トリメチルレゾルシノール、メトキシレゾルシノール、メチルカテコール、tert−ブチルカテコール、ベンジルカテコール、フェニルカテコール、ジメチルカテコール、メチル−tert−ブチルカテコール、ジ−tert−ブチルカテコール、トリメチルカテコール、メトキシカテコール、ビフェノール、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビフェニル等のビフェノール類、ビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビスフェノールA、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビスフェノールF、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビスフェノールF、ビスフェノールAD、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラメチルビスフェノールAD、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’,5,5’−テトラ−tert−ブチルビスフェノールADが挙げられる。
さらに、1分子中に2個の活性水素を含むフェノール類として、下記の構造式(XIII)、
で示されるビスフェノール類等、テルペンフェノール、構造式(XX)
構造式(XXI)
で示される化合物等が挙げられる。1分子中に3個の活性水素を含むフェノール類の具体例としては、トリヒドロキシベンゼンおよびトリス(p−ヒドロキシフェニル)メタン等が挙げられる。1分子中に4個の活性水素を含むフェノール類の具体例として、テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。また、それ以外の具体例として、フェノール、アルキルフェノールおよびハロゲン化フェノール等とホルムアルデヒドとの反応により得られるフェノールノボラックが挙げられる。
以上のフェノール類のうち、フェノールおよびフェノールノボラックが好ましく用いられる。
また、アルコール類としては、1分子中に2個の水酸基を含むものが例示され、例えば、1,2−エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,1−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ドデカヒドロビスフェノールA、構造式(XXII)
で表されるビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、構造式(XXIII)
で表されるビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、構造式(XXIV)
で表されるドデカヒドロビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、構造式(XXV)
で表されるドデカヒドロビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、グリセリン、トリメチロールエタンおよびトリメチロールプロパン等が挙げられる。また、1分子中に4個の水酸基を含むアルコール類の具体例としては、ペンタエリスリトール等が挙げられる。
また、メルカプタン類としては、1分子中に1個の活性水素を含むメルカプタン類が例示され、例えば、メタンチオール、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、1−ペンタンチオール、1−ヘキサンチオール、1−ヘプタンチオール、1−オクタンチオール、シクロペンタンチオール、シクロヘキサンチオール、ベンジルメルカプタン、ベンゼンチオール、トルエンチオール、クロロベンゼンチオール、ブロモベンゼンチオール、ニトロベンゼンチオールおよびメトキシベンゼンチオール等が挙げられる。
1分子中に2個の活性水素を含むメルカプタン類の具体例としては、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,4−ブタンジチオール、1,5−ペンタンジチオール、2,2’−オキシジエタンチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1,2−シクロヘキサンジチオール、1,3−シクロヘキサンジチオール、1,4−シクロヘキサンジチオール、1,2−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオールおよび1,4−ベンゼンチオール等が挙げられる。
また、1,3−ジカルボニル化合物類としては、2,4−ペンタンジオン、3−メチル−2,4−ペンタンジオン、3−エチル−2,4−ペンタンジオン、3,5−ヘプタンジオン、4,6−ノナンジオン、2,6−ジメチル−3,5−ヘプタンジオン、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオン、1−フェニル−1,3−ブタンジオン、1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオン、1,3−シクロペンタンジオン、2−メチル−1,3−シクロペンタンジオン、2−エチル−1,3−シクロペンタンジオン、1,3−シクロヘキサンジオン、2−メチル−1,3−シクロヘキサンジオン、2−エチル−シクロヘキサンジオン、1,3−インダンジオン、アセト酢酸エチルおよびマロン酸ジエチル等が挙げられる。
本発明において用いられる、(B1)分子量が100g/mol以上の3級アミン化合物および/または3級アミン塩は、次の一般式(III)
(式中、R8は炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。R9は、炭素数2〜22のアルキレン基、炭素数2〜22のアルケニレン基、または炭素数2〜22のアルキニレン基のいずれかを表す。R10は、水素または炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。または、R8とR10は結合して炭素数2〜11のアルキレン基を形成してもよい)、次の一般式(IV)
(式中、R11〜R14は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい)、または、次の一般式(V)
(式中、R15〜R20は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。R21は、水酸基、または炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい)、一般式(VI)
(式中、R
22〜R
24は、それぞれ炭素数1〜8の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよい)、一般式(VII)
(式中、R
25は、炭素数1〜8の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよい)、一般式(VIII)
(式中、R
26〜R
28は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH
2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。さらに、R
26〜R
28のいずれかに、次の一般式(IX)または(X)で示される1以上の分岐構造を有し、かつ少なくとも1以上の水酸基を含む)であることを特徴とする。
(式中、R
29、R
30は、それぞれ炭素数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH
2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。但し、R
29とR
30の炭素数の合算値が21以下である。)
(式中、R
31〜R
33は、それぞれ水酸基または炭素数1〜19の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH
2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。但し、R
31とR
32とR
33の炭素数の合算値が21以下である。)
本発明の上記一般式(III)〜(V)、および(VIII)のR8、R11〜R20、R26〜R28は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。炭素数を1〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。より好ましくは1〜14の範囲内であり、さらに好ましくは1〜8の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。
本発明の上記一般式(V)のR21は、水酸基、または炭素数1〜22の炭化水素基であり、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。炭素数を1〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。より好ましくは1〜14の範囲内であり、さらに好ましくは1〜8の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。
本発明の上記一般式(III)のR9は、炭素数2〜22のアルキレン基、炭素数2〜22のアルケニレン基、または炭素数2〜22のアルキニレン基のいずれかを表す。炭素数を2〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。好ましくは3〜22の範囲内であり、より好ましくは3〜14の範囲内であり、さらに好ましくは3〜8の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。
本発明の上記一般式(III)のR10は、水素または炭素数1〜22の炭化水素基であり、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。炭素数を1〜22の間にすることで、分子構造の立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性が向上する。より好ましくは1〜14の範囲内であり、さらに好ましくは1〜8の範囲内である。一方、炭素数が22を超える場合、分子構造の立体障害がやや大きく反応促進効果が低くなる場合がある。
ここで、炭素数1〜22の炭化水素基とは、炭素原子と水素原子のみからなる基であり、飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基のいずれでも良く、環構造を含んでも含まなくても良い。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基、ドコシル基、ベンジル基およびフェニル基等が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基は、炭化水素基中のCH2基が−O−により置換されたものであってもよい。炭素数1〜22の炭化水素基中のCH2基が−O−により置換された場合の例としては、直鎖状のものとして、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、ポリエチレングリコール基およびポリプロピレングリコール基等のポリエーテル基が挙げられる。環状のものとして、例えば、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、オキセパン、1,3−ジオキソランなどが挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基は、炭化水素基中のCH2基が−O−CO−または−CO−O−により置換されたものであってもよい。炭素数1〜22の炭化水素基中のCH2基が−O−CO−または−CO−O−により置換された場合の例としては、例えば、アセトキシメチル基、アセトキシエチル基、アセトキシプロピル基、アセトキシブチル基、メタクロイルオキシエチル基およびベンゾイルオキシエチル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基は、水酸基を有していてもよく、炭素数1〜22の炭化水素基が水酸基を有する場合の例としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシシクロヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシオレイル基およびヒドロキシドコシル基等が挙げられる。
本発明において、(B1)の3級アミン化合物は、その共役酸の酸解離定数pKaが9以上のものが好ましく、より好ましくは11以上のものである。酸解離定数pKaが9以上の場合、(B1)成分が炭素繊維のカルボキシル基および水酸基等の酸素含有官能基から水素イオンを引き抜きやすくなるため、炭素繊維表面の官能基と(A)成分のエポキシ基との反応が促進され、接着向上効果が大きくなる。このような3級アミン化合物としては、具体的には、DBU(pKa12.5)、DBN(pKa12.7)や1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(pKa12.3)等が該当する。
本発明において、(B1)の3級アミン化合物および/または3級アミン塩は、沸点が160℃以上のものが好ましく、より好ましくは160〜350℃の範囲内であり、さらに好ましくは160〜260℃の範囲内である。沸点が160℃未満の場合、160〜260℃の温度範囲で30〜600秒熱処理する工程において、揮発が激しくなり反応促進効果が低下する場合がある。
本発明において用いられる、(B1)の3級アミン化合物および/または3級アミン塩としては、脂肪族3級アミン類、芳香族含有脂肪族3級アミン類、芳香族3級アミン類および複素環式3級アミン類と、それらの塩が挙げられる。次に、具体例を挙げる。
脂肪族3級アミン類の具体例としては、例えば、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリオクチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルペンチルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルドデシルアミン、ジメチルテトラデシルアミン、ジメチルヘキサデシルアミン、ジメチルオクタデシルアミン、ジメチルオレイルアミン、ジメチルドコシルアミン、ジエチルプロピルアミン、ジエチルブチルアミン、ジエチルペンチルアミン、ジエチルヘキシルアミン、ジエチルシクロヘキシルアミン、ジエチルオクチルアミン、ジエチルデシルアミン、ジエチルドデシルアミン、ジエチルテトラデシルアミン、ジエチルヘキサデシルアミン、ジエチルオクタデシルアミン、ジエチルオレイルアミン、ジエチルドコシルアミン、ジプロピルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジプロピルエチルアミン、ジプロピルブチルアミン、ジブチルメチルアミン、ジブチルエチルアミン、ジブチルプロピルアミン、ジヘキシルメチルアミン、ジヘキシルメチルアミン、ジヘキシルプロピルアミン、ジヘキシルブチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ジシクロヘキシルエチルアミン、ジシクロヘキシルプロピルアミン、ジシクロヘキシルブチルアミン、ジオクチルメチルアミン、ジオクチルエチルアミン、ジオクチルプロピルアミン、ジデシルメチルアミン、ジデシルエチルアミン、ジデシルプロピルアミン、ジデシルブチルアミン、ジドデシルメチルアミン、ジドデシルエチルアミン、ジドデシルプロピルアミン、ジドデシルブチルアミン、ジテトラデシルメチルアミン、ジテトラデシルエチルアミン、ジテトラデシルプロピルアミン、ジテトラデシルブチルアミン、ジヘキサデシルメチルアミン、ジヘキサデシルエチルアミン、ジヘキサデシルプロピルアミン、ジヘキサデシルブチルアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン、トリヘキサノールアミン、ジエチルメタノールアミン、ジプロピルメタノールアミン、ジイソプロピルメタノールアミン、ジブチルメタノールアミン、ジイソブチルメタノールアミン、ジターシャリブチルメタノールアミン、ジ(2−エチルヘキシル)メタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジプロピルエタノールアミン、ジイソプロピルエタノールアミン、ジブチルエタノールアミン、ジイソブチルエタノールアミン、ジターシャリブチルエタノールアミン、ジ(2−エチルヘキシル)エタノールアミン、ジメチルプロパノールアミン、ジエチルプロパノールアミン、ジプロピルプロパノールアミン、ジイソプロピルプロパノールアミン、ジブチルプロパノールアミン、ジイソブチルプロパノールアミン、ジターシャリブチルプロパノールアミン、ジ(2−エチルヘキシル)プロパノールアミン、メチルジメタノールアミン、エチルジメタノールアミン、プロピルジメタノールアミン、イソプロピルジメタノールアミン、ブチルジメタノールアミン、イソブチルジメタノールアミン、ターシャリブチルジメタノールアミン、(2−エチルヘキシル)ジメタノールアミン、メチルジエタノールアミン、エチルジエタノールアミン、プロピルジエタノールアミン、イソプロピルジエタノールアミン、ブチルジエタノールアミン、イソブチルジエタノールアミン、ターシャリブチルジエタノールアミン、(2−エチルヘキシル)ジエタノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノールなどが挙げられる。
脂肪族3級アミン類は、3級アミノ基を分子内に2個以上もつ化合物であってもよく、3級アミノ基を分子内に2個以上もつ化合物としては、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−プロパンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジエチル−N’,N’−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサメチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、およびトリメチルアミノエチルエタノールアミンなどが挙げられる。
芳香族含有脂肪族3級アミン類の具体例としては、例えば、N,N−ジメチルベンジルアミン、N,N−ジエチルベンジルアミン、N,N−ジプロピルベンジルアミン、N,N’−ジブチルベンジルアミン、N,N−ジヘキシルベンジルアミン、N,N−ジシクロヘキシルベンジルアミン、N,N−ジオクチルベンジルアミン、N,N−ジドデシルベンジルアミン、N,N−ジオレイルベンジルアミン、N,N−ジベンジルメチルアミン、N,N−ジベンジルエチルアミン、N,N−ジベンジルプロピルアミン、N,N−ジベンジルブチルアミン、N,N−ジベンジルヘキシルアミン、N,N−ジベンジルシクロヘキシルアミン、N,N−ジベンジルオクチルアミン、N,N−ジベンジルドデシルアミン、N,N−ジベンジルオレイルアミン、トリベンジルアミン、N,N−メチルエチルベンジルアミン、N,N−メチルプロピルベンジルアミン、N,N−メチルブチルベンジルアミン、N,N−メチルヘキシルベンジルアミン、N,N−メチルシクロヘキシルベンジルアミン、N,N−メチルオクチルベンジルアミン、N,N−メチルドデシルベンジルアミン、N,N−メチルオレイルベンジルアミン、N,N−メチルヘキサデシルベンジルアミン、N,N−メチルオクタデシルベンジルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジエチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジプロピルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジブチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジペンチルアミノメチル)フェノール、および2,4,6−トリス(ジヘキシルアミノメチル)フェノールなどが挙げられる。
芳香族3級アミン類の具体例としては、例えば、トリフェニルアミン、トリ(メチルフェニル)アミン、トリ(エチルフェニル)アミン、トリ(プロピルフェニル)アミン、トリ(ブチルフェニル)アミン、トリ(フェノキシフェニル)アミン、トリ(ベンジルフェニル)アミン、ジフェニルメチルアミン、ジフェニルエチルアミン、ジフェニルプロピルアミン、ジフェニルブチルアミン、ジフェニルヘキシルアミン、ジフェニルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ジプロピルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン、N,N−ジシクロヘキシルアニリン、(メチルフェニル)ジメチルアミン、(エチルフェニル)ジメチルアミン、(プロピルフェニル)ジメチルアミン、(ブチルフェニル)ジメチルアミン、ビス(メチルフェニル)メチルアミン、ビス(エチルフェニル)メチルアミン、ビス(プロピルフェニル)メチルアミン、ビス(ブチルフェニル)メチルアミン、N,N−ジ(ヒドロキシエチル)アニリン、N,N−ジ(ヒドロキシプロピル)アニリン、N,N−ジ(ヒドロキシブチル)アニリン、およびジイソプロパノール−p−トルイジンなどが挙げられる。
複素環式3級アミン類の具体例としては、例えば、ピコリン、イソキノリン、キノリン等のピリジン系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物、モルホリン系化合物、ピペラジン系化合物、ピペリジン系化合物、ピロリジン系化合物、シクロアミジン系化合物、およびプロトンスポンジ誘導体、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
ピリジン系化合物としては、N,N−ジメチル−4−アミノピリジン、ビピリジンおよび2,6−ルチジンなどが挙げられる。イミダゾール系化合物としては、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−イミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾリウムトリメリテート、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテート、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾール、1−ベンジル−2−フォルミルイミダゾール、1−ベンジル−イミダゾールおよび1−アリルイミダゾールなどが挙げられる。
ピラゾール系化合物としては、ピラゾールや1,4−ジメチルピラゾールなどが挙げられる。モルホリン系化合物としては、4−(2−ヒロドキシエチル)モルホリン、N−エチルモルホリン、N−メチルモルホリンおよび2,2’−ジモルホリンジエチルエーテルなどが挙げられる。ピペラジン系化合物としては、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジンやN,N−ジメチルピペラジンなどが挙げられる。ピペリジン系化合物としては、N−(2−ヒドロキシエチル)ピペリジン、N−エチルピペリジン、N−プロピルピペリジン、N−ブチルピペリジン、N−ヘキシルピペリジン、N−シクロヘキシルピペリジンおよびN−オクチルピペリジンなどが挙げられる。ピロリジン系化合物としては、N−ブチルピロリジンおよびN−オクチルピロリジンなどが挙げられる。シクロアミジン系化合物としては、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕−5−ノネン(DBN)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、および5、6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ〔5,4,0〕ウンデセン−7(DBA)を挙げることができる。その他の複素環式アミン類として、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサエチレンテトラミンおよびヘキサプロピルテトラミンを挙げることができる。
上記のDBU塩としては、具体的には、DBUのフェノール塩(U−CAT SA1、サンアプロ株式会社製)、DBUのオクチル酸塩(U−CAT SA102、サンアプロ株式会社製)、DBUのp−トルエンスルホン酸塩(U−CAT SA506、サンアプロ株式会社製)、DBUのギ酸塩(U−CAT SA603、サンアプロ株式会社製)、DBUのオルソフタル酸塩(U−CAT SA810)、およびDBUのフェノールノボラック樹脂塩(U−CAT SA810、SA831、SA841、SA851、881、サンアプロ株式会社製)などが挙げられる。
前記のプロトンスポンジ誘導体の具体例としては、例えば、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジエチルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジプロピルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジブチルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジペンチルアミノ)ナフタレン、1,8−ビス(ジヘキシルアミノ)ナフタレン、1−ジメチルアミノ−8−メチルアミノ−キノリジン、1−ジメチルアミノ−7−メチル−8−メチルアミノ−キノリジン、1−ジメチルアミノ−7−メチル−8−メチルアミノ−イソキノリン、7−メチル−1,8−メチルアミノ−2,7−ナフチリジン、および2,7−ジメチル−1,8−メチルアミノ−2,7−ナフチリジンなどが挙げられる。
前記のヒンダードアミン系化合物としては、ブタン−1,2,3,4−テトラカルボン酸テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)(例えば、LA−52(ADEKA社製))、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(例えば、LA−72(ADEKA社製)、TINUVIN765(BASF社製))、炭酸=ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−ウンデシルオキシピペリジン−4−イル)(例えば、LA−81(ADEKA社製))、メタクリル酸−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル(例えば、LA−82(ADEKA社製))、マロン酸−2−((4−メトキシフェニル)メチレン)、1,3−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステル、Chimassorb119、2−ドデシル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)スクシン−イミド、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸−1−ヘキサデシル−2,3,4−トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸−1,2,3−トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−4−トリデシル、デカン二酸−1−メチル−10−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)、4−(エテニルオキシ)−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、2−((3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル)メチル)−2−ブチルプロパン二酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)、4−ヒドロキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、LA−63P(ADEKA社製)、LA−68(ADEKA社製)、TINUVIN622LD(BASF社製)、TINUVIN144(BASF社製)などが挙げられる。
これらの3級アミン化合物と3級アミン塩は、単独で用いても良いし、複数種を併用しても良い。
本発明の上記一般式(VIII)のR26〜R28のうちの少なくとも1つの炭素数は、2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは4以上である。R11〜R13のうちの少なくとも1つの炭素数が2以上であると、3級アミン化合物および/または3級アミン塩が開始剤として働く副反応、例えば、エポキシ樹脂の単独重合が抑えられ、接着性がさらに向上する。また、本発明の上記一般式(VIII)で示される化合物は、少なくとも1以上の水酸基を有することが好ましい。1以上の水酸基を有することで炭素繊維表面官能基への相互作用が高まり、効率的に炭素繊維表面官能基のプロトンを引き抜き、エポキシ基との反応性を高めることができる。
本発明において、前記の一般式(III)で示される化合物は、N−ベンジルイミダゾール、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)およびその塩、または、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕−5−ノネン(DBN)およびその塩が好ましく、1,8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)およびその塩、または、1,5−ジアザビシクロ〔4,3,0〕−5−ノネン(DBN)およびその塩が好適である。
本発明において、前記の一般式(IV)で示される化合物は、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンであることが好ましい。
本発明において、前記の一般式(V)で示される化合物は、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールであることが好ましい。
本発明において、前記の一般式(VI)で示される化合物は、2,6−ルチジン、4−ピリジンメタノールであることが好ましい。
本発明において、前記の一般式(VII)で示される化合物は、N−エチルモルホリンであることが好ましい。
本発明において、前記の一般式(VIII)で示される化合物は、トリブチルアミンまたはN,N−ジメチルベンジルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、トリイソプロピルアミン、ジブチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンが好ましい。
また、本発明の上記一般式(VIII)で示される化合物は、少なくとも1以上の水酸基を有することが好ましい。1以上の水酸基を有することで炭素繊維表面官能基への相互作用が高まり、効率的に炭素繊維表面官能基のプロトンを引き抜き、エポキシ基との反応性を高めることができる。また、本発明の上記一般式(VIII)のR26〜R28のうちの少なくとも2つ、好適には3つが、一般式(IX)または一般式(X)で示される分岐構造を含むことが好ましい。分岐構造を有することで立体障害性が高まり、エポキシ環同士の反応を抑え、炭素繊維表面官能基とエポキシとの反応促進効果を高めることができる。さらに、本発明の上記一般式(VIII)のR26〜R28のうちの少なくとも2つ、好適には3つが、水酸基を有するものが好ましい。水酸基を有することで、炭素繊維表面官能基への相互作用が高まり、効率的に炭素繊維表面官能基のプロトンを引き抜き、エポキシとの反応性を高めることができる。
これらの3級アミン化合物および3級アミン塩の中でも、炭素繊維表面官能基とエポキシ樹脂との反応促進効果が高く、かつ、エポキシ環同士の反応を抑制できるという観点から、トリイソプロピルアミン、ジブチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロピルエチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,6−ルチジン、DBU、DBU塩、DBN、DBN塩および1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンが好ましく用いられる。
次に、(B2)について説明する。
本発明で用いられる(B2)上記の一般式(I)または(II)のいずれかで示される、カチオン部位を有する4級アンモニウム塩は、(A)エポキシ化合物100質量部に対して、0.1〜25質量部配合することが必要であり、0.1〜10質量部配合することが好ましく、0.1〜8質量部配合することがより好ましい。配合量が0.1質量部未満であると、(A)エポキシ化合物と炭素繊維表面の酸素含有官能基との間の共有結合形成が促進されず、炭素繊維と熱可塑性樹脂との接着性が不十分となる。一方、配合量が25質量部を超えると、(B2)が炭素繊維表面を覆い共有結合形成が阻害され、炭素繊維と熱可塑性樹脂との接着性が不十分となる。
本発明で用いられる(B2)上記の一般式(I)または(II)のいずれかで示される、カチオン部位を有する4級アンモニウム塩の配合により共有結合形成が促進されるメカニズムは明確ではないが、特定の構造を有する4級アンモニウム塩のみでかかる効果が得られる。したがって、上記一般式(I)または(II)のR1〜R5が、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基であることが必要であり、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、また、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。炭素数が23以上になると、理由は明確ではないが、接着性が不十分となる。ここで、炭素数1〜22の炭化水素基とは、炭素原子と水素原子のみからなる基であり、飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基のいずれでも良く、環構造を含んでも含まなくても良い。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基、ドコシル基、ベンジル基およびフェニル基等が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基中のCH2基が−O−により置換された場合の例としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、ポリエチレングリコール基およびポリプロピレングリコール基等のポリエーテル基が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基中のCH2基が−O−CO−または−CO−O−により置換された場合の例としては、炭素数1〜22の炭化水素とエステル構造を含む基としては、例えば、アセトキシメチル基、アセトキシエチル基、アセトキシプロピル基、アセトキシブチル基、メタクロイルオキシエチル基およびベンゾイルオキシエチル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基が水酸基を有する場合の例としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシシクロヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシオレイル基、ヒドロキシドコシル基等が挙げられる。
なかでも、(B2)カチオン部位を有する4級アンモニウム塩のR1〜R5の炭素数は、1〜14の範囲内であることが好ましく、より好ましくは1〜8の範囲内である。炭素数が14未満であると、4級アンモニウム塩が反応促進剤として働く際に、立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性がさらに向上する。
また、本発明において、上記一般式(I)で示される(B2)カチオン部位を有する4級アンモニウム塩のR3とR4の炭素数は、2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは4以上である。炭素数が2以上であると、4級アンモニウム塩が開始剤としてはたらくことによるエポキシ樹脂の単独重合が抑えられ、接着性がさらに向上する。
また、本発明において、上記一般式(II)で示される(B2)カチオン部位を有する4級アンモニウム塩のR6とR7は、それぞれ水素、または炭素数1〜8の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。水素または炭素数が8未満であると、分子中における活性部位の比率が高く、少量でも大きな接着性向上効果が得られる。
本発明において、(B2)カチオン部位を有する4級アンモニウム塩のカチオン部位の分子量は、100〜400g/molの範囲内であることが好ましく、より好ましくは100〜300g/molの範囲内であり、さらに好ましくは100〜200g/molの範囲内である。カチオン部位の分子量が100g/mol以上であると、熱処理中にも揮発が抑えられ、少量でも大きな接着性向上効果が得られる。一方、カチオン部位の分子量が400g/mol以下であると、分子中における活性部位の比率が高く、やはり少量でも大きな接着性向上効果が得られる。
本発明において、上記の一般式(I)で示される4級アンモニウム塩のカチオン部位としては、例えば、テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、ブチルトリメチルアンモニウム、トリメチルペンチルアンモニウム、ヘキシルトリメチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、トリメチルオクチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、テトラデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、トリメチルオクタデシルアンモニウム、トリメチルオレイルアンモニウム、ドコシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、ジメチルジプロピルアンモニウム、ジブチルジメチルアンモニウム、ジメチルジペンチルアンモニウム、ジヘキシルジメチルアンモニウム、ジシクロヘキシルジメチルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジデシルジメチルアンモニウム、エチルデシルジメチルアンモニウム、ジドデシルジメチルアンモニウム、エチルドデシルジメチルアンモニウム、ジテトラデシルジメチルアンモニウム、エチルテトラデシルジメチルアンモニウム、ジヘキサデシルジメチルアンモニウム、エチルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ジメチルジオクタデシルアンモニウム、エチルオクタデシルジメチルアンモニウム、ジメチルジオレイルアンモニウム、エチルジメチルオレイルアンモニウム、ジドコシルジメチルアンモニウム、ドコシルエチルジメチルアンモニウム、ジベンジルジメチルアンモニウム、ベンジルエチルジメチルアンモニウム、ベンジルジメチルプロピルアンモニウム、ベンジルブチルジメチルアンモニウム、ベンジルデシルジメチルアンモニウム、ベンジルドデシルジメチルアンモニウム、ベンジルテトラデシルジメチルアンモニウム、ベンジルヘキサデシルジメチルアンモニウム、ベンジルオクタデシルジメチルアンモニウム、ベンジルジメチルオレイルアンモニウム、ジメチルジフェニルアンモニウム、エチルジメチルフェニルアンモニウム、ジメチルプロピルフェニルアンモニウム、ブチルジメチルフェニルアンモニウム、デシルジメチルフェニルアンモニウム、ドデシルジメチルフェニルアンモニウム、テトラデシルジメチルフェニルアンモニウム、ヘキサデシルジメチルフェニルアンモニウム、ジメチルオクタデシルフェニルアンモニウム、ジメチルオレイルフェニルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリエチルプロピルアンモニウム、ブチルトリエチルアンモニウム、トリエチルペンチルアンモニウム、トリエチルヘキシルアンモニウム、トリエチルシクロヘキシルアンモニウム、トリエチルオクチルアンモニウム、デシルトリエチルアンモニウム、ドデシルトリエチルアンモニウム、テトラデシルトリエチルアンモニウム、ヘキサデシルトリエチルアンモニウム、トリエチルオクタデシルアンモニウム、トリエチルオレイルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、トリエチルフェニルアンモニウム、ジエチルジプロピルアンモニウム、ジブチルジエチルアンモニウム、ジエチルジペンチルアンモニウム、ジエチルジヘキシルアンモニウム、ジエチルジシクロヘキシルアンモニウム、ジエチルジオクチルアンモニウム、ジデシルジエチルアンモニウム、ジドデシルジエチルアンモニウム、ジテトラデシルジエチルアンモニウム、ジエチルジヘキサデシルアンモニウム、ジエチルジオクタデシルアンモニウム、ジエチルジオレイルアンモニウム、ジベンジルジエチルアンモニウム、ジエチルジフェニルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、メチルトリプロピルアンモニウム、エチルトリプロピルアンモニウム、ブチルトリプロピルアンモニウム、ベンジルトリプロピルアンモニウム、フェニルトリプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、トリブチルエチルアンモニウム、トリブチルプロピルアンモニウム、ベンジルトリブチルアンモニウム、トリブチルフェニルアンモニウム、テトラペンチルアンモニウム、テトラヘキシルアンモニウム、テトラヘプチルアンモニウム、テトラオクチルアンモニウム、メチルトリオクチルアンモニウム、エチルトリオクチルアンモニウム、トリオクチルプロピルアンモニウム、ブチルトリオクチルアンモニウム、ジメチルジオクチルアンモニウム、ジエチルジオクチルアンモニウム、ジオクチルジプロピルアンモニウム、ジブチルジオクチルアンモニウム、テトラデシルアンモニウム、テトラドデシルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリエチルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリプロピルアンモニウム、2−ヒドロキシエチルトリブチルアンモニウム、ポリオキシエチレントリメチルアンモニウム、ポリオキシエチレントリエチルアンモニウム、ポリオキシエチレントリプロピルアンモニウム、ポリオキシエチレントリブチルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジメチルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジエチルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジプロピルアンモニウム、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジブチルアンモニウム、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルアンモニウム、ビス(ポリオキシエチレン)ジエチルアンモニウム、ビス(ポリオキシエチレン)ジプロピルアンモニウム、ビス(ポリオキシエチレン)ジブチルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)メチルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)エチルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)プロピルアンモニウム、トリス(2−ヒドロキシエチル)ブチルアンモニウム、トリス(ポリオキシエチレン)メチルアンモニウム、トリス(ポリオキシエチレン)エチルアンモニウム、トリス(ポリオキシエチレン)プロピルアンモニウム、およびトリス(ポリオキシエチレン)ブチルアンモニウムが挙げられる。
また、上記一般式(II)で示される4級アンモニウム塩のカチオン部位としては、例えば、1−メチルピリジニウム、1−エチルピリジニウム、1−エチル−2−メチルピリジニウム、1−エチル−4−メチルピリジニウム、1−エチル−2,4−ジメチルピリジニウム、1−エチル−2,4,6−トリメチルピリジニウム、1−プロピルピリジニウム、1−ブチルピリジニウム、1−ブチル−2−メチルピリジニウム、1−ブチル−4−メチルピリジニウム、1−ブチル−2,4−ジメチルピリジニウム、1−ブチル−2,4,6−トリメチルピリジニウム、1−ペンチルピリジニウム、1−ヘキシルピリジニウム、1−シクロヘキシルピリジニウム、1−オクチルピリジニウム、1−デシルピリジニウム、1−ドデシルピリジニウム、1−テトラデシルピリジニウム、1−ヘキサデシルピリジニウム、1−オクタデシルピリジニウム、1−オレイルピリジニウム、および1−ドコシルピリジニウム、および1−ベンジルピリジニウムが挙げられる。
本発明において、(B2)カチオン部位を有する4級アンモニウム塩のアニオン部位としては、例えば、フッ化物アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオンおよびヨウ化物アニオンのハロゲンイオンが挙げられる。また、例えば、水酸化物アニオン、酢酸アニオン、シュウ酸アニオン、硫酸アニオン、安息香酸アニオン、ヨウ素酸アニオン、メチルスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、およびトルエンスルホン酸アニオンが挙げられる。
なかでも、対イオンとしては、サイズが小さく、4級アンモニウム塩の反応促進効果を阻害しないという観点から、ハロゲンイオンであることが好ましい。
本発明において、これらの4級アンモニウム塩は、単独で用いても良いし複数種を併用しても良い。
本発明において、(B2)カチオン部位を有する4級アンモニウム塩としては、例えば、トリメチルオクタデシルアンモニウムクロリド、トリメチルオクタデシルアンモニウムブロミド、トリメチルオクタデシルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルオクタデシルアンモニウムアセタート、トリメチルオクタデシルアンモニウム安息香酸塩、トリメチルオクタデシルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、トリメチルオクタデシルアンモニウム塩酸塩、トリメチルオクタデシルアンモニウムテトラクロロヨウ素酸塩、トリメチルオクタデシルアンモニウム硫酸水素塩、トリメチルオクタデシルアンモニウムメチルスルファート、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムアセタート、ベンジルトリメチルアンモニウム安息香酸塩、ベンジルトリメチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムアセタート、テトラブチルアンモニウム安息香酸塩、テトラブチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムクロリド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムブロミド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムヒドロキシド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、(2−アセトキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド、(2−アセトキシエチル)トリメチルアンモニウムブロミド、(2−アセトキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド、(2−アセトキシエチル)トリメチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムブロミド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルアンモニウムクロリド、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルアンモニウムブロミド、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルアンモニウムヒドロキシド、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルアンモニウム−p−トルエンスルホナート、1−ヘキサデシルピリジニウムクロリド、1−ヘキサデシルピリジニウムブロミド、1−ヘキサデシルピリジニウムヒドロキシド、および1−ヘキサデシルピリジニウム−p−トルエンスルホナート等が挙げられる。
本発明において、前記の一般式(I)で示される化合物は、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムブロミド、トリメチルオクタデシルアンモニウムブロミド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムクロリド、(2−アセトキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムブロミドが好ましく、テトラブチルアンモニウムブロミド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムクロリドが好適である。
本発明において、前記の一般式(II)で示される化合物は、1−ヘキサデシルピリジニウムクロリドが好ましい。
次に、(B3)について説明する。
本発明で用いられる(B3)4級ホスホニウム塩および/またはホスフィン化合物は、(A)エポキシ化合物100質量部に対して、0.1〜25質量部配合することが必要であり、0.1〜10質量部配合することが好ましく、0.1〜8質量部配合することがより好ましい。配合量が0.1質量部未満であると、(A)エポキシ化合物と炭素繊維表面の酸素含有官能基との間の共有結合形成が促進されず、炭素繊維と熱可塑性樹脂との接着性が不十分となる。一方、配合量が25質量部を超えると、(B3)が炭素繊維表面を覆い、共有結合形成が阻害され、炭素繊維と熱可塑性樹脂との接着性が不十分となる。
本発明で用いられる(B3)4級ホスホニウム塩またはホスフィン化合物は、好ましくは、次の一般式(XI)または(XII)
(上記化学式中、R34〜R40は、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基を表し、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい)のいずれかで示されるカチオン部位を有する4級アンモニウム塩またはホスフィン化合物である。
本発明者等は、上記(A)成分100質量部に対し、(B3)4級ホスホニウム塩および/またはホスフィン化合物、好ましくは上記一般式(XI)または(XII)のいずれかで示される(B3)4級ホスホニウム塩および/またはホスフィン化合物を0.1〜25質量部配合したバインダーを用い、これを炭素繊維シートに付与した場合、2官能以上のエポキシ樹脂と、炭素繊維表面に元来含まれる、あるいは、酸化処理により導入されるカルボキシル基、水酸基等の酸素含有官能基との間に共有結合形成が促進される結果、マトリックス樹脂との接着性が大幅に向上することを見出した。
本発明において、4級ホスホニウム塩またはホスフィン化合物の配合により共有結合形成が促進されるメカニズムは明確ではないが、前記特定の構造を有する4級ホスホニウム塩またはホスフィン化合物を用いることにより、好適に本発明の効果が得られる。すなわち、本発明に用いられる(B3)4級ホスホニウム塩および/またはホスフィン化合物として、上記一般式(XI)または(XII)のR34〜R40が、それぞれ炭素数1〜22の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。炭素数が23以上になると、理由は明確ではないが、接着性が不十分となる場合がある。ここで、炭素数1〜22の炭化水素基とは、炭素原子と水素原子のみからなる基であり、飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基のいずれでも良く、環構造を含んでも含まなくても良い。炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、オレイル基、ドコシル基、ビニル基、2−プロピニル基、ベンジル基、フェニル基、シンナミル基、およびナフチルメチル基等が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基中のCH2基が−O−により置換された場合の例としては、直鎖状のものとして、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、フェノキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基、ブトキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシエトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、ポリエチレングリコール基、およびポリプロピレングリコール基等のポリエーテル基が挙げられる。また、環状のものとして、例えば、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン、オキセパン、および1,3−ジオキソラン等が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基中のCH2基が−O−CO−または−CO−O−により置換された場合の例としては、例えば、アセトキシメチル基、アセトキシエチル基、アセトキシプロピル基、アセトキシブチル基、メタクロイルオキシエチル基、およびベンゾイルオキシエチル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等が挙げられる。
また、炭素数1〜22の炭化水素基が水酸基を有する場合の例としては、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシシクロヘキシル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシドデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシオレイル基、およびヒドロキシドコシル基等が挙げられる。
なかでも、(B3)4級ホスホニウム塩またはホスフィン化合物のR34〜R40の炭素数は、1〜14の範囲内であることが好ましい。炭素数が14未満であると、4級アンモニウム塩が反応促進剤として働く際に、立体障害が適度に小さく反応促進効果が高くなり、接着性がさらに向上する。
また、本発明において、上記一般式(XI)で示される(B3)4級ホスホニウム塩のR34〜R37の炭素数は、2以上であることが好ましく、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは4以上である。炭素数が2以上であると、4級ホスホニウム塩が開始剤としてはたらくことによるエポキシ樹脂の単独重合が抑えられ、接着性がさらに向上する。
また、本発明において、上記一般式(XII)で示される(B3)ホスフィン化合物のR39とR40は、それぞれ、炭素数1〜8の炭化水素基であることが好ましく、該炭化水素基は水酸基を有していてもよく、該炭化水素基中のCH2基は、−O−、−O−CO−または−CO−O−により置換されていてもよい。炭素数が8未満であると、分子中における活性部位の比率が高く、少量でも大きな接着性向上効果が得られる。
本発明において、(B3)4級ホスホニウム塩のカチオン部位の分子量は、100〜400g/molの範囲内であることが好ましく、より好ましくは100〜300g/molの範囲内であり、さらに好ましくは100〜200g/molの範囲内である。カチオン部位の分子量が100g/mol以上であると、熱処理中にも揮発が抑えられ、少量でも大きな接着性向上効果が得られる。一方、カチオン部位の分子量が400g/mol以下であると、分子中における活性部位の比率が高く、やはり少量でも大きな接着性向上効果が得られる。
本発明において、上記の一般式(VII)で示される脂肪族系4級ホスホニウム塩のカチオン部位としては、例えば、テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、メチルトリエチルホスホニウム、メチルトリプロピルホスホニウム、メチルトリブチルホスホニウム、ジメチルジエチルホスホニウム、ジメチルジプロピルホスホニウム、ジメチルジブチルホスホニウム、トリメチルエチルホスホニウム、トリメチルプロピルホスホニウム、トリメチルブチルホスホニウム、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルホスホニウム、(2−アセトキシエチル)トリメチルホスホニウムクロリド、(2−アセトキシエチル)トリメチルホスホニウム、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルホスホニウム、トリブチル−n−オクチルホスホニウム、トリブチルドデシルホスホニウム、トリブチルヘキサデシルホスホニウム、トリブチル(1,3−ジオキソラン−2−イルメチル)ホスホニウム、ジ−t−ブチルジメチルホスホニウム、およびトリヘキシルテトラデシルホスホニウムおよびビス(ポリオキシエチレン)ジメチルホスホニウム等が挙げられる。
また、上記の一般式(VII)で示される芳香族系4級ホスホニウム塩のカチオン部位としては、テトラフェニルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム、ジフェニルジメチルホスホニウム、エチルトリフェニルホスホニウム、n−ブチルトリフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウム、イソプロピルトリフェニルホスホニウム、ビニルトリフェニルホスホニウム、アリルトリフェニルホスホニウム、トリフェニルプロパギルホスホニウム、t−ブチルトリフェニルホスホニウム、ヘプチルトリフェニルホスホニウム、トリフェニルテトラデシルホスホニウム、ヘキシルトリフェニルホスホニウム、(メトキシメチル)トリフェニルホスホニウム、2−ヒドロキシベンジルトリフェニルホスホニウム、(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウム、(3−カルボキシプロピル)トリフェニルホスホニウム、シンナミルトリフェニルホスホニウム、シクロプロピルトリフェニルホスホニウム、2−(1,3−ジオキサン−2−イル)エチルトリフェニルホスホニウム、1−(1,3−ジオキソラン−2−イル)エチルトリフェニルホスホニウム、(1,3−ジオキソラン−2−イル)メチルトリフェニルホスホニウム、4−エトキシベンジルトリフェニルホスホニウム、およびエトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウム等が挙げられる。
本発明において、(B3)4級ホスホニウム塩のアニオン部位としては、例えば、フッ化物アニオン、塩化物アニオン、臭化物アニオンおよびヨウ化物アニオンのハロゲンイオンが挙げられる。また、例えば、水酸化物アニオン、酢酸アニオン、シュウ酸アニオン、硫酸水素アニオン、安息香酸アニオン、ヨウ素酸アニオン、メチルスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、テトラフェニルボレートイオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドイオン、およびトルエンスルホン酸アニオンが挙げられる。
本発明において、これらの4級ホスホニウム塩は、単独で用いても良いし複数種を併用しても良い。
本発明において、(B3)4級ホスホニウム塩としては、例えば、トリメチルオクタデシルホスホニウムクロリド、トリメチルオクタデシルホスホニウムブロミド、トリメチルオクタデシルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルオクタデシルホスホニウムアセタート、トリメチルオクタデシルホスホニウム安息香酸塩、トリメチルオクタデシルホスホニウム−p−トルエンスルホナート、トリメチルオクタデシルホスホニウム塩酸塩、トリメチルオクタデシルホスホニウムテトラクロロヨウ素酸塩、トリメチルオクタデシルホスホニウム硫酸水素塩、トリメチルオクタデシルホスホニウムメチルスルファート、ベンジルトリメチルホスホニウムクロリド、ベンジルトリメチルホスホニウムブロミド、ベンジルトリメチルホスホニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルホスホニウムアセタート、ベンジルトリメチルホスホニウム安息香酸塩、ベンジルトリメチルホスホニウム−p−トルエンスルホナート、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムアセタート、テトラブチルホスホニウム安息香酸塩、テトラブチルホスホニウム−p−トルエンスルホナート、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルホスホニウムクロリド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルホスホニウムブロミド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルホスホニウムヒドロキシド、(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルホスホニウム−p−トルエンスルホナート、(2−アセトキシエチル)トリメチルホスホニウムクロリド、(2−アセトキシエチル)トリメチルホスホニウムブロミド、(2−アセトキシエチル)トリメチルホスホニウムヒドロキシド、(2−アセトキシエチル)トリメチルホスホニウム−p−トルエンスルホナート、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルホスホニウムクロリド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルホスホニウムブロミド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルホスホニウムヒドロキシド、(2−ヒドロキシエチル)トリメチルホスホニウム−p−トルエンスルホナート、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルホスホニウムクロリド、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルホスホニウムブロミド、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルホスホニウムヒドロキシド、ビス(ポリオキシエチレン)ジメチルホスホニウム−p−トルエンスルホナート、テトラフェニルホスホニウムブロミド、およびテトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等が挙げられる。
また、上記一般式(XI)以外の(B3)4級ホスホニウム塩として、アセトニトリルトリフェニルホスホニウムクロリド、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート、1H−ベンゾトリアゾール−1−イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート、トランス−2−ブテン−1,4−ビス(トリフェニルホスホニウムクロリド)、(4−カルボキシブチル)トリフェニルホスホニウムブロミド、(3−カルボキシプロピル)トリフェニルホスホニウムブロミド、(2,4−ジクロロベンジル)トリフェニルホスホニウムクロリド、2−ジメチルアミノエチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エトキシカルボニルメチル(トリフェニル)ホスホニウムブロミド、(ホルミルメチル)トリフェニルホスホニウムクロリド、N−メチルアニリノトリフェニルホスホニウムヨージド、およびフェナシルトリフェニルホスホニウムブロミド等が例示され、これらの4級ホスホニウム塩も本発明の(B3)4級ホスホニウム塩として使用可能である。
また、上記一般式(XII)で示されるホスフィン化合物としては、例えば、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリペンチルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ(2−フリル)ホスフィン、ジメチルプロピルホスフィン、ジメチルブチルホスフィン、ジメチルペンチルホスフィン、ジメチルヘキシルホスフィン、ジメチルシクロヘキシルホスフィン、ジメチルオクチルホスフィン、ジメチルデシルホスフィン、ジメチルドデシルホスフィン、ジメチルテトラデシルホスフィン、ジメチルヘキサデシルホスフィン、ジメチルオクタデシルホスフィン、ジメチルオレイルホスフィン、ジメチルドコシルホスフィン、ジエチルプロピルホスフィン、ジエチルブチルホスフィン、ジエチルペンチルホスフィン、ジエチルヘキシルホスフィン、ジエチルシクロヘキシルホスフィン、ジエチルオクチルホスフィン、ジエチルデシルホスフィン、ジエチルドデシルホスフィン、ジエチルテトラデシルホスフィン、ジエチルヘキサデシルホスフィン、ジエチルオクタデシルホスフィン、ジエチルオレイルホスフィン、ジエチルドコシルホスフィン、ジエチルフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン、ジプロピルメチルホスフィン、ジプロピルエチルホスフィン、ジプロピルブチルホスフィン、ジブチルメチルホスフィン、ジブチルエチルホスフィン、ジブチルプロピルホスフィン、ジヘキシルメチルホスフィン、ジヘキシルエチルホスフィン、ジヘキシルプロピルホスフィン、ジヘキシルブチルホスフィン、ジシクロヘキシルメチルホスフィン、ジシクロヘキシルエチルホスフィン、ジシクロヘキシルプロピルホスフィン、ジシクロヘキシルブチルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィン、ジオクチルメチルホスフィン、ジオクチルエチルホスフィン、ジオクチルプロピルホスフィン、ジデシルメチルホスフィン、ジデシルエチルホスフィン、ジデシルプロピルホスフィン、ジデシルブチルホスフィン、ジドデシルメチルホスフィン、ジドデシルエチルホスフィン、ジドデシルプロピルホスフィン、ジドデシルブチルホスフィン、ジテトラデシルメチルホスフィン、ジテトラデシルエチルホスフィン、ジテトラデシルプロピルホスフィン、ジテトラデシルブチルホスフィン、ジヘキサデシルメチルホスフィン、ジヘキサデシルエチルホスフィン、ジヘキサデシルプロピルホスフィン、ジヘキサデシルブチルホスフィン、トリメタノールホスフィン、トリエタノールホスフィン、トリプロパノールホスフィン、トリブタノールホスフィン、トリヘキサノールホスフィン、ジエチルメタノールホスフィン、ジプロピルメタノールホスフィン、ジイソプロピルメタノールホスフィン、ジブチルメタノールホスフィン、ジイソブチルメタノールホスフィン、ジ−t−ブチルメタノールホスフィン、ジ(2−エチルヘキシル)メタノールホスフィン、ジメチルエタノールホスフィン、ジエチルエタノールホスフィン、ジプロピルエタノールホスフィン、ジイソプロピルエタノールホスフィン、ジブチルエタノールホスフィン、ジイソブチルエタノールホスフィン、ジ−t−ブチルエタノールホスフィン、ジ−t−ブチルフェニルホスフィン、ジ(2−エチルヘキシル)エタノールホスフィン、ジメチルプロパノールホスフィン、ジエチルプロパノールホスフィン、ジプロピルプロパノールホスフィン、ジイソプロピルプロパノールホスフィン、ジブチルプロパノールホスフィン、ジイソブチルプロパノールホスフィン、ジ−t−ブチルプロパノールホスフィン、ジ(2−エチルヘキシル)プロパノールホスフィン、メチルジメタノールホスフィン、エチルジメタノールホスフィン、プロピルジメタノールホスフィン、イソプロピルジメタノールホスフィン、ブチルジメタノールホスフィン、イソブチルジメタノールホスフィン、t−ブチルジメタノールホスフィン、(2−エチルヘキシル)ジメタノールホスフィン、メチルジエタノールホスフィン、エチルジエタノールホスフィン、プロピルジエタノールホスフィン、イソプロピルジエタノールホスフィン、ブチルジエタノールホスフィン、イソブチルジエタノールホスフィン、t−ブチルジエタノールホスフィン、(2−エチルヘキシル)ジエタノールホスフィン、イソプロピルフェニルホスフィン、メトキシジフェニルホスフィン、エトキシジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルエチルホスフィン、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルプロピルホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン、ジフェニル−t−ブチルホスフィン、ジフェニルペンチルホスフィン、ジフェニルヘキシルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、ジフェニルベンジルホスフィン、フェノキシジフェニルホスフィン、ジフェニル−1−ピレニルホスフィン、フェニルジメチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、およびトリス−2,6−ジメトキシフェニルホスフィン等が挙げられる。
また、上記一般式(XII)以外の(B3)ホスフィンとして、フェニル−2−ピリジルホスフィン、トリフェニルホスフィンオキサイド、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、および1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン等が挙げられる。
本発明において、前記の一般式(XI)で示される化合物は、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミドが好ましい。
本発明において、前記の一般式(XII)で示される化合物は、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィンが好ましい。
本発明において、バインダーは、(A)成分と、(B)成分以外の成分を1種類以上含んでも良い。例えば、ポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイド、高級アルコール、多価アルコール、アルキルフェノール、およびスチレン化フェノール等にポリエチレンオキサイドやポリプロピレンオキサイド等のポリアルキレンオキサイドが付加した化合物、およびエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロック共重合体等のノニオン系界面活性剤が好ましく用いられる。また、本発明の効果に影響しない範囲で、適宜、ポリエステル樹脂、および不飽和ポリエステル化合物等を添加してもよい。
本発明に使用する炭素繊維としては、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)系、レーヨン系およびピッチ系の炭素繊維が挙げられる。なかでも、強度と弾性率のバランスに優れたPAN系炭素繊維が好ましく用いられる。
次に、PAN系炭素繊維の製造方法について説明する。
炭素繊維の前駆体繊維を得るための紡糸方法としては、湿式、乾式および乾湿式等の紡糸方法を用いることができる。なかでも、高強度の炭素繊維が得られやすいという観点から、湿式あるいは乾湿式紡糸方法を用いることが好ましい。紡糸原液には、ポリアクリロニトリルのホモポリマーあるいは共重合体の溶液や懸濁液等を用いることができる。
上記の紡糸原液を口金に通して紡糸、凝固、水洗、延伸して前駆体繊維とし、得られた前駆体繊維を耐炎化処理と炭化処理し、必要によってはさらに黒鉛化処理をすることにより炭素繊維を得る。炭化処理と黒鉛化処理の条件としては、最高熱処理温度が1100℃以上であることが好ましく、より好ましくは1400〜3000℃である。
本発明において、強度と弾性率の高い炭素繊維を得られるという観点から、細繊度の炭素繊維が好ましく用いられる。具体的には、炭素繊維の単繊維径が、7.5μm以下であることが好ましく、6μm以下であることがより好ましく、さらには5.5μm以下であることが好ましい。単繊維径の下限は特にないが、4.5μm以下では工程における単繊維切断が起きやすく生産性が低下する場合がある。
得られた炭素繊維は、マトリックス樹脂との接着性を向上させるために、通常、酸化処理が施され、酸素含有官能基が導入される。酸化処理方法としては、気相酸化、液相酸化および液相電解酸化が用いられるが、生産性が高く、均一処理ができるという観点から、液相電解酸化が好ましく用いられる。
本発明において、液相電解酸化で用いられる電解液としては、酸性電解液およびアルカリ性電解液が挙げられる。
酸性電解液としては、例えば、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸、ホウ酸、および炭酸等の無機酸、酢酸、酪酸、シュウ酸、アクリル酸、およびマレイン酸等の有機酸、または硫酸アンモニウムや硫酸水素アンモニウム等の塩が挙げられる。なかでも、強酸性を示す硫酸と硝酸が好ましく用いられる。
アルカリ性電解液としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸アンモニウム等の炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩の水溶液、アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよびヒドラジンの水溶液等が挙げられる。なかでも、マトリックス樹脂の硬化阻害を引き起こすアルカリ金属を含まないという観点から、炭酸アンモニウムおよび炭酸水素アンモニウムの水溶液、あるいは、強アルカリ性を示す水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液が好ましく用いられる。
本発明において、(A)エポキシ化合物と、炭素繊維表面の酸素含有官能基との共有結合形成が促進され、接着性がさらに向上するという観点から、炭素繊維をアルカリ性電解液で電解処理した後、または酸性水溶液中で電解処理し続いてアルカリ性水溶液で洗浄した炭素繊維によりシート等を形成し、該炭素繊維シートにバインダーを塗布することが好ましい。電解処理した場合、炭素繊維表面において過剰に酸化された部分が脆弱層となって界面に存在し、複合材料にした場合の破壊の起点となる場合があるため、過剰に酸化された部分をアルカリ性水溶液で溶解除去することにより共有結合形成が促進されるものと考えられる。また、炭素繊維表面に酸性電解液の残渣が存在すると、残渣中のプロトンが(B)成分に補足され、本来果たすべき役割である(B)成分による炭素繊維表面の酸素含有官能基の水素イオンを引き抜く効果が低下する場合がある。このため、酸性水溶液中で電解処理し続いてアルカリ性水溶液で酸性電解液を中和洗浄することが好ましい。上記の理由から、特定の処理を施した炭素繊維とバインダーとの組み合わせにより、さらなる接着向上を得ることができる。
本発明において用いられる電解液の濃度は、0.01〜5モル/リットルの範囲内であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1モル/リットルの範囲内である。電解液の濃度が0.01モル/リットル以上であると、電解処理電圧が下げられ、運転コスト的に有利になる。一方、電解液の濃度が5モル/リットル以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において用いられる電解液の温度は、10〜100℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜40℃の範囲内である。電解液の温度が10℃以上であると、電解処理の効率が向上し、運転コスト的に有利になる。一方、電解液の温度が100℃以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において、液相電解酸化における電気量は、炭素繊維の炭化度に合わせて最適化することが好ましく、高弾性率の炭素繊維に処理を施す場合、より大きな電気量が必要である。
本発明において、液相電解酸化における電流密度は、電解処理液中の炭素繊維の表面積1m2当たり1.5〜1000アンペア/m2の範囲内であることが好ましく、より好ましくは3〜500アンペア/m2の範囲内である。電流密度が1.5アンペア/m2以上であると、電解処理の効率が向上し、運転コスト的に有利になる。一方、電流密度が1000アンペア/m2以下であると、安全性の観点から有利になる。
本発明において、(A)エポキシ化合物と、炭素繊維表面の酸素含有官能基との共有結合形成が促進され、接着性がさらに向上するという観点から、酸化処理の後、炭素繊維をアルカリ性水溶性で洗浄することが好ましい。なかでも、酸性電解液で液相電解処理し続いてアルカリ性水溶液で洗浄することが好ましい。
本発明において、洗浄に用いられるアルカリ性水溶液のpHは、7〜14の範囲内であることが好ましく、より好ましくは10〜14の範囲内である。アルカリ性水溶液としては、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムおよび水酸化バリウム等の水酸化物の水溶液、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムおよび炭酸アンモニウム等の炭酸塩の水溶液、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素マグネシウム、炭酸水素カルシウム、炭酸水素バリウムおよび炭酸水素アンモニウム等の炭酸水素塩の水溶液、アンモニア、水酸化テトラアルキルアンモニウムおよびヒドラジンの水溶液等が挙げられる。なかでも、マトリックス樹脂の硬化阻害を引き起こすアルカリ金属を含まないという観点から、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムの水溶液、あるいは、強アルカリ性を示す水酸化テトラアルキルアンモニウムの水溶液が好ましく用いられる。
本発明において、炭素繊維をアルカリ性水溶液で洗浄する方法としては、例えば、ディップ法とスプレー法を用いることができる。なかでも、洗浄が容易であるという観点から、ディップ法を用いることが好ましく、さらには、炭素繊維を超音波で加振させながらディップ法を用いることが好ましい態様である。
本発明において、炭素繊維を電解処理またはアルカリ性水溶液で洗浄した後、水洗および乾燥することが好ましい。この場合、乾燥温度が高すぎると炭素繊維の最表面に存在する官能基は熱分解により消失し易いため、できる限り低い温度で乾燥することが望ましく、具体的には乾燥温度が好ましくは250℃以下、さらに好ましくは210℃以下で乾燥することが好ましい。
本発明において、得られた炭素繊維束のストランド強度が、3.5GPa以上であることが好ましく、より好ましくは4GPa以上であり、さらに好ましくは5GPaである。また、得られた炭素繊維束のストランド弾性率が、220GPa以上であることが好ましく、より好ましくは240GPa以上であり、さらに好ましくは280GPa以上である。
本発明において、上記の炭素繊維束のストランド引張強度と弾性率は、JIS−R−7608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠し、次の手順に従い求めることができる。樹脂処方としては、“セロキサイド(登録商標)”2021P(ダイセル化学工業社製)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、130℃、30分を用いる。炭素繊維束のストランド10本を測定し、その平均値をストランド引張強度およびストランド弾性率とした。
本発明において、炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定されるその繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度(O/C)が、0.05〜0.50の範囲内であるものが好ましく、より好ましくは0.06〜0.30の範囲内のものであり、さらに好ましくは0.07〜0.20の範囲内のものである。表面酸素濃度(O/C)が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の酸素含有官能基を確保し、熱可塑性樹脂との強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度(O/C)が0.5以下であることにより、酸化による炭素繊維自体の強度の低下を抑えることができる。
炭素繊維の表面酸素濃度は、X線光電子分光法により、次の手順に従って求めたものである。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着している汚れなどを除去した炭素繊維を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてAlKα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を、1202eVに合わせる。C1sピーク面積を、K.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積を、K.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
ここで、表面酸素濃度とは、上記のO1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出したものである。X線光電子分光法装置として、アルバック・ファイ(株)製ESCA−1600を用い、上記装置固有の感度補正値は2.33であった。
続いて、本発明にかかる成形材料および炭素繊維強化複合材料複合材料の製造方法について説明する。本発明にかかる成形材料は、下記の第1工程、第2工程および第3工程により製造されることを特徴とする。
第1工程:炭素繊維を、ウェブ状、不織布状、またはフェルトもしくはマット等のシート状の生地に加工する工程
第2工程:第1工程で得られた生地100質量部に対して、(A)成分および(B)成分を含んでなるバインダーを0.1〜10質量部付与する工程
第3工程:第2工程でバインダーが付与された生地1〜80質量%と、熱可塑性樹脂20〜99質量%を付与し、さらに加熱溶融して複合化する工程
第1工程では、炭素繊維を、ウェブ状、不織布状、またはフェルトもしくはマット等のシート状の生地に加工する。ウェブ状等の炭素繊維の生地は、炭素繊維束を分散加工して製造され得る。炭素繊維束は上述の炭素繊維であれば、連続した炭素繊維から構成されるもの、あるいは不連続な炭素繊維から構成されるもののどちらでも良いが、より良好な分散状態を達成するためには、不連続な炭素繊維が好ましく、チョップド炭素繊維がより好ましい。
炭素繊維の分散は、湿式法、或いは乾式法のいずれかによることができる。湿式法とは炭素繊維束を水中で分散させ抄造する方法であり、乾式法とは炭素繊維束を空気中で分散させる方法である。
湿式法の場合、炭素繊維束の分散を水中で行い得られるスラリーを抄造してシート状の炭素繊維生地を得ることができる。
炭素繊維束を分散させる水(分散液)は、通常の水道水のほか、蒸留水、精製水等の水を使用することができる。水には必要に応じて界面活性剤を混合し得る。界面活性剤は、陽イオン型、陰イオン型、非イオン型、両性の各種に分類されるが、このうち非イオン性界面活性剤が好ましく用いられ、中でもポリオキシエチレンラウリルエーテルがより好ましく用いられる。界面活性剤を水に混合する場合の界面活性剤の濃度は、通常は0.0001質量%以上0.1質量%以下、好ましくは0.0005質量%以上0.05質量%以下である。
水(分散液)に対する炭素繊維束の添加量は、水(分散液)1lに対する量として、通常0.1g以上10g以下、好ましくは0.3g以上5g以下の範囲で調整し得る。前記範囲とすることにより、炭素繊維束が水(分散液)に効率よく分散し、均一に分散したスラリーを短時間で得ることができる。水(分散液)に対し炭素繊維束を分散させる際には、必要に応じて撹拌を行う。
スラリーとは固体粒子が分散している懸濁液をいい、本発明においては水系スラリーであることが好ましい。スラリーにおける固形分濃度(スラリー中の炭素繊維の質量含有量)は、0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、0.03質量%以上0.5質量%以下であることがより好ましい。上記範囲であることにより抄造を効率よく行うことができる。
スラリーの抄造は、上記スラリーから水を吸引して行うことができる。スラリーの抄造は、いわゆる抄紙法に倣って行うことができる。一例を挙げて説明すると、底部に抄紙面を有し水を底部から吸引できる槽に、スラリーを流し込み水を吸引して行うことができる。前記槽としては、熊谷理機工業株式会社製、No.2553−I(商品名)、底部に幅200mmの抄紙面を有するメッシュコンベアを備える槽が例示される。このようにして炭素繊維シートが得られる。
乾式法の場合、炭素繊維束を気相中で分散させて炭素繊維シートを得ることができる。すなわち、炭素繊維束を気相中で分散させて、分散後の炭素繊維束を堆積させて、炭素繊維シートを得ることができる。
炭素繊維束の気相中での分散は、炭素繊維束を非接触式で開繊し開繊した炭素繊維束を堆積させて行う方法(非接触式法)、炭素繊維束に空気流を当てて開繊し、開繊した炭素繊維束を堆積させて行う方法(空気流を用いる方法)、炭素繊維束の気相中での分散を、炭素繊維束を接触式で開繊し、開繊した炭素繊維束を堆積させて行う方法(接触式法)の3種類がある。
非接触式法は、炭素繊維束に固体や開繊装置を接触させることなく開繊させる方法である。例えば、空気や不活性ガスなどの気体を強化繊維束に吹き付ける方法、なかでもコスト面で有利な空気を加圧して吹き付ける方法が好ましく挙げられる。
空気流を用いる方法において、炭素繊維束に対し空気流を当てる条件は特に限定されない。一例を挙げると、加圧空気(通常0.1MPa以上10MPa以下、好ましくは0.5MPa以上5MPa以下の圧力がかかるような空気流)を炭素繊維束が開繊するまで当てる。空気流を用いる方法において、使用し得る装置は特に限定されないが、空気管を備え、空気吸引が可能であり、炭素繊維束を収容し得る容器を例示し得る。かかる容器を用いることにより、炭素繊維束の開繊と堆積を一つの容器内で行うことができる。
接触式法とは、炭素繊維束に固体や開繊装置を物理的に接触させて開繊させる方法である。接触式法としては、カーディング、ニードルパンチ、ローラー開繊が例示されるが、このうちカーディング、ニードルパンチによることが好ましく、カーディングによることがより好ましい。接触式法の実施条件は特に限定されず、炭素繊維束が開繊する条件を適宜定めることができる。
上記のようにして製造したシート状の炭素繊維生地の目付は、10〜500g/m2であることが好ましく、50〜300g/m2であることがより好ましい。10g/m2未満であると基材の破れなどの取り扱い性に不具合を生じるおそれがあり、500g/m2を超えると、湿式法では基材の乾燥に長時間かかることや、乾式法ではシートが厚くなる場合があり、その後のプロセスで取り扱い性が難しくなるおそれがある。
第2工程では、第1工程で得られた生地である炭素繊維シート100質量部に対して、(A)成分および(B)成分を含んでなるバインダーを0.1〜10質量部付与する。(A)成分および(B)成分を含んでなるバインダーは、工程中における炭素繊維の取り扱い性を高める観点および炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面接着性に対して重要である。バインダーが0.1質量部よりも少なくなると、炭素繊維を引き取ることが困難となり、成形材料の生産効率が悪くなる。また、10質量部よりも多くなると、炭素繊維と熱可塑性樹脂との界面接着性に劣ることになる。
炭素繊維シートへのバインダーの付与は、バインダーを含む水溶液、エマルジョンまたはサスペンジョンを用いて行うことが好ましい。水溶液とは、(A)成分および(B)成分が水にほぼ完全に溶解した状態の溶液を意味する。エマルジョンとは、分散媒である液体中に(A)成分および(B)成分を含む液体が微細粒子を形成して分散している状態を意味する。サスペンジョンとは、固体の(A)成分および(B)成分が水に懸濁した状態を意味する。液中の成分粒径の大きさは、水溶液<エマルジョン<サスペンジョンの順である。バインダーを炭素繊維シートに付与する方法は、特に制限されないが、例えば、バインダー水溶液、エマルジョンまたはサスペンジョンに炭素繊維シートを浸漬する方法、バインダー水溶液、エマルジョンまたはサスペンジョンを炭素繊維シートにシャワーする方法等によることができる。付与後は、例えば吸引除去する方法または吸収紙などの吸収材へ吸収させる方法などで、過剰分の水溶液、エマルジョンまたはサスペンジョンを除去しておくことが好ましい。
第2工程において、炭素繊維シートは、バインダーの付与後に加熱されることが好ましい。これにより、バインダーが付与された後の炭素繊維シートに含まれる水分を除去し、第3工程に要する時間を短縮し、成形材料を短時間で得ることができる。加熱温度は、適宜設定することができ、100℃以上300℃以下であることが好ましく、120℃以上250℃以下であることがより好ましい。
バインダーが付与された炭素繊維シートを短時間に多く製造するためには、引き取りを行うことが好ましい。またその際、炭素繊維シートにしわ、たるみが発生しないよう引張強力が1N/cm以上の状態として引き取ることが好ましい。引張強力は、より好ましくは3N/cm以上、さらに好ましくは5N/cm以上である。炭素繊維シートにかけることができる引張強力は、バインダーの種類や付与量を調整することで制御でき、付与量が多くすると引張強力を高くすることができる。また、かけられる引張強力が1N/cm未満の状態となると、炭素繊維シートがちぎれ易い状態であり、炭素繊維シートの取り扱い性の観点からも、引張強力が1N/cm以上あることが好ましい。引張強力の上限は特に限定されないが、100N/cmもあれば、炭素繊維シートの取り扱い性も十分に満足できる状態である。
第3工程では、第2工程において得られる(A)成分および(B)成分を含んでなるバインダーが付与された炭素繊維シートに熱可塑性樹脂を含浸させ、炭素繊維シートと熱可塑性樹脂とを複合化し、成形材料を得る。ここで熱可塑性樹脂としては、例えば、「ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、液晶ポリエステル等のポリエステル系樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブチレン、酸変性ポリエチレン(m−PE)、酸変性ポリプロピレン(m−PP)、酸変性ポリブチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等のポリアリーレンスルフィド樹脂;ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルニトリル(PEN);ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂;液晶ポリマー(LCP)」等の結晶性樹脂、「ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルスチレン(AS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、未変性または変性されたポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート(PAR)」等の非晶性樹脂;フェノール系樹脂、フェノキシ樹脂、さらにポリスチレン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリブタジエン系エラストマー、ポリイソプレン系エラストマー、フッ素系樹脂およびアクリロニトリル系エラストマー等の各種熱可塑エラストマー等、これらの共重合体および変性体等から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂が好ましく用いられる。なお、熱可塑性樹脂としては、本発明の目的を損なわない範囲で、これらの熱可塑性樹脂を複数種含む熱可塑性樹脂組成物が用いられても良い。
以下、上記好ましい熱可塑性樹脂を用いた場合の(A)との相互作用について説明する。
ポリアリーレンスルフィド樹脂の場合、末端にあるチオール基やカルボキシル基と、(A1)に含まれるエポキシ基との共有結合、主鎖にあるスルフィド基と(A1)に含まれるエポキシ基や(A2)に含まれる水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基との水素結合により強固な界面を形成することができると考えられる。
また、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはポリオキシメチレン樹脂の場合、末端にある水酸基と、(A1)に含まれるエポキシ基との共有結合、主鎖にあるエーテル基と、(A1)に含まれるエポキシ基や(A2)に含まれる水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基との水素結合により強固な界面を形成することができると考えられる。
また、ポリアミド樹脂の場合、末端にあるカルボキシル基やアミノ基と、(A1)に含まれるエポキシ基との共有結合、主鎖にあるアミド基と(A1)に含まれるエポキシ基や(A2)に含まれる水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基との水素結合により強固な界面を形成することができると考えられる。
また、ポリエステル系樹脂やポリカーボネート樹脂の場合、末端にあるカルボキシル基や水酸基と、(A1)に含まれるエポキシ基との共有結合、主鎖にあるエステル基と、(A1)に含まれるエポキシ基や(A2)に含まれる水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基との水素結合により強固な界面を形成することができると考えられる。
また、ABS樹脂のようなスチレン系樹脂の場合、側鎖にあるシアノ基と、(A1)に含まれるエポキシ基や(A2)に含まれる水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基との水素結合により強固な界面を形成することができると考えられる。
また、ポリオレフィン系樹脂の中で、特に酸変性されたポリオレフィン系樹脂の場合、側鎖にある酸無水物基やカルボキシル基と、(A1)に含まれるエポキシ基との共有結合、(A2)に含まれる水酸基、アミド基、イミド基、ウレタン基、ウレア基、スルホニル基、またはスルホ基との水素結合により強固な界面を形成することができると考えられる。
また、本発明において用いられる熱可塑性樹脂は、耐熱性の観点からは、ポリアリーレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂が好ましい。寸法安定性の観点からは、ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましい。摩擦・磨耗特性の観点からは、ポリオキシメチレン樹脂が好ましい。強度の観点からは、ポリアミド樹脂が好ましい。表面外観の観点からは、ポリカーボネートやスチレン系樹脂のような非晶性樹脂が好ましい。軽量性の観点からは、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
本発明の成形材料に対する炭素繊維、バインダーおよび熱可塑性樹脂の含有量は、炭素繊維が1〜70質量%、バインダーが0.1〜10質量%、熱可塑性樹脂が20〜98.9質量%である。この範囲とすることにより、炭素繊維の補強を効率良く発揮可能な成形材料が得られ易い。より好ましくは、炭素繊維が10〜60質量%、バインダーが0.5〜10質量%、熱可塑性樹脂が30〜89.5質量%である。さらに好ましくは、炭素繊維が20〜60質量%、バインダーが1〜8質量%、熱可塑性樹脂が32〜79質量%である。
熱可塑性樹脂と、バインダーが付与された炭素繊維シートとの複合化は、熱可塑性樹脂を炭素繊維シートに接触させることにより行うことができる。この場合の熱可塑性樹脂の形態は、特に限定されないが、例えば布帛、不織布およびフィルムから選択される少なくとも1種の形態であることが好ましい。接触の方式は特に限定されないが、熱可塑性樹脂の布帛、不織布またはフィルムを2枚用意し、バインダーが付与された炭素繊維シートの上下両面に配置する方式が例示される。
熱可塑性樹脂と、バインダーが付与された炭素繊維シートとの複合化は、加圧および/または加熱により行われることが好ましく、加圧と加熱の両方が同時に行われることがより好ましい。加圧の条件は0.01MPa以上10MPa以下であることが好ましく、0.05MPa以上5MPa以下であることがより好ましい。加熱の条件は、用いる熱可塑性樹脂が溶融または流動可能な温度であることが好ましく、温度領域では50℃以上400℃以下であることが好ましく、80℃以上350℃以下であることがより好ましい。加圧および/または加熱は、熱可塑性樹脂をバインダーが付与された炭素繊維シートに接触させた状態で行うことができる。例えば、熱可塑性樹脂の布帛、不織布またはフィルムを2枚用意し、バインダーが付与された炭素繊維シートの上下両面に配置し、両面から加熱および/または加熱を行う(ダブルベルトプレス装置で挟み込む方法等)方法が挙げられる。
あるいは、第3工程において、熱可塑性樹脂に変えて、(A)成分および(B)成分を含んでなるバインダーが付与された炭素繊維シートに熱硬化性樹脂を含浸させ、炭素繊維シートと熱硬化性樹脂とを複合化し、成形材料を得てもよい。ここで熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シアネートエステル樹脂およびビスマレイミド樹脂等が挙げられる。なかでも、機械特性のバランスに優れ、硬化収縮が小さいという利点を有するため、エポキシ樹脂を用いることが好ましい。靱性等を改良する目的で、熱硬化性樹脂に、後述する熱可塑性樹脂あるいはそれらのオリゴマーを含ませることができる。
上記のようにして製造された本発明の成形材料において、炭素繊維は単繊維状で実質的に2次元配向である。「2次元配向である」とは、成形材料を構成する炭素繊維単繊維と最も近接する他の炭素繊維単繊維とで形成される二次元配向角の平均値が10〜80°であることを意味する。成形材料を光学顕微鏡あるいは電子顕微鏡で観察することで、二次元配向角を測定することができる。成形材料において、400本の炭素繊維の二次元配向角を測定して平均値をとる。「実質的に」炭素繊維が2次元配向であるとは、上記400本の炭素繊維のうち通常本数で70%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは全ての炭素繊維が2次元配向であることを意味する。
上記のようにして製造された本発明の成形材料を成形してなる炭素繊維強化複合材料の用途としては、例えば、パソコン、ディスプレイ、OA機器、携帯電話、携帯情報端末、ファクシミリ、コンパクトディスク、ポータブルMD、携帯用ラジオカセット、PDA(電子手帳などの携帯情報端末)、ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、光学機器、オーディオ、エアコン、照明機器、娯楽用品、玩具用品、その他家電製品などの電気、電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどの内部部材やそのケース、機構部品、パネルなどの建材用途、モーター部品、オルタネーターターミナル、オルタネーターコネクター、ICレギュレーター、ライトディヤー用ポテンショメーターベース、サスペンション部品、排気ガスバルブなどの各種バルブ、燃料関係、排気系または吸気系各種パイプ、エアーインテークノズルスノーケル、インテークマニホールド、各種アーム、各種フレーム、各種ヒンジ、各種軸受、燃料ポンプ、ガソリンタンク、CNGタンク、エンジン冷却水ジョイント、キャブレターメインボディー、キャブレタースペーサー、排気ガスセンサー、冷却水センサー、油温センサー、ブレーキパットウェアーセンサー、スロットルポジションセンサー、クランクシャフトポジションセンサー、エアーフローメーター、ブレーキパッド磨耗センサー、エアコン用サーモスタットベース、暖房温風フローコントロールバルブ、ラジエーターモーター用ブラッシュホルダー、ウォーターポンプインペラー、タービンべイン、ワイパーモーター関係部品、ディストリビュター、スタータースィッチ、スターターリレー、トランスミッション用ワイヤーハーネス、ウィンドウオッシャーノズル、エアコンパネルスィッチ基板、燃料関係電磁気弁用コイル、ヒューズ用コネクター、バッテリートレイ、ATブラケット、ヘッドランプサポート、ペダルハウジング、ハンドル、ドアビーム、プロテクター、シャーシ、フレーム、アームレスト、ホーンターミナル、ステップモーターローター、ランプソケット、ランプリフレクター、ランプハウジング、ブレーキピストン、ノイズシールド、ラジエターサポート、スペアタイヤカバー、シートシェル、ソレノイドボビン、エンジンオイルフィルター、点火装置ケース、アンダーカバー、スカッフプレート、ピラートリム、プロペラシャフト、ホイール、フェンダー、フェイシャー、バンパー、バンパービーム、ボンネット、エアロパーツ、プラットフォーム、カウルルーバー、ルーフ、インストルメントパネル、スポイラーおよび各種モジュールなどの自動車、二輪車関連部品、部材および外板やランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、エレベーター、フェイリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板、風車の羽根などが挙げられる。特に、航空機部材、風車の羽根、自動車外板および電子機器の筐体およびトレイやシャーシなどに好ましく用いられる。
次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限されるものではない。
<炭素繊維束のストランド引張強度と弾性率>
炭素繊維束のストランド引張強度とストランド弾性率は、JIS−R−7608(2004)の樹脂含浸ストランド試験法に準拠し、次の手順に従い求めた。樹脂処方としては、“セロキサイド(登録商標)”2021P(ダイセル化学工業社製)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(東京化成工業(株)製)/アセトン=100/3/4(質量部)を用い、硬化条件としては、常圧、温度125℃、時間30分を用いた。炭素繊維束のストランド10本を測定し、その平均値をストランド引張強度およびストランド弾性率とした。
<炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)>
炭素繊維の表面酸素濃度(O/C)は、次の手順に従いX線光電子分光法により求めた。まず、溶媒で表面に付着している汚れを除去した炭素繊維を、約20mmにカットし、銅製の試料支持台に拡げる。次に、試料支持台を試料チャンバー内にセットし、試料チャンバー中を1×10−8Torrに保つ。続いて、X線源としてAlKα1、2 を用い、光電子脱出角度を90°として測定を行った。なお、測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせた。C1sピーク面積を、K.E.として1191〜1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。また、O1sピーク面積を、K.E.として947〜959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求めた。ここで、表面酸素濃度とは、上記のO1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出したものである。X線光電子分光法装置として、アルバック・ファイ(株)製ESCA−1600を用い、上記装置固有の感度補正値は2.33であった。
<バインダー付着量の測定方法>
約2gのバインダー付着炭素繊維束を秤量(W1)(少数第4位まで読み取り)した後、50ミリリットル/分の窒素気流中、450℃の温度に設定した電気炉(容量120cm3)に15分間放置し、バインダーを完全に熱分解させる。そして、20リットル/分の乾燥窒素気流中の容器に移し、15分間冷却した後の炭素繊維束を秤量(W2)(少数第4位まで読み取り)して、W1−W2によりバインダー付着量を求める。このバインダー付着量を炭素繊維束100質量部に対する量に換算した値(小数点第3位を四捨五入)を、付着したバインダーの質量部とした。測定は2回おこない、その平均値をバインダーの質量部とした。
<成形品の曲げ特性評価方法>
得られた成形品から、長さ130±1mm、幅25±0.2mmの曲げ強度試験片を切り出した。ASTM D−790(2004)に規定する試験方法に従い、3点曲げ試験冶具(圧子10mm、支点10mm)を用いて支持スパンを100mmに設定し、クロスヘッド速度5.3mm/分で曲げ強度を測定した。なお、本実施例においては、試験機として“インストロン(登録商標)”万能試験機4201型(インストロン社製)を用いた。測定数はn=5とし、平均値を曲げ強度とした。
各実施例および各比較例で用いた材料と成分は、下記のとおりである。
・(A1)成分:A−1〜A−7
A−1:“jER(登録商標)”152(三菱化学(株)製)
フェノールノボラックのグリシジルエーテル
エポキシ当量:175g/mol、エポキシ基数:3
A−2:“EPICLON(登録商標)”N660(DIC(株)製)
クレゾールノボラックのグリシジルエーテル
エポキシ当量:206g/mol、エポキシ基数:3
A−3:“アラルダイト(登録商標)”MY721(ハンツマン・アドバンスト・マテリアルズ社製)
N,N,N’,N’−テトラグリシジル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン
エポキシ当量:113g/mol、エポキシ基数:4
A−4:“jER(登録商標)”828(三菱化学(株)製)
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:189g/mol、エポキシ基数:2
A−5:“jER(登録商標)”1001(三菱化学(株)製)
ビスフェノールAのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:475g/mol、エポキシ基数:2
A−6:“デナコール(登録商標)”EX−810(ナガセケムテックス(株)製)
エチレングリコールのジグリシジルエーテル
エポキシ当量:113g/mol、エポキシ基数:2
A−7:TETRAD−X(三菱ガス化学(株)製)
テトラグリシジルメタキシレンジアミン
エポキシ当量:100g/mol、エポキシ基数:4
・(A1)成分、(A2)成分の両方に該当:A−8
A−8:“デナコール(登録商標)”EX−611(ナガセケムテックス(株)製)
ソルビトールポリグリシジルエーテル
エポキシ当量:167g/mol、エポキシ基数:4
水酸基数:2
・(A2)成分:A−9、A−10
A−9:“デナコール(登録商標)”EX−731(ナガセケムテックス(株)製)
N−グリシジルフタルイミド
エポキシ当量:216g/mol、エポキシ基数:1
イミド基数:1
A−10:“アデカレジン(登録商標)”EPU−6((株)ADEKA製)
ウレタン変性エポキシ
エポキシ当量:250g/mol、エポキシ基数:1以上
ウレタン基:1以上
・(B1)成分:B−1〜B−7
B−1:“DBU(登録商標)”(サンアプロ(株)製)、式(III)に該当
1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン、分子量:152
B−2:N,N−ジメチルベンジルアミン(東京化成工業(株)製)、分子量:135.21、式(VIII)に該当
B−3:1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン(アルドリッチ社製)
別名:プロトンスポンジ、分子量:214.31、式(IV)に該当
B−4:2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(東京化成工業(株)製)
別名:DMP−30、分子量:265.39、式(V)に該当
B−5:DBN(サンアプロ(株)製)、分子量:124、式(III)に該当
1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン
B−6:トリイソプロパノールアミン(東京化成工業(株)製)、分子量:191.27、式(VIII)に該当
B−7:U−CAT SA506(サンアプロ(株)製)、式(III)に該当
DBU−p−トルエンスルホン酸塩、分子量:324.44
・(B2)成分:B−8〜B−14
B−8:ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド(R1の炭素数が7、R2〜R4の炭素数がそれぞれ1、アニオン部位が臭化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(I)に該当)
B−9:テトラブチルアンモニウムブロミド(R1〜R4の炭素数がそれぞれ4、アニオン部位が臭化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(I)に該当)
B−10:トリメチルオクタデシルアンモニウムブロミド(R1の炭素数が18、R2〜R4の炭素数がそれぞれ1、アニオン部位が臭化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(I)に該当)
B−11:(2−メトキシエトキシメチル)トリエチルアンモニウムクロリド(R1の炭素数が4、R2〜R4の炭素数がそれぞれ2、アニオン部位が塩化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(I)に該当)
B−12:(2−アセトキシエチル)トリメチルアンモニウムクロリド(R1の炭素数が4、R2〜R4の炭素数がそれぞれ1、アニオン部位が塩化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(I)に該当)
B−13:(2−ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウムブロミド(R1の炭素数が2、R2〜R4の炭素数がそれぞれ1、アニオン部位が臭化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(I)に該当)
B−14:1−ヘキサデシルピリジニウムクロリド(R5の炭素数が16、R6とR7がそれぞれ水素原子、アニオン部位が塩化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(II)に該当)
・(B3)成分:B−15〜B−17
B−15:テトラブチルホスホニウムブロミド(R25〜R28の炭素数がそれぞれ4、アニオン部位が臭化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(XI)に該当)分子量:339
B−16:テトラフェニルホスホニウムブロミド(R25〜R28の炭素数がそれぞれ6、アニオン部位が臭化物アニオン、東京化成工業(株)製、式(XI)に該当)、分子量: 419
B−17:トリフェニルホスフィン(R29〜R31の炭素数がそれぞれ6、東京化成工業(株)製、式(XII)に該当)、分子量:262
・(C)成分(その他成分):C−1、C−2
C−1:“デナコール(登録商標)”EX−141(ナガセケムテックス(株)製)
フェニルグリシジルエーテル エポキシ当量:151g/mol、エポキシ基数:1
C−2:ヘキサメチレンジアミン(東京化成工業(株)製)、分子量:116。
・熱可塑性樹脂
ポリアリーレンスルフィド(PPS)樹脂フィルム:“トレリナ(登録商標)”M2888(東レ(株)製)をフィルム状に加工(目付100g/m2)
ポリアミド6(PA6)樹脂フィルム:“アミラン(登録商標)”CM1001(東レ(株)製)をフィルム状に加工(目付100g/m2)
ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム:“レキサン(登録商標)”141R(SABIC)をフィルム状に加工(目付100g/m2)
ABS樹脂フィルム(スチレン系樹脂):“トヨラック(登録商標)”T−100A(東レ(株)製)をフィルム状に加工(目付100g/m2)
ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム(ポリオレフィン系樹脂):未変性PP樹脂ペレットと酸変性PP樹脂ペレットを混合物しフィルム状に加工(目付100g/m2)、未変性PP樹脂ペレット:“プライムポリプロ(登録商標)”J830HV((株)プライムポリマー製)50質量部、酸変性PP樹脂ペレット:“アドマー(登録商標)”QE800(三井化学(株)製)50質量部
(実施例1)
本実施例は、次の第I〜IVの工程からなる。
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
アクリロニトリル99モル%とイタコン酸1モル%からなる共重合体を紡糸し、焼成し、総フィラメント数24、000本、総繊度1,000テックス、比重1.8、ストランド引張強度6.2GPa、ストランド引張弾性率300GPaの炭素繊維を得た。次いで、その炭素繊維を、濃度0.1モル/lの炭酸水素アンモニウム水溶液を電解液として、電気量を炭素繊維1g当たり100クーロンで電解表面処理した。この電解表面処理を施された炭素繊維を続いて水洗し、150℃の温度の加熱空気中で乾燥し、原料となる炭素繊維を得た。その後、得られた炭素繊維を、カートリッジカッターで6mmにカットした。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.20であった。これを炭素繊維Aとした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
直径500mmの円筒形容器に、水と界面活性剤(ナカライテクス(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名))からなる濃度0.1質量%の分散液を入れ、その中に、前工程でカットした炭素繊維を繊維の質量含有率が0.02%となるように投入した。5分間攪拌した後、脱水処理をおこない抄紙ウェブを得た。こ質量の時の目付は、67g/m2であった。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−4)と(B−1)を質量比100:1で混合し、さらにアセトンを混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IV工程:抄紙ウェブと熱可塑性樹脂の複合化工程
前工程で得られた抄紙ウェブにPPS樹脂フィルム(樹脂目付100g/m2)を上下方向から挟み、熱プレス装置にて、330℃、3.5MPaにて加熱加圧した後、60℃、3.5MPaで冷却加圧して、抄紙ウェブとPPS樹脂の複合化した成形材料を得た。さらに、成形品の厚みが3mmになるように積層、加熱加圧、冷却加圧をおこなった。得られた成形品の炭素繊維含有率は25質量%であった。成形品は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表1にまとめた。この結果、曲げ強度が441MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例2〜5)
・第I〜IIの工程:
実施例1と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
実施例1の第IIIの工程で、(A−4)と(B−1)の質量比を表1に示すように、100:3〜100:20の範囲で変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でバインダーが付与された抄紙ウェブを得た。バインダーの付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対していずれも0.5質量部であった。
・第IVの工程:抄紙ウェブと熱可塑性樹脂の複合化工程
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表1にまとめた。この結果、曲げ強度が441〜445MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(比較例1〜5)
・第I〜IIの工程:
実施例1と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
実施例1の第IIIの工程で、(A)成分、(B)成分、(C)成分(その他成分)の質量比を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でバインダーが付与された抄紙ウェブを得た。バインダーの付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対していずれも0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表1にまとめた。この結果、曲げ強度が419〜425MPaであり、力学特性が不十分であることがわかった。
(実施例6〜15)
・第I〜IIの工程:
実施例1と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
実施例1の第IIIの工程で、(A)成分と(B)成分の質量比を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でバインダーが付与された抄紙ウェブを得た。バインダーの付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対していずれも0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。この結果、曲げ強度が433〜451MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例16)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
電解液として濃度0.05モル/lの硫酸水溶液を用い、電気量を炭素繊維1g当たり20クーロンで電解表面処理したこと以外は、実施例1と同様とした。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.20であった。これを炭素繊維Bとした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例1と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−4)と(B−7)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。この結果、曲げ強度が434MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例17)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例16で得られた炭素繊維Bをテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(pH=14)に浸漬し、超音波で加振させながら引き上げた。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.17であった。これを炭素繊維Cとした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例1と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−4)と(B−7)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。この結果、曲げ強度が440MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(比較例6)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例16と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例1と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−4)のみをアセトンに混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。この結果、曲げ強度が415MPaであり、力学特性が不十分であることがわかった。
(比較例7)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例17と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例1と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−4)のみをアセトンに混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表2にまとめた。この結果、曲げ強度が418MPaであり、力学特性が不十分であることがわかった。
(実施例18〜24)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例1と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
実施例1の第IIIの工程で、(A)成分と(B)成分を表3−1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でバインダーが付与された抄紙ウェブを得た。バインダーの付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対していずれも0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表3−1にまとめた。この結果、曲げ強度が444〜452MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例25)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
電解液として濃度0.05モル/lの硫酸水溶液を用い、電気量を炭素繊維1g当たり20クーロンで電解表面処理したこと以外は、実施例1と同様とした。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.20であった。これを炭素繊維Bとした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例1と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−1)と(B−8)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表3−1にまとめた。この結果、曲げ強度が435MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例26)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例25で得られた炭素繊維Bをテトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(pH=14)に浸漬し、超音波で加振させながら引き上げた。このときの表面酸素濃度O/Cは、0.17であった。これを炭素繊維Cとした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例1と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−1)と(B−8)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表3−1にまとめた。この結果、曲げ強度が442MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例27〜35)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例1と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
実施例1の第IIの工程で、(A)成分と(B)成分の質量比を表3−2に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様の方法でバインダーが付与された抄紙ウェブを得た。バインダーの付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対していずれも0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表3−2にまとめた。この結果、曲げ強度が433〜448MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(比較例8)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:バインダーを炭素繊維に付着させる工程
(A−1)のみをアセトンに混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。このバインダーのアセトン溶液を用い、浸漬法によりバインダーを表面処理された炭素繊維に塗布した後、210℃の温度で180秒間熱処理をして、バインダー塗布炭素繊維を得た。バインダーの付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対して0.5質量部となるように調整した。
・第III〜IVの工程:
実施例1と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表3−2にまとめた。この結果、曲げ強度が425MPaであり、力学特性が不十分であることがわかった。
(実施例36)
本実施例は、次の第I〜IVの工程からなる。
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
直径500mmの円筒形容器に、水と界面活性剤(ナカライテクス(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名))からなる濃度0.1質量%の分散液を入れ、その中に、前工程でカットした炭素繊維を繊維の質量含有率が0.02質量%となるように投入した。5分間攪拌した後、脱水処理をおこない抄紙ウェブを得た。この時の目付は、82g/m2であった。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−8)と(B−1)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IV工程:抄紙ウェブと熱可塑性樹脂の複合化工程
前工程で得られた抄紙ウェブにPA6樹脂フィルム(樹脂目付100g/m2)を上下方向から挟み、熱プレス装置にて、300℃、3.5MPaにて加熱加圧した後、60℃、3.5MPaで冷却加圧して、抄紙ウェブとPA6樹脂の複合化した成形材料を得た。さらに、成形品の厚みが3mmになるように積層、加熱加圧、冷却加圧をおこなった。得られた成形品の炭素繊維含有率は29質量%であった。成形品は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表4にまとめた。この結果、曲げ強度が465MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例37〜41)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例36と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
実施例36の第IIIの工程で、(A)成分と(B)成分を表4に示すように変更したこと以外は、実施例36と同様の方法でバインダーが付与された抄紙ウェブを得た。バインダーの付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対していずれも0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例36と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表4にまとめた。この結果、曲げ強度が450〜461MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(比較例9)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例36と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−8)のみをアセトンに混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例36と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表4にまとめた。この結果、曲げ強度が440MPaであり、力学特性が不十分であることがわかった。
(実施例42)
本実施例は、次の第I〜IVの工程からなる。
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
直径500mmの円筒形容器に、水と界面活性剤(ナカライテクス(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名))からなる濃度0.1質量%の分散液を入れ、その中に、前工程でカットした炭素繊維を繊維の質量含有率が0.02質量%となるように投入した。5分間攪拌した後、脱水処理をおこない抄紙ウェブを得た。この時の目付は、78g/m2であった。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−10)と(B−6)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IV工程:抄紙ウェブと熱可塑性樹脂の複合化工程
前工程で得られた抄紙ウェブにPC樹脂フィルム(樹脂目付100g/m2)を上下方向から挟み、熱プレス装置にて、320℃、3.5MPaにて加熱加圧した後、60℃、3.5MPaで冷却加圧して、抄紙ウェブとPC樹脂の複合化した成形材料を得た。さらに、成形品の厚みが3mmになるように積層、加熱加圧、冷却加圧をおこなった。得られた成形品の炭素繊維含有率は28質量%であった。成形品は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表5にまとめた。この結果、曲げ強度が417MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例43〜47)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例42と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
実施例42の第IIIの工程で、(A)成分と(B)成分を表5に示すように変更したこと以外は、実施例42と同様の方法でバインダーが付与された抄紙ウェブを得た。バインダーの付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対していずれも0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例42と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表5にまとめた。この結果、曲げ強度が400〜414MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(比較例10)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例42と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−10)のみをアセトンに混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例42と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表5にまとめた。この結果、曲げ強度が390MPaであり、力学特性が不十分であることがわかった。
(実施例48)
本実施例は、次の第I〜IVの工程からなる。
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
直径500mmの円筒形容器に、水と界面活性剤(ナカライテクス(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名))からなる濃度0.1質量%の分散液を入れ、その中に、前工程でカットした炭素繊維を繊維の質量含有率が0.02質量%となるように投入した。5分間攪拌した後、脱水処理をおこない抄紙ウェブを得た。この時の目付は、86g/m2であった。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−1)と(B−1)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IV工程:抄紙ウェブと熱可塑性樹脂の複合化工程
前工程で得られた抄紙ウェブにABS樹脂フィルム(樹脂目付100g/m2)を上下方向から挟み、熱プレス装置にて、260℃、3.5MPaにて加熱加圧した後、60℃、3.5MPaで冷却加圧して、抄紙ウェブとABS樹脂の複合化した成形材料を得た。さらに、成形品の厚みが3mmになるように積層、加熱加圧、冷却加圧をおこなった。得られた成形品の炭素繊維含有率は30質量%であった。成形品は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表6にまとめた。この結果、曲げ強度が352MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例49〜53)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例48と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
実施例48の第IIIの工程で、(A)成分と(B)成分を表6に示すように変更したこと以外は、実施例48と同様の方法でバインダーが付与された抄紙ウェブを得た。バインダーの付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対していずれも0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例48と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表6にまとめた。この結果、曲げ強度が338〜351MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(比較例11)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例48と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−1)のみをアセトンに混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例48と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表6にまとめた。この結果、曲げ強度が320MPaであり、力学特性が不十分であることがわかった。
(実施例54)
本実施例は、次の第I〜IVの工程からなる。
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
直径500mmの円筒形容器に、水と界面活性剤(ナカライテクス(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(商品名))からなる濃度0.1質量%の分散液を入れ、その中に、前工程でカットした炭素繊維を繊維の質量含有率が0.02質量%となるように投入した。5分間攪拌した後、脱水処理をおこない抄紙ウェブを得た。この時の目付は、103g/m2であった。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−8)と(B−6)を質量比100:3で混合し、さらにアセトンを混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IV工程:抄紙ウェブと熱可塑性樹脂の複合化工程
前工程で得られた抄紙ウェブにPP樹脂フィルム(樹脂目付100g/m2)を上下方向から挟み、熱プレス装置にて、240℃、3.5MPaにて加熱加圧した後、60℃、3.5MPaで冷却加圧して、抄紙ウェブとPP樹脂の複合化した成形材料を得た。さらに、成形品の厚みが3mmになるように積層、加熱加圧、冷却加圧をおこなった。得られた成形品の炭素繊維含有率は34質量%であった。成形品は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表7にまとめた。この結果、曲げ強度が320MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(実施例55〜59)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例54と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
実施例54の第IIIの工程で、(A)成分と(B)成分を表7に示すように変更したこと以外は、実施例54と同様の方法でバインダーが付与された抄紙ウェブを得た。バインダーの付着量は、表面処理された炭素繊維100質量部に対していずれも0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例54と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表7にまとめた。この結果、曲げ強度が309〜315MPaであり、力学特性が十分に高いことがわかった。
(比較例12)
・第Iの工程:原料となる炭素繊維を製造する工程
実施例1と同様とした。
・第IIの工程:抄紙ウェブを製造する工程
実施例54と同様とした。
・第III工程:抄紙ウェブにバインダーを付与する工程
(A−8)のみをアセトンに混合し、バインダーが均一に溶解した約1質量%のアセトン溶液を得た。次いで、前工程で得られた抄紙ウェブの上から、アセトン溶液を散布した。その後、余剰分のアセトン溶液を吸引した後、210℃×180秒で熱処理をおこなった。バインダーの付着量は炭素繊維100質量部に対して、0.5質量部であった。
・第IVの工程:
実施例54と同様の方法で特性評価用試験片を成形した。次に、得られた特性評価用試験片を上記の成形品評価方法に従い評価した。結果を表7にまとめた。この結果、曲げ強度が295MPaであり、力学特性が不十分であることがわかった。