JP2013044022A - 溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板である。鋼板は、C:0.02〜0.10%、Si:0.005〜0.5%、Mn:1.4〜2.5%、P:0.025%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.001〜0.2%、N:0.008%以下およびTi:0.15%以下を含有し、さらにCa:0.01%以下、Mg:0.01%以下およびREM:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有するとともに、下記式(1)〜(3)を満足する化学組成を有するとともに、面積%で、フェライト:50〜94%、ベイナイト:5〜49%ならびにマルテンサイトおよび残留オーステナイトの合計:1〜20%を含有する鋼組織を有する。溶融亜鉛めっき鋼板は、全伸び(El)と穴拡げ率(λ)との積(El×λ値):1500%2以上、降伏比(YR):75%以上、引張強度(TS):490MPa以上の機械特性を有し、溶接電極先端径:6mm、加圧力:4410kN、溶接電流:9kAおよび通電時間:18サイクルの直流式抵抗スポット溶接条件で作成した抵抗スポット溶接継手の十字引張試験における十字引張力(CTS)とせん断試験におけるせん断力(TSS)との比の値である延性比(CTS/TSS)が0.55以上、抵抗スポット溶接継手の溶金部と母材とのビッカース硬さの比の値が2.0以下である抵抗スポット溶接性を有する。
【選択図】なし
Description
例えば、特許文献1には、円相当半径が0.1μm以上のセメンタイトの組織率を0.1%以下と限定した、穴拡げ性に優れるとされる高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。
さらに、特許文献5には、C,Mn,Si,Alの添加量を制御し固有抵抗が28μΩ・cm以上53μΩ・cm以下とした、スポット溶接性と成形性に優れるとされる高強度溶融亜鉛めっき鋼板が提案されている。
特許文献1において提案されている技術は、Cを炭化物として固定する元素がなく、熱処理条件でセメンタイトの生成を抑制する。このように組織変化を利用するために組織のバラツキが大きく、優れた性能を安定して得ることは難しい。
ここに、本発明の目的は、成形性とスポット溶接性に優れた高強度溶融亜鉛めっき鋼板を低コストで安定して提供することである。
(1)鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であって、
前記鋼板は、C:0.02%以上0.10%以下、Si:0.005%以上0.5%以下、Mn:1.4%以上2.5%以下、P:0.025%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.001%以上0.2%以下、N:0.008%以下およびTi:0.15%以下を含有し、さらにCa:0.01%以下、Mg:0.01%以下およびREM:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有するとともに、下記式(1)〜(3)を満足する化学組成を有するとともに、面積%で、フェライト:50%以上94%以下、ベイナイト:5%以上49%以下ならびにマルテンサイトおよび残留オーステナイトの合計:1%以上20%以下を含有する鋼組織を有し、
前記溶融亜鉛めっき鋼板は、全伸び(El)と穴拡げ率(λ)との積(El×λ値)が1500%2以上、降伏比(YR)が75%以上、引張強度(TS)が490MPa以上である機械特性を有し、溶接電極先端径:6mm、加圧力:4410kN、溶接電流:9kAおよび通電時間:18サイクルの直流式抵抗スポット溶接条件で作成した抵抗スポット溶接継手の十字引張試験における十字引張力(CTS)とせん断試験におけるせん断力(TSS)との比の値である延性比(CTS/TSS)が0.55以上、抵抗スポット溶接継手の溶金部と母材とのビッカース硬さの比の値が2.0以下である抵抗スポット溶接性を有することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
Ti*=max[Ti−(48/14)×N−(48/32)×S,0] (2)
2/3×C+(1/150)×Mn+P+2×S<0.15 (3)
ここで、式(1)〜(3)における各元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示し、式(2)におけるmax[ ]は[ ]内の引数のうち最大の値を返す関数である。
(A)(1)項から(5)項までのいずれか1項に記載の化学組成を有するスラブを1100℃以上として粗熱間圧延を施して粗バーとし、前記粗バーを1000℃以上に加熱した後にAr3点以上の温度域で圧延を完了する仕上熱間圧延を施して熱延鋼板とし、600℃以上700℃以下の温度域まで35℃/秒以上の平均冷却速度で1次冷却し、次いで、400℃以上650℃以下の温度域まで5℃/秒以上40℃/秒以下の平均冷却速度で5秒間以上2次冷却し、その後巻取る熱間圧延工程;
(B)前記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に酸洗処理を施す酸洗工程;
(C)前記酸洗工程により得られた熱延鋼板を下記式(4)を満足する保持温度に保持する均熱処理工程;および
(D)前記均熱処理工程により得られた熱延鋼板に溶融めっきを施す溶融めっき工程。
900―T2×0.2≦T≦1000 (4)
ここで、式中のT2は熱間圧延工程における2次冷却の終了温度(℃)を、Tは均熱処理工程における保持温度(℃)を、それぞれ示す。
(a)(1)項から(5)項までのいずれか1項に記載の化学組成を有するスラブを1100℃以上として粗熱間圧延を施して粗バーとし、前記粗バーを1000℃以上に加熱した後にAr3点以上の温度域で圧延を完了する仕上熱間圧延を施して熱延鋼板とし、600℃以上700℃以下の温度域まで35℃/秒以上の平均冷却速度で1次冷却し、次いで、400℃以上650℃以下の温度域まで5℃/秒以上40℃/秒以下の平均冷却速度で5秒間以上2次冷却し、その後巻取る熱間圧延工程;
(b)前記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に酸洗処理を施す酸洗工程;
(c)前記酸洗工程により得られた熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;
(d)前記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板を下記式(4)を満足する保持温度に保持する均熱処理工程;および
(e)前記均熱処理工程により得られた冷延鋼板に溶融めっきを施す溶融めっき工程。
ここで、式中のT2は熱間圧延工程における2次冷却の終了温度(℃)を、Tは均熱処理工程における保持温度(℃)を、それぞれ示す。
まず鋼板の化学組成の限定理由について説明する。
(1)C:0.02%以上0.10%以下
Cは、固溶強化や変態強化、また、Ti,Nb等と結合し炭化物を形成することで析出強化にも寄与するので、鋼の強化に有効な元素である。本発明では、変態強化と析出強化とを活用することにより鋼を強化するので、十分な強化能を得るためにC含有量を0.02%以上とする。しかし、C含有量が0.10%を超えると、スポット溶接における十字引張強度の低下が顕著となる場合がある。したがって、C含有量は0.10%以下とする。
Siは、延性の低下を抑制しつつ強度を高めることを可能にする作用を有するので、鋼の強化および成形性の向上に有効な元素である。Si含有量が0.005%未満では上記作用による効果を十分に得られない場合がある。したがって、Si含有量は0.005%以上とする。好ましくは、0.02%以上である。一方、Si含有量が0.5%超では、めっき性が著しく阻害される場合がある。したがって、Si含有量は0.5%以下とする。
Mnは、鋼の強化に有効な元素である。さらに、鋼板の成形性を低下させるパーライトの生成を抑制するとともに、結晶粒を微細にして鋼板の成形性を向上させる作用を有する。Mn含有量が1.4%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、Mn含有量は1.4%以上とする。一方、Mn含有量が2.5%超では、スポット溶接部の靭性の低下により延性比の低下が著しくなる場合がある。また、めっきのぬれ性の劣化が著しくなる場合がある。したがって、Mn含有量は2.5%以下とする。
Pは、一般的には不純物として含有される元素であるが、固溶強化により鋼板を高強度化する作用を有するので積極的に含有させてもよい。しかしながら、P含有量が0.025%超では、スポット溶接部の靭性の劣化が著しくなる場合がある。したがって、P含有量は0.025%以下とする。
Sは、不純物として含有される元素である。S含有量が0.010%超では、スポット溶接部の靭性の劣化が著しくなる場合がある。また、MnSを形成して成形性を著しく劣化させる場合がある。したがって、S含有量は0.010%以下とする。好ましくは0.008%以下、さらに好ましくは0.005%以下である。
Alは、溶鋼を脱酸して鋼を健全化する作用を有する。sol.Al含有量が0.001%未満では脱酸が十分でない。したがって、sol.Al含有量は0.001%以上とする。一方、sol.Al含有量が0.2%超では、上記作用による効果は飽和してコスト的に不利となる。したがって、sol.Al含有量は0.2%以下とする。
Nは、不純物として含有される元素であり、その含有量が0.008%を超えると、鋳造時にスラブ表面に割れが発生したり、鋼板の延性の低下が著しくなったりする場合がある。したがって、N含有量は0.008%以下とする。
Tiは、鋼中のCやNと結合して析出物を形成することにより、鋼板の強度を高めるとともに、鋼板の成形性を低下させる固溶Cや固溶Nを低減させる作用を有する。また、固溶Cを低減することにより、スポット溶接におけるナゲット部の硬度上昇が抑制されるので、延性比を高める作用をも有する。さらにまた、鋼板の成形性を低下させるパーライトやセメンタイトの生成を抑制するとともに、高い強度と良好な穴拡げ性とを両立するうえで有効な相であるベイニティックフェライトの確保を容易にする作用も有する。このように、Tiは鋼板の成形性を高めるとともに良好なスポット溶接性を確保するのに有効な元素である。したがって、Tiを含有させる。しかしながら、0.15%を超えて含有させても、上記作用による効果は飽和してコスト的に不利となる。したがって、Tiの含有量は0.15%以下とする。上記作用による効果をより確実に得るにはTiの含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
Ca、MgおよびREMは、いずれも、硫化物や酸化物等の介在物を球状化して、鋼板の成形性を向上させる作用を有する。したがって、上記元素の1種または2種以上を含有させる。しかしながら、上記範囲を超えて含有させても、上記作用による効果は飽和してしまい、コスト的に不利となる。したがって、各元素の含有量は上記範囲とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、上記元素のいずれかの含有量を0.00010%以上とすることが好ましい。
Biは、任意元素であり、その含有によって凝固組織が微細化し、Mn等を多量に含有させても凝固偏析が抑制されて鋼組織が均一となり、成形性の劣化を抑制する作用を有する。さらに上記効果によって微細析出物の微細化を促進し、よりフェライト相を強化する作用を有する析出物の生成を促進するので、高い降伏比と良好な成形性とを両立させることを目的とする本発明において有効な元素である。したがって、より良好な加工性を確保する観点からBiを含有させることが好ましい。しかしながら、Bi含有量が0.005%超であると、上記作用による効果が飽和してコスト的に不利となる。したがって、Bi含有量は0.005%以下とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Bi含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。
これらの元素は、任意元素であり、鋼板の強度を高める作用を有するので含有させてもよい。各元素の含有量が上記範囲を超えると高強度化の効果が飽和してコストが嵩む。このため各元素の含有量を前記範囲とする。高強度化の効果をより確実に得るには、Nb:0.001%以上、Cr:0.1%以上、V:0.01%以上、Mo:0.05%以上、Cu:0.1%以上、Ni:0.1%以上およびB:0.0002%以上のいずれかを含有させることが好ましい。
本発明では、C、Ti、N、SおよびNbの含有量を、下記式(1)および(2)を満足するものとする。
Ti*=max[Ti−(48/14)×N−(48/32)×S,0] (2)
ここで、式(1)および(2)における各元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示し、式(2)におけるmax[ ]は[ ]内の引数のうち最大の値を返す関数である。
本発明では、C、Mn、PおよびSの含有量を、下記式(3)を満足するものとする。
2/3×C+(1/150)×Mn+P+2×S<0.15 (3)
ここで、式(3)における各元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
抵抗スポット溶接継手の十字引張試験における十字引張力(CTS)を高めるには、ナゲット内において割れの起点となるC、Mn、PおよびSの偏析を抑制することが重要である。このため、溶接母材である鋼板の化学組成について上記元素の含有量を制限すべく、化学組成を上記式(3)を満足するものとする。下記式(4)を満足するものとすることが好ましく、下記式(5)を満足するものとすることがさらに好ましい。
2/3×C+(1/150)×Mn+P+2×S≦0.10 (5)
次に鋼板の鋼組織の限定理由について説明する。なお、鋼組織に関する%は特に断らない限り面積%を意味する。
フェライトは、軟質で加工性に富む相であり、良好な成形性を確保するのに有効な相である。フェライト面積率が50%未満では、延性の低下が著しくなる場合がある。したがって、フェライト面積率は50%以上とする。フェライト面積率の上限は、後述するベイナイトと残留オーステナイトの面積率を確保するために94%以下とする。なお、本発明におけるフェライトにはベイニティックフェライトが含まれる。ベイニティックフェライトはポリゴナルフェライトに比して硬質であるため、490MPa以上の引張強度を確保する観点からはその面積率が高いほど好ましい。
ベイナイトは、穴拡げ性を低下を抑制しつつ強度を高めるのに有効な組織である。ベイナイト面積率が5%未満では490MPa以上の引張強度を確保することが困難な場合がある。したがって、ベイナイト面積率は5%以上とする。ベイナイト面積率の上限は、上述したフェライトと後述する残留オーステナイトおよびマルテンサイトの合計面積率を確保するために49%以下とする。
残留オーステナイトおよびマルテンサイトは、良好な延性を確保するのに有効な相である。したがって、本発明が目的とする良好な延性を確保するために、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの合計面積率を1%以上とする。一方、残留オーステナイトが加工歪により変態して生成されるマルテンサイトや当初より存在するマルテンサイトは硬質であるため、その面積率が過大であると成形性の劣化が顕著となる。このため、残留オーステナイトおよびマルテンサイトの合計面積率は20%以下とする。
TiおよびNbをフェライト中に析出させることにより、フェライトが強化され、他の相および組織との硬度差が小さくなり、穴拡げ性を高めることができる。フェライトを効果的に強化し得る析出物の粒径が1nm以上20nm以下であることから、本発明においては、TiまたはNbを含有する粒径1nm以上20nm以下の炭化物、窒化物およびそれらの複合物のフェライト中における数密度を100個/μm2以上とすることが好ましい。上記数密度の上限は特に規定しないが、フェライトが過度に硬質化すると伸びフランジ性の劣化を招く場合があるので10000個/μm2以下とすることが好ましい。
次に、溶融亜鉛めっき鋼板の機械特性の限定理由について説明する。
本発明では、良好な成形性を得ることを目的とするので、全伸び(El)と穴拡げ率(λ)との積El×λ値を1500%2以上とする。
降伏比や引張強度が低いと、耐衝突特性を要求される部品や大入力時に塑性変形することを避ける必要がある部品といった用途に適用することが困難となる。そこで、本発明においては、降伏比(YR)を75%以上とし、引張強度(TS)を490MPa以上とする。
次に、溶融亜鉛めっき鋼板の溶接性の限定理由について説明する。
スポット溶接継手の信頼性を示す指標として、抵抗スポット溶接継手の十字引張試験における十字引張力(CTS)とせん断試験におけるせん断力(TSS)とが挙げられる。通常、十字引張力(CTS)はせん断力(TSS)に比して小さくなるので、十字引張力(CTS)とせん断力(TSS)との比の値である延性比(CTS/TSS)が高いほどスポット溶接性に優れるといえる。そこで、本発明においては延性比(CTS/TSS)を0.55以上とする。
抵抗スポット溶接継手の溶金部と母材との硬度比が大きいと、延性比(CTS/TSS)を0.55以上とすることが困難となる。したがって、抵抗スポット溶接継手の溶金部と母材とのビッカース硬さの比の値は小さいほど好ましく、本発明においては2.0以下とする。
次に、本発明にかかる溶融亜鉛めっき鋼板の好適な製造方法について説明する。
上記化学組成を有するスラブを1100℃以上として粗熱間圧延を施して粗バーとし、前記粗バーを1000℃以上に加熱した後にAr3点以上の温度域で圧延を完了する仕上熱間圧延を施して熱延鋼板とし、600℃以上700℃以下の温度域まで35℃/秒以上の平均冷却速度で冷却し、次いで、400℃以上650℃以下の温度域まで5℃/秒以上40℃/秒以下の平均冷却速度で冷却して巻取る。
仕上熱間圧延完了後は、フェライト変態が活発化する温度域まで急冷して保持することによりフェライト面積率を高める。このため、600℃以上700℃以下の温度域まで35℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する1次冷却を行う。1次冷却の平均冷却速度が35℃/秒未満では、設備制約上、フェライト変態に要する時間を十分に確保することが困難となり、所定のフェライト面積率を確保することが困難となる場合がある。
上記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に酸洗処理を施す。
酸洗は常法に従えばよい。また、酸洗前または酸洗後において、平坦矯正やスケール剥離促進のためにスキンパス圧延を施してもよく、本発明の効果に影響することはない。スキンパス圧延を施す場合の伸び率は特に規定する必要はなく、例えば0.3%以上3.0%未満とすればよい。
上記酸洗工程により得られた熱延鋼板には冷間圧延を施して冷延鋼板としてもよい。冷間圧延は常法に従えばよい。
上記酸洗工程により得られた熱延鋼板、または、上記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板に、下記式(4)を満足する保持温度に保持する均熱処理を施した後、溶融亜鉛めっき処理を施す。上記均熱処理と融亜鉛めっき処理とは、連続溶融亜鉛めっき設備で連続して行うことが生産性の観点から好ましい。
ここで、式中のT2は熱間圧延工程における2次冷却の終了温度(℃)を、Tは均熱処理工程における保持温度(℃)を、それぞれ示す。
表1に示す1〜12の化学成分を有する鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造試験機にて連続鋳造を実施し、幅1400mmで厚み250mmのスラブとした。得られたスラブを表2に示す条件にて熱間圧延した。粗バーの加熱温度は1030℃とした。得られた熱延鋼板に酸洗を施した。一部の鋼板については、45%の圧下率で、冷間圧延を行った。得られた熱延鋼板ならびに冷延鋼板に対して、続いて表3に示した各条件で合金化溶融亜鉛めっき処理を施した。一部の鋼板においては、めっき後、510℃で合金化処理も行った。
鋼板の圧延方向に平行な断面について、光学顕微鏡または電子顕微鏡を用いて、残留オーステナイト以外の相および組織の面積率を画像処理により求めた。残留オーステナイトの面積率は、各鋼板に対して、板厚の25%を減厚するための化学研磨を施し、化学研磨後の表面をX線回折により、残留オーステナイト量を算出して求めた。
各種鋼板に対して圧延直角方向からJIS5号引張試験片を採取し、降伏強度(YS)、引張強度(TS)、全伸び(El)を調査した。
成形性は、引張試験よって求めた降伏比(YR)と全伸び(El)、および、穴拡げ試験によって求めた穴拡げ率(λ)とを用いて評価した。穴拡げ試験は日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001に準拠して行った。降伏比(YR)が75%以上かつ全伸び(El)との積El×λ値が1500%2以上である場合に、成形性が良好であると判定した。
スポット溶接性は、溶接電極の先端径を6mm、直流電源、加圧力450kg、電流を9kA、通電時間を18サイクルの条件で行った。スポット溶接後、JIS Z 3137の十字引張試験による十字引張力(CTS)とJIS Z 3136のせん断試験によるせん断力(TSS)とを測定した。
抵抗スポット溶接継手の溶金部と母材とのビッカース硬さはJIS Z 2244に記載されるビッカース硬さ試験により調査した。試験力はHv0.5とした。圧延方向に平行な断面について鋼板表面から板厚の1/4深さ位置における硬度を測定した。溶金部の硬度はスポット溶接後のナゲット径中央部から左右に0.2mmピッチで5点、母材の硬度は溶接前の鋼板を0.2mmピッチで10点測定し、それぞれの平均値を求め、溶金部の平均硬度を母材の平均硬度で除した値を溶金部と母材とのビッカース硬さの比とした。
本発明である供試材No.1〜19は、全伸び(El)と穴拡げ率(λ)との積(El×λ値)が1500%2以上、降伏比(YR)が75%以上、引張強度(TS)が490MPa以上である機械特性を有し、高い強度と良好な成形性を有している。また、抵抗スポット溶接継手の十字引張試験における十字引張力(CTS)とせん断試験におけるせん断力(TSS)との比の値である延性比(CTS/TSS)が0.55以上、抵抗スポット溶接継手の溶金部と母材とのビッカース硬さの比の値が2.0以下であり、良好な溶接性をも有している。
供試材No.20は、粗バー加熱が実施されず、本発明外であった。析出物が微細に生成せず、その密度は100個/μm2以下となり、目的とする引張強度が得られず、また成型性が不十分であった。
供試材No.23は1次冷却速度が35℃/秒を満たさず、本発明外であった。1次冷却速度が遅いため、フェライト変態温度域の時間が十分でなく、フェライト主体の組織とならず、成型性が不十分であった。
供試材No.29は、式(1)を満たさず本発明外であった。固溶C量が高いため成形性が十分ではなく、さらに良好な溶接性が得られなかった。
Claims (8)
- 鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を有する溶融亜鉛めっき鋼板であって、
前記鋼板は、質量%で、C:0.02%以上0.10%以下、Si:0.005%以上0.5%以下、Mn:1.4%以上2.5%以下、P:0.025%以下、S:0.010%以下、sol.Al:0.001%以上0.2%以下、N:0.008%以下およびTi:0.15%以下を含有し、さらにCa:0.01%以下、Mg:0.01%以下およびREM:0.01%以下からなる群から選択された1種または2種以上を含有するとともに、下記式(1)〜(3)を満足する化学組成を有するとともに、面積%で、フェライト:50%以上94%以下、ベイナイト:5%以上49%以下ならびにマルテンサイトおよび残留オーステナイトの合計:1%以上20%以下を含有する鋼組織を有し、
前記溶融亜鉛めっき鋼板は、全伸び(El)と穴拡げ率(λ)との積(El×λ値)が1500%2以上、降伏比(YR)が75%以上、引張強度(TS)が490MPa以上である機械特性を有し、溶接電極先端径:6mm、加圧力:4410kN、溶接電流:9kAおよび通電時間:18サイクルの直流式抵抗スポット溶接条件で作成した抵抗スポット溶接継手の十字引張試験における十字引張力(CTS)とせん断試験におけるせん断力(TSS)との比の値である延性比(CTS/TSS)が0.55以上、抵抗スポット溶接継手の溶金部と母材とのビッカース硬さの比の値が2.0以下である抵抗スポット溶接性を有することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板。
C−(12/48)×Ti*−(12/93)×Nb≦0.090 (1)
Ti*=max[Ti−(48/14)×N−(48/32)×S,0] (2)
2/3×C+(1/150)×Mn+P+2×S<0.15 (3)
ここで、式(1)〜(3)における各元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示し、式(2)におけるmax[ ]は[ ]内の引数のうち最大の値を返す関数である。 - 前記化学組成が、質量%で、Bi:0.005%以下をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成が、質量%で、Nb:0.15%以下、Cr:1%以下、V:0.1%以下、Mo:0.5%以下、Cu:1%以下、Ni:1%以下およびB:0.005%以下からなる群から選択された1種または2種以上をさらに含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記フェライトがTiまたはNbを含有する粒径1nm以上20nm以下の炭化物、窒化物およびそれらの複合物を100個/μm2以上の数密度で含有することを有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記溶融亜鉛めっき層が、合金化溶融亜鉛めっき層であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の溶融亜鉛めっき鋼板。
- 下記工程(A)〜(D)を有することを特徴とする溶融めっき鋼板の製造方法:
(A)請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の化学組成を有するスラブを1100℃以上として粗熱間圧延を施して粗バーとし、前記粗バーを1000℃以上に加熱した後にAr3点以上の温度域で圧延を完了する仕上熱間圧延を施して熱延鋼板とし、600℃以上700℃以下の温度域まで35℃/秒以上の平均冷却速度で1次冷却し、次いで、400℃以上650℃以下の温度域まで5℃/秒以上40℃/秒以下の平均冷却速度で5秒間以上2次冷却し、その後巻取る熱間圧延工程;
(B)前記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に酸洗処理を施す酸洗工程;
(C)前記酸洗工程により得られた熱延鋼板を下記式(4)を満足する保持温度に保持する均熱処理工程;および
(D)前記均熱処理工程により得られた熱延鋼板に溶融めっきを施す溶融めっき工程。
900―T2×0.2≦T≦1000 (4)
ここで、式中のT2は熱間圧延工程における2次冷却の終了温度(℃)を、Tは均熱処理工程における保持温度(℃)を、それぞれ示す。 - 下記工程(a)〜(e)を有することを特徴とする溶融めっき鋼板の製造方法:
(a)請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の化学組成を有するスラブを1100℃以上として粗熱間圧延を施して粗バーとし、前記粗バーを1000℃以上に加熱した後にAr3点以上の温度域で圧延を完了する仕上熱間圧延を施して熱延鋼板とし、600℃以上700℃以下の温度域まで35℃/秒以上の平均冷却速度で1次冷却し、次いで、400℃以上650℃以下の温度域まで5℃/秒以上40℃/秒以下の平均冷却速度で5秒間以上2次冷却し、その後巻取る熱間圧延工程;
(b)前記熱間圧延工程により得られた熱延鋼板に酸洗処理を施す酸洗工程;
(c)前記酸洗工程により得られた熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;
(d)前記冷間圧延工程により得られた冷延鋼板を下記式(4)を満足する保持温度に保持する均熱処理工程;および
(e)前記均熱処理工程により得られた冷延鋼板に溶融めっきを施す溶融めっき工程。
900―T2×0.2≦T≦1000 (4)
ここで、式中のT2は熱間圧延工程における2次冷却の終了温度(℃)を、Tは均熱処理工程における保持温度(℃)を、それぞれ示す。 - 溶融亜鉛めっきを施した後に室温まで冷却する過程において、480℃以上600℃以下の温度域に保持して合金化処理を施すことを特徴とする請求項6または請求項7に記載の溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
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