JP2012255176A - 鋼材および衝撃吸収部材 - Google Patents

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Abstract

【課題】衝撃荷重負荷時における衝撃吸収部材の割れ発生を抑制でき、さらに有効流動応力の高い衝撃吸収部材を得ることが可能な鋼材を提供する。
【解決手段】C:0.05〜0.18%、Mn:1〜3%、Si+Al:0.5%以上2.5%未満およびN:0.001〜0.015%を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、平均間隔1μm以下のラス組織から成るベイナイトの面積率が70%以上、マルテンサイトの面積率が5〜30%であるともに、式(1)および(2)を満足する鋼組織を有する鋼材である。HM0はマルテンサイトの初期平均ナノ硬さ、HB0はベイナイトの初期平均ナノ硬さ、HM10は10%引張変形後のマルテンサイトの平均ナノ硬さ、HB10は10%引張変形後のベイナイトの平均ナノ硬さである。1.2≦HM0/HB0≦1.6・・・(1)0.90≦{(HM10/HM0)/(HB10/HB0)}≦1.3・・・(2)
【選択図】図5

Description

本発明は、鋼材および衝撃吸収部材に関し、具体的には、衝撃荷重負荷時における割れの発生が抑制され、さらに有効流動応力の高い衝撃吸収部材の素材として好適な鋼材および衝撃吸収部材に関する。
近年、地球環境保護の観点から、自動車からのCO排出量の低減の一環として、自動車車体の軽量化が求められており、自動車用鋼材の高強度化が指向されている。これは、鋼材の強度を向上させることにより、自動車用鋼材の薄肉化が可能となるためである。一方、自動車の衝突安全性向上に対する社会的要求もいっそう高くなっており、単に鋼材の高強度化のみだけでなく、走行中に衝突した場合の耐衝撃性に優れた鋼材の開発も望まれている。
ここで、衝突時の自動車用鋼材の各部位は、数10(s−1)以上の高いひずみ速度で変形を受けるため、動的強度特性に優れた高強度鋼材が要求される。
このような高強度鋼材として、静動差(静的強度と動的強度との差)が高い低合金TRIP鋼や、マルテンサイトを主体とする第2相を有する複相組織鋼といった高強度複相組織鋼材が知られている。
低合金TRIP鋼に関しては、例えば、特許文献1に、動的変形特性に優れた自動車衝突エネルギー吸収用加工誘起変態型高強度鋼板(TRIP鋼板)が開示されている。
また、マルテンサイトを主体とする第2相を有する複相組織鋼板に関しては、下記のような発明が開示されている。
特許文献2には、微細なフェライト粒からなり、結晶粒径が1.2μm以下のナノ結晶粒の平均粒径dsと、結晶粒径が1.2μmを超えるミクロ結晶粒の平均結晶粒径dLとがdL/ds≧3の関係を満足する、強度と延性バランスとが優れ、かつ、静動差が170MPa以上である高強度鋼板が開示されている。
特許文献3には、平均粒径が3μm以下のマルテンサイトと平均粒径が5μm以下のマルテンサイトの2相組織からなり、静動比が高い鋼板が開示されている。
特許文献4には、平均粒径が3.5μm以下のフェライト相を75%以上含有し、残部が焼き戻しマルテンサイトからなる衝撃吸収特性に優れる冷延鋼板が開示されている。
特許文献5には、予歪を加えてフェライトとマルテンサイトから構成される2相組織とし、5×10〜5×10/sの歪速度における静動差が60MPa以上を満足する冷延鋼板が開示されている。
さらに、特許文献6には、85%以上のベイナイトとマルテンサイトなどの硬質相のみからなる耐衝撃特性に優れた高強度熱延鋼板が開示されている。
特開平11−80879号公報 特開2006−161077号公報 特開2004−84074号公報 特開2004−277858号公報 特開2000−17385号公報 特開平11−269606号公報
しかしながら、従来の衝撃吸収部材の素材である鋼材には、以下のような課題がある。すなわち、衝撃吸収部材(以下、単に「部材」ともいう。)の衝撃吸収エネルギーを向上するには、衝撃吸収部材の素材である鋼材(以下、単に「鋼材」ともいう。)の高強度化が必須である。
しかしながら、「塑性と加工」第46巻 第534号 641〜645頁に、衝撃吸収エネルギーを決定づける平均荷重(Fave)が、
ave∝(σY・t)/4
σY:有効流動応力
t:板厚
として与えられることが開示されているように、衝撃吸収エネルギーは鋼材の板厚に大きく依存する。したがって、単に鋼材を高強度化することだけでは、衝撃吸収部材について薄肉化と高衝撃吸収性能とを両立させることには限界がある。
ところで、例えば、国際公開第2005/010396号パンフレット、国際公開第2005/010397号パンフレット、さらには国際公開第2005/010398号パンフレットにも開示されるように、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーはその形状にも大きく依存する。
すなわち、塑性変形仕事量を増大させるように衝撃吸収部材の形状を最適化することによって、単に鋼材を高強度化することだけでは達成し得ないレベルまで、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを飛躍的に高めることができる可能性がある。
しかしながら、塑性変形仕事量を増大させるように衝撃吸収部材の形状を最適化したとしても、鋼材がその塑性変形仕事量に耐え得る変形能を有していなければ、想定していた塑性変形が完了する前に、衝撃吸収部材に早期に割れが生じてしまい、結果的に塑性変形仕事量を増大させることができず、衝撃吸収エネルギーを飛躍的に高めることができない。また、衝撃吸収部材に早期に割れが生じると、この衝撃吸収部材に隣接して配置された他の部材を損傷する等の予期せぬ事態を招きかねない。
従来は、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーが鋼材の動的強度に依存するとの技術思想に基づいて、鋼材の動的強度を高めることが指向されてきたが、単に鋼材の動的強度を高めることを指向するのでは顕著な変形能の低下を招く場合がある。このため、塑性変形仕事量を増大させるように衝撃吸収部材の形状を最適化したとしても、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを飛躍的に高めることができるとは限らなかった。
また、そもそも上記技術思想に基づいて製造された鋼材の使用を前提として衝撃吸収部材の形状が検討されてきたため、衝撃吸収部材の形状の最適化は、当初から既存の鋼材の変形能を前提として検討されており、塑性変形仕事量を増大させるように、鋼材の変形能を高め、かつ衝撃吸収部材の形状を最適化するという検討自体が、これまで十分になされていなかった。
上述したように、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを高めるには、塑性変形仕事量を増大させるように、鋼材を高強度化するのみならず衝撃吸収部材の形状を最適化することも重要である。
鋼材に関しては、塑性変形仕事量を増大させることができる、衝撃吸収部材の形状の最適化を可能にするように、衝撃荷重負荷時における割れの発生を抑制しつつ、塑性変形仕事量を増大させるように有効流動応力を高めることが重要である。さらに、衝突時における衝撃吸収部材の座屈方向が衝撃吸収部材の設計時において想定していた座屈方向と差異が生じた場合であっても、割れが抑制されて高い衝撃吸収エネルギーが得られるように、ロバスト性に優れることが求められる。
本発明者らは、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを高めるとともにロバスト性に優れたものとすることを可能にするために、鋼材について、衝撃荷重負荷時における割れの発生を抑制するとともにロバスト性に優れたものとし、さらに有効流動応力を高める方法を鋭意検討し、以下に列記する新たな知見を得た。
(A)衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを高めるには、鋼材について5%の真ひずみを付与した際の有効流動応力(以下、「5%流動応力」と記載する。)を向上させることが有効である。
(B)衝撃荷重負荷時における割れの発生を抑制するには、一様伸びと局部延性とを向上させることが有効である。
(C)衝撃荷重負荷時における割れの抑制に関するロバスト性を向上させるには、局部延性を向上させることが有効である。
(D)鋼材の5%流動応力を高めるには、降伏強度と低ひずみ域における加工硬化係数とを向上させることが有効である。
(E)降伏強度と低ひずみ域における加工硬化係数と向上させるには、鋼材の鋼組織を、ベイナイトを主相とし、ベイナイトより硬質であるマルテンサイトを第2相に含有する複相組織することが必要である。
(F)ベイナイトを主相とする複相組織鋼材の降伏強度と局部延性とは、ベイナイト面積率とベイナイトのラス組織の平均間隔(以下、「平均ラス間隔」ともいう。)とに依存する。したがって、ベイナイトを主相とする複相組織鋼材において高い降伏強度と高い局部延性を得るには、平均ラス間隔の上限を限定したベイナイト面積率の下限を限定する必要がある。
(G)第2相に含有されるマルテンサイトは、低ひずみ域における加工硬化係数の向上と一様伸びの向上とに寄与する。したがって、マルテンサイト面積率の下限を限定する必要がある。
(H)一方、マルテンサイト面積率が過大であると局部延性の低下をもたらす。したがってマルテンサイト面積率の上限を限定する必要がある。
(I)主相であるベイナイトと第2相に含有されるマルテンサイトとの硬度比が過大であると、塑性変形によって可動転位が発生しやすくなるため降伏強度が低下する。したがって、主相であるベイナイトとマルテンサイトとの硬度比の上限を限定する必要がある。
(J)一方、主相であるベイナイトと第2相に含有されるマルテンサイトとの硬度比が過小であると、マルテンサイトを含有させることによって低ひずみ域における加工硬化係数の向上と一様伸びの向上とを図ることが困難となる。したがって、主相であるベイナイトとマルテンサイトとの硬度比の下限を限定する必要がある。
(K)ベイナイトを主相とする複相組織鋼材において、塑性変形によりベイナイトにのみひずみが集中して加工硬化すると、ベイナイト中のせん断帯や粒界に沿って割れが発生し易くなって局部延性が低下する。一方、塑性変形により第2相が過度に硬化しても、主相と第2相との硬度差が大きくなるために両者の界面から割れが発生し易くなって局部延性が低下する。したがって、ベイナイトを主相とする複相組織鋼材において高い局部延性を得るには、主相であるベイナイトと第2相との間でひずみを適度に分配させる必要がある。すなわち、塑性変形の際に主相であるベイナイトと第2相とを同程度に加工硬化させることが必要である。このための指標としては、10%引張変形後の加工硬化率の比率を用いることが好適であり、ベイナイトを主相とし第2相にマルテンサイトを含有する複相組織鋼材においては、10%引張変形後のベイナイトの加工硬化率と10%引張変形後のマルテンサイトの加工硬化率との比について上限および下限を限定する必要がある。
本発明は上記の新たな知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)C:0.05%以上0.18%以下(本明細書では特に断りがない限り化学組成に関する「%」は「質量%」を意味する)、Mn:1%以上3%以下、Si+Al:0.5%以上2.5%未満およびN:0.001%以上0.015%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、平均間隔1μm以下のラス組織から構成されるベイナイトの面積率が70%以上、マルテンサイトの面積率が5%以上30%以下であるともに、下記式(1)および(2)を満足する鋼組織を有することを特徴とする鋼材。
1.2≦HM0/HB0≦1.6 ・・・・・(1)
0.90≦{(HM10/HM0)/(HB10/HB0)}≦1.3・・・・・(2)
ここで、式中の記号は以下の値を表す。
M0:前記マルテンサイトの初期平均ナノ硬さ
B0:前記ベイナイトの初期平均ナノ硬さ
M10:10%引張変形後の前記マルテンサイトの平均ナノ硬さ
B10:10%引張変形後の前記ベイナイトの平均ナノ硬さ
(2)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、Cr:0.5%以下およびMo:0.2%以下からなる群から選択される1種または2種を含有することを特徴とする(1)項に記載の鋼材。
(3)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、Ti:0.05%以下、Nb:0.05%以下およびV:0.2%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする(1)項または(2)項に記載の鋼材。
(4)前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、B:0.002%以下を含有することを特徴とする(1)項から(3)項までのいずれかに記載の鋼材。
(5)軸圧壊して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材であって、前記衝撃吸収部が(1)項から(4)項までのいずれか1項に記載された鋼材からなることを特徴とする衝撃吸収部材。
(6)曲げ圧壊して塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材であって、前記衝撃吸収部が(1)項から(4)項までのいずれか1項に記載された鋼材からなることを特徴とする衝撃吸収部材。
本発明に係る鋼材は、軸圧壊して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材における該衝撃吸収部の素材として好適である。特に自動車用の衝撃吸収部材の素材として好適であり、例えば、自動車用の衝撃吸収部材としては、閉じた断面を有する筒状の本体を有するクラッシュボックス(バンパーリインフォースを支持しながら、例えばサイドメンバーといったボディシェルに装着され、バンパーリインフォースから負荷される衝撃荷重によって軸圧壊して蛇腹状に塑性変形する)の素材として用いることが好ましい。また、サイドメンバー、フロントアッパーレール、サイドシル、クロスメンバー等の素材として用いることが好ましい。
本発明に係る鋼材は、ロバスト性に優れるため、軸方向以外の衝撃に対する衝撃吸収能にも優れる。したがって、曲げ圧潰して塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材における該衝撃吸収部の素材としても好適であり、例えば、センターピラー等の素材として用いることも好ましい。
本発明によれば、衝撃荷重が負荷された時における衝撃吸収部材の割れの発生を抑制または解消でき、さらに有効流動応力の高い衝撃吸収部材を得ることが可能となるので、衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを飛躍的に高めることが可能となる。斯かる衝撃吸収部材を適用することにより、製品の衝突安全性を一層向上させることが可能になるので、産業上極めて有益である。
図1は、自動車車体における衝撃吸収部材の適用部位の例を示す説明図である。 図2は、衝撃吸収部の形状の一例を示す二面図である。 図3は、衝撃吸収部の形状の一例を示す二面図である。 図4は、軸圧潰における平均圧潰荷重と5%流動応力との関係を示すグラフである。 図5は、軸圧潰における安定座屈率と5%流動応力、一様伸びおよび穴拡げ率との関係を示すグラフである。 図6は、曲げ圧潰試験における衝撃吸収エネルギーと5%流動応力との関係を示すグラフである。
以下、本発明を説明する。
1.鋼組織
(1)複相組織
本発明に係る鋼材の鋼組織は、高い降伏強度と低ひずみ域の加工硬化係数とを得て有効流動応力を高めるために、ベイナイトを主相とし、マルテンサイトを第2相に含有する複相組織とする。
第2相には、平均間隔1μm超のラス組織から構成されるベイナイト、オーステナイト、フェライト、セメンタイトやパーライトが不可避的に含有される場合があるが、5面積%以下であれば許容される。
平均間隔1μm以下のラス組織から構成されるベイナイトの面積率は70%以上である。
ベイナイトを主相とする複相組織鋼材において、ベイナイト面積率とベイナイトの平均ラス間隔とは、降伏強度と局部延性とに影響を及ぼす。すなわち、ベイナイトの面積率を高めてベイナイトのラスを微細化することにより降伏強度が向上し、穴拡げ性や曲げ性に代表される局部延性が向上する。平均間隔1μm以下のラス組織から構成されるベイナイトの面積率が70%未満では、降伏強度および局部延性の不足により良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。したがって、平均間隔1μm以下のラス組織から構成されるベイナイトの面積率を70%未満以上とする。なお、ベイナイトのラス間隔はより微細であることが好ましいので平均ラス間隔の下限は特に規定する必要はないが、C含有量が0.18%以下である化学組成ではラスの微細化には限界があり、通常0.2μm以上となる。
なお、ベイナイトの平均ラス間隔は、鋼材の圧延方向に平行な板厚断面をエメリー紙およびアルミナ粉で研磨し、さらに電解研磨処理を行った後、FE−SEM(電界放射型走査電子顕微鏡)に付帯したEBSD(電子線後方散乱回折)を用いて観察し、方位差が5度以上の界面をラス界面とみなし、その界面の平均間隔から求めるものである。
(2)マルテンサイト面積率:5%以上30%以下
ベイナイトを主相とする複相組織鋼材において、マルテンサイトは、降伏強度と低ひずみ域における加工硬化率とを向上させ、5%流動応力を高める作用を有する。また、一様伸びを高める作用をも有する。マルテンサイト面積率が5%未満では、5%流動応力や一様伸びの不足により良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。したがって、マルテンサイト面積率は5%以上とする。一方、マルテンサイト面積率が30%超では局部延性が低下し、不安定座屈による割れが発生しやすくなる。したがって、マルテンサイトの面積率は30%以下とする。
ベイナイトとマルテンサイトと硬度比は、(1)式に示すように、1.2≦HM0/HB0≦1.6である。
主相であるベイナイトの初期平均ナノ硬さ(HB0)と第2相に含有されるマルテンサイトの初期平均ナノ硬さ(HM0)との硬度比(HM0/HB0)が1.2未満では、マルテンサイトを含有させることによって低ひずみ域における加工硬化係数の向上と一様伸びの向上とを図ることが困難となり、割れが発生しやすくなる。したがって、上記硬度比(HM0/HB0)は1.2以上とする。
一方、上記硬度比(HM0/HB0)が1.6超では、ベイナイト主相と硬質第2相間の硬度比が大きいと、塑性変形により可動転位が発生しやすくなるため降伏強度が低下する。それにより、衝撃吸収エネルギーが低下して良好な衝撃吸収能を有する衝撃吸収部材を得ることが困難となる。したがって、上記硬度比(HM0/HB0)は1.6以下とする。
ベイナイトとマルテンサイトとの加工硬化率比は、(2)式に示すように、0.9≦{(HM10/HM0)/(HB10/HB0)}≦1.3である。
ベイナイトを主相とする複相組織鋼材において、塑性変形によりベイナイトにのみひずみが集中して加工硬化すると、ベイナイト中のせん断帯や粒界に沿って割れが発生し易くなって局部延性が低下する。一方、塑性変形により第2相が過度に硬化しても、主相と第2相との硬度差が大きくなるために両者の界面から割れが発生し易くなって局部延性が低下する。したがって、ベイナイトを主相とする複相組織鋼材において高い局部延性を得るには、主相であるベイナイトと第2相との間でひずみを適度に分配させる必要がある。すなわち、塑性変形の際に主相であるベイナイトと第2相とを同程度に加工硬化させることが必要である。このための指標としては、10%引張変形後の加工硬化率の比率を用いることが好適であり、ベイナイトを主相とし第2相にマルテンサイトを含有する複相組織鋼材においては、10%引張変形後のベイナイトの加工硬化率と最も硬質な相であるマルテンサイトの10%引張変形後の加工硬化率との比について上限および下限を限定する必要がある。
具体的には、ベイナイトの初期平均ナノ硬さ(HB0)および10%引張変形後のベイナイトの平均ナノ硬さ(HB10)から求めるベイナイトの加工硬化率(HB10/HB0)と、マルテンサイトの初期平均ナノ硬さ(HM0)および10%引張変形後のマルテンサイトの平均ナノ硬さ(HM10)から求めるマルテンサイトの加工硬化率(HM10/HM0)との比である加工硬化率比{(HM10/HM0)/(HB10/HB0)}について上限および下限を限定する必要がある。
上記加工硬化率比が0.90未満では、塑性変形によりベイナイトにのみひずみが集中して加工硬化すると、ベイナイト中のせん断帯や粒界に沿って割れが発生し易くなって局部延性が低下する。したがって、上記加工硬化率比は0.90以上とする。一方、上記加工硬化率比が1.3超では、マルテンサイトが過度に硬化することにより局部延性が低下する。よって、上記加工硬化率比は1.3以下とする。
2.化学組成
(1)C:0.05%以上0.18%以下
Cは、主相であるベイナイトおよび第2相に含有されるマルテンサイトの生成を促進する作用を有する。また、マルテンサイトの強度を高めることにより引張強度を向上させる作用を有する。また、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。しかしながら、C含有量が0.05%未満では、上記作用による効果を得ることが困難な場合がある。したがって、C含有量は0.05%以上とする。一方、C含有量が0.18%を超えると、マルテンサイトやオーステナイトが過剰に生成して、局部延性の著しい低下を招く場合がある。したがって、C含有量は0.18%以下とする。
(2)Mn:1%以上3%以下
Mnは、主相であるベイナイトおよび第2相に含有されるマルテンサイトの生成を促進する作用を有する。また、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。また、固溶強化によりベイナイトの強度を高めるので、高歪負荷条件下におけるベイナイトの硬度を高めることにより局部延性を向上させる作用を有する。Mn含有量が1%未満では、上記作用による効果を得ることが困難な場合がある。したがって、Mn含有量は1%以上とする。好ましくは1.5%以上である。一方、Mn含有量が3%超では、マルテンサイトが過剰に生成して、局部延性の著しい低下を招く場合がある。したがって、Mn含有量は3%以下とする。好ましくは2.5%以下である。
(3)Si+Al:0.5%以上2.5%未満
SiおよびAlは、ベイナイト中の炭化物の生成を抑制することにより均一延性や局部延性を向上させる作用を有する。また、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。また、固溶強化によりベイナイトの強度を高めるので、高歪負荷条件下におけるベイナイトの硬度を高めることにより局部延性を向上させる作用を有する。SiおよびAlの合計含有量(本明細書では「(Si+Al)量」ともいう。)が0.5%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。したがって、(Si+Al)量は0.5%以上とする。一方、(Si+Al)量を2.5%以上としても、上記作用による効果は飽和してしまいコスト的に不利となる。したがって、(Si+Al)量は2.5%未満とする。
(4)N:0.001%以上0.015%以下
Nは、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。また、固溶強化によりベイナイトの強度を高めるので、高歪負荷条件下におけるベイナイトの硬度を高めることにより局部延性を向上させる作用を有する。また、TiやNbを含有させる場合には、鋼中に窒化物を形成してオーステナイトの粒成長を抑制し、ベイナイトのパケットを微細化することにより、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。Nの含有量が0.001%未満では、上記作用による効果を得ることが困難となる。したがって、N含有量は0.001%以上とする。一方、N含有量が0.015%超では、鋼中に粗大な窒化物を形成して、均一延性および局部延性の著しい低下を招く場合がある。したがって、N含有量は0.015%以下とする。
(5)Cr:0.5%以下およびMo:0.2%以下からなる群から選択される1種または2種
CrおよびMoは、焼き入れ性を高め、ベイナイトの生成を促進する作用を有する。また、マルテンサイトに代表される硬質第2相の生成を促進する作用を有する。さらにまた、固溶強化により鋼を強化し、降伏強度および引張強度を向上させる作用を有する。したがって、CrおよびMoからなる群から選択される1種または2種を含有させてもよい。
しかしながら、Cr含有量が0.5%を超えたり、Mo含有量が0.2%を超えたりすると、一様伸びや局部延性の著しい低下を招く場合がある。したがって、Cr含有量は0.5%以下、Mo含有量は0.2%以下とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るにはCr:0.1%以上およびMo:0.1%以上のいずれかを満足させることが好ましい。
(6)Ti:0.05%以下、Nb:0.05%以下およびV:0.2%以下からなる群から選択される1種または2種以上
Ti、NbおよびVは、鋼中に炭窒化物を形成するなどしてオーステナイトの粒成長を抑制し、割れ感受性を低下させる作用がある。また、ベイナイト中に析出して析出強化の作用により降伏強度を向上させる作用を有する。したがって、Ti、NbおよびVの1種または2種以上を含有させてもよい。しかしながら、Ti含有量が0.05%を超えたり、Nb含有量が0.05%を超えたり、V含有量が0.2%を超えたりすると局部延性の低下が著しくなる場合がある。また、Tiについては、鋼中に形成する窒化物が粗大となってしまい、均一延性および局部延性の著しい低下を招く場合がある。したがって、TiおよびNbの含有量はそれぞれ0.05%以下、Vの含有量は0.2%以下とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Ti、NbおよびVのいずれかの含有量を0.002%以上とすることが好ましい。
(7)B:0.002%以下
Bは、焼入性を向上させ、ベイナイト組織の生成を促進する作用を有する。したがって、Bを含有させてもよい。しかしながら、B含有量が0.002%を超えると、マルテンサイトの硬さが過度に上昇し、局部延性に悪影響を及ぼす場合がある。したがって、B含有量は0.002%以下とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るにはBの含有量を0.001%以上とすることが好ましい。
3.用途
上述した鋼材は、軸圧壊して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材における該衝撃吸収部に適用することが好ましい。
上記衝撃吸収部に上記鋼材を適用すると、衝撃荷重が負荷された時における衝撃吸収部材の割れの発生が抑制または解消されるとともに有効流動応力が高いことから、上記衝撃吸収部材の衝撃吸収エネルギーを飛躍的に高めることが可能となる。
図1は、自動車車体1における衝撃吸収部材の適用部位の例を示す説明図である。軸圧壊して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材としては、例えば自動車部材においては、図1に網掛により示すような部材(フロントクラッシュボックス2、リアクラッシュボックス3、フロントサイドメンバー(フロントフレーム)4、リアサイドメンバー(リアフレーム)5、フロントアッパーレール6、サイドシル(ロッカー)7等)や各種クロスメンバー8等の部材を例示することができる。
図2、3は、いずれも、衝撃吸収部9、10の形状の一例を示す二面図である。
また、上記衝撃吸収部の形状としては、閉断面の筒状体が好適であり、例えば図2に示すような四角形の閉断面を有する筒状体や、図3に示すような八角形の閉断面を有する筒状体を例示することができる。
なお、図2および図3では軸方向の断面形状が一定である例を示しているが、これに限られるものではなく、連続的に変化する形状であってもよい。また、図2および図3では断面形状が四角形や八角形である例を示しているが、これに限られるものではなく、任意の多角形であってもよい。
また、上述した鋼材は、ロバスト性に優れるため、軸方向以外の衝撃に対する衝撃吸収能にも優れる。したがって、曲げ圧潰して塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材における該衝撃吸収部に適用することも好ましい。曲げ圧壊して塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材としては、図1におけるフロントクラッシュボックス2、リアクラッシュボックス3、フロントサイドメンバー(フロントフレーム)4、リアサイドメンバー(リアフレーム)5、フロントアッパーレール6、サイドシル(ロッカー)7、各種クロスメンバー8、バンパーリインフォースメント11、センターピラー(Bポスト)12等の各種ピラー等の部材を例示することができる。
4.めっき層
上述した鋼板の表面には、耐食性の向上等を目的としてめっき層を設けて表面処理鋼板としてもよい。めっき層は電気めっき層であってもよく溶融めっき層であってもよい。
電気めっき層としては、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。溶融めっき層としては、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、溶融アルミニウムめっき、溶融Zn−Al合金めっき、溶融Zn−Al−Mg合金めっき、溶融Zn−Al−Mg−Si合金めっき等が例示される。
めっき付着量は特に制限されず、従来と同様でよい。また、めっき後に適当な化成処理(例えば、シリケート系のクロムフリー化成処理液の塗布と乾燥)を施して、耐食性をさらに高めることも可能である。
5.製造方法
上述した鋼材は、以下の製造方法により製造することが好ましい。
(1)熱間圧延条件
上記化学組成を有するスラブに、800℃以上950℃以下の温度域における総圧下率を50%以上とする熱間圧延を施し、熱間圧延完了後0.4秒間以内に冷却を開始して600℃/秒以上の平均冷却速度で400℃以上500℃以下の温度域まで冷却し、20℃/秒以上100℃/秒未満の平均冷却速度で350℃以下の温度域まで冷却して巻取ることが好ましい。
まず、800℃以上950℃以下の温度域における総圧下率を50%以上とする熱間圧延を施すことにより、オーステナイト中に大量の加工歪を蓄積し、熱間圧延完了後0.4秒間以内に冷却を開始して600℃/秒以上の平均冷却速度で400℃以上500℃以下の温度域まで冷却することにより、微細なラスからなるベイナイト組織を得ることができる。
そして、20℃/秒以上100℃/秒未満の平均冷却速度で350℃以下の温度域まで冷却して巻取ることにより、ベイナイト変態しなかった残りのオーステナイトをマルテンサイトに変態させて、第2相にマルテンサイトを含有するものとすることができる。
(2)冷間圧延、連続焼鈍、溶融亜鉛めっき等
上記の熱延鋼板に冷間圧延および連続焼鈍を施して冷延鋼板とする場合には、冷間圧延における圧下率を40%以上90%以下とし、750℃以上900℃以下の温度域に10秒間以上150秒間以下保持し、次いで、8℃/秒以上の平均冷却速度で500℃以下の温度域まで冷却する連続焼鈍を施すことが好ましい。15℃/秒以上の平均冷却速度で450℃以下の温度域まで冷却する連続焼鈍を施すことがさらに好ましい。
冷間圧延における圧下率を40%以上とすることにより加工歪を蓄積し、750℃以上900℃以下の温度域に10秒間以上150秒間以下保持後、8℃/秒以上の平均冷却速度で500℃以下の温度域まで冷却することにより、ベイナイト変態を促進し、変態しなかった残りのオーステナイトをマルテンサイトに変態させて、第2相にマルテンサイトを含有するものとすることができる。
このようにして得られた鋼板は、さらに溶融亜鉛めっき浴に浸漬して溶融亜鉛めっきを施すことにより溶融亜鉛めっき鋼板としてもよい。溶融亜鉛めっきを施したのちにさらに合金化処理を施して合金化溶融亜鉛めっき鋼板としてもよい。合金化処理を施す場合には550℃を超えないようにすることが好ましい。溶融亜鉛めっきや合金化処理を施す場合には連続溶融亜鉛めっき設備を用いて、連続焼鈍と溶融亜鉛めっき等とを一工程で行うことが生産性の観点から好ましい。
表1に示す化学組成を有するスラブ(厚さ:35mm、幅:160〜250mm、長さ:70〜90mm)を用いて実験を行った。いずれも150kgの溶鋼を真空溶製して鋳造した後、炉内温度1250℃で加熱し、950℃以上の温度で熱間鍛造を行いスラブとしたものである。
Figure 2012255176
上記スラブを1250℃で1時間以内の再加熱した後、熱間圧延試験機を用いて、4パスの粗熱間圧延を施し、さらに3パスの仕上熱間圧延を施して熱延鋼板とした。熱間圧延条件を表2に示す。
Figure 2012255176
さらに、一部の熱延鋼板については、冷間圧延を施した後、連続焼鈍シミュレータを用いて、表3に示す熱処理を施した。これらの条件を表3に示す。
Figure 2012255176
このようにして得られた熱延鋼板および冷延鋼板について、以下の調査を行った。
JIS5号引張試験片を採取して引張試験を行うことにより、降伏強度(YS:0.2%耐力)、引張強度(TS)、一様伸び(u−El)を求めた。
端面ダメージの影響を除去するために機械加工穴についてリーマー加工を施し、他は日本鉄鋼連盟規格JFS T 1001−1996に準じた穴拡げ試験を行って、穴拡げ率を求めた。
鋼板の圧延方向に平行な断面の板厚の1/4深さ位置についてEBSD解析を行い、粒界面方位差マップおよびイメージクオリィマップから平均間隔1μm以下のラス組織から構成されるベイナイトの面積率およびマルテンサイトの面積率を求めた。
ベイナイトおよびマルテンサイトのナノ硬さはナノインデンテーション法によって求めた。板厚の1/4深さ位置をエメリー紙で研磨後、コロイダルシリカにてメカノケミカル研磨を行い、さらに電解研磨により加工層を除去して試験に供した。ナノインデンテーションはバーコビッチ型圧子を用い、押し込み荷重500μNで行った。この時の圧痕サイズは、直径0.1μm以下である。ベイナイトおよびマルテンサイトのそれぞれについてランダムに20点測定し、それぞれの平均ナノ硬さを求めた。10%引張変形後についても上記方法によりベイナイトおよびマルテンサイトの平均ナノ硬さを求めた。
さらに、上記鋼板を用いて角筒部材を作製し、軸方向の衝突速度を64km/hとする軸圧潰試験を実施し、衝突吸収性能を評価した。角筒部材の軸方向に垂直な断面の形状は正八角形として、角筒部材の軸方向長さは200mmとした。
上記角筒部材について、上記正八角形の1辺の長さ(角部の曲線部を除く直線部の長さ)(Wp)と鋼板の板厚(t)とを用いた断面形状因子(Wp/t)と、衝突吸収エネルギー指数(Epa)および割れ発生率との関係を調査した。
ここで、衝突吸収エネルギー指数(Epa)は、座屈時に上記角筒部材にかかる平均応力を求め、鋼板の引張強度で規格化したパラメータであり、下記式(3)で規定されるものである。
Figure 2012255176
ここで、Load Faveは部材にかかる平均荷重であり、Lは上記正多角形の周長であり、tは鋼板の板厚である。
また、安定座屈率は、軸圧潰試験により割れが生じなかった試験体の割合であり、全試験体数に対する割れが発生しなかった試験体数の割合である。
一般に、断面形状因子(Wp/t)が小さくなるほど衝突エネルギーが高くなる。しかしながら、断面形状因子(Wp/t)が小さくなるほど単位圧潰量当りの塑性変形仕事量が大きくなる。このため、圧潰途中で割れが生じる可能性が高まり、結果的に塑性変形仕事量を増大させることはできず、衝撃吸収エネルギーを高めることができない場合がある。
結果を表4にまとめて示す。
Figure 2012255176
また、試験番号1〜15について、2種類の断面形状因子(Wp/t=20、16)における平均圧潰荷重と5%流動応力との関係を図4にグラフで示す。また、それぞれの断面形状因子における安定座屈率、5%流動応力、一様伸びおよび穴拡げ率の関係を図5にグラフで示す。
また、ハット成形した鋼板と平板の鋼板とをアーク溶接したハット型部材を作成し、軸方向に対して直角方向に衝突速度を64km/hとする曲げ圧潰試験を実施し、衝突吸収性能を評価した。
図6に、曲げ圧潰試験における衝撃吸収エネルギーと5%流動応力との関係をグラフで示す。
本発明に係る鋼材は、断面形状因子Wp/t=20における軸圧潰による平均荷重が0.34kN/mm以上と高い。さらに、断面形状因子Wp/t=20における安定座屈率が80%以上、断面形状因子Wp/t=16における安定座屈率が30%以上である。さらには、軸圧潰だけではなく、曲げ圧潰時にも良好な衝撃吸収性能を発揮することからロバスト性に優れているといえる。
1 自動車車体
2 フロントクラッシュボックス
3 リアクラッシュボックス
4 フロントサイドメンバー(フロントフレーム)
5 リアサイドメンバー(リアフレーム)
6 フロントアッパーレール
7 サイドシル(ロッカー)
8 クロスメンバー
9、10 衝撃吸収部
11 バンパーリインフォースメント
12 センターピラー(Bポスト)

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.05%以上0.18%以下、Mn:1%以上3%以下、Si+Al:0.5%以上2.5%未満およびN:0.001%以上0.015%以下を含有し、残部Feおよび不純物からなる化学組成を有し、平均間隔1μm以下のラス組織から構成されるベイナイトの面積率が70%以上、マルテンサイトの面積率が5%以上30%以下であるともに、下記式(1)および(2)を満足する鋼組織を有することを特徴とする鋼材。
    1.2≦HM0/HB0≦1.6 ・・・・・(1)
    0.90≦{(HM10/HM0)/(HB10/HB0)}≦1.3・・・・・(2)
    ここで、式中の記号は以下の値を表す。
    M0:前記マルテンサイトの初期平均ナノ硬さ
    B0:前記ベイナイトの初期平均ナノ硬さ
    M10:10%引張変形後の前記マルテンサイトの平均ナノ硬さ
    B10:10%引張変形後の前記ベイナイトの平均ナノ硬さ
  2. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Cr:0.5%以下およびMo:0.2%以下からなる群から選択される1種または2種を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼材。
  3. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.05%以下、Nb:0.05%以下およびV:0.2%以下からなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼材。
  4. 前記化学組成が、前記Feの一部に代えて、質量%で、B:0.002%以下を含有することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかに記載の鋼材。
  5. 軸圧壊して蛇腹状に塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材であって、前記衝撃吸収部が請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された鋼材からなることを特徴とする衝撃吸収部材。
  6. 曲げ圧壊して塑性変形することにより衝撃エネルギーを吸収する衝撃吸収部を有する衝撃吸収部材であって、前記衝撃吸収部が請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された鋼材からなることを特徴とする衝撃吸収部材。
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