JP2011224499A - 糖又はその誘導体の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】より迅速にかつ高効率にリグノセルロース系実バイオマスを分解糖化して糖又はその誘導体を製造する方法を提供する。
【解決手段】固体酸触媒とリグノセルロース系実バイオマスとを、マイクロ波の照射下で接触させて、前記リグノセルロース系実バイオマスを分解して糖化する。
【選択図】なし

Description

本発明は、糖又はその誘導体の製造方法に関し、特にセルロース系バイオマスを分解して糖化することにより、糖又はその誘導体を製造するのに好ましい方法に関する。
近年、セルロースなどの植物等が生産する循環利用可能なバイオマスを有用物質に変換して利用することが試みられている。セルロースを利用する場合、セルロースをその構成単糖、オリゴ糖又はこれらの誘導体にまで分解することが好ましい。こうして得られる分解物は、多くの微生物を始めとする生物が代謝可能であるほか、工業的に利用が容易になる。
セルロースは、天然には、セルロースの結晶構造を含むとともに、ヘミセルロース及び複雑な三次元構造を有するリグニンと複合化(以下、こうした複合構造を有するセルロース系材料をリグノセルロース系実バイオマスと称する。)して植物体中に存在している。このため、セルロースは難分解性である。また、セルロースの分解方法には、従来より、セルロース分解性微生物等に由来する酵素を用いる酵素法、硫酸を用いる硫酸法等がある。しかしながら、酵素法では、分解速度が遅く、植物体中のセルロース、すなわち、リグノセルロース系実バイオマス中のセルロースを分解するのにあたり、こうした実バイオマスの前処理が必須であった。また、酵素が高価であるため、高い生産性を得ることができていなかった。一方、硫酸法では、リグノセルロース系実バイオマスに対して直接処理が可能であるが、セルロースの糖化物の分離に多くのプロセスを要するほか、過度に分解される傾向があった。
そこで、近年、リグノセルロース系実バイオマス中のセルロースの糖化を容易にするために、リグノセルロース系実バイオマスの前処理方法や、分解活性の高い触媒などの開発が進められている。例えば、リグノセルロース系実バイオマスをマイクロ波で前処理した後、酵素で分解する方法が各種試みられている(非特許文献1、2)。また、固体触媒を用いてリグノセルロース系実バイオマスを糖化する方法(非特許文献3)も試みられている。さらに、リグノセルロース系実バイオマスをメカノケミカル処理による前処理により酵素糖化を促進する検討もなされている(非特許文献4)。
Process Biochemistry, 40, 3082-3086 (2005) Biosystems Engineering, 93, 279-283 (2006) Angew. Chem. Int. Ed., 45, 5161-5163 (2006) J. Jpn. Pet. Inst., Vol.51, No.5, 264-273(2008)
しかしながら、マイクロ波で前処理することでリグノセルロース系実バイオマスからセルロースの分離が促進されるものの、最終的に酵素処理して得られる変換効率は、プロセス及び酵素コストを考慮すると優れているとはいえなかった。また、固体触媒を用いる場合であっても、高い変換効率を得られていなかった。さらに、メカノケミカル処理を用いても、依然として前処理時間も酵素処理時間も相当程度有し、効率的な糖化は困難であった。
そこで、本発明は、より迅速にかつ高効率にリグノセルロース系実バイオマスを分解糖化して糖又はその誘導体を製造する方法を提供することをその目的とする。
本発明者らは、リグノセルロース系実バイオマスと固体酸触媒とをマイクロ波照射下に接触させることで、予想を超えて糖化反応を促進でき、リグノセルロース系実バイオマスに対する前処理がなくてもセルロース及びヘミセルロースを迅速にかつ高効率に分解糖化できることを見出し、本発明を完成した。本発明によれば、以下の手段が提供される。
本発明によれば、固体酸触媒とリグノセルロース系実バイオマスとを、マイクロ波の照射下で接触させて、前記リグノセルロース系実バイオマスを分解して糖化する工程、を備える、糖又はその誘導体の製造方法が提供される。この製造方法において、前記リグノセルロース系実バイオマスの平均粒子径は、10μm以上10mm以下であってもよい。また、前記リグノセルロース系実バイオマスと前記固体酸触媒とは、130℃以上200℃以下で接触させてもよい。この製造方法によれば、セルロースからグルコース、その二糖及びオリゴ糖を取得でき、ヘミセルロースからキシロース、その二糖及びオリゴ糖を取得できる。
さらに、前記固体酸触媒は、ブレンステッド酸点を有する固体であることが好ましく、前記ブレンステッド酸点は、−OH基、−COH基及び−SOH基からなる群から選択される1種又は2種以上とすることができる。前記固体酸触媒として酸化グラファイト(GO)を備えることが好ましい。また、−SOH基を有するグラフェンも好ましい。
本発明の製造方法においては、前記糖化工程は、反応室として空胴共振器を備えるマイクロ波照射装置を用いることが好ましい。
本発明によれば、リグノセルロース系実バイオマスからのヘミセルロースの糖化物の製造方法であって、リグノセルロース系実バイオマスと固体酸触媒とをマイクロ波照射下に接触させてリグノセルロース系実バイオマス中のキシロースを糖化する糖化工程を備える、方法が提供される。マイクロ波照射下においてリグノセルロース系実バイオマスと固体酸触媒とを接触させることで、ヘミセルロースを効率的に分解できる。
スギ微粉末と固体酸触媒とのマイクロ波照射下での糖化結果を示す図である。 スギ微粉末と固体酸触媒とのオイルバスを用いた糖化結果を示す図である。 ユーカリ微粉末とユーカリ粗粉末と固体酸触媒とをマイクロ波の照射下、160℃で接触させたときの糖化結果を示す図である。 ユーカリ微粉末とユーカリ粗粉末とのオイルバスでの160℃での糖化結果を示す図である。 バガス1微粉末の反応温度とグルコース糖化率及びキシロース糖化率との関係を示す図である。 バガス2微粉末とバガス2粗粉末の反応温度とグルコース糖化率及びキシロース糖化率との関係を示す図である。
本発明は、リグノセルロース系実バイオマスからの糖及びその誘導体の製造方法に関する。本発明によれば、効率的にリグノセルロース系実バイオマスを分解して、糖又はその誘導体を製造することができる。より具体的には、リグノセルロース系実バイオマスに対する粉砕等の前処理を抑制しつつ、リグノセルロース系実バイオマスからグルコース及びキシロースを迅速に得ることができる。すなわち、本発明者らは、リグノセルロース系実バイオマスの粗粉末と微粉末とにつき、それぞれ固体酸触媒の存在下でマイクロ波処理を行ったところ、意外にも、リグノセルロース系実バイオマスの粒子径にかかわらず、ほぼ同等の変換効率挙動を示すことを見出したのである。このことは、従前、リグノセルロース系実バイオマスの粉末の粒子サイズがその後の糖化効率に大きく影響するとの当業者の常識を大きく覆すものであった。
本発明者らは、固体酸触媒とマイクロ波の照射によるリグノセルロース系実バイオマスの分解性能の向上は、固体酸触媒とマイクロ波の照射との相乗効果によるものと推論している。すなわち、リグノセルロース系実バイオマスが固体酸触媒に配位又は吸着することで、リグノセルロース系実バイオマスにおける分子会結合が弱められ、水酸基などの極性官能基を有するものは、水素結合による分子間相互作用により反応速度が増大すると考えられる。
一方、極性基を有する分子など、双極子を有する分子は、マイクロ波を選択的に吸収して回転運動などのエネルギーを得るとともに分極が促進される。また、マイクロ波反応場において、双極子を有する分子は、マイクロ波を選択的に吸収して、回転又は振動による摩擦熱によって急速に加熱される。特に、水酸基を有する場合、その効果が大きくなると考えられ、水、セルロース、固体酸触媒はいずれも水酸基を有しているため、マイクロ波の吸収が大きく、相乗効果により反応速度の増大が促進されると考えられる。さらに、マイクロ波加熱は、従来の外部加熱に比較して活性化エネルギーを低減できるほか、リグノセルロース系実バイオマス及び固体酸触媒はいずれも誘電体であって電界中で反応が進行する。このような作用の相乗効果により、化学結合(グリコシド結合など)を切断する反応(加水分解反応)が促進されるものと考えられる。なお、以上の推論は、本発明を拘束するものではない。
本明細書に開示される製造方法によれば、リグノセルロース系実バイオマスを従来に比して迅速かつ低温で効率的に分解できる。特に、平均粒子径が100μm未満の微粉砕試料でなくとも効率的に分解できる。また、マイクロ波の照射によれば、急速加熱冷却が可能であるため、分解物の過度な分解を抑制できるため、高収率で高品質な糖化が期待できる。さらに、反応後、濾過または遠心分離等の従来の固液分離手段により、容易に糖化物を含有する液体(溶液)を分離できるとともに、固体酸触媒も反応系から分離回収できる。さらに、回収した触媒の繰り返し利用も容易である。さらにまた、硫酸などの化学薬品を使わなくても糖化できるため方法は、環境負荷が少なくて済むといったメリットがある。また、マイクロ波はリグニンを選択的に低分子化できるため、実バイオマスからのセルロースの分解、糖化を促進することもできる。以下、本発明の実施するための形態について詳細に説明する。
(糖又はその誘導体の製造方法)
本発明の製造方法は、固体酸触媒とリグノセルロース系実バイオマスとをマイクロ波の照射下で接触させてリグノセルロース系実バイオマスを分解して糖化する工程を備えることができる。この結果、再生産可能な又は未利用資源であるリグノセルロース系実バイオマスを、多くの生物が代謝可能な有用物質であり、工業的に有用な工業材料に変換可能な有用物質でもあるグルコースやキシロースなどの単糖、オリゴ糖又はその誘導体に効率的に変換することができる。
(リグノセルロース系実バイオマス)
本発明においてリグノセルロース系実バイオマスは、少なくともセルロースを含むとともに、ヘミセルロース及びリグニンを有し、植物体におけるこれらの複合構造を有している材料をいう。ここで、セルロースとしては、グルコースがβ-1,4-グリコシド結合により重合した重合体及びその誘導体が挙げられる。グルコースの重合度は特に限定しない。セルロースは、結晶性セルロースであってもよいし、非結晶性セルロースであってもよい。また、誘導体としては、カルボキシメチル化、アルデヒド化、若しくはエステル化などの誘導体が挙げられる。また、セルロースは、その部分分解物である、セロオリゴ糖、セロビオースであってもよい。さらに、セルロースは、配糖体であるβ−グルコシド、さらにペクチンなどとの複合体であってもよい。
リグノセルロース系実バイオマスとしては、例えば、スギ、ヒノキ、ユーカリなどの木本植物の木質部や葉部及び草本植物の葉、茎、根等においてリグニン等を複合した状態のリグノセルロース系材料が挙げられる。こうしたリグノセルロース系材料としては、例えば、稲ワラ、麦ワラ、トウモロコシの茎葉、バガス等の農業廃棄物、収集された木、枝、枯葉等又はこれらを解繊して得られるチップ、おがくず、チップなどの製材工場廃材、間伐材や被害木などの林地残材、建設廃材等の廃棄物であってもよい。
リグノセルロース系実バイオマスは、その平均粒子径が、10μm以上10mm以下であることが好ましい。この範囲であっても、リグノセルロース系実バイオマスは効率的に分解される。より好ましくは100μm以上10mm以下である。平均粒子径が100μm未満とするには、エネルギーコストがかかり、平均粒子径が10mmを超えて大きくなりすぎると、糖化率が低下する傾向があるからである。粉砕処理のエネルギーコストを考慮すると、より好ましくは、150μm以上であり、さらに好ましくは200μm以上であり、一層好ましくは250μm以上であり、さらに一層好ましくは500μm以上である。また、糖化率を考慮すると、その上限は、8mm以下であることがより好ましく、6mm以下であることがさらに好ましく、5mm以下であることがより一層好ましく、4mm以下であることがさらに一層好ましく、2mm以下であることも好ましい。なお、こうした平均粒子径のリグノセルロース系実バイオマスは、振動ミルなどの当業者に公知の粉砕方法により適当な時間粉砕することにより取得できる。
リグノセルロース系実バイオマスの平均粒子径は、例えば、ふるい分け法又はレーザー回折散乱法が用いられる。例えば、複数のふるいをもちいて試料をふるった後、ふるい上の残留した粉末重量を測定し、重量分率を算出し、積算百分率の50%で示した。特に、微粉末にあっては、レーザー回折散乱法を併用して、ふるい分け法と同程度の平均粒子径を測定結果として取得できることを確認している。
(固体酸触媒)
本発明において用いる固体酸触媒は、リグノセルロース系実バイオマスを分解できる活性を有する固体酸触媒であれば特に限定されない。固体酸触媒は、リグノセルロース系実バイオマス中のセルロースを分解する観点からは、少なくともグルコース間のβ−1、4グリコシド結合を切断する活性を有することが好ましい。また、各種ヘミセルロースを分解する観点からは、こうしたヘミセルロースの構成単糖間のグリコシド結合を切断する活性を有することが好ましい。
固体酸触媒としては、ブレンステッド酸点を有していることが好ましい。ブレンステッド酸点を有していることで、双極子ブレンステッド酸点としては、例えば、−OH基、−COH基、及び−SO3H基及びPO3H基等の酸素酸が挙げられるが、これらに限定するものではない。好ましくは、−COH基及び−SO3H基である。これらのブレンステッド酸点を有するカーボン系固体材料は、リグノセルロース系実バイオマスの分解に有効であるからである。なお、「固体酸触媒がブレンステッド酸点を有する」とは、固体酸触媒が水の存在下においてブレンステッド酸点を有する場合も包含している。すなわち、水の存在下において、固体酸触媒上のある要素(官能基やイオン等)が水酸化物イオン液体を強く引き付ける結果、酸点として機能することになるような部位であってもよい。なお、固体酸触媒が、ブレンステッド酸点を有しているかどうかは、赤外分光法を用いる公知の手法によって可能である。例えば、固体酸触媒の表面にピリジンを吸着させて、ブレンステッド酸点に吸着するピリジニウムイオンの特定吸収(1540cm-1)を検出することによって可能である。
なお、固体酸触媒は、上記のようなブレンステッド酸点のほか、ルイス酸点等を含むほかの触媒活性部位を備える多元的触媒であってもよい。基質の種類に応じて、活性部位は適宜選択される。なお、マイクロ波照射の効果を考慮すると活性部位は、いずれも双極子を有する触媒活性部位であることが好ましい。
固体酸触媒としては、例えば、カーボン系固体材料、珪酸塩化合物、及び固体超強酸が挙げられる。これらは、マイクロ波照射した、セルロース系材料に対して固体酸触媒として機能することができる。固体酸触媒としては、1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
(カーボン系固体材料)
カーボン系固体材料としては、グラフェン、酸化グラファイト、活性炭及びこれらの誘導体等を備えていることが好ましい。なかでも、酸化グラファイト(GO)及びその誘導体、活性炭及びその誘導体が好ましい。こうしたカーボン系固体材料は、いずれも、本来的に表面にブレンステッド酸点を有しているからである。より好ましくは、酸化グラファイトを備えている。また、−SO3H基を有するグラフェンを備えている。
酸化グラファイトとしては、公知の手法により合成されたものを用いることができる。こうした方法としては、例えば、Hummers WS, Offeman RE.J.Am.Chem.Soc.,1958,80,1339, Brodie BC.Ann.Chim.Phys.1860,59,466、Staudenmaier L.Ber.Dtsch.Chem.Ges.1898,31,1484が挙げられる。典型的には、上記したHummersらの方法とすることができる。具体的には、グラファイト粉末と硝酸ナトリウムとを反応容器に入れ、濃硫酸(d1.84)を適量加えて、氷浴で充分に冷やしながら、酸化剤として過マンガン酸カリウム粉末を1時間程かけて加えたのち、さらに2時間程攪拌する。室温まで戻して攪拌を続けたのち、得られたスラリー状反応混合物を水へゆっくりと加えて、沈殿物を遠心分離により取り出し、洗浄、減圧下乾燥することで酸化グラファイト(GO)を茶褐色粉末として得ることができる。出発原料となるグラファイトは、天然のもの人工のものいずれでも使用可能である。酸化グラファイトは、通常、OH基やCO2H基を備えることができる。
カーボン系固体材料の誘導体、例えば、酸化グラファイトの誘導体の一つであるそのスルホン化物(硫酸化酸化グラファイト(SGO))や−SO3H基を有するグラフェン(グラフェンのスルホン化物)は、公知の文献(「カーボン系固体強酸の合成条件と触媒作用」日本化学会第85回春季大会(2005)、2B5-43、特開2004−238311号公報、特開2009−25283号公報)に記載される方法に基づいて製造できるほか、例えば、酸化グラファイトを発煙硫酸中で加熱処理することにより得ることができる。得られた粉末は、そのH形であることが好ましい。
例えば、酸化グラファイト及びそのスルホン化物並びにグラフェンのスルホン化物は、マイクロ波の非照射下ではセルロースの高い分解活性を示すものではないが、マイクロ波の照射下において、高いリグノセルロース系実バイオマス分解活性を示すことができる。したがって、酸化グラファイト及びそのスルホン化物並びにグラフェンのスルホン化物は、マイクロ波照射下において用いる固体酸触媒として好ましく用いられる。
活性炭とは、植物質材料、石炭質材料、石油質材料及び動物質材料から選択される各種の炭素含有材料を化学的又は物理的に処理して活性化した炭素系多孔質材料である。活性炭のスルホン化物は、例えば、活性炭を発煙硫酸中で加熱処理することによって得られる。得られた粉末は、そのH+形であることが好ましい。
(珪酸塩化合物)
珪酸塩化合物は、珪酸塩化合物又はその塩並びにこれらの重合構造を有する化合物を意味している。珪酸塩化合物は天然から採取したものであってもよいし、当該天然物を加工したものであってもよいし、人工的又は半人工的に合成したものであってもよい。好ましくは、二次元又は三次元網状骨格を有する珪酸塩化合物又はその塩の重合構造を有する化合物である。
珪酸塩化合物としては、例えば、粘土鉱物が挙げられる。粘土鉱物は、ポリシロキサン構造を少なくとも一部に有する層状化合物である。粘土鉱物は、一般に、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カルシウム等の金属イオンと珪酸塩化合物が連結しできたシートが層状に形成されている。粘土鉱物としては、例えば、スメクタイト系粘土鉱物、例えばモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、酸性白土等が挙げられる。また、それらを酸処理してH+変性させた変性粘土鉱物も本発明に好適な粘土鉱物として挙げられる。ここでいうH+変性粘土鉱物とは、前記粘土鉱物を原料として用い、高温での酸処理により粘土鉱物の結晶内に含まれる金属イオン(AlやMgなど)を溶出させ、新たに過剰珪酸を作りだしたものであり、水に不溶性でブレンステッド酸性を示すものである。製法例としては、例えば、活性白土は、モンモリロナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物を粗砕し、造粒し、硫酸及び水を加えて90度で数時間処理した後、十分な水洗を行った後、110℃で乾燥して得ることができる。H+変性粘土鉱物は、上記のような合成によるほか商業的に入手が可能である。H+変性粘土鉱物としては、典型的には、活性白土や、K−10モンモリロナイトなどが挙げられる。
珪酸塩化合物としては、また、結晶中に微細孔を有するアルミノケイ酸塩であるゼオライトが挙げられる。ゼオライトは、天然であっても合成であってもよいが、入手容易性や均質性等から合成ゼオライトが好ましく用いられる。ゼオライトとしては、例えば、ZSM−5、モルデナイト、ベータゼオライト、Y型ゼオライト、MCM−22、FSM−16、リン酸アルミニウム縮合物(AlPO4−n)、TS−1、TS−2及びSAPO系等が挙げられる。また、ゼオライトとしては、ゼオライト類縁化合物も含まれ、例えば、メソポーラスシリカ、有機/無機ハイブリッド、有機錯体構造体(Metal-Organic-Framework)なども挙げられる(「多孔体の精密制御と機能・物性評価」サイエンス&テクノロジー株式会社 2008年)。さらに、ゼオライトとしては、公知の方法によりNH4 +型のものを焼成しH+型へ変換したH+型ゼオライトであってもよい。上記各種ゼオライトとしては、商業的に入手が可能であるほか、富永博夫編、「ゼオライトの科学と応用」、講談社サイエンティフィク1987年、小野嘉夫、八嶋建明編「ゼオライトの科学と工学」講談社サイエンティフィク2000年、辰巳敬、西村陽一監修「ゼオライト触媒開発の新展開」シーエムシー出版 2004年等に開示されており、当業者であればこれらの記載に基づいて合成することができる。ゼオライトとしては、各種ゼオライトの1種又は2種以上を適宜選択して用いることができる。
(固体超強酸)
固体超強酸とは、「ハメット酸度関数(H)<−11.93」であり(「超強酸・超強塩基」田部浩三、野依良治共著、講談社サイエンティフィック、1980年)、100%硫酸よりも強い酸強度を呈する固体酸をいう。本発明において用いられる固体超強酸としては、例えば、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、鉄、アルミニウム、ケイ素、またはスズ等の水酸化物もしくは酸化物を担体として硫酸根もしくはタングステン酸化物を担持したものが挙げられる。具体的には、硫酸化ジルコニア(SO/ZrO)や、SO/SnO、SO/HfO、SO/TiO、SO/Al、SO/Fe、SO/SiO、WO/ZrO、MoO/ZrO、WO/SnO、WO/TiO、WO/Fe及びB/ZrOが挙げられる。固体酸触媒としては、こうした固体超強酸から選択される1種又は2種以上が適宜選択して用いられる。
固体超強酸は、例えば、上記のような担体に硫酸根あるいは酸化タングステンの前駆体を担持した後焼成することにより行うことができる。硫酸根の前駆体の例としては、硫酸、硫酸アンモニウム、塩化スルフリル、塩化チオニル、SOガス等を挙げることができ、また、酸化タングステンの前駆体の例としてはメタタングステン酸アンモニウム、パラタングステン酸アンモニウム、12タングストリン酸等を挙げることができる。担持の方法は公知の適当な方法を採用できるが、水などの適当な溶媒に溶解した後、担体を懸濁させ、溶媒を乾燥するなどの方法を採ることができる。塩化スルフリル、塩化チオニルなどの水と反応しやすい前駆体を用いる場合にはヘキサン、塩化メチレンなどの溶媒を用いることが望ましい。例えば、硫酸化ジルコニアは、触媒学会 参照触媒委員会 硫酸化ジルコニア調製法に準処する方法で調製できる。使用前の加熱乾燥および、水中で遊離する硫酸根をあらかじめ洗浄して除いておくことが望ましい。
強酸性を発現させる方法としては、このようにして得られた前駆体が担持された触媒を焼成することが一般に採用される。このための焼成温度は、担体と硫酸根前駆体、あるいは酸化タングステン前駆体の組み合わせにより適宜選択される。具体的には、硫酸根−酸化ジルコニウムの組み合わせの場合、好ましくは500℃〜800℃、より好ましくは600℃〜700℃の範囲であり、酸化タングステン−酸化ジルコニウムの組み合わせの場合、好ましくは700℃〜1,000℃、より好ましくは800℃〜900℃の範囲である。しかし、焼成後上記の超強酸の定義に相当するものが得られれば良く、これらの条件に限定されるものではない。超強酸であることの確認は、例えば「J.Chem.Soc.Chem.Commun.1259(1989)」、「J.Chem.Soc.Chem.Commun.1148(1979)」、「J.Chem.Soc.Chem.Commun.1851(1980)」、「J.Am.Chem.Soc.101,6439(1979)」などに記載されるパラフィンの骨格異性化や酸強度測定によって行うことができる。
(マイクロ波)
マイクロ波としては、特に限定されないが、水の加熱に用いられる周波数(300MHz以上30GHz以下程度)を用いることができる。好ましくは、0.6GHz以上10GHz以下である。典型的には、周波数2.45GHz程度のものが挙げられるが、これに限定するものではない。固体酸触媒のブレンステッド酸点等に応じた周波数の設定がなされていてもよい。出力は特に限定されない。
マイクロ波の照射は、マイクロ波照射用の空胴共振器を備えるマイクロ波照射装置を用いて行われる。空胴共振器は、マイクロ波発生手段から照射されたマイクロ波を共振させるためのものである。空胴共振器はシングルモードの直方体型空胴共振器、シングルモードの円筒型空胴共振器、又は、マルチモードのマイクロ波オーブン(電子レンジ)のいずれであっても良い。シングルモードの空胴共振器は、反応管内容物を急速加熱することができるので、極めて短時間で反応を行うことが出来るという利点がある。一方、マルチモードのマイクロ波オーブンは、空胴共振器内の共振を制御する必要がなく、任意の位置に反応物を置くことが出来るという利点がある。加熱速度と加熱効率の点では、空胴共振器は、シングルモード方式が好ましい。
空胴共振器がシングルモード方式である場合、基質と固体酸触媒が導入された反応容器は、空胴共振器内の電界成分が最大となる位置(定在波の腹の位置)に挿入される。一方、空胴共振器がマルチモード方式である場合、反応容器の位置は、特に限定されるものではない。空胴共振器には、通常、アルミニウム、銅、黄銅などが用いられるが、耐熱性が必要となる場合には、ステンレス鋼を用いても良い。
また、シングルモード方式の場合、共振がとれるように、マイクロ波周波数に応じて空胴共振器の断面寸法が決められている。例えば、直方体型空胴共振器の場合、マイクロ波周波数が2.45GHzであるときには、断面寸法(マイクロ波の進行方向に対して垂直方向の高さ寸法×幅寸法)は、約55mm×110mmとなる。さらにこの場合、直方体型空胴共振器のほぼ中央に、マイクロ波の進行方向に対して垂直方向に反応容器が挿入される。
シングルモードの電磁界モードには、種々のモードがあるが、高い電界強度を得るためには、TE10n(nは整数)モードを用いるのが好ましい。ここで、1つ目の添字「1」は、直方体型空胴共振器の幅方向の定在波(1/2波長)の数が1個であることを意味する。また、2つ目の添字「0」は、直方体型空胴共振器の高さ方向の定在波がゼロであることを意味する。さらに、3つ目の添字「n」は、直方体型空胴共振器のマイクロ波の進行方向に沿う定在波の数がn個であることを意味する。電界強度を高くするためには、nは、3以下が好ましい。今回用いた反応装置はn=1である。
空胴共振器の共振状態とは、空胴共振器の周波数がマイクロ波周波数に一致する状態であり、この状態では、マイクロ波の反射率(=反射電力×100/入射電力)がほぼゼロとなる。しかしながら、空胴共振器の断面寸法は、空胴共振器内が空の状態において共振を得るように設計されているので、空胴共振器に反応容器を挿入したり、反応容器に内容物がある場合、共振がとれなくなる場合がある。このような場合には、空胴共振器の共振を調整する必要がある。このため、空胴共振器の片端には、マイクロ波が入射する開口部の開口面積を変化させるための器具が設けられる。
なお、触媒反応における媒体、温度条件、圧力条件、時間条件等については、適宜設定することができる。媒体は、特に限定しないが、反応促進の観点から、水を含む極性溶媒を含んでいることが好ましい。極性溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコール、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)アセトニトリル、ジオキサン等が挙げられる。
なお、水は、セルロース系材料に含まれている水のほか、液体、気体及び固体の状態のいずれであっても、マイクロ波照射下において固体酸触媒表面に供給されるものであればよい。媒体には、水、水と相溶する/相溶しない極性の有機溶媒、水と相溶する/相溶しない非極性の有機溶媒、これらのうちの2種類以上の混合溶媒を用いることができる。媒体の構成は、適宜決定される。触媒反応は、固体酸触媒とセルロース系材料と適当な媒体中で攪拌しつつ分散状態で実施することもできる。また、触媒反応は、水と非相溶の有機溶媒とを媒体とし、攪拌によりこれら分散状態において実施してもよいし、分離された2相系のいずれかの相で実施してもよい。
反応温度は、特に限定しないが、室温(1℃以上)から300℃以下で行うことができる。好ましくは、80℃以上250℃以下である。この範囲であっても、効率的にセルロース系材料を分解することができる。特に、固体酸触媒とリグノセルロース系実バイオマスとを130℃以上200℃以下で接触させることが好ましい。この範囲であると、リグノセルロース系実バイオマスからグルコース及びキシロースへの良好な糖化率をそれぞれ確保できる。130℃未満及び200℃超では、急激にキシロースへの糖化率が低下する傾向があり、130℃未満及び200℃超では、グルコースへの糖化率が低下する傾向がある。好ましくは、130℃以上180℃以下である。
バガスなどの草本系のリグノセルロース系実バイオマスにあっては、より好ましくは、130℃以上170℃以下である。より好ましくは130℃以上160℃以下である。一層好ましくは、135℃以上155℃以下であり、より一層好ましくは、135℃以上145℃以下である。特に、このような温度範囲は、草本系のリグノセルロース系実バイオマスからのキシロースの糖化に好ましい温度範囲でもある。また、草本系であってもリグノセルロース系実バイオマスの種類にあっては、150℃以上170℃以下が好適である場合もある。さらに、好ましくは、155℃以上165℃以下が好適である場合もある。
さらにまた、スギなどの木本系のリグノセルロース系実バイオマスにあっては、150℃以上170℃以下がより好ましく、さらに好ましくは155℃以上165℃以下である。特にかかる温度範囲は、木本系のリグノセルロース系実バイオマスからのキシロースの糖化に好ましい温度範囲である。
固体酸触媒の存在下、リグノセルロース系実バイオマスをマイクロ波処理するのにあたり、水などの適当な反応媒体に対して、リグノセルロース系実バイオマスを適宜分散させることができる。典型的には、反応媒体に対して1質量%以上10質量%以下の割合でリグノセルロース系実バイオマスを添加することが好ましい。なお、反応媒体に対するリグノセルロース系実バイオマスの添加量が増大すると、グルコース及びキシロースへの変換効率が低下する傾向がある。好ましくは、反応媒体に対して3質量%以上7質量%以下である。また、反応媒体に対する固体酸触媒の添加量も特に限定しないが、典型的には、反応媒体に対して1質量%以上10質量%以下の割合で固体酸触媒を添加することができる。なお、反応媒体に対する固体酸触媒の添加量が低下すると、グルコース及びキシロースへの変換効率が低下する傾向がある。好ましくは、反応媒体に対して3質量%以上7質量%以下である。
なお、リグノセルロース系実バイオマスの分解を制御する場合には、冷却手段を用いてマイクロ波による加熱状態を冷却するようにしてもよい。反応時間も、特に限定しない。反応時間は、マイクロ波照射出力により応じて適宜設定され、通常、数分から数時間程度であるが、好ましくは60分以内である。60分を超えるとキシロースの糖化率が低下する傾向があるからである。より好ましくは、50分以内である。
こうした触媒反応により、リグノセルロース系実バイオマスを分解することで、糖又はその誘導体が得られる。糖としては、セルロースの構成単糖であるグルコースのほかヘミセルロースの構成単糖が挙げられる。また、糖には、分子量4000以下のセルロース由来のオリゴ糖類(セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロヘキサオースなど)や、ヘミセルロース由来のオリゴ糖が挙げられる。誘導体としては、これらの糖の糖アルコール、糖エステル、糖チオール、糖リン酸、糖塩のほか、内部脱水生成物が挙げられる。なお、触媒反応により、これらの全てが生成されるわけではない。得られる糖又はその誘導体は、基質に用いるセルロース系材料の種類のほか、反応条件等によっても相違する。
本製造方法の糖化工程は、また、リグノセルロース系実バイオマスからのキシロースの糖化に適した工程である。したがって、本製造方法を、リグノセルロース系実バイオマスからのキシロースの糖化方法として実施することもできる。すなわち、リグノセルロース系実バイオマスと固体酸触媒とをマイクロ波照射下に接触させてリグノセルロース系実バイオマス中のキシロースを糖化する糖化工程を備える、リグノセルロース系実バイオマスからのヘミセルロースの糖化物の製造方法も提供される。したがって、例えば、固体酸触媒下でのマイクロ波照射によるリグノセルロース系実バイオマスからのキシロースの糖化工程を実施後に、さらにかかる糖化工程処理物に対してセルロースの糖化工程を実施してもよい。セルロースの糖化には、キシロースの糖化よりも高い温度を要することが通常である。したがって、低温でキシロースの糖化を実施することで、全体として低エネルギーコストでかつリグノセルロース構造を緩和してセルロースを効率的に糖化することができる。
以上説明したように、本発明の製造方法によれば、リグノセルロース系実バイオマスでさえも迅速かつ効率的に分解糖化してリグノセルロース系実バイオマス由来の糖又はその誘導体を得ることができる。
以下、本発明を、実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
本実施例では、マイクロ波照射装置として、シングルモード共振器(キャビティ)を備え、温度・圧力をモニター可能なマイクロ波加熱装置(2.45GHz)を使用した。反応液は、5mlの耐圧製試験管にそれぞれ準備した、スギ粉末(平均粒子径約200μm)0.03g、固体酸触媒としての酸化グラファイト粉末0.03g、蒸留水3mlを加えて攪拌し、バイアル瓶キット(テフロン栓付アルミシールキャップ)で密閉した。反応条件は、初期圧0.1MPa、室温からマイクロ波照射により温度をモニターしながら急速加熱し、140℃、160℃及び190℃にそれぞれ達したのち、30分維持し、直ちに容器を冷却し、室温まで戻した。
その後、キャビティより取り出し反応液を分析した。反応液の分析は、反応液を遠心分離した上清を採取し、バイオセンサー(王子計測製)でグルコースとキシロースを定量しし、グルコース糖化率及びキシロース糖化率を算出した。また、比較例として、実施例で用いたのと同一の固体酸触媒を用いかつマイクロ波照射を伴わないで、オイルバスで同一温度条件で同一時間処理し、反応液中のグルコースとキシロースを定量し、同様に糖化率を算出した。計算式は以下の通りであった。結果を図1及び図2に示す。
グルコース糖化率=処理後の反応液中のグルコース質量/出発原料のセルロース質量×100
キシロース糖化率=処理後の反応液中のキシロース質量/出発原料のヘミセルロース質量×100
なお、スギ粉末は、振動ミルを用いて最大30分の粉砕処理により上記平均粒子径の粉末とした。スギ粉末の組成は、Van Soest法, Proc. Nutr. Soc.,32, 123, 1973に記載に準じて行った。なお、水分、副成抽出物を除いて組成を算出した。組成の分析結果を表1に示す。
Figure 2011224499
図1に示すように、固体酸触媒の存在下マイクロ波照射による加熱によれば、キシロース糖化率は160℃程度で最大(約40%)を呈し、グルコース糖化率は、温度とともに増大し、190℃で約20%となった。一方、図2に示すように、オイルバス加熱による比較例では、キシロースは、190℃で約35%の糖化率となったが、160℃では、20%強の糖化率に止まった。また、グルコース糖化率は、190℃において初めて10%を超える程度に止まった。すなわち、160℃で比較すると、実施例1によるキシロース糖化率は、比較例の2倍程度となり、実施例1によれば、比較例に比べて30℃低い温度で糖化処理を行い得ることがわかった。
本実施例では、ユーカリ微粉末(平均粒子径約200μm)0.03g及びユーカリ粗粉末(平均粒子径約200μm)0.03gをそれぞれリグノセルロース系実バイオマスとして用い、反応温度を160℃に設定し、反応時間を種々に異ならせる以外は、実施例1と同様に操作して、各反応液を得、グルコース及びキシロースを定量して、グルコース糖化率及びキシロース糖化率を算出して、反応時間の影響を調べた。また、比較例として、実施例と同一の固体酸触媒を用いかつマイクロ波照射を伴わないで、オイルバスで同一温度条件で同一時間処理し、反応液中のグルコースとキシロースを定量し、実施例1と同様に糖化率を算出した。結果をマイクロ波照射による結果を図3及びオイルバスによる結果を図4に示す。なお、用いたユーカリ粉末は、実施例1と同様の方法により組成分析した。結果を表1に併せて示す。
図3に示すように、固体酸触媒存在下でのマイクロ波照射による糖化によれば、ユーカリ微粉末及びユーカリ粗粉末には、グルコース糖化率及びキシロース糖化率に大きな差違は認められなかった。160℃にあっては、キシロースの糖化が促進され、良好な糖化率を示すことがわかったほか、反応時間は、60分以内が好ましく、50分以内がより好ましいことがわかった。また、図4に示すように、オイルバス加熱による比較例では、微粉末と粗粉末とで大きな相違はないものの、キシロース糖化率は60分反応後でも約40%に留まっていた。また、反応時間30分で比較したとき、マイクロ波照射によるキシロースへの糖化率は、2.5倍から3倍に達することがわかった。
本実施例では、バガス1微粉末(平均粒子径約200μm)0.3g、固体酸触媒(酸化グラファイト粉末)0.3gを用い、反応温度を、100℃、120℃、140℃、160℃及び190℃とする以外は、実施例1と同様に操作して反応液を得、グルコース及びキシロースを定量して、グルコース糖化率及びキシロース糖化率を算出した。結果を図5に示す。なお、用いたバガス1微粉末は、実施例1と同様の方法により組成分析した。結果を表1に併せて示す。
図5に示すように、キシロース糖化率に関し、130℃以上160℃以下、より具体的には、135℃以上155℃以下、さらに具体的には、135℃以上145℃以下の温度で、最も高い値(60%)を呈した。一方、グルコース糖化率に関しては、130℃で上昇し、140℃以上でほぼ一定(30%)となった。以上のことから、この種の粉末については、上記温度範囲が好ましい反応温度であり、その結果、キシロース糖化率に関しては60%と高い糖化率が得られることがわかった。
本実施例では、バガス2粗粉末(平均粒子径2mm以下)0.3g及びバガス2微粉末(平均粒子径100μm)0.3g、固体酸触媒(−SOH基を備えるグラフェン)0.3gを用い、反応温度を、140℃、160℃及び190℃とする以外は、実施例1と同様に操作して反応液を得、グルコース及びキシロースを定量して、グルコース糖化率及びキシロース糖化率を算出した。結果を図6に示す。なお、用いたバガス2微粉末及びバガス2粗粉末は、実施例1と同様の方法により組成分析した。結果を表1に併せて示す。
図6に示すように、キシロース糖化率に関し、バガス2微粉末とバガス2粗粉末とで大きな差は認められなかった。また、グルコース糖化率に関しては、バガス2粗粉末が反応温度の増大とともにグルコース糖化率が低下する傾向があることがわかった。また、反応温度に関しては、150℃以上170℃以下がグルコース糖化率及びキシロース糖化率とも安定した糖化率を呈しており、155℃以上165℃以下においてそれぞれ最大値を呈することがわかった。以上のことから、上記範囲の反応温度を採用することにより、粉末の平均粒子径によらずに粗粉末でもグルコース糖化率70%、キシロース糖化率20%が得られることがわかった。なお、バガス2は、バガス1と大きくその糖化形態が異なっているが、こうした相違は、バガスであっても部位(茎、葉)やその比率により、セルロースが優先的に糖化されてグルコースとなる場合とヘミセルロースが優先的に糖化されてキシロースとなる場合とがあることによるものと推論されるが、本発明を拘束するものではない。

Claims (11)

  1. リグノセルロース系実バイオマスからの糖又はその誘導体の製造方法であって、
    固体酸触媒と前記リグノセルロース系実バイオマスとを、マイクロ波の照射下で接触させて、前記リグノセルロース系実バイオマスを分解して糖化する工程、を備える、製造方法。
  2. 前記リグノセルロース系実バイオマスの平均粒子径は、10μm以上10mm以下である、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記糖化工程は、前記固体酸触媒と前記リグノセルロース系実バイオマスとを、130℃以上200℃以下の温度で接触させる工程を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記リグノセルロース系実バイオマスは草本系のリグノセルロース系実バイオマスであって、
    前記糖化工程は、前記リグノセルロース系実バイオマスと前記固体酸触媒とを130℃以上160℃以下の温度で接触させる工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記リグノセルロース系実バイオマスは、木本系のリグノセルロース系実バイオマスであって、
    前記糖化工程は、前記リグノセルロース系実バイオマスと前記固体酸触媒とを150℃以上170℃以下の温度で接触させる工程を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  6. 前記固体酸触媒は、ブレンステッド酸点を有する固体である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
  7. 前記固体酸触媒は、ブレンステッド酸点を有するグラファイト系固体酸触媒である、請求項に記載の製造方法。
  8. 前記ブレンステッド酸点は、−OH基、−COH基及び−SOH基からなる群から選択される1種又は2種以上である、請求項6又は7に記載の製造方法。
  9. 前記固体酸触媒は、酸化グラファイト(GO)又は−SOH基を備えるグラフェンである、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  10. 前記糖化工程は、反応室として空胴共振器を備えるマイクロ波照射装置を用いる、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
  11. リグノセルロース系実バイオマスからのヘミセルロースの糖化物の製造方法であって、
    リグノセルロース系実バイオマスと固体酸触媒とをマイクロ波照射下に接触させてリグノセルロース系実バイオマス中のキシロースを糖化する糖化工程を備える、方法
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