JP2012059853A - 検出条件最適化方法、プログラム作成方法、並びに露光装置及びマーク検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】アライメントマークの検出条件を最適化する。
【解決手段】アライメント検出系を用いてウエハ上に形成されたアライメントマーク(EGAマーク又はサーチマーク)が複数の照明条件又は複数の結像条件で検出される。しかる後、得られた検出信号を信号処理アルゴリズムを用いて解析処理することにより検出信号の波形の変形に関する判定量が求められ(ステップ302〜310)、その判定量に基づいて複数のマークの検出結果に対するTISが評価される(ステップ312)。そして、その解析結果に基づいて複数の照明条件又は複数の結像条件が最適化される(ステップ314)。これにより、検出結果に対するTISが最小になるようにアライメントマークの検出条件を最適化することが可能になる。
【選択図】図7
【解決手段】アライメント検出系を用いてウエハ上に形成されたアライメントマーク(EGAマーク又はサーチマーク)が複数の照明条件又は複数の結像条件で検出される。しかる後、得られた検出信号を信号処理アルゴリズムを用いて解析処理することにより検出信号の波形の変形に関する判定量が求められ(ステップ302〜310)、その判定量に基づいて複数のマークの検出結果に対するTISが評価される(ステップ312)。そして、その解析結果に基づいて複数の照明条件又は複数の結像条件が最適化される(ステップ314)。これにより、検出結果に対するTISが最小になるようにアライメントマークの検出条件を最適化することが可能になる。
【選択図】図7
Description
本発明は、検出条件最適化方法、プログラム作成方法、並びに露光装置及びマーク検出装置に係り、さらに詳しくは、基板上に形成された位置合わせ用のマークの検出条件を最適化する検出条件最適化方法、該検出条件最適化方法を利用するプログラム作成方法、並びに前記検出条件最適化方法の実施に好適な露光装置及びマーク検出装置に関する。
従来、半導体素子、液晶表示素子等のマイクロデバイス(電子デバイスなど)の製造におけるリソグラフィ工程では、ステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(いわゆるステッパ)、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))などが比較的多く用いられている。
この種の投影露光装置において重ね合わせ露光を行う際には、被露光基板としてのウエハ(又はガラスプレート等)上の各ショット領域に既に形成されている回路パターンと、これから露光するマスクとしてのレチクルのパターンとの位置合わせであるウエハのファインアライメントを高精度に行う必要がある。従来の高精度なファインアライメントの方式として、例えば特許文献1に開示されるように、ウエハ上の選択された所定個数のショット領域(サンプルショット)に付設されたファインアライメントマーク(ウエハマーク)の座標位置を計測し、得られる計測結果を統計処理して各ショット領域の配列座標を算出するエンハンスト・グローバル・アライメント(EGA)方式が知られている。
EGA方式のファインアライメントを行う際には、アライメントセンサの検出レンジ内に被検マークが確実に収まるように、予めサーチアライメントが行われる。すなわち、ウエハ上に形成されている所定のサーチアライメント・マーク(サーチマーク)の位置を検出することによって、ウエハの大まかなショット配列が求められ、このショット配列に基づいて各サンプルショットのウエハマークがアライメントセンサの検出レンジ内に位置決めされていた。
上述のファインアライメントでは、ウエハマーク(EGAマーク)の位置情報を正確に計測することが重要である。また、サーチアライメントでは、サーチマークを確実に検出することが重要である。マーク構造は、投影露光装置で作成中の半導体素子等に依存しており、マークの構造次第で、大きな信号波形が得られて検出が容易な場合、あるいは逆に小さな信号波形しか得られず検出が困難な場合もある。また、特にファインアライメントの際には、信号波形の検出は可能であっても、信号波形が小さいため、処理系のノイズの影響を受け、計測再現性(位置計測精度)が不十分となる場合もある。特に、そのような困難な状況の場合、被検マーク(EGAマーク又はサーチマーク)を検出するマーク検出系(ウエハアライメント系(アライメントセンサ))のマーク検出時の検出条件(計測条件)を、最適化すると効果的である。従来、最適化の際には、ウエハアライメント(サーチアライメント又はファインアライメント)の処理手順を規定するプロセスプログラム(以下、レシピファイルとも呼ぶ)の作成の際に、技術者によって、計測条件の最適化が行われていた。
しかしながら、最近の露光装置では要求されるアライメント精度が厳しくなり、これに伴ってアライメントマークの種類、大きさなどが多様化し、また、サーチマークが従来に比べて小型になってきた。このため、プロセスプログラムの作成時に技術者が計測条件の最適化を行うことの負担が大きくなり、また、計測条件の最適化そのものを行うことも困難になりつつある。また、複数の投影露光装置を用いて半導体素子等を製造する場合、複数の投影露光装置間の重ね合わせ精度の差が少ないことも重要である。この点でも、計測条件の最適化を行い、誤差要因を減らすことが重要となりつつある。
本発明の第1の態様によれば、基板上に形成された位置合わせ用のマークの検出条件を最適化する検出条件最適化方法であって、基板上に形成された複数の前記マークを、マーク検出系を用いて複数の照明条件及び結像条件の下で検出することと;前記マーク検出系からの検出信号を所定の信号処理アルゴリズムを用いて解析し、前記検出信号の波形の変形に関する判定量を求め、該判定量に基づいて前記複数のマークの検出結果の前記マーク検出系に由来する検出誤差を評価し、該評価結果に基づいて前記複数の照明条件及び結像条件を最適化することと;を含む検出条件最適化方法が、提供される。
また、このような基本処理に加え、波形の形状に関する判定量を求める前に、マーク検出系からの検出信号を複数のフィルタ処理を行い、信号波形を変形させ適用しても良い。
ここで、マークの検出条件は、マーク検出時におけるマーク検出系の照明条件(例えば照明波長、照明方法、照明開口数など)及び結像条件(フォーカス、結像開口数、収差など)は、勿論、マーク検出後における検出した結果の処理に伴う種々の条件をも含む。すなわち、マークの検出条件とは、位置合わせ用のマークの検出の結果(位置情報)を得るまでのマーク検出に関する種々の条件を含む概念であり、広義のマークの計測条件とほぼ同じ意味である。本明細書では、かかる意味で、マークの検出条件又は検出条件なる用語を用いている。
これによれば、複数のマークの検出結果のマーク検出系に由来する検出誤差の評価結果に基づいて、マーク検出系に由来する検出誤差が軽減される最適な照明条件及び結像条件を選択(又は決定)することが可能になる。従って、マークの検出条件の最適化を短時間で、及び/又は効率的に行うことが可能になる。
ここでは、フィルタ処理自体は必須条件ではないが、信号波形によっては大きな改善効果が期待できる。
ここで、一般的な照明条件設定の変更、結像条件設定の変更の効果について述べる。
収差に関しては、通常条件を変えることは必須ではないが、たとえば、照明条件を変更した際に収差の状態が変化し、微小量変更することが効果的な場合には、照明条件変更と一緒に収差状態を変更することが効果的である。前述したが、マーク構造は、投影露光装置で作成中の半導体素子等に依存しており、マークの構造次第で、大きな信号波形が得られて検出が容易な場合、あるいは逆に小さな信号波形しか得られず検出が困難な場合もある。これらの条件は、半導体素子の構造が薄膜層や金属層を持つことが多いことから、波長依存性を持つことが多く、照明波長条件を切り換えることで、ある波長では小さかった信号が、大きく改善される可能性がある。また、アライメントマークを構成する要素として、ライン部及びスペース部の線幅に加え、反射率、段差等の構造が半導体素子等の製造プロセスにより異なっているために、一般的に異なる信号波形となる(ここで段差はマークを構成する物質がライン部とスペース部で異なり、光の光路長が異なることにより発生する位相差成分も含めている)。FIA光学系においては、特に明視野照明系において、照明光束の開口数NAが結像光学系の開口数NAよりも小さく(比率にして0.8程度)設定されているが、一般にこのような光学系の設定は部分コヒーレント光学系と呼ばれ、結像特性として、アライメントマークの構造(前述した3つの要素)次第では、初期フォーカス位置よりも、デフォーカス位置(フォーカス位置を変更した場合)の方が、より大きな信号波形が得られるという既知の特徴がある。よって、初期フォーカス位置での信号波形に加え、デフォーカス位置での信号波形を確認し、デフォーカス位置での信号波形の方が良好な場合は、フォーカス設定を変えることが望ましい。さらに、前述した、波長を切り換えた際に異なる信号波形が得られる場合には、最適なフォーカス設定位置も、波長により変わることが多くあるため、波長を切り換えた際に、フォーカス位置も変えて信号波形を確認すると計測精度向上に効果がある。
また、照明条件変更として、明視野照明を暗視野照明に切り換えると以下の効果が期待できる。まず、一般に、暗視野像はマークがない場合は真っ暗で何も見えない状態となり、位相パターンと呼ばれるマーク構造に近い場合、マークのエッジ部が光った像となる。よって、真っ暗の状態から、マークがある場合にのみマークエッジ部が光る像が得られるので、得られた像は基本的にコントラストが非常に良いという特徴がある。以下のコントラストの式で、最小強度がゼロに近いためコントラストが高くなる。
コントラスト = (最大強度−最小強度)/(最大強度+最小強度)
コントラスト = (最大強度−最小強度)/(最大強度+最小強度)
しかし、一方、暗視野照明は得られた像の最大強度自体は小さくなる傾向があり、明るい輝度の光源が必要となる。光源の輝度には、光源自体で決まる限界があるため、信号強度の大きさ、つまり最大強度が大きいという点では、明視野照明の方が有利である。
また、マークの構造は、アライメントマークを構成する要素として、ライン部及びスペース部の線幅に加え、反射率、段差等の構造が半導体素子等の製造プロセスにより異なっているために、異なる信号波形となる(ここで段差はマークを構成する物質がライン部とスペース部で異なり、光の光路長が異なることにより発生する位相差成分も含めている)のであるが、一般にこれらマーク構造が変化すると、光学系に残存する収差との相互作用で信号波形が横にずれて計測される。一般に、この横ズレをTIS(Tool Induced Shift)と呼ぶことも多い。光学系の収差としては、ザイデル5収差のコマ収差に加え、照明光束がウエハ面に対し垂直方向からずれていたり(一般に照明光束のテレセントリシティ誤差:ここでは照明テレセンと呼ぶ)、結像光学系の開口絞りが偏心していることにより、ウエハで反射した照明光束が、結像光学系の開口絞り中心を通過しない誤差(ここで、この誤差をケラレと呼ぶ)が挙げられる。コマ収差やケラレ誤差は、非常に良く出来た光学系でも微少量残存しており、非常に微小な位置計測精度(例えばnmオーダ)が要求される場合は問題になる。
なお、これらの収差を調整する手法としては、結像光学系のレンズを偏心させ微小量のコマ収差を発生させて調整する手法や、開口絞りを偏心させてケラレを調整する手法がある。
近年の最先端半導体露光装置の場合、1枚のプロセスウエハに対して、EGA計測点数をかなり多く設定し(例えば16点)、重ね精度を向上させる手法がとられるが、1枚のウエハ内のアライメントマークのマーク構造に誤差がある場合、各マークはそれぞれランダムに位置ずれ要因を持ち、結果としてEGA各点の計測結果がばらつくことになる。このような誤差をここでは1枚のウエハ内の各EGAマークがランダムに引き起こす位置誤差という意味で、TISランダム成分と呼ぶことにする。TISランダム成分が大きいと、EGA計測で線形成分を補正して露光しても、TISランダム成分に起因したランダム成分誤差(EGAランダム誤差と呼ぶ)が残存し重ね合わせ精度が悪くなってしまう。
さて、EGAランダム誤差を誘発するのは、上記TISランダム成分だけではない。一般に、アライメントマークの理想的なファイン計測用のマーク構造は、マーク中心線に対して、線対称となる構造である。たとえば、複数本あるライン部が、マーク中心線に対して線対称であること。マークライン部、スペース部の反射率が、マーク中心線に対して線対称であること。マークの段差構造(もしくは、透明層の位相差)が、マーク中心線に対して線対称であること、等が必要である。近年、露光線幅が非常に細密になり、投影露光時のフォーカスを厳密にあわせる必要性から、半導体製造プロセス中で、ウエハ面をCMP処理(Chemical Mechanical Polishing)し平坦にすることが多いが、この工程により、アライメントマークがマーク中心線に対し非対称となる懸念が指摘されている。また、ウエハ中心部と周辺部で、非対称の度合いが変わっている場合も想定される。マーク構造の非対称は計測位置ずれを誘発する。一般に、この横ズレをWIS(Wafer Induced Shift)と呼ぶことも多い。EGA計測対象のマークで、このようなマーク構造の非対称バラつきが生じている場合、ランダムな位置誤差を誘発し、結果としてEGAランダム成分を悪化させる。近年、このようなマーク非対称誤差に関しても、発生量は小さくなり改善されていると考えられるが、非常に良く出来たプロセスウエハでも微少量残存しており、非常に微小な位置計測精度(例えばnmオーダ)が要求される場合は問題になる。このような誤差をここでは1枚のウエハ内の各EGAマークがランダムに引き起こす位置誤差という意味で、WISランダム成分と呼ぶことにする。WISランダム成分が大きいと、EGA計測で線形成分を補正して露光しても、WISランダム成分に起因したランダム成分誤差(EGAランダム誤差と呼ぶ)が残存し重ね合わせ精度が悪くなってしまう。
上記の判定要素を考慮した上で、どの照明波長設定が良いか、どのフォーカス設定が良いか、また、明視野照明と暗視野照明のどちらの設定が有利かに関し、実際の信号波形により判断する必要があるが、ここで判定が必要な項目をまとめると、以下の3点となる。
1.計測再現性判定
2.TISランダム誤差要因判定
3.WISランダム誤差要因判定
詳細は後述するが、1.計測再現性判定に関しては、光学系で使用する撮像素子のノイズ特性を解析の上、事前に光学ティーチングシミュレーションを行って換算係数を求めておけば、信号波形から所定の信号処理アルゴリズムを用いて特徴を抽出し換算することで、数値的に算出することができる。
1.計測再現性判定
2.TISランダム誤差要因判定
3.WISランダム誤差要因判定
詳細は後述するが、1.計測再現性判定に関しては、光学系で使用する撮像素子のノイズ特性を解析の上、事前に光学ティーチングシミュレーションを行って換算係数を求めておけば、信号波形から所定の信号処理アルゴリズムを用いて特徴を抽出し換算することで、数値的に算出することができる。
光学ティーチングシミュレーションとは、想定した多種多様な構造を持つアライメントマークの光学像を、各種光学設定条件(照明条件及び/又は結像条件)、収差設定、フォーカス設定条件で発生させ、A/D変換により撮像素子で計測された信号波形を擬似的に得たうえ、実際の装置と同様の信号処理アルゴリズムにて擬似的に各種特徴量及び/又は判定量を算出し評価する処理を意味する。計測再現性判定の換算係数を求める場合、光学像に撮像素子に対し解析した結果のノイズを、前記、擬似的に発生させた信号波形に付加しシミュレーションを行なう。詳細は実施例で説明するが、このようにして求めた換算係数と判定量は非常に計測再現性との相関が良い。
また、2.TISランダム誤差要因判定においては、1枚のウエハ内の複数マークを計測し、信号波形から所定の信号処理アルゴリズムを用いてマーク構造(線幅、段差、ライン部とスペース部の反射率比)に相当する特徴を抽出し、ウエハ内のばらつき量を算出することで誤差量を判断することができる。
やはり、事前に光学系に収差が残存している状態での光学像を発生させ、光学ティーチングシミュレーションを行ない、収差とマーク構造誤差の相互作用を事前に解析しておく。例えば、マーク構造として、ライン部とスペース部の反射率差が大きいマークや、コントラストが大きなマークは収差とマーク構造誤差の相互作用が小さく、また、初期フォーカス位置で最もエッジスロープが大きくなるマークは収差とマーク構造誤差の相互作用が小さい傾向にあることが判明する。このような傾向にあるか否かは、半導体素子等の製造プロセスで決まるマーク構造次第である。光学ティーチングシミュレーションの結果から、収差とマーク構造誤差の相互作用が小さい傾向にあるマークでは、ウエハ内のマーク構造のバラつきが大きい場合でも、実際のTISランダム発生量は小さい傾向にあることがわかる。このように、シミュレーションの結果をデータベースにしておけば、例えば、1枚のウエハを計測し、ライン部とスペース部の反射率差や、コントラストを判定し、また、計測に最適な最もエッジスロープが大きくなるフォーカス位置と、初期フォーカス位置の差分を判定すれば、収差とマーク構造誤差の相互作用に対する重みが、マーク誤差(線幅、段差、ライン部とスペース部の反射率比)毎に判定できる。よって、各マーク誤差のウエハ内のバラつき量を、収差とマーク構造誤差の相互作用に対する重みを係数として和をとれば、TISランダム誤差を予想することができる。
また、3.WISランダム誤差要因判定においては、1枚のウエハ内の複数マークを計測し、まず位置計測を行いマーク中心線を求め、次に、信号波形の特徴として、信号波形を微分した波形の極値(つまりエッジスロープを表す微分最大、最小値)の位置、微分値、信号強度を所定の信号処理アルゴリズムを用いて求める。マーク中心線に対し、ほぼ線対称となる位置にあるエッジスロープ位置をペアの特徴量として抽出し、ペア毎に線対称からのズレ量、つまりエッジスロープ位置に関しては、線対称ペア平均値とマーク中心との差分値を、また、微分値や信号強度に関しては単に非対称ペアの差分値を求めると、それが非対称の度合いを表す判定量となる。これらの判定量のうち、例えば、1枚のウエハ内の各マークに対し、エッジスロープ位置の非対称を算出し、非対称値のバラつきをみることで、WISランダム誤差を把握することができる。
また、フィルタ処理を行う場合には、上記3つの判定項目に対しても改善の可能性が期待できる。
本発明は、2.のTISランダム誤差要因判定に関するものであるが、計測再現性判定やWISランダム誤差要因判定も適宜併用して実施し総合判定しても構わない。
また、本発明の第2の態様によれば、本発明の検出条件最適化方法を利用して基板上の複数のマークの検出信号の検出条件を最適化して、前記基板の位置合わせ手順を定めるプログラムを作成するプログラム作成方法が提供される。
また、本発明の第3の態様によれば、基板上に複数のパターンを重ね合わせて形成する露光装置であって、基板上に形成された位置合わせ用のマークを検出するマーク検出系と;前記マーク検出系を用いて複数の前記マークを複数の照明条件及び結像条件の下で検出して得られる検出信号を所定の信号処理アルゴリズムを用いて解析し、前記検出信号の波形の変形に関する判定量を求め、該判定量に基づいて前記複数のマークの検出結果の前記マーク検出系に由来する検出誤差を評価し、該評価結果に基づいて前記複数の照明条件及び結像条件を最適化する最適化装置と;を備える露光装置が、提供される。
ここで、波形の形状に関する判定量を求める前に、マーク検出系からの検出信号を複数のフィルタ処理を行い、信号波形を変形させ適用しても良い。
これによれば、マークの検出条件の最適化を短時間で、及び/又は効率的に行うことが可能になる。
また、本発明の第4の態様によれば、基板上に形成された位置合わせ用のマークを検出するマーク検出系と;前記マーク検出系を用いて複数の前記マークを複数の照明条件及び結像条件の下で検出して得られる検出信号を所定の信号処理アルゴリズムを用いて解析し、前記検出信号の波形の変形に関する判定量を求め、該判定量に基づいて前記複数のマークの検出結果の前記マーク検出系に由来する検出誤差を評価し、該評価結果に基づいて前記複数の照明条件及び結像条件を最適化する最適化装置と;を備えるマーク検出装置が、提供される。
ここで、波形の形状に関する判定量を求める前に、マーク検出系からの検出信号を複数のフィルタ処理を行い、信号波形を変形させ適用しても良い。
これによれば、複数のマークの検出結果のマーク検出系に由来する検出誤差の評価結果に基づいて、マーク検出系に由来する検出誤差が軽減される最適な照明条件及び結像条件を選択(又は決定)することが可能になる。従って、マークの検出条件の最適化を短時間で、及び/又は効率的に行うことが可能になる。
以下、本発明の一実施形態を図1〜図16に基づいて説明する。
図1には、本発明の検出条件最適化方法を好適に実施可能な露光装置100の概略構成が示されている。露光装置100は、ステップ・アンド・スキャン方式の投影露光装置(いわゆるスキャニング・ステッパ(スキャナとも呼ばれる))である。
露光装置100は、照明系IOP、レチクルRを保持するレチクルステージRST、レチクルRに形成されたパターンの像を感応剤(レジスト)が塗布されたウエハW上に投影する投影ユニットPU、ウエハWを保持してXY平面内を移動するウエハステージWST、ウエハステージWSTを駆動する駆動系22、及びこれらの制御系等を備えている。制御系は装置全体を統括制御するマイクロコンピュータ(あるいはワークステーション)などを含む主制御装置28を中心として構成されている。
照明系IOPは、例えばArFエキシマレーザ(出力波長193nm)(又はKrFエキシマレーザ(出力波長248nm)など)から成る光源、及び該光源に送光光学系を介して接続された照明光学系を含む。照明光学系としては、例えば米国特許出願公開第2003/0025890号明細書などに開示されるように、オプティカルインテグレータ等を含む照度均一化光学系、ビームスプリッタ、レチクルブラインド等(いずれも不図示)を含み、光源から射出されたレーザビームを整形し、この整形されたレーザビーム(以下、照明光ともいう)ILにより、レチクルR上でX軸方向(図1における紙面直交方向)に細長く伸びるスリット状の照明領域をほぼ均一な照度で照明する。
レチクルステージRSTは、照明系IOPの図1における下方に配置されている。レチクルステージRST上にレチクルRが載置されている。レチクルRは、不図示のバキュームチャック等を介してレチクルステージRSTに吸着保持されている。レチクルステージRSTは、不図示のレチクルステージ駆動系によって、水平面(XY平面)内で微小駆動可能であるとともに、走査方向(ここでは図1の紙面内左右方向であるY軸方向とする)に所定ストローク範囲で走査される。レチクルステージRSTの位置情報は、レチクルステージRSTに固定された移動鏡12を介してレーザ干渉計14によって計測され、レーザ干渉計14の計測値が主制御装置28に供給されている。なお、移動鏡12に代えて、レチクルステージRSTの端面を鏡面加工して反射面(移動鏡12の反射面に相当)を形成しても良い。
投影ユニットPUは、レチクルステージRSTの図1における下方に配置されている。投影ユニットPUは、鏡筒40と、該鏡筒40内に所定の位置関係で保持された複数の光学素子を含む投影光学系PLとを有している。投影光学系PLとしては、ここでは両側テレセントリックな縮小系であって、光軸AXpと平行な方向(Z軸方向)に配列された複数枚のレンズエレメント(図示省略)を含む屈折光学系が用いられている。
投影光学系PLの投影倍率は、一例として1/4とされている。このため、前述の如く照明光ILによりレチクルRが均一な照度で照明されると、その照明領域内のレチクルRのパターンが投影光学系PLにより縮小されて、レジストが塗布されたウエハW上に投影され、ウエハW上の被露光領域(ショット領域)の一部にパターンの縮小像(部分像)が形成される。このとき、投影光学系PLは視野内の一部(すなわち、露光エリアであって、投影光学系PLに関して照明領域と共役な矩形領域)に上記パターンの縮小像を形成する。
ウエハステージWSTは、リニアモータ等を含む駆動系22によって、X軸方向、Y軸方向に所定ストロークで駆動されるとともに、Z軸方向、X軸回りの回転方向(θx方向)、Y軸回りの回転方向(θy方向)、及びZ軸回りの回転方向(θz方向)に微小駆動される。ウエハステージWST上に不図示のウエハホルダを介してウエハWが真空吸着等によって保持されている。
ウエハステージWSTの位置情報は、ウエハステージWSTに固定された移動鏡24を介してレーザ干渉計システム(以下、「干渉計システム」と略記する)26によって計測され、干渉計システム26の計測値が主制御装置28に供給されている。主制御装置28は、干渉計システム26の計測値に基づいて、ウエハステージWSTのXY平面内の位置情報(回転情報(良いング量(θz方向の回転量)、ピッチング量(θx方向の回転量)、ローリング量(θy方向の回転量))を含む)を計測する。なお、ウエハステージWSTの端面を鏡面加工して反射面(移動鏡24の反射面に相当)を形成しても良い。また、ウエハステージWSTに代えて、X軸方向、Y軸方向及びθz方向に移動する第1ステージと、該第1ステージ上でZ軸方向、θx方向及びθy方向に微動する第2ステージとを備えるステージを、用いても良い。
干渉計システム26の計測値は主制御装置28に供給され、主制御装置28は干渉計システム26の計測値に基づいて駆動系22を介してウエハステージWSTのXY平面内の位置(θz方向の回転を含む)を制御する。
また、ウエハW表面のZ軸方向の位置及び傾斜量は、例えば米国特許第5,448,332号明細書等に開示される送光系50a及び受光系50bを有する斜入射方式の多点焦点位置検出系から成るフォーカスセンサAFSによって計測される。このフォーカスセンサAFSの計測値も主制御装置28に供給されている。
また、ウエハステージWST上には、表面がウエハWの表面と同じ高さになるように基準板FPが固定されている。基準板FPの表面には、後述するアライメント検出系ASのいわゆるベースライン計測等に用いられる基準マークなどが形成されている。
投影ユニットPUの鏡筒40の側面に、ウエハWに形成されたアライメントマーク及び上記基準マークを検出するアライメント検出系ASが設けられている。このアライメント検出系ASとしては、一例としてハロゲンランプ等のブロードバンド(広帯域)光でマークを照明し、このマーク画像を画像処理することによってマーク位置を計測する画像処理方式の結像式アライメントセンサの一種であるFIA(Field Image Alignment)系が用いられている。
アライメント検出系ASの検出信号は、アライメント制御装置16に供給され、アライメント制御装置16は、その検出信号をA/D変換し、このデジタル化された波形信号を演算処理してマーク位置を検出する。ここで、アライメント検出系ASには、アライメントマークの光学像を受光する撮像素子が用いられているが、近年、撮像素子の進化は著しく、A/D変換が撮像素子(アライメント検出系AS内)で行なわれ、アライメント制御装置16にはデジタル信号が供給され、アライメント制御装置16では、既にデジタル化された波形信号を演算処理してマーク位置を検出することも多い。この結果は、アライメント制御装置16から主制御装置28に供給される。
アライメント検出系ASとして、本実施形態では、少なくとも照明条件及び結像条件の変更(又は切り換え)が可能な検出系が採用されている。照明条件は、波長選択フィルタ(照明波長)、照明開口絞り(照明開口数)、及びNDフィルタ(ニュートラル・デンシティ・フィルタ)の少なくとも1つを切り換えることにより、変更される。照明波長として、例えば、グリーン(例えば波長530〜610nm)、オレンジ(例えば波長600〜710nm)、レッド(例えば波長700〜800nm)、ブロード(例えば波長530〜800nm)、シアン(例えば480〜520nm)、及び近赤外(770〜850nm)の6つの波長帯域が用意されている。
照明開口絞りとして、直径の異なる複数の円形絞り(通常絞り、小σ絞り)と、輪帯比の異なる複数の輪帯絞りとが切り換え可能に設けられている。複数の輪帯絞りは、結像光学系の開口数より大きな開口数を有する輪帯絞りを含む。本実施形態では、例えば、その結像光学系の開口数より大きな開口数を有する輪帯絞りを照明光路内に位置させることで、明視野照明から暗視野照明に切り換えることができる。なお、輪帯遮光形状の遮光部を備えた結像開口絞りを結像光路上に挿脱可能に構成し、輪帯絞り(照明絞り)と併用することで、暗視野照明を実現しても良い。
また、特にファイン計測時には、照明開口絞りの光軸に対する偏心は、ウエハ上に導光する光束の倒れ(テレセントリシティ性の悪化)を防ぐため、非常に厳密に位置調整される必要があるが、明視野照明時の円形発光部と、暗視野照明時の輪帯発光部との位置ずれ(偏心ずれ)を考慮すると、例えば特開2007−42966号公報に開示されるように、円形と輪帯の2重丸構造の絞りとすると共に、ライトガイドファイバで光を導光し、円形発光部に光を導くファイバ束と、輪帯発光部に光を導くファイバ束を別束として構成し、合成し、各ファイバ束に導光する入射光を切り換え構造としても良い。
NDフィルタを有する減光装置として、例えば複数段の回転板を有する装置が用いられる。ここで、各回転板には透過率(減光率)の異なる複数のNDフィルタが設けられている。減光装置は、回転板を回転制御してNDフィルタを切り換えることにより、透過率(減光率)、すなわち照度を設定する。結像条件には、フォーカス(フォーカスオフセット)、結像開口数、収差等が含まれる。これらの条件は、例えば、アライメント検出系ASの光学系を構成する光学素子を微小駆動することにより調整される。なお、照明条件及び結像条件の変更は、主制御装置28の指示に基づき、アライメント制御装置16によって行われる。また、計測精度がファインアライメントに比べ緩いサーチアライメントにおいては、アライメント検出系ASに搭載されるAGC(Auto Gain Control)機能を用いることも可能である。なお、アライメント検出系ASと同様(ただし、波長選択フィルタの数など一部相違する)の構成のアライメントセンサは、例えば米国特許出願公開第2008/0013073号明細書などに開示されている。
さらに、本実施形態の露光装置100では、図示は省略されているが、レチクルRの上方に、例えば米国特許第5,646,413号明細書等に開示される、露光波長の光を用いたTTR(Through The Reticle)アライメント系から成る一対のレチクルアライメント検出系が設けられ、該レチクルアライメント検出系の検出信号は、アライメント制御装置16を介して主制御装置28に供給される。
次に、本実施形態の露光装置100で行われるアライメント計測(EGA計測)のレシピファイル(プロセスプログラム)の作成について説明する。ここでは、主制御装置28(内のCPU)によって実行される処理アルゴリズムを示す図2のフローチャートに沿って、適宜他の図面を参照して説明する。
まず、ステップ102において、不図示のウエハローダを用いてウエハステージWST上に搭載された不図示のウエハホルダ上にウエハをロードする。ここでは、実際にデバイスの製造に用いられる、少なくとも1層のレチクルパターンの転写が行われ、レチクルパターンとともに転写されたサーチアライメントマークとファインアライメントマークとが形成されたウエハWがウエハホルダ上にロードされる。図3(A)に示されるように、ウエハW上の各ショット領域Snには、アライメントマークとして、ファインアライメントマーク(EGAマーク)32及びサーチアライメントマーク(サーチマーク)33が形成されている。(ファインアライメントマークに関しては、正確には、各ショット領域Snの周囲のスクライブライン上に形成される。)図3(B)に示されるように、EGAマーク32は、それぞれX軸方向、X軸方向、及びY軸方向に所定ピッチで形成された凹凸のライン・アンド・スペースパターン(マルチバーパターン)32X1,32X2,32Yを含む。以下では、これら3つのマルチバーパターン32X1,32X2,32Yを、それぞれ、第1X成分、第2X成分、及びY成分とも呼ぶ。サーチマーク33は、X軸方向に所定ピッチで並ぶマルチパターンとY軸方向に所定ピッチで並ぶマルチパターンとが重ねて形成された格子状のパターンである。なお、通常は、サーチマーク33の方が大きいが、図3(A)及び図3(B)では、各マークの大小関係及び大きさなどは、実際とは異なっている。EGAマーク32及びサーチマーク33の設計パラメータ(形状、数、及び位置等)、及びウエハWの設計パラメータ(ウエハWの大きさ及び区画領域のレイアウト等)は予め定められており、後述する検出条件の最適化処理(レシピファイル作成手順の一部)に先立ってメモリ(不図示)に記憶されているものとする。なお、以下では、区別が必要な場合を除き、EGAマーク及びサーチマークのいずれをもアライメントマークと呼ぶ。
次のステップ104では、ウエハホルダ上にロードされたウエハのサーチアライメントを行う。具体的には、例えば、ウエハ中心に関してほぼ対称に周辺部に位置する2つのサーチマークをアライメント検出系ASを用いて検出する。これらのサーチマークの検出は、それぞれのサーチマークがアライメント検出系ASの検出視野内に位置するように、ウエハステージWSTを順次位置決めしつつ行われる。そして、アライメント検出系ASの検出結果(アライメント検出系ASの計測座標原点と各サーチアライメントマークとの相対位置関係)と各サーチアライメントマーク検出時の干渉計システム26の計測値とに基づいて2つのサーチアライメントマークのステージ座標系上の位置座標を求める。しかる後、2つのサーチアライメントマークの位置座標から、ウエハの中心ずれ、及び残留回転誤差を算出し、少なくとも残留回転誤差がほぼ零となるようにウエハステージWST(又はウエハホルダ)を微小回転させる。これにより、ウエハのサーチアライメントが終了する。
ステップ106では、光量(照度)の最適化を行う。具体的には、所定の基準となる照明条件(例えばコンベンショナル照明で、ブロードの照明帯域(波長帯域)にて、照度(NDフィルタ)を変えつつ、アライメント検出系ASを用いて、初期フォーカス位置(アライメントオートフォーカスの追い込み位置)でEGAの第1サンプルマーク(先頭サンプルショット領域の第1マーク)を検出する。そして、主制御装置28は、得られる撮像信号のコントラストが最適となる照度を見つけることによって、照度、すなわちアライメント検出系ASの検出光の光量を最適化する。
次のステップ107では、フォーカス最適化処理(FFO:FIA focus optimization)を行う。前述したように、アライメントマークの構造は、投影露光装置で作成中の半導体素子等に依存しており、マークの構造次第で、大きな信号波形が得られて検出が容易な場合、あるいは逆に小さな信号波形しか得られず検出が困難な場合もある。アライメントマークを構成する要素として、ライン部及びスペース部の線幅に加え、反射率、段差等の構造が半導体素子等の製造プロセスにより異なっているために、異なる信号波形となる(ここで段差はマークを構成する物質がライン部とスペース部で異なり、光の光路長が異なることにより発生する位相差成分も含めている)。FIA光学系においては、特に明視野照明系において、照明光束の開口数NAが結像光学系の開口数NAよりも小さく(比率にして0.8程度)設定されているが、一般にこのような光学系の設定は部分コヒーレント光学系と呼ばれ、結像特性として、アライメントマークの構造(前述した3つの要素)次第では、初期フォーカス位置よりも、デフォーカス(フォーカス位置を変更した場合)の方が、より大きな信号波形が得られるという既知の特徴がある。
また、詳しくは後述するが、信号波形が大きく、コントラストが大きく、エッジスロープ(波形を形成する曲線の角度成分)が急峻なほど、計測精度が良いという特徴がある。
フォーカス最適化は、ウエハステージをZ軸方向に移動させつつ、アライメントマークを検出し、各フォーカス位置でのエッジスロープ最大値(又は、コントラスト最大値)を計測し、フォーカスに対する曲線分布を獲得し、そのピーク位置となるフォーカス位置を検出する既知の処理である。処理の結果得られたフォーカス位置は、最適フォーカス位置として記憶しておく。
同様にして、暗視野照明においても、FFO計測処理を行う。暗視野照明では、原理的には初期フォーカス位置と、最適化にて検出されたフォーカス位置の差はないが、アライメントマーク構造次第では、マーク部分が必ずしもウエハ表面と一致しているとは限らないため、実施する。ただし、予め誤差が少ないと判明している場合は、実施しなくても良い。
しかる後、ステップ108のアライメントマーク検出処理のサブルーチンに移行する。このステップ108のアライメントマーク検出処理(のサブルーチンの処理)と、次のステップ110の所定の信号処理アルゴリズムを用いた検出信号の特徴量抽出と判定処理の(のサブルーチンの処理)との両者が、光学ティーチング処理と呼ばれる処理に該当する。
ステップ108のサブルーチンでは、まず、図4のステップ202において、アライメント検出系ASの照明波長の設定又は変更を行う。ここでの照明波長の設定は、前述のブロード、グリーン、オレンジ、レッド、シアン、及び近赤外の6つの波長帯域の中から予め定められた順番で、順次波長帯域を設定(変更)することで行われる。一例として、第1番目として、ブロードが定められているものとする。この場合、前述の光量最適化のときにすでにブロードが設定されているので、特に何も行う必要はない。
次のステップ204では、アライメント検出系ASの照明方法及び結像条件の設定又は変更を行う。ここで、照明方法の設定/変更は、照明系開口絞りの選択設定によって実現される。従って、通常照明、変形照明などの他、明視野照明、暗視野照明などの設定/変更も含まれる。前述の如く、例えば、結像光学系の開口数(NA)より大きな照明開口数の輪帯絞りを用いて輪帯照明を行うと暗視野照明になる。
また、結像条件には、前述の如く、アライメント検出系ASの結像光学系のフォーカス位置、結像開口数、及び収差などが含まれる。従って、結像開口数を変更しても良いが、以下では、説明の便宜上、結像条件の設定/変更は、主として結像光学系のフォーカス位置の設定/変更を指す。
照明方法及び結像条件の設定又は変更は、予め定めた順番で、照明系開口絞りと暗視野又は明視野との組み合わせを設定し、さらに各組み合わせについて予め定められているフォーカス位置を所定の順番で設定することで行われる。
ここでは、主制御装置28は、一例として、通常照明絞りと輪帯照明絞りとの切り替えにより、明視野照明と暗視野照明とを切り替え、明視野照明については、フォーカス位置を、前述したフォーカス最適化FFO処理にて検出した最適フォーカス位置、及び最適フォーカス位置を中心とする正負両側への各1点のフォーカス位置、最良フォーカス位置(いわゆるゼロ点)、及び最良フォーカス位置を中心とする正負両側への各10点のステップフォーカス位置を設定し、また、暗視野照明については、前述したフォーカス最適化FFO処理にて検出した最適フォーカス位置(最適化が不要の場合は、そのまま最良フォーカス位置(いわゆるゼロ点))、及び正負両側への各1点のフォーカス位置を設定するものとする。
従って、本実施形態では、1つの照明波長に対して、このステップ204において、25通りの照明方法と結像条件との組み合わせが設定されることになる。
次のステップ206では、現在設定されているアライメント光学条件の設定下で、アライメント検出系ASを用いて、予め定められた数、例えば20個のショット領域に付設されているアライメントマーク(ここでは、EGAマーク)を検出する。主制御装置28は、ウエハステージWSTをXY方向に駆動して、ウエハW上に付設された予め定められた数のアライメントマークをアライメント検出系ASの検出視野内に順次位置決めし、撮像する。
次のステップ208では、得られた撮像結果を、アライメントマークのX、Y成分のそれぞれについての1次元信号に変換する。例えば、図5(A)に示されるEGAマーク32に対し、それぞれ走査線LX1,LX2に関するX成分32X1,32X2の1次元信号と、走査線LYに関するY成分32Yの1次元信号と、が抽出される。あるいは、走査線LX1,LX2に平行な複数の走査線についてのX成分32X1,32X2の輝度値(画素値)を加算した、あるいはその加算値の平均をとった1次元信号と、走査線LYに平行な複数の走査線についてのY成分32Yの輝度値を加算した、あるいはその加算値の平均をとった1次元信号と、が抽出される。いずれにしてもX成分32X1,32X2の1次元信号として図5(B)に示されるような波形の信号が得られ、Y成分32Yの1次元信号として図5(C)に示されるような波形の信号が得られる。
次のステップ210では、得られた(検出された)1次元信号(以下、検出信号と呼ぶ)を検出光の光量(本実施形態ではAGC機能により調整される量)及び信号強度のブラックレベル(原点)BLに応じて規格化し、その検出信号(規格化後)を、アライメント検出系ASの照明条件及び結像条件と対応付けて、記憶装置(不図示)に記憶する。例えば、図6に示されるように、検出信号IはI’=(I−BL)/(IMax−BL)と規格化される。ここで、IMaxは最大階調であり、アライメント検出系ASで検出可能な限界信号強度に対応する。また、検出精度を改善するために、例えば、1つのアライメントマークを複数回に分けて撮像する場合等には、これらも考慮して検出信号が規格化される。
次のステップ212では、予定されていた全ての照明方法と結像条件との組み合わせについて、現在設定中のアライメント検出系ASの照明波長におけるアライメントマークの検出が終了したか否かを判断する。そして、判断が否定された場合、ステップ204に戻って次の照明方法及び結像条件の組み合わせに変更し、変更後の照明方法及び結像条件に対してステップ206〜210の処理を行う。その後、ステップ212における判断が肯定されるまで、ステップ206、208,210、212のループの処理が繰り返し行われる。そして、ステップ212の判断が肯定されると、ステップ214に進む。
ステップ214では、アライメント検出系ASの全ての照明波長、本実施形態では6つの照明波長について、アライメントマークの検出が終了したか否かを判断する。そして、この判断が否定された場合、ステップ202に戻って次の照明波長に変更し、変更後の照明波長について、ステップ212における判断が肯定されるまで、ステップ204〜ステップ212のループの処理を繰り返し行う。その後、ステップ214における判断が肯定されるまで、ステップ202以下の処理が繰り返し行われる。そして、ステップ214の判断が肯定されると、アライメントマーク検出処理のサブルーチンの処理を終了し、図2のメインルーチンのステップ110にリターンする。
以上のステップ108までの処理により、1つのアライメントマークについて27×6=162通りの照明条件及び結像条件に対する検出信号が得られる。
ステップ110、すなわち検出信号の特徴量抽出と判定処理のサブルーチンでは、まず、図7のステップ302において、アライメントマーク検出処理により得られたアライメントマークの検出信号を所定の信号処理アルゴリズムを用いて解析処理するための解析条件の設定又は変更を行う。ここで、設定又は変更される解析条件には、ノイズの除去等、検出信号を整形するための複数のフィルタ処理及び該複数のフィルタ処理の組み合わせ、並びに複数のフィルタ処理のそれぞれのフィルタ特性を含むことも出来る。このステップ302の処理は、これらの解析条件を、予め定められた順番で、順次設定(変更)することで行われる。なお、通常処理として、ステップ304のフィルタ処理を行わない解析を実施することとしても構わない。この場合は、ステップ302でフィルタ処理なしに設定し、ステップ304では処理を実施しなければ良い。
本実施例で、必須の項目ではないが、フィルタ処理を行う場合には、以下のように実施する。
複数のフィルタ処理として、例えば図8(A)に示される利得関数を有する低域通過フィルタ、高域通過フィルタ、及び帯域通過フィルタ、並びに図8(B)に示される利得関数を有する櫛形フィルタ等を用いる処理が用意されている。フィルタ処理の組み合わせには、これらのフィルタ処理の任意の組み合わせが含まれる。フィルタ特性には、例えば、低域通過フィルタ、高域通過フィルタ、及び帯域通過フィルタに対してカットオフ周波数、櫛形フィルタに対してカットオフ周波数、バンド幅、及びバンド間隔が含まれる。
なお、前述したが、ここで、フィルタ処理とは、いわゆるデジタル信号処理により、信号波形の周波数成分(光学像の場合は空間周波数と呼ばれるが信号波形処理自体は同様であるため、図8内では周波数と表記されている)の帯域を制限し、周波数特性を変更する処理を表すものとする。例えば、低域通過フィルタという場合、信号波形の周波数成分は低い周波数のものだけとなり、高い周波数成分は削除されることを表す。
一般に撮像素子(一般に言うCCD等の2次元画像を得られるセンサ)は、2次元に整列した多数の画素を持ち、光学系により結像されたアライメントマーク像を、所定の画素ピッチでサンプリングし、2次元画像信号を得ることができる。このようにして得られた画像の強度分布から、光学的なアライメントマーク像の強度分布が得られ、さらに前記フィルタ処理を行い周波数特性を変更する処理を適用することができる。
なお、図8(B)に示される櫛形フィルタであるが、図8(B)では例として8個の櫛形状を持つ特性が示されているが、一般に多数の各櫛形状部の高さ(利得)を個々に変化させ、高さゼロを含む各種設定とすることも可能である。また、図8(A)及び図8(B)の各フィルタは、簡略化のため矩形形状で示されているが、図示は省略するが、一般に信号処理に最適化させ、矩形形状よりも角に丸みを持つ形状を採用するなど、より最適な形状として採用することができる。
次のステップ304では、アライメントマーク検出処理により得られた全ての検出条件に対するアライメントマークの検出信号に対して、ステップ302において設定された解析条件、すなわち設定されたフィルタ特性を有するフィルタ処理又はその組み合わせを用いた処理を行う。処理された検出信号は、解析条件と対応付けて記憶装置(不図示)に記憶される。
図8(C)及び図8(D)には、ノイズ除去に適したフィルタ処理の組み合わせを用いた処理の適用前後の検出信号の一例が示されている。図8(C)に示される処理前の検出信号が、帯域通過フィルタによって、図8(D)に示されるように主要な周波数成分が取出されてされている。このように、フィルタ処理が効果的な場合もある。
次のステップ306では、予定された全ての解析条件における検出信号のフィルタ処理が終了したか否か判断する。そして、この判断が否定された場合、ステップ302に戻って次の解析条件に変更し、ステップ304において変更後の解析条件における検出信号のフィルタ処理を行う。そして、ステップ306における判断が肯定されるまで、ステップ302、304、306のループの処理を繰り返す。そして、ステップ306における判断が肯定されると、次のステップ308に移行する。
ステップ308では、所定の信号処理アルゴリズムを用いて検出信号の特徴量を抽出する。ここで、特徴量の一例について説明する。アライメントマーク中の各ラインパターンに対応して、例えば図9(A)に示されるような波形の1つの信号(ピース信号と呼ぶ)が得られる。図9(A)中に破線で示されるピース信号の信号波形の変曲点が、所定の信号処理アルゴリズムを用いて特徴点として抽出可能である。従って、ピース信号毎に、信号波形の変曲点の位置と変曲点での信号強度と傾き(微分値)とを、信号処理アルゴリズムにより特徴量として求めることができる。なお、変曲点とは、信号波形を微分した波形が、ピース信号内で極大及び極小となる点であり、図9(A)においては、4点の変曲点が抽出されている。同様に、図9(B)中に破線で示されるピース信号の信号波形の極値点が、信号処理アルゴリズムにより特徴点として抽出可能である。従って、ピース信号毎に、信号波形の極値点の位置と極値点での信号強度と、極値点での微分値を、特徴量として求めることができる。なお、極値点とは、信号波形が極大及び極小となる点である。従って、得られた極値点での微分値はほぼゼロとなり、極値点であることを確認することができる。
なお、極値点の位置は、極値点を挟む2つの変曲点の中点の位置として求めることもできる。光学像の傾向として、極値点は極値点を挟む2つの変曲点の間に1点でない場合が想定される(2つの変曲点の間で信号波形に微小なうねり成分がある場合)が、このような場合、2つの変曲点の中点を極値点と仮定する本手法は有効である。同時に得られる極値点での信号波形の傾き(微分値)も、本手法の場合ゼロでない値をとるため、有効に活用できる。また、ノイズの影響等で、極値点が定まりにくい場合は、いわゆる所定幅で移動平均処理(スムージング)を施した後に、極値点を検出しても構わない。
また、図10(A)中に破線で示されるピース信号の最大値及び最小値が特徴量として抽出可能である。前述した極値点での特徴量と異なり、ピース信号の単に波形最大値と最小値を抽出しピース信号の特徴量とすることができる。信号波形はピース信号毎に異なる形状になっていることが想定されるため、極値点に依存しない本特徴量を抽出する。さらに、図10(B)中に破線で示されるピース信号の波形中心と、相互に隣接するピース信号の波形間の中間点が抽出可能であり、それらの点の位置と対応する信号強度とを、特徴量として求めることができる。ここで、ピース信号の波形中心はすでに算出されていることが必要となるが、ピース信号の波形中心を求める既存の手法として、ピース信号部の信号波形を抽出し、信号波形の左右を反転させた信号波形を作り、元の信号に対して位置をずらして波形の相関をみる(いわゆる畳み込み処理)ことで、その最も相関が高い位置を中心位置とする手法を用いることができる。また、アライメントマーク中心に関しても、同様にして算出した各ピース信号の波形中心座標を平均処理することで求めることが可能である。
前述した、変曲点位置及び/又は極値位置などを含め、特徴量の位置情報は、各ピース信号の波形中心点、及び/又はアライメントマークの中心点を原点として相対座標(例えば各ピース信号毎に、各ピースの波形中心を原点とした、あるいはアライメントマーク中心点を原点とした座標)にて管理することが可能である。抽出された特徴点及び対応する特徴量は、解析条件及びアライメントマーク(を構成するマークライン)と対応付けて、記憶装置(不図示)に記録される。
なお、抽出された特徴点(及び特徴量)は、対応するアライメントマーク毎にグループ化して管理される。グループ内では、例えば図11(A)に示されるように、位置(配置)に応じて特徴点にラベルが付される。この例では、m個の特徴点に、1からmまでの数字がラベルとして付されている。ただし、アライメントマークの構造差に起因する信号波形の形状差及び変形、又は検出誤差等により、特徴点が現れる位置が本来の位置からずれる、あるいは期待する特徴点が検出できないこともある。例えば図11(B)に、複数のアライメントマークによるk個の信号波形によりm個のグループを構成した例が示されている。この図11(B)では、検出信号のうち、2番目の検出信号に属するp−2番目の特徴点と、k番目の検出信号に属するp+1番目の特徴点が検出されていない状態が示されている。
この様なグループ化を行なう手法を図11(B)で説明する。主制御装置28は、前述したように複数のアライメントマークのそれぞれの波形に対応するマーク中心位置を記憶しており、各特徴点はマーク中心を原点として相対位置座標で管理することができる。従って、各波形による特徴点の中心位置(マーク中心)を合わせて、各波形に含まれる特徴点の位置を相互に比較することができる。ここで、対応する特徴点の位置は、所定幅の比較範囲内で比較される。すなわち、位置が比較範囲内であり、傾き(微分値)の符号が同じとなり、さらに複数候補が含まれた場合には最も位置が近いことを確認し、対応する特徴点であると判断される。なお、対応する特徴点が確認できなかった場合、その特徴点が含まれるグループ内の他の特徴点のラベルが振りなおされる。
図7に戻り、ステップ310では、ステップ308で得られた特徴量を用いて検出信号の信号波形の変形に関する判定量を求める。主制御装置28は、変形に関する判定量として、図12(A)に示されるように変曲点の位置のシフトより線幅誤差、図12(B)に示されるように変曲点での傾きの変化より段差誤差、図12(C)に示されるように隣接する2つのピースの中間点での強度変化より反射率トップ誤差、図12(D)に示されるように最小点での強度変化より反射率ボトム誤差を求める。
ここで、線幅誤差は前述したピース波形中心を求める手法で算出したピース中心線から最も遠い位置にある変曲点2点を、ピース中心線対称であること(中心線からの距離がある所定幅の比較範囲内で同じとなっていること)を条件に抽出し、その2点の間隔を線幅とし、複数のアライメントマークで平均値と分散値を求め、例えば、分散値を線幅がばらついている量として既定することが望ましい。また、段差誤差は同様にして、例えば抽出した2点の傾きを、図10(A)中に破線で示される前述のピース信号の最大値で割り算することで規格化の上、絶対値をとった後に和をとった値を段差と定義し、複数のアライメントマークで平均値と分散値を求め、例えば、分散値を段差がばらついている量として既定することが望ましい。
なお、本実施例では、図11(B)に示されるグループ化を行なってから、図12に示される判定量を求めるとしているが、信号波形の歪みや非対称がそれほど大きくない場合、つまりグループが容易に形成可能と判断できる場合は、グループ化による特徴量抽出を行なわずに、図12の判定量を求めることも可能である。この場合、グループ内の各波形から直接図12の判定量を求める処理を行なうことが出来る。
図7に戻り、次のステップ312では、ステップ310において求めた変形に関する判定量を用いて、アライメントマークの検出結果のアライメント検出系に由来する検出誤差(TIS:Tool Induced Shift)(特に収差に由来する誤差)を評価する。ここで、アライメント検出系に由来する検出誤差TISに関し、2種類の分類を説明する。一般に、半導体素子等を製造する製造プロセスにより、計測するマークの構造(マーク線幅、段差、反射率等)は変わる(ここで段差はマークを構成する物質がライン部とスペース部で異なり、光の光路長が異なることにより発生する位相差成分も含めている)。一般に、アライメント検出系に由来する誤差TISは、検出系の光学系に残存する収差等と、マーク構造の差によって発生する。従って、製造プロセス毎に、EGA計測を行う複数マークの全ての位置がずれるオフセット成分(TISオフセット成分と呼ぶ)が発生することがある。また、1つのウエハ内で、計測するマークの構造(マーク線幅、段差、反射率等)がアライメントマーク毎に変化しているとランダムな誤差成分(TISランダム成分と呼ぶ)が発生することがある。どちらの場合でも、マーク自体には位置ずれを引き起こす要素(例えば非対称性など)はなく、構造が異なることにより信号波形が変形するだけであり、アライメント検出系の光学系に残存収差があることに起因して位置ずれ要因となっている。このような背景から、アライメント検出系に由来する誤差と位置づけられている。TISオフセット成分は、例えば一旦露光を行い、重ね合わせを計測した結果を次の露光時のオフセットとしてフィードバッグすれば低減できるが、TISランダム成分は、EGA計測結果の誤差(すなわち位置計測誤差)となり低減することが難しい。
主制御装置28は、TISに強く相関する判定量を用いてTISを評価する。ここで、評価対象は主に低減が難しいTISランダム成分が主な対象となる。前述したように、TISランダム成分は検出系内の光学系に残存する収差等と、EGAの計測対象となるアライメントマークの構造誤差成分(検出信号波形の形状誤差となる)の相互作用で発生する。マーク構造(マーク構造に誤差がある場合は、ウエハ内のEGA対象マーク全体の平均状態)自体がTISランダム成分を発生させ易いか否かという指標と、実際にマーク構造の誤差がどの程度あるかの2点に着目して処理することになる。理由としては、TISランダム成分を発生しやすいマーク構造であっても、マーク構造の誤差がウエハ内で十分に小さければTISランダム成分が小さくなるためである。ここで、ウエハ内で平均的なマーク構造自体がTISランダム成分を発生させやすいどうかを表す判定量として、図13(A)に示されるアライメントマークの設計条件(例えば線幅とピッチ)、全アライメントマークの検出信号についてのコントラストの平均(平均コントラスト)及び検出信号の反射率比の平均(平均反射率比)が用いられる。また、個々のアライメントマークのマーク構造誤差を表す判定量として、図13(B)に示される変形に関する判定量である線幅誤差、段差誤差、及び反射率比のそれぞれの分散(ばらつき)が用いられる。ただし、反射率比≡(反射率トップ誤差−反射率ボトム誤差)/MAX(反射率トップ誤差,反射率ボトム誤差)である。段差誤差のばらつきは、その平均に対する比として与えられる。ここでMAXは関数を意味しており、引数である、反射率トップ誤差か反射率ボトム誤差のいずれか大きいほうを採用するという作用を示している。
主制御装置28は、各判定量を、例えば、4段階(A〜D)でランク付けして評価する。図13(A)では、TISランダム成分の発生し易さを表す判定量において、設計条件はランクA、平均コントラストはランクB、平均反射率比はランクBと評価されている。また、図13(B)では、マーク構造誤差を表す判定量において、線幅誤差の分散はランクA、段差誤差の分散はランクB、及び反射率比の分散はランクBと評価されている。
また、さらに精度を上げるためのもう一つの要素は、TISランダム成分の発生し易さの重み係数を与える信号波形の特徴を考慮し、図13(C)にある2種類のプロセスマークがフォーカス位置を変えた際の、エッジスロープ変化を示し説明する。このような特徴も、光学ティーチングシミュレーションにより得ることができる。ここで、グラフの原点が初期フォーカス位置であり、エッジスロープが最も大きくなるフォーカス位置を最良フォーカス位置と呼ぶ。例えば、2種のプロセスマークの内、グラフの実線で示される1つ目のプロセスマーク(1)のように最良フォーカス位置が、初期フォーカス位置に近い場合、そのプロセスマークはライン部とスペース部の反射率差、もしくは、段差(ライン部とスペース部の位相差)が十分に大きいマークを表している(強度差傾向のマーク)。この場合、同時にマーク構造誤差があってもTISランダム誤差は発生しにくい傾向にある。また、一方2つ目のプロセスマーク(2)のように最良フォーカス位置が、初期フォーカス位置から遠い場合、段差(ライン部とスペース部の位相差)が少ない傾向のマークを表している(強度差傾向のマーク)。この場合、マーク構造誤差によるTISランダム誤差は発生しやすい傾向にある。図12(D)に示すように、例えば最良フォーカス位置の初期フォーカス位置からのズレ量ΔZが、A≦|ΔZ|の場合、重み係数αとする。また、B≦|ΔZ|<Aの場合βとする。以下同様。このように、最良フォーカス位置ズレΔZに合わせて、重み係数Wを設定することが可能である。
主制御装置28は、これらの評価を総合して、TISを評価する。
一例として、ここで、設計条件、平均コントラスト、平均反射率比のランクA、B,C,及びDに対して、まず対応する基準得点を与える。各判定量のランクと、与える点数の関係に関しては、4種の判定量ランクが決まると1つの点数が対応する参照可能な関係となっており、予め光学ティーチングシミュレーション等により、各判定量とTISランダム成分発生の発生し易さを解析しておき、各判定量のランクが決まれば、もれなく規定の点数を参照可能なような参照データベースを持ち、参照することで行なわれる。TIS評価に対する光学ティーチングシミュレーションは、アライメント検出系の光学系に残存している収差を設定した状態で、各種光学設定条件(照明条件及び/又は結像条件)、フォーカス設定条件を設定し、多種多様な構造を持つアライメントマークの光学像を発生させ、A/D変換により撮像素子で計測された信号波形を擬似的に得たうえ、さらに実際の装置と同様の信号処理にて擬似的に各種特徴量及び/又は判定量を算出し評価する処理を意味する。このような、光学ティーチングシミュレーションの結果を整理することで、点数を参照するためのデータベースを作成することができる。線幅誤差、段差誤差、及び反射率比の分散のランクA、B,C,及びDに関しては、前述したように、それぞれの誤差が増えるとTISランダム成分が増大する。従って、同様に、予め光学ティーチングシミュレーション等により、各誤差量とTISランダム成分発生量を解析しておき、各判定量のランクが決まれば、もれなく規定の各誤差に対応した重みを、参照可能なような参照データベースを持つことで行なわれる。そして、これらの重みを加味し、「最終得点=最良フォーカス位置ズレ重み係数W×(線幅誤差比×線幅誤差重み+段差誤差比×段差誤差重み+反射率誤差比×反射率誤差重み)×基準得点」として最終得点が得られる。ここに示す例は、上記のように事前解析を併用した一例であるが、図13(E)に示されるように、例えば、TISは総合点(スコア)500と評価される。
なお、各判定量のランク付け(評価)は、各判定量とTISとの相関に基づいて行われる。ここで、相関は、予め、光学ティーチングシミュレーション等により求められる。光学ティーチングシミュレーションとは、想定した多種多様な構造を持つアライメントマークの光学像を、各種光学設定条件(照明条件や結像条件)、フォーカス設定条件で発生させ、A/D変換により撮像素子で計測された信号波形を擬似的に得たうえ、所定の電気ノイズを付加し、さらに実際の装置と同様の信号処理にて擬似的に各種特徴量や判定量を算出し評価する処理を意味する。光学ティーチングシミュレーションの結果を整理することで、点数を参照するためのデータベースを作成することができる。
例えば、図14(A)に示されるように、(平均)コントラストとTISランダム成分には強い負の相関があることが分かる。コントラストが小さくなると、アライメントマークの信号波形が消失する(検出信号からアライメントマークに対応する信号波形が抽出できなくなる)からである。そこで、小さいTISランダム成分から大きなTISランダム成分を与えるコントラストの範囲が、順に、ランクA〜Dに分類される。
また、図14(B)に示されるように、フォーカス変化に伴い信号波形が変形し、反射率比が変化する。ここで、反射率比が小さくなると、上と同様にアライメントマークの信号波形が消失し、それによりランダム誤差が増大する。そこで、図14(A)に示される(平均)反射率比とランダム誤差の関係を用いて、小さいTISランダム成分から大きなTISランダム成分を与える反射率比の範囲が、順に、ランクA〜Dに分類される。
その他、アライメントマークの線幅が変化した場合も、反射率比と同様に光学系の収差と誤差の相互作用により位置ずれが発生する。線幅(線幅誤差)とランダム誤差も上と同様に相関する。また、アライメントマークの段差が変化した場合も、反射率比同様に光学系の収差とマーク誤差の相互作用により位置ずれが発生する。段差(段差誤差)とランダム誤差も上と同様に相関する。そこで、これらの判定量も、同様に、ランクA〜Dに分類される。
また、TISランダム誤差は、光学ティーチングシミュレーションから、マーク構造誤差が大きなプロセスウエハの場合、初期フォーカス位置よりも最もエッジスロープが大きくなる最良フォーカス位置の方が、マーク構造誤差の影響による位置ずれ量が小さい傾向にある。これは、最良フォーカス位置では、コントラストや反射率比絶対値が大きくなり、図14の特徴から、TISランダム誤差に有利となるからである。これは、光学条件設定の一つであるフォーカス設定を変更すれば影響を低減できる可能性があることを示す。最適フォーカス位置でTISランダム誤差が大きな場合でも、最良フォーカス位置では、TISランダム誤差の影響が低減し、結果的に非対称も良くなる傾向にある。よって、少なくても、初期フォーカス位置と、最良フォーカス位置でTISランダム誤差を求めることが望ましい。
各判定量は、その値が位置する範囲に対応するランクを用いて評価される。また、これらのランク付けは、前述した、基準得点あるいは重みを参照するためのデータベースに対しても十分都合が良いように設定しておくことが望ましい。
なお、TIS評価に関し、光学ティーチングシミュレーションの結果からは、かなり正確にTISランダム誤差の大小を予想可能と考えられる。しかし、光学ティーチングシミュレーションの結果は、十分に正確であることが望ましいが、現実的には、実際のアライメント検出系を用いて、評価用のアライメントマークの計測を行い、評価し、前述した参照用データベース、及び/又は各判定量に関して修正を行い、評価精度を上げていくことが望ましい。その場合でも、元になる手法はほぼ同様であり、修正により精度を上げることが可能となる。
例えば、先述した図12(D)の最良フォーカス位置ズレの重み係数に関しても、実際の評価用アライメントマークを用いて、修正していくことが望ましいだろう。
図7に戻り、ステップ314では、上記ステップ312において得られた評価(の結果)に基づいて、評点を算出する。フィルタ処理を行う場合は、フィルタ処理毎に評点を算出する。フィルタ処理では、その効果としてTISを低減できる可能性がある。
次のステップ316では、ステップ314にて算出した評点を記憶装置に保存した後、検出信号の特徴量抽出と判定処理のサブルーチンの処理を終了する。主制御装置28は、図15に示されるように、照明条件及び結像条件毎に振幅、コントラスト等の判定量を表示する。ただし、判定量の値に限らず、それに基づくランク等の形で表示することとしても良い。また、主制御装置28は、図16に示されるように、照明条件及び結像条件毎に保存されたTISが評点で表示される。TISは、前述の評点に限らず、それに基づくランク等の形で表示することとしても良い。ここで、判定量の値又はランクに基づいて推奨される条件を強調して表示すると良い。これにより、オペレータ(又は技術者)等は、デバイス製造に最適又は好適な照明条件及び結像条件を選択することができる。なお、主制御装置28は、モニタに表示する光学ティーチングの結果の情報を、照明条件及び結像条件と関連づけて、記憶装置に記憶する。複数のフィルタ処理を実施した場合は、フィルタ処理の数分だけ、図15、図16の表示を増やして表示し、フィルタ処理の効果を確認可能とすれば良い。
検出信号の特徴量抽出と判定処理のサブルーチンの処理を終了すると、メインルーチンのステップ112に戻り、最適な照明条件及び結像条件が決定されるのを待つ。そして、オペレータが、モニタ上の表示を見てキーボード、マウス、等のポインティングデバイスを介して最適な照明条件及び結像条件を選択し、あるいは決定してその入力がなされると、ステップ112における判断が肯定され、ステップ114に移行する。
ステップ114では、上記の選択(又は決定)された最適な照明条件及び結像条件を用いてアライメント計測(EGA計測)のレシピファイルを作成する。この際、フィルタ処理を行っている場合は、フィルタ処理を設定しても構わない。レシピファイルの作成は、予め、最適化の対象である条件の数値等を空白としたレシピファイルを用意しておき、この空白に決定された最適条件を当てはめることで容易に行うことができる。これにより、実際のウエハの露光処理の際には、主制御装置28が、作成されたレシピファイルを読み出し、その内容に従ってウエハのファインアライメントを行うことが可能になる。
本実施例では、TISランダム誤差要因判定について判断しているが、前述したように、一般に判定が必要な項目は、少なくても、1.計測再現性判定、2.TISランダム誤差要因判定、3.WISランダム誤差要因判定、の3点あると考えられる。1.、3.の項目に対しても、所定の特徴量から判定を行い評点を得て、本実施例で得られたTISランダム誤差要因判定の評点と比較して総合的に判断してももちろん構わない。
なお、上記ステップ112のオペレータの処理に代えて、光学ティーチングの結果に基づいて、主制御装置28が、最良の照明条件及び結像条件を選択することとしても良い。この場合、主制御装置28により、重ね精度が最良となるように、最小のTISを与える照明条件及び結像条件が選択される。そして、ステップ114では、選択した最適化条件を用いてアライメント計測(EGA計測)のレシピファイル(プロセスプログラム)を作成する。これにより、ほぼ全自動で、EGAマークに応じた最適計測条件を含むEGA計測のレシピファイルを作成することが可能になる。
なお、これまでは、説明が必要以上に煩雑になるのを避けるため、EGA計測のレシピファイルの作成について説明したが、サーチアライメント計測のレシピファイルの作成も上記のEGA計測のレシピファイルの作成と同様にして行うことができる。この場合、アライメント検出系ASの照明波長の設定又は変更(ステップ202)、及び照明方法及び結像条件の設定又は変更(ステップ204)での処理の内容は、幾分相違するとともに、検出対象がEGAマークの代わりにサーチマークになる。しかし、かかる相違点を除けば、前述のステップ102〜114、ステップ202〜214、ステップ302〜316とほぼ同じ処理アルゴリズムに従ってサーチアライメント計測のレシピファイルを作成することができる。
以上説明したように、本実施形態に係る露光装置100によると、主制御装置28により、アライメント検出系ASを用いてウエハW上に形成されたアライメントマーク(EGAマーク又はサーチマーク)が複数の照明条件及び結像条件で検出され、得られる検出信号を所定の信号処理アルゴリズムを用いて解析することにより検出信号の波形の変形に関する判定量が求められ(ステップ302〜310)、その判定量に基づいて複数のマークの検出結果のマーク誤差が評価される(ステップ312)。そして、複数の照明条件及び結像条件の評点が得られる(ステップ308〜314)。従って、複数の照明条件及び結像条件のうち、最適な照明条件及び結像条件を選択するだけで、結果としてマーク検出系に由来する検出誤差が軽減されるようにマークの検出条件を最適化することが可能になる。従って、マークの検出条件の最適化を短時間で、及び/又は効率的に行うことが可能になる。ここで、なお、上記ステップ112のオペレータの処理に代えて、光学ティーチングの結果に基づいて、主制御装置28が、最良の照明条件及び結像条件を選択する場合には、最適な照明条件及び結像条件の選択も不要である。また、フィルタ処理を行う場合には、合わせて最適なフィルタ処理も設定可能となる。
前述したように、一般に判定が必要な項目は、少なくても、1.計測再現性判定、2.TISランダム誤差要因判定、3.WISランダム誤差要因判定、の3点あると考えられる。例えば、1.及び3.の判定を行い、結果としてこれらが十分良い場合を想定する。もし、この条件で、最適な照明条件及び結像条件で、TISランダム成分が大きい場合には、EGA計測対象のマークのマーク構造のショット内バラつきは多いが、FIA光学系の製造誤差で発生する収差が小さいと判断できる。一般に、多数の装置の誤差要因は正規分布でバラついており、1台の装置の計測結果で、他の製造装置の計測結果も良いことを保証するためには、製造する全ての装置の誤差分散値を考慮して性能を保証しなければならない。つまり、計測した装置ではTISランダム成分が大きいにも関わらず、それにより発生すると予想される非対称が小さく、WISランダム成分は小さいが、別の装置では、TISランダム成分によりWISランダム成分も大きく発生する可能性が指摘できる。この点を、以下に説明する。
先述したように、2.TISランダム誤差は収差とマーク構造誤差の相互作用で発生する。また、ここで言うマーク構造誤差とはウエハ内の各アライメントマークの線幅誤差、マーク部とライン部の段差(もしくは位相差)誤差、ライン部とスペース部の反射率比誤差等であり、マーク構造の非対称に起因するものではない。しかし、ここで、収差とマーク構造誤差の相互作用においても、FIAで計測した信号波形においては非対称が発生するという特徴がある。よって、多数の装置の収差バラつきの中で、値が悪い装置に関しては対称性に関する判定量にも影響を与え、WISランダム成分が大きくなるのである。結果として、ウエハ内の非対称ばらつきも大きくなり、EGAランダム成分も大きくなり、重ね合わせ精度が悪化する。よって、この点も考慮の上判定する必要がある。
EGAランダム成分を悪化させる要因は以下のようにまとめることが出来る。なお、ここで、1.計測再現性に関しては精度悪化要因は十分小さいことを前提とした。
信号波形の非対称バラつきが大きいと位置ズレ誤差が誘発されるため、EGAランダム成分が悪化し重ね精度が悪化する。
非対称バラつき ∝ EGAランダム成分悪化分 ≒ 重ね精度悪化分
各アライメントマークの信号波形の非対称バラつきは、2.TISランダム誤差が要因となる成分と、3.WISランダム誤差が要因となる成分の和の成分となる。
非対称バラつき ≒ 非対称バラつき(TIS) + 非対称バラつき(WIS)
TISランダム成分 ∝ 非対称バラつき(TIS)
WISランダム成分 ∝ 非対称バラつき(WIS)
2.TISランダム誤差が判定され、2.TISランダム誤差が要因となる非対称バラつき量が予想されると、当然ながら、実際にウエハ内で発生している非対称バラつきから、2.TISランダム誤差が要因となる非対称ばらつき成分を差し引いた成分が、3.WISランダム誤差成分が要因となる非対称ばらつきとなる。
非対称バラつき(WIS) ≒ 非対称バラつき − 非対称バラつき(TIS)
また、EGAランダム成分の悪化分はTISランダム成分とWISランダム成分の和となることがわかる。
EGAランダム成分悪化分 ≒ TISランダム成分 + WISランダム成分
光学ティーチングによる光学条件の最適化の最終目的は、EGAランダム成分を減らし、重ね合わせ精度が最も良い光学条件およびフィルタ設定条件等を得ることであり、また特定の半導体プロセスでEGAランダム成分が大きくなる原因を解析することである。
一般にEGA計測の結果、ランダム成分悪化分が大きければ、半導体プロセスに起因した位置ずれ誤差が大きいことはわかるが、それ以上の解析は難しい。つまり、1.計測再現性、2.TISランダム誤差、3.WISランダム誤差、の3つのEGAランダム成分を悪化させる要因の判別、及び、何故その成分が悪化しているかの原因判定は難しい。しかし、本実施例のように、所定の信号処理アルゴリズムを用いて、例えば、TISランダム成分が小さく、WISランダム成分が大きいことが判明すれば、精度悪化の原因が、各アライメントマークのマーク構造非対称性であることが判明し、その上で、最も影響を受けにくい光学条件や、抑制効果のあるフィルタ設定まで自動的に判定することが可能となる。また、半導体プロセス自体の改善要素として、マーク構造自体の非対称を低減すべきであることも同時に判断できるのである。
信号波形の非対称バラつきが大きいと位置ズレ誤差が誘発されるため、EGAランダム成分が悪化し重ね精度が悪化する。
非対称バラつき ∝ EGAランダム成分悪化分 ≒ 重ね精度悪化分
各アライメントマークの信号波形の非対称バラつきは、2.TISランダム誤差が要因となる成分と、3.WISランダム誤差が要因となる成分の和の成分となる。
非対称バラつき ≒ 非対称バラつき(TIS) + 非対称バラつき(WIS)
TISランダム成分 ∝ 非対称バラつき(TIS)
WISランダム成分 ∝ 非対称バラつき(WIS)
2.TISランダム誤差が判定され、2.TISランダム誤差が要因となる非対称バラつき量が予想されると、当然ながら、実際にウエハ内で発生している非対称バラつきから、2.TISランダム誤差が要因となる非対称ばらつき成分を差し引いた成分が、3.WISランダム誤差成分が要因となる非対称ばらつきとなる。
非対称バラつき(WIS) ≒ 非対称バラつき − 非対称バラつき(TIS)
また、EGAランダム成分の悪化分はTISランダム成分とWISランダム成分の和となることがわかる。
EGAランダム成分悪化分 ≒ TISランダム成分 + WISランダム成分
光学ティーチングによる光学条件の最適化の最終目的は、EGAランダム成分を減らし、重ね合わせ精度が最も良い光学条件およびフィルタ設定条件等を得ることであり、また特定の半導体プロセスでEGAランダム成分が大きくなる原因を解析することである。
一般にEGA計測の結果、ランダム成分悪化分が大きければ、半導体プロセスに起因した位置ずれ誤差が大きいことはわかるが、それ以上の解析は難しい。つまり、1.計測再現性、2.TISランダム誤差、3.WISランダム誤差、の3つのEGAランダム成分を悪化させる要因の判別、及び、何故その成分が悪化しているかの原因判定は難しい。しかし、本実施例のように、所定の信号処理アルゴリズムを用いて、例えば、TISランダム成分が小さく、WISランダム成分が大きいことが判明すれば、精度悪化の原因が、各アライメントマークのマーク構造非対称性であることが判明し、その上で、最も影響を受けにくい光学条件や、抑制効果のあるフィルタ設定まで自動的に判定することが可能となる。また、半導体プロセス自体の改善要素として、マーク構造自体の非対称を低減すべきであることも同時に判断できるのである。
また、本実施形態の露光装置100によると、主制御装置28が、最適化された検出条件を、アライメント計測の処理手順を規定するプロセスプログラム(レシピファイル)中の対応する条件として決定することで、アライメント計測のレシピファイルが作成される。ウエハの処理の際には、主制御装置28が、作成されたレシピファイルを読み出し、このレシピファイルに基づいて、ウエハのサーチアライメントを確実かつ正確に行うこと、またウエハのファインアライメント(EGA)を精度良く行うことが可能となる。
また、本実施形態の露光装置100では、上述のようにウエハのファインアライメントを精度良く行うことができるので、このファインアライメントの結果に基づいて露光の際の際にレチクルRのパターンをウエハW上の各ショット領域に精度良く重ね合わせて転写することが可能になる。
照明条件及び結像条件に優先度をつけることも可能である。例えば、照明波長に対し、使用頻度の高いブロードを標準条件とする。あるいは、優先度の高い照明条件及び結像条件に対してのみ、検出条件の最適化が行われる。例えば、使用頻度の高いブロードを最優先、次に計測再現性の改善が期待されるグリーン、オレンジ、及びレッド、最後に特殊な状況で主に使用されるシアン及び近赤外の順に優先順位が付けられる。また、照明方法及び結像条件に対し、使用頻度の高い明視野照明で最良フォーカス位置を最優先、次に大きな段差を有するマークの検出に好適な明視野照明で最適フォーカス位置、最後にTISの発生が抑制される暗視野照明で最良フォーカス位置の順に優先順位が付けられる。あるいは、明視野照明におけるTISが小さく暗視野照明における計測再現性が高い場合、明視野照明で最良フォーカス位置を優先する。また、明視野照明におけるTISが小さく暗視野照明における計測再現性が低い場合には、明視野照明で最適フォーカス位置を優先する。明視野照明におけるTISが大きく暗視野照明における計測再現性が高い場合、暗視野照明で最良フォーカス位置を優先する。明視野照明におけるTISが大きく暗視野照明における計測再現性が低い場合、オペレータ(又は技術者)に判断を委ねることとする。さらに、上記各設定に対して、WISランダム成分に関しても、その寄与を確認することが可能である。
また、上記実施形態では、レシピファイルを作成する際に、本発明に係る検出条件最適化方法の一例が実施される場合について説明したが、これに限らず、実際のウエハの処理の際に、パイロットウエハ又はロット先頭ウエハなどを用いて、上記のステップ114を除く処理、すなわちアライメントマークの検出条件の最適化処理を行うこととしても良い。この場合にも、EGAマーク(及びサーチマーク)の検出条件が最適化され、その最適化された条件に従うことで、ウエハのファインアライメント(EGA)(及びサーチアライメント)を精度良く行うことが可能となる。
なお、上記実施形態では、単独のアライメント検出系ASを備える露光装置に本発明が適用された場合について説明したが、例えば米国特許出願公開第2008/0088843号明細書などに開示される複数のアライメント検出系を備えた露光装置にも本発明は好適に適用できる。この場合、複数のアライメント検出系のそれぞれが収差等、異なる光学特性を有するため、それぞれの検出系について検出条件の最適化を行う必要がある。ただし、この手続を簡略化するために、複数のアライメント検出系のうちの1つ(プライマリアライメント系と呼ぶ)についてのみ検出条件の最適化を行う。そして、複数のアライメント検出系のそれぞれを用いて同じアライメントマークを検出し、その結果からプライマリアライメント系を基準とするその他のアライメント系についてのTISの差分を求める。この差分を用いてその他のアライメント系の検出結果を補正することにより、プライマリアライメント系に対して得られた最適な検出条件を共用することができる。なお、もちろん複数のアライメント検出系毎に詳細に最適化を試行しても構わない。
なお、上記実施形態では、アライメント計測のレシピファイルを露光装置が作成し、その際に、検出条件を最適化する場合について説明したが、これに限らず、本発明の検出条件最適化方法及びプログラム作成方法を、露光装置以外の画像処理方式のアライメントセンサ(マーク検出系)を備えた装置(マーク検出装置)、例えば重ね合わせ測定機などで行うようにすることもできる。この場合、基本的には、上記実施形態と同等の効果を得ることができ、それらの装置でマークの検出条件の最適化及びアライメント計測のレシピファイルの作成が可能となる。
また、上記実施形態では、説明の簡略化のため、主制御装置28が、検出条件の最適化を含むアライメント計測に関する処理、レシピファイルの作成などを全て行うものとしたが、例えば主制御装置28が行う各種処理を、複数のハードウェアで分担して行うようにしても良い。例えば、前述の図2のフローチャートで示される各ステップの処理を、複数のマイクロコンピュータで適宜分担して行うようにしても良い。
なお、上記実施形態では、光源として、KrFエキシマレーザ(出力波長248nm)などの紫外光源、ArFエキシマレーザ等の真空紫外域のパルスレーザ光源などを用いるものとしたが、これに限らず、水銀ランプは勿論、F2レーザ、あるいはAr2レーザ(出力波長126nm)などの他の真空紫外光源を用いても良い。また、例えば、真空紫外光として上記各光源から出力されるレーザ光に限らず、DFB半導体レーザ又はファイバレーザから発振される赤外域、又は可視域の単一波長レーザ光を、例えばエルビウム(Er)(又はエルビウムとイッテルビウム(Yb)の両方)がドープされたファイバンプで増幅し、非線形光学結晶を用いて紫外光に波長変換した高調波を用いても良い。
更に、照明光ILとしてEUV光、X線、あるいは電子線又はイオンビームなどの荷電粒子線を用いる露光装置、投影光学系を用いない、例えばプロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナー、及び例えば米国特許出願公開第2005/0259234号明細書などに開示される、投影光学系とウエハとの間に液体が満たされる液浸型露光装置などにも本発明を適用しても良い。
また、上述の各実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスク、あるいは光反射性の基板上に所定の反射パターンを形成した光反射型マスクを用いたが、それらに限定されるものではない。例えば、そのようなマスクに代えて、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する電子マスク(光学系の一種とする)を用いるようにしても良い。このような電子マスクは、例えば米国特許第6,778,257号明細書に開示されている。なお、上述の電子マスクとは、非発光型画像表示素子と自発光型画像表示素子との双方を含む概念である。
また、例えば、2光束干渉露光と呼ばれているような、複数の光束の干渉によって生じる干渉縞を基板に露光するような露光装置にも適用することができる。そのような露光方法及び露光装置は、例えば、国際公開第01/35168号に開示されている。
なお、上記実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式等の走査型露光装置に本発明が適用された場合について説明したが、これに限らず、ステップ・アンド・リピート方式又はステップ・アンド・スティッチ方式の投影露光装置にも本発明は好適に適用できる。
なお、本発明は、半導体素子製造用の露光装置に限らず、液晶表示素子などを含むディスプレイの製造に用いられる、デバイスパターンをガラスプレート上に転写する露光装置、薄膜磁気ヘッドの製造に用いられるデバイスパターンをセラミックウエハ上に転写する露光装置、及び撮像素子(CCDなど)、マイクロマシン、有機EL、DNAチップなどの製造に用いられる露光装置などにも適用することができる。また、半導体素子などのマイクロデバイスだけでなく、光露光装置、EUV露光装置、X線露光装置、及び電子線露光装置などで使用されるレチクル又はマスクを製造するために、ガラス基板又はシリコンウエハなどに回路パターンを転写する露光装置にも本発明を適用できる。
なお、これまでは、基板上にパターンを形成する露光装置について説明したが、スキャン動作により、基板上にパターンを形成する方法は、露光装置に限らず、例えば米国特許第6,973,710号明細書などに開示されるインクジェットヘッド群と同様のインクジェット式の機能性液体付与装置を備えた素子製造装置を用いても実現可能である。
上記米国特許明細書に開示されるインクジェットヘッド群は、所定の機能性液体(金属含有液体、感光材料など)をノズル(吐出口)から吐出して基板(例えばPET、ガラス、シリコン、紙など)に付与するインクジェットヘッドを複数有している。このインクジェットヘッド群のような機能性液体付与装置を用意して、パターンの生成に用いることとすれば良い。この機能性液体付与装置を備えた素子製造装置では、基板を固定して、機能性液体付与装置を走査方向にスキャンしても良いし、基板と機能性液体付与装置とを相互に逆向きに走査しても良い。
半導体デバイスは、デバイスの機能・性能設計を行うステップ、この設計ステップに基づいたレチクルを製作するステップ、シリコン材料からウエハを製作するステップ、前述した実施形態の露光装置によりレチクルのパターンをウエハに転写するステップ、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程を含む)、検査ステップ等を経て製造される。従って、その半導体デバイスを生産性良く製造することが可能となる。
以上説明したように、本発明の検出条件最適化方法は、アライメントマークの検出条件を最適化するのに適している。また、本発明のプログラム作成方法は、アライメント計測のレシピを作成するのに適している。また、本発明の露光装置は、基板上にパターンを重ね形成するのに適している。
16…アライメント制御装置、28…主制御装置、100…露光装置、Sn…ショット領域、32…ファインアライメントマーク、33…サーチアライメントマーク、AS…アライメント検出系、W…ウエハ。
Claims (28)
- 基板上に形成された位置合わせ用のマークの検出条件を最適化する検出条件最適化方法であって、
基板上に形成された複数の前記マークを、マーク検出系を用いて複数の照明条件及び結像条件の下で検出することと;
前記マーク検出系からの検出信号を所定の信号処理アルゴリズムを用いて解析し、前記検出信号の波形の変形に関する判定量を求め、該判定量に基づいて前記複数のマークの検出結果の前記マーク検出系に由来する検出誤差を評価し、該評価結果に基づいて前記複数の照明条件及び結像条件を最適化することと;
を含む検出条件最適化方法。 - 前記所定の信号処理アルゴリズムは、複数のフィルタ処理を含み、
前記最適化することでは、前記複数のフィルタ処理の処理条件をさらに最適化する請求項1に記載の検出条件最適化方法。 - 前記複数のフィルタ処理の処理条件には、前記複数のマークの検出結果の前記マーク検出系に由来する検出誤差を低減する前記複数のフィルタ処理の最適な組み合わせが含まれる請求項2に記載の検出条件最適化方法。
- 前記複数のフィルタ処理の処理条件には、前記複数のフィルタのそれぞれのフィルタ特性が含まれる請求項2又は3に記載の検出条件最適化方法。
- 前記複数のフィルタ処理には、低域通過フィルタ、高域通過フィルタ、帯域通過フィルタ、及び櫛形フィルタのうちの少なくとも1つが含まれる請求項2〜4のいずれか一項に記載の検出条件最適化方法。
- 前記最適化することでは、前記複数のマークの検出信号から、前記複数のマークのそれぞれに対応する一群の信号の波形についての極値と極値点の位置、中心位置と該中心位置での強度、及び隣接する信号群の波形との中間での強度の少なくとも1つを含む特徴量を抽出し、該特徴量を用いて前記変形に関する判定量を求める請求項1〜5のいずれか一項に記載の検出条件最適化方法。
- 前記変形に関する判定量には、線幅誤差、段差誤差、及び強度誤差の少なくとも1つが含まれる請求項1〜6のいずれか一項に記載の検出条件最適化方法。
- 前記最適化することに先立って、前記判定量と前記マーク検出系に由来する検出誤差の対応関係が求められ、
前記最適化することでは、さらに前記対応関係を用いて前記マーク検出系に由来する検出誤差を評価する請求項1〜7のいずれか一項に記載の検出条件最適化方法。 - 前記最適化することでは、前記判定量を個別に評価し、該評価結果を総合することにより前記マーク検出系に由来する検出誤差を評価する請求項1〜8のいずれか一項に記載の検出条件最適化方法。
- 前記複数の照明条件には、前記マーク検出系の照明方法又は照明波長が含まれる請求項1〜9のいずれか一項に記載の検出条件最適化方法。
- 前記マーク検出系の照明方法には、前記マーク検出系の照明開口数が含まれる請求項10に記載の検出条件最適化方法。
- 前記複数の結像条件には、前記マーク検出系のフォーカス位置又は結像開口数が含まれる請求項1〜11のいずれか一項に記載の検出条件最適化方法。
- 前記複数のマークには、前記基板を粗く位置合わせするためのマークと精密に位置合わせするためのマークとが含まれる請求項1〜12のいずれか一項に記載の検出条件最適化方法。
- 請求項1〜13のいずれか一項に記載の検出条件最適化方法を利用して基板上の複数のマークの検出信号の検出条件を最適化して、前記基板の位置合わせ手順を定めるプログラムを作成するプログラム作成方法。
- 基板上に複数のパターンを重ね合わせて形成する露光装置であって、
基板上に形成された位置合わせ用のマークを検出するマーク検出系と;
前記マーク検出系を用いて複数の前記マークを複数の照明条件及び結像条件の下で検出して得られる検出信号を所定の信号処理アルゴリズムを用いて解析し、前記検出信号の波形の変形に関する判定量を求め、該判定量に基づいて前記複数のマークの検出結果の前記マーク検出系に由来する検出誤差を評価し、該評価結果に基づいて前記複数の照明条件及び結像条件を最適化する最適化装置と;
を備える露光装置。 - 前記所定の信号処理アルゴリズムは、複数のフィルタ処理を含み、
前記最適化装置は、前記複数のフィルタ処理の処理条件をさらに最適化する請求項15に記載の露光装置。 - 前記複数のフィルタ処理の処理条件には、前記複数のマークの検出結果の前記マーク検出系に由来する検出誤差を低減する前記複数のフィルタ処理の最適な組み合わせが含まれる請求項16に記載の露光装置。
- 前記複数のフィルタ処理の処理条件には、前記複数のフィルタのそれぞれのフィルタ特性が含まれる請求項16又は17に記載の露光装置。
- 前記複数のフィルタ処理には、低域通過フィルタ、高域通過フィルタ、帯域通過フィルタ、及び櫛形フィルタのうちの少なくとも1つが含まれる請求項16〜18のいずれか一項に記載の露光装置。
- 前記最適化装置は、前記複数のマークの検出信号から、前記複数のマークのそれぞれに対応する一群の信号の波形についての極値と極値点の位置、中心位置と該中心位置での強度、及び隣接する信号群の波形との中間での強度の少なくとも1つを含む特徴量を抽出し、該特徴量を用いて前記変形に関する判定量を求める請求項15〜19のいずれか一項に記載の露光装置。
- 前記変形に関する判定量には、線幅誤差、段差誤差、及び強度誤差の少なくとも1つが含まれる請求項15〜20のいずれか一項に記載の露光装置。
- 前記最適化装置は、予め前記判定量と前記マーク検出系に由来する検出誤差の対応関係を求め、該対応関係を用いて前記マーク検出系に由来する検出誤差を評価する請求項15〜21のいずれか一項に記載の露光装置。
- 前記最適化装置は、前記判定量を個別に評価し、該評価結果を総合することにより前記マーク検出系に由来する検出誤差を評価する請求項15〜22のいずれか一項に記載の露光装置。
- 前記複数の照明条件には、前記マーク検出系の照明方法又は照明波長が含まれる請求項15〜23のいずれか一項に記載の露光装置。
- 前記マーク検出系の照明方法には、前記マーク検出系の照明開口数が含まれる請求項24に記載の露光装置。
- 前記複数の結像条件には、前記マーク検出系のフォーカス位置又は結像開口数が含まれる請求項15〜25のいずれか一項に記載の露光装置。
- 前記複数のマークには、前記基板を粗く位置合わせするためのマークと精密に位置合わせするためのマークとが含まれる請求項15〜26のいずれか一項に記載の露光装置。
- 基板上に形成された位置合わせ用のマークを検出するマーク検出系と;
前記マーク検出系を用いて複数の前記マークを複数の照明条件及び結像条件の下で検出して得られる検出信号を所定の信号処理アルゴリズムを用いて解析し、前記検出信号の波形の変形に関する判定量を求め、該判定量に基づいて前記複数のマークの検出結果の前記マーク検出系に由来する検出誤差を評価し、該評価結果に基づいて前記複数の照明条件及び結像条件を最適化する最適化装置と;
を備えるマーク検出装置。
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