図1A〜1Gの例に示すように、心臓弁16の弁輪18の歪みは、以下の段階により単純かつ速やかに補正することができる。
A. 送達器具200の円錐形ヘッドエンドバスケット220を弁内に押しつける201(図1A)ことで、歪んだ弁輪(203、図1F)を所望の構成(例えば環形205、図1G)、および弁輪の所望の最終直径209よりも大きい(例えば直径207において)サイズ(図1H)に一致させる(バスケットを含む器具を側面図に示し、弁および弁輪を断面側面図に示す)。
B. 送達器具を押し201続けて、拡張した心臓弁支持体100(所望の構成およびより大きいサイズを有し、器具のバスケット上にてその拡張構成に一時的に保たれる)を弁輪に向かって動かすことで、支持体の周辺に沿って位置する複数の(例えば図示するように8個の、またはそれより多いもしくは少ない数の)反曲したフック120を弁輪の周辺121に沿った複数の場所で弁組織内に同時に着座させる(図1B)。
C. フックを着座させた後、ヘッドエンドバスケットの先端230を内側から引っ張り204(図1C)かつ裏返して支持体を転動させ、これによりフックの先端122は回転し211、一層しっかりと弁輪組織に埋め込まれる(図1C)。
D. フックをさらに埋め込んだ後、ヘッドエンドバスケットの先端の内側213を引っ張り204続けて(図1D)器具を支持体から引き離すことで(図1E)、支持体をその最終のサイズおよび形状215に収縮させ(図1H)かつ支持体を恒久的に定位置に残して、弁輪を所望の最終の構成およびサイズに維持する。
多くの場合、手順全体を1分未満で行うことができる。弁の弁輪を所望の環形に一時的に拡張させることで、複数の把持要素を組織内に一度に押し込んで速やかに、容易に、多少なりとも自動的に支持体を取り付けることが可能になる。この例ではフックを使用するが、他の種類の把持要素も同様に使用可能である。医師は、歪んだ弁輪の周辺に沿って個々の縫合またはクリップを一度に取り付け、次にそれらを一緒に締めつけて支持された弁輪を所望の形状およびサイズに再形成しなければならないという、時間のかかる段階を回避する。したがって、医師は弁輪を明確に(または完全に)見ることができる必要すらない。取り付けた時点で、器具を取り外す際に支持体は自動的にその最終の形状およびサイズに戻る。
図2Aおよび2Dに示すように、いくつかの実施形態では、支持体は、フック120を有する環状リング本体110を含む。本体110は、(a) 弁輪にそれを取り付けた後でそれが一致する、最小直径の長期構成(図2A)から(b) 器具のヘッドエンドバスケット上にそれが保たれる際ならびに図1A、1Bおよび1Cに示す段階においてそれを取り付けている間にそれが一致する、拡張した送達構成(図2D)に拡張可能である。長期構成は通常は環状であり、特定患者の健康な弁輪の直径を有する。取り付けた際に、支持体は弁輪の健康な構成を維持し、それにより弁は適切に働く。
いくつかの例では、本体110は、送達構成および長期構成において、同一の(例えば環状の)形状を有するが異なる直径を有する。本体は、本体を長期構成に収縮するように偏向させる材料または様式で構築される。例えば、本体110の全体または一部を連続螺旋ばねなどの螺旋ばね110aとして形成することができ、螺旋ばねは反対端部で接続されて、環状本体または1つもしくは複数の相互接続螺旋ばねセグメントを形成する(図2B)。いくつかの例では、支持体本体110bは、送達構成に拡張した後に長期構成に戻る、ニチノールもしくは生体適合性エラストマー(または他の材料)などの形状記憶材料のバンドであり得る(図2C)。
フック120は、わずか3個、あるいは10個もしくは20個またはそれ以上もの数であり得るものであり、それらを必要に応じて本体に沿って等しい間隔でまたは等しくない間隔で配設することができ、これにより本体は、送達が容易かつ速やかになり、その配置が恒久的になり、弁輪の歪みを補正する上で有効になる。フックは、環状の外周に沿って構成および一緒に装着され、これにより、器具を引き離しかつバスケットを裏返した際に、それらを弁輪の周辺に沿って組織に同時に挿入し、次に固く埋め込むことができる。
いくつかの例では、例えば弁輪のセグメントが心臓の房室(AV)結節などの敏感または繊細な組織と境界を共有する場合、支持体本体の1つまたは複数の部分にはフックが取り付けられていないことがある。この組織をフックで貫通すべきではない。房室結節との干渉を回避するように構成されている支持体本体は、フックが取り付けられていないかまたはそうでなければ房室結節へのフックによる侵入を防止するように被覆もしくは保護されている区分を有する可能性がある。支持体本体が定位置に置かれる際に支持体のこの特別な区分が敏感または繊細な組織に隣接するように、支持体本体を位置決めすべきである。支持体本体を敏感な組織の近くに配置する際に操作者が2つ以上のオプションを有するように、支持体本体は、フックを欠く2つ以上の特別な区分を有し得る。いくつかの例では、支持体本体は、ある区分が完全に取り外された可能性があり、完全なリングの代わりに多少なりとも「C」文字のような形状である。これらの例のいずれかでは、先に記載の手順は、段階Aに先行するさらなる段階を有する可能性があり、この段階では、操作者は送達ヘッドを回転させることで、フックが他の組織に埋め込まれるべき瞬間に、フックを有さない区分、または支持体本体内の間隙を、敏感な組織に隣接するように位置決めする。支持体本体は、操作者が位置決めを見るために役立つ放射線不透過性マークを有し得る。
この理由で、例えば図2Eに示すように、フックの各々は2つの尖った特徴を有する。一方の尖った特徴は、送達中に弁小葉から離れた方を向く鋭い自由端122である。他方の尖った特徴は針状突起128であり、これは鋭い自由端122とフックが本体110に取り付けられ、例えば溶着または接着される反対の接続端124との間の屈曲において形成される。針状突起は、送達中に弁小葉の方を向く。したがって、針状突起は、器具が弁に向かって押しつけられる際に組織に侵入するように配設され、鋭い自由端は、器具が弁から引き離される際に組織にフックを埋め込むように配設される。
各フック120は、白金、金、パラジウム、レニウム、タンタル、タングステン、モリブデン、ニッケル、コバルト、ステンレス鋼、ニチノール、および合金、ポリマーまたは他の材料などの生体適合性材料で形成することができる。送達中に、フックの針状突起を、一時的に拡張した弁輪の外周の周りの一連の場所において組織内に一緒に(かつ多かれ少なかれ同時に)押し込む。後の段階で、鋭い自由端を、確実な(例えば恒久的な)取り付けのために小葉から多少なりとも離れた方に回転させる。
送達中にフックを回転させるために、図示するように、フック120を支持体本体110に恒久的に取り付け、支持体本体を支持体本体の中心輪状軸112の周りで転動させる123(図3)ことができる。支持体本体の転動およびフックの関連する回転を引き起こす1つの方法は、ゴム製oリングがその中心環状軸の周りで転動可能であるのとほぼ同様に、中心環状軸123に代表される軸の周りでの本体全体の回転により本体がその構成を変化させることを可能にすることである。フックの回転を引き起こすための本体の再構成は他の方法で実現することもできる。
いくつかの例では、リング(本発明者らは支持体を広くリングと呼ぶことがある)の内周縁部に軸方向の力(矢印113)を適用することで、リングは転動する傾向になり、フックは目的通り弁輪に埋め込まれる。送達器具の外周上にリングの内周を適切に装着することで、先に説明したように弁の小葉から器具を引き離して軸方向の力113を適用することができる。
弁輪への送達のために、弁支持体100を最初にその送達構成に拡張させ、器具200の送達ヘッド220上に一時的に装着する(図4A)。支持体は、器具上でのその一時的装着において十分に拡張し、円錐形ヘッドエンドバスケットに沿って先端から十分に離して装着される可能性があり、これにより、器具のヘッドエンドバスケットを弁輪に対して押しつけることで拡張支持体のサイズおよび形状にそれを拡張させる際に、弁輪は最初に環状の歪んでいない形状に到達し、その後支持体フック針状突起は組織に侵入し始める。送達器具のヘッドエンドバスケットの先細り状プロファイルは、器具が様々なサイズの支持体を収容することを可能にする。いくつかの実施形態では、異なる形状およびサイズのバスケットを異なるサイズの支持体用に使用する可能性がある。
心臓弁支持体100は、1つまたは複数の解放可能な接続246を使用して送達ヘッド220上に定位置に保たれる。接続246は、弁の小葉に向かうかまたはそれから離れる2つの反対方向248および250の各々に力を器具200から支持体100に移すように配設される。支持体を弁輪に埋め込み、器具を方向250に引っ張って支持体からそれを解放する際に、接続246にかかる力は所定閾値を超え、接続は引き離され、これにより送達プロセスの最後に器具は支持体から解放される。いくつかの例では、接続246は、引き離し可能な縫合252(図4A)、あるいはクリップもしくは接着剤、またはねじ抜きもしくは他の操作で器具から操作可能な構造などの何らかの他の引き離し構造であり得る。
いくつかの例では、接続246は、254aまたは254b(それぞれ図4Bおよび4C)として示す構成を例えば取り得る保持体を含む。図4Bに示す例では、保持要素254aは1つの剛性フィンガー256を有しており、このフィンガーは、支持体100を器具200に取り付けて心臓組織内に押しつけながら器具を方向248に移動させる際に、器具から支持体に力を移す。第2の変形可能なフィンガー258は、器具200を方向250に移動させる際には支持体100と器具との間の接続を維持する上で役立ち、埋め込まれた支持体に対する方向250の力が所定閾値を超える際には器具200から弁支持体100を解放するために変形可能である(破線)。
図4Cに示す例では、保持要素254bは、湾曲部262を有するフィンガー260を含み、湾曲部は、支持体100を受け止め、かつ器具200を方向248に移動させる際に器具200から支持体に力を移す。フィンガーは弾性的に変形可能な先端264を有しており、先端は、先細り状の本体222に向かって偏向しており、支持体100と器具200との間の接続を維持するために役立ち、また、埋め込まれた支持体に対して第2の軸方向250に器具を移動させかつ力が所定閾値を超える際には器具200から弁支持体100を解放するために変形可能である(隠線に示す)。
図5に示すように、開胸手術中に支持体の送達に使用可能な器具200の一例では、バスケット220を、その幅広い端部において、ハンドル212を操作者側端部214に有する長軸部210から扇形に開く一組の堅いワイヤまたは他の剛性突起216に接続する。したがって、突起216は、軸部210をバスケット220に接続し、引っ張り力または押しつけ力を軸部とバスケットとの間で(続いて支持体に)移転する。
図5に示すバスケットの例は先細り状の本体222を含み、本体は相互接続された支柱224の網目を有し、網目は、先細り状の半剛性ネットを一緒に形成する開口部226のアレイを規定する。この例では、バスケット(本発明者らは送達ヘッドと呼ぶこともある)220は、円形の先端228を有する。ヘッド222は、ヘッド220の縦軸234に沿って先端228から操作者までの距離に従って半径方向外向きに先細りになる。先細り状の本体222の幅広い端部232は突起216に固く取り付けられており、突起はバスケットの先細りから反対方向に先細りになる。支柱224が形成するネットは、支持体のフックの針状突起を組織に侵入させるために操作者が心臓組織に対して弁支持体を押し込むことを可能にするために十分な堅さと、操作者がハンドルを引っ張ってバスケットを裏返しかつバスケットから支持体を解放する際にヘッドエンドバスケットを裏返しにすることを可能にするために十分な柔軟性とを有するという意味で半剛性である。
いくつかの実施形態では、軸部210は、軸部210の心臓弁側端部218とハンドル212との間で延伸する管腔236を規定する。ワイヤ238は、管腔236内を前後に自由に移動するように配設される。ワイヤ238は、ハンドル212から延伸する1つの端部240と、先端228の内側に接続される反対端部242とを有する。ワイヤ238を引っ張る(矢印244)ことで、送達ヘッド220を折りたたみ(隠線)、先に言及したように先端228で出発して半径方向内向きに裏返すことができる。
図1A〜1Eのより詳細な考察に戻ると、操作者は、ヘッドバスケット220の先細り状の端部230を弁16(例えば三尖弁)内に押しつけて弁小葉14を広げることで、支持体の送達を始める。先端230は小さく円形であり、このため、非常に正確な誘導を必要とせずに弁にそれを挿入することが比較的容易である。ヘッドエンドバスケットが先細り状であることから、操作者は、押し続けることで、三尖弁16の弁輪18をサイズ的に拡張させかつ所望の形状、典型的には環形に一致させることができる。挿入中に、ヘッドエンドバスケットは、その対称的な先細りが理由で自動調心型である傾向がある。バスケット220の先細りは、方向248の挿入力を、弁輪18が拡張しかつ所望の形状(および最終直径よりも大きい直径)を一時的に取るようにする半径方向力に変換する。
操作者が器具を押し続けるに従って、フックの針状突起のリングは、弁輪の外周が規定する挿入場所の環に沿って心臓組織に触れ、続いてそれに入り(貫通し)、フックの鋭い自由端は、釣り針とほぼ同様に組織に入り、その中に着座する。どのようにして操作者が器具を誘導するかに応じて、実質的にすべてのフックが同時に組織に入るように、挿入中にバスケットを配向させることができる。あるいは、支持体の片側のフックが最初に組織に入るように、挿入中に器具を傾ける可能性があり、続いて、他のフックを組織内に順次押し込むように、器具送達角度を変化させる可能性がある。
一般に、フックの数が比較的少ない場合(例えば6〜20、医師が弁輪上でのリングの慣習的な縫合作業に使用する縫合の数と同程度)、すべてのフックが組織に侵入しかつ適切に着座することを保証することが望ましい。
フックを組織に埋め込んだ時点で、操作者はワイヤ238の近位端240を引っ張ってバスケット220を折りたたみ、裏返し、弁16から引き出す。最終的に、バスケットの裏返した部分は弁支持体100に到達する。さらに牽引することで、操作者は、支持体100の本体110をその中心軸の周りで転動させ(先に言及したoリングの例と同様に)、これによりフック120は弁16の弁輪18の組織に一層固く埋め込まれる。
最終牽引を使用して、操作者は器具200と弁支持体100との間の接続を引き離しかつ器具200を取り外して、弁支持体100を定位置に残す。裏返し中のバスケット220が接続点246を通過する際に、支持体本体110の埋め込みフック120が行使する方向248に作用する保持力は、引き出し中のバスケット220が支持体本体110に(接続246を通じて)行使する方向250に作用する力を超え、これにより接続246が引き離されるかまたは解放され、続いて支持体100が解放される。
次に器具200を引き出して、弁支持体100を弁輪18と共に長期構成に収縮させる。
図6Aに示すように、支持体の経皮送達に有用な実施形態では、送達ヘッド220aはニチノールなどの形状記憶合金から例えば作製可能であり、これにより本体222aは、経皮入口(例えば大腿静脈)から心臓内へのヘッドの送達の前および途中に縦軸234aに向かって半径方向に折りたたまれる。送達ヘッド220aは、図6Aに示す拡張した先細り状の構成に向かって偏向する。したがって、先細り状の半剛性ネットの形態の送達ヘッド220aは、カテーテル軸部210aから半径方向外向きに扇形に開きかつ送達ヘッド220aの先細りに反対する方向に先細りになる突起216aを通じて、カテーテル軸部210aに接続される(本明細書において、本発明者らは送達ヘッドをヘッドエンドバスケットと呼ぶ)。
突起216aは、カテーテル軸部210aに弾性的に装着されており、ばねで偏向した図6Bに示す突起216bにより例えば示される拡張した先細り状の配向に向けて偏向する。突起216aは、カテーテル軸部210aに対して装着されかつ弾性接続を形成するばね278、例えばトーションばね(図示)を含む。
ワイヤ238aは、先に記載の様式と同様の様式で軸部210aの管腔236a内を摺動する。
器具200aは、カテーテル軸部210aが支持体の配置中に摺動可能なシース280も含む。シース280、カテーテル軸部210aおよびワイヤ238aがいずれもそれらの長さに沿って柔軟であることにより、器具200aは血管に沿って屈折および屈曲して、心臓に到達しかつ心臓内での送達ヘッドの1回の操作を可能にする。
図7Aに示すように支持体を経皮送達するには、送達ヘッドを使用向けに準備する際に、シース280を突起216aを超えて退縮させて、送達ヘッド220aを拡張させる。次に弁支持体100を送達構成に拡張させ(手でまたは拡張器具を使用して)、先細り状の本体222aに装着する。解放可能な接続、例えば引き離し可能な縫合および/または保持要素(先に記載のような)を使用して、弁支持体100を送達ヘッド220aに接続する。
次に図7Bに示すように、シース280をカテーテル軸部210aに沿って送達ヘッド220に向かって移動させることで、突起216aおよび送達ヘッド220aを半径方向内向きに収縮させてシース280内に適合させる。収縮構成では、送達ヘッド220aの先端228aは、シース280の端部282に対置される。円形の先端228aは、心臓に到達するように血管を案内する上で一層容易な送達および操縦性を例えば与えることができる。
弁輪に支持体を送達するために、器具200aの端部230を経皮的に血管を通じて右心房24に送る(図8A)。次に図8Aに示すように、シース280を退縮させて、弁支持体100を露出させかつ突起216a、送達ヘッド220aおよび支持体100を拡張させる。
支持体の開胸配置に多少なりとも類似した段階において、次にカテーテル軸部210aを弁輪18の軸30に沿って方向248aに例えば画像誘導下で前進させる。操作者は、弁16を実際に見ることなく、感覚または画像誘導を使用して、自動調心型送達ヘッド220aの遠位端230aを弁16内に押し込む(図8B)。
先端が弁16内にある時点で、操作者はカテーテル軸部210aの端部214aを押すことで器具を弁16内にさらに押し込む。これにより、送達ヘッド220aの先細り状の本体222aは、弁輪18の形状を環形または他の所望の形状(健康な僧帽弁に特有の「D」形などの)に修復する。器具200aは、その形状が理由で自動調心型である傾向がある。送達ヘッド220a(および開胸手術に使用するヘッドも)のネット状の構築により、送達ヘッド220aを挿入している間でさえも血液が弁を流れるようになる。
図8Cに示すように、支持体フックが弁輪に触れる位置に器具200aが到達する際に、さらに押すことにより、操作者は、弁支持体100のフック120を一緒に、支持体を取り付けるべき弁輪のすべての場所の中に動かす。いくつかの例では、操作者は、送達ヘッドを意図的に傾けることでいくつかのフックを他のフックより前に組織に侵入させることが可能なことがある。弁支持体100および器具200aの構成ならびに支持体100の器具200aへの一時的取り付けの様式は、フック120がちょうど弁輪18の外縁部に沿って正確な位置で弁16に侵入することを保証する傾向がある。
弁支持体100を弁16に取り付けた時点で、操作者は近位端240aを引っ張り、これにより送達ヘッド220aは裏返され(隠れ破線)かつ弁16から引き出される(図8Dに示す)。最終的に、器具200aの裏返した部分は弁支持体100に到達する。操作者は、さらに牽引することで、支持体100のトーラスをその周辺の周りで転動させ、これにより図8Eに図示するようにフック120の自由端が弁16の弁輪18内にしっかり押し込まれることで、支持体は恒久的に着座され、支持体100の周りでの組織のその後の成長が可能になる。配置されたフック120の各々の深さおよび半径方向の範囲は、慣習的な縫合と本質的に同一であり得るものであり、したがってそれらの配置は、慣習的な縫合と同程度に有効でかつ操作者および他者に見慣れたものでありそうである。
最終牽引を使用して、操作者は器具200aと弁支持体100との間の接続246を引き離しかつカテーテル軸部210を退縮させて、支持体100を定位置に残す。弁輪18を超えた位置にカテーテル軸部210を退縮させ、第1の方向にワイヤを前進させて、送達ヘッド220aがその当初の先細り形状を取るようにする(図8F)。次にカテーテル軸部210aをシース280内に退縮させ(図8G)、器具200aを引き出す。
いくつかの例では、図8Hおよび8Iに示すように、器具200aの先端228aは、裏返した際に、シース280の内径284よりも小さい圧縮寸法を有し、これにより図8Iに示すようにカテーテル軸部210aは展開後にシース280内に直接退縮され、裏返った先端は折りたたまれた送達バスケット内に保たれる。
器具200aが引き出された状態で、弁支持体100が収縮し、これにより弁輪18は、弁小葉14が癒合して収縮期中の血液の逆流を防止するように再形状化される。
他の実施形態は特許請求の範囲の範囲内である。
例えば、三尖弁または僧帽弁のいずれかの歪みを補正することができる。三尖弁修復の場合、フックを支持体の約4分の3、すなわち弁輪の周りのみに配設することができる。配置手順中に、操作者は支持体を回転させて、フックを有する支持体の部分を位置決めする。僧帽弁修復では、フックは弁輪の周辺全体を覆うことができる。このシナリオでは、フックは支持体の周径全体の周りに配設される。あるいは、フックは僧帽弁の弁輪の後方区分のみを覆うことができる。このシナリオでは、フックは支持体の3分の2の周りに配設され得る。三尖弁の例と同様に、操作者は、フックを有する支持体の部分を、僧帽弁輪の後方区分に対して位置決めする。さらに、僧帽弁修復では、送達手順中に心臓機能を維持するために送達器具の一部としてバックアップ弁を設けることができる。形状記憶材料以外の材料を支持体本体の材料として使用することができ、支持体の開口部にまたがるクロスバーを例えば含む他の方法を、拡張後に所望のサイズに支持体を戻すために使用することができる。
さらに、心臓の左心耳を同様の技術で閉鎖することができる。例えば、器具を心耳の開口部内に押しつけることで、開口部が所定の形状を取るようにすることができる。拡張した支持体のフックを心耳の開口部の周辺内に埋め込むために、器具を押し続けることができる。次に器具を引き出して、支持体を解放し、支持体を収縮させることができる。器具を引き出して、支持体を解放する際に、支持体が比較的小さいサイズに収縮して、心耳を有効に閉鎖することができるように、支持体は比較的小さい収縮直径を有し得る。
開胸および経皮展開手順に加えて、弁支持体を胸部を通じて展開することもできる。
器具のヘッドエンドはバスケットである必要がなく、支持体の形状に対応する形状に弁輪を開口させることが可能な任意の形態、機械的配設、および強度を取り得る。バスケットは種々の材料で作製可能である。弁輪組織内で支持体の着座と埋め込みとの両方を行いかつ器具から支持体を断絶するために支持体の押し引き両方を可能にする多種多様な構造機構を使用して、バスケットを保ちかつ押すことができる。
器具は円錐形である必要はない。
支持体は、多種多様な構成、サイズおよび形状を取りかつ多種多様な材料で作製される可能性がある。
器具の押しつけ力を使用して支持体を着座させかつ埋め込む他の機器でフックを代替する可能性がある。
支持体のフックは弁輪に直接埋め込む必要はなく、例えば隣接組織に埋め込む可能性がある。
支持体は、他の形態を取りかつ他の方法で取り付けられる可能性がある。
図9Aにおいて、支持体本体110aは螺旋ばね(先に言及した)の形態のトーラスであり得る。そのような支持体本体は、その収縮状態で10センチメートルのオーダーの固有周径116と、比例する固有直径114とを有し得る。周径は、特定患者の物理的要件に基づいて選択することができる。
この支持体本体の断片の拡大図である図9Bは、いくつかの実施形態が、支持体本体110aの外面111に取り付けられるバーフック120aをいくつか(例えば多数または非常に多数、例えば、わずか例えば15個または100個および最大数百個さらには数千個)有することを示す。図9Bに示す例では、螺旋状の支持体本体は、外面111および内面117を有する平坦状ストリップから巻き付けられる。図9Bは外面のみに取り付けられるバーフックを示すが、バーフックは製造上の理由または他の目的で内面に取り付けられる可能性もある。
本体に対して小さいバーフックは、バーフックが取り付けられる本体の一部が組織に対して押しつけられる際に輪状組織を部分的または完全に貫通するように各々構成されている。
図9Cに示すように、いくつかの例では、各バーフック120aは、組織を貫通するための鋭い自由端122aと、バーフックを組織に埋め込まれたまま維持するための少なくとも1つの針状突起端128a、128b(2つを図9Cに示す)とを有する。各バーフックは、支持体本体の表面に取り付けられる端部124aも有する。支持体(本発明者らは支持体構造を単に支持体と呼ぶことがある)が心臓組織に接触する時点で、埋め込まれたバーフックは本体を弁輪上で適切な位置および構成に保つ。バーフックは、グルー、セメントもしくは他の種類の接着剤を使用して支持体本体の表面に取り付けることができ、または成形、エッチング、打抜き、溶接もしくは他のプロセスなどの工業プロセスの一部として支持体本体から形成することができ、またはこれらの技術の組み合わせで取り付けることができる。所与の支持体上に異なるバーフックを異なる機構で取り付けることができる。
本体表面111に垂直な方向122b(または何らかの他の選択される有効な方向、または意図的にランダム方向)に自由端122aが向かうように、各バーフック120aを構造化し、取り付けることができる。いくつかの場合では、バーフックは曲線状であり得る。針状突起端128aは、曲線状バーフックの凹面縁部113(図9D)または凸面縁部115(図9E)上に位置する可能性がある。
バーフックは、天然植物の針状突起上のバーフックに似ている。鋭い尖端が2つの広く鋭い肩部を有し、その尖端が入る際に肩部が組織を切断するという、金属を先端とする狩り矢との類似による、異なる種類の取り付け装置が使用される可能性がある。2つの肩部の先端が針状突起と同様の機能を果たすことで、矢は組織に入った時点で埋め込まれたまま維持される。
いくつかの実施形態では、支持体本体上のバーフックは2つ以上(いくつかの場合では多数)の異なる形状、サイズ、配向、材料および構成を有する。これらの特徴、例えばバーフックの配向を変動させることで、支持体本体が弁輪に接触する瞬間にどれほど配向されたとしてもバーフックの少なくともいくつかが組織に埋め込まれるという可能性がより高くなり得る。フックの数、配向および湾曲を変動させることで、支持体本体が定位置にとどまる可能性がより高くなり得る。例えばそのような支持体では、特定方向に支持体本体に適用される力は、組織から針状突起を分離することでバーフックのいくつかを着座解除するかまたは部分的に着座解除することがあるが、同一の力は、着座解除されたバーフックと同一の方向または異なる方向に配向した針状突起端を有する他のバーフックには影響しないことがある。支持体を着座させるために適用される力により、いくつかのバーフックは他のバーフックよりもしっかり埋め込まれることがある。
使用時には、典型的にはバーフックのすべて(いくつかの場合では大部分でさえも)が、支持体本体が組織に対して押しつけられる際に組織に埋め込まれるわけではなく、または配置後に埋め込まれたままとどまるわけではない。図9Fに示すように、十分な数のバーフックが適切な方法で配設されており、したがって、物理的結合を作り出して支持体本体を定位置に適切に維持するためには、全フックの一部しか弁輪組織(いくつかの場合ではある種の領域のみ)に埋め込む必要がない。組織にしっかり埋め込む必要がある支持体上のバーフックの割合は1%〜10%、または40%以上の範囲である可能性がある。埋め込みに成功したバーフックの平均間隔は、支持体を適切に固定するには、例えば支持体本体長さ1ミリメートル当たり1つのバーフック〜2もしくは3ミリメートル(またはそれ以上)当たり1つのバーフックの範囲である可能性がある。バーフックが支持体上に均一に配設されるというよりむしろまとめて置かれる場合、埋め込みに成功したフックの割合およびそれらの間の距離は異なり得る。
送達中にバーフックが輪状組織に接触する際に、バーフックのいくつか131、133が組織を貫通するがすべてが必ずしもそうするわけではなく、(退縮力が送達器具に適用される場合は)それらの針状突起は組織を把持する。残りのバーフックのうち、いくつか135、137は(例えば組織の輪郭が理由で)組織に接触さえしないことがあり、他のもの139、141は、組織を貫通しかつそれらの針状突起を組織内にしっかり着座させるために十分な力または適切な配向で組織に接触しないことがある。バーフックのいくつか143、145は組織に侵入するが組織を把持することに失敗することがある。バーフックのいくつか147、149は針状突起端128aのみにおいて組織に侵入して自由端122aに関してはそうではないということがあり、これにより、自由端が組織に埋め込まれた物理的結合よりも弱いことがある物理的結合が与えられる。しかし、組織に入るバーフックのいくつかまたは多くまたは大部分では、針状突起端128aは適切に着座され、バーフックをこれとは異なって着座解除する方向151の力に抵抗する。方向151に特定のバーフックに適用されるねじり力が針状突起端を着座解除するためにやはり十分に大きい可能性があるとしても、組織に埋め込まれる多くのバーフックの組み合わせ全体は、支持体本体を定位置および適切な構成に設定し続ける傾向がある。経時的に、支持体を配置した際に埋め込まれなかったバーフックのいくつかは埋め込まれるようになることがあり、支持体を配置した際に埋め込まれたバーフックのいくつかは着座解除されるようになることがある。
1つまたは複数の針状突起の各々が与える、組織からの所与のバーフックの取り外しに対する抵抗は、比較的小さいことがある。しかし、埋め込みに成功したバーフックの凝集抵抗はより高く、したがって支持体本体を定位置に、弁の弁輪を望ましい形状に確実に維持することができる。さらに、いくつか(潜在的には非常に多数)の小さいバーフックが比較的大面積上に広がっていることから、弁輪の組織の任意の部分に対する応力はかなり小さく、このことは、組織をまったく損傷することなく、支持体本体を適切に着座させ続け、弁の形状をその周辺全体に沿って適切に維持し続けることに役立つ。緊密な間隔での多数のバーフックが支持体の長さに沿って埋め込まれ得るという事実は、支持体が、先に記載の比較的少数のフックの場合よりも均一かつ連続的に弁輪に取り付けられ、したがってより良く機能し得るということを意味する。
図9Aなどに示される実施形態は、図1Aなどに記載の実施形態よりも多くかつ小さいフックを有する傾向があり、これらのすべてが埋め込みに成功する必要はない。2つの配設の間に共通する概念は、フックが、組織内に押しつけられることで侵入し、また、引っ張り力が配置プロセスの終わりに適用される際に組織内にしっかり埋め込まれる保持要素を有するということである。この2つの概念は相互に排他的ではない。図1Aに示される支持体のような支持体はバーフックも有する可能性があり、図9Aに示される支持体のような支持体は図1Aに示す種類のフックも有する可能性がある。支持体の配置は、両種類のフックの組み合わせに依存する可能性がある。
各バーフックは、白金、金、パラジウム、レニウム、タンタル、タングステン、モリブデン、ニッケル、コバルト、ステンレス鋼、ニチノール、および合金、ポリマーまたは別の材料などの生体適合性材料で形成することができる。図1Aなどに示すフックに関しては、フックはそのような材料の組み合わせで形成することもできる。個々の支持体本体は、ある範囲の組成を有するバーフックを示し得る。支持体本体に取り付けられるバーフックのいくつかは1つの材料または材料の組み合わせで組成され得るものであり、バーフックのいくつかは別の材料または材料の組み合わせで組成され得る。各バーフックは組成において独自であり得る。さらに、バーフックのいくつかの部分は一組の材料で組成され得るものであり、別の部分は別の組の材料で組成され得る。いくつかの例では、針状突起端のバーフックの領域は一組の材料、合金、ポリマーまたは混合物で組成され、自由端のバーフックの領域は別の組の材料、合金、ポリマーまたは混合物で組成され、バーフックの残りはさらなる組の材料、合金、ポリマーまたは混合物で組成される。図9Gは、1つの針状突起端128aのみを有する例示的バーフックを示す。バーフックは、(この場合は)支持体本体表面111に垂直な主軸920の経路に沿って、取付端124aから自由端122aに延伸する。針状突起端は、バーフックの自由端122aから針状突起端の自由端906までの長さ904にわたる。この自由端906は、鋭角910にわたる尖端を形成し、針状突起端128aは、埋め込まれたバーフックをそれがなければ組織から離れた方に引っ張る任意の力に応答して組織を把持する鋭角911にわたる。
主軸に沿って取付端124aから自由端122aまで測定される各バーフックの長さ901は、約1〜12ミリメートルである可能性がある。各針状突起端は、取付端において測定される、バーフックの主幅または直径903よりも短いかまたは長いバーフックからの距離902で延伸する可能性がある。バーフックの本体の断面は、平坦状もしくは円柱状もしくは卵形または多種多様な形状のうち任意の他の形状である可能性がある。
異なるバーフックを異なるサイズおよび構成で支持体本体表面上に配置することができる。例えば、異なるバーフックは異なる長さならびに異なる数および針状突起端の配置を有し得る。例えば図9Hに示すように、支持体本体表面111の一部は、第1の方向950で対向する2つの針状突起端128a、128bを各々有するバーフック120aと、第2の方向951で対向する1つの針状突起端128aを各々有するより短いバーフック120bとを含む。また、バーフックは様々な分布密度および分布パターンで本体表面上に配設することができる。例えば図9Iに示すように、バーフックを反復列930で本体の表面上に配置することができる。図9Jに示すように、バーフックを異なる長さおよび密度の列931、932で表面上に配置することができる。図9Kに示すように、バーフックを弧形成体933に沿って表面上に配置することができる。図9Lに示すように、バーフックをクラスター形成体934として表面上に配置することができる。図9Mに示すように、バーフックはランダムに分布し得る935。他のパターンも使用可能である。
単一の支持体本体はバーフックの多種多様なパターンをその表面上に含み得る。というのも、特定の心臓弁の物理特性は、弁組織がバーフック分布の特定パターンに対して受容性がより高いかまたは受容性がより低いことを意味し得るためである。いくつかのパターンはいくつかの種類の組織に対してより有効であることがあり、他のパターンは他の種類の組織に対してより有効であることがある。
さらに、図9Nに示すように、剛性フィンガー256、258の近くの区域を含む、本体110aが送達器具220に接触する地点において、バーフックは存在する必要がない。これは、バーフックが支持体本体を器具に固着させることを防止する傾向がある。
図9Oに示すように、任意の2つのバーフックを、長さ901、901aのいずれか一方よりも長いかまたは短い、互いに対する距離905で配置することができる。
図9Pに示すように、支持体が螺旋状に形成される場合、リングは、前側961(支持体が送達される際に弁に対向する)と、弁から離れた方で対向する後側960とを有すると考えることができる。いくつかの例では、支持体本体110aは後側960にバーフック120aを有さない。支持体本体のこれらの実施形態では、後側960はスリーブ963で覆われる。支持体本体を弁輪に取り付けた後で、スリーブは弁組織との一体化の長期プロセスを支援する。ある期間にわたって、心臓組織は、治癒プロセスの一部として支持体本体に付着する。スリーブは、このプロセスがスリーブなしの場合よりも速く生じることを可能にする材料で作製される。例えば、スリーブは多孔質材料で組成され得るものであり、多孔質材料は組織をスリーブ内で成長させ、したがってスリーブなしの場合よりも有効に支持体を組織に固定する。スリーブ材料は、ダクロン(ポリエチレンテレフタレート)などの熱可塑性ポリマーであり得る。あるいは、スリーブ材料は金属または別の種類の材料であり得る。スリーブは、後側以外の場所で支持体本体上に配置することができる。例えば、スリーブが本体の内側965に配置され、バーフックが外側964にとどまる可能性がある。
スリーブは、この例ではハーフトーラスとして形成されるが、多種多様な他の構成を有する可能性がある。そのようなスリーブは、図1Aなどに示す支持体を含む任意の種類の支持体と共に使用することができ、支持体の全体または一部のみを覆う可能性があり、フックもしくは針状突起フックまたはその両方を含む支持体の一部を覆う可能性がある。後者の場合では、設定中および支持体を心臓内に配置する前にスリーブに侵入するようにフックを配設することができる。スリーブは、房室結節などの繊細または敏感な組織に接触するように意図される支持体の一部を覆う可能性もある。この場合、スリーブは、支持体に使用可能な他の材料に比べて繊細もしくは敏感な組織を損傷するかまたはその手術に干渉する可能性がより低い材料で作製される。
バーフックを使用することで、支持体の取り付けを、先に記載のより大きいフックの場合に比べて速く、単純に、確実にかつ容易にすることができる。送達器具の操作者は、より大きいフックを輪状組織に埋め込むために必要な力と同程度の力を適用する必要がないことがある。いくつかの場合では、バーフックをしっかり埋め込むために、より大きいフックについて記載のように針状突起を回転させる必要はない。操作者は、すべてのバーフックが埋め込まれたかどうかを気にかける必要はない。支持体本体が組織に接触したと操作者が決定した時点で、またバーフックの多くが取り付けられたという推論により、操作者は、支持体を牽引してそれが着座していることを確認した後、先に記載の機構の1つを使用して送達器具から支持体本体を解放することができる。位置決めの容易さが理由で、手順は非外科的文脈、例えばカテーテル処置検査室内で容易に行われる可能性がある。
図13A〜13Dに示すように、カテーテル処置の文脈では、配置されるバーフック支持体または任意の他の種類の支持体について、カテーテルは送達器具の先端にバルーン228bを含み得る。図13Aのように、カテーテルが患者の血管を通過して心臓に入る際に、バルーンは圧縮されたままである。図13Bに示すように、カテーテルの先端が心臓に到達した際に、バルーンは膨張可能である。膨張したバルーンは、心臓を通じて送り出される血液内を浮遊し、(送達器具と一緒に)容易にかつある程度自動的に、修復すべき弁に向かってかつその中に運ばれる。バルーンは、弁輪を超えて動き続けることができ、また図13Cに示すように位置づけられる場合、操作者がカテーテルの近位端を支えている間にカテーテルの遠位端を支える。次にカテーテルの軸部は、両端において支えられる「レール」として働くものであり、このレールに沿って、送達器具および支持体を包含する操作を、レールが一般に弁と同軸に保たれているという信用をもって行うことができる。
先に記載の例のいくつかでは、バスケットなどの円錐形表面を心臓弁の軸に沿って心臓弁内に押しつけることで、心臓弁の弁輪を所望の形状に拡張させる。送達を行うのが開胸手術の文脈であれ、カテーテル処置検査室中であれ、その他であれ、送達器具を弁に挿入した後に弁輪の拡張を行うという技術により、円錐形表面の弁輪内への押しつけを補完または代替することができる。
図9Aは、支持体本体の1つの直径である固有(長期構成)直径114を示す。この直径が送達構成の直径と異なることを想起されたい。図9Qに示すように、前者の直径114は、支持体本体取付地点247において送達器具の後者の直径202よりも小さい。支持体本体を送達ヘッド220上に配置する際に、本体が拡張して器具に適合するに従って螺旋ばねのコイルは外向きに伸展する。
図13A〜13Dに示す送達中に、支持体本体を弁輪18に取り付けた際に、操作者は送達器具から支持体を解放する。図13Dは、送達器具が既に適用した外向きの力が存在しない場合、螺旋ばねのコイルが内向きに収縮し1308、これにより支持体本体がほぼその固有の直径である最終直径1309に回帰することを示す。図1Hを再度参照して、弁輪が支持体本体に取り付けられていることから、支持体本体も弁輪を内向きに引っ張って、弁輪を所望のより小さい直径209に再形成するということを想起されたい。
適切に可塑性である材料または合金で支持体本体が作製される場合、支持体本体はその本来の固有直径に完全には収縮しないことがある。しかし、支持体本体がニチノールなどの形状記憶合金で作製される場合、合金の記憶効果は、支持体本体をその本来の直径とほぼ同一または同一の直径に収縮させる傾向がある。
図9Rに示すように、支持体本体110aは、バーフックを有さない他の部分を有し得る。先に言及したように、房室結節などの敏感または繊細な組織を穿刺するかまたはフックに結合させるべきではない。いくつかの例では、支持体本体110aは、バーフックを有する結合区分972と、バーフックを有さない非結合区分974とを有し得る。房室結節に当接するために十分な長さの非結合区分974は、支持体本体の周径の約40〜60度の角度975にわたる。結合区分972は、残りの周径の角度973にわたる。いくつかの例では、非結合区分974は、房室結節または他の敏感な組織に接触するために適した材料で作製されるスリーブで覆われる。
図9Sに示すように、2つの区分972、974は、2つの区分間の境界を示す放射線不透過性マーカー976、977を有し得る。マーカー976、977は各々、非結合区分を向く矢印の形状である。送達中に、操作者は放射線不透過性マーカー976、977を使用することで、非結合区分974の境界を見ることおよび房室結節または他の敏感な組織に対して非結合区分974を位置決めすることができる。
図9Tに示すように、支持体本体110aは、バーフックを有さない複数の区分974、978を有し得る。いくつかの状況では、送達ヘッドが回転可能な角度について、操作者は限定されることがある。この例では、操作者は、房室結節の穿刺を回避するために支持体本体を位置決めするための複数のオプションを有しており、操作者は任意の方向に約90度を超えて送達ヘッドを回転させる必要はない。2つの非結合区分が図示されているが、支持体本体は3つ以上のこれらの区分を有してもよい。非結合区分974、978は、全周径の約40〜60度の角度975、979にわたる。2つの非結合区分の例では、周径の残り2つの長さの角度981、983にわたる2つの結合区分980、982も存在する。
図9Uに示すように、房室結節に当接すべき支持体本体110aの特徴は開口区分990の形態を取り得る。先に記載の非結合区分に関しては、開口区分990は、支持体本体110aが規定する環形の約40〜60度の角度995にわたり得るものであり、一方、支持体本体は残りの角度993にわたる。開口区分990は、房室結節または他の敏感な組織に対して操作者が開口区分990を位置決めすることを支援する、支持体本体110aの開口端992、994上の放射線不透過性マーカーを有してもよい。
図10A〜10Dに図示するように、送達ヘッド220は、挿入中に支持体本体を覆うためのシース280aを含み得る。図10Aおよび10Bはシースを横断面図で示し、図10C〜10Dはシースおよび送達ヘッドを図10BのA-A断面図で示す。シース280aは、支持体本体110aを含む送達ヘッド220に巻き付き、これによりバーフックは弁輪に到達する前に偶然に任意の他の組織または機器を穿刺するかまたはそれに付着することがない。シースは、ゴム、シリコーンゴム、ラテックス、または別の生体適合性材料もしくは材料組み合わせなどの柔軟な材料で作製される。シースもカテーテルと同一の1つまたは複数の材料で作製され得る。シースの一実施形態が図6A〜6Bに示され、対応する本文に記載されることを想起されたい。シースの他の実施形態も可能である。
例えば、図10Aの横断面図に示すシース280aの実施形態は、弾力性保持リング1000およびクロスバー1010への取り付けにより定位置に維持され、保持リングおよびクロスバーは、縦軸234に垂直なカテーテル軸部210を通じて恒久的に固定され、カテーテル軸部から外向きに延伸する。保持リング1000は、支持体本体110aよりも操作者に近く、遠位端から遠く位置決めされ、クロスバー1010は、支持体本体よりも操作者から遠く、遠位端に近く位置決めされる。このシース280aは保持リング1000に恒久的に取り付けられる1002。またシース280aは、クロスバー1010の突出する先端1020、1022に適合するサイズである孔1030、1032(図10Bで可視化)において一時的にクロスバーに取り付けられる。
図10B〜10Dに示すように、弁へのカテーテルの挿入後に、また支持体本体110aを取り付ける準備において送達ヘッド220を拡張させる際に、保持リングとクロスバーとの組み合わせは、シースをクロスバーから自動的に切り離し、拡張手順の一部として支持体本体から上向きに退縮させる。これが起きるプロセスは以下の通りである。
図10Bを参照すると、送達ヘッドが外向きに拡張する際に1006、保持リング取り付けの当初の地点1012での送達ヘッドの直径1008は、保持リング1000の直径1009よりも大きい直径に増加する。結果として、保持リングは、より小さい直径の送達ヘッド上の地点1012から地点1005まで上向きに転動する1004。保持リングが転動するに従って、それはシースの遠位端を同一の上方向1004に送達ヘッド220に沿ってかつ支持体本体110aから離れた方に引っ張る。シース280aの一部は転動プロセスの一部としてリングに巻き付く。ある意味で、保持リングは、ローラに巻き付くスクロールの様式でシースを「上方に転動する」。保持リング1000は、拡張する送達ヘッドをリングが上方に転動することを可能にするために十分な弾力性を有するゴムまたは別の生体適合性材料である。
送達ヘッド220が拡張する際に、シース280aもクロスバーから解放される。クロスバー1010を含む送達ヘッド220の断面図を図10Cに示す。送達器具が心臓弁に移動中である場合、送達ヘッド220は折りたたみ構成である。シース280aは孔1030、1032を有し、これらの孔は、クロスバー1010を通過させることでシースの遠位端をクロスバーに保つように構成されている。クロスバーがシースを超えて突出することから、クロスバーの端部1020、1022は、送達ヘッドがその目標に到達する前にクロスバーが接触する任意の組織をクロスバーが穿刺するかまたは引き裂くことを防止するために、円形でかつ円滑になっている。送達ヘッドが心臓弁の近くまたは内側に位置決めされかつ軸部210から外向きに拡張1006し始める時点で、送達ヘッドはシース280aを外向きに押しつける。
図10Dに示すように、拡張プロセスの間、クロスバーは軸部210に恒久的にしっかり取り付けられているため、クロスバーは定位置にとどまり、外向きに延伸することも構成を変化させることもない。結果として、送達ヘッドはシースをクロスバーの先端1020、1022を超えて押すことで、シースをクロスバーから解放する。したがって、先に記載のように保持リングが送達ヘッドに沿って上向きに転動する際に、シースは自由に移動可能である。クロスバー1010は、送達器具に使用される材料のいずれか、または別の生体適合性材料で作製可能であるが、これは記載のようにクロスバーがシース280aを定位置に維持できるほど十分に剛性であることが前提である。
図11Aは、送達ヘッド220bの別のバージョンを示す。このバージョンは、既に示した送達ヘッドのバージョンとわずかに異なる。具体的には、このバージョン220bでは、剛性突起216bは、ヒンジ1144で軸部210bに取り付けられる内側アーム1142を囲む外側スリーブ1140で組成される。送達ヘッドのこのバージョンが拡張する場合、スリーブ1140は内側部分1142から延伸し、送達ヘッドが収縮する場合、スリーブは内側アームの長さに沿って引き出される。送達ヘッドのこのバージョンを図11Aで使用して、締付ワイヤ1100の使用を明示するが、この締付ワイヤを送達ヘッドの他のバージョンと共に使用することもできる。
図11Bに示すように、この締付ワイヤ1100は送達器具200bの操作者側端部214bにおいて孔1103に突き通されかつそれから再び外に出される。そうすることで、ワイヤは送達器具200bの軸部210bの内側を横切る。操作者側端部214bに対して外側のワイヤの端部は、操作者により操作されるループ1102を形成する。このワイヤ1100を使用することで、最終直径1309を収縮させることを目標に支持体本体110aの形状を少しの程度調整する機構を起動させることができ、最終直径の例は図13Bに示す。図11Aを再度参照すると、送達器具200bの他端で、ワイヤは、送達ヘッド220bを超える地点に配置される孔1105において軸部210bを出る。ワイヤは、フープ1120、1122に誘導されて、送達ヘッド220bの側面を下って延伸する。図11Cに示すように、ワイヤは支持体の螺旋コイル1150、1152の内側に沿って突き通される。ワイヤが支持体本体110aの周径を完結させた位置1164において、ワイヤは送達ヘッドの側面を上って軸部に戻る。
また図11Cはフープ1124、1126を示し、フープは、ワイヤを適切に位置決めし続けるために規則的な間隔で送達ヘッドの支柱224b上に配置される。ワイヤがそれ自体と交わりかつ送達ヘッドの側面を上って戻る位置1164において、支柱224bに取り付けられたスプール1130、1132、1134、1136は、ワイヤを誘導し、ワイヤ出口領域において螺旋ループ1150、1152に対してワイヤが擦れることを防止する1160、1162。孔1105に再び入るワイヤの端部(図11A)は、それ自体と並ぶ軸部を上って戻り続け、送達器具を出て(図11B)、別の端部との接続によりループ1102を形成する。
支持体本体110aが心臓弁輪18に固く着座する際に(例えば図13Cに示すシナリオにおいて)、操作者はループ1102を引っ張る1104ことで(図11B)、支持体の最終直径を減少させることができる。引っ張った際に、ワイヤは締め付けられ、図11Cに示すように、これにより支持体のコイル1150、1152はより緊密になる1106。
支持体のバーフックが輪状組織に埋め込まれる際に、調整された周径は恒久的になる。いくつかのバーフックは既に埋め込まれているが、締付手順により、それらのバーフックのいくつかが引き出され、他のバーフックが組織に埋め込まれる。これは輪状組織をより緊密に「束ねる」。図11Dは、支持体本体を締め付けた後に弁輪の周辺121に取り付けられた支持体本体110aの一部の一例を示す。図11Eに示すように、締め付け後に、支持体本体110aは周辺121において組織を一層緊密に引っ張る。この束ね効果が理由で、弁輪の最終直径はわずかに小さくなる。送達ヘッドを取り外した時点で、支持体本体、したがって取り付けられた弁輪が、所望のサイズに収縮する。
図11Fを参照すると、ワイヤを支持体本体110aから切り離すために、送達ヘッド220bはブレード1170を有し、ブレードは支持体本体を定位置に維持する2つの剛性フィンガー256b、258bのうち1つに取り付けられている。支持体本体110aを定位置にした後で剛性フィンガー256bが支持体本体から引き出される際に、ブレード構造の切断セグメント1172がワイヤを断ち切る。ワイヤが断ち切られた後で操作者が外部ループを引っ張ることで、器具を弁輪から取り外している際にワイヤの漂流端部が送達器具の外側で自由に移動することを防止することができる。
図12A〜12Cに示すように、カテーテル処置の文脈で使用される(但しそれだけではない)送達器具200bは、軸部210b、折りたたみ可能な円錐形ヘッドエンドバスケット220b、一組の支柱224b、および操作者側端部214bを含む、先に論じた送達ツールと共通の要素を共有する。この送達器具200bは、傘を開くことができるのとほぼ同様に、折りたたみ可能な円錐形ヘッドエンドバスケット220bを操作者が折りたたみ(閉鎖)構成(図12Aに示す)から拡張(開口)構成(図12Bに示す)まで半径方向に拡張または収縮させることを可能にする。図12Cに示すように、この目的でバスケットは、軸の周りに配設される一組のスパー1210、1212、1214、1216、1218を含み得る。図12Bを再び参照すると、各スパーは1つのヒンジ端1220、1222を有しており、ヒンジ端は、バスケットの中心軸1250に沿って上昇1202および下降1204可能な中心カラー1200に接続される。開閉機構をユーザーが操作する1208ことでカラー1200を軸部1250に沿って前後に移動させる際に、スパー1210、1220が傘の機構と類似してバスケットを開口または閉鎖させる1206ように、他のそのヒンジ端1230、1232はバスケットのヒンジ1240、1242付き支柱224bに接続される。送達器具の操作者側端部214bは、操作者がカラーを制御することを可能にする捩れまたは摺動制御部1150を有する。図12Bでは、制御部は摺動制御部であり、例えば下向きに摺動可能である。このようにして、バスケット全体を弁軸に沿って直線方向に移動させることでは課されない半径方向力1206によって、弁輪を所望の形状に拡張させることができる。代わりに、バスケットを弁軸に沿って直線方向に所望の位置に移動させた後、弁輪を所望の形状に拡張させる。バスケット全体を軸方向に移動させることおよびバスケットを横方向に拡張させることの組み合わせまたは連続により半径方向力が課される可能性もある。
図13Aに示すように、放射線不透過性測定マーク1310、1312は、標準的測定単位に従う規則的な間隔(例えば1センチメートル当たり1つのマーク)で軸部またはバスケット上に配置することができる。マークを使用して、送達器具が心臓内部を横切った距離と、バスケットが弁に挿入された際のその場所とを決定することで、操作者が弁の軸に沿って良好な位置にバスケットを配置することを可能にすることができる。
バスケットから弁輪上への支持体の配置は、バスケットを開口する操作の一部として、またはバスケットの開口後に、行うことができる。図13A〜13Dに図示する前者の場合では、バスケットが弁輪に隣接する地点まで、バスケットが弁に挿入される。バスケットの開口と同時に、支持体の外周上のバーフックは弁輪組織内に半径方向に押し込まれる。支持体を配置するこの方法では、先に記載しかつ図9Pに示す多孔質スリーブを内周965上で、埋め込まれたフックから離れた方に位置決めする。
他のアプローチでは、図1A〜1Dに示すプロセスに類似して、バスケット上の支持体が弁輪の場所のわずかに上流に位置決めされるように、バスケットを弁に挿入する。次にバスケットを開口して弁輪を所望の形状にし、続いて器具およびバスケットをわずかに押すことで支持体を定位置にしてフックを埋め込む。
いずれのアプローチでも、支持体を配置した時点でバスケットが少なくとも部分的に閉鎖されてバスケットが支持体から解放され、器具が弁から引き出される。
さらに、いくつかの実施形態では、これらのアプローチの組み合わせを使用する可能性がある。例えば、バスケットを部分開口し、弁輪に挿入した後、完全開口する可能性がある。
図13A〜13Dのアプローチは以下の段階に従う。
A. 送達器具200bの折りたたまれた(閉鎖された)円錐状ヘッドエンドバスケット220bを弁の中間軸30に、支持体が弁輪に隣接した状態で位置決めする1301(図13A)(器具およびバスケットを側面図に示し、弁および弁輪を断面側面図に示す)。
B. 操作者側端部214bのボタン1302を押して送達器具の遠位端230bのバルーン228b(図13B)を膨張させることで、送達ヘッド220bを浮遊させて心臓弁16内の正確な位置に入れる。必要であれば、送達ヘッドを回転させて、バーフックを有さない支持体本体の任意の区分、または支持体本体内の任意の空隙、またはシース形成した任意の部分を、繊細または敏感な組織に当接する弁輪の任意の区分に位置合わせする。
C. 制御部1150を摺動させる1208かまたは捩ることでバスケットを拡張させて1306、支持体本体110aを歪んだ弁輪18に接触させる。支持体はバーフックを有し、バーフックが接触時に弁輪18の周辺121において弁組織に埋め込まれることで、支持体が組織に取り付けられる(図13C)。
D. バスケット220bが所望の直径1303に到達した際に、拡張した心臓弁支持体110aは弁輪18を所望の構成(例えば環形)と、弁輪の所望の最終直径よりも(例えば直径において)大きいサイズとに一致させる。任意的には、ワイヤループ1102を引っ張って1104、支持体本体110aのコイルを締め付けることで、より小さい最終直径を得る。
E. 心臓弁支持体がその最終位置にある際に、支持体取付体246bから器具を引き離すために引っ張って1304(図13D)、支持体をその最終サイズ(最終直径1309を含む)および形状に収縮させ1308、支持体を恒久的に定位置に残して弁輪を所望の最終的な構成およびサイズに維持する。操作者側端部のボタンを押すことでバルーン228bを圧縮する1311。
図14A〜14Dに示すように、いくつかの実施形態では、支持体は、ストリップ材料304の弾力性で複数ループの環状コイル302を含むいくつかの部片から構築される。コイルは管状のトーラス型シース306に収納される。多数のバーまたはフック308(数は例えば20〜60である可能性があるが、それよりはるかに多い数、さらには数桁多い数であるか、またはいくつかの場合ではそれより少ない数である可能性もある)がトーラス型シースの周径の周りに規則的な小さい間隔310で装着される。
いくつかの実施形態では、複数ループの環状コイルは、約1/8インチ幅および約10/1000〜15/1000インチ厚のニチノールストリップで作製される。製作中に、ニチノールストリップは、所望の最終埋め込み直径を有するコイルに形状設定される。以下で説明するように、挿入目的でニチノールコイルを拡張させる。拡張中に、ストラップの端部312、314はコイルの周りに周径方向に(矢印316および318に示す方向に)移動することで、リングの直径の増加を収容する。図14A〜14Dでは、リングが、所望の最終埋め込み直径に対応するその無応力の固有直径で示される。ループの数は、使用材料、厚さおよび他の考慮事項に応じて変動し得る。いくつかの実施形態では、ループの数は3.5、または5もしくは8、あるいは1〜10以上の範囲の他の数であり得る。
いくつかの実施形態では、他の材料およびそれらの組み合わせを使用して弾性コイルを形成することができる。これらとしてはプラスチック、金属、ならびにこれらおよび他の材料のコイルが例えば挙げられる可能性がある。
いくつかの実施形態では、非環形および非平面形を含むコイルの全体形状は、図14Aに示す形状と異なる可能性がある。
コイル(または他の弾性コアリング)は、送達器具に適応するように拡張可能であるために十分な、心臓弁輪上に押し込まれるために十分な、弁輪を収縮させて引っ張り所望の形状に戻すために十分な、挿入器具を断絶する際に発生する力に耐えるために十分な、および弁輪用の長持ちしかつ強力な支持体を形成するために十分な強度および耐久性を有することが必要である。それはまた、挿入後に支持体およびそれが取り付けられる弁輪を所望の形状およびサイズに収縮可能にするために十分な、ならびに支持体に対して作用することがある心臓内の力に対して本質的にその形状およびサイズに支持体を保持するために十分な弾性を有する必要もある。
いくつかの実施形態では、コイルがそれにより作製される材料が患者の血液または組織に露出される可能性がある場合、生体適合性材料を使用する。
特にコイルが挿入用に拡張し、挿入後に収縮する際に、シースの内側管腔内でコイルを摺動させるように、コイルはシース306内に保たれる。シースは、拡張および収縮中にコイルに対してそれを半径方向に移動させる弾力性を有する。バーまたはフック(本発明者はバーおよびフックならびに多種多様な他の把持機器を把持体と呼ぶことがある)はコイル上ではなくシース上に装着されることから、支持体の中心軸に対する把持体の角度位置の混乱なしにコイルの拡張および収縮が生じ得る。
いくつかの実施形態では、シースは単純な管で形成され得る。そのような管にコイルを埋め込むために、コイルを巻き出して、コイルのすべての巻数が埋め込まれるまで繰り返し管を通して巻き付けることができる。コイルが管内に完全に埋め込まれた時点で、管の一端を引っ張り上げ、他端に接着することで、アセンブリを完成させることができる。
いくつかの実施形態では、シースは特別に成形された部片で形成され得るものであり、これは成形中に形成されるトーラス形状を有し、2つの端部を一緒に固定する方法を含む。
いくつかの実施形態では、シースは、コイルを含む房に流体が流入することを防止するために封止されるように意図されている。いくつかの場合では、シースは封止されておらず、流体は自由に通過可能である。いくつかの実施形態では、流体を使用してシース内の空間を満たすことで、シース内のコイルの摺動のための潤滑を与え、支持体を心臓内で使用する際に問題を引き起こす可能性がある空気を置換する。流体は例えば血液または食塩水である可能性がある。
シースは、支持体が弁内での配置の前、途中および後に拡張および収縮する際であっても破壊なしにコイルを封入できるほど十分に強くなければならない。支持体の直径が拡張および収縮するに従って、断面直径も変化する傾向があり、その変化の量は、特に、弁組織への把持体の取り付けを混乱させるか、シース内でのコイルの摺動を制約するか、または把持体をシースに対して誤配置もしくは誤配向させるほど大きくてはならない。シースは、支持体が拡張後に収縮する際にシースがコイルに沿って収縮するように弾性であり得る。
シリコーン、プラスチックおよび織物を例えば含む多種多様な材料をシースに使用することができる。材料の組み合わせも使用可能である。
図14Dに示すように、シースの外面322は、以下に説明するように把持体の一部を収容し(かつ定位置に保つ)溝323を有し得る。いくつかの実施形態では、溝は平行であって、シースの周囲に狭い等間隔で存在し得る。
シースの断面直径は、内側管腔がコイルを収容してそれを摺動させかつ外面が把持体を支えるために十分な長さであり得るものであり、また、支持体が設置後に心臓弁を通じた適切な血流を妨害しないために十分な短さであり得る。
図15に示すように、いくつかの実施形態では、把持体の各々はある長さのワイヤ上に形成され得るものであり、ワイヤは、シースの断面の直径とほぼ同一の(またはそれよりわずかに短い)直径326を有する閉鎖リング324を含む。直線区分328は、リングから延伸しており、その自由端に形成される把持体330を有する。
本発明者らは、把持体と、把持体を支持体に取り付けるための部分とを含む部片全体をアンカー332と呼ぶことがある。
いくつかの実施形態では、アンカーは、最終形状でのリング、およびリングから突出する把持体を用いて予め製作される。いくつかの例では、アンカーはステンレス鋼または別の生体適合性材料で形成される。
金属およびプラスチックを含む多種多様な材料およびそれらの組み合わせを使用して、アンカーの各々またはそれらの群を製作することができる。アンカーの断面形状は変動し得るものであり、例えば円形、楕円形、平坦状もしくは屈曲状または種々の他の形状であり得る。
いくつかの実施形態では、把持体として役立つフック端と、支持体上に適合するように屈曲した他端とを有する小さな釣り針からアンカーを作製することができる。
アンカーがシースの周径に沿った方向に薄くなるほど、支持体上に適合可能なアンカーの数が多くなる。いくつかの実施形態では、より多数のより薄いアンカーが、支持体を容易に設置しかつ有効にする上で有用である。いくつかの場合では、シースに沿ったアンカーの配設は、規則的および間隔が緊密なもの以外であり得る。例えば、間隔はシースに沿って変動し得るものであり、あるいは、アンカーの数はシースに沿って変動し得る。
アンカーを設置するために、そのリング部を引っ張り開口し、シースの上を滑動させた後、解放することができる。シースの外面が成形されて溝を有する例では、アンカーのリング部を溝に着座させることができる。
いくつかの例では、アンカーの装着をすべて、図14D(アンカーのいくつかが未だ装着されていない)に示すように、支持体の中心軸338からの共通角336にそれらの把持体が向かうように行うことができる。いくつかの例では、把持体は中心軸に対して異なる角度に向かうことがある。
いくつかの例では、アンカーがシースの外面の周りを滑動または回転せずにむしろそれらの設置配向を維持する傾向を持つように、アンカーを装着することができる。いくつかの実施形態では、心臓弁への挿入の前、途中、および後に支持体が拡張および収縮する際に、シースの伸展および緩和は、その断面直径の変化、したがってリングの開口および閉鎖、ならびに把持体の尖端の迎え角の対応する再配向を引き起こし得る。この効果は、弁組織において把持体を設置しかつその確実な取り付けを与える上で有用であり得る。
いくつかの場合では、尖端の迎え角がすべての把持体に共有される場合、連続するアンカーが周囲に沿って空ける間隔が緊密過ぎる310ことが望ましくないことがある。というのも、隣接する把持体尖端が挿入中に互いに干渉し、弁組織を把持する上での有効性が低くなる可能性があるためである。このため、いくつかの実施形態では、把持体の尖端の迎え角がアンカーごとにわずかに変動することがあり、このことは、連続する把持体間の何らかのクリアランスをやはり可能にしながら、より緊密な間隔を可能にする。いくつかの場合では、連続する把持体の配向は中心線の周りで交互に前後する可能性がある。他の配設も可能である。
図14A〜14Dおよび15では、尖端340を有する単一の自由端を各々有するものとしてアンカーが示される。いくつかの実施形態では、各アンカーは、破線344に暗示されるワイヤの他端342の延伸部(例えば対称延伸部)を設ける可能性がある。多種多様な他の配設も可能である。
図15では、把持体は、ワイヤの自由端の各側面に3つの針状突起を有する。いくつかの実施形態では、それより多いまたは少ない針状突起が存在する可能性があり、針状突起は把持体上で多種多様な他の構成を有する可能性がある。
いくつかの実施形態では、把持体350の各々は、ワイヤまたは他の円柱状材料で形成され得るものであり、また、把持体の中心軸360に対して各々例えば25度の角度358で2つの対称面354、356を有する尖端352を含む図16および17に示す構成を有するように例えば形成、機械加工または成形することができる。中心軸に対して共通の角度(この例では15度)でスロット362および364をレーザー切断するか、機械加工するかまたは他のやり方で付与することで、尖端の下に2つの針状突起が形成される。
針状突起が形成された時点で、それらを方向366および368に軸から離れて屈曲させることで最終針状突起を形成することができる。
多種多様な他の構成および製造形態が針状突起および把持体について可能である。図16および17に示す特定の例では、把持体は直径1.26mmのニチノールワイヤで形成され、把持体からスロットの下縁部までの長さは22.87mmである。
図14Dに示すように、いくつかの例では、設置時点で把持体の各々はシース表面の下部から約2〜約4ミリメートル(寸法339)延伸する。
いくつかの実施形態では、コイルと、シースと、アンカーの一部とを含む支持体は、外科医により弁輪に手で縫合される多くの既存のリングと同様に布地カバーに包まれる。布地は、心臓組織を支持体に経時的にしっかり取り付けることで、確実な修復に役立つ。
図18に示すように、いくつかの場合では、布地カバーは、支持体の他の部分に螺旋状に巻き付けられた材料の薄いストリップであり得る。材料は、縫合、接着または他の方法で支持体に取り付けることができる。螺旋状の巻き付けにより、非弾力性材料を使用することが可能になり、やはり支持体の周径方向の拡張が収容される。いくつかの例では、布地カバーは、支持体の上に配置される一連の独立した管状の布地セグメントを含み得る。セグメント状の配設は、支持体の周径方向の拡張を妨げることなく非弾力性の布地を使用することを可能にする。
布地を支持体上に配置する際に、それは把持体の上に被せられ、把持体の各々は布地に侵入し、挿入の用意が整った状態である。金属、織物およびプラスチックを含む多種多様な被覆材料またはそれらの組み合わせを使用する可能性がある。カバーは、歪められることなく支持体の拡張および収縮を収容可能であるべきであり、その構造を通じて組織の成長を許容および助長できるほど十分に生体適合性および多孔質であるべきである。
多種多様な他の部品および材料の構成、ならびに支持体の部品を組み立てる方法が可能である。異なる数の部片が使用可能であり、記載される機能を異なる方法で組み合わせて支持体の異なる部片にすることができる。
図19、20および21に示すいくつかの例では、シースは、咬合する2つの成形部片で作製され得る。外側の輪状ハウジング402(外側部片と呼ぶこともある)は、外側の平坦な円柱状壁部408により連結される上側および下側の平坦なリング404、406を有する。コイル407はハウジング内に存在する。シースの他方の内側部片410は円柱状壁部であり、円柱状壁部は、コイルの内側端部408を周径方向に摺動させて409それを締め付けるかまたは緩めることを可能にすることで支持体を拡張または収縮させるように、上側および下側のリング404、406の間に捕捉される。摺動中に、シースの内側部片も周径方向に摺動する。
この例では、アンカー412は、屈曲した後にシースの外側部片に取り付けられる金属の平坦な部片から形成される。各アンカーは、シースの外側部片の上側部分を捉える上側フィンガー417と、垂直アーム419と、シースの外側部片の下部を捉える下側フィンガー414とを含む。把持体416は下側フィンガーから下向きに延伸する。シースの内側部片はタブ418を有しており、タブを操作してコイルの端部を引っ張るかまたは解放することで支持体を拡張または収縮させることができる。この目的で、シースの内側部片の反対端部をコイルの端部に取り付ける。結果として、アンカーがシースの外側部片に対して移動することなしに、支持体を拡張または収縮させることができる。直接指操作、開胸手術中の挿入器具の使用、またはカテーテル検査室内での異なる位置のカテーテルの端部での操作を含む多種多様な方法でタブ418を操作することができる。
図22〜27に示すように、把持体のいくつかの実施形態では、尖った端部430、および尖った端部の各側面に一対の針状突起432、434、436、438が存在する。図22および23に示す例では、針状突起434および438はより小さい。図24および25の例では、尖端の各側面の2つの針状突起は同様のサイズおよび形状を有する。
図26および27に示すように、いくつかの例では、ニチノールストリップの詳細な構成は、尖端および針状突起を含む。図21に示すように、いくつかの構成では、針状突起は、針状突起としてより有効であるために、把持体がそれから形成されるストリップの平面から外に屈曲している。
一般に、いくつかの例では、弁組織に埋め込まれるべき支持体は、3つの関連する機能を実現するように構成され得る。(1) 支持体が弁輪に正確に位置した時点で支持体の把持体を組織に容易に挿入する能力; (2) 部分的には挿入後に支持体の全体または一部の切り離しを引き起こす可能性がある力に対する実質的な抵抗を与えることで、弁の弁輪の正確な形状を維持しかつ耐久性があり長持ちするように、支持体を組織内にしっかり保持する能力; (3) そうすることが有用な場合には弁輪に対して支持体を再位置づけするかまたは再配向させるために、挿入手順の途中または後に把持体の全部または一部を意図的に引き出す能力。これら3つの機能は、把持体、アンカー、および支持体の他の部品の慎重かつ繊細な設計を必要とする。というのも、1つの機能に好ましいいくつかの設計要素が別の機能に負の影響となることがあるためである。これらの機能はまた、単純で、その操作が間違えようがなく、使用が容易である機器において実施されるべきである。
例えば、組織への把持体のより容易な挿入は、把持体上の針状突起のサイズおよびプロファイルを減少させ、把持体の尖端を直接組織に向けることで実現することができる。支持体を再位置決めするためのいくつかまたはすべての把持体の取り外しも支援される。しかし、それらの同一の特徴は、組織への支持体の取り付けの安定性および耐久性を減少させる可能性がある。より幅広いかもしくは妨害的なプロファイルを針状突起に与えるかまたは把持体の尖端の向きを組織への直接経路から外すことで、把持はよりしっかりするが、把持体の挿入は再位置決めと同様により難しくなる。
必要な機能の所望のミックスを実現するために調整およびトレードオフ可能な設計特徴としては、アンカー、把持体および針状突起の数、形状、サイズ、配向および装着方法、支持体の本体の形状、サイズ、配向および他の構成、支持体のすべての部品に使用される材料、ならびに多種多様な他の要因がある。
いくつかの場合では、再位置決めのために組織内の把持体を挿入および取り外しするための意図的に逆転可能なプロセスを可能にする機構または構成を設けることができる。
例えば、図28〜31に示すように、支持体450は、例えば支持体の本体454の周りに等間隔で存在する30個のループ452の形態のアンカーを含む可能性がある。本体454の断面は、本体の内周に沿った環状セグメント456と、本体の外周に沿った平坦なまたは凹面状の区分458とを含む可能性がある。ループの各々は2つの自由端460、462を含む可能性があり、その一方460は尖っておらず、その他方462は鋭い尖端を有する。ループは針状突起特徴を有さない。
いくつかの操作モードでは、挿入前に、すべての把持体の曲線状の鋭い端部462を本体から離して保持し、弁輪組織の一般的方向に向けることができる。シースまたは他の機構を使用してそれらをこの一時的挿入位置内に移動させ、そこに保つ可能性がある。挿入中に、挿入器具を適用して把持体を組織内に押し込む可能性がある。図31に示すように、把持体の尖った端部が組織内にある時点で、シースまたは機構は、曲線経路464をたどって組織466を通り、組織から出て支持体本体に隣接した後で、アンカーにそれらの最終形状を取らせるように操作される可能性がある。
この構成は、同様のシースまたは機構を使用してプロセスを逆転させることで、組織を通じて把持体を引き出して図30の構成に戻すことができるという利点を有する。鋭い先端上の針状突起ではなくアンカーの軸部の湾曲により把持が実現したため、プロセスの逆転は比較的容易である。また把持は確実である。しかし、挿入は他の実施形態におけるよりも困難なことがあり、可逆性にはさらなる機構が必要である。
いくつかの例では、支持体には調整およびロック特徴が設けられる可能性があり、この特徴は、挿入時点で外科医または操作者が支持体のサイズ(例えば直径)および場合によっては形状の調節もしくはロックまたはその両方を行うことを可能にする。いくつかの場合では、支持体は、単一の選択不可能な設計サイズのみに到達する必要があるというよりむしろ、挿入時点で可能な異なるサイズに調整される可能性がある。
例えば、図45に示すように、支持体のコア構造部片570は、挿入器具(図示せず)により可塑的に変形されるクリンプステンレス鋼で作製される可能性がある。器具は、構造部片の上部を係合させ、挿入用のより大きい直径を部片が一時的に有するようにする可能性がある。支持体を弁輪内に押しつけて把持体を組織に付着させた後で、器具は、折りたたまれて、構造部片をその最終サイズまで直径方向に折りたたむ可能性がある。
図46に示すように、いくつかの場合では、個々の拡張要素573、575は孔576、578を有しており、これらの孔は、構造部片が所望の寸法に正確に拡張または収縮した時点で剛性ロック要素580内のピン582、584の場所および間隔と正確に嵌合する場所および間隔を有する。ロック要素は、上側の輪状壁部578により連結される内周壁部および外周壁部574、576を有する輪状シリコーン支持体内の適切な箇所に保たれる。シリコーン支持体を適切にサイズ決めした場合、支持体を押し下げることで、ロック要素のピンが孔に押し込まれる。
図47〜53を参照すると、いくつかの実施形態では、支持体600は3つの部片で形成される可能性がある。
部片の1つである輪状弾性(例えばシリコーン)リング606は、リングの形状に安定性を与える台形を規定する4つの直線状セグメントを含む断面を有する。リングの4つの対応する面が存在する。面632は、挿入器具の拡張器部分の面の表面に一致するように設計される構成を有する。
2つ目の部片は、曲線状の断面ならびに2つの重複する端部620および622を有する例えばステンレス鋼のストリップから形成される金属リング604である。断面の湾曲はリングの軸安定性を維持する。一端622の近くで、リングは一連のスロットを有しており、スロットは、他端620の近くに形成される対応するタブ623と嵌合するように意図されている。製作および組み立て中に、リングのタブ付き端部は重複区分627の内側にあり、したがって嵌合およびロッキングは生じ得ない。しかし、最終的に設置した際には、タブ付き端部は、ロッキングを可能にするように重複区分の外側にある。製造中に、シリコーンリングが金属リングの周りに成形される。シリコーンリングが伸展および緩和される際に、2つの端部が重複区分において互いに対して自由に移動するため、金属リングは拡張および収縮が可能になる。支持体は本質的にばねで負荷されている。
この例示的支持体の第3の部片は、二重に尖ったアンカー602であり、その多くのコピーがリングの周りに配設される(このバージョンでは規則的な間隔で配設されるが、必ずしもそうではない)。いくつかの実施形態では、アンカーの各々は、反対する自由端616、618に把持体(例えば針状突起または釣り針)を有するワイヤの単一のループ602から作製される。アンカーの各々は、弾性であり、図53に示す緩和状態を有し、距離619が2つの把持体の間に存在し、2つの把持体の尖端は一般に互いを向く。アンカーのループは、金属リング上に配置され、成形シリコーンリング内でポット状になる。
組み立て後、支持体はより大きい直径に伸展され、図示しない挿入器具上に装着される。伸展は2つの効果を有する。1つは、図51に示すように、金属リングの2つの端部が、重複を排除するために十分に引き離されるというものである。リングの端部は、タブ付き端部がスロット付き端部に対して外側に移動するように偏向している。したがって、リングを後で収縮させる時点で2つの端部が再度重複を形成する際に、タブはスロットと嵌合するように位置決めされる。金属リングの端部は、リングが収縮する際にこの配設を実現することを支援するように面取りされる。
また、シリコーンリングが拡張する際に、シリコーンリングの断面直径は収縮する。アンカーがシリコーンリング内でポット状になることから、リングが長さにおいて伸長しかつ直径において収縮する際に、マトリックスは、アンカーのループ610を圧迫し、図48に示す一時的な構成にする。その構成では、距離619は増加し、把持体の尖端の配向は回転して一般に挿入方向に対向し、挿入の用意が整う。
図52に示すように、挿入器具を支持体から取り外す際に、支持体は直径において収縮し、これにより弁輪は所望の形状およびサイズに再構成される。シリコーンリングは断面直径において拡張し、これによりアンカーが緩和することで(図53)、把持体が回転しかつ尖端を互いに向かって押し込むようになり、組織上にしっかり保たれる。金属リングが収縮する際に、タブおよびスロットはラチェット作用において協働して、これにより、逆拡張が再度生じることを防止しながら、支持体をその最終の形状およびサイズに収縮させる。
図54および55に示すいくつかの場合では、支持体の最終直径のロッキングは、弾性リング700に嵌合要素を埋め込んで行うことができる。一組の要素704をリングの一平面に埋め込むことができ、嵌合すべき対応する一組の要素706をリングの第2の平面に埋め込むことができる。埋め込みは、設置の前および途中に支持体を拡張および収縮させる際に2つの異なる種類の嵌合要素を互いに対して摺動させるように行われる。支持体の適切な直径に達した際に、器具を使用してシリコーンリングを押し下げることで、嵌合要素が同一平面を占めかつ咬合するようにすることができる。
いくつかの例では、支持体の一部を形成する弾性金属コイル720の端部に、2つの咬合要素722および724を形成することができる。設置されかつ適切にサイズ決めされた時点で、支持体のロックを、咬合要素を押し下げて嵌合させることで行うことができる。
いくつかの場合では、支持体は中心の輪状管腔を有する可能性があり、管腔は、未硬化ポリウレタンで満たされており、支持体の直径もしくは形状またはその両方が挿入時に調整可能なように配設される。所望の直径もしくは形状またはその両方に到達した時点で、送達器具を通じてまたは他の方法で送達される可能性がある紫外線を使用することで、ポリウレタンを硬化および固化する。現行の硬化性材料および照明により、約20〜30秒で硬化を行うことができる。
図32〜35は、再位置決めのために把持体を弁輪組織に設置しかつそれから取り外すための可逆性のプロセスを可能にする別の例示的構成を示す。アンカー470の各々は、剪刀またははさみ機構を包含するものであり、この機構は、0.015インチのニチノールワイヤループの反対する自由端に2つの尖った(但し針状突起付きではない)把持体472、474を有する。各アンカーを形成するために、アンカーの開口構成である図32に示す形状476でワイヤを治具上に巻き付ける。次に熱を使用してその開口形状を記憶設定する。この例でのループ直径478は、約0.25インチの断面直径480を有するトーラス型で弾性の伸展可能な支持体本体上に装着するために約0.20インチである可能性がある。
各アンカーのループを開口させてより大きな直径480の支持体本体上にそれを押し込む際に、アンカーの構成は2つの尖った自由端を自動的に閉鎖して、図33に示す把持構成になる。設置前、および支持体を挿入器具上に載せる前に、支持体本体は図33に示すその収縮設置形状であり、すべてのはさみが閉鎖されている。図34および35では、支持体はその挿入構成に伸長しており、この構成では、直径482はより大きくなって(ここでは模擬的な)挿入器具484上に適合する。支持体本体(例えばシリコーン管)の形状および構成が理由で、本体を伸長させる際に、その断面直径が減少して、アンカーがそれらの固有の開口形状に緩和され、挿入の用意が整う。
開口した適切な形状の弁輪に向かって支持体を押しつけて把持体の鋭い尖端を組織に侵入させることで、挿入が進行する。挿入器具を支持体から取り外す際に、支持体本体は弁輪の所望の最終形状および直径に収縮する。それが収縮する際に、はさみは弁輪の組織をつかみかつ支持体をしっかり定位置に保つようになる。したがって支持体は、挿入が比較的容易であり、プロセスを逆転させること、すなわち支持体本体を拡張させてはさみを解放することで取り外しかつ再位置決めすることができる。
多種多様な挿入器具(本発明者らは拡張器と呼ぶこともある)を使用して、支持体を心臓弁輪組織に取り付けることができる。いくつかは先に説明済みであり、本発明者らは他のものを以下に説明する。
挿入器具の少なくともいくつかの例の構成および操作の重要な原理は、多種多様な状態でありかつ多種多様な形状およびサイズを有する心臓弁を有する広範な患者において確実かつ容易に、外科医またはカテーテル操作者が支持体を設置することをそれらが可能にするというものである。言い換えれば、挿入を日常的かつ単純に行うことができる。これは、ある挿入器具により行うことができ、挿入器具は、任意の心臓弁輪を自動的かつ容易に一時的に拡張および再構成して共通の拡張した形状もしくはサイズまたはその両方を取るようにし、これにより、患者の弁輪の非伸長の文脈および構成に関する懸案事項なしに、共通の形状もしくはサイズまたはその両方に予め拡張した支持体を取り付けることができる。挿入後に、挿入器具を取り外した状態で、支持体を自動的にまたは操作によって確実で安定な所望の最終形状およびサイズに再構成可能なように、支持体は構成されている。
図36〜39は、挿入器具500の一例を図示するものであり、挿入器具は、挿入軸506の周りに等間隔で配設される6本のアーム504で形成される拡張器502を含む。アームの各々は、2つの箇所508および510で屈曲した0.125インチ幅のばね鋼金属ストリップで形成される。アームの端部512は一緒に集まり、プラスチックチューブ513のセグメントによりアルミニウム内管514(外径0.28インチ、内径0.24インチ)の端部で保たれる。アームの反対端部516は一緒に集まり、チューブのセグメントおよびシャフトカラー518によりアルミニウム外管520(外径0.37インチ、内径0.30インチ)に保たれる。外管はハンドル522に接続される。挿入軸に沿って外管内で摺動する内管は第2のハンドル524で操作される。
第1のハンドルに対して第2のハンドルを押すかまたは引っ張る526ことで、内管は外管に対して前後に移動し、これによりアームは図38のように拡張し、図37のように収縮する。例えばシリコーンの薄い成形スリーブ530は、損傷から機構を保護し、心臓組織および支持体を保護する。心臓弁内での支持体の設置前に、支持体を伸長させ、中心***532において拡張器上に装着する。それを力および摩擦により定位置に保つことができ、または設置後に切断される縫合で縛ることができ、あるいは、支持体が着座する凹部を中心***に設けることができる。中心***532の別の図を図44に示す。
図42および43に示すように、いくつかの例では、拡張器は円形ワイヤアーム550を含み得るものであり、これらのアームは、挿入軸の周りに均等に間隔が空けられており、図42に示す拡張構成に各々形状設定されている。各ワイヤの端部552、554は2つの環状ハブ556、558にそれぞれ固定されている。上側ハブ556は中心孔(図示せず)を有しており、中心孔は、ハンドル562がクランプ締めされるねじ切りロッド560を受け止めるようにねじ切りされている。ねじ切りロッドの他端559はハブ558に固定されている。ハンドルを使用してねじ切りロッドを回すことで564、上側ハブを通じて、下側ハブに向かうかまたはそれから離れた方にそれを前進させるかまたはそれを引き出す(回転方向に応じて)。ロッドは下側ハブを押すかまたは引っ張り、それにより2つのハブ間の距離566を増加または減少させ、アームを収縮させるかまたは形状設定拡張構成に拡張させる。
図40に示すように、いくつかの実施形態では、挿入器具540の各アーム538は堅い肢部544で形成されており、肢部は一端546で外管548に、他端549でより幅広い肢部550に接続される。第2の肢部の他端551は先端556において内管554に接続される。これらの肢部は、それらを互いに対して旋回させるヒンジ要素により連結される。アームの各々の上で、クリップ560は、その周囲に沿って1つの場所で支持体を捕捉する陥凹を有する。
図41は、挿入の用意が整った挿入器具上に装着された支持体を示す。
図58および59は、支持体のバージョン730を示す。このバージョン730は、短い縁部736、738に接触している連続する六角形区分732、734のリングを有する。六角形区分のより長い縁部740、742、744、746の接合点には、反対方向に向く鋭い自由端748、750が存在する。さらに、各六角形区分上において、1つの鋭い自由端750は、他の鋭い自由端748よりも長く、針状突起付きの鋭い自由端750が貫通させた組織757を把持するための針状突起752、754、756を有する。すべての針状突起付きの鋭い自由端750は、すべての六角形区分732、734上で同一方向751を向く。他の組の自由端748は、針状突起を有しておらず、存在する場合は他の隣接する組織を貫通することで支持体をさらに安定させて、それら自体を内側に留め、支持体を組織にさらに固定することができる。すべての他の自由端748は、針状突起付きの鋭い自由端750が向く方向751と反対の同一方向753を向く。
支持体のこのバージョン730は、弾性であり、送達構成に拡張可能であり、その後最終構成に収縮する。図60Aおよび61Aに示すように、支持体を例えば送達器具による送達構成でより大きい直径762に拡張させる760際に、各六角形区分732は幅770において増加し、高さ772において減少する。図60Bおよび61Bに示すように、支持体を最終構成でより小さい直径766に収縮させる764際に、各六角形区分732は幅770において減少し、高さ772において増加する。いくつかの実施形態では、支持体のこのバージョン730は、組織への挿入後に支持体を最終構成に収縮させる764ように構成されている、ニチノールもしくは生体適合性エラストマー(または他の材料)などの柔軟な形状記憶材料で作製され得る。例えば支持体は、ヒト身体の体温にある期間露出した時点で収縮するように構成され得る。
他の実施形態は下記の特許請求の範囲の範囲内である。