JP2012087374A - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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邦浩 千田
Yasuyuki Hayakawa
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Abstract

【課題】仕上焼鈍後の二次再結晶粒内のβ角の変動を抑え、コイル全長にわたってβ角を適正範囲に制御することによって、製品コイル全ての位置で磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の有利な製造方法を提案する。
【解決手段】冷間圧延した電磁鋼板素材を一次再結晶焼鈍し、その後、コイル状態で二次再結晶させる仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を製造する方法において、上記仕上焼鈍を、鋼板の曲率半径を変化させるあるいはさらに鋼板の曲率の符号を逆転させるコイルの巻き直し工程を挟んで2回以上に分けて行い、1回目の仕上焼鈍における二次再結晶率を面積率で5〜90%とする方向性電磁鋼板の製造方法。
【選択図】図4

Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関し、具体的には、仕上焼鈍時のコイル内における二次再結晶粒の結晶方位を制御し、製品コイル全長にわたって磁気特性に優れる方向性電磁鋼板を製造する方法に関するものである。
方向性電磁鋼板は、最終板厚まで冷間圧延したSi含有鋼板を、脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布し、二次再結晶焼鈍と純化焼鈍を兼ねた仕上焼鈍を施し、その後、未反応の焼鈍分離剤を除去し、平坦化と絶縁被膜の焼き付けを兼ねて連続焼鈍炉を用いた平坦化焼鈍を施すことにより製造されるのが一般的である。ここで、上記二次再結晶させる仕上焼鈍は、鋼板表面にフォルステライト被膜を形成させることの他に、鋼中の不純物成分を除去して純化を図るため、1000℃以上の高温に数10時間保持する必要があることから、通常、鋼板をコイル状態にして、バッチ式の箱型焼鈍炉を用いて行われている。
方向性電磁鋼板の磁気特性は、二次再結晶粒の結晶方位に大きく影響されることから、従来の方向性電磁鋼板の研究開発は、主に二次再結晶粒の結晶方位を磁気特性にとって理想的な方位、いわゆるゴス方位((110)[001])に近づけるべく、その努力がなされてきた。ここで、方向性電磁鋼板の磁気特性との関係で重要な、二次再結晶粒の理想方位(ゴス方位)からのずれを表す指標としては、図1に示すように、鋼板面内でのずれ角αと、板面からの仰角β(3つある<001>軸のうち、圧延方向に最も近い<001>軸と板面とがなす角度;以降、「β角」ともいう。)がある。
なお、上記α角およびβ角は、小さければ小さい程、Goss方位への集積度が高まるため鉄損特性には好ましいようにも考えられる。しかし、β=0°に近づくにつれて渦電流損が増加し、却って、鉄損特性が悪化してしまうという問題が生ずる。そのため、低鉄損を実現する上では適度のβ角を有することが望ましく、一般的には、磁区細分化処理を施す材料では、α=0°、β=0°付近が、また、磁区細分化処理を施さない材料では、α=0°、β=2°付近が好ましいとされている。
上記ずれ角のなかで、特にβ角の制御は、安定的に低鉄損を実現するためには極めて重要である。しかし、鋼板をコイル状態にし、箱型焼鈍炉を用いて行われる仕上焼鈍においては、二次再結晶粒は、図2に示したように、コイルに巻かれたときの鋼板が有する曲率とは無関係に一定方向に成長する。ここで、上記図2は、曲率の大きいコイル内巻部の鋼板中の二次再結晶粒の成長方向を模式的に示したものである。
そのため、仕上焼鈍で二次再結晶した鋼板を、その後、平坦化焼鈍した場合には、二次再結晶粒内部の位置でβ角が変化する、すなわち、二次再結晶の核発生位置である結晶粒の中央部と端部(粒界近傍部)とでは、図3に示したように、平坦化による曲げ戻しに起因してβ角が変動(以下、この変化量を「変動量」ともいう。)する。その結果、大きく成長した二次再結晶粒では、結晶粒の中央部と粒界近傍部とでは、2°を大きく超えるβ角の変動が生じることになる。そして、このようなβ角の大きな変動が生じると、透磁率が低下するとともに、ランセットと呼ばれる補助磁区の生成量が増加して、鉄損特性が大きく低下することになる。
このような現象を抑制するには、二次再結晶粒径を微細化することが有効であり、従来から、種々の技術が開発されてきた。例えば、特許文献1には、二次再結晶時に最終板厚鋼板がその圧延方向に交叉する方向にのびる波形を有しており、二次再結晶焼鈍後の矯正過程において上記波形を消去することで、〔001〕軸が圧延面に対して4.0°以下傾いている結晶組織を二次再結晶粒内に存在せしめた方向性電磁鋼板が、また、特許文献2には、焼鈍分離剤塗布前の工程において、最終板厚鋼板に圧延方向と交差する方向に微小湾曲を付与した後、矯正焼鈍工程を含ませた通常の処理工程で一方向性珪素鋼板を製造し、製品表面に微小歪を付与することで、圧延面に対して4°以下傾斜する〔001〕軸を有しかつ微小歪を有する低鉄損方向性電磁鋼板が、さらに、特許文献3には、冷間圧延した鋼板に圧延方向と交叉する方向に波形を形成し、その波付鋼板を脱炭焼鈍し、引続いて、連続ストリップ方式で2次再結晶焼鈍を行い、次いで、焼鈍分離剤を塗布した上で箱焼鈍による純化焼鈍を行い、その後、上記波付鋼板を平坦化する矯正処理する低鉄損方向性電磁鋼板の製造方法が開示されている。
特公昭57−61102号公報 特公昭58−00747号公報 特公昭58−05969号公報
しかしながら、特許文献1〜3に開示された技術は、いずれも鋼板の圧延方向に交差する方向に波形の歪を付与する必要があるが、冷間圧延した鋼板にこのような加工を施すことは非現実的であり、実用化するには無理がある。また、特許文献1〜3に開示された技術では、二次再結晶方位の集積度を高度に保ったままで、二次再結晶粒径を小さくするのは、一次再結晶集合組織を大きく変える必要があるため限界がある。
本発明は、従来技術が抱える上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、仕上焼鈍後の二次再結晶粒内のβ角の変動を抑え、コイル全長にわたってβ角を適正範囲に制御することによって、製品コイル全ての位置で磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の有利な製造方法を提案することにある。
発明者らは、上記課題を解決するべく、二次再結晶粒を微細化する従来技術以外の方法でコイル全長にわたってβ角を制御する方法について鋭意検討した。その結果、二次再結晶粒内のβ角の変動は、コイル状態に巻かれたときの鋼板が有する曲率に無関係に一方向に成長した二次再結晶粒を曲げ戻して平坦化することによって生ずるものであるから、この現象を逆に利用し、仕上焼鈍(二次再結晶焼鈍)を複数回に分けて行い、その都度、鋼板の曲率を変えて二次再結晶を進行させれば、二次再結晶粒内のβ角の変動を小さく抑制し、かつコイル全長にわたってβ角の変動量を適正範囲に制御することができ、ひいては製品コイルの全てにおいて鉄損特性を改善し得ることに想到し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、冷間圧延した電磁鋼板素材を一次再結晶焼鈍し、その後、コイル状態で二次再結晶させる仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を製造する方法において、上記仕上焼鈍を、コイルの巻き直し工程を挟んで2回に分けて行い、1回目の仕上焼鈍における二次再結晶率を面積率で5〜90%とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法である。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記コイルの巻き直しにより、巻き直し前後で鋼板の曲率半径を変化させることを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記コイルの巻き直しにより、巻き直し前後で鋼板の曲率の符号を逆転させることを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記仕上焼鈍を、コイルの巻き直し工程を挟んで3回以上に分けて行うことを特徴とする。
また、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、上記仕上焼鈍後、磁区細分化処理を施すことを特徴とする。
本発明によれば、製品コイル全長にわたって優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板を製造することができるので、製品品質(磁気特性)の向上のみならず、製品歩留りの向上、製造コストの低減にも寄与する。
方向性電磁鋼板におけるα角およびβ角を説明する図である。 コイル状態の鋼板を二次再結晶させたときの二次再結晶粒内の結晶方位の分布を説明する図である。 コイル状態で二次再結晶させた鋼板を平坦化したときの二次再結晶粒内の結晶方位の分布を説明する図である。 1回目の仕上焼鈍における二次再結晶率と製品コイルの平均鉄損値との関係を示すグラフである。 正転巻き直しによるコイルの巻き直し方法を説明する図である。 反転巻き直しによるコイルの巻き直し方法を説明する図である。 1回目の仕上焼鈍と2回目の仕上焼鈍の間で正転巻き直しを行ったときの2回目の仕上焼鈍における二次再結晶を説明する図であり、(a)は1回目の仕上焼鈍で発生した二次再結晶粒がそのまま粒成長する場合を、(b)は一次再結晶粒内から新たな二次再結晶粒が発生する場合を示す。 1回目の仕上焼鈍と2回目の仕上焼鈍の間で反転巻き直しを行ったときの2回目の仕上焼鈍における二次再結晶を説明する図であり、(a)は1回目の仕上焼鈍で発生した二次再結晶粒がそのまま粒成長する場合を、(b)は一次再結晶粒内から新たな二次再結晶粒が発生する場合を示す。 反転巻き直しがβ角の分布に及ぼす影響を説明する図である(1回目の二次再結晶焼鈍で生じた二次再結晶粒が2回目の二次再結晶焼鈍で成長する場合)。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、冷間圧延したSi含有方向性電磁鋼板素材(冷延鋼板)を一次再結晶焼鈍し、その後、コイル状態で二次再結晶させる仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を製造するに際して、上記仕上焼鈍を、コイルの巻き直し工程を挟んで複数回に分け、かつその都度、コイル状態に巻かれたときの鋼板の曲率を変化させて二次再結晶を進行させることによって、二次再結晶粒内におけるβ角の変動を小さく抑えるとともに、コイル全長にわたってβ角の変動量を適正範囲に制御し、これによってコイル全長にわたって優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板を得ようとする技術である。
すなわち、本発明は、二次再結晶粒内のβ角の変動を抑制しかつβ角の変動量を適正範囲に制御するために、仕上焼鈍における二次再結晶を複数回に分けて行い、それぞれの仕上焼鈍における鋼板の曲率をその都度変更するところに特徴がある。
ここで、仕上焼鈍を2回に分けて行う場合には、1回目の仕上焼鈍における二次再結晶率は、二次再結晶した部分の板面内の面積率にして5〜90%とする必要がある。面積率90%超えでは、1回目の仕上焼鈍のみで二次再結晶を完了させるのと実質的に同じとなり、巨大な二次再結晶粒が生成して、二次再結晶粒の端部(結晶粒界)でのβ角の最大値(粒内のβ角の変動量)が大きくなるからである。同様に、面積率5%未満では、2回目の仕上焼鈍のみで二次再結晶を完了させるのと実質的に同じとなり、巨大な二次再結晶粒が生成して、やはり粒内のβ角の変動量が大きくなるからである。好ましい1回目の仕上焼鈍における再結晶率は、面積率にして30〜70%の範囲である。
上記限定理由の根拠となった実験について説明する。
C:0.05mass%、Si:3.2mass%、Mn:0.10mass%、Se:0.02mass%、Sb:0.04mass%、Al:0.020mass%、N:0.0050mass%およびCu:0.05mass%を含有する鋼スラブを1400℃に加熱後、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とした後、1100℃×60秒の熱延板焼鈍を施し、酸洗し、冷間圧延して板厚0.23mmの冷延板とした。次いで、850℃×120秒の脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施してから、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、内径500mm、外径1500mmのコイルに巻き取り、仕上焼鈍を施し、その後、未反応のMgOを洗浄除去し、絶縁被膜の焼き付けを兼ねた平坦化焼鈍を施して製品コイルとした。
なお、上記仕上焼鈍は、昇温速度20℃/hrで加熱を開始し、昇温過程の途中、あるいは、1050℃まで加熱後の均熱の途中で、いったん降温して1回目の仕上焼鈍における二次再結晶を中断した後、後述する図5に示した正転巻き直しをしてコイル内巻と外巻の位置を逆転させて内径500mmφ、外径1500mmφのコイルに巻き取り、その後、このコイルを再度、昇温速度20℃/hrで1050℃の温度に加熱し、二次再結晶を完了させてから、さらに、1200℃×5hrで純化を図る2回目の仕上焼鈍を施した。なお、1回目の仕上焼鈍後の巻き直し時には、コイルの長さ方向中央部からサンプルを採取して、1回目の仕上焼鈍における二次再結晶率を測定した。
上記のようにして得た各製品コイルの長さ方向両端部および中央部の3箇所からサンプルを採取し、エプスタイン試験法にて鉄損を測定し、上記3箇所の平均鉄損値をその製品コイルの平均鉄損値とした。図4は、上記のようにして得た、1回目の仕上焼鈍における二次再結晶率と、製品コイルの平均鉄損値との関係を示したものである。この図から、1回目の仕上焼鈍による二次再結晶率が5〜90%の範囲で平均鉄損値が改善されており、30〜70%の範囲ではより改善されていることがわかる。
また、仕上焼鈍の回数は、上記のように2回に限定されるものではなく、二次再結晶粒内のβ角の変動をより小さくするため、3回以上に分けて行ってもよい。なお、仕上焼鈍を3回に分けて行う場合には、1回目の仕上焼鈍における再結晶率を5〜70%の範囲とし、2回目の仕上焼鈍後における二次再結晶の面積率を30〜90%の範囲とするのが好ましい。ただし、仕上焼鈍の回数が増えると、製造コストも上昇するので、製造性の観点からは、3回程度を上限とするのが好ましい。
なお、仕上焼鈍を複数回に分ける方法は、二次再結晶温度以上に加熱後、二次再結晶の進行途中で降温し、二次再結晶を中断する方法が現実的で好ましく、また、各仕上焼鈍における二次再結晶率を制御する方法は、上記二次再結晶焼鈍温度および時間と、二次再結晶率との関係を予め求めておき、それに従って焼鈍温度と時間を決定してやればよい。
また、各仕上焼鈍時における鋼板の曲率をその都度変更する方法としては、各仕上焼鈍間で、コイルを巻き直す方法が現実的で好ましく、具体的には、図5に示したように仕上焼鈍後のコイルを、そのまま巻き戻して巻き取る方法(以降、「正転巻き直し」ともいう)と、図6に示したように仕上焼鈍後のコイルを、巻き取る方向を逆転して、すなわち、表裏を逆転して巻き取る方法(以降、「反転巻き直し」ともいう)とがあるが、いずれも用いることができる。
ここで、図5の正転巻き直しについて説明すると、この正転巻き直しを行うことによって、直前の仕上焼鈍におけるコイル内巻部(A端)は、コイル外巻部へと移動する結果、上記A端は、大きな曲率(小さな曲率半径)から小さな曲率(大きな曲率半径)へと変化する。逆に、直前の仕上焼鈍におけるコイル外巻部(B端)は、コイル内巻部へと移動する結果、上記B端は、小さな曲率(大きな曲率半径)状態から大きな曲率(小さな曲率半径)へと変化する。
また、図6の反転巻き直しについて説明すると、この反転巻き直しを行うことによって、直前の仕上焼鈍におけるコイル内巻部(A端)およびコイル外巻部(B端)は、それぞれコイル内位置および曲率(曲率半径)は上記のように変化するが、それに加えてさらに、鋼板の曲げ方向、すなわち、曲率の符号も逆転する。したがって、この反転巻き直しは、正転巻き直しよりも鋼板の曲率の変化量が大きいため、後述するようにβ角の変動を抑制する効果が大きい。
上記のように、本発明は、二次再結晶粒の成長途中で粒成長を停止し、コイルを巻き直してコイル各部の曲率を変更しつつ、二次再結晶を完了させることによって、β角を適正範囲に制御しようとするものである。したがって、1回目、2回目(あるいは3回目以降)の仕上焼鈍時のコイル内径および外径は、鋼板の長さや板厚、二次再結晶粒の大きさ等を考慮し、最終仕上焼鈍後(二次再結晶完了後)にコイル全長にわたってβ角の変動量(もしくは最大値)が最も小さくなるよう、適正な値を選択する必要がある。
以下、仕上焼鈍を2回に分けて仕上焼鈍する本発明の方法について具体的に説明する。
図7(a)は、1回目の仕上焼鈍で、二次再結晶を途中で停止させたときのコイル内巻部(A端)の二次再結晶の進行状況を表した図であり、二次再結晶粒と一次再結晶粒とが混在する状態を示したものである。この場合には、従来技術の仕上焼鈍の場合のように二次再結晶粒は巨大に成長していないため、二次再結晶粒内における[001]軸と鋼板面とがなすずれ角(β角)の変動量は図2より小さい。
ここで、1回目の仕上焼鈍後、図5に示した正転巻き直しでコイルを巻き直した場合には、1回目の仕上焼鈍時のコイル内巻部のA端は、コイル外巻部へと移動する結果、A端における鋼板の大きな曲率(小さな曲率半径)は小さな曲率(大きな曲率半径)へと変化する。そして、この状態で2回目の仕上焼鈍を再度施して二次再結晶を進行させた場合には、1回目の仕上焼鈍で発生した二次再結晶粒がそのまま成長して巨大な二次再結晶粒を形成するか、あるいは、巻き直しによる曲率変化に起因した内部歪によって、一次再結晶粒内から新たな二次再結晶核が生成し、この二次再結晶粒が粒成長する、のいずれかの現象が起こると考えられる。
図7(b)は、前者の場合、即ち、1回目の仕上焼鈍で発生した二次再結晶粒がそのまま成長して巨大な二次再結晶粒を形成する場合を示したものである。この場合には、図7(b)からわかるように、2回目の仕上焼鈍時の鋼板の曲率は1回目の仕上焼鈍よりも小さくなっているため、二次再結晶粒がそのまま成長しても、二次再結晶粒内のβ角の変動量は、図2のときのように大きくならない。その結果、1回目の仕上焼鈍でのβ角が小さくなることに加えて、2回目の仕上焼鈍でのβ角の増大が抑制されるので、二次再結晶完了後の粒内のβ角の変動量はより小さく抑えられ、鉄損特性が改善されることが期待される。
一方、図7(c)は、上記後者の場合、すなわち、2回目の仕上焼鈍で、一次再結晶粒内から新たな二次再結晶粒が発生する場合を示したものである。この場合には、新たに発生した二次再結晶粒は、1回目の仕上焼鈍で発生した二次再結晶粒のβ角の影響を受けることなく核生成するので、β角=0°に近い状態から粒成長することになる。その結果、二次再結晶粒内のβ角の変動量は、1回目の仕上焼鈍で発生した二次再結晶がそのまま成長する図7(b)の場合よりも小さくなる。さらに、この場合には、1回目の仕上焼鈍で発生した二次再結晶粒に、2回目の仕上焼鈍で発生した二次再結晶粒が加わり、それらの二次再結晶粒の境界には結晶粒界や擬似粒界ができるため、二次再結晶粒を微細化したのと同じ磁区細分化効果が得られる。その結果、上記β角の変動抑制による鉄損改善効果と相俟って、より大きな鉄損特性の改善が期待される。
さらに、図6に示した反転巻き直しをした場合には、上記に説明した正転巻き直しの場合よりも、さらに鉄損特性の改善が期待できる。
というのは、反転巻き直しを行った場合には、1回目の仕上焼鈍時のコイル内巻部のA端は、コイル外巻部に移動するだけでなく、鋼板の曲げ方向も逆転する。その結果、A端における鋼板の大きな曲率(小さな曲率半径)は小さな曲率(大きな曲率半径)へと変化することに加えて曲率の符号も逆転するので、正転巻き直しの場合よりも鋼板の曲率の変化量は大きい。そして、この状態で2回目の仕上焼鈍を施した場合にも、1回目の仕上焼鈍で発生した二次再結晶粒がそのまま成長して巨大な二次再結晶粒を形成するか、あるいは、一次再結晶粒内から新たな二次再結晶核が生成し、粒成長する、のいずれかの現象が起こると考えられる。
図8(b)は、上記前者の場合、即ち、1回目の仕上焼鈍で発生した二次再結晶粒がそのまま成長して巨大な二次再結晶粒を形成する場合を示したものである。この場合には、1回目の仕上焼鈍でのβ角が小さいことに加えて、図8(b)からわかるように、反転巻き直しで曲率が逆転する結果、2回目の仕上焼鈍時の鋼板の板面は、1回目の仕上焼鈍で発生した二次再結晶粒の粒成長方向に沿う方向(鋼板面により近い方向)になっている。その結果、二次再結晶粒内のβ角の変動量は、図7(b)のときよりもさらに小さくなり、鉄損特性がより改善することが期待される。
また、図8(c)は、上記後者の場合、すなわち、2回目の仕上焼鈍で、一次再結晶粒内から新たな二次再結晶粒が発生する場合を示したものである。この場合にも、新たに発生した二次再結晶粒は、1回目の仕上焼鈍で発生した二次再結晶粒のβ角の影響を受けることなく、β角=0°に近い状態から粒成長することになるので、1回目の仕上焼鈍で発生した二次再結晶がそのまま成長する図8(b)のときよりもβ角の変動量は小さくなる。また、新たな二次再結晶粒の発生は、二次再結晶粒の微細化と同じ効果をもたらす。さらに、この反転巻き直しを行った場合には、鋼板の曲率の変化量が正転巻き直しの場合よりも大きいので、一次再結晶粒内から新たな二次再結晶粒が発生する確率が、正転巻き直しの場合よりも高くなる。その結果、図8(c)の場合におけるβ角の変動量は、1回目の仕上焼鈍で発生した二次再結晶がそのまま成長する図8(b)の場合や、前述した図7(b)および図7(c)の場合よりも、さらに小さくなる。したがって、反転巻き直しを行った場合には、正転巻き直しを行った場合よりも大きな鉄損改善効果が期待できる。
ここで、1回目の仕上焼鈍(二次再結晶焼鈍)で発生した二次再結晶粒が、反転巻き直し後にそのまま成長して巨大な二次再結晶粒を形成する場合について説明する。
図9は、内径24インチ(600mmφ)のコイル内巻部を模擬し、曲率半径300mmに湾曲させた一次再結晶後の電磁鋼板素材を、従来の仕上焼鈍方法(1回の仕上焼鈍)で、二次再結晶粒を核発生位置から圧延方向に向かって前後に20mmずつ成長させて粒径40mmの巨大粒へと成長させたときの二次再結晶粒内のβ角の分布と、本発明の仕上焼鈍方法を適用し、1回目の仕上焼鈍で、核発生位置から圧延方向に向かって前後に10mmずつ二次再結晶粒を成長させた後、曲率半径は同じ300mmで、曲げ方向のみを反転させてから、2回目の仕上焼鈍を施して引続き二次再結晶粒を成長させて粒径40mmの二次再結晶粒としたときの粒内のβ角の分布を、核発生位置のβ角=0°として比較して示したものである。この図から、1回の仕上焼鈍で二次再結晶を完了させる従来の仕上焼鈍方法では、二次再結晶粒の端部(結晶粒界)におけるβ角の最大値は4°にまで達しているのに対し、本発明の仕上焼鈍方法ではβ角の最大値は2°程度に半減し、理想とするβ角(2°)に近づいていることがわかる。
なお、図9では、二次再結晶の核発生位置ではβ角=0°と仮定したが、実際の二次再結晶核のβ角は±3°程度の範囲内にあり、さらに、圧延方向への粒成長も必ずしも均等ではない。そのため、1回の仕上焼鈍で二次再結晶を完了させる従来の仕上焼鈍方法では、二次再結晶粒内のβ角の最大値は上記計算値(4°)よりさらに大きい値となり、磁気特性も大きく劣化することになる。この点、本発明の仕上焼鈍方法は、二次再結晶粒が巨大化してもβ角の変動量の増大を抑制でき、しかも、2回目の仕上焼鈍で新たな二次再結晶粒が発生したときには、結晶粒の微細化と同じ効果が得られるので、鉄損改善効果は極めて大きい。
なお、上記説明では、1回目の仕上焼鈍時のコイル内巻部(A端)を例にとって説明したが、1回目の仕上焼鈍時のコイル外巻部(図5,5のB端)についても、まったく同様にして鉄損低減効果が得られる。すなわち、1回目の仕上焼鈍時のコイル外巻(B端)は、図5の正転巻き戻しをした場合には、コイル内巻となって、鋼板の曲率が小(曲率半径が大)から大(曲率半径が小)へと変化し、また、図6の反転巻き戻しをした場合には、上記曲率半径の変化に加えて、鋼板の曲げ方向(曲率の符号)も変化する。そのため、1回目の仕上焼鈍時のコイル外巻部(B端)も、内巻部(A端)と同様、二次再結晶粒内のβ角の変動抑制と適度のβ角の付与、ならびに、結晶粒の微細化効果を得ることできる。したがって、本発明に係る方法(仕上焼鈍方法)で製造した方向性電磁鋼板は、コイル内の全ての位置で、二次再結晶粒内のβ角の変動が抑制されるとともに、適度のβ角を付与することができるので、製品コイルの全長にわたって鉄損特性に優れたものとすることができる。
上記に説明したように、本発明に係る製造方法(仕上焼鈍方法)は、磁区細分化処理を施さない場合において、低鉄損を実現するのに理想とされる2°程度のβ角をコイル全長にわたって均一に付与することができるので、特にGoss方位への集積度が高い方向性電磁鋼板、すなわち、α≒0°、β=0〜2°が得られ易く、かつ、磁区細分化処理を施さない高磁束密度の方向性電磁鋼板の製造方法に用いた場合に優れた効果が得られる。ただし、本発明の製造方法において、磁区細分化処理を施してもよいことは勿論である。
本発明の方向性電磁鋼板の製造方法は、箱焼鈍炉を用いてコイル状態で二次再結晶させる方向性電磁鋼板の製造方法であれば、仕上焼鈍を上述した条件で行うこと以外、特に制限なく適用することができる。
また、本発明の製造方法は、二次再結晶を発現させるメカニズムの違いによらず適用可能であり、例えば、AlNやMnS,MnSe等のインヒビターを用いて二次再結晶を生じさせる方向性電磁鋼板の製造方法や、上記インヒビター成分を用いずに二次再結晶を起こさせる方向性電磁鋼板の製造方法のいずれにも適用することができる。
なお、本発明の製造方法に用いる鋼素材としては、例えば、インヒビターを用いる場合には、C:0.005〜0.080mass%、Si:2.0〜5.0mass%、Mn:0.03〜0.20mass%を含有する鋼に、インヒビター形成元素としてAl,N,SおよびSeをそれぞれ、sol.Al:0.010〜0.120mass%、N:0.005〜0.015mass%、S:0.005〜0.020mass%、Se:0.01〜0.04mass%を適宜含有し、さらに上記インヒビターの効果を高める補強元素としてSb,Bi,Mo,Cu,P,Snなどを適宜添加した鋼を好適に用いることができる。なお、上記成分のうち、Cは主として脱炭焼鈍において、また、S,Se,N,Al,P等は仕上焼鈍後半の純化焼鈍において除去される。
一方、インヒビターを用いない場合の鋼素材としては、C:0.02mass%以下、Si:1.0〜5.0mass%、Al:0.0100mass%以下、N:0.0050mass%以下を含有し、インヒビター効果を有するB,Nb,V,S,SeおよびPを0.0050mass%以下に低減した鋼であれば好適に用いることができる。なお、上記鋼には、鉄損特性を改善するため、Mn:0.02〜2.0mass%、Ni:0.005〜2.0mass%、Sn:0.01〜2.0mass%、Sb:0.005〜0.5mass%、Cu:0.01〜2.0mass%、Mo:0.01〜0.50mass%、Cr:0.01〜2.0mass%を適宜添加してもよい。
C:0.05mass%、Si:3.2mass%、Mn:0.10mass%、S:0.02mass%、Sb:0.04mass%、Al:0.020mass%、N:0.0050mass%およびCu:0.05mass%を含有する鋼スラブを1400℃に加熱後、熱間圧延して板厚が2.0mmの熱延板とし、1100℃×60秒の熱延板焼鈍を施した後、酸洗し、冷間圧延して最終板厚0.23mmの冷延板とした。次いで、再結晶焼鈍と脱炭焼鈍を兼ねた850℃×120秒の一次再結晶焼鈍を施した後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布・乾燥し、内径500mmφ、外径1500mmφのコイルに巻き取り、箱焼鈍炉を用いて以下に示す2方法で仕上焼鈍を施した。
(A法:従来の仕上焼鈍方法)
昇温速度20℃/hrで1200℃まで加熱後、50hr保持する1回の焼鈍で、二次再結晶と純化を完了させる仕上焼鈍を施した。
(B法:本発明の仕上焼鈍方法)
20℃/hrで1050℃まで昇温した後、直ちに降温する1回目の仕上焼鈍で二次再結晶を中途まで進行させた後、仕上焼鈍を中断して冷却し、図5に示した正転巻き直しをしてコイル内巻と外巻の位置を逆転させて内径500mmφ、外径1500mmφのコイルに巻き取り、その後、このコイルを、20℃/hrで1200℃まで加熱した後、1200℃×5hrで純化を図る2回目の仕上焼鈍を施して二次再結晶を完了させた。なお、上記1回目の仕上焼鈍後の巻き直し時に、コイルの長さ方向中央部から採取したサンプルで二次再結晶の進行状況を確認したところ、面積率にして40%で二次再結晶が完了し、残りは一次再結晶粒のままであった。
次いで、上記のようにして得た仕上焼鈍後の鋼板表面から未反応MgOを洗浄除去し、絶縁被膜の焼き付けと平坦化焼鈍を兼ねた連続焼鈍を施して方向性電磁鋼板(製品コイル)とした。その際、製品コイルの内巻部および外巻部からサンプルを採取し、エプスタイン試験法にて磁気特性(磁束密度B、鉄損W17/50)を測定し、その結果を純化焼鈍時のコイル内位置別に比較して表1に示した。
Figure 2012087374
表1から、従来の仕上焼鈍方法(A法)で製造した方向性電磁鋼板では、純化焼鈍時のコイル外巻部では良好な磁気特性が得られているものの、コイル内巻部では、磁束密度Bが低く、鉄損値W17/50も大きくなっている。これに対して、本発明の仕上焼鈍方法(B法)で製造した方向性電磁鋼板では、コイルの位置に関係なく全長にわたって良好な磁気特性が得られている。
この理由は、従来の仕上焼鈍方法では、コイル内巻部および外巻部は、それぞれ曲率半径250mm,750mmにて二次再結晶が完了するため、二次再結晶粒内のβ角の変動量が大きく、特に、コイル内巻部のβ角の変動量が大きいので、鉄損特性は大きく劣化する。これに対して本発明の仕上焼鈍方法では、1回目の仕上焼鈍でのコイル内巻部および外巻部は、それぞれ曲率半径250mm,750mmにて二次再結晶粒が成長するが、図5に示した正転巻き直しを行うことで、2回目の仕上焼鈍では、それらの関係が逆転し、それぞれ曲率半径750mm,250mmにて二次再結晶粒が成長するので、コイル長さ方向のβ角の変動が小さく抑えられる。さらに、本発明の仕上焼鈍方法では、従来の仕上焼鈍方法ではβ角が小さくなり過ぎるコイル外巻部にも適度なβ角を付与することができる。その結果、二次再結晶粒内のβ角の変動量がコイル全長にわたって均一化されるので、従来の仕上焼鈍方法と比較し、低鉄損を実現できるものと考えられる。
C:0.05mass%、Si:3.2mass%、Mn:0.10mass%、S:0.02mass%、Al:0.020mass%およびN:0.0050mass%を含有する鋼スラブを1400℃に加熱後、熱間圧延して板厚が2.0mmの熱延板とし、1100℃×60秒の熱延板焼鈍を施した後、酸洗し、1回目の冷間圧延で板厚1.5mmの中間板厚とし、1050℃×60秒の中間焼鈍後、最終冷間圧延により最終板厚が0.23mmの冷延板とした。次いで、再結晶焼鈍と脱炭焼鈍を兼ねた850℃×120秒の一次再結晶焼鈍を施した後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板表面に塗布・乾燥し、内径500mmφ、外径1500mmφのコイルに巻き取り、箱焼鈍炉を用いて以下に示す2方法で仕上焼鈍を施した。
(A´法:従来の仕上焼鈍方法)
昇温速度15℃/hrで900℃まで加熱後、30hr保持して二次再結晶を完了させた後、1200℃×5hrで純化する仕上焼鈍を施した。
(C法:本発明の仕上焼鈍方法)
15℃/hrで900℃まで加熱後、10hr保持する1回目の仕上焼鈍で二次再結晶を中途まで進行させた後、仕上焼鈍を中断して冷却し、図6に示した反転巻き直しでコイル内巻と外巻の位置および表裏を逆転させて内径500mmφ、外径1500mmφのコイルに巻き取り、その後、このコイルを、30℃/hrで900℃の温度に加熱し、30hr保持して二次再結晶を完了させた後、1200℃×5hrで純化する2回目の仕上焼鈍を施した。なお、上記1回目の仕上焼鈍後の巻き直し時に、コイルの長さ方向中央部から採取したサンプルで二次再結晶の進行状況を確認したところ、面積率にして50%で二次再結晶が完了し、残りは一次再結晶粒のままであった。
次いで、上記のようにして得た仕上焼鈍後の鋼板表面から未反応MgOを洗浄除去し、絶縁被膜の焼き付けと平坦化焼鈍を兼ねた連続焼鈍を施して方向性電磁鋼板(製品コイル)とした。その際、製品コイルの内巻部および外巻部からサンプルを採取し、エプスタイン試験法にて磁気特性(磁束密度B、鉄損W17/50)を測定し、その結果を純化焼鈍時のコイル内位置別に比較して表2に示した。
Figure 2012087374
表2から、従来の仕上焼鈍方法(A´法)で製造した方向性電磁鋼板では、純化焼鈍時のコイル外巻部では良好な磁気特性が得られているものの、コイル内巻部では、磁束密度Bが低く、鉄損値W17/50も大きくなっている。これに対して、本発明の仕上焼鈍方法(C法)で製造した方向性電磁鋼板では、コイルの位置に関係なく全長にわたって良好な磁気特性が得られている。しかも、従来の仕上焼鈍方法で製造した方向性電磁鋼板の磁気特性は、実施例1の比較例の磁気特性と大差がないのに対して、本発明の仕上焼鈍方法(C法)で製造した方向性電磁鋼板の磁気特性は、実施例1の発明例(B法)の磁気特性よりもさらに改善されており、比較例との差が大きくなっている。
この理由は、実施例1の本発明の仕上焼鈍方法(B法)では、1回目の仕上焼鈍後の巻き直しを図5に示した正転巻き直しで行っているのに対して、本実施例の仕上焼鈍方法(C法)では、1回目の仕上焼鈍後の巻き直しを、図6に示した鋼板の曲げ方向を逆転させる反転巻き直しで行っているため、β角の変動がより小さく抑えられたことに加えて、擬似的な結晶粒界が導入されて二次再結晶粒の微細化効果が発現したことによるものと考えられる。
C:0.05mass%、Si:3.2mass%、Mn:0.10mass%、S:0.02mass%、Sb:0.04mass%、Al:0.0050mass%、N:0.0030mass%およびCu:0.05mass%を含有する鋼スラブを1250℃に加熱後、熱間圧延して板厚が2.0mmの熱延板とし、1100℃×60秒の熱延板焼鈍を施した後、酸洗し、冷間圧延し、最終板厚が0.23mmの冷延板とした。次いで、再結晶焼鈍と脱炭焼鈍を兼ねた850℃×120秒の一次再結晶焼鈍を施した後、以下のA´´法は、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、以下のC´、D法は、焼鈍分離財を塗布せず、内径500mmφ、外径1500mmφのコイルに巻き取り、箱焼鈍炉を用いて以下に示す3方法で仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を製造した。
(A´´法:従来の仕上焼鈍方法)
昇温速度10℃/hrで900℃まで加熱後、50hr保持して二次再結晶を完了させた後、1200℃×5hrで純化を図る仕上焼鈍を施した。
(C´法:本発明の仕上焼鈍方法)
10℃/hrで900℃まで加熱後、20hr保持する1回目の仕上焼鈍で二次再結晶を中途まで進行させた後、仕上焼鈍を中断して冷却し、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布・乾燥し、図6に示した反転巻き直しでコイル内巻と外巻の位置および表裏を逆転させて内径500mmφ、外径1500mmφのコイルに巻き取り、その後、このコイルを、30℃/hrで900℃まで昇温後、40hr保持して二次再結晶を完了させた後、1200℃×5hrで純化する2回目の仕上焼鈍を施した。なお、上記1回目の仕上焼鈍後の巻き直し時に、コイルの長さ方向中央部から採取したサンプルで二次再結晶の進行状況を確認したところ、面積率にして60%で二次再結晶が完了し、残りは一次再結晶粒のままであった。
(D法:本発明の仕上焼鈍方法)
10℃/hrで900℃まで昇温後、10hr保持する1回目の仕上焼鈍を施して二次再結晶を中途まで進行させた後、仕上焼鈍を中断して冷却し、図6に示した反転巻き直しでコイル内巻と外巻の位置および表裏を逆転させて内径500mmφ、外径1500mmφのコイルに巻き取り、内径500mmφ、外径1500mmφのコイルとした。
次いで、上記コイルを、30℃/hrで900℃まで昇温後、10hr保持する2回目の仕上焼鈍を施して二次再結晶をさらに進行させた後、仕上焼鈍を中断して冷却し、図6に示した反転巻き直しでコイル内巻と外巻の位置および表裏を逆転させて再度、内径500mmφ、外径1500mmφのコイルとした。
その後、30℃/hrで昇温し、900℃×20hrで二次再結晶を完了させた後、MgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布し、1200℃×5hrで純化する3回目の仕上焼鈍を施した。なお、上記1回目の仕上焼鈍後および2回目の仕上焼鈍後の巻き直し時に採取したサンプルで二次再結晶の進行状況を確認したところ、それぞれ面積率にして30%および60%の部分で二次再結晶が完了しており、残りは一次再結晶粒のままであった。
次いで、上記のようにして得た仕上焼鈍後の鋼板表面から未反応MgOを洗浄除去し、絶縁被膜の焼き付けと平坦化焼鈍を兼ねた連続焼鈍を施した後、圧延直角方向に対して10°傾斜した方向に、8mm間隔でプラズマジェットを線状に照射して磁区細分化処理を施して方向性電磁鋼板(製品コイル)とした。次いで、上記のようにして得た製品コイルの内巻および外巻からサンプルを採取し、SST試験器(Single Strip Tester)にて磁気特性を測定し、その結果を純化焼鈍時のコイル内位置別に比較して表3に示した。
Figure 2012087374
表3から、従来の仕上焼鈍方法(A´´法)で製造した方向性電磁鋼板では、磁区細分化処理を施したことで磁気特性は改善されてはいるものの、純化焼鈍時のコイル外巻部ではやはり、磁束密度Bが低く、鉄損値W17/50も大きくなっている。これに対して、本発明の仕上焼鈍方法(C´法、D法)で製造した方向性電磁鋼板では、コイルの反転巻き直しにより鋼板の曲率を変化させて仕上焼鈍を行ったことと、磁区細分化処理の効果とが相俟って、コイルの位置に関係なく全長にわたって良好な磁気特性が得られている。特に、2回のコイル巻き直しを行ったD法では、磁気特性の向上が著しい。

Claims (5)

  1. 冷間圧延した電磁鋼板素材を一次再結晶焼鈍し、その後、コイル状態で二次再結晶させる仕上焼鈍を施して方向性電磁鋼板を製造する方法において、上記仕上焼鈍を、コイルの巻き直し工程を挟んで2回に分けて行い、1回目の仕上焼鈍における二次再結晶率を面積率で5〜90%とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 上記コイルの巻き直しにより、巻き直し前後で鋼板の曲率半径を変化させることを特徴とする請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 上記コイルの巻き直しにより、巻き直し前後で鋼板の曲率の符号を逆転させることを特徴とする請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  4. 上記仕上焼鈍を、コイルの巻き直し工程を挟んで3回以上に分けて行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  5. 上記仕上焼鈍後、磁区細分化処理を施すことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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