JP2013072031A - 放熱シート - Google Patents
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Abstract
【解決手段】放熱シートは、ブロック共重合体の水素添加物であり重量平均分子量15万〜50万、スチレン系単量体の含有割合が20〜50質量%である水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)100質量部と、動粘度(40℃)が50〜500cStのゴム用軟化剤100〜600質量部と、オレフィン系樹脂1〜100質量部と、水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)とゴム用軟化剤とオレフィン系樹脂との合計の100体積部に対して、表面被覆水酸化アルミニウムおよび/または表面被覆酸化マグネシウムを40〜400体積部と、を混合した熱伝導性エラストマー組成物からなる放熱層と、放熱層の一面又は両面に積層されている粘着層とを有する。
【選択図】 なし
Description
上記のスペーサーとして使用される放熱用部材としては、放熱シートが例示される。該放熱シートは、上記発熱性部材から上記冷却部材への伝熱効率を高めるために、上記発熱性部材と上記冷却部材の双方に対して密着させる必要がある。つまり上記発熱性部材あるいは上記冷却部材と上記放熱シートとの間に空気が入り込んで空気層が形成されてしまうと、該空気層の熱伝導性が低いので、放熱シートの熱伝導効率が大幅に低下してしまうためである。そこで、該放熱シートの材料には、該発熱性部材や該冷却部材への追従性を向上させて密着性を良くするため、シリコーンゴム等のような柔軟性を有するものが多用される。
一方、上記放熱シートは、例えばシリコーンゴム等のように、それ自体の粘着性が弱いか、粘着性を有していないものが多いので、上記発熱性部材や上記冷却部材に密着させるために、接着剤や粘着剤を用いたり、プライマー処理を施したり、粘着テープを使用している。
例えば特許文献1では、基材の両面に粘着剤を塗布してなる両面粘着テープを用い、グラファイトシートからなる放熱シートを発熱性部材と冷却部材とに密着させている。
また特許文献2では、感圧接着剤層の表面にプライマー処理を施したうえで、該表面で液状放熱シリコーンを加熱架橋することで、感圧接着剤層とシリコーンとを一体化させている。
また特許文献3には、支持体、粘着剤層及び剥離ライナーで構成され、該剥離ライナーにラベルを貼着した粘着シートが記載されている。
またシリコーンゴムを使用する場合、プライマー処理が必要になって作業が繁雑化するという問題がある。さらにシリコーンゴムは、低分子シロキサンを発生させて電気回路の接触不良等をひき起こすおそれがあるので電気、電子機器への搭載には注意を要し、加えて架橋ゴムであるため熱可塑性がなく、リサイクルが不可能であると云う問題がある。
またラベルが無い箇所では剥離ライナーを粘着剤層から綺麗に剥がすことが難しく、さらに上記シリコーンゴム等のような粘着性が弱いか有していないものが相手の場合、剥離ライナーのみならず粘着シートそのものが高確率で剥離してしまうという問題がある。
なお近時においては、上記シリコーンゴムの使用に伴う諸問題の発生を避けるべく、合成樹脂を主材料として熱伝導性フィラーを添加した放熱用部材が提案されているが、該放熱用部材についても、上記したような発熱性部材や冷却部材との密着性に係る問題の解決が望まれている。
本発明は、上記従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、熱伝導性に優れ、リサイクル可能であり、電気回路の接触不良等を引き起こす原因となる低分子化合物が存在せず、発熱性部材や冷却部材等に好適に密着させることができる放熱シートを提供することにある。
望ましくは、上記粘着層の厚さが、上記放熱層の厚さの1/100以上で1/6未満である。
上記放熱シートの放熱層に含まれる熱伝導性エラストマー組成物(以下、組成物と記載する)中の水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)は、熱可塑性であるから、リサイクルが可能であり、また射出成形等の熱成形も容易である。上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)の重量平均分子量(Mw)が15万未満のものを使用した場合には、得られる成形物の耐熱性が悪化し、該成形物に対して長期耐熱試験を行うと、変形を生じるようになる。更に軟化剤保持性が悪くなり、成形物において該軟化剤がブリードし易くなり、該成形物表面にベタツキが生じる。一方、Mwが50万を越えたものを使用した場合には、組成物の熱溶融物の流動性が低下し、成形性が悪化する。
なお重量平均分子量の測定方法については、後記する。
スチレン系単量体の含有割合が20質量%未満のものを使用した場合には、得られる成形物の耐熱性が悪化し、該成形物に対して長期耐熱試験を行うと、変形を生じるようになる。一方、スチレン系単量体の含有割合が50質量%を越えたものを使用した場合には、得られる成形物の柔軟性が乏しくなり、ゴム弾性が無くなる。
上記ゴム用軟化剤の添加量が、上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)100質量部に対して600質量部を越えた場合には、得られる成形物において上記ゴム用軟化剤が表面にブリードしてきて、該成形物表面のベタツキが顕著になり、一方上記ゴム用軟化剤の添加量が上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)100質量部に対して100質量部未満の場合には、組成物が塊状になりにくく、成形不可能となる。
上記オレフィン系樹脂の添加量が、上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)100質量部に対して100質量部を越えると、得られる成形物が硬くなり、柔軟性が乏しくなる。一方、添加量が上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)100質量部に対して1質量部未満の場合には、成形物に適度な硬さ、剛性、耐熱性を付与することが出来なくなる。
上記表面被覆水酸化アルミニウムは、耐湿性と組成物中での分散性を付与するという観点から、有機カップリング剤で水酸化アルミニウムに表面被覆を施すことによって得られたものである。
上記表面被覆酸化マグネシウムは、耐湿性と組成物中での分散性を付与するという観点から、無機物および/または有機物でマグネシアクリンカーに表面被覆を施すことによって得られたものである。なお、該マグネシアクリンカーは、マグネシア原料(酸化マグネシウムを主成分とする原料)を高温(1600℃以上)で焼成することで、主成分である酸化マグネシウム(マグネシア)を不活性化した焼塊(クリンカー)である。
上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)と、上記ゴム用軟化剤と、上記オレフィン系樹脂と、の混合物が100体積部に対し、上記熱伝導性フィラーは40〜400体積部添加される。添加量が40体積部に満たない場合、組成物の熱伝導率が低くなり、また添加量が400体積部を超える場合、上記組成物のシート材を含む放熱層が硬くなるので、放熱シートのゴム弾性が低くなって発熱性部材や冷却部材に対する密着が悪くなる。
上記粘着層は、その厚さを上記放熱層の厚さの1/100以上で1/6未満とすることで、発熱性部材又は冷却部材への密着性を好適なものとしつつ、熱伝導率の低下を抑制することができる。
本発明では、熱伝導性に優れ、リサイクル可能であり、電気回路の接触不良等を引き起こす原因となる低分子化合物が存在せず、発熱性部材や冷却部材等に好適に密着させることができる放熱シートが提供される。
〔水添熱可塑性スチレン系エラストマー〕
本発明の組成物(熱伝導エラストマー組成物)中に含まれる水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)とは、スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(S)(以下単に重合体ブロック単位(S)ともいう)と、共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(B)(以下単に重合体ブロック単位(B)ともいう)とからなるブロック共重合体(Z)であって、上記ブロック共重合体(Z)中の共役ジエン化合物を主体とする重合体のブロック単位(B)は、一部または全部が水素添加されている。
上記スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(S)とは、例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t(ターシャリー)−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等のスチレン系単量体からなる重合体のブロックである。
上記共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(B)とは、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエン系化合物を主体とする重合体のブロックである。
本発明で使用する上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)としては、熱可塑性スチレン系エラストマー(TPS)の他に、例えばスチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)等が例示される。
本発明の水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)で有用なものとしては、上記重合体ブロック単位(S)を2個以上、および上記重合体ブロック単位(B)を1個以上有するブロック共重合体(Z)の水素添加物であり、その中でも1個の重合体ブロック単位(B)の両端に各1個(合計2個)の重合体ブロック単位(S)が結合したブロック共重合体(Z)に水素添加することによって重合体ブロック単位(B)の構成単位であるブタジエンをエチレンおよびブチレンに転化せしめたSEBSが、耐熱性の点からみて望ましい水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)である。
上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)には、本発明の目的を逸脱しない限り、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ピリジン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、スチレン−エチレン共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SIS)、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)(α−MeSBα−MeS)、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、スチレン−クロロプレンゴム(SCR)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)共重合体等の他のエラストマーまたは合成ゴムの若干量が添加されてもよい。
本発明においては、上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)として、重量平均分子量(Mw)が15万〜50万の範囲のものを使用する。
重量平均分子量(Mw)が15万未満の場合、耐熱性が悪いので長期耐熱試験を行うと変形を生じやすくなり、また軟化剤の保持性が悪くなって軟化剤がブリードしやすくなり、組成物にベタツキが発生する恐れがある。重量平均分子量(Mw)が50万を超える場合、成形時の溶融物の流動性が低下して成形性が悪くなり、また組成物のゴム弾性が低下してしまう。
上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)の重量平均分子量(Mw)としては、下記するゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)法による測定値を用いる。
[GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)法によるポリスチレン換算分子量測定]
GPCによる分子量の測定条件は以下のとおりである。
・ポンプ:JASCO(日本分光株式会社)製PU−980
・カラムオーブン:昭和電工株式会社製AO−50
・検出器:日立製RI(示差屈折計)検出器L−3300
・カラム種類:昭和電工株式会社製「K−805L(8.0×300mm)」および「K−804L(8.0×300mm)」各1本を直列使用
・カラム温度:40℃
・ガードカラム:K−G(4.6×10mm)
・溶離液:クロロホルム
・溶離液流量:1.0ml/分
・試料濃度:約1mg/ml
・試料溶液ろ過:ポリテトラフルオロエチレン製0.45μm孔径ディスポーザブルフィルタ
・検量線用標準試料:昭和電工株式会社製ポリスチレン
上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)は、1種のみを用いてもよく、重量平均分子量(Mw)や1,2−ビニル結合量等が異なる2種以上を併用することも可能である。
本発明においては、上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)として、スチレン系単量体の含有割合が20〜50質量%のものを使用する。
スチレン系単量体の含有割合が20質量%に満たない場合、耐熱性が悪くなり長期耐熱試験を行なうと変形を生じる。スチレン系単量体の含有割合が50質量%を超える場合、得られる上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)のゴム弾性が低下し、発熱体や冷却部品等への密着性が悪くなる。
上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)を構成する共役ジエン化合物からなるブロック共重合体(Z)において、1,2−ビニル結合量の割合は、50質量%未満であることが望ましい。1,2−ビニル結合割合が50質量%未満の場合には、組成物にベタツキが出にくくなる。
本発明では、組成物の柔軟性を高め、発熱性部材に対する密着性を向上させるための材料として、ゴム用軟化剤を使用する。
本発明において使用されるゴム用軟化剤としては、非芳香族系のオイルが使用され、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイルが使用されるが、本発明の水添熱可塑性スチレン系エラストマーと良好な相溶性を示すパラフィン系オイルは望ましいゴム用軟化剤である。
上記ゴム用軟化剤としては、動粘度が40℃で50〜500センチストークス(cSt)の範囲であるものを使用する。動粘度が40℃で50cStに満たない場合には、組成物を成形する際にガスの発生が著しくなり、ブリードが発生しやすくなる。また動粘度が40℃で500cStを超えると、成形品のベタツキが激しくなり、作業性が低下する。
本発明では、組成物を混練して調製する際につなぎの役割を果たし、更に組成物に耐熱性と適度な剛性および成形時の溶融物の流動性を付与する材料として、オレフィン系樹脂を使用する。
本発明に使用するオレフィン系樹脂として代表的なものは、ポリプロピレンである。上記ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、ポリプロピレンにポリエチレンやエチレン−プロピレン共重合体を添加した変性ポリプロピレン等が含有される。
本発明に使用するオレフィン系樹脂としては、JIS K 6921−2に準拠して測定した荷重たわみ温度が80℃〜140℃の範囲のものを用いると、耐熱性の点でより望ましい。荷重たわみ温度が80℃未満のものでは、成形品に変形が生じるおそれがある。
本発明の組成物には、熱伝導性を向上させるという観点から、熱伝導性充填材を配合する。
上記熱伝導性充填材には、水酸化アルミニウムを有機系カップリング剤で表面被覆してなる表面被覆水酸化アルミニウム、および/または、マグネシアクリンカーを無機物および/または有機物で表面処理してなる表面被覆酸化マグネシウムが使用される。
上記表面被覆水酸化アルミニウムに用いる水酸化アルミニウムとしては、ソーダ成分(Na2O)含有量がなるべく少ないもの(例えば0.4質量%未満含有するもの)が望ましい。ソーダ成分の含有量が少ない水酸化アルミニウムは分解温度が高く、吸湿性が小さく、かつ絶縁性が高く、望ましい材料である。
上記水酸化アルミニウムを被覆するために使用される有機カップリング剤としては、チタン酸テトライソプロピル、チタン酸テトラブチル、チタン酸テトラ(2−エチルヘキシル)、チタン酸テトラステアリル等のチタン酸エステルや、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のSi(OR)3部分とビニル基、アミノ基、エポキシ基等の有機官能基との二つの基を有するケイ素化合物(シランカップリング剤)等が例示される。
上記カップリング剤は上記有機官能基を一分子中に2個以上含んだものであってもよい、また上記カップリング剤は2種以上混合使用されてもよい。
上記表面被覆酸化マグネシウムに用いるマグネシアクリンカーは、例えば下記の方法で製造される。
(1) 海水、苦汁等マグネシウム含有原料に苛性ソーダ等のアルカリ物質を投入して水酸化マグネシウムスラリーを調製する。
(2) 上記マグネシウムスラリーをろ過し、例えば120℃×10時間の条件で乾燥する。
(3) 乾燥物(水酸化マグネシウム)を600〜1000℃で仮焼して軽焼マグネシア(酸化マグネシウム)を得る。
(4) 上記軽焼マグネシアをロータリーキルン等によって1600℃以上、望ましくは1800〜2100℃で死焼することで不活性化して、マグネシアクリンカーを得る。
上記酸化マグネシウムを1600℃以上で焼成して表面不活性のマグネシアクリンカーを得ることを死焼という。ここにマグネシアクリンカーとは上記死焼によってマグネシア(酸化マグネシウム)成分が溶融して塊状(焼塊:クリンカー)になったものをいう。
上記仮焼において、焼成温度が1200℃を超えると、得られる酸化マグネシウムの活性が大幅に低下する。更に上記死焼において、焼成温度が1600℃以上で酸化マグネシウムが不活性化し、即ち酸や水蒸気との反応性がなくなり、かつ大結晶化する。
上記のようにマグネシアクリンカーは死焼によって不活性化、大結晶化しているから優れた耐湿性と熱伝導性を有する。
上記マグネシアクリンカーの表面被覆に使用される無機物としては、例えばアルミニウム化合物、ケイ素化合物、チタン化合物が例示され、上記無機物は2種以上混合使用されてもよい。上記無機物には例えば、酸化物、窒化物、ホウ化物等のセラミック系化合物、硝酸塩、硫酸塩、塩化物等の塩、水酸化物等がある。
上記マグネシアクリンカーの表面被覆に使用される有機物としては、上記水酸化アルミニウム被覆に使用した有機カップリング剤、シランカップリング材、有機合成樹脂等が例示される。上記有機物は2種以上混合使用されてもよい。
上記マグネシアクリンカーは、上記無機物および/または有機物で表面処理して表面被覆酸化マグネシウムとすることにより、耐湿性、分散性が向上する。
本発明において使用される上記熱伝導性充填材は、耐湿試験による(耐湿試験後の)吸水率が1.5質量%未満であることが望ましい。吸水率が1.5質量%以上の熱伝導性充填材を組成物に添加すると、該組成物中のエラストマーの劣化や絶縁性の低下が起こる。
上記耐湿試験による吸水率は、下記のようにして測定される。
熱伝導性充填材10gをシャーレに入れ、90℃×90RH%の条件下の恒温槽内に静置、48時間後の質量変化を電子天秤によって測定し、下記の式で質量変化率(吸水率)を計算する。
質量変化率(質量%)=試験後の熱伝導性充填材の質量/試験前の熱伝導性充填材の質量×100
本発明に使用する上記熱伝導性充填材は、新モース硬度が10未満であることが望ましい。上記熱伝導性充填材の新モース硬度が10未満であれば、組成物を用いた成形時における混練機や成形装置の摩耗を抑制することができる。
ここに新モース硬度とは、硬さの異なる15種類の標準鉱物で固体表面を順次ひっかき、そのときの傷の有無により1〜15の数値で表した硬さである。新モース硬度10未満とは、ざくろ石でひっかくと傷がつくことを示す。
本発明に使用する上記熱伝導性充填材は、一種類を単独で用いる場合に比べ、粒径が異なる二種類以上を所定の比率で混合して用いる場合の方が、柔軟性の保持及び良好な熱伝導性を発揮させるという観点から、望ましい。
上記成分以外にも所望により、本発明の特徴を損なわない範囲において、必要に応じて他の配合成分を配合することができる。望ましい第3成分としては、本発明の組成物を押出成形、射出成形等によって成形する際、溶融物の張力が向上して延展性を向上させる加工助剤がある。更に該加工助剤は組成物の難燃性を向上させるという点でも望ましい第3成分である。上記加工助剤として代表的なものは、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、高分子量特殊アクリル樹脂等のポリオレフィン用改質剤である。上記加工助剤を添加すると、本発明の組成物の溶融物の延展性や張力が向上して伸び易くなるから、該溶融物に引張り力を及ぼしても切れにくくなる。その結果、例えば押出成形によってシートやフィルムを成形する際、形状が維持されるので成形不良が起こりにくくなる。
その他の第3成分としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、珪藻土、ドロマイト、石膏、焼成クレー、アスベスト、マイカ、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填材や、リンター、リネン、サイザル、木粉、ヤシ粉、クルミ粉、でん粉、小麦粉、米粉等の有機充填材や、木綿、麻、羊毛等の天然繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビスコース繊維、アセテート繊維等の有機合成繊維や、アスベスト繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、ウィスカー繊維等の繊維充填材や、色素、顔料、カーボンブラックなどの着色剤や、あるいは、帯電防止剤、導電性付与剤、老化防止剤、難燃剤、防炎剤、撥水剤、撥油剤、防虫剤、防腐剤、ワックス類、界面活性剤、滑剤、紫外線吸収剤、DBP、DOP、熱安定剤、キレート剤、分散剤等の各種添加剤を添加してもよい。
また、本発明の組成物は、本発明の特徴を損なわない範囲であれば、他のポリマーをブレンドして使用することも可能である。
上記第3成分で挙げた各種添加剤の中でも特に分散剤は、本発明に使用する樹脂等と熱伝導性充填材等との相溶性を向上させるので、分散が良くなり柔軟性に優れた成形体を得ることができる。上記分散剤としては、金属石鹸を用いることができ、該金属石鹸は、高級脂肪酸の金属塩であり、高級脂肪酸として、ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、ラウリン酸等が例示され、金属としてマグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、ナトリウム、亜鉛等が例示される。これら金属石鹸の中でも、流動性が極めて良好であり、融点が160℃以下であるため混練時に分散しやすいステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムを使用することが特に望ましい。
本発明の組成物は、以下の(a)〜(d)を混合したものである。
(a)上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)が100質量部。
(b)上記ゴム用軟化剤が100〜600質量部。
(c)上記オレフィン系樹脂が1〜100質量部。
(d)上記(a),(b),(c)の合計の100体積部に対し、上記熱伝導性充填材が40〜400体積部。
また本発明の組成物は、所望なれば、以下の(e)を混合してもよい。
(e)上記金属石鹸が1〜80質量部。
上記オレフィン系樹脂の添加量が、上記エラストマー100質量部に対し、1質量部に満たない場合、該オレフィン系樹脂によるつなぎの作用が不充分となり、混練中に混練物がまとまりにくくなって、くずれやすくなるので成形が不可能となる。またオレフィン系樹脂の添加量が100質量部を超える場合、上記組成物を用いて得られた成形物のゴム弾性が乏しく(低く)なり、発熱性部材等の対象物に対する密着性が悪くなる。
上記エラストマーと、ゴム用軟化剤と、オレフィン系樹脂との合計の100体積部に対し、上記熱伝導性充填材の配合量が40体積部に満たない場合、組成物の熱伝導率が低くなり、また上記熱伝導性充填材の配合量が400体積部を超える場合、上記組成物を用いて得られた成形物が硬くなるので、ゴム弾性が低くなる。
また上記金属石鹸の添加量が、上記エラストマー100質量部に対し、1質量部に満たない場合、上記金属石鹸が分散剤としての効果を発揮できなくなるおそれがあり、また80質量部を超える場合、ブリードアウトによる外観不良やガスの発生による成形不良が生じるおそれがある。
また上記組成物の難燃性については、UL規格、HB(試料厚さ1.0mm)以上であることが望ましく、HB未満であると燃焼速度が速く、充分な難燃性を有しているとはいえない。
本発明の放熱シートは、上記組成物を押出成形、射出成形等、通常の成形方法でシート状に成形して放熱層としたうえで、該放熱層の一面又は両面に粘着層を積層することによって得られる。
上記放熱シートが、例えば発熱性部材と冷却部材との間に介装される放熱用部材であれば、上記放熱層の両面に粘着シートを積層することにより、発熱性部材と冷却部材との双方に対する密着性を向上させることが望ましい。
一方、上記放熱シートの放熱層が、ヒートシンクやヒートパイプ等の冷却部材と、アンダーカット手段を介したりインサート成形されたりして一体化されているような場合には、上記放熱層の一面のみに粘着層を積層することにより、発熱性部材との密着性を向上させることが望ましい。
本発明の粘着層は、上記放熱シートの上記放熱層を、発熱性部材や冷却部材と隙間なく密着させるために設けられたものである。
上記粘着層の形成には、粘着シートが使用される。該粘着シートは、その両面に粘着性を有するものであって、上記放熱層に貼着されて積層される。また該粘着シートの両面のうち上記放熱層と貼着されていない他面には、離型シートを貼着することにより、該他面を保護し、その粘着性を維持することが望ましい。該離型シートとしては、紙、フィルム、不織布等のシートの表面をシリコーンやパラフィン等の離型剤で被覆した通常のものが挙げられる。
上記粘着層に使用する粘着シートとしては、不織布、紙等の基材に粘着剤を塗布又は含浸して形成された粘着シートと、粘着剤のみからなる粘着シートとの二種類が挙げられるが、本発明の粘着層には何れの粘着シートを使用してもよい。
上記粘着シートに使用される粘着剤としては、上記放熱層に使用される組成物が上記したようにオレフィン系樹脂を含む水添熱可塑性スチレン系エラストマーであるため、オレフィン系樹脂と接着性が良好なものが望ましい。また粘着剤のみからなる粘着シートの場合、粘着剤には凝集力の高いものが使用される。このようにオレフィン系樹脂と接着性が良好である粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤、アクリルウレタン系粘着剤が挙げられ、あるいは凝集力が高い粘着剤としては、ポリイソシアネートによって後架橋させたポリエステルポリウレタン系粘着剤、極性モノマーを共重合した(メタ)アクリル系粘着剤等が挙げられる。
上記粘着層の厚さは、上記放熱層に積層して上記放熱シートを構成した際の熱伝導率の低下を抑制しつつ、発熱性部材や冷却部材との密着性を維持するという観点から、上記放熱層の厚さの1/100以上で1/6未満であることが望ましい。粘着層の厚さが放熱層の厚さの1/100未満の場合、該放熱層が発熱性部材や冷却部材と十分に密着されないおそれがあり、1/6以上の場合、上記放熱シートとした際に熱伝導率が過剰に低下してしまうおそれがある。
[実施例1〜6]
〔放熱層の材料〕
下記の材料を使用した。
1.水添熱可塑性スチレン系エラストマー(TPS)
G1651H〔商品名、クレイトンポリマージャパン(株)製〕、SEBS、スチレン系単量体の含有量:33%、Mw:29万、1,2−ビニル結合量:37質量%。
2.ゴム用軟化剤
PW90〔商品名、出光石油化学(株)製〕、動粘度(40℃):84.0cSt。
3.オレフィン系樹脂
PX600A〔商品名、サンアロマー(株)製〕、ポリプロピレン(ブロックタイプ)、融点:161℃(出願人がJIS K7123に準拠して測定)、曲げ弾性率:1600MPa、MFR(230℃):5g/10min、荷重たわみ温度:105℃。
4.熱伝導性充填材(フィラー)
(1)RF−50−HR〔商品名、宇部マテリアルズ(株)製〕、マグネシアクリンカー(死焼温度1800℃以上)、平均粒径50μm、シランカップリング剤による表面被覆、吸水率0.2%、被覆層の新モース硬度7。
(2)BF083T〔商品名、日本軽金属(株)製〕、水酸化アルミニウム、平均粒径10μm、有機チタネート系化合物による表面被覆、吸水率0.2%、ソーダ成分0.08%。
水添熱可塑性スチレン系エラストマー100質量部と、オレフィン系樹脂12質量部をドライブレンドし、これにゴム用軟化剤350質量部を含浸させて混合物を作製する。
その後、上記混合物を下記の条件において押出機で溶融混練して、組成物のペレットを製造する。
押出機・・・KZW32TW−60MG−NH(商品名、(株)テクノベル製)
シリンダー温度・・・180〜220℃
スクリュー回転数・・・300rpm
Brabender Plastograph(ブラベンダープラストグラフ、商品名、Brabender社製)
槽温度・・・160℃
ローター回転数・・・100rpm
混練時間・・・11min
射出成形機・・・100MSIII−10E(商品名、三菱重工業(株)製)
射出成形温度・・・170℃
射出圧力・・・30%
射出時間・・・10sec
金型温度・・・40℃
プレス機・・・40ton電動油圧成形機
加熱温度・・・上型:195℃、下型:200℃
加熱時間・・・2分
プレス圧・・・5MPa
冷却時間・・・2分
下記のものを使用した。
(1)7021〔商品名、寺岡製作所製〕、基材レス、アクリル系、厚み0.05mm。
(2)7075〔商品名、寺岡製作所製〕、基材有り(ポリエステル)、アクリル系、厚み0.05mm。
(3)9671LE〔商品名、住友スリーエム製〕、基材レス、アクリル系、厚み0.05mm。
上記のようにして得た厚さ1.0mmの放熱層の片面に、上記粘着層を貼着することによって積層し、実施例1〜3の試料を得た。
また上記のようにして得た厚さ0.3mmの放熱層の片面に、上記粘着層を貼着することによって積層し、実施例4〜6の試料を得た。
実施例1〜6について下記評価を行った。なお、各物性の評価結果は、表1に示した。
(1)熱伝導率:レーザーフラッシュ法(キセノンフラッシュ法)により熱拡散率を測定(温度19〜30℃)(JIS R 1611)
DSCにより比熱を測定(JIS K 7123に準拠)
水中置換法により比重を測定(JIS K 7112に準拠)
上記測定結果を基に、次の通りに熱伝導率を算出した。
熱伝導率=熱拡散率×比熱×比重
試料:直径10mm、厚さ1.0mmの円盤
(2)低下率:放熱層のみで測定した熱伝導率(ブランク)と、測定された熱伝導率と、を比較し、次の通り評価した。
○:低下率がブランクの35%未満、△:低下率がブランクの35%以上で50%未満、×:低下率がブランクの50%以上。
〔必要性能〕
熱伝導率:1.0W/m・K以上(熱伝導率が低いと、熱伝達効率が低下し、充分な放熱効果を得ることができない。)
粘着層の厚さが放熱層の厚さの1/100以上で1/6未満(1/20)である実施例1〜3については、熱伝導率の低下率が35%未満であり、熱伝導性の低下が抑制されていることが判る。
粘着層の厚さが放熱層の厚さの1/6以上(1/6)である実施例4〜6については、実施例1〜3に比べて熱伝導率の低下率が高く、熱伝導率の低下を抑制するという観点において、粘着層の厚さは放熱層の厚さの1/6未満が望ましいことが判る。
〔放熱層〕
上記実施例1〜6で使用したものと同じものを使用した。放熱層の厚さは1.0mmであり、熱伝導率は2.47W/m・Kであった。
下記のものを使用した。
(4)7053〔商品名、寺岡製作所製〕、基材有り、アクリル系、厚み0.02mm。
(5)707〔商品名、寺岡製作所製〕、基材有り(ポリエステル)、アクリル系、厚み0.03mm。
(6)7075〔商品名、寺岡製作所製〕、基材有り(ポリエステル)、アクリル系、厚み0.05mm。
(7)7021〔商品名、寺岡製作所製〕、基材レス、アクリル系、厚み0.05mm。
厚さ1.0mmの放熱層の片面に、上記粘着層を1枚のみ貼着することによって積層し、実施例7〜10の試料を得た。
厚さ1.0mmの放熱層の片面に、上記粘着層を2枚重ねて貼着することによって積層し、実施例11,12の試料を得た。
実施例7〜12について、下記の評価を行った。なお、各物性の評価結果は、表2に示した。
(1)熱伝導率:レーザーフラッシュ法(キセノンフラッシュ法)により熱拡散率を測定(温度19〜30℃)(JIS R 1611)
DSCにより比熱を測定(JIS K 7123に準拠)
水中置換法により比重を測定(JIS K 7112に準拠)
上記測定結果を基に、次の通りに熱伝導率を算出した。
熱伝導率=熱拡散率×比熱×比重
試料:直径10mm、厚さ1.0mmの円盤
(2)低下率:放熱層のみで測定した熱伝導率(ブランク)と、測定された熱伝導率と、を比較し、次の通り評価した。
○:低下率がブランクの35%未満、△:低下率がブランクの35%以上で50%未満、×:低下率がブランクの50%以上。
〔必要性能〕
熱伝導率:1.0W/m・K以上(熱伝導率が低いと、熱伝達効率が低下し、充分な放熱効果を得ることができない。)
粘着層の厚さは同じ(0.05mm)であり、基材の有無が異なる実施例9,10については、熱伝導率に大きな差はなく、また実施例9,10よりも粘着層を厚くした(0.1mm)実施例11,12は熱伝導率が同じであることが判った。
参考例1:上記実施例と同様にして得られた厚さ1.0mmの放熱層の2枚を、粘着層を介して相互に接着し、熱伝導率と低下率を測定した。
参考例2:上記実施例と同様にして得られた厚さ2.0mmの放熱層の2枚を、粘着層を介して相互に接着し、熱伝導率と低下率を測定した。
参考例3:上記実施例と同様にして得られた厚さ2.0mmの放熱層と、厚さ0.7mmのステンレス鋼板とを、粘着層を介して相互に接着し、熱伝導率と低下率を測定した。
参考例1〜3の結果を表2に示した。
なお粘着層には、上記実施例で使用した(1)〜(3)に加えて、以下のものを使用した。
(4)585〔商品名、日東電工製〕、基材有り(セルロース)、アクリル系、厚み0.05mm。
2枚の放熱層を粘着層で接着した参考例1については、実施例1〜3に比べて熱伝導率の低下率が大きいことが判る。
一方、厚みを増した2枚の放熱層を粘着層で接着した参考例2については、一枚の放熱層のみに比べて熱伝導率が向上していた。
また厚みを増した1枚の放熱層を粘着層でステンレス鋼製の板に接着した参考例3については、熱伝導率が顕著に向上していた。
Claims (2)
- スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(S)と、共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(B)と、からなるブロック共重合体(Z)の水素添加物であり、重量平均分子量15万〜50万、スチレン系単量体の含有割合が20〜50質量%である水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)100質量部と、
動粘度が40℃において50〜500センチストークス(cSt)のゴム用軟化剤100〜600質量部と、
オレフィン系樹脂1〜100質量部と、
上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)と上記ゴム用軟化剤と上記オレフィン系樹脂との合計の100体積部に対して、
水酸化アルミニウムを有機系カップリング剤で表面被覆してなる表面被覆水酸化アルミニウム、
および/または、
マグネシアクリンカーを無機物および/または有機物で表面被覆してなる表面被覆酸化マグネシウム、
を40〜400体積部と、
を混合した熱伝導性エラストマー組成物からなるシートである放熱層と、
上記放熱層の一面又は両面に積層されている粘着層と、
を有する
ことを特徴とする放熱シート。 - 上記粘着層の厚さが、上記放熱層の厚さの1/100以上で1/6未満である
請求項1に記載の放熱シート。
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