以下に、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明により本発明が限定されるものではない。また、以下の説明における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。また、以下に開示する構成は、適宜組み合わせることができる。以下の説明において、タイヤ周方向とは、タイヤ回転軸を中心軸とする周方向を意味する。タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸と平行な方向を意味し、タイヤ幅方向外側とは、タイヤ赤道面から離れる側を意味し、タイヤ幅方向内側とは、タイヤ赤道面に向かう側を意味する。タイヤ径方向とは、空気入りタイヤ回転軸と直交する方向を意味し、タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる側を意味し、タイヤ径方向内側とはタイヤ回転軸に向かう側を意味する。
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る空気入りタイヤのトレッド部の一例の要部を示す平面図である。同図に示す例においては、トレッド部1に、略タイヤ周方向に延びる複数本の周方向溝2(21、22、23、24、25、26)と、隣り合う2本の周方向溝2(21〜26)を連通する複数本の横溝3(31、32、33、34、35、36、37、38)が配設されている。横溝3(31〜38)は、タイヤ幅方向最外部からタイヤ幅方向内側に延在するとともに、その途中からタイヤ幅方向に対して所定の角度で傾斜して延在し、タイヤ赤道面CLに到達する前に終端している。また、タイヤ赤道面CL付近には、タイヤ幅方向に対して横溝3(31〜38)の傾斜方向とはタイヤ幅方向を基準として反対方向に傾斜した複数本の横溝4(41、42)が配設されている。これにより、トレッド部1には多数個の陸部5(51、52、53、54、55、56、57)が区画形成されている。
図1に示す例においては、陸部5(51〜57)に、タイヤ周方向と交差して延びる複数本のサイプ6(61、62、63、64、65、66、67)が配設されており、これにより陸部5(51〜57)は複数の小ブロック7(71、72、73、74、75、76、77)に分割されている。例えば、陸部51においては、3本のサイプ61が配設されており、これにより陸部51は4つの小ブロック71に分割されている。
サイプ6(61〜67)は、図1に示すような波型形状とすることは勿論、直線形状や3次元形状とすることもできる。
このように小ブロック7(71〜77)が区画形成された陸部5(51〜57)のうち、陸部51、52、53、55、56、57のそれぞれには、3つ以上の穴から構成される複数の穴群8(81、82、83、85、86、87)が形成されている。図1に示す例では、穴群8(81〜83、85〜87)は、全て3つの穴8a、8b、8cから構成されており、各穴8a〜8cの中心を結ぶと正三角形になる配置形状となっている。
図2は、図1に示す穴群の拡大斜視図である。図2に示すように、穴群8(81〜83、85〜87)を構成する各穴8a、8b、8cは、全て、タイヤ径方向外側が円筒形状であり、タイヤ径方向内側が先細り形状となっている。また、各穴8a〜8cは、トレッド表面に開口しているとともに、タイヤ径方向内側で底付きとなっている。なお、各穴8a〜8cは、底の部分で、穴径が徐々に小さくなる先細り形状となっているため、底部の剛性を向上させるのに適している。
図2に示す例では、穴8a、8b、8cは、それらのタイヤ径方向深さが同一である。各穴8a〜8cのタイヤ径方向深さは、十分な除水効果を得るため2mm以上とすることが好ましい。また、各穴8a〜8cのタイヤ径方向深さは、穴底がベルト層に近づかないことで優れた耐久性が得られるため、溝底がベルト層に近い周方向溝2の深さ以下とすることが好ましい。
図1に示す例では、穴8a、8b、8cの配置態様は、平面視で正三角形とした態様であるが、実施形態1は、このような態様に限られない。図3−1から図3−3は、実施形態1に係る空気入りタイヤのトレッド部に形成される穴群を構成する穴の配置態様についてのバリエーションを示す平面図である。
穴8a、8b、8cの配置態様は、図3−1に示すように、各穴8a〜8cの中心を結んだ図形が三角形となっている。また、図3−2に示すように、各穴8a〜8cの中心を結んだ図形が直線となる態様とすることもできる。また、図3−3に示すように、穴群8を4つの穴8a、8b、8c、8dから構成し、各穴8a〜8dの中心を結んだ図形が台形となる態様とすることもできる。なお、図3−3に示す例においては、各穴のタイヤ径方向深さは、穴8a〜8dについて同一とすることができる。
図1に示す例では、穴8a、8b、8cは、平面視でいずれも円形であるが、実施形態1は、このような態様に限られない。図4−1から図4−7は、実施形態1に係る空気入りタイヤのトレッド部に形成される穴群を構成する穴のバリエーションを示す平面図であり、点線は実線図形の外接円を示す。
これらの図に示すように、穴群8を構成する穴の形状は、図4−1に示すように円形であることは勿論、図4−2に示す四角形、図4−3に示す五角形、及び図4−4に示す六角形を含むn角形(n≧3)とすることができる。また、穴群8を構成する穴の形状は、図4−5に示す星型や、図4−6に示す雫形、及び図4−7に示す楕円形などとすることもできる。また、図1に示す例では、穴8a、8b、8cの寸法(外接円の半径)は、全て等しいが、実施形態1はこのような形態に限られず、各穴の寸法は少なくとも一部において異ならせることができる。ここで、外接円とは、各穴8a〜8cの開口部の外接円を意味する。
このような穴の配置態様、形状及び寸法を前提に、穴群8(81〜83、85〜87)はさらに、以下の第1要件及び第2要件を満たす。即ち、第1要件とは、穴群8(81〜83、85〜87)内の任意の2つの穴i及び穴jについて、平面視で、穴iの外接円Ciの半径をri、穴jの外接円Cjの半径をrj、及び両外接円Ci、Cjの中心間距離をdijとした場合に、全ての穴iについて、自身の属する穴群の中に、dij≦(ri+rj)×2を満たす穴jが少なくとも1つ存在することである。ここで、符号i、jは、穴群8(81〜83、85〜87)を構成する任意の穴を識別するための識別子であり、特定の穴を示すものではない。
さらに、第2要件とは、接地幅をタイヤ幅方向に3等分して区画された1つのセンター領域及び2つのショルダー領域について、陸部5(51〜57)の総面積に対する穴の面積比率が、センター領域よりも2つのショルダー領域の各々の方で大きいことである。ここで、陸部の総面積とは、タイヤ新品時の平面視で、各領域に含まれる全ての陸部の面積の総和を意味し、陸部の溝壁に相当する部分の面積は除く意味である。また、穴の面積とは、タイヤ新品時の平面視で、各領域に含まれる全ての穴の開口部の面積の総和を意味する。
まず、第1要件に関して詳述する。図1に示す空気入りタイヤにおいては、全ての穴iが、穴群8(81〜83、85〜87)内の比較的近接した位置に穴jを少なくとも1つ有する。ここで、第1要件における、比較的近接した位置とは、穴iの外接円Ciと穴jの外接円Cjとの中心間距離dijが、穴iの半径riと穴jの半径rjとの和の2倍以下であることを満たす場合の、穴iに対する穴jの位置をいう。
図5は、図1に示す穴群8(81〜83、85〜87)の拡大平面図である。図5に示すように、穴群8(81〜83、85〜87)は、いずれも3つの穴8a、8b、8cから構成されている。穴8a、8b、8cは、平面視でいずれも円形であるため、これらの外接円は、穴8a、8b、8cの外形と一致する。ここで、穴8aの外接円Caの半径をra、穴8bの外接円Cbの半径をrb、穴8cの外接円Ccの半径をrc、並びに外接円Ca、Cbの中心間距離をdab、外接円Cb、Ccの中心間距離をdbc、及び外接円Cc、Caの中心間距離をdcaとする。
上記の穴iを穴8aとし、穴jを穴8b、穴8cとした場合、図5に示すように、穴8aについては、穴8b及び穴8cとの関係において、dab≦(ra+rb)×2を満たす穴8b、及びdca≦(rc+ra)×2を満たす穴8cが存在する。また、上記の穴iを穴8bとし、穴jを穴8c、穴8aとした場合、同様に、穴8bについては、穴8c及び穴8aとの関係において、dbc≦(rb+rc)×2を満たす穴8c、及びdab≦(ra+rb)×2を満たす穴8aが存在する。さらに、上記の穴iを穴8cとし、穴jを穴8a、穴8bとした場合、同様に、穴8cについては、穴8a及び穴8bとの関係において、dca≦(rc+ra)×2を満たす穴8a、及びdbc≦(rb+rc)×2を満たす穴8bが存在する。
このような穴群8(81〜83、85〜87)が形成されたトレッド表面を有する空気入りタイヤは、全ての穴、図1に示す例においては、穴8a、8b、8cについて、自身の属する穴群8内の比較的近接した位置に穴が少なくとも1つ存在し、第1要件を具備する。
穴8aについてみれば、穴8b、8cが穴群8内の比較的近接した位置にある穴である。この場合、穴8aと穴8bとの関係でみれば、図2に示すように、狭い領域に穴8aと穴8bとを密集させると、密集させた複数の穴8a、8bの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、個々の穴8a、穴8bは径が小さく、曲率半径が小さい円筒面は外部からの力に影響を受け難いので、潰れ難い。ここで、穴8a、8bの合計容積とは、穴8aの容積と穴8bの容積との総和を意味する。このため、穴8a、8bの倒れ込みを抑制することができる。その結果、密集させた穴8a、8bの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。また、穴8aと穴8cとの関係でみれば、図2に示すように、狭い領域に穴8aと穴8cとを密集させると、密集させた複数の穴8a、8cの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、個々の穴8a、穴8cは径が小さく、潰れ難い。このため、穴8a、8cの倒れ込みを抑制することができる。その結果、密集させた穴8a、8cの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。
同様に、穴8bについてみれば、穴8c、8aが穴群8内の比較的近接した位置にある穴である。この場合、穴8bと穴8cとの関係でみれば、図2に示すように、狭い領域に穴8bと穴8cとを密集させると、密集させた複数の穴8b、8cの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、個々の穴8b、穴8cは径が小さく、潰れ難い。このため、穴8b、8cの倒れ込みを抑制することができる。その結果、密集させた穴8b、8cの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。また、穴8bと穴8aとの関係でみれば、図2に示すように、狭い領域に穴8bと穴8aとを密集させると、密集させた複数の穴8b、8aの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、個々の穴8b、穴8aは径が小さく、潰れ難い。このため、穴8b、8aの倒れ込みを抑制することができる。その結果、密集させた穴8b、8aの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。
同様に、穴8cについてみれば、穴8a、8bが穴群8内の比較的近接した位置にある穴である。この場合、穴8cと穴8aとの関係でみれば、図2に示すように、狭い領域に穴8cと穴8aとを密集させると、密集させた複数の穴8c、8aの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、個々の穴8c、穴8aは径が小さく、潰れ難い。このため、穴8c、8aの倒れ込みを抑制することができる。その結果、密集させた穴8c、8aの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。また、穴8cと穴8bとの関係でみれば、図2に示すように、狭い領域に穴8cと穴8bとを密集させると、密集させた複数の穴8c、8bの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、個々の穴8c、穴8bは径が小さく、潰れ難い。このため、穴8c、8bの倒れ込みを抑制することができる。その結果、密集させた穴8c、8bの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。
このように、穴8a〜8cが密集することで構成される倒れ込み抑制ユニット(穴8a及び穴8bからなるユニット、穴8b及び穴8cからなるユニット、並びに穴8c及び穴8aからなるユニット)が、各穴8a、8b、8cを基準とした場合、各穴を含んだその周辺の狭い領域に少なくとも1つ存在する。即ち、図1に示す例では、穴群8(81〜83、85〜87)に関し、倒れ込み抑制ユニットが、各穴の周辺にそれぞれ2つずつ存在する。その結果、穴群8内の、各倒れ込み抑制ユニットでは、各穴8a〜8cが変形して潰れることが抑制される。
以上により、実施形態1の空気入りタイヤは、穴群8(81〜83、85〜87)を構成する穴8a〜8cの位置関係に関する第1要件を具備する。
さらに、第2要件に関して詳述する。図1に示す空気入りタイヤにおいては、接地幅をタイヤ幅方向に3等分して区画された1つのセンター領域及び2つのショルダー領域について、各領域内での陸部の総面積に対する穴の面積比率が、センター領域よりもショルダー領域で大きくなっている。ここで、接地幅とは、JATMA YEAR BOOK 2009年版 に規定されているように、タイヤを適用リムに装着し、規定の空気圧とし、無負荷状態のタイヤのトレッド模様部分の両端の直線距離を意味する。
図1中、点線L1、L2、L3、L4は、それぞれ、接地幅をタイヤ幅方向に3等分するための仮想点線である。以下では、仮想点線L2と仮想点線L3との間の領域をセンター領域と称し、仮想点線L1と仮想点線L2との間の領域を第1ショルダー領域と称し、仮想点線L3と仮想点線L4との間の領域を第2ショルダー領域と称する。
図1に示すように、陸部の総面積に対する穴の面積比率を、センター領域よりも第1ショルダー領域及び第2ショルダー領域で大きくすることにより、両ショルダー領域において除水効果を高めることができるとともに、センター領域において陸部の剛性を十分に確保することができる。ここで、陸部の総面積とは、タイヤ新品時の平面視で、各領域に含まれる全ての陸部の面積の総和を意味し、陸部の溝壁に相当する部分の面積は除く意味である。また、穴の面積とは、タイヤ新品時の平面視で、各領域に含まれる全ての穴の開口部の面積の総和を意味する。
以上により、実施形態1の空気入りタイヤは、陸部の総面積に対する穴の面積比率に関する第2要件を具備する。
以上説明したように、実施形態1の空気入りタイヤは、サイプと穴群との併用を前提に、全ての穴8a、8b、8cについて比較的近接した位置に穴が少なくとも1つ存在すること(第1要件)を満たすとともに、陸部5の総面積に対する穴の面積比率を、センター領域よりもショルダー領域で大きくすること(第2要件)を満たす。このため、第1要件及び第2要件が相まって、高い除水効果、吸水効果、及びエッジ効果によって氷上性能を高めることができるとともに、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することでドライ性能を高めることができる。従って、この空気入りタイヤによれば、氷上性能とドライ性能とを両立することができる。
ここで、氷上性能とは、氷上でのタイヤの各種性能をいい、特に、磨かれたアイスバーン上での駆動性能及び制動性能を意味する。また、ドライ性能とは、乾燥路面上でのタイヤの各種性能をいい、特に、乾燥路面上での駆動性能及び制動性能を意味する。
なお、図5に示す例は、各穴8a、8b、8cの中心を結んだ図形が正三角形となる穴の配置態様であるが、本実施形態はこれに限られない。図3−1から図3−3に示す穴の配置態様についても、上記の第1要件及び第2要件を満たす。図1に示す全ての穴群を図3−1に示す穴群8に置換した場合、全ての穴について、自身の属する穴群の中に、dij≦(ri+rj)×2を満たす穴が少なくとも1つ(穴8aについては穴8b、8c、穴8bについては穴8a、穴8cについては穴8a)存在する(第1要件具備)。また、第2要件については、穴群8の配置態様に関する要件であるため、図1に示す例と同様に具備する。
また、図1に示す全ての穴群を図3−2に示す穴群8に置換した場合、全ての穴について、自身の属する穴群の中に、dij≦(ri+rj)×2を満たす穴が少なくとも1つ(穴8aについては穴8b、穴8bについては穴8a、8c、穴8cについては穴8b)存在する(第1要件具備)。また、第2要件については、穴群8の配置態様に関する要件であるため、図1に示す例と同様に具備する。
さらに、図1に示す全ての穴群を図3−3に示す穴群8に置換した場合、全ての穴について、自身の属する穴群の中に、dij≦(ri+rj)×2を満たす穴が少なくとも1つ(穴8aについては穴8b、穴8bについては穴8a、8c、穴8cについては穴8b、8d、穴8dについては穴8c)存在する(第1要件具備)。また、第2要件については、穴群8の配置態様に関する要件であるため、図1に示す例と同様に具備する。
このため、図3−1から図3−3に示す例についても、高い除水効果、吸水効果、及びエッジ効果によって氷上性能を高めることができるとともに、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することでドライ性能を高めることができる。従って、これらの空気入りタイヤによっても、氷上性能とドライ性能とを両立することができる。
実施形態1の空気入りタイヤにおいては、上述のとおり、穴群8を構成する穴の形状を、図4−1から図4−4に実線で示す円形やn角形(n≧3)、或いは図4−5から図4−7に示す星型や、雫形、楕円形などとすることもできる。これらの中で、円形又は略円形とすることが好ましい。各穴の形状を円形又は略円形とすることで、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向の両方に対して、除水効果、吸水効果、及びエッジ効果をより均等に発揮できるとともに、トレッド陸部の剛性をより均等に確保することができるため、氷上性能とドライ性能とをさらに高めることができる。
また、実施形態1の空気入りタイヤにおいては、上述のとおり、穴群8を構成する穴の寸法や形状を、図3−1から図3−3に示すように全ての穴について等しくすることも、或いは少なくとも一部において異ならせることもできるが、全ての穴の寸法や形状を等しくすることが好ましい。全ての穴の寸法や形状を等しくすることで、穴群8全体としてみた場合、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向の両方に対して、除水効果、吸水効果、及びエッジ効果をより均等に発揮できるとともに、トレッド陸部の剛性をより均等に確保することができるため、氷上性能とドライ性能とをさらに高めることができる。
また、実施形態1の空気入りタイヤにおいては、穴群8を構成する穴の中心間距離を、図1に示すように全ての穴同士について等しくすることも、或いは図3−1から図3−3に示すように少なくとも一部の穴同士において異ならせることもできるが、全ての穴同士の中心間距離を等しくすることが好ましい。全ての穴同士の中心間距離を等しくすることで、穴群8全体としてみた場合、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向の両方に対して、除水効果、吸水効果、及びエッジ効果をより均等に発揮できるとともに、トレッド陸部の剛性をより均等に確保することができ、氷上性能とドライ性能とをさらに高めることができる。
また、実施形態1の空気入りタイヤにおいては、第1要件において、(ri+rj)×1.1≦dij≦(ri+rj)×1.9とすることが好ましい。(ri+rj)×1.1≦dijとすることで、穴iと穴jとの間隔を十分に確保し、これら穴間に存在する陸部の剛性を十分に確保することができる。また、dij≦(ri+rj)×1.9とすることで、狭い領域に穴iと穴jとをさらに密集させて、個々の穴i、穴jを一層潰れ難くし、穴i、jの倒れ込みを抑制することができる。その結果、穴同士の距離を著しく短くした、複数の穴の合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。穴iと穴jとの外接円の中心間距離が0となる場合は、実質的に両穴が一致することとなり、実施形態1の技術的思想に反することとなるため、いかなる場合においても、0<dijとする。このように、第1要件をさらに限定した場合には、除水効果を低下させることなく、エッジ効果及びトレッド部に設けられた陸部の剛性をさらに高めることができ、ひいては氷上性能とドライ性能とをさらに高めることができる。
また、実施形態1の空気入りタイヤにおいては、周方向溝2(21、22、23、24、25、26)によって区画され、タイヤ周方向に複数の陸部を有する陸部列について、陸部5の総面積に対する穴の面積比率が、タイヤ赤道面CL上の陸部列からタイヤ幅方向外側の陸部列に向かうにつれて順次大きくなっていることが好ましい。ここで、陸部の総面積とは、タイヤ新品時の平面視で、各陸部列に含まれる全ての陸部の面積の総和を意味し、陸部の溝壁に相当する部分の面積は除く意味である。また、穴の面積とは、タイヤ新品時の平面視で、各陸部列に含まれる全ての穴の開口部の面積の総和を意味する。以下では、図1に示すように、周方向溝21よりもタイヤ幅方向外側に位置し、複数の陸部51からなる陸部列を陸部列Aと称する。周方向溝21と周方向溝22との間に位置し、複数の陸部52からなる陸部列を陸部列Bと称する。周方向溝22と周方向溝23との間に位置し、複数の陸部53からなる陸部列を陸部列Cと称する。周方向溝23と周方向溝24との間に位置し、複数の陸部54からなる陸部列を陸部列Dと称する。周方向溝24と周方向溝25との間に位置し、複数の陸部55からなる陸部列を陸部列C´と称する。周方向溝25と周方向溝26との間に位置し、複数の陸部56からなる陸部列を陸部列B´と称する。周方向溝26よりもタイヤ幅方向外側に位置し、複数の陸部57からなる陸部列を陸部列A´と称する。
センター領域及びショルダー領域にサイプのみを均等に配設した場合には、ショルダー領域での陸部の剛性が不十分であることにより、ドライ性能が不十分となる。しかしながら、穴の面積比率を、陸部列A、A´、B、B´、C、C´、Dごとに、タイヤ幅方向最内側からタイヤ幅方向外側の陸部列に向かうにつれて順次大きくした場合には、その分、タイヤ幅方向外側の陸部列におけるサイプの配設量が抑制される。このため、特に、ショルダー領域での陸部の剛性を十分に確保することで、ドライ性能を効率的に高めることができ、その結果氷上性能とドライ性能との両立を効率的に行うことが可能となる。なお、図1に示す例と異なり、タイヤ赤道面上に陸部列が存在しない場合、即ち、タイヤ赤道面上に周方向溝が配設されている場合には、上記の面積比率は、タイヤ赤道面に最も近い陸部列からタイヤ幅方向外側の陸部列に向かうにつれて順次大きくすることが好ましい。
また、実施形態1の空気入りタイヤにおいては、接地幅をタイヤ幅方向に3等分して区画された1つのセンター領域及び2つのショルダー領域について、単位面積当たりの前記サイプの長さが、ショルダー領域よりもセンター領域で大きくなっていることが好ましい。ここで、単位面積当たりのサイプの長さとは、1つのセンター領域及び2つのショルダー領域の各々において、全てのサイプの延在方向長さの総和を、陸部の総面積で除した値を意味する。このように、単位面積当たりのサイプの長さを、ショルダー領域よりもセンター領域で大きくすることにより、センター領域ではエッジ効果を十分に得ることができるとともに、ショルダー領域では陸部の剛性を十分に得ることができる。このため、エッジ効果の確保及び陸部の剛性の確保を効率的に行うことができ、その結果氷上性能とドライ性能との両立を効率的に行うことが可能となる。
また、実施形態1の空気入りタイヤにおいては、周方向溝によって区画され、タイヤ周方向に複数の陸部を有する陸部列について、単位面積当たりの前記サイプの長さが、タイヤ幅方向最外側の陸部列からタイヤ幅方向内側の陸部列に向かうにつれて順次大きくなっていることが好ましい。ここで、単位面積当たりのサイプの長さとは、各リブ又は各陸部列の各々において、全てのサイプの延在方向長さの総和を、リブ又は陸部の総面積で除した値を意味する。
このように、サイプの長さを、陸部列A、A´、B、B´、C、C´、Dごとに、タイヤ幅方向最外側からタイヤ幅方向内側の陸部列に向かうにつれて順次大きくすることにより、センター領域でのエッジ効果の確保と、ショルダー領域での陸部の剛性の確保とを、効率的に行うことができ、その結果、氷上性能とドライ性能との両立をさらに効率的に行うことが可能となる。
また、実施形態1の空気入りタイヤにおいては、少なくとも1つの穴群8(81〜83、85〜87)において、少なくとも1つの穴の容積を他の穴の容積と異ならせたことが好ましい。例えば、穴群81のうちの1つの穴群について、各穴8a〜8cの容積を異ならせることで、各穴8a〜8cの周りの陸部剛性と、各穴8a〜8cによる除水効果とのバランスを調整することができる。各穴8a〜8cの容積を大きくした場合は、高い除水効果が得られるが、その周りの陸部剛性は低くなる。これに対し、各穴8a〜8cの容積を小さくした場合は、除水効果は低いものとなるが、その周りの陸部剛性は向上する。各穴8a〜8cの容積は、各穴8a〜8cの開口部の面積や、各穴8a〜8cのタイヤ径方向長さを異ならせることにより設定することができる。また、各穴8a〜8cの容積は、その3次元形状を異ならせることで、設定することもできる。
また、実施形態1の空気入りタイヤにおいては、穴群8(81〜83、85〜87)内の全ての穴8a、8b、8cの外接円の半径は、0.2mm以上1.0mm以下であることが好ましい。全ての穴8a、8b、8cの外接円の半径を0.2mm以上とすることで、各穴8a、8b、8cが潰れることを十分に抑制し、除水効果を高めることができる。また、当該半径を1.0mm以下とすることで、各穴8a、8b、8cが変形することをより十分に抑制し、剛性の低下を一層抑制することができる。その結果、穴群8に含まれる全ての穴8a〜8cの合計容積と同一容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果とトレッド陸部の剛性とをさらに向上させ、ひいては氷上性能とドライ性能とをさらに高めることが可能となる。
また、実施形態1の空気入りタイヤにおいては、穴群8(81〜83、85〜87)内の穴8a、8b、8cの全容積は、10mm3以下であることが好ましい。ここで、穴群8(81〜83、85〜87)内の穴8a、8b、8cの全容積とは、前記穴群8が有する全ての穴8a、8b、8cの容積の総和を意味する。穴8a、8b、8cの全容積を10mm3以下とする結果、容積の小さい穴を多数配設することができる。このため、各穴8a、8b、8cが変形して潰れることをさらに抑制することができ、除水効果とトレッド陸部の剛性とをさらに向上させ、ひいては氷上性能とドライ性能とをさらに高めることが可能となる。
また、実施形態1の空気入りタイヤにおいては、陸部5(51、52、53、54、55、56、57)のタイヤ回転時の踏み込み側の領域、及び蹴り出し側の領域の少なくとも一方であることが好ましい。図1に示す例においては、穴群8(81〜83、85〜87)が、陸部5(51〜53、55〜57)のうち、タイヤ回転時の踏み込み側の領域及び蹴り出し側の領域の両方に形成されている。ここで、タイヤ回転時の踏み込み側の領域とは、タイヤが順方向回転している場合に最初に接地する領域であって、同図において陸部5のタイヤ周方向の一端領域(紙面の上端領域又は下端領域)を意味する。これに対し、タイヤ回転時の蹴り出し側の領域とは、タイヤが順方向回転している場合に最後に接地する領域であって、同図において陸部5のタイヤ周方向の他端領域(紙面の下端領域又は上端領域)を意味する。また、タイヤの順方向回転とは、タイヤを装着した車体が前進する場合のタイヤ回転を意味する。これに対し、タイヤの逆方向回転とは、タイヤを装着した車体が後進する場合のタイヤ回転を意味する。
このような構成のトレッド表面が形成された空気入りタイヤにおいては、タイヤ回転時の吸水効果が増大し、その結果氷上性能をさらに高めることができる。特に図1に示す例では、タイヤが順方向回転及び逆方向回転するいずれの場合においても、最初に接地する領域及び最後に接地する領域に穴群8が形成されているため、タイヤ順方向回転時及びタイヤ逆方向回転時の両方において吸水効果を効果的に発揮する。
図1に示す例は、穴群8がタイヤ回転時の踏み込み側及び蹴り出し側の両方の領域に形成されている例であるが、実施形態1はこのような形態に限られず、穴群8がタイヤ回転時の踏み込み側の領域及び蹴り出し側の領域の一方のみに形成されている形態も含む。なお、穴群8がタイヤ回転時の踏み込み側の領域のみに形成されている場合には、タイヤの順方向回転時の吸水効果が増大し、その結果氷上性能が向上する。これに対し、穴群8がタイヤ回転時の蹴り出し側の領域のみに形成されている場合には、タイヤ逆方向回転時の吸水効果が増大し、その結果氷上性能が向上する。
なお、実施形態1の空気入りタイヤは、周方向溝2によって区画された陸部列の各々が複数の陸部を有する場合であるが、本実施形態はこれに限られない。本実施形態は、周方向溝2によって、タイヤ周方向に切れ目なく延在するリブが少なくとも1つ区画された場合も包含する。
[実施形態2]
次に、実施形態2を詳述する。実施形態2は、穴群8(81〜83、85〜87)内の全ての穴iについて、自身の属する穴群の中に、dij≦(ri+rj)×2を満たす穴jが少なくとも2つ存在する点が実施形態1と異なる。
図6は、実施形態2に係る空気入りタイヤのトレッド部の一例の要部を示す平面図である。以下では、図6に示す例(実施形態2)について、図1に示す例(実施形態1)との違いのみを詳述する。なお、図6において符号を付した要素中、図1において同一符号を付した要素は、図1に示す要素と同一の要素を示す。
図6に示す例においては、図1に示す例と比較して、穴群10(101〜103、105〜107)の構成態様が異なる。即ち、図6に示す例では、穴群10(101〜103、105〜107)は、平面視で円形の4つの穴10a、10b、10c、10dから構成されている。また、穴群10(101〜103、105〜107)は、各穴10a〜10dの中心を結ぶと正方形になる配置形状となっている。
図7は、図6に示す穴群の拡大斜視図である。図7に示すように、穴群10を構成する各穴10a、10b、10c、10dは、全て、タイヤ径方向外側が円筒形状であり、タイヤ径方向内側が先細り形状となっている。また、各穴10a〜10dは、トレッド表面に開口しているとともに、タイヤ径方向内側で底付きとなっている。なお、各穴10a〜10dは、底の部分で、穴径が徐々に小さくなる先細り形状となっているため、底部の剛性を向上させるのに適している。
図7に示す例では、各穴10a、10b、10c、10dは、それらのタイヤ径方向深さが同一である。各穴10a〜10dの深さは、十分な除水効果を得るため2mm以上とすることが好ましい。また、各穴10a〜10dの深さは、穴底がベルト層に近づかないことで優れた耐久性が得られるため、周方向溝2の深さ以下とすることが好ましい。
図6に示す例では、穴10a、10b、10c、10dの配置態様は、平面視で正方形であるが、実施形態2は、このような形態に限られない。図8−1及び図8−2は、実施形態2に係る空気入りタイヤのトレッド部に形成される穴群を構成する穴の配置態様についてのバリエーションを示す平面図である。
穴10a、10b、10c、10dの配置態様は、図6に示すように、各穴10a〜10dの中心を結んだ図形が正方形となる態様とすることができる。また、図8−1に示すように、穴群10を穴10a、10b、10c、10d、10eの5つの穴から構成し、各穴10a〜10eの中心を結んだ図形が五角形となる態様とすることもでき、又図8−2に示すように、5つの穴10a〜10eから構成し、各穴10a〜10eの中心を結んだ図形が台形となる態様とすることもできる。なお、図8−1、図8−2に示す例においては、各穴のタイヤ径方向深さは、例えば、穴10a〜10eを同一とすることができる。
このような穴の配置態様等を前提に、穴群10はさらに、上述した第1要件及び第2要件を満たす。図9は、図6に示す穴群10の拡大平面図である。図9に示すように、穴10a、10b、10c、10dは、平面視でいずれも円形であるため、これらの外接円は、穴10a〜10dの外形と一致する。ここで、穴10aの外接円Caの半径をra、穴10bの外接円Cbの半径をrb、穴10cの外接円Ccの半径をrc、及び穴10dの外接円Cdの半径をrd、並びに外接円Ca、Ccの中心間距離をdac、外接円Ca、Cdの中心間距離をdad、外接円Cb、Ccの中心間距離をdbc、及び外接円Cb、Cdの中心間距離をdbdとする。
第1要件における穴iを穴10aとし、穴jを穴10c、10dとした場合、図9に示すように、穴10aについては、穴10c及び穴10dとの関係において、dac≦(ra+rc)×2を満たす穴10c、及びdad≦(ra+rd)×2を満たす穴10dが存在する。また、上記の穴iを穴10bとし、穴jを穴10c、穴10dとした場合、同様に、穴10bについては、穴10c及び穴10dとの関係において、dbc≦(rb+rc)×2を満たす穴10c、及びdbd≦(rb+rd)×2を満たす穴10dが存在する。さらに、上記の穴iを穴10cとし、穴jを穴10a、穴10bとした場合、同様に、穴10cについては、穴10a及び穴10bとの関係において、dac≦(ra+rc)×2を満たす穴10a、及びdbc≦(rb+rc)×2を満たす穴10bが存在する。加えて、上記の穴iを穴10dとし、穴jを穴10a、穴10bとした場合、同様に、穴10dについては、穴10a及び穴10bとの関係において、dad≦(ra+rd)×2を満たす穴10a、及びdbd≦(rb+rd)×2を満たす穴10bが存在する。
このような穴群10(101〜103、105〜107)が形成されたトレッド表面を有する空気入りタイヤにおいては、全ての穴、図6に示す例においては、穴10a、10b、10c、10dについて、自身の属する穴群10(101〜103、105〜107)内の比較的近接した位置に穴が少なくとも1つ存在し、第1要件を具備する。
穴10aについてみれば、穴10c、10dが穴群10内の比較的近接した位置にある穴である。この場合、穴10aと穴10cとの関係でみれば、図7に示すように、狭い領域に穴10aと穴10cとを密集させると、密集させた複数の穴10a、10cの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、個々の穴10a、穴10cは径が小さく、潰れ難い。このため、穴10a、10cの倒れ込みを抑制することができる。その結果、密集させた穴10a、10cの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。また、穴10aと穴10dとの関係でみれば、図7に示すように、狭い領域に穴10aと穴10dとを密集させると、密集させた複数の穴10a、10dの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、個々の穴10a、穴10dは径が小さく、潰れ難い。このため、穴10a、10dの倒れ込みを抑制することができる。その結果、密集させた穴10a、10dの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。
同様に、穴10bについてみれば、穴10c、10dが穴群10内の比較的近接した位置にある穴である。この場合、穴10bと穴10cとの関係でみれば、図7に示すように、狭い領域に穴10bと穴10cとを密集させると、密集させた複数の穴10b、10cの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、個々の穴10b、穴10cは径が小さく、潰れ難い。このため、穴10b、10cの倒れ込みを抑制することができる。その結果、密集させた穴10b、10cの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。また、穴10bと穴10dとの関係でみれば、図7に示すように、狭い領域に穴10bと穴10dとを密集させると、密集させた複数の穴10b、10dの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、個々の穴10b、穴10dは径が小さく、潰れ難い。このため、穴10b、10dの倒れ込みを抑制することができる。その結果、密集させた穴10b、10dの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。
同様に、穴10cについてみれば、穴10a、10bが穴群10内の比較的近接した位置にある穴である。この場合、穴10cと穴10aとの関係でみれば、図7に示すように、狭い領域に穴10cと穴10aとを密集させると、密集させた複数の穴10c、10aの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、個々の穴10c、穴10aは径が小さく、潰れ難い。このため、穴10c、10aの倒れ込みを抑制することができる。その結果、密集させた穴10c、10aの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。また、穴10cと穴10bとの関係でみれば、図7に示すように、狭い領域に穴10cと穴10bとを密集させると、密集させた複数の穴10c、10bの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、個々の穴10c、穴10bは径が小さく、潰れ難い。このため、穴10c、10bの倒れ込みを抑制することができる。その結果、密集させた穴10c、10bの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。
同様に、穴10dについてみれば、穴10a、10bが穴群10内の比較的近接した位置にある穴である。この場合、穴10dと穴10aとの関係でみれば、図7に示すように、狭い領域に穴10dと穴10aとを密集させると、密集させた複数の穴10d、10aの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、個々の穴10d、穴10aは径が小さく、潰れ難い。このため、穴10d、10aの倒れ込みを抑制することができる。その結果、密集させた穴10d、10aの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。また、穴10dと穴10bとの関係でみれば、図7に示すように、狭い領域に穴10dと穴10bとを密集させると、密集させた複数の穴10d、10bの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、個々の穴10d、穴10bは径が小さく、潰れ難い。このため、穴10d、10bの倒れ込みを抑制することができる。その結果、密集させた穴10d、10bの合計容積と同一の容積の1つの穴を形成した場合に比べて、除水効果を低下させることなく、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することができる。
このように、穴10a〜10dを密集させることで構成される倒れ込み抑制ユニット(穴10a及び穴10cからなるユニット、穴10a及び穴10dからなるユニット、穴10b及び穴10cからなるユニット、穴10b及び穴10dからなるユニット)が、各穴10a、10b、10c、10dを基準とした場合、各穴を含んだその周辺の狭い領域に少なくとも1つ存在する。即ち、図6に示す例では、穴群10に関し、倒れ込み抑制ユニットが、各穴の周辺にそれぞれ2つずつ存在する。その結果、穴群10内の、各倒れ込み抑制ユニットでは、各穴10a〜10dが変形して潰れることが抑制される。
以上により、実施形態2の空気入りタイヤは、穴群10(101〜103、105〜107)を構成する穴10a〜10dの位置関係に関する第1要件を具備する。
また、第2要件は、穴群10(101〜103、105〜107)の配置態様に関する要件である。このため、図6に示す例(実施形態2)は、図1に示す例(実施形態1)と同様に、第2要件を具備する。
以上説明したように、実施形態2の空気入りタイヤは、サイプと穴群との併用を前提に、全ての穴群10(101〜103、105〜107)に関し、全ての穴10a、10b、10c、10dについて比較的近接した位置に穴が少なくとも1つ存在すること(第1要件)を満たすとともに、陸部5の総面積に対する穴の面積比率を、センター領域よりもショルダー領域で大きくすること(第2要件)を満たす。このため、第1要件及び第2要件が相まって、高い除水効果、吸水効果、及びエッジ効果によって氷上性能を高めることができるとともに、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することでドライ性能を高めることができる。従って、この空気入りタイヤによれば、氷上性能とドライ性能とを両立することができる。
さらに、図6に示す例(実施形態2)は、第1要件及び第2要件を満たすとともに、以下の第3要件を満たす。即ち、第3要件とは、穴群i(10)内の全ての穴10a、10b、10c、10dについて、自身の属する穴群の中に、dij≦(ri+rj)×2を満たす穴jが少なくとも2つ存在することである。即ち、第3要件における穴iを穴10aとし、穴jを穴10c、穴10dとした場合、穴10aについては比較的近接した位置に2つの穴10c、10dが存在する。第3要件における穴iを穴10bとし、穴jを穴10c、穴10dとした場合、穴10bについては比較的近接した位置に2つの穴10c、10dが存在する。第3要件における穴iを穴10cとし、穴jを穴10a、穴10bとした場合、穴10cについては比較的近接した位置に2つの穴10a、10bが存在する。第3要件における穴iを穴10dとし、穴jを穴10a、穴10bとした場合、穴10dについては比較的近接した位置に2つの穴10a、10bが存在する。
このように、実施形態2の空気入りタイヤは、サイプと穴群との併用を前提に、上記の第1要件及び第2要件を満たす上に、全ての穴群10(101〜103、105〜107)に関し、全ての穴10a、10b、10c、10dについて比較的近接した位置に穴が少なくとも2つ存在すること(第3要件)を満たす。このため、第1要件及び第2要件が相まって、氷上性能とドライ性能とを両立することができるだけでなく、特に、第3要件によって、除水効果と、トレッド陸部の剛性とをさらに高めることができ、ひいては氷上性能とドライ性能とをさらに高めることができる。
なお、図9に示す例は、各穴10a、10b、10c、10dの中心線を結んだ図形が正方形となる穴の配置態様であるが、上述のとおり、本実施形態はこれに限られない。即ち、図8−1及び図8−2に示す穴の配置態様についても、第1要件から第3要件を満たす。図6に示す全ての穴群を図8−1に示す穴群10に置換した場合、全ての穴について、自身の属する穴群の中に、dij≦(ri+rj)×2を満たす穴が少なくとも2つ(例えば、穴10aについては穴10c、穴10d)存在する(第1要件及び第3要件具備)。また、第2要件については、穴群10の配置態様に関する要件である。このため、図6に示す全ての穴群を図8−1に示す穴群10に置換した例は、図1に示す例と同様に第2要件を具備する。
また、図6に示す全ての穴群を図8−2に示す穴群10に置換した場合、全ての穴について、自身の属する穴群の中に、dij≦(ri+rj)×2を満たす穴が少なくとも2つ(例えば、穴10aについては穴10c、穴10d)存在する(第1要件及び第3要件具備)。また、第2要件については、穴群10の配置態様に関する要件である。このため、図6に示す全ての穴群を図8−2に示す穴群10に置換した例は、図1に示す例と同様に第2要件を具備する。
このため、図8−1、及び図8−2に示す例についても、高い除水効果、吸水効果、及びエッジ効果と、トレッド陸部の高い剛性とを得ることができるため、氷上性能とドライ性能とを十分に両立することができる。また、図8−1、及び図8−2に示す例についても、特に、第3要件によって、除水効果と、トレッド陸部の剛性とをさらに高めることができ、ひいては氷上性能とドライ性能とをさらに高めることができる。
本実施形態、従来例、及び比較例に係る空気入りタイヤを製造し、評価した。なお、本実施形態によるものが実施例である。比較例は、従来例を示すものではない。
タイヤサイズを195/65R15で共通にした空気入りタイヤにおいて、図10に示す諸事項(穴の配置態様、図1に示す各陸部列での穴の面積比率、各陸部列でのサイプの長さ、1つの穴群内の穴の容積、及び各穴の容積)を満たす穴又は穴群をタイヤ全周に備え、かつ、その他の構成については図1に示すトレッド部の構成を採用した、従来例、比較例1、2、及び実施例1〜6の空気入りタイヤをそれぞれ製造した。ここで、各陸部列での穴の面積比率とは、陸部の総面積に対する穴の面積比率を意味し、陸部の総面積とは、タイヤ新品時の平面視で、各陸部列に含まれる全ての陸部の面積の総和を意味し、陸部の溝壁に相当する部分の面積は除く意味である。また、穴の面積とは、タイヤ新品時の平面視で、各陸部列に含まれる全ての穴の開口部の面積の総和を意味する。
これら各試験タイヤをリムサイズ15×6JJのリムに装着し、空気圧を230kPaにして、以下に示す測定条件により、氷上性能、及びドライ性能について評価試験を行った。また、車両は、1500ccクラスの乗用車を用いた。
氷上性能については、磨かれたアイスバーン(氷上路面)において、初速度40km/hからの制動停止距離を測定した。また、ドライ性能については、テストコース及びサーキットにおいて、初速度100km/hからの制動停止距離に関する評価を、テストドライバー5人による10点法を用いたフィーリング評価によって行った。
これらの性能については、いずれも、従来例の空気入りタイヤを100とした相対指数として算出した。これらの指数については、大きいほど各性能が優れていることを意味する。以上の各評価結果を図10に併記する。
図10から明らかなように、本発明の範囲内にある実施例1〜6の空気入りタイヤについては、氷上性能及びドライ性能のいずれの評価項目についても、100を超える優れた結果が得られている。これは、実施例1〜6の空気入りタイヤは、いずれも、サイプと穴群との併用を前提に、全ての穴について比較的近接した位置に他の穴が少なくとも1つ存在し、陸部の総面積に対する穴の面積比率が、センター領域よりもショルダー領域で大きいため、高い除水効果、吸水効果、及びエッジ効果によって氷上性能を高めることができるとともに、トレッド部に設けられた陸部の剛性を十分に確保することで、ドライ性能を高めることができるためであると考えられる。
実施例1〜6の空気入りタイヤを個別にみると、実施例2の空気入りタイヤについては、実施例1の空気入りタイヤに比べて、ドライ性能が向上している。これは、陸部の総面積に対する穴の面積比率が、タイヤ赤道面上の陸部列からタイヤ幅方向外側の陸部列に向かうにつれて順次大きくなっていることから、特に、ショルダー領域での陸部の剛性を十分に確保できたためであると考えられる。
実施例3の空気入りタイヤについては、実施例1の空気入りタイヤに比べて、氷上性能及びドライ性能が向上している。これは、単位面積当たりのサイプの長さが、ショルダー領域よりもセンター領域で大きくなっていることから、センター領域ではエッジ効果を十分に得ることができるとともに、ショルダー領域では陸部の剛性を十分に得ることができるためであると考えられる。
実施例4の空気入りタイヤについては、実施例3の空気入りタイヤに比べて、ドライ性能が向上している。これは、陸部の総面積に対する穴の面積比率が、タイヤ赤道面上の陸部列からタイヤ幅方向外側の陸部列に向かうにつれて順次大きくなっていることから、特に、ショルダー領域での陸部の剛性を十分に確保することができたためであると考えられる。
実施例5の空気入りタイヤについては、実施例4の空気入りタイヤに比べて、氷上性能及びドライ性能が向上している。これは、単位面積当たりの前記サイプの長さが、タイヤ幅方向最外側の陸部列からタイヤ幅方向内側の陸部列に向かうにつれて順次大きくなっていることから、特に、センター領域でのエッジ効果の確保と、ショルダー領域での陸部剛性の確保とを効率的に行うことができたためであると考えられる。
実施例6の空気入りタイヤについては、実施例5の空気入りタイヤに比べて、氷上性能及びドライ性能が向上している。実施例6の空気入りタイヤにおいては、少なくとも1つの穴の容積を他の穴の容積と異ならせている。このため、各穴を基準とした場合、各穴による除水効果のみならず、各穴の周りに存在する忠実なトレッドゴムの剛性を適宜設定することができる。従って、実施例6の空気入りタイヤにおいては、除水効果とトレッド部に設けられた陸部の剛性とを局所的に大きく又は小さくすることができるために、氷上性能とドライ性能とが向上したものと考えられる。
これに対し、比較例1、2の空気入りタイヤは、いずれも、穴の配置態様が、穴群ではなく、単なる穴である。このため、比較例1、2の空気入りタイヤは、特に、優れたエッジ効果が得られていない。その結果、比較例1、2の空気入りタイヤは、全ての陸部列においてサイプのみを均等に配設した従来例の空気入りタイヤに比べて、氷上性能が低下したものと考えられる。