本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る駆動装置1の概略構成を示す模式図である。駆動装置1は、車両の駆動力源として内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方を用いるハイブリッド車両用の駆動装置(ハイブリッド駆動装置)である。この駆動装置1は、いわゆる1モータパラレル方式のハイブリッド車両用の駆動装置として構成されている。以下、本実施形態に係る駆動装置1について、詳細に説明する。
1.駆動装置の全体構成
まず、本実施形態に係る駆動装置1の全体構成について説明する。図1に示すように、この駆動装置1は、車両の第一の駆動力源としての内燃機関Eに駆動連結される入力軸Iと、車輪Wに駆動連結される出力軸Oと、車両の第二の駆動力源としての回転電機MGと、トルクコンバータTCと、を備えている。また、駆動装置1は、入力クラッチC1と、変速機構TMと、を備えている。これらは、動力伝達経路上で、内燃機関Eの側から、入力軸I、入力クラッチC1、回転電機MG、トルクコンバータTC、変速機構TM、及び出力軸Oの順に配置されている。また、これらの各構成は、入力軸Iの一部と出力軸Oの一部とを除き、ケース(駆動装置ケース)3内に収容されている。本実施形態においては、入力軸Iが本発明における「入力部材」に相当し、出力軸Oが本発明における「出力部材」に相当する。
なお、本実施形態では、入力軸I、回転電機MG、トルクコンバータTC、及び出力軸Oはいずれも軸心X(図2を参照)上に配置されており、本実施形態に係る駆動装置1は、FR(Front Engine Rear Drive)方式の車両に搭載される場合に適した一軸構成とされている。また、以下の説明においては、特に明記して区別している場合を除き、軸心Xを基準として「軸方向」、「径方向」及び「周方向」の各方向を規定している。更に、駆動装置1内の特定の部位に注目した場合における軸方向に沿った方向性に関して、軸方向一方側である内燃機関E側(図2における左側)に向かう方向を「軸第一方向A1」とし、軸方向他方側である出力軸O側(図2における右側)に向かう方向を「軸第二方向A2」としている。
内燃機関Eは、機関内部における燃料の燃焼により駆動されて動力を取り出す装置であり、例えば、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の公知の各種エンジンを用いることができる。本例では、内燃機関Eのクランクシャフト等の出力回転軸が第一ダンパ16(図2を参照)を介して入力軸Iに駆動連結されている。また、入力軸Iは入力クラッチC1を介して回転電機MGに駆動連結されており、入力軸Iは入力クラッチC1により選択的に回転電機MGに駆動連結される。この入力クラッチC1の係合状態では、入力軸Iを介して内燃機関Eと回転電機MGとが駆動連結され、入力クラッチC1の解放状態では内燃機関Eと回転電機MGとが分離される。本実施形態においては、入力クラッチC1が本発明における「係合装置」に相当する。
回転電機MGは、ステータStとロータRoとを有して構成され、電力の供給を受けて動力を発生するモータ(電動機)としての機能と、動力の供給を受けて電力を発生するジェネレータ(発電機)としての機能と、を果たすことが可能とされている。そのため、回転電機MGは、蓄電装置(図示せず)と電気的に接続されている。本例では、蓄電装置としてバッテリが用いられている。なお、蓄電装置としてキャパシタ等を用いても好適である。回転電機MGは、バッテリから電力の供給を受けて力行し、或いは、内燃機関Eが出力するトルク(ここでは、「駆動力」と同義で用いている)や車両の慣性力により発電した電力をバッテリに供給して蓄電させる。回転電機MGのロータRoは、動力伝達部材Tを介してトルクコンバータTCのポンプインペラ41に駆動連結されている。
トルクコンバータTCは、内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを変換して中間軸Mに伝達する装置である。トルクコンバータTCは、動力伝達部材Tを介して回転電機MGのロータRoに駆動連結されたポンプインペラ41と、中間軸Mと一体回転するように駆動連結されたタービンランナ51と、これらの間に設けられたステータ56(図2を参照)と、を備えている。トルクコンバータTCは、その内部に充填された油を介して、ポンプインペラ41とタービンランナ51との間でトルクの伝達を行うことが可能である。その際、ポンプインペラ41とタービンランナ51との間に回転速度差が生じている場合には、回転速度比に応じてトルク変換されたトルクが伝達される。本実施形態においては、トルクコンバータTCが「流体継手」に相当する。
また、トルクコンバータTCは、ロックアップクラッチC2を備えている。ロックアップクラッチC2は、ポンプインペラ41とタービンランナ51とを選択的に駆動連結する。このロックアップクラッチC2の係合状態では、トルクコンバータTCは、内部の油を介さずに内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを、そのまま中間軸Mに伝達する。この中間軸Mは、トルクコンバータTCの出力軸(継手出力軸)であると共に変速機構TMの入力軸(変速入力軸)となっている。本実施形態においては、中間軸Mが本発明における「中間出力部材」に相当する。
変速機構TMは、中間軸Mの回転速度を所定の変速比で変速して出力軸Oへ伝達する装置である。このような変速機構TMとして、本実施形態では、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた自動有段変速機構が用いられている。なお、変速機構TMとして、変速比を無段階に変更可能な自動無段変速機構、変速比の異なる複数の変速段を切替可能に備えた手動式有段変速機構等を用いても良い。変速機構TMは、各時点における所定の変速比で、中間軸Mの回転速度を変速すると共にトルクを変換して出力軸Oへ伝達する。出力軸Oへ伝達された回転及びトルクは、出力用差動歯車装置DFを介して左右2つの車輪Wに分配されて伝達される。これにより、駆動装置1は、内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方のトルクを車輪Wに伝達させて車両を走行させることができる。
2.駆動装置の各部の構成
次に、本実施形態に係る駆動装置1の各部の構成について、図2〜図4を参照して説明する。なお、図3は図2の断面図の部分拡大図であり、図4は図3とは周方向の異なる位置における断面図である。
2−1.ケース
図2に示すように、ケース3は、概略円筒状に形成されている。本実施形態では、ケース3は、概略円筒状であって回転電機MGや入力クラッチC1、トルクコンバータTC等の径方向外側を覆う周壁4と、回転電機MG及び入力クラッチC1の軸第一方向A1側を覆う端部支持壁5と、トルクコンバータTCの軸第二方向A2側を覆う中間支持壁6と、を備えている。そして、ケース3内における端部支持壁5と中間支持壁6との間の空間に、回転電機MG、入力クラッチC1、及びトルクコンバータTCが収容されている。また、図示は省略しているが、中間支持壁6よりも軸第二方向A2側の空間に、変速機構TMが収容されている。なお、端部支持壁5よりも軸第一方向A1側の、ケース3の外部空間には、第一ダンパ16が配置されている。
端部支持壁5は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、ここでは径方向及び周方向に延びる略円板状の壁部とされている。本実施形態においては、端部支持壁5が本発明における「支持壁」に相当する。この端部支持壁5の径方向中心部には、筒状突出部11が設けられている。筒状突出部11は、軸心Xに対して同軸状に配置され、端部支持壁5から軸第二方向A2側に向かって突出するように形成された円筒状の突出部である。筒状突出部11は、端部支持壁5と一体的に形成されている。筒状突出部11は、ある程度の軸方向長さを有している。図示の例では、筒状突出部11は、ロータRoの軸方向長さよりも長い軸方向長さを有している。この筒状突出部11の径方向中心部には、軸方向に貫通する軸心貫通孔11a(図3等を参照)が形成されている。そして、この軸心貫通孔11aに入力軸Iが挿通されている。これにより、入力軸Iは、筒状突出部11の径方向内側を貫通するように配置され、端部支持壁5を貫通してケース3内に挿入されている。
図3等に示すように、本実施形態では、筒状突出部11の外周面の軸方向の所定位置に、第一段差部11bが設けられている。筒状突出部11の外周面は、第一段差部11bを境界として、当該第一段差部11bよりも軸第一方向A1側が大径部とされ、第一段差部11bよりも軸第二方向A2側が小径部とされている。そして、その小径部の外周面に接するように第一軸受71が配置されている。第一軸受71としては、径方向荷重を受けることが可能な軸受が用いられ、本例ではボールベアリングが用いられている。本実施形態においては、第一軸受71が本発明における「支持軸受」に相当する。なお、第一段差部11bは、後述する支持円筒状部25の内周段差部25bよりも僅かに軸第一方向A1側となる軸方向位置に形成されている。
筒状突出部11の外周面のうち、第一段差部11bよりも軸第二方向A2側の所定位置に、第二段差部11cが設けられている。筒状突出部11の外周面は、第二段差部11cを境界として、当該第二段差部11cよりも軸第二方向A2側が更に小径に形成されている。このように小径部よりも更に小径に形成された筒状突出部11の軸第二方向A2側の端部には、その外周面に接してスリーブ86が嵌合されている。スリーブ86の外径は、筒状突出部11の小径部の外径に一致している。
本実施形態では、筒状突出部11には、複数の油路が形成されている。具体的には、図3及び図4に示すように、第一油路L1、第二油路L2、第三油路L3、及び第四油路L4、の4つの油路が筒状突出部11に形成されている。第一油路L1は、入力クラッチC1の後述する作動油圧室H1に連通し、当該作動油圧室H1に油を供給するための油供給路である(図4を参照)。第二油路L2は、入力クラッチC1の後述する循環油圧室H2に連通し、当該循環油圧室H2に油を供給するための油供給路である(図3を参照)。第三油路L3は、循環油圧室H2から排出される油をオイルパン(図示せず)へ戻すための油排出路である(図3を参照)。第四油路L4は、後述する軸受配置空間Pから排出される油をオイルパン(図示せず)へ戻すための油排出路である(図4を参照)。これらの油路の詳細については、後述する。
中間支持壁6は、少なくとも径方向に延びる形状を有し、ここでは径方向及び周方向に延びる平坦な円板状の壁部とされている。本実施形態では、中間支持壁6は、端部支持壁5とは別部材として構成されている。また、中間支持壁6は、周壁4とも別部材として構成されており、ボルト等の締結部材により周壁4の内周面に形成された段差部に締結固定されている。この中間支持壁6には、オイルポンプ9が設けられている。ここでは、中間支持壁6の軸第一方向A1側の面にポンプカバー7が取り付けられており、中間支持壁6とポンプカバー7との間に形成されたポンプ室にポンプロータが収容されている。本実施形態においては、中間支持壁6とポンプカバー7とにより、本発明における「第二支持壁」が構成されている。中間支持壁6及びポンプカバー7の径方向中心部には、軸方向に貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔に中間軸Mが挿通されている。また、この貫通孔には、固定軸58及びポンプ駆動軸47も挿通されている。固定軸58は、中間支持壁6に固定されてトルクコンバータTCのステータ56を支持する円筒状の軸部であって、軸心Xに対して同軸状に、中間軸Mの径方向外側に配置されている。ポンプ駆動軸47は、トルクコンバータTCのポンプインペラ41と一体回転する円筒状の軸部であって、軸心Xに対して同軸状に、固定軸58の径方向外側に配置されている。
本実施形態においては、オイルポンプ9は、ポンプロータとしてインナロータとアウタロータとを有する内接型のギヤポンプとされている。オイルポンプ9のポンプロータは、ポンプ駆動軸47を介してポンプインペラ41と一体回転するように駆動連結されている。よって、ポンプインペラ41の回転に伴い、オイルポンプ9はオイルを吐出し、駆動装置1の各部に油を供給するための油圧を発生させる。中間支持壁6及びポンプカバー7には、オイルポンプ9の吸入油路及び吐出油路が形成されている。また、図2等に一部が示されているように、駆動装置1のケース3(端部支持壁5及び筒状突出部11を含む)や各軸の内部には、このような油の供給のための油路が設けられている。
2−2.回転電機
図2に示すように、回転電機MGは、端部支持壁5よりも軸第二方向A2側であってトルクコンバータTCよりも軸第一方向A1側に配置されている。また、回転電機MGは、入力軸I及び入力クラッチC1に対して径方向外側に配置されている。回転電機MGと入力クラッチC1とは、径方向に見て重複する部分を有する位置に配置されている。なお、2つの部材の配置に関して、「ある方向に見て重複する部分を有する」とは、当該方向を視線方向として当該視線方向に直交する各方向に視点を移動させた場合に、2つの部材が重なって見える視点が少なくとも一部の領域に存在することを意味する。回転電機MGのステータStは、ケース3に固定されている。ステータStの径方向内側に、ロータRoが配置されている。ロータRoは、ステータStに対して径方向に微小隙間を空けて対向配置されると共に、回転可能な状態でケース3に支持されている。具体的には、ロータRoを支持して当該ロータRoと一体的に回転するロータ支持部材22が、第一軸受71を介してケース3の筒状突出部11に対して回転可能に支持されている。本実施形態においては、ロータRoが本発明における「ロータ本体」に相当する。また、本実施形態においては、一体回転するロータRo及びロータ支持部材22により本発明における「ロータ部材」が構成されている。
図2〜図4に示すように、ロータ支持部材22は、回転電機MGのロータRoを径方向内側から支持する部材である。ロータ支持部材22は、入力クラッチC1に対して軸第一方向A1側に配置されている。ロータ支持部材22は、ロータRoの径方向内側に配置された第一軸受71に対してロータRoを支持するべく、少なくとも径方向に延びる形状に形成されている。本実施形態では、ロータ支持部材22は、ロータ保持部23、径方向延在部24、及び支持円筒状部25、を備えている。
ロータ保持部23は、ロータRoを保持する部分である。ロータ保持部23は、軸心Xに対して同軸状に配置され、ロータRoの内周面及び軸方向両側面に接する円環状に形成されている。径方向延在部24は、ロータ保持部23と一体的に形成され、ロータ保持部23の軸方向の中央部近傍から径方向内側に延びるように形成されている。本例では、径方向延在部24は径方向及び周方向に延びる円環板状部とされている。本例では、径方向延在部24は、径方向及び周方向の位置によらず、ほぼ均一な厚さの平坦な板状とされている。また、径方向延在部24の周方向の複数箇所には、第一ボルト挿通孔24aが設けられている。第一ボルト挿通孔24aには、ロータ支持部材22と筒状連結部材32との締結を行うための第一ボルト91が挿通される。そして、本実施形態では、径方向延在部24の径方向内側端部に、支持円筒状部25が一体的に設けられている。
支持円筒状部25は、軸心Xに対して同軸状に配置され、径方向延在部24に対して軸方向両側に延在するように形成された円筒状部である。本実施形態では、支持円筒状部25の内周面に第一軸受71が配置され、当該支持円筒状部25の内周面と筒状突出部11の外周面との間に配置された第一軸受71によりロータ支持部材22が支持される。これにより、ロータ支持部材22は、第一軸受71を介して回転可能な状態で筒状突出部11の外周面に支持される。
支持円筒状部25の内周面の軸方向の所定位置に、内周段差部25bが設けられている。支持円筒状部25の内周面は、内周段差部25bを境界として、当該内周段差部25bよりも軸第一方向A1側が内周小径部とされ、内周段差部25bよりも軸第二方向A2側が内周大径部とされている。そして、その内周大径部の内周面と内周段差部25bの軸第二方向A2側の側面に接するように第一軸受71が配置されている。なお、本実施形態では、内周段差部25bは、径方向延在部24よりも軸第一方向A1側に形成されている。そして、第一軸受71は、径方向に見て径方向延在部24と重複する部分を有する位置に配置されている。
支持円筒状部25の外周面の、径方向延在部24に対して軸第一方向A1側の所定位置に、外周段差部25cが設けられている。支持円筒状部25の外周面は、外周段差部25cを境界として、当該外周段差部25cよりも軸第一方向A1側が外周小径部、外周段差部25cよりも軸第二方向A2側が外周大径部とされている。なお、外周段差部25cは内周段差部25bよりも軸第一方向A1側に設けられている。支持円筒状部25は、外周大径部において径方向延在部24と一体的に形成されている。また、外周小径部の外周面と外周段差部25cの軸第一方向A1側の側面に接するように、回転センサ13のセンサロータ13bが取り付けられている。センサロータ13bの径方向外側には、当該センサロータ13bに対して径方向に微小隙間を空けてセンサステータ13aが対向配置されている。センサステータ13aは、端部支持壁5に形成された所定のセンサステータ取付部に固定されている。なお、回転センサ13は、回転電機MGのステータStに対するロータRoの回転位置を検出するためのセンサであり、本例ではレゾルバが用いられている。
本実施形態においては、支持円筒状部25のうち、径方向延在部24に対して軸第二方向A2側の筒状部分が、嵌合突出部25aとされている。すなわち、ロータ支持部材22は、径方向延在部24から軸第二方向A2側に向かって突出する筒状の嵌合突出部25aを有している。嵌合突出部25aは、少なくとも必要な嵌合長さ分以上の長さで軸方向に延在している。この嵌合突出部25aには、後述するように筒状連結部材32の筒状延在部32dが径方向に当接しつつ嵌合される。
また、本実施形態においては、第一軸受71に対して軸第一方向A1側において、ロータ支持部材22と筒状突出部11との間に第一シール部材81が配置されている。ここでは、支持円筒状部25の内周小径部と筒状突出部11の大径部との間に第一シール部材81が配置されている。この第一シール部材81により、支持円筒状部25と筒状突出部11との間が密閉され、第一軸受71の潤滑等を行った後の油が回転センサ13や回転電機MGのステータSt等に到達することが抑制されている。なお、筒状突出部11の外周面、支持円筒状部25、及び第一シール部材81により区画される空間に第一軸受71が配置されており、本実施形態では、この空間を「軸受配置空間P」としている。
2−3.入力クラッチ
入力クラッチC1は、入力軸Iと回転電機MG及びトルクコンバータTCとの間を選択的に駆動連結する摩擦係合装置である。入力クラッチC1は、湿式多板クラッチ機構として構成されている。また、図2に示すように、入力クラッチC1は、軸方向でロータ支持部材22とトルクコンバータTCとの間に配置されている。すなわち、入力クラッチC1は、ロータ支持部材22よりも軸第二方向A2側であってトルクコンバータTCよりも軸第一方向A1側に配置されている。入力クラッチC1は、トルクコンバータTCと軸方向に隣接して配置されている。また、入力クラッチC1は、径方向で筒状突出部11と回転電機MGのロータRoとの間に配置されている。すなわち、入力クラッチC1は、筒状突出部11よりも径方向外側であってロータRoよりも径方向内側に配置されている。筒状突出部11、入力クラッチC1、及びロータRoは、径方向に見て互いに重複する部分を有するように配置されている。入力クラッチC1は、クラッチハブ31、筒状連結部材32、摩擦部材33、ピストン34、及び作動油圧室H1を備えている。
入力クラッチC1は、摩擦部材33として、対となる入力側摩擦部材と出力側摩擦部材とを有する。ここで、入力クラッチC1は、複数(本例では2枚)の入力側摩擦部材と複数(本例では2枚)の出力側摩擦部材とを有し、これらは軸方向に交互に配置されている。複数の摩擦部材33は、いずれも円環板状に形成されている。
クラッチハブ31は、複数の入力側摩擦部材(本例では、ハブ側摩擦部材)を径方向内側から支持するように径方向に延びる円環板状部材である。クラッチハブ31は、軸方向でピストン34とトルクコンバータTCの後述するカバー部42との間を通って径方向に延びるように形成されており、当該クラッチハブ31の径方向内側端部が入力軸Iに連結されている。ここで、入力軸Iは、軸方向で筒状突出部11とカバー部42との間を通って径方向外側に向かって延びるフランジ部Iaを有する。そして、フランジ部Iaの径方向外側端部とクラッチハブ31の径方向内側端部とが、溶接等により接合されて連結されている。これにより、入力軸Iとクラッチハブ31とが一体回転するように連結され、これらの入力軸Iとクラッチハブ31とにより「入力伝達部材」が構成されている。なお、クラッチハブ31は、入力軸Iを介して内燃機関Eの回転及びトルクが伝達される部材であり、入力クラッチC1の入力側回転部材である。本実施形態においては、クラッチハブ31が本発明における「係合入力側部材」に相当する。
筒状連結部材32は、複数の摩擦部材33の少なくとも径方向外側を覆うと共に、出力側摩擦部材(本例では、ドラム側摩擦部材)を径方向外側から支持するように形成された略円筒状部材である。筒状連結部材32は、入力クラッチC1のクラッチドラムとして機能するように構成されている。また、筒状連結部材32は、ピストン34の軸第一方向A1側と、ピストン34の径方向外側と、を更に覆うように全体として碗状に形成された部分を有する。本実施形態では、筒状連結部材32は、ロータ支持部材22やトルクコンバータTCのカバー部42とは独立した別部材として構成されている。そして、筒状連結部材32は、ロータ支持部材22に連結されると共にカバー部42に連結されている。筒状連結部材32は、クラッチハブ31と対をなし、入力クラッチC1の係合状態でクラッチハブ31に入力される回転及びトルクを出力軸O側となるトルクコンバータTCに伝達する、入力クラッチC1の出力側回転部材である。本実施形態においては、筒状連結部材32が本発明における「係合出力側部材」に相当する。
図3及び図4に示すように、クラッチドラムとしての筒状連結部材32は、軸方向延在部32a、径方向延在部32b、筒状延在部32d、筒状突出部32e、及び径方向延出部32fを備えている。軸方向延在部32aは、軸心Xに対して同軸状に配置され、軸方向の所定範囲に亘って延出するように円筒状に形成されている。軸方向延在部32aは、少なくとも軸第一方向A1側ではロータ支持部材22の径方向延在部24に接すると共に軸第二方向A2側ではトルクコンバータTCのカバー部42に接するように、軸方向に沿って形成されている。この軸方向延在部32aには、後述するようにカバー部42が径方向に当接しつつ嵌合される。また、軸方向延在部32aは、ロータ支持部材22のロータ保持部23に対して、径方向に所定間隔を空けて対向配置されている。
径方向延出部32fは、軸方向延在部32aと一体的に形成され、当該軸方向延在部32aの軸第二方向A2側の端部から径方向外側へ延出するように円環板状に形成されている。径方向延出部32fの周方向の複数箇所には、第二ボルト挿通孔32gが設けられている。第二ボルト挿通孔32gには、カバー部42と筒状連結部材32との締結を行うための第二ボルト92が挿通される。径方向延出部32fは、ステータStの軸第二方向A2側のコイルエンド部Ceの径方向内側に、径方向に見て当該コイルエンド部Ceと重複する部分を有する位置に配置されている。また、径方向延出部32fは、ロータRoの軸第二方向A2側に、軸方向に見てロータRoと重複する部分を有する位置に配置されている。
径方向延在部32bは、軸方向延在部32aと一体的に形成され、当該軸方向延在部32aの軸第一方向A1側の端部から径方向内側に向かって延びるように略円環板状に形成されている。軸方向延在部32aと径方向延在部32bとの間の連結部位は、軸方向及び径方向に所定厚さを有する肉厚部とされており、この肉厚部が、筒状連結部材32とロータ支持部材22とを取り付けるための取付部32cとなっている。取付部32cの周方向の複数箇所には、第一ボルト91が締結される第一ボルト孔が設けられている。また、径方向延在部32bは、取付部32cよりも径方向内側に、当該径方向延在部32bと一体的に構成されて軸方向に延在する筒状延在部32dを有する。すなわち、径方向延在部32bは、筒状延在部32dよりも径方向内側部位が径方向外側部位に対して軸第二方向A2側にオフセットされた形状となるように形成されている。この筒状延在部32dは、ロータ支持部材22の嵌合突出部25aに対して径方向に当接しつつ嵌合する。
筒状突出部32eは、径方向延在部32bと一体的に形成され、当該径方向延在部32bの径方向内側端部から少なくとも軸第二方向A2側に向かって突出するように円筒状に形成されている。本例では、筒状突出部32eは径方向延在部32bに対して軸方向両側に延在している。筒状突出部32eは、摩擦部材33の径方向内側に、径方向に見て摩擦部材33と重複する部分を有する位置に配置されている。また、筒状突出部32eは、ケース3の筒状突出部11の軸第二方向A2側の端部の径方向外側に、当該筒状突出部11に対して所定間隔を空けた状態で径方向に対向して配置されている。そして、筒状突出部32eとケース3の筒状突出部11との間には、スリーブ86が配置されている。すなわち、筒状突出部32eの内周面とケース3の筒状突出部11の外周面とに接するように、スリーブ86が配置されている。なお、本実施形態では、筒状突出部11を含むケース3がアルミ製、筒状突出部32eを含む筒状連結部材32が鉄製とされている。そのため、ケース3の筒状突出部11と筒状連結部材32の筒状突出部32eと間の相対回転による筒状突出部11の磨耗を抑制する目的で、スリーブ86は鉄製とされている。本実施形態においては、筒状突出部32eが本発明における「対向筒状部」に相当する。
また、押圧方向に沿って摩擦部材33を押圧して動作させる押圧部材としてのピストン34が、筒状延在部32dの外周面及び筒状突出部32eの外周面に対して軸方向に沿って摺動可能に配置されている。本実施形態では、ピストン34は、摩擦部材33を軸第一方向A1側から押圧するように配置されており、本例では軸第二方向A2が上記「押圧方向」に一致している。筒状延在部32dとピストン34との間、及び筒状突出部32eとピストン34との間には、それぞれOリング等のシール部材が配置されている。これにより、径方向延在部32b、筒状延在部32d、筒状突出部32e、及びピストン34により区画されて密閉された空間として、作動油圧室H1が形成されている。この作動油圧室H1には、第一油路L1を介してピストン34の作動用の油が供給される。
また、ピストン34に対して作動油圧室H1とは反対側(ここでは、軸第二方向A2側)には、循環油圧室H2が形成されている。すなわち、循環油圧室H2は、油が供給された状態で、ピストン34における作動用の油圧が作用する側(本例では、内燃機関E側である軸第一方向A1側)とは反対側(本例では、軸第二方向A2側)に油圧を作用させるように形成されている。この循環油圧室H2は、主にピストン34、軸方向延在部32a、トルクコンバータTCのカバー部42、筒状突出部11、及び上述した入力伝達部材(入力軸I及びクラッチハブ31)により区画された空間として形成されている。これにより、循環油圧室H2は、軸方向で作動油圧室H1とトルクコンバータTCのカバー部42との間に配置されている。ここで、本実施形態においては、筒状突出部11と入力伝達部材を構成する入力軸Iとの間に第二シール部材82が配置され、これらの間が密閉されている。また、軸方向延在部32aとカバー部42との間に第四シール部材84が配置され、これらの間が密閉されている。これにより、循環油圧室H2は密閉空間として形成されている。
循環油圧室H2には、オイルポンプ9により吐出され、油圧制御装置(図示せず)により所定の油圧レベルに調整された圧油が、第二油路L2を介して供給される。第二油路L2を介して油が供給されることにより、循環油圧室H2内は基本的には所定圧以上の油で満たされた状態となる。本実施形態では、第二油路L2を介して循環油圧室H2に供給される油圧は、ピストン34に対して、作動油圧室H1に供給される油圧(ピストン34の作動用の油圧)とは反対側に作用すると共に、当該作動油圧室H1に供給される油圧とは異なる油圧に調整されている。これにより、ピストン34に対して軸第一方向A1側となる作動油圧室H1から作用する油圧と軸第二方向A2側となる循環油圧室H2から作用する油圧との差圧に応じて、ピストン34を軸方向に沿って摺動させ、入力クラッチC1の係合及び解放を制御することができる。つまり、作動油圧室H1への供給油圧を循環油圧室H2への供給油圧よりも小さくすることにより、ピストン34を軸第一方向A1側に移動させて入力クラッチC1を解放状態とすることができる。一方、作動油圧室H1への供給油圧を循環油圧室H2への供給油圧よりも大きくすることにより、ピストン34を軸第二方向A2側に移動させて摩擦部材33を互いに摩擦係合させ、入力クラッチC1を係合状態とすることができる。
循環油圧室H2内には、筒状突出部11の軸第二方向A2側の端部が配置されている。また、循環油圧室H2内には、筒状突出部11の径方向内側に挿通される入力軸Iのフランジ部Iaが、筒状突出部11の軸第二方向A2側を径方向外側に向かって延びるように配置されている。更に、循環油圧室H2内には、フランジ部Iaに連結されるクラッチハブ31が径方向に延びるように配置され、複数の摩擦部材33も配置されている。本実施形態では、循環油圧室H2内に満たされる油により複数の摩擦部材33を効率的に冷却することが可能となっている。本実施形態においては、循環油圧室H2が本発明における「係合部材収容室」に相当する。
2−4.トルクコンバータ
図2に示すように、トルクコンバータTCは、回転電機MG及び入力クラッチC1よりも軸第二方向A2側であって中間支持壁6及び変速機構TMよりも軸第一方向A1側に配置されている。トルクコンバータTCは、入力クラッチC1と軸方向に隣接して配置されている。トルクコンバータTCは、ポンプインペラ41、タービンランナ51、ステータ56、及びこれらを収容するカバー部42を備えている。
カバー部42は、ポンプインペラ41と一体回転するように構成されている。ここでは、カバー部42の内側に、ポンプインペラ41が一体的に設けられている。また、カバー部42は、筒状連結部材32に連結されている。カバー部42は、筒状連結部材32及びロータ支持部材22を介して、回転電機MGのロータRoと一体回転するように駆動連結されている。従って、一体回転するポンプインペラ41及びカバー部42は、内燃機関E及び回転電機MGの一方又は双方の回転及びトルクが伝達される部材であり、トルクコンバータTCの入力側回転部材である。また、カバー部42は、ポンプ駆動軸47に連結されている。カバー部42は、ポンプ駆動軸47を介してオイルポンプ9のポンプロータと一体回転するように駆動連結されている。ポンプ駆動軸47は、ポンプカバー7の貫通孔に設けられた第二軸受72を介して回転可能な状態で、ポンプカバー7に径方向に支持されている。本実施形態においては、ポンプインペラ41、カバー部42、及びポンプ駆動軸47により、本発明における「継手入力側部材」が構成されている。
タービンランナ51は、ポンプインペラ41の軸第一方向A1側に当該ポンプインペラ41に対向して配置されている。タービンランナ51は、ポンプインペラ41と対をなし、ポンプインペラ41に入力される回転及びトルクを出力軸O側となる中間軸Mに伝達する、トルクコンバータTCの出力側回転部材である。本実施形態においては、タービンランナ51が本発明における「継手出力側部材」に相当する。タービンランナ51は、径方向に延びる径方向延在部52を有する。この径方向延在部52は、軸方向で後述する筒状延在部46(図3等を参照)と一方向クラッチ57との間に配置されている。また、タービンランナ51は、径方向延在部52と一体的に形成され、当該径方向延在部52の径方向内側端部から軸第一方向A1側に向かって突出する筒状突出部53(図3を参照)を有する。本実施形態では、筒状突出部53と当該筒状突出部53を貫通するように配置された中間軸Mとが、スプライン連結されている。
ステータ56は、軸方向において、ポンプインペラ41とタービンランナ51との間に配置されている。このステータ56は、一方向クラッチ57を介して固定軸58に支持されている。上記のように、固定軸58は、円筒状の軸部であって軸第二方向A2側においてケース3の中間支持壁6に固定されている。従って、ステータ56は、一方向クラッチ57及び固定軸58を介して中間支持壁6に連結されている。一方向クラッチ57は、軸方向で径方向延在部52とポンプ駆動軸47との間に配置されている。
本実施形態では、対向配置されるポンプインペラ41とタービンランナ51とにより、トルクコンバータTCの本体部が構成されている。そして、ポンプインペラ41を外側から保持するカバー部42が、更にタービンランナ51をも収容するように配置されている。つまり、カバー部42は、トルクコンバータTCの本体部を収容するように配置されている。また、本実施形態では、トルクコンバータTCの本体部に対して軸第一方向A1側に配置されたロックアップクラッチC2及び第二ダンパ54も、カバー部42内に収容されている。本実施形態では、これらの本体部等が収容されるカバー部42内の空間を、「本体部収容室H4」としている。この本体部収容室H4には、中間軸Mの内部に形成された第六油路L6を介して油が供給される。本体部収容室H4内の油を介して、ポンプインペラ41とタービンランナ51との間でのトルク伝達が可能である。本実施形態においては、第六油路L6が本発明における「継手供給油路」に相当する。
カバー部42は、本体部、ロックアップクラッチC2、及び第二ダンパ54に対して、軸方向両側及び径方向外側を覆うように形成されている。そのため、図3及び図4に示すように、カバー部42は、本体部よりも軸第一方向A1側において、外側径方向延在部43、軸方向延在部44、内側径方向延在部45、及び筒状延在部46を有する。
軸方向延在部44は、所定範囲に亘って軸方向に沿って延びる筒状部である。軸方向延在部44は、カバー部42のうち、本体部よりも軸第一方向A1側部分が径方向で占める領域のおよそ中間位置に設けられている。この軸方向延在部44は、筒状連結部材32の軸方向延在部32aに対して径方向に当接しつつ嵌合する。外側径方向延在部43は、軸方向延在部44と一体的に形成され、当該軸方向延在部44の軸第二方向A2側の端部から径方向外側へ延びるように円環板状に形成されている。外側径方向延在部43は軸方向で回転電機MGと第二ダンパ54との間を通って径方向に延びるように配置されている。内側径方向延在部45は、軸方向延在部44と一体的に形成され、当該軸方向延在部44の軸第一方向A1側の端部から径方向内側へ延びるように略円板状に形成されている。内側径方向延在部45は軸方向で入力クラッチC1とロックアップクラッチC2との間を通って径方向に延びるように配置されている。また、内側径方向延在部45の径方向中央部は、軸方向で入力軸Iと中間軸Mとの間に配置されている。なお、第二ダンパ54の径方向外側を覆う円筒状部と、外側径方向延在部43、軸方向延在部44、及び内側径方向延在部45とにより、カバー部42は、全体として段付の碗状に形成されている。
筒状延在部46は、内側径方向延在部45と一体的に構成され、当該内側径方向延在部45の径方向中央部から軸第二方向A2側に向かって延びるように円筒状に形成されている。また、本実施形態では、筒状延在部46の内周面の軸方向の所定位置に、段差部46aが設けられている。筒状延在部46の内周面は、段差部46aを境界として、当該段差部46aよりも軸第一方向A1側が小径部とされ、段差部46aよりも軸第二方向A2側が大径部とされている。そして、その小径部の径方向内側に、中間軸Mの軸第一方向A1側の端部が配置されている。また、大径部の径方向内側であって中間軸Mの径方向外側に、タービンランナ51の筒状突出部53が配置されている。また、筒状延在部46は、一方向クラッチ57及びタービンランナ51の径方向延在部52に対して、軸第一方向A1側に配置されている。
ロックアップクラッチC2は、カバー部42と一体回転するポンプインペラ41とタービンランナ51との間を選択的に駆動連結する摩擦係合装置である。ロックアップクラッチC2は、湿式多板クラッチ機構として構成されている。また、ロックアップクラッチC2は、カバー部42の軸方向延在部44の径方向内側であって、径方向に見て当該軸方向延在部44と重複する部分を有する位置に配置されている。また、ロックアップクラッチC2は、タービンランナ51に対して軸第一方向A1側に配置されている。また、ロックアップクラッチC2は、カバー部42の内側径方向延在部45を挟んで入力クラッチC1に対して軸第二方向A2側に隣接して配置されている。図3及び図4に示すように、ロックアップクラッチC2は、クラッチハブ61、クラッチドラム62、摩擦部材63、ピストン64、及び作動油圧室H3を備えている。
クラッチハブ61は、カバー部42を構成する筒状延在部46と一体回転するように設けられている。クラッチドラム62は、第二ダンパ54を介してタービンランナ51及び中間軸Mに駆動連結されている。クラッチハブ61とクラッチドラム62との間に複数の摩擦部材63が配置され、これらの摩擦部材63に対して軸第一方向A1側にピストン64が配置されている。また、ピストン64は、カバー部42を構成する軸方向延在部44及び筒状延在部46に対して軸方向に沿って摺動可能に配置されている。軸方向延在部44とピストン64との間、及び筒状延在部46とピストン64との間には、それぞれOリング等のシール部材が配置されている。これにより、軸方向延在部44、内側径方向延在部45、筒状延在部46、及びピストン64により区画されて密閉された空間として、作動油圧室H3が形成されている。この作動油圧室H3には、中間軸Mの内部に形成された第七油路L7を介してピストン64の作動用の油が供給される。
本実施形態では、筒状連結部材32の軸方向延在部32aに対して径方向に当接しつつ嵌合する軸方向延在部44の径方向内側に、ロックアップクラッチC2のピストン64が配置されている。そして、軸方向延在部32a、第四シール部材84、軸方向延在部44、ピストン64、及び軸方向延在部44とピストン64との間のシール部材は、径方向に見て互いに重複する部分を有する位置に配置されている。これにより、装置全体の軸長短縮が図られている。また、筒状連結部材32とカバー部42との径方向の相互位置決めのための構成(後述する第二径方向嵌合部J2)と、ロックアップクラッチC2の作動油圧室H3を密封するための構成と、が共通化されている。
本実施形態では、本体部収容室H4に供給される油圧は、作動油圧室H3に供給される油圧(ピストン64の作動用の油圧)とは異なる油圧に調整されている。これにより、ピストン64に対して軸第一方向A1側となる作動油圧室H3から作用する油圧と軸第二方向A2側となる本体部収容室H4から作用する油圧との差圧に応じて、ピストン64を軸方向に沿って摺動させ、ロックアップクラッチC2の係合及び解放を制御することができる。なお、本実施形態では、本体部収容室H4と循環油圧室H2とは、互いに独立した空間として形成されている。
2−5.動力伝達部材
動力伝達部材Tは、車両の駆動力源からの回転及びトルクを変速機構TMへ伝達する部材である。本実施形態においては、車両の駆動力源からの回転及びトルクをトルクコンバータTCのポンプインペラ41に伝達することにより、上記回転及びトルクを、トルクコンバータTCを介して変速機構TMへ伝達する。そのため、本実施形態に係る動力伝達部材Tは、ロータ支持部材22と、入力クラッチC1の出力側回転部材としての筒状連結部材32と、トルクコンバータTCのカバー部42と、が一体回転するように連結されて構成されている。
ロータ支持部材22と筒状連結部材32とは、少なくとも2ヵ所、本例では第一径方向嵌合部J1及び第一締結固定部F1、で接して連結されている。第一径方向嵌合部J1は、ロータ支持部材22と筒状連結部材32との径方向の相互位置決めを行うための部位である。本実施形態では、ロータ支持部材22に設けられた嵌合突出部25a、及び筒状連結部材32に設けられた筒状延在部32dは、いずれも軸方向に延在する部分を有している。そして、本例では、嵌合突出部25aの外周面と筒状延在部32dの内周面とが、周方向の全体に亘って互いに当接しつつ嵌合することにより、ロータ支持部材22と筒状連結部材32との径方向の相互位置決めが行われている。このように、本実施形態では、ロータ支持部材22の嵌合突出部25aと筒状連結部材32の筒状延在部32dとにより、第一径方向嵌合部J1が構成されている。本実施形態においては、第一径方向嵌合部J1が本発明における「径方向嵌合部」に相当する。なお、本実施形態では、第一径方向嵌合部J1を構成する嵌合突出部25aと筒状延在部32dとの間には、Oリング等の第三シール部材83が更に配置されている。これにより、ロータ支持部材22と筒状連結部材32との径方向の相互位置決めのための構成(第一径方向嵌合部J1)と、軸受配置空間Pを密封して回転電機MGのステータSt側への油の流出を抑制するための構成と、が共通化されている。
第一締結固定部F1は、ロータ支持部材22と筒状連結部材32とを締結固定するための部位である。本実施形態では、ロータ支持部材22の径方向延在部24、及び筒状連結部材32の取付部32cは、軸方向に互いに接して配置されている。これらは、径方向延在部24に設けられた複数の第一ボルト挿通孔24aの軸心と取付部32cに設けられた複数の第一ボルト孔の軸心とが全て一致する状態で配置されている。第一ボルト91は、それぞれの第一ボルト挿通孔24aに挿通されて第一ボルト孔に締結される。これにより、径方向延在部24と取付部32cとが第一ボルト91により互いに締結固定され、径方向延在部24と取付部32cと間の締結部位により、第一締結固定部F1が構成されている。そして、第一締結固定部F1により、ロータ支持部材22と筒状連結部材32とがガタなく互いに強固に固定されている。本実施形態においては、第一締結固定部F1が本発明における「締結固定部」に相当する。なお、本例では、第一ボルト91、第一ボルト挿通孔24a、及び第一ボルト孔は、複数組が周方向に分散して配置されている。そのため、「第一締結固定部F1」とは、それら複数組を総称する用語として用いている(後述する第二締結固定部F2についても同様)。
筒状連結部材32とカバー部42とは、少なくとも2ヵ所、すなわち第二径方向嵌合部J2及び第二締結固定部F2、で接して連結されている。第二径方向嵌合部J2は、筒状連結部材32とカバー部42との径方向の相互位置決めを行うための部位である。本実施形態では、筒状連結部材32に設けられた軸方向延在部32a、及びカバー部42に設けられた軸方向延在部44は、いずれも軸方向に延在する部分を有している。そして、本例では、軸方向延在部32aの軸第二方向A2側の開口端部において、軸方向延在部32aの内周面と軸方向延在部44の外周面とが、周方向の全体に亘って互いに当接しつつ嵌合することにより、筒状連結部材32とカバー部42との径方向の相互位置決めが行われている。このように、本実施形態では、筒状連結部材32の軸方向延在部32aとカバー部42の軸方向延在部44とにより、第二径方向嵌合部J2が構成されている。なお、本実施形態では、軸方向延在部32aと軸方向延在部44との間に第四シール部材84が配置されている。これにより、筒状連結部材32とカバー部42との径方向の相互位置決めのための構成(第二径方向嵌合部J2)と、循環油圧室H2を密封するための構成と、が共通化されている。
第二締結固定部F2は、筒状連結部材32とカバー部42とを締結固定するための部位である。本実施形態では、筒状連結部材32の径方向延出部32f、及びカバー部42の外側径方向延在部43は、周方向の複数箇所に設けられたカバー側連結部43aを介して接するように配置されている。つまり、径方向延出部32fとカバー側連結部43aとが軸方向に互いに接すると共に、カバー側連結部43aと外側径方向延在部43とが軸方向に互いに接して配置されている。なお、それぞれのカバー側連結部43aには、第二ボルト92が締結される第二ボルト孔が設けられている。それぞれのカバー側連結部43aは、カバー部42と一体回転するように、溶接等により外側径方向延在部43の軸第一方向A1側の側面に接合されている。径方向延出部32f、カバー側連結部43a、及び外側径方向延在部43は、径方向延出部32fに設けられた複数の第二ボルト挿通孔32gの軸心と複数のカバー側連結部43aに設けられた第二ボルト孔の軸心とが全て一致する状態で配置されている。第二ボルト92は、それぞれの第二ボルト挿通孔32gに挿通されて第二ボルト孔に締結される。これにより、径方向延出部32fとカバー側連結部43aとが第二ボルト92により互いに締結固定され、カバー側連結部43aを介して径方向延出部32fと外側径方向延在部43とが連結される。本実施形態では、径方向延出部32fと外側径方向延在部43との間の締結部位により、第二締結固定部F2が構成されている。そして、第二締結固定部F2により、筒状連結部材32とカバー部42及びポンプインペラ41とがガタなく互いに強固に固定されている。
なお、本実施形態では、第一径方向嵌合部J1は、第一締結固定部F1よりも径方向内側に設けられている。本実施形態では、ロータ支持部材22の径方向内側端部に位置している支持円筒状部25の一部を利用して第一径方向嵌合部J1が構成されると共に、ロータ支持部材22の径方向延在部24のうち、径方向外側の部位(ロータ保持部23に近い部位)に第一締結固定部F1が設けられている。そのため、第一径方向嵌合部J1を構成する嵌合突出部25a及び筒状延在部32dを比較的小径に形成することが可能となっている。よって、これらの加工精度を向上させることが容易となっている。また、第一締結固定部F1を径方向内側に設ける場合と比較して、てこの原理により、第一締結固定部F1において第一ボルト91を介して伝達可能なトルクの最大値を増大させることが可能となっている。また、第二径方向嵌合部J2は、第二締結固定部F2よりも径方向内側に設けられている。本例では、第二径方向嵌合部J2と第二締結固定部F2とは径方向に互いに隣接して配置されている。
本実施形態では、ロータ支持部材22、筒状連結部材32、及びカバー部42は、互いに独立した別部材として構成されている。そのため、これらをそれぞれ単品で加工を行うことができるので、この点からも各部材を所望の形状に加工しつつその加工精度を向上させることが容易となっている。特に、芯出しが必要とされる第一径方向嵌合部J1を構成する嵌合突出部25a及び筒状延在部32d、並びに、第二径方向嵌合部J2を構成する軸方向延在部32a及び軸方向延在部44の軸心精度を向上させることが容易である。これにより、第一締結固定部F1及び第二締結固定部F2と第一径方向嵌合部J1及び第二径方向嵌合部J2とが協働することにより、高い軸心精度でガタなく強固に連結固定された一体の動力伝達部材Tが、全体としてドラム状の回転部材として形成される。本実施形態では、このようにして形成された動力伝達部材Tの内部に、入力クラッチC1の作動油圧室H1、循環油圧室H2、ロックアップクラッチC2の作動油圧室H3、及び本体部収容室H4が形成されている。
このようにして形成された動力伝達部材Tは、図2等に示すように、軸第一方向A1側では、第一軸受71を介して回転可能な状態で、端部支持壁5と一体的に形成された筒状突出部11の外周面に径方向に支持されている。本例では、図4に示すように、第一軸受71は、軸方向で端部支持壁5と筒状連結部材32の筒状突出部32eとの間に配置されている。更に、第一軸受71は、軸方向で第一シール部材81と筒状突出部32eとの間に配置されている。一方、動力伝達部材Tは、軸第二方向A2側では、第二軸受72を介して回転可能な状態で、中間支持壁6に取り付けられたポンプカバー7の貫通孔の内周面に径方向に支持されている。第二軸受72としては、径方向荷重を受けることが可能な軸受が用いられ、本例ではニードルベアリングが用いられている。本実施形態においては、第二軸受72が本発明における「第二支持軸受」に相当する。
ここで、動力伝達部材Tの径方向内側に配置される入力クラッチC1、ロックアップクラッチC2、及びトルクコンバータTCに対して、軸第一方向A1側に第一軸受71が配置され、それらに対して軸第二方向A2側に第二軸受72が配置されている。このように、本実施形態では軸方向に長い支持間隔で動力伝達部材Tを径方向に支持しているので、動力伝達部材Tの全体を高い軸心精度で支持することが可能となっている。よって、動力伝達部材Tの一部を利用してそれぞれ構成される入力クラッチC1、回転電機MG、及びトルクコンバータTCの支持精度を向上させることができる。
また、端部支持壁5に設けられた筒状突出部11の軸心貫通孔11aを貫通する状態で配置された入力軸Iは、第三軸受73を介して回転可能な状態で、筒状突出部11の内周面に径方向に支持されている。第三軸受73としては、径方向荷重を受けることが可能な軸受が用いられ、本例ではニードルベアリングが用いられている。本実施形態では、入力軸Iは軸方向の複数箇所、ここでは2箇所で軸心貫通孔11aに対して径方向に支持されている。つまり、入力軸Iは、筒状突出部11の内周面に沿って軸方向に所定距離を隔てて分かれて配置された2つの第三軸受73a,73bを介して、筒状突出部11の内周面に支持されている。このように、2つの第三軸受73a,73bを用いて入力軸Iを二点支持する構成を採用することで、筒状突出部11によって入力軸Iを確実に支持することができると共に、支持精度を向上させることが可能となっている。本実施形態においては、第三軸受73が本発明における「第三支持軸受」に相当する。
そして、本実施形態では、筒状突出部11の内周面で入力クラッチC1のクラッチハブ31に連結された入力軸Iを高い軸心精度で支持することができると共に、同じ筒状突出部11の外周面で入力クラッチC1のクラッチドラムとしての筒状連結部材32を一部に含む動力伝達部材Tを高い軸心精度で支持することができる。よって、入力クラッチC1の支持精度は極めて良好となる。そのため、入力クラッチC1の係合状態(ピストン34による係合圧や、入力クラッチC1の伝達トルク容量等を含む)を精密に制御することが可能である。
本実施形態に係る駆動装置1のように1モータパラレル方式のハイブリッド車両に利用される場合には、例えば内燃機関始動制御やスリップ加速制御等を実行する場合に、入力クラッチC1の係合状態を精密に制御することに対する要請が特に強い。本実施形態に係る駆動装置1によれば、入力クラッチC1の支持精度が非常に高く、入力クラッチC1を係合させる際に所望の係合特性を高精度に得ることが可能であるので、上記のような要請に適切に応えることができる。なお、内燃機関始動制御は入力クラッチC1を介して伝達される回転電機MGのトルクにより内燃機関Eを始動させる制御であり、スリップ加速制御は入力クラッチC1の入力側摩擦部材と出力側摩擦部材との間に滑りのある状態で少なくとも入力クラッチC1を介して伝達される内燃機関Eのトルクにより車両を加速させる制御である。
3.入力クラッチへの油の供給構造
次に、本実施形態に係る入力クラッチC1が有する作動油圧室H1及び循環油圧室H2への油の供給構造について説明する。また、循環油圧室H2等からの油の排出構造についても説明する。これらの構造は、本実施形態では、ケース3の端部支持壁5及び筒状突出部11に形成された4つの油路(第一油路L1、第二油路L2、第三油路L3、及び第四油路L4)を主要な構成として実現されている。以下、詳細に説明する。
第一油路L1は、入力クラッチC1の作動油圧室H1に連通し、当該作動油圧室H1に油を供給するための油供給路である。本実施形態においては、第一油路L1が本発明における「作動供給油路」に相当する。第一油路L1には、オイルポンプ9により吐出され、油圧制御装置(図示せず)により所定の油圧レベルに調整された圧油が、第一油路形成部材96a(図5を参照)を介して供給される。図4及び図5に示すように、第一油路L1は、筒状突出部11内を軸方向に延びる第一軸方向油路L1aと、筒状突出部11内を径方向に延びる第一径方向油路L1bと、ケース3の端部支持壁5内を径方向に延びる第一壁内油路L1cと、を有する。第一壁内油路L1cは、径方向外側の端部で第一油路形成部材96aに接続される(図5を参照)と共に、径方向内側の端部で第一軸方向油路L1aに連通している。第一軸方向油路L1aは、第一壁内油路L1cの径方向内側の端部から軸方向に沿って軸第二方向A2側に直線状に延びるように形成されている。第一径方向油路L1bは、第一軸方向油路L1aに連通し、当該第一軸方向油路L1aから少なくとも径方向外側に延びるように形成されている。本例では、第一径方向油路L1bは、径方向に対して僅かに傾斜する方向に沿って直線状に延びるように形成されている。
第一軸方向油路L1aの軸第二方向A2側の端部は、筒状突出部11に設けられた閉塞部材(本例では、プラグ)により閉塞されている。第一径方向油路L1bは、筒状突出部11の外周面に形成された第一外周開口部12aに開口している。この第一外周開口部12aは、筒状突出部11の第二段差部11cよりも軸第二方向A2側の最小径部の外周面に形成されており、筒状突出部11の軸第二方向A2側の端部に外挿されたスリーブ86の径方向内側に形成されている。スリーブ86には、外周面に対して径方向に窪みつつ周方向に連続する凹溝が形成されると共に、当該スリーブ86の内周面と凹溝とを連通する連通孔が周方向の複数個所に形成されている。これらの連通孔と第一外周開口部12aとは、径方向に見て重複する部分を有する位置に配置されている。
また、筒状連結部材32の筒状突出部32eには、当該筒状突出部32eの内周面と外周面とを連通する油孔32hが形成されている。油孔32hとスリーブ86に形成された連通孔とは、径方向に見て重複する部分を有する位置に配置されている。そして、油孔32hは、径方向外側の開口部を介して作動油圧室H1に連通している。従って、第一径方向油路L1bは、第一外周開口部12a、スリーブ86の連通孔、及び油孔32hを介して作動油圧室H1に連通している。これにより、第一油路L1から供給される油が、第一外周開口部12a、連通孔、及び油孔32hを介して作動油圧室H1へと適切に供給される。
なお、本実施形態では、スリーブ86の外周面と筒状突出部32eの内周面との間の微小隙間を通って、僅かずつ軸方向に油が漏出するように構成されている。そして、当該微小隙間を通って軸第一方向A1側へと漏出する油は、軸受配置空間Pへと流入し、当該軸受配置空間Pに配置された第一軸受71の潤滑を行う。
第二油路L2は、入力クラッチC1の循環油圧室H2に連通し、当該循環油圧室H2に油を供給するための油供給路である。本実施形態においては、第二油路L2が本発明における「循環供給油路」に相当する。第二油路L2には、オイルポンプ9により吐出され、油圧制御装置(図示せず)により所定の油圧レベルに調整された圧油が、第二油路形成部材96b(図5を参照)を介して供給される。図3及び図5に示すように、第二油路L2は、筒状突出部11内を軸方向に延びる第二軸方向油路L2aと、ケース3の端部支持壁5内を径方向に延びる第二壁内油路L2cと、を有する。第二壁内油路L2cは、径方向外側の端部で第二油路形成部材96bに接続される(図5を参照)と共に、径方向内側の端部で第二軸方向油路L2aに連通している。第二軸方向油路L2aは、第二壁内油路L2cの径方向内側の端部から軸方向に沿って軸第二方向A2側に直線状に延びるように形成されている。
第二軸方向油路L2aは、筒状突出部11の軸第二方向A2側の端面に形成された端面開口部12eに開口している。そして、第二軸方向油路L2aは端面開口部12eを介して循環油圧室H2に連通している。これにより、第二油路L2から供給される油が、端面開口部12eを介して循環油圧室H2へと適切に供給される。より具体的には、本実施形態では、第二軸方向油路L2aは循環油圧室H2内を径方向に延びるクラッチハブ31よりも軸第一方向A1側の第一空間V1に連通しており、第二油路L2からの油は、循環油圧室H2における第一空間V1に供給される。
第二油路L2を介して油が供給されることにより、ケース3内における独立した密閉空間として形成された循環油圧室H2内は、基本的には油で満たされた状態となる。そして、全体としては循環油圧室H2内が油で満たされた状態を維持しながら、循環油圧室H2内を油が流通する。すなわち、第二油路L2から循環油圧室H2の第一空間V1に供給された油は、軸方向でピストン34とクラッチハブ31との間を通って径方向外側へと流れ、複数の摩擦部材33に到達する。油は、複数の摩擦部材33との熱交換により当該複数の摩擦部材33を冷却する。本実施形態では、循環油圧室H2内に満たされる油により入力クラッチC1の複数の摩擦部材33を効率的に冷却することが可能となっている。複数の摩擦部材33を冷却した後の油は、循環油圧室H2内におけるクラッチハブ31よりも軸第一方向A1側、すなわち軸方向でクラッチハブ31とカバー部42の内側径方向延在部45との間の第二空間V2を通って径方向内側へと流れ、入力軸Iの軸第二方向A2側の端部に形成された軸端孔部Ibに到達する。軸端孔部Ibの径方向内側の空間は、当該第二空間V2の径方向中心部に位置している。
入力軸Iの軸第二方向A2側の端部には、第五油路L5が形成されている。第五油路L5には、循環油圧室H2内を流通して入力軸Iの軸端孔部Ibに到達した油が供給される。図3に示すように、第五油路L5は、入力軸Iの内部を軸心Xに沿って軸方向に延びる第五軸方向油路L5aと、入力軸Iの内部を径方向に延びる第五径方向油路L5bと、を有する。第五軸方向油路L5aは、入力軸Iの軸端孔部Ibにおける軸第二方向A2側の側面に開口すると共に、当該開口部から所定範囲に亘って軸第一方向A1側に直線状に延びるように形成されている。本例では、第五軸方向油路L5aは、少なくとも後述する第一内周開口部12cよりも軸第一方向A1側まで延びるように形成されている。第五径方向油路L5bは、第五軸方向油路L5aに連通し、当該第五軸方向油路L5aから径方向に沿って直線状に延びるように形成されている。第五径方向油路L5bは、軸方向に所定間隔を空けて並べて配置された2つの第三軸受73の間で、入力軸Iの外周面に開口している。このようにして、第五油路L5は、循環油圧室H2と、入力軸Iの外周面と筒状突出部11の内周面との間の空間と、を連通している。これにより、第五油路L5を介して、循環油圧室H2の第二空間V2の径方向中心部からの油を入力軸Iと筒状突出部11との間の空間へと導くことができる。
本実施形態では、軸方向に並べて配置される2つの第三軸受73のうち、軸第二方向A2側の第三軸受73bは、その軸方向両側の側面が、直接的に又は第五油路L5を介して、第一空間V1及び第二空間V2にそれぞれ連通している。つまり、第三軸受73bは、軸第二方向A2側の側面が循環油圧室H2内の第一空間V1に直接的に連通しており、軸第一方向A1側の側面が、第五油路L5を介して循環油圧室H2内の第二空間V2に連通している。これにより、第三軸受73bの軸方向両側の側面に作用する油圧を等しくすることができる。よって、第三軸受73bと筒状突出部11との間、及び第三軸受73bと入力軸Iとの間からの油の漏れを考慮する必要がないので、第三軸受73bの構成を簡素化して低コスト化を図ることが可能となっている。なお、本例では、循環油圧室H2から第五油路L5を介して排出される油の一部を利用して、第三軸受73の潤滑を行うこともできる。
第三油路L3は、第二油路L2とは別に循環油圧室H2に連通し、循環油圧室H2から油を排出するための油排出路である。図3及び図5に示すように、第三油路L3は、筒状突出部11内を軸方向に延びる第三軸方向油路L3aと、筒状突出部11内を径方向に延びる第三径方向油路L3bと、ケース3の端部支持壁5内を径方向に延びる第三壁内油路L3cと、を有する。第三径方向油路L3bは、軸方向に所定間隔を空けて並べて配置された2つの第三軸受73の間で、筒状突出部11の内周面に形成された第一内周開口部12cに開口している。従って、第三径方向油路L3bは、第一内周開口部12c、入力軸Iと筒状突出部11との間の空間、及び入力軸Iの内部に形成された第五油路L5を介して、循環油圧室H2の第二空間V2の径方向中心部に連通していることになる。なお、本例では、第一内周開口部12cと第五油路L5を構成する第五径方向油路L5bとは、径方向に見て重複する部分を有する位置に配置されている。
第三径方向油路L3bは、第一内周開口部12cから少なくとも径方向外側に延びるように形成されている。本例では、第三径方向油路L3bは、径方向に対して傾斜する方向に沿って直線状に延びるように形成されている。第三軸方向油路L3aは、第三径方向油路L3bの径方向内側の端部に連通し、軸方向に沿って直線状に延びるように形成されている。第三軸方向油路L3aの軸第二方向A2側の端部は、筒状突出部11に設けられた閉塞部材(本例では、プラグ)により閉塞されている。第三壁内油路L3cは、径方向内側の端部で第三軸方向油路L3aの軸第一方向A1側の端部に連通していると共に、径方向外側の端部で第三油路形成部材96cに接続される(図2及び図5を参照)。これにより、循環油圧室H2内を流通する際に複数の摩擦部材33を冷却した後の油は、第五油路L5及び第三油路L3を介して排出され、更に第三油路形成部材96cを介してオイルパン(図示せず)へ戻される。
第四油路L4は、軸受配置空間Pから油を排出するための油排出路である。図4及び図5に示すように、第四油路L4は、筒状突出部11内を軸方向に延びる第四軸方向油路L4aと、筒状突出部11内を径方向に延びる第四径方向油路L4bと、ケース3の端部支持壁5内を径方向に延びる第四壁内油路L4cと、を有する。第四径方向油路L4bは、筒状突出部11の外周面に形成された第二外周開口部12bに開口している。この第二外周開口部12bは、軸方向における第一シール部材81と第一軸受71との間で、軸受配置空間Pに面するように形成されている。本例では、第二外周開口部12bは、筒状突出部11の外周面のうち、第一段差部11bが設けられた位置において大径部と小径部とに亘って形成されている。
第四径方向油路L4bは、第二外周開口部12bから少なくとも径方向内側に延びるように形成されている。本例では、第四径方向油路L4bは、径方向に対して傾斜する方向に沿って直線状に延びるように形成されている。また、本実施形態では、第四径方向油路L4bは、軸方向における第二シール部材82と第三軸受73(本例では、軸第一方向A1側に配置された方の第三軸受73a)との間で、筒状突出部11の内周面に形成された第二内周開口部12dにも開口している。これにより、軸受配置空間Pからの油を利用して、第三軸受73aの潤滑を行うことも可能である。
第四軸方向油路L4aは、第四径方向油路L4bに連通し、軸方向に沿って直線状に延びるように形成されている。第四軸方向油路L4aの軸第二方向A2側の端部は、筒状突出部11に設けられた閉塞部材(本例では、プラグ)により閉塞されている。第四壁内油路L4cは、径方向内側の端部で第四軸方向油路L4aの軸第一方向A1側の端部に連通していると共に、径方向外側の端部で第四油路形成部材96dに接続される(図5を参照)。上記のように、第一油路L1を介して作動油圧室H1へ供給される油の一部は、スリーブ86の外周面と筒状連結部材32の筒状突出部32eの内周面との間の微小隙間を通って軸受配置空間Pへと流入し、当該軸受配置空間Pに配置された第一軸受71の潤滑を行う。軸受配置空間Pにおいて第一軸受71を潤滑した後の油は、第四油路L4を介して排出され、更に第四油路形成部材96dを介してオイルパン(図示せず)へ戻される。
本実施形態では、図5に示すように、4つの油路L1〜L4は、いずれも所定の第一基準面RP1に対して一方側(本例では、図5における下側)に形成されている。また、第一油路L1及び第三油路L3は、いずれも所定の第二基準面RP2に対して一方側(本例では、図5における左側)に形成されると共に、第二油路L2及び第四油路L4は、いずれも第二基準面RP2に対して他方側(本例では、図5における右側)に形成されている。また、入力クラッチC1のそれぞれ作動油圧室H1及び循環油圧室H2への油供給路である第一油路L1及び第二油路L2は、第二基準面RP2に対して互いに面対称となる位置に形成されている。また、それぞれ循環油圧室H2及び軸受配置空間Pからの油排出路である第三油路L3及び第四油路L4も、第二基準面RP2に対して互いに面対称となる位置に形成されている。なお、本例では、図5における左右方向が水平方向に一致すると共に上下方向が鉛直方向に一致しており、軸心Xを通る水平面を第一基準面RP1、軸心Xを通る鉛直面を第二基準面RP2としている。
そして、筒状突出部11の内部に形成される第三軸方向油路L3a、第一軸方向油路L1a、第二軸方向油路L2a、及び第四軸方向油路L4aは、軸方向から見て周方向にこの順に並んで配置されている。また、壁内油路L1c〜L4cは、ケース3の端部支持壁5の内部において、いずれも第二基準面RP2に平行となるように鉛直方向に沿って形成されている。このとき、第三壁内油路L3c、第一壁内油路L1c、第二壁内油路L2c、及び第四壁内油路L4cは、軸方向から見て第一基準面RP1に沿った方向にこの順に並んで配置されている。
また、それぞれ第一油路L1及び第二油路L2に接続される第一油路形成部材96a及び第二油路形成部材96bは、軸方向から見て、第二基準面RP2に平行に、直線状に延びるように形成されている。一方、それぞれ第三油路L3及び第四油路L4に接続される第三油路形成部材96c及び第四油路形成部材96dは、軸方向から見て、2箇所で屈曲すると共に各屈曲点よりも外側部分(壁内油路L3c,L4c側の部分、及び不図示のオイルパン側の部分)が、第二基準面RP2に平行に、直線状に延びるように形成されている。
4.その他の実施形態
最後に、本発明に係る車両用駆動装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、その実施形態でのみ適用されるものではなく、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
(1)上記の実施形態においては、ロータ支持部材22と筒状連結部材32とが一体回転するように連結されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、ロータ支持部材22が他の部材を介して筒状連結部材32に連結された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。例えば、ロータ支持部材22が遊星歯車機構等からなる減速装置を介して筒状連結部材32に連結された構成を採用することも可能である。
(2)上記の実施形態においては、筒状連結部材32が摩擦部材33の径方向内側に筒状突出部32eを有し、入力クラッチC1のピストン34が筒状突出部32eに対して摺動可能とされてピストン34と筒状突出部32eとにより作動油圧室H1の少なくとも一部が画定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばピストン34がケース3の筒状突出部11に対して摺動可能とされてピストン34と筒状突出部11とにより作動油圧室H1の少なくとも一部が画定された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(3)上記の実施形態においては、動力伝達部材Tを構成するポンプ駆動軸47が、軸第二方向A2側で、中間支持壁6に取り付けられたポンプカバー7に径方向に支持されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばケース3が端部支持壁5や中間支持壁6とは別に径方向に延びる壁部を備えている場合において、動力伝達部材Tが当該壁部に径方向に支持された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(4)上記の実施形態においては、中間支持壁6とポンプカバー7との間に中間軸Mと同軸状にオイルポンプ9が配置され、動力伝達部材Tを構成するポンプ駆動軸47が当該オイルポンプ9のポンプロータに駆動連結されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば軸心Xとは軸心を異ならせて配置される等、ケース3の他の位置にオイルポンプ9が配置され、動力伝達部材Tが軸部材や歯車部材等の他の部材を介してオイルポンプ9のポンプロータに駆動連結された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(5)上記の実施形態においては、第一締結固定部F1及び第二締結固定部F2により、ロータ支持部材22、筒状連結部材32、及びカバー部42が一体回転するように連結されて構成される動力伝達部材Tが、第一径方向嵌合部J1及び第二径方向嵌合部J2を備えている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、第一径方向嵌合部J1及び第二径方向嵌合部J2は、動力伝達部材Tを構成する各部材の径方向の位置決めを精度良く行うためのものであって、動力伝達部材Tに要求される軸心精度次第では第一径方向嵌合部J1及び第二径方向嵌合部J2、のうちの一方又は双方を省略することも可能である。例えば動力伝達部材Tが、第一締結固定部F1、第二締結固定部F2、及び第二径方向嵌合部J2のみを備えた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。この場合、軸受配置空間Pを密封して回転電機MGのステータSt側への油の流出を抑制するべく、例えば第一締結固定部F1を構成する径方向延在部24と取付部32cとの間に、Oリング等の第三シール部材83が配置された構成とすると好適である。
(6)上記の実施形態においては、第一締結固定部F1において、径方向延在部24と取付部32cとが第一ボルト91により互いに締結固定されている場合を例として説明した。また、第二締結固定部F2において、径方向延出部32fと外側径方向延在部43とがカバー側連結部43aを介して第二ボルト92により互いに締結固定されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、これらの第一締結固定部F1及び第二締結固定部F2の一方又は双方において、互いに締結固定される2つの部材が溶接により接合された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(7)上記の実施形態においては、嵌合突出部25aの外周面と筒状延在部32dの内周面とが径方向に互いに当接しつつ嵌合して第一径方向嵌合部J1が構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば筒状連結部材32の径方向延在部32bが、当該径方向延在部32bから軸第一方向A1側へ突出する軸方向突出部を備える構成とし、当該軸方向突出部の外周面と嵌合突出部25aの内周面とが径方向に互いに当接しつつ嵌合して第一径方向嵌合部J1が構成された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(8)上記の実施形態においては、入力軸Iが、2つの第三軸受73(73a,73b)を介して筒状突出部11の内周面に支持されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、入力軸Iが、単一の第三軸受73を介して筒状突出部11の内周面に支持された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。或いは、入力軸Iが、3つ以上の第三軸受73を介して筒状突出部11の内周面に支持された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(9)上記の実施形態においては、筒状連結部材32が軸方向延在部32aから径方向内側に延びる径方向延在部32bを有し、筒状連結部材32の径方向延在部32bとロータ支持部材22とが軸方向延在部32aの径方向内側で連結されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば筒状連結部材32が軸方向延在部32aから径方向外側に延びる部位を有し、軸方向延在部32aの径方向外側で、当該部位とロータ支持部材22とが連結された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(10)上記の実施形態においては、ケース3の筒状突出部11に、循環油圧室H2に油を供給する第二油路L2が形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば第二油路L2がケース3における筒状突出部11とは異なる部位(例えば中間軸M)に形成された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(11)上記の実施形態においては、本体部収容室H4に油を供給する第六油路L6が中間軸Mに形成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えば第六油路L6が中間軸Mとは異なる部位(例えばケース3)に形成された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(12)上記の実施形態においては、入力クラッチC1が所謂ノーマルオープン型の摩擦係合装置として構成されている場合を念頭において説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、入力クラッチC1を所謂ノーマルクローズ型の摩擦係合装置として構成することも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(13)上記の実施形態においては、ロータ支持部材22と筒状連結部材32とが互いに独立した別部材として構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばロータ支持部材22と筒状連結部材32とが一体的に形成された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。図6には、このような構成の一例を示している。図示の例では、ロータ支持部材22のロータ保持部23が入力クラッチC1のクラッチドラムとして機能するように構成されていると共に、当該ロータ保持部23を介してロータ支持部材22とカバー部42とが直接的に固定されている。本例では、ロータ保持部23の軸第二方向A2側の端部から更に軸第二方向A2側へ突出する円筒状の軸方向突出部23aの内周面と、軸方向延在部44の外周面とが、周方向の全体に亘って互いに当接しつつ嵌合した状態で、溶接により接合されて一体的に連結固定されている。
(14)上記の実施形態においては、クラッチハブ31が入力軸Iと一体回転するように駆動連結されると共に、動力伝達部材Tを構成する筒状連結部材32が、クラッチハブ31と対をなすクラッチドラムとして機能している場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばクラッチドラムが入力軸Iと一体回転するように駆動連結されると共に、筒状連結部材32がクラッチドラムと対をなすクラッチハブを有するように形成された構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(15)上記の実施形態においては、ポンプインペラ41、タービンランナ51、及びステータ56を有するトルクコンバータTCが、流体継手として駆動装置1に備えられている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばステータ56を有することなく、ポンプインペラ41及びタービンランナ51のみを有するフルードカップリング等が流体継手として駆動装置1に備えられた構成とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。
(16)上記の実施形態においては、駆動装置1が、FR(Front Engine Rear Drive)車両に搭載される場合に適した一軸構成とされている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、例えばカウンタギヤ機構等を備え、入力軸I及び中間軸Mに共通の軸心Xとは軸心を異ならせて車軸が配置された、複軸構成の駆動装置とすることも、本発明の好適な実施形態の一つである。このような構成の駆動装置は、FF(Front Engine Front Drive)車両に搭載される場合に適している。
(17)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載された構成及びこれと均等な構成を備えている限り、特許請求の範囲に記載されていない構成の一部を適宜改変した構成も、当然に本発明の技術的範囲に属する。