JP2012152964A - 変形量予測装置、変形量予測方法、プログラムおよび記録媒体 - Google Patents

変形量予測装置、変形量予測方法、プログラムおよび記録媒体 Download PDF

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Abstract

【課題】 金型内で十分冷却されない状態で離型された樹脂成形品の最終的な形状を精度よく予測することができる変形量予測装置、変形量予測方法、プログラムおよび記録媒体を提供する。
【解決手段】 樹脂流動解析部6は、成形条件取得部3によって取得された成形条件に基づいて、金型に射出して成形される樹脂成形品の計算用モデルの各メッシュ形状について、残留応力および温度分布を算出する。応力解析部11は、残留応力および温度分布、ならびに温度依存性ヤング率に基づいて応力解析を行い、型開き時の樹脂成形品の変形量を計算する。熱応力解析部16は、伝熱解析部13によって変換された温度分布、ならびにガラス転移温度Tg以下の温度での線膨張係数およびその線膨張係数から変換されたガラス転移温度Tg以上の温度での線膨張係数に基づいて、樹脂成形品が所定温度まで冷却されるときの最終的な変形量を計算する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、設計段階において最適な成形条件を設定するために、樹脂成形品の変形量を予測する変形量予測装置、変形量予測方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
高耐久性および低コストなどの利点を有するという理由から、樹脂成形品を使用した製品が数多く存在する。しかし、樹脂成形品は、成形直後から変形を引き起こし、変形による反りやヒケが原因となる製品不良が多々発生している。そのため、変形量を大きく左右する成形条件の設定には十分な注意が必要である。そして、成形条件の最適な設定を支援するために、変形量を正確に予測可能な変形量予測装置が求められている。
ところで、樹脂成形品の成形段階では、市販の樹脂流動解析プログラムを利用して、変形量を予測し、成形条件、たとえば樹脂温度および金型温度などの成形条件を設定する方法がある。樹脂流動解析は、金型内における充填、保圧および冷却過程を解析しているが、金型から取り出した後の過程を解析していないため、金型内で常温付近まで冷却されるような条件でのみ、解析精度は保証されている。
しかしながら、近年、海外企業の低価格商品の台頭に伴い、生産コスト削減に対して、より厳しい環境になってきており、樹脂成形品についても、金型内での冷却時間を短くして、生産サイクル時間を縮めるといった対策がとられている。そのため、樹脂成形品が金型内で十分に冷却されないケースが増えている。この場合、金型から取り出した後、樹脂成形品が常温まで冷却されるという過程を解析する必要があるが、従来技術による樹脂流動解析ではこの過程は考慮されていない。
第1の従来技術として、特許文献1に記載される射出成形プロセスシミュレーション装置がある。この射出成形プロセスシミュレーション装置では、有限要素法等を用いて要素分割した解析モデルで、樹脂が金型内に充填する過程、およびその後の保圧冷却過程での金型を含めた流動解析を実施し、圧力分布および温度分布の解析結果を得る。そして、樹脂の粘弾性特性および金型内での冷却時の成形品と金型との間の型拘束を考慮した構造解析を実施して、変形量、応力および歪み等の解析結果を得る。また、離型後は、解析モデルの金型の部分を削除して、成形品のみを対象にした粘弾性応力解析を実施し、熱変形量を解析する。このように、成形品と金型との間の型拘束、および温度の伝達を考慮するために、樹脂流動解析と構造解析とを連成し、樹脂についても粘弾性特性を考慮することによって、解析精度を上昇させている。ここで考慮されている粘弾性特性の温度シフトファクタは、応力緩和にかかる時間が高温時には短く、低温時には長いというものである。
第2の従来技術として、特許文献2に記載される樹脂成形品の設計支援装置がある。この樹脂成形品の設計支援装置は、熱硬化樹脂を用いた樹脂成形品の強度を予測するために、金型の内部空間を分割した3次元ソリッド要素ごとに、硬化収縮後における熱硬化樹脂の温度、弾性率および歪み成分を算出する流動解析を行い、さらに、算出された温度、弾性率および歪み成分と、熱硬化樹脂の弾性率の温度依存性により定まる弾性率の変化分とを用いて、熱収縮後における残留歪みを算出する。そして、有限要素法を用いて樹脂成形品の強度を解析する。強度を解析する際は、流動解析の結果である残留歪みを各要素に設定することで、精度良く強度解析を行っている。第2の従来技術は、熱硬化樹脂に特化したものであり、金型内で常温付近まで冷却される場合を想定している。
特開2004−160700号公報 特開2006−205740号公報
第1の従来技術は、型開き時の樹脂成形品の変形量を求める際に、樹脂成形品の温度分布による硬さの分布、つまり弾性率の分布を考慮に入れていない。第2の従来技術は、金型内で常温付近まで冷却させる際に、ヤング率、つまり弾性率の温度依存性を用いているが、型開き後に樹脂成形品が変形する過程でヤング率の温度依存性を用いるものではない。
型開き時の樹脂成形品の温度は、金型に接していた表層部は低く、内部は高いというような温度分布がある。このような温度分布があるので、樹脂成形品には硬さの分布、つまりヤング率の分布が生じる。成形品は、型開き時のヤング率に応じて変形量が変わるので、ヤング率の分布を考慮しなければ精度良く成型後の形状を予測することができない。
本発明の目的は、金型内で十分に冷却されない状態で離型された樹脂成形品の最終的な形状を精度よく予測することができる変形量予測装置、変形量予測方法、プログラムおよび記録媒体を提供することである。
本発明は、射出成形によって成形される樹脂成形品の形状を表す形状データを取得する形状データ取得部と、
前記形状データ取得部によって取得された形状データが示す樹脂成形品の形状をメッシュ状に分割した計算用モデルを作成する計算モデル作成部と、
樹脂を金型に射出して成形するための成形条件を取得する成形条件取得部と、
前記計算モデル作成部によって作成された計算用モデルおよび前記成形条件取得部によって取得された成形条件に基づいて、金型に射出される樹脂の流動解析を行い、金型から取り出される時点の樹脂成形品の残留応力および温度分布を算出する樹脂流動解析部と、
前記樹脂流動解析部によって算出された温度分布に基づいて、ガラス転移温度よりも低い予め定める温度での樹脂のヤング率を、樹脂の温度に依存する温度依存性ヤング率に変換するヤング率変換部と、
前記樹脂流動解析部によって算出された残留応力、前記計算モデル作成部によって作成された計算用モデル、および前記ヤング率変換部によって変換された温度依存性ヤング率に基づいて、金型によって拘束されている樹脂成形品の形状から、金型による拘束がなくなった時点の樹脂成形品の形状への変形量を応力解析によって計算する応力解析部と、
前記計算モデル作成部によって作成された計算用モデルの形状を前記応力解析部によって計算された変形量だけ変形させた形状を初期モデルとし、金型による拘束がなくなった時点から前記予め定める温度まで冷却されるときに、前記初期モデルに対する変形量を、熱応力解析によって計算する熱応力解析部とを含むことを特徴とする変形量予測装置である。
また本発明は、前記予め定める温度での線膨張係数、および温度と比容積との関係を表す比容積データを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶される比容積データに基づいて、前記記憶部に記憶される予め定める温度での線膨張係数をガラス転移温度以上の温度での線膨張係数に変換する線膨張係数変換部とをさらに含み、
前記熱応力解析部は、前記初期モデルに対する変形量を計算するとき、前記記憶部に記憶される予め定める温度での線膨張係数および前記線膨張係数変換部によって変換された線膨張係数を用いて計算することを特徴とする。
また本発明は、前記樹脂流動解析部が樹脂流動解析を行うために用いる計算用モデルを構成する要素であるメッシュ形状が、前記熱応力解析部が熱応力解析を行うために用いる計算用モデルのメッシュ形状と異なるとき、伝熱解析によって、前記樹脂流動解析部によって算出された温度分布を表す温度分布データの形式を、前記熱応力解析部が熱応力解析を行うために必要な温度分布を表す温度分布データの形式に変換する伝熱解析部をさらに含み、
前記熱応力解析部は、前記伝熱解析部によって変換された形式の温度分布が示す温度に基づいて、前記初期モデルに対する変形量を計算することを特徴とする。
また本発明は、前記成形条件は、金型に設けられる冷却管に流れる液体の温度を制御することによって金型の温度を調節する温度調節器に設定される温度調節器設定温度を含み、
前記温度調節器設定温度と金型の温度との関係を表わす金型温度データを記憶する金型温度記憶部と、
前記金型温度記憶部に記憶される金型温度データに基づいて、前記成形条件取得部によって取得された成形条件に含まれる温度調節器設定温度を金型の温度に変換する成形条件変換部とをさらに含み、
前記樹脂流動解析部は、前記成形条件変換部によって変換された金型の温度で樹脂流動解析を行うことを特徴とする。
また本発明は、前記樹脂流動解析部によって行われた樹脂流動解析の解析結果に基づいて、樹脂が充填されない空間部分である欠落部が形成されたか否かを判断し、欠落部が形成されたと判断したとき、欠落部が形成される位置を、前記初期モデルから除外する欠落部除外部を含むことを特徴とする。
また本発明は、前記樹脂流動解析部によって行われた樹脂流動解析の解析結果に基づいて、樹脂が充填されない空間部分である欠落部が形成されたか否かを判断し、欠落部が形成されたと判断したとき、欠落部が形成される位置の残留応力として、予め定める残留応力を設定する欠落部設定部を含むことを特徴とする。
また本発明は、前記樹脂流動解析部によって算出された残留応力を表わす残留応力データの形式および温度分布を表わす温度分布データの形式を、前記応力解析部で利用可能な形式に変換する形式変換部を含むことを特徴とする。
また本発明は、射出成形によって成形される樹脂成形品の形状の変形量を予測する変形量予測装置で実行される変形量予測方法であって、
前記樹脂成形品の形状を表す形状データを取得する形状データ取得ステップと、
前記形状データ取得ステップで取得された形状データが示す樹脂成形品の形状をメッシュ状に分割した計算用モデルを作成する計算モデル作成ステップと、
樹脂を金型に射出して成形するための成形条件を取得する成形条件取得ステップと、
前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデルおよび前記成形条件取得ステップで取得された成形条件に基づいて、金型に射出される樹脂の流動解析を行い、金型から取り出される時点の樹脂成形品の残留応力および温度分布を算出する樹脂流動解析ステップと、
前記樹脂流動解析ステップで算出された温度分布に基づいて、ガラス転移温度よりも低い予め定める温度での樹脂のヤング率を、樹脂の温度に依存する温度依存性ヤング率に変換するヤング率変換ステップと、
前記樹脂流動解析ステップで算出された残留応力、前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデル、および前記ヤング率変換ステップで変換された温度依存性ヤング率に基づいて、金型によって拘束されている樹脂成形品の形状から、金型による拘束がなくなった時点の樹脂成形品の形状への変形量を応力解析によって計算する応力解析ステップと、
前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデルの形状を前記応力解析ステップで計算された変形量だけ変形させた形状を初期モデルとし、金型による拘束がなくなった時点から前記予め定める温度まで冷却されるときに、前記初期モデルに対する変形量を、熱応力解析によって計算する熱応力解析ステップとを含むことを特徴とする変形量予測方法である。
また本発明は、コンピュータを含み、射出成形によって成形される樹脂成形品の形状の変形量を予測する変形量予測装置に含まれるコンピュータに、
前記樹脂成形品の形状を表す形状データを取得する形状データ取得ステップと、
前記形状データ取得ステップで取得された形状データが示す樹脂成形品の形状をメッシュ状に分割した計算用モデルを作成する計算モデル作成ステップと、
樹脂を金型に射出して成形するための成形条件を取得する成形条件取得ステップと、
前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデルおよび前記成形条件取得ステップで取得された成形条件に基づいて、金型に射出される樹脂の流動解析を行い、金型から取り出される時点の樹脂成形品の残留応力および温度分布を算出する樹脂流動解析ステップと、
前記樹脂流動解析ステップで算出された温度分布に基づいて、ガラス転移温度よりも低い予め定める温度での樹脂のヤング率を、樹脂の温度に依存する温度依存性ヤング率に変換するヤング率変換ステップと、
前記樹脂流動解析ステップで算出された残留応力、前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデル、および前記ヤング率変換ステップで変換された温度依存性ヤング率に基づいて、金型によって拘束されている樹脂成形品の形状から、金型による拘束がなくなった時点の樹脂成形品の形状への変形量を応力解析によって計算する応力解析ステップと、
前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデルの形状を前記応力解析ステップで計算された変形量だけ変形させた形状を初期モデルとし、金型による拘束がなくなった時点から前記予め定める温度まで冷却されるときに、前記初期モデルに対する変形量を、熱応力解析によって計算する熱応力解析ステップとを実行させるためのプログラムである。
また本発明は、前記プログラムが記録されたコンピュータ読取り可能な記録媒体である。
本発明によれば、形状データ取得部は、射出成形によって成形される樹脂成形品の形状を表す形状データを取得する。計算モデル作成部は、前記形状データ取得部によって取得された形状データが示す樹脂成形品の形状をメッシュ状に分割した計算用モデルを作成する。成形条件取得部は、樹脂を金型に射出して成形するための成形条件を取得する。樹脂流動解析部は、前記計算モデル作成部によって作成された計算用モデルおよび前記成形条件取得部によって取得された成形条件に基づいて、金型に射出される樹脂の流動解析を行い、金型から取り出される時点の樹脂成形品の残留応力および温度分布を算出する。ヤング率変換部は、前記樹脂流動解析部によって算出された温度分布に基づいて、ガラス転移温度よりも低い予め定める温度での樹脂のヤング率を、樹脂の温度に依存する温度依存性ヤング率に変換する。応力解析部は、前記樹脂流動解析部によって算出された残留応力、前記計算モデル作成部によって作成された計算用モデル、および前記ヤング率変換部によって変換された温度依存性ヤング率に基づいて、金型によって拘束されている樹脂成形品の形状から、金型による拘束がなくなった時点の樹脂成形品の形状への変形量を応力解析によって計算する。そして、熱応力解析部は、前記計算モデル作成部によって作成された計算用モデルの形状を前記応力解析部によって計算された変形量だけ変形させた形状を初期モデルとし、金型による拘束がなくなった時点から前記予め定める温度まで冷却されるときに、前記初期モデルの形状に対する変形量を、熱応力解析によって計算する。したがって、金型内で十分に冷却されない状態で離型された樹脂成形品の最終的な形状を精度よく予測することができる。
また本発明によれば、記憶部は、前記予め定める温度での線膨張係数、および温度と比容積との関係を表す比容積データを記憶する。線膨張係数変換部は、前記記憶部に記憶される比容積データに基づいて、前記記憶部に記憶される予め定める温度での線膨張係数をガラス転移温度以上の温度での線膨張係数に変換する。そして、前記熱応力解析部は、前記初期モデルに対する変形量を計算するとき、前記記憶部に記憶される予め定める温度での線膨張係数および前記線膨張係数変換部によって変換された線膨張係数を用いて計算する。したがって、変形量をより精度よく計算することができる。
また本発明によれば、伝熱解析部は、前記樹脂流動解析部が樹脂流動解析を行うために用いる計算用モデルを構成する要素であるメッシュ形状が、前記熱応力解析部が熱応力解析を行うために用いる計算用モデルのメッシュ形状と異なるとき、伝熱解析によって、前記樹脂流動解析部によって算出された温度分布を表す温度分布データの形式を、前記熱応力解析部が熱応力解析を行うために必要な温度分布を表す温度分布データの形式に変換する。そして、前記熱応力解析部は、前記伝熱解析部によって変換された形式の温度分布が示す温度に基づいて、前記初期モデルに対する変形量を計算する。したがって、樹脂流動解析と熱応力解析とで温度分布を表す温度分布データの形式が異なっても、変形量を精度よく計算することができる。
また本発明によれば、前記成形条件は、金型に設けられる冷却管に流れる液体の温度を制御することによって金型の温度を調節する温度調節器に設定される温度調節器設定温度を含む。金型温度記憶部は、前記温度調節器設定温度と金型の温度との関係を表わす金型温度データを記憶する。成形条件変換部は、前記金型温度記憶部に記憶される金型温度データに基づいて、前記成形条件取得部によって取得された成形条件に含まれる温度調節器設定温度を金型の温度に変換する。そして、前記樹脂流動解析部は、前記成形条件変換部によって変換された金型の温度で樹脂流動解析を行う。したがって、成形条件として、金型の温度ではなく、温度調節器設定温度が指定されても、金型の温度に変換することができるので、変形量を精度よく計算することができる。
また本発明によれば、欠落部除外部は、前記樹脂流動解析部によって行われた樹脂流動解析の解析結果に基づいて、樹脂が充填されない空間部分である欠落部が形成されたか否かを判断し、欠落部が形成されたと判断したとき、欠落部が形成される位置を、前記初期モデルから除外する。したがって、欠落部があっても、エラーとすることなく、応力解析および熱応力解析を行うことができる。
また本発明によれば、欠落部設定部は、前記樹脂流動解析部によって行われた樹脂流動解析の解析結果に基づいて、樹脂が充填されない空間部分である欠落部が形成されたか否かを判断し、欠落部が形成されたと判断したとき、欠落部が形成される位置の残留応力として、予め定める残留応力を設定する。したがって、欠落部があっても、エラーとすることなく、応力解析および熱応力解析を行うことができる。
また本発明によれば、形式変換部は、前記樹脂流動解析部によって算出された残留応力を表わす残留応力データの形式および温度分布を表わす温度分布データの形式を、前記応力解析部で利用可能な形式に変換する。したがって、樹脂流動解析と熱応力解析とで残留応力データおよび温度分布データの形式が異なっても、変形量を精度よく計算することができる。
また本発明によれば、射出成形によって成形される樹脂成形品の形状の変形量を予測する変形量予測装置で樹脂成形品の変形量を予測するにあたって、形状データ取得ステップでは、前記樹脂成形品の形状を表す形状データを取得する。計算モデル作成ステップでは、前記形状データ取得ステップで取得された形状データが示す樹脂成形品の形状をメッシュ状に分割した計算用モデルを作成する。成形条件取得ステップでは、樹脂を金型に射出して成形するための成形条件を取得する。樹脂流動解析ステップでは、前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデルおよび前記成形条件取得ステップで取得された成形条件に基づいて、金型に射出される樹脂の流動解析を行い、金型から取り出される時点の樹脂成形品の残留応力および温度分布を算出する。ヤング率変換ステップでは、前記樹脂流動解析ステップで算出された温度分布に基づいて、ガラス転移温度よりも低い予め定める温度での樹脂のヤング率を、樹脂の温度に依存する温度依存性ヤング率に変換する。応力解析ステップでは、前記樹脂流動解析ステップで算出された残留応力、前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデル、および前記ヤング率変換ステップで変換された温度依存性ヤング率に基づいて、金型によって拘束されている樹脂成形品の形状から、金型による拘束がなくなった時点の樹脂成形品の形状への変形量を応力解析によって計算する。そして、熱応力解析ステップでは、前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデルの形状を前記応力解析ステップで計算された変形量だけ変形させた形状を初期モデルとし、金型による拘束がなくなった時点から前記予め定める温度まで冷却されるときに、前記初期モデルに対する変形量を、熱応力解析によって計算する。したがって、金型内で十分に冷却されない状態で離型された樹脂成形品の最終的な形状を精度よく予測することができる。
また本発明によれば、コンピュータを含み、射出成形によって成形される樹脂成形品の形状の変形量を予測する変形量予測装置に含まれるコンピュータに、前記樹脂成形品の形状を表す形状データを取得する形状データ取得ステップと、前記形状データ取得ステップで取得された形状データが示す樹脂成形品の形状をメッシュ状に分割した計算用モデルを作成する計算モデル作成ステップと、樹脂を金型に射出して成形するための成形条件を取得する成形条件取得ステップと、前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデルおよび前記成形条件取得ステップで取得された成形条件に基づいて、金型に射出される樹脂の流動解析を行い、金型から取り出される時点の樹脂成形品の残留応力および温度分布を算出する樹脂流動解析ステップと、前記樹脂流動解析ステップで算出された温度分布に基づいて、ガラス転移温度よりも低い予め定める温度での樹脂のヤング率を、樹脂の温度に依存する温度依存性ヤング率に変換するヤング率変換ステップと、前記樹脂流動解析ステップで算出された残留応力、前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデル、および前記ヤング率変換ステップで変換された温度依存性ヤング率に基づいて、金型によって拘束されている樹脂成形品の形状から、金型による拘束がなくなった時点の樹脂成形品の形状への変形量を応力解析によって計算する応力解析ステップと、前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデルの形状を前記応力解析ステップで計算された変形量だけ変形させた形状を初期モデルとし、金型による拘束がなくなった時点から前記予め定める温度まで冷却されるときに、前記初期モデルに対する変形量を、熱応力解析によって計算する熱応力解析ステップとを実行させるためのプログラムとして提供することができる。
また本発明によれば、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体として提供することができる。
本発明の一実施形態である変形量予測装置100の機能の構成を示すブロック図である。 変形量予測装置100が実行する樹脂成形品の変形量予測処理の処理手順を示すフローチャートである。 樹脂成形品90の形状の一例を示す図である。 樹脂成形品90の計算用モデル91の一例を示す図である。 樹脂の温度とヤング率との関係を示すグラフ81の一例を示す図である。 樹脂の温度と比容積との関係を示すグラフ82の一例を示す図である。 応力解析部11による応力解析で得られる型開き時の樹脂成形品92の形状の一例を示す図である。 樹脂流動解析でのメッシュ形状93およびその節点931の一例を示す図である。 熱応力解析でのメッシュ形状94およびその節点941,942の一例を示す図である。 伝熱解析部13による伝熱解析で得られる樹脂成形品95の温度分布の一例を示す図である。 熱応力解析部16による熱応力解析で得られる最終的な樹脂成形品96の形状の一例を示す図である。 従来技術によって求めた樹脂成形品の板厚方向の変形量を示すグラフ83の一例を示す図である。 変形量予測装置100によって求めた樹脂成形品の板厚方向の変形量を示すグラフ84の一例を示す図である。
図1は、本発明の一実施形態である変形量予測装置100の機能の構成を示すブロック図である。変形量予測装置100は、射出成形によって成形される樹脂成形品について、金型内で十分に冷却されない状態で金型から取り出されて、所定温度まで冷却される樹脂成形品の形状の変形量を予測する装置である。本発明に係る変形量予測方法は、変形量予測装置100で実行される。樹脂成形品とは、金型に射出される樹脂がその金型によって成形された成形品である。
変形量予測装置100は、たとえばパーソナルコンピュータなどのコンピュータによって構成され、従来技術で用いられている入力装置、制御装置、記憶装置および出力装置を含んで構成される。入力装置は、たとえばマウスおよびキーボードなどによって構成され、入力された情報を制御装置に送る。
制御装置は、たとえば中央処理装置(Central Processing Unit;略称CPU)によって構成される。制御装置は、記憶装置に記憶されるプログラムを実行することによって、入力装置および出力装置を制御し、本発明に係る変形量予測装置100の後述する各機能を実現する。記憶装置は、たとえば半導体メモリあるいはハードディスク装置などによって構成され、情報の書き込みおよび読み出しが可能な装置であり、制御装置で実行されるプログラムおよび制御装置がプログラムを実行するために必要な情報を記憶する。
出力装置は、情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示装置あるいは情報を印刷するプリンタなどの印刷装置によって構成され、制御装置から受け取る情報を出力する。あるいは、着脱可能な記録媒体への情報の読み書きが可能な記録再生装置、他の画像処理装置と情報の送受信を行う通信装置などを、入力装置兼出力装置とすることも可能である。制御装置は、入力装置から受け取る情報に基づいて、射出成形によって成形される樹脂成形品の変形量を予測する処理などの情報処理を行い、処理結果を出力装置に出力する。
変形量予測装置100は、CAD(Computer Aided Design)データ取得部1、計算モデル作成部2、成形条件取得部3、金型温度データベース4、成形条件変換部5、樹脂流動解析部6、樹脂流動解析結果出力部7、ヤング率データベース8、第1データ変換部9、結果データ変換部10、応力解析部11、応力解析結果出力部12、伝熱解析部13、伝熱解析結果出力部14、第2データ変換部15、熱応力解析部16および解析結果出力部17を含んで構成される。
CADデータ取得部1、計算モデル作成部2、成形条件取得部3、成形条件変換部5、樹脂流動解析部6、第1データ変換部9、結果データ変換部10、応力解析部11、応力解析結果出力部12、伝熱解析部13、伝熱解析結果出力部14、第2データ変換部15、熱応力解析部16および解析結果出力部17は、制御装置が記憶装置に記憶されるプログラムを実行することによって実現される機能である。
形状データ取得部であるCADデータ取得部1は、解析対象物に係るCADデータを取得する。解析対象物は、変形量予測装置100が変形量を予測する対象の樹脂成形品である。形状データであるCADデータは、CADツールによって生成された樹脂成形品の形状およびその樹脂成形品を成形するための金型の形状、金型に設けられる冷却管の構造、ならびにゲートランナーの構造などを表す情報である。ゲートとは、金型内に射出された溶融樹脂が成形品形状に形どられた空洞部分へ流入する流入口である。ランナーは、金型内に形成され、樹脂をゲートまで供給する供給路である。ゲートランナーの構造とは、ゲートおよびランナーの構造のことである。
冷却管は、金型内に設けられ、金型を冷却するための温度調節器であり、冷却管の中に水などの液体を流すことによって金型を冷却する。CADツールは、樹脂成形品および金型などの形状を設計するための設計支援ツールであり、たとえばパーソナルコンピュータで実行される従来技術による設計支援プログラムによって構成される。
CADデータ取得部1は、CADツールによって生成されたCADデータを取得する。変形量予測装置100がCADツールの機能も有する構成である場合、CADツールは、生成したCADデータを変形量予測装置100の記憶装置に記憶し、CADデータ取得部1は、その記憶装置からCADデータを読み出すことによって、CADデータを取得する。CADツールが変形量予測装置100とは異なる他の装置に搭載される場合、変形量予測装置100は、通信装置を介して他の装置からCADデータを取得し、あるいは記録再生装置に装着される着脱可能な記録媒体からCADデータを読み出すことによって、CADデータを取得する。
計算モデル作成部2は、CADデータ取得部1によって取得されたCADデータが表わす樹脂成形品の形状に基づいて、樹脂成形品の形状をメッシュ状の要素に分割し、分割したメッシュ状の各要素の集合からなる計算用モデルを作成する。以下、要素のことをメッシュ形状ともいう。
計算モデル作成部2は、作成した計算用モデルを表すメッシュデータ71を樹脂流動解析結果出力部7に出力する。樹脂流動解析結果出力部7は、変形量予測装置100を構成する記憶装置によって構成される。データを樹脂流動解析結果出力部7に出力するとは、データを、記憶装置に形成される樹脂流動解析結果出力部7の一時ファイルに書き込むことである。
成形条件取得部3は、成形条件を取得する。具体的には、成形条件取得部3は、ユーザが変形量予測装置100の入力装置によって入力した成形条件を、入力装置から受け取ることによって取得する。あるいは、ユーザによって入力装置から入力された成形条件を、入力装置が変形量予測装置100の記憶装置に予め記憶しておき、成形条件取得部3は、記憶装置に記憶されている成形条件を読み出すことによって取得する。
成形条件は、樹脂を金型に射出して成形するための条件であり、金型温度、射出時間、保圧時間、保圧力、冷却時間、樹脂温度、および樹脂の種類などによって規定される条件である。金型温度は、金型の温度である。射出時間は、樹脂を金型に射出する時間である。保圧時間は、金型によって射出された樹脂に圧力をかける時間である。保圧力は、金型によって射出された樹脂にかける圧力の大きさである。冷却時間は、樹脂が金型に充填され、金型内で樹脂を冷却する時間である。樹脂温度は、金型に射出する樹脂の温度である。樹脂の種類は、金型に射出する樹脂の種類である。
金型温度データである金型温度データベース4は、温度調節器設定温度と金型温度との関係を表わすデータベースであり、変形量予測装置100の記憶装置に記憶されている。記憶装置は、金型温度記憶部である。温度調節器設定温度は、金型内に設けられる冷却管内を流れる水などの液体の温度として、金型の冷却のために温度調節器に設定される温度である。すなわち、ユーザは、金型温度を直接制御することはできず、冷却管を流れる水などの液体の温度を制御することによって、金型温度を制御することができる。
成形条件変換部5は、成形条件取得部3によって取得された成形条件の中に温度調節器設定温度が含まれている場合、金型温度データベース4に基づいて、温度調節器設定温度を金型温度に変換し、取得された成形条件の中の温度調節器設定温度を、変換した金型温度に置き換える。成形条件変換部5は、成形条件取得部3によって取得された成形条件の中に金型温度が含まれる場合は、この変換および置き換えを行わない。
樹脂流動解析部6は、成形条件取得部3によって取得された成形条件、または変換が行われた場合は、変換および置き換えが行われた成形条件に基づいて、金型に射出して充填される樹脂が保圧され、金型内で冷却される過程での樹脂流動解析を行い、残留応力および温度分布を算出する。樹脂流動解析部6が行う樹脂流動解析の機能は、たとえば市販されている従来技術による樹脂流動解析プログラムによって実現される。
樹脂流動解析部6は、金型に射出して成形される樹脂成形品の計算用モデルを構成する各メッシュ形状について、各メッシュ形状に発生する残留応力と、各メッシュ形状の温度によって表される温度分布とを算出する。そして、樹脂流動解析部6は、算出した残留応力を表す残留応力データ72、および算出した温度分布を表す温度分布データ73を、樹脂流動解析結果出力部7に出力する。
また、樹脂流動解析部6は、物性データを変形量予測装置100の記憶装置に予め記憶している。物性データは、ヤング率、線膨張係数、ポアソン比およびせん断弾性係数など、樹脂の物性を表すデータである。樹脂流動解析部6は、記憶装置から物性データを読み出し、読み出した物性データを、ヤング率および線膨張係数を除く物性データ74、ヤング率の物性データ75、および線膨張係数の物性データ76に分けて、樹脂流動解析結果出力部7に出力する。
樹脂流動解析結果出力部7は、計算モデル作成部2によって出力されるメッシュデータ71、樹脂流動解析部6によって出力される残留応力データ72および温度分布データ73、ならびに樹脂流動解析部6によって出力されるヤング率および線膨張係数を除く物性データ74、ヤング率の物性データ75、および線膨張係数の物性データ76を一時ファイルとして記憶する。以下、ヤング率および線膨張係数を除く物性データ74、ヤング率の物性データ75、および線膨張係数の物性データ76を総称する場合、物性データ74〜76という。
ヤング率データベース8は、樹脂の温度と温度依存性ヤング率との関係を表すデータベースであり、変形量予測装置100の記憶装置に予め記憶されている。温度依存性ヤング率は、温度に依存して変化する樹脂のヤング率である。
ヤング率変換部である第1データ変換部9は、樹脂流動解析部6によって樹脂流動解析結果出力部7に出力されたヤング率の物性データ75が示すヤング率を、ヤング率データベース8に基づいて、型開き時の温度での温度依存性ヤング率に変換する。型開き時とは、樹脂成形品が金型から取り出された時点、つまり金型による拘束がなくなった時点である。ヤング率の物性データ75は、常温での樹脂のヤング率を表すデータである。常温は、樹脂が金型から外された後、冷却のために置かれる場所の室温であり、たとえば約25℃である。
形式変換部である結果データ変換部10は、樹脂流動解析部6によって算出された樹脂成形品の残留応力データおよび温度分布データの形式を、応力解析部11、伝熱解析部13、および熱応力解析部16で利用可能な形式に変換する。たとえば、樹脂流動解析部6によって出力されるデータの形式が、各要素を識別するための要素識別情報である要素番号の前に「ELEMENT」という文字が付される形式であるのに対して、応力解析部11で用いられるデータの形式が、要素番号の前に「ELEMENT」という文字が付されない形式である場合、結果データ変換部10は、この「ELEMENT」という文字を削除する変換を行う。
また、樹脂流動解析部6での樹脂流動解析で、ショートショットが形成される解析結果が得られることがある。ショートショットとは、樹脂成形品を成形するために金型によって形成される空間のうち、樹脂の不足によって樹脂が充填されない空間部分である欠落部である。樹脂流動解析部6での解析結果が、金型によって成形された樹脂成形品にショートショットが形成されていることを示している場合、欠落部除外部である結果データ変換部10は、欠落部が形成される位置に対応するメッシュ形状をメッシュデータ71から削除するか、または、欠落部設定部である結果データ変換部10は、残留応力データ72のうち、欠落部に対応するメッシュ形状の残留応力の値をダミーデータの値に置き換える。ダミーデータの値は、たとえば「0」である。結果データ変換部10は、欠落部除外部、欠落部設定部および形式変換部である。
応力解析部11は、計算モデル作成部2によって出力されたメッシュデータ71、樹脂流動解析部6によって出力された残留応力データ72、温度分布データ73、物性データ74〜76に基づいて応力解析を行い、金型によって拘束されている樹脂成形品の形状から、金型による拘束がなくなった時点の樹脂成形品の形状への変形量を計算する。
応力解析結果出力部12は、応力解析部11によって計算された変形量を出力する。応力解析部11によって計算された変形量を出力するとは、応力解析部11によって計算された変形量を表す変形量データを、一時ファイルとして変形量予測装置100の記憶装置に記憶することである。
伝熱解析部13は、計算モデル作成部2によって出力されたメッシュデータ71、樹脂流動解析部6によって出力された温度分布データ73および物性データ74〜76、ならびに応力解析結果出力部12によって出力された変形量データに基づいて、樹脂成形品の型開き時の温度分布を表す温度分布データの形式を、熱応力解析部16での熱応力解析のためのメッシュ形状に対応した温度分布を表す温度分布データの形式に変換する。この形式の変換については後述する。
伝熱解析結果出力部14は、伝熱解析部13によって変換された温度分布を出力する。伝熱解析部13によって変換された温度分布を出力するとは、伝熱解析部13によって変換された温度分布を表す温度分布データを、一時ファイルとして変形量予測装置100の記憶装置に記憶することである。
線膨張係数変換部である第2データ変換部15は、樹脂流動解析部6によって出力された線膨張係数の物性データ76が示す線膨張係数を、ガラス転移温度Tg以上の温度での線膨張係数に変換する。線膨張係数の物性データ76は、常温での樹脂の線膨張係数を表すデータである。ガラス転移温度Tgは、樹脂が、ゴム状の状態からガラス状の状態に、逆に、ガラス状の状態からゴム状の状態に変化する温度である。
熱応力解析部16は、計算モデル作成部2によって作成されたメッシュデータ71、樹脂流動解析部6によって出力された物性データ74〜76、応力解析結果出力部12によって出力された変形量データ、伝熱解析結果出力部14によって出力された温度分布データに基づいて、金型による拘束がなくなった時点から樹脂成形品が所定温度まで冷却されたときの最終的な変形量を計算する。予め定める温度である所定温度とは、樹脂成形品を冷却するときのガラス転移温度よりも低い目標の温度であり、たとえば室温などの常温である。「最終的な」とは、樹脂成形品が所定温度まで冷却された形状になった時点でのということである。
解析結果出力部17は、熱応力解析部16によって計算された樹脂成形品の最終的な変形量を、変形量予測装置100の外部に出力する。変形量予測装置100の外部に出力するとは、出力装置による出力であってもよいし、他の装置に備えられるビューアなどで表示するために、通信装置を介して他の装置に送信することであってもよいし、着脱可能な記録媒体に記録することであってもよい。
応力解析部11が行う応力解析の機能、伝熱解析部13が行う伝熱解析の機能、および熱応力解析部16が行う熱応力解析の機能は、それぞれ、市販されている従来技術による応力解析プログラム、伝熱解析プログラムおよび熱応力解析プログラムによって実現される。
図2は、変形量予測装置100が実行する樹脂成形品の変形量予測処理の処理手順を示すフローチャートである。たとえば、液晶ディスプレイなどの表示装置に表示されるメニュー画面で、入力装置によって変形量予測機能が選択されると、ステップS1に移る。
形状データ取得ステップであるステップS1では、CADデータ取得部1は、解析対象物に係るCADデータを取得する。計算モデル作成ステップであるステップS2では、計算モデル作成部2は、CADデータ取得部1によって取得されたCADデータが表わす樹脂成形品の形状に基づいて、樹脂成形品の形状をメッシュ状の要素に分割し、分割したメッシュ状の各要素の集合からなる計算用モデルを作成する。
成形条件取得ステップであるステップS3では、成形条件取得部3は、成形条件を取得する。ステップS4では、取得した成形条件の中に、金型温度に代えて、温度調節器設定温度が取得されているとき、成形条件変換部5は、金型温度データベース4に基づいて、温度調節器設定温度を金型温度に変換する。成形条件のうち、金型温度は変形量に最も大きな影響を与えるので、極力実際の金型温度に近い温度にしておかないと、予測する変形量の精度が悪くなってしまう。
樹脂流動解析ステップであるステップS5では、樹脂流動解析部6は、ステップS3で取得された成形条件、またはステップS4で変換された場合は、変換された成形条件に基づいて、樹脂流動解析を行い、計算用モデルが表す各メッシュ形状について、型開き時の残留応力および温度分布を算出する。そして、樹脂流動解析部6は、算出した残留応力が表す残留応力データ72、および算出した温度分布が表す温度分布データ73を、樹脂流動解析結果出力部7に出力する。また、樹脂流動解析部6は、ステップS2で作成された計算用モデルを表すメッシュデータ71、および樹脂流動解析に使用した物性データ74〜76も樹脂流動解析結果出力部7に出力する。樹脂流動解析に使用した物性データ74〜76は、記憶装置の一時ファイル以外の記憶領域に予め記憶されていたデータである。
なお、ステップS5において、ショートショット、つまり欠落部が形成される解析結果が得られた場合、欠落部が形成された位置に対応するメッシュ形状に関し、ショートショットである旨を表すフラグを、欠落部に対応するメッシュ形状に関連付けて記憶装置に記憶しておき、記憶装置に記憶されるフラグが関連付けされているメッシュ形状を、応力解析、伝熱解析、および熱応力解析を行う対象から除外するようにしてもよい。あるいは、欠落部に対応するメッシュ形状の残留応力の値として、「0」などのダミーデータの値を与えて、応力解析、伝熱解析、および熱応力解析を行ってもよい。このようにすることによって、ステップS5で、ショートショットが形成される解析結果が得られた場合においても、以降の解析においてエラーとなることがなく、変形量を計算することができる。
ヤング率変換ステップであるステップS6では、第1データ変換部9は、ヤング率の物性データ75が示す常温でのヤング率を、ヤング率データベース8に基づいて、型開き時の温度での温度依存性ヤング率に変換する。また、第2データ変換部15は、線膨張係数の物性データ76が示す常温での線膨張係数を、型開き時の温度、つまりガラス転移温度Tg以上の温度での線膨張係数に変換する。
先ず、各メッシュ形状の温度依存性ヤング率の算出について説明する。ステップS5で出力されたヤング率の物性データ75は、常温での値である。応力解析で求める樹脂成形品の変形量は、型開き時の温度によって変動するので、常温でのヤング率を、ステップS5で算出された温度分布に基づいて、型開き時の温度での温度依存性ヤング率に変換しておく必要がある。型開き時の樹脂成形品の温度は、金型に近い樹脂成形品の表面は温度が低く、樹脂成形品の内部は温度が高いという温度分布となっている。したがって、ヤング率は、要素ごと、つまりメッシュ形状ごとの温度に対応したヤング率を用いなければならない。
樹脂流動解析結果出力部7に出力された温度分布データ73の形式と、応力解析部11に入力すべき温度分布データの形式が異なる場合は、樹脂流動解析結果出力部7に出力された温度分布データ73の形式を、応力解析部11に入力すべき温度分布データの形式に変換して入力する。たとえば、樹脂流動解析結果出力部7に出力された温度分布データ73の形式が、各要素、つまり各メッシュ形状の節点ごとの温度を表わす形式であるが、応力解析部11に入力すべき温度分布データの形式が、要素ごとであるとすると、各要素の節点ごとの温度分布データ73を、要素ごとの温度分布データに変換する必要がある。
各要素の節点ごとの温度分布データ73を、要素ごとの温度分布データに変換するために、要素を構成する各節点の温度の平均値を要素の温度であるとし、その平均値の温度のヤング率をその要素のヤング率とする。また、簡易的に樹脂成形品の表面の温度と、樹脂成形品の内部の温度との平均値をとって、その平均値の温度を要素の温度であるとし、その平均値の温度のヤング率を、樹脂成形品全体のヤング率とするという簡易的な方法でも可能である。
第1データ変換部9は、変換された温度分布データが示す温度分布と、温度とヤング率との関係を表すヤング率データベース8とに基づいて、各メッシュ形状の温度に応じたヤング率を算出する。温度分布データの変換、および変換された温度分布データが示す温度分布によるヤング率への換算を行う機能は、プログラムとして第1データ変換部9に組み込んでおく。
次に、線膨張係数の変換について説明する。ステップS5で出力された線膨張係数の物性データ76は、常温での値である。線膨張係数は、温度の変化に対応して長さが変化する割合のことであるので、温度変化による比容積の変化は同等の意味を持つ。比容積とは、単位重量当たりの体積である。
樹脂流動解析部6は、成形過程における樹脂の体積収縮率を計算するために、温度と比容積との関係を表わす比容積データを記憶装置に予め記憶している。記憶装置は、記憶部である。この温度と比容積との関係から、型開き時の温度での線膨張係数を算出することができる。すなわち、第2データ変換部15は、ガラス転移温度Tg以上の温度での線膨張係数を、線膨張係数の物性データ76が示す常温での線膨張係数、つまりガラス転移温度Tg以下の温度での線膨張係数と、樹脂の温度と比容積との関係とから算出する。
比容積は温度に比例するが、ガラス転移温度Tgを境にして、比例する割合、すなわち温度を横軸および比容積を縦軸に表わしたときのグラフ、たとえば図6に示すグラフ82の傾きが異なる。この傾きは、簡易的に体積膨張係数として取り扱うことができる。
線形膨張係数は、長さあたりにおける温度による長さの変化率である。線形膨張係数をα、物体の長さをL、温度をtとすると、α=(1/L)×(dL/dt)である。体積膨張係数をβ、物体の体積をVとすると、β=(1/V)×(dV/dt)である。ここで、物体が立方体であるとすると、体積Vは、長さLを用いて、V=Lと表わされる。すなわち、β=(1/V)×(dV/dt)は、次式のように変形することができる。
β=(1/V)×(dV/dt)=(1/L)×(dV/dL)×(dL/dt)
=(1/L)×3L×(dL/dt)=3L×(dL/dt)
=3α
したがって、体積膨張係数βは、線膨張係数αの3倍として定義することができるので、ガラス転移温度Tg以下での傾きとガラス転移温度Tg以上での傾きとの比は、ガラス転移温度Tg以下での線膨張係数とガラス転移温度Tg以上での線膨張係数との比と考えることができる。
たとえば、ガラス転移温度Tg以下での傾きを「2」、ガラス転移温度Tg以上での傾きを「5」とすると、簡易的にガラス転移温度Tg以下での体積膨張係数は「2」、ガラス転移温度Tg以上での体積膨張係数は「5」とすることができる。線膨張係数の3倍が体積膨張係数であるので、ガラス転移温度Tg以下での線膨張係数は「2/3」、ガラス転移温度Tg以上での線膨張絵係数は「5/3」になり、ガラス転移温度Tg以下での線膨張係数に対するガラス転移温度Tg以上での線膨張絵係数の比は、「2.5」になる。ここで、線膨張係数の物性データ76が示す常温での線膨張係数、つまりガラス転移温度Tg以下での線膨張係数が「7」であるとすると、ガラス転移温度Tg以上での線膨張係数は、その比「2.5」から、「7×2.5=17.5」となる。
このように、第1データ変換部9および第2データ変換部15は、樹脂流動解析が終わると、その後に実行する応力解析、伝熱解析、および熱応力解析のために、樹脂流動解析結果出力部7に出力されたメッシュデータ71、残留応力データ72、温度分布データ73、および物性データ74〜76を、応力解析部11、伝熱解析部13、および熱応力解析部16への入力データとして使用できるデータに変換しておく。また、そうすることによって、応力解析、伝熱解析、および熱応力解析を、それぞれ開始する前の前処理をなくすことができる。
応力解析ステップであるステップS7では、応力解析部11は、ステップS5で出力されたメッシュデータ71に基づいて、応力解析のための応力解析計算用モデルであるメッシュ状に分割された各要素の集合を作成する。そして、ステップS5で出力された残留応力データ72、ヤング率および線膨張係数を除く物性データ74と、ステップS6で変換された温度依存性ヤング率に基づいて応力解析を行い、樹脂成形品の型開き時の変形量を計算する。そして、応力解析結果出力部12は、応力解析部11によって計算された樹脂成形品の型開き時の変形量を出力する。
応力解析部11は、型開き時の変形量を求めるために、樹脂流動解析部6によって出力された残留応力データ72および温度分布データ73を応力解析で用いる。残留応力データ72は、各メッシュ形状に対応する残留応力の値が全メッシュ形状分について算出されたデータである。温度分布データ73は、各メッシュ形状の温度が全メッシュ形状分について算出されたデータである。
具体的には、まず、応力解析部11は、計算モデル作成部2によって作成されたメッシュデータ71に基づいて、応力解析のための計算用モデルを作成する。そして、作成した応力解析のための計算用モデルの各メッシュ形状に、樹脂流動解析部6での解析結果である温度分布データ73が示す温度分布の温度を設定し、かつ、応力解析のための計算用モデルの各メッシュ形状に、第1データ変換部9で変換された各メッシュ形状の温度依存性ヤング率を、各メッシュ形状に設定された温度での温度依存性ヤング率として設定する。
次に、応力解析部11は、式(1)によって、各メッシュ形状のひずみを算出する。換言すると、応力解析計算用モデルのメッシュ形状ごとに設定された温度依存性ヤング率で、樹脂流動解析部6での解析結果である残留応力データが示すそれぞれのメッシュ形状の残留応力を除算することによって、各メッシュ形状のひずみを算出する。
ひずみ=残留応力÷温度依存性ヤング率 …(1)
最後に、応力解析部11は、算出した各メッシュ形状のひずみに基づいて、樹脂成形品全体の変形量を求める。具体的には、応力解析部11は、算出した各メッシュ形状のひずみに基づいて、有限要素法を用いて樹脂成形品全体の変形量を求める。
ステップS8では、伝熱解析部13は、伝熱解析を行う。ステップS7で樹脂成形品の型開き時の変形量が求まったので、次に、型開き後、樹脂成形品が常温まで冷却される過程での変形量を熱応力解析で解析することになる。そのために、ステップS7で求められた樹脂成形品の型開き時の変形量だけ変形された形状を計算用モデルとしてモデル化し、モデル化した計算用モデルの各メッシュ形状に、ステップS5で出力された温度分布データ73が示す温度分布による温度を割り当てる作業を行う必要がある。
しかし、樹脂流動解析、応力解析、伝熱解析および熱応力解析などの解析ソフトは、解析精度を保つために、それぞれ最適なメッシュ形状を使用しているので、温度分布データの形式もそれぞれのメッシュ形状に対応した形式になっている。具体的には、樹脂流動解析で用いられている温度分布データの形式と、応力解析、伝熱解析、および熱応力解析で代表される構造解析で用いられる温度分布データの形式とは異なる。すなわち、熱応力解析を行うための温度分布データの形式は、樹脂流動解析での温度分布データの形式に従ったものではないので、樹脂流動解析での温度分布データの形式を、構造解析で用いる温度分布データの形式になるように変換するために、伝熱解析を行う。
伝熱解析部13は、計算モデル作成部2によって作成されたメッシュデータ71および応力解析部11によって計算された変形量を表す変形量データに基づいて、ステップS7で求められた樹脂成形品の型開き時の変形量だけ変形させた樹脂成形品の形状を、伝熱解析のための初期形状の計算用モデルとしてモデル化する。そして、ステップS5で出力された温度分布データ73、および物性データ74に基づいて、伝熱解析のための初期形状の計算用モデルに対して伝熱解析を行い、樹脂成形品の型開き時の温度分布を算出する。そして、伝熱解析結果出力部14は、伝熱解析部13によって算出された樹脂成形品の型開き時の温度分布を表す温度分布データを出力する。
熱応力解析ステップであるステップS9では、熱応力解析部16は、ステップS7で求められた樹脂成形品の型開き時の変形量だけ変形させた樹脂成形品の形状を、熱応力解析のための初期形状の計算用モデル、つまり初期モデルとしてモデル化する。また、熱応力解析部16は、ステップS8で出力された温度分布データが示す温度分布を熱応力解析の初期条件とする。そして、熱応力解析部16は、ステップS5で出力された物性データ74、およびステップS6で変換された線膨張係数に基づいて、ステップS3で取得された所定温度まで冷却する熱応力解析を行い、冷却された樹脂成形品の変形量を算出する。
具体的には、型開きに伴い変形した樹脂成形品が、所定温度まで冷却される過程で変形する変形量を求めるために、伝熱解析結果出力部14によって出力された温度分布データを熱応力解析で使用する。伝熱解析結果出力部14によって出力された温度分布データは、各メッシュ形状に対応する温度が全メッシュ形状分について算出されたデータである。
まず、熱応力解析部16は、計算モデル作成部2によって作成されたメッシュデータ71および応力解析部11によって計算された変形量を表す変形量データに基づいて、ステップS7で求められた樹脂成形品の型開き時の変形量だけ変形させた樹脂成形品の形状を、熱応力解析のための初期形状の計算用モデル、つまり初期モデルとしてモデル化し、モデル化した初期形状の計算用モデルの各メッシュ形状に、伝熱解析部13による解析結果である温度分布データが示す温度分布の温度を対応付ける。
次に、熱応力解析部16は、各メッシュ形状に対応付けられた温度に応じて、各メッシュ形状を第1形態または第2形態に分類する。具体的には、メッシュ形状に対応付けられた温度、つまり型開き時の温度がガラス転移温度Tg以下のメッシュ形状を第1形態に分類し、メッシュ形状に対応付けられた温度、つまり型開き時の温度がガラス転移温度Tgよりも高い温度のメッシュ形状を第2形態に分類する。
そして、熱応力解析部16は、各メッシュ形状が所定温度まで冷却される過程で生じるひずみを、第1形態のメッシュ形状については式(2)によって、および第2形態のメッシュ形状については式(3)によって計算する。
ひずみ=ガラス転移温度Tg以下時の線膨張係数×(型開き時温度−所定温度)
…(2)
ひずみ=ガラス転移温度Tg以上時の線膨張係数×(型開き時温度−ガラス転移温度)
+ガラス転移温度Tg以下時の線膨張係数×(ガラス転移温度−所定温度)
…(3)
最後に、熱応力解析部16は、各メッシュ形状について計算したひずみに基づいて、樹脂成形品全体の変形量を算出する。
ステップS10では、解析結果出力部17は、熱応力解析部16が算出した変形量、あるいは熱応力解析部16が算出した変形量だけ変形させた樹脂成形品の形状を、変形量予測装置100の外部に出力して、樹脂成形品の変形量予測処理を終了する。
図3は、樹脂成形品90の形状の一例を示す図である。樹脂成形品90は、変形量予測装置100によって板厚方向の変形量を予測する解析対象物の一例である。樹脂成形品90は、横長の薄い平板状であって、長手方向に直交する平面で切断した断面が緩やかに湾曲している形状である。
図4は、樹脂成形品90の計算用モデル91の一例を示す図である。計算用モデル91は、計算モデル作成部2が、樹脂成形品90の形状を樹脂流動解析のためにモデル化したものである。図4に示した計算用モデル91は、樹脂成形品90の形状を40万個程度のメッシュ形状911に分割したモデルである。
図5は、樹脂の温度とヤング率との関係を示すグラフ81の一例を示す図である。グラフ81は、横軸が温度(℃)であり、縦軸がヤング率(MPa)である。グラフ81に示した樹脂の温度とヤング率との関係は、ヤング率データベース8として記憶されている。グラフ81に示した樹脂のヤング率は、温度に依存して変化する温度依存性ヤング率である。ヤング率の物性データ75が表す樹脂のヤング率は、常温でのヤング率である。図5に示したグラフ81では、常温でのヤング率は、たとえば温度が25℃でのヤング率であり、その値は、2600(MPa)である。
図6は、樹脂の温度と比容積との関係を示すグラフ82の一例を示す図である。グラフ82は、横軸が温度(℃)であり、縦軸が比容積(cm/g)である。グラフ82に示す樹脂の比容積は、温度の上昇に比例して上昇するが、ガラス転移温度Tgを境にして、比例する割合が異なる。すなわち、ガラス転移温度Tg以上の温度で比容積が増加する割合が、ガラス転移温度Tg以下の温度で比容積が増加する割合よりも大きい。具体的には、ガラス転移温度Tg以下温度での比容積の傾きは、2.8×10−4(cm/(g×℃))であり、ガラス転移温度Tg以上の温度での比容積の傾きは、6.4×10−4(cm/(g×℃))である。図6に示した例では、ガラス転移温度Tgは約115(℃)である。
線膨張係数の物性データ76は、常温での線膨張係数、つまりガラス転移温度Tg以下の温度での線膨張係数であり、ガラス転移温度Tg以上の温度での線膨張係数αTgは、式(4)によって計算することができる。
αTg=α×ΔVTg÷ΔV …(4)
ここで、αTgは、ガラス転移温度Tg以上の温度での線膨張係数であり、αは、ガラス転移温度Tg以下の温度での線膨張係数であり、ΔVTgは、ガラス転移温度Tg以上の温度での比容積の傾きであり、ΔVは、ガラス転移温度Tg以下温度での比容積の傾きである。
第2データ変換部15は、線膨張係数の物性データ76が示す線膨張係数、つまりガラス転移温度Tg以下の温度での線膨張係数αに基づいて、式(4)によって、ガラス転移温度Tg以上の温度での線膨張係数αTgを計算する。線膨張係数αは、7×10−5である。
図7は、応力解析部11による応力解析で得られる型開き時の樹脂成形品92の形状の一例を示す図である。樹脂成形品92は、応力解析部11による応力解析によって算出された変形量だけ変形させた樹脂成形品の形状を示している。樹脂成形品92は、濃淡によって変位量の分布を示している。濃度が濃いほど変位量が少なく、濃度が薄いほど変位量が大きい。図7に示した樹脂成形品92は、長手方向中央部の変位量が最も小さく、長手方向両端部付近の変位量が最も大きくなっている。
図8は、樹脂流動解析でのメッシュ形状93およびその節点931の一例を示す図である。図9は、熱応力解析でのメッシュ形状94およびその節点941,942の一例を示す図である。伝熱解析部13は、応力解析部11による樹脂流動解析での温度分布データを、熱応力解析部16による熱応力解析で利用することを可能とするために、伝熱解析を行う。伝熱解析部13は、計算モデルとして、応力解析の変形結果を用いる。すなわち、応力解析部11で計算した変形量が反映された樹脂成形品の形状を、計算モデルとする。
図8に示したメッシュ形状93は、樹脂流動解析部6による樹脂流動解析でのメッシュ形状である。樹脂流動解析でのメッシュ形状93は、要素の頂点に節点931がある。図9に示したメッシュ形状94は、熱応力解析部16による熱応力解析でのメッシュ形状である。メッシュ形状94の形状は、メッシュ形状93の形状と同じ形状であるが、節点がメッシュ形状93と異なり、要素の頂点の節点941および辺の中間点の節点942がある。要素の頂点の節点941は、メッシュ形状93の要素の頂点の節点931と同じである。すなわち、メッシュ形状93とメッシュ形状94とは、形状は同じであるが、節点が異なる。
ここで、樹脂流動解析部6によって算出される樹脂成形品の温度分布は、図8に示した各節点931の温度が算出されていることを表している。図9に示した頂点の各節点941は、図8に示した各節点931に対応するので、節点941の温度は、節点931の温度である。伝熱解析部13は、中間点の節点942の温度を、中間点の節点942がある辺の両端の節点941の温度をそれぞれの節点941の温度に拘束した状態で、中間点の節点942がある辺の両端の節点941の温度が中間点の節点942に伝わる熱を、伝熱解析によって計算する。
図10は、伝熱解析部13による伝熱解析で得られる樹脂成形品95の温度分布の一例を示す図である。樹脂成形品95は、伝熱解析部13による伝熱解析で得られる型開き時の樹脂成形品の温度分布を示している。図10では、温度分布を濃淡で示している。濃度が濃いほど温度が低く、濃度が薄いほど温度が高い。図10に示した樹脂成形品95は、内部の温度が最も高く、金型に接する表層部の温度が最も低くなっている。
図11は、熱応力解析部16による熱応力解析で得られる最終的な樹脂成形品96の形状の一例を示す図である。熱応力解析部16は、応力解析部11による応力解析での変形結果、つまり変形量だけ変形した樹脂成形品の形状を計算モデルとし、かつ伝熱解析部13による伝熱解析での温度分布結果を初期条件とし、記憶装置に予め記憶されている所定温度まで冷却したときの変形量を、熱応力解析によって計算する。ここでは、所定温度を室温として計算している。
図11に示した樹脂成形品96の形状は、熱応力解析部16による熱応力解析で得られた変形量だけ変形させた最終的な形状である。図11では、変位量分布を濃淡で示している。濃度が濃いほど変位量が少なく、濃度が薄いほど変位量が大きい。図11に示した樹脂成形品96は、長手方向中央部の変位量が最も小さく、長手方向両端部付近の変位量が最も大きくなっている。
図12は、従来技術によって求めた樹脂成形品の板厚方向の変形量を示すグラフ83の一例を示す図である。図13は、変形量予測装置100によって求めた樹脂成形品の板厚方向の変形量を示すグラフ84の一例を示す図である。グラフ83,84は、横軸が金型温度であり、縦軸がソリ量(mm)である。金型温度は、キャビティ側の金型(図では「キャビ」という)の温度とコア側の金型(図では「コア」という)の温度との組み合わせで表わされる。図12,13では、金型温度として、キャビティ側の金型温度49℃とコア側の金型温度54℃との組み合わせ、キャビティ側の金型温度58℃とコア側の金型温度53℃との組み合わせ、およびキャビティ側の金型温度70℃とコア側の金型温度58℃との組み合わせの3つの組み合わせを示している。
図12では、グラフ831が実測値のグラフであり、グラフ832が解析値のグラフである。図13では、グラフ841が実測値のグラフであり、グラフ842が解析値のグラフである。図12では、いずれの温度の組み合わせにおいても、実測値の変形量と解析値の変形量とで差があり、特に、キャビティ側の金型温度70℃とコア側の金型温度58℃との組み合わせで最も大きな差がある。これに対して、図13では、いずれの温度の組み合わせにおいても、実測値の変形量と解析値の変形量とでほとんど差はない。すなわち、変形量予測装置100は、金型内で十分に冷却されない状態で離型された樹脂成形品の最終的な形状を精度よく予測することができる。
上述した実施形態では、制御装置が記憶装置に記憶されるプログラムを実行することによって、入力装置および出力装置を制御するとともに、上述した機能を実現するが、上述した機能を実現するためのプログラムは、記憶装置に記憶されることに限定されるものではなく、コンピュータで読取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。記録媒体は、たとえば図示しない外部記憶装置としてプログラム読取装置を変形量予測装置100に設け、そこに記録媒体を挿入することによって読取り可能な記録媒体であってもよいし、あるいは他の装置の記憶装置であってもよい。
いずれの記録媒体であっても、記憶されているプログラムがコンピュータからアクセスされて実行される構成であればよい。あるいはいずれの記録媒体であっても、プログラムが読み出され、読み出されたプログラムが、記憶装置のプログラム記憶エリアに記憶されて、そのプログラムが実行される構成であってもよい。
変形量予測装置100と分離可能に構成される記録媒体は、たとえば磁気テープ/カセットテープなどのテープ系の記録媒体、フレキシブルディスク/ハードディスクなどの磁気ディスクもしくはCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)/MO(Magneto Optical disk)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disk)/CD−R(Compact Disk Recordable)/ブルーレイディスクなどの光ディスクのディスク系の記録媒体、IC(Integrated Circuit)カード(メモリカードを含む)/光カードなどのカード系の記録媒体、またはマスクROM/EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)/EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)/フラッシュROMなどの半導体メモリを含む固定的にプログラムを担持する記録媒体であってもよい。
また、変形量予測装置100を通信ネットワークと接続可能に構成し、通信ネットワークを介して上記プログラムを供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、たとえば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN(Local Area Network)、ISDN(Integrated Services Digital Network)、VAN(Value Added Network)、CATV(Community Antenna Television)通信網、仮想専用網(V irtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、または衛星通信網など通信ネットワークが利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、たとえば、IEEE1394、USB(Universal Serial Bus)、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線でも、IrDA(Infrared Data Association)あるいはリモートコントロールで用いられる赤外線、Bluetooth(登録商標)、802.11無線、HDR(High Data Rate)、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網などの無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
このように、CADデータ取得部1は、射出成形によって成形される樹脂成形品の形状を表すCADデータを取得する。計算モデル作成部2は、CADデータ取得部1によって取得されたCADデータが示す樹脂成形品の形状をメッシュ状に分割した計算用モデルを作成する。成形条件取得部3は、樹脂を金型に射出して成形するための成形条件を取得する。樹脂流動解析部6は、計算モデル作成部2によって作成された計算用モデルおよび成形条件取得部3によって取得された成形条件に基づいて、金型に射出される樹脂の流動解析を行い、金型から取り出される時点の樹脂成形品の残留応力および温度分布を算出する。第1データ変換部9は、樹脂流動解析部6によって算出された温度分布に基づいて、ガラス転移温度よりも低い予め定める温度での樹脂のヤング率を、樹脂の温度に依存する温度依存性ヤング率に変換する。応力解析部11は、樹脂流動解析部6によって算出された残留応力、計算モデル作成部2によって作成された計算用モデル、および第1データ変換部9によって変換された温度依存性ヤング率に基づいて、金型によって拘束されている樹脂成形品の形状から、金型による拘束がなくなった時点の樹脂成形品の形状への変形量を応力解析によって計算する。そして、熱応力解析部16は、計算モデル作成部2によって作成された計算用モデルの形状を応力解析部11によって計算された変形量だけ変形させた形状を初期モデルとし、金型による拘束がなくなった時点から前記予め定める温度まで冷却されるときに、前記初期モデルに対する変形量を、熱応力解析によって計算する。したがって、金型内で十分に冷却されない状態で離型された樹脂成形品の最終的な形状を精度よく予測することができる。
さらに、記憶装置は、前記予め定める温度での線膨張係数、および温度と比容積との関係を表す比容積データを記憶する。第2データ変換部15は、記憶装置に記憶される比容積データに基づいて、記憶装置に記憶される予め定める温度での線膨張係数をガラス転移温度以上の温度での線膨張係数に変換する。そして、熱応力解析部16は、前記初期モデルに対する変形量を計算するとき、記憶装置に記憶される予め定める温度での線膨張係数および第2データ変換部15によって変換された線膨張係数を用いて計算する。したがって、変形量をより精度よく計算することができる。
さらに、伝熱解析部13は、樹脂流動解析部6が樹脂流動解析を行うために用いる計算用モデルを構成する要素であるメッシュ形状が、熱応力解析部16が熱応力解析を行うために用いる計算用モデルのメッシュ形状と異なるとき、伝熱解析によって、樹脂流動解析部6によって算出された温度分布を表す温度分布データの形式を、熱応力解析部16が熱応力解析を行うために必要な温度分布を表す温度分布データの形式に変換する。そして、熱応力解析部16は、伝熱解析部13によって変換された形式の温度分布が示す温度に基づいて、前記初期モデルに対する変形量を計算する。したがって、樹脂流動解析と熱応力解析とで温度分布を表す温度分布データの形式が異なっても、変形量を精度よく計算することができる。
さらに、前記成形条件は、金型に設けられる冷却管に流れる液体の温度を制御することによって金型の温度を調節する温度調節器に設定される温度調節器設定温度を含む。記憶装置は、前記温度調節器設定温度と金型の温度との関係を表わす金型温度データベース4を記憶する。成形条件変換部5は、記憶装置に記憶される金型温度データベース4に基づいて、成形条件取得部3によって取得された成形条件に含まれる温度調節器設定温度を金型の温度に変換する。そして、樹脂流動解析部6は、成形条件変換部5によって変換された金型の温度で樹脂流動解析を行う。したがって、成形条件として、金型の温度ではなく、温度調節器設定温度が指定されても、金型の温度に変換することができるので、変形量を精度よく計算することができる。
さらに、結果データ変換部10は、樹脂流動解析部6によって行われた樹脂流動解析の解析結果に基づいて、樹脂が充填されない空間部分である欠落部が形成されたか否かを判断し、欠落部が形成されたと判断したとき、欠落部が形成される位置を、前記初期モデルから除外する。したがって、欠落部があっても、エラーとすることなく、応力解析および熱応力解析を行うことができる。
さらに、結果データ変換部10は、樹脂流動解析部6によって行われた樹脂流動解析の解析結果に基づいて、樹脂が充填されない空間部分である欠落部が形成されたか否かを判断し、欠落部が形成されたと判断したとき、欠落部が形成される位置の残留応力として、予め定める残留応力を設定する。したがって、欠落部があっても、エラーとすることなく、応力解析および熱応力解析を行うことができる。
さらに、結果データ変換部10は、樹脂流動解析部6によって算出された残留応力を表わす残留応力データの形式および温度分布を表わす温度分布データの形式を、応力解析部11で利用可能な形式に変換する。したがって、樹脂流動解析と熱応力解析とで残留応力データおよび温度分布データの形式が異なっても、変形量を精度よく計算することができる。
さらに、射出成形によって成形される樹脂成形品の形状の変形量を予測する変形量予測装置で樹脂成形品の変形量を予測するにあたって、図2に示した樹脂成形品の変形量予測処理の処理手順のフローチャートにおいて、ステップS1では、前記樹脂成形品の形状を表すCADデータを取得する。ステップS2では、ステップS1で取得されたCADデータが示す樹脂成形品の形状をメッシュ状に分割した計算用モデルを作成する。ステップS3では、樹脂を金型に射出して成形するための成形条件を取得する。ステップS5では、ステップS2で作成された計算用モデルおよびステップS3で取得された成形条件に基づいて、金型に射出される樹脂の流動解析を行い、金型から取り出される時点の樹脂成形品の残留応力および温度分布を算出する。ステップS6では、ステップS5で算出された温度分布に基づいて、ガラス転移温度よりも低い予め定める温度での樹脂のヤング率を、樹脂の温度に依存する温度依存性ヤング率に変換する。ステップS7では、ステップS5で算出された残留応力、ステップS2で作成された計算用モデル、およびステップS6で変換された温度依存性ヤング率に基づいて、金型によって拘束されている樹脂成形品の形状から、金型による拘束がなくなった時点の樹脂成形品の形状への変形量を応力解析によって計算する。そして、ステップS9では、ステップS2で作成された計算用モデルの形状をステップS7で計算された変形量だけ変形させた形状を初期モデルとし、金型による拘束がなくなった時点から前記予め定める温度まで冷却されるときに、前記初期モデルに対する変形量を、熱応力解析によって計算する。したがって、金型内で十分に冷却されない状態で離型された樹脂成形品の最終的な形状を精度よく予測することができる。
さらに、コンピュータを含み、射出成形によって成形される樹脂成形品の形状の変形量を予測する変形量予測装置に含まれるコンピュータに、前記樹脂成形品の形状を表すCADデータを取得するステップS1と、ステップS1で取得されたCADデータが示す樹脂成形品の形状をメッシュ状に分割した計算用モデルを作成するステップS2と、樹脂を金型に射出して成形するための成形条件を取得するステップS3と、ステップS2で作成された計算用モデルおよびステップS3で取得された成形条件に基づいて、金型に射出される樹脂の流動解析を行い、金型から取り出される時点の樹脂成形品の残留応力および温度分布を算出するステップS5と、ステップS5で算出された温度分布に基づいて、ガラス転移温度よりも低い予め定める温度での樹脂のヤング率を、樹脂の温度に依存する温度依存性ヤング率に変換するステップS6と、ステップS5で算出された残留応力、ステップS2で作成された計算用モデル、およびステップS6で変換された温度依存性ヤング率に基づいて、金型によって拘束されている樹脂成形品の形状から、金型による拘束がなくなった時点の樹脂成形品の形状への変形量を応力解析によって計算するステップS7と、ステップS2で作成された計算用モデルの形状をステップS7で計算された変形量だけ変形させた形状を初期モデルとし、金型による拘束がなくなった時点から前記予め定める温度まで冷却されるときに、前記初期モデルに対する変形量を、熱応力解析によって計算する熱応力解析ステップとを実行させるためのプログラムとして提供することができる。
さらに、前記プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体として提供することができる。
1 CADデータ取得部
2 計算モデル作成部
3 成形条件取得部
4 金型温度データベース
5 成形条件変換部
6 樹脂流動解析部
7 樹脂流動解析結果出力部
8 ヤング率データベース
9 第1データ変換部
10 結果データ変換部
11 応力解析部
12 応力解析結果出力部
13 伝熱解析部
14 伝熱解析結果出力部
15 第2データ変換部
16 熱応力解析部
17 解析結果出力部
71 メッシュデータ
72 残留応力データ
73 温度分布データ
74 ヤング率および線膨張係数を除く物性データ
75 ヤング率の物性データ
76 線膨張係数の物性データ
90 樹脂成形品
100 変形量予測装置

Claims (10)

  1. 射出成形によって成形される樹脂成形品の形状を表す形状データを取得する形状データ取得部と、
    前記形状データ取得部によって取得された形状データが示す樹脂成形品の形状をメッシュ状に分割した計算用モデルを作成する計算モデル作成部と、
    樹脂を金型に射出して成形するための成形条件を取得する成形条件取得部と、
    前記計算モデル作成部によって作成された計算用モデルおよび前記成形条件取得部によって取得された成形条件に基づいて、金型に射出される樹脂の流動解析を行い、金型から取り出される時点の樹脂成形品の残留応力および温度分布を算出する樹脂流動解析部と、
    前記樹脂流動解析部によって算出された温度分布に基づいて、ガラス転移温度よりも低い予め定める温度での樹脂のヤング率を、樹脂の温度に依存する温度依存性ヤング率に変換するヤング率変換部と、
    前記樹脂流動解析部によって算出された残留応力、前記計算モデル作成部によって作成された計算用モデル、および前記ヤング率変換部によって変換された温度依存性ヤング率に基づいて、金型によって拘束されている樹脂成形品の形状から、金型による拘束がなくなった時点の樹脂成形品の形状への変形量を応力解析によって計算する応力解析部と、
    前記計算モデル作成部によって作成された計算用モデルの形状を前記応力解析部によって計算された変形量だけ変形させた形状を初期モデルとし、金型による拘束がなくなった時点から前記予め定める温度まで冷却されるときに、前記初期モデルに対する変形量を、熱応力解析によって計算する熱応力解析部とを含むことを特徴とする変形量予測装置。
  2. 前記予め定める温度での線膨張係数、および温度と比容積との関係を表す比容積データを記憶する記憶部と、
    前記記憶部に記憶される比容積データに基づいて、前記記憶部に記憶される予め定める温度での線膨張係数をガラス転移温度以上の温度での線膨張係数に変換する線膨張係数変換部とをさらに含み、
    前記熱応力解析部は、前記初期モデルに対する変形量を計算するとき、前記記憶部に記憶される予め定める温度での線膨張係数および前記線膨張係数変換部によって変換された線膨張係数を用いて計算することを特徴とする請求項1に記載の変形量予測装置。
  3. 前記樹脂流動解析部が樹脂流動解析を行うために用いる計算用モデルを構成する要素であるメッシュ形状が、前記熱応力解析部が熱応力解析を行うために用いる計算用モデルのメッシュ形状と異なるとき、伝熱解析によって、前記樹脂流動解析部によって算出された温度分布を表す温度分布データの形式を、前記熱応力解析部が熱応力解析を行うために必要な温度分布を表す温度分布データの形式に変換する伝熱解析部をさらに含み、
    前記熱応力解析部は、前記伝熱解析部によって変換された形式の温度分布が示す温度に基づいて、前記初期モデルに対する変形量を計算することを特徴とする請求項1に記載の変形量予測装置。
  4. 前記成形条件は、金型に設けられる冷却管に流れる液体の温度を制御することによって金型の温度を調節する温度調節器に設定される温度調節器設定温度を含み、
    前記温度調節器設定温度と金型の温度との関係を表わす金型温度データを記憶する金型温度記憶部と、
    前記金型温度記憶部に記憶される金型温度データに基づいて、前記成形条件取得部によって取得された成形条件に含まれる温度調節器設定温度を金型の温度に変換する成形条件変換部とをさらに含み、
    前記樹脂流動解析部は、前記成形条件変換部によって変換された金型の温度で樹脂流動解析を行うことを特徴とする請求項1に記載の変形量予測装置。
  5. 前記樹脂流動解析部によって行われた樹脂流動解析の解析結果に基づいて、樹脂が充填されない空間部分である欠落部が形成されたか否かを判断し、欠落部が形成されたと判断したとき、欠落部が形成される位置を、前記初期モデルから除外する欠落部除外部を含むことを特徴とする請求項1に記載の変形量予測装置。
  6. 前記樹脂流動解析部によって行われた樹脂流動解析の解析結果に基づいて、樹脂が充填されない空間部分である欠落部が形成されたか否かを判断し、欠落部が形成されたと判断したとき、欠落部が形成される位置の残留応力として、予め定める残留応力を設定する欠落部設定部を含むことを特徴とする請求項1に記載の変形量予測装置。
  7. 前記樹脂流動解析部によって算出された残留応力を表わす残留応力データの形式および温度分布を表わす温度分布データの形式を、前記応力解析部で利用可能な形式に変換する形式変換部を含むことを特徴とする請求項1に記載の変形量予測装置。
  8. 射出成形によって成形される樹脂成形品の形状の変形量を予測する変形量予測装置で実行される変形量予測方法であって、
    前記樹脂成形品の形状を表す形状データを取得する形状データ取得ステップと、
    前記形状データ取得ステップで取得された形状データが示す樹脂成形品の形状をメッシュ状に分割した計算用モデルを作成する計算モデル作成ステップと、
    樹脂を金型に射出して成形するための成形条件を取得する成形条件取得ステップと、
    前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデルおよび前記成形条件取得ステップで取得された成形条件に基づいて、金型に射出される樹脂の流動解析を行い、金型から取り出される時点の樹脂成形品の残留応力および温度分布を算出する樹脂流動解析ステップと、
    前記樹脂流動解析ステップで算出された温度分布に基づいて、ガラス転移温度よりも低い予め定める温度での樹脂のヤング率を、樹脂の温度に依存する温度依存性ヤング率に変換するヤング率変換ステップと、
    前記樹脂流動解析ステップで算出された残留応力、前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデル、および前記ヤング率変換ステップで変換された温度依存性ヤング率に基づいて、金型によって拘束されている樹脂成形品の形状から、金型による拘束がなくなった時点の樹脂成形品の形状への変形量を応力解析によって計算する応力解析ステップと、
    前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデルの形状を前記応力解析ステップで計算された変形量だけ変形させた形状を初期モデルとし、金型による拘束がなくなった時点から前記予め定める温度まで冷却されるときに、前記初期モデルに対する変形量を、熱応力解析によって計算する熱応力解析ステップとを含むことを特徴とする変形量予測方法。
  9. コンピュータを含み、射出成形によって成形される樹脂成形品の形状の変形量を予測する変形量予測装置に含まれるコンピュータに、
    前記樹脂成形品の形状を表す形状データを取得する形状データ取得ステップと、
    前記形状データ取得ステップで取得された形状データが示す樹脂成形品の形状をメッシュ状に分割した計算用モデルを作成する計算モデル作成ステップと、
    樹脂を金型に射出して成形するための成形条件を取得する成形条件取得ステップと、
    前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデルおよび前記成形条件取得ステップで取得された成形条件に基づいて、金型に射出される樹脂の流動解析を行い、金型から取り出される時点の樹脂成形品の残留応力および温度分布を算出する樹脂流動解析ステップと、
    前記樹脂流動解析ステップで算出された温度分布に基づいて、ガラス転移温度よりも低い予め定める温度での樹脂のヤング率を、樹脂の温度に依存する温度依存性ヤング率に変換するヤング率変換ステップと、
    前記樹脂流動解析ステップで算出された残留応力、前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデル、および前記ヤング率変換ステップで変換された温度依存性ヤング率に基づいて、金型によって拘束されている樹脂成形品の形状から、金型による拘束がなくなった時点の樹脂成形品の形状への変形量を応力解析によって計算する応力解析ステップと、
    前記計算モデル作成ステップで作成された計算用モデルの形状を前記応力解析ステップで計算された変形量だけ変形させた形状を初期モデルとし、金型による拘束がなくなった時点から前記予め定める温度まで冷却されるときに、前記初期モデルに対する変形量を、熱応力解析によって計算する熱応力解析ステップとを実行させるためのプログラム。
  10. 請求項9に記載のプログラムが記録されたコンピュータ読取り可能な記録媒体。
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