以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。なお、同様または類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の実施形態に係る個人認証媒体を概略的に示す平面図である。図1に示す個人認証媒体100は、パスポートなどの冊子体である。図1は、開いた状態の冊子体を描いている。
個人認証媒体100は、折り丁1と表紙2とを含んでいる。
折り丁1は、1枚以上の紙片11からなる。典型的には、紙片11上には文字列および地紋などの画像I2が設けられている。折り丁1は、1枚の紙片11または複数枚の紙片11の束を二つ折りにすることによって形成されている。紙片11には、個人情報が記録されるIC(integrated circuit)チップや、このICチップとの非接触での通信を可能とするアンテナなどを内蔵していてもよい。
表紙2は、二つ折りされている。表紙2と折り丁1とは、冊子体を閉じた状態で折り丁1が表紙2によって挟まれるように重ね合わされており、それらの折り目の位置で綴じ合わせなどによって一体化されている。
表紙2は、個人情報を含んだ画像を表示する。この個人情報は、個人の認証に利用する個人認証情報を含んでいる。この個人情報は、例えば生体情報と非生体個人情報とに分類することができる。
生体情報は、生体の特徴のうち、その個体に特有なものである。典型的には、生体情報は光学的手法によって識別可能な特徴である。例えば、生体情報は顔、指紋、静脈および虹彩の少なくとも1つの画像またはパターンである。
非生体個人情報は、生体情報以外の個人情報である。例えば、非生体個人情報は氏名、生年月日、年齢、血液型、性別、国籍、住所、本籍地、電話番号、所属および身分の少なくとも1つである。非生体個人情報は、タイプ打ちによって入力された文字を含んでいてもよく、署名などの手書きを機械読み取りすることによって入力された文字を含んでいてもよく、それらの双方を含んでいてもよい。
図1において、表紙2は画像I1a、I1b、I2およびI3を表示している。
画像I1a、I2およびI3は、光の吸収を利用して表示される画像である。具体的には、画像I1a、I2およびI3は白色光で照明し、肉眼で観察した場合に視認可能な画像である。画像I1a、I2およびI3の1つ以上を省略してもよい。
画像I1a、I2およびI3は、例えば染料および顔料で構成することができる。この場合、画像I1a、I2およびI3の形成にはサーマルヘッドを用いた熱転写記録法、インクジェット記録法、電子写真法、またはそれらの2つ以上の組み合わせを利用することができる。また、画像I1a、I2およびI3は感熱発色剤を含んだ層を形成し、この層にレーザビームで描画することにより形成することができる。さらに、これら方法の組み合わせを利用することができる。画像I2およびI3の少なくとも一部は、ホットスタンプを用いた熱転写記録法によって形成してもよく、印刷法によって形成してもよく、それらの組み合わせを利用して形成してもよい。
画像I1bは、ホログラムおよび/または回折格子が表示する画像である。画像I1bは、例えばサーマルヘッドを用いた熱転写記録と、ホットスタンプまたは熱ロールを用いた熱転写記録とをこの順に行うことにより形成する。
画像I1aおよびI1bは、同一人物の顔画像を含んでいる。画像I1aを含む顔画像と、画像I1bを含む顔画像とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。画像I1aを含む顔画像と、画像I1bを含む顔画像とは、寸法が等しくてもよく、異なっていてもよい。また、画像I1aおよびI1bの各々は顔画像の代わりに他の生体情報を含んでいてもよく、顔画像に加えて顔画像以外の生体情報を更に含んでいてもよい。
画像I1bは、生体情報の代わりに非生体個人情報を含んでいてもよく、生体情報に加えて非生体個人情報を更に含んでいてもよい。また、画像I1bは、個人情報の代わりに非個人情報を含んでいてもよく、個人情報に加えて非個人情報を更に含んでいてもよい。
画像I2は、非生体個人情報と非個人情報とを含んでいる。画像I2は、例えば文字、記号、符号および標章の1つ以上を構成している。
画像I3は、地紋である。例えば、画像I3と画像I1aおよびI1bの少なくとも一方とを組み合わせると、情報媒体100の改竄をより困難にすることができる。
このような個人認証媒体100の画像形成体に用いられる転写箔を図2を参照して説明する。図2は、実施形態に係る転写箔を概略的に示す断面図である。
転写箔60は、基材(第1基材)50の一方の面に剥離層51、構造形成層52、透明被覆層53および接着層54をこの順序で積層した構造を有する。図2では透明被膜層53が構造形成層52全体を覆うように積層されているが、透明被膜層53は構造形成層52の少なくとも一部に積層されてあればよい。
基材50、剥離層51、構造形成層52の屈折率は概ね同一であるか近い値となり、一方、透明被膜層53のみ屈折率が大きく異なるのが一般的である。その結果、図2に示す転写箔60を観察すると、透明被膜層53は構造形成層52を被覆するように積層されているため、構造形成層52の構造に起因する射出光を観察できる。
基材50は、例えばポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレン(PE)等のプラスチックシートから形成される。基材50の厚さは、一般的に10〜100μm程度である。実施形態の転写箔60における基材50は、転写性を向上させるために薄い方が良く、特に10nm〜1μm程度であることがより好ましい。
剥離層51の材料は、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂にシリコーンまたはフッ素系の添加剤を加えたものが好ましい。転写箔60は、後述するように微小面積のドット毎に転写するため、剥離層51での箔切れ性が必要である。箔切れ性を改善するため、前記材料にシリカ等の無機微粒子を添加することが好ましい。また、剥離層として必要な性能を発揮できれば、前記以外の材料を用いることもできる。
構造形成層52の材料は、例えばポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、フッ素系アクリル樹脂、シリコーン系アクリル樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、シクロオレフィンポリマー、メチルスチレン樹脂、フルオレン樹脂、PET、ポリプロピレン等の光硬化性樹脂、またはアクリルニトリルスチレン共重合体樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂、またはポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。このような熱可塑性樹脂を所望の構造を賦型して硬化させることにより構造形成層52を成形することができる。これらの樹脂の硬化物は、全て光透過性であり、屈折率は一般的には1.5程度である。
構造成形層52の厚さは、耐熱性、箔切れ性、熱転写性を向上させるために薄い方が好ましく、特に1.5μm以下であることが好ましい。
透明被覆層53は、光反射層としても機能し、例えば透明被膜または金属被膜等を用いることができる。透明被覆層53が透明被膜である場合、構造形成層52と屈折率が異なる誘電体層、誘電体多層膜または高屈折率材料層を使用することができる。透明被膜は、例えば屈折率が2.0以上であるZnS、TiO2、PbTiO2、ZrO、ZnTe、PbCrO4等から形成することが好ましい。透明被膜が構造形成層52との屈折率差が小さいと、構造形成層52の凹凸による回折光の視覚効果が弱まるおそれがある。具体的には、構造形成層52と透明被膜の屈折率差は少なくとも0.5以上あることが好ましい。透明被膜の厚さは、50nm〜100nmであることが好ましい。
透明被覆層53が金属被膜である場合、クロム、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銀、金、銅の群からから選択される単体またはそれらの混合物、または合金等を用いることができる。このような金属被膜は、厚さを厚くし過ぎると光透過性が失われるため、20nm以下の厚さを有することが好ましい。
接着層54は、透明被覆層53の材料、その他樹脂との密着力、加刷性を有するものであれば、特に限定はしない。接着層54は、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂から形成されることが好ましい。接着層54は、接着性に加えて、熱転写の際の箔切れ性も必要となるため、前記熱可塑性樹脂にシリカ等の無機材料を添加したものから形成することがより好ましい。
このような剥離層51、構造形成層52、透明被覆層53および接着層54をこの順序で積層した転写箔60は、光透過性を有する。転写箔60は、可視光に対する透過率が70%以上、より好ましくは80%以上、最も好ましくは90%以上であることが望ましい。
前述した図2に示す転写箔から被転写基材に画像構成要素の画素(ドット)を転写する工程を、図3を参照して説明する。図3の(a),(b)は、転写箔60の転写工程を概略的に示す断面図である。
図3の(a)に示すように転写箔60と被転写基材61とを密着させ、図中の破線間の領域に熱圧15を加える。その後、基材50を転写箔60から剥離することによって、図3の(b)に示すように熱圧15が加えられた転写箔60のみがドット70として被転写基材61上に転写される。このとき、ドット70は基材50と剥離層51間で剥離され、被転写基材61と接着層54を介して接着される。
このように熱圧15を加えた転写箔60の箇所のみが被転写基材61に転写されるため、被転写基材61上の所望の位置にドット70を設けることができる。
図3において、ドット70を被転写基材61に転写することによって画像形成体62を構成した。しかしながら、被転写基材61を中間転写媒体とし、更に他の基材へ画像を転写してもよい。
次に、転写箔から複数のドットを転写する工程を図4を参照して説明する。なお、図4の(a),(b),(c)は実施形態に係る画像形成体の形成にあたっての背景説明のための転写工程を概略的に示す断面図である。
まず、前述したように転写箔60への熱圧により被転写基材61にドット70aを転写する。ドット70aは、図3(b)に示すドット70と同様な層構成を有するが、ここでは簡略化して図示する。このような層構成を有するドット70aは、接着層54(図示せず)を介して被転写基材61と接着され、かつ最表面に剥離層51(図示せず)が存在する。つづいて、ドット70aを含む被転写基材61に転写箔60を接触させ、ドット70aに対応する転写箔60の箇所に熱圧15を加える(図4の(a)図示)。図4の(a)では、被転写基材61と転写箔60とが離れて描かれているが、転写時にはそれら部材は互に密着される。
このような図4の(a)に示す転写箔60の転写により、図4の(b)に示すようにドット70bが被転写基材50のドット70a上に転写される場合、または図4の(c)に示すようにドットが被転写基材50のドット70a上に転写されない場合、が起こる。図4の(b)、図4の(c)のいずれの状態となるかは、転写箔の各層を構成している材料および膜厚、または転写時に加える熱および圧力に依存する。
一般的に、サーマルヘッドによる熱転写方式で印字を行う場合、より高品質な画像を印字するために、印字時の熱量や圧力をドット毎に制御することにより、各ドットの径を可変して階調表現を可能にしている。ドットの有無のみの二値表現で画像を印字することも可能であるが、ドット径を制御して印字する場合と比較すると、画像の品質は劣る。すなわち、より高品位な画像を表現可能とするためには、ドット径を制御して転写箔の転写を行えることが望ましい。
転写箔60の材料および厚さの条件を最適化するか、またはある一定の熱圧を加えた場合には、図4の(b)に示すようにドット70bがドット70a上に転写される。しかしながら、前記したようにより高品位な画像の表現を可能にするには、ドット径を制御して転写することが望ましい。換言すれば、より高品位な画像の表現を可能にするにはドット径を制御する必要があるが、このとき、印加する熱圧は一定とはならない。このため、例え転写箔60の材料および厚さ条件を最適化したとしても、ドット径を制御して転写を行うことは困難になる。この理由は、ドット70bをドット70a上に転写するとき、ドット70bが接触するドット70aの最表面には剥離層が存在しているからである。すなわち、剥離層は他の層構成に対して剥離し易く、他の層構成と接着し難くするよう設計されている。
また、図4の(a)に示すドット70aの表面は曲面形状として示しているが、実際には転写時に印加した熱圧のムラ、剥離時に破断した剥離層等により表面には細かな凹凸が存在する。その結果、ドット70aの最表面が剥離層であることに加え、更にその表面に凹凸を有するため、ドット70a上にドット70bを転写することが困難になる。
径の小さなドットを印字する場合には、印加する熱量および圧力を小さくしなければならない。このため、例えドット70aと接触する転写箔60の材料や膜厚の条件を最適化したとしても、印加する熱量および圧力が小さい場合、転写箔60はドットとして被転写基材61のドット70a上に転写されず、剥離すべき基材50に接着したまま残ってしまう。
次に、本発明の実施形態に係る画像形成体において、転写箔から画像構成要素の画像を微小面積のドットとして複数転写する工程を図5の(a),(b)を参照して説明する。
被転写基材61に転写箔60への熱圧によりドット70aを転写する。ドット70aは、図3(b)に示すドット70と同様な層構成を有するが、ここでは簡略化して図示する。このような層構成を有するドット70aは、接着層54(図示せず)を介して被転写基材61と接着され、かつ最表面に剥離層51(図示せず)が存在する。つづいて、ドット70aを含む被転写基材61に転写箔60を接触させ、被転写基材61の領域およびこれに隣接するドット70aの一部に対応する転写箔60の箇所に熱圧15を加える(図5の(a)図示)。図5の(a)では、被転写基材61と転写箔60とが離れて描かれているが、転写時にはそれら部材は互に密着される。
このような図5の(a)に示す転写箔60の転写により、図5の(b)に示すようにドット70bが被転写基材50表面の領域およびこれに隣接するドット70a上の一部に跨って転写される。
前述したようにドット70aの最表面は、細かな凹凸のある剥離層が存在するため、ドット70a上にドット70bを転写することは困難である。しかし、実際にはドット70aと接するドット70bの面には接着層を有するため、ドット70aとドット70b間での接着がなされるときもある。ただし、前述した図4の(c)に示すように転写箔60に熱圧15を加えてドット70a上に転写する際、転写箔60が基材50から剥離しないことが生じ得るため、ドット70bがドット70a上に転写される場合と転写されない場合の両方が起こり得る。
実施形態に係る画像形成体では、図5の(b)に示すようにドット70bをドット70aと被転写基材61表面の両方に跨るように転写することによって、ドット70bを剥離層が存在しない被転写基材61表面上に強固に接着できるため、ドット70bを被転写基材61に転写することが可能となる。
仮にドット70bとドット70a間の接着力が弱いとしても、ドット70bと被転写基材61との接着が強固であるため、その接着箇所を基点としてドット70bを良好な接着力で被転写基材61に転写することが可能となる。つまり、ドット70bはドット70aの一部に重なった状態で被転写基材61に良好に接着して転写することが可能になる。
ドット70bをドット70aの一部に重なった状態で被転写基材61にすることにより、例えば本来ドットの一辺の長さが0.084mm角の300dpiでの解像度になるところを、擬似的に0.084mm×0.042mmサイズまたは0.042mm×0.042mmサイズ、つまり600dpi相当の高解像度の画像を得ることができる。
したがって、実施形態によればサーマルヘッド等による熱転写方式を用いて転写箔から複数のドットを転写する場合、隣接するドットを部分的に重ねることができるため、ドット径が制御されたドットを精度良く転写することが可能になり、より高解像度、より高品質な画像形成体を得ることができる。
実施形態おいてドットを転写して画像形成を行う被転写基材を第2基材として用いた。第2基材は、被転写基材の他に、ポリエチレンテレフタレートのような樹脂のフィルム上に剥離層および受像層をこの順序で形成した積層膜を用いることができる。
剥離層の材料は、前述した転写箔の剥離層と同様な材料を用いることができる。受像層の材料は、例えばプロプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタラート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂等を挙げることができる。
このような積層膜の受像層に前述した手法で複数のドット(画素)を形成し、必要に応じてインクリボンの転写を施すことにより中間転写媒体が作製される。中間転写媒体は、その印字情報を被転写用の支持体である紙面上に転写することにより画像形成が行うことができる。
次に、ドットを転写する転写箔の光特性について説明する。
転写箔が遮光性である場合、ドット同士が重なるように転写すると、重ねられた下層となるドット部分での画像観察に支障をきたす。
実施形態において、転写箔は光透過性である。このため、ドット同士が重なっていても、下層となるドット部分も画素として機能させることが可能になる。その結果、実施形態によれば前述した図5の(b)に示すように下層のドット70aに上層のドット70bを一部重ねて被転写基材61に配置することができる。このような光透過性を有する転写箔を用いることによって、より高解像度の画像を提供することが可能となる。
同一の層構成のドットが重なっている場合、下層のドットは上層のドットと比較して、透過率の自乗の明るさとなる。しかし、人間が感じる感覚は変化量に対してその対数となる。例えば、透過率が70%の場合、下層のドットの輝度は上層のドットの輝度の49%となる。この場合、実際に人間が感じる感覚はその対数となるので、一般的に輝度値が半分程度であれば、それほど暗くなったようには感じない。したがって、転写層が70%以上の可視光の透過率を有すれば、ドットが重なった領域でも下層のドットからの射出光を問題なく観察することが可能となる。
実施形態における転写箔が光透過性であるため、ドット間の間隔をより小さくして解像度を高くすることが可能になる。すなわち、解像度を最も高くするにはドットの配置をドットオンドット方式とすることが考えられる。しかしながら、ドットオンドット方式の場合、後から印字するドットが被転写基材と接しないことがあるため、実施形態のように転写箔の転写性の観点からドットオンドットは好ましくない。
実施形態によれば、前、後に転写するドットの中心位置を互いにずらすことによって、より明るく、より色再現性の高い高品質な画像形成体を提供することが可能となる。
ドットは、画像の画素に相当し、画像は画像データとして入力し、それをサーマルヘッド等で印字する場合、ドットは一定間隔で配置する。ドットが一定間隔で配置される場合は、画像データの情報をサーマルヘッドによって精度良く簡便に配置することが可能となる。
ところで、被転写基材にドットを一部重ねて転写する場合、重なり合うドットの中心間距離は、短いほど画像をより高解像度で表示することが可能となる。このような場合、ドットの中心間距離をより短くすると、後から重ねて転写されるドットが被転写基材と接する面積はより小さくなる。本発明者は、後から重ねて転写されるドットが被転写基材と接する面積をドット全体の面積の1/2以上にすることによって、ドットが安定して転写できることを実験で確認した。したがって、重なり合うドットの中心間距離はドットが円形の場合、その半径の最大値以上にすることによって、より高解像度で高品位な画像形成体を提供することが可能となる。
実施形態における転写箔から転写されるドットサイズは、特に限定されるものではないが、個人の顔画像などを形成する場合は、ドットの一辺の長さが0.042mm〜0.084mm(300dpi)であることが好ましい。ドットサイズがこれよりも大きくなると、顔画像として荒くなり、実際の顔写真と比較して真偽判定が困難になるおそれがある。また、ドットサイズがこれよりも小さくなると、転写箔の箔切れ性や転写時のバラつきが大きくなり、滑らかに表現することが困難になる。
実施形態に係る画像形成体において、転写箔の構造形成層に回折格子を形成することによって、転写箔から転写されるドットにより回折光として観察できる画像を表現することが可能となる。実施形態に用いる転写箔は、熱転写方式を用いて転写できるため、この転写箔と一般的なカラーリボンを併用することによって、通常のインクによる画像と回折光として観察できる画像を同一の被転写基材上に容易に作製することが可能となる。
構造形成層に良好な光学機能を持つ回折格子を形成するためには、専門的な知見・技術を必要とする。このため、転写箔の構造形成層が回折格子を備えることによって、当該転写箔の偽造または模造は困難になる。
また、構造形成層の構成、形態が異なる複数の転写箔を用いてドットを転写することによって、より多様な視覚効果を表現することが可能となる。例えば、それぞれの構造形成層での光を射出する方向が異なっていれば、観察角度によって異なる画像を表示するチェンジング効果を持った画像形成体を提供することが可能となる。この場合、少なくとも一部の構造形成層が互に異なるドットを隣接して転写することによって、前記チェンジングをより効果的に表現することが可能となる。
ドット径が小さく、構造が互に異なる2つのドットを隣接し、ある観察角度において一方のドットの光のみを観察でき、更に異なる観察角度において他方のドットの光のみを観察できるドット形態では、ドット径を目視で観察できないため、同一の箇所において異なる観察角度で異なる光を射出しているように観察することができる。したがって、構造が互に異なる構造形成層を有するドットを隣接して配置することによって、より高品位な画像形成体を提供することが可能となる。
また、隣接するドットにおいて、それらを構成する構造形成層の回折格子の空間周波数を少なくとも三種類以上にすることにより、ある一定の角度でR、G、Bの三種類の色を表現することが可能となる。すなわち、空間周波数を三種類以上にすることにより、回折光として観察できるフルカラー画像を表現することが可能で、より高品質な画像形成体を提供することが可能となる。この場合、少なくとも一部においてR、G、Bが互いに隣接するようにドットを配置することにより、フルカラー表示を画素単位で表現することが可能となる。また、この場合、表示したいフルカラーの原画像のR、G、B成分を抽出して規則的に配置すればよいため、画像処理の負荷を大きく軽減することが可能となる。
さらに、R、G、Bの他に、C、M、Y等、他の色を表示する構造があってもよい。色の種類が増えることにより、画像形成体が表示する画像の色域をより広げることが可能となる。
実施形態に係る画像形成体において、複数のドットの少なくとも一部は、構造形成層に三種類以上の空間周波数を持つ回折格子をそれぞれ形成した複数の転写箔のうちの一種の転写箔から転写されたドットが残りの二種以上の転写箔から転写された二種以上のドットと少なくとも一部重なる形態であってもよい。このようなドットから形成される画像は、特定の角度において各々赤色、緑色、青色の回折光を射出することができる。
なお、構造形成層の回折格子の空間周波数が三種類である3つの転写箔の転写によって前述した個人認証媒体の顔画像を形成する方法を簡単に説明する。例えば、パソコンのモニタ上で表示されるような、一般的な三原色RGBによるフルカラー画像のデータをコンピューターのプログラム上にインプットし、画像データをRGBに分解する。そしてそれぞれのデータをサーマルヘッド等の熱転写装置のプログラムにアウトプットし、予め用意した前記3つの転写箔(RGBに対応する三種類の転写箔)を用いてそれぞれの色に対応したデータ通りに例えば中間転写媒体の受像層上に転写する。これによりRGB色の回折光により、写真がそのまま発光したかのようなフルカラーの顔画像を中間転写媒体に転写できる。その後、この中間転写媒体の印字情報を被転写用の支持体である例えば紙面上に転写することにより、フルカラーの顔画像を紙上に表現できる。
以上、実施形態ではパスポートとしての個人認証媒体100を例示したが、上述した技術はパスポート以外の個人認証媒体にも適用することも可能である。例えば、この技術は査証およびIDカードなどの各種カードに適用することも可能である。
図6に示す個人認証媒体300には、人物像からなる印刷層21が形成されている。個人認証媒体300には、画像形成体62がさらに偽造防止用または識別用として転写され、画像形成体62の画像も人物像からなっている。図6に示す個人認証媒体300の場合、印刷層21の印刷画像と画像形成体62の画像は同一となっている。この場合、印刷層21の印刷画像と画像形成体62の画像が同一であることが本物(実物)であるとすると、仮に印刷層21の印刷画像の情報を改竄したとしても、印刷層21と画像形成体62の情報は同一でなければならないため、画像形成体62も同一の絵柄に改竄する必要があり、偽造または模造は困難となる。
また、印刷層21の印刷画像と画像形成体62の画像を見比べることで真贋判定が可能であるため、個人識別を行う審査官に対してより精度のよい認証が可能となる。また、真贋判定の方法は画像を見比べることで、比較的簡便な方法であるため、審査官に限らず、誰もが真贋判定を簡易に行うことができる。
図6に示す個人認証媒体300に含まれる画像形成体62は人物像からなる画像で構成されている。この場合、個人認証媒体の偽造または模造をより困難とすることができるが、個人認証媒体以外の情報媒体に適用することも可能である。
画像形成体を貼り付ける基材の材質は、天然の紙および合成紙などの紙でなくてもよい。例えば、画像形成体62を貼り付ける基材の材質は、ポリエチレンテレフタレート樹脂(熱可塑性PET)、ポリ塩化ビニル樹脂、熱硬化性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリメタクリル樹脂およびポリスチレン樹脂などの合成樹脂、ガラス、陶器および磁器などのセラミックス、または、単体金属および合金などの金属材料であってもよい。
実施形態では、パスポートおよびIDカードなどの個人認証媒体を例示したが、上述した技術は、個人認証媒体以外の情報媒体に適用することも可能である。即ち、上述した技術は、個人認証以外の目的で利用してもよい。
以下、本発明の実施例を説明する。この実施例では、被転写基材を中間転写媒体とした場合について説明する。
(実施例1)
<転写箔の作製>
まず、基材として厚さ25μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、このフィルム上にグラビアコーターで剥離層および構造形成層をこの順序で印刷した。オーブンでの乾燥後において、剥離層の厚さは0.6μm、構造形成層の厚さは0.7μmであった。なお、構造形成層はアクリレート/イソシアネートの二液性の熱硬化樹脂のため、1μm未満の厚さになっても問題はない。つづいて、フィルム上の構造形成層に回折格子が形成された版を用いてロールエンボス装置にて熱プレスを行って回折格子の凹凸を形成した。
次いで、構造形成層上にZnS蒸着を行って透明薄膜層を堆積した。透明薄膜層の厚さは80nmであった。つづいて、透明薄膜層上に厚さ0.6μmの接着層の印刷を行ってフィルム上に剥離層、構造形成層、透明薄膜層および接着層をこの順序で積層した。
次いで、前記積層フィルムを転写リボンサイズの幅にスリットして小分けし、それぞれを繋ぎ合わせて転写箔を作製した。
また、転写箔とは別に公知のイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのインクリボンを用意した。
<中間転写媒体の作製>
基材として厚さ19μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、このフィルム上にグラビアコーターで剥離層および受像層をこの順序で印刷した。オーブンでの乾燥後において、剥離層の厚さは1.0μm、受像層の厚さは4.0μmであった。剥離層としては、三菱レーヨン製のアクリル系樹脂を用いた。受像層としては、三菱化学製のエポキシ樹脂を用いた。
次いで、サーマルヘッドを用いて受像層上の狙った位置に予め作製したリボン状の転写箔を転写し、顔画像を表現した。転写箔には、空間周波数が1150本/mm、1310本/mm、1550本/mmの回折格子が構造形成層にそれぞれ形成された三種類の箔を用いた。
顔画像の情報は、予め被写体となる人物の顔写真を撮影し、撮影写真から各回折格子セルが転写される位置をコンピューター上のプログラムで設定した。前記顔画像の表現は、このプログラムに基づいてサーマルヘッドの制御部にアウトプットすることにより行った。
また、サーマルヘッドによる前記顔画像の転写は、転写箔からドットを前記受像層および隣接するドットに一部重なるように転写した。このとき、ドット径の最大値が約0.084μm(300dpi相当)、ドットの中心位置の間隔が0.042μm(600dpi相当)で印字を行った。
次いで、サーマルヘッドを用いて前記受像層上に予め用意したインクリボンを転写し、顔写真および文字情報を印字して中間転写媒体を作製した。
得られた中間転写媒体の印字情報を被転写用の支持体である紙面上に転写することにより個人認証媒体を得た。
(参照例1)
実施例1と同様にサーマルヘッドを用いて支持体である紙上に転写箔をドットオンドット方式にて印字した。転写箔には、実施例1と同様に空間周波数が1150本/mm、1310本/mm、1550本/mmの回折格子が構造形成層にそれぞれ形成された三種類の箔を用いた。このとき、ドット径の最大値が約0.084μm(300dpi相当)、ドットの中心位置の間隔が0.084μm(300dpi相当)での印字と、ドット径の最大値が約0.042μm(600dpi相当)、ドットの中心位置の間隔が0.042μm(600dpi相当)での印字とを行った。
空間周波数の異なる三種類のドットを用いてフルカラーを表示するためには、3つのドットで1画素を表現している。ドット径の最大値が約0.084μm(300dpi相当)、ドットの中心位置の間隔が0.084μm(300dpi相当)での印字の場合、情報媒体から30cmの距離からの観察でドットが視認できてしまうため、高解像度の画像ができていないことがわかった。
一方、参照例1のドットオンドット方式の場合、3つのドットで1画素を表現するのは同様であるが、3つのドットが同一箇所に印字されるため、その面積はドット1つ分となる。ドット径の最大値が約0.042μm(600dpi相当)、ドットの中心位置の間隔が0.042μm(600dpi相当)での印字の場合、情報媒体から30cmの距離からの観察でドットが視認できることなく、高解像度の画像を作製できていることがわかった。しかしながら、径の小さなドットを重ねて転写する精度が低いために、画像の色再現性が低下することがわかった。
これに対し、実施例1に係る画像(ドット径の最大値が約0.084μm(300dpi相当)、ドットの中心位置の間隔が0.042μm(600dpi相当))が転写された個人認証媒体を観察した結果、高解像度のフルカラー画像が色再現性よく作製できていることがわかった。個人認証媒体から30cmの距離からの観察において、ドットを視認できることはなかった。
以上、本発明に係る個人認証媒体を高解像度の画像が色再現性良く作製できていることがわかった。
また、本発明に係る画像形成体は、偽造や改竄あるいは変造に対する予防性能や、万一それらの不正がなされた場合であっても被疑不正品を観察等すると容易に発見できるような視認性に優れた発見容易性能を備える高セキュリティ性を兼ね備え、かつその画像形成体を用いることにより高セキュリティ性を備えた個人認証媒体を提供できることがわかった。