JP2012246174A - 窒化鉄材の製造方法及び窒化鉄材 - Google Patents

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Abstract

【課題】α”Fe16N2相の含有量が多い窒化鉄材が得られる窒化鉄材の製造方法、及び窒化鉄材を提供する。
【解決手段】この製造方法は、純鉄や鉄合金、鉄化合物といったFeを含有する母材に磁場を印加した状態で、窒素雰囲気といった窒素元素含有ガス雰囲気下で上記母材を加熱してα”Fe16N2相を生成する工程を具える。印加する磁場Hは、母材の形状から規定される反磁界係数をNf(Nf=0〜1)とするとき、H=(7/3)+2×Nf以上の強磁場とする。H=(7/3)+2×Nf以上の強磁場を母材に印加することで、Feの基本格子が印加する磁界方向(一方向)に伸び、Nの侵入位置をこの一方向に規制し易い。そのため、過剰窒化を抑制し、磁気特性に優れるα”Fe16N2相を生成し易く、α”Fe16N2相の含有量が多い窒化鉄材を製造することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、永久磁石などの磁性部材の素材に適した窒化鉄材、及びその製造方法に関する。特に、強磁性窒化鉄の含有量が高い窒化鉄材が得られる窒化鉄材の製造方法に関するものである。
モータや発電機などに利用される永久磁石として、Fe-Al-Ni-Co系合金やFe-Cr-Co系合金などの金属材料からなる金属系磁石(代表的には、アルニコ磁石)、酸化鉄を主成分とするフェライトからなるフェライト磁石が利用されている。また、磁気特性により優れる磁石として、希土類磁石(代表的には、Nd-Fe-B磁石、Sm-Fe-N磁石)が知られている。
更に、飽和磁化が非常に高く、磁気特性に非常に優れる磁性体として、α”Fe16N2(原理計算や薄膜による実験において飽和磁化:2.8T程度、正方晶、a=5.72Å、c=6.29Å、結晶記号:I4/mmm)という窒化鉄がある(特許文献1参照)。α”Fe16N2を含む磁石は、上記希土類磁石よりも磁気特性に優れる磁石が得られると期待される。
特開2003-160314号公報
α”Fe16N2を含有する窒化鉄材は、薄膜やナノ粒子からなるFe母材に窒素雰囲気やアンモニア雰囲気で熱処理を施して、上記母材中にα”Fe16N2を生成することで製造することが検討されている。しかし、この方法では、生成されるα”Fe16N2が少なく、得られた窒化鉄材は、α”Fe16N2の含有よる磁気特性の向上効果が少ない。特許文献1は、プラズマ照射することを提案しているが、得られた窒化鉄材中のα”Fe16N2の含有量は30%程度に過ぎない。従って、α”Fe16N2の含有量がより多い窒化鉄材が得られる製造方法の開発が望まれる。
そこで、本発明の目的の一つは、α”Fe16N2の含有量が多い窒化鉄材が得られる窒化鉄材の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、α”Fe16N2の含有量が高い窒化鉄材を提供することにある。
Fe16N2の結晶構造は、鉄の基本格子(体心立方格子:BCC)の格子軸(a軸,b軸,c軸)のうち、任意の軸に沿って一方向に並ぶFe原子-Fe原子間に一つおきにN原子が侵入した配置である。即ち、Fe原子-N原子-Fe原子-Fe原子-N原子-Fe原子…と並ぶ。従って、上記一方向に並ぶFe原子-Fe原子間にN原子を積極的に配置させることができれば、α”Fe16N2を効率よく生成することができる、と言える。
鉄や鉄合金、鉄化合物を単純に窒化すると、体心立方格子の任意の一方向(例えば、c軸方向)に並ぶFe原子-Fe原子間だけではなく、別の二方向(例えば、a軸方向及びb軸方向)に並ぶFe原子-Fe原子間にもN原子が侵入する。即ち、体心立方格子の格子軸に沿った三方向に対してランダムにN原子が侵入して、複数の軸方向に並ぶFe原子-Fe原子間にN原子が配置される。その結果、窒素が過剰に取り込まれて、磁気特性に劣るFe4NやFe3Nなどの化合物が生成される。
従って、任意の一方向に並ぶFe原子-Fe原子間に選択的にN原子を配置させるためには、基本格子を一方向に歪ませることが効果的である。任意の一方向に歪ませる方法として、加圧・圧縮を行う、又は引張り応力を負荷することが考えられる。しかし、加圧・圧縮や引張り応力の印加を行う場合、母材の形状が制限される。
一方、鉄に磁場を印加すると、鉄の基本格子は、磁歪によって印加した磁界方向に伸びる。従って、磁場を利用すれば、任意の形状の母材に対して、鉄の基本格子を任意の一方向に歪ませることができる。そこで、本発明は、鉄を窒化する工程において磁場を印加することを提案する。
また、窒化にあたり母材を加熱すると、母材において強磁性の要因となっている電子が熱揺らぎを受けて、磁歪による伸縮量が小さくなることから、加熱による磁歪効果の低下を補償する必要がある。更に、母材の形状によって反磁場の大きさが異なるため、反磁場の影響をも考慮する必要がある。そこで、本発明では、窒化時の熱影響、及び反磁場の影響を考慮して印加する磁場の大きさを設定することを提案する。
本発明の窒化鉄材の製造方法は、Feを含む母材に窒化処理を施して、α”Fe16N2相を含有する窒化鉄材を製造する方法に係るものであり、母材の組成・組織によって、以下の三つの方法を提案する。
(単相材質からなる形態(以下、単相形態と呼ぶことがある))
この形態は、Feを含有する母材に磁場を印加した状態で、かつ窒素元素含有ガス雰囲気下で加熱して、α”Fe16N2相を生成する工程(窒化処理工程)を具える。
そして、上記印加する磁場Hは、上記母材の形状から規定される反磁界係数をNf(Nf=0〜1)とするとき、H=(7/3)+2×Nf以上の強磁場とする。
(磁性相と非磁性相とを具える形態(以下、二相形態と呼ぶことがある))
この形態は、Feを含有する第1相と、上記第1相に接して存在し、飽和磁化が0.2T以下の材質からなる第2相との混合物からなる母材に磁場を印加した状態で、かつ窒素元素含有ガス雰囲気下で加熱して、上記第1相中にα”Fe16N2相を生成する工程(窒化処理工程)を具える。
そして、上記印加する磁場Hmは、上記母材の形状から規定される反磁界係数をNf(Nf=0〜1)、上記母材に対する第1相の体積比率をV1(V1=0〜1)とするとき、Hm=(7/3)+2×(Nf/V1)以上の強磁場とする。
(複数の磁性相を具える形態(以下、複数磁性相形態と呼ぶことがある))
この形態は、Feを含有する第1磁性相と、上記第1磁性相に接して存在し、飽和磁化が0.4T以上の磁性材料からなる第2磁性相との混合物からなる母材に磁場を印加した状態で、かつ窒素元素含有ガス雰囲気下で加熱して、上記第1磁性相中にα”Fe16N2相を生成する工程(窒化処理工程)を具える。
そして、上記印加する磁場Hは、上記母材の形状から規定される反磁界係数をNf(Nf=0〜1)とするとき、H=(7/3)+2×Nf以上の強磁場とする。
上述のいずれの形態の本発明製造方法も、特定の大きさの強磁場を母材に印加することで、鉄の基本格子を印加した磁界方向に引き伸ばすことができるため、引き伸ばされた格子軸に沿った一方向に並ぶFe原子-Fe原子間にN原子が侵入し易く、他の二方向にN原子が侵入することを低減できる。即ち、本発明製造方法は、N原子の侵入方向を規制することができる。そのため、本発明製造方法は、α”Fe16N2相を効率よく生成可能であり、α”Fe16N2相の含有量が多い窒化鉄材を製造できる。従って、本発明製造方法は、α”Fe16N2相の含有効果を十分に得られ、磁気特性に非常に優れる窒化鉄材、この窒化鉄材を素材とする永久磁石を提供できると期待される。また、本発明製造方法は、磁場の印加を利用するため、粉末、粉末成形体、薄膜など任意の形状の母材に適用可能であり、大型で、磁気特性に非常に優れる窒化鉄材を提供できると期待される。
本発明製造方法の一形態として、上記雰囲気が、窒素(N2)雰囲気、アンモニア(NH3)雰囲気、及び窒素元素を含むガスと希ガス又は水素(H2)ガスとの混合ガス雰囲気から選択される一種である形態が挙げられる。
上記形態は、いずれもN原子を十分に供給でき、母材中のFeの窒化を十分に行える。特に、水素ガスを含有する雰囲気は還元雰囲気であるため、Feの酸化や生成した窒化鉄の酸化を防止できる上に、Feの酸化により窒化が進行しなくなることも防止でき、窒化鉄を効率よく生成できる。
本発明製造方法の一形態として、加熱温度を150℃以上400℃以下とする形態が挙げられる。
上記形態では、母材のFeと窒素元素との反応性を十分に高められ、α”Fe16N2相を十分に生成可能であり、かつ、高温による印加磁場の低下が少なく、α”Fe16N2相を効率よく生成できる。
本発明製造方法の一形態として、上記雰囲気は、酸素の含有量が体積割合で100ppm以下である形態が挙げられる。
上記形態は、酸素濃度が低いため、鉄成分の酸化を効果的に防止できる。
上記単相形態として、上記母材が平均粒径10nm以上500nm以下の粉末である形態が挙げられる。また、この粉末を集合させた状態で磁場を印加することが好ましい。
上記形態は、原料にいわゆるナノ粉末を利用するため、得られる窒化鉄材もナノオーダーの超微細粉末となり、飽和磁化や保磁力といった磁気特性に優れる。また、原料のナノ粉末を纏めて磁場を印加することで、窒化鉄材を効率よく製造できる。
上記単相形態として、上記母材は、平均厚さが10nm以上500nm以下の薄膜である形態が挙げられる。また、上記薄膜表面に対して垂直方向に磁場を印加することが好ましい。
上記形態も、上述のナノ粉末を用いた場合と同様に、ナノオーダーの窒化鉄材が得られ、磁気特性に優れる。また、上記形態は、上述のナノ粉末を用いた場合よりも、大型の窒化鉄材を形成可能であり、窒化鉄材の生産性に優れる。
上記薄膜と、当該薄膜の構成材料とは異なる無機材料からなる中間膜とを交互に多層に積層させた状態で磁場を印加する形態とすることができる。
上記形態は、Feを含有する薄膜を多層に具えることで、磁気特性以外の特性、例えば、強度や電気伝導性などにも優れた窒化鉄材を得ることができる。また、上記形態は、より大きな窒化鉄材を製造したり、屈曲性を有する窒化鉄材を製造したり、高周波の電力が通電される場合に渦電流を抑制できる窒化鉄材を製造したりすることができる。上記中間膜の構成材料は、例えば、非磁性材料が挙げられる。
上記二相形態として、上記第1相が棒状体であり、各棒状体の最小幅の平均値が10nm以上100nm以下である形態が挙げられる。
各棒状体の最小幅の平均値とは、母材の断面をとって、透過型電子顕微鏡:TEMなどで観察し、この断面に存在する棒状(柱状)の第1相を100個以上抽出し、各棒状体の最小幅を測定し、測定した100個以上の棒状体の最小幅の平均とする。上記形態は、第2相をマトリクスとして、第1相が棒状に存在する形態であり、かつこの棒状体の幅がナノオーダーと非常に小さい。従って、第1相のFe成分から形成されるα”Fe16N2相もナノオーダーの超極細相となり、その大きさからも、磁気特性に優れる窒化鉄材が得られる。
上記二相形態として、上記母材が平均粒径10μm以上1000μm以下の粉末である形態が挙げられる。また、この粉末を集合させた状態で磁場を印加することが好ましい。
上記形態は、母材が特定の大きさの粉末であることで、粉末成形体といった粉末を集合させた状態を容易に形成できる。また、粉末成形体などの粉末が纏まった状態で磁場を印加することで、窒化鉄材を効率よく製造できる。更に、粉末成形体を利用すると、所望の形状で、かつ大型な窒化鉄材を製造することができる。
上記二相形態として、上記第2相は、Al,Ni,Co,Cr及びSiから選択される2種以上の元素を合計で70原子%以上含有する形態が挙げられる。
上記形態は、Fe-Al-Ni-Co系合金やFe-Cr-Co系合金といった公知の合金にスピノーダル分解を利用した相分離処理を施すことで、母材を製造可能であり、母材を容易に準備できる。また、得られる窒化鉄材の磁性体相は、飽和磁化が高いα”Fe16N2相を有するため、従来のアルニコ磁石のようにFe-Co相を生成しなくてもよいことから、Coを含有していない合金やCoの含有量が少ない合金を母材に利用できる。
上記複数磁性相形態として、隣り合う上記第2磁性相に挟まれた上記第1磁性相の最小距離の平均が10nm以上50nm以下である形態が挙げられる。
上記第1磁性相の最小距離の平均は、以下のように求める。母材の断面をとり、一つの第1磁性相を選択し、この第1磁性相に隣接する第2磁性相との接点P1と、当該第1磁性相に隣接する別の第2磁性相との接点P2とをとり、両接点P1,P2間の距離のうち、最小距離を調べる。上記断面に存在する各第1磁性相の最小距離を調べ、その平均を第1磁性相の最小距離の平均とする。
上記形態は、一つの第1磁性相を挟んで存在する第2磁性相の間には、上記最小距離の平均に相当する10nm〜50nmの間隔が存在する。このような母材を利用することで、上記形態では、α”Fe16N2相を主成分とする第1磁性体相と、この第1磁性体相よりも強力な結晶磁気異方性を有し、磁気相互作用の発生距離が第1磁性体相よりも長い結晶磁気異方性を有する第2磁性体相とを具える窒化鉄材が得られ、かつ両磁性体相は、磁気相互作用が生じないように存在することができる。この窒化鉄材は、磁気特性に非常に優れる。
上記複数磁性相形態として、上記母材の第2磁性相は、RE=Y,La,Ce,Pr,Nd,Dy,Tb及びSmから選択される少なくとも1種、X=B,C及びNから選択される1種、ME=Co,Cu,Mn及びNiから選択される少なくとも1種とするとき、RE-Fe-X化合物、又はRE-Fe-ME-X化合物を80体積%以上含有する形態が挙げられる。
上記形態は、母材に、上記REで示される希土類元素を含有する希土類化合物を含有するため、得られた窒化鉄材も、この希土類化合物からなる磁性体相(第2磁性体相)を具える。上記希土類化合物は磁気特性に優れることから、上記形態は、磁気特性に非常に優れる窒化鉄材が得られる。
上記複数磁性相形態として、上記母材の第2磁性相は、MA=Ca,Sr及びBaから選択される少なくとも1種とするとき、MA-Fe-O化合物、又はLa-MA-Fe-Co-O化合物を80体積%以上含有する形態が挙げられる。
上記形態は、母材に、フェライト系磁石と呼ばれる鉄酸化物を含有するため、得られた窒化鉄材も、この鉄酸化物からなる磁性体相(第2磁性体相)を具える。上記鉄酸化物は、原料が安価であることから、上記形態は、磁気特性に優れる窒化鉄材を低コストで製造できる。
上記複数磁性相形態として、上記母材の第2磁性相は、Pt-Fe合金、Pt-Co合金、及びPt-(Fe,Co)化合物から選択される1種以上を合計で80体積%以上含有する形態が挙げられる。
上記Pt-Fe合金などの合金や化合物は耐食性に優れることから、上記形態は、耐食性に優れる窒化鉄材を製造できる。
上記本発明製造方法により、α”Fe16N2相の含有量が多い窒化鉄材が得られる。例えば、本発明窒化鉄材として、上記本発明窒化鉄材の製造方法により得られ、鉄窒化物を主体とする磁性体相を有しており、この磁性体相中にα”Fe16N2相を80体積%以上含有する形態が挙げられる。
上記本発明窒化鉄材は、磁気特性に優れるα”Fe16N2相を十分に含有しており、磁気特性に非常に優れる。そのため、本発明窒化鉄材は、永久磁石の素材に好適に利用できる。
本発明窒化鉄材の製造方法は、α”Fe16N2相の含有量が多い窒化鉄材を生産性よく製造できる。本発明窒化鉄材は、α”Fe16N2相の含有量が多く、磁気特性に非常に優れる。
図1は、試験例1において、窒化鉄材の製造に当たり原料に用いた母材の反磁界係数Nfと、窒化処理時の印加磁場Hとの関係を示すグラフである。 図2は、試験例2において、窒化鉄材の製造に当たり原料に用いた母材において、第1相の体積比率V1に対する反磁界係数Nfの比:Nf/V1と、窒化処理時の印加磁場Hmとの関係を示すグラフである。 図3は、試験例3において、窒化鉄材の製造に当たり原料に用いた母材の反磁界係数Nfと、窒化処理時の印加磁場Hとの関係を示すグラフである。 図4は、反磁界係数の補正方法を説明するための説明図である。
以下、本発明をより詳細に説明する。
〔製造方法〕
[母材]
本発明製造方法で原料に用いる母材は、少なくともFeを含有するものとする。上記単相形態の母材の材質は、純鉄(Fe:98質量%以上、残部:不可避的不純物)、鉄合金、鉄化合物が挙げられる。鉄合金は、例えば、Fe-Si系合金,Fe-Ni系合金,Fe-Al系合金,Fe-Co系合金,Fe-Cr系合金,Fe-Si-Al系合金(センダスト)などが挙げられる。鉄化合物は、Fe-O化合物(例えば、酸化鉄)やFe-C化合物(例えば、有機酸塩化合物や有機酸錯体)などが挙げられる。上記鉄化合物を原料に用いる場合には、予め、還元処理などの適宜な処理を行って酸素や有機成分などを除去し、純鉄や鉄合金などとしてから、後述する窒化処理を施す。
上記純鉄や鉄合金などからなる母材の形状は、種々の形状を利用できる。代表的には、粒子や膜材が挙げられる。単相形態では、生成されるα”Fe16N2相の形状・大きさが母材の形状・大きさに実質的に等しくなる。α”Fe16N2相は、ナノオーダーであると優れた磁気特性を有することから、母材もナノオーダーであることが好ましい。例えば、母材は、粒径がナノオーダーであるナノ粉末が挙げられる。特に、平均粒径が10nm以上のナノ粉末を母材とすると、熱揺らぎを受け難く、熱揺らぎによる磁気特性の低下が生じ難い。また、500nm以下のナノ粉末を母材とすると、磁気特性に優れる窒化鉄材(粉末)が得られる。従って、母材の平均粒径は10nm以上500nm以下が好ましい。また、鉄系材料からなる粒子は、その粒径が10nm付近である場合に保磁力が最大になり、磁気特性により優れる窒化鉄材が得られることから、母材の平均粒径は、10nm〜100nm程度、更に10nm以上50nm以下がより好ましい。このような超微細粉末は、例えば、逆ミセル法、ゾルゲル法などを利用することで製造できる。
上記ナノ粉末は、当該粉末を構成する粒子一つ一つを窒化処理すると、生産性に劣るため、集合させた状態で窒化処理を行うことが好ましい。粉末を集合させた状態とは、例えば、粘着フィルムに粉末を貼り付けたり、ゾル状物質やゲル状物質中に粉末を混合させたりすることなどが挙げられる。
或いは、母材は、例えば、平均厚さがナノオーダーである薄膜が挙げられる。特に、平均厚さが10nm以上500nm以下、好ましくは10nm〜100nmであると、保磁力が高く、磁気特性に優れた窒化鉄材が得られる。このような薄膜は、スパッタリング法といった物理蒸着法(PVD法)、化学蒸着法(CVD法)などの蒸着法により形成できる。鉄合金の薄膜を形成する場合は、所望の組成の合金が得られるように、Feの蒸着源と、合金をつくる元素の蒸着源とを用意したり、所望の組成の合金の蒸着源を利用したりしてもよい。成膜条件(蒸着源、成膜時間、成膜面積など)を適宜選択することで、所望の組成、厚さ、大きさの薄膜状母材を容易に形成可能である。
上記薄膜は、単層としてもよいが、多層とすると、大型な窒化鉄材が得られる。多層構造とする場合、例えば、上記純鉄や鉄合金などからなる膜間に、当該膜の構成材料とは異なる無機材料からなる中間膜を形成することができる。より具体的には、純鉄からなる膜と鉄合金からなる膜とを交互に積層した形態、組成の異なる鉄合金からなる膜を交互に積層した形態とすることができる。この場合、一方が中間膜として機能し、かつ、全ての膜中にα”Fe16N2相を生成可能である。従って、母材に多層構造の薄膜を用いると、大型で、かつ磁気特性に非常に優れる窒化鉄材が得られる。その他、中間膜の材質は、後述する二相形態の第2相の構成材料(代表的には、非磁性材料)、複数磁性相形態の第2磁性相の磁性材料が挙げられる。中間膜の厚さは、隣接する膜間に磁気相互作用が生じない厚さとするとよく、例えば、20nm〜50nm程度が挙げられる。
なお、母材を薄膜とする場合、例えば、純鉄などのFeを含有する母材膜を成膜した後、後述する窒化処理を行う、というように母材膜の形成と窒化処理とを繰り返し行うことで、α”Fe16N2相が均一的に形成された窒化鉄層を多層に具える窒化鉄材を製造することができる。或いは、純鉄などのFeを含有する母材膜を多層に積層した後、後述する窒化処理を行うと、窒化処理が一度で済み、工程数を低減できる。但し、この場合、各母材膜の面積によっては窒素の侵入不足が生じる恐れがあることから、多層構造の窒化鉄層を具える窒化鉄材を製造する場合には、Feを含有する母材膜を成膜するごとに窒化処理を行うことが好ましい。上述した中間膜を具える形態においても、母材膜の成膜→後述する窒化処理→中間膜の成形(以下、上記工程の繰り返し)といった工程を経て、多層構造の窒化鉄層を具える窒化鉄材を製造することができる。
母材を上述のように単層又は多層の薄膜とする場合、例えば、膜表面に対して垂直方向(膜の厚さ方向に平行方向)に磁場を印加すると、いわゆる垂直磁気記録媒体や、磁気ヘッドなどのいわゆる半硬質磁性材料の用途に適した窒化鉄材が得られる。一方、膜表面に対して平行に磁場を印加すると、反磁場の効果と窒化鉄の結晶磁気異方性の効果とを併せ持つことができ、磁石材料として優れた性質を有する窒化鉄材が得られる。
上記二相形態の母材は、上述のようにFeを含有する第1相と、飽和磁化が0.2T以下の材質からなる第2相とが隣接して存在する相分離組織を有するものを利用する。母材中の第1相は、その主成分であるFeがα”Fe16N2相の生成に利用され、窒化鉄材中の磁性体相を形成するための前駆体として機能する。母材中の第2相は、代表的には、非磁性材料で構成され、窒化処理後も概ねそのまま存在して、窒化鉄材中の磁性体相同士に磁気相互作用が生じないように存在する介在相として機能する。
上記特定の組織を有する母材は、例えば、Al,Ni,Co,Cr及びSiから選択される2種以上の元素を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鉄合金にスピノーダル分解を利用した相分離処理を施し、第1相を析出させることで製造できる。上記鉄合金は、Fe-Al-Ni-Co系合金、Fe-Cr-Co系合金、Fe-Si-Ni系合金などが挙げられ、公知の合金を利用できる。その他、Coを実質的に含まないFe-Al-Ni系合金(Coの含有量:5原子%未満)、Coの含有量が5原子%〜10原子%の低CoのFe-Cr-Co系合金なども利用可能であり、このような合金を利用すると、Coの使用量を低減できる。相分離処理の条件は、アルニコ磁石などの金属系磁石の製造に利用されている相分離処理の条件を適用できる。例えば、Fe-Al-Ni系合金を素材とする場合、溶体化処理の加熱温度:850℃〜1300℃(好ましくは1000℃以上)、保持時間:10分〜10時間、900℃〜700℃の温度範囲における当該素材の相分離温度域における降温速度:0.05℃/sec以上5℃/sec以下が挙げられる。例えば、Fe-Cr-Co系合金を素材とする場合、溶体化処理の加熱温度:700℃〜1200℃(好ましくは1000℃以上)、保持時間:10分〜10時間、1000℃以上に加熱した後、550℃までの冷却工程における降温速度:5.0℃/sec以上、550℃〜450℃の温度範囲において当該素材の相分離温度域における降温速度:0.05℃/sec以上5℃/sec以下が挙げられる。
上記相分離温度域での降温中、磁場を印加すると(0.4MA/m(5kOe)以上、或いは0.5T以上)、Feを含有する第1相の幅がナノオーダー、長さがマイクロオーダーといったアスペクト比が非常に大きなナノサイズの棒状とすることができ、磁場を印加しないと粒状とすることができる。第1相が棒状の場合、第2相は第1相を包むような筒状のマトリクスとなり、断面組織を観察すると模様のように両相が交互に配置された組織となり、粒状の場合、第1相の粒子の周囲を囲むように第2相が存在する。窒化反応を行うとき、第1相に比較して第2相への窒素の拡散が小さい場合、第1相が棒状である組織が好ましく、第1相に比較して第2相への窒素の拡散が大きい場合、第1相は粒状でもよい。
上記相分離処理により、第1相は、実質的にFe相やFe-Co相などで構成され、第2相は、Al,Ni,Co,Cr及びSiから選択される2種以上の元素を含有する相、代表的にはAl-NiやCr-Coといった合金で構成される。Al-NiやCr-Coといった合金は、通常、非磁性材料であり、飽和磁化が0.2T以下である。第2相中における上記合金成分の割合が高いほど好ましく、70原子%以上、更に80原子%以上、特に90原子%以上が好ましい。母材の非磁性成分の割合が高いことで、得られた窒化鉄材中において、この非磁性成分によって磁性体相間に磁気相互作用が生じることを効果的に防止できる。
窒化鉄材中の磁性体相の形状や大きさは、母材の第1相の形状や大きさに実質的に等しくなる。上述のようにα”Fe16N2相は、ナノオーダーであると磁気特性に優れることから、第1相もナノオーダーであることが好ましい。例えば、第1相が上述のように棒状体であり、各棒状体の最小幅の平均値が10nm以上であると、窒化鉄材中に生成されるα”Fe16N2相も10nm以上の棒状体となって飽和磁化が高くなり、上記平均値が100nm以下であると、α”Fe16N2相もその幅が100nm以下の超極細相となり、磁気特性に優れる窒化鉄材が得られる。第1相の最小幅の平均値は、20nm以上50nm以下がより好ましい。
上記二相形態の母材は、窒素と十分に接触できるように、粉末であることが好ましい。特に、平均粒径10μm以上1000μm以下の粉末、好ましくは、20μm以上200μm以下の粉末であると、所望の形状・大きさの粉末成形体を容易に作製できる。粉末成形体は、原料粉末を構成する粒子間の間隙が残存しており、この粒子間の間隙から窒素が侵入可能である。従って、粉末成形体は、一度に多く粉末を窒化処理できる上に、大型の窒化処理材も形成でき、窒化鉄材の生産性に優れるため、母材に好適に利用できる。粉末成形体を母材に利用する場合、相対密度が高いほど、磁性成分の割合が高い窒化鉄材が得られるが、緻密過ぎると窒素の侵入経路を十分に確保できず、α”Fe16N2相を効率よく生成することが難しい。そのため、相対密度が90%以上94%以下の粉末成形体が好ましい。成形圧力は、成形金型の温度にもよるが、例えば、0.5GPa〜2.0GPaが挙げられる。成形時の雰囲気は、酸素の含有量が少ない雰囲気(酸素:100体積ppm以下)や酸素を実質的に含まない雰囲気(例えば、Arといった希ガスなどの不活性雰囲気)とすると、母材の酸化を防止できる。
この二相形態から得られた窒化鉄材において、磁性体相中の主成分であるα”Fe16N2相は、硬磁性体として機能する。
上記複数磁性相形態の母材には、Feを含有する第1磁性相と、飽和磁化が0.4T以上の磁性材料からなる第2磁性相とが隣接して存在する多相組織を有するものを利用する。母材中の第1磁性相は、その主成分であるFeがα”Fe16N2相の生成に利用され、窒化鉄材中の第1磁性体相を形成するための前駆体として機能する。母材中の第2磁性相は、窒化処理後も概ねそのまま存在して、第1磁性体相とは別の第2磁性体相として機能する。即ち、複数磁性相形態により得られる窒化鉄材は、第1磁性相から生成されたα”Fe16N2相が、いわゆるナノコンポジットマグネット(交換スプリングマグネット)の軟磁性体として機能し、第2磁性体相(母材の第2磁性相に略等しい)は、硬磁性体として機能することで、非常に強力な磁石となり得る。
上記特定の組織を有する母材は、例えば、Feを含有する希土類化合物、Feを含有する酸化物、Feを含有する合金や金属間化合物などを原料素材とし、この原料素材にFeを過剰に配合して溶解し、得られた溶湯を急冷してアモルファス状態の材料を得た後、Feを含有する第1磁性相が生成(析出)されるように上記アモルファス状態の材料に結晶化処理を行うことで、製造できる。上記結晶化処理を利用する方法は、母材を比較的容易に製造でき、母材の製造性に優れる。
上記希土類化合物は、例えば、RE=Y,La,Ce,Pr,Nd,Dy,Tb及びSmから選択される少なくとも1種、X=B,C及びNから選択される1種、ME=Co,Cu,Mn及びNiから選択される少なくとも1種とするとき、RE-Fe-X化合物、又はRE-Fe-ME-X化合物が挙げられる。具体的には、Nd-Fe-B、Nd-Fe-C、Sm-Fe-N、Nd-Fe-Co-Bなどが挙げられる。希土類磁石に利用されている公知の材料を原料素材に利用できる。結晶化処理の条件は、加熱温度:450℃〜600℃、保持時間:0.01時間〜0.1時間が挙げられる。また、結晶化処理時の雰囲気は、希土類元素の酸化防止のために、非酸化性雰囲気、例えば、Arなどの希ガスといった不活性ガス雰囲気や真空雰囲気(真空度:0.01Pa〜10Pa程度)が好ましい。
上記希土類化合物を原料素材に利用した場合、母材中の第1磁性相は、実質的にFe相で構成され、母材中の第2磁性相は、上記RE-Fe-X化合物やRE-Fe-ME-X化合物で構成される。RE-Fe-X化合物やRE-Fe-ME-X化合物は、飽和磁化が高く、0.4T以上、組成によっては0.7T以上、更に1.0T以上であり、磁気特性に非常に優れる。母材中に、保磁力が高い希土類化合物成分の割合が高いほど、磁気特性に非常に優れる窒化鉄材が得られる。そのため、第2磁性相中における上記希土類化合物成分の割合が高いほど好ましく、80体積%以上、特に90体積%以上が好ましい。
上記酸化物は、例えば、MA=Ca,Sr及びBaから選択される少なくとも1種とするとき、MA-Fe-O化合物、又はLa-MA-Fe-Co-O化合物が挙げられる。具体的には、Sr-Fe-O、Ba-Fe-O、La-Sr-Fe-Co-Oなどが挙げられる。フェライト磁石に利用されている公知の材料を原料素材に利用でき、比較的安価に母材を準備できる。上記酸化物は、例えば、以下のようにして製造することができる。所望の組成の鉄酸化物(フェライト)となるように、鉄以外の金属元素にFeを過剰に配合して溶解し、得られた溶湯を急冷してアモルファス状態の材料を得る。このアモルファス状態の材料に、Feが孤立球状に析出するように結晶化処理を行った後、更に、マトリックスであるフェライト構成金属元素を含む合金相のみを酸化処理することで上記酸化物が得られる。
上記酸化物を利用した場合、母材中の第1磁性相は、実質的にFe相で構成され、母材中の第2磁性相は、飽和磁化が0.4T以上である上記MA-Fe-O化合物やLa-MA-Fe-Co-O化合物で構成される。第2磁性相中における上記酸化物成分の割合が高いほど磁気特性に優れる窒化鉄材が得られることから、80体積%以上、特に90体積%以上が好ましい。
上記合金や金属間化合物は、例えば、Pt-Fe合金、Pt-Co合金、及びPt-(Fe,Co)化合物から選択される1種が挙げられ(いずれも飽和磁化が0.4T以上)、公知のものを利用できる。これらの合金などは耐食性に非常に優れることから、これらの合金などを含むことで耐食性に優れる窒化鉄材が得られる。第2磁性相中における上記合金などの成分の割合が高いほど耐食性を高められ、80体積%以上、特に90体積%以上が好ましい。
窒化鉄材中の第1磁性体相の形状や大きさは、母材の第1磁性相の形状や大きさに実質的に等しくなる。窒化鉄材においてα”Fe16N2相を主成分とする第1磁性体相が所望の形状・大きさとなるように第1磁性相の形状を選択する。上述のようにα”Fe16N2相は、ナノオーダーであると磁気特性に優れることから、第1磁性相もナノオーダーであることが好ましい。例えば、隣り合う第2磁性相に挟まれた第1磁性相の最小距離の平均が10nm以上50nm以下であると、窒化鉄材において隣り合う第2磁性体相に挟まれた第1磁性体相における最小距離も10nm〜50nmとなり、当該窒化鉄材は磁気特性に優れる。第1磁性相の最小距離の平均値は、10nm以上30nm以下がより好ましい。第1磁性相の形状は、例えば、棒状、球状、膜状が挙げられる。
窒化鉄材を磁石の素材に用いる場合、当該窒化鉄材中においてα”Fe16N2相を主成分とする磁性体相や第1磁性体相において形状に起因する反磁界が最も小さくなる方向に、α”Fe16N2結晶のc軸が揃っていることが好ましい。例えば、上記磁性体相などが棒状である場合、棒状体の長軸方向にc軸が揃っていることが好ましく、上記磁性体相などが膜状である場合、膜表面に平行にc軸が揃っていることが好ましい。このようにc軸を揃えるには、上述した二相形態の第1相や複数磁性相形態の第1磁性相が棒状である場合、磁界方向が棒状体の長軸方向となるように、膜状である場合、磁界方向が膜表面に平行方向となるように磁場を印加することが挙げられる。垂直磁気記録の用途では、上述のように磁界方向を膜表面に垂直とすることが好ましい。
[印加する磁場]
本発明製造方法では、単相形態及び複数磁性相形態では、印加する磁場をH=(7/3)+2×Nf以上とし、0.2T以下の材質からなる第2相を具える二相形態では、Hm=(7/3)+2×(Nf/V1)以上とする。後述する試験例に示すように、反磁界係数Nfを変数とし、補償値:(7/3)を考慮して磁場の大きさを設定することで、Feの基本格子を印加する磁界方向に十分に引き伸ばして、N原子の侵入方向を一方向に規制し易い。印加する磁場の上限は工業的に環境磁場の問題や電力コストの問題などによる弊害がない範囲とする。
磁場の印加には、高温超電導磁石を利用することができる。高温超電導磁石は、磁場の変動を高速で行える。低温超電導磁石を用いた場合、磁場変動速度は、一般に、1T当たり5分〜10分程度であるのに対し、高温超電導磁石では、例えば1T当たり10秒以内と非常に短時間で行える。つまり、所望の強磁場を容易に得られることから、高温超電導磁石を利用すると、処理時間の短縮を図ることができる。処理時間の短縮化により、結晶粒の成長を抑制して粗粒化を低減できることから、保磁力が大きな窒化鉄材が得られ易い。更に、磁場変動速度が速いため、素材の投入時や取出時に磁場の印加を停止(OFF)したり、加熱中に磁場の印加を開始(ON)したり、といった磁場の印加の制御も速やかに行える。従って、高温超電導磁石を利用すると、連続的に処理が行え、窒化鉄材の生産性にも優れる。高温超電導磁石は、代表的には、酸化物超電導体により構成された超電導コイルを例えば冷凍機による伝導冷却で冷却して使用される(動作温度はおよそ-260℃以上)。
反磁界係数Nfは、通常、粒子のような球状体を比較的低密度な集合体とし、この集合体に磁場を印加する場合、1/3(0.33)、薄膜に対して膜表面に垂直に磁場を印加する場合(膜厚方向に磁場を印加する場合)、1とする。その他、母材の磁化曲線(I-H曲線)を求め、反磁界係数を適宜補正してもよい。具体的には、母材に対して、窒化処理における磁場の印加方向と同じ方向となるように磁場を印加して、振動試料型磁力計(VSM)でI-H曲線(I=f(H))を求める。そして、図4に示すように横軸(x軸)を磁場H、縦軸(y軸)を磁化Iとし、x軸と磁化曲線とがなす角θを求め、角θが90°となるように補正曲線(I'=f(H-[Nf]×I))を求め、反磁場係数[Nf]を決定し、この補正後の反磁場係数[Nf]を利用するとよい。
[雰囲気]
窒化処理の雰囲気は、窒素元素を含む雰囲気とする。例えば、窒素雰囲気(N2の含有量:99.999体積%以上)、アンモニア雰囲気、窒素(N2)やアンモニアとArなどの希ガスとの混合雰囲気、窒素(N2)やアンモニアと水素ガスとの混合雰囲気などが挙げられる。窒素雰囲気は、窒素を十分に供給でき、アンモニア雰囲気や水素を含む混合雰囲気は、過剰窒化を防止できる上に、鉄成分や希土類元素などの酸化を防止でき、希ガスを含む混合雰囲気も酸化を防止できる。
[加熱温度]
窒化処理時の加熱温度が高いほど、FeとNとの反応性を高められ、Fe原子-Fe原子間にN原子を十分に侵入させられるが、高過ぎると、母材への磁歪効果が小さくなり、α”Fe16N2相の生成効率が低下する。従って、加熱温度は、150℃以上400℃以下が好ましく、200℃〜300℃がより好ましい。
以下、試験例を挙げて、本発明のより具体的な実施形態を説明する。
[試験例1:単相形態]
純鉄を母材とし、適宜磁場を印加しながら窒化処理を行って、窒化鉄材を作製した。この試験では、母材として、純鉄粉と、純鉄からなる薄膜とを用意した。
《粉末》
(母材の準備)
純鉄粉は、粒径が異なる二種類の粉末を用意した。一つは、逆ミセル法により、鉄カルボニル(Fe(CO)5)から純鉄粉を合成し、合成条件を変化させることで、平均粒径が5nm〜50nmのものを用意した。逆ミセル法は、公知の方法を利用できる。他の一つは、市販のカルボニル鉄粉(粒径5μm)を冷凍粉砕し、粉砕度合いを変化させることで、平均粒径が100nm〜1000nmの純鉄粉を用意した。その他、ガスアトマイズ法で形成した純鉄粉などを利用することができる。平均粒径はいずれも、市販のレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて湿式法により測定した。
(窒化処理)
得られた各純鉄粉を耐熱性の粘着フィルム(シリコーン接着剤を付与したポリイミドフィルム)の上に貼り付け、フィルムを巻き上げて粉末を集合させた状態で窒化処理を施した。窒化処理は、純度:99.999体積%の窒素気流による窒素雰囲気(酸素濃度:100体積ppm以下)とし、0T〜5Tの範囲から選択した磁場を印加すると共に、100℃〜400℃の範囲から選択した加熱温度を3時間保持して行った。なお、フィルムは、筒状に巻く他、折り畳んでもよい。
上記窒化処理後、粘着フィルムから粉末を取り出して、窒化処理が施された粉末の質量を測定した。また、取り出した粉末について、振動試料型磁力計(VSM)を用いて、最大磁界2T(≒1590kA/m)として、飽和磁化を測定した。純鉄粉の平均粒径(nm)、窒化処理時の加熱温度(℃)、印加した磁場(磁界)(T)、窒化処理後の粉末の飽和磁化(emu/g=J/(T・kg))を表1に示す。この試験では、純鉄粉を構成する各粒子を球体として扱い、反磁界係数Nfを1/3(0.33)とした。
《薄膜》
(母材の準備)
薄膜は、スパッタ法により基材(シリコン基板)の上に成膜し、成膜時間などを変化させることで、平均厚さが5nm〜1000nmの薄膜(単層)を形成した。成膜条件は、公知の条件を利用した。平均厚さはいずれも、市販の接触式膜厚計を用いた。
(窒化処理)
上記薄膜に窒化処理を施した。窒化処理は、純度:99.999体積%の窒素気流による窒素雰囲気(酸素濃度:100体積ppm以下)とし、0T〜5Tの範囲から選択した磁場を当該膜表面に垂直に印加すると共に、100℃〜500℃の範囲から選択した加熱温度を3時間保持して行った。磁場の印加には、高温超電導磁石を用いた。
上記窒化処理後の試料の質量を測定し、この測定結果と成膜前の基材の質量との差から、窒化処理後の薄膜の質量を求めた。また、この薄膜について、振動試料型磁力計(VSM)を用いて、最大磁界2T(≒1590kA/m)として、飽和磁化(emu/g)を測定した。窒化処理前の薄膜の平均厚さ(nm)、窒化処理時の加熱温度(℃)、印加した磁場(磁界)(T)、窒化処理後の薄膜の飽和磁化(emu/g=J/(T・kg))を表2に示す。この試験では、薄膜の反磁界係数Nfを1とした。
また、母材に上記粉末を用いた場合、及び薄膜を用いた場合について、反磁界係数Nfと印加した磁場との関係を図1に示す。図1では、試料No.1-1〜1-3,2-1〜2-2を実施例、試料No.101〜103,201〜205を比較例として示す。
Figure 2012246174
Figure 2012246174
表1,表2に示すように、磁場を印加することで、飽和磁化が高くなる傾向にあり、印加する磁場の大きさによって、窒化鉄材の飽和磁化の大きさが異なることが分かる。また、図1に示すように、反磁界係数Nfを大きくする場合、印加磁場も大きくすることで、窒化鉄材の飽和磁化が高められることが分かる。従って、反磁界係数Nfと印加磁場Hとは、線形の関係にあると言え、飽和磁化が大きい○印の試料と飽和磁化が小さい●印の試料とは、一次式:y=ax+bにより区別できると言える。図1に示す試料を利用すると、上記一次式として、H=(7/3)+2×Nfが導き出せる。この式から、Nf=0.33のとき、印加する磁場はH≒2.99以上が好ましく、Nf=1のとき、印加する磁場はH≒4.33以上が好ましいと言え、H=(7/3)+2×Nf以上の磁場を印加した試料は、飽和磁化が高くなっている。
H=(7/3)+2×Nf以上の磁場を印加した試料の飽和磁化が高くなった理由は、窒化処理により、α”Fe16N2相の含有量が高い鉄窒化物が形成されたため、と考えられる。実際、例えば、試料No.1-1,2-1の窒化鉄材について、断面をとり、TEM分析及びX線回折を行った結果、α”Fe16N2相が存在しており、α”Fe16N2相の割合は、窒化鉄材全体を100体積%とするとき、試料No.1-1:82体積%、試料No.2-1:84体積%(いずれも80体積%以上)であった。また、磁場を印加しなかった試料No.101,201の窒化鉄材を同様に調べたところ、α”Fe16N2相が少なく(25体積%以下)、Fe4NやFe3Nなどの化合物が多かった。その他の試料も同様であった。
上記試験から、Feを含有する母材を用意し、当該母材の形状から規定される反磁界係数Nfにより求められる値:H=(7/3)+2×Nf以上の強磁場を印加した状態で窒化処理を施すことで、磁気特性に優れる窒化鉄材が得られることが分かる。また、この窒化鉄材は、α”Fe16N2相の含有量が多いことが分かる。
更に、上記試験から、磁気特性により優れる窒化鉄材を得るためには、窒化処理時の加熱温度:150℃以上400℃以下、粉末の平均粒径や薄膜の平均厚さ:10nm以上500nm以下が好ましいと言える。
[試験例2:二相形態]
Feを含有する第1相と、0.2T以下の材質からなる第2相との混合物を母材とし、適宜磁場を印加しながら窒化処理を行って、窒化鉄材を作製した。この試験では、母材として、Fe-Al-Ni合金を用意し、一定の組成の合金と、Al,Niの含有量を異ならせた合金とを用意した。
《一定組成》
(母材の準備)
ガスアトマイズ法により、Fe-17原子%Al-5.5原子%Ni合金からなり、平均粒径50μmの粉末を作製した。平均粒径は、市販のレーザ回折式粒度分布測定装置を用いて湿式法により測定した。得られた粉末に相分離処理を施した。ここでは、Ar雰囲気(Ar気流中)で900℃×1時間保持した後、850℃から750℃の温度域において、外部から1Tの磁場を印加した状態で冷却状態を制御して降温した。冷却状態は、加熱に用いた加熱炉内の温度を制御することで調整し、降温速度を0.2℃/secとした。この制御冷却の後、粉末を冷却油中に投入して急冷した。この工程により、主としてFeから構成される第1相と、AlNi成分を含む第2相とに相分離された母材(合金粉末)を得る。
得られた母材において、上述の降温時の磁場の印加方向と垂直方向に断面をとり、イオンミリングにより薄片化した後、透過型電子顕微鏡:TEM(50000倍程度)により観察したところ、粉末を構成する各粒子内には、第1相が棒状に存在し、この棒状体を包むように筒状の第2相が第1相に接して存在していることが確認できた。上記観察像を用いて、視野内に存在する各棒状体(第1相)の最小幅を求め、その平均を求めた。その結果を表3に示す。また、得られた母材の断面をとり、この断面のX線回折結果とTEM観察時の電子線回折のスポット解析とから上記各相の組成を同定したところ、上記棒状の第1相は、実質的にFeから構成され、第2相は、AlNiを含有していることが確認された。上記X線回折結果を用いて、粉末を構成する各粒子に対する第1相の体積比率を調べ、上記X線回折結果とスポット解析との結果を用いて、第2相に対するAlNi成分の含有量(原子%)を調べた。その結果を表3に示す。
《Al,Ni調整組成》
(母材の準備)
ガスアトマイズ法により、Fe-x原子%Al-y原子%Ni合金からなり、平均粒径50μmの粉末を作製した。Al量及びNi量を表4に示す。平均粒径は、市販の粒度分布測定装置で測定した。得られた粉末に、上記一定組成の場合と同様の条件で相分離処理を施し、主としてFeから構成される第1相と、AlNi成分を含む第2相とに相分離された母材(合金粉末)を得る。得られた母材は、上記一定組成の場合と同様に、棒状の第1相に接するように第2相が存在していた。
得られた母材において、上記一定組成の場合と同様に、第1相の最小幅の平均(nm)、第1相の体積比率、第2相に対するAlNi成分の含有量(原子%)を調べた。その結果を表4に示す。なお、第2相と同一の組成比のAl-Ni-Fe合金を試作して飽和磁化を測定したところ、AlNiの飽和磁化は、0.13T〜0.16Tである(0.2T以下)。
(成形体の作製)
得られた各合金粉末を油圧プレスにより圧縮成形し(成形圧力:1GPa)、粉末成形体(直径φ10mm×高さ10mm、相対密度90%)を得た。相対密度は、粉末成形体の真密度に対する実際の密度から求めた。実際の密度は、市販の密度測定装置を利用して測定し、真密度は、ピクノメータを用いて測定した。
(窒化処理)
作製した粉末成形体に窒化処理を施した。窒化処理は、純度:99.999体積%の窒素気流による窒素雰囲気(酸素濃度:100体積ppm以下)とし、0T〜5Tの範囲から選択した磁場を印加すると共に、100℃〜500℃の範囲から選択した加熱温度を3時間保持して行った。磁場の印加には、高温超電導磁石を用いた。
上記窒化処理後、振動試料型磁力計(VSM)を用いて、最大磁界2T(≒1590kA/m)として、得られた窒化鉄材の残留磁化(T)及び保磁力(kOe)を測定した。窒化処理時の加熱温度(℃)、印加した磁場(磁界)(T)、残留磁化(T)及び保磁力(kOe=(103/4π)kA/m)を表3,表4に示す。この試験では、合金粉末を構成する各粒子を球体として扱い、反磁界係数Nfを1/3(0.33)とした。
また、母材の第1相の体積比率V1に対する反磁界係数Nfとの比:Nf/V1と印加した磁場との関係を図2に示す。図2では、試料No.3-1〜3-3,4-1〜4-6を実施例、試料No.301〜304,401〜404を比較例として示す。
Figure 2012246174
Figure 2012246174
表3,表4に示すように、Fe-Al-Ni合金からなり、相分離された母材を用いた場合も、窒化処理時、磁場を印加することで、保磁力が高くなる傾向にあり、印加する磁場の大きさによって、保磁力の大きさが異なることが分かる。また、図2に示すように、反磁界係数Nfを大きくする場合、印加磁場も大きくすることで、窒化鉄材の保磁力が高められることが分かる。但し、この形態では、反磁界は、第1相の含有量(体積比率)に影響を受ける。そこで、第1相の体積比率V1に対する反磁界係数Nfとの比:Nf/V1を変数とすると、Nf/V1と印加磁場Hmとは、線形の関係にあると言え、試験例1と同様に、図2に示す試料を利用して、保磁力が大きい○印の試料と保磁力が小さい●印の試料とを区別する一次式を求めると、Hm=(7/3)+2×(Nf/V1)が導き出せる。この式から、(Nf/V1)=0.33/0.5≒0.66のとき、印加する磁場はH≒3.65以上、(Nf/V1)=0.33/0.72≒0.46のとき、印加する磁場はH≒3.25以上が好ましいと言え、Hm=(7/3)+2×(Nf/V1)以上の磁場を印加した試料は、保磁力が高くなっている。
Hm=(7/3)+2×(Nf/V1)以上の磁場を印加した試料の保磁力が高くなった理由は、窒化処理により、母材中の第1相のFeからα”Fe16N2相が生成され、α”Fe16N2相の含有量が高い磁性体相を具える窒化鉄材が形成されたため、と考えられる。実際、例えば、試料No.3-2,4-3の窒化鉄材について、断面をとり、TEM分析及びX線回折を行った結果、α”Fe16N2相が存在しており、磁性体相中のα”Fe16N2相の割合は、磁性体相を100体積%とするとき、試料No.3-2:84体積%、試料No.4-3:82体積%(いずれも80体積%以上)であった。一方、磁場を印加しなかった試料No.301,401の窒化鉄材を同様に調べたところ、磁性体相中にα”Fe16N2相が少なく(31体積%以下)、Fe4NやFe3Nなどの化合物が多かった。その他の試料も同様であった。
上記試験から、Feを含有する第1相(体積比率V1)と、0.2T以下の材質からなる第2相との混合物からなる母材を用意し、当該母材の形状から規定される反磁界係数Nf及び体積比率V1により求められる値:Hm=(7/3)+2×(Nf/V1)以上の強磁場を印加した状態で窒化処理を施すことで、磁気特性に優れる窒化鉄材が得られることが分かる。また、この窒化鉄材は、磁性体相を有し、磁性体相中のα”Fe16N2相の含有量が多いことが分かる。
更に、上記試験から、磁気特性により優れる窒化鉄材を得るためには、窒化処理時の加熱温度:150℃以上400℃以下、第1相の最小幅の平均:10nm以上100nm以下が好ましいと言える。また、この試験では、母材にCoを実質的に含有しない合金を利用したが、α”Fe16N2相を生成することで、磁気特性に優れる窒化鉄材が得られる上に、Coの使用量を低減できると言える。
[試験例3:複数磁性相形態]
Feを含有する第1磁性相と、0.4T以上の磁性材料からなる第2磁性相との混合物を母材とし、適宜磁場を印加しながら窒化処理を行って、窒化鉄材を作製した。この試験では、母材として、Nd,Bの含有量が異なる種々の組成のFe-x原子%Nd-y原子%B合金を用意した。
(母材の準備)
Nd,Bが所望の含有量となるようにx,yを選択し、メルトスパン法により、Fe-x原子%Nd-y原子%B合金からなる素材合金を作製した。この素材合金に、Ar雰囲気(Ar気流中)で外部から2Tの磁場を印加した状態で、470℃×0.1時間保持して結晶化処理を施した。この処理を施した素材をボールミルで粉砕して、種々の平均粒径の球状の粉末を得た。平均粒径は、市販の粒度分布測定装置で測定した。この工程により、主としてFeから構成される第1磁性相と、Fe-Nd-B成分を含む第2磁性相とに相分離された母材(合金粉末)を得る。
得られた母材において、上記分解処理時の磁場の印加方向と垂直方向に断面をとり、イオンミリングにより薄片化した後、透過型電子顕微鏡:TEM(50000倍程度)により観察したところ、粉末を構成する各粒子内には、第1磁性相に第2磁性相が接して存在していることが確認できた。上記観察像を用いて、視野内に存在する、第2磁性相に挟まれた第1磁性相の最小距離を求め、その平均を求めた。その結果を表5に示す。また、得られた母材の断面をとり、この断面のX線回折結果とTEM観察時の電子線回折のスポット解析とから上記各相の組成を同定したところ、実質的にFeから構成された相(第1磁性相)と、第1磁性相とは異なる磁性材料からなり、第1磁性相に隣接して存在する相(第2磁性相)とが確認でき、第2磁性相は、Fe-Nd-Bを含有していることが確認された。上記X線回折結果を用いて、粉末を構成する各粒子に対する第1磁性相の体積比率を調べ、上記X線回折結果とスポット解析との結果を用いて、第2磁性相に対するFe-Nd-B成分の含有量(原子%)を調べた。その結果を表5に示す。なお、Fe-Nd-B成分の飽和磁化は、1.4T〜1.5Tである(0.4T以上)。
(成形体の作製)
得られた各合金粉末を油圧プレスにより圧縮成形し(成形圧力:1GPa)、粉末成形体(直径φ10mm×高さ10mm、相対密度83%)を得た。相対密度(粉末成形体の実際の密度/粉末成形体の真密度)は、市販の密度測定装置を利用して実際の密度を測定し、真密度は、ピクノメータを用いて測定した。
(窒化処理)
作製した粉末成形体に窒化処理を施した。窒化処理は、純度:99.999体積%の窒素気流による窒素雰囲気(酸素濃度:100体積ppm以下)とし、0T〜5Tの範囲から選択した磁場を印加すると共に、100℃〜500℃の範囲から選択した加熱温度を3時間保持して行った。磁場の印加には、高温超電導磁石を用いた。
上記窒化処理後、振動試料型磁力計(VSM)を用いて、最大磁界2T(≒1590kA/m)として、得られた窒化鉄材の残留磁化(T)及び保磁力(kOe)を測定した。窒化処理時の加熱温度(℃)、印加した磁場(磁界)(T)、残留磁化(T)及び保磁力(kOe=(103/4π)kA/m)を表5に示す。この試験では、合金粉末を構成する各粒子を球体として扱い、反磁界係数Nfは、補正して、0.28とした。
また、母材の反磁界係数Nfと印加した磁場との関係を図3に示す。図3では、試料No.5-1〜5-3を実施例、試料No.501〜503を比較例として示す。
Figure 2012246174
表5に示すように、Fe-Nd-B合金からなり、相分離された母材を用いた場合も、窒化処理時、磁場を印加することで、保磁力が高くなる傾向にあり、印加する磁場の大きさによって、保磁力の大きさが異なることが分かる。また、図3に示すように反磁界係数Nfを大きくする場合、印加磁場も大きくすることで、窒化鉄材の保磁力が高められることが分かる。即ち、この形態も、反磁界係数Nfと印加磁場Hとが線形の関係にあると言える。ここでは、試験例1で求めたH=(7/3)+2×Nfを当てはめたところ、保磁力が大きい○印の試料と保磁力が小さい●印の試料とは、H=(7/3)+2×Nfにより区別できることが分かる。この式から、Nf=0.28のとき、印加する磁場はH≒2.89以上が好ましいと言え、上記特定の磁場を印加した試料は、保磁力が高くなっている。
H=(7/3)+2×Nf以上の磁場を印加した試料の保磁力が高くなった理由は、窒化処理により、母材中の第1磁性相のFeからα”Fe16N2相が生成され、α”Fe16N2相の含有量が高い磁性体相(第1磁性体相)を具える窒化鉄材が形成されたため、と考えられる。実際、例えば、試料No.5-1の窒化鉄材について、断面をとり、TEM分析及びX線回折を行った結果、α”Fe16N2相を含有する第1磁性体相と、Fe-Nd-Bを主成分とする第2磁性体相とが存在しており、第1磁性体相中のα”Fe16N2相の割合は、第1磁性体相を100体積%とするとき、試料No.5-1:83体積%(80体積%以上)であった。従って、試料No.5-1の窒化鉄材は、α”Fe16N2相の存在による磁気特性の向上効果が得られたと言える。一方、磁場を印加しなかった試料No.501の窒化鉄材を同様に調べたところ、α”Fe16N2相が少なく(第1磁性体相中に28体積%)、Fe4NやFe3Nなどの化合物が多かった。従って、試料No.501の窒化鉄材は、α”Fe16N2相の存在による磁気特性の向上効果が得られ難かったと考えられる。その他の試料も同様であった。
上記試験から、Feを含有する第1磁性相と、0.4T以上の磁性材料からなる第2磁性相とを含有する母材を用意し、当該母材の形状から規定される反磁界係数Nfにより求められる値:H=(7/3)+2×Nf以上の強磁場を印加した状態で窒化処理を施すことで、磁気特性に優れる窒化鉄材が得られることが分かる。また、この窒化鉄材は、α”Fe16N2相を多く含有する第1磁性体相と、Fe-Nd-Bという磁気特性に優れる磁性材料からなる第2磁性体相との双方を具えることで、磁気特性に非常に優れることが分かる。
更に、上記試験から、磁気特性により優れる窒化鉄材を得るためには、窒化処理時の加熱温度:150℃以上400℃以下、第1磁性相の最小距離の平均:10nm以上50nm以下が好ましいと言える。
なお、本発明は、上述した実施形態の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能である。例えば、母材・第2相・第2磁性相の組成、窒化処理時の雰囲気や保持時間などを適宜変更することができる。
本発明窒化鉄材は、永久磁石、例えば、各種のモータ、特に、ハイブリッド自動車(HEV)やハードディスクドライブ(HDD)などに具備される高速モータに用いられる永久磁石の素材に好適に利用することができる。その他、本発明窒化鉄材は、磁性体相の表皮深さが磁性体相の幅に近くなる周波数領域(テラヘルツ領域)までの電磁波干渉・吸収材にも使用できると期待される。本発明窒化鉄材の製造方法は、α”Fe16N2相の含有量が多い上記本発明窒化鉄材の製造に好適に利用することができる。

Claims (19)

  1. Feを含有する母材に磁場を印加した状態で、かつ窒素元素含有ガス雰囲気下で加熱して、α”Fe16N2相を生成する工程を具え、
    前記印加する磁場Hは、前記母材の形状から規定される反磁界係数をNf(Nf=0〜1)とするとき、H=(7/3)+2×Nf以上の強磁場とすることを特徴とする窒化鉄材の製造方法。
  2. Feを含有する第1相と、前記第1相に接して存在し、飽和磁化が0.2T以下の材質からなる第2相との混合物からなる母材に磁場を印加した状態で、かつ窒素元素含有ガス雰囲気下で加熱して、前記第1相中にα”Fe16N2相を生成する工程を具え、
    前記印加する磁場Hmは、前記母材の形状から規定される反磁界係数をNf(Nf=0〜1)、前記母材に対する第1相の体積比率をV1(V1=0〜1)とするとき、Hm=(7/3)+2×(Nf/V1)以上の強磁場とすることを特徴とする窒化鉄材の製造方法。
  3. Feを含有する第1磁性相と、前記第1磁性相に接して存在し、飽和磁化が0.4T以上の磁性材料からなる第2磁性相との混合物からなる母材に磁場を印加した状態で、かつ窒素元素含有ガス雰囲気下で加熱して、前記第1磁性相中にα”Fe16N2相を生成する工程を具え、
    前記印加する磁場Hは、前記母材の形状から規定される反磁界係数をNf(Nf=0〜1)とするとき、H=(7/3)+2×Nf以上の強磁場とすることを特徴とする窒化鉄材の製造方法。
  4. 前記雰囲気は、窒素(N2)雰囲気、アンモニア(NH3)雰囲気、及び窒素元素を含むガスと希ガス又は水素(H2)ガスとの混合ガス雰囲気から選択される一種であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  5. 加熱温度は、150℃以上400℃以下とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  6. 前記雰囲気は、酸素の含有量が体積割合で100ppm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  7. 前記母材は、平均粒径10nm以上500nm以下の粉末であることを特徴とする請求項1に記載の窒化鉄材の製造方法。
  8. 前記粉末を集合させた状態で磁場を印加することを特徴とする請求項7に記載の窒化鉄材の製造方法。
  9. 前記母材は、平均厚さが10nm以上500nm以下の薄膜であり、
    前記薄膜表面に対して垂直方向に磁場を印加することを特徴とする請求項1に記載の窒化鉄材の製造方法。
  10. 前記薄膜と、前記薄膜の構成材料とは異なる無機材料からなる中間膜とを交互に多層に積層させた状態で磁場を印加することを特徴とする請求項9に記載の窒化鉄材の製造方法。
  11. 前記第1相は、棒状体であり、各棒状体の最小幅の平均値が10nm以上100nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の窒化鉄材の製造方法。
  12. 前記母材は、平均粒径10μm以上1000μm以下の粉末であることを特徴とする請求項2又は11に記載の窒化鉄材の製造方法。
  13. 前記第2相は、Al,Ni,Co,Cr及びSiから選択される2種以上の元素を合計で70原子%以上含有することを特徴とする請求項2,11,12のいずれか1項に記載の窒化鉄材の製造方法。
  14. 前記粉末を集合させた状態で磁場を印加することを特徴とする請求項12に記載の窒化鉄材の製造方法。
  15. 隣り合う前記第2磁性相に挟まれた前記第1磁性相の最小距離の平均が10nm以上50nm以下であることを特徴とする請求項3に記載の窒化鉄材の製造方法。
  16. 前記第2磁性相は、RE=Y,La,Ce,Pr,Nd,Dy,Tb及びSmから選択される少なくとも1種、X=B,C及びNから選択される1種、ME=Co,Cu,Mn及びNiから選択される少なくとも1種とするとき、RE-Fe-X化合物、又はRE-Fe-ME-X化合物を80体積%以上含有することを特徴とする請求項3又は15に記載の窒化鉄材の製造方法。
  17. 前記第2磁性相は、MA=Ca,Sr及びBaから選択される少なくとも1種とするとき、MA-Fe-O化合物、又はLa-MA-Fe-Co-O化合物を80体積%以上含有することを特徴とする請求項3又は15に記載の窒化鉄材の製造方法。
  18. 前記第2磁性相は、Pt-Fe合金、Pt-Co合金、及びPt-(Fe,Co)化合物から選択される1種を合計で80体積%以上含有することを特徴とする請求項3又は15に記載の窒化鉄材の製造方法。
  19. 請求項1〜18のいずれか1項に記載の窒化鉄材の製造方法により得られ、鉄窒化物を主体とする磁性体相を有しており、
    前記磁性体相中にα”Fe16N2相を80体積%以上含有することを特徴とする窒化鉄材。
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