JP2012116057A - クロメートフリー着色塗装金属板 - Google Patents

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Abstract

【課題】環境負荷性の高い6価クロムを含まず、意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性、耐薬品性等に極めて優れた安価なクロメートフリー着色金属板を提供する。
【解決手段】アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)の水分散体(A)と、 分散剤として水溶性アクリル樹脂(b1)を用いて分散された着色顔料(b2)の水分散体(B)と、 コロイダルシリカ粒子(c)の水分散体(C)とを含有する水性着色組成物(X)を、金属板の少なくとも片面に塗布し、加熱乾燥することで形成された着色塗膜(α)を有するクロメートフリー着色塗装金属板。
【選択図】なし

Description

本発明は、環境負荷性の高い6価クロムを含まない着色塗膜(α)が金属板の少なくとも片面に形成された、クロメートフリー着色塗装金属板に関する。該構成を有する本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性、耐薬品性等に極めて優れる安価なクロメートフリー着色塗装金属板とすることが容易である。
家電用、建材用、自動車用などに、従来の成形加工後に塗装されていたポスト塗装製品に代わって、着色した有機皮膜を被覆したプレコート鋼板が使用されるようになってきた。このプレコート鋼板は、防錆処理を施した鋼板やめっき鋼板に着色した有機皮膜を被覆したもので、一般的に、美麗性を有しつつ、加工性をも有し、しかも耐食性が良好であるという特性を有している。
例えば、特許文献1には皮膜の構造を規定することによって加工性と耐汚染性、硬度に優れたプレコート鋼板を得る技術が開示されている。一方、特許文献2には、特定のクロメート処理液を用いることで端面耐食性を改善したプレコート鋼板が開示されている。これらのプレコート鋼板は、めっき皮膜、クロメート処理皮膜、クロム系防錆顔料を添加したプライマー(下塗り)皮膜の複合効果によって、耐食性とともに、加工性、塗料密着性を有し、加工後塗装を省略して、生産性や品質改良を目的とするものである。
しかしながら、クロメート処理皮膜及びクロム系防錆顔料を含む有機皮膜から溶出する可能性のある6価クロムの環境への負荷を考慮し、最近ではノンクロム防錆処理、ノンクロム有機皮膜に対する要望が高まっている。これに対し、例えば、特許文献3や特許文献4に、耐食性に優れるノンクロム系プレコート鋼板が開示されており、すでに実用化されている。
これらのプレコート鋼板に用いられる塗装は、塗装膜厚が10μm以上の厚いものである。その上、大量の溶剤系塗料を使用するため、インシネレーターや臭気対策設備等の専用の塗装設備が必要であり、塗装専用ラインで製造されることが一般的である。すなわち、塗装の原板となる鋼板の製造工程の他に余分な塗装工程を通るため、塗装に要する材料費の他にも多くの費用がかかる。したがって、得られるプレコート鋼板は高価なものになる。
しかしながら、ユーザーニーズの多様化により、家電や内装建材等の日常使用条件での耐久性を有すれば充分に目的を達する分野での着色鋼板の需要もあり、より低価格の製品が求められている。すなわち、従来の高価なプレコート鋼板だけでは多様化した需要に応えるのに充分ではない。
このようなニーズに対して、安価に製造ができる着色鋼板として、例えば、特許文献5に厚さ5μm以下の着色樹脂層を設けた着色鋼板が、特許文献6には特定の粗度を有する鋼板表面に発色皮膜を有する着色鋼板が開示されている。しかしながら、これらの着色鋼板はクロメート処理皮膜を設けることで耐食性を担保する設計となっているため、昨今のノンクロム化ニーズに応えることができない。加えて、加工し、着色層が伸ばされた部位の隠蔽性まで考慮した設計にはなっていないため、加工部の外観が著しく低下するという課題も有していた。
特開平8−168723号公報 特開平3−100180号公報 特開2000−199075号公報 特開2000−262967号公報 特開平5−16292号公報 特開平2−93093号公報
本発明の目的は、環境負荷性の高い6価クロムを含まず、しかも従来技術における上記した1以上の問題点を解消できる、クロメートフリー着色塗装金属板を提供することにある。 本発明の他の目的は、意匠性を有し、しかも耐食性および加工性にも優れるクロメートフリー着色塗装金属板を提供することにある。
本発明者は鋭意研究の結果、特定の有機樹脂の水分散体と、コロイダルシリカ粒子の水分散体に加えて、水溶性アクリル樹脂を用いて分散された着色顔料の水分散体をも含有する水性着色組成物を用いることが、上記目的の達成に極めて効果的なことを見出した。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は上記知見に基づくものであり、より詳しくは、アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)の水分散体(A)と;分散剤として水溶性アクリル樹脂(b1)を用いて分散された着色顔料(b2)の水分散体(B)と;コロイダルシリカ粒子(c)の水分散体(C)とを含有する水性着色組成物(X)を、金属板の少なくとも片面に塗布し、加熱乾燥することで形成された着色塗膜(α)を有することを特徴とするものである。
本発明において、上記した効果が得られる理由は、本発明者の知見によれば、以下のように推定される。
すなわち、水系塗料中で良好な着色顔料(カーボンブラック等)の分散性を担保する方法としては、着色顔料粒子表面を親水化処理する方法、着色顔料を分散する際に界面活性剤を添加する方法等が挙げられる。しかしながら、それらの方法では、形成した塗膜の耐湿性や耐食性が低下してしまうため、意匠性と耐湿性、耐食性とを両立させることが難しい。
また、着色塗装金属板はプレス加工して使用されるため、加工して着色塗膜が伸ばされた部位やプレス金型で摺動を受けた部位においても高意匠性を確保する必要があり、延性、硬度、密着性のバランスに優れた着色塗膜を設計することが肝要である。一般に着色顔料を含有する塗膜は、着色顔料の影響により、塗膜の造膜性が低下し、上述した物性バランスを担保することが難しい。加えて、製品になるまでの仕掛り錆や薬品による洗浄によって意匠外観を損なうことのないよう、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性、耐薬品性等を考慮した着色塗膜設計も重要である。
本発明者は鋭意検討の、アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)の水分散体(A)と、分散剤として水溶性アクリル樹脂(b1)を用いて分散された着色顔料(b2)の水分散体(B)と、コロイダルシリカ粒子(c)の水分散体(C)とを含有する水性着色組成物(X)を用いて着色塗膜(α)を有するクロメートフリー着色塗装金属板を形成することにより、上記目的を達成するに至った。
上記構成を有する本発明のクロメートフリー着色塗装金属板においては、本発明者の知見によれば、予め水溶性アクリル樹脂(b1)を用いて分散された着色顔料(b2)の水分散体を使用することで水性塗料中でも着色顔料の分散性が担保、安定化され、上記効果が得られるものと推定される。
これは、予め水溶性アクリル樹脂(b)を用いて分散された着色顔料(b2)表面には水溶性アクリル樹脂(b1)が着色顔料(b2)を保護するように吸着する効果によるものであり、すなわち、一旦分散された着色顔料(b2)の再凝集を防止する効果や水性塗料中における他構成成分との相互作用を軽減し、他構成成分との凝集を防止する効果によるものである。また、一般的に水溶性アクリル樹脂(b1)は水性塗料の粘性を上げる効果も有しており、着色顔料(b2)の水性塗料中における沈降を防止する効果も有している。したがって、着色顔料(b2)の分散性を高めるための表面親水化処理や界面活性剤の添加が必須でないため、形成される着色塗膜(α)の耐湿性や耐食性を低下させる懸念も、極めて小さい。
更に、上記構成を有する本発明のクロメートフリー着色塗装金属板においては、上記塗膜中に着色顔料(b2)が均一に微細に分散されることで、薄膜での意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)が担保されるものと推定される。
本発明は、例えば、以下の態様[1]〜[15]を含むことができる。
[1] アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)の水分散体(A)と、
分散剤として水溶性アクリル樹脂(b1)を用いて分散された着色顔料(b2)の水分散体(B)と、 コロイダルシリカ粒子(c)の水分散体(C)とを含有する水性着色組成物(X)を、金属板の少なくとも片面に塗布し、加熱乾燥することで形成された着色塗膜(α)を有することを特徴とする、クロメートフリー着色塗装金属板。
[2] 前記水性着色組成物(X)が硬化剤(D)を更に含有することを特徴とする、[1]に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[3] 前記着色顔料(b2)がカーボンブラック(k)を含有し、且つ、前記着色塗膜(α)の膜厚が2〜10μmであることを特徴とする、[1]または[2]に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[4] 前記カーボンブラック(k)の前記着色塗膜(α)中の含有量をY質量%、前記着色塗膜(α)の厚みをZμmとしたとき、Y×Z≧20、且つ、Y≦15を満足することを特徴とする、[3]に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[5] 前記水分散体(B)における前記水溶性アクリル樹脂(b1)固形分の含有量が、前記カーボンブラック(k)の固形分100質量%に対して5〜30質量%であることを特徴とする、[3]または[4]に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[6] 前記カーボンブラック(k)が前記着色塗膜(α)中に数平均粒子径20〜300nmの粒子で分散されていることを特徴とする、[3]〜[5]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[7] 前記水溶性アクリル樹脂(b1)が構造中に水酸基を含有することを特徴とする、[2]〜[6]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[8] 前記水溶性アクリル樹脂(b1)が構造中にアミン化合物で中和されたカルボキシル基を含有することを特徴とする、[1]〜[7]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[9] 前記コロイダルシリカ粒子(c)がアミン化合物で安定化されていることを特徴とする、[1]〜[8]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[10] 前記アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)が構造中にエステル基、ウレタン基、ウレア基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有することを特徴とする、[1]〜[9]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[11] 前記アニオン性官能基の少なくとも一部がスルホン酸金属塩基であることを特徴とする、[10]に記載のクロメートフリー塗装金属板。
[12] 前記アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)が構造中にビスフェノール構造を更に含有することを特徴とする、[10]または[11]に記載のクロメートフリー塗装金属板。
[13] 前記水性着色組成物(X)が潤滑剤(E)を更に含有することを特徴とする、[1]〜[12]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[14] 前記着色塗膜(α)の下層に下地処理層(β)を有することを特徴とする、[1]〜[13]のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
[15] アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)の水分散体(A)と、 分散剤として水溶性アクリル樹脂(b1)を用いて分散された着色顔料(b2)の水分散体(B)と、 コロイダルシリカ粒子(c)の水分散体(C)とを含有することを特徴とする、水性着色組成物(X)。
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、環境負荷性の高い6価クロムを含まず、意匠性を有し、しかも耐食性および加工性にも優れるという特徴を有する。
更には、上記構成を有する本発明のクロメートフリー着色塗装金属板は、安価(低コスト)で、意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性、耐薬品性等に優れる着色塗装金属板とすることが極めて容易である。このため、安価な高意匠、高付加価値環境対応型素材として非常に有望であり、各産業分野への寄与は非常に大きい。
(クロメートフリー着色金属板) 本発明のクロメートフリー着色金属板の着色塗膜(α)は、アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)の水分散体(A)と、水溶性アクリル樹脂(b1)を用いて分散された着色顔料(b2)の水分散体(B)と、コロイダルシリカ粒子の水分散体(C)とを含み、クロムを含有しない水系着色組成物を、金属板の少なくとも片面に塗布し、加熱乾燥することで形成される。有機樹脂(a)自身は、通常は疎水性であるが、その樹脂に含有されるアニオン性官能基が高い親水性を示すため、アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)は水中に安定して分散することができる。
加えて、アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)は疎水性表面を有しているカーボンブラック等の着色顔料(b2)と水との相溶性を向上させ、着色顔料(b2)を組成物中に均一に安定して分散させる効果も有している。これは、疎水性を示す有機樹脂(a)主構造が着色顔料(b2)に配向することで得られる効果による。すなわち、有機樹脂(a)が水中に安定して溶解、もしくは分散することによって、着色顔料(b2)も同様に均一に分散することができる。このすぐれた分散能が発現するのは、高い親水性を示すアニオン性官能基が疎水性の有機樹脂(a)中に含有していることに基づく。
このように、アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)により着色顔料(b2)が均一に安定して分散した水系組成物から形成される着色塗膜(α)は、塗膜中においても着色顔料(b2)は均一に分散しており、薄膜でも優れた意匠性(着色性、隠蔽性)を発現することができる。また、有機樹脂(a)に含まれるアニオン性官能基は基材である金属板(下地処理がある場合は下地処理層)との密着性を向上させる効果を有すため、得られる着色塗膜(α)は基材あるいは下地処理層(β)との密着性に極めて優れる。
すなわち、水溶性アクリル樹脂(b1)を用いて分散された着色顔料(b2)とともに、アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)を用いることで、有機樹脂(a)が着色塗膜(α)のバインダー成分としての役割と着色顔料(b2)の分散性を高める効果を同時に担うことができる上に、着色顔料(b2)の分散性を高めるための表面親水化処理や界面活性剤の添加が必須でないため、優れた意匠性と耐湿性、耐食性とのバランスを得ることができる。
更に、アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)の水分散体(A)と、水溶性アクリル樹脂(b1)を用いて分散された着色顔料(b2)の水分散体(B)とを含有する水系着色組成物に、塗装金属板に必要とされる意匠性以外の特性、特に耐食性、耐傷付き性を満足するために、コロイダルシリカ粒子の水分散体を加えることによって、本発明を完成するに至った。
このように、アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)の水分散体(A)と、水溶性アクリル樹脂(b1)を用いて分散された着色顔料(b2)の水分散体(B)と、コロイダルシリカ粒子の水分散体(C)とを含む水系着色組成物を金属板の少なくとも片面に塗布し、焼付乾燥することで形成された着色塗膜(α)は、意匠性(加工部を含む着色性、隠蔽性)、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性、耐薬品性等に極めて優れる。
(水系着色組成物)
本発明において、「水分散体」(ないしは、水系着色組成物)とは、水系溶媒を用いて構成された「分散体」(ないしは、水系着色組成物)を言うものとする。ここに、「水系溶媒」とは、水が主成分(50質量%以上)である溶媒を言う。水系溶媒を用いることによって、有機溶剤系塗料を使用するための塗装専用ラインを余分に通板する必要がなくなるために、製造コストを大幅に削減することが可能である上に、VOCの排出も大幅に抑制できる等の環境面におけるメリットも有している。
必要に応じて、上記の「水系溶媒」に有機溶媒を加えることもできる。しかしながら、労働衛生上の観点からは、本発明の「水分散体」(ないしは、水系着色組成物)は労働安全衛生法の有機溶剤中毒予防規則で定義される有機溶剤含有物(労働安全衛生法施行令の別表第六の二に掲げられた有機溶剤を重量の5%を超えて含有するもの)には該当しないものであることが好ましい。
(水溶性樹脂)
本発明において好適に使用可能な「水溶性樹脂」とは、水溶性を有する樹脂を言う。より具体的には、ポリマー(樹脂)を1質量%の濃度で水に溶解させようとしたときに、加熱したり攪拌したりして均一化させる努力をした後に、25℃で24時間放置したときにポリマーが沈殿を生じることなく、相分離もせずに溶液が均一であることをいう。
(着色塗膜(α))
前記着色塗膜(α)の塗膜厚みは2〜10μmであることが好ましい。塗膜厚みが2μm未満であると、充分な意匠性(着色性、隠蔽性)や耐食性が得られない場合がある。他方、塗膜厚みが10μm超であると、経済的に不利であるばかりか、ワキ等の塗膜欠陥が発生することがあり、工業製品として必要な外観を安定して得る事の困難性が増大する傾向がある。
前記着色塗膜(α)の厚みは、塗膜の断面観察や電磁膜厚計等の利用により測定できる。その他に、単位面積当りに付着した塗膜の質量を、塗膜の比重又は組成物の乾燥後比重で除算して算出してもよい。塗膜の付着質量は、塗装前後の質量差、塗装後の塗膜を剥離した前後の質量差、または、塗膜を蛍光X線分析して予め皮膜中の含有量が分かっている元素の存在量を測定する等、既存の手法から適切に選択すればよい。塗膜の比重又は組成物の乾燥後比重は、単離した塗膜の容積と質量を測定する、適量の組成物を容器に取り乾燥させた後の容積と質量を測定する、または、塗膜構成成分の配合量と各成分の既知の比重から計算する等、既存の手法から適切に選択すればよい。
上記した各種測定方法の中でも、比重等が異なる塗膜でも簡便に精度よく測定できることから、塗膜の断面観察の利用が好適である。
着色塗膜(α)の断面観察の方法としては特に制限はないが、常温乾燥型エポキシ樹脂中に塗装金属板を塗膜厚み方向と垂直に埋め込み、その埋め込み面を機械研磨した後に、SEM(走査型電子顕微鏡)で観察する方法やFIB(集束イオンビーム)装置を用いて、塗装金属板から塗膜の垂直断面が見えるように厚さ50〜100nmの観察用試料を切り出し、塗膜断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察する方法等が好適に使用可能である。
(有機樹脂(a))
本発明において、着色塗膜(α)を構成する第1の成分たる有機樹脂(a)は、アニオン性官能基を含有する有機樹脂である。
(アニオン性官能基)
本発明において、アニオン性官能基は特に制限されないが、有機樹脂(a)や着色顔料(b2)の分散安定性と着色塗膜(α)の耐水性、耐食性との両立の点からは、スルホン酸基、カルボキシル基が好適に使用可能である。これらの官能基はそれがアルカリ金属類、アンモニアを含むアミン類等で中和されたものであっても構わない。中和する場合は、すでに中和されたこれらの官能基を樹脂中に組み込んでもよいし、これらの官能基を樹脂中に組み込んだ後に中和してもよい。
上記した中でも、着色顔料(b2)の分散安定性や基材である金属板(下地処理がある場合は下地処理層)との密着性の点からは、スルホン酸基が特に好適に使用可能であり、特にLi、Na、Kなどのアルカリ金属類で中和されたスルホン酸金属塩基が最も好適であり、前記アニオン性官能基の少なくとも一部がスルホン酸金属塩基であることが好ましい。
(有機樹脂(a)の種類)
本発明において、有機樹脂(a)は特に制限されないが、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、又はそれらの変性体等を挙げることができる。前記有機樹脂(a)は1種または2種以上混合して用いてもよいし、少なくとも1種の有機樹脂存在下で、少なくとも1種のその他の有機樹脂を変性することによって得られる有機樹脂を1種または2種以上混合して用いてもよい。
前記有機樹脂(a)は構造中にエステル基、ウレタン基、ウレア基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有することが加工性と耐傷付き性とを両立させる上で望ましい。加工性と耐傷付き性を両立させるためには、伸びと強度の両者に優れ、且つ基材である金属板(下地処理がある場合は下地処理層)との密着性に優れる樹脂設計が重要であるが、構造中に特定の凝集エネルギーを持つ官能基を導入することで、伸びと強度の両者に優れ、且つ密着性にも優れる樹脂設計ができる。中でも加工性を重視する場合は適度な凝集エネルギーを持つエステル基を構造中に含有する樹脂が好適であり、耐傷付き性を重視する場合は高い凝集エネルギーを持つウレタン基やウレア基を構造中に含有する樹脂が好適である。
加工性と耐傷付き性を高次元で両立させるためには、エステル基とウレタン基とを含有する樹脂、もしくは、エステル基とウレタン基とウレア基とを含有する樹脂がより好適である。構造中にエステル基、ウレタン基、ウレア基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含む樹脂としては、特に限定されないが、例えば、エステル基を含有するポリエステル樹脂、ウレタン基を含有するポリウレタン樹脂、ウレタン基とウレア基の両者を含有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらは1種または2種以上混合して用いてもよい。例えば、エステル基、ウレタン基、ウレア基すべてを含有する樹脂として、エステル基を含有するポリエステル樹脂とウレタン基とウレア基の両者を含有するポリウレタン樹脂を混合して使用してもよい。
前記有機樹脂(a)は構造中に、ビスフェノール構造を更に含むことが好ましい。ビスフェノール構造は高い凝集エネルギーを持つ上に、耐水性にも優れるため、ビスフェノール構造を含むことは耐傷付き性、耐食性を向上させる上で好ましい。
(ポリエステル樹脂)
本発明に使用可能なポリエステル樹脂の種類は特に制限はないが、例えば、ポリカルボン酸成分およびポリオール成分からなるポリエステル原料を縮重合して得られたものを、水に分散することで得られるものを好適に使用することができる。
(ポリカルボン酸成分)
前記ポリカルボン酸成分としては、例えば、フタル酸、無水フタル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラフタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、コハク酸、無水コハク酸、乳酸、ドデセニルコハク酸、ドデセニル無水コハク酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、無水エンド酸等の1種又は複数種を挙げることができる。
(ポリオール成分)
前記ポリオール成分としては特に制限はないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、トリエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−3−メチル−1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール−A、ダイマージオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは1種または2種以上任意に使用できる。
(スルホン酸基)
本発明において好適なアニオン性官能基たる「スルホン酸基」を導入する方法としては特に制限はないが、例えば、有機樹脂がポリエステル樹脂の場合には、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2、7−ジカルボン酸、5(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸等のジカルボン酸類、または2−スルホ−1,4−ブタンジオール、2,5−ジメチル−3−スルホ−2,5−ヘキシルジオール等のグリコール類をポリエステル原料として使用する方法が挙げられる。
スルホン酸基を含有するジカルボン酸またはグリコールの使用量は、全ポリカルボン酸成分または全ポリオール成分に対し、0.1〜10モル%含有することが好ましい。0.1モル%未満であると、水に対する分散性が低下する場合や前記着色顔料(b2)の分散性が低下し、前記着色塗膜(α)の薄膜での意匠性(着色性、隠蔽性)が得られない場合がある。10モル%超であると、耐湿性や耐食性が低下する場合がある。薄膜での意匠性(着色性、隠蔽性)と耐湿性、耐食性とのバランスの観点からは、0.5〜7モル%の範囲にあるのがより好ましい。
前記有機樹脂(a)に含有されるアニオン性官能基(例えば、−SOHで表されるスルホン酸基)は、それがアルカリ金属類、アンモニアを含むアミン類等で中和されたものであっても構わない。中和する場合は、すでに中和されたアニオン性官能基を樹脂中に組み込んでもよいし、アニオン性官能基を樹脂中に組み込んだ後に中和してもよい。特にLi、Na、Kなどのアルカリ金属類で中和されたスルホン酸金属塩基が、より高い親水性を示すため、着色顔料(b2)の分散性を高め、高い意匠性を得る上で好適である。また、着色塗膜(α)の基材との密着性を高める上でも、アニオン性官能基はアルカリ金属で中和されたアニオン性官能基(例えば、スルホン酸金属塩基、特にスルホン酸Na塩基)であることがより好ましい。
(カルボキシル基)
本発明において好適なアニオン性官能基たる「カルボキシル基」を導入する方法としては特に制限はないが、例えば、有機樹脂がポリエステル樹脂の場合には、ポリエステル樹脂を重合した後に、常圧、窒素雰囲気下、無水トリメリット酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸、無水1,8−ナフタル酸、無水1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸−3,4−無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸ニ無水物などから1種または2種以上を選択し、後付加する方法やポリエステルを高分子量化する前のオリゴマー状態のものにこれらの酸無水物を投入し、次いで減圧下の重縮合により高分子量化する方法等が挙げられる。
前記カルボキシル基は−COOHで表される官能基を指し、それがアルカリ金属類、アンモニアを含むアミン類等で中和されたものであっても構わない。中和する場合は、すでに中和されたカルボキシル基を樹脂中に組み込んでもよいし、カルボキシル基を樹脂中に組み込んだ後に中和してもよい。
前記カルボキシル基の導入量としては特に制限はないが、酸価で0.1〜50mgKOH/gの範囲にあることが好ましい。0.1mgKOH/g未満であると、密着性の向上効果が得られない場合がある。また、水系溶媒を使用する場合、水に対する溶解性または分散性が低下する場合や、更に、着色顔料を使用する場合、着色顔料の分散性が低下し、意匠性が低下する場合がある。50mgKOH/gであると、耐食性が低下する場合がある。性能のバランスを考慮すると、0.5〜25mgKOH/gの範囲にあるのがより好ましい。
(ビスフェノール構造)
前記ビスフェノール構造を導入する場合の方法としては特に制限はないが、例えば、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールFのプロピレンオキサイド付加物などのグリコール類をポリエステル原料として使用する方法が挙げられる。
前記ビスフェノール構造を含有するグリコールの使用量は、全ポリオール成分に対し、1〜40モル%含有することが好ましい。1モル%未満であると、耐傷付き性、耐食性の向上効果が得られない場合がある。40モル%超であると、加工性が低下する場合がある。性能のバランスを考慮すると、5〜30モル%の範囲にあるのがより好ましい。
(ポリウレタン樹脂)
本発明に使用可能なポリウレタン樹脂の種類は特に制限はないが、例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを反応させ、その後に更に鎖伸長剤によって鎖伸長して得られるもの等を挙げることができる。
前記ポリオール化合物としては、1分子当たり2個以上のヒドロキシ基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリウレタンポリオール、又はそれらの混合物が挙げられる。これらの化合物は、単独で、又は2種類以上の混合物で使用することが出来る。
前記ポリイソシアネート化合物としては、1分子当たり2個以上のイソシアネート基を含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、脂肪族イソシアネート、脂環族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、芳香脂肪族ジイソシアネート、又はそれらの混合物が挙げられる。前記鎖伸長剤としては、分子内に1個以上の活性水素を含有する化合物であれば特に限定されず、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミンや、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン等の芳香族ポリアミンや、ジアミノシクロヘキシルメタン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミンや、ヒドラジン、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等のヒドラジン類や、ヒドロキシエチルジエチレントリアミン、2−[(2−アミノエチル)アミノ]エタノール、3−アミノプロパンジオール等のアルカノールアミン等が挙げられる。これらの化合物は、単独で、又は2種類以上の混合物で使用することが出来る。
(着色顔料の水分散体(B))
着色塗膜(α)を構成する第2の成分は、着色顔料の水分散体(B)である。この着色顔料の水分散体(B)は、分散剤として水溶性アクリル樹脂(b1)を用いて分散された着色顔料(b2)の水分散体である。このような着色顔料(b2)の水分散体を含有することで、着色塗膜(α)を形成するための水性着色組成物中における着色顔料(b2)の分散性を更に高めることができ、薄膜における意匠性(着色性、隠蔽性)を更に高めることができる。
前記着色顔料(b2)は、特に制限はないが、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、グラファイト、酸化鉄、酸化鉛、コールダスト、タルク、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー等の着色無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ペリレン、アンスラピリミジン、カルバゾールバイオレット、アントラピリジン、アゾオレンジ、フラバンスロンイエロー、イソインドリンイエロー、アゾイエロー、インダスロンブルー、ジブロムアンザスロンレッド、ペリレンレッド、アゾレッド、アントラキノンレッド、等の着色有機顔料;アルミニウム粉、アルミナ粉、ブロンズ粉、銅粉、スズ粉、亜鉛粉、リン化鉄、金属コーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングマイカ粉、二酸化チタンコーティングガラス粉等の光輝材等を挙げることができる。
前記着色塗膜(α)に濃色系の着色をする場合や膜厚が10μm以下の薄膜で優れた意匠性を付与する場合には、前記着色顔料(b2)にカーボンブラック(k)を含有することが好ましい。
前記カーボンブラック(k)の種類としては、特に限定されず、例えば、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等、公知のカーボンブラックを使用することができる。また、公知のオゾン処理、プラズマ処理、液相酸化処理されたカーボンブラックも使用することができる。使用するカーボンブラックの粒子径は組成物中での分散性や塗膜品質、塗装性に問題が無い範囲であれば特に制約は無く、具体的には一次粒子径で10〜120nmのものの使用が可能である。薄膜での意匠性(着色性、隠蔽性)や耐食性を考慮すると、一次粒子径が10〜50nmの微粒子カーボンブラックを使用することが好ましい。これらのカーボンブラックは組成物中に分散する過程で凝集が起こるため、一次粒子径のまま分散することは一般的に難しい。すなわち、実際には一次粒子径よりも大きな粒子径を持った二次粒子の形態で組成物中では存在し、該組成物から形成する前記着色塗膜(α)中でも同様の形態で存在する。薄膜での意匠性(着色性、隠蔽性)や耐食性を担保するためには、塗膜中に分散する前記カーボンブラック(k)の粒子径が重要であり、その数平均粒子径が20〜300nmにあることが好ましい。このようなカーボンブラック(k)の粒子径は、実施例において後述するように、FIB(集束イオンビーム)装置を用いて好適に測定することができる。
前記カーボンブラック(k)の前記着色塗膜(α)中の含有量をX質量%、前記着色塗膜(α)の厚みをYμmとしたとき、X×Y≧20、且つ、X≦15を満足することが好ましい。意匠性(着色性、隠蔽性)を担保するためには、前記着色塗膜(α)中に含まれるカーボンブラックの絶対量を一定量以上確保することも肝要である。カーボンブラックの絶対量は、塗膜中に含まれるカーボンブラックの含有量(X質量%)と塗膜厚み(Yμm)の積によって表すことができる。すなわち、X×Yが20未満であると、意匠性(着色性、隠蔽性)が低下する場合がある。また、Xが15超であると、塗膜の造膜性が低下し、耐食性や加工性が低下する場合がある。
前記着色塗膜(α)に淡彩系の着色をする場合は、前記着色顔料(b2)に二酸化チタンを含有することが好ましい。前記二酸化チタンの前記塗膜(α)中の含有量は5〜50質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、意匠性(隠蔽性)が低下する場合があり、50質量%超であると加工性や耐食性が低下する場合がある。一般的に、前記塗膜(α)が前記カーボンブラック(k)を含有し、濃色系の着色をされている場合、着色がない場合や淡彩系の着色をされている場合よりも、傷が入ったときに目立ち易いという特徴を有している。前記二酸化チタンは耐傷付き性を底上げする効果を有している上に、外観を淡彩色に近づけ、傷を目立ちにくくする効果も有している。したがって、特に膜厚が10μm以下の薄膜で着色時の意匠性(隠蔽性)、加工性、耐食性を担保しながら、耐傷付き性を向上させるには、前記着色塗膜(α)中に前記カーボンブラック(k)と前記二酸化チタンの双方を含有することが好ましい。この場合、前記カーボンブラック(k)と前記二酸化チタンは質量比で9.5/0.5〜7/3の割合で含有することが好ましい。
(水溶性アクリル樹脂(b1)) 本発明において分散剤として使用するアクリル樹脂の種類は水溶性であれば特に制限はない。本発明において使用可能な樹脂の例としては、単量体を水溶液中で重合開始剤を用いてラジカル重合することによって得られるものを挙げることができる。
上記単量体の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸単量体; ( メタ) アクリル酸メチル、( メタ) アクリル酸エチル、( メタ) アクリル酸n − ブチル、(メタ) アクリル酸− 2 − エチルヘキシル等のエチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体; マレイン酸エチル、マレイン酸ブチル、イタコン酸エチル、イタコン酸ブチル等のエチレン系不飽和ジカルボン酸のモノエステル単量体; ( メタ) アクリル酸− 2 − ヒドロキシエチル、( メタ) アクリル酸− 2 − ヒドロキシプロピル、( メタ) アクリル酸−4 − ヒドロキシブチル、( メタ) アクリル酸− 2 − ヒドロキシエチルとε − カプロラクトンとの反応物等のヒドロキシル基含有エチレン系不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体; ( メタ) アクリル酸アミノエチル、( メタ) アクリル酸ジメチルアミノエチル、( メタ) アクリル酸ブチルアミノエチル等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル単量体; アミノエチル( メタ) アクリルアミド、ジメチルアミノメチル( メタ) アクリルアミド、メチルアミノプロピル( メタ) アクリルアミド等のエチレン系不飽和カルボン酸アミノアルキルアミド単量体; アクリルアミド、メタクリルアミド、N − メチロールアクリルアミド、メトキシブチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等のその他のアミド基含有エチレン系不飽和カルボン酸単量体; アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル等の不飽和脂肪酸グリシジルエステル単量体; ( メタ) アクリロニトリル、α − クロルアクリロニトリル等のシアン化ビニル系単量体等の「アクリル系単量体」を挙げることができる。これらの「アクリル系単量体」は、上記単量体を単独で使用するものであっても、2以上の成分を併用して使用するものであってもよい。
上記「アクリル系単量体」は、必要に応じて、該単量体と共重合可能な他の単量体を、該「アクリル系単量体」と共重合したものを用いても良い。このような「他の単量体」としては、 酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の飽和脂肪族カルボン酸ビニルエステル単量体; スチレン、α − メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン系単量体;等のビニル系単量体を好適に使用することができる。こららの「他の単量体」も、単独で使用するものであっても、2以上の成分を併用して使用するものであってもよい。本発明において、共重合ポリマーを「水溶性アクリル樹脂(b1)」として使用する際には、「アクリル系単量体」の100質量部に対して、「他の単量体」の使用量は300質量部以下が好ましく、更には、20〜200質量部であることが好ましい。
(重合開始剤)
前記重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスシアノ吉草酸、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等を使用することができる。上記エチレン性不飽和二重結合を有するアクリル単量体混合物は、上記単量体を単独で使用するものであっても、2 以上の成分を併用して使用するものであってもよい。
(水酸基)
本発明の水系着色組成物(X)に後述する硬化剤(D)を更に含有する場合、前記水溶性アクリル樹脂(b1)は構造中に水酸基を含有することが好ましい。前記アクリル樹脂(b1)は水溶性であるために、塗膜中にそのまま含まれると耐水性や耐食性を低下させる恐れがある。構造中に水酸基を含むことにより、そこが硬化剤との架橋起点となり、硬化剤を介した架橋体として塗膜中に取り込まれ、耐水性や耐食性を大幅に改善することができる。前記水溶性アクリル樹脂(b1)の構造中に水酸基を導入する方法としては特に制限はないが、例えば、アクリルモノマー(および/又は、必要に応じて、共重合すべき「他のモノマー」)を重合してアクリル樹脂を重合する際に、アクリルモノマーの一部に水酸基を含有するアクリルモノマーを使用する方法等が挙げられる。
前記水酸基の導入量としては特に制限はないが、水酸基価で、30〜150mgKOH/gの範囲にあることが好ましい。性能のバランスを考慮すると、50〜100の範囲にあるのがより好ましい。
(カルボキシル基)
前記アクリル樹脂(b1)は構造中にアミン化合物で中和されたカルボキシル基を含有することが好ましい。アミン化合物としては特に制限はないが、例えば、アンモニアや、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミンが挙げられる。カルボキシル基は親水性に優れるため、溶媒の主成分である水との親和性を高め、前記着色顔料(b2)の分散性を高めることができる。更に、カルボキシル基をアミン化合物で中和することで更に親水性を高めることができ、より前記着色顔料(b2)の分散性を高めることができる。カルボキシル基を中和する塩基性物質にはアミン化合物以外に水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物などが挙げられるが、これらは加熱乾燥後の着色塗膜中に残存し、耐水性や耐食性を低下させる恐れがあるため好ましくない。
前記カルボキシル基の導入量としては特に制限はないが、酸価で0.1〜50mgKOH/gの範囲にあることが好ましい。0.1mgKOH/g未満であると、密着性の向上効果が得られない場合がある。また、水系溶媒を使用する場合、水に対する溶解性または分散性が低下する場合や、更に、着色顔料を使用する場合、着色顔料の分散性が低下し、意匠性が低下する場合がある。50mgKOH/g超であると、耐食性が低下する場合がある。性能のバランスを考慮すると、0.5〜25mgKOH/gの範囲にあるのがより好ましい。
(固形分の含有量)
前記水分散体(B)における前記水溶性アクリル樹脂(b2)固形分の含有量は、前記着色顔料(b2)の固形分100質量%に対し、5〜30質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、着色顔料(b2)の分散安定性が低下する場合があり、意匠性(着色性、隠蔽性)が低下する場合もある。30質量%超であると、耐食性や加工性が低下する場合がある。着色顔料(b2)がカーボンブラック(k)を含有する場合は、15〜30質量%であることがより好ましい。
(コロイダルシリカの水分散体(C))
着色塗膜(α)を構成する第3の成分は、コロイダルシリカ粒子(c)の水分散体(C)である。このようなコロイダルシリカの水分散体(C)を含有させることで、耐食性、耐傷付き性が向上する。コロイダルシリカの水分散体(C)としては特に制限されないが、一次粒子径が5〜50nmのコロイダルシリカ微粒子であることが好ましい。市販品としては、例えば、スノーテックスO、スノーテックスN、スノーテックスC、スノーテックスIPA−ST(日産化学工業)、アデライトAT−20N、AT−20A(旭電化工業)等を挙げることができる。これらのコロイダルシリカ粒子は前記着色塗膜(α)でも一次粒子径(平均粒子径)5〜50nmのままで分散されていることが、耐食性や加工性の観点で好ましい。
コロイダルシリカ粒子(c)の一次粒子径は、動的光散乱法(ナノトラック法)によって測定できる。動的散乱法によれば、温度と粘度と屈折率が既知の分散媒中の微粒子の径を簡単に求めることができる。
本発明で用いる粒子状成分は、塗料の水系溶媒に有意に溶解せず、且つ溶媒や他の塗膜構成成分と反応しないように選ばれるので、所定の分散媒中で粒子径を測定して、それを分散体中における粒子状成分の粒子径として採用することができる。動的光散乱法では、分散媒中に分散しブラウン運動している微粒子にレーザー光を照射して粒子からの散乱光を観測し、光子相関法により自己相関関数を求め、キュムラント法を用いて粒子径を測定する。
動的光散乱法による粒径測定装置として、例えば、大塚電子社製のFPAR−1000を使用することができる。本発明では、測定対象の粒子を含有する分散体サンプルを25℃で測定してキュムラント平均粒子径を求め、合計5回の測定の平均値を当該粒子の平均粒子径とする。動的光散乱法による平均粒子径の測定については、例えば、ジャーナル・オブ・ケミカル・フィジックス(Journal of Chemical Physics)第57巻11号(1972年12月)第4814頁、に記載されている。
前記コロイダルシリカ粒子(C)はアミン化合物で安定化されていることが好ましい。アミン化合物としては特に制限はないが、例えば、アンモニアや、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミンが挙げられる。市販品としては、例えば、スノーテックスN(日産化学工業)、アデライトAT−20A(旭電化工業)等を挙げることができる。前記コロイダルシリカ粒子(C)はアミン化合物で安定化されているものを使用した方が、前記着色顔料(b2)の分散剤である前記アクリル樹脂(b1)の安定性を高めることができ、前記着色顔料(b2)の分散性を高めることができるため、好ましい。
前記コロイダルシリカの水分散体(C)の含有量は、前記着色塗膜(α)中に5〜30質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、耐食性、耐傷付き性が低下する場合があり、30質量%超であると、耐湿性、耐食性、加工性が低下する場合がある。
(硬化剤(D))
本発明においては、硬化剤(D)を使用することが好ましい。このような硬化剤(D)は、前記有機樹脂(a)を硬化させるものであれば特に制限はないが、例えば、メラミン樹脂、ポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物等を挙げることができる。メラミン樹脂はメラミンとホルムアルデヒドとを縮合して得られる生成物のメチロール基の一部またはすべてをメタノール、エタノール、ブタノールなどの低級アルコールでエーテル化した樹脂である。ポリイソシアネート化合物としては特に限定されず、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート等を挙げることができる。また、そのブロック化物は、前記ポリイソシアネート化合物のブロック化物であるヘキサメチレンジイソシアネートのブロック化物、イソホロンジイソシアネートのブロック化物、キシリレンジイソシアネートのブロック化物、トリレンジイソシアネートのブロック化物等を挙げることができる。これらの硬化剤は1種で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記硬化剤(D)の含有量は、全有機樹脂(前記着色塗膜(α)が前記有機樹脂(a)以外の有機樹脂を含む場合は、その有機樹脂も含めた全有機樹脂を指す。ただし、後述する潤滑剤(E)は含まない。)100質量%に対し、5〜35質量%であることが好ましい。5質量%未満であると、焼付硬化が不充分で、耐湿性、耐食性、耐傷付き性、耐薬品性が低下する場合があり、35質量%超であると、焼付硬化が過剰になり、耐食性、加工性が低下する場合がある。
耐傷付き性、耐薬品性の観点から、前記硬化剤(D)にはメラミン樹脂を含有することが好ましい。メラミン樹脂の含有量は、前記硬化剤(D)中に30〜100質量%であることが好ましい。30質量%未満であると、耐傷付き性、耐薬品性が低下する場合がある。
(潤滑剤(E))
前記着色塗膜(α)は、更に潤滑剤(E)を含有することが好ましい。潤滑剤(E)を含有させることで、耐傷付き性が向上する。潤滑剤(E)としては特に制限されず、公知の潤滑剤が使用できるが、フッ素樹脂系、ポリオレフィン樹脂系から選ばれる少なくとも一種を使用することが好ましい。
(フッ素樹脂)
フッ素樹脂系としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが使用可能である。これらのうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。
(ポリオレフィン樹脂)
前記ポリオレフィン樹脂系としては特に限定されず、パラフィン、マイクロクリスタリン、ポリエチレン等の炭化水素系のワックス、及びこれらの誘導体等を挙げることができるが、ポリエチレン樹脂であることが好ましい。前記誘導体としては特に限定されず、例えば、カルボキシル化ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン等を挙げることができる。これらのうち1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用しても良い。前記ポリエチレン樹脂を使用する場合、前記着色塗膜(α)中に平均粒子径0.5〜2μmの粒子で分散されていることが、耐食性や耐傷付き性の観点から好ましい。
前記ポリエチレン樹脂粒子の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法(マイクロトラック法)によって測定した粒度分布における積算値50%での粒子径を指す。レーザー回折・散乱法による測定には、例えば、日機装社製のマイクロトラック粒度分析計などで測定することができる。本発明では、合計5回の測定の平均値を前記ポリエチレン樹脂粒子の平均粒子径とする。
前記潤滑剤(E)の含有量は、前記着色塗膜(α)中に0.5〜10質量%であることが好ましい。0.5質量%未満であると、耐傷付き性が低下する場合があり、10質量%超であると、耐食性、加工性が低下する場合がある。
(着色塗膜(α))
本発明のクロメートフリー着色塗装金属板の着色塗膜(α)はアニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)の水分散体(A)と、分散剤として水溶性アクリル樹脂(b1)を用いて分散された着色顔料(b2)の水分散体(B)と、コロイダルシリカ粒子(c)の水分散体(C)とを含有する水系着色組成物(X)を金属板の少なくとも片面に塗布し、焼付乾燥することで形成することができる。前記水系着色組成物の塗布方法に特に制限はないが、公知のロールコート、カーテン塗装、スプレー塗布、バーコート、浸漬、静電塗布等を適宜使用することができる。
(水性着色組成物)
前記水性着色組成物(X)の製造方法は特に限定されないが、例えば、水中に各々の着色塗膜(α)形成成分を添加し、ディスパーで攪拌し、溶解もしくは分散する方法が挙げられる。各々の着色塗膜(α)形成成分の溶解性、もしくは分散性を向上させるために、必要に応じて、公知の親水性溶剤等を添加してもよい。
前記水性着色組成物(X)の25℃におけるpHは8〜10の範囲にあることが好ましく、8.5〜9.5の範囲にあることがより好ましい。pHが8よりも小さいと前記水性着色組成物(X)の貯蔵安定性が低下(増粘やゲル化の発生)したり、前記着色顔料(b2)の分散安定性が低下する場合がある。pHが10よりも大きいと耐水性、耐食性、耐薬品性が低下する場合がある。前記水性着色組成物(X)のpHの制御方法に特に制限はないが、酢酸等の有機酸やアンモニア等のアミン化合物を適量添加して調整する方法等が挙げられる。
(加熱乾燥方法)
加熱(ないし焼付)乾燥方法は特に制限はなく、あらかじめ金属板を加熱しておくか、塗布後に金属板を加熱するか、或いはこれらを組み合わせて乾燥を行ってもよい。加熱方法に特に制限はなく、熱風、誘導加熱、近赤外線、直火等を単独もしくは組み合わせて使用することができる。焼付乾燥温度については、到達温度で150℃〜250℃であることが好ましく、160℃〜230℃であることが更に好ましく、180℃〜220℃であることが最も好ましい。到達温度が150℃未満であると、焼付硬化が不充分で、耐湿性、耐食性、耐傷付き性、耐薬品性が低下する場合があり、250℃超であると、焼付硬化が過剰になり、耐食性、加工性が低下する場合がある。焼付乾燥時間は1〜60秒であることが好ましく、3〜20秒であることが更に好ましい。1秒未満であると、焼付硬化が不充分で、耐湿性、耐食性、耐傷付き性、耐薬品性が低下する場合があり、60秒超であると、生産性が低下する場合がある。
(下地処理層(β))
本発明においては、前記着色塗膜(α)と下地金属板との密着性を高めたり、耐食性を向上させたりできるというの点からは、前記着色塗膜(α)の下層に下地処理層(β)が配置されることが好ましい。前記下地処理層(β)は特に限定されるものではないが、シランカップリング剤、有機樹脂、ポリフェノール化合物から選ばれる少なくとも1種を含む下地処理層(β)を設けることで、下地金属板との密着性を更に高め、耐食性を更に高めることができる。また、シランカップリング剤、有機樹脂、ポリフェノール化合物をすべて含む下地処理層(β)を設けることで、下地金属板との密着性を最も高め、耐食性を最も高めることができる。
(シランカップリング剤)
前記下地塗膜層(β)に含まれ得るシランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、信越化学工業、日本ユニカー、チッソ、東芝シリコーン等から販売されているビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルエトキシシラン、N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカブトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。前記シランカップリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(下地処理層(β)の有機樹脂)
前記下地処理層(β)に含まれ得る有機樹脂は特に限定されず、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂等、公知の有機樹脂を使用することができる。下地金属板との密着性を更に高めるためには、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂の少なくとも1種を使用することが好ましく、前記着色塗膜(α)中に含まれる前記ポリエステル樹脂との相溶性を高め、密着性を高める意味では、前記下地処理層(β)にポリエステル樹脂を含有することが特に好ましい。
(ポリフェノール化合物)
前記下地処理層(β)に含まれ得るポリフェノール化合物はベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物、またはその縮合物のことを指す。前記ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物としては、例えば、没食子酸、ピロガロール、カテコール等を挙げることができる。ベンゼン環に結合したフェノール性水酸基を2以上有する化合物の縮合物としては特に限定されず、例えば、通常タンニン酸と呼ばれる植物界に広く分布するポリフェノール化合物等を挙げることができる。
(タンニン酸)
タンニン酸は、広く植物界に分布する多数のフェノール性水酸基を有する複雑な構造の芳香族化合物の総称である。前記タンニン酸は、加水分解性タンニン酸でも縮合型タンニン酸でもよい。前記タンニン酸としては特に限定されず、例えば、ハマメリタンニン、カキタンニン、チャタンニン、五倍子タンニン、没食子タンニン、ミロバランタンニン、ジビジビタンニン、アルガロビラタンニン、バロニアタンニン、カテキンタンニン等を挙げることができる。前記タンニン酸としては、市販のもの、例えば、「タンニン酸エキスA」、「Bタンニン酸」、「Nタンニン酸」、「工用タンニン酸」、「精製タンニン酸」、「Hiタンニン酸」、「Fタンニン酸」、「局タンニン酸」(いずれも大日本製薬株式会社製)、「タンニン酸:AL」(富士化学工業株式会社製)等を使用することもできる。
前記ポリフェノール化合物は1種で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。
(含有量)
前記下地処理層(β)に含まれるシランカップリング剤、有機樹脂、ポリフェノール化合物から選ばれる少なくとも1種の含有量は特に限定されないが、下地処理層100質量%中に10質量%以上含有することが好ましい。10質量%未満の場合、含有量が少なく密着性や耐食性の向上効果が得られない場合がある。
(付着量)
前記下地処理層(β)の付着量は特に限定されるものではないが、10〜1000mg/mの範囲にあることが好ましい。10mg/m以下では充分な下地処理層(β)の効果が得られず、1000mg/mを超えると下地処理層(β)が凝集破壊しやすくなり密着性が低下する場合がある。安定した効果と経済性から、より好ましい付着量範囲は50〜500mg/mである。
(形成方法)
前記下地処理層(β)の形成方法に特に制限はないが、下地処理層(β)を形成するためのコーティング剤を金属板の少なくとも片面に塗布し、加熱乾燥することで形成される。前記コーティング剤の塗布方法に特に制限はないが、公知のロールコート、スプレー塗布、バーコート、浸漬、静電塗布等を適宜使用することができる。焼付乾燥方法に特に制限はなく、あらかじめ金属板を加熱しておくか、塗布後に金属板を加熱するか、或いはこれらを組み合わせて乾燥を行ってもよい。加熱方法に特に制限はなく、熱風、誘導加熱、近赤外線、直火等を単独もしくは組み合わせて使用することができる。焼付乾燥温度については、到達温度で60℃〜150℃であることが好ましく、70℃〜130℃であることが更に好ましい。到達温度が60℃未満であると、乾燥が不充分で、基材との密着性や耐食性が低下する場合があり、150℃超であると、基材との密着性が低下する場合がある。
(金属板)
本発明において適用可能な金属板としては特に限定されるものではなく、例えば、鉄、鉄基合金、アルミニウム、アルミニウム基合金、銅、銅基合金等を挙げられ、任意に金属板上にめっきしためっき金属板を使用することもできる。中でも本発明の適用において最も好適なものは亜鉛系めっき鋼板、アルミニウム系めっき鋼板である。
亜鉛系めっき鋼板としては、亜鉛めっき鋼板、亜鉛−ニッケルめっき鋼板、亜鉛−鉄めっき鋼板、亜鉛−クロムめっき鋼板、亜鉛−アルミニウムめっき鋼板、亜鉛−チタンめっき鋼板、亜鉛−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−マンガンめっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウムめっき鋼板、亜鉛−アルミニウム−マグネシウム−シリコンめっき鋼板等の亜鉛系めっき鋼板、さらにはこれらのめっき層に少量の異種金属元素または不純物としてコバルト、モリブデン、タングステン、ニッケル、チタン、クロム、アルミニウム、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、ビスマス、アンチモン、錫、銅、カドミウム、ヒ素等を含有するもの、シリカ、アルミナ、チタニア等の無機物を分散させたものが含まれる。
アルミニウム系めっき鋼板としては、アルミニウムまたはアルミニウムとシリコン、亜鉛、マグネシウムの少なくとも1種とからなる合金、例えば、アルミニウム−シリコンめっき鋼板、アルミニウム−亜鉛めっき鋼板、アルミニウム−シリコン−マグネシウムめっき鋼板等が挙げられる。
更には以上のめっきと他の種類のめっき、例えば鉄めっき、鉄−りんめっき、ニッケルめっき、コバルトめっき等と組み合わせた複層めっきにも適用可能である。めっき方法は特に限定されるものではなく、公知の電気めっき法、溶融めっき法、蒸着めっき法、分散めっき法、真空めっき法等のいずれの方法でもよい。
以下、本発明の実施例について説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限り「質量部」を意味する。
(1)金属板 使用した金属板の種類を表1に示す。めっきを施した金属板の基材には、板厚0.5mmの軟鋼板を使用した。SUS板についてはフェライト系ステンレス鋼板(鋼成分:C;0.008質量%、Si;0.07質量%、Mn;0.15質量%、P;0.011質量%、S;0.009質量%、Al;0.067質量%、Cr;17.3質量%、Mo;1.51質量%、N;0.0051質量%、Ti;0.22質量%、残部Fe及び不可避的不純物)を使用した。金属板は表面をアルカリ脱脂処理、水洗乾燥して使用した。
Figure 2012116057
(2)下地処理層
下地処理層を形成するためのコーティング剤は、有機樹脂(表2)、シランカップリング剤(表3)、ポリフェノール化合物(表4)を表5に示す配合量で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調整した。上記(1)で準備した金属板の表面に該コーティング剤を100mg/mの付着量になるようにロールコーターで塗装し、到達板温度70℃の条件で乾燥させることで、必要に応じて下地処理層を形成させた。
Figure 2012116057
Figure 2012116057
Figure 2012116057
Figure 2012116057
(3)水溶性アクリル樹脂
着色顔料(b2)の分散剤として使用する水溶性アクリル樹脂の製造例を、下記製造例1〜3、及び表6に示す。
<水溶性アクリル樹脂製造例1>
反応容器にジプロピレングリコールメチルエーテル40.0部を加え、窒素気流中で混合攪拌しながら120℃ に昇温した。次いで、メタクリル酸8.5部、アクリル酸エチル54.5部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル14.5部、メタクリル酸メチル12.5部、スチレン10.0部からなるモノマー混合物、及びジプロピレングリコールメチルエーテル10.0部、ターシャルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート5部からなる開始剤溶液を3時間にわたり並行して反応容器に滴下した。
滴下終了後、0.5時間同温度で熟成を行った。更に、ジプロピレングリコールメチルエーテル5.0部及びタ1ーシャルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部からなる開始剤溶液を0.5時間にわたり反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。脱溶剤装置により、減圧下(9.3kPa(70torr))120℃ で溶剤を16.11部留去した後、脱イオン水194.24部及びジメチルアミノエタノール8.82部を加えて、不揮発分30.0%の、アミン化合物で中和されたカルボキシル基と水酸基を含有したアクリル樹脂の水溶液を得た。
<水溶性アクリル樹脂製造例2>
反応容器にジプロピレングリコールメチルエーテル40.0部を加え、窒素気流中で混合攪拌しながら120℃ に昇温した。次いで、メタクリル酸8.5部、アクリル酸エチル69.0部、メタクリル酸メチル12.5部、スチレン10.0部からなるモノマー混合物、及びジプロピレングリコールメチルエーテル10.0部、ターシャルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート5部からなる開始剤溶液を3時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、0.5時間同温度で熟成を行った。更に、ジプロピレングリコールメチルエーテル5.0部及びターシャルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部からなる開始剤溶液を0.5時間にわたり反応容器に滴下した。
滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。脱溶剤装置により、減圧下(9.3kPa(70torr))120℃ で溶剤を16.11部留去した後、脱イオン水194.24部及びジメチルアミノエタノール8.82部を加えて、不揮発分30.0%の、アミン化合物で中和されたカルボキシル基を含有したアクリル樹脂(水酸基非含有)の水溶液を得た。
<水溶性アクリル樹脂製造例3>
反応容器にジプロピレングリコールメチルエーテル40.0部を加え、窒素気流中で混合攪拌しながら120℃ に昇温した。次いで、メタクリル酸8.5部、アクリル酸エチル54.5部、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル14.5部、メタクリル酸メチル12.5部、スチレン10.0部からなるモノマー混合物、及びジプロピレングリコールメチルエーテル10.0部、ターシャルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノエート5部からなる開始剤溶液を3時間にわたり並行して反応容器に滴下した。
滴下終了後、0.5時間同温度で熟成を行った。更に、ジプロピレングリコールメチルエーテル5.0部及びターシャルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.3部からなる開始剤溶液を0.5時間にわたり反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。脱溶剤装置により、減圧下(9.3kPa(70torr))120℃ で溶剤を16.11部留去した後、脱イオン水194.24部及び水酸化ナトリウム2.38部を加えて、不揮発分30.0%の、水酸化ナトリウムで中和されたカルボキシル基と水酸基を含有したアクリル樹脂の水溶液を得た。
Figure 2012116057
(4)着色顔料 使用した着色顔料を表7に示す。
Figure 2012116057
(4)着色顔料の水分散体 表6に示すアクリル樹脂と表7に示す着色顔料をペイントコンディショナー中でガラスビーズ媒体を加えて、室温で1時間混合分散し、着色顔料の水分散体を得た。その内容(着色顔料の固形分100質量%に対するアクリル樹脂固形分の含有量も含む)及び、その他に使用した市販品とその内容を表8に示す。
Figure 2012116057
(5)着色塗膜
着色塗膜を形成するための水性着色組成物(X)は、有機樹脂(a)の水分散体(A)(下記製造例1〜5、表9)、硬化剤(D)(表10)、着色顔料(b2)の水分散体(B)(表8)、コロイダルシリカ粒子(c)の水分散体(C)(表11)、潤滑剤(F)(表12)を表13に示す配合量(固形分比で記載)で配合し、塗料用分散機を用いて攪拌することで調整した。
上記「項目(2)」で形成した下地処理層(下地処理層がない場合は金属板)の上層に、水性着色組成物(X)を所定の膜厚になるようにロールコーターで塗装し、所定の到達板焼付温度で加熱乾燥し、着色塗膜を形成させた。
<有機樹脂製造例1>
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸232部、アジピン酸199部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸33部、エチレングリコール312部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、更に213gのイオン交換水を投入し、水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%のポリエステル樹脂水分散体(J1)を得た。
<有機樹脂製造例2>
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸266部、アジピン酸199部、エチレングリコール312部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。窒素気流下、220℃まで冷却し、無水トリメリット酸を23部、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート16部を投入し、30分間反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、イソプロピルアルコール23部、トリエチルアミン3.5部を投入し、213部のイオン交換水で水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%のポリエステル樹脂水分散体(J2)を得た。
<有機樹脂製造例3>
攪拌機、コンデンサー、温度計を具備した反応容器にテレフタル酸199部、イソフタル酸232部、アジピン酸199部、5−ナトリウムスルホイソフタル酸33部、エチレングリコール250部、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール125部、1,5−ペンタンジオール187部、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物62部、テトラブチルチタネート0.41部を仕込み、160℃から230℃まで4時間かけてエステル化反応を行った。次いで系内を徐々に減圧していき、20分かけて5mmHgまで減圧し、さらに0.3mmHg以下の真空下、260℃にて40分間重縮合反応を行った。得られた共重合ポリエステル樹脂100部に、ブチルセロソルブ20部、メチルエチルケトン42部を投入した後、80℃で2時間攪拌溶解を行い、更に213gのイオン交換水を投入し、水分散を行った。その後、加熱しながら溶剤を留去、200メッシュのナイロンメッシュでろ過し、固形分濃度30%のポリエステル樹脂水分散体(J3)を得た。
<有機樹脂製造例4>
末端にヒドロキシル基を有するアジピン酸と1,4−ブチレングリコールから合成された平均分子量900のポリエステルポリオール230部、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸15部をN−メチル2−ピロリドン100部に加え、80℃に加温して溶解させた。その後、ヘキサメチレンジイソシアネート100部を加え、110℃に加温して2時間反応させ、トリエチルアミンを11部加えて中和した。この溶液をエチレンジアミン5部とイオン交換水570部とを混合した水溶液に強攪拌下において滴下して、固形分濃度30%のポリウレタン樹脂水分散体(J4)を得た。
<有機樹脂製造例5>
末端にヒドロキシル基を有するアジピン酸と1,4−ブチレングリコールから合成された平均分子量900のポリエステルポリオール80部、平均分子量700のビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物120部、および2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸12部をN−メチル2−ピロリドン100部に加え、80℃に加温して溶解させた。その後、ヘキサメチレンジイソシアネート100部を加え、110℃に加温して2時間反応させ、トリエチルアミンを11部加えて中和した。この溶液をエチレンジアミン5部とイオン交換水570部とを混合した水溶液に強攪拌下において滴下して、固形分濃度30%のポリウレタン樹脂水分散体(J5)を得た。
<有機樹脂製造例6> 反応容器にメタクリル酸含有量20質量%で共重合させたポリオレフィン樹脂(エチレン−メタクリル酸共重合体)100g、水酸化ナトリウム5.6g、水500gを加え、95℃で2時間撹拌することで、ポリオレフィン樹脂水分散体(J6)を得た。
Figure 2012116057
Figure 2012116057
Figure 2012116057
Figure 2012116057
(6)着色塗装金属板
上記(5)で作成した着色塗装金属板の塗膜構成及び着色塗膜の膜厚、到達板焼付温度を表13〜16に示す。また、着色顔料(B)にカーボンブラックを使用する場合、塗膜中に分散されているカーボンブラックの粒子径も表13に示す。着色塗膜中に分散されているカーボンブラックの粒子径は、FIB(集束イオンビーム)装置を用いて、上記(1)〜(3)で作成した塗装金属板から塗膜の垂直断面が見えるように厚さ50〜100nmの観察用試料を切り出し、塗膜の任意の10箇所の幅20μmに入る断面をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、各々任意に20箇所の粒子径を測定し、その平均値から求めた。カーボンブラック含有量(Y質量%)と着色塗膜の膜厚(Zμm)からもとめられるY×Zの値も表13に示す。
Figure 2012116057
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Figure 2012116057
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(7)評価試験 上記(6)で得られた黒色塗装金属板(試験板)について、平板部の意匠性、耐湿性、耐食性、加工性(加工部の意匠性、加工密着性)、耐傷付き性、耐薬品性を下記に示す評価方法及び評価基準にて評価した。その評価結果を表17〜20に示す。
(平板部の意匠性)
試験板の外観を下記の評価基準で評価した。
5:着色、表面艶ともに均一である。下地も全く透けて見えない。
4:着色は均一であるが、表面艶がやや不均一である(目を凝らして見て何とか確認できるレベル)。下地は全く透けて見えない。
3:着色、表面艶ともにやや不均一である(目を凝らして見て何とか確認できるレベル)。下地は全く透けて見えない。
2:着色、表面艶ともに不均一である(容易に確認できるレベル)。下地は全く透けて見えない。
1:着色、表面艶ともに不均一である(容易に確認できるレベル)。下地がやや透けて見える。
(耐湿性)
試験板を温度40℃、湿度90%の条件下に500時間静置した後の外観を下記の評価基準で評価した。
5:外観に変化は全く認められない。
4:表面の艶が極僅かに低下した(試験前の試験板を横に並べて何とか分かるレベル)。
3:表面の艶が僅かに低下した(試験前の試験板を横に並べると容易に分かるレベル)。
2:表面の艶が低下した(試験板のみ見て何とか分かるレベル)。
1:表面の艶が著しく低下した(試験板のみ見て容易に分かるレベル)。
(耐食性)
試験板の端面をテープシールした後、JIS Z2371に準拠した塩水噴霧試験(SST)を72時間行い、錆発生状況を観察し、下記の評価基準で評価した。
5:錆発生なし。
4:錆発生面積が1%未満。
3:錆発生面積が1%以上、3%未満。
2:錆発生面積が3%以上、5%未満。
1:錆発生面積が5%以上。
(加工性(加工部の意匠性))
試験板に180°折り曲げ加工を施し、折り曲げ部外側の外観を下記の評価基準で評価した。折り曲げ加工は20℃雰囲気中で、0.5mmのスペーサーを間に挟んで実施した(一般に1T曲げと呼ばれる)。
5:塗膜に亀裂等の不具合がなく、均一な着色外観である。色落ちも認められない。
4:塗膜に極僅かの亀裂が認められため、やや色落ちが認められるが、ほぼ均一な着色外観である。(試験前の試験板を横に並べて何とか分かるレベル)。
3:塗膜に僅かの亀裂が認められため、やや色落ちが認められるが、ほぼ均一な着色外観である。(試験前の試験板を横に並べると容易に分かるレベル)。
2:塗膜に亀裂が認められ、色落ちが認められる(試験板のみ見て何とか分かるレベル)。
1:塗膜に亀裂が認められ、色落ちが著しい(試験板のみ見て容易に分かるレベル)。
(加工性(加工密着性))
試験板に180°折り曲げ加工を施した後、折り曲げ加工部外側のテープ剥離試験を実施した。テープ剥離部の外観を下記の評価基準で評価した。なお、折り曲げ加工は20℃雰囲気中で、0.5mmのスペーサーを間に挟んで実施した(一般に1T曲げと呼ばれる)。
5:塗膜に剥離は認められない。
4:極一部の塗膜に剥離が認められる(ルーペで観察して何とか分かる程度)。
3:一部の塗膜に剥離が認められる(ルーペで観察して分かる程度)。
2:部分的な塗膜に剥離が認められる(目視で容易に分かる程度)。
1:ほとんどの塗膜に剥離が認められる(目視で容易に分かる程度)。
(耐傷付き性)
試験板に45°の角度で鉛筆芯で5回線を引き、2回以上傷が入らない鉛筆硬度で評価した。鉛筆は三菱鉛筆社製のユニ鉛筆を使用し、20℃、4.903N(500gf)の荷重条件にて試験し、下記の評価基準で評価した。
5:鉛筆硬度が3H以上
4:鉛筆硬度が2H
3:鉛筆硬度がH
2:鉛筆硬度がF
1:鉛筆硬度がHB以下
(耐薬品性)
試験板をラビングテスターに設置後、エタノールを含浸させた脱脂綿を49.03kPa(0.5kgf/cm2)の荷重で10往復擦った後の皮膜状態を下記の評価基準で評価した。
5:擦り面に全く跡が付かない。
4:擦り面に極僅かに跡が付く(目を凝らして何とか擦り跡が判別できるレベル)。
3:擦り面に僅かに跡が付く(目を凝らすと容易に擦り跡が判別できるレベル)。
2:擦り面に明確な跡が付く(瞬時に擦り跡が判別できるレベル)。
1:擦り面で塗膜が溶解し、下地が露出する。
Figure 2012116057
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本発明の実施例はいずれの評価試験においても評点3点以上の優れた平面部意匠性、耐湿性、耐食性、加工性、耐傷付き性、耐薬品性を示した。なお、本発明の実施例に用いた黒色塗料を40℃で1ヶ月静置し貯蔵安定性を調査したところ、実施例5、実施例23で用いた水性着色組成物がゲル化していた。すなわち、スルホン酸基を含有しないポリエステル樹脂J2を使用したものは他の着色塗料に比べ貯蔵安定性がやや不安定である。
一方、本発明の範囲を外れた比較例である、コロイダルシリカ粒子を含有しない比較例1〜3は耐食性、加工密着性、耐傷付き性が劣っていた。有機樹脂にアニオン性官能基ではなく、カチオン性官能基を含有するポリウレタン樹脂を使用した比較例4は平面部意匠性、加工部意匠性、耐食性、耐薬品性が劣っていた。水溶性アクリル樹脂を分散剤として使用せず、カーボンブラックを予め分散剤で分散しないで使用した比較例5は平面部意匠性、加工部意匠性が劣っていた。水溶性アクリル樹脂を分散剤として使用せず、親水化処理カーボンブラックを予め分散剤で分散しないで使用した比較例6は耐食性、加工部意匠性、耐薬品性が劣っていた。水溶性アクリル樹脂を分散剤として使用せず、アニオン性界面活性剤を使用して予め分散したカーボンブラックの水分散体を使用した比較例7は耐湿性、耐食性が劣っていた。水溶性アクリル樹脂を分散剤として使用せず、ノニオン性界面活性剤を使用して予め分散したカーボンブラックの水分散体を使用した比較例7は耐湿性、耐食性、加工密着性、耐薬品性が劣っていた。また、なお、本発明の比較例に用いた黒色塗料を40℃で1ヶ月静置し貯蔵安定性を調査したところ、比較例4〜6で用いた水性着色組成物がゲル化していた。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想定し得ることは明らかであり、それらについても当然に発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (15)

  1. アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)の水分散体(A)と、 分散剤として水溶性アクリル樹脂(b1)を用いて分散された着色顔料(b2)の水分散体(B)と、 コロイダルシリカ粒子(c)の水分散体(C)とを含有する水性着色組成物(X)を、金属板の少なくとも片面に塗布し、加熱乾燥することで形成された着色塗膜(α)を有することを特徴とする、クロメートフリー着色塗装金属板。
  2. 前記水性着色組成物(X)が硬化剤(D)を更に含有することを特徴とする、請求項1に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  3. 前記着色顔料(b2)がカーボンブラック(k)を含有し、且つ、前記着色塗膜(α)の膜厚が2〜10μmであることを特徴とする、請求項1または2に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  4. 前記カーボンブラック(k)の前記着色塗膜(α)中の含有量をY質量%、前記着色塗膜(α)の厚みをZμmとしたとき、Y×Z≧20、且つ、Y≦15を満足することを特徴とする、請求項3に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  5. 前記水分散体(B)における前記水溶性アクリル樹脂(b1)固形分の含有量が、前記カーボンブラック(k)の固形分100質量%に対して5〜30質量%であることを特徴とする、請求項3または4に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  6. 前記カーボンブラック(k)が前記着色塗膜(α)中に数平均粒子径20〜300nmの粒子で分散されていることを特徴とする、請求項3〜5のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  7. 前記水溶性アクリル樹脂(b1)が構造中に水酸基を含有することを特徴とする、請求項2〜6のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  8. 前記水溶性アクリル樹脂(b1)が構造中にアミン化合物で中和されたカルボキシル基を含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  9. 前記コロイダルシリカ粒子(c)がアミン化合物で安定化されていることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  10. 前記アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)が構造中にエステル基、ウレタン基、ウレア基から選ばれる少なくとも1種の官能基を含有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  11. 前記アニオン性官能基の少なくとも一部がスルホン酸金属塩基であることを特徴とする、請求項10に記載のクロメートフリー塗装金属板。
  12. 前記アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)が構造中にビスフェノール構造を更に含有することを特徴とする、請求項10または11に記載のクロメートフリー塗装金属板。
  13. 前記水性着色組成物(X)が潤滑剤(E)を更に含有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  14. 前記着色塗膜(α)の下層に下地処理層(β)を有することを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載のクロメートフリー着色塗装金属板。
  15. アニオン性官能基を含有する有機樹脂(a)の水分散体(A)と、 分散剤として水溶性アクリル樹脂(b1)を用いて分散された着色顔料(b2)の水分散体(B)と、 コロイダルシリカ粒子(c)の水分散体(C)とを含有することを特徴とする、水性着色組成物(X)。
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