以下、図面を参照してこの発明の種々な実施の形態を説明する。図1は、この発明の一実施の形態に係る光ディスク(具体例として追記型の片面2層光ディスク)100の構成例を説明する図である。図1(a)(b)に例示されるように、この光ディスク100は、例えばポリカーボネート(PC)等の合成樹脂材料で円盤状に形成された透明樹脂基板101を備えている。この透明樹脂基板101には、同心円状またはらせん状に溝(グルーブ)が形成されている。この透明樹脂基板101は、スタンパを用いて射出成形により製造することができる。
ここで、ポリカーボネート等の0.59mm厚透明樹脂基板101上に第1層目(L0)の有機色素記録層105および光半透過反射層106を順に積層し、その上にフォトポリマー(2P樹脂)104をスピンコートする。そして、その上に第2層目(L1)の溝(グルーブ)形状を転写して第2層目の有機色素記録層107および銀または銀合金等の反射膜108を順に積層する。こうしてL0およびL1の記録層が積層されたものに、他の0.59mm厚の透明樹脂基板(あるいはダミー基板)102が、UV硬化樹脂(接着層)103を介して貼り合わされる。上記有機色素の記録膜(記録層105および107)は、半透過反射層106及び中間層104を挟む2層構造となっている。こうして出来上がった貼り合わせ光ディスクの合計厚は、ほぼ1.2mmとなる。
ここで、透明樹脂基板101上には、例えばトラックピッチ0.4μm、深さ60nmのらせん状グルーブが(L0とL1の各層に)形成されている。このグルーブはウォブルしており、アドレス情報はこのウォブル上に記録されている。そして、この透明樹脂基板101上に、そのグルーブを充填するように、有機色素を含む記録層105、107が形成される。
この記録層105、107を形成する有機色素としては、その最大吸収波長領域が記録波長(例えば405nm)よりも長波長側にシフトしているものを用いることができる。また、記録波長領域において吸収が消滅しているのではなく、その長波長領域(例えば450nm〜600nm)でも相当の光吸収を有するように設計される。
上記有機色素(具体例は後述)は、溶媒に溶かすことで液体とし、スピンコート法により透明樹脂基板面に容易に塗布することができる。この場合、溶媒による希釈率、スピン塗布時の回転数を制御することにより、膜厚を高精度に管理することができる。
なお、情報記録前のトラック上を記録用レーザ光によりフォーカシングまたはトラッキングした場合は、低光反射率である。その後、レーザ光により色素の分解反応が生じ、光吸収率が低下することにより、記録マーク部分の光反射率が上昇する。このため、レーザ光を照射して形成した記録マーク部分の光反射率が、レーザ光照射前の光反射率よりも高くなるという、いわゆるLow−to−High(またはL to H)の特性を実現している。
この発明の一実施の形態において、透明樹脂基板101およびフォトポリマー(2P樹脂)104上に存在するL0層およびL1層に適用される物理フォーマットとしては、例えば以下のものがある。すなわち、追記型片面2層ディスクの一般パラメータは1層ディスクの一般パラメータとほとんど同じであるが、以下の点で異なる。ユーザが使用可能な記録容量は30GBであり、データ領域の内半径が層0(L0層)では24.6mmであり、層1(L1層)では24.7mmであり、データ領域の外半径が58.1mm(層0、層1共通)である。
図1(a)の光ディスク100において、システムリードイン領域SLAは、図1(c)に例示されるようにコントロールデータセクションを含み、このコントロールデータセクションは、物理フォーマット情報等の一部として、記録パワー(ピークパワー)、バイアスパワー等の記録に関するパラメータを、L0およびL1それぞれに対して含んでいる。
また、光ディスク100のデータ領域DA内のトラックには、図1(d)に例示されるように、所定の記録パワー(ピークパワー)およびバイアスパワーを伴うレーザにより、マーク/スペース記録が行われる。このマーク/スペース記録により、図1(e)に例示されるように、例えば高精細TV放送番組等のオブジェクトデータ(VOB等)とその管理情報(VMG)が、データ領域DA内の(L0および/またはL1の)トラック上に記録される。
この発明の一実施の形態において使用できる有機色素としては、シアニン色素、スチリル色素、アゾ色素等がある。特に、シアニン色素、スチリル色素は、記録波長に対する吸収率の制御がしやすく好適である。また、アゾ色素は、アゾ化合物単体で用いても良いし、アゾ化合物1分子またはそれ以上の分子と金属との錯体としても良い。
この発明の一実施の形態において使用できるアゾ金属錯体は、その中心金属Mとして、コバルト、ニッケル、あるいは銅を使用して光安定性を高めている。しかし、それに限らず、スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀などを、アゾ金属錯体の中心金属Mとして使っても良い。
アゾ化合物は芳香環を持っており、その芳香環の構造はもちろんのこと、芳香環に様々な置換基を持たせることで、記録特性や保存特性、再生安定性などを最適化することが可能となる。この置換基は、嵩高いほど再生光耐久性が向上する傾向にあるが、記録時の感度も悪くなる傾向にあるため、どちらの特性も良好となるような置換基の選択が重要となる。また、この置換基は、溶剤への溶解度にも関与している。
これまで(記録レーザ波長が620nmより長いもの)の色素系情報記録媒体の記録メカニズムと異なり、本願発明が関係する短波長レーザ記録(記録波長が例えば405nm)ではその記録メカニズムが基板や色素膜体積の物理的変化でない。再生時、色素に記録時よりも弱いレーザを照射することによって、熱または光により記録層内の色素分子の配向変化、あるいは、色素分子内の立体配座の変化が徐々に生じてしまうが、色素分子内に嵩高い置換基が存在することにより、これらの変化を生じにくくする効果があると考えられる。これが、嵩高い置換基が再生光耐久性向上に寄与する理由である。
このときの嵩高い置換基とは、色素分子内芳香環に置換している炭素3つ以上からなる置換基を指し、例えば、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、1−メチルプロピル基、2−メチルプロピル基、n-ペンチル基、1−エチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1,2−ジメチルプロピル基、2,2−ジメチルプロピル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基などがある。ここで、置換基の中には、酸素、硫黄、窒素、珪素、フッ素、臭素、塩素、ヨウ素など炭素以外の原子を含んでも良い。
図1(b)の構造例において、レーザ光が入射するエリアAX内の各層の厚みは、例えば図1(f)のようになっている。すなわち、この例では、AgまたはAg合金のL0反射層106の厚みは15nm〜35nmの範囲に選ばれ、AgまたはAg合金のL1反射層108の厚みは60nm〜150nmの範囲に選ばれている(すなわちL0反射層厚<L1反射層厚)。また、中間層104の厚みは25±10μmの範囲に選ばれ、接着層103はバラツキの範囲が2μm以下となるよう管理されている。
図2は、記録層用有機材料の金属錯体部分の具体例を示す図である。図示するアゾ金属錯体の中心金属Mを中心とした円形の周辺領域が発色領域8となる。この発色領域8をレーザ光が通過すると、この発色領域8内の局在電子がレーザ光の電場変化に共鳴(共振)して、レーザ光のエネルギーを吸収する。この局在電子が最も共鳴(共振)してエネルギーを吸収し易い電場変化の周波数をレーザ光の波長に換算した値を最大吸収波長λmaxで表す。図示するような発色領域8(共鳴範囲)の長さが長くなる程、最大吸収波長λmaxが長波長側にシフトする。また、中心金属Mの原子を代える事で中心金属M周辺の局在電子の局在範囲(中心金属Mが局在電子をどれだけ中心付近に引き寄せられるか)が変化し、最大吸収波長λmaxの値が変化する。例えばλmaxが405nm付近になるものを選択すれば、波長405nmに感度(光吸収)を持つ有機材料が得られることになる。
波長405nmに光吸収を持つ記録層(例えばL0またはL1)用色素材料としては、図2に一般構造式を示した有機金属錯体部と図示しない色素材料部を組み合わせた構造を持つ有機色素材料を用いることができる。有機金属錯体の中心金属Mとしては、一般に、コバルトあるいはニッケル(その他スカンジウム、イットリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、テクネチウム、レニウム、鉄、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、水銀など)を用いることができる。また、色素材料部分としては図示しないがシアニン色素、スチリル色素、モノメチンシアニン色素を用いることができる。
ここで、現行DVD−Rディスクで解釈されている記録原理について説明しておく。現行DVD−Rディスクでは記録膜にレーザ光を照射すると、記録層が局所的にレーザ光のエネルギーを吸収して高熱になる。特定温度を越えると、透明基板が局所的に変形する。透明基板の変形を誘発するメカニズムはDVD−Rディスクの製造メーカーにより異なるが、
(1)記録層の気化エネルギーにより局所的に透明基板が塑性変形すること、および/または
(2)記録層から熱が透明基板に伝わり、その熱により局所的に透明基板が塑性変形すること
が原因と言われている。透明基板が局所的に塑性変形すると、透明基板を通過して光反射層で反射し、再度透明基板を通過して戻って来るレーザ光の光学的距離が変化する。局所的に塑性変形した透明基板の部分を通過して戻ってくる記録マーク内からのレーザ光と、変形していない透明基板の部分を通過して戻ってくる記録マーク周辺部からのレーザ光との間に位相差が生じるので、両者間の干渉により反射光の光量変化が生じる。また、特に、上記(1)のメカニズムが生じた場合には、記録層の記録マーク内が気化(蒸発)により空洞化して生じる実質的な屈折率n32の変化、あるいは記録マーク内での有機色素記録材料の熱分解により生じる屈折率n32の変化も上記の位相差発生に寄与する。現行DVD−Rディスクでは、透明基板が局所的に変形するまで記録層が高温(上記(1)のメカニズムでは記録層の気化温度、(2)のメカニズムでは透明基板を塑性変形させるために必要な記録層内温度)になる必要や、記録層の一部を熱分解または気化(蒸発)させるために高温にする必要があり、記録マークを形成させるためにはレーザ光の大きなパワーが必要となる。
記録マークを形成するには第1段階として記録層がレーザ光のエネルギーを吸収できる必要がある。記録層内の光吸収スペクトルが有機色素記録膜の記録感度に大きく影響を及ぼす。
図2は上記した情報記憶媒体構成要素の具体的内容“アゾ金属錯体+Cu”の具体的な構造式を示している。図2に示したアゾ金属錯体の中心金属Mを中心とした円形の周辺領域が発色領域8となる。この発色領域8をレーザ光が通過すると、この発色領域8内の局在電子がレーザ光の電場変化に共鳴(共振)してレーザ光のエネルギーを吸収する。この局在電子が最も共鳴(共振)してエネルギーを吸収し易い電場変化の周波数に対してレーザ光の波長に換算した値を最大吸収波長と呼び、λmaxで表す。図2に示すような発色領域8(共鳴範囲)の長さが長くなる程、最大吸収波長λmaxが長波長側にシフトする。また、図2において中心金属Mの原子を代える事で中心金属M周辺の局在電子の局在範囲(中心金属Mが局在電子をどれだけ中心付近に引き寄せられるか)が変化し、最大吸収波長λmaxの値が変化する。
色素として、図3の化学式で示されるものを用いた光ディスク100を作製し、ランダムデータの情報記録を行った。L0層のエラーレートSbERを測定すると、5.4e-6と、(実用レベルよりは高いハードルの)目標値である5.0e-5より充分小さく良好な値を得ることができた。また、11Tマーク11Tスペースの繰り返しパターンを記録し、再生したところ波形の歪みはほとんど観測されず、(11Tスペースを再生したときの)スペースレベルであるI11Lの最大値と最小値の差([I11Lmax-I11Lmin]/I11min)は2%であった。ここで、11Tのマーク長は1.12μmであり、1.2*Na/λは0.74μmとなっており、充分長いマークとなっていた。この色素について、記録前・記録後のIR、MS、NMRそれぞれの分析を行ったが、違いは見られなかった。
《一般パラメータ》
追記型片面1層ディスクと比較した追記型片面2層ディスクの一般パラメータを図4に示す。追記型片面2層ディスクの一般パラメータは1層ディスクの一般パラメータとほとんど同じであるが、以下の点で異なる。ユーザが使用可能な記録容量は30GBであり、データ領域の内半径が層0では24.6mmであり、層1では24.7mmであり、データ領域の外半径が58.1mm(L0、L1共通)である。
図5は、この発明の一実施の形態に係る光ディスクを用いた記録方法を説明するフローチャートである。図示しないディスクドライブの光ピックアップから、例えば波長405nmの変調されたレーザをディスク100の記録対象層(L0またはL1)に照射して、オブジェクトデータ(DVDまたはHD_DVDでは、VOB等)を記録する(ST100)。この記録が終了すると(ST102Y)、記録されたオブジェクトデータに関する管理情報(DVDまたはHD_DVDでは、VMG)がディスク100に書き込まれて(ST104)、1回の記録が終了する。
図6は、この発明の一実施の形態に係る光ディスクを用いた再生方法を説明するフローチャートである。図5のような処理でオブジェクトデータおよび管理情報が記録されたディスク100から、例えば波長405nmのレーザにより、管理情報が読み取られる(ST200)。読み取られた管理情報は、図示しない再生機器のワークメモリに一旦記憶される。この再生機器は、記憶した管理情報内の再生手順に関する情報等を参照して、記録されたオブジェクトデータを再生する(ST202)。この再生は、ユーザが再生終了を指示するか、管理情報内の再生手順情報が再生終了を示すところまで再生が進むと、終了する(ST204Y)。
図7は、図1の光ディスク100における物理セクタレイアウトの一例を説明する図である。図示されるように、2層の層にわたって設けられる情報領域は、7つの領域:システムリードイン領域、コネクション領域、データリードイン領域、データ領域、データリードアウト領域、システムリードアウト領域、ミドル領域からなる。各層にミドル領域が設けられることにより、再生ビームを層0(L0)から層1(L1)に移動させることができる。データ領域DAはメインデータ(図1(e)の例では管理情報VMG、オブジェクトデータVOB等)を記録する。システムリードイン領域SLAは制御データと参照(リファレンス)コード等を含む。データリードアウト領域は連続するスムーズな読み出しを可能とする。
《リードアウト領域》
システムリードイン領域とシステムリードアウト領域はエンボスピットからなるトラックを含む。層0(L0)のデータリードイン領域、データ領域、ミドル領域と、層1(L1)のミドル領域、データ領域、データリードアウト領域は、グルーブトラックを含む。グルーブトラックは層0のデータリードイン領域の開始位置からミドル領域の終了位置まで連続であり、層1のミドル領域の開始位置からデータリードアウト領域の終了位置まで連続である。なお、片面2層ディスク基板を1対用意して張り合わせると、2つの読み出し面を有する両面4層ディスクとなる。
図8は、図1の光ディスクにおけるリードイン領域の構成例を説明する図である。図示されるように、層0(L0)のシステムリードイン領域SLAは内周側から順にイニシャルゾーン、バッファーゾーン、制御(コントロール)データゾーン、バッファーゾーンからなる。層0のデータリードイン領域は内周側から順にブランクゾーン、ガードトラックゾーン、ドライブテストゾーン、ディスクテストゾーン、ブランクゾーン、RMD(Recording Management Data)デュプリケーションゾーン、L−RMZ(記録位置管理データ)、R物理フォーマット情報ゾーン、参照コードゾーンからなる。層0(L0)のデータ領域の開始アドレス(内周側)と層1のデータ領域の終了アドレス(内周側)とはクリアランスの分だけずれており、層1(L1)のデータ領域の終了アドレス(内周側)の方が層0のデータ領域の開始アドレス(内周側)より外周側である。
《リードイン領域の構造》
図8は層0(L0)のリードイン領域の構造を例示している。システムリードイン領域は内周側から順にイニシャルゾーン、バッファーゾーン、コントロールデータゾーン、バッファーゾーンが配置される。データリードイン領域は内周側から順にブランクゾーン、ガードトラックゾーン、ドライブテストゾーン、ディスクテストゾーン、ブランクゾーン、RMDデュプリケーションゾーン、データリードイン領域内の記録位置管理(レコーディングマネージメント)ゾーン(L−RMZ)、R物理フォーマット情報ゾーン、参照コードゾーンが配置される。
《システムリードイン領域の詳細》
イニシャルゾーンは、エンボスされたデータセグメントを含む。イニシャルゾーンのデータセグメントとして記録されたデータフレームのメインデータは、“00h”に設定される。バッファーゾーンは、32個のデータセグメントからの1024の物理セクタで構成される。このゾーンのデータセグメントとして記録されたデータフレームのメインデータは、“00h”に設定される。コントロールデータゾーンは、エンボスされたデータセグメントを含む。データセグメントはエンボスされた制御データを含む。コントロールデータは、PSN 123904(01 E400h)を起点とする192のデータセグメントから構成される。
コントロールデータゾーンの構成例を図9に示す。また、コントロールデータセクションのデータセグメントの構成例を図10に示す。コントロールデータセクションの最初のデータセグメントの内容は、16回繰り返される。各データセグメントの最初の物理セクタは、物理フォーマット情報を含む。各データセグメントの2番目の物理セクタは、ディスク製造情報を含む。各データセグメントの3番目の物理セクタは、著作権保護情報を含む。各データセグメントの他の物理セクタの内容は、システム使用のためにリザーブ領域とされる。
図11はコントロールデータセクション内の物理フォーマット情報の一例を説明する図であり、図12はこの物理フォーマット情報内のデータ領域配置の一例を説明する図である。この物理フォーマット情報の各バイト位置(BP)の記述内容は以下のようになっている。BP132からBP154に示すリードパワー、記録速度、データ領域の反射率、プッシュプル信号、オントラック信号の値は一例である。これらの実際の値は、エンボス情報の規定、記録後のユーザデータの特性の規定を満足する値の中からディスク製造者が選ぶことができる。BP4〜BP15に記述されたデータ領域配置の内容は、例えば図12のようになる。
図11のBP149、BP152は、層0、層1のデータ領域の反射率を指定する。例えば、0000 1010bは5%を示す。実際の反射率は次の式で指定される:
実際の反射率=値×(1/2)。
BP150、BP153は、層0、層1のプッシュプル信号を指定する。これらのBP各々において、図示しないビットb7は各層のディスクのトラック形状を指定し、図示しないビットb6〜b0はプッシュプル信号の振幅を指定する:
トラック形状:0b(グルーブ上のトラック)
1b(ランド上のトラック)
プッシュプル信号:例えば、010 1000bは0.40を示す。
プッシュプル信号の実際の振幅は次の式で指定される:
プッシュプル信号の実際の振幅=値×(1/100)。
BP151、BP154は層0、層1のオントラック信号の振幅を指定する:
オントラック信号:例えば、0100 0110bは0.70を示す。
オントラック信号の実際の振幅は次の式で指定される:
オントラック信号の実際の振幅=値×(1/100)
なお、物理フォーマット情報のBP512〜BP543には図13に例示するようなL0の記録関連パラメータを記述することができ、L0層の記録を行う際の当初のピークパワーやバイアスパワー等の情報は、図13の記述から取り出すことができる。また、物理フォーマット情報のBP544〜BP2047には図14に例示するようなL1の記録関連パラメータを記述することができ、L1層の記録を行う際の当初のピークパワーやバイアスパワー等の情報は、図14の記述から取り出すことができる。
・記録条件(ライトストラテジ:Write Strategyの情報)の説明
最適な記録パワーを調べる時に使用する記録波形(記録時の露光条件)について図15を用いて説明する。記録時の露光レベルとして記録パワー(ピークパワー:Peak power)、バイアスパワー1(Bias power 1)、バイアスパワー2(Bias power 2)、バイアスパワー3(Bias power 3)の4レベルを持ち、長さの長い(4T以上の)記録マーク9形成時には記録パワー(ピークパワー:Peak power)とバイアスパワー3(Bias power 3)の間でマルチパルスの形で変調される。この実施の形態では“Hフォーマット”、“Bフォーマット”いずれの方式もチャネルビット長Tに対する最小マーク長は2Tとなっている。この2Tの最小マークを記録する場合には、図15に示すように、バイアスパワー1(Bias power 1)の後で記録パワー(ピークパワー:Peak power)レベルの1個のライトパルスを使用し、ライトパルスの直後は一度バイアスパワー2(Bias power 2)になる。3Tの長さの記録マーク9を記録する場合には、バイアスパワー1(Bias power 1)の後に来る記録パワー(ピークパワー:Peak power)レベルのファーストパルスとラストパルスの2個のライトパルスを露光した後、一旦バイアスパワー2(Bias power 2)になる。4T以上の長さの記録マーク9を記録する場合には、マルチパルスとラストパルスで露光した後、バイアスパワー2(Bias power 2)になる。
図15における縦の破線はチャネルクロック周期(T)を示す。2Tの最小マークを記録する場合にはクロックエッジからTSFP遅れた位置から立ち上がり、その1クロック後のエッジからTELP後ろの位置で立ち下がる。その直後のバイアスパワー2(Bias power 2)になる期間をTLCと定義する。TSFPとTELP及びTLCの値は、Hフォーマットの場合には制御データゾーンCDZ内の物理フォーマット情報PFI内に記録されている。
3T以上の長い記録マーク形成時の場合には、クロックエッジからTSFP遅れた位置から立ち上がり、最後にラストパルスで終わる。ラストパルスの直後はTLCの期間バイアスパワー2(Bias power 2)になるが、ラストパルスの立ち上がり/立ち下がりタイミングのクロックエッジからのずれ時間をTSLP,TELPで定義する。また、先頭パルスの立ち下がりタイミングのクロックエッジから測った時間をTEFPで、さらに1個のマルチパルスの間隔をTMPで定義する。
TELP−TSFP、TMP、TELP−TSLP、TLCの各間隔は、最大値に対する半値幅で定義する。また、この実施の形態では、上記パラメーターの設定範囲を
0.25T≦TSFP≦1.50T (eq.01)
0.00T≦TELP≦1.00T (eq.02)
1.00T≦TEFP≦1.75T (eq.03)
−0.10T≦TSLP≦1.00T (eq.04)
0.00T≦TLC ≦1.00T (eq.05)
0.15T≦TMP ≦0.75T (eq.06)
とする。
さらに、この実施の形態では、記録マークの長さ(Mark length)とその直前/直後のスペース長(Leading/Trailing space length)に応じて、上記各パラメーターの値を変化できるようにしている。
この実施の形態に示した記録原理で記録される追記形情報記録媒体の最適な記録パワーを調べた時の各パラメーターは、バイアスパワー1(Bias power 1)、バイアスパワー2(Bias power 2)、バイアスパワー3(Bias power 3)の値はそれぞれ2.6mW、1.7mW、1.7mWであり、再生パワーは0.4mWである。
以上のようにして割り出した各パラメーターの値等に基づき、「ドライブテストゾーンにおいて試し書きを行った装置(ドライブ)でその記憶媒体に対して最適な記録条件(ライトストラテジ:Write Strategyの情報)」を定めることができる。
また、記録信号のデータとしては、上記の他に11Tマーク11Tスペースの繰り返しパターンも用いた。以下の実施例で用いた透明樹脂基板101およびフォトポリマー樹脂104上の記録層(L0、L1)に存在する物理フォーマットは、図7〜図15を参照して説明した通りである。
図16は、この発明の一実施の形態に係る追記型片面多層(2層)光ディスクのL1層にバーストカッティングエリア(BCA)が形成されることを説明する図である。ここでは、レーザ受光面側の基板101にL0層が設けられ、L0層と向き合わせにL1層が設けられ、L1層の上に基板102が配置されて、基板厚1.2mmの張り合わせ2層ディスク100が構成されている。このディスク100の内周側のL1層上に、そのディスクに固有の情報がバーコード状のパターン(マーク)で記録されるBCA(Burst Cutting Area)が設けられる。
個々の光ディスクにはディスク製造時にディスク固有の情報を予め記録しておくことが望ましい。このとき記録されるディスク固有の情報は、例えばコピープロテクションなどで個々のディスクを識別する必要のあるとき等に使用される。CD、DVD、BD、HD_DVDなどの光ディスクにおいて、このようなディスク固有の情報(BCAレコード等)は、BCAと呼ばれるバーコード状のパターンとして、予めディスク内周部に刻まれる(図16のBCAm参照)。その際、再生専用の2層光ディスクの場合には記録再生光の入射面から見て奥側の層に記録されるのが一般的である。
近年、光ディスクの大容量化への要望に応じ、再生専用型でなく記録型の光ディスクについても片面2層の光ディスクが開発されている。再生専用型と互換性を保つためには、記録型の2層光ディスクでも記録再生光の入射面から見て奥側の層にこのBCA信号を記録することが望ましい。しかしそれにはいくつかの問題点が存在する。以下にBCAの記録方法を述べると共に2層化した場合の問題点を挙げる。
BCAをディスクに設けるには、光ディスク成形時の型となるスタンパにBCAのパターンを刻んでおくという方法がある。しかしディスク一枚一枚に別個の固有の情報を記録するためには、製盤後のディスクに対して例えばレーザ光によりBCAパターンを刻む必要がある。通常、再生専用ディスクに対してBCAを記録する場合は、レーザで反射膜(アルミニウムや銀またはその合金)を焼ききることでパターンを作製する。また相変化記録型ディスクに対してBCAを記録する場合は、レーザで記録膜を相変化させて反射率を変えることでパターンを作製する。
一方、有機色素材料を用いた追記型の光ディスクの場合では、色素の感度は波長に対して非常に敏感であるため、短波長(例えば405nm)対応の色素を用いた次世代光ディスク(例えばBDやHD_DVD)に対して長波長(例えば650nm、680nm、あるいは780nm)のレーザを用いた現行のBCA記録装置を適用しても、満足にBCAパターンを記録できない。この場合、BCA記録装置のレーザパワーを強める事やBCA記録装置のレーザ波長をデータ記録波長(例えば405nm)に合わせて変更する事が考えられる。しかし、BCAの情報は手前の層(L0)越しに奥の層(L1)に記録するため、BCA記録装置の焦点深度が非常に深い(若しくはBCA記録光が平行光)事と相まって、この方法では手前の層の色素も反応してしまう。そしてそれがBCA信号再生時にノイズ(層間クロストーク信号)となってしまう。
そこで、この発明の実施の形態では、データの記録再生に用いる波長をA(nm)、BCA記録装置の波長をB(nm)としたとき、BCAを記録しない手前の層(L0)よりもBCAを記録する奥の層(L1)の方が波長Bに対する記録感度が高くなるように、使用する有機材料を選定している。実データ(MPEG4AVCなどでエンコードされた高精細ビデオデータ等)の記録に用いる波長とBCA情報の記録に用いる波長を別(A≠B)にしたままで、奥の層(L1)だけにBCA記録装置の波長にも対応した色素を用いる(例えば、405nm付近に感度を持つ色素と650nm〜780nm付近に感度を持つ色素といった、感度の違う2種類の色素を混合する)ことで、奥の層(L1)のみにBCA信号を選択的に記録することができる。
この実施の形態では、直径120mmで厚さが1.2mm(0.6mmのポリカーボネート成形基板2枚の貼り合せ)であり、かつ有機色素材料を用いた記録層を2層持つ追記型の光ディスクを例示している。記録再生光については波長(λ)405nmで開口数(NA)0.65の光学系を用いることとする。データ記録領域のグルーブ間トラックピッチは例えば400nmであり、BCA領域の位置は例えば半径22.2mm〜23.1mmの間とする。また、BCAパターンは、例えば幅(接線方向)数十μm、長さ(径方向)数百μm程度のバーコード状のパターンで構成される。
なお、この発明の実施の形態は上記例示に限られるわけではない。例えば、表面に0.1mmのカバー層を設けた光ディスクでも良く、直径80mmの光ディスクでも良く、更に高密度のトラックピッチパターンでも良く、更に短波長(例えばλが400nm以下)のレーザを使用しても良く、更に高開口数(NAが例えば0.8〜0.9)の光学系(対物レンズ)を使用しても良い。
この発明の実施の形態に係る追記型多層光ディスクの具体的な材料例としては、成形基板がポリカーボネート;成形に用いるスタンパがニッケル(Ni);記録層がアゾ系、ジアゾ系、シアニン系、フタロシアニン系、スチリル系、もしくはこれらの混合物からなる有機色素材料;反射膜が銀(Ag)、アルミ(Al)、金(Au)またはこれらをベースとする金属化合物;接着剤はアクリル系またはエポキシ系の紫外線硬化樹脂、とすることができる。これらの材料についても、上記の例示に限られるわけではない。ただしこの発明は記録層を複数持つ追記型光ディスクに関してのものであり、その代表例としての片面2層追記型光ディスクについては、その製造方法等を、図21を参照して後述する。
なお、上記の実施の形態の例では、L0層越しにL1層上にBCAを形成する場合を述べた。しかし、図1(f)に例示したような寸法・構成の反射層を設けた場合、使用するレーザのパワーとその波長に見合ったL1層材料の選択(トライアンドエラーにより選択できる)により、ダミー基板102越しに(上記の例とは反対のダミー基板側ディスク面から)BCA用レーザを照射してBCA情報のポストカットを行うこともできる。ダミー基板102越しに照射されるレーザにより、L1層の一部を変形または変化させて、そこにBCA情報(図16のBCAマークあるいは図17のBCAレコード)をボスとカットできる。
図17は、図16のBCAに記録されるBCAレコードの内容例を説明する図である。図17(a)に例示されるように、このレコードには、相対バイト位置0〜1にBCAレコードID(HD_DVDブックタイプ識別子を示す)が記述され、相対バイト位置2に適用規格のバージョン番号が記述され、相対バイト位置3にデータ長が記述され、相対バイト位置4に規格書のブックタイプとディスクタイプが記述され、相対バイト位置5に拡張パートバージョンが記述され、相対バイト位置6〜7はその他の情報記述用に予約されている。
BCAレコードのうち、そのディスクが準拠する規格書のブックタイプとディスクタイプの欄は、図17(b)に例示されるようになっている。すなわち、ブックタイプにはHD_DVD−R用の規格であることを示す情報を記述できるようになっており、ディスクタイプにはマーク極性フラグとツインフォーマットフラグを記述できるようになっている。
図17(b)のマーク極性フラグは、“0b”のときは記録マークからの信号が(隣接マーク間の)スペースからの信号よりも大きい“Low-to-High”ディスクであることを示し、“1b”のときは記録マークからの信号がスペースからの信号よりも小さい“High-to-Low”ディスクであることを示すことができる。また、ツインフォーマットフラグは、“0b”のときはツインフォーマットディスクではなく、“1b”のときはツインフォーマットディスクであることを示すことができる。ツインフォーマットディスクであるときは、(そのBACレコードが記録された)ディスクが2つの記録層を持ち、各層がDVDフォーラムで規定された別個のフォーマット(例えばHD_DVD-Video formatとHD_DVD-Video Recording format)を持つことになる。
現行DVDではツインフォーマットディスクは存在しないが、次世代のHD_DVDではツインフォーマットディスクが存在し得るので、BCAにツインフォーマットフラグを記述できるようになっていることは、この発明の一実施の形態に係る追記型多層(2層)光ディスク(次世代のHD_DVD用のディスク)にとって大きな意味がある。
図18は、図17のBCAレコード等を含む特定情報をBCAに記録する装置の構成例を説明する図である。BCA記録装置によるBCA信号(図17のBCAレコード等の情報を含む信号)の記録は、完成形となったディスク100に対して行われる。コントローラ202からのBCA信号に応じてレーザ210を変調し、ディスク100の回転に同期させてバーコード状のBCAマークを記録する。BCA記録装置のレーザ波長には、600nm〜800nm(一般的には650nm〜780nmあるいは680nm〜780nm)の範囲内の1つが採用される。BCAの記録場所は、2層光ディスクならば一般的にL1層の内周部半径22.2mm〜23.1mm付近にある。BCA記録を行う際はL0層越しにL1層にレーザを照射することになるが、この発明の実施の形態では波長650nm〜780nm(あるいは680nm〜780nm)での吸光度(感度)を調整してある(L1層の感度>L0層の感度)。そのため、実質的な意味合いで、L1層にのみ選択的にBCA信号を正確に記録することができる。
このように各層の色素の感度(使用波長における吸光度)を調整することで、現在DVD製造ラインで一般的に使われているBCA記録装置のレーザ波長とレーザパワーそのままで(状況によりレーザパワーは適宜増やして)、次世代光ディスクに対してBCA信号を記録することができる。また、L1層だけに選択的にBCA信号を記録することが可能なため、再生時にはL0層からの余分なクロストークノイズも無い。
すなわち、この発明の一実施の形態において、各層(L0、L1等)の色素の感度を調整する(例えば600nm〜800nmまたは650nm〜780nmもしくは680nm〜780nmにおけるL1層色素の感度もしくは吸光度が、L0層色素の感度もしくは吸光度よりも大きくなるような有機材料を用いる)。そうすることで、現在DVD製造ラインで一般的に使われているBCA記録装置のレーザ波長とレーザパワーのままで、次世代光ディスク(片面2層のHD_DVD−R等)に対してBCA信号を記録することができる。その際、L1層だけに選択的にBCA情報を記録することが可能なため、BCA信号再生時にL0層からの余分なクロストークノイズが混入しない。
また、ダミー基板102越しにBCA用レーザを照射してBCA情報のポストカットを行う場合も、L1層だけに選択的にBCA情報を記録することが可能なため、BCA信号再生時にL0層からの余分なクロストークノイズが混入しない。
図19は、図16の追記型片面多層(2層)光ディスクのL1層に特定情報を記録(BCAポストカット)する手順の一例を説明するフローチャートである。図17のBCAレコード等の特定情報を含むBCA信号が図18のコントローラ202からレーザ出力制御部208に供給されると、その信号内容に対応して、レーザダイオード210から、波長600nm〜800nm(または650nm〜780nm、もしくは680nm〜780nm)の中の1つの波長のレーザ光が、パルシブに発光する(ST10)。こうして発光されたレーザ光パルスは、図16に示すディスク100のL0層越しに(あるいはダミー基板102越しに)、L1層のBCA記録場所に照射される(ST12)。この照射はディスク100の回転に同期して継続される。BCAへの記録情報の残りがなくなれば(ST14イエス)、L0層越しのL1層へのBCAポストカットが終了する。
図20は、図16の追記型片面多層(2層)光ディスクのL1層から特定情報(BCAレコード等)を再生する手順の一例を説明するフローチャートである。BCAに記録された情報を再生する際には、所定波長(例えば405nmまたは650nm)のレーザ光がL0層越しにL1層のBCAに照射される(ST20)。その反射光から、その光ディスクに関する特定情報(図17のBCAレコード等)が読み取られる(ST22)。この読み取りはディスク100の回転に同期して継続される。BCAからの読み取り情報の残りがなくなれば(ST24イエス)、L0層越しのL1層からのBCA再生は終了する。
図21は、この発明の一実施の形態に係る追記型片面2層光ディスクの製造工程例を説明する図である。この2層追記型光ディスクの作製方法を図21に沿って以下に述べる。まず射出成形によりL0層の成形板を作製する(ブロック0301)。成形材料は一般的にポリカーボネートである。L0層の成形の型に使うスタンパはレーザ露光されたフォトレジストパターンからNiメッキにより作製される。成形板の寸法は直径120mm、内径15mm、厚さ0.6mmである。この成形板に対して記録層となる有機色素材料を周知のスピンコート法により塗布し、反射膜となる金属膜(例えば銀または銀合金)を周知のスパッタ法などにより成膜する(ブロック0302)。なお、このL0層は、レーザ光が通過できるよう半透明である。
これと並行してL1層の型となるプラスチックスタンパを同じく射出成形により作製する(ブロック0303)。成形材料は、一般的にはシクロオレフィンポリマーであるが、ポリカーボネートやアクリルなどでも良い。L1層のNiスタンパは同じくレーザ露光したフォトレジストのメッキにより作製するが、パターンの凹凸はL0層と逆にしておく。
記録層を形成したL0層成形板とプラスチックスタンパをフォトポリマーを介して貼り合わせて、紫外線を照射して硬化させる(ブロック0304)。その後、プラスチックスタンパを剥がしてL1層パターンが転写されたフォトポリマー層を剥き出しにする(ブロック0305)。次に、このL1層のフォトポリマー上に、記録層となる有機色素材料をスピンコートにより塗布し、さらに反射膜となる金属膜(例えば銀または銀合金)をスパッタ法などにより成膜する(ブロック0306)。
それと平行してダミー板(材料はポリカーボネート等)を射出成形により作製し(ブロック0307)、これを紫外線硬化接着剤により貼り合わせる事で2層の追記型光ディスクが完成形となる(ブロック0308)。なお、図示しないが、ダミー板には、インクジェットプリンタ等によるユーザ印刷用の表面コーティングを施したり、ディスク製造(または販売)メーカのブランド名や製品名等のパターンを付加してもよい。
こうして出来上がった追記型多層(2層)Rディスク100の各層の寸法は、例えば図1(f)のようになっている。
この発明を実施するにあたっては、第1記録部(L0)に含まれる光反射層106について、入射光に対して反射光量を厳密に制御するためには光反射膜材料と膜厚を適正に設定する必要がある。この光反射層(AgまたはAg合金を用いた半透過性の反射層)106の膜厚は、通常は、15nm〜35nmが好ましい。15nm未満だと光反射層の光透過量が増加し十分な反射光量を得ることが困難となる。すると、プッシュプル信号などのサーボ検出用信号ゲインが不足し安定した記録再生が困難になるのと同時に、第2記録部(L1)に含まれる光反射層108で反射された光の影響による層間クロストークの影響が許容できないほどのレベルとなり、記録再生信号特性の大幅な劣化が生じる。一方、35nmを超えると反射光量が過度に増大する。すると、プッシュプル信号などのサーボ検出用信号ゲインが増加し記録再生は可能であるが、光透過率が減少するために第2記録部(L1)の記録層107へ記録再生が困難になる。
より具体的に述べると以下のようになる。第1記録部(L0)の記録層105を記録再生する際に第1記録部(L0)に含まれる光反射層106を透過した一部の記録再生光が第2記録部(L1)に含まれる光反射層108で反射され第1記録部(L0)に戻ってくる。この際、第1記録部(L0)の半透過性反射層106の光透過率が高すぎる場合では記録再生時の一部の漏れ込んだ光が第2記録部(L1)の光反射層108で反射され、第1記録部(L0)の記録再生信号に不必要な信号成分として加算されてしまう。そのため第1記録部(L0)の記録再生信号品質を著しく劣化させる要因になる。
また、層間クロストークは、第1記録部(L0)および第2記録部(L1)の反射光量と第1記録部(L0)に含まれる半透過性反射層106の光透過率に大きく影響を受けるため、常に安定した記録再生をするためには、記録位置を厳密に管理することが必須になる(図4のパラメータ等参照)。
[実施例1a]
L0の光反射層106の厚みを25nmとし、L1の光反射層108の厚みを100nmとする(L0反射層厚<L1反射層厚)と、最適な反射量が得られ層間クロストークが小さく抑えられる。それと同時に、ダミー基板102越しからのBCA記録を安定して実施することが可能になり、このBCA記録において十分な信号変調度を得ることが出来た。
[実施例2a]
L0の光反射層106の厚みを20nmとし、L1の光反射層108の厚みを80nmとする(L0反射層厚<L1反射層厚)と、やはり最適な反射量が得られ層間クロストークが小さく抑えられる。それと同時に、ダミー基板102越しからのBCA記録を安定して実施することが可能になり、このBCA記録において十分な信号変調度を得ることが出来た。
[実施例1b]
L1の光反射層108の厚みを100nmとすると、最適な反射量が得られ層間クロストークが小さく抑えられると同時に、ダミー基板102越しからのBCA記録が安定して実施することが可能になり、十分な信号変調度を得ることが出来た。
[実施例2b]
実施例1bと同様にL1の光反射層108を作成しシステムリードアウト領域(図7の図示右側のエリア)での再生信号品質を評価したところ十分な信号変調度が得られることが確認できた。
[実施例1c]
L0の光反射層106の厚みを25nmとし、L1の光反射層108の厚みを100nmとし、ディスク全面における中間層104厚を27μm±2μm(25±10μmの範囲内のより具体的な例)とすると、最適な反射量が得られ、層間クロストークが小さく抑えられる。それと同時に、ダミー基板102越しからのBCA記録が安定して実施可能になり、十分な信号変調度を得ることが出来た。
[実施例2c]
L0の光反射層106の厚みを20nmとし、L1の光反射層108の厚みを80nmとし、ディスク全面における中間層厚を27μm±2μmとすると、最適な反射量が得られ、層間クロストークが小さく抑えられる。それと同時に、ダミー基板102越しからのBCA記録が安定して実施可能になり、十分な信号変調度を得ることが出来た。
[比較例1a(L0反射層106の厚みを15nm以上35nm以下とする根拠1)]
L0の光反射層106の厚みを40nmと厚くし、L1の光反射層108の厚みを200nmすると、L1への光透過量が減少するためL1記録時の未記録時のサーボ信号ゲインが著しく減少し、安定した記録再生が困難になった。同時にダミー基板越しからのBCA記録が困難になり、BCA記録部の信号変調度を小さくなり十分な信号品質を得ることが出来なかった。
[比較例2a(L0反射層106の厚みを15nm以上35nm以下とする根拠2)]
L0の光反射層106の厚みを40nmと厚くし、L1の光反射層106の厚みを100nmとしても、やはりL1への光透過量が減少するためL1記録時の未記録時のサーボ信号ゲインが著しく減少し、安定した記録再生が困難になった。
[比較例3a(L0反射層106の厚みを15nm以上35nm以下とする根拠3)]
L0の光反射層106の厚みを13nmと薄くし、L1の光反射層106の厚みを100nmとしたときでは、L1への光透過が大きくなり、同時にL1記録層からの光反射が大きくなって、L0記録層の記録再生時に不必要な信号成分が増加しL0の特性が劣化した。
[比較例1b(L1反射層108の厚みを60nm以上150nm以下とする根拠1)]
L1の光反射層108の厚みを150nmよりも厚くすると、この反射層108での
反射量が大きくなり層間クロストークが大きくなって、L0記録層105の信号品質が著しく劣化する傾向が生じた。同時にダミー基板102越しからのBCA記録が困難になり、BCA記録部の信号変調度を小さくなり、BCA情報に対して十分な信号品質を得ることが出来なかった(150nmが実用上の上限と考えられ、実用上は100nm以下が好ましい)。
[比較例2b(L1反射層108の厚みを60nm以上150nm以下とする根拠2)]
L1の光反射層108の厚みを50nmと薄くすると、L1の反射光量が減少するため未記録時のサーボ信号ゲインが著しく減少し、安定した記録再生が困難になった。
[比較例1c(中間層104の厚みを25±10μmとする根拠1)]
L0の光反射層106の厚みを25nmとし、L1の光反射層108の厚みを100nmとし、ディスク全面における中間層104厚を35μm±2μmとすると、ディスク100のレーザ受光面からL1への距離が増加するため記録再生レーザ光のスポット形状が不明瞭になり、記録再生信号の劣化が生じ安定した記録再生が困難になる傾向が生じる(35μmが実用上の上限と考えられる)。
[比較例2c(中間層104の厚みを25±10μmとする根拠2)]
L0の光反射層106の厚みを25nmとし、L1の光反射層108の厚みを100nmとし、ディスク全面における中間層104厚を15μm±2μmとすると、ディスク100のレーザ受光面からL1への距離が減少するため記録再生レーザ光のスポット形状が不明瞭になり、記録再生信号の劣化が生じ安定した記録再生が困難になる傾向が生じる(15μmが実用上の下限と考えられる)。
[比較例3c(中間層104の厚みを25±10μmとしてもL0反射層106の厚みを15nm以上とすべき根拠)]
L0の光反射層106の厚みを13nmと薄くし、L1の光反射層108の厚みを100nmとしてディスク全面における中間層104厚を25μm±2μmとしたときでは、
L1への光透過が大きくなり、同時にL1反射層108からの光反射が大きくなり、L0記録層105の記録再生時に不必要な信号成分が増加しL0の特性が劣化した。つまり、図1(f)に示すような構成の実施の形態では、中間層104の厚みの選択よりもL0反射層106の厚みの選択の方がよりシビアとなる。
この発明の実施の形態のいずれかを実施することにより、2以上の記録層を有する光記録媒体において、反射膜材料および反射膜厚を調整することで、第1の記録層と第2の記録層との層間クロストークが小さく安定して高品質な記録特性が得られる。更に、ダミー基板越しから第2の記録層にBCA記録が安定して実施することが可能になり、十分なBCA信号変調度を得ることが可能になる。
なお、この発明は前述した実施の形態に限定されるものではなく、現在または将来の実施段階では、その時点で利用可能な技術に基づき、その要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。例えば、この発明は片面3層以上の光ディスクに対して実施することが可能であり、さらに波長が400nm以下の短波長レーザを用いる光ディスクにおいても実施可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。