JP2012041599A - 導電性部材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】マグネシウム合金基材表面に、良好な導電性を有するDLC皮膜が設置された導電性部材を提供する。
【解決手段】マグネシウム金属またはマグネシウム合金の基材の表面に、DLC皮膜が設置されて構成された導電性部材であって、前記DLC皮膜は、10.3at%未満のアルミニウムを含み、前記基材と前記DLC皮膜の間には、両者の密着性を向上する中間層が設置されていることを特徴とする導電性部材。
【選択図】図2

Description

本発明は、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)皮膜を有するマグネシウム合金に関する。
マグネシウム合金(またはマグネシウム金属、以下同じ)は、軽量で大きな非強度を有するため、自動車部品や電子機器など、様々な分野において、注目が集まっている。
また、マグネシウム合金を回転部品のような摺動部材に適用する場合、マグネシウム合金の摺動特性(耐摩耗性)を向上させるため、表面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)皮膜が設置される(例えば、特許文献1)。
特開2002−47556号公報
しかしながら、従来のDLC皮膜は、導電性が十分であるとは言い難く、DLC皮膜が設置されたマグネシウム合金基材を、携帯電話、ノート型PC、携帯音楽プレーヤー、および電子辞書などの電子機器部品等として利用した場合、部品に帯電が発生し、電子回路等に誤作動が生じたりするおそれがあった。
本発明は、このような背景に鑑みなされたものであり、本発明では、マグネシウム合金基材表面に、良好な導電性を有するDLC皮膜が設置された導電性部材、およびそのような導電性部材を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明では、
マグネシウム金属またはマグネシウム合金の基材の表面に、DLC皮膜が設置されて構成された導電性部材であって、
前記DLC皮膜は、10.3at%未満のアルミニウムを含み、
前記基材と前記DLC皮膜の間には、両者の密着性を向上する中間層が設置されていることを特徴とする導電性部材が提供される。
ここで、本発明による導電性部材において、前記DLC皮膜は、4.0at%〜5.0at%の範囲のアルミニウムを含んでも良い。
また、本発明による導電性部材において、前記中間層は、アルミナを有しても良い。
また、本発明による導電性部材において、前記DLC皮膜は、1μm〜3μmの範囲の膜厚を有しても良い。
また、本発明による導電性部材において、前記中間層は、100nm〜300nmの範囲の膜厚を有しても良い。
また、本発明では、
マグネシウム金属またはマグネシウム合金の基材の表面に、DLC皮膜が設置されて構成された導電性部材の製造方法であって、
(1)マグネシウム金属またはマグネシウム合金の基材を準備する工程と、
(2)前記基材の表面に、中間層を設置する工程と、
(3)前記中間層の上部に、DLC皮膜を設置する工程であって、前記DLC皮膜は、10.3at%未満のアルミニウムを含み、前記中間層は、前記基材と前記DLC皮膜の間の密着性を向上させる、工程と、
を有することを特徴とする製造方法が提供される。
ここで、本発明による製造方法において、前記中間層は、アルミナを有しても良い。
また、本発明による製造方法において、前記(3)のDLC皮膜を設置する工程は、ターゲットを用いたスパッタリング法により行われても良い。
また、この場合、前記ターゲットには、炭素を含むターゲットと、アルミニウムを含むターゲットの2つのターゲットが使用され、
前記(3)のDLC皮膜を設置する工程において、前記基材は、回転されても良い。
本発明では、マグネシウム合金基材表面に、良好な導電性を有するDLC皮膜が設置された導電性部材、およびそのような導電性部材を製造する方法を提供することができる。
本発明における導電性部材の一例の断面を模式的に示した図である。 本発明による導電性部材の製造方法の一例のフローを示す。 成膜装置の一構成例を概略的に示した図である。 各サンプルにおける電気抵抗率の測定結果を示すグラフである。 各サンプルにおけるラマンスペクトルの測定結果を示すグラフである。 各サンプルにおける分極曲線の測定結果を示すグラフである。
従来のDLC皮膜は、導電性が十分であるとは言い難く、DLC皮膜を有するマグネシウム合金基材を電子機器部品等として利用した場合、部品に帯電が発生し、電子回路等に誤作動が生じたりするおそれがあった。
本願発明者らは、このような問題を軽減または解消するため、DLC皮膜の組成について様々な検討および実験を行ってきた。その結果、本願発明者らは、DLC皮膜中に所定量のアルミニウムを含有させることにより、DLC皮膜の導電性が向上する効果が得られることを見出した。すなわち、本発明では、DLC皮膜は、10.3at%未満のアルミニウムを含む。
ただし、その一方で、本願発明者らは、アルミニウムを含むDLC皮膜は、マグネシウム合金基材との間の密着性があまり良好ではなく、アルミニウムを含むDLC皮膜をマグネシウム合金基材上に直接成膜した場合、DLC皮膜が剥離する場合があることを見出した。そのため、本発明では、マグネシウム合金基材とDLC皮膜の間に、中間層を設置することにより、両者の密着性を改善する。
従って、本発明では、
マグネシウム金属またはマグネシウム合金の基材の表面に、DLC皮膜が設置されて構成された導電性部材であって、
前記DLC皮膜は、10.3at%未満のアルミニウムを含み、
前記基材と前記DLC皮膜の間には、両者の密着性を向上する中間層が設置されていることを特徴とする導電性部材が提供される。
(本発明によるマグネシウム合金部材の構成)
以下、図面を参照して、本発明について、詳しく説明する。
図1には、本発明における導電性部材の一例の断面を模式的に示す。
図1に示すように、本発明による導電性部材100は、マグネシウム合金からなる基材110と、該基材上の中間層140と、該中間層上のDLC皮膜160とを有する。中間層140は、基材110とDLC皮膜160の間の密着性を向上するために設置される。
ここで、前述のように、本発明では、DLC皮膜160は、10.3at%未満のアルミニウムを含むという特徴を有する。これにより、DLC皮膜の導電性が有意に向上し、前述のような問題、例えばマグネシウム合金上にDLC皮膜が設置された部材を電子機器部品等として利用した場合、部品に帯電が発生し、電子回路等に誤作動が生じるという問題を抑制することが可能になる。
また、本発明では、基材110とDLC皮膜160の間に、中間層140が設置されている。従って、本発明では、基材110とDLC皮膜160の間で、剥離が生じる危険性が抑制される。
以下、導電性部材100を構成する各部分について、詳しく説明する。
(マグネシウム合金基材110)
基材110は、マグネシウム金属またはマグネシウム合金で構成される。マグネシウム合金としては、例えば、AZ31(アルミニウム(2.5〜3.5mass%)−亜鉛(0.6〜1.4mass%)−マグネシウム合金)、AZ61(アルミニウム(5.5〜7.2mass%)−亜鉛(0.5〜1.5mass%)−マグネシウム合金)、AZ80(アルミニウム(7.5〜9.2mass%)−亜鉛(0.2〜1.0mass%)−マグネシウム合金)、ZK60(亜鉛(4.8〜6.2mass%)−ジルコニウム(0.45〜0.8mass%)−マグネシウム合金)、およびAZ91(アルミニウム(8.3〜9.7mass%)−亜鉛(0.35〜1.0mass%)−マグネシウム合金)等が挙げられる。
なお、基材は、例えば板状などの平坦な表面を有する形状であっても、曲面を有する形状であっても良い。
(中間層140)
中間層140は、基材110とDLC皮膜160の間の密着性を向上することができる層であれば、いかなる層であっても良い。
ただし、中間層140は、導電性を有する必要がある。そのため、中間層140は、導電性材料からなる層、あるいは、絶縁性材料からなるが厚さが十分に薄い層、等で構成される。
中間層140は、例えば、薄いアルミナ層で構成されても良い。この場合、膜厚は、例えば、100nm〜300nmの範囲であっても良い。
中間層140の設置方法は、特に限られない。例えば、中間層140は、スパッタリング法等を用いて、基材上に設置しても良い。
(DLC皮膜160)
DLC皮膜160は、いわゆるダイヤモンドライクカーボンと、アルミニウムとを含む。
前述のように、アルミニウムの含有量は、10.3at%未満である必要がある。これを超えると、DLC皮膜160の導電性が低下してしまう。
アルミニウムの含有量は、4at%〜5at%の間であることが特に好ましい。この場合、アルミニウムを含まないDLC皮膜に比べて、抵抗率を約1桁低下させることができる。
DLC皮膜160の厚さは、特に限られない。DLC皮膜160の厚さは、例えば、1μm〜3μmの範囲であっても良い。
DLC皮膜160の設置方法は、特に限られない。例えば、DLC皮膜160は、スパッタリング法等を用いて、中間層140上に設置しても良い。
(本発明による部材の製造方法)
次に、本発明による導電性部材100の製造方法の一例について説明する。なお、以下に示す製造方法は、一例であって、本発明による導電性部材100は、その他の方法で製造されても良い。
図2には、本発明による導電性部材100の製造方法の一例のフローを示す。
図2に示すように、本発明による方法は、
(1)マグネシウム金属またはマグネシウム合金の基材を準備する工程(工程S110)と、
(2)前記基材の表面に、中間層を設置する工程(工程S120)と、
(3)前記中間層の上部に、DLC皮膜を設置する工程(工程S130)と、
を有する。
以下、各工程について説明する。
(工程S110)
まず、マグネシウム金属またはマグネシウム合金の基材110が準備される。
マグネシウム合金は、前述のように、AZ31、AZ61、AZ80、ZK60、またはAZ91等であっても良い。
また、基材は、平坦な形状であっても、曲面を有する形状であっても良い。
(工程S120)
次に、基材110の表面に、中間層140が設置される。
前述のように、中間層140は、例えば薄膜のアルミナで構成されても良い。
基材110の表面に薄膜のアルミナを設置する方法は、特に限られないが、例えば、プラズマを利用する方法を利用しても良い。例えば、プラズマを用いて、雰囲気中にアルミナ源からアルミナを含む気相を生成させ、基材110の表面に、アルミナの膜を堆積させることができる。
そのような方法には、スパッタリング法、プラズマCVD(化学気相成膜)法、プラズマPVD(物理気相成膜)法などがある。
(工程S130)
次に、中間層140の表面に、アルミニウムを含むDLC皮膜160が設置される。
DLC皮膜160の成膜方法は、特に限られない。例えば、DLC皮膜160は、プラズマを利用する方法を利用して成膜しも良い。例えば、プラズマを用いて、炭素源およびアルミニウム源から炭素およびアルミニウムを雰囲気中に生成させ、中間層140の表面に、アルミニウムを含むDLCの膜を堆積させることができる。
そのような方法には、スパッタリング法、プラズマCVD(化学気相成膜)法、プラズマPVD(物理気相成膜)法などがある。
例えば、スパッタリング法により、DLC皮膜160を成膜する場合、炭素ターゲットおよびアルミニウムターゲットの2つのターゲットが準備されても良い。アルゴン雰囲気において、2つのターゲットをスパッタすることにより、基材表面にアルミニウムを含むDLCの膜を堆積させることができる。
なお、より均一な膜を得る場合、成膜中に基材を回転させても良い。
図3には、そのような機能を備える成膜装置の一例を概略的に示す。
図3において、成膜装置300は、成膜室305内に、基材320を支持する支持体310と、炭素ターゲット330を支持する支持体350と、アルミニウムターゲット340を支持する支持体360と、を備える。
基材320は、支持体310により、成膜面が下向きになるようにして支持される。基材320は、円盤状の支持体310の外周側に設置される。
一方、炭素ターゲット330およびアルミニウムターゲット340は、支持体310の下側に、中心軸370に対して対称となるように設置される。
支持体310は、中心軸370を回転軸として、矢印Rの方向に回転することができ、これにより、基材320を2つのターゲット330、340に対して回転させることができる。
このような成膜装置300を用いて、基材320にDLC皮膜を成膜する場合、最初に、成膜室305内が減圧され、成膜室305内は、減圧アルゴンガス雰囲気にされる。アルゴンガスの圧力は、例えば、0.1Pa〜10Pa程度であっても良い。
次に、支持体310を通じて、基材320が回転される。
さらに、2つのターゲット330、340に電力が印加される。これにより、成膜室305内のアルゴンガスがプラズマ化される。また、このプラズマガスのスパッタにより、ターゲット330から炭素がスパッタリングされ、ターゲット340からアルミニウムがスパッタリングされ、これらの成分が基材320の表面に成膜される。
基材320は、成膜中回転されているため、最終的に、基材320の表面に、比較的均一な組成分布を有するDLC皮膜が形成される。
なお、図3の装置構成は、一例であって、その他の装置構成においても、均一なDLC皮膜を形成することができることは、当業者には明らかである。例えば、基材320用の支持体310を回転させる代わりに、炭素およびアルミニウム用のターゲット330、340を、基材320に対して回転させても良い。
次に、本発明の実施例について説明する。
(サンプルの作製)
以下の方法により、表面にアルミニウムを含むDLC皮膜を有するマグネシウム合金サンプルを作製した。
まず、マグネシウム合金(AZ31)製の基板(寸法20mm×20mm×厚さ1.5mm)を準備し、これを無水エタノール中で10分間、超音波洗浄した。
次に、この基板を、前述の成膜装置300のような装置の成膜室に設置した。
成膜室内にアルミナターゲットを設置し、成膜室をアルゴン+酸素ガス雰囲気(アルゴン:酸素=2:1(vol%))に制御した。
次に、スパッタ条件(電力)をRF90Wとして、スパッタリング処理を行い、基板表面にアルミナ層を設置した。成膜時間は、20分とした。また、基板の回転は、行わなかった。
これにより、基板表面に、中間層として、厚さ約200nmのアルミナ層が形成された。
次に、スパッタリング法により、この基板のアルミナ層の表面に、DLC皮膜を形成した。
スパッタ処理には、前述の成膜装置300のような装置を使用した。雰囲気は、0.4Paのアルゴンガス雰囲気とした。
スパッタ条件として、炭素ターゲット330に対する電力は、直流500Wで一定とした。一方、アルミニウムターゲット340に対する電力は、RF0W〜40Wまで5種類に変化させた。これにより、最終的に得られるDLC皮膜中のアルミニウム含有量が異なる5つのサンプルを調製した。基板の回転速度は、約20rpmで一定とした。
なお、各処理において、アルミニウムターゲット340に対する供給電力が異なるため、成膜時間は、可変とし、最終的に得られるDLC皮膜の厚さが約1μmとなるまで、成膜を行った。その結果、いずれの処理においても、成膜時間は、おおよそ105分〜150分程度であった。
このようにして、アルミニウム含有量が異なるDLC皮膜が形成された、5種類のサンプルが得られた。
なお、作製後に各サンプルの外観を観察したが、いずれのサンプルにおいても、DLC皮膜に、剥離等の異常は生じていなかった。
次に、得られた各サンプルについて、DLC皮膜中に含まれるアルミニウム量の測定を行った。測定は、EPMA装置(JXA−8900L、日本電子社製)を使用し、一つのサンプルについて、5箇所で測定を行った。
表1には、各サンプルにおけるDLC皮膜中のアルミニウム含有量(5点の平均値)をまとめて示す。
このように、各成膜時のアルミニウムターゲット340に対するスパッタ電力を変化させることにより、DLC皮膜中のアルミニウム含有量を、0〜20at%まで変化させることができた。
(評価)
次に、前述の方法で作製した各サンプルについて、各種評価を行った。
(導電性評価)
5つのサンプルの電気抵抗率を測定した。測定には、抵抗率測定装置(Model6517、KEITHLEY社製)を用い、4端子法で測定した。
結果をまとめて図4に示す。
図4の結果から、アルミニウムを含まないDLC皮膜が設置されたサンプル1の場合、抵抗率は、約1.3Ωcm程度であった。これに対して、約4.3at%のアルミニウムを含むDLC皮膜が設置されたサンプル2では、抵抗率は、約0.18Ωcm程度であり、導電性が著しく向上していることがわかる。
なお、約10.3at%〜20at%のアルミニウムを含むDLC皮膜が設置されたサンプル3〜サンプル5では、抵抗率は、逆にサンプル1よりも大きくなっており、約10.3at%以上のアルミニウムを含むDLC皮膜を設置したサンプルでは、アルミニウム含有量の増加とともに、導電性が低下することがわかった。
アルミニウム含有量によって、DLC皮膜の抵抗率がこのような依存性を示す原因は、今のところ不明である。しかしながら、次の実験データから、以下のことが推察される。
図5には、各サンプル1〜5において得られたラマンスペクトルの測定結果を示す。
DLC皮膜がAlを含まないサンプル1の場合、波数1350cm−1および波数1590cm−1の位置に、2つのピークが観測されている。波数1350cm−1におけるピークは、DLCのDバンドに対応し、波数1590cm−1のピークは、DLCのGバンドに対応すると考えられる。
一方、サンプル3〜5の場合、両方のピークが著しく減少していることがわかった。このうち、Gバンドに対応するピーク(波数1590cm−1のピーク)が著しく小さくなっていることから、これらのサンプルでは、DLC皮膜において、グラファイト由来の骨格が崩壊していることが考えられる。また、Dバンドに対応するピーク(波数1350cm−1におけるピーク)が著しく小さくなっていることから、炭素の構造欠陥が減少していることがわかる。すなわち、サンプル3〜5の場合、アルミニウム含有量の増加に伴い、DLC皮膜中の炭素骨格が壊れ、これにより、導電性が低下していることが推定される。
これに対して、サンプル2では、サンプル1に比べて、DLCのDバンドおよびGバンドに対応するピークは低下しているものの、その減少度合いは、それほど大きくはない。従って、このサンプル2の場合、DLC皮膜中において、導電性に寄与する炭素骨格の崩壊が顕著には生じず、逆にDLC皮膜中に適度なアルミニウムが存在することとの相乗効果により、導電性が著しく向上したものと考えられる。
いずれにしても、DLC皮膜中のアルミニウム含有量を10.3at%未満に抑制することにより、良好な導電性を得ることができると言える。
(耐食性評価)
次に、電気化学的手法により5つのサンプルの耐食性を評価した。より具体的には、サンプルを試料極として、水溶液中に試料極を浸漬させ、ポテンショダイナミック分極曲線を測定し、この曲線から腐食電流を求めた。
水溶液には、5%塩化ナトリウム水溶液を使用した。対極には、白金を使用し、参照極は、飽和カロメル電極とした。
測定結果をまとめて、図6に示す。また、表2には、各サンプルにおいて得られた腐食電流値をまとめて示す。なお、これらの図および表には、参考のため、DLC皮膜を設置していないマグネシウム合金基材(サンプル6とする)の結果も合わせて示した。
この結果から、DLC皮膜がアルミニウムを含まないサンプル1の場合、腐食電流は、4.3×10−2mA/cm程度であった。これに対して、LC皮膜がアルミニウムを含むサンプル2〜5の場合、腐食電流は、いずれもサンプル1の値を下回り、サンプル2〜5では、サンプル1に比べて、耐食性が向上することがわかった。
特に、サンプル2では、腐食電流は、1.2×10−4mA/cm程度となり、サンプル2は、サンプル1に比べて、約100倍の耐食性を有することがわかった。
(耐摩耗性評価)
次に、ボールオンデスク法により、5つのサンプルの摩擦係数を評価した。
各サンプルについて得られた摩擦係数の値を、まとめて表3に示す。
なお、摩擦係数は、各サンプルの耐摩耗性を示す一つの指標となり、摩擦係数が小さいほど、良好な耐摩耗性を有すると言える。
アルミニウムを含まないDLC皮膜を有するサンプル1では、摩擦係数は、0.2であった。これに対して、約4.3at%のアルミニウムを含むDLC皮膜を有するサンプル2では、摩擦係数は、0.25であった。このように、サンプル2では、サンプル1に比べて、摩擦係数が幾分低下するものの、その低下量は少なく、サンプル2は、サンプル1とほぼ同等の耐摩耗性を有することが示された。
本発明は、DLC皮膜が設置されたマグネシウム合金を含む自動車部品や電子機器等に適用することができる。
100 本発明の導電性部材
110 基材
140 中間層
160 DLC皮膜
300 成膜装置
305 成膜室
310、350、360 支持体
320 基材
330 炭素ターゲット
340 アルミニウムターゲット
370 中心軸。

Claims (9)

  1. マグネシウム金属またはマグネシウム合金の基材の表面に、DLC皮膜が設置されて構成された導電性部材であって、
    前記DLC皮膜は、10.3at%未満のアルミニウムを含み、
    前記基材と前記DLC皮膜の間には、両者の密着性を向上する中間層が設置されていることを特徴とする導電性部材。
  2. 前記DLC皮膜は、4.0at%〜5.0at%の範囲のアルミニウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性部材。
  3. 前記中間層は、アルミナを有することを特徴とする請求項1または2に記載の導電性部材。
  4. 前記DLC皮膜は、1μm〜3μmの範囲の膜厚を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の導電性部材。
  5. 前記中間層は、100nm〜300nmの範囲の膜厚を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の導電性部材。
  6. マグネシウム金属またはマグネシウム合金の基材の表面に、DLC皮膜が設置されて構成された導電性部材の製造方法であって、
    (1)マグネシウム金属またはマグネシウム合金の基材を準備する工程と、
    (2)前記基材の表面に、中間層を設置する工程と、
    (3)前記中間層の上部に、DLC皮膜を設置する工程であって、前記DLC皮膜は、10.3at%未満のアルミニウムを含み、前記中間層は、前記基材と前記DLC皮膜の間の密着性を向上させる、工程と、
    を有することを特徴とする製造方法。
  7. 前記中間層は、アルミナを有することを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
  8. 前記(3)のDLC皮膜を設置する工程は、ターゲットを用いたスパッタリング法により行われることを特徴とする請求項6または7に記載の製造方法。
  9. 前記ターゲットには、炭素を含むターゲットと、アルミニウムを含むターゲットの2つのターゲットが使用され、
    前記(3)のDLC皮膜を設置する工程において、前記基材は、回転されることを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
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