JP2012076384A - 積層多孔質フィルム及び電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】電池内部で異常発熱が発生した場合には速やかにシャットダウンし、かつ、シャットダウンした状態を幅広い温度に亘って維持することができ、さらにセパレータとして使用可能な突刺し強度を有する積層多孔質フィルムを提供する。
【解決手段】ポリエチレン系樹脂から形成される多孔質層(A)と、耐熱性樹脂及び無機フィラーから形成される多孔質層(B)とを含む積層多孔質フィルムであって、
前記多孔質層(A)が、該多孔質層(A)に含まれる樹脂成分を100重量%とするとき、重量平均分子量が100万以上である超高分子量ポリエチレンを5〜70重量%と、重量平均分子量が5〜80万である直鎖状低密度ポリエチレンを5〜40重量%含む積層多孔質フィルム。
【選択図】なし
【解決手段】ポリエチレン系樹脂から形成される多孔質層(A)と、耐熱性樹脂及び無機フィラーから形成される多孔質層(B)とを含む積層多孔質フィルムであって、
前記多孔質層(A)が、該多孔質層(A)に含まれる樹脂成分を100重量%とするとき、重量平均分子量が100万以上である超高分子量ポリエチレンを5〜70重量%と、重量平均分子量が5〜80万である直鎖状低密度ポリエチレンを5〜40重量%含む積層多孔質フィルム。
【選択図】なし
Description
本発明は、積層多孔質フィルム及び電池に関する。
非水電解液二次電池、特にリチウムイオン二次電池は、エネルギー密度が高いので、パーソナルコンピューター、携帯電話、携帯情報端末、電気自動車などの電池として、広く使用されている。リチウム二次電池は可燃性の有機溶媒を使用しているため、電池や電池を用いている機器の破損等の異常により内部短絡・外部短絡が生じた場合に爆発にいたる可能性を有しているため、昨今のエネルギー密度の増大に伴い安全に対する要求も高くなっている。
非水電解液二次電池には、正極と負極とが接触しないように、これらの間にセパレータが配されている。セパレータには、高い突刺し強度とシャットダウン機能が求められることから、超高分子量ポリエチレンからなる多孔質フィルムが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1に記載されているような、超高分子量ポリエチレンのみから形成された多孔質フィルムをセパレータとして用いた場合には、シャットダウンを開始する温度が高い、高温でセパレータが破膜してしまう、という問題があった。
本発明の目的は、電池内部で異常発熱が発生した場合には速やかにシャットダウンし、かつ、シャットダウンした状態を幅広い温度に亘って維持することができ、さらにセパレータとして使用可能な突刺し強度を有する積層多孔質フィルム、およびそのような積層多孔質フィルムを含む電池を提供することである。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[3]に係るものである。
[1]ポリエチレン系樹脂から形成される多孔質層(A)と、耐熱性樹脂及び無機フィラーから形成される多孔質層(B)とを含む積層多孔質フィルムであって、
前記多孔質層(A)が、該多孔質層(A)に含まれる樹脂成分を100重量%とするとき、重量平均分子量が100万以上である超高分子量ポリエチレンを5〜70重量%と、重量平均分子量が5〜80万である直鎖状低密度ポリエチレンを5〜40重量%含む積層多孔質フィルム。
[2]多孔質層(A)が、該多孔質層(A)に含まれる樹脂成分を100重量%とするとき、重量平均分子量が500〜3000であるポリオレフィンワックスを1〜30重量%含む上記[1]の積層多孔質フィルム。
[3]上記[1]または[2]の積層多孔質フィルムを含む電池。
[1]ポリエチレン系樹脂から形成される多孔質層(A)と、耐熱性樹脂及び無機フィラーから形成される多孔質層(B)とを含む積層多孔質フィルムであって、
前記多孔質層(A)が、該多孔質層(A)に含まれる樹脂成分を100重量%とするとき、重量平均分子量が100万以上である超高分子量ポリエチレンを5〜70重量%と、重量平均分子量が5〜80万である直鎖状低密度ポリエチレンを5〜40重量%含む積層多孔質フィルム。
[2]多孔質層(A)が、該多孔質層(A)に含まれる樹脂成分を100重量%とするとき、重量平均分子量が500〜3000であるポリオレフィンワックスを1〜30重量%含む上記[1]の積層多孔質フィルム。
[3]上記[1]または[2]の積層多孔質フィルムを含む電池。
本発明によれば、電池内部で異常発熱が発生した場合には速やかにシャットダウンし、かつ、シャットダウンした状態を幅広い温度に亘って維持することができ、さらにセパレータとして使用可能な突刺し強度を有する積層多孔質フィルム、およびそのような積層多孔質フィルムを含む電池を提供することができる。
本発明は、ポリエチレン系樹脂から形成される多孔質層(A)と、耐熱性樹脂及び無機フィラーから形成される多孔質層(B)とを含む積層多孔質フィルムであって、前記多孔質層(A)が、該多孔質層(A)に含まれる樹脂成分を100重量%とするとき、重量平均分子量が100万以上である超高分子量ポリエチレンを5〜70重量%と、重量平均分子量が5〜80万である直鎖状低密度ポリエチレンを5〜40重量%含む積層多孔質フィルムである。
まず、ポリエチレン系樹脂から形成される多孔質層(A)について、説明する。
多孔質層(A)は、該多孔質層(A)に含まれる樹脂成分を100重量%とするとき、重量平均分子量が100万以上である超高分子量ポリエチレンを5〜70重量%、好ましくは10〜50重量%含む。多孔質層(A)に含まれる超高分子量ポリエチレンの量が5重量%以上であると、このような多孔質層(A)を含む積層多孔質フィルムは、突刺し強度に優れる。
本発明における超高分子量ポリエチレンとしては、エチレンの単独重合体や、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等のα−オレフィンとエチレンとを共重合した共重合体が挙げられる。
本発明における超高分子量ポリエチレンとしては、エチレンの単独重合体や、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン等のα−オレフィンとエチレンとを共重合した共重合体が挙げられる。
また多孔質層(A)は、該多孔質層(A)に含まれる樹脂成分を100重量%とするとき、重量平均分子量5〜80万の直鎖状低密度ポリエチレンを5〜40重量%、より好ましくは10〜40%含む。多孔質層(A)に含まれる直鎖状低密度ポリエチレンの量が5重量%以上であると、このような多孔質層(A)を含む積層多孔質フィルムは、低温でシャットダウンすることができる。
本発明における直鎖状低密度ポリエチレンとしては、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィンとを共重合して得られる共重合体が挙げられる。
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、通常0.910〜0.930である。
本発明における直鎖状低密度ポリエチレンとしては、エチレンと、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィンとを共重合して得られる共重合体が挙げられる。
直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、通常0.910〜0.930である。
多孔質層(A)は、さらに重量平均分子量が500〜3000であるポリオレフィンワックスを含むことが好ましい。ポリオレフィンワックスの重量平均分子量は、好ましくは500〜2500である。
多孔質層(A)に含まれるポリオレフィンワックスの量は、該多孔質層(A)に含まれる樹脂成分を100重量%とするとき、1〜30重量%であり、好ましくは3〜20重量%である。
ポリオレフィンワックスとしては、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体等のポリエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリプロピレン系重合体、4−メチルペンテン−1重合体、ポリ(ブテン−1)、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。超高分子量ポリエチレンとの相溶性に優れるポリオレフィンワックスを選択することが好ましく、具体的にはエチレン単独重合体またはエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリエチレンワックスを用いることが好ましい。
多孔質層(A)に含まれるポリオレフィンワックスの量は、該多孔質層(A)に含まれる樹脂成分を100重量%とするとき、1〜30重量%であり、好ましくは3〜20重量%である。
ポリオレフィンワックスとしては、エチレン単独重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体等のポリエチレン系重合体、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体等のポリプロピレン系重合体、4−メチルペンテン−1重合体、ポリ(ブテン−1)、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。超高分子量ポリエチレンとの相溶性に優れるポリオレフィンワックスを選択することが好ましく、具体的にはエチレン単独重合体またはエチレン−α−オレフィン共重合体等のポリエチレンワックスを用いることが好ましい。
超高分子量ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリオレフィンワックスの重量平均分子量は、一般的にGPC測定により求めることができる。
多孔質層(A)の製造方法としては、(1)超高分子量ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、任意でポリオレフィンワックスと、フィラーとを混練して樹脂組成物を得、該樹脂組成物を用いてシートを作成し、該シートを延伸する方法、(2)前記(1)の方法の後、フィラーを除去する方法、(3)超高分子量ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、任意でポリオレフィンワックスと、フィラーとを混練して樹脂組成物を得、該樹脂組成物を用いてシートを作成し、該シートからフィラーを除去した後、延伸する方法、(4)超高分子量ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンを流動パラフィンなどの溶媒となる成分と混練して樹脂組成物を得、該樹脂組成物を用いてシートを作成し、該シートを延伸し、該延伸フィルムから溶媒を除去し、場合によっては更に該フィルムを延伸する方法、(5)超高分子量ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンをシート成型し、100〜140℃でアニール処理をした後に、0〜40℃で次いで70〜130℃で延伸する方法 が挙げられる。
特に、(1)〜(3)のフィラーを用いる方法が好ましい。
特に、(1)〜(3)のフィラーを用いる方法が好ましい。
フィラーとしては、一般的に充填剤と呼ばれる無機又は有機の微粒子を用いることができる。無機の微粒子としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、ハイドロタルサイト、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、ゼオライト、ガラス粉、酸化亜鉛などの微粒子が使用される。有機の微粒子としては、公知の樹脂微粒子が用いられ、該樹脂としてスチレン、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、グリシジルメタクリレート、アクリル酸メチルなどのモノマーを単独あるいは2種類以上重合して得られる重合体、メラミン、尿素などの重縮合樹脂の微粒子が挙げられる。
フィラーを含む樹脂組成物を用いて多孔質層(A)を製造する場合、該樹脂組成物からなるシートを延伸する前、又は延伸した後にフィラーを除去することが好ましい。そのため、中性、酸性やアルカリ性などの水溶液で簡便に除去できるフィラーを使用することが好ましい。例えば前述の微粒子の中ではタルク、クレー、カオリン、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、酸化亜鉛、シリカが挙げられる。これらの中でも炭酸カルシウムが好ましい。
フィラーの平均粒径は、0.01〜3μmであることが好ましく、0.02〜1μmであることがより好ましく、0.05〜0.5μmであることが最も好ましい。平均粒径が3μm以下のフィラーを用いると、より突刺し強度に優れる積層多孔質フィルムを得ることができ、0.01μm以上のフィラーを用いると、フィラーが均一に分散しやすくなるため、均一に開孔した多孔質層(A)を得ることができる。
フィラーは、表面処理が施されたものを用いることが好ましい。表面処理されたフィラーを用いると、超高分子量ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレンなどの樹脂中でフィラーが分散しやすい、超高分子量PEや直鎖状低密度ポリエチレンなどの樹脂とフィラーとの界面が剥離しやすくなる、外部からの水分の吸収を防ぐ、といった効果が期待できる。表面処理剤としては例えば、ステアリン酸、ラウリル酸等の高級脂肪酸又はその金属塩を挙げることができる。
樹脂組成物に含まれるフィラーの量は、該樹脂組成物に含まれる超高分子量ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンおよびポリオレフィンワックスの合計体積を100体積部とするとき、該合計体積100体積部に対して、好ましくは15〜150体積部であり、より好ましくは25〜100体積部である。15体積部以上であれば、延伸により十分に開孔し良好な多孔質層(A)を得ることができ、また150体積部以下であると該層に含まれる樹脂の割合が高いため、突刺し強度に優れる多孔質層(A)を得ることができる。
また多孔質層(A)を形成するために用いる樹脂組成物は、必要に応じて本発明の目的を損じない範囲で一般に使用される添加剤(帯電防止剤、可塑剤、滑剤、酸化防止剤、増核剤など)を含んでもよい。
樹脂組成物を製造するために、超高分子量ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン等を混練するための混練装置としては、高いせん断力を有する混練装置を用いることが好ましく、具体的には、ロール、バンバリミキサー、一軸押出機、二軸押出機などが挙げられる。
ポリオレフィンワックスを含む樹脂組成物を用いる場合には、次のような方法で該樹脂組成物を製造することが好ましい。
すなわち、超高分子量ポリエチレンとポリオレフィンワックスとを、重量比で、超高分子量ポリエチレン/ポリオレフィンワックス=30/70〜90/10、より好ましくは40/60〜80/20、で混練した後、分子量5〜80万の直鎖状低密度ポリエチレンを加えて混練する方法である。
この場合の混練方法としては、超高分子量PEとポリオレフィンワックスを混練してペレット化したものと直鎖状低密度ポリエチレンを混練する方法や、超高分子量ポリエチレンとポリオレフィンワックスを混練する装置と、直鎖状低密度ポリエチレンを加えて混練する装置とをつなげて連続的に混練する方法や、超高分子量ポリエチレンとポリオレフィンワックスを混練する装置に直鎖状低密度ポリエチレンをサイドフィードする方法などが挙げられる。
すなわち、超高分子量ポリエチレンとポリオレフィンワックスとを、重量比で、超高分子量ポリエチレン/ポリオレフィンワックス=30/70〜90/10、より好ましくは40/60〜80/20、で混練した後、分子量5〜80万の直鎖状低密度ポリエチレンを加えて混練する方法である。
この場合の混練方法としては、超高分子量PEとポリオレフィンワックスを混練してペレット化したものと直鎖状低密度ポリエチレンを混練する方法や、超高分子量ポリエチレンとポリオレフィンワックスを混練する装置と、直鎖状低密度ポリエチレンを加えて混練する装置とをつなげて連続的に混練する方法や、超高分子量ポリエチレンとポリオレフィンワックスを混練する装置に直鎖状低密度ポリエチレンをサイドフィードする方法などが挙げられる。
樹脂組成物を用いてシート成形する方法は、特に限定はされないが、インフレーション加工、カレンダー加工、Tダイ押出加工、スカイフ法等が挙げられる。樹脂混練物を混練装置から連続的にシート成形機に投入しても、混練後樹脂組成物を一旦ペレット化し、該ペレットをシート成形機に投入してもよい。
樹脂組成物を成形して得られるシートを延伸して多孔質フィルムとする方法は、特に限定はされないが、テンター、ロール、オートグラフなどの公知の装置を用いて延伸して製造することができる。延伸は一軸方向でも二軸方向でもよく、また延伸を一段で行なっても、多段階に分けて行なってもよい。延伸倍率は2〜12倍が好ましく、4〜10倍がより好ましい。延伸温度は、通常超高分子量ポリエチレンの軟化点以上融点以下の温度で行なわれ、80℃〜120℃で行なうことが好ましい。このような温度で延伸を行なうことにより、延伸時にフィルムが破膜しにくく、かつ超高分子量ポリエチレンが溶融しにくいため、樹脂とフィラーの界面剥離によって生じた孔が閉孔しにくくなる。また延伸の後に、孔の形態を安定化するために、必要に応じて熱固定処理を行なってもよい。
樹脂組成物を成形して得られるシートから、少なくとも一部のフィラーを除去した後、延伸して多孔質層(A)を製造してもよい。あるいは、樹脂組成物を成形して得られるシートを延伸した後、少なくとも一部のフィラーを除去して多孔質層(A)を製造してもよい。フィラーを除去する方法としては、シートまたは延伸後のフィルムを、フィラーを溶解可能な液体に浸漬する方法が挙げられる。
次に耐熱性樹脂及び無機フィラーから形成される多孔質層(B)(以下、耐熱層ということもある)について説明する。
前記耐熱層を形成する耐熱性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリメタクリル酸等の水溶性ポリマーや芳香族ポリアラミド(以下、「アラミド」ということがある)、芳香族ポリイミド(以下、「ポリイミド」ということがある)、芳香族ポリアミドイミドなどの含窒素芳香族系ポリマーが挙げられる。
水溶性ポリマーとしてはポリビニルアルコール、セルロースエーテル、アルギン酸ナトリウムが好ましく、セルロースエーテルが更に好ましい。セルロースエーテルとしては具体的には、カルボキシメチルセルロース(以下、CMCということがある)、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、シアンエチルセルロース、オキシエチルセルロースなどが挙げられ、劣化が小さいCMCが最も好ましい。
含窒素芳香族系ポリマーとしては、膜厚が均一で通気性に優れる多孔質の耐熱層を形成しやすいことからアラミドが好ましく、アラミドの中でもパラ配向芳香族ポリアミド(以下、「パラアラミド」ということがある)が最も好ましい。
パラアラミドとは、パラ配向芳香族ジアミンとパラ配向芳香族ジカルボン酸ハライドの縮合重合により得られるものであり、アミド結合が芳香族環のパラ位またはそれに準じた配向位(例えば4,4’−ビフェニレン、1,5−ナフタレン、2,6−ナフタレン等のような反対方向に同軸または平行に伸びる配向位)で結合される繰り返し単位から実質的になるものである。具体的には、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)、ポリ(パラベンズアミド)、ポリ(4,4’−ベンズアニリドテレフタルアミド)、ポリ(パラフェニレン−4,4’−ビフェニレンジカルボン酸アミド)、ポリ(パラフェニレン2,6−ナフタレンジカルボン酸アミド)、ポリ(2−クロローパラフェニレンテレフタルアミド)、パラフェニレンテレフタルアミド/2,6−ジクロロパラフェニレンテレフタルアミド共重合等のパラ配向型、またはパラ配向型に準じた構造を有するパラアラミドが例示される。
耐熱層を設ける際には、通常耐熱性樹脂を溶媒に溶かした塗工液を用いる。耐熱性樹脂が水溶性ポリマーである場合、前記溶媒としては水を用いることができ、溶解性を損なわない程度に、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなどのアルコールを加えてもよい。耐熱性樹脂がパラアラミドである場合、前記溶媒としては、極性アミド系溶媒または極性尿素系溶媒を用いることができ、具体的には、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、テトラメチルウレアなどが挙げられる。
耐熱性樹脂としてパラアラミドを用いる場合、パラアラミドの溶媒への溶解性を改善する目的で、パラアラミド重合時にアルカリ金属、又はアルカリ土類金属の塩化物を添加することが好ましい。具体例としては、塩化リチウムまたは塩化カルシウムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。上記塩化物の重合系への添加量としては、縮合重合で生成するアミド基1.0モル当たり0.5〜6.0モルが好ましく、1.0〜4.0モルがより好ましい。塩化物が0.5モル以上であると、生成するパラアラミドの溶解性が十分となり、6.0モル以下であると塩化物が溶媒に溶け残ることがなくなるため好ましい。一般には、アルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩化物が2重量%以上でパラアラミドの溶解性が十分となる場合が多く、10重量%以下でアルカリ金属、またはアルカリ土類金属の塩化物が極性アミド系溶媒または極性尿素系溶媒などの極性有機溶媒に溶け残ることなく完全に溶解する場合が多い。
本発明において耐熱層を形成するために用いる塗工液は、無機フィラーとしてセラミックス粉末を含有することが特に好ましい。任意の耐熱性樹脂濃度の溶液にセラミックス粉末が添加された塗工液を用いて耐熱層を形成することにより、膜厚が均一で、かつ微細な多孔質である耐熱層を形成することができる。またセラミックス粉末の添加量によって、透気度を制御することができる。本発明におけるセラミックス粉末は、多孔質フィルムの強度や耐熱層表面の平滑性の点より、一次粒子の平均粒子径が1.0μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることがさらに好ましい。
セラミックス粉末の含有量は耐熱層中1重量%〜99重量%であることが好ましく、5重量%〜95重量%であることがより好ましい。1重量%以上であると、イオン透過性に優れ、99重量%以下であると膜強度に優れる。使用するセラミックス粉末の形状は、特に限定はなく、球状でもランダムな形状でも使用できる。
本発明におけるセラミックス粉末としては、電気絶縁性の金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物などからなるセラミックス粉末が挙げられ、例えばアルミナ、シリカ、二酸化チタン、酸化ジルコニウムなどの粉末が好ましく用いられる。上記セラミックス粉末は単独で用いてもよいし、2種類以上を混合してもよく、粒径の異なる同種あるいは異種のセラミックス粉末を任意に混合して用いることもできる。
多孔質層(A)に耐熱層を積層する方法としては、耐熱層を別に製造して後で多孔質層(A)と積層する方法、多孔質層(A)の少なくとも片面にセラミックス粉末と耐熱性樹脂とを含有する塗工液を塗布して耐熱層を形成する方法などが挙げられるが、生産性の観点から後者の方法が好ましい。後者の方法としては具体的には以下のような工程を含む方法が挙げられる。
(a)耐熱性樹脂100重量部を含む極性有機溶媒溶液に、耐熱性樹脂100重量部に対しセラミックス粉末を1〜8000重量部分散したスラリー状塗工液を調整する
(b)該塗工液を多孔質層(A)の少なくとも片面に塗工し、塗工膜を形成する。
(c)溶媒を乾燥除去、あるいは耐熱性樹脂を溶解しない溶媒への浸漬などの手段で、前記塗工膜から耐熱性樹脂を析出させた後乾燥する。
塗工液は、特開2001−316006号公報に記載の塗工装置及び特開2001−23602号公報に記載の方法により連続的に塗工することが好ましい。
(a)耐熱性樹脂100重量部を含む極性有機溶媒溶液に、耐熱性樹脂100重量部に対しセラミックス粉末を1〜8000重量部分散したスラリー状塗工液を調整する
(b)該塗工液を多孔質層(A)の少なくとも片面に塗工し、塗工膜を形成する。
(c)溶媒を乾燥除去、あるいは耐熱性樹脂を溶解しない溶媒への浸漬などの手段で、前記塗工膜から耐熱性樹脂を析出させた後乾燥する。
塗工液は、特開2001−316006号公報に記載の塗工装置及び特開2001−23602号公報に記載の方法により連続的に塗工することが好ましい。
本発明の多孔質層(A)と耐熱層とを含む積層多孔質フィルムは、シャットダウン性、耐熱性、強度、イオン透過性に優れ、非水系電池用セパレータ、特にリチウム2次電池用セパレータとして好適に使用することができる。
本発明の積層多孔質フィルムを電池用セパレータとして用いる場合、電解液の保持性とフィルム強度およびシャットダウン性能の観点から、積層多孔質フィルム中の多孔質層(A)の空隙率は、30〜80体積%が好ましく、さらに好ましくは40〜70体積%であり、耐熱層の空隙率は、電解液の保持量および強度の観点から、30〜80体積%が好ましく、さらに好ましくは40〜70体積%である。
積層多孔質フィルムの厚みは、シャットダウン性、巻回時の電池短絡防止、電池の高電気容量化の観点から、5〜50μmが好ましく、10〜50μmがより好ましく、10〜30μmがさらに好ましい。また積層多孔質フィルム中の耐熱層の厚みは、耐熱性の観点から、0.5μm〜10μmが好ましく、1μm〜5μmがより好ましい。
積層多孔質フィルムの厚みは、シャットダウン性、巻回時の電池短絡防止、電池の高電気容量化の観点から、5〜50μmが好ましく、10〜50μmがより好ましく、10〜30μmがさらに好ましい。また積層多孔質フィルム中の耐熱層の厚みは、耐熱性の観点から、0.5μm〜10μmが好ましく、1μm〜5μmがより好ましい。
本発明の電池は、本発明の積層多孔質フィルムを電池用セパレータとして含む。以下に、本発明の電池がリチウム電池などの非水電解液二次電池である場合の、電池用セパレータ以外の構成要素について詳細に説明する。
非水電解質溶液としては、例えばリチウム塩を有機溶媒に溶解させた非水電解質溶液を用いることができる。リチウム塩としては、LiClO4、LiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、Li2B10Cl10、低級脂肪族カルボン酸リチウム塩、LiAlCl4などのうち1種または2種以上の混合物が挙げられる。リチウム塩として、これらの中でもフッ素を含むLiPF6、LiAsF6、LiSbF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、およびLiC(CF3SO2)3からなる群から選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。
非水電解質溶液で用いる有機溶媒としては、例えばプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソラン−2−オン、1,2−ジ(メトキシカルボニルオキシ)エタンなどのカーボネート類;1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ペンタフルオロプロピルメチルエーテル、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルジフルオロメチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;ギ酸メチル、酢酸メチル、γ−ブチロラクトンなどのエステル類;アセトニトリル、ブチロニトリルなどのニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類;3−メチル−2−オキサゾリドンなどのカーバメート類;スルホラン、ジメチルスルホキシド、1,3−プロパンサルトンなどの含硫黄化合物、または上記の有機溶媒にフッ素置換基を導入したものを用いることができるが、通常はこれらのうちの2種以上を混合して用いる。
これらの中でもカーボネート類を含む混合溶媒が好ましく、環状カーボネートと非環状カーボネート、または環状カーボネートとエーテル類の混合溶媒がさらに好ましい。環状カーボネートと非環状カーボネートの混合溶媒としては、動作温度範囲が広く、負荷特性に優れ、かつ負極の活物質として天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛材料を用いた場合でも分解しにくいことから、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネートを含む混合溶媒が好ましい。正極シートは、通常、正極活物質、導電材および結着剤を含む合剤を集電体上に担持したものを用いる。具体的には、該正極活物質として、リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料を含み、導電材として炭素質材料を含み、結着剤として熱可塑性樹脂などを含むものを用いることができる。リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料としては、V、Mn、Fe、Co、Niなどの遷移金属を少なくとも1種含むリチウム複合酸化物が挙げられる。中でも好ましくは、平均放電電位が高いという点で、ニッケル酸リチウム、コバルト酸リチウムなどのα−NaFeO2型構造を母体とする層状リチウム複合酸化物、リチウムマンガンスピネルなどのスピネル型構造を母体とするリチウム複合酸化物が挙げられる。
該リチウム複合酸化物は、種々の添加元素を含んでもよく、特にTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、Cu、Ag、Mg、Al、Ga、InおよびSnからなる群から選ばれた少なくとも1種の金属のモル数とニッケル酸リチウム中のNiのモル数との和に対して、前記の少なくとも1種の金属が0.1〜20モル%であるように該金属を含む複合ニッケル酸リチウムを用いると、高容量での使用におけるサイクル性が向上するので好ましい。
該結着剤としての熱可塑性樹脂としては、ポリビニリデンフロライド、ビニリデンフロライドの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフロロプロピレンの共重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテルの共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレンの共重合体、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレンの共重合体、熱可塑性ポリイミド、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。
該導電材としての炭素質材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラックなどが挙げられる。導電材として、それぞれ単独で用いてもよいし、例えば人造黒鉛とカーボンブラックとを混合して用いるといった複合導電材系を選択してもよい。
負極シートとしては、例えばリチウムイオンをドープ・脱ドーブ可能な材料、リチウム金属またはリチウム合金などを用いることができる。リチウムイオンをドープ・脱ドープ可能な材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス類、カーボンブラック、熱分解炭素類、炭素繊維、有機高分子化合物焼成体などの炭素質材料、正極よりも低い電位でリチウムイオンのドープ・脱ドープを行う酸化物、硫化物等のカルコゲン化合物が挙げられる。電位平坦性が高く、また平均放電電位が低いため正極と組み合わせた場合大きなエネルギー密度が得られるという点で、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛材料を主成分とする炭素質材料が好ましい。
負極集電体としては、Cu、Ni、ステンレスなどを用いることができるが、特にリチウム二次電池においてはリチウムと合金を作り難く、かつ薄膜に加工しやすいという点でCuが好ましい。該負極集電体に負極活物質を含む合剤を担持させる方法としては、加圧成型する方法、または溶媒などを用いてペースト化し集電体上に塗布乾燥後プレスするなどして圧着する方法が挙げられる。
本発明の電池の形状は、特に限定されるものではなく、ペーパー型、コイン型、円筒型、角形などのいずれであってもよい。
以下に実施例、比較例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(1)突刺強度
多孔質フィルムまたは積層多孔質フィルムを12mmΦのワッシャで固定し、ピンを200mm/minで突き刺したときの最大応力(gf)を測定し、該フィルムの単位面積当りの重量(g/m2)で除した値を突刺し強度とした。ピンは、ピン径1mmΦ、先端0.5Rのものを使用した
(2)シャットダウン温度測定
2×3cm角の長方形の膜に電解液を含浸した後、2枚のSUS製電極に挟み、クリップで固定し、セルを作成した。電解液には、エチレンカーボネート50vol%:ジエチルカーボネート50vol%の混合溶媒に1mol/LのLiBF4を溶解させたものを用いた。組み立てたセルの両側に、インピーダンスアナライザーの端子を接続した。1kHzでの抵抗値を測定した。オーブン中で15℃/分の速度で昇温しながら、抵抗の測定を実施した。1kHzでの抵抗値が1000Ωに達した時の温度をシャットダウン温度とした。またシャットダウン後、更に温度を上昇させ、積層多孔質フィルムが破れ、測定上、抵抗値が低下し始めるときの温度を、熱破膜温度とした。
多孔質フィルムまたは積層多孔質フィルムを12mmΦのワッシャで固定し、ピンを200mm/minで突き刺したときの最大応力(gf)を測定し、該フィルムの単位面積当りの重量(g/m2)で除した値を突刺し強度とした。ピンは、ピン径1mmΦ、先端0.5Rのものを使用した
(2)シャットダウン温度測定
2×3cm角の長方形の膜に電解液を含浸した後、2枚のSUS製電極に挟み、クリップで固定し、セルを作成した。電解液には、エチレンカーボネート50vol%:ジエチルカーボネート50vol%の混合溶媒に1mol/LのLiBF4を溶解させたものを用いた。組み立てたセルの両側に、インピーダンスアナライザーの端子を接続した。1kHzでの抵抗値を測定した。オーブン中で15℃/分の速度で昇温しながら、抵抗の測定を実施した。1kHzでの抵抗値が1000Ωに達した時の温度をシャットダウン温度とした。またシャットダウン後、更に温度を上昇させ、積層多孔質フィルムが破れ、測定上、抵抗値が低下し始めるときの温度を、熱破膜温度とした。
実施例1
多孔質層(A)の作成
重量平均分子量約100万で融解温度136℃、密度0.93g/cm3の超高分子量ポリエチレン粉末(145M、三井化学社製)12.3g、重量平均分子量約50万で融解温度136℃、密度0.95g/cm3の高密度ポリエチレン粉末(030S、三井化学社製)4.9g、重量平均分子量約9万で融解温度117℃、0.92g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン(FV403、住友化学社製)7.4g、平均孔径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)39.6g、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.17重量%、(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.05重量%を粉末のまま混合した後、ラボプラストミル(R-60H型)にて200℃、60rpmで3分間混練し、引き続き230℃、100rpmで3分間混練し、樹脂組成物(1)を得た。得られた樹脂組成物(1)を、200℃でプレス成形し、約200μm厚のシートを得た。該シートを3N塩酸に一晩浸漬して炭酸カルシウムを除去し、水洗後乾燥させて多孔質シート(1)を得た。この多孔質シート(1)を、東洋精機社製卓上二軸延伸機を用いて120℃で4×4倍に延伸し、多孔質層(1)を得た。
パラアラミド(ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド))の合成
攪拌翼、温度計、窒素流入管及び粉体添加口を有する、3リットルのセパラブルフラスコを使用して、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の製造を行った。フラスコを十分乾燥し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2200gを仕込み、200℃で2時間真空乾燥した塩化カルシウム粉末151.07gを添加し、100℃に昇温して完全に溶解させた。室温に戻して、パラフェニレンジアミン、68.23gを添加し完全に溶解させた。この溶液を20℃±2℃に保ったまま、テレフタル酸ジクロライド、124.97gを10分割して約5分おきに添加した。その後も攪拌しながら、溶液を20℃±2℃に保ったまま1時間熟成した。1500メッシュのステンレス金網でろ過した。得られた溶液は、パラアラミド濃度6%であった。
塗工液の調製
先に重合したパラアラミド溶液100gをフラスコに秤取し、300gのNMPを添加し、パラアラミド濃度が1.5重量%の溶液に調製して60分間攪拌した。上記のパラアラミド濃度が1.5重量%の溶液に、アルミナC(日本アエロジル社製、平均一次粒子径13nm)を6g、アドバンスドアルミナAA−03(住友化学社製、平均一次粒子径0.4μm)を6g混合し、240分間攪拌した。得られた溶液を1000メッシュの金網でろ過し、その後酸化カルシウム0.73gを添加して240分間攪拌して中和を行い、減圧下で脱泡してスラリー上の塗工液を得た。
積層多孔質フィルムの作成
多孔質層(1)に、調製した塗工液を130μm厚となるようにバーコーターで塗布した後、50℃70%RHのオーブンに15秒間入れ、多孔質フィルム上にアラミドを析出させた。得られたフィルムを金具で4辺固定し、70℃のオーブン内で10分乾燥させることで、耐熱層を多孔質層(1)上に積層し、積層多孔質フィルムを得た。
多孔質層(A)の作成
重量平均分子量約100万で融解温度136℃、密度0.93g/cm3の超高分子量ポリエチレン粉末(145M、三井化学社製)12.3g、重量平均分子量約50万で融解温度136℃、密度0.95g/cm3の高密度ポリエチレン粉末(030S、三井化学社製)4.9g、重量平均分子量約9万で融解温度117℃、0.92g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン(FV403、住友化学社製)7.4g、平均孔径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)39.6g、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.17重量%、(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.05重量%を粉末のまま混合した後、ラボプラストミル(R-60H型)にて200℃、60rpmで3分間混練し、引き続き230℃、100rpmで3分間混練し、樹脂組成物(1)を得た。得られた樹脂組成物(1)を、200℃でプレス成形し、約200μm厚のシートを得た。該シートを3N塩酸に一晩浸漬して炭酸カルシウムを除去し、水洗後乾燥させて多孔質シート(1)を得た。この多孔質シート(1)を、東洋精機社製卓上二軸延伸機を用いて120℃で4×4倍に延伸し、多孔質層(1)を得た。
パラアラミド(ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド))の合成
攪拌翼、温度計、窒素流入管及び粉体添加口を有する、3リットルのセパラブルフラスコを使用して、ポリ(パラフェニレンテレフタルアミド)の製造を行った。フラスコを十分乾燥し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)2200gを仕込み、200℃で2時間真空乾燥した塩化カルシウム粉末151.07gを添加し、100℃に昇温して完全に溶解させた。室温に戻して、パラフェニレンジアミン、68.23gを添加し完全に溶解させた。この溶液を20℃±2℃に保ったまま、テレフタル酸ジクロライド、124.97gを10分割して約5分おきに添加した。その後も攪拌しながら、溶液を20℃±2℃に保ったまま1時間熟成した。1500メッシュのステンレス金網でろ過した。得られた溶液は、パラアラミド濃度6%であった。
塗工液の調製
先に重合したパラアラミド溶液100gをフラスコに秤取し、300gのNMPを添加し、パラアラミド濃度が1.5重量%の溶液に調製して60分間攪拌した。上記のパラアラミド濃度が1.5重量%の溶液に、アルミナC(日本アエロジル社製、平均一次粒子径13nm)を6g、アドバンスドアルミナAA−03(住友化学社製、平均一次粒子径0.4μm)を6g混合し、240分間攪拌した。得られた溶液を1000メッシュの金網でろ過し、その後酸化カルシウム0.73gを添加して240分間攪拌して中和を行い、減圧下で脱泡してスラリー上の塗工液を得た。
積層多孔質フィルムの作成
多孔質層(1)に、調製した塗工液を130μm厚となるようにバーコーターで塗布した後、50℃70%RHのオーブンに15秒間入れ、多孔質フィルム上にアラミドを析出させた。得られたフィルムを金具で4辺固定し、70℃のオーブン内で10分乾燥させることで、耐熱層を多孔質層(1)上に積層し、積層多孔質フィルムを得た。
実施例2
重量平均分子量約300万の超高分子量ポリエチレン粉末(340M、三井化学社製)を12.3g、重量平均分子量1000で融解温度116℃、密度0.95g/cm3のポリエチレンワックス(FNP−0115、日本精鑞社製)12.3g、平均孔径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)39.6g、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.17重量%、(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.05重量%を粉末のまま混合した後、ラボプラストミル(R-60H型)にて200℃、60rpmで3分間混練した。得られた混練物を混練物(A)とする。重量平均分子量約50万で融解温度136℃、密度0.95g/cm3の高密度ポリエチレン粉末(030S、三井化学社製)を17.6g、重量平均分子量約9万で融解温度117℃、0.92g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン(FV403、住友化学社製)を7.0g、平均孔径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)39.6g、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.17g、(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.05gを粉末のまま混合した後、混練物Aと同様の条件にて混練した(混練物B)。混練物Aを21.0gと、混練物Bを49.0gとを上記ラボプラストミルを用いて230℃、100rpmで3分間混練し、樹脂組成物2を得た。樹脂組成物2を樹脂組成物1と同様に処理を行い、多孔質フィルムを得た。
得られた多孔質フィルム2を用いて実施例1と同様の処理を行い、積層多孔質フィルムを得た。
重量平均分子量約300万の超高分子量ポリエチレン粉末(340M、三井化学社製)を12.3g、重量平均分子量1000で融解温度116℃、密度0.95g/cm3のポリエチレンワックス(FNP−0115、日本精鑞社製)12.3g、平均孔径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)39.6g、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.17重量%、(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.05重量%を粉末のまま混合した後、ラボプラストミル(R-60H型)にて200℃、60rpmで3分間混練した。得られた混練物を混練物(A)とする。重量平均分子量約50万で融解温度136℃、密度0.95g/cm3の高密度ポリエチレン粉末(030S、三井化学社製)を17.6g、重量平均分子量約9万で融解温度117℃、0.92g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン(FV403、住友化学社製)を7.0g、平均孔径0.1μmの炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製)39.6g、酸化防止剤(Irg1010、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.17g、(P168、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製)0.05gを粉末のまま混合した後、混練物Aと同様の条件にて混練した(混練物B)。混練物Aを21.0gと、混練物Bを49.0gとを上記ラボプラストミルを用いて230℃、100rpmで3分間混練し、樹脂組成物2を得た。樹脂組成物2を樹脂組成物1と同様に処理を行い、多孔質フィルムを得た。
得られた多孔質フィルム2を用いて実施例1と同様の処理を行い、積層多孔質フィルムを得た。
比較例1
重量平均分子量約50万のポリエチレン粉末(030S、三井化学社製)12.3gを用い、重量平均分子量約9万で融解温度117℃、0.92g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン(FV403、住友化学社製)を用いなかった以外は実施例1と同様の処理を行い、多孔質フィルムを得た。
重量平均分子量約50万のポリエチレン粉末(030S、三井化学社製)12.3gを用い、重量平均分子量約9万で融解温度117℃、0.92g/cm3の直鎖状低密度ポリエチレン(FV403、住友化学社製)を用いなかった以外は実施例1と同様の処理を行い、多孔質フィルムを得た。
実施例1および2で多孔質層(A)を形成する際に用いた樹脂組成物の組成を、表1に示した。
また、実施例1および2の積層多孔質フィルム、比較例1の多孔質フィルムの物性を表2にまとめた。
市販のセパレータの突刺し強度は、通常20〜40gf/(g/m2)程度である。実施例1および2の多孔質フィルムも、セパレータとして使用可能な突刺し強度を有していることがわかる。
また、実施例1および2の積層多孔質フィルム、比較例1の多孔質フィルムの物性を表2にまとめた。
市販のセパレータの突刺し強度は、通常20〜40gf/(g/m2)程度である。実施例1および2の多孔質フィルムも、セパレータとして使用可能な突刺し強度を有していることがわかる。
Claims (3)
- ポリエチレン系樹脂から形成される多孔質層(A)と、耐熱性樹脂及び無機フィラーから形成される多孔質層(B)とを含む積層多孔質フィルムであって、
前記多孔質層(A)が、該多孔質層(A)に含まれる樹脂成分を100重量%とするとき、重量平均分子量が100万以上である超高分子量ポリエチレンを5〜70重量%と、重量平均分子量が5〜80万である直鎖状低密度ポリエチレンを5〜40重量%含む積層多孔質フィルム。 - 多孔質層(A)が、該多孔質層(A)に含まれる樹脂成分を100重量%とするとき、重量平均分子量が500〜3000であるポリオレフィンワックスを1〜30重量%含む請求項1に記載の積層多孔質フィルム。
- 請求項1または2に記載の積層多孔質フィルムを含む電池。
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2014180822A (ja) * | 2013-03-19 | 2014-09-29 | Sekisui Chem Co Ltd | 積層フィルム並びにこれを用いてなる電池用セパレータ及び電池 |
JP6019205B1 (ja) * | 2015-11-30 | 2016-11-02 | 住友化学株式会社 | 非水電解液二次電池用積層セパレータ |
JP2017103210A (ja) * | 2016-09-02 | 2017-06-08 | 住友化学株式会社 | 非水電解液二次電池用積層セパレータ |
-
2010
- 2010-10-04 JP JP2010224579A patent/JP2012076384A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2014180822A (ja) * | 2013-03-19 | 2014-09-29 | Sekisui Chem Co Ltd | 積層フィルム並びにこれを用いてなる電池用セパレータ及び電池 |
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US9741990B2 (en) | 2015-11-30 | 2017-08-22 | Sumitomo Chemical Company, Limited | Nonaqueous electrolyte secondary battery laminated separator |
JP2017103210A (ja) * | 2016-09-02 | 2017-06-08 | 住友化学株式会社 | 非水電解液二次電池用積層セパレータ |
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