JP2012132054A - アルミニウム合金製鋳物およびその製造方法 - Google Patents

アルミニウム合金製鋳物およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】鋳造欠陥が少なく機械的性質に優れる微細な組織からなるアルミニウム合金製鋳物を提供する。
【解決手段】本発明のアルミニウム合金製鋳物は、全体を100質量%としたときに、9〜13質量%のSiと、1〜5質量%のCuと、残部であるAlおよび不可避不純物とからなると共に、AlとSiの二元共晶からなるAl−Si共晶粒とこのAl−Si共晶粒を囲繞しAl、SiおよびCuを含む多元共晶からなる多元共晶マトリックスとが網目状になった複合共晶組織によって構成され、そのAl−Si共晶粒の粒径が1.5mm以下と微細であることを特徴とする。この本発明のアルミニウム合金製鋳物は、通常なら表皮形成型凝固をする合金組成からなりつつも、微細に粥状凝固した複合共晶組織から構成され、粗大な鋳造欠陥の生成が抑制され、機械的性質に優れる。
【選択図】図4

Description

本発明は、Al−Si共晶組成からなるアルミニウム合金製鋳物およびその製造方法に関するものである。
軽量化の要請が益々強くなる昨今、多種多様な部材にアルミニウム合金製鋳物(適宜、単に「鋳物」という。)が利用されている。このような鋳物は、鋳巣、引け、割れ等の鋳造欠陥が少なく、機械的性質が安定していることが求められる。ちなみに、鋳造欠陥は、流動性の低下した溶湯が鋳型の細部まで回らなかったり、溶湯が液相から固相に変化する際の凝固収縮等によって生じる。また、鋳物の機械的性質(例えば、強度や靱性等)の低下は、鋳造欠陥による他、金属組成や組織等が部位によって偏在することによって生じる。
このような鋳造欠陥が少なく、機械的性質の安定した鋳物を得るための鋳造方法(アルミニウム合金製鋳物の製造方法)が、下記の特許文献等で提案されている。
特開2005−89827号公報 特開2007−216239号公報
大澤嘉昭, 佐藤彰: 鋳造工学, 72(2000),733-738.「超音波振動による凝固組織の微細化」
特許文献1には、Al−Si共晶域組成からなり、二元(Al−Si)共晶粒が、共晶マトリックス中に分散した金属組織からなるアルミニウム合金製鋳物およびその製造方法が記載されている。もっとも、そのAl−Si共晶粒は、粒径が2〜3mm程度の比較的粗大なものである。
特許文献2には、液相線温度以上のアルミニウム合金溶湯に超音波振動を付与して結晶核の芽であるエンブリオ数を増大させ、晶出物の微細化を図る鋳造方法に関する記載がある。もっとも特許文献2では、Si量が相当多い過共晶組成のアルミニウム合金製鋳物を対象としており、共晶組成のアルミニウム合金(例えば、JIS ADC12等)を対象としたものではない。また形成されている金属組織も粥状凝固したものではない。
非特許文献1には、亜共晶組成(Al−6%Si)または過共晶組成(Al−18%Si)からなるアルミニウム合金溶湯へ超音波振動を印加して、初晶の微細化を図る旨の記載がある。この非特許文献1も、共晶組成のアルミニウム合金製鋳物を対象としたものではなく、形成されている金属組織も粥状凝固したものではない。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものある。つまり、Al−Si共晶付近の組成からなり、鋳造欠陥が少なく機械的性質に優れるアルミニウム合金製鋳物およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者はこの課題を解決すべく鋭意研究し、試行錯誤を重ねた結果、Al−Si共晶組成からなる溶湯へ、初晶Al(α−Al)の晶出前に、超音波振動を印加して、微細なAl−Si共晶粒が多元共晶マトリックス中に分散したネットワーク状の金属組織(複合共晶組織)からなるアルミニウム合金製鋳物を得ることに成功した。この成果を発展させることにより、以降に述べる本発明を完成するに至った。
《アルミニウム合金製鋳物》
(1)本発明のアルミニウム合金製鋳物は、全体を100質量%としたときに、9〜13質量%のケイ素(Si)と、1〜5質量%の銅(Cu)と、残部であるアルミニウム(Al)と不可避不純物および/または改質元素とからなり、AlとSiの二元共晶からなるAl−Si共晶粒と該Al−Si共晶粒を囲繞しAl、SiおよびCuを含む多元共晶からなる多元共晶マトリックスとにより構成される網目状の複合共晶組織を有し、該Al−Si共晶粒は粒径が1.5mm以下であることを特徴とする。
(2)本発明のアルミニウム合金製鋳物(適宜、単に「鋳物」という。)は、Al−Si共晶近傍の組成(これを「共晶組成」という。)からなるにも関わらず、いわゆる表皮形成型の凝固した金属組織ではなく、粥状の凝固したような金属組織からなる。具体的には、Al−Si共晶粒が、網目状の多元共晶マトリックス中に分散した複合共晶組織からなる。しかも、この複合共晶組織中のAl−Si共晶粒は、粒径が1.5mm以下と非常に微細である。
この複合共晶組織からなる本発明の鋳物は、大きな鋳造欠陥が殆どなく、機械的性質に優れる。これは次のような理由に依ると考えられる。本発明の鋳物の場合、仮に引け巣やガス巣等の鋳造欠陥が発生するとしても、それらの鋳造欠陥はAl−Si共晶粒界(つまり多元共晶マトリックス内またはその近傍)に分散して存在するようになる。このため、鋳造欠陥が三次元的に連なる大きな欠陥にまで成長しない。しかも、本発明の鋳物は、凝固組織が全体的に微細で均質的であって、組成的または組織的な偏在が少ないので、機械的性質にも優れる。勿論、本発明の鋳物は、共晶組成からなるため、亜共晶組成からなる鋳物よりも強度、耐摩耗性、耐熱性等の点でも優れる。
なお、本発明でいうAl−Si共晶粒は、明らかな針状または樹枝状等ではなく、粒状である限り、その詳細は形態は問わない。また多元共晶マトリックスは、少なくともAl、SiおよびCuを含むが、他の元素を含んでもよく、さらには共晶以外の化合物が晶出または析出していてもよい。
《アルミニウム合金製鋳物の製造方法》
(1)本発明は、アルミニウム合金製鋳物としてのみならず、その製造方法としても把握し得る。すなわち本発明は、アルミニウム合金の溶湯を調製する溶湯調製工程と、該溶湯を鋳型に注入する注入工程と、該注入された溶湯を冷却して凝固させる凝固工程とを備えるアルミニウム合金製鋳物の製造方法であって、前記溶湯調製工程は、初晶の晶出前の前記溶湯へ超音波振動を加える加振工程を有し、上述の鋳物が得られることを特徴とするアルミニウム合金製鋳物の製造方法であってもよい。
(2)この加振工程により、上述したような本発明の鋳物が得られるメカニズムは必ずしも定かではないが、現状では次のように考えられる。初晶が晶出する前の溶湯を超音波で加振すると、凝固核となる非常に微細なリン化アルミニウム(AlP)が溶湯中に均一に分散した状態になると考えられる。この状態の溶湯をさらに冷却すると、そのAlPが核となって微細なAl−Si共晶粒が粥状に晶出し始める。こうして、Al−Si共晶粒からなる固相と残余の液相とが混在した固液共存状態(半凝固状態または半溶融状態)が形成される。さらに冷却して、その状態の溶湯を凝固させると、微細なAl−Si共晶粒が網目状の多元共晶マトリックス中に分散した複合共晶組織が形成されて、本発明の鋳物が得られたと考えられる。
なお、AlPは、不可避不純物としてアルミニウム合金溶湯中に一般的に含まれる極微量なPがAlと結合したものであり、初晶(α−Al)の晶出前に、溶湯中から微量に晶出し得る。
《その他》
(1)Al−Si共晶粒や多元共晶マトリックスに関して本発明でいう「共晶」は、いわゆる学術的に定義されるただ1点の組成からなる共晶を意味せず、当業者が組織観察によって一般的に共晶と判断し得るものであれば足る。このような意味での共晶が形成される組成を本明細書では「共晶組成」という。
(2)Al−Si共晶粒の「粒径」は、鋳物の切断面から任意に抽出した20mm×20mmの測定領域内に存在するAl−Si共晶粒を光学顕微鏡により観察し、その粒径を画像解析により求めた平均粒径である。ここで平均粒径とは、測定領域に含まれる共晶粒各々の形状が円形と仮定して求めた直径の相加平均値である。具体的には、鏡面研磨した鋳物切断面の光学顕微鏡写真から、Al−Si共晶粒の部位を抽出し、測定領域内に含まれるAl−Si共晶粒の数と面積を求め、直径の相加平均値を算出することにより平均粒径が求まる。
このAl−Si共晶粒の粒径は、1.5mm以下、1.4mm以下、1.3mm以下、1.2mm以下さらには1.1mm以下であると好ましい。
(3)「不可避不純物」は、原料(母合金)中に含まれる不純物や各工程時に混入等する不純物などであって、コスト的または技術的な理由等により除去困難な元素である。例えば、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、リン(P)等がある。
これらの元素は、アルミニウム合金製鋳物全体を100質量%としたときに、例えば、Mg:0.5質量%以下さらには0.3質量%以下、Zn:1.2質量%以下さらには1質量%以下、Fe:1.5質量%以下さらには1.3質量%以下、Mn:0.7質量%以下さらには0.5質量%以下、Ni:0.7質量%以下さらには0.5質量%以下、Sn:0.5質量%以下さらには0.2質量%以下、P:0.1質量%以下さらには0.05質量%以下とすればよい。
「改質元素」はアルミニウム合金製鋳物の特性改善に有効な元素である。改善される特性には、例えば、機械的性質(強度、靱性、耐摩耗性または耐熱性等)、鋳造性または組織微細化等がある。改質元素は、共晶粒や共晶マトリックス等に固溶した状態で存在しても良いし、AlやSi等と金属間化合物を形成して晶出または析出して存在しても良い。
改質元素としては、Fe、Mg、Mn、Cu等の他、鋳物の金属組織の晶出形態の改善や微細化に有効なストロンチウム(Sr)、リン(P)等が代表的である。また0.3%以下さらには0.15%以下のチタン(Ti)や0.02%以下さらには0.01%以下のナトリウム(Na)もある。
なお、改質元素と不可避不純物は一概に区別されるものではなく、例えば、Pのように、本来は不可避不純物であるが、複合共晶組織の微細化に寄与する元素もある。
(4)「アルミニウム合金製鋳物」はその形態を問わず、最終製品、それに近い素材、棒材、管材または板材等の基本的な素材さらには鋳物原料となるインゴット等でも良い。
(5)特に断らない限り本明細書でいう「x〜y」は下限値xおよび上限値yを含む。本明細書に記載した種々の数値および数値範囲内に含まれる任意の数値を組合わされて「a〜b」のような範囲を任意に構成し得る。
試料No.1に係る鋳物の横断面を示すX線CT像写真である。 そのミクロ組織を示す金属顕微鏡写真である。 試料No.C1に係る鋳物の横断面を示すX線CT像写真である。 超音波による溶湯の加振終了時の温度(加振終了温度)とAl−Si共晶粒の粒径(共晶粒径)との関係を示す分散図である。
発明の実施形態を挙げて本発明をより詳しく説明する。なお、以下の実施形態を含めて本明細書で説明する内容は、本発明に係るアルミニウム合金製鋳物のみならず、その製造方法にも該当し得る。従って上述した本発明の構成に、本明細書中の記載から選択した一つまたは二つ以上の構成を任意に付加し得る。この際、製造方法に関する構成は、プロダクトバイプロセスとして理解すれば物(アルミニウム合金製鋳物)に関する構成ともなり得る。いずれの実施形態が最良であるか否かは、対象、要求性能等によって異なる。
《アルミニウム合金組成》
(1)Si
Siは、Al−Si共晶粒や多元共晶マトリックスの形成に必要な元素である。Siは鋳物全体を100質量%としたときに9〜13質量%さらには10〜12.5質量%含まれていると好ましい。Siが過少では亜共晶組成となり初晶Al(α−Al)が晶出し易くなる。Siが過多では過共晶組成となり初晶Siが晶出し易くなる。いずれも、本発明でいう複合共晶組織が形成され難くなる。但し、本発明でいう組成範囲は、厳密な共晶組成ではないので、多元共晶マトリックス中に初晶Al(α−Al)や初晶Siがわずかに点在してもよい。
(2)Cu
Cuは、Al−Si共晶粒を微細に晶出させると共に、固溶強化により鋳物の機械的性質を向上させ得る。Cuは鋳物全体を100質量%としたときに1〜5質量%さらには1.5〜3.5質量%含まれていると好ましい。Cuが過少であるとその効果が乏しく、Cuが過多になると、Al−Si共晶粒の粒状化が阻害され得る。特にCuが過多になると、Sr等を加えた場合でも、粥状凝固にならず表皮形成型凝固が生じるので好ましくない。
(3)Sr
Srは、溶湯中からのAl−Si共晶粒の晶出を促進する。つまり、鋳物の凝固形態を表皮形成型からが粥状に変え、複合共晶組織の形成を容易にする。Srは、鋳物全体を100質量%としたときに0.003〜0.3質量%(30〜3000ppm)さらには0.01〜0.1質量%(100〜1000ppm)含まれるように、原料や溶湯に含ませると好ましい。Srが過少ではその効果が乏しく、Srが過多ではAl−Si共晶が粒状に晶出せず、粗い針状組織となり、鋳物の機械的性質を低下させ得る。
《アルミニウム合金製鋳物の製造方法》
(1)溶湯調製工程
本発明の溶湯調製工程は、アルミニウム合金の溶湯を調製する際に、初晶の晶出前の溶湯へ超音波振動を加える加振工程を有する。これにより、初晶に先行して凝固核となる微細なAlPが溶湯中に均一に晶出するようになる。この結果、AlPを核としてAl−Si共晶粒が粥状に晶出し易くなる。
ここで加振工程で印加する超音波の種類、特性等は問わない。例えば、溶湯に印加する超音波は縦波でも横波でもよい。また、溶湯全体に超音波振動が伝播される限り、その加振源の配置等は問わない。
もっとも、超音波の周波数は60kHz以下さらには40kHz以下が好ましい。超音波の周波数が過大であると、その波長が短くなり、溶湯への加振が不十分となる。また、超音波の出力は100W以上さらには150W以上が望ましい。
本発明の加振工程は、初晶が晶出し始める温度(初晶開始温度)よりも高い温度でなされるが、初晶開始温度よりもかなり高温で加振工程が終了すると、上述した効果があまり得られない。そこで加振工程は、超音波振動による加振を終了するときの溶湯の温度である加振終了温度を、初晶の晶出が開始する温度である初晶開始温度(Ts)から、この初晶開始温度よりも70℃さらには60℃高い温度(Ts+70℃さらにはTs+60℃)までの温度とする工程であると好ましい。より具体的には、加振終了温度が590〜640℃さらには600〜630℃であると好ましい。
(2)注入工程および凝固工程
溶湯を注入する鋳型は、金型でも砂型でも良く、溶湯の注入は加圧しても、しなくてもよい。また鋳型に注入された溶湯を冷却する方法は、自然冷却でも強制冷却でもよい。
従って本発明の製造方法は、金型鋳造、砂型鋳造、ダイカスト鋳造、低圧鋳造、重力鋳造等のいずれでもよい。もっとも、上述したアルミニウム合金組成は、ダイカスト鋳造に多用されるADC12合金(JIS)と類似した組成であるので、本発明の製造方法はダイカスト鋳造方法に特に好適である。
《用途》
(1)本発明の鋳物の用途は種々考えられる。例えば、自動車や二輪車の分野ではエンジンブロックやシリンダヘッド等のエンジン部材、ボディ構造用部材、シャシ部材、ホイール、スペースフレーム、ステアリングホイール(芯金)、シートフレーム、サスペンションメンバー、ミッションケース、プーリ、オイルパン、シフトレバー、インスツルメントパネル、ドアインパクトパネル、吸気用サージタンク、ペダルブラケット、フロントシュラウドパネル等がある。
(2)本発明の鋳物は、鋳造後に熱処理を施さない鋳放し状態でも、優れた強度、耐摩耗性、耐熱性等を発揮するが、鋳造後に熱処理を施しても良い。
実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
《試料の製造》
(1)溶湯調製工程
原料(母合金)として、JIS ADC12合金(福岡アルミ工業株式会社製/成分組成:Al−11.26%Si−1.85%Cu−0.28%Mg−0.31%Mn−0.84%Fe−0.85%Zn)を1.5kg用意した。成分組成の単位(%)は、対象合金全体を100質量%としたときの質量%である(以下同様)。
この原料を6番黒鉛るつぼ(日本ルツボ株式会社製/内径φ100mm×深さ140mm)に入れて、電気炉内で750℃で溶解した。このAl合金溶湯中に、Sr原料(成分組成:Al−10%Sr/有限会社フォセコジャパンリミテッド製)を添加した。この際、Al合金溶湯全体に対してSr量が0.03%となるように調製した。これを上記の電気炉内で750℃に10分間保持した。
電気炉から取り出したAl合金溶湯の上方中央へ、超音波振動加振装置(精電舎電子工業株式会社製、Sonopet 303S)に接続されたホーン(材質SUS304、φ20×L170)を浸漬した。このホーンは、先端面が平面状の円柱からなり、Al合金溶湯の表面からホーンの先端面までの距離(浸漬深さ)は10mmとした。
この溶湯温度を600℃まで室温大気中で自然冷却した。この冷却過程中に、上記のホーンからAl合金溶湯中へ超音波振動を加えた(加振工程)。このときの超音波振動の周波数は28.5kHz、出力250Wとした。また、超音波振動による加振を開始したときの溶湯温度(加振開始温度)はいずれの場合も約740℃とした。一方、その加振を終了したときの溶湯温度(加振終了温度)は、表1に示すように試料ごとに変更した。また、比較のため、超音波振動による加振を行わない溶湯も調製した(試料No.8)。
(2)注湯工程(注入工程)
上述のように調製したAl合金溶湯(溶湯温度:約600℃)を、鋳型である熱分析用シェルカップ(株式会社ナカヤマ製、SGカップ−A、内径φ30×深さ50mm)に注湯した。
(3)凝固工程
このシェルカップを大気雰囲気で冷却してAl合金溶湯を凝固させた。凝固はいずれの試料も570℃から始まり、490℃で凝固完了した。
《観察》
(1)各試料の鋳物の横断面を、X線CT(Computed Tomography)像により観察した。その一例として試料No.1のX線CT像(写真)を図1に示した。図1中、セル状の灰色部分がAl−Siの二元共晶からなるAl−Si共晶粒であり、それを囲繞する白色部分が多元共晶からなる多元共晶マトリックスであり、点在する黒色部分が鋳造欠陥(鋳巣)である。なお、多元共晶マトリックスが白く見えるのは、その構成要素であるCuAl相がX線を透過しにくいためである。
この鋳物の場合、鋳造欠陥(鋳巣)が小さく孤立して分散しており、連なった大きな鋳巣には発展していない。一方、上述した溶湯調製工程で、Al合金溶湯にSrを添加せずに製造した鋳物(試料No.C1)のX線CT像(写真)を図3に示した。この場合、上述した鋳物とは異なり、鋳巣が連なった大きな鋳造欠陥を生じており、網目状の金属組織(粥状凝固組織)にもならなかった。
(2)試料No.1の鋳物の金属組織(ミクロ組織)を顕微鏡観察した写真を図2に示した。この写真からも明らかなように、Al−Si共晶粒が多元共晶マトリックスにより囲繞された網目状の複合共晶組織が形成されていることがわかる。なお、図2の写真中の黒色部分は金属間化合物のCuAlである。
《測定》
上述した加振終了温度が異なる各試料について、試料縦断面中心部の20mm×20mmの測定部位について、鏡面研磨した後、光学顕微鏡写真を撮影した。この写真を画像解析して、測定部位に含まれるAl−Si共晶粒の数と総面積を計測することにより、平均粒径を特定した。なお、画像解析には、アメリカ国立衛生研究所(National Institute of Health)製のフリーソフト”ImageJ ”を用いた。
《評価》
この結果から明らかなように、加振終了温度により、各鋳物中にできるAl−Si共晶粒の大きさは大きく変化することがわかった。具体的には、加振終了温度が650℃以上であると、超音波加振による効果は乏しく、共晶粒径の大きさは2.5mm前後であって、複合共晶組織の微細化は図れなかった。
一方、加振終了温度が640℃以下、635℃以下さらには630℃以下になると、共晶粒径が2mm以下、1.5mm以下さらには1.2mm以下にまで急激に小さくなった。このことから、初晶が晶出し始める温度(初晶開始温度)に近い温度域で、Al合金溶湯へ超音波振動を加えると、Al−Si共晶粒ひいては複合共晶組織の微細化に効果的であることが確認できた。
なお、本実施例で用いたAl合金溶湯の初晶開始温度(Ts)は570℃であるので、加振終了温度がTs〜Ts+70(℃)の範囲内であると、複合共晶組織の微細化に超音波加振が有効であるといえる。

Claims (7)

  1. 全体を100質量%としたときに、9〜13質量%のケイ素(Si)と、1〜5質量%の銅(Cu)と、残部であるアルミニウム(Al)と不可避不純物および/または改質元素とからなり、
    AlとSiの二元共晶からなるAl−Si共晶粒と該Al−Si共晶粒を囲繞しAl、SiおよびCuを含む多元共晶からなる多元共晶マトリックスとにより構成される網目状の複合共晶組織を有し、
    該Al−Si共晶粒は粒径が1.5mm以下であることを特徴とするアルミニウム合金製鋳物。
  2. 全体を100質量%としたときに、0.003〜0.3質量%のストロンチウム(Sr)を含む請求項1に記載のアルミニウム合金製鋳物。
  3. 前記不可避不純物または前記改質元素は、全体を100質量%としたときに、0.5質量%以下のマグネシウム(Mg)、1.2質量%以下の亜鉛(Zn)、1.5質量%以下の鉄(Fe)、0.7質量%以下のマンガン(Mn)、0.7質量%以下のニッケル(Ni)、0.5質量%以下のスズ(Sn)または0.1質量%以下のリン(P)のいずれか一種以上である請求項1または2に記載のアルミニウム合金製鋳物。
  4. アルミニウム合金の溶湯を調製する溶湯調製工程と、
    該溶湯を鋳型に注入する注入工程と、
    該注入された溶湯を冷却して凝固させる凝固工程とを備えるアルミニウム合金製鋳物の製造方法であって、
    前記溶湯調製工程は、初晶の晶出前の前記溶湯へ超音波振動を加える加振工程を有し、
    請求項1〜3のいずれかに記載の鋳物が得られることを特徴とするアルミニウム合金製鋳物の製造方法。
  5. 前記加振工程は、前記超音波振動による加振を終了するときの前記溶湯の温度である加振終了温度を、前記初晶の晶出が開始する温度である初晶開始温度(Ts)から、該初晶開始温度よりも70℃高い温度(Ts+70:℃)までの温度とする工程である請求項4に記載のアルミニウム合金製鋳物の製造方法。
  6. 前記加振終了温度は、590〜640℃である請求項5に記載のアルミニウム合金製鋳物の製造方法。
  7. 前記加振工程で印加する超音波振動は、周波数が60kHz以下である請求項4〜6のいずれかに記載のアルミニウム合金製鋳物の製造方法。
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