JP2012089314A - 電界発生装置 - Google Patents

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洋輔 岡部
Kunihiko Yoshioka
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Abstract

【課題】電界発生装置において、多数の箇所にて同時に略均一な強い電界を発生するのに好適な第1電極(例えば、陽極)の表面の形状を提供すること。
【解決手段】第1電極(例えば、陽極)の基部の先端に貼り付けられたチップの平面(第2電極(例えば、陰極)と対向する端面)には、多数の尖頭部が形成されている。チップの平面(基面)から尖頭部の先端までの距離をHとし、隣り合う尖頭部の先端間の距離(ピッチ)をPとする。「H≧50μm、且つ、H/P≧0.5」という関係が成立するとき、多数の尖頭部のそれぞれの先端近傍にて同時に略均一な強い電界を発生するのに(即ち、略均一なプラズマを生成するのに)好適な第1電極の表面の形状が得られる。また、尖頭部の材質は、単結晶からなる導電性セラミックスであることが好ましい。
【選択図】図8

Description

本発明は、電界発生装置に関し、好ましくは、発生した電界によりプラズマ領域が生成されるものに関する。
従来より、第2電極(例えば、陰極)と対向する位置に配置される第1電極(例えば、陽極)と、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加して前記第1、第2電極の間の空間に電界を形成する電源と、を備えた電界発生装置が広く知られている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
この電界発生装置により電界が形成される空間(第1、第2電極の間の空間)において、電界の強さ(電界強度)が或るレベルを超える部分ではプラズマ(電離状態)が生成され得る。プラズマは、内部にて電荷を有する粒子(陽イオンと電子等)を有しつつ全体としては電気的に中性な状態を維持するという特性を有する。
近年、内燃機関用の点火装置、殺菌装置、オゾン生成装置、表面改質装置、空気清浄装置、気相反応促進装置等の種々の装置(これらは全て電界発生装置でもある)において、上記のプラズマの特性が利用されることにより、それらの性能向上が図られてきている。
上記プラズマの特性を利用した種々の装置では、性能の更なる向上のため、多数の箇所にて同時に略均一なプラズマを生成することが要求されている。このためには、多数の箇所にて同時に略均一な強い電界を発生することが必要である。
特開2006−70830号公報 特開2009−36125号公報 特許第4217933号公報
本発明者は、電界発生装置において、多数の箇所にて同時に略均一な強い電界を発生するのに好適な第1電極の表面の形状を見出した。
本発明に係る電界発生装置は、上述と同様、第2電極に対して所定位置に配置される第1電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加して、前記第1、第2電極の間の空間に電界を形成する電源と、を備える。
本発明に係る電界発生装置の特徴は、前記第1電極の表面の少なくとも一部の領域に複数の尖頭部が形成され、前記尖頭部の高さをHとし、前記隣り合う尖頭部の先端間のピッチをPとしたとき、H/P≧0.5の関係が成立することにある。この場合、H≧50μmの関係が成立することが好適である。
なお、係る2つの関係は、前記領域内における全ての部位で成立することが最も好ましいが、前記領域内における一部の部位のみで成立していてもよい。また、前記領域に対応する表面(前記複数の尖頭部が形成される基面)は、平面であっても曲面であってもよい。また、前記第1電極は棒形状、円柱形状、錐形状、又は、針形状などを呈し、前記第1電極の前記第2電極と対向する側の端面である平面の上に前記複数の尖頭部が形成されることが好適である。
本発明者は、上記構成に係る第1電極の表面の形状は、複数の尖頭部のそれぞれの先端近傍の空間において急激な電位の変化(従って、強い電界)を同時に得るのに好適な形状であることを見出した。この点についての詳細は後述する。即ち、上記構成によれば、多数の箇所にて同時に略均一な強い電界を発生させることができる。この結果、多数の箇所にて同時に略均一なプラズマを生成することが可能となる。
上記本発明に係る電界発生装置においては、前記複数の尖頭部の高さは、対応する前記尖頭部の位置が前記領域の中央部から前記領域の外縁部に移動するにつれて小さくなるように構成されることが好適である。
後に詳述するが、大略的には、「尖頭部の高さが小さいほど尖頭部先端近傍の電界が弱くなる」、且つ、「尖頭部の位置が前記領域における外縁部に近いほど尖頭部先端近傍の電界が強くなる」という傾向がある。これらの点を鑑みると、尖頭部の位置が前記領域の中央部から前記領域の外縁部に移動するにつれて尖頭部の高さを小さくすると、複数の尖頭部の高さが一定の場合と比べて、複数の尖頭部のそれぞれの先端近傍の電界の強さをより均一化することができる。上記構成は係る知見に基づく。
この場合、前記複数の隣り合う尖頭部の先端間のピッチも、対応する前記ピッチの位置が前記領域の中央部から前記領域の外縁部に移動するにつれて小さくなるように構成されることが好適である。これによれば、前記領域内における尖頭部の数を増やすことができる。即ち、略均一な強い電界が得られる箇所を増やすことができる。
上記のように対応する前記尖頭部の位置及び対応する前記ピッチの位置が前記領域の中央部から前記領域の外縁部に移動するにつれて前記複数の尖頭部の高さ及び前記ピッチが小さくなるように構成される場合であって、且つ、棒形状を呈する前記第1電極の端面(平面)の上に前記複数の尖頭部が形成されている場合について考える。この場合、前記尖頭部の高さ及び前記ピッチは、対応する前記尖頭部の位置及び対応する前記ピッチの位置が前記領域の外縁部側の隣りの位置に移動する毎に5〜50%の割合、好ましくは5〜25%の割合で減少していくように構成されることが好適である。
加えて、この場合、前記複数の尖頭部が形成される前記領域が前記平面の中央部に存在し且つ前記平面の外縁部には存在せず、前記平面の中央から前記平面の外縁までの距離をLとし、前記平面の中央から前記領域の外縁までの距離をBとしたとき、0.3≦B/L≦0.9の関係が成立することが好適である。これは、平面の中央部から平面の外縁部に亘って尖頭部が形成されると、平面の外縁部の尖頭部先端近傍の電界が、平面の中央部の尖頭部先端近傍の電界と比べて極端に強くなることに基づく。即ち、尖頭部の高さを小さくすることによる上述した「電界の強さの低減効果」を利用して平面の外縁部の尖頭部先端近傍の電界の強さを低減しようとしても、平面の中央部の尖頭部先端近傍の電界の強さと同程度まで低減することができない。
以上、第1電極の表面の形状に着目しながら、多数の箇所にて同時に略均一な強い電界を発生させるために好適な条件について述べてきた。この条件に加えて、以下の条件が成立するように第2電極が第1電極に対して配置・構成されると更に好適である。その条件とは、「前記複数の尖頭部のそれぞれの先端と前記第2電極との間のそれぞれの最短距離のうち最大値・最小値をそれぞれDmax,Dminとしたとき、1≦Dmax/Dmin≦1.3の関係が成立すること」である。
各尖頭部の先端近傍の電界の強さは、その尖頭部先端と第2電極との間の最短距離に大きく依存する。従って、上記構成のように、複数の尖頭部のそれぞれの先端と第2電極との間のそれぞれの最短距離に大きな差異がない状態では、大きな差異がある状態と比べて、複数の尖頭部のそれぞれの先端近傍の電界の強さをより均一化することができる。
ところで、前記第1電極の前記複数の尖頭部の材質は単結晶からなる導電性セラミックスであることが好適である。この場合、前記単結晶からなる導電性セラミックスとして、例えば、単結晶からなる炭化ケイ素SiCが使用され得る。
複数の尖頭部の材質が金属(例えば、SUS材)の場合、装置の長時間使用後において、尖頭部の先端部のみが消耗して尖頭部先端の尖度が大きく低下する傾向がある。尖頭部先端の尖度が低下すると、尖頭部先端近傍の電界の強さが低下する。これに対し、複数の尖頭部の材質が単結晶からなる導電性セラミックスである場合、金属(例えば、SUS材)の場合と比較して、装置の長時間使用後においても尖頭部先端の尖度が低下し難い。これは、装置の長時間使用後において、単結晶に基づく異方性エッチング作用によって尖頭部の全体形状が相似的に小さくなっていくことに基づく。従って、複数の尖頭部の材質として単結晶からなる導電性セラミックスを使用することにより、装置の長時間使用後における尖頭部先端近傍の電界の強さの低下を抑制することができる。
本発明の実施形態に係る電界発生装置又はプラズマ生成装置の全体構成を示した模式図である。 図1に示した第1電極の基部の先端に貼り付けられるチップの斜視図である。 図2に示したチップの平面図である。 図2に示したチップの側面図である。 図3の5−5断面に対応する模式図であり、チップの平面に形成された複数の尖頭部の高さとピッチとを説明するための図である。 尖頭部の高さとピッチの比の下限値の根拠を説明するためのグラフである。 尖頭部の高さとピッチの比の上限値の根拠を説明するためのグラフである。 複数の尖頭部の高さとピッチとの間の種々の組み合わせについての尖頭部先端近傍の電位分布をシミュレーションにより計算した結果を示す図である。 チップの中央部から外縁部までのそれぞれの尖頭部の先端近傍の電界の強さの分布を得るために行われたシミュレーションに使用された第2電極の配置・構成を示した模式図である。 チップの中央部から外縁部までのそれぞれの尖頭部の先端近傍の電界の強さの分布をシミュレーションにより計算した結果を示すグラフである。 チップの中央部から外縁部までのそれぞれの尖頭部の先端近傍の電界の強さの分布をより均一化するための変形例についての図5に対応する模式図である。 第2電極の配置・構成の好ましい一例を示した模式図である。 尖頭部の材質として金属を使用した場合の尖頭部の消耗前後の形状の一例を示した図である。 尖頭部の材質として単結晶からなる導電性セラミックスを使用した場合の尖頭部の消耗前後の形状の一例を示した図である。
(構成)
図1は、本発明の実施形態に係る電界発生装置又はプラズマ生成装置の全体構成を示す。この装置は、取付部10と、電源20とを備える。取付部10は、本体11と、本体11に固定された第1電極12(例えば、陽極)とを備える。本体11は、例えば、略円筒状を呈する。第1電極12は、例えば、棒状を呈するとともに本体11に同軸的に固定される。
本体11は、例えば、気相反応器の壁面からの突出部(図示せず)に固設される。この場合、第2電極30(例えば、陰極)として、前記気相反応器の内壁が使用され得る。
第1電極12は、本体11に固定された棒状の基部12aと、基部12aの先端に貼り付けられたチップ12bと、から構成される。基部12aは金属により構成される。チップ12bは、金属により構成されてもよいが、後述するように「単結晶からなる導電性セラミックス」により構成されると好適である。
図2〜図4に示すように、チップ12bの平面(貼り付け面と反対の面、第1電極12の第2電極30と対向する側の端面に相当する)には、多数の尖頭部が形成されている。本例では、チップ12bの平面形状(図3を参照)は正方形(一辺:3mm)である。チップ12bの平面の全領域に亘って15×15本の同形の尖頭部が、中心Oを通り且つ互いに直交する対称線C1−C1、C2−C2のそれぞれに対して線対称にマトリクス状に整列・配置されている。本例では、各尖頭部は、チップ12bの平面と垂直の方向に突出する四角錐状を呈している。
電源20は、周知のパルス電源、或いは、周知のRF電源である。電源20は、第1電極12と電気的に接続されている。電源20によって第1電極12に電圧を印加することにより、第1電極12の先端部に位置するチップ12bと第2電極30との間に電位差が与えられる。この結果、チップ12bと第2電極30との間の空間に電界が形成される。
本例のようにチップ12bの平面に多数の尖頭部が形成されている場合、多数の尖頭部のそれぞれの先端近傍の空間において急激な電位の変化が得られる。電界の強さ(電界強度)は電位の勾配と等しい。従って、チップ12bと第2電極30との間の空間においては、多数の尖頭部のそれぞれの先端近傍にて特に強い電界が得られる。即ち、多数の箇所にて同時に略均一な強い電界を発生させることができる。
電界の強さが或るレベルを超える部分ではプラズマ(電離状態)が生成され得る。従って、本例では、多数の尖頭部のそれぞれの先端近傍にて同時に略均一なプラズマ領域が生成され得る。換言すれば、多数の箇所にて同時に略均一なプラズマ領域を生成することができる。各尖頭部の先端近傍にてプラズマ領域がそれぞれ生成されると、各プラズマ領域はそれぞれ第2電極30に向けて成長していく。この成長過程におけるプラズマ領域の集合体をストリーマとも呼ぶ。各ストリーマが第2電極に達すると、広範囲に放電が生じる。この放電をストリーマ放電と呼ぶ。
このように、多数の箇所にてストリーマ放電が略同時に発生する。そして、これら多数のストリーマ放電を起点として、気相反応器に供給される原料となる化学種の活性化が促進される。このことは、反応速度の増加、生成物の収率の向上、反応雰囲気の制御性向上など、種々の有益な作用・効果をもたらす。
(尖頭部の高さとピッチとの間の好ましい関係)
本例のように、第2電極30と対向する第1電極12の先端部(本例では、チップ12b)の端面(平面)に多数の尖頭部が形成される場合を想定する。以下、図5に示すように、チップ12bの平面(基面)から尖頭部の先端までの距離をHとし、隣り合う尖頭部の先端間の距離(ピッチ)をPとする。
本発明者は、多数の尖頭部のそれぞれの先端近傍にて同時に略均一なプラズマを発生するのに好適な第1電極12の表面の形状を探るため、即ち、多数の尖頭部のそれぞれの先端近傍にて同時に略均一な強い電界を発生するのに好適な第1電極12の表面の形状を探るため、尖頭部の高さHとピッチPとの関係に着目した。
値「H/P」が異なる複数のチップ12b(ピッチPが同じで高さHが異なる)のそれぞれの場合について、尖頭部の先端近傍の電界をシミュレーションにより計算した。このシミュレーションでは、第1電極12の各尖頭部は、細長い円柱状とされた。ピッチPは188μmで一定とした。第1電極12には20kVの一定電圧が印加された。即ち、第1電極12の表面(チップ12bの基面及び尖頭部)は全て20kVの等電位である(第1電極12と第2電極30との電位差は20kVである)。第2電極30としては、図9に示すように、回転対称形状のものが使用された。チップ12bと第2電極30との配置関係は図9に示す通りである。
図6は、尖頭部の高さHと、尖頭部先端近傍の電界強度との関係を示す。図6から理解できるように、高さHが100μm(H/P=0.53)以上の場合、電界強度が十分に高い。このことから、H/Pの下限として「0.5」を採用した。
また、前記モデルにて隣り合う尖頭間の電位分布をシミュレーションにより計算した。図7は、尖頭部の高さHと、等電位面窪み深さとの関係を示す。「等電位面窪み深さ」とは、隣り合う尖頭間の中点を通り且つチップの底面(基面)に垂直な線分上にて電位が印加電圧の99%になる位置と、尖頭部の先端と、の高低差である。換言すれば、「等電位面窪み深さ」は、「等電位面の下方への窪み度合」を表すものである。後述するように、この値は尖頭部の先端近傍の電界の強さを表す指標となる。
図7から理解できるように、尖頭部の高さHの増加に対する「等電位面窪み深さ」の増加の割合、即ち、尖頭部の高さHの増加に対する「尖頭部の先端近傍の電界の強さの増加度合」は、高さHが300μm(H/P=1.60)付近にて大きく減少する。このことから、H/Pに上限を設けることが好ましい、と考えられる。
上述した「H/P≧0.5」の根拠を他の観点から検証する。値「H/P」が異なる4種類のチップ12b(ピッチPが同じで高さHが異なる)のそれぞれの場合について、尖頭部の先端近傍の電位分布をシミュレーションにより計算した。図8はその結果を示す。
図8(a)〜(d)から理解できるように、各尖頭部の先端近傍の空間において急激な電位の変化がみられる。即ち、各尖頭部の先端近傍の空間において強い電界が発生している。ここで、尖頭部の先端近傍の電界の強さを表わす指標として、隣り合う尖頭部先端の間の空間に形成される「等電位面の下方への窪み度合」が採用され得る。即ち、「等電位面の下方への窪み度合」が大きいほど、尖頭部の先端近傍の空間の電位の変化が急激である、即ち、尖頭部の先端近傍の空間の電界の強さが大きい、と考えることができる。
図8(a)〜(d)から理解できるように、図8(c)より図8(b)、図8(b)より図8(a)の方が「等電位面の下方への窪み度合」が小さい。従って、大略的には、「尖頭部の高さが小さいほど(即ち、H/Pが小さいほど)、等電位面の下方への窪み度合いが小さくなる」、即ち、「尖頭部の高さが小さいほど(即ち、H/Pが小さいほど)、尖頭部の先端近傍の電界が弱くなる」ということができる。これは、尖頭部の高さが小さいほど(即ち、H/Pが小さいほど)、隣り合う尖頭部先端の間の空間が「高電位であるチップ12bの基面」に近くなることによって隣り合う尖頭部先端の間の等電位面が上方へ押し上げられることに基づく、と考えられる。
図8(a)から理解できるように、H/Pが0.27程度まで小さくなると、隣り合う尖頭部先端の間の空間に形成される等電位面が水平に近づく。このことは、H/Pの下限として「0.5」を採用した第2の根拠となり得る。
一方、図8(c)と図8(d)との比較から理解できるように、H/Pが1.6程度より大きい範囲では、尖頭部の高さを増大しても(即ち、H/Pを増大しても)、「等電位面の下方への窪み度合」が増大しない。換言すれば、H/Pが1.6程度より大きい範囲では、尖頭部の高さを増大すると(即ち、H/Pを増大すると)、隣り合う尖頭部の間の空間(特に、隣り合う尖頭部根元部側の間の空間)において尖頭部先端近傍での強電界の発生に寄与しない無駄な領域が増える。加えて、尖頭部の高さが大きくなるほど、振動等に対して尖頭部が弱い構造となり得る。このことは、H/Pに上限を設けることが好ましいことの第2の根拠となり得る。
本発明者は、原則的には、Hの大小にかかわらず、H/P≧0.5の関係が成立する限りにおいて、多数の尖頭部のそれぞれの先端近傍にて同時に略均一な強い電界が発生することを確認している。ただし、H≦50μmでは、H/P≧0.5の関係が成立していても、隣り合う尖頭部先端の間の空間に形成される等電位面が水平に近づくことも確認している。これは、H≦50μmでは、H/Pの値にかかわらず、上述した「高電位であるチップ12bの基面による等電位面の押し上げ効果」が強く作用することに基づく、と考えられる。
以上、整理すると、H≧50μm、且つ、H/P≧0.5という関係が成立するとき、多数の尖頭部のそれぞれの先端近傍にて同時に略均一な強い電界を発生するのに(即ち、略均一なプラズマを生成するのに)好適な第1電極12の表面の形状が得られる。なお、上記関係は、チップ12bの平面(基面)における全ての部位で成立することが最も好ましいが、同平面(基面)における一部の部位のみで成立していてもよい。
(尖頭部の先端近傍の電界の強さの分布)
次に、チップ12bの平面の中心Oから外縁までの区間(図5に示す区間、図3の5−5線を参照)に存在するそれぞれの尖頭部の先端近傍の電界の強さの分布をシミュレーションにより計算した。先ずは、チップの実施例Aとして、図2〜図5に示すように、チップ12bの平面の全領域に亘って15×15本の尖頭部が対称線C1−C1、C2−C2(図3を参照)のそれぞれに対して線対称にマトリクス状に整列・配置され、且つ、チップ12bの平面の中心Oから外縁までの区間内においてHとPが全て等しいチップ(平面形状が一辺3mmの正方形)が採用された。チップ12bの平面上の全ての尖頭部に対して、H≧50μm、且つ、H/P≧0.5という関係が成立している。
第2電極30としては、上述と同様、図9に示すように、回転対称形状のものが使用された。チップ12bと第2電極30との配置関係は図9に示す通りである。チップ12b(第1電極12、陽極)には20kVの一定電圧が印加された。即ち、チップ12b(第1電極12)と第2電極30(陰極)との電位差は20kVである。
実施例Aについてのシミュレーション結果を図10にて丸いドットで示す。図10から理解できるように、チップ12bの平面の中心Oから外縁までの区間内において尖頭部の高さHとピッチPが全て等しい場合、「尖頭部の位置がチップ12bの中心Oから外縁に近づくほど尖頭部先端近傍の電界が強くなる」という傾向がみられる。これは、尖頭部先端の位置がチップ12bの外縁に近いほど、その尖頭部の先端の周囲に存在する「高電位である尖頭部先端」の数(即ち、その尖頭部の先端近傍の電界を弱める方向に影響を与える物体の数)が相対的に減少することにより、その尖頭部から発生する電気力線が第2電極30の最も近い部位に向けて直線的に延び易くなり、この結果、その尖頭部の先端近傍の空間の電位の勾配が大きくなることに基づく、と考えられる。
以下、チップ12bの平面の中心Oから外縁までの区間に存在する尖頭部のそれぞれの先端近傍の電界の強さの分布を実施例Aよりも均一にすることを考える。このためには、チップ12bの平面の外縁側に存在する尖頭部の先端近傍の電界を弱める必要がある。ここで、上述したように、「尖頭部の高さが小さいほど、尖頭部の先端近傍の電界が弱くなる」という傾向がある。この傾向を鑑みると、尖頭部の位置がチップ12bの平面の中心Oから外縁に移動するにつれて尖頭部の高さを小さくすると、実施例Aと比べて、複数の尖頭部のそれぞれの先端近傍の電界の強さをより均一化することができる、と考えられる。
加えて、図10の丸いドットの分布から理解できるように、チップ12bの平面の外縁部近傍の尖頭部先端近傍の電界は、チップ12bの平面の中央部の尖頭部先端近傍の電界と比べて極端に強くなる。この傾向を鑑みると、尖頭部の高さを小さくすることによる上述した「電界の強さの低減効果」を利用してチップ12bの平面の外縁部の尖頭部先端近傍の電界の強さを低減しようとしても、チップ12bの平面の中央部の尖頭部先端近傍の電界の強さと同程度まで低減することができない、と考えられる。換言すれば、尖頭部のそれぞれの先端近傍の電界の強さの分布を極めて均一にするためには、チップ12bの平面の外縁部近傍には尖頭部を敢えて形成しないことが好ましい、と考えられる。
以上のことから、チップの実施例Bとして、図5に対応する図11に示すように、チップ12bの平面の外縁部を除く領域(以下、「尖頭部形成領域」と呼ぶ)に亘って15×15本の尖頭部がC1−C1、C2−C2(図3を参照)のそれぞれに対して線対称にマトリクス状に整列・配置され、且つ、HとPの位置が外縁部側の隣りの位置に移動する毎にHとPが所定の割合で減少していくチップ(平面形状が一辺3mmの正方形)が採用された。チップ12bの平面上の尖頭部形成領域内の全ての尖頭部に対して、H≧50μm、且つ、H/P≧0.5という関係が成立している。
実施例Bについてのシミュレーション結果を図10にて四角のドットで示す。第2電極30の形状、チップ12bと第2電極30との配置関係、並びに、チップ12bに印加された電圧の条件等は、実施例Aの場合と同じである。図10から理解できるように、実施例Bでは、チップ12bの平面上に存在する尖頭部のそれぞれの先端近傍の電界の強さの分布が極めて均一となる。
本発明者は、この実施例Bについて、HとPの位置が外縁部側の隣りの位置に移動する毎にHとPが減少していく際のHとPの減少割合の好ましい範囲について考察した。この結果、尖頭部のそれぞれの先端近傍の電界の強さの分布を均一とするためには、この減少割合が5〜50%であると好ましいことが判明している。チップ12bに多数の尖頭部(例えば、10×10本以上の尖頭部)が形成される場合、前記減少割合が5〜25%であると更に好適である。
また、本発明者は、この実施例Bについて、12bの平面上における尖頭部形成領域の好ましい範囲について考察した。図11に示すように、チップ12bの平面の中心Oから前記平面の外縁までの距離をLとし、前記平面の中心Oから尖頭部形成領域の外縁までの距離をBとする。この結果、尖頭部のそれぞれの先端近傍の電界の強さの分布を均一とするためには、「0.3≦B/L≦0.9」という関係が成立することが好ましいことが判明している。
(第2電極の配置・構成)
以上、チップ12b上の尖頭部のそれぞれの先端近傍の電界の強さの分布を均一とするために必要な条件について、「尖頭部の配置・形状」の観点から説明してきた。次に、このために必要な条件について、「第2電極30の配置・構成」の観点から簡単に説明する。一般に、チップ12bの平面上の各尖頭部の先端近傍の電界の強さは、その尖頭部先端と第2電極30との間の最短距離に大きく依存する。従って、複数の尖頭部のそれぞれの先端と第2電極との間のそれぞれの最短距離に大きな差異があることは好ましくない、と考えられる。
以上のことから、複数の尖頭部のそれぞれの先端と第2電極30との間のそれぞれの最短距離のうち最大値・最小値をそれぞれDmax,Dminとすると、本発明者は、チップ12b上の尖頭部のそれぞれの先端近傍の電界の強さの分布を均一とするためには、「1≦Dmax/Dmin≦1.3」という関係が成立することが好ましい、と考えている。
また、図12にて斜線領域で示すように、チップ12b(第1電極12の先端)の平面をチップ12bの平面に垂直の方向からみたとき、チップ12bの平面の外側の領域に第2電極30の少なくとも一部が存在していることが好適である。これにより、上述したストリーマ放電が形成される領域が広くなり、ストリーマ放電を広い範囲にて略同時に発生させることが可能となる。
(尖頭部の材質)
以下、チップ12bの材質(即ち、尖頭部の材質)について付言する。チップ12bは、金属により構成され得る。しかしながら、尖頭部の材質が金属(例えば、SUS材)の場合、図13に示すように、装置の長時間使用後において、尖頭部の先端部のみが消耗して尖頭部先端の尖度が大きく低下する傾向がある。尖頭部先端の尖度が低下すると、尖頭部先端近傍の電界の強さが低下する。
これに対し、チップ12bの材質が「単結晶からなる導電性セラミックス」であることが好ましい。「単結晶からなる導電性セラミックス」の一例としては、単結晶からなる炭化ケイ素SiCが使用され得る。
この場合、金属(例えば、SUS材)の場合と比べて、装置の長時間使用後においても尖頭部先端の尖度が低下し難い。これは、図14に示すように、装置の長時間使用後において、単結晶に基づく異方性エッチング作用によって尖頭部の全体形状が相似的に小さくなっていくからである。以上より、尖頭部の材質(チップ12bの材質)として「単結晶からなる導電性セラミックス」を使用することにより、装置の長時間使用後における尖頭部先端近傍の電界の強さの低下を抑制することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態では、各尖頭部は、チップ12bの平面と垂直の方向に突出する四角錐状を呈しているが(図2〜図4等を参照)、各尖頭部は、円錐状であってもよいし、円柱形状、針形状、棒形状であってもよい。
また、上記実施形態では、チップ12bにおける複数の尖頭部が形成される基面は平面であるが、曲面(例えば、球面)等であってもよい。また、第1、第2電極12、30がそれぞれ陽極、陰極であるが、第1、第2電極12、30がそれぞれ陰極、陽極であってもよい。
また、本発明は上記実施形態に限定されることなく、内燃機関用の点火装置、殺菌装置、オゾン発生装置、表面改質装置、空気清浄装置、気相反応促進装置等の電界発生に係る種々の装置に適用され得る。
また、上記実施形態のように、本発明に係る電界発生装置としては、プラズマ領域を生成するための強い電界を広範囲に亘って発生させる態様が主として想定されているが、プラズマ領域が生成されない程度に強い電界を広範囲に亘って発生させる態様も本発明に係る電界発生装置に含まれる。
10…取付部、11…本体、12…第1電極、12a…基部、12b…チップ、20…電源、30…第2電極

Claims (9)

  1. 第2電極に対して所定位置に配置される第1電極と、
    前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加して、前記第1、第2電極の間の空間に電界を形成する電源と、
    を備えた電界発生装置であって、
    前記第1電極の表面の少なくとも一部の領域に複数の尖頭部が形成され、前記尖頭部の高さをHとし、前記隣り合う尖頭部の先端間のピッチをPとしたとき、H/P≧0.5の関係が成立する、電界発生装置。
  2. 請求項1に記載の電界発生装置において、
    H≧50μmの関係が成立する、電界発生装置。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の電界発生装置において、
    前記複数の尖頭部の高さは、対応する前記尖頭部の位置が前記領域の中央部から前記領域の外縁部に移動するにつれて小さくなるように構成された、電界発生装置。
  4. 請求項3に記載の電界発生装置において、
    前記複数の隣り合う尖頭部の先端間のピッチは、対応する前記ピッチの位置が前記領域の中央部から前記領域の外縁部に移動するにつれて小さくなるように構成された、電界発生装置。
  5. 請求項4に記載の電界発生装置において、
    前記第1電極は棒形状又は円柱形状又は錐形状又は針形状を呈し、前記第1電極の前記第2電極と対向する側の端面である平面の上に前記複数の尖頭部が形成され、
    前記複数の尖頭部の高さ及び前記複数の隣り合う尖頭部の先端間のピッチは、対応する前記尖頭部の位置及び対応する前記ピッチの位置が前記領域の外縁部側の隣りの位置に移動する毎に5〜50%の割合で減少していくように構成された、電界発生装置。
  6. 請求項5に記載の電界発生装置において、
    前記複数の尖頭部が形成される前記領域が前記平面の中央部に存在し且つ前記平面の外縁部には存在せず、前記平面の中央から前記平面の外縁までの距離をLとし、前記平面の中央から前記領域の外縁までの距離をBとしたとき、0.3≦B/L≦0.9の関係が成立する、電界発生装置。
  7. 請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の電界発生装置において、
    前記第2電極は、前記第1電極に対して、
    前記複数の尖頭部のそれぞれの先端と前記第2電極との間のそれぞれの最短距離のうち最大値・最小値をそれぞれDmax,Dminとしたとき、1≦Dmax/Dmin≦1.3の関係が成立するように配置・構成された、電界発生装置。
  8. 請求項1乃至請求項7の何れか一項に記載の電界発生装置において、
    前記第1電極の前記複数の尖頭部の材質は単結晶からなる導電性セラミックスである、電界発生装置。
  9. 請求項8に記載の電界発生装置において、
    前記単結晶からなる導電性セラミックスは単結晶からなる炭化ケイ素SiCである、電界発生装置。
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