JP2011208175A - めっき物の製造方法及びめっき物 - Google Patents

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Abstract

【課題】安定した品質と優れた耐食性とを有するめっき物が、環境への負荷を低減させつつ、効率的且つ低コストに製造され得る方法を提供する。
【解決手段】硫酸ニッケルと、クエン酸三ナトリウムとを、それぞれ特定濃度で含み、且つpHが3以上4未満に調整された、塩化ニッケルとホウ酸と光沢剤を含まない水溶液からなるニッケルめっき液を用いて、このニッケルめっき液中に、不溶性陽極と、金属素材12からなる陰極とを浸漬して、電気めっきを行うことにより、該金属素材12の表面にニッケルめっき層14を積層形成した後、該ニッケルめっき層14に対して、錫−ニッケルめっき層20とパラジウムめっき層22のうちの少なくとも何れか一方と、金めっき層18とを積層形成した。
【選択図】図1

Description

本発明は、めっき物の製造方法とめっき物とに係り、特に、電子部品等に好適に用いられるめっき物と、その有利な製造方法とに関する。
従来から、コネクタや、スイッチ、リレー等の電子部品(機構部品)には、銅又は銅合金からなる金属素材の表面の全面に、下地層としてのニッケルめっき層が形成されると共に、このニッケルめっき層の少なくとも一部に、上層としての金めっき層が積層形成されてなるめっき物が、多く用いられている。このようなめっき物は、一般に、金属素材に対して、所定のニッケルめっき液(めっき浴)を用いた電気ニッケルめっきと、金めっき液を用いた電気金めっきとを、順次、実施すること等によって製造されている。
一方、近年において、ニッケルめっき層が表面に形成されためっき物をより有利に製造するための方法が、種々提案されている。例えば、特開2007−119902号公報(特許文献1)には、硫酸ニッケル液とクエン酸ナトリウム又はクエン酸とが溶解されて、pHが2以上4未満に調整された水溶液からなるニッケルめっき液と不溶性陽極とを用いたニッケルめっきを金属素材に施すことにより、目的とするめっき物を得る方法が提案されている。
この方法では、可溶性陽極を用いる場合とは異なって、めっき液中へのニッケルイオンの溶解による陽極の消耗がない。そのため、陽極の交換作業の頻度を有利に低減できるといった利点がある。また、陽極の消耗による形状変化等も十分に抑制され、それによって、ニッケルめっきを同一の設定条件で、長期に亘って安定的に行うことが可能となる。
また、一般に、不溶性陽極を用いた場合には、陽極反応(陽極での酸化還元反応)により生ずる水素イオンによってめっき液のpHが低下する懸念があるが、上記の提案方法では、pHが2以上4未満に調整されためっき液中で、クエン酸が安定したpH緩衝作用を発揮する。そのため、不溶性陽極を用いているにも拘わらず、めっき液のpH低下の懸念が有利に払拭され得る。しかも、めっき液中には、ワット浴に含まれる、人体に悪影響を及ぼすホウ酸や、塩素ガスを発生させる塩化ニッケルが、何等含有されていない。
従って、上記の従来方法によれば、安定した品質を有するめっき物が効率的に得られ、その上、環境への負荷の低減も有利に実現され得るといった特徴が発揮される。
ところが、本発明者等が検証したところ、上記のような特徴を有する従来方法は、非常に薄膜なニッケルめっき層を作成することはできるものの、金めっき層の下地として用いられる厚さ5μm程度の厚みを有するめっき層を作成するのには適していないことが判明した。即ち、金めっき層の下地と用いられるニッケルめっき層には、厚みが十分であるだけでなく、表面が緻密で光沢または半光沢を有する平滑な状態であることが求められる。ところが、上記のような従来方法では、十分な厚みを有するニッケルめっき層を形成することが難しく、しかも、めっき層の表面が緻密にならないために、耐食性が不十分となってしまう。そのため、そのような従来手法によって得られたニッケルめっき層に金めっき層を積層形成してなるめっき物を製造する場合には、耐食性の向上のために、金めっき層の膜厚を、ある程度厚くする必要があり、そのためにコスト負担が増大するといった問題が惹起されることが判明したのである。
特開2007−119902号公報
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、金属素材の表面に、ニッケルめっき層と金めっき層とが積層形成されてなるめっき物を、安定した品質と優れた耐食性とをもって効率的且つ安価に製造し得るだけでなく、その製造に際して、環境への負荷を有利に低減可能なめっき物の製造方法を提供することにある。
本発明の第一の態様は、金属素材の表面に、ニッケルめっき層が形成されると共に、該ニッケルめっき層に対して、金めっき層が積層形成されてなるめっき物を製造する方法において、(a)硫酸ニッケル200g/L以上360g/L未満と、クエン酸三ナトリウム20g/L以上40g/L未満とが溶解されて、pHが3以上4未満に調整された、塩化ニッケルとホウ酸と光沢剤とを含まない水溶液からなるニッケルめっき液を用いて、該ニッケルめっき液中に、不溶性陽極と、前記金属素材からなる陰極とを浸漬して、電気めっきを行うことにより、該金属素材の表面にニッケルめっき層を積層形成する工程と、(b)前記金属素材の表面に形成された前記ニッケルめっき層に対して、錫−ニッケルめっき層とパラジウムめっき層のうちの少なくとも何れか一方からなる中間めっき層を積層形成する工程と、(c)前記金属素材の表面に前記ニッケルめっき層を介して形成された前記中間めっき層に対して、前記金めっき層を更に積層形成する工程とを含むことを特徴とする。
なお、本態様では、ニッケルめっき液中における硫酸ニッケルの濃度とクエン酸三ナトリウムの濃度の濃度が、硫酸ニッケルの水和物(硫酸ニッケル六水和物)からなる薬品投入濃度と、クエン酸三ナトリウムの水和物(クエン酸三ナトリウム二水和物)からなる薬品投入濃度にて、それぞれ示されている。従って、それらの濃度を無水物としての濃度に換算すると、硫酸ニッケルの濃度が118g/L以上212g/L未満、クエン酸三ナトリウムの濃度が17.6g/L以上35g/L未満となる。
本態様によれば、ニッケルめっき液中へのニッケルイオンの溶解による消耗の少ない不溶性陽極を使用して、ニッケルめっき層が形成される。それ故、陽極交換に掛かる作業負担が有利に軽減されると共に、ニッケルめっき層の形成が、同一の設定条件下で、安定的に実施され得る。また、不溶性陽極を用いているにも拘わらず、ニッケルめっき層の形成操作の進行に伴うニッケルめっき液のpH低下が有利に抑制され得る。しかも、ニッケルめっき液中には、人体に悪影響を及ぼすホウ酸や、塩素ガスを発生させる塩化ニッケルが、何等含有されていない。そのため、作業者や環境への負荷の低減も有利に実現され得る。
そして、本態様では、従来の特開2007−119902号公報(特許文献1)に記載の不溶性陽極を用いた製造方法により形成されるニッケルめっき層に比して、より肉厚で、しかも表面が緻密なニッケルめっき層を形成することができる。その結果、耐食性に優れた外観のよいめっき物を得ることができる。特に、本態様では、ニッケルめっき層と金めっき層との間に、錫−ニッケルめっき層とパラジウムめっき層のうちの少なくとも何れか一方からなる中間めっき層が積層形成されている。それ故、腐食電位差が、ニッケルめっき層と金めっき層との間よりも、ニッケルめっき層と中間めっき層との間や、金めっき層と中間めっき層との間において小さくされる。これにより、ニッケルめっき層の容易な腐食が有利に抑制され得る。その結果、目的とするめっき物の耐食性が、効果的に高められ得ることとなる。
その上、ニッケルめっき層表面の緻密性が向上され、ある程度の光沢(半光沢)を得ることが可能となることから、ニッケルめっき中には、光沢剤が含まれていない。そのため、電気めっきによるニッケルめっき層の形成時に、不溶性陽極での陽極反応で生ずる酸素によって光沢剤が分解されることがない。それ故、そのような光沢剤の分解により生ずる硫黄が、陰極として用いられる金属素材の表面にニッケルと共析して、ニッケルめっき層、ひいてはめっき物全体の耐食性を低下させることが、皆無とされ得る。
また、そのように、金属素材の表面には、実質的に硫黄の共析のない、高純度のニッケルめっき層が形成されるようになる。これによっても、ニッケルめっき層と、それに積層形成される金めっき層との間の腐食電位差が有利に小さくされる。それ故、例えば、金めっき層にピンホールが多く存在しても、ニッケルめっき層が容易に腐食することが効果的に防止され得る。その結果、金めっき層を増厚したり、或いは金めっき層に対する封孔処理を行ったりすることもなしに、ニッケルめっき層、ひいては目的とするめっき物全体の耐食性が、極めて有利に高められ得る。
本発明の第二の態様は、前記ニッケルめっき層の厚さが3〜10μm、前記錫−ニッケルめっき層の厚さが0.2〜0.5μm、前記パラジウムめっき層の厚さが0.03〜0.1μm、及び前記金めっき層の厚さが0.05〜0.15μmとされている。
本態様によれば、めっき物の耐食性が更に有利に高められ得る。
本発明の第三の態様は、めっき物において、(a)金属素材と、(b)硫酸ニッケル200g/L以上360g/L未満と、クエン酸三ナトリウム20g/L以上40g/L未満とが溶解されて、pHが3以上4未満に調整された、塩化ニッケルとホウ酸と光沢剤とを含まない水溶液からなるニッケルめっき液を用いて、該ニッケルめっき液中に、不溶性陽極と、前記金属素材からなる陰極とを浸漬して、電気めっきを行うことにより、該金属素材の表面形成されたニッケルめっき層と、(c)前記金属素材の表面に形成された前記ニッケルめっき層に積層形成された、錫−ニッケルめっき層とパラジウムめっき層のうちの少なくとも何れか一方からなる中間めっき層と、(d)前記金属素材の表面に前記ニッケルめっき層を介して形成された前記中間めっき層に更に積層形成された金めっき層とを含むことを特徴とする。
本態様によれば、前記した本発明の第一の態様と実質的に同一の作用・効果が、有効に享受され得る。
本発明に従うめっき物の製造方法によれば、金属素材の表面に、ニッケルめっき層と金めっき層とが積層形成されてなるめっき物が、安定した品質と優れた耐食性とをもって効率的且つ安価に製造され得、更にはその製造に際して、環境への負荷が有利に低減され得ることとなる。
また、本発明に従うめっき物によれば、本発明に従うめっき物の製造方法において奏される作用・効果と実質的に同一の作用・効果が、有効に享受され得る。
本発明手法に従って製造されためっき物の一例を示す部分断面図。 本発明手法に従ってめっき物を製造する際に用いられるめっき装置の一例を示す概略図。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1には、本発明手法に従って製造されためっき物の一例が、その断面形態において示されている。図1から明らかなように、めっき物10は、金属素材12の表面にニッケルめっき層14が形成され、このニッケルめっき層14の表面に中間めっき層16が積層形成され、更に、この中間めっき層16の表面に金めっき層18が積層形成されて、構成されている。中間めっき層16は、ニッケルめっき層14に近い側から順に、錫−ニッケルめっき層20とパラジウムめっき層22とが、順次、積層された複層構造を有している。この中間めっき層16の存在により、ニッケルめっき層14、ひいてはめっき物10全体の耐食性の向上が図られている。
そのような構造とされためっき物10を製造する際には、例えば、以下のようにして、その作業が進められる。
すなわち、先ず、金属素材12を準備する。ここで準備される金属素材12としては、その材質が何等限定されるものではない。コネクタや、スイッチ、リレー等の電子部品等に使用される材質や、防食や装飾等を目的として、ニッケルめっき層14が表面に形成されるのに従来から使用される材質を備えた金属素材12が、適宜に用いられる。例えば、銅又は銅合金(ベリリウム−銅やリン青銅等)等からなる金属素材12が使用される。また、金属素材12の形状乃至は形態も何等限定されるものではなく、めっき物10の使用目的等に応じた形状乃至は形態とされる。例えば、ブロック状や平板状、線状等の形状を有するものが、金属素材12として用いられるのである。
次に、準備された金属素材12の表面に対して、ニッケルめっき層14を形成する。その際には、例えば、図2に示される電気めっき装置24が使用される。
図2から明らかなように、電気めっき装置24は、十分に大きな容積を有するめっき槽26を有している。このめっき槽26の内部には、金属素材12からなる陰極28と不溶性陽極30とが収容されている。
不溶性陽極30には、電気ニッケルめっきの実施に際して一般に用いられる公知のものが使用される。例えば、白金、白金合金、チタンが白金や酸化イリジウムにて被覆されたもの、或いはチタンが白金−酸化イリジウム合金等にて被覆されたもの等が用いられる。その中でも、チタンが酸化イリジウムにて被覆されてなる不溶性陽極30が、高い耐久性を有するところから、好適に用いられる。
そして、不溶性陽極30と陰極28とが、リード線を介して、電源装置32に接続されている。なお、よく知られているように、電気ニッケルめっきの実施時に電流が低下すると、陰極28表面に形成されるニッケルめっき層14の膜厚が薄くなるおそれがある。それ故、電源装置32としては、電気めっきの実施に際して一般的に使用されるものの中でも、出力電流が一定に維持される定電流電源装置が、好適に用いられる。
また、めっき槽26内には、ニッケルめっき液34が、金属素材12からなる陰極28と不溶性陽極30とを、それぞれ十分に浸漬させ得る量において収容されている。このニッケルめっき液34は、硫酸ニッケルの水溶液に、クエン酸三ナトリウムが添加された硫酸ニッケル溶液にて構成されている。
ニッケルめっき液34中の硫酸ニッケルは、電気ニッケルめっきの実施により、陰極28の表面に析出されるニッケルの供給源として使用されるもので、一般に水和物の形態で用いられる。このような硫酸ニッケルのニッケルめっき液34中の濃度は、水和物たる薬品(硫酸ニッケル六水和物)での投入濃度で200g/L以上360g/L未満とされている必要がある。その理由は、濃度が200g/L未満であると、陰極28に十分なニッケルイオンを供給することができず、焦げの発生や電流効率の低下が生じるからである。また、濃度が200g/L以上となるような多量の硫酸ニッケルを使用する場合には、めっき液の粘度が高くなり、ピットを発生し易くなるからである。
ニッケルめっき液34中に含まれるクエン酸三ナトリウムは、電気ニッケルめっきの実施時において、ニッケルめっき液34のpHの変動(低下)を抑制するpH緩衝剤としての機能を有し、一般に水和物の形態で用いられる。このため、ここでは、電気ニッケルめっきの実施時において、不溶性陽極30での陽極反応によって生ずる水素イオンの増加に伴うニッケルめっき液34のpHの低下が、クエン酸三ナトリウムのpH緩衝作用により、有効に抑制されるようになっている。従って、ニッケルめっき液34中には、従来のワット浴にpH緩衝剤として添加されるホウ酸が、何等含まれていない。
また、クエン酸三ナトリウムは、不溶性陽極30の陽極反応をスムーズに進行させる機能を有するだけでなく、陰極28の表面に形成されるニッケルめっき層14の表面を緻密且つ平滑に形成して、ある程度の光沢(半光沢)を付与する機能をも有している。それ故、ニッケルめっき液34中には、光沢剤が何等含まれていない。
なお、一般に知られているように、クエン酸三ナトリウムは、クエン酸やクエン酸二ナトリウム、クエン酸一ナトリウム等に比べて、より高いpH緩衝作用を発揮する。しかも、クエン酸三ナトリウムは、ニッケルめっき液34中に光沢剤が含まれていなくとも、ニッケルめっき層14の表面を白っぽい艶のある外観と為し得る特徴を有する。それ故、ニッケルめっき液34中には、そのような特徴を有するクエン酸三ナトリウムが好適に使用される。
ニッケルめっき液34中のクエン酸三ナトリウムは、その濃度が、水和物たる薬品(クエン酸三ナトリウム二水和物)での投入濃度で20g/L以上40g/Lの範囲内の値とされていなければならない。何故なら、ニッケルめっき液34中にクエン酸三ナトリウムが添加される際、クエン酸三ナトリウム濃度が上記した下限値を下回る場合には、濃度が余りに低いために、必要なpH緩衝力が発揮されないからである。一方、濃度が上記した上限値を超える場合には、クエン酸の錯体化による電流効率の低下により、陰極28表面に形成されるニッケルめっき層14の膜厚が小さくなってしまうからである。
このように、ニッケルめっき液34は、硫酸ニッケルとクエン酸三ナトリウムの二成分のみで構成されている。その上、不溶性陽極30が使用されているところから、可溶性陽極を用いる場合とは異なり、陽極溶解の促進を図るため等に用いられる塩化ニッケルが不要とされて、そのような塩化ニッケルが、ニッケルめっき液34中に何等含まれていない。このため、本実施形態においては、三成分以上を含む一般的なワット浴やクエン酸浴からなるニッケルめっき液中で、可溶性陽極を用いた電気ニッケルめっきを実施する場合に比して、ニッケルめっき液34の調整及び管理が容易となっている。また、ニッケルめっき液34中に塩化ニッケルが含まれていないため、不溶性陽極30で塩素ガスが発生することがなく、そのような塩素ガスによって、装置及び作業環境が劣悪な状態となることも、未然に防止される。
しかも、ニッケルめっき液34内には、光沢剤が何等含まれていない。このため、電気ニッケルめっきの実施時に、不溶性陽極30での陽極反応で生ずる酸素によって光沢剤が分解されることがない。それ故、そのような光沢剤の分解により生ずる硫黄が、陰極28として用いられる金属素材12の表面にニッケルと共析して、ニッケルめっき層14、ひいてはめっき物10全体の耐食性を低下させることが、皆無とされ得る。
ニッケルめっき液34は、そのpH値が3以上4未満に調整されている必要がある。何故なら、ニッケルめっき液34のpH値が3未満とされていると、pH値が余りに低いために電着効率が低下し、また、陰極28表面に形成されるニッケルめっき層14の外観が劣化して、その品質が低下するからである。一方、ニッケルめっき液34のpH値が4以上では、クエン酸三ナトリウムのpH緩衝力が弱くなり、電気ニッケルめっきの実施中でのニッケルめっき液34のpH変動が大きくなりやすくなるからである。ニッケルめっき液34のpH値は、3〜3.8の範囲内の値とされていることが、より望ましい。なお、ニッケルめっき液34のpH値を調整する際において、pH値を上げるには、例えば、炭酸ニッケルがニッケルめっき液34中に投入される。一方、ニッケルめっき液34のpH値を下げる際には、ニッケルめっき液34中に硫酸が投入されることとなる。
そして、上記のような構造を有する電気めっき装置24を用いて、陰極28を構成する金属素材12の表面上にニッケルめっき層14を形成するには、先ず、めっき槽26内のニッケルめっき液34を45〜55℃の範囲内の温度となるまで加熱する。このニッケルめっき液34の温度は、電気ニッケルめっきが終了するまで維持される。これによって、金属素材12(陰極28)の表面に、ニッケルめっき層14が、十分な硬度をもって効率的に形成されることとなる。
ニッケルめっき液34が45〜55℃の温度となったら、電源装置32を作動させて、不溶性陽極30と陰極28との間に電流を流し、電気ニッケルめっきを実施する。これにより、ニッケルめっき液34中の硫酸ニッケルの電離によって生じたニッケルイオンを陰極28の表面に析出させる。そうして、陰極28を構成する金属素材12の表面に、ニッケルめっき層14を積層形成するのである。なお、この金属素材12に対する電気ニッケルめっきの実施に際しては、必要に応じて、金属素材12に対する洗浄処理や脱脂処理等の前処理が、電気ニッケルめっきの実施に先立って行われる。
このような電気ニッケルめっきは、例えば静止めっきで行う場合には、電源装置32からの出力電流の電流密度が3〜5A/dm2 で、且つ通電時間が7〜10分程度の条件で実施されることが望ましい。何故なら、電流密度が3A/dm2 を下回る場合には、陰極28表面に形成されるニッケルめっき層14の耐食性が低下するおそれがあるからである。また、電流密度が5A/dm2 を上回る場合には、局所的に電流の集中が生じて、焦げが発生する懸念があるからである。そして、電流密度が好適範囲内の値であっても、通電時間が7分未満であると、ニッケルめっき層14を所望の厚さで形成できないおそれがあり、また、通電時間が10分を超える場合には、ニッケルめっき層14の厚さが必要以上に厚くなってしまう懸念があるからである。なお、本実施形態では静止めっきにより電気ニッケルめっきを実施しているが、勿論、バレルめっきによって実施してもよい。
金属素材12の表面に積層形成されるニッケルめっき層14の厚さは、特に限定されるものではない。しかしながら、好ましくは3〜10μm程度の厚さとされる。何故なら、ニッケルめっき層14の厚さが3μm未満で、余りに薄い厚さとされていると、ニッケルめっき層14の形成による金属素材12表面の耐食性の向上が十分に望めなくなるおそれがあるからである。また、ニッケルめっき層14の厚さが10μmを超える厚い厚さとされていても、耐食性の更なる向上が望まれ得ず、却って材料の無駄となり、それがコスト負担の増大を招く懸念があるからである。このようなニッケルめっき層14の厚さのより好ましい範囲は5μm〜7μmである。
そして、上記のようにして金属素材12の表面にニッケルめっき層14を形成したら、必要に応じて、金属素材12に対する洗浄処理等を実施した後、ニッケルめっき層14に対して、錫−ニッケルめっき層20とパラジウムめっき層22とからなる中間めっき層16を形成する。なお、金属素材12に対する洗浄処理等の前処理は、中間めっき層16を構成する錫−ニッケルめっき層20とパラジウムめっき層22のそれぞれの形成操作に先立って、必要に応じて実施される。また、後述する中間めっき層16に対する金めっき層18の形成操作の前にも、金属素材12に対する洗浄処理等の前処理が、必要に応じて実施される。
中間めっき層16の形成に際しては、先ず、中間めっき層16の下層(内層)となる錫−ニッケルめっき層20を、金属素材12の表面に形成されたニッケルめっき層14の金属素材12側とは反対側の面に形成する。この錫−ニッケルめっき層20の形成方法としては、錫とニッケルとを含むめっき液を用いた電気めっきや電気めっき以外の公知のめっき手法が、適宜に採用される。
また、錫−ニッケルめっき層20は、ニッケルめっき層14と金めっき層18との間に必ず介在するように、ニッケルめっき層14に形成される。即ち、金めっき層18が、ニッケルめっき層14の全面に形成される場合には、錫−ニッケルめっき層20が、ニッケルめっき層14の全面を覆うように形成される。また、金めっき層18が、ニッケルめっき層14の一部に対してのみ形成される際には、錫−ニッケルめっき層20が、そのようなニッケルめっき層14における金めっき層18の形成部位を少なくとも覆うように、ニッケルめっき層14の少なくとも一部に形成されるのである。
錫−ニッケルめっき層20の厚さは、何等限定されるものではないものの、好適には0.2〜0.5μm程度の厚さとされる。何故なら、錫−ニッケルめっき層20の厚さが0.2μm未満の余りに薄い厚さとされていると、錫−ニッケルめっき層20の形成による金属素材12表面の耐食性の向上が十分に望めなくなるおそれがあるからである。また、錫−ニッケルめっき層20の厚さが0.5μmを超える厚い厚さとされていても、耐食性の更なる向上が望まれ得ず、却って、材料の無駄となり、それがコスト負担の増大を招く懸念があるからである。このような錫−ニッケルめっき層20の厚さは0.3〜0.4μmの範囲内の値とされていることが、より望ましい。
次いで、パラジウムめっき層22を、錫−ニッケルめっき層20のニッケルめっき層14側とは反対側の面に対して、形成する。このパラジウムめっき層22の形成に際しては、パラジウムを含むめっき液を用いた電気めっきや電気めっき以外の公知のめっき手法が、適宜に採用される。また、そのようなパラジウムめっき層22も、錫−ニッケルめっき層20と同様に、ニッケルめっき層14と金めっき層18との間に必ず介在するように、錫−ニッケルめっき層20に形成される。
パラジウムめっき層22の厚さは、特に限定されるものではないものの、0.03〜0.1μm程度の厚さとされていることが望ましい。その理由は、金めっき層18と同様で、パラジウムめっき層22の厚さが0.03μm未満の余りに薄い厚さとされていると、パラジウムめっき層22の形成による金属素材12表面の耐食性の向上が十分に望めなくなるおそれがあるからである。また、パラジウムめっき層22の厚さが0.1μmを超える場合には、内部応力の増大により、表面にマイクロクラックが生じて、耐食性の低下が惹起されるおそれがあるからである。更に、パラジウムも、金と同様に高価な貴金属であるため、そのようなパラジウムめっき層22が0.1μmを超える厚い厚さとされると、コスト高となるといった問題が生ずる懸念がある。このようなパラジウムめっき層22の厚さは0.03〜0.05μmの範囲内の値とされていることが、より望ましい。なお、本実施形態では、中間めっき層16が、錫−ニッケルめっき層20とパラジウムめっき層22とにて構成されていたが、中間めっき層16を、錫−ニッケルめっき層20とパラジウムめっき層22のうちの何れか一方のみにて構成しても良い。
上記のようにして、ニッケルめっき層14上に中間めっき層16を積層形成したら、中間めっき層16の上層(外層)となるパラジウムめっき層22に対して、金めっき層18を更に積層形成する。
この金めっき層18の形成に際しては、金を含むめっき液を用いた電気めっきや電気めっき以外の公知のめっき手法が、適宜に採用される。また、金めっき層18は、めっき物10の使用目的等に応じて、金属素材12の表面(ニッケルめっき層14)に対して、その一部分だけを被覆するように、或いはその全面を被覆するように形成されることとなる。
金めっき層18の厚さは、特に限定されるものではないものの、目的とするめっき物10の耐食性の向上のために、0.05μm以上とされていることが好ましい。
また、本実施形態では、前記したように、ニッケルめっき層14が、実質的に硫黄共析のない、高純度のニッケルにて構成されている。そのため、そのようなニッケルめっき層14と金めっき層18との間の腐食電位差が有利に小さくされている。それ故、例えば、金めっき層18にピンホールが多く存在していても、ニッケルめっき層14が容易に腐食するようなことが効果的に防止される。そして、それにより、金めっき層18が薄くされていても、具体的には、0.15μm以下の薄い厚さとされていても、ニッケルめっき層14、更にはめっき物10の耐食性が有利に高められ得る。従って、金めっき層18は、めっき物10の耐食性を可及的に低いコストで向上させる上で、0.05〜0.15μmの範囲内の厚さとされていることが望ましいのである。なお、金めっき層18の厚さが0.15μmを超える場合には、高価な金の使用量が増大して、コスト高となる。このような金めっき層18の厚さは0.1〜0.15μmの範囲内の値とされていることが、より好ましい。
なお、金めっき層18には、強度向上等を目的として、例えばコバルト等が含まれていても良い。即ち、金−コバルト合金にて、金めっき層18を形成しても良いのである。この金−コバルト合金には、金が、99.7〜99.9%の割合で含有されていることが望ましい。
上述のように、金属素材12の表面に、ニッケルめっき層14と、錫−ニッケルめっき層20及びパラジウムめっき層22からなる中間めっき層16と、金めっき層18とを、その順番で積層形成することによって、目的とするめっき物10を得るのである。
そして、そのようなめっき物10を得たら、それの耐食性の更なる向上を図るために、必要に応じて、めっき物10に対する加熱処理を行う。この加熱処理は、例えば、めっき物10を150℃の温度で180分間加熱することにより実施される。
前記したように、本実施形態では、ニッケルめっき層14の形成に際して、不溶性陽極30を用いた電気ニッケルめっきが実施されている。そのため、電気ニッケルめっきの実施中に、不溶性陽極30が殆ど消耗しない。それ故、可溶性陽極を使用する場合に比して、陽極の交換作業の頻度を劇的に減らすことができ、それによって、電気ニッケルめっきを連続的に実施可能となる。また、消耗による不溶性陽極30の形状や陰極28との間の距離の変化等が有効に防止され得る。その結果、ニッケルめっき層14の形成が、同一の設定条件下で、安定的に実施され得ることとなる。なお、電気ニッケルめっきを連続的に実施する場合には、陰極28に析出されるニッケルの供給源たる硫酸ニッケルを補給する必要が生じるが、その際には、ニッケルめっき液34中の硫酸ニッケル濃度とクエン酸三ナトリウム濃度とが、上記のような特定の濃度に維持されるようにしなければならない。
また、電気ニッケルめっきの進行時には、ニッケルめっき液34中に含まれるクエン酸三ナトリウムによるpH緩衝作用によって、ニッケルめっき液34のpH値の低下が有利に抑制される。その結果、陰極28表面に形成されるニッケルめっき層14の外観の劣化が、効果的に防止され得る。
さらに、ニッケルめっき液34中には、人体に悪影響を及ぼすホウ酸や、塩素ガスを発生させる塩化ニッケルが、何等含有されていない。そのため、作業者や環境への負荷の低減も有利に実現され得る。
そして、本実施形態では、特に、金属素材12の表面に形成されるニッケルめっき層14と金めっき層18との間に、錫−ニッケルめっき層20とパラジウムめっき層22とからなる中間めっき層16形成されている。それによって、金めっき層18とニッケルめっき層14との間の腐食電位差が十分に小さくされている。そして、それらの結果として、ニッケルめっき層14、ひいてはめっき物10全体の耐食性が効果的に高められ得る。しかも、ニッケルめっき液34中に、光沢剤も含まれていないため、光沢剤由来の硫黄の陰極28表面への共析によって、ニッケルめっき層14の耐食性が低下することがない。
従って、このような本実施形態手法によれば、外観性能等に優れた安定した品質と高度な耐食性とを兼ね備えためっき物10を、低コストに且つ生産効率良く得ることができ、その上、そのようなめっき物10の製造に際して、めっき物10の製造に携わる作業者や環境への負荷を有利に低減することが可能となる。
以下に、本発明の幾つかの実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにするが、本発明は、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものではない。また、本発明には、以下の実施例の他にも、更には上記の具体的記述以外にも、本発明の趣旨を逸脱しないかぎりにおいて、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等が加えられ得るものである。
<実施例1の作製>
先ず、金属素材として、圧延銅箔を準備する一方、図2に示されるような構造を有する電気めっき装置を準備した。また、ニッケルめっき液の所定量を調製して、準備した。ニッケルめっき液は、硫酸ニッケルを240g/Lの濃度で含有すると共に、クエン酸三ナトリウム(商品名:SN−CSB、株式会社ムラタ製)を30g/Lの濃度で含むクエン酸三ナトリウム溶液を100cc/Lの濃度で含有し、光沢剤と塩化ニッケルとホウ酸とを含まない組成とした。また、このニッケルめっき液のpH値を3.0〜3.8の範囲内の値となるように調整した。
さらに、市販の錫−ニッケルめっき液(荏原ユージライト株式会社製)と、市販のパラジウムめっき液(日本高純度化学株式会社製)と、市販の金−コバルトめっき液(日本高純度化学株式会社製)とを、それぞれ所定量ずつ準備した。錫−ニッケルめっき液中の金属錫濃度は30g/L、金属ニッケル濃度は7g/Lであり、パラジウムめっき液中のパラジウム濃度は5g/Lであり、金−コバルトめっき液中の金濃度は5g/L、コバルト濃度は0.2g/Lであった。
そして、電気めっき装置のめっき室内に、ニッケルめっき液の所定量を収容した。また、このニッケルめっき液中に、先に準備された金属素材からなる陰極と、チタンが酸化イリジウムにて被覆されてなる不溶性陽極とを浸漬した。
その後、ニッケルめっき液を45〜55℃の温度にまで加熱した。そして、その温度を維持させつつ、電流密度:5A/dm2 、通電時間:7分の条件で電気ニッケルめっきを実施した。これにより、陰極を構成する金属素材の表面に、ニッケルめっき層を5μmの厚さで形成した。
次いで、先に準備された錫−ニッケルめっき液を用いて、ニッケルめっき層が表面に形成された金属素材に対して、電流密度:1A/dm2 、通電時間:40秒の条件で公知の電気めっき手法を行った。そうして、ニッケルめっき層に対して、錫−ニッケルめっき層を0.2μmの厚さで形成した。引き続き、先に準備されたパラジウムめっき液を用いて、ニッケルめっき層と錫−ニッケルめっき層とが表面に積層された金属素材に対して、電流密度:0.3A/dm2 、通電時間:40秒の条件で公知の電気めっき手法を行った。これにより、錫−ニッケルめっき層に対して、パラジウムめっき層を0.04μmの厚さで積層形成した。そうして、表面に形成されたニッケルめっき層に対して、錫−ニッケルめっき層とパラジウムめっき層とからなる中間めっき層が積層形成された金属素材を得た。
その後、先に準備された金−コバルトめっき液を用いて、ニッケルめっき層と中間めっき層とが積層形成された金属素材に対して、電流密度:1.7A/dm2 、通電時間:10秒の条件で公知の電気めっき手法を行った。それにより、中間めっき層に対して、金−コバルトめっき層を0.1μmの厚さで積層形成した。そうして、金属素材の表面に、ニッケルめっき層と中間めっき層と金−コバルトめっき層とが積層形成されためっき物を得た。その後、このめっき物を150℃の温度で3時間加熱処理した。そして、この加熱処理しためっき物を実施例1とした。
<実施例2の作製>
先ず、実施例1と同様にして、銅製の金属素材の表面にニッケルめっき層を形成した。次いで、実施例1の作製時に用いた市販の錫−ニッケルめっき液を使用して、表面にニッケルめっき層が形成された金属素材に対する電気めっきを行うことにより、ニッケルめっき層に対して、錫−ニッケルめっき層を積層形成した。引き続き、実施例1の作製時に用いた市販の金−コバルトめっき液を使用して、ニッケルめっき層と錫−ニッケルめっき層とが表面に積層形成された金属素材に対する電気めっきを行った。これにより、金属素材の表面に、ニッケルめっき層と、錫−ニッケルめっき層のみからなる中間めっき層と、金−コバルトめっき層とが積層形成されためっき物を得た。このめっき物における各めっき層の厚さは、実施例1と同一とした。その後、このめっき物を150℃の温度で3時間加熱処理した。そして、この加熱処理しためっき物を実施例2とした。
<実施例3の作製>
先ず、実施例1と同様にして、銅製の金属素材の表面にニッケルめっき層を形成した。次いで、実施例1の作製時に用いた市販のパラジウムめっき液を使用して、表面にニッケルめっき層が形成された金属素材に対する電気めっきを行うことにより、ニッケルめっき層に対して、パラジウムめっき層を積層形成した。引き続き、実施例1の作製時に用いた市販の金−コバルトめっき液を使用して、ニッケルめっき層とパラジウムめっき層とが表面に積層形成された金属素材に対する電気めっきを行った。これにより、金属素材の表面に、ニッケルめっき層と、パラジウムめっき層のみからなる中間めっき層と、金−コバルトめっき層とが積層形成されためっき物を得た。このめっき物における各めっき層の厚さは、実施例1と同一とした。その後、このめっき物を150℃の温度で3時間加熱処理した。そして、この加熱処理しためっき物を実施例3とした。
<比較例1の作製>
先ず、実施例1と同様にして、銅製の金属素材の表面にニッケルめっき層を形成した。次いで、実施例1の作製時に用いた市販の金−コバルトめっき液を使用して、ニッケルめっき層が表面に積層形成された金属素材に対する電気めっきを行った。これにより、金属素材の表面に、ニッケルめっき層と金−コバルトめっき層だけが積層形成され、それらの間に中間めっき層が何等形成されていないめっき物を得た。このめっき物における各めっき層の厚さは、実施例1と同一とした。その後、このめっき物を150℃の温度で3時間加熱処理した。そして、この加熱処理しためっき物を比較例1とした。
<比較例2の作製>
先ず、銅製の金属素材と、可溶性陽極を使用した電気めっきを行う際に一般に使用される電気めっき装置とを準備した。また、公知のワット浴からなるニッケルめっき液を所定量調製して、準備した。このニッケルめっき液は、硫酸ニッケルを240g/L、塩化ニッケルを60g/L、ホウ酸を40g/L、及び公知の光沢剤を適量において、それぞれ含有する組成とした。また、ニッケルめっき液のpH値4.0〜4.5の範囲内の値となるように調整した。
そして、電気めっき装置のめっき槽内に、ワット浴からなるニッケルめっき液の所定量を収容する一方、ニッケルめっき液中に、準備された金属素材からなる陰極と金属ニッケルからなる可溶性陽極とを浸漬した。
その後、ニッケルめっき液を45〜55℃の温度にまで加熱した。そして、その温度を維持させつつ、電流密度:5A/dm2 、通電時間:6分の条件で電気ニッケルめっきを公知の手法にて実施した。これにより、金属素材の表面にニッケルめっき層を5μmの厚さで形成した。
次いで、金属素材の表面に形成されたニッケルめっき層に対して、実施例1と同様にして、錫−ニッケルめっき層とパラジウムめっき層とからなる中間めっき層を形成した後、この中間めっき層に対して、金−コバルトめっき層を、更に積層形成した。これにより、金属素材の表面に、ワット浴を用いてなるニッケルめっき層と、錫−ニッケルめっき層とパラジウムめっき層とからなる中間めっき層と、金−コバルトめっき層とが積層形成されためっき物を得た。このめっき物における各めっき層の厚さは、実施例1と同一とした。その後、このめっき物を150℃の温度で3時間加熱処理した。そして、この加熱処理しためっき物を比較例2とした。
<比較例3の作製>
先ず、比較例2と同様にして、銅製の金属素材の表面に、ワット浴を用いてなるニッケルめっき層を形成した。次いで、実施例1の作製時に用いた市販の錫−ニッケルめっき液を使用して、表面にニッケルめっき層が形成された金属素材に対する電気めっきを行うことにより、ニッケルめっき層に対して、錫−ニッケルめっき層を積層形成した。引き続き、実施例1の作製時に用いた市販の金−コバルトめっき液を使用して、ニッケルめっき層と錫−ニッケルめっき層とが表面に積層形成された金属素材に対する電気めっきを行った。これにより、金属素材の表面に、ワット浴を用いてなるニッケルめっき層と、錫−ニッケルめっき層のみからなる中間めっき層と、金−コバルトめっき層とが積層形成されためっき物を得た。このめっき物における各めっき層の厚さは、実施例1と同一とした。その後、このめっき物を150℃の温度で3時間加熱処理した。そして、この加熱処理しためっき物を比較例3とした。
<比較例4の作製>
先ず、比較例2と同様にして、銅製の金属素材の表面に、ワット浴を用いてなるニッケルめっき層を形成した。次いで、実施例1の作製時に用いた市販のパラジウムめっき液を使用して、表面にニッケルめっき層が形成された金属素材に対する電気めっきを行うことにより、ニッケルめっき層に対して、パラジウムめっき層を積層形成した。引き続き、実施例1の作製時に用いた市販の金−コバルトめっき液を使用して、ニッケルめっき層とパラジウムめっき層とが表面に積層形成された金属素材に対する電気めっきを行った。これにより、金属素材の表面に、ワット浴を用いてなるニッケルめっき層と、パラジウムめっき層のみからなる中間めっき層と、金−コバルトめっき層とが積層形成されためっき物を得た。このめっき物における各めっき層の厚さは、実施例1と同一とした。その後、このめっき物を150℃の温度で3時間加熱処理した。そして、この加熱処理しためっき物を比較例4とした。
<比較例5の作製>
先ず、比較例2と同様にして、銅製の金属素材の表面に、ワット浴を用いてなるニッケルめっき層を形成した。次いで、実施例1の作製時に用いた市販の金−コバルトめっき液を使用して、ニッケルめっき層が表面に積層形成された金属素材に対する電気めっきを行った。これにより、金属素材の表面に、ワット浴を用いてなるニッケルめっき層と金−コバルトめっき層だけが積層形成され、それらの間に中間めっき層が何等形成されていないめっき物を得た。このめっき物における各めっき層の厚さは、実施例1と同一とした。その後、このめっき物を150℃の温度で3時間加熱処理した。そして、この加熱処理しためっき物を比較例5とした。
そして、上記のようにして得られた実施例1〜3と比較例1〜5のめっき物を用いて、それら8種類のめっき物に対する耐食性試験を行った。なお、この耐食性試験としては、亜硫酸試験と亜硝酸試験の2種類の試験を行った。亜硫酸試験は、10ppmの濃度で亜硫酸:SO2 を含む亜硫酸ガス中に、実施例1〜3と比較例1〜5のめっき物のそれぞれを、湿度95%、温度40℃の環境下で96時間暴露して、実施した。亜硝酸試験は、濃硝酸中に鉄片を投入して、亜硝酸:NSO2 ガスを発生させ、この亜硝酸ガス中に、実施例1〜3と比較例1〜5のめっき物のそれぞれを3時間暴露して、実施した。そして、それら2種類の耐食性試験を行ったときの各めっき物におけるニッケルめっき層の表面状態を目視により観察して、各めっき物の耐食性を評価した。その結果を下記表1に示した。なお、表1には、○:良い、△:若干良い、×:悪いとして、評価結果を示した。
Figure 2011208175
表1に示される結果から明らかなように、本発明手法に従って、金属素材の表面に、特定のニッケルめっき液と不溶性陽極とを用いて形成されたニッケルめっき層、錫−ニッケルめっき層とパラジウム層のうちの少なくとも何れか一方からなる中間めっき層、金めっき層(金−コバルトめっき層)が積層形成された実施例1〜3のめっき物は、亜硫酸試験と亜硝酸試験の何れの試験においても、耐食性評価が「良い」又は「若干良い」といった良好な結果となっている。これに対して、実施例1〜3のめっき物と同一のニッケルめっき層を有するものの、ニッケルめっき層と金めっき層(金−コバルトめっき層)との間に中間めっき層が何等形成されていない比較例1のめっき物と、ニッケルめっき層が実施例1〜3のめっき物の有するものとは異なる比較例2〜5のめっき物は、何れも、亜硫酸試験と亜硝酸試験のうちの少なくとも何れか一方が、悪い評価結果となっている。これらのことから、本発明手法によって、初めて、優れた耐食性を有するめっき物が製造され得ることが、明確に認識され得るのである。
10:めっき物、12:金属素材、14:ニッケルめっき層、16:中間めっき層、18:金めっき層、20:錫−ニッケルめっき層、22:パラジウムめっき層、30:不溶性陽極、34:ニッケルめっき液

Claims (3)

  1. 金属素材の表面に、ニッケルめっき層が形成されると共に、該ニッケルめっき層に対して、金めっき層が積層形成されてなるめっき物を製造する方法であって、
    硫酸ニッケル200g/L以上360g/L未満と、クエン酸三ナトリウム20g/L以上40g/L未満とが溶解されて、pHが3以上4未満に調整された、塩化ニッケルとホウ酸と光沢剤とを含まない水溶液からなるニッケルめっき液を用いて、該ニッケルめっき液中に、不溶性陽極と、前記金属素材からなる陰極とを浸漬して、電気めっきを行うことにより、該金属素材の表面にニッケルめっき層を積層形成する工程と、
    前記金属素材の表面に形成された前記ニッケルめっき層に対して、錫−ニッケルめっき層とパラジウムめっき層のうちの少なくとも何れか一方からなる中間めっき層を積層形成する工程と、
    前記金属素材の表面に前記ニッケルめっき層を介して形成された前記中間めっき層に対して、前記金めっき層を更に積層形成する工程と、
    を含むことを特徴とするめっき物の製造方法。
  2. 前記ニッケルめっき層の厚さが3〜10μm、前記錫−ニッケルめっき層の厚さが0.2〜0.5μm、前記パラジウムめっき層の厚さが0.03〜0.1μm、及び前記金めっき層の厚さが0.05〜0.15μmである請求項1に記載のめっき物の製造方法。
  3. 金属素材と、
    硫酸ニッケル200g/L以上360g/L未満と、クエン酸三ナトリウム20g/L以上40g/L未満とが溶解されて、pHが3以上4未満に調整された、塩化ニッケルとホウ酸と光沢剤とを含まない水溶液からなるニッケルめっき液を用いて、該ニッケルめっき液中に、不溶性陽極と、前記金属素材からなる陰極とを浸漬して、電気めっきを行うことにより、該金属素材の表面形成されたニッケルめっき層と、
    前記金属素材の表面に形成された前記ニッケルめっき層に積層形成された、錫−ニッケルめっき層とパラジウムめっき層のうちの少なくとも何れか一方からなる中間めっき層と、
    前記金属素材の表面に前記ニッケルめっき層を介して形成された前記中間めっき層に更に積層形成された金めっき層と、
    を含むことを特徴とするめっき物。
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