以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンターの側断面図である。
図2(a)はインクジェットプリンターの搬送ユニットを示す平面図、図2(b)は搬送ユニットの駆動系を示す側面図である。
図1に示すように、インクジェットプリンター(印刷装置)1は、プリンター本体3と、プリンター本体3の後側上部に設けられた給紙部5と、プリンター本体3の前側に設けられた排紙部7と、を備えている。
給紙部5には給紙トレイ11が設けられており、給紙トレイ11には複数枚の用紙(媒体、記録媒体、搬送媒体)Pが積載されるようになっている。ここで、用紙Pとしては、普通紙、コート紙、OHP(オーバーヘッドプロジェクタ)用シート、光沢紙、光沢フィルム等が用いられる。以下、用紙Pの搬送経路において、給紙トレイ11側を上流側、排紙部7側を下流側という。給紙トレイ11の下流側には、給紙ローラー13が設けられている。
給紙ローラー13は、対向する分離パッド(図示せず)との間で給紙トレイ11の最上部に位置する用紙Pを挟圧し、下流側へ送り出すように構成されている。給紙ローラー13の下流側には、搬送ローラー機構19が設けられている。
搬送ローラー機構19は、下側に配置された搬送ローラー15と、上側に配置された従動ローラー17とを備えている。
搬送ローラー15は、従動ローラー17との間に用紙Pを挟圧し、図2に示す駆動部30により回転駆動するように設けられている。これにより、搬送ローラー15は、用紙Pを下流側に配置された印字ヘッド(印刷部)21へ、搬送印刷処理に伴う精密で正確な搬送(紙送り)動作により搬送することができるようになっている。
印字ヘッド21はキャリッジ23に保持されており、キャリッジ23は給紙方向(用紙Pの搬送方向)と直交する方向に往復移動するよう構成されている。印字ヘッド21による印字処理(印刷処理)は、制御部CONTによって制御されるようになっている。印字ヘッド21と対向する位置には、プラテン24が配設されている。
プラテン24は、キャリッジ23の移動方向に沿って間隔をあけて配置された、複数のダイヤモンドリブ25によって構成されている。
ダイヤモンドリブ25は、印字ヘッド21によって用紙Pに印刷を行う際に用紙Pを下側から支持するものであり、頂面が支持面として機能するようになっている。ダイヤモンドリブ25と印字ヘッド21との距離は、用紙Pの厚さに応じて調節可能になっている。
これにより、用紙Pはダイヤモンドリブ25の頂面上を滑らかに通過することが可能となっている。ダイヤモンドリブ25及び印字ヘッド21の下流側には、排紙ローラー機構29が設けられている。
排紙ローラー機構29は、下側に配置された排紙ローラー27と上側に配置された排紙ギザローラー28とを備え、排紙ローラー27の回転駆動によって用紙Pを引き出し、排出するようになっている。
ここで、搬送ローラー機構19及び排紙ローラー機構29の駆動部30及び搬送ローラー15、排紙ローラー27の駆動速度の関係について説明する。
プリンター本体3には、図2(a)及び図2(b)に示すように、制御部CONTの制御下で駆動される搬送モーター32が設けられている。この搬送モーター32の駆動軸にはピニオン33が設けられており、ピニオン33には搬送駆動ギア35が歯合しており、搬送駆動ギア35には搬送ローラー15が内挿されて連結されている。
このような構成のもとに搬送モーター32等は、搬送ローラー15を回転駆動する駆動部30となっている。
また、搬送ローラー15には、搬送駆動ギア35と同軸にインナーギア39が設けられており、このインナーギア39には中間ギア41が歯合しており、中間ギア41には排紙駆動ギア43が歯合している。排紙駆動ギア43の回転軸は、図2(a)に示すように排紙ローラー27の軸体45となっている。
このような構成のもとに、搬送ローラー機構19の搬送ローラー15と排紙ローラー機構29の排紙ローラー27とは、同一の駆動源である搬送モーター32からの回転駆動力を受け、駆動されるようになっている。
なお、排紙ローラー27の回転速度は、各ギアのギア比を調整することにより、搬送ローラー15の回転速度より速くなるように設定されている。したがって、排紙ローラー機構29の排紙速度は、搬送ローラー機構19の搬送速度より増速率だけ速くなっている。
また、搬送ローラー機構19による用紙Pの挟持力(押圧力)は、排紙ローラー機構29による挟持力(押圧力)よりも大きく設定されている。したがって、搬送ローラー機構19と排紙ローラー機構29とが共に用紙Pを挟持しているとき、その用紙搬送速度は、排紙ローラー機構29の排紙速度とは関係なく、搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されるようになっている。
次に、搬送ローラー15及びこれを備える搬送ローラー機構19について説明する。
図3(a)は搬送ローラー機構19の概略構成を示す図、図3(b)は軸受けの概略構成を示す図である。
搬送ローラー15は、中空円筒状のローラー本体16と、ローラー本体16の表面の長手方向(軸方向)の一部に形成された高摩擦層(媒体支持領域)50とを有している。
ローラー本体16は、例えば亜鉛メッキ鋼板やステンレス鋼板等の金属板が巻回された鋼板コイルを母材として形成されている。ローラー本体16は、コイルを巻き戻した金属板の一対の端面が対向するように曲げ加工され、コイルの内周面側であった面が内周面となる円筒状に形成された円筒軸である。すなわち、ローラー本体16を形成する金属板は、コイルによる巻きぐせが円筒の内周面側に反るように残った状態で円筒状に形成されている。
また、ローラー本体16は、図9(a)及び図9(b)に示すように曲げ加工されて突き合わされた金属板の一対の端面61a,61b間に形成された継ぎ目80を有している。なお、本実施形態のローラー本体16は、周方向(曲げ方向)とコイルの巻回方向(金属板の圧延方向)とが同一となっており、継ぎ目80はローラー本体16の軸方向と略平行に形成されている。
高摩擦層50は、図3(a)に示すようにローラー本体16の両端部を除く中央部に選択的に形成されている。高摩擦層50の表面には、無機粒子の鋭く尖った部分が露出した状態で固定され、高い摩擦力を発揮するようになっている。
高摩擦層50は、ローラー本体16の表面の高摩擦層の形成領域に樹脂粒子を例えば10μm〜30μm程度の均一な膜厚で選択的に塗布して樹脂膜を形成し、その樹脂膜の上に無機粒子や有機粒子(例えば樹脂粒子など)を均一に散布した後、焼成することにより形成されている。樹脂粒子としては、例えばエポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる、直径10〜20μm程度の微粒子が好適に用いられる。また、無機粒子としては、破砕処理によって所定の粒径分布に調整された酸化アルミニウム(アルミナ;Al2O3)や炭化珪素(SiC)、二酸化珪素(SiO2)等のセラミックス粒子が好適に用いられる。
搬送ローラー15は、図3(a)に示すように、その両端部がプラテン24(図1参照)に一体成形された軸受26に回転可能に保持されている。図3(b)に示すように、軸受26は、上方に開口するU字形に形成され、このU字形部位に搬送ローラー15を嵌め込むことで、搬送ローラー15を前後側及び下側の3方向から軸支する。そして、軸受26と搬送ローラー15との接触面(搬送ローラー15の表面)には、グリス等の潤滑油(潤滑液)が供給(塗布)される。また、搬送ローラー15の一端又は両端には、インナーギア39や搬送駆動ギア35が回転不能に係合し連結するための係合部(図示せず)が形成されている。搬送ローラー15には、種々の連結部品に連結するため、種々の形態の係合部が形成可能になっている。
従動ローラー17は、複数(例えば6個)のローラー17aが同軸に配列されて構成されたもので、搬送ローラー15の高摩擦層50に対向しかつ当接する位置に配置されたものである。これらローラー17aからなる従動ローラー17には、付勢バネ(図示せず)が取り付けられており、これによって従動ローラー17は、搬送ローラー15側に付勢されている。
したがって、従動ローラー17は、搬送ローラー15の高摩擦層50に所定の押圧力(用紙Pに対する挟持力)で接し、搬送ローラー15の回転動作に従動して回転するようになっている。また、搬送ローラー15と従動ローラー17との間で用紙Pを挟持する力が大きくなり、用紙Pの搬送性がより良好になっている。
なお、この従動ローラー17の各ローラー17aの表面には、高摩擦層50との摺接による損傷を緩和するため、例えばフッ素樹脂塗装等の低摩耗処理が施されている。
以上の搬送ローラー15、軸受26、駆動部30及び従動ローラー17等により、インクジェットプリンター1の搬送部(搬送装置)20が構成されている。
次に、インクジェットプリンター1の動作について、図1、図2を参照して説明する。インクジェットプリンター1は、給紙トレイ11の最上部に位置する用紙Pを給紙ローラー13によって挟圧して下流側へ送り出す。送り出された用紙Pは搬送ローラー機構19に至る。搬送ローラー機構19は、用紙Pを搬送ローラー15と従動ローラー17との間で挟圧し、搬送ローラー15の回転駆動による紙送り動作で印字ヘッド21の下方に向けて定速で搬送する。印字ヘッド21の下方に搬送された用紙Pは、ダイヤモンドリブ25の頂面上を滑らかに通過しつつ、印字ヘッド21によって高品質に印刷される。印字ヘッド21で印刷された用紙Pは、排紙部7の排紙ローラー27によって順次排出される。
排紙ローラー機構29の搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度より速く設定されているため、用紙Pはバックテンションが掛かった状態で搬送される。ただし、搬送ローラー機構19と排紙ローラー機構29とが共に用紙Pを挟持しているときには、その用紙搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されている。したがって、このように排紙ローラー機構29と搬送ローラー機構19とによって排紙と搬送とを同時に行う際にも、その用紙の搬送速度は搬送ローラー機構19の搬送速度で規定されている。そのため、搬送ムラのない正確で安定した紙送り(搬送)がなされるようになる。
ここで、搬送ローラー15の高摩擦層50において用紙Pを支持して搬送する際には、ローラー本体16にトルクが作用する。すると、ローラー本体16を形成する金属板の一対の端面61a,61bの継ぎ目80(図8参照)が開く方向に応力が作用する。ローラー本体16の継ぎ目80が開くと、用紙Pに対して搬送ローラー15が均一に接しなくなり、搬送ムラが発生する。
しかし、本実施形態では、搬送ローラー15のローラー本体16は、鋼板コイルによる巻きぐせが残った金属板により形成され、コイルの内周側であった面が内周面となる円筒状に形成されている。鋼板コイルによる金属板の巻きぐせは、鋼板コイルの内周面であった面が凹面となるような反りである。すなわち、ローラー本体16を形成する金属板には、ローラー本体16の内周面側に反るような巻きぐせが残っている。
そのため、少なくともローラー本体16の継ぎ目を開く方向には巻きぐせが作用しなくなる。したがって、ローラー本体16の外周面側に反るような巻きぐせが残っている場合と比較して、ローラー本体16の継ぎ目を開き難くするができる。すなわち、本実施形態によれば、ローラー本体16の継ぎ目を開く方向に応力が作用した場合であっても、継ぎ目が開くことを防止することができ、高い搬送精度が得られる搬送ローラー15を提供することができる。
また、ローラー本体16の周方向(曲げ方向)と鋼板コイルの巻回方向(金属板の圧延方向)とが同一となっている。そのため、ローラー本体16を形成する金属板の曲げ方向と巻きぐせによる反りの方向とを一致させることができる。これにより、ローラー本体16を形成する金属板の巻きぐせが、ローラー本体16の継ぎ目を閉じる方向に作用する。
したがって、ローラー本体16の継ぎ目の開きをより効果的に防止することができる。
また、ローラー本体16に中空の円筒軸を採用することで、中実軸を用いる場合と比較して重量を大幅に減少させることができる。また、ローラー本体16に中実軸を用いる場合と比較して材料の切削性に対する要求が低くなる。したがって、ローラー本体16の材料として鉛等の有害物質を含まない材料を用いることが可能になり、環境負荷を低減することができる。
また、搬送ローラー15には高摩擦層50が形成されており、従動ローラー17がこの高摩擦層50に当接する位置に配置されている。そのため、これら搬送ローラー15と従動ローラー17との間で用紙Pを挟持する力が大きくなり、用紙Pの搬送性がより良好になっている。
また、本実施形態の搬送部20は、搬送ローラー15とこれを支持する軸受26とを備えている。そのため、上述のように高い搬送精度が得られる搬送ローラー15を軸受26により支持して回転させ、高摩擦層50により用紙Pを支持して高精度に搬送することができる。また、搬送ローラー15に中空のローラー本体16を採用することで、中実軸を用いる場合と比較して搬送部20の重量を大幅に減少させ、環境負荷を低減することができる。
また、本実施形態のインクジェットプリンター1は、搬送部20によって用紙Pを高精度に搬送することができ、用紙Pに高い印刷精度で印刷処理を行うことできる。また、搬送ローラー15に中空のローラー本体16を採用することで、中実軸を用いる場合と比較して装置全体の重量を大幅に減少させることができ、環境負荷を低減することができる。
次に、搬送ローラー15の製造装置について説明する。
図4は、本実施形態の搬送ローラー15の製造装置の模式図である。
図4に示すように、製造装置100は、アンコイラー110と、レベラー120と、第1プレス機130と、第2プレス機140とが、一方向に配置された構成となっている。
また、製造装置100は、コイルCから巻き戻された金属板Mを一方向に送る不図示の搬送部と、加工された円筒軸を金属板Mから切り離す不図示の切断部とを備えている。
アンコイラー110は、金属板Mが圧延方向に巻回された円筒状のコイル(鋼板コイル)Cを軸回りに回転可能に支持し、コイルCを巻き戻すためのものである。
レベラー120は、上下に交互に配置された複数のワークロール121を備え、これら上下のワークロール121の間に金属板Mを通すことで、金属板Mを平坦化するように構成されている。本実施形態のレベラー120は、金属板MのコイルCによる巻きぐせ(反り)を完全には除去せず、第1プレス機130による加工が可能な程度に巻きぐせを調整するようになっている。
第1プレス機130は雄型(パンチ)131と雌型(ダイ)132とを備え、プレスにより金属板Mを所定の形状に抜き加工するように構成されている。
第2プレス機140は、一方向に配置された複数の雌型(曲げダイ)141,143及び雄型(曲げパンチ)142,144、並びに、上型145及び下型146を備え、プレスにより金属板Mを曲げ加工をするように構成されている。そして、不図示の搬送部により金属板Mを一方向に間欠的に送りながら、順次、異なる型により曲げ加工を行うこと(順送)で、金属板Mを徐々に円筒に近づけるように構成されている。
次に、搬送ローラー15の製造方法について説明する。
まず、例えば板厚が0.8mm〜1.2mm程度の冷間圧延鋼板や電気亜鉛メッキ鋼板等の金属板Mが圧延方向に巻回されたコイルCを用意する。そして、製造装置100のアンコイラー110によってコイルCを支持し、コイルCを軸回りに回転させて金属板Mを巻き戻す。コイルCから巻き戻された金属板Mは、コイルCの内周側の面C1が凹面、外周面側の面C2が凸面となる側面視で円弧状の巻きぐせが残った状態になっている。巻き戻された金属板Mは不図示の搬送部によって一方向(圧延方向)に搬送され、レベラー120に到達する。
レベラー120に到達した金属板Mは、上下に配置された複数のワークロール121によって平坦化され、巻きぐせが調整される。これにより、金属板Mは第1プレス機130による加工が可能な程度まで平坦化されるが、コイルCの内周側の面C1が凹面となる巻きぐせは、ある程度残されている。レベラー120によって平坦化された金属板Mは、不図示の搬送部によって一方向に搬送され、第1プレス機130に到達する。
第1プレス機130に到達した金属板Mは、雄型131と雌型132を用いたプレスにより抜き加工される。この抜き加工では、例えば図5(a),図5(b)に示すような抜き加工によって型抜きされた金属板Mを母材として形成される。つまり、ローラー本体16の母材である金属板Mは、図5(a)に示す雄型131に対向する上面C2が外周面となる円筒状に曲げ加工される。
この場合、抜き工程において図5(b)に示すように型抜きされた金属板Mに、ダレsd、せん断面sp、破断面bs、バリ(図示略)が形成された場合でも、比較的滑らかなダレsdが形成された上面C2を、ローラー本体16の外周側にすることが好ましい。言い換えれば、バリや破断面bsに連続する金属板Mの下面C1をローラー本体16の内周側にすることが好ましい。
これにより、金属板Mの一対の端面61a,61bを突き合わせて継ぎ目80(図8(c)等参照)を有するローラー本体16を形成する際に、バリや破断面bsの凹凸が障害となって継ぎ目80が開くことを防止できる。
したがって、ローラー本体16の継ぎ目80の精度を向上させ、高い搬送精度が得られる搬送ローラー15を提供することができる。また、バリがローラー本体16の内周面側になり、ローラー本体16の外周面から突出することを防止でき、バリ取り工程を省略して生産性を向上させることができる。勿論、上記構成に限られるものでは無く、他の構成であっても構わない。
図6は、第1プレス機130によって抜き加工された金属板Mの平面図である。
図6に示すように、金属板Mには、抜き加工により、搬送方向(圧延方向)に連続する枠部66と、搬送方向と交差する方向に延びる帯状の平板部60と、枠部66と平板部60とを連結する連結部67とが形成される。本実施形態では、平板部60は略長方形であり、短辺60aが圧延方向に平行で長辺60bが圧延方向と直交するように型抜きされている。金属板Mを不図示の搬送部によって間欠的に搬送しながら繰り返しプレスを行うことで、平板部60と連結部67は金属板Mの搬送方向に等間隔に複数形成される。
第1プレス機130によって抜き加工された金属板Mは、不図示の搬送部によって搬送され、図4に示す第2プレス機140に到達する。
図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)は、第2プレス機140による曲げ工程を示す側面図である。
第2プレス機140に到達した金属板Mの平板部60は、プレスによって図6に示す短辺60aに平行な方向(圧延方向)に曲げ加工される。すなわち、平板部60の両側の長辺60b,60bに沿う一対の端面を近接させるように曲げ加工する。そして、図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)に示すように、これら一対の端面を対向させて突き合わせるように円筒状に形成する。
具体的には、まず、図7(a)に示す雌型(曲げダイ)141と雄型(曲げパンチ)142とで金属板Mの平板部60をプレスし、平板部60の両側部62a,62bを円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。なお、図7(a)においては、各部材を分かりやすくするため、平板部60と雌型141と雄型142との間にそれぞれ間隔を開けてこれらの部材を記しているが、この間隔は実際には存在せず、平板部60と雌型141、雄型142とはそれぞれの接触部においてほぼ密着している。これは、後述する図7(b)、図7(c)、図8(a)〜図8(c)においても同様である。
ここで、雄型142は、図4に示すコイルCにおいて内周側であった面C1(図7において平板部60の下側の面)に対向するように配置されている。また、雌型141は、図4に示すコイルCにおいて外周側であった面C2(図7において平板部60の上側の面)に対向するように配置されている。これにより、平板部60の両側部62a,62bはコイルCの内周面であった面C1側に曲げ加工される。
次に、金属板Mを一方向に送った後、図7(b)に示す第2の雌型(曲げダイ)143と第2の雄型(曲げパンチ)144とで、平板部60の短辺方向(曲げ方向)における中央部をプレスする。そして、図4に示すコイルCにおいて内周側であった面C1側に、平板部60を円弧状(望ましくは略1/4円弧)に曲げる。
次に、金属板Mを一方向に送った後、図7(c)に示すように、平板部60の内側に芯型147を配置する。そして、図7(c)に示す上型145と下型146とを用いて、図8(a)〜図8(c)に示すように、平板部60の両側部62a,62bの各端面61a,61bを近接させる。
ここで、図7(c)および図8(a)〜図8(c)に示す芯型147の外径は、形成する中空円筒状のローラー本体16の内径と等しくしてある。また、図7(c)に示すように、下型146のプレス面146cの半径と上型145のプレス面145aの半径は、それぞれ、研磨しろを考慮したローラー本体16の外径の半径と等しくしてある。また、図8(a)〜図8(c)に示すように下型146は左右一対の割型であり、これら割型146a,146bは、それぞれ独立して昇降可能に構成されている。
すなわち、図7(c)に示す状態から、図8(a)に示すように左側の割型146aを上型145に近接させ、平板部60の一方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。なお、上型145も下型146と同様左右一対の割型とし(割面145b参照)、この図8(a)に示す工程の際に、同じ側の上型を割型146aに近接させてもよい。
次いで、図8(b)に示すように、芯型147を少し(一方の側の端面61aと他方の側の端面61bとを近接させることができる程度に)上型145側へ移動させるとともに、他方の側の割型146bを上型145に近接させ、平板部60の他方の側をプレス加工し、略半円形状に曲げる。
その後、図8(c)に示すように、芯型147および一対の割型146a,146bを共に上型145に近接させ、円筒状のローラー本体(中空パイプ)16を形成する。この状態で、左右両側の端面61a,61bは互いに対向して突き合わされた状態となる。すなわち、この円筒状のローラー本体16にあっては、基材である金属板Mの平板部60の両側の端面61a,61bが互いに近接して、これらの端面61a,61b間に継ぎ目が形成されている。ここで、図4に示すコイルCの内周側であった面C1はローラー本体16の内周面となり、コイルCの外周側の面であったC2はローラー本体16の外周面となっている。このように、平板部60を芯型147に巻きつけるようにローラー本体16を形成する。
図9は、図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)に示す工程を経て平板部60が段階的に円筒状に形成された金属板Mを示す平面図である。
図6に示すように型抜きされた金属板Mは、図4に示す第2プレス機140に到達し、一方向に間欠的に送られながら、図7(a)〜図7(c)、図8(a)〜図8(c)に示す工程により平板部60がプレスにより順次曲げ加工される(順送プレス工程)。そのため、図9に示すように、第2プレス機140に到達した平板部60は、金属板Mの搬送方向の前方ほど円筒に近くなっていく。平板部60が円筒状に形成された後は、不図示の切断部により連結部67が切断されて中空円筒状のローラー本体16となる。
次いで、本実施形態では、形成したローラー本体16の真円度を高め、振れを少なくするべく、センターレス研磨工程を行う。この研磨工程では、例えば図10に示すように、円柱状(又は円筒状)に形成された砥石部材GDを用いてローラー本体16の外周面16aを研磨する。
ローラー本体16の外径よりも小さい間隔を空けて配置された2つの砥石部材GDの間に当該ローラー本体16を配置させ、ローラー本体16が2つの砥石部材GDの外周部分に接した状態とする。その後、2つの砥石部材GDを例えば同じ方向に回転させる。この2つの砥石部材GDの回転により、各砥石部材GDとローラー本体16との間に摩擦力が発生する。
なお、2つの砥石部材GDとしては、ローラー本体16の長手方向の全体を一度に研磨できるように、長手方向(円柱の高さ方向)の寸法がローラー本体16よりも大きくなるように形成されたものを用いることが好ましい。また、砥石部材GDの回転時には、ローラー本体16の長手方向におけるマージンを確保するため、例えば長手方向の全体が2つの砥石部材GDに接触するように、例えば砥石部材GDの長手方向の中央部にローラー本体16を配置することが好ましい。
砥石部材GDの回転によって発生した摩擦力により、ローラー本体16が当該砥石部材GDの回転方向とは反対方向に回転しつつ、当該ローラー本体16の外周面16aが研磨されることになる。このため、ローラー本体16の外周面16aのほぼ全面が満遍なく研磨され、研磨工程前に比べてローラー本体16の真円度がより良好になる。
なお、上記プレス加工や研磨工程では、平板部60の両端面61a、61b間の隙間が無くなるように、すなわち、両端面61a、61bが互いに当接するようにするのが好ましい。しかしながら、得られるローラー本体16の真円度や振れ量を良好にしつつ、この隙間を完全に無くすのは困難であり、現状ではある程度の隙間が形成されるようになる。
この継ぎ目80は、前記平板部60の外周面と内周面とが同じ寸法(幅)であることにより、図11(b)に示すように、一対の端面61a、61b間の距離が、ローラー本体16の外周面16a側で相対的に広く、内周面16b側で相対的に狭くなっている。
次に、ローラー本体16にメッキ処理を施す(メッキ工程)。このメッキ処理によって、ローラー本体61の内外周面、端面61a、61bにメッキ層が形成される。なお、例えSECC等の予めメッキ層が形成されている鋼板を用いたとしても、端面61a、61bは打ち抜き加工により鋼板の基材が露出し、腐食しやすくなっているため、端面61a、61bにはこの工程によって十分なメッキ層を形成する必要がある。このようにして本発明に係る円筒軸となるローラー本体16を形成したら、このローラー本体16の表面に図3に示すような高摩擦層50を形成する。
この高摩擦層50の形成方法としては、乾式法及び湿式法(またはこれらを併用した方法)が採用可能であるが、本実施形態では乾式法が好適に採用される。具体的には、まず、高摩擦層50の形成材料として、樹脂粒子と無機粒子とを用意する。樹脂粒子としては、エポキシ系樹脂やポリエステル系樹脂等からなる、直径10μm程度の微粒子が好適に用いられる。
また、無機粒子としては、酸化アルミニウム(アルミナ;Al2O3)や炭化珪素(SiC)、二酸化珪素(SiO2)等のセラミックス粒子が好適に用いられる。中でもアルミナは、比較的硬度が高く摩擦抵抗を高める機能が良好に発揮され、また、比較的安価であってコストダウンを妨げることもないため、より好適に用いられる。したがって、本実施形態では無機粒子としてアルミナ粒子を用いるものとする。
このアルミナ粒子としては、破砕処理によって所定の粒径分布に調整されたものが用いられる。破砕処理によって製造されることにより、このアルミナ粒子は端部が比較的鋭く尖ったものとなり、この鋭く尖った端部によって高い摩擦力を発揮するようになる。
また、このアルミナ粒子としては、本実施形態では粒径が15μm以上90μm以下の範囲とされ、かつ、中心径となる加重平均の粒径(平均粒径)が、45μmとなるように調整されたものが用いられている。
すなわち、本発明では、アルミナ粒子(無機粒子)としてその平均粒径(中心径)が、前述の継ぎ目80の外周面側での距離d1(30μm)より大となるものが用いられる。
また、特にその粒径分布(粒度範囲)については、継ぎ目80の外周面側での距離d1より小となり、かつ、内周面側での距離d2(10μm)より大となる粒子を含んでいるのが好ましい。さらに、その粒径分布における最小粒径が、継ぎ目80における一対の端部61a、61b間の最短距離、例えば内周面側での距離d2より大であるのが好ましい。
このような樹脂粒子と無機粒子とを用意したら、まず、ローラー本体16に前述の樹脂粒子を塗布する。すなわち、ローラー本体16を塗装ブース(図示せず)内に配置し、さらにこのローラー本体16を単体の状態で例えば−(マイナス)電位にしておく。
そして、樹脂粒子を、静電塗装装置(図示せず)のトリボガンを用いてローラー本体16に向けて噴霧(噴出)し吹き付けつつ、この噴霧粒子(樹脂粒子)を+(プラス)高電位に帯電させる。すると、この帯電された樹脂粒子はローラー本体16の外周面に吸着され、樹脂膜を形成する。
ここで、樹脂粒子の吹付による樹脂膜の形成は、図3に示した高摩擦層50の形成領域に対応させる。すなわち、ローラー本体16の全長に亘って行うことなく、例えばその両端部をテープ等でマスキングしておくことにより、図12(a)に示すようにこの両端部を除いた中央部のみに行う。つまり、このローラー本体16からなる搬送ローラー15の、少なくとも搬送する用紙(媒体)Pに接触する領域となる中央部に対応する領域にのみ、選択的に樹脂膜51を形成する。なお、図12(a)及び後述する図12(b)、(c)では、継ぎ目80については図示を省略している。
樹脂膜51には、吹付塗装後に+0.5KV程度の微弱な静電気が残存する。なお、この吹付塗装に際しては、ローラー本体16を軸廻りに回転させることにより、その全周に亘って樹脂膜51をほぼ均一な厚さに形成する。この樹脂膜51の膜厚については、前述のアルミナ粒子の粉径を勘案して、例えば10μm〜30μm程度に形成する。このような膜厚については、樹脂粒子の噴出量及び噴出時間等によって適宜に調整することができる。
次いで、この樹脂膜51を形成したローラー本体16を前述の塗装ブースから取り出し、ハンドリングロボット(図示せず)によって図13に示す別の塗装ブース90に移す。
この塗装ブース90には、その下部に一対の回転駆動部材91、91が設けられており、これら回転駆動部材91、91には、ローラー本体16を略水平に支持するためのチャック92が設けられている。
そして、ローラー本体16の両端部をチャック92、92に保持させて固定し、さらに回転駆動部材91によってチャック92、92を回転させる。これにより、ローラー本体16をその軸廻りに、例えば100rpm〜500rpm程度の低速でゆっくり回転駆動させる。なお、ローラー本体16については、若干斜めに支持してもよいのはもちろんである。
また、塗装ブース90には、その上部にコロナガン93が配置されており、このコロナガン93は、シャフト94上を図13中左右方向に移動するようになっている。また、塗装ブース90の底部には排気機構90aが設けられている。これにより、塗装ブース90内には下方に向かうゆっくりとした気流が形成されるようになっている。なお、この排気機構90aの吸引風量は適宜に設定されるようになっている。
このような構成のもとに、ローラー本体16をその軸廻りに回転させつつ、コロナガン93から前述のアルミナ粒子95を噴霧し吹き付けることにより、ローラー本体16に形成した樹脂膜51上に、アルミナ粒子95を選択的に静電吸着させる。アルミナ粒子を樹脂膜51上に選択的に静電吸着させるには、樹脂膜51の形成と同様に、ローラー本体16の両端部をテープ等でマスキングしておくことで行う。
この静電塗装時には、チャック92及び回転駆動部材91の表面電位が、ローラー本体16の電位とほぼ等しくなり、しかも塗装ブース90の内面電位が、電気的に中立で略零電位となるように設定する。コロナガン93からのアルミナ粒子95が、ローラー本体16以外の部位に吸着されないようにするためである。この塗装ブース90の内表面電位を電気的に中立に保持するためには、塗装ブース90を、内表面電気抵抗が例えば1011Ω程度の鋼板を用いて製造するのが望ましい。
そして、コロナガン93にかける電位を零Vとし、さらにこのコロナガン93に供給するエアーの圧力を0.2Mpa程度に低く設定する。次いで、このコロナガン93を図13中の左右方向に移動させつつ、上方より略零電位のアルミナ粒子95を吹き出させ、アルミナ粒子95を自重で鉛直方向に自然落下させる。
すると、前述したように、ローラー本体16の樹脂膜51には、静電塗装によって形成されたことで微弱な静電気(約+0.5KV)が残存しているため、この静電気によってアルミナ粒子95が樹脂膜51の全周にほぼ均一に静電吸着する。このようにして静電吸着したアルミナ粒子95は、樹脂膜51表面に当接しさらに一部入り込んだ状態で、この樹脂膜51をバインダとしてローラー本体16の外周面に付着する。
ここで、本実施形態では塗装ブース90の内面電位が電気的に中立で略零電位となっており、しかも塗装ブース90内の気流が下向きにゆっくりとした流れに形成されているので、アルミナ粒子95はその自重によって鉛直方向下方に自然落下する。落下方向の下方には、水平支持されたローラー本体16がその軸廻りにゆっくり回転しているので、このローラー本体16の外周面には、アルミナ粒子95がほぼ均一に散布される。
したがって、特にマスキングされていない樹脂膜51の表面にアルミナ粒子95が均一に付着し、これによってローラー本体16には、図12(b)に示すようにその中央部の樹脂膜51中に、アルミナ粒子(無機粒子)95が分散し露出する。すなわち、アルミナ粒子95は、静電吸着力によって樹脂膜51に当接した際、この樹脂膜51中に一部が入り込み、残部が樹脂膜51の表面から突き出た状態になる。その際、アルミナ粒子95はローラー本体16の表面に対して垂直に立った状態になり易いため、アルミナ粒子95は均一に分布され、その殆どが鋭く尖った端部(頂部)を外側に向けて付着する。
したがって、アルミナ粒子95は樹脂膜51の表面から突き出た端部により、高い摩擦力を発揮するようになる。ここで、アルミナ粒子95が用紙Pに対して必要かつ十分な摩擦力を発揮するには、樹脂膜51の面積に対して、アルミナ粒子95の占める面積が20%〜80%となるようにするのが好ましい。
なお、このアルミナ粒子95の塗布(散布)については、アルミナ粒子95が鉛直方向下方にゆっくりと散布されるのであれば、静電塗装法による塗布に限定されるものではなく、例えばスプレーガンを用いた塗布(散布)法であってもよい。
このようにしてアルミナ粒子95を樹脂膜51上に散布し付着させたら、このローラー本体16を180℃〜300℃程度の温度で20分〜30分間程度加熱し、樹脂膜51を焼成し硬化させる。これにより、アルミナ粒子95をローラー本体16に固着する。こうして、図12(c)に示すように樹脂膜51中にアルミナ粒子(無機粒子)95が分散し露出してなる高摩擦層50が形成され、本発明に係る搬送ローラー15が得られる。
なお、本実施形態では、樹脂粒子の塗布(吹付)とアルミナ粒子(無機粒子)の塗布(吹付)とを別々の塗装ブースで実施したが、同一の塗装ブース内で行ってもよいのはもちろんである。
このようにして高摩擦層50を形成すると、特に継ぎ目80には、平板部60の端面61a、61b間の隙間に起因する溝が形成されることなく、端面61a、61b間の隙間が主にアルミナ粒子95によって埋め込まれる。
すなわち、アルミナ粒子95としてその平均粒径が、継ぎ目80の、外周面側での距離d1より大となるものを用いているので、アルミナ粒子95はその大半が継ぎ目80内に入り込むことなく、図14に示すようにローラー本体16の外周面上に樹脂膜51を介して付着している。したがって、継ぎ目80には平板部60の端面61a、61b間に隙間が形成されているにもかかわらず、アルミナ粒子95がこの隙間上を覆うことにより、この隙間に起因する溝が実質的に形成されなくなる。
また、アルミナ粒子95として、継ぎ目80の外周面側での距離d1(30μm)より小となり、かつ、内周面側での距離d2(10μm)より大となる粒子95aを含む粒径分布(粒度範囲)のものを用いているので、このような粒子95aが継ぎ目80に形成された隙間に入り込んでここに留まることにより、継ぎ目80による溝が確実に形成されなくなる。
また、使用時等において、ローラー本体16(搬送ローラ15)に隙間を狭める方向に力が働いても、ここに入り込んだアルミナ粒子95aがこの力に抗するため、ローラー本体16(搬送ローラー15)の変形が抑えられる。したがって、この搬送ローラー15を備えた搬送ローラー機構19にあっては、搬送ローラー15の変形に起因する搬送ムラが防止される。
さらに、アルミナ粒子95として、その粒径分布における最小粒径が、継ぎ目80における一対の端面61a、61b間の最短距離、つまり内周面側での距離d2より大であるものを用いているので、ローラー本体16の表面にアルミナ粒子95を配して高摩擦層50を形成した際、継ぎ目80に形成された隙間を通り抜けてローラー本体16内にアルミナ粒子95が入り込むことが無い。したがって、その後ローラー本体16内を清浄化するなどの処理が軽減され、その分、生産性を向上することができる。
以上の工程を経て、図3(a)に示すように樹脂膜中にアルミナ粒子が分散し露出してなる高摩擦層50が形成され、搬送ローラー15が得られる。
以上のように、本実施形態によれば、搬送ローラー15が円筒状に形成されるため、中実の搬送ローラーを用いる場合に対して搬送ローラー15の軽量化を図ることができる。これにより、軽量なインクジェットプリンター1を提供することができる。また、円筒状に形成することにより、搬送ローラー15の低コスト化を図ることができる。更に、搬送媒体である記録紙Pを搬送する高摩擦層50が搬送ローラー15(ローラー本体16)の外周面に設けられているため、高い搬送精度を確保することができ、高い印字精度を確保することができる。
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
例えば、上記実施形態においては、ローラー本体16は、例えば亜鉛メッキ鋼板やステンレス鋼板等の金属板が巻回された鋼板コイルを母材として形成されている構成としたが、これに限られることは無い。例えば平板状の金属板を母材とし、当該平板金属板から上記平板部60とほぼ同形同寸法の金属板を形成して、当該金属板を加工することでローラー本体16を形成しても構わない。したがって、例えば上記説明あるいは以下の記載において、平板部60を当該金属板に置き換えた場合であっても適用可能である。
また、例えば、ローラー本体16に形成された継ぎ目80の一部には、図15(a)に示すように、開口170が設けてもよい。
ローラー本体16に形成される継ぎ目80は、図15(b)に示すように、一対の端面61a,61bの内周側が密着し、外周側が離間した溝状になっている。或いは、継ぎ目80は、一対の端面61a,61b同士が当接することなく、端面61a,61bが僅かに離間して、隙間として形成される場合もある。そして、この継ぎ目80が搬送ローラー15の全長に亘って形成されるので、軸受26に供給したグリスLが搬送ローラー15の表面に付着すると、グリスLは継ぎ目80を毛細管現象により伝わり流れるようになる。特に、搬送ローラー15の強度を向上させるため、継ぎ目80(端面61a,61bの最大距離d1)を小さくする程、グリスLの毛細管現象が強くなって、グリスLが継ぎ目80に沿って流れやすくなる。
そこで、図15(c)に示すように、ローラー本体16に形成された継ぎ目80の一部には、開口170が設けられている。この開口170は、図15(c)に示すように、継ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bにそれぞれ設けられた切欠部176,177により形成される。端面61a、61bを突き合わせたときに、切欠部176,177の間の最大距離d2が例えば1mm程度以上となるように設定され、開口170として機能する。
開口170は、搬送ローラー15(ローラー本体16)の全長に亘って形成された継ぎ目80のうち、高摩擦層50が形成された領域と軸受26に支持される領域を除く領域に設けられる。つまり、高摩擦層50は搬送ローラー15のほぼ中央部に形成され、搬送ローラー15の両端側が軸受26に支持されるので、搬送ローラー15には少なくとも2つの開口170が設けられる。
開口170は、軸受26に供給(塗布)されたグリスL(潤滑油)が継ぎ目80(端面61a、61bの隙間)に沿って高摩擦層50まで達することを防止する目的で設けられる。すなわち、継ぎ目80の一部に開口170を設けることで、グリスLの毛細管現象を止めている。具体的には、継ぎ目80のうち、軸受26に支持される領域と高摩擦層50が形成された領域の間に開口170を設けることで、グリスLが高摩擦層50に達することを防止している。そして、開口170の大きさ(一対の切欠部176,177間の最大距離d2)を調整することで、グリスLの毛細管現象を確実に止めることができる。
なお、継ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bのそれぞれに、開口170を形成するための切欠部176,177を形成する場合に限らない。つまり、図15(d)に示すように、継ぎ目80を形成する一対の端面61a、61bの一方(例えば端面61a)にのみに切欠部178を形成して、切欠部178と端面61bとにより開口170が形成される場合であってもよい。また、開口170の形状としては、矩形に限らず、円形等であってよい。
また、ローラー本体16に形成される継ぎ目80の形状を、図16(a)に示すような形状にしてもよい。すなわち、継ぎ目80は、第1端面274と第2端面275とが、ローラー本体271の外周面271a側で互いに接している。第1端面274と第2端面275との間の隙間は、径方向外側から内側に向かうに従い漸次幅広となっている。また、第1端面274及び第2端面275の形状は、折曲部85以外では、ローラー本体271の全長に亘り同一の形状となっている。
また、第1端面274と外周面271aとで形成される第1角度α、及び第2端面275と外周面271aとで形成される第2角度βは、いずれも90°より小さく形成されている。
継ぎ目80の第1端面274及び第2端面275は外周面271a側で互いに接しており、接続部276において外周面271a側の平滑度が向上している。そのため、搬送ローラー15が回転してもその外周面は記録紙Pと安定して接触することができる。このため、記録紙Pを高い精度で搬送することができる。
継ぎ目80の形状は、図16(b)に示すように、継ぎ目80の第1端面274と外周面271aとで形成される第1角度αは、90°より小さく形成され、第2端面275と外周面271aとで形成される第2角度βは、90°以上の大きさで形成してもよい。すなわち、接続部276における第1端面274及び第2端面275が、周方向に関して所定の方向に傾いた形状としてもよい。
なお、継ぎ目80の形状は、以下の工程を経て形成される。すなわち、順送プレス加工における打ち抜き加工によって金属板270を形成した後に、金属板270の第1端面274及び第2端面275に対して、端面調整加工を実施し、第1端面274及び第2端面275の、外周面271aに対する傾きを調整する。
図16(c)に示すように、プレス加工によって第1端面274及び第2端面275の外周面271aに対する傾きを調整する。この調整により、第1端面274と外周面271aとで形成される第1角度α、及び第2端面275と外周面271aとで形成される第2角度βは、いずれも90°より小さくなる。
したがって、金属板270を曲げ加工して円筒状のローラー本体271を成形したときに、第1端面274と第2端面275とは少なくとも外周面271a側で互いに接することになる。
また、上記図16(a)及び図16(b)に示す構成は、例えば第1端面274の一部と第2端面275の一部とが面接触している構成であっても構わない。例えば図16(a)に対応する構成について説明すると、図17(a)に示すように、第1端面274の一部である第1端面外縁部274aと、第2端面275の一部である第2端面外縁部275aとは、互いに面接触している構成としても構わない。すなわち、繋ぎ目80において、外周面271a側に開口する隙間や凹部等は存在しない。よって、搬送ローラー15の回転時に外周面271aと記録紙Pとの接触を常に維持することができる。また、第1端面外縁部274aと第2端面外縁部275aとが互いに面接触しているため、ローラー本体16の強度、特に繋ぎ目80近傍での強度が向上する。ローラー本体16に曲げやねじりの力が加えられたとしても、第1端面274と第2端面275とが互いに離間することを防止することができる。
第1端面内縁部274bと第2端面内縁部275bとの間には、隙間277が形成されている。隙間277は、内周面271b側に向かうに従い漸次幅広となる形状となっている。第1端面内縁部274bと内周面271bとで形成される第1角度α1、及び第2端面内縁部275bと内周面271bとで形成される第2角度α2は、いずれも90°より大きい。
また、図16(b)に対応する構成について説明すると、図17(b)に示すように、第1端面内縁部274bと第2端面275との間には、第2隙間(隙間)277Aが形成されている。第2隙間277Aは、内周面271b側に向かうに従い漸次幅広となる形状となっている。第1端面内縁部274bと内周面271bとで形成される第1角度α1は90°より大きく、第2端面275と内周面271bとで形成される第3角度α3は90°以下となっている。すなわち、繋ぎ目80における第1端面274(及び第2端面275)が、周方向に関して所定の方向に傾いた形状となっている。この傾きに沿う方向で搬送ローラー15を回転させて記録紙Pを搬送すると、繋ぎ目80に対して搬送に伴う付勢力が加えられたとしても、第1端面274と第2端面275との離間は生じにくくなる。よって、搬送に伴って生じる虞のある、搬送ローラー15の歪みや変形等を抑制することができる。
また、ローラー本体16(搬送ローラー15)の両端部には、前述したようにその一方あるいは両方に、図2に示した搬送駆動ギア35やインナーギア39など、種々の連結部品に連結するための係合部が形成されている。例えば、図18及び図19に示すように、円筒状のパイプ(中空パイプ)からなるローラー本体16の相対向する位置、すなわちローラー本体16の直径を規定する二点の形成面に、それぞれ貫通孔71a、71aを形成し、これら一対の貫通孔71a、71aを含んでなる係合孔(係合部)71を形成することができる。この係合孔71によれば、歯車等の連結部品72を軸やピン等(図示せず)によって固定することができる。
また、図20(a)及び図20(b)に示すように、ローラー本体16の端部にDカット状の係合部73を形成することもできる。この係合部73は、円筒状の中空パイプ(ローラー本体16)の端部に形成されたもので、図20(a)に示すようにその一部が平面視矩形状に切り欠かれた開口73aを有し、これによって図20(b)に示すように端部側面の外形が見掛け上D状に形成されたものである。
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、この見掛け上D状に形成された係合部73に係合させることにより、該連結部品をローラー本体16(搬送ローラー15)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部73については、中空パイプ(ローラー本体16)の内部孔に通じる溝状の開口73aが形成されていることから、この開口73aを利用することによっても、連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく取り付けることができる。具体的には、連結部品に凸部を形成しておき、この凸部を開口73aに嵌合させることにより、空回りを防止することができる。
また、図20(c)及び図20(d)に示すように、ローラー本体16の端部に溝74aとDカット部74bとを有した係合部74を形成することもできる。この係合部74において、Dカット部74bはローラー本体16の外端に形成されており、溝74aはDカット部74bより内側に形成されている。溝74aは、図20(c)に示すように、ローラー本体16がその周方向に略半分切り欠かれて形成されたものである。Dカット部74bは、溝74aの外側において該溝74aと直交する方向に延在する開口74cを有し、この開口74cの両側に、一対の折曲片74d、74dを有したものである。すなわち、図20(d)に示すようにこれら一対の折曲片74d、74dがローラー本体16の中心軸側に折曲させられたことにより、これら折曲片74d、74dに対応する部分が、ローラー本体16の円形の外周面から凹んだ状態となっている。
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、溝74aに係合させまたはDカット部74bに係合させることにより、該連結部品をローラー本体16(搬送ローラー15)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部74では、折曲片74d間に形成された開口74cを利用することによっても、連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく取り付けることができる。具体的には、連結部品に凸部を形成しておき、この凸部を開口74cに嵌合させることにより、空回りを防止することができる。
また、図20(e)及び図20(f)に示すように、ローラー本体16の端部に溝75aと開口75bとを有した係合部75を形成することもできる。この係合部75において、開口75bはローラー本体16の外端に形成されており、溝75aは開口75bより内側に形成されている。溝75aは、図20(e)に示すように、ローラー本体16がその周方向に略半分切り欠かれて形成されたものである。開口75bは、溝75aの外側においてローラー本体16の一部が平面視矩形状に切り欠かれ、これによって図20(f)に示すように端部側面の外形が見掛け上D状に形成されたものである。
したがって、歯車等の連結部品(図示せず)を、溝75aに係合させまたは開口75bによって形成された見掛け上D状に形成された部位に係合させることにより、該連結部品をローラー本体16(搬送ローラー15)に対し空回りさせることなく、取り付けることができる。また、この係合部75でも、図20(a)及び図20(b)に示した係合部73と同様に、開口75bを利用することによって、連結部品をローラー本体16に対し空回りさせることなく取り付けることができる。
このような係合孔71や係合部73、74、75を形成するには、平板部60をプレス加工して得られたローラー本体16に対して、さらに切削加工等を施すことで行うこともできる。しかし、その場合には、ローラー本体16に対して係合部の形成だけのために別途加工工程を追加することで、コストや時間についての効率が低下してしまう。そこで、本発明の製造方法では、第2プレス工程でローラー本体16にプレス加工する前に、第1プレス工程のプレス加工によって係合部となる展開係合部を平板部60に形成しておき、その後、第2プレス工程でこの平板部60をプレス加工してローラー本体16とする際に、係合部も同時に形成する。
具体的には、コイル状に巻かれた金属板Mを細長い略矩形板状の平板部60に抜き加工する際、この大型金属板Mから小型の平板部60への加工と同時に、得られる平板部60の端部に、切欠状、突片状、孔状、あるいは溝状等の展開係合部を形成する。
例えば、図21(a)に示すように平板部60の端部の所定位置に一対の貫通孔71a、71aを加工し、これらを展開係合部76aとしておくことにより、この平板部60をプレス加工することで一対の貫通孔71a、71aを対向させ、図18及び図19に示した係合孔71を形成することができる。
また、図21(b)に示すように、平板部60の端部を所定形状に切り欠いて一対の切欠部73b、73bからなる展開係合部73cとしておくことにより、この平板部60をプレス加工することで図20(a)及び図20(b)に示した係合部73を形成することができる。
さらに、図21(c)に示すように、平板部60の端部を所定形状に切り欠いて展開係合部76bとしておくことにより、この平板部60をプレス加工することで図20(c)及び図20(d)に示した係合部74を形成することができる。すなわち、展開係合部76bとして、一対の切欠部(凹部)74e、74eと一対の突片74f、74fとを形成しておくことにより、係合部74を形成することができる。ただし、この例では、平板部60をプレス加工した後、一対の突片74f、74fを内側に折り曲げ加工して折曲片74dとする必要があるため、加工工程についてのコストや時間の効率化を十分に高めるにはやや不十分である。
そこで、図21(d)に示すように、平板部60の端部を所定形状に切り欠いて展開係合部76cとしておくことにより、この平板部60をプレス加工することで図20(e)及び図20(f)に示した係合部75を形成することができる。すなわち、展開係合部76cとして、一対の切欠部(凹部)75c、75cと一対の突片75d、75dとを形成しておくことにより、係合部75を形成することができる。この例では、平板部60をプレス加工した際に一対の突片75d、75dも円弧状に曲げることにより、これら突片75d、75d間に図20(b)に示した開口75bを形成することができる。したがって、プレス加工によって形成したローラー本体16に対し、さらに加工を追加する必要がなく、これにより加工工程についてのコストや時間の効率化を十分に高めることができる。
ここで、図21(b)〜(d)に示した例では、図20(a)〜図20(f)に示した係合部73、74、75が継ぎ目80を挟んで形成されるよう、平板部60の両端部に展開係合部73c、76b、76cを形成している。このように、展開係合部73c、76b、76cを両端部に形成することにより、形成するローラー本体16の継ぎ目80を、このローラー本体16の長さより短くすることができる。したがって、継ぎ目80の形成の際に端面61a、61bが部分的に当接し干渉することなどによる、ローラー本体16の変形を抑えることが可能になる。
ただし、本発明はこれに限定されることなく、図22(a)〜(c)に示すように、展開係合部を平板部60の両端部に形成することなく、その幅方向(曲げ方向)における中心線の近傍に形成することもできる。すなわち、図22(a)に示すように端部に細長い矩形状の切欠からなる展開係合部76dを形成することで、図18に示した係合部73を形成することができる。また、図22(b)に示すようなT字状の切欠からなる展開係合部76eを形成することで、図20(c)及び図20(d)に示した係合部74を形成することができ、さらに、図22(c)に示すような略T字状の切欠からなる展開係合部76fを形成することで、図20(e)及び図20(f)に示した係合部75を形成することができる。
このように展開形成部76d〜76fを曲げ方向における中心線の近傍に形成すれば、これら展開形成部76d〜76fから得られる係合部73〜75を、より精度良く形成することができる。
以上説明したように本実施形態の搬送ローラー15の製造方法では、大型金属板(第2金属板)Mからプレス加工によって小型の金属板(第1金属板)60を形成する際に、展開係合部も同時に形成し、さらに、金属板(第1金属板)60をプレス加工する際に、展開係合部から係合部71、73、74、75を形成するようにしたので、ローラー本体16を形成した後、係合部の形成だけのために別途加工工程を追加する必要がなくなる。
したがって、追加する加工工程にかかるコストや時間が不要になることで、搬送ローラー15自体の十分なコストダウンが可能になり、生産性も向上する。特に、大型金属板を小型化する際に展開係合部を一括して形成するので、工程を一層簡略化することができる。
なお、図11(a)に示したように本実施形態に係る搬送ローラー15(ローラー本体16)では、その継ぎ目80を、円筒状の中空パイプからなるローラー本体16の中心軸と平行になるように形成したが、本発明はこれに限定されることなく、例えば基材となる平板部60の一対の端部間に形成される継ぎ目を、円筒状パイプ(ローラー本体)の外周面上における、該円筒状パイプの中心軸に平行な直線上において、該直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成してもよい。
具体的には、図23(a)に示すように継ぎ目81として、ローラー本体16の中心軸16cに平行となることなくこれに交差するように、ローラー本体16の外周面をその周方向に延びつつ、ローラー本体16の一端から他端にかけて延在するように形成してもよい。このように継ぎ目81を形成するには、基材となる金属板として、細長い矩形状の平板部60でなく、図23(b)に示すように細長い平行四辺形の平板部60aを形成し、符号16dで示す直線が中心軸となるようにプレス加工する。これにより、図23(a)に示したローラー本体16が得られ、継ぎ目81が中心軸16cに対して非平行となる。
なお、図23(a)に示したローラー本体16では、その継ぎ目81が、ローラー本体16の一端から他端にかけて、その周面を一周未満しか回らないように形成している。これは、平板部60aのプレス加工を容易にするためである。ただし、図23(c)に示すように継ぎ目82が、ローラー本体16の一端から他端にかけて、その周面を一周以上回るように、すなわち螺旋状に回るように形成してもよい。その場合には、基材となる金属板として、図23(b)に示した細長い平行四辺形の平板部60aにおける、角度θをより鋭角にすればよい。
また、図24(a)に示すように継ぎ目83を、サイン波等の曲線からなる波線状に形成してもよい。このように継ぎ目83を形成するには、基材となる金属板として、図24(b)に示すように、細長い略矩形状で、その両方の長辺が波線状に形成された平板部60bを用い、符号16dで示す直線が中心軸となるようにプレス加工する。なお、波線状に形成された一対の長辺は、プレス加工によってこれらが近接させられるため、当然ながら互いに対応する箇所間では、一方の長辺が山部となる場合に他方の長辺では谷部となり、逆に、一方の長辺が谷部となる場合に他方の長辺では山部となるように形成する。また、この例では、継ぎ目83の中心線がローラー本体16の中心軸と平行になるように形成したが、この継ぎ目83の中心線も、ローラー本体16の中心軸と非平行になるように形成してもよい。その場合に、基材となる金属板として、図23(b)に示したような細長い平行四辺形の金属板で、かつ、その両方の長辺が波線状に形成されたものを用いればよい。
また、図25(a)に示すように継ぎ目84を、鉤状に折れ曲がった波線状に形成してもよい。このように継ぎ目84を形成するには、基材となる金属板として、図23(b)に示すように、細長い略矩形状で、その両方の長辺が鉤状に折れ曲がった波線状に形成された平板部60cを用い、符号16dで示す直線が中心軸となるようにプレス加工する。
この平板部60cにおいても、波線状に形成された一対の長辺において互いに対応する箇所間では、一方の長辺が山部となる場合に他方の長辺では谷部となり、逆に、一方の長辺が谷部となる場合に他方の長辺では山部となるように形成する。なお、この例でも、継ぎ目84の中心線がローラー本体16の中心軸と平行になるように形成したが、継ぎ目83の場合と同様に、ローラー本体16の中心軸と非平行になるように形成してもよい。
また、継ぎ目については、図23〜図25に示した例に限定されることなく、種々の形状を採用することができる。例えば、図24(a)に示した曲線からなる波線と、図25(a)に示した折れ曲がった波線とを組み合わせてもよく、これらに、図23に示したような斜めの線を組み合わせてもよい。
このように継ぎ目81〜84を、円筒状パイプ(ローラー本体16)の中心軸に平行な直線に対して線分で重なることなく、一つあるいは複数の点でのみ重なるように形成すれば、このローラー本体16を有してなる搬送ローラー15は、従動ローラー17と協働して用紙Pを搬送する際、つまり紙送りをする際、用紙Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラがより確実に防止されたものとなる。
すなわち、図26に示すように搬送ローラー15が紙送りの際に用紙Pと接する箇所は、基本的にはその外周面上の直線L、つまり中心軸16cと平行な直線Lとなる。したがって、図7(b)に示したように搬送ローラー15(ローラー本体16)の継ぎ目80がローラー本体16の中心軸16cと平行である場合、この搬送ローラー15はその継ぎ目80全体が一時的(瞬間的)に用紙Pに接することになる。すると、本実施形態の搬送ローラー15では前述したようにその継ぎ目80に起因して溝が形成されていないため、問題にはならないものの、仮に継ぎ目80に起因して溝が形成されていると、この溝が一時的にかつ同時に用紙Pに接し、したがって用紙Pの全幅が一時的に継ぎ目80に起因する溝に接することになる。その結果、この溝では搬送ローラー15の他の外周面に比べて凹みがあり、用紙Pに対する接触抵抗が小となっているため、用紙Pの搬送速度が一時的に低下し、搬送ムラを生じてしまう。
しかして、図23(a)、(c)、図24(a)、図25(a)に示したように継ぎ目81〜84を形成すれば、仮にこれら継ぎ目に起因して溝が形成されたとしても、この溝が紙送りの際に同時に用紙Pに接触する箇所が、一つあるいは複数の点のみとなる。したがって、搬送ローラー15の他の面(線)が当たるときに比べほとんど接触抵抗に変化がなく、これにより、用紙Pの搬送速度が一定になり、搬送ムラが防止されるようになる。
また、円筒状の中空パイプからなる搬送ローラー15(ローラー本体16)の継ぎ目については、前述した例以外にも、例えば図27(a)に示すように、ローラー本体16の中心軸と平行な直線部85aとこれに直交する直線部85bとからなる、矩形波状の折曲部85を有して形成されていてもよい。このような折曲部85を有してなる継ぎ目にあっても、この継ぎ目に起因して仮に溝が形成された場合に、この溝が紙送りの際に用紙Pの幅全体に同時に接触することがないため、用紙Pの搬送速度がほぼ一定になり、搬送ムラが防止される。
また、この折曲部85については、図27(b)に示すようにローラー本体16の長さ全体に亘って形成されていてもよく、図27(c)に示すように、その中央部を除く両端部に選択的に形成されていてもよい。図27(c)に示したように折曲部85を両端部にのみ形成する場合には、これら折曲部85間はローラー本体16の中心軸と平行な中央直線部86となる。ただし、図示しないものの、折曲部85間の中央直線部を、図23(a)に示したように中心軸16cと非平行となる斜め線に形成してもよい。
また、このように折曲部85を両端部にのみ形成し、その間の中央部については中央直線部86とした場合、図12(c)に示した高摩擦層50の形成領域を中央部直線部86に対応させるのが好ましい。
継ぎ目に折曲部85を形成し、したがってこの折曲部85を凹凸による嵌合部にすると、これら折曲部85(嵌合部)では設計通りに嵌合させ、凸部の先端とこれに対応する凹部との間を隙間なく近接させる(突き合わせる)のが難しくなる。したがって、ローラー本体16の全長に亘って折曲部85を形成すると、ローラー本体16に歪みや捩れ等が生じ易くなる。そこで、図27(c)に示したように折曲部85を両端部にのみ形成すれば、このような歪みや捩れ等が生じるのを抑えることができる。また、特に用紙Pに直接接する領域となる高摩擦層50に対応する中央部を、折曲部85とすることなく中央直線部86とすることにより、用紙Pに直接接する領域に歪みや捩れ等が生じるのを確実に防止することができる。
また、図27(b)に示したように、折曲部85をローラー本体16の長さ全体に亘って形成した場合、図28(a)に示すようにこの折曲部85からなる継ぎ目87を、直線部85bからなる複数の交差部87aと、該交差部87aの一方の側の端部間を結ぶ第1直線部87bと、他方の側の端部間を結ぶ第2直線部87cとからなるように形成してもよい。ここで、第1直線部87bおよび第2直線部87cはローラー本体16の中心軸に略平行となるように形成し、交差部87aはこれら第1直線部87bおよび第2直線部87cと直交するように、つまりローラー本体16の中心軸に直交するように形成する。また、第2直線部87cは第1直線部87bより短く形成する。
このような構成の継ぎ目87を形成する場合、特に、第2直線部87cにおいて互いに対向する一対の端部間の距離d3を、第1直線部87bにおいて互いに対向する一対の端部間の距離d4より長く形成するのが好ましい。なお、ここでいう一対の端部間の距離d3、d4は、いずれもローラー本体16における外周面に形成される隙間における端部間の距離とする。
このようにすれば、ローラー本体16の、円筒状中空パイプとしての形状や寸法の精度をより高くすることができ、したがって、ローラー本体16の変形等に起因する搬送ムラを防止することができる。すなわち、このようなローラー本体16を形成するための基材となる金属板では、第2直線部87cを構成する一方の端部は、隣り合う一対の交差部87a、87aとこれらの端部間を結ぶ第2直線部87cとを外形とする凸片87dとなる。したがって、金属板をプレス加工してこの凸片87dを対向する端部に近接させようとした際、図28(b)中に二点鎖線で示すように、この凸片87dの先端側が円周面状に十分に曲げられずに、対向する端部に対して寸法t1分浮いた状態になり、結果としてこの第2直線部87cおいて段差を形成してしまう。すると、この段差に起因して、得られるローラー本体16には変形等が生じ易くなり、形状や寸法について良好な精度が得られにくくなってしまう。
そこで、この第2直線部87cにおける端部間の距離d3を、この第2直線部87cより長く形成されている第1直線部87bにおける端部間の距離d4よりも長くすることにより、図28(b)中に実線で示すように、凸片87dの先端側が浮く分の寸法t2が前述のt1に比べて少なく(小さく)なり、これによって第2直線部87cにおいて段差が形成されるのを抑えることができる。
なお、図28(b)では、理解を容易にするため寸法t2も大きく記しているが、実際にはこの寸法t2はほとんど零に近くなり、実質的な段差がなくなるようになる。つまり、このように第2直線部87cにおいて段差が形成されるのを抑えることにより、この段差に起因するローラー本体16の変形等を抑え、形状や寸法についての精度を高めることができるのである。
また、図27(c)に示したように、折曲部85をローラー本体16の両端部にのみ形成した場合、図29に示すようにこの折曲部85における交差部87a(直線部85b)において互いに対向する一対の端部間の距離d5を、中央直線部86において互いに対向する一対の端部間の距離d6より短く形成するのが好ましい。
このようにすれば、距離d5が相対的に短くなって交差部87aにおける端部間の隙間が非常に狭くなるため、ローラー本体16を形成するための基材となる金属板をプレス加工した際、一方の端部と他方の端部との間の長さ方向(軸方向)でのずれが、交差部87aを構成する一対の対向する端部によって規制されるようになる。したがって、得られるローラー本体16(搬送ローラー15)に歪みや捩れ等が生じにくくなり、このような歪みや捩れ等に起因する搬送ムラが防止される。
なお、図27(c)に示したように、折曲部85をローラー本体16の両端部にのみ形成した場合には、図29に示すようにこの折曲部85の凸片87dを構成する第2直線部87cにおいて互いに対向する一対の端部間の距離d7を、中央直線部86において互いに対向する一対の端部間の距離d6より短く形成してもよく、また、長く形成してもよい。
距離d7を距離d6より短く形成すれば、継ぎ目の全長を見た場合に、対向する一対の端部間にできる隙間がより均一化し易くなり、これによって得られるローラー本体16の形状や寸法についての精度がより高くなる。すなわち、中央直線部86の長さは折曲部85における第2直線部87cの長さより長くなり、したがって中央直線部86における一対の端部間の方が第2直線部87cに比べて精度良く近接させることができる。よって、相対的に端部間の精度をより良好にすることができる中央直線部86の方の一対の端部間の距離を、第2直線部87cに比べて長くしてその隙間を大きくしても、この隙間を十分均一にすることが可能になり、したがって得られるローラー本体16の歪みや捩れ等に起因する搬送ムラが防止される。
一方、距離d7を距離d6より長く形成すれば、図28(b)に示したように凸片87dの先端側が浮く分の寸法t2が少なく(小さく)なり、これによって第2直線部87cにおいて段差が形成されるのが抑えられる。よって、このように第2直線部87cにおいて段差が形成されるのが抑えられることにより、この段差に起因するローラー本体16の変形等が抑えられ、形状や寸法についての精度が高めることによって搬送ムラが防止される。
なお、円筒状の中空パイプからなる搬送ローラー15(ローラー本体16)の継ぎ目については、前述の例以外にも、例えば図30(a)に示すように折曲部88における交差部88aを、ローラー本体16の中心軸に対して非平行とし、折曲部88における凸片88bの先端側の角度αを鈍角(180°未満)に形成してもよい。このようにすれば、金属板のプレス加工において一対の端面を近接させた際、凸片88bの先端を対応する凹部に嵌合させ易くなり、したがって、ローラー本体16に歪みや捩れ等が生じるのを抑制することができる。
また、図27(c)に示したように折曲部85を両端部のみに形成した構造において、折曲部85を、例えば図30(b)に示すように図24(a)に示した曲線からなる波線89aに代えてもよく、さらに、図30(c)に示すように図25(a)に示した折れ曲がった波線89bに代えてもよい。
また、図27(a)に示した矩形波状の折曲部85と、図30(b)に示した曲線からなる波線89aとを組み合わせて継ぎ目を形成してもよく、矩形波状の折曲部85と、図30(c)に示した折れ曲がった波線89bとを組み合わせて継ぎ目を形成してもよい。
また、上記実施形態のローラー本体16において、例えば図31(a)に示すように、繋ぎ目80においてスポット溶接部SPが形成されているようにしても構わない。スポット溶接部SPは、例えばレーザー光を照射してローラー本体16(金属板)の一部を溶解させることで形成されている。勿論、スポット溶接部SPがレーザー光の照射以外の手法によって形成された構成であっても構わない。
スポット溶接部SPは、繋ぎ目80全体に対して施された溶接とは異なり、繋ぎ目80の一部分に形成された溶接部分である。図31(a)では、ほぼ円形の領域に形成された状態が示されているが、必ずしもこの形状に限定されることは無い。例えば繋ぎ目80の形成方向にやや膨張した状態(例えば楕円形など)の領域に形成されている構成でも構わない。
スポット溶接部SPは、繋ぎ目80において例えば複数の位置に設けられている。例えば、図31(a)に示すように、ローラー本体16のうち軸受26によって支持される位置よりも当該ローラー本体16の回転軸方向の端部側の位置にスポット溶接部SPが設けられている。また、軸受26によって支持される位置と高摩擦層50が形成される位置との間の位置にもスポット溶接部SPが設けられている。
なお、図31(a)には、ローラー本体16の両端部のうち一方の端部のみを示しているが、他方の端部においても同様にスポット溶接部SPが形成されている。また、スポット溶接部SPは、ローラー本体16のうち上記の搬送駆動ギア35及びインナーギア39に接続される部分の近傍に配置されていても良い。また、スポット溶接部SPが軸受26よりも高摩擦層50側に配置される場合には、例えば従動ローラー17によって押圧される部分から外れた部分に配置することが好ましい。
このようなスポット溶接部SPを形成する工程(スポット溶接工程)は、例えば順送プレス工程の後、センターレス研磨工程の前に行うことができる。この場合、順送プレス工程によって形成されたローラー本体16の繋ぎ目80に対してスポット溶接加工を行う。溶接工程は、繋ぎ目80にスポット溶接部SPを形成することにより、当該スポット溶接部SPにおける繋ぎ目80の強度を高めるために行われる。この構成では、例えば図31(b)に示すように、レーザー照射装置LAからスポット形成領域SAに対してレーザー光Lを射出し、当該スポット形成領域SAを溶融させる。
スポット形成領域SAでは、溶融した金属板Mの一部が当該金属板Mの端部61a及び61bを接続した状態で固化し、スポット溶接部SPが形成される。本実施形態では、レーザー光Lを照射して金属板Mの一部を溶解させる例を示したが、勿論これに限定されるものではない。例えば、他の手法によって金属板Mを溶解させる(例えば熱を加える、など)ようにしても構わない。
なお、このスポット溶接工程の後、例えばローラー本体16に対して荒センターレス工程を行うようにしても構わない。荒センターレス工程は、例えば上記実施形態におけるセンターレス研磨工程に比べて簡易的に行う研磨工程である。荒センターレス工程では、例えば処理時間がセンターレス研磨工程に比べて短い時間で行うようにする。また、荒センターレス工程で用いる砥石部材についても、センターレス研磨工程で用いる砥石部材GDほどの研磨能力を有していなくても構わない。
また、以下においてスポット溶接部SPに関する例を述べる。
上記実施形態では、繋ぎ目80が直線状に形成されたローラー本体16に対してスポット溶接部SPを形成した例を示したが、勿論これに限られることは無い。例えば、直線状の繋ぎ目80以外に、例えば上記した各形状の繋ぎ目80に対しても、スポット溶接部SPを好適に形成することができる。
また、例えば、図32に示すように、回転駆動部との接続部73Dが端部に形成された搬送ローラー15のローラー本体16においては、スポット溶接部SPは、接続部73Dの近傍(例えば接続部73Dと軸受26との間)に設けられる構成とすることが好ましい。
また、例えば繋ぎ目80において凹凸部110が形成されている場合においても、本発明の適用が可能である。図32に示すように、凹凸部110は、金属板Mの一方の端部61aと他方の端部61bとを嵌合させるように矩形に形成されている。凹凸部110は、例えばローラー本体16の回転軸方向に沿った第一辺110aと、ローラー本体16の周方向に沿った一対の第二辺110bとを有している。
この場合、スポット溶接部SPは、例えば第一辺110a及び第二辺110bの少なくとも一方に設けられた構成とすることが好ましい。例えば第一辺110aにスポット溶接部SPを形成することにより、凹凸部110は例えばローラー本体16の周方向の力に対して強度が高くなる。このため、例えば凹凸部110が当該周方向に開いたり、内部に窪んだりするのを防ぐことができる。
また、第二辺110bにスポット溶接部SPを形成する場合、形成位置の位置合わせが行いやすくなるため、容易に形成することができる。勿論、第二辺110bにスポット溶接部SPを形成した場合においても、ローラー本体16の周方向の力に対して強度を向上させることができる。また、第一辺110a及び第二辺110bの全ての辺に設けられた構成としても構わない。
また、繋ぎ目80の直線部80aと凹凸部110との境界部分110cにスポット溶接部SPを形成しても構わない。例えば境界部分110cは、凹凸部110からの力が加わりやすくなっている。このため、スポット溶接部SPを設けて境界部分110cの強度を向上させることにより、凹凸部110における変形をより確実に防ぐことができる。
なお、図32には、当該凹凸部110が例えば接続部73Dと軸受26との間に配置される場合を例に挙げて説明したが、勿論この構成に限られることは無い。例えば凹凸部110が軸受26よりも高摩擦層50側に形成される場合であっても、上記同様に凹凸部110にスポット溶接部SPを好適に形成することができる。
また、金属板Mをプレス加工によって円筒状に形成する際に、図33(a)に示すように金属板Mの一方の端部61aと他方の端部61bとがローラー本体16の外面16a側において当接するように金属板Mを形成することもできる。この場合、図33(b)に示すように、ローラー本体16の外面16a側からレーザー光などのエネルギーを加えてスポット溶接部SPを形成するため、外面16a側が当接していると、スポット溶接部SPの仕上がり状態が良好となる。
また、上記説明においては、ローラー本体16に形成された接続部が繋ぎ目80に係るように形成された構成を例に挙げたが、これに限られるものでは無い。例えば、図34に示すように、被接続部である切欠部73が、繋ぎ目80から外れた位置(非配置位置)に設けられた構成であっても構わない。図34においては、切欠部73は、繋ぎ目80と対向する位置、すなわちローラー本体16の中心軸を挟んで繋ぎ目80の反対側の位置に設けられている。
搬送ローラー15が回転すると、当該搬送ローラー15には当該回転とは逆の方向で働く第3駆動ギアからの付勢力が働く。これに対して、上記構成によれば、第1端部61aと第2端部61bとが互いに離間させるように作用しないこととなる。これにより、ローラー本体16の変形を防止できるという効果がある。
また、上記説明においては、順送プレス工程の曲げ加工において、平板部60の内側に配置する芯型147が断面視円形である構成を例に挙げて説明したが、これに限られることは無い。
図35(a)〜図35(c)、及び、図36(a)〜図36(c)は、曲げ加工工程の他の例を示す図である。図35(a)〜図35(c)に示すように、第1上型(金型)205及び第2上型(金型)206と、下型207との間に断面視略C字状に成形された平板部60を配置し、且つ、平板部60の内側に円柱状の芯金(芯部材)208を配置する。
芯金208は、略丸棒状の部材である。芯金208は、その外周面208aの、円筒状に成形されたときの平板部60の第1端部61a及び第2端部61b(図36(c)参照)に対応する箇所を切り欠いた切欠部208bを備えている。切欠部208bは、芯金208の軸方向と平行して延在し、且つ芯金208の全長に亘って形成されている。また、切欠部208bは、芯金208の径方向外側に臨む平面208cを有している。平面208cは切削加工等で容易に形成できるため、芯金208に対して切欠部208bを容易に且つ低コストで形成することができる。切欠部208bの径方向での切欠き深さtは、芯金208の全長に亘り略同一の深さで形成されている。切欠き深さtは、平板部60における第1端部61a及び第2端部61bに必要な押し込み量に応じて設定されている。
第1上型205、第2上型206及び下型207は、プレス時に平板部60と接するプレス面205a、206a及び207aをそれぞれ備えている。プレス面205a、206aには、芯金208の切欠部208bに応じて平面状に形成された平面部205b、206bがそれぞれ形成されている。平面部205b、206bは、切欠部208bの平面208cと対向し且つ略平行している。なお、第1上型205及び第2上型206は、互いに独立して移動可能である。
次に、図36(a)に示すように、芯金208を静止させた状態で、第1上型205を下型207に向かって移動させ、平板部60の第1端部61a側を押圧し、略半円状に曲げる。なお、第1上型205及び第2上型206と同様に、下型207を一対の割型とし、図36(a)に示す工程の際に、第1上型205と同じ側の下型を第1上型205に向かって移動させてもよい。
次に、図36(b)に示すように、芯金208を下型207に向けて多少移動させるとともに、第2上型206を下型207に向かって移動させ、平板部60の第2端部61b側を押圧し、略半円状に曲げる。
次に、図36(c)に示すように、第1上型205、第2上型206及び芯金208をともに下型207に向かって移動させ、平板部60を押圧する。このとき、第1上型205及び第2上型206は、下型207に当接している。この押圧により、平板部60は略円筒状に成形され、平板部60からローラー本体16が成形される。
ここで、芯金208には切欠部208bが形成され、第1上型205及び第2上型206には平面部205b、206bが形成されている。そのため、平面部205b、206bは、平板部60の端面61a、61b及びそれらの周辺を、径方向内側に押し込むことができる。よって、平板部60を円筒状に成形したときに、端面61a、61b及びそれらの周辺が外側に膨らむことを防止することができる。よって、曲げ加工の終了時における、ローラー本体16の真円度を向上させることができる。
なお、端面61a、61b及びそれらの周辺は、他の部分よりも内側に押し込まれるのであるが、平板部60は弾性を有しており、曲げ加工の終了時には戻り(スプリングバック)が生じる。また、切欠部208bの切欠き深さtは、上記戻りを考慮した深さに設定されているため、端面61a、61b及びそれらの周辺を内側に押し込みすぎることもなく、曲げ加工の終了時にローラー本体16の真円度を逆に低下させる虞もない。
この工程で、端面61a、61bの外周面31a側は互いに隙間なく当接する。さらに、端面61a、61bを内側に押し込むことで、端面61a、61bの外周面31a側をより当接させやすくなる。本実施形態では、端面61a、61bと内周面31bとで形成される角度をそれぞれ90°より大きくするための端面調整加工を施しているが、端面61a、61b及びそれらの周辺を内側に押し込むことで端面61a、61bの外周面31a側を互いに隙間なく当接させることができる場合には、上記端面調整加工を施さずともよい。また、端面調整加工の程度を、押し込みを実施しない場合に比べて減少させることもできる。一方、端面61a、61bの間の内周面31b側には、隙間277が形成される。
また、本実施形態では、第1上型205及び第2上型206には平面部205b、206bがそれぞれ形成されているが、切欠部208bを形成するのみで端面61a、61b及びそれらの周辺を十分内側に付勢できる場合には、平面部205b、206bを形成せずともよい。この場合でも、端面61a、61b及びそれらの周辺は芯金208からサポートされず、内側に押し込まれる。
なお、ローラー本体16(搬送ローラー15)は、鋼板コイルによる巻きぐせが残った大型金属板60を用いて成形されるので、コイルの内周側であった面がローラー本体16の内周面となるように成形することが好ましい。すなわち、鋼板コイルによる大型金属板60の巻きぐせは、鋼板コイルの内周面であった面が凹面となるような反りである。つまり、ローラー本体16を成形する大型金属板60には、ローラー本体16の内周面側に反るような巻きぐせが残っている。
そのため、少なくともローラー本体16の繋ぎ目36を開く方向には巻きぐせが作用しなくなる。したがって、ローラー本体16の外周面側に反るような巻きぐせが残っている場合と比較して、ローラー本体16の繋ぎ目80を開き難くするができる。これにより、ローラー本体16の繋ぎ目80を開く方向に応力が作用した場合であっても、繋ぎ目80が開くことを防止することができ、高い搬送精度が得られる搬送ローラー15が得られる。
なお、上述した芯金208の代わりに、その変形例である第2芯金(芯部材)208A又は第3芯金(芯部材)208Bを使用してもよい。芯金208の第1の変形例である第2芯金208Aについて図37を参照して説明し、第2の変形例である第3芯金208Bについて図38を参照して説明する。図37は、芯金の第1の変形例を示す概略図であって、(a)は側面図、(b)は(a)のE−E線視断面図、(c)は(a)のH−H線視断面図である。図38は、芯金の第2の変形例を示す概略図であって、(a)は側面図、(b)は(a)のI−I視断面図、(c)は(a)のJ−J線視断面図である。
まず、第2芯金208Aを説明する。図37(a)では、説明のため搬送ローラー15と第2芯金208Aとを並べて記載している。第2芯金208Aは、その外周面208aの、搬送ローラー15の保持領域Fに対応する箇所を切り欠いた切欠部208dを備えている。切欠部208dは、第2芯金208Aの軸方向に略平行して、且つ保持領域Fから搬送ローラー15の両端側に多少拡大した範囲に形成されている。これは、記録紙Pを保持する領域である保持領域Fに対して、曲げの効果や応力等の影響を均一化するためである。
図37(b)に示すように、第2芯金208Aにおける搬送ローラー15の両端部に対応する部分では、その断面形状は略円形となっている。図37(c)に示すように、切欠部208dは、径方向外側に臨む平面208eを有している。切欠部208dの切欠き深さtは、平板部60の端面34、35及びその周辺の戻りを考慮して設定されている。
平板部60を曲げて円筒状のローラー本体16を成形すると、ローラー本体16の軸方向での中央部、すなわち被搬送物を保持する保持領域Fの部分では両端部に比べて真円度が悪くなる傾向があった。本変形例では、保持領域Fに対応する箇所に切欠部208dが設けられるため、保持領域Fにおいて端面61a、61b及びその周辺を径方向内側に積極的に付勢し、曲げ工程終了時のローラー本体16の真円度を効果的に向上させることができる。
次に、第3芯金208Bを説明する。図38(a)では、説明のため搬送ローラー15と第3芯金208Bとを並べて記載している。第3芯金208Bは、その外周面208aの、搬送ローラー15に対応する箇所を切り欠いた切欠部208fを備えている。
図38(b)、(c)に示すように、切欠部208fは、搬送ローラー15の中央部に対応する箇所の第1切欠き深さt1が、搬送ローラー15の両端部に対応する箇所の第2切欠き深さt2よりも大きくなっている。また、第1切欠き深さt1は、搬送ローラー15の両端部に向かうに従い漸次小さくなり、第2切欠き深さt2となっている。なお、切欠き深さを段階的に変化させてもよい。
第3芯金208Bにおける搬送ローラー15の中央部に対応する箇所の第1切欠き深さt1が、搬送ローラー15の両端部に対応する箇所での第2切欠き深さt2よりも大きいため、中央部に対応する箇所において端面61a、61b及びその周辺を径方向内側に積極的に付勢し、曲げ工程終了時のローラー本体16の真円度を効果的に向上させることができる。
また、上記説明においては、ローラー本体16の厚さが均一な構成を例に挙げたが、これに限られることは無く、ローラー本体16の位置に応じて厚さを変化させる構成であっても構わない。図39は、ローラー本体16の軸心O1と直交する断面形状を示す図である。
図39に示す断面形状においてローラー本体16は、繋ぎ目80と軸心O1とを通る第1直線CL1において互いに対向する第1軸心対向部160の厚みTh1が、軸心O1において第1直線CL1と直交する第2直線CL2において互いに対向する第2軸心対向部161の厚みTh2よりも小さく構成されている。すなわち、Th1<Th2の関係となっている。
なお、第1軸心対向部160とは、繋ぎ目80と軸心O1とを通る第1直線CL1において、互いに対向する所定領域におけるローラー本体16の特定部位のことをいう。また、第2軸心対向部161とは、軸心O1において第1直線CL1と直交する第2直線CL2において、互いに対向する所定領域におけるローラー本体16の特定部位のことをいう。
この断面形状において、第1軸心対向部160と第2軸心対向部161とを結ぶ間のローラー本体16の厚みは、第1軸心対向部160から第2軸心対向部161に向かうに従って漸次変化するように構成されている。すなわち、繋ぎ目80が形成された位置を0時位置とすると、該0時位置から3時位置あるいは9時位置に向かうにつれて、ローラー本体16の厚みが厚みTh1から厚みTh2へ連続的に大きくなり、該3時位置あるいは9時位置から6時位置に向かうにつれて、ローラー本体16の厚みが厚みTh2から厚みTh1へ連続的に小さくなっている。
本実施形態では、図39に示す断面形状において、ローラー本体16の外径形状(外周面16aの形状)は、軸心O1を中心とする真円形状である。また、図39に示す断面形状において、ローラー本体16の内径形状(内周面16bの形状)は、軸心O1を中心とする楕円形状である。より詳しくは、ローラー本体16の内径形状は、軸心O1を中心とし、第1直線CL1上に長径が配置され、第2直線CL2上に短径が配置される楕円形状である。
本実施形態のローラー本体16は、図39に示す断面形状において、第1直線CL1に対し線対称の形状、また、第2直線CL2に対し線対称の形状を有する。
第1軸心対向部160の厚みTh1と第2軸心対向部161の厚みTh2との厚み差は、厚みTh2を100%とする時に、10%以上で50%以下の範囲内で設定される。第2軸心対向部161の厚みTh2が1.00mmであれば、厚みTh1と厚みTh2との差は、0.10mm以上で0.50mm以下の範囲内となる。
具体的に本実施形態の例では、厚みTh1と厚みTh2との差は、15%の厚み差である0.15mmに設定されている。すなわち、厚みTh2が1.00mmで、厚みTh1が0.85mmで設定されている。
上記のようなローラー本体16を形成する場合、例えば図40に示すように、プレス工程(曲げ加工工程)により、ローラー本体16の断面形状が第1直線CL1上に長径が配置され、第2直線CL2上に短径が配置される楕円形状となるようにする。この場合、例えば断面視楕円形状の芯材を用いるようにする。
図40に示す断面形状において、第1軸心対向部160が該楕円形状の長径に対応した位置に配置される。また、第2軸心対向部161が該楕円形状の短径に対応した位置に配置される。なお、ローラー本体16の厚みは、略均一となっている。すなわち、第1軸心対向部160の厚みTh1と、第2軸心対向部161の厚みTh2は、略同一である。
次に、このローラー本体16に対して上記実施形態の砥石部材GDを用いてセンターレス研磨加工を行う。この研磨工程では、図39に示す第1軸心対向部160の厚みTh1と第2軸心対向部161の厚みTh2との厚み差に応じて、第1軸心対向部160に対応する部位を優先的に研磨して、削り落とす処理を行う。
このセンターレス研磨加工では、砥石部材GDの回転によって発生した摩擦力により、ローラー本体16が当該砥石部材GDの回転方向とは反対方向に回転しつつ、当該ローラー本体16の外周面16aが研磨されることになる。このため、ローラー本体16の外周面16aのほぼ全面が満遍なく研磨され、該センターレス研磨工程前に比べてローラー本体16の真円度が高まり、振れが少なくなる。
このセンターレス研磨加工では、砥石部材GDの回転によってローラー本体16の突出した部分(図40で2点鎖線で示す仮想真円形状よりも外側に突出した第1軸心対向部160)が優先的に研磨されることとなる。このため、外径形状が楕円形状となったローラー本体16をセンターレス研磨すると、外径形状がなだらかに加工されて真円形状となるが、該真円形状より突出した第1軸心対向部160は第2軸心対向部161よりも多く削り落とされることとなる。これにより、図39に示すように、断面形状において、第2軸心対向部161の厚みTh2より第1軸心対向部160の厚みTh1を小さくでき、且つ、第1軸心対向部160から第2軸心対向部161へと厚みをなだらかに漸次変化させることが可能となる。
また、上記実施形態においては、プレス工程(曲げ加工工程)によって形成されたローラー本体16に残留する応力を調整する工程(応力調整工程)を行うようにしても構わない。この応力調整工程では、ローラー本体16の外周面16aのうち少なくとも高摩擦層50が形成される所定部分に押圧力を加える。本実施形態では、ローラー本体16の外周面16aのほぼ全面に対して押圧力を加える場合を例に挙げて説明する。応力調整工程では、以下の例えば3つの工程のうち少なくとも1つを用いて、ローラー本体16に対して押圧力を加えることができる。
(1)ロールレベラー工程
ロールレベラー工程では、複数の押圧ローラーが用いられる。ここでは、例えば図41(a)に示すように、2つの押圧ローラーR1及びR2を用いた場合を例に挙げて説明する。押圧ローラーR1は、外周面が例えば凸状に形成されている。また、押圧ローラーR2は、外周面が例えば凹状に形成されている。
まず、この押圧ローラーR1及びR2により、ローラー本体16を挟持する。ローラー本体16を挟持した後、当該2つの押圧ローラーR1及びR2によってローラー本体16を押圧しつつ、押圧ローラーR1及びR2を回転させる。この状態で、ローラー本体16と押圧ローラーR1及びR2とを、当該ローラー本体16の中心軸の方向に相対的に移動させる。
例えば、押圧ローラーR1及びR2の位置を固定させておき、ローラー本体16が押圧ローラーR1と押圧ローラーR2との間を通過させる。これにより、ローラー本体16には、第一端部16fから第二端部16sへと順に押圧力が加えられることになる。この押圧力により、ローラー本体16に残留する応力が調整されることになる。
(2)転造工程
次に、転造工程を行う場合を説明する。
転造工程は、2つの転造ローラー201,202を用いた所謂スルーフィード転造(歩み転造、通し転造とも呼ばれている)加工である。
具体的には、図41(b)に示すように、ローラー本体16を挟むように配置された二つの転造ローラー201,202をローラー本体16に対して所定の圧力で押し付けた状態とする。この状態で、二つの転造ローラー201,202を同方向に回転させる。スルーフィード転造においては、転造ローラー201,202が回転することにより、ローラー本体16が転造ローラー201,202の回転方向とは逆方向に回転しながら、軸方向Hに移動する。
転造ローラー201,202の表面には、高摩擦領域50を形成するために、例えば螺旋状の凹部201a,202aが形成されており、凹部201a,202aがローラー本体16の表面を変形させることにより、ローラー本体16の表面には、格子状の凹凸部203が形成される。
このように、ローラー本体16の第一端部16fから第二端部16sへと順に凹凸部203が形成されていく。当該凹凸部203が形成されることにより、ローラー本体16に残留する応力が調整されることになる。なお、当該凹凸部203の深さ(凹凸の段差)については、例えば5μm〜50μmの範囲で適宜設定することができる。
なお、転造工程では、例えば転造ローラー201、202の軸方向の寸法と、ローラー本体16の軸方向の寸法とを等しくすることにより、ローラー本体16の全体に押圧力が加えられることになる。この場合であっても、ローラー本体16に残留する応力が調整されることになる。
(3)回転押圧工程
次に、回転押圧工程を行う場合を説明する。
回転押圧工程は、ローラー本体16に押圧部材を押圧した状態で当該ローラー本体16を回転させ、押圧部材とローラー本体16とを当該ローラー本体16の中心軸方向に相対的に移動させる工程である。
回転押圧工程としては、例えば図41(c)に示すようにローラー本体16を移動させる例が挙げられる。この場合、例えばテーブルTBL上に押圧部材R3、R4を固定させておく。押圧部材R3と押圧部材R4との距離は、例えばローラー本体16の径よりもやや小さくなるように設定しておく。
この状態で、ローラー本体16を回転させつつ、押圧部材R3と押圧部材R4との間にローラー本体16を通過させる。押圧部材R3及び押圧部材R4は、ローラー本体16に対して挟みつけるように押圧する。このため、ローラー本体16の第一端部16fから第二端部16sへと押圧力が加えられることになる。この押圧力により、ローラー本体16に残留する応力が調整される。
また、回転押圧工程として、図41(d)に示すように、ローラー本体16を移動させずに押圧部材R5を移動させる例が挙げられる。この場合、例えばローラー本体16の位置を固定したまま中心軸を中心として回転させる。この状態で、押圧部材R5をローラー本体16に押し当て、押圧部材R5をローラー本体16の中心軸に沿って移動させる。
このため、ローラー本体16の第一端部16fから第二端部16sへと押圧力が加えられることになる。この押圧力により、ローラー本体16に残留する応力が調整される。なお、押圧部材R5の先端(ローラー本体16に当接する部分)は、例えばローラー状に形成されていることが好ましい。
なお、上記の(1)〜(3)の各工程を行う場合に、ローラー本体16の内部に芯部材(不図示)を挿入した状態で当該ローラー本体16に押圧力を加えるようにしても構わない。これにより、ローラー本体16が押圧力によって変形してしまうのを回避することができる。
次に、搬送ローラー15の製造方法の他の例を説明する。図42は、当該製造工程を示すフローチャートである。
図42に示すように、上記に示した各工程のうち、例えばプレス加工工程、スポット溶接工程、荒センターレス工程、応力調整工程、仕上げセンターレス工程(センターレス研磨工程)、メッキ工程及び塗装工程、の順で行うことができる。この場合、工程間の搬送動作などをスムーズに行うことができる。
なお、この製造方法は、あくまでも一例に過ぎない。このため、例えば上記順序とは異なる順序で各工程を行うようにしても構わないし、例えば上記の工程のうち一部の工程を行わないようにしても構わない。また、例えば適宜加熱工程や冷却工程、ローラー本体16に力を加える工程など、上記各工程とは異なる他の工程を上記順序の中で適宜挿入しても構わない。
また、例えば図43に示すように、上記実施形態の構成に加えて、長さ方向(軸方向)で記録紙Pに当接して搬送する搬送領域CAを規定し、当該搬送領域CAよりも一端側(図43中、左側)に搬送駆動ギア35と、インナーギア36とが設けられ、搬送領域CAよりも他端側(図43中、左側)に第3駆動ギア37が設けられた構成とすることができる。
搬送駆動ギア35は、搬送ローラー15を回転させるためのギアであって、搬送ローラー15における駆動部6設置側の端部に、圧入によって一体的に接続されている。また、搬送駆動ギア35はピニオン33と互いに噛合しており、ピニオン33及び搬送駆動ギア35を介して搬送モーター32の駆動力が搬送ローラー15に伝達され、搬送ローラー15が回転する構成となっている。インナーギア39は、搬送モーター32の駆動力を処理装置としての排紙ローラー27に伝達するためのギアであって、搬送駆動ギア35よりも小さい径を有し、搬送駆動ギア35と隣接して同軸で配置されている。
第3駆動ギア37は、搬送ローラー15の回転駆動力を他の機器38、例えば噴射ヘッド51のノズルを覆って(キャッピング)吸引するためのポンプに伝達するものである。より詳細には、第3駆動ギア37を介して回転駆動力が伝達される機器としては、搬送ローラー15が記録紙Pを搬送する際には非作動となる機器が設定されている。
排紙ローラー27における駆動部6側の端部には、排紙駆動ギア43が一体的に設けられている。また、排紙駆動ギア43とインナーギア39との間には、中間ギア41が設けられ、中間ギア41はインナーギア39及び排紙駆動ギア43のそれぞれと噛合している。すなわち、インナーギア39、中間ギア41及び排紙駆動ギア43を介して、搬送モーター32の駆動力が排紙ローラー27に伝達され、排紙ローラー27が回転することにより、印刷に関する処理として排紙処理が行われる構成となっている。
搬送駆動ギア35及びインナーギア39の双方が搬送ローラー15の搬送領域CAよりも一端側に配置されているため、記録用紙Pの搬送精度及び印刷精度の低下を抑制することが可能になる。また、これら搬送駆動ギア35及びインナーギア39が配設されている搬送ローラー15の一端側における繋ぎ目80を、例えば図44に示すように、凹凸部の嵌合により形成される屈曲部85とし、繋ぎ目80が交差部85aを有する構成とすることにより、繋ぎ目80が中心軸16c方向にずれることを防止できる。そのため、搬送ローラー15(ローラー本体16)の変形を抑制することができ、変形に起因する搬送ローラー15の搬送精度低下も抑制可能である。
なお、排紙ローラー27の回転駆動は、搬送駆動ギア35を介して搬送ローラー15に伝達された搬送モーター32の駆動力がインナーギア39を介して伝達され、搬送ローラー15の駆動による記録用紙Pの搬送処理の間にも行われる。これら搬送駆動ギア35及びインナーギア39は、いずれも搬送ローラー15の搬送領域CAよりも一端側に配置されているため、搬送ローラー15(ローラー本体16)に加わるトルクは搬送領域CAには作用しない。そのため、搬送領域CAにおける繋ぎ目80(中央直線部86)にずれが生じず、従って、記録用紙Pが斜めに搬送されてしまう等の不具合を生じさせず、搬送精度、ひいては印刷精度が低下することを抑制できる。
一方、搬送駆動ギア35を介して搬送ローラー15に伝達された搬送モーター32の駆動力は、第3駆動ギア37を介して他の機器38に伝達される。この場合、第3駆動ギア37は、搬送領域CAを挟んで搬送駆動ギア35と逆側である搬送ローラー15の他端側に配置されているため、搬送領域CAには他の機器38の動作に応じたトルクが加わることになるが、第3駆動ギア37は搬送ローラー15が記録用紙Pを搬送する際には非作動となる機器38に連結されているため、機器38の作動時には記録用紙Pの搬送は行われず、従って搬送精度、ひいては印刷精度が低下することはない。さらに、この構成によれば、搬送領域CAにおける搬送ローラー15の繋ぎ目80が中央直線部86であり、繋ぎ目80の長さが最小限に抑えられていることから、繋ぎ目80に起因する搬送精度及び印刷精度の低下を一層抑制することができる。
このように、搬送駆動ギア35及びインナーギア39の双方が搬送ローラー15の搬送領域CAよりも一端側に配置されているため、記録用紙Pの搬送精度及び印刷精度の低下を抑制することが可能になる。また、これら搬送駆動ギア35及びインナーギア39が配設されている搬送ローラー15の一端側における繋ぎ目80が凹凸部の嵌合により形成される屈曲部85となっており、繋ぎ目80が交差部85aを有しているため、繋ぎ目80が中心軸16c方向にずれることを防止できる。そのため、搬送ローラー15(ローラー本体16)の変形を抑制することができ、変形に起因する搬送ローラー15の搬送精度低下も抑制可能である。
また、搬送ローラー15の他端側に設けられた第3駆動ギア37に、搬送ローラー15が記録用紙Pを搬送する際には非作動となる機器38を接続することにより、搬送精度の低下を招くことなく搬送モーター32の駆動力を効率的に利用することが可能になり、装置の小型化及び低価格化に寄与できる。しかも、第3駆動ギア37が配設されている搬送ローラー15の他端側における繋ぎ目80も、交差部85bを有しているため、繋ぎ目80が中心軸16c方向にずれることを防止できる。そのため、搬送ローラー15(ローラー本体16)の変形を抑制することができ、変形に起因する搬送ローラー15の搬送精度低下も抑制可能である。