JP2012159700A - トナー - Google Patents
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Abstract
【課題】低温定着性を改良したトナーを苛酷な環境で長期保存したとしても、従来のような離型剤の染み出しやブルーミングを発生させず、従ってトナー担持体の離型剤汚染による濃度低下を起こさないトナーを提供する。
【解決手段】結着樹脂、離型剤及び着色剤を少なくとも含有するトナー粒子を有するトナーであり、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、該結着樹脂は、温度55℃乃至75℃に第1の吸熱ピークを有し、さらに、温度80℃乃至120℃に第2の吸熱ピークを有し、該離型剤は、少なくとも1つの吸熱ピークを有し、該結着樹脂の第1の吸熱ピーク温度P1(℃)、第2の吸熱ピーク温度P2(℃)、及び該離型剤の吸熱ピーク温度Pwax(℃)が、下記関係式(1)乃至(2)を満足することを特徴とする。
P1+5≦Pwax≦P1+30 (1)
P2−45≦Pwax≦P2−5 (2)
【選択図】なし
【解決手段】結着樹脂、離型剤及び着色剤を少なくとも含有するトナー粒子を有するトナーであり、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、該結着樹脂は、温度55℃乃至75℃に第1の吸熱ピークを有し、さらに、温度80℃乃至120℃に第2の吸熱ピークを有し、該離型剤は、少なくとも1つの吸熱ピークを有し、該結着樹脂の第1の吸熱ピーク温度P1(℃)、第2の吸熱ピーク温度P2(℃)、及び該離型剤の吸熱ピーク温度Pwax(℃)が、下記関係式(1)乃至(2)を満足することを特徴とする。
P1+5≦Pwax≦P1+30 (1)
P2−45≦Pwax≦P2−5 (2)
【選択図】なし
Description
本発明は、電子写真法、静電記録法、及び磁気記録法などを利用した画像形成方法に用いられるトナー(現像剤)に関するものである。詳しくは、本発明は予め静電潜像担持体上にトナー像を形成後、トナー像を転写材上に転写して画像形成する、複写機、プリンター、ファックスの如き画像形成装置に用いられるトナーに関する。
従来、電子写真法としては多数の方法が知られている。一般的な電子写真法としては、光導電性物質を利用して、種々の手段により像担持体上に電気的潜像を形成し、次いで、該潜像にトナー担持体上で帯電させたトナーを該潜像に転移して可視像化し、必要に応じて紙などの転写材にトナー像を転写した後に、熱および圧力により転写材上にトナー像を定着して最終画像を得る方法が知られている。
近年では特に、画像形成装置においても地球温暖化への懸念から使用時において低CO2排出であることが求められており、そのためには画像形成装置の構成部品の中で一般に最も電力を消費する熱定着器を省電力化することが効果的である。
熱定着器を省電力化するためには、より低温で溶融定着するトナーを用いることが効果的であり、トナーを低温定着化するためにこれまでにも、より低温で溶融するバインダ樹脂や、より低温で溶融する離型剤をトナーに用いるなどの改良がなされてきた。
例えば、より低温で溶融定着できるトナーとして、トナーバインダに結晶性ポリエステルと低融点の非晶性ポリエステルを混合して用い、さらに低融点の離型剤を用いるトナー(特許文献1)が開示されている。
しかし、このように結晶性ポリエステルと非晶性ポリエステルを混合して用いた場合、混練工程で相溶してしまい結晶構造が崩れて非晶化してしまうため、結晶成分の持つシャープメルトな特性をトナーの中で発現させることは非常に困難である。上記提案においても実施例トナー中の結晶成分の有無については開示がない。また、一般に、溶融粘度の低いポリエステル中へ低融点の離型剤を均一に分散させることは困難であり、該文献では分散性を向上させるために帯電性の劣る材料をあえて使用している。さらに、こうしてトナー中に離型剤を分散させた場合においても、保管状況により経時でトナー中の離型剤がトナー表面へ染み出す、またはブルーミング(Blooming:離型剤がトナー表面から生えてくる現象)して例えば薄片となってトナーから脱落する現象が起きることがある。
トナー表面に露出した離型剤による不具合を解決するために、ポリエステル樹脂を用いたトナーの表面に露出している離型剤を、溶媒を用いて溶出除去したトナー(特許文献2)が開示されているが、経時によりトナー内部から表面へ離型剤が染み出してくる現象には効果がないほか、製造工程が複雑であり生産に多大なコストがかかる。
また相溶化剤を用いて離型剤を微分散することにより離型剤の遊離を防止するトナー(特許文献3)や、有機微粒子でトナー表面をコートして、表面に露出した離型剤等を隠蔽したトナー(特許文献4)が開示されているが、これらの方法によっても苛酷な環境で長期にわたる保管をした場合にはトナー内部の離型剤が表面に染み出すことがある。
このように低温定着性に優れたトナーでは、離型剤の分散やトナー表面への露出が問題となり様々な改良が試みられてきたが、経時での離型剤の染み出しやブルーミングといった問題については解決に至っていない。
トナー表面へ離型剤が染み出す、またはブルーミングが成長して離型剤の脱落が起きると、トナー担持体を離型剤が汚染してしまいトナーを正常に帯電させることができず、画像濃度の低下などの不具合を起こしてしまう。
トナーの保管環境や輸送環境を厳密に管理し、さらに使用期限を短期間に設定することでこのようなトナー劣化を回避できても、そのために多大な費用と無駄が発生することになるため、低温定着性に優れたトナーであっても従来のトナーと同等の取り扱いのできるトナーが求められている。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決したトナーを提供することにある。
即ち、本発明の目的は、低温で溶融する結着樹脂と低融点の離型剤を用いて低温定着性を改良したトナーを苛酷な環境で長期保存したとしても、従来のような離型剤の染み出しやブルーミングを発生させず、従ってトナー担持体の離型剤汚染による濃度低下を起こさないトナーを提供することにある。
上記目標を達成するための、本出願に係る発明は以下のとおりである。
(1)結着樹脂、離型剤及び着色剤を少なくとも含有するトナー粒子を有するトナーであり、
示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、該結着樹脂は、温度55℃乃至75℃に第1の吸熱ピークを有し、さらに、温度80℃乃至120℃に第2の吸熱ピークを有し、該離型剤は、少なくとも1つの吸熱ピークを有し、該結着樹脂の第1の吸熱ピーク温度P1(℃)、第2の吸熱ピーク温度P2(℃)、及び該離型剤の吸熱ピーク温度Pwax(℃)が、下記関係式(1)乃至(2)を満足することを特徴とするトナー。
P1+5≦Pwax≦P1+30 (1)
P2−45≦Pwax≦P2−5 (2)
(2)該第1の吸熱ピークの吸熱量ΔH1と該第2の吸熱ピークの吸熱量ΔH2が、
ΔH1≦ΔH2
であることを特徴とするトナー。
(1)結着樹脂、離型剤及び着色剤を少なくとも含有するトナー粒子を有するトナーであり、
示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、該結着樹脂は、温度55℃乃至75℃に第1の吸熱ピークを有し、さらに、温度80℃乃至120℃に第2の吸熱ピークを有し、該離型剤は、少なくとも1つの吸熱ピークを有し、該結着樹脂の第1の吸熱ピーク温度P1(℃)、第2の吸熱ピーク温度P2(℃)、及び該離型剤の吸熱ピーク温度Pwax(℃)が、下記関係式(1)乃至(2)を満足することを特徴とするトナー。
P1+5≦Pwax≦P1+30 (1)
P2−45≦Pwax≦P2−5 (2)
(2)該第1の吸熱ピークの吸熱量ΔH1と該第2の吸熱ピークの吸熱量ΔH2が、
ΔH1≦ΔH2
であることを特徴とするトナー。
本発明によれば、特定の温度領域に2つの吸熱ピークを持つ結着樹脂と、さらに結着樹脂の吸熱ピークと特定の関係にある吸熱ピークを持つ離型剤を組み合わせて使用することにより、低温定着性に優れたトナーを苛酷な環境で長期保存した場合にトナー内部から離型剤が染み出してトナー担持体を汚染する現象を起こさないトナーを得ることができる。
本発明者らは、トナー内部に分散された離型剤が長期保存によりトナー内部から染み出すこの現象について鋭意検討した結果、特定の温度領域に2つの吸熱ピークを持つ結着樹脂と、その2つのピーク間に融点を持つ離型剤とを組み合わせることにより、離型剤のトナー表面への染み出しを抑制できることを見いだした。
離型剤が染み出す、またはブルーミングを起こすメカニズムは明確ではないが、まず、トナー内部の離型剤は、配向がバラバラな微小結晶がモザイク状に集合してひとつのドメインを形成し、その離型剤ドメインが結着樹脂に分散していると考えている。
高温高湿下などで長期間経時させたとき、離型剤の融点以下の温度であっても、離型剤のドメインの中で微細結晶の配向が長い時間をかけて移動(Migration)し、配向をそろえて大きな結晶になって(Crystalization)安定しようとする力が働いているものと思われる。この離型剤の動きにより、ときにはトナーから外側に向かって長さ数μmの巨大な結晶が成長する現象(ブルーミング)が起きているものと推測する。
また、理由は定かではないが、結着樹脂が離型剤と相溶性の良いアクリル系樹脂であった場合は離型剤ドメインの形を崩してまで動くことは希であるのに対し、離型剤と相溶性の悪いポリエステル樹脂の場合には容易に動いて表面に染み出しブルーミングを起こすまで結晶が成長しやすく、さらにはトナー内部で分散している離型剤ドメインが移動して合体し大きな結晶に成長する現象も起きやすくなっているものと思われる。
このようにトナー中の離型剤が移動し、結晶の配向をそろえて成長しようとする動きを抑制するために、本発明者らは、トナー樹脂内部での離型剤の微小結晶の作られ方、つまり結着樹脂と離型剤を溶融混練したのち冷却固化する際の樹脂内部での固化の様子に着目し、固化の状態を制御しようと考え、本発明に至った。
本発明における結着樹脂は、示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、温度55℃乃至75℃に第1の吸熱ピークを有し、さらに、温度80℃乃至120℃に第2の吸熱ピークを有していることを特徴とする。
詳しくは後述するが、これら吸熱ピークはDSC測定において昇温時のDSC曲線に現れるピークである。温度を上げて樹脂が軟化してゆくときに現れるピークであるが、これはその樹脂が冷え固まるときに閉じこめたエネルギーを、溶融して開放することにより発現していると考えられ、つまり冷え固まるときの挙動を現していると考えられる。
一般的なトナー用結着樹脂は、溶融状態から冷え固まる際に過冷却液体状態を経てガラス状態に相転移し、エネルギーを過剰に保持しつつ固化する。次に昇温したとき、分子が動き出す温度に達した際に過剰に持っているエネルギーを緩和する現象(以下、エンタルピー緩和と呼ぶ)が起き、DSC測定の吸熱ピークとして現れる。これが本発明における第1の吸熱ピークである。第1の吸熱ピーク温度P1が55℃よりも低い場合、結着樹脂が常温に近い温度で動き出すことを示しており、このような場合、トナーの保存安定性が悪化する。一方、吸熱ピーク温度P1が75℃よりも高い場合、トナー中の結着樹脂の動き出しが遅いことを示しており、このような場合、低温定着性が悪化する。
本発明における第2の吸熱ピークは、結着樹脂の分子鎖の一部が配向することによって得られる結晶状態の存在を現す。従って、トナー中の結着樹脂の結晶部分がこのピーク温度により融解することを示す。第2の吸熱ピーク温度P2が80℃よりも低い場合、トナー全体の溶融速度が上がるため、低温定着性は向上するものの、トナー層が定着器に突入した直後にトナー層の表面近傍の溶融状態が大きく変化するため低温でのオフセット性が悪化する。一方、吸熱ピーク温度P2が120℃よりも高い場合、低温定着性が悪化する。
トナーの材料として結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂を混合して用いた場合、または単純に結晶化度を制御したポリエステル樹脂を用いた場合には、混練工程で溶融混合した際に樹脂の結晶部と非晶部が相溶して結晶構造が消失してしまい、冷却工程を経たトナー樹脂のなかに結晶構造を維持させることは困難である。例えば原料樹脂のDSC測定において一度目の昇温時には現れた第2の吸熱ピークが、一度降温して二度目の昇温の際にはピークが現れない場合があり、これは、結晶部分を含んだ原料樹脂を用いたとしても、生産時の混練工程を経たトナーに結晶部分を含むとは限らないことを示唆する。
詳しくは後述するが、本発明では、原料樹脂に結晶性樹脂を混合するのではなく、原料樹脂の分子内の一部を配向させて結晶構造を持たせる結着樹脂を用いることで、混練工程を経て冷却したのちにも結晶構造を維持することができる。従って、DSC測定において一度降温させた二度目の昇温時にも、この第2の吸熱ピークを得ることができる。
さらに本発明は、該離型剤の吸熱ピーク温度Pwax(℃)が、下記関係式(1)乃至(2)を満足することを特徴とする。
P1+5≦Pwax≦P1+30 (1)
P2−45≦Pwax≦P2−5 (2)
P1+5≦Pwax≦P1+30 (1)
P2−45≦Pwax≦P2−5 (2)
離型剤の吸熱ピーク温度Pwaxは離型剤の融点を現し、本発明はつまり、特定の温度領域に2つの吸熱ピークをもつ結着樹脂を用い、さらに該2つのピークに挟まれた特定の温度領域に融点を持つ離型剤を用いることを特徴とする。
本発明の樹脂と離型剤の構成を用いることにより、トナー製造時、混練工程で樹脂と離型剤、さらにその他の内添材料が溶融混合した状態から冷却して固まるとき、まず最も高温側で結着樹脂の直鎖部分の配向がそろって結晶部分ができる。高分子中の一部直鎖部分の配向による結晶であるため、この結晶部分は樹脂中に細かく分散された状態で偏りなく点在し、また大きなドメインに成長もしづらい。
次に、さらに冷えて離型剤の凝固点に達すると離型剤が固化するが、先に析出した結着樹脂の結晶部分が離型剤の造核剤となり、樹脂結晶部分の周りに離型剤が集まり固化する。このとき、樹脂結晶を基点として離型剤の結晶が成長するため、離型剤の結晶配向も不安定なモザイク状ではなくある程度そろい安定した結晶となるものと推測する。さらに、結着樹脂中に偏りなく点在する樹脂結晶部分を核として離型剤ドメインが成長するため、帯電性の劣る材料や定着性に劣る材料を用いずとも離型剤が結着樹脂中に細かく分散された状態となる。さらに冷えると樹脂の非晶部分がガラス化し、トナー全体が固定する。
つまり、トナーの中で樹脂の結晶部分と離型剤がそれぞれドメインとなって分散して存在するのではなく、樹脂の結晶部分が離型剤に包まれた形で分散されて存在し、さらに離型剤の結晶状態はモザイク状ではなくある程度安定した結晶になっているものと推測する。離型剤の結晶状態が安定していることにより、トナーになった後に苛酷な環境で長期保管した際にも離型剤の結晶配向が成長することなく、さらに樹脂結晶部分を包んで存在することにより、結晶樹脂部分がアンカーとなり離型剤の染み出しやブルーミングを抑制できるものと推測している。
また、帯電性や定着性の劣る材料を用いずとも離型剤を結着樹脂中に均一に分散でき、さらに樹脂中の結晶部分も細かく分散された状態でトナー中に存在するため、帯電性、定着性のほか、離型性や生産性、耐久性などに優れたトナーを提供できる。
また、トナーの結着樹脂にポリエステル樹脂を用いた場合、一般にシャープメルトな特性を持ち、特に結晶性ポリエステル樹脂を用いた場合には熱溶融時の粘度が低すぎて定着時のオフセットが問題となる場合がある。本発明のトナーでは、ポリエステル樹脂の結晶部分を、それより融点の低い離型剤が包んだ構造をしているため、熱定着時に離型剤がポリエステル結晶部分と定着部材の間に存在することになり、オフセットを防止する効果も発揮すると推測される。
本発明では、P1とPwaxの関係を規定する。このP1は結着樹脂のガラス転移温度Tgに近くTgより少し高い温度であるが、P1に替えてTgとPwaxの関係を規定した場合、以下の効果を得られない場合がある。
まず、P1が存在する樹脂であることにより、冷却して固化する際にはTgを超えて樹脂非晶部の体積減少が進むことが示唆され、また固化した樹脂はエンタルピーを閉じこめた樹脂であることが示唆される。これらの性状が何らかの作用をしているものと推測しているが、離型剤がドメインの形状を変えて移動することが抑制される。
また、P1は昇温時に樹脂非晶部の分子がゆるんで、定着時にトナーの形状が崩れはじめる温度である。離型剤が溶け出すPwaxよりも低い温度にP1が位置することにより、定着プロセスの初期において離型剤が固体のままトナー表面近くに押し出されてから溶融する。これにより、離型剤が細かく分散されて離型剤ドメインが小さい状態であっても容易にトナー表面に流れ出て、離型効果を好ましく発揮することができる。
P1とPwaxの差が5℃より小さいと、離型剤が樹脂結晶部分に集まってドメインを形成する間もなく樹脂全体が固化してしまうので、離型剤が単独で分散した小さなドメインになり、離型剤が移動しやすく長期保管時には染み出しが起きやすい。また、定着時には結着樹脂と離型剤の溶融がほぼ同時に始まるので離型効果が減少し、離型剤の量を増やす、または定着圧力を上げるなどの対応が必要となる場合がある。一方、P1とPwaxの差が30℃より離れていると、降温時に離型剤が自由に動ける時間が長く、また離型剤析出時の樹脂粘度も低い傾向にあるため、離型剤が成長しドメインが大きくなりすぎ、ブルーミングを起こしやすくなる。
また、P2とPwaxの差が5℃より小さいと、樹脂結晶と離型剤がほぼ同時に析出することとなり結晶樹脂を離型剤が包んだ構造を作れず染み出しを起こしやすい。一方、P2とPwaxの差が45℃より大きいと、樹脂結晶が成長しすぎて離型剤への造核作用が小さくなり、離型剤だけのドメインができやすくブルーミングを起こしやすい。
また、先の関係式で示した範囲のうち、(P1+10)≦Pwax≦(P1+25)および(P2−35)≦Pwax≦(P2−15)であるとき、離型剤の状態がさらに好ましくなり、トナー担持体の汚染をさらに抑制できる。
さらに本発明においては、結着樹脂の第1の吸熱ピーク面積で現される吸熱量ΔH1と、第2の吸熱ピーク面積で現される吸熱量ΔH2が、ΔH1≦ΔH2であることが好ましい。ΔH2がΔH1より小さいことは結着樹脂中の結晶部分の量や数が過少であることを意味し、結着樹脂の結晶部分を離型剤の造核剤とする本発明の効果が小さくなる。
本発明における結着樹脂のDSC曲線の吸熱ピーク及び吸熱量は以下の方法で測定される。結着樹脂の吸熱ピークのピーク温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、結着樹脂約5mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定温度範囲30℃乃至200℃の間で、昇温または降温速度10℃/minで測定をおこなう。なお、測定においては、一度200℃まで昇温させ、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温をおこなう。この二度目の昇温過程において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースライン中間点の線と示差熱曲線との交点を、結着樹脂のガラス転移温度Tgとする。この二度目の昇温過程で温度30℃乃至200℃の範囲において、ガラス転移温度Tgの直後に得られた吸熱ピークを吸熱ピークP1、さらに昇温させて得られる吸熱ピークを吸熱ピークP2とする。一方、それら吸熱ピークの吸熱量ΔHは上記吸熱ピークの積分値を求めることで得ることができる。
本発明に使用される結着樹脂としては、分子の一部分を配向させて結晶性を持たせるという点でポリエステル樹脂が好ましく、その中でも特に線状ポリエステルが良い。
本発明において特に好ましく用いられる線状ポリエステル樹脂の成分は以下の通りである。
2価の酸成分としては、以下のジカルボン酸又はその誘導体が上げられる。フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸の如きベンゼンジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル;n−ドデセニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸の如きアルケニルコハク酸類もしくはアルキルコハク酸類、又はその無水物又はその低級アルキルエステル;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物又はその低級アルキルエステル。
本発明は結着樹脂の高分子鎖の一部を配向させることで結晶性を持たせることを特徴としている。そのため、堅固な平面構造をとり、π電子系により非局在化した電子が豊富に存在することで、π−π相互作用により分子配向しやすい芳香族ジカルボン酸が好ましい。特に好ましくは直鎖構造をとりやすいテレフタル酸、イソフタル酸が良い。この芳香族ジカルボン酸の含有量はポリエステル樹脂を構成する酸成分100mol部中50mol部以上であることが吸熱ピークの温度を制御するという点で好ましい。
2価のアルコール成分としては、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)、水素化ビスフェノールA、式(1)で表されるビスフェノール及びその誘導体:
これら中でも、分子の一部を配向させ結晶性を持たせるという観点から直鎖構造をとり易い炭素数2乃至6の脂肪族アルコールが好ましい。但し、それだけでは結晶化度が高くなり、アモルファスの性質が失われてしまう。従って、上記酸とアルコールの組み合わせで得られたポリエステル樹脂の結晶構造を崩し、同一分子内にエンタルピー緩和による吸熱ピークP1と分子配向による吸熱ピークP2を両立する必要がある。そのためには、直鎖構造をとりつつ立体的に結晶性を崩すことが可能な側鎖に置換基を有するネオペンチルグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の使用が特に好ましい。
本発明で使用される、ポリエステル樹脂は、上述の2価のカルボン酸化合物および2価のアルコール化合物以外に、1価のカルボン酸化合物、1価のアルコール化合物、3価以上のカルボン酸化合物、3価以上のアルコール化合物を構成成分として含有してもよい。
1価のカルボン酸化合物としては、安息香酸、p−メチル安息香酸等の炭素数30以下の芳香族カルボン酸や、ステアリン酸、ベヘン酸等の炭素数30以下の脂肪族カルボン酸等が挙げられる。
また、1価のアルコール化合物としては、ベンジルアルコール等の炭素数30以下の芳香族アルコールや、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベへニルアルコール等の炭素数30以下の脂肪族アルコール等が挙げられる。
3価以上のカルボン酸化合物としては、特に制限されないが、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
また、3価以上のアルコール化合物としては、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、グリセリン等が挙げられる。
本発明のポリエステル樹脂の製造方法については、特に制限されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、前述のカルボン酸化合物およびアルコール化合物を一緒に仕込み、エステル化反応またはエステル交換反応、および縮合反応を経て重合し、ポリエステル樹脂を製造する。ポリエステル樹脂の重合に際しては、例えば、チタンテトラブトキシド、ジブチルスズオキシド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム等の重合触媒を用いることができる。また、重合温度は、特に制限されないが、180℃乃至290℃の範囲が好ましい。
また、該結着樹脂は、THF可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される分子量分布において、分子量5000乃至10000の領域に少なくとも1つのピークMpを有し、分子量3000以下の面積が全体の面積に対して20質量%以下であることが好ましく、さらに、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比Mw/Mnが1以上30以下であることが好ましい。ピークMpが分子量5000未満の場合には、耐ブロッキング性が悪化する傾向が見られ、分子量10000を超える場合には定着性が悪化する傾向が見られる。又、分子量3000以下の面積が全体の面積に対して20%よりも大きい場合、低温で分子の変化量が大きくなるため保存性が悪化する傾向が見られる。さらにMw/Mnが1未満のように非常に分子量分布がシャープな場合、高温オフセットが悪化する傾向があり、Mw/Mnが30よりも大きい場合、低温定着性が悪化する傾向がある。
また、該結着樹脂のガラス転移温度は、定着性及び保存性の観点から45℃以上60℃以下、より好ましくは45℃以上58℃以下が良い。
また、該結着樹脂の酸価は5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下が好ましい。酸価が5mgKOH/g未満の場合、その他原材料(特に有機金属錯体のような電荷制御剤)との相互作用が低下する傾向があり、トナー化後の結晶状態の維持が困難になる可能性がある。酸価が50mgKOH/gよりも大きい場合、その他原材料あるいは結着樹脂間の相互作用が増加するため定着性が悪化する可能性がある。このように、本発明においては該結着樹脂の酸価の制御が重要である。トナー原材料との相互作用によりトナー化後も結晶状態を維持させるためには結着樹脂の構造に影響を与えることなく酸価を調整することが必要であり、好ましい方法としては、重合反応終了後に、無水トリメリット酸等を後添加する方法等がある。
本発明のトナーは磁性トナーであっても非磁性トナーであっても良い。磁性トナーとして用いる場合は、磁性酸化鉄を用いることが好ましい。磁性酸化鉄としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄が用いられる。また、磁性酸化鉄はトナー粒子中への微分散性を向上させる目的で、製造時のスラリーにせん断をかけ、磁性酸化鉄をいったんほぐす処理を施すことが好ましい。
本発明においてトナーに含有させる磁性酸化鉄の量は、トナー中に25質量%以上50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以上50質量%が良い。
これらの磁性体は795.8kA/m印加での磁気特性が抗磁力1.6kA/m以上12.0kA/m以下、飽和磁化が50.0Am2/kg以上200.0Am2/kg以下、(好ましくは50.0Am2/kg以上100.0Am2/kg以下)である。さらに、残留磁化は2.0Am2/kg以上20.0Am2/kg以下のものが好ましい。
磁性酸化鉄の磁気特性は、振動型磁力計、例えばVSM P−1−10(東英工業社製)を用いて測定することができる。
非磁性トナーとして用いる場合には、着色剤としてカーボンブラックやその他、従来より知られているあらゆる顔料や染料の一種又は二種以上を用いることができる。
着色剤は樹脂成分100.0質量部に対して、0.1質量部以上60.0質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上50.0質量部以下である。
本発明においては、トナーに離型性を与えるために離型剤(ワックス)を用いる。該ワックスとしては、トナー中での分散のしやすさ、離型性の高さから、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスの如き炭化水素系ワックスが好ましい。これらのワックスの中から、DSC測定における吸熱ピークPwaxが本発明の範囲であるものを選択する。本発明の範囲であるワックスを少なくとも一種用いれば、必要に応じて他の一種または二種以上のワックスを、少量併用してもかまわない。
本発明に用いられる離型剤の例としては次のものが挙げられる。酸化ポリエチレンワックスの如き脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、または、それらのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;及び脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したもの。さらに、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如き飽和アルコール類;長鎖アルキルアルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N−ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N−ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
本発明において特に好ましく用いられる離型剤としては、脂肪族炭化水素系ワックスが挙げられる。このような脂肪族炭化水素系ワックスとしては、以下のものが挙げられる。アルキレンを高圧下でラジカル重合し、又は低圧下でチーグラー触媒を用いて重合した低分子量のアルキレンポリマー;高分子量のアルキレンポリマーを熱分解して得られるアルキレンポリマー;一酸化炭素及び水素を含む合成ガスからアーゲ法により得られる炭化水素の蒸留残分から得られる合成炭化水素ワックス及びそれを水素添加して得られる合成炭化水素ワックス;これらの脂肪族炭化水素系ワックスをプレス発汗法、溶剤法、真空蒸留の利用や分別結晶方式により分別したもの。
前記脂肪族炭化水素系ワックスの母体としての炭化水素としては、以下のものが挙げられる。金属酸化物系触媒(多くは二種以上の多元系)を使用した一酸化炭素と水素の反応によって合成されるもの(例えばジントール法、ヒドロコール法(流動触媒床を使用)によって合成された炭化水素化合物);ワックス状炭化水素が多く得られるアーゲ法(同定触媒床を使用)により得られる炭素数が数百ぐらいまでの炭化水素;エチレンの如きアルキレンをチーグラー触媒により重合した炭化水素。このような炭化水素の中でも、本発明では、分岐が少なくて小さく、飽和の長い直鎖状炭化水素であることが好ましい。特にアルキレンの重合によらない方法により合成された炭化水素がその分子量分布からも好ましい。
該離型剤を添加するタイミングは、トナー製造中の溶融混練時において添加しても良いが結着樹脂製造時であっても良く、既存の方法から適宜選ばれる。
該離型剤は結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下添加することが好ましい。1質量部未満の場合は望まれる離型効果が十分に得られにくい。20質量部を超える場合はトナー粒子中での分散も悪く、感光体へのトナー付着や、現像部材・クリーニング部材の表面汚染が起こりやすく、トナー画像が劣化しやすい。
本発明のトナーには、その帯電性を安定化させるために電荷制御剤を用いることが好ましい。電荷制御剤は、その種類や他のトナー粒子構成材料の物性によっても異なるが、一般に、トナー粒子中に結着樹脂100質量部当たり0.1質量部以上10質量部以下含まれることが好ましく、0.1質量部以上5質量部以下含まれることがより好ましい。このような電荷制御剤としては、本発明の結着樹脂の末端に存在する酸基あるいは水酸基と中心金属が相互作用し易い、有機金属錯体、キレート化合物が有効である。その例としては、モノアゾ金属錯体;アセチルアセトン金属錯体;芳香族ヒドロキシカルボン酸又は芳香族ジカルボン酸の金属錯体又は金属塩が挙げられる。
使用できる具体的な例としては、Spilon Black TRH、T−77、T−95(保土谷化学社)、BONTRON(登録商標)S−34、S−44、S−54、E−84、E−88、E−89 (オリエント化学社)が挙げられる。また、電荷制御樹脂も上述の電荷制御剤と併用することもできる。
また本発明のトナーにおいては、無機微粉末としてトナー粒子表面への流動性付与能が高い、一次粒子の個数平均粒径のより小さいBET比表面積が50m2/g以上300m2/g以下の流動性向上剤を使用することが好ましい。該流動性向上剤としては、トナー粒子に外添することにより、添加前後を比較して流動性が向上し得るものならば使用可能である。例えば、以下のものが挙げられる。フッ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末の如きフッ素系樹脂粉末;湿式製法シリカ、乾式製法シリカの如き微粉末シリカ、それらシリカをシランカップリング剤、チタンカップリング剤、又はシリコーンオイル等により表面処理を施した処理シリカ。好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成された微粉体であり、乾式法シリカ又はヒュームドシリカと称されるものである。例えば、四塩化ケイ素ガスの酸素、水素中における熱分解酸化反応を利用するもので、反応式は次の様なものである。
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
SiCl4+2H2+O2→SiO2+4HCl
また、この製造工程において、塩化アルミニウム又は塩化チタンの如き他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって得られたシリカと他の金属酸化物の複合微粉体でも良い。その粒径は、平均の一次粒径として、0.001μm以上2μm以下の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは0.002μm以上0.2μm以下の範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。
さらには、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることが好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって滴定された疎水化度が30以上80以下の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。
疎水化方法としては、シリカ微粉体と反応あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物で化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の蒸気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。そのような有機ケイ素化合物としては、以下のものが挙げられる。ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、1−ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサンおよび一分子当たり2個から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を含有するジメチルポリシロキサン。これらは一種あるいは二種以上の混合物で用いられる。
該無機微粉末は、シリコーンオイル処理されても良く、また、上記疎水化処理と併せて処理されても良い。
好ましいシリコーンオイルとしては、25℃における粘度が30mm2/s以上1000mm2/s以下のものが用いられる。例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイルが特に好ましい。
シリコーンオイル処理の方法としては、以下の方法が挙げられる。シランカップリング剤で処理されたシリカ微粉体とシリコーンオイルとをヘンシェルミキサーの如き混合機を用いて直接混合する方法;ベースとなるシリカ微粉体にシリコーンオイルを噴霧する方法;あるいは適当な溶剤にシリコーンオイルを溶解あるいは分散せしめた後、シリカ微粉体を加え混合し溶剤を除去する方法。シリコーンオイル処理シリカは、シリコーンオイルの処理後にシリカを不活性ガス中で温度200℃以上(より好ましくは250℃以上)に加熱し表面のコートを安定化させることがより好ましい。好ましいシランカップリング剤としては、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)が挙げられる。
本発明においては、シリカを予め、カップリング剤で処理した後にシリコーンオイルで処理する方法、または、シリカをカップリング剤とシリコーンオイルで同時に処理する方法によって処理されたものが好ましい。
無機微粉末は、トナー粒子100質量部に対して0.01質量部以上8質量部以下、好ましくは0.1質量部以上4質量部以下使用するのが良い。
本発明のトナーには、必要に応じて他の外部添加剤を添加しても良い。例えば、帯電補助剤、導電性付与剤、流動性付与剤、ケーキング防止剤、熱ローラー定着時の離型剤、滑剤、研磨剤の働きをする樹脂微粒子や無機微粒子である。
滑剤としては、ポリフッ化エチレン粉末、ステアリン酸亜鉛粉末、ポリフッ化ビニリデン粉末が挙げられる。中でもポリフッ化ビニリデン粉末が好ましい。研磨剤としては、酸化セリウム粉末、炭化ケイ素粉末、チタン酸ストロンチウム粉末が挙げられる。これらの外添剤はヘンシェルミキサー等の混合機を用いて十分混合し本発明のトナーを得ることができる。
本発明のトナーを作製するには、結着樹脂、着色剤、その他の添加剤等を、ヘンシェルミキサー、ボールミル等の混合機により十分混合してから加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練し、冷却固化後粉砕及び分級を行い、さらに必要に応じて所望の添加剤をヘンシェルミキサー等の混合機により十分混合し、本発明のトナーを得ることが出来る。溶融混練工程に用いられる混練機としては、連続生産が可能なこと等の理由から二軸混練機が好ましく用いられる。本発明においては、原料投入口からパドル下流側末端までの距離Lに占めるニーディング部の割合Ln/Lが0.40以上0.70以下であることが好ましい(但し、Lは原料投入口からパドル下流側末端までの距離、Lnは全ニーディング部の長さを示す)。このニーディング部が押し出し機の大半部分を占める構成にすることで混練物に対して可能な限りシェアをかけつづけることが可能となる。その結果、トナー中に存在する一部分が結晶性を有する結着樹脂の相溶性を制御することが可能となる。
本発明のトナーに係る物性の測定方法は以下に示す通りである。後述の実施例もこの方法に基づいている。
<GPCによる分子量分布の測定>
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては例えば、東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が102乃至107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。又、検出器はRI(屈折率)検出器を用いる。なお、カラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合わせを挙げることができる。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては例えば、東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が102乃至107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。又、検出器はRI(屈折率)検出器を用いる。なお、カラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合わせや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合わせを挙げることができる。
また、試料は以下のようにして作製する。
試料をTHF中に入れ、25℃で数時間放置した後、十分振とうしTHFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、さらに12時間以上静置する。その時THF中への放置時間が24時間となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2μm乃至0.5μm、例えば東ソー社製マイショリディスクH−25−2など)を通過させたものをGPCの試料とする。又、試料濃度は、樹脂成分が0.5mg/ml乃至5mg/mlとなるように調整する。
<重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いた。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いた。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルでおこなった。
トナーの重量平均粒径(D4)は、以下のようにして算出する。測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いた。測定条件の設定及び測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いた。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルでおこなった。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析をおこなう前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行った。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
前記専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にておこなう。そして、専用ソフトの「アパーチャのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個の位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の、電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、トナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を、ピペットを用いて滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定をおこなう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にておこなう。そして、専用ソフトの「アパーチャのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個の位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に約3.3lのイオン交換水を入れ、この水槽中にコンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の、電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、トナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を、ピペットを用いて滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定をおこなう。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、前記専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/体積統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<結着樹脂の酸価の測定>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。結着樹脂の酸価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1mol/l塩酸25mlを三角フラスコにとり、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1mol/l塩酸はJIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した結着樹脂の試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定をおこなう。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。結着樹脂の酸価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとする。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1mol/l塩酸25mlを三角フラスコにとり、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1mol/l塩酸はJIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した結着樹脂の試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定をおこなう。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
<磁性酸化鉄粒子の磁気特性の測定>
東英工業製振動試料型磁力計VSM−P7を使用し、試料温度25℃、外部磁場795.8kA/mにて測定した。
東英工業製振動試料型磁力計VSM−P7を使用し、試料温度25℃、外部磁場795.8kA/mにて測定した。
<磁性酸化鉄粒子の平均一次粒子径の測定>
平均一次粒子径は走査型電子顕微鏡(倍率40000倍)で磁性酸化鉄粒子を観察し、200個の粒子のフェレ径を計測し個数平均粒子径を求める。本実施例においては、走査型電子顕微鏡としては、S−4700(日立製作所製)を用いた。
平均一次粒子径は走査型電子顕微鏡(倍率40000倍)で磁性酸化鉄粒子を観察し、200個の粒子のフェレ径を計測し個数平均粒子径を求める。本実施例においては、走査型電子顕微鏡としては、S−4700(日立製作所製)を用いた。
以下、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<結着樹脂の製造例1>
・テレフタル酸 100mol部
・エチレングリコール 60mol部
・ネオペンチルグリコール 40mol部
上記ポリエステルモノマーをエステル化触媒(ジブチルスズオキシド)と共に5リットルオートクレーブに仕込む。そこに、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管、温度計及び攪拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で重縮合反応を行った。反応の進行度合いを粘度でモニターしながら行い、反応が後期に差し掛かったところで無水トリメリット酸:5mol部を加え酸価の調整を行った。このように、反応後期に添加することで、ポリエステルの基本構造に影響を与えないで酸価の調整をすることが出来る。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂B1を得た。得られた結着樹脂の各物性を測定し、表1に示す。
・テレフタル酸 100mol部
・エチレングリコール 60mol部
・ネオペンチルグリコール 40mol部
上記ポリエステルモノマーをエステル化触媒(ジブチルスズオキシド)と共に5リットルオートクレーブに仕込む。そこに、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管、温度計及び攪拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で重縮合反応を行った。反応の進行度合いを粘度でモニターしながら行い、反応が後期に差し掛かったところで無水トリメリット酸:5mol部を加え酸価の調整を行った。このように、反応後期に添加することで、ポリエステルの基本構造に影響を与えないで酸価の調整をすることが出来る。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂B1を得た。得られた結着樹脂の各物性を測定し、表1に示す。
<結着樹脂の製造例2乃至13>
原料とするモノマーを表1のように換えた他は、結着樹脂の製造例1と同様にして、結着樹脂B2乃至B13を得た。この際、表1に後添と記載してあるモノマーに関しては、酸価あるいは水酸基価の調整のため結着樹脂の製造例1と同様に重縮合反応の後期に加えている。また、反応の進行度合いを粘度でモニターしながら反応終了時の分子量を調整した。得られた結着樹脂の各物性を測定し、表1に示す。このうち結着樹脂B10、12についてはDSC測定の吸熱ピークを1つしか持たない樹脂であり、結着樹脂B11、13についてはDSC測定の吸熱ピークを持たない樹脂であった。
原料とするモノマーを表1のように換えた他は、結着樹脂の製造例1と同様にして、結着樹脂B2乃至B13を得た。この際、表1に後添と記載してあるモノマーに関しては、酸価あるいは水酸基価の調整のため結着樹脂の製造例1と同様に重縮合反応の後期に加えている。また、反応の進行度合いを粘度でモニターしながら反応終了時の分子量を調整した。得られた結着樹脂の各物性を測定し、表1に示す。このうち結着樹脂B10、12についてはDSC測定の吸熱ピークを1つしか持たない樹脂であり、結着樹脂B11、13についてはDSC測定の吸熱ピークを持たない樹脂であった。
<結着樹脂の製造例14>
結着樹脂B11(70mol部)(ピーク分子量を分子量の代表値としてmol部を算出する)と、1,3−プロパンジオール(15mol部)とテレフタル酸(15mol部)との混合物と、エステル化縮合触媒(ジブチルスズオキシド)とともに5リットルオートクレーブに仕込む。そこに、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管、温度計及び攪拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で重縮合反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂B14を得た。得られた結着樹脂の各物性を測定し、表1に示す。結着樹脂B14についてはDSC測定の吸熱ピークを1つしか持たない樹脂であった。
結着樹脂B11(70mol部)(ピーク分子量を分子量の代表値としてmol部を算出する)と、1,3−プロパンジオール(15mol部)とテレフタル酸(15mol部)との混合物と、エステル化縮合触媒(ジブチルスズオキシド)とともに5リットルオートクレーブに仕込む。そこに、還流冷却器、水分分離装置、N2ガス導入管、温度計及び攪拌装置を付し、オートクレーブ内にN2ガスを導入しながら230℃で重縮合反応を行った。反応終了後容器から取り出し、冷却、粉砕して結着樹脂B14を得た。得られた結着樹脂の各物性を測定し、表1に示す。結着樹脂B14についてはDSC測定の吸熱ピークを1つしか持たない樹脂であった。
<トナーの製造例1>
・上記結着樹脂B1 100質量部
・離型剤W1(パラフィンワックス、Pwax:75℃) 4質量部
・電荷制御剤(アゾ系鉄錯体化合物) 2質量部
・磁性酸化鉄 90質量部
(八面体形状マグネタイト、平均粒径0.19μm、抗磁力11.2KA/m、残留磁化14.8Am2/kg、飽和磁化81.3Am2/kg)
上記材料をヘンシェルミキサーで充分に予備混合した後、170℃に加熱された二軸混練機で溶融混練した。得られた混合物を冷却しハンマーミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕し、得られた微粉砕物をさらに風力分級機で分級し、重量平均粒径(D4)7.5μmの分級微粉体を得た。
・上記結着樹脂B1 100質量部
・離型剤W1(パラフィンワックス、Pwax:75℃) 4質量部
・電荷制御剤(アゾ系鉄錯体化合物) 2質量部
・磁性酸化鉄 90質量部
(八面体形状マグネタイト、平均粒径0.19μm、抗磁力11.2KA/m、残留磁化14.8Am2/kg、飽和磁化81.3Am2/kg)
上記材料をヘンシェルミキサーで充分に予備混合した後、170℃に加熱された二軸混練機で溶融混練した。得られた混合物を冷却しハンマーミルで粗粉砕した後、ジェット気流を用いた微粉砕機を用いて微粉砕し、得られた微粉砕物をさらに風力分級機で分級し、重量平均粒径(D4)7.5μmの分級微粉体を得た。
得られた分級微粉体100質量部に対して、疎水性乾式シリカ(BET比表面積300m2/g)を0.8質量部加え、撹拌羽根回転速度18.33S-1のヘンシェルミキサーFM500(三井三池社製)により、4分間回転させて外添し、目開き150μmのメッシュで篩い、本発明のトナーT1を得た。
<トナーの製造例2乃至21>
表2のように、添加する結着樹脂をB1乃至B14に換え、添加する離型剤をW1乃至W8に換えた他は、トナーの製造例1と同様にして、トナーT2乃至T21を得た。このうちトナーT20については添加する結着樹脂を、B11:B12を9:1の割合で混合したものを100質量部とし、トナーT21についてはB13:B14を3:7の割合で混合したものを100質量部とした。
表2のように、添加する結着樹脂をB1乃至B14に換え、添加する離型剤をW1乃至W8に換えた他は、トナーの製造例1と同様にして、トナーT2乃至T21を得た。このうちトナーT20については添加する結着樹脂を、B11:B12を9:1の割合で混合したものを100質量部とし、トナーT21についてはB13:B14を3:7の割合で混合したものを100質量部とした。
各トナー製造例に用いた離型剤の種類、およびPwaxの温度を表2に示す。
<実施例1>
本発明のトナーは、低融点の離型剤を添加したトナーを長期間に渡り高温高湿など苛酷な環境で保管された場合にもトナー表面への離型剤の染み出しが抑制され、染み出した離型剤が現像剤担持体を汚染することによる画像濃度低下などを起こさないことを特徴とする。
本発明のトナーは、低融点の離型剤を添加したトナーを長期間に渡り高温高湿など苛酷な環境で保管された場合にもトナー表面への離型剤の染み出しが抑制され、染み出した離型剤が現像剤担持体を汚染することによる画像濃度低下などを起こさないことを特徴とする。
このトナーを評価するにあたって、想定されうる環境で2年乃至3年といった期間をかけて実際の経時変化を確認する代わりに、実際に想定されるよりも高い温度と湿度をかけ、また常温に戻すことを繰り返すヒートサイクル試験をおこなうこととした。
ヒートサイクル試験により、長期間かかって発現する離型剤の染み出しなどの経時変化を短期間で確認することができるが、実際の保存状態よりも高い温度をかけるために離型剤の染み出し以外の、例えばブロッキングなどの弊害を起こしてしまうことがある。
このような、加速試験であるがために起きてしまうが実際の長期保存では起きない現象や、使用トナーに合わせ定着条件を調整すべき定着性など、本発明の効果と直接関係しない部分の影響を回避する目的で、以下のように評価をおこなった。
磁性一成分現像剤を用いるジャンピング現像方式である市販のモノクロ複合機iR3245(キヤノン社製)を改造して、現像バイアスとして印可する交流成分の周波数を1.2倍とし、プロセススピードを1.2倍とした。この改造により、トナー担持体とトナーとがより強く摺擦されることになり、トナー担持体への離型剤汚染がより顕著に表れる。
この改造機に本発明のトナーT1を充填し、25℃/60%RHの環境下に24時間なじませた後、定着器を取り外し、ベタ領域およびハーフトーン領域とテキストで構成された印字率8%のオリジナル原稿を用いて未定着画像を出力した。
この画像を120℃から200℃に設定した傾斜オーブン(グラディエントオーブン、Gardner社製)にて定着を行い、得られた画像のベタ部分の反射濃度を測定し、画像全体を観察してスジやムラなどの画像異常の有無を確認し、初期トナーの評価とした。
定着をオーブン定着としたのは、評価で使用する複合機の定着器をそのまま使用した場合、本発明の実施例に挙げるそれぞれのトナーと定着条件のマッチングにより、評価結果に影響が出ることが予想されるためである。
ベタ画像濃度は、カラー反射濃度計(例えばX−RITE 404A:X−Rite Co.社製)にて、オリジナル画像のベタ部5ヶ所を測定し平均した。得られた画像濃度に5段階のランク付けをおこない、ランク3以上を合格とした。
<画像濃度 評価ランク>
ランク5:反射濃度 1.40以上
ランク4:反射濃度 1.35以上1.39以下
ランク3:反射濃度 1.30以上1.34以下
ランク2:反射濃度 1.25以上1.29以下
ランク1:反射濃度 1.24以下
ランク5:反射濃度 1.40以上
ランク4:反射濃度 1.35以上1.39以下
ランク3:反射濃度 1.30以上1.34以下
ランク2:反射濃度 1.25以上1.29以下
ランク1:反射濃度 1.24以下
次に、前記改造機に充填したトナーを、後述するヒートサイクル試験を経たトナーT1に入れ替え、25℃/60%RHの環境下に24時間なじませ、1000枚の連続通紙を行った後、初期トナーと同様に未定着画像を出力しオーブン定着をし、初期トナーと同様の評価をおこなった。
これらの評価の結果、本発明のトナーT1はヒートサイクル試験を経ても画像濃度の顕著な低下が起きることなく、その他、スジや濃度ムラなど画像への影響も認められなかった。また、ヒートサイクルを経たトナーを用いて評価画像の出力をした後、トナー担持体上のトナーを吸引除去しトナー担持体の表面を目視観察したが、離型剤の付着やフィルミングは認められなかった。評価結果を表3に示す。
本実施例における、トナーのヒートサイクル試験は次のように行った。
温度と湿度を自由に可変できる恒温恒湿槽を25℃/60%RHに設定し、容積1000ccのポリカップ5つにトナーを約250gずつ分けて入れ、恒温恒湿槽に入れた。次に、槽内の雰囲気を12時間かけて直線的に50℃/90%RHに変化させた。
次に、12時間かけて25℃/90%RHに温度を下げ、さらに12時間かけて50℃/90%RHに温度を上げ、この下降上昇を1サイクルとして、このサイクルを連続で20サイクル繰り返した。
20サイクル目の温度上昇が終了したら、次に槽内の雰囲気を6時間かけて40℃/90%RHに下げ、そのまま40℃/90%RHで10日間放置し、最後に6時間かけて25℃/60%RHまで下げてから、恒温恒湿槽からポリカップを取り出した。
取り出したトナーがブロッキングしている場合があるが、これは50℃という高温をかけた加速試験の弊害であり本発明の趣旨ではないので、開口100μm乃至150μm程度の篩いに通してほぐして使用した。篩いに通すことが困難なほどブロッキングしたトナーや、ほぐしても画像に影響の出るトナーであれば通常使用時の機内昇温などでも不具合が出ることが予想されるが、ほぐせば使用できる軽いブロッキングであれば通常の使用や保存状況でブロッキングによる問題が起きることはないと考える。
<実施例2乃至10、比較例1乃至11>
上記トナーT2乃至T21を用いて、実施例1と同様に初期濃度の評価およびヒートサイクル後のトナー評価をおこなった。評価結果を表3に示す。
上記トナーT2乃至T21を用いて、実施例1と同様に初期濃度の評価およびヒートサイクル後のトナー評価をおこなった。評価結果を表3に示す。
以上の評価結果より、本発明の効果を確認した。
実施例に挙げたトナーは、いずれも著しい濃度低下を起こすことなく、離型剤によるトナー担持体の汚染も皆無または非常に軽微であり、本発明の効果が確認された。
結着樹脂の結晶部分による第2のピークΔH2が小さめである実施例2については、実施例の中でも本発明の効果がやや小さく、トナー中に結着樹脂の結晶部分が存在することにより離型剤の造核剤となり樹脂結晶内包構造が発現することを示唆していると考えている。また、P1とPwax、あるいはP2とPwaxの差が好ましい範囲を超える実施例7乃至10については、濃度や画像上には問題がみられなかったがトナー担持体上にごくわずかなフィルミングが見られた。
P1温度が低い比較例2のトナーは、ヒートサイクル試験により固くブロッキングしてしまいほぐすことができず、評価できなかった。比較例1および3、4、6は、トナー担持体に離型剤がフィルミングしているのが観察され、また比較例5および7乃至11では、トナー担持体のトナー下層部に離型剤の薄片が遊離または融着して存在しているのが観察された。
いずれもトナー内部から離型剤がトナー表面へと移動したものと考えられ、汚染されたトナー担持体がトナーに正常な帯電を与えることができず、画像濃度が低くなったほか、帯電不良に起因するトナーの機内飛散や白地カブリ、トナー担持体の汚染に起因する濃度ムラやスジムラなども見られた。
このようなトナーは、生産してからすぐに通常の環境において使用するには問題が無くても、例えば海外への出荷輸送時に温度の上がる船上コンテナで長時間かけて輸送され、または温度や湿度の高い地域の倉庫で数年間の保存をされた場合には、この評価で発生したと同様の、離型剤染み出しによる濃度低下問題を起こすことが予想される。
これらの評価により、本発明によれば低温定着化を達成できるトナーであっても、従来のような離型剤の染み出しやブルーミングを発生させず、従ってトナー担持体の離型剤汚染による濃度低下を起こさないトナーを提供できることを確認した。
Claims (2)
- 結着樹脂、離型剤及び着色剤を少なくとも含有するトナー粒子を有するトナーであり、
示差走査熱量計により測定されるDSC曲線において、該結着樹脂は、温度55℃乃至75℃に第1の吸熱ピークを有し、さらに、温度80℃乃至120℃に第2の吸熱ピークを有し、該離型剤は、少なくとも1つの吸熱ピークを有し、該結着樹脂の第1の吸熱ピーク温度P1(℃)、第2の吸熱ピーク温度P2(℃)、及び該離型剤の吸熱ピーク温度Pwax(℃)が、下記関係式(1)乃至(2)を満足することを特徴とするトナー。
P1+5≦Pwax≦P1+30 (1)
P2−45≦Pwax≦P2−5 (2) - 該第1の吸熱ピークの吸熱量ΔH1と該第2の吸熱ピークの吸熱量ΔH2が、
ΔH1≦ΔH2
であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
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JP2018163200A (ja) * | 2017-03-24 | 2018-10-18 | 富士ゼロックス株式会社 | 静電荷像現像用トナー、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法 |
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