JP2011516160A - 超音波を用いた細胞組織溶接装置 - Google Patents
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Abstract
本発明は超音波細胞組織溶接に関し、より具体的には、超音波エネルギーを利用して外科的な切開部位やその他の創傷部を効果的に閉合してシーリングする方法とその装置に関する。本発明の装置は、超音波発生器と、超音波トランスデューサと、超音波トランスデューサの先端のトランスデューサ・チップと、放射面とを具える。ガーゼのような織布を切開部位に配置する。実施例において、この装置を用いて、細胞組織にエネルギーを当てるときにシールすべき細胞組織のエッジを接合する。放射面から発せられる超音波は、織布を通り抜けて、連続した縫合線を形成して切開部位をシールする。この装置は、追加の粘着剤や治療薬と共に用いても良く、粘着剤や治療薬を伴うことなく使用してもよい。
【選択図】図2
【選択図】図2
Description
この発明は、超音波を用いた細胞組織溶接に関するものであり、より具体的には、超音波エネルギーを利用して外科的な切開部位やその他の創傷部位を効果的に閉合してシーリングする方法およびその装置に関する。
外科医は、治療を行う間に、損傷を受けた細胞組織の修復に携わる。細胞組織と血行を完全に復元させることは、損傷が外傷によるものか外科的治療を行う必要がある切開によるものかにかかわらず、治療結果を前向きなものとするうえで必要不可欠である。損傷を受けた細胞組織を接合する最も古いやり方は、鉗子やステープルあるいは縫合糸といった機械的装置を用いるものである。ステープル、鉗子、縫合糸には様々な制約が有る。これらは充分なスキルを必要とすると共に、適用するのに時間が掛かる。これらは個々の取り付け位置を効果的にシールするだけである。さらに、肝臓や肺および脳のように多数の血管がある器官に対しては効果が無い。加えて、しばしば接合線に沿って漏れが生じ、周辺の細胞組織、とりわけ取り付け位置に更に炎症、ストレス、外傷を起すことになる。
これまでの努力は、正常な治癒を促進し少なくともそれを阻害しないようにしながら、細胞組織表面を迅速に接合することができる接着剤あるいはのりの使用に焦点を当ててなされてきた。細胞組織用接着剤の選択肢としては、コラーゲンやアルブミン、及びフィブリノゲンおよびトロンビンの濃縮物を含有するフィブリンベースの接着剤がある。アルデヒドと架橋結合したゼラチンベースののりも使われたが、成功例は限られていた。この部類ののりの代表例は、ホルムアルデヒドあるいはグルタルアルデヒドと架橋結合したゼラチン・レゾルシノールである。バーナクルのりなどの粘着剤が使われていたが、免疫反応の引き金になり得るのではないかと云う根強い心配と共に、このような材料を相当量精製する能力の点から使用が阻まれていた。その後の努力は、細胞組織ののりとして作用する好適な合成物質の発見に向けられた。この結果、その他の合成ポリマーのうちでも特に、シアノアクリレート、ポリウレタン、ポリメチル・メタクリレートが細胞組織ののりとして研究された。これらの各合成物質は、毒性分解産物、貧弱な物性、硬化の問題、及び生分解性でないといった、様々な問題点があるため、成功例が限定されていた。
先行技術の中で、強力な高周波超音波を利用するプライヤ形状で超音波を用いた溶接装置が開発されたが、これは皮膚細胞組織の両面にアクセスする必要がある。細胞組織のりの硬化を誘発するレーザ光も部分的にのみ有効であることが判明した。レーザを用いた細胞組織修復は、レーザの貫壁性に起因する熱傷の問題と、高度なスキルと充分な設備を備えた医療チームが必要であることから、成功例が限られていた。これまでの膨大な開発努力を見ても、様々な外科設備に応じた取扱上の特性とその手法に加えて、充分な機械的強度、生体適合性、及び生体利用性といった要求に見合う切開部位閉合方法として有用なものは殆ど無かった。
この発明は、外科的な切開部位やその他の組織の創傷部をシーリングして閉合する方法と装置に係るものである。本発明は、皮膚の創傷部を修復するとともに、負傷によって発生し得る臓器の傷や、腫瘍や疾病の細胞組織を除去するといった外科的治療に伴って発生した切開の結果生じた傷を修復するのに、低周波数あるいは高周波数の実施例を含む、強度の低い超音波を使用している。本発明はまた、獣医学分野において動物の細胞組織への使用にも適しており、都合がよい。
細胞組織の傷を塞ぐためのエネルギーの適用は、時として、「細胞溶接」と呼ばれる。この発明の細胞組織溶接法は、のり、あるいは細胞組織を半田付けする物質あるいは接着剤などのその他の異物を用いて行ってもよく、これらを用いることなく行ってもよい。この本発明によって用いることができる細胞組織用半田や接着剤の例としては、限定するものではないが、アルブミン、コラーゲン、フィブリン、自己血輸血、シアノアクリレート、バーナクルのり、重合体ホットメルト接着剤、などが挙げられる。
この装置は、創傷部位表面に超音波エネルギーを当てて創傷部位に存在することがある病原体を不活性化し、及び/又は、破壊し、薬剤を送達し、及び/又は、創傷部位を殺菌する。この発明の装置は、超音波発生器、超音波トランスデューサ、超音波トランスデューサの遠位端にあるトランスデューサ・チップ、及び放射面を具える。
望ましい実施例においては、装置は超音波エネルギーを細胞組織に当てながら創傷部位のエッジを接合する。代替的に、創傷部位のエッジを、縫合糸,粘着テープ、あるいはその他の手段によって接合してもよい。例えば、細長いガーゼ片、フィルム、膜、あるいはその他のポーラス状もしくは非ポーラス状材料などの織布を、生理食塩水あるいは治療薬に浸すようにしてもよい。次いで、織布を切開部位エリアに配置する。代替的に、織布を創傷部位に配置する前に、生理食塩水あるいは治療薬を傷口あるいは織布に付けるようにしてもよい。この発明の放射面から発せられる超音波は、織布、ガーゼ、あるいはフィルム層を通り抜ける。超音波が織布を通り抜けるときに、治療薬及び/又は接着剤が治療すべき細胞組織の中に押し込まれる。
本発明は、追加の接着剤と共に用いても良く、追加の接着剤なしで用いても良い。一般的にエネルギーの適用のみで、身体細胞組織中でコラーゲンを変性させる働きをする。変性中に、及び/又は、細胞組織中のコラーゲンが復元する間に細胞組織が並び揃うと、一旦分離した細胞組織内のコラーゲンが互いにくっついて、追加の接着剤を用いることなく細胞組織を互いに接合してこれを保持する。
明細書、図面、及び特許請求の範囲に記載されている本発明は、従来技術の方法および装置を超える利点を提供する。
本発明の利点の一つは、本発明を用いて、切開部位をシールするように切開部位のエッジを接合することができる点である。
本発明のもう一つの利点は、切開線で連続的な縫目を形成するようにシールすることである。
本発明のもう一つの利点は、例えば皮膚細胞の表皮側といった、細胞組織の一方の側部のみからのアクセスで使用できる点である。
本発明のもう一つの利点は、創傷部表面を冷却するのに使用できる点である。
本発明のもう一つの利点は、縫合糸やその他の機械的手段を用いて、あるいは用いることなく、切開線にて最少の傷跡で平坦な縫目を形成するようにシールする点である。
本発明のもう一つの利点は、様々な臓器の細胞組織の傷をシールするのに使用できる点である。
本発明のもう一つの利点は、のりあるいはその他のシーラントを用いて、あるいは用いることなく、使用できる点である。
本発明のもう一つの利点は、治療薬を用いて、あるいは用いることなく使用できる点である。
本発明のもう一つの利点は、適用する超音波は、治療する細胞組織および周辺細胞組織に対して、抗菌効果がある点である。
本発明のもう一つの利点は、ここに記載されているように適用した超音波エネルギーが、超音波エネルギー応用の結果として、特有の痛み緩和効果をもたらすことがある点である。
本発明のもう一つの利点は、外科医が時間効率、及びコストパフォーマンスに優れた方法で切開部位を修復でき、また手術後の患者への副作用を最小にできることである。
この装置の一実施例の全体的な外観が図1に示されている。本発明は、創傷部を閉合し、シーリングするために超音波エネルギーを使用する装置とその方法に関する。この発明は、皮膚の外科的な切開、並びに内蔵器官の切開によって生じる創傷部にも適用可能である。高度にコントロール可能で、正確な超音波エネルギーの送達によって、周辺組織に損傷を与えること無く、細胞組織を最適にシールすることができる。
図1乃至図5は、一般的に、本発明を幾つかの実施例を挙げて説明する図である。本発明の装置は、図1に示すように、超音波トランスデューサ20を囲むハウジング付きのハンドヘルド機器であってもよい。ハウジングは、外科医が創傷部の上で機器を操作用に保持する表面を提供している。ハウジングは、超音波トランスデューサ20から発せられる熱や電気的・機械的エネルギーが機器の操作者に伝わらないように、これを弱めて隔離する役も果たしている。超音波トランスデューサ20は、超音波発生器10によって駆動される。超音波発生器10は、通常、標準交流電流が給電され、超音波トランスデューサ20にケーブルを介して電気的に接続されており、手許スイッチあるいは足踏みスイッチによってオン・オフされる。超音波トランスデューサは、超音波発生器10によって生成されケーブルを経て超音波トランスデューサに送信された駆動信号に従って脈動する。時間関数としての駆動信号は、当業者には自明であるように、矩形波、台形波、正弦波、あるいはその他の信号形式であってもよい。
また、超音波発生器10はプログラム可能であって、超音波トランスデューサ20へパルス状の急速なオン・オフ信号を出して、細胞組織内の温度上昇をコントロールし制限できるようにしてもよい。このパルス状の信号は、アプリケーションに応じて0%乃至100%の間で変化する。
超音波トランスデューサ20の遠位端には、治療用に選択された細胞組織領域に向けて超音波エネルギーを調整して発するトランスデューサ・チップ30が装着されている。放射された超音波は、周波数と振幅を持っている。実施例では16kHz乃至20mHzの範囲内で動作する低周波又は高周波を含む超音波周波数が使用されている。超音波の振幅は、1ミクロンから250ミクロンの間でよく、望ましくは10ミクロン乃至50ミクロンの範囲であり、推奨する振幅は20ミクロンである。
超音波トランスデューサ・チップ30は、低温流体15の通路用に一またはそれ以上の内部チャンバを有していても良い。超音波チップ30はまた、一またはそれ以上の温度センサを具えていても良く、このセンサが超音波トランスデューサ・チップ30を流れる低温流体15の流量をコントロールして、チップから発せられた超音波エネルギーに関係なく、チップにおいて一定の予め設定した温度を維持することができる。
超音波チップ30が単一ピースユニットであるか、あるいは、装置から脱着可能な一又はそれ以上の独立分離した複数ピースで構成されていてもよいことは、当業者には自明である。複数ピースで構成することによって、チップの様々な実施例の間で部分の互換性を確保するとともに、装置部分のクリーニング/消毒がより容易になり、及び/又は、超音波トランスデューサ・チップ30を一回の使い捨て構成とすることもできる。トランスデューサ・チップ30は、通常、チタンや、アルミニウムの合金、及び/又は、ステンレススチールといった金属製である。超音波トランスデューサ・チップ30の部分は、トランスデューサ・チップ30の選択された部分の一回の使い捨ての実施例用に、あるいはトランスデューサ・チップ30の保護カバー用に、プラスティック製であってもよい。
その他の態様において、超音波チップの遠位端は、フラットタイプ、凹型、凸型、丸形、畝模様付き、及び/又は、波形といった、様々なサイズと幾何的形状の放射面40を有していても良い。これらの実施例の幾つかが、図5A乃至図5Jに示されている。図5Aは凸状円筒形の実施例を示している。図5C、図5D、図5E、図5F、図5G、および図5Jは、チャネルや内側部分を形成している凹状放射面40の様々な実施例を示している。図5Bは、放射面40が平面である実施例を示している。図5Hと図5Iは、三角形状のチャネルまたは内壁と外壁を有する内側部分を形成している放射面40の実施例を示す。図5Hは、内壁および外壁に対して一定の角度寸法を有する放射面を示す。図5Iは、深さが可変のチャネルを造る可変角度寸法を有する内壁と、互いに平行な外壁を有する放射面40を示す。この実施例は、切開部閉合を改良するべく、切開部位55のエッジを接合するための利点を提供している。内壁の可変角度寸法を、一定のチャネル幅で設定して、チャネル幅可変の三角形状の放射面40を形成することもできる。
放射面40のエッジ表面は、角の丸いエッジ、角がシャープなエッジ、様々な形状を組み合わせて、波型または鋸歯状にしたエッジであってもよい。図5Fは複数の三角形状の鋸歯で構成されたエッジを示している。図5Gは波型エッジの実施例を示している。これらの様々な形状は、細胞組織に行なわれる各種の治療に適切になるように選択することができる。望ましい実施例は、図3乃至図5に示すとおり、放射面の長さに亘る凹型中央部分を具える。脱着可能な超音波トランスデューサ・チップ30によって、医師は、治療と治療の間あるいは治療を行う間のいずれかに、適宜、遠位端の幾何的形状を変えることができる。
図2に示すとおり、好ましくは織布片60、ガーゼ、膜あるいはフィルムが切開部位55あるいは開いた創傷部に配置される。織布60は、好ましくはガーゼの細片であるが、その他の適宜のポーラス状物質あるいはプラスティックシートのような固形物を含んでいても良い。織布60は、液体もしくはジェル状流体でぬれていることが好ましい。この流体は、生理食塩水や接着剤70の材料、あるいは治療薬の水溶液80である。液体又はジェルは、放射面40と細胞組織50間の超音波伝播を改良するべく、放射面40との間の媒質の役を果たす。織布60を使うことで、放射面40を創傷部表面から隔離して、細胞組織への熱と外傷性の刺激を低減して、振動する放射面40と細胞組織50との間が直接接触することによる摩擦抵抗を解消する。
更に、織布60の構造中に存在する開口によるガーゼの多孔性が、超音波が創傷領域に入る能力を強化するとともに、接着剤70の材料及び/又は治療薬水溶液を創傷領域に給送する。織布60の厚さ、並びに材料のタイプを変えて、切開部位を治療する際の本発明の効果を強化することができる。これは、使用することができる材料の様々な透過特性と、織布60の厚さが変わった結果、細胞組織50から放射面40までの距離が変わるという事実と、に起因する。そのようにすることで、超音波の放射面40で発生する定在波の様々な成分を、治療を行う細胞組織50の様々な深さで、相互作用させることが可能になる。織布60の厚さは、放射面40から発せられて細胞組織50に到達する超音波の性質に影響する。更に、織布60の厚さが増えることによって、細胞組織の所定領域に給送できる流体の量が増える。
図3乃至図5に示す好ましい実施例において、本発明は、切開部位をシールするときに切開部位55のエッジを接合するために用いることができる。これは、切開部位の開いた二つの自由エッジの上に織布60をのせて、切開部位55の一方のエッジにおいて織布60に放射面40を押し当てることによって行うことができる。次いで、放射面40は、チップが切開ラインの長さに沿って押し当てられると、織布60に対して保持され、細胞組織50に圧力をかける。好ましくは、装置は、トランスデューサ・チップ30の縦軸が、創傷部表面によって規定される長手方向平面との間で0度乃至90度の角度を形成するように保持される。望ましい実施例の下では、放射面40は、放射面中心線の長さに沿って凹状の放物線形状を有する。この構成は、放射面40のエッジが細胞組織50に接触すると、細胞組織50にかかる圧力が放射面40のエッジに向くようになっており、都合よく使用される。次いで、これらエッジが細胞組織を捉えて、細胞組織を放射面40の中心線に沿った凹状領域に対して押圧する。細胞組織50の自由エッジは、トランスデューサ・チップ30が切開部のラインに沿って動くと、互いに押しつけられる。この結果、超音波が切開部位のラインに沿って放射されると、しっかりした連続シームが形成される。
凹状の実施例における放射面40は、創傷部縫目の中心線に沿って超音波の焦点が合うように設計することができる。この構造は、切開部のライン自体におけるエネルギー入力を強化する。創傷部開口のエッジの相互接合、並びに、この方法によって形成した連続シームは、治療が終わったときに平坦な縫合をもたらし、創傷部もしくは切開開口を原因とする傷痕を大幅に減らす。
本発明の方法についての説明から明らかなように、細胞組織50へのアクセスはすべて、細胞組織表面の片側からのみ行われる必要がある。例えば、皮膚の創傷は、治療を必要としている皮膚の細胞組織の表皮側からのみのアクセスで実施される。このデバイスは、その機能を実行するために、皮膚表面の下からのアクセスを必要としない。
本発明によれば、縫合糸、ステープル、クランプ、あるいは粘着性ストリップを用いることなく、単一ステップの手順で切開開口部の閉合とシールを同時に行うことができる。代替的に、切開開口部を、織布60層やガーゼを配置して超音波を当てる前に、縫合糸、ステープル、あるいは接着剤ストリップで閉合しておくようにしてもよい。本発明の方法は、連続したシームを提供し、縫合糸や同種の方法に関連するストレスが掛かるポイントを取除く。
外科的開腹手術を行っている間など、創傷部位の細胞組織の少なくとも一方の表面にアクセス可能な場合は、上述した本発明の技術を用いて、皮膚の切開部分に加えて、心臓、肝臓、脳、胃、および肺などの臓器細胞組織の創傷部をシールするために本発明を適用してもよい。本発明はとりわけ、硬さ不足、漏れ易い、連結点におけるストレスに耐える強度不足、内効果的な接合ができない非常に否定的な結果、といった臓器官の特性に起因して縫合が困難である内蔵器官の細胞組織に好適に適用できる。
本発明は、のり、接着剤70、あるいはその他の細胞組織用シーラントと共に、あるいはなしで使用することができ、これらを用いる場合は、液体あるいはジェル状のものを創傷表面、あるいは織布60に塗布するか、ガーゼのようなポーラス状材料に含浸させて、それを創傷部にあてがう。
本発明は、追加の接着剤を用いてもよく、用いなくてもよい。独創的なこのデバイスを用いて、エネルギーを当てるだけで身体の細胞組織中のコラーゲンを変性させることができる。変性中に及び/又は細胞組織内のコラーゲンの復元中に、細胞組織が配列されると、一旦分離された細胞組織中のコラーゲンが互いに結合して、医療処置において追加の接着剤を使用しなくても細胞組織を互いに接合させて保持する。
接着剤70は、限定するものではないが、コラーゲン、エラスチンのような線維形成プロテインや、限定するものではないがラミニン、エンタクチン、及び/又はフィブロネクチンなど細胞組織外マトリックスに関連する糖タンパク質で構成される。本発明も、接着剤70、その他ののり、および細胞修復において業界で知られているシーラントと共に使っても良い。接着剤と共に使うときに、超音波の振動、キャビテーション、および刺激が、接着剤のパフォーマンスを強化して、超音波を当てることなく達成されたものより強い結合ができる。キャビテーション、動き、およびエネルギー入力によって、細胞組織間、並びに細胞組織50と接着剤70の間に、より強い結合が可能となる。超音波も、接着剤70の硬化を促進する。この複合的効果は、切開部位修復失敗のリスクを大幅に減少させる。
本発明は、治療薬80と共に用いてもよく、治療薬を伴うことなく用いるようにしてもよい。治療薬80は、創傷部に直接塗布する、あるいは織布60に直接塗布する、あるいは織布60に浸みこませて織布60と共に適用するといった、接着剤70と同様の方法で添加することができる。治療薬80は、生理食塩水及び/又は各種薬物および医薬品を含む。治療薬80の典型例には、抗生物質、鎮痛薬、麻酔剤、疼痛緩和薬、保湿剤、細胞組織成長促進剤、そして血液凝固促進剤が含まれる。使用できるその他の局所軟膏には、ビタミンA、DおよびEの軟膏、シリコーンジェル、及び/又は、様々な脂質クリームが含まれる。
細胞組織とりわけ神経細胞への超音波刺激は、痛みを和らげることが知られている。超音波のこの特性を医師が有効に用いて、超音波エネルギー適用の結果得られる痛み緩和効果によって、より痛みの少ないプロセスにすることができる。この特性はまた、鎮痛薬や局所的に適用できるその他の痛み緩和剤または他の方法とともに、相乗的に用いることもできる。
治療薬80と併用した超音波に伴う痛み緩和の強化に加えて、創傷部領域につながっている神経末端に超音波エネルギーを適用することによって生じる痛み緩和効果によって、超音波エネルギーの適用自体が治療領域の痛みをより少ないものにする。放射面の形状は、この効果を最適なものにするように変更することができる。
好ましい実施例の下で、トランスデューサ・チップの低温冷却も、創傷治療に関連する治療価値がある。トランスデューサ・チップ30の冷却に用いる低温流体15は、創傷部表面も冷却する。切開創傷部の冷却は、水腫、痛み、腫れ、及び/又は、創傷治療に関連する炎症を低減する一般的な手法である。低温流体15は、例えば液体窒素などの、当業者に公知の気体あるいは液体である。低温流体15は、トランスデューサ・チップ30に取付けた低温流体給送チューブを経て、低温流体源から内部流路31に送達することができる。これによって、超音波トランスデューサ・チップ30で発生した熱を取除く特徴を利用して、細胞組織50を冷却することによっても治療上の効果を高めることができる。本発明は、放射面40において適切な温度を維持するためにトランスデューサ・チップ30に設置された温度フィードバック/センサを具える。
超音波エネルギーの適用は、治療対象の細胞組織および周辺細胞組織に対して抗菌効果を有する。超音波エネルギーの適用は、気体、液体、及び/又は、超音波を適用する細胞組織中のキャビテーションによって、細胞組織の崩壊と微生物の不活性化をもたらすことが知られている。キャビテーションと超音波エネルギーは、細胞組織崩壊,変性,およびその他の手段を通して、治療領域中の病原菌を不活性化することができる。この効果は感染の機会を減少させることができ、術後感染が患者の最適な回復における主な懸案事項であるため、この効果によって、患者の回復を大幅に促進することになる。
本発明による手順は、従来の治療に比べて迅速かつ経済的に行なうことができる。ストレスの不連続点がない連続シームを持つことによって得られる均一性は、上述したとおり切開部位修復の強度を促進する。更に、結果として得られるシームの一貫性が、傷痕に関連する問題を低減するか無くすことができる。治療を行うコントロールされた条件下では、縫合糸その他を用いた結果生じるであろう創傷治癒の外観を損なう可能性を低減する。
こでは特定の実施例を図解して説明したが、ここで開示された実施例は同じ目的を達成する配置に置き換え得ることは、当業者には自明である。上述の事項は例示的なものであって限定的なものではないと理解されるべきである。上述した実施例とその他の実施例の組み合わせは、当業者が本発明の開示内容を検討すれば自明である。方法のステップは、特定の順序で提示されているが、この順序も例示的なものであって限定的なものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲を参照し、特許請求の範囲に包含されるべき均等物を含めた全ての範囲に沿って決まる。
本発明は、超音波を用いた細胞組織溶接に関し、より具体的には、外科的な切開部位あるいはその他の創傷部を効果的に閉合してシーリングするための超音波エネルギーの利用方法と、その装置に関する。
Claims (23)
- 超音波細胞組織溶接装置において、
超音波発生駆動装置と、
トランスデューサ・チップに装着した超音波トランスデューサであって、
内部流路を有するトランスデューサ・チップと、
前記トランスデューサ・チップを冷却する内部流路を通過する低温流体と、
前記トランスデューサ・チップの遠位端に形成された放射面であって、
織布を通して超音波を放射する放射面、
を具えることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。 - 請求項1に記載の装置において、前記超音波トランスデューサを少なくとも部分的に覆うハウジングを具えることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項1に記載の装置において、前記放射面が平面であることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項1に記載の装置において、前記放射面が凹面を具えることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項1に記載の装置において、前記トランスデューサ・チップが温度センサを具えることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項1に記載の装置において、前記織布が治療薬を含有していることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項1に記載の装置において、前記超音波が16kHz乃至20mHzの範囲の周波数で放射されることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項1に記載の装置において、前記超音波は、1ミクロン乃至250ミクロンの波長で放射されることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項1に記載の装置において、前記織布が生理食塩水を含有していることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項1に記載の装置において、前記放射面が取り外し可能であることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項1に記載の装置において、前記放射面が使い捨てであることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 超音波細胞組織溶接装置において、
超音波発生駆動装置と、
トランスデューサ・チップに装着した超音波トランスデューサであって、
内部流路を有するトランスデューサ・チップと、
前記トランスデューサ・チップを冷却する内部流路を通過する低温流体と、
前記トランスデューサ・チップの遠位端に形成された放射面であって、
織布を通して超音波を放射する放射面と、
前記織布と創傷部の間に介在する接着剤と、
を具えることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。 - 請求項12に記載の装置において、前記超音波トランスデューサを少なくとも部分的に覆うハウジングを具えることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項12に記載の装置において、前記放射面が平面であることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項12に記載の装置において、前記放射面が凹面であることをを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項12に記載の装置において、前記放射面が深さ可変の三角状の内側部分を具えることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項12に記載の装置において、前記トランスデューサ・チップが温度センサを具えることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項12に記載の装置において、前記織布が治療薬を含有することを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項12に記載の装置において、前記超音波が16kHzから20MHzの範囲の周波数で放射されることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項12に記載の装置において、超音波は、1ミクロンから250ミクロンの波長で放射されることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項12に記載の装置において、前記織布が生理食塩水を含有していることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項12に記載の装置において、前記放射面が取り外し可能であることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
- 請求項12に記載の装置において、前記放射面が使い捨てであることを特徴とする超音波細胞組織溶接装置。
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